【安価】「異世界に来た」 (19)


平凡な日常というのは惰性で日々を過ごし、生きる意味を見い出せない者からしたら退屈この上なく、生活する為の作業をひたすらに繰り返すだけなのだ。

でも

今自分の置かれている状況を鑑みて、その惰性で生きた日々を有難く思う日が来るとは思いもしなかった。



●●



「はぁはぁ…!はぁはぁ…!!」



手に持った得物を倒れている生き物に突き刺す。何度も、何度も。鈍い感触。初めての感覚。
多かれ少なかれ幼い頃に小さい生き物を殺した経験は誰しもあるだろう。


だが、大型となれば話は別だ。流石に犬や猫くらいのサイズの生き物を殺したという奴は中々居ない。


殺した事があると言う奴が居るならば、そいつは異常者だ。
だが、今回に限っては俺は違う。
何故ならこれは、そうせざるを得ないからだ。



「はぁ……はぁ……!し、死んだ…のか…?」



誰がその問いに答えるでも無く、一目瞭然だ。
先程まで虫の息だったその生き物は、完全に息絶えている。



「……や、やった……」



力無く言葉を吐き、安心感から脱力してその場に尻もちを着く。
緊張で強ばった身体の力を抜き、息を整えて、先程殺した生き物を見る。



「…殺した……いや、殺せた……んだな」



改めて身体が、手が震える。それも当然、つい先日までただの一般人だった俺が、今は命のやり取りをしているのだから。



「はは…怖ぇ……怖ぇよ…くそ…」



泣き言が溢れてくるが、そんな事を言った所で何も変わらない。俺は手を握り締め、自分の置かれている状況を身体に染み込ませる。
覚悟を決めたつもりだったが、流石にまだ切り替えるには経験が足りないみたいだ。



「…っ!」



背後の茂みが揺れる音がした。俺は咄嗟に刺したままの死体から得物を抜き取り、身構える。
増援かもしれない、だが、やるしかない。


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「……ん…」



硬い。閉じた視界の中、それが最初に出た感想だ。



「え……え!?」



間違えて床で寝たのかと思い、起き上がるとそこは見知らぬ土地。いや、町だった。正確には町外れとでも言うべきか。



「え!?ここ!!…どこ…?」



変な夢かと思い頬を叩いてみるが、ちゃんと痛い。まさか誘拐?俺を!?



「いやいや!……ふぅーー…落ち着け…」



月並みだが、窮地に立たされた時こそ冷静にという精神を思い出し、深呼吸をする。
まず、夢ではない。そして、誘拐にしたってこんな所には置かない。
まずは周囲を確認……確認!?



「マジか……」



今居る目視出来る範囲に3名程倒れていた。



●●



倒れている人達の簡易プロフ


1人目 安価下2
2人目 安価下3
3人目 安価下4

性格は表現や理解力不足で拙くなるかもしれませんがお許しを


まず近くに制服を着た女子高生。身長は低めだな。驚いた事に手にはボウガンが握られている、何をしてたんだ?


そして少し遠くには外人?チョッキを着ているな。一般人のソレとは違う筋肉質な体躯、手にはナイフと銃。軍人か?


その外人の近くに長身で白人の坊主が倒れている。服装はなんて言うんだろうか。勝手なイメージだがローマの人とかが着そうな服だ。


まだ目が覚めていないが、恐らくこの人達も俺と同じ境遇のはずだ。
とりあえず近くの女子高生を起こしてみよう。



「おーい、生きてますかー」



肩を掴んで軽く揺らしてみる。効果はあったのか小さな呻き声と瞼が動いた。



「…ん…んぇ……」


「お、おはようございます」


「え…えっ!?って…うぇ!?ここどこ!?」



女子高生は俺を視認すると驚いたのか目を見開いて素早く飛び退くと、同時に置かれた環境にも驚愕している。



「あ、貴方!誰ですか!?」



とりあえずと言わんばかりに手に持っていたボウガンを俺に向けてくる。俺も条件反射的に両手を上げて敵意は無いとアピールする。
まぁこの女子高生の反応は正しい。



「ちょ、落ち着いて下さい。俺も君達と同じで訳が分からないんです」


「…?君達?」



女子高生は今ので察したのか、辺りを見回して少し遠くに倒れている2人にも気が付き、暫く沈黙して考え込むとボウガンを下ろした。



「…なるほど、そうなんですね。あ、コレ突然向けちゃってごめんなさい!」


「いやいや、分かってくれたならそれで…」



判断力と適応力が早いな、個人的には助かるが。



「じゃあ他の2人も起こしちゃいますね。貴女は少し待っててください」


「あ、はい!すみません!お願いします!」



●●



あれから残りの2人を起こし、女子高生と同じやり取りをして何とか落ち着いて話を出来る状況にした。


なんと驚いた事に、海外の人であろう人と言葉が通じるのだ。
ついでに軍人は起こした直後にナイフを首元に突き付けられたりしたが、まぁ致し方ない。



坊主の人は起こした時は特に動揺を見せず、落ち着き払った態度で会話から入れた。


俺達の居る場所は町外れの廃墟みたいな場所で、とりあえず1箇所へと集まり自己紹介をする事にした。



「エホンッ…俺の名前は──」







主人公のプロフ
安価下



「──山野博之、大学生です。特にこれといった特技は無いけど、サッカーやってます」


女子高生と軍人が軽く反応してくれた。こんな状況下だが、照れくさくなってお気に入りのキャップを目深く被った。



「あ、じゃあ次は私ですね」



女子高生はそう言うと立ち上がり、尻に付いた汚れを払う。目覚めた頃より大分落ち着いていて、これが本来の彼女なのだろうか。



「私の名前は渋谷坂鳴音、女子高生です。あ、このボウガンは…なんであるのか分かりません。あはは…」



なるほど、自分の所持品じゃないのか。
鳴音は言い終わるとまたその場に座り、次は片膝を曲げて座る軍人が銃をいじりながら喋りだした。



「俺はカーソン。人殺しだ」



その一言に緊張が走った。頭で危険だと理解しても身体がすぐに動かないのは何故だろう。



「ははは!おいおい、冗談だ冗談。本気にするなよ。俺はただの軍人さ」


起こした相手が殺人鬼でしたなんて笑えない冗談だ。それにこの人なら簡単に……いやいや変な考えはよそう。



「俺からは以上だ。ヘイ、次はアンタだぜ」


「………」



順番を投げられた坊主の白人は、俺達を順に一瞥すると立ち上がってその場から去ろうとし、その際に小さな声で名を告げる。



「……イルドだ」



最初から思っていたが、愛想が無い。イルドと名乗る坊主は周辺の廃墟の跡を触ったりしていて、何かを調べているみたいだ。


イルドの名前だけの自己紹介を終えると、町の方から人が歩いて来ている事にカーソンが気が付き、教えてくれた。
段々と近付いてくるその人物は、パッと見てシスターを彷彿とさせる風貌の女性だ。


イルドは変わらず辺りを触り、カーソンは気にした様子も無く、ただ座って見据えているだけ。
俺と鳴音だけが身構えた。


そのシスターは声の聞こえる範囲で立ち止まり、深々と頭を下げるとゆっくりと頭を上げ、にこやかに笑う。



「ようこそ、漂流者達」



シスターは俺達の事を、そう呼んだ。



●●

●●



2401番。ここが今日から俺が住む部屋になる。
荷物といった荷物も無く、部屋に入ってすぐにベットへと腰掛ける。


「ふぅ……」



落ち着ける場所に来ると、ドッと脱力する。
時間にしてそんなに経ってない筈なのに、この急激な疲れ。
柔らかな布団へ背を寝かせ、ここまでの出来事を振り返ろう。


まずこの町の名前はレムリアというらしく、別称で古都とも呼ばれるそうだ。
中世の街並みが広がり、フランスへ旅行をした事があるならばその街並みに近いなという印象を持つだろう。


次に通貨。金銀銅貨の3種類がこの世界の通貨だ。先程この施設にて支給された軍資金。
これで日々の食事と装備を新調する。足りない分は稼がないといけないらしい。


そしてこの施設。シスターに案内されたのは漂流者組合という大型のモーテルみたいな所だ。
他の漂流者は出ているのか、俺達以外の人は見かけなかった。

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大体こんな感じだろうか。帰る方法やなんでこの世界に来たとかは分からないらしい。


それにしたって装備を整えるってなんかゲームみたいな感覚だ。
漂流者はこの世界では町での仕事をやらせてもらえないので、魔物を狩るのが仕事になる。


魔物ってどんなのだろうか。やっぱ最初はスライム?ゴブリン?そういった雑魚を狩って生計を立てるのかね。


他の皆はこれからどうするんだろうか。
群れるのも自由、己のみで戦うのも自由、受付の人に言われたあの言葉、皆はどう考えるんだろうか。


鳴音は女子高生だし小さいし、イルドは何考えてるかよく分からないし。
あの中だとカーソンは軍人って事もあって正直心強い。


手を組めるなら組みたいが、カーソンからして俺と組む見返りはあるのかと聞かれると困るな。
乗り気なら話は早いが。



「うーん…」



まだ昼だけど、疲れているし、ひとまずは寝るか。
起きてから考えよう。



●●



「ひーふーみー…」



私、渋谷坂鳴音はパンを齧りながら、お昼頃に頂いた小袋から硬貨を出して残金を確認している。


お部屋に案内された後は自由行動となり、とりあえず私はお腹が減ったので町の露店からパンを幾つか購入したのだ。



「もぐもぐ……んー、パン一つで銅貨2枚の価値だから…」



日本貨幣に変換してみるもしっくりと来ず、段々と面倒くさくなって来たので何とかなるだろうと、お金をしまってパンを貪る。


空腹を満たしていくと、この後の事を考え始めて気が滅入る。
ベットに投げたボウガンを手に取り触ってみるが、引き金を引く以外に使い方なんて分からないし、弾となる矢も無いし。


今後もこれを使うとなれば使い方と矢の補充が必要になる。ちょっと面倒くさい。
でも、直接斬ったりするより遠くから戦えるのなら、私の性に合っているかも。



「はぁ……っていうか、なんでこんな事になっちゃったんだろ。お母さん心配するだろうなぁ」



不思議な事に心配という感情は薄く、むしろこの現実感の無い環境に対しての期待が強いのが本音。
パンの包みを雑に丸めると、ゴミ箱へと投げる。



「…よっし。行きますか」



まずは協力者を見つけないと。
魔物と戦うなら数が多いに越したことはないもんね。




安価下
コンタクトを取る相手

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