【わたモテ】黒木智貴は静かに過ごしたい(20)

母「智子ー、そろそろ朝ごはん食べないと学校遅刻するわよ」

智子「はーい、ふぁああ……ん?」

智貴「……」

智子「お前何でいるんだ?」

智貴「……今日は朝練休みなんだよ」

智子「いやどうでもいいけど」

智貴「お前が聞いたんだろーが」

智子「お母さん、牛乳取って」

智貴(うぜえ)

智子「……」もちゃもちゃ

智貴「……」モグ

智子(そういやこいつ、基本出るの早いからこうやって一緒に朝ごはん食べるの久しぶりだな)

智子(弟……というか、男と一緒にごはん食べるってのも久しぶりか)

智子(最近は学校でも外でも女とばかり連れ立ってるしな。たまにパーカーの男子とも話すけど)

智子(昔ほどキョドることはなくなったが……今後のためにも男と一緒に過ごす練習しておかないと)

智子「なあ弟」

智貴「……なんだよ」

智子「今日お姉ちゃんと一緒に登校しないか」

智貴「しねぇよ。つか前にも言ったが……あんま学校で話しかけてくんなよ」

智子「とか言って本当は構ってほしいんだろ。男のツンデレとかうざいし今どき流行らないぞ」

智貴「ちっ」ガタッ


智貴「行ってくる」バタン

母「いってらっしゃい」

智子(何イライラしてるんだよ、男の子の日か?)

母「あんたたちも、小さい頃は仲良く登校してたのにね」

智子「え、そうだっけ」

母「あ、智貴お弁当持っていくの忘れてる。智子、届けてあげてちょうだい」

智子「えー」

【海浜幕張駅】

がやがや

智貴(この時間帯に乗るとうちの生徒の数も多いな)

智貴「ん」

内「あ」

智貴(この人見覚えあるな。そういやあいつと同じクラス……いや、ではなかったか)

内「はぁ。キモさが足りない」ボソッ

智貴(何かよくわからんが値踏みされた……)

内(黒木はいつも次の電車で来るはず)キョロキョロ

智貴(誰か待ってるのか? 気にせず行くか)

【校門前】

智貴(ん、あれは)

吉田「お、智じゃないか」

智貴「あ、どもっす」

吉田「朝会うのは初めてだな」

智貴「ああ、普段はサッカー部の朝練あるんで。今日は休みでこの時間に」

吉田「そうか。部活頑張れよ」ポン

智貴(この馴れ馴れしさはヤンキー特有のものなのか?)

智貴「あの、前の学食のときは……すみません」

吉田「ん? あー、あれか。まあ気にするな、別にお前は悪くないだろ」

智貴(意外と根に持ってないんだな。ヤンキーいいやつか?)

ゆり「吉田さん。おはよう」

吉田「おう」

智貴(この人は、確か3-5に行ったときに声かけられたな。あいつの友達……なんだよな?)

ゆり(吉田さんはいいとして、こっちは智子の弟の……何か声かけた方がいいのかな)

吉田「じゃあ、行くか」

ゆり「……そうだね」

吉田「またな」

智貴「あ、はい」

智貴(ヤンキーは分かりやすいが、あっちの人は何考えてるのかよく分からんな。口数少ないし)

智貴(あいつは、どうやってあの人達と仲良くなったんだろうな)

キーンコーンカーンコーン


友人A「3限目移動教室か。だりーな」

友人B「行こうぜー、智貴」

智貴「わり、便所寄ってくから先行っててくれ」

【廊下】

伊藤「あっ……」

智貴「あ、ども(やべーやつの友達のやべーひとだ。一応あいさつ代わりに何か話題振っとくか)」

智貴「っと。小宮山さんって、最近俺のこと何か言ってましたか」

伊藤「え。最近でいうと……スカイプで一緒に勉強してたときに『智貴くんの眼球――」

伊藤「(あ、この人はまともな人だから眼球と隈を舐める話はやめよう)。ロッテのマリンブルーユニ着てほしいって」

智貴(今眼球って聞こえたんだが……聞くんじゃなかった)

小宮山「!!」

小宮山(野生のメスブタが智貴くんと二人で立ち話を……! どこの馬の骨だコラ)

小宮山「……」


小宮山(え……伊藤さん……?)

キーンコーンカーンコーン

中村「よう」

友人A「遅かったな」

中村「うちのクラス4限が移動教室だったんだよ。腹減ったな」

智貴「ああ」


紗弥加「ほら、朱里! せっかく智貴くんのために、お弁当のおかず一緒に作ったんだよ。あげに行かなきゃ」

朱里「で、でも……智貴くんもお弁当持ってきてるだろうしやっぱり迷惑なんじゃ」

中村「学食にするか?」

智貴「俺は弁当もってき……ん、ねぇな」

友人A「忘れてきたのか?」

智貴「らしいな」


紗弥加「智貴くんお弁当忘れてきたみたい。チャンスだよ」

朱里「う……うん」

紗弥加「智貴くん、ちん●んおっきいからこの極太ウインナーも喜んで食べてくれるよ!(大声)」

朱里「」

紗弥加「さあ! 早くこの極太を智貴くんの口に挿れよう、朱里!(大声)」

朱里「紗弥加……」

中村「なんだ、弁当作って来たのか? 俺にもくれよ」

紗弥加「ちょ、邪魔しないでよ中村」

中村「へー、見た目はよくできてるじゃん。これ、お前が作ったのか」

紗弥加「あんたのために作ったわけじゃないから!」

中村「唐揚げもらうぜ」ヒョイ

紗弥加「ちょっと」

中村「おう、悪くねーな」

紗弥加「もう勝手に!」

朱里(人が殺意を抱くのって、こういうときなのかな)ゴゴゴ


中村「あれ、智貴は?」

友人A「用があるっていって行っちまった」

【校舎間の通り道】

智貴(はぁ……)

智貴(ここだと静かに過ごせるな)

智子「おい!」ザッ

智貴「おう」

智子「お前、弁当取りに来いって連絡したのに『持ってきてくれ』だと!?」

智子「せっかく人がお前の忘れた弁当、わざわざ学校に持ってきたっていうのに!」

智子「こっちは昼ごはん一緒に食べる約束があるんだよ。無駄足踏ませやがって」

智貴(こいつのクラスに行くとまた、いろんな奴がいるから面倒くさいんだよ)

智貴「……悪かったな。すまん」

智子(何だ……今日は妙に素直だな)

智貴「早く弁当くれよ」

智子「ああ」

智貴「……」パカッ

智子「……ここで食べるの?」

智貴「そうだよ。悪いか?」

智子「誰かと待ち合わせとか?」

智貴「いいや。今日はひとりで食べる。ひとりで食べたいときだってあるだろ」

智子「……」

智貴「何だよ。約束があるんだろ、早く行けば?」

智子「お前、食べるの早いだろ」

智貴「あぁ?」

智子「いるよ、食べ終わるまでここに」

智貴「……何でだよ」

智子「何でもいいだろ」

智貴「……勝手にしろよ」

智子「うん」



智子(一年くらい前だっけか。同じようなことあったよな、立場逆だったけど)

智子(こいつのクラスでの立ち位置とかに興味はないが、やっぱりぼっち飯は寂しいもんだしな)


智子「そうだ、ついでにトークしよう」

智貴「しねぇよ。早く食べられねぇだろ」モグ

【物陰】



内(弟まで攻略してるの!? きもいきもいきもい!)



(おわり)

久しぶりに姉弟にスポット当てた話を本編で見たいと思ってる

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