【となりの吸血鬼さん】レミリア「家の中に変な人間がいる」【東方】(26)

1 森の中

ざわ・・ ざわ・・

灯「まだ昼間なのに空が暗くなっちゃったなあ」

灯「ソフィーちゃんがどこにもいないから探してたけど、あれ、どっちいけばいいんだろ」

サァー

灯「霧? ふああ……何だか眠くなってきちゃった」

灯「おやすみなさい」ゴロリ


「ちょっと貴方大丈夫?」

2 アリスちゃん

灯「うーん……ここは?」

アリス「私の家よ。貴方、魔法の森の中で倒れてたから連れて来たの」

灯「そ、そうなんですか。助けてくれてありがとうございます! ……魔法の森?」

アリス「魔法の森は瘴気が濃いわ。普通の人間がその空気を吸い過ぎると毒にもなる」

灯「しょーき? 毒??」

アリス「って言っても分からないでしょうね。貴方、服装からして里の人間ではなさそうだし。外来人ね」

灯「う~~、全然よくわからないけど。えっと、あなたは?」

アリス「私の名前はアリス・マーガトロイド」

灯「私は天野灯って言います。灯でいいですよ。アリスちゃんって呼んでいいですか?」

アリス「(初対面でちゃん付け……)ええ、構わないけど」

3 上海人形

灯「へぇ~、じゃあアリスちゃんは魔法使いなんだね! すごいね!」

アリス「案外あっさり受け入れるのね……」

灯「ん~だって(吸血鬼がいるんだから、魔法使いくらいいても不思議じゃないっていうか)」

灯「でも幻想郷なんてところがあるなんて知らなかったなあ」

アリス「そりゃあね。まれに外の世界の人間がこっち側に迷い込んでくることがあるのよ」

アリス「話ばかりも難だし。今温かい紅茶が入ったわ。どうぞ」

上海人形\シャンハーイ/スッ

灯「え、こ、これは……」

アリス「私は人形を操ることができるの。お茶を入れる程度のことは自律人形が」

灯「きゃあああああああああっ♡」

アリス「なに!?」

4 人形談議

アリス「貴方、人形のことが好きなのね」

灯「うん、大好き! まさか動くお人形さんがみられるなんて感激で!」

上海人形\ホンコーン/ゆらゆら

灯「わああ……」

アリス(こんなに目を輝かせて……本当に大好きみたい)

灯「ち、ちょっとだけ触らせてもらっても?」ウズウズ

アリス「この子には私の魔力が働いているから、普通の人間に安易に触らせるのはちょっとね」

灯「そ、そっか~……残念」

アリス「でも」

灯「え」

アリス「向こうの部屋に試作品があるからそれなら触ってもいいわよ。私の人形コレクションも見せてあげる」

灯「ほんとに……? あ、ありがとうございます!」

アリス「貴方も自分の人形を持ってるの?」

灯「ええ。もう部屋に飾り切れないくらい……。一日かけてお手入れしたりすることもあって、もう他のことが手に付かなくなったり!」

アリス「あるある!」

5 閑話休題

灯「ふぅ……。いいものを見せてもらいました」

アリス「どういたしまして」

灯「だいぶ長居しちゃったみたい。じゃあそろそろ帰ろうかな」

アリス「え、ちょっと」

灯「それじゃあ、またね。アリスちゃん」ガラッ

(外)

灯「すぅ……」ゴロリ

アリス「外は瘴気が濃いって言ったでしょう。それに、帰るってどこに帰るつもり? ここは幻想郷よ」

灯「あ、そーだった……ふにゃ」

6 ソフィーちゃん

灯「忘れてた! 私、ソフィーちゃんのこと探してたんだった!」

アリス「ソフィーちゃん?」

灯「私が今居候している家に住んでる吸血鬼でね。紙が銀色でお人形さんみたいに可愛いの。私、ソフィーちゃんのこと探してて、森に迷って気づいたらここに」

アリス「灯。ちょっと、落ち着きましょうか」

灯「う、うん」

アリス「そのソフィーって子は、……吸血鬼なの? 本物の?」

灯「そうだよ」

アリス「その吸血鬼は外の世界にいるってことでいいのね?」

灯「うん。もう360歳くらいで……すごく現代っ子だけど血しか飲めないし本物の吸血鬼だよ」

アリス「へぇ」

灯「アリスちゃん、もしかしてソフィーちゃんのこと知ってるの?」

アリス「いいえ、私は知らないけれど。吸血鬼には心当たりがあるわ」

灯「吸血鬼、ってことは、幻想郷にも吸血鬼がいるってこと!?」

アリス「そうよ。あれもれっきとした吸血鬼だわ」

灯「ソフィーちゃんやエリーちゃん以外の吸血鬼……一体どんな子なんだろう」ワクワク

アリス(エリー? どこかで聞いたような名前)

灯「で、その子たちはどこに!?」

アリス「もう会いに行く気満々ね……」

7 紅魔館

アリス「ここが紅魔館よ。くだんの吸血鬼が住んでいるわ」

灯「わぁー……紅くて綺麗な建物……。そばの湖も水面が水晶みたいにキラキラ光ってて……まるで夢の世界みたい」

アリス「確かに貴方にとっては夢の世界のようなものよね」

灯「でも、ありがとう。ここまで連れてきてくれて」

アリス「いいのよ。私もちょうど、ここの大図書館に本を返しにいくつもりだったから」

灯「図書館なんてあるんだ」


「お、アリスじゃないか!」

8 仲良きことは……

アリス「魔理沙!」

魔理沙「こんなところで何してるんだ?」

アリス「本を返しに来たのよ。ほら、これよ」

魔理沙「ん、あ。その本って私が貸したやつ!」

アリス「そうよ。魔理沙が図書館から借りパクしてきて私に貸してくれた本。貴方に返してもどうせ返却しないだろうから、私が返しに来たの」

魔理沙「何だよー、借りパクとは人聞きが悪いな」

アリス「だって実際そうじゃない。第一借りたものを安易に他人に貸すってこと自体、あんまり褒められたことじゃ」

魔理沙「アリスだから貸したんだぜ?」

アリス「え……」

魔理沙「アリスは私が貸したものをぞんざいに扱うなんて思ってないからな。信頼してるんだ」

アリス「そ、そう……」

魔理沙「ついでにこうやって代わりに返してくれたから手間も省けたぜ!」

アリス「何よそれ。私が都合よく使われてるだけじゃない、まったく」

魔理沙「まあまあ、そう膨れるな。で、アリスは本返しに来ただけなのか?」

アリス「いいえ、この人間の子を案内してきたんだけど」

魔理沙「人間の子? 誰もいないぞ」

アリス「あれ!?」

アリス(あの子、先に中に入って行ったの? 仮にもここは悪魔の住む館なのよ。手ぶらの見知らぬ人間が1人で乗り込むなんて危険すぎるわ)

9 貴様見ているな

灯「アリスちゃんたちの話が長くなりそうだから、先に入ってきちゃったけどよかったのかなあ」

灯「でも門番さん?は寝てたし門も開けっ放しだったし、むしろ入ってくれって感じだったしいいよね」

灯「それにしてもこの洋館……中も綺麗だなあ。ソフィーちゃんの家も広いけど、ここはもっと広いし天井もあんなに高いなんて」

灯「でも吸血鬼はどこにいるんだろう。部屋はたくさんあるし、どっちにいったらいいんだか」

灯「とりあえず、この大きな部屋に入ってみよう」ガラッ

ギィィ

灯「お、おじゃましまーす」

灯「部屋の中も広々として、でも窓はなくて薄暗いな……あれ、真ん中にあるのは大きなベッド」

灯「……かすかに、寝息みたいなのが。近づいてみようかな」

レミリア「すぅーすぅー」

灯「わぁ・・・・」

レミリア「……っ……ん?」

灯「か、かわいいぃ・・・・」じー

レミリア「むにゃ……人間?」

10 たべちゃうぞ

レミリア「なにあんた、人間?」

灯「お人形さんみたい……ううん、もはやお人形さんそのもの!」

レミリア(ああ、咲夜が用意した朝ごはんかしら)コシコシ

灯「寝起きのとろーんとした表情……目をこする仕草……はぁはぁ」

レミリア(な、何だか興奮しているわね。これから私に食される運命に抗えず畏怖して動転しているのかしら)

レミリア(ふっ……哀れな子羊め)

レミリア「ぎゃおー、たべちゃうぞー!」

11 事情聴取

咲夜「なるほど、外来の人間が勝手に中に」

アリス「ええ、おそらく」

魔理沙「こんな禍々しい館、外来人がおいそれと入れるものじゃないと思うんだが」

アリス「あの子は肝が据わっているっていうか、やたら怖いもの知らずなのよね」

美鈴「不法侵入とは困ったものでうひゃっ!」ビュン

咲夜「誰の不始末なのよ誰の」

美鈴「咲夜さん、いきなりナイフ飛ばすのは勘弁してください。あとすみません」

咲夜「事情は判ったわ。私が注意して様子を見てきましょう」

12 カリスマブレイク

咲夜「で」

灯「はあっはあっ……レミリアちゃん……可愛い……可愛いよっ」ギュウウ

レミリア「……」

灯「さあ、私を食べてっ……」ヌギヌギ

レミリア「咲夜ー、家の中に変な人間がいる……」

咲夜「どうしてベッドの上でただの人間にマウントを取られてるんですかお嬢様」

レミリア「こうベタベタくっつかれて食い気味に食えって言われるとかえって食欲が減退して襲う気も失せたわ」

レミリア「もうちょっとしおらしい人間連れてきなさいよ。血液型はB型でね」

咲夜「その子は私が連れてきた人間じゃありませんよ」

レミリア「あら、そうなの。じゃあ侵入者?」

咲夜「一応はそういうことになりますね」

レミリア「そう。じゃあ妹のフランのおもちゃになってもらいましょうか」

灯「レミリアちゃん妹もいるの!? おもちゃ? うん、一緒に遊びたいなあ」にこにこ

咲夜(普通に怖いことを言ってるのに、絵面だけ見るとなんと微笑ましいこと)

13 ティータイム NOT 血ータイム

咲夜「どうぞ、粗茶ですけど」

灯「ありがとうございます」

咲夜「お嬢様も、こちらを」

レミリア「あら、気が利くわね。ちょうどこれが飲みたかったところよ」チュル

灯「(真っ赤な飲み物だ……)レミリアちゃんもやっぱり血しか飲めないの?」

レミリア「そんなことはないわよ。今飲んでいるのも血じゃなくてトマトジュース」

灯「え、そうなんだ」

レミリア「まあ、生身の人間の血は吸血鬼の最高の食材。あの甘美な味の前では他の食べ物なんて霞んでしまうけれど」

灯「へ、へえ……」

咲夜「お嬢様は人間の血を直接吸うと、いつも鮮血をだらだらとこぼして汚してしまうから困りものね」

レミリア「ちょっと咲夜、それは言わない約束でしょう?」

灯「ほ、本当に人から血を吸い取ってるんだ……」

灯(ソフィーちゃんはいつもパックの血を飲んでいたから、そこまで見てて抵抗なかったけど……)

灯(もしかして吸血鬼って……とても恐ろしい存在なのでは)

灯「ヒエッ・・」ガクガク

レミリア「なに今更怖がってるのよ」

14 しばしご歓談を

レミリア「ふーん。大体の事情は判ったわ。ソフィーってやつもエリーってのも名前は知っているわよ」

灯「そうなの」

レミリア「私たちももともと外界にいたからね。館ごとこっちに移り住んできたけど」

灯「ええ!? この家ごと……」

咲夜「幻想郷ではさほど珍しいことでもないわよ」

レミリア「でも、そいつらってせいぜい300~400年生きてる程度でしょう?」

レミリア「ふふ、500年以上の時を生きてきたこのレミリア・スカーレットを比べれば、とんだ小童ね」

灯(500年と400年って比べる数字が大きすぎていまいちピンとこないなあ)

咲夜「そういう発言のせいでいまひとつ威厳を保てないのよね」

レミリア「でも、そのふたりと直接顔を合わせたことはないわ。最近の外界の動向についても興味があるし」

レミリア「貴方の経験についていろいろ話してもらえるかしら」

灯「うん、いいよ!」

15 はじまりあれば、おわりもくるさ

灯「……っていうことでね。私はソフィーちゃんのことも、みんなのことも大好き」

灯「ずっと、みんなで一緒にいたいなって思ってるんだ」

レミリア「ふふ、そうなの」

レミリア「……」

灯「レミリアちゃん?」

レミリア「やっぱり、人間ってのは楽しいものだと、ね」

レミリア「灯、そろそろいい時間じゃない? ソフィーが貴方のことを待っているんじゃないの」

灯「え。ああ! そうだった~……私はソフィーちゃんのことを探してて……」

レミリア「咲夜」

咲夜「はい」シュタッ

咲夜「周辺で聞き込みをしてきましたが、ソフィーという吸血鬼に関する情報は特段仕入れられませんでした」

咲夜「おそらく、彼女の失踪は今回の幻想入りとは無関係かと」

灯(今いきなり咲夜ちゃんが目の前に現れたような……)

レミリア「そういうことだから、貴方はさっさと向こうに帰って、その子を探してあげなさいな」

灯「う、うん。でも、帰るのってどうやって」

アリス「灯」

灯「アリスちゃん!」

アリス「博麗の巫女と話はつけておいたわ。ちゃんと貴方を元の世界に帰してくれるそうよ」

魔理沙「私が箒に乗っけてって神社まで送ってやるよ。急いでるんだろ?」

灯「え、箒に? あ、ありがとうございます! えっと」

魔理沙「霧雨魔理沙。普通の魔法使いさ」

灯「マリサちゃん……ありがとう」

アリス「それと、これおみやげ」

灯「え、これって」

アリス「貴方、人形をとても大切に扱ってくれるだろうから。特別にね」

灯「あ、ありがとうアリスちゃん! 私、絶対大事にするね」

レミリア「灯。生きとし生けるものの時間には限りがあるからこそ美しいわ」

レミリア「それはどれだけ生きながらえるものでも、短く一瞬で散るものでも変わらない」

レミリア「限りある生の瞬間を大切にしなさい。もっとも、貴方はもう判っているのかもしれないけれど」

灯「うん」

アリス「……」

魔理沙「……」

咲夜「……」

灯「ここで、幻想郷でみんなに出逢えたことも。私、ずっと忘れないからね」

レミリア「あらそう。ふふ、悪い気はしないわ」

灯「さようなら、レミリアちゃん! アリスちゃん! みんな!」

――――
――

カァー カァー

ソフィー「ん、……夢を見ていたのか」

ソフィー「不思議な夢だったな。私は出て来なかったが、灯が異世界で……」

ソフィー(あれ、それより私自身は……そうか。夜中に外出した後、外で眠ってしまって)

ソフィー(日が昇って帰るに帰れなくなって木陰で休んでいたんだった。もう夕暮れか)

「ソフィーちゃん!」

ソフィー「灯」

灯「やっと見つけた! よかった~……ソフィーちゃん、無事でよかったよ。心配したんだよ」

ソフィー「そうか。心配かけてすまなかったな」

灯「うん、でももういいよ。ソフィーちゃんも見つかったし、それに」

ソフィー「灯、……その手に持っているのは」

灯「えへへ、ちょっと寄り道しちゃって、そこでね」つ上海人形

ソフィー「……そうか。楽しかったか?」

灯「うん!!」

ソフィー「うむ。じゃあ、日も暮れたし帰るとするかな」

灯「私たちの家にね!」


数日後。

人形がひとりでに動き出して怖がるソフィーちゃんを見て、
「怖がっているソフィーちゃんも可愛い」と灯が満面の笑みを浮かべるのはまた別の話。


                              (おしまい)

前にきんモザと吸血鬼さんのクロスSS読んで何か書きたくなって書いてみた
妹様も出したかったけどさすがに危険過ぎるよなあ

このSSまとめへのコメント

1 :  スネ夫警視正   2019年08月27日 (火) 00:58:57   ID: WQny9Esr

レミリアスカーレットお前はヤクザと結婚しろ。

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