【ダンロンV3】夢野「なんじゃこの映画は…ハウス?」(68)

※ニューダンガンロンパV3の二次創作SSです
※ネタバレ要素あり
※閲覧注意かも
※パロディ
※立て直し

すみません、酉変わってますが◆DGwFOSdNIfdyです。
同じ文字列を入力してるんですけどなぜか違う酉になってしまいます…VIPサービスとそれ以外で酉の仕様が違うのかな?
取り敢えず投下します。

○暗い部屋の中、蝋燭に灯った火だけが白無垢を着た赤松の姿をぼんやりと浮かび上がらせている。

赤松が角隠しを取ると、その頭には猫の耳が……。

最原「はい、カット!」

最原の掛け声を合図に、春川が部屋の明かりのスイッチを入れる。
同時に赤松の表情も和らぐ。

赤松「今のでよかったかな」

茶柱「勿論!凄くよかったです!」

東条「お疲れ様。この暑い中、白無垢を着なきゃいけないのは大変よね」

最原「キリがいいから、今日の部活はここまでにしとこうか」

赤松「はーい」

猫耳の付いたカチューシャを外す赤松。どうやら演劇部の衣装のようだ。

入間「つー訳で、オレ様たちは着替える。ダサい原はとっとと廊下に出てろ」

入間「で、でも…どうしてもオレ様のヴィーナスボディを拝みたいっていうんなら、後で個人的に見」

夢野「最原、今の内に顧問に挨拶してきたらどうじゃ?」

春川「ついでに合宿の件について一応訊いておいてよ」

最原「了解。ちょっと行ってくるね」

アンジー「行ってらー」

入間「ひぐぅ…無視しないでよぉ」

○最原が職員室の前に到着する。

最原「失礼します。モノクマ先生はいらっしゃいますか?」

モノクマ「いるよー」

職員室の隅で、モノクマは机に突っ伏したまま面倒臭そうに手を振っている。

最原「部活終りました」

モノクマ「んー、お疲れ。早く片付けて早く帰ってね」

最原「それと、合宿なんですけど」

モノクマ「なんだよ合宿って」

最原「秋の大会に向けて長期休暇中に合宿をしたいって前から相談してましたよね…?」

モノクマ「あーあー聞こえなーい。ボク知らなーい」

最原「……」

モノクマ「大体さ、必要性を感じないよね。練習なら学校ですりゃいいじゃん」

最原「…もういいです。先生ならそう言うだろうなって思ってたし」

最原が科白を言い終えた瞬間、職員室中の人や物の動きが一斉にストップする。
動いているのは最原だけ。彼がモノクマに背を向けて歩き出すと、それに合わせて背景がゆっくりと横にスライドし演劇部の部室に切り変わる。

最原が椅子に座ると静止していた部員たちが動き始める。

最原「という訳なんだ」

春川「やっぱそうなるよね」

茶柱「ほんと教師のクズですね、アレは」

赤松「結局合宿は無しかぁ…部活のみんなでお泊まりしたかったな」

入間「オレ様は別に無くなっても構わねーがな」

夢野「赤松は入間と違って楽しみにしていたからのう」

アンジー「主はいいました…部員で旅行に行くだけならモノクマなんていなくてもいいんじゃないかと…」

東条「最早合宿でもなんでもないわね」

赤松「本音を言うと遊びたいだけだからね、結局」

最原「じゃあ伝える事は伝えたし、今日はもう解散で」

○校門前。下校中の最原と赤松が並んで歩いている。

赤松「白無垢、どうだった?」
最原「うん、凄いよね。東条さんが殆どひとりで仕立て上げてくれたけど、かなり本格的だった」

赤松「確かにそうだけど、もっと他に言う事があるんじゃないかなーっていうか…」

最原「?」

赤松「うー…はっきり言わないと解んないかなぁ」

赤松「今回の脚本書いたのって最原くんでしょ」

不思議そうな表情をしつつも頷く最原。

赤松「私の花嫁姿が見たかったからそういうお話にしたんじゃないの?」

最原「え?そもそもその時点では赤松さんが主演って決まってた訳じゃないけど…」

最原「…いや、でも『赤松さんがその役を演ってくれたらいいな』とは思ってたかも」

赤松「本当?」

最原「こんな事で嘘なんか吐かないよ」

赤松「だったら、言うべき事があるんじゃないの」

最原「あっ…ごめん、赤松さん」

最原「今更言っても、言わされてるみたいで嬉しくないかも知れないけど…本当に似合ってたし、奇麗だったよ」

矢庭に赤松が背を向ける。

最原「もしかして怒った?」

赤松「ち、違うよ。なんだか照れ臭くなっちゃって」

ズームインで、赤松の朱に染まった耳が大きく撮し出される。

赤松「その言葉をキミの口から聞きたかったの。ありがとう、最原くん」

赤松がその場で半回転する。見詰め合うふたり。

最原「赤松さん…」

赤松「最原くん…」


一方、校門の向こうでは夢野・茶柱・アンジーがその一部始終を見守っていた。

夢野「あやつらは本当に仲がいいのう」

茶柱「ぐぬぬ…あの男死、また赤松さんを誑かして…」

アンジー「転子は終一と楓が羨ましいんだよねー?だったら転子も、ふたりに負けないくらいらーぶらーぶすればいいんだよー」

茶柱「なるほど、アンジーさんもいい事を言いますね。という訳で夢野さん、転子とイチャイチャしましょう!」

夢野「んあー、早く帰って寝たい…」

○最原の家の前。帰宅した最原がポストを覗くと、1封の手紙が投函されている事に気付く。手に取って差出人の名前を確認する。

最原「…真宮寺くんからだ」

最原はそのまま家のリビングに上がるとソファに腰掛け、手紙を開封して読む。

最原「親愛なる最原終一君へ─」


最原の上に手紙の文面が流れ、それに合わせて真宮寺の声でナレーションが入る。

真宮寺『梅雨が明けてからというものの暑い日が続いているネ。君は変わり無く過ごしているかな』

真宮寺『不本意ながら無音に打ち過ぎ申し訳なく思うヨ。心配を掛けてしまっただろうけど、僕ならもう大丈夫サ』

真宮寺『今は故あってあの屋敷でひとり暮らしをしているんだ。姉さんがこの世を去って久しく、この生活にも慣れてきた』

真宮寺『とは言え広い家にひとりでいると未だに寂しさを覚える時がある。だから、もしよかったら夏休みを利用して遊びに来て欲しい』

真宮寺『一度君の部活の友達と会ってみたいから、彼女たちも誘ってくれると益々嬉しいヨ。無理にとは言わないけど考えておいてくれないかな』

真宮寺『それじゃあ、また相見える日を楽しみにしているヨ』


最原「─乱筆乱文失礼、と」

最原「そう言えば合宿の話、まだ何も決まってなかったよな。…よし、返事を書こう」

最原がソファの上に手紙を置いて立ち上がる。

字幕【時は流れ……夏休み】

○新幹線の車内で、私服姿の最原たちが談笑している。

東条「ところで、泊まる場所を提供してくれる真宮寺是清君ってどんな人なの?」

赤松「あ、それ私も聞きたい」

春川「最原の古い友達って情報以外は何も教えてもらってないからね」

最原「僕が転校するまで彼とは同じ中学だったんだ。民俗学に詳しくて、面白い話を沢山教えて貰ったよ」

最原「離れ離れになってからも暫くは手紙でやり取りをしていたんだけど、1年くらい前に彼の実のお姉さんが亡くなって以来しばらく音信が途絶えていたんだよね」

入間「この時代に文通かよ?アナルだな」

赤松「…もしかして、アナログって言いたいの?」

夢野「アナクロかも知れんぞ」

最原「あそこは電波が悪いからね。真宮寺くん、携帯持ってないんだ」

入間「げっ、じゃあ向こうではスマホ使えねーのか」

最原「多分…」

茶柱「話には聞いていましたが、随分と田舎なんですね」

アンジー「にゃははー、アンジーの島を思い出すよー」

○田舎の停留所。周囲に建造物は無く、どこまでも自然の景色が広がっている。
バスが止まり部員たちが降りてくる。

夢野「新幹線からバスに乗り換えて更に徒歩で移動しなければならんのか…めんどい」

茶柱「歩けなくなったら言ってください。転子がおぶっていきますので!」

赤松「偶にはこういうのも悪くないよね。よーし、歩くぞー!」

東条「赤松さんは元気ね」

入間「行きはまだいいんだが、帰りの事を思うと今から気が重くてしょーがねー…」

春川「本当にこんな所に住んでるの?」

最原「うん。あそこの森を抜けると丘があって、その頂上に大きなお屋敷が建っているんだ。子供の頃に何度も行ったから間違いないよ」

最原「それにしても、昔はこの辺りに何軒か民家があったはずなんだけど…」

東条「過疎化の煽りかしら?」

夢野「時代の流れに逆らえなかったんじゃな」

○真宮寺邸を目指す最原一行。森林を通り抜けた所で、スイカを売っている白銀と会う。

白銀「地味に美味しいスイカはいかがですかー」

最原「なんだかあんまり美味しくなさそうだね…」

赤松「最原くん、そういうこと言っちゃ駄目だってば」

アンジー「お土産はちゃんと用意してあるから、態々ここで買わなくてもいいって神様が言ってるよー」

入間「スイカなんてどうでもいいからさっさと行くぞ」

ひとり取り残される白銀。

白銀「やっぱりみんなお菓子の方が好きなのかな。スイカだって美味しいのに」

白銀はスイカを食べやすい大きさに切って頬張ると、赤松たちの遠い背中を見遣り含み笑いを浮かべる。

白銀「若い女の子があんなに来るなんて…彼、喜ぶだろうなぁ」

彼女が喋る度、その口の中に人間の目玉のような物が見え隠れする。

白銀「ふふふふふ」

○真宮寺邸の前。石造りの門はひび割れ蔦が這っている。
その古い家は西洋館のようであり日本家屋のようでもあるが、和洋折衷というには各々の要素が喧嘩している。

アンジー「凄ーい、島の神殿よりおっきいよー!」

猫の鳴き声がして、どこからともなくチンチラがやって来る。

夢野「おお!白くてふわふわで可愛らしいのう」

赤松「迷い猫かな?」

最原「この家、昔来た時と変わってない…懐かしいな」

最原が門に近付くと扉がひとりでに開く。その向こうでは車椅子に乗った真宮寺が待ち受けている。
チンチラも門をくぐり、真宮寺の膝に飛び乗る。

真宮寺「やァ、いらっしゃい。よく来てくれたネ」

最原「真宮寺くん。……どうして車椅子に乗っているの?」

真宮寺「おや、話していなかったかな?」

最原「全然聞いてないよ」

真宮寺「大した事は無いんだけど、事故でちょっと脚を悪くしてしまってネ」

最原「それでひとり暮らしなんて大変だね…」

真宮寺「取り敢えず上がってヨ。僕は太陽の光に長時間当たっていると、身体を壊してしまうんだ」

最原「車椅子押そうか?」

真宮寺「あァ、お願いするヨ」

案内されるまま、最原たちはエントランスホールに入る。

入間「馬鹿に広い玄関だな」

東条「お邪魔しま─」

足を踏み入れた途端に顔を顰める東条。

東条「流石にちょっと埃が酷いわね」

真宮寺「僕はこんな状態だから家事もままならなくてネ」

東条「だったら、私が隅から隅まで掃除するわ」

春川「幾ら東条でも、ひとりでこの家を奇麗にするとなると大変じゃない?」

茶柱「転子もお手伝いします!」

東条「結構よ。掃除だけは他人に手出しされたくないの」

茶柱「分かりました…そうとは知らず出しゃばってすみません」

東条「こちらこそ申し訳無いわ。気持ちだけ受け取らせてちょうだい」

アンジーは、真宮寺の膝上でくつろいでいるチンチラを撫でている。

アンジー「この猫って是清のペットだったんだなー」

最原「昔はいなかったよね、猫。なんて名前なの?」

真宮寺「シロっていうんだ」

アンジー「見たまんまだねー」

奥の方に入った夢野が骨格標本を発見する。

夢野「んあぁぁぁ!」

夢野の悲鳴を聞いて駆け付ける一同。

茶柱「夢野さん?!」

春川「一体どうし─なんだ、ただの標本じゃん」

夢野「ぁぁぁっ…あ?」

入間「んだよ、紛らわしいな」

骨格標本の傍のグランドピアノの存在に気付いた赤松が目を輝かせる。

赤松「わぁ…ピアノだ!ピアノがある!」

真宮寺「姉さんがよく弾いていたんだ。演奏してみるかい?」

赤松「いいの?」

真宮寺「きっと姉さんもピアノも喜ぶヨ」

赤松「じゃあ、早速お言葉に甘えてもいいかな」

真宮寺「どうぞ」

赤松がピアノに向かい、その周りを最原たちが取り囲む。

赤松「この楽譜の曲、初めて見るよ」

真宮寺「それは姉さんが作曲したものだネ」

赤松「じゃあこれを弾いてみよっと」

赤松が演奏を始める。誰もがその音色に夢中になる。

シロ「にゃあ」

突然シロが不気味に眸を光らせる。瞬間、シャンデリアが赤松の頭上を目掛けて落ちる。

茶柱「きえぇぇぇぇぇ!」

しかし茶柱が咄嗟にシャンデリアを蹴飛ばしたため事無きを得る。

茶柱「皆さん、怪我はありませんか?!」

夢野「んあー…なんともないぞ」

赤松「ありがとう、茶柱さんのお陰で助かったよ」

東条「シャンデリアを吊り下げる鎖が老朽化していたようね」

入間「ケッ、とんだ欠陥住宅だな」

赤松「ちょっと、入間さん!」

春川「流石にもうこんな事は無いと思うけど…」


アンジー「ほっとしたらお腹が空いたよー」

東条「そろそろ夕ご飯の準備を始めないといけないわね。赤松さんには悪いけど、ピアノは一旦ここまでにしましょう」

茶柱「ではお勝手を借りますね!」

真宮寺「好きに使っていいヨ。それと、僕の分は作らなくていいから」


エントランスホールから次々と人がいなくなっていく。最後に残ったのは最原と赤松だけ。

最原「赤松さん」

赤松「どうしたの?」

最原「…ピアノ、また聴かせてね」

赤松「ふふっ…うん、喜んで」

○広い座敷で最原たちが夕食の席に就いている。シロも座布団に乗り箱膳の上のツナ缶を食んでいる。

赤松「だから、せめて食事中だけはそういう話はしないでって言ってるでしょ!」

入間「ひいぃぃ?!なんだよぉ…怒鳴るなよぉ」

東条「ふたりとも、そんなに騒いだら隣の部屋で休んでいる真宮寺くんの身体に障るわ」

赤松「ご、ごめんなさい」

入間「身体に触る…?東条がか?」

最原「なんだか入間さんはあんまり反省してないように見えるけど…」

食事を済ませた東条が立ち上がる。

東条「ご馳走様でした。廊下の雑巾掛けをしているから何かあったら呼んでちょうだい」

アンジー「斬美ー、その前にお風呂の順番決めようよー」

東条「私はみんなが入った後にするわ。仕えるべき相手より先にお風呂を頂く訳にはいかないもの」

最原「それなら僕は最後から2番目でいいよ」

夢野「うむ、では残りの6人でじゃんけんじゃな」

春川「勝ち抜き形式でいいよね?」

茶柱「異議無しです!」

赤松「それじゃあいくよ。じゃーんけーん─」

○台所。茶柱と夢野が食器を洗い、最原が洗い終った物を拭く。真宮寺はその様子を眺めながら手土産の梨を剥いている。
そこにパジャマ姿の赤松が入ってくる。

赤松「最原くん、お風呂空いたよ」

最原「ありがとう。でもまだ仕事が途中なんだよね…」

真宮寺「それなら僕が」

真宮寺が車椅子から立ち上がる。

最原「真宮寺くんが立った!」

茶柱「アナタ、立てたんですか?!」

真宮寺「みんなに元気を貰ったからネ」

赤松「さっきまで体調を崩して寝てたんだよね…?」

夢野「ウチの魔法が功を奏したようじゃな」

茶柱「流石です夢野さん!」

真宮寺「だから、こっちの事は気にせず入ってきなヨ」

最原「う、うん」

最原は布巾を真宮寺に渡し、台所から出る。

赤松「真宮寺くん、またピアノを貸してもらってもいい?」

真宮寺「都度確認しなくても使いたい時に使ってくれて構わないけど」

赤松「本当に?ありがとう!」

真宮寺「そんなに喜んでくれると僕も嬉しいヨ。こっちこそお礼を言いたくなる」

真宮寺「赤松さん…君は本当に美しい…」

赤松「え?何か言った?」

真宮寺「ううン、何も」

○再びエントランスホールにやって来た赤松。

シロ「みゃう」

赤松「シロちゃん、こんな所にいたんだ。私の演奏聞いてくれる?」

シロ「みゃう」

赤松「…なんて、言っても解らないよね」

赤松は機械式メトロノームを動かすと、椅子に座って『月の光』を演奏し始める。
間も無くして、メトロノームの乾いた音によく似た別の音が重なるようになる。それを敏感に聞き取った赤松が思わず背後を顧みる……が、特に異変は無い。

赤松「…気のせいかな」

赤松が再び『月の光』を弾き始めると、その後ろで骨格標本が踊り出し骨をかっこんかっこん打ち鳴らす。

シロ「にゃあ」

シロが眸を光らせると、赤松の様子が少しずつ可怪しくなっていく。
まずは指が震えて、思うようにピアノを演奏出来なくなる。『月の光』はテンポが乱れ不協和音混じりになり、いつしか粗っぽい速弾きの『ネコふんじゃった』に変わる。

メトロノームは高速で左右に振れて、それに合わせて骨格標本も激しく踊る。
そして、ピアノの蓋にびっしり生えた鋭い歯が赤松に襲い掛かる。
赤松「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

○湯船に浸かる最原。昔ながらの鉄砲風呂であるため、外では東条が薪を竈に焼べている。

東条「湯加減はどうかしら」

最原「温度は丁度いいよ。でも、頭と身体を洗いたいから水を足してまた沸かしてくれないかな」

東条「分かったわ」

薪を割る東条。一区切り付くと手を止めて空を仰ぐ。

東条「奇麗な夕焼け…田舎っていいわね」

浴槽から上がろうとした最原の肩に何かが触れる。

最原「なんだこれ…髪の毛?」

どこからともなく黒くて長い髪のような物が伸びてきて、最原の身体に絡み付こうとする。

最原「え、ちょ…何?ほんとに何?…あっ」

最原「うわあぁぁぁぁぁ!」

東条「最原君!何かあったの?!」

パニックに陥った最原には、東条の呼び掛けに応えるだけの余裕が無い。
更に、外からでは風呂場がどうなっているのか殆ど知る事が出来ない。

東条「急いでそっちに向かうわ!」

東条からは見えない所に転がっていた薪がふわりと浮いて、最原に気を取られている彼女に向かって猛スピードで飛んでいく。
振り返る東条。

○台所に赤松・最原・東条・ついでにシロを除いた全員が揃っている。

アンジー「美味しい梨だねー。神ってるよー」

茶柱「アンジーさん、摘まみ食いをしてはいけませんよ!」

梨に釘付けになっているアンジーたちの後ろで真宮寺が踊っている。

春川「最原と東条はまだ風呂だろうから、取り敢えず赤松を呼びに行こうよ」

夢野「何もピアノの邪魔をする事もなかろうに。取って置けばいいのではないか?」

春川「別に邪魔するつもりは…まあでも、そうだね」

エントランスホールの方角から『月の光』の旋律が届く。

入間「お、やってんな」

躍りながら冷蔵庫の中に入る真宮寺。

夢野「んあっ?!」

アンジー「秘密子ー?どったのー?」

夢野「し、真宮寺が冷蔵庫を開けて、中に入って…」

入間「は?」

茶柱「転子が確かめてみます」

茶柱が冷蔵庫を開けるが、中には食材しか入っていない。

春川「…夢野、アンタ疲れてるんだよ」

夢野「じゃが、ウチは確かに見たんじゃ!」

入間「そういえばいつの間にか真宮寺がいなくなってんな。どこに行ったんだ?」

アンジー「それよりこのピアノ、なんか変だよー」

耳を澄ます一同。『ネコふんじゃった』が聞こえる。

春川「確かに、赤松の演奏っぼくないね」

茶柱「別の誰かが弾いているんでしょうか?」

入間「誰かって誰だよ」

茶柱「それは─」

赤松の悲鳴の後、立て続けに最原の悲鳴。

アンジー「…穏やかじゃないねー?」

春川「様子を見に行こうか」

アンジー「アンジーは終一の所に行ってくるよー」

夢野「では、ウチも風呂場に向かうぞ」

茶柱「で、ですが夢野さん…最原さんは男死ですよ?まずは赤松さんの安否を確認するべきでしょう」

夢野「だったらお主が行けばいいじゃろう。ウチはアンジーといたいんじゃ」

茶柱「うぐっ…」

春川「はぁ…エントランスホールは私が見てくる。茶柱は夢野たちと行ってくれば?」

茶柱「は、はい!お願いします!」

春川「入間は私と一緒に来なよ」

入間「凡人如きが指図すんじゃねーよ、なんでオレ様が─」

春川「別にここでひとりで待っててもいいんだけど」

入間「…………」

春川「どうする?」

入間「……行きます」

○風呂場。最原が必死に髪の毛から逃れようと藻掻いている。
しかし不意に脱衣室側から戸が開けられると髪の毛はあっさり退いていき、最原は勢いのまま湯船から転がり出る。

アンジー「大丈夫ー?」

最原「へ?」

立ち上がる最原。浴槽を覗くが例の髪の毛は見当たらない。

最原「…うん。もう大丈夫、みたいだ」

全裸の最原を見て硬直していた茶柱がようやく口を開く。

茶柱「最原さん…アナタ、なんてモノを見せるんですか」

最原「えっ?いや、こう言っちゃなんだけどそもそもそっちが入ってきて─」

茶柱「問答無用!きえぇぇぇっ!」

最原「うわあぁぁぁぁぁ?!」

茶柱の背負い投げ。最原は気絶する。

アンジー「とにかく、何事も無くてよかったよー」

夢野「この状況を無事と言ってよいのか?」

斧を持った東条が馳せ付ける。

東条「最原君?!どうしたの?!」

茶柱「安心してください、不埒な男死は成敗しました!」

アンジー「転子ー、目的がすり替わってるよー」

東条「ああ…何があったのか大体察したわ」

夢野「ところで東条はなぜ斧を持っているんじゃ?」

東条「そうね、これは─」


回想。

飛んでくる薪を東条が次々と斧で叩き伏せるシーンが、低速度再生される。

回想終了。


東条「薪を割っている途中で慌てて飛び出したせいで、そのまま持ってきてしまったの」

アンジー「斬美も案外うっかりさんなんだなー」

東条「そんな事より、最原君をここから運び出して介抱しないと」

○エントランスホールで春川が赤松の指に絆創膏を巻いている。

入間「ったく…ちょっと指挟んだだけで大袈裟なんだよ」

赤松「入間さんにとってはそうかも知れないけど、私からすると指の怪我は死活問題なんだからね?!」

赤松「それに、なんだかピアノに噛まれたような気がして…」

入間「噛まれただぁ?」

赤松「あ、いや、本当にただの気のせいかも知れないんだけど」

入間「寧ろ気のせいじゃなかったらなんなんだよ」

春川「そうだ、ついでに訊いておくけど赤松も梨食べる?」

赤松「後で食べようかな。もうちょっとピアノに触っていたいし」

入間「2回も危ない目に合ってんのに懲りねー奴だな」

赤松「ピアノを弾けないくらいなら死んだ方がマシだもん」

春川「…好きにすればいいんじゃない。でも、最原も何かあったみたいだし一応気を付けときなよ」

赤松「最原くん、どうかしたの?」

入間「風呂場で悲鳴上げてたぜ」

春川「そっちには茶柱たちが行ったし近くに東条もいるはずだから、なんにせよ大丈夫だと思うけど」

赤松「そっか、なら安心だね」

○広い座敷の畳に臥した最原が譫言を呟いている。

最原「違う…違うんだ…それでも僕はやってない…」

東条が洗い桶の上で手拭いをきつく絞り、最原の額に乗せる。

東条「取り敢えず、脱衣所に置いてあった服を着せてここまで運んできたけど…一向に起きないわね」

アンジー「特に怪我も無いし直に目を醒ますであろうって、神様が教えてくれたよー」

障子を開けて入間と春川が座敷に入ってくる。

入間「おいおい、最原のヤローはどうしちまったんだ?」

茶柱「転子が懲らしめておきました!」

春川「アンタ、一応アイツを助けに行ったんだよね?」

東条「まぁそういう事情で彼は今寝ているけど、心配には及ばないわ」

夢野「最原もこういう事には慣れているじゃろうからな」

茶柱「赤松さんの様子はどうでしたか?」

入間「ピアノの蓋に指を挟んだんだとよ」

春川「大した怪我じゃなかったし手当しておいたからこっちも大丈夫。それと、梨は後で食べるってさ」

横になる入間。

入間「はー、テレビも無いとかシケてるぜ…」

夢野「電波が届かないからあっても意味がないんじゃろ」

入間「アンテナくらい設置しろよ、マジで」

アンジー「暇ならみんなでゲームしようよー。アンジー、『まーじゃん』やってみたいなー」

東条「アンジーさんは麻雀のルールを知ってるの?」

アンジー「負けた人がイケニエになるんだよねー?」

茶柱「どんなローカルルールですか?!」

アンジー「違うのー?」

春川「私も詳しくはないけど、流石に違うと思う」

東条が荷物から小さな紙製の箱を取り出す。

東条「UNOを持ってきたからみんなでやるといいわ」

入間「んー…こんなのでも無いよりはマシか」

茶柱「東条さんはやらないんですか?」

東条「最原君のために蒲団を用意しないと。それに、まだ掃除が終わっていないのに遊ぶ訳にはいかないもの」

茶柱「そうですか…ではまたの機会に」

東条「依頼として受け取るわ」

座敷を出る東条。


アンジー「早速カードを配るよー」

夢野「んあー、ちと待ってくれんか?トイレに行きたい…」

茶柱「それなら構いませんよ」

入間「あんまり遅いようなら先におっ始めちまうがな」

夢野「ではウチは行ってくるぞ」

○真宮寺邸のどこか。夢野が落ち着き無く周囲を見回しながらうろついている。

夢野「そういえば、トイレがどこにあるか知らんのじゃった……ん?」

ピアノの音に気付く夢野。

夢野「…赤松はトイレの場所を知っているかのう?」


夢野がエントランスホールにやって来ると、赤松は一旦手を止める。

赤松「夢野さん。どうしたの?」

夢野「トイレを探してさ迷っていたのじゃ。赤松、どこにあるか知らんか?」

赤松「うーん、ちょっと分からないや」

夢野「そうか…」

赤松「役に立てなくてごめんね」

夢野「うむ、案ずるでない」

夢野はその場から立ち去ろうとするが、赤松が演奏を再開するとつい足を止めて聞き入ってしまう。

シロ「にゃあ」

いきなりピアノの蓋が閉じる。
1秒あるか無いかというくらいの僅かな間の沈黙と静止を経て、おもむろに赤松が自分の両手を顔に寄せる。その指は噛みちぎられて長さが不揃いになっていた。

赤松「あれ?…無いね」

赤松は心底不思議そうに、短くなった指を動かす。そして右手で鍵盤に触れ演奏を試みるが、当然上手くいかない。

夢野「あ、あ…んあぁ…」

その後ろでは夢野が腰を抜かしてぶるぶる震えている。

シロ「にゃあ」

再びピアノの蓋が閉じる。赤松の右手首から先が食い切られる。彼女の表情が徐々に歪んでいく。

赤松「ひっ…ぅ、あぁ…」

赤松「いやあぁぁぁぁぁ!!」

夢野「んあぁぁぁぁぁ!!」

悲鳴に呼応するかのようにピアノが牙を剥き、赤松の頭にかぶり付く。
夢野は失神して、近くの台とその上の金魚鉢を巻き込んで倒れる。

一旦寝ます。
行数制限が地味にめんどくさい。

○入間が座敷でごろごろ転がっている。端に到達すると反対側に転がるのを繰り返し、何度も往復する。

春川「入間、またぶつかったんだけど」

入間「暇だー…夢野はまだ帰ってこねーのか?」

アンジー「確かに遅いねー」

アンジーはまだ寝ている最原に団扇で風を送っている。

茶柱「もしかして迷っているのでしょうか…」

アンジー「この家は広いからねー」

茶柱「そろそろ探しに行った方がいいのでは?」

春川「せめてもう少し待ちなよ。行き違いになったら元も子も無いし」

アンジー「転子は過保護だなー」

茶柱「友人として真っ当に夢野さんの心配をしているだけです!」

春川「どうする?もうカード配る?」

入間「んー、オレ様はパス。なんか眠くなってきた…」

茶柱「アナタが言い出しっぺみたいなものでしょうに…自由な人ですね」

赤松と夢野の悲鳴が微かに聞こえる。

春川「今、遠くから叫び声みたいなの聞こえなかった?」

アンジー「多分、楓と秘密子だねー」

入間「ふたりしてゴキブリにでもビビってんのか?ここって如何にも出そうな感じだからな」

茶柱「赤松さんと夢野さんはきっと玄関にいるはずです!今すぐ向かいましょう!」

春川「はあ…こうなったら流石に行かなくていいとは言えないか」

アンジー「アンジーは終一のお世話をするからここで待ってるよー」

入間「だったらオレ様も行かねー。ゴキブリ退治なんて天才美人発明家のする事じゃねーし」

春川「まだそうと決まった訳じゃないけど…ま、好きにすれば」

茶柱「転子と春川さんがいれば充分です!では、急ぎましょう!」

言うや否や、茶柱が座敷を飛び出す。春川も後を追う。

○走ってエントランスホールに入ってきた東条が、倒れている夢野を見付けて抱き起こす。

東条「夢野さん、しっかりして!聞こえないの?!夢野さん!」

東条は、夢野が意識を失っている事を知ると、呼吸や脈拍等を確認する。

東条「……眠ってる」

間も無くして茶柱と春川が現れる。

茶柱「ゆ、夢野さん?!」

東条「落ち着いてちょうだい。夢野さんは無事よ」

春川「東条。アンタも悲鳴を聞いてやって来たんだね」

東条「ええ」

茶柱「ところで、赤松さんは?」

東条「少なくとも私は見ていないわ」

春川「赤松、かなりの厄介事に巻き込まれてるっぽいね」

春川はグランドピアノに近付くと、人差し指を鍵盤の蓋に這わせる。

春川「ほら、血が付いてる」

茶柱「赤松さん…こんなに血が出るほどの大怪我をしてしまったんでしょうか」

東条「彼女は何者かに襲われた後、どこかに連れ去られた可能性が高いわね」

茶柱「何者かって一体誰なんですか?!」

春川「パッと思い付くのは強盗ぐらいなものだけど…」

東条「ひとまず夢野さんを安全な場所に移動させましょう。この子が目を醒ませば何か判るかも」

東条が夢野を背負おうとすると、茶柱が慌てて引き止める。

茶柱「あの、夢野さんは転子が…」

東条「それは依頼ね?」

茶柱「はいっ」

○広い座敷。アンジーは最原の隣に寝そべって、彼が目を開けるのを待っている。入間は離れた所で仮眠を取っている。

最原「っ…んん…」

アンジー「おー?」

最原「あかまつさん…?」

アンジー「違うよー、アンジーだよー」

最原「ごめ…ねぼけちゃって」

アンジー「大丈夫ー?ここがどこだか、自分が誰だか判るー?」

最原「…うん、それはさすがに」

起き上がって伸びをする最原。

最原「あれ?アンジーさんと入間さんしかいないの?」

アンジー「んー、ちょっと色々あってねー」

夢野を背負った茶柱と春川が入ってくる。

茶柱「ただいま戻りました!」

アンジー「おかえりー。楓はどうしたのー?」

茶柱「その事で話が─」

夢野「んあー…なんじゃ、騒がしいのう」

茶柱「夢野さん!目を醒ましたんですね!」

夢野「転子よ、人の耳元で大声を出すものではないぞ…」

茶柱が夢野を降ろす。

春川「丁度よかった。ねえ夢野、起きて早々悪いけどエントランスで何があったか教えてくれる?」

一気に夢野の顔が青褪める。

夢野「あ…うぅ…っ」

最原「…赤松さんに、何かあったの?」

夢野「あ、赤松は…ピアノに、頭から食べられて…」

春川「……は?」

最原「あの…僕は真面目に訊いてるんだけど」

夢野「うっ嘘ではない!」

春川「埒が明かないね。最原たちには取り敢えず、私と茶柱が知っている限りの事実を話すよ」

アンジーが立ち上がり、入間の傍に駆け寄る。

アンジー「美兎ー、起きろー」

入間「チッ…んだよ、気持ちよく眠ってたのに」

アンジー「なんかねー、魔姫と転子が大事な話をするんだって」

入間「ったく、下らない内容だったら承知しねーぞ」

カットインで外の景色が挿入される。日が落ち、屋敷は夜の闇に包まれている。
門の外・庭・和風の母屋が順に撮され、最後は最原たちのいる広い座敷。辺りに散っていた彼らは部屋の中央で輪になっている。

入間「強盗って…マジかよ」

夢野「そうではないとさっきから何度も言っているではないか…」

入間「オメーは少し黙ってろ」

アンジー「もしかして、是清も強盗に捕まっちゃったのかなー?」

春川「多分ね」

最原「確かに現時点では強盗が侵入したって考えるのが妥当だと思う。でも、そう断定するには不可解な点があるんだよね」

最原「例えば、犯人が赤松さんだけを襲って夢野さんには何もしなかった点」

茶柱「夢野さんの存在に気付かなかった…なんて事は有り得ませんね。夢野さんは赤松さんとほぼ同時に悲鳴を上げていましたから」

最原「そもそも、どうして犯人が赤松さんを拐ったのか解らないし…」

春川「どうやって連れ去ったかも謎だよね。赤松は相当な大怪我を負ったはずなのに、ピアノとその周辺にしか血痕が残ってなかった」

アンジー「楓、無事だといいんだけどねー」

考え込む一同。

しばらくすると、夢野が落ち付き無く身動ぎだす。

アンジー「秘密子?どうしたー?」

夢野「んあー…トイレに行き損ねていた事をすっかり忘れておったわい」

最原「もしかして、トイレの場所が判らなかったの?」

春川「なかなか帰ってこない上に、なんでエントランスなんかにいるんだろうと思ったら…」

茶柱「でしたら、転子が案内します」

夢野「…うむ。頼んだぞ」

立ち上がる茶柱と夢野。

アンジー「気を付けてねー」

茶柱「ええ、夢野さんは転子が守ります!」

茶柱たちが座敷を出る。

入間「そういや、東条は何してんだ?」

最原「春川さんたちと別れた後また物置に戻って蒲団を探してるって、さっき説明されたよね?」

入間「判ってんだよそんな事は。蒲団引っ張り出すのになんでこんなに時間かかってんだっつーの」

最原「あそこは広い上に雑然としてるからな…」

アンジー「斬美が手間取るなんてよっぽどだねー」

春川「蒲団が見付からないようなら直接畳に寝るって言ったんだけど、聞く耳持たなくってさ」

最原「そういうの、メイドして許せないんだろうね」

アンジー「ま、斬美ならきっと大丈夫だよー」

○物置。東条がハタキをかけながら整理整頓している。

東条「本当に物が多いわね…こんな事なら、蒲団のありかについてもっと詳しく訊いておくんだったわ」

東条「真宮寺くん、一体どこにいるのかしら」

梁に乗ったシロが東条を見下ろしている。

シロ「にゃあ」

東条「?…今、猫の鳴き声が…」

東条に向かって蒲団が飛んでくる。咄嗟に避ける東条。床に落ちた蒲団がもぞもぞと蠢く。東条が後退るとその距離だけ蒲団も躙り寄る。
あれよあれよと言う間に蒲団の大群が東条を包囲してしまう。東条は咄嗟に箒を手に取り、剣のように構える。

東条「妙だとは思っていたけど…この館、やっぱり普通じゃないわね」

東条「でも、化物が相手だろうと関係無いわ。私はこんな所で死ぬ訳にはいかないのだから…!」

蒲団たちが一斉に攻め掛かる。東条が応戦する。

シロ「にぃ」

真宮寺「……」

その様子を梁の上から見ていたシロと真宮寺がそっと立ち去る。
行く先は屋根裏部屋。ひとり用のテーブルと椅子、そしてディナーセットが設えられている。
真宮寺が着席すると、シロはテーブルの上に飛び乗る。

真宮寺「こら、行儀が悪いヨ」

シロ「みゃう」

真宮寺「ちゃんとキミの分も取り分けてあげるから、大人しくしててくれないかな?」

真宮寺はフォークとナイフを持つと、卓上の『女性の腕』に突き立てる。

真宮寺「もうすぐ100人…待っててネ、姉さん」

シロ「なぁご」

○相変わらず最原たちが広い座敷に屯している。

入間「そうか、解ったぞ!オレ様ってばマジ天才!」

最原「解ったって、何が?」

入間「いいから黙って聞きやがれ!これが事件の全貌だ!」

再現VTRスタート。静止画で構成された無声映像に入間のナレーションが入る。

入間『陸の孤島におっ建てられた、やたら大きくて古い屋敷…車椅子の男がひとり暮らし…強盗に目を付けられないはずがなく…』

丘の下から真宮寺邸を見上げる全身黒タイツの男。

入間『そんなこんなで真宮寺の家に強盗が侵入した。が、ヤツにとって都合の悪い事に、このタイミングでオレ様たちが来ちまった』

黒タイツ男が窓から家の中に忍び込む。遠目に入間たちを見付け驚く。物陰に潜んで様子を窺う。

入間『追い詰められた強盗はまず脚の悪い真宮寺を捕まえた。まあ、金庫の番号とかを聞き出すまでは一応生かしてんじゃねーのか?』

車椅子に縛り付けられた真宮寺が地べたに転げている。黒タイツ男が真宮寺を鞭打ち拷問する。

入間『けど、真宮寺以外はそうはいかねー。ヤツはオレ様たちを皆殺しにしようとしたはずだ』

赤松がピアノを弾き、その演奏を夢野が聞いている。ふたりを狙う黒タイツ男。


入間『んで、手始めに弱っちそうな赤松と夢野がふたりきりの所を襲った』

黒タイツ男が赤松に切り掛かる。

入間『肝心なのはここからだ』

入間『ほら、赤松ってオレ様ほどではないにしろそこそこいい身体してんだろ?強盗は気を失って動けない赤松を見て、ついムラっときちまったんだよ』

倒れている赤松の胸のアップ。

入間『我慢出来なくなった強盗は、本来の目当てそっちのけで赤松を犯す事にした』

入間『ただ、目撃されるリスクを考えるとその場でヤれねーから、人目に付かなそうな所へ赤松を運んだんだ。血痕を辿られないようにしっかり止血してな』

強盗が、包帯でぐるぐる巻きにされた赤松を抱き上げる。

入間『どうせ夢野はショックで勝手に気絶したんだろ。強盗はこれ幸いと、ちんちくりんを放置してトンズラしちまった訳だ』

エントランスホールに取り残された夢野。

再現VTR終了。

入間「どうだ、完璧な推理だろ?これならテメーらの疑問も大体解決するしな!」

アンジー「でもでもー、美兎の推理だと秘密子は犯人を目撃してるんだよねー?だったらなんであんな事言ったのかなー?」

入間「ピアノに食われただのほざいてたアレか…気を失ってる時に見た夢と現実がごっちゃになったんじゃねーのか?」

春川「自信満々に言うから何かと思えば…。結局、1番肝心な赤松の居場所については何も分からないんじゃん」

入間「うぐ…でっでも、きっと最原は褒めて─」

入間が周囲を見回して、ようやく最原がいなくなった事に気付く。

入間「……あれ?最原は?」

春川「アンタが縁起でもない事を言い出した辺りで血相変えて飛び出していったよ」

入間「はぁ?こんな時に何考えてんだ!」

アンジー「神様が言うまでもなく美兎のせいだよー」

春川「取り敢えず追い掛ける?走って行った方向からして、エントランスだと思うよ」

○トイレ前で茶柱が四囲を警戒している。
何者かの足音を耳にして反射的に身構える茶柱。音を追った先で走り去る最原の後ろ姿を遠目に見付け、首を傾げる。

茶柱「また何かあったんでしょうか…」

行き掛けの春川が、戻ろうとした茶柱を呼び止める。

春川「茶柱!」

茶柱「春川さん?どうしました?」

春川「細かい説明は後でする。とにかく私たちはエントランスにいるから、用が済んだら夢野を連れて来て」

茶柱「…そうですか、分かりました」

再び駆け出す春川。しばらくするとアンジー、更に遅れて入間が茶柱の目の前を通り過ぎていく。

茶柱「あっ…夢野さんから離れていたら彼女を守れないじゃないですか!転子のうつけもの!」

慌て引き返す茶柱。

時を同じくして……トイレから夢野が出てくる。

夢野「転子?おらんのか?まさか、あやつも…」

入り組んだ廊下を低徊する夢野。その内に物置の近くまで辿り着く。

夢野「なんじゃ?何やら変な音が…」

夢野がガラス戸越しに物置を覗き込む。

東条「ゔぅぅ…こんな、所でっ…」

物置ではぼろぼろになった蒲団たちが羽毛を撒き散らしつつ、裸の東条を揉みくちゃにしている。

夢野「んあぁっ!」

驚いて逃げる夢野。

夢野「転子!転子ぉー!!」

がむしゃらに走る夢野の死角から手が伸び、彼女の腕を掴む。

夢野「んあぁぁぁぁぁ!!」

茶柱「ひゃあぁぁぁぁぁ!!」

夢野「……いや、何かと思えば転子ではないか。人騒がせな奴じゃの」

茶柱「すみません、無我夢中でつい…それで夢野さんの大声に驚いてしまって…」

夢野「そ、それより大変なんじゃ!東条が、蒲団に…蒲団に…!」

茶柱「寝ていたんですか?あの東条さんが?確かにある意味一大事ですね」

夢野「んあー!いいから早く来とくれ!」

夢野が茶柱の手を引き物置へ。

夢野「東条!返事をせんか!東条!」

茶柱「あ、開けますよー…」

物置の中に入るふたり。

茶柱「この蒲団、えらいおんぼろですね。破れて中身が出ちゃってますよ」

夢野「…東条がやったんじゃ」

茶柱「え?またどうして─あ、これ東条さんの服じゃないですか?」

茶柱が羽毛にまみれた黒い布を手に取る。それはずたずたになった東条のエプロンドレスであった。それを見た夢野が泣き崩れる。

夢野「もうダメじゃ…赤松が死んで、東条も死んで…ウチらもこの家に食べられるしかないんじゃ…」

茶柱が夢野を優しく抱き締める。

茶柱「何があっても夢野さんは転子が守ります。…だから、大丈夫ですよ」

夢野「転子…」

書き溜めが尽きました。
寝ます。


○エントランスホール。最原がグランドピアノの側で屈み込み、落ちていた赤松のヘアピンを拾う。それをズボンのポケットに仕舞い立ち上がった所で春川・アンジー・入間が次々やって来る。

アンジー「やっぱりここに来てたんだねー」

入間「何か見付かったか?」

最原「ううん…彼女の居場所の手懸かりになりそうなものは、まだ何も」

最原がピアノの屋根を持ち上げ、切断された女性の手を発見する。

最原「…っ!」

入間「こ、これってまさか赤松の─」

最原「いや、違うよ」

春川「……」

最原「これを見てよ」

最原が女性の手の親指を指し示す。

アンジー「絆創膏だねー?」

最原「うん。だからこの手が、指の怪我に対して過敏な赤松さんのものであるはずがないんだ」

アンジー「じゃあ、この手って誰の手なのー?少なくとも是清ではないよねー」

最原「強盗の誰かじゃないかな。恐らく彼らは複数犯だったんだよ。それできっと仲間割れして─」

春川「赤松のだよ、その手…」

最原「……何、言ってるの」

春川「最原は知らないけど、赤松はピアノの蓋に指を挟んだんだよ。右手の親指…私が手当したの」

入間「あ、それならオレ様も見たぞ!」

最原「でも─」

春川「最原だって本当は気付いてるんでしょ?その手の指の長さ、爪の形、肌の色合い…私でさえ見憶えがあったくらいなのに、況してやアンタに判らない訳が無い」

最原が押し黙る。

アンジー「ね、終一…」

最原「ごめん、ちょっとひとりにしてほしい」

春川「死にたいの?」

最原「そんなんじゃないよ。だから、すぐ戻る」

春川「そういう事なら…ここで待ってる。あんまり遠くに行かないでよ」

最原「うん…」

覚束無い足取りで歩き出す最原。そのまま階段を上がり2階へ。

最原はふらりと2階の寝室に立ち入る。室内はアンティーク調で少女趣味的なおもむきがある。

最原「強盗、ここには来てないみたいだ」

最原「…真宮寺くんのお姉さんが使ってた部屋かな?でも、その割には妙に生活感が…」

ドレッサーに近寄った最原が、台の上の口紅を観察する。

最原「この口紅もやけに奇麗だな。少なくともお姉さんが死んでからずっとそのままにしてある訳じゃなさそうだ」

最原「そうなると、真宮寺くんは態々お姉さんの遺品を引っ張り出して放置した事になるけど─」

ドレッサーの鏡に映る最原の像が揺らいで真宮寺のものに変わる。驚く最原。突如鏡に亀裂が走り、割れ目から赤い液体が流れ落ちる。
どこからともなく真宮寺の声が響き渡る。

真宮寺『おいで…おいで…こっちにおいで…』

瞠目して呆然と立ち尽くす最原。
赤い液体は止めどなく溢れ、白いカーペットを染めていく。

(ふたりも行方知れずになって強盗がいるのかもって話まで出てるのに、みんな普通に泊まる気満々なのって結構アレですね。今更ですが)

○エントランスホールに茶柱と夢野がやって来る。

入間「夢野。ちゃんとトイレに行けたか?またチビってんじゃねーだろうな?」

夢野「んあー、もう大丈夫じゃ」

春川「そろそろ東条とも合流したいね。ひとまず安否を確認したいし」

茶柱「その東条さんなんですが…」

春川「アイツに何かあったの?」

茶柱「ずたずたに切り裂かれた東条さんの服が納屋に落ちていました」

春川「まさかアイツまで…」

夢野「……」

アンジー「秘密子、顔が青いけど気分でも悪いのー?」

入間「こんな状況で気分いい訳ねーだろ」

アンジー「そっかそっかー。でもきっと秘密子の不安は解消されるよー」

入間「具体的な解決策はあんのかよ?」

アンジー「んー…モノクマが助けに来るとかかなー」

イメージ映像。

チープな手描きの花畑を背景に、ドレス姿の夢野がくるくる回っている。
そこに、けたたましい程の足音といななきを振り撒きながら、モノクマを乗せた白馬がやって来る。

モノクマ「秘密子姫、お迎えにあがりました」

夢野「よく来たのう。ウチは嬉しいぞ」

モノクマ「さぁ行きましょう」

白馬は夢野を背中に乗せると再び走り出す。互いを見詰め笑い合うモノクマと夢野。

モノクマ「うぷぷ」

夢野「かっかっか」

白馬「ヒヒヒン」

字幕【THE END】

イメージ映像終了。

夢野「流石にそれは無いじゃろう…色々な意味で」

茶柱「最早ツッコむ気も起こりませんね」

アンジー「これじゃ駄目かー」

入間「駄目に決まってんだろ」

アンジー「じゃあ楓たちを見付けるしかないねー」

茶柱「見付けたくても見付けられないから困ってるんじゃないですか」

アンジー「みんなこの家のどこかにはいるはずだし、頑張って捜せばきっと見付かるってー」

春川「あのさ…こんな事言いたくないけど、生きてる状態で見付かるとは限らないよね?」

アンジー「でもでもー、楓と斬美…ついでに是清の気配をなんとなーく感じるって神様が言ってるんだよねー」

茶柱「気配を感じるなら、彼女らの居所の当たりも付けられるのでは?」

アンジー「そこまでは判んないよー。なんだか直ぐ傍にいるような気もするし、ずっと遠くにいるような気もするんだってー」

入間「つくづく役に立たねー神様だな」

アンジー「とにかく、みんなを見付ければそれでいいんだよねー?そうすれば秘密子はもう怯えなくて済むし、終一だって元気になってくれるよねー?」

アンジー「思い立ったが…えーと、なんて言うのか忘れちゃったけど行ってくるよー」

アンジーは科白を言い終わらない内に駆け出し、エントランスホールを後にする。

春川「は?え、待─」

茶柱「行ってしまいましたね」

わなわなと震える春川。

春川「バカっ…あのバカ!!」

茶柱「怒りの余り春川さんの語彙力が男死小学生レベルに…」

入間「もう放っとけよ。ああなったらアイツに何かあっても自己責任だろ」

春川「いや、今からでも追いかける」

夢野「そ、それならウチも─」

春川「夢野じゃ夜長に追い付けないでしょ。いい?アンタたちは最原と合流したらさっさとここから逃げるんだよ。私も夜長を連れて脱出するから」

春川がその場を去る。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom