日野茜「人命救助です!文香ちゃん!!!」鷺沢文香「ど、どうぞ……?」 (38)



コメディです




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〜事務所〜


テレビ「発達した梅雨前線の影響により--」

塩見周子(んー)ピッ

テレビ「こちらのお店はパフェが有名で--」

周子(なんも面白そうなのやってないなー)ピッ

テレビ「依然として犯人は逃走中と--」

周子(いやあ……)チラッ

窓の外「ザァァァァァ!!!!!!」

周子(これは完全に帰るタイミングを逃しちゃったね……)ガチャ

日野茜「お疲れ様です!!!」

周子「おー、お疲れさまー」

鷺沢文香「周子さん……お疲れ様です……」グッショリ

周子「文香ちゃんもおつか……ってうわー、降られちゃったかー。今タオル持ってくるね」トコトコ

文香「ありがとうございます……」


周子「ちょっと目ぇ瞑っててー」ワシャワシャ

文香「すみません……」

周子「茜ちゃんは濡れてないの?」

茜「はい! 私は最初から傘を持っていたので!」

周子「?」

文香「私が”雨に降られて雨宿りをしている”という呟きをしたので、茜さんが迎えに来てくださったんです」

周子「へー! 偉いね茜ちゃん」ワシャワシャワシャワシャ

茜「く、くすぐったいです……!」

周子「Twit◯erで呟いたの?」

文香「いいえ、口頭です」

周子「ウソやん」


周子「いやいやおかしいでしょ。届くわけないじゃん」

文香「呟いてから2分足らずで来てくださいました」

周子「Twit◯erだとしても早すぎるんだけど」

文香「しかしながら、どうしてわかったのか、教えてくださらないのです……」

茜「えっ、ええと……サイキックです!!!」

周子「無理があるってば」

文香「そんなものはこの世に全く存在しませんからね……」

周子「関係ないとこで誰かの個性が否定された音がしたけど」

茜「ほ、本当にサイキックなんです! 決して”私の仕事終わりの時間と文香ちゃんのお仕事終わりの時間が近かったから文香ちゃんの現場の近くで歩いていれば一緒に帰れるかも”って思ったわけじゃなくて!!!」

周子「いまどきこんなキレイな墓穴の掘り方ある?」


文香「ありがとうございます。茜さん」

茜「は、はいぃ……」

周子「茜ちゃんはいい子だねぇ」

文香「照れます……」

周子「返事する人おかしくない?」

茜「そ、それと……パ、パトロール……みたいな……」ゴニョゴニョ

周子「え?」

文香「パトロール……?」

茜「い、いえ、なんでも……」

テレビ「続いてのニュースです」

周子「あれ、消してなかったっけ。忘れてた忘れてた」

茜「!!!」

文香「?」

周子「どうかした?」

テレビ「先日、◯◯川に転落した少女を命がけで救助した男性の--」

茜「……」キラキラ

周子(なーるほど?)

テレビ「県警は、この勇敢な男性に感謝状を送ることを決定し--」

茜「……」キラキラ

周子(茜ちゃんらしいねえ)

文香(本当ですね……)

周子(あたし喋ってないんだけどなんで返事してるの?)


テレビ「この男性はインタビューに対し『当然のことをしただけです』とコメントしています。続いて--」

茜「かっこいい……!!!」

周子「そういえば昨日からニュースでやってるよね、これ」

文香「茜さん、ニュースも見るのですね……」

周子「ナチュラルに失礼だね」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

周子「なるほど、あのニュースを見て、自分も人助けがしたいって思ったんだ?」

茜「はい!!!」

文香「素晴らしい心がけです……この飴をあげましょう……」スッ

周子(おばあちゃんかな)

茜「ありがとうございます!!!」バリボリバリボリ!!!!!

周子「顎やっば」

文香「その飴は私が持っている中でも最弱……」スッ

茜「ありがとうございます!!!」バリボリバリボリ!!!!!

周子「意に介さない」

文香「とうとう切り札を出す時が……」スッ

周子「遊ばないの」


文香「しかしながら茜さん」

茜「はい!」

文香「一口に人助けと言っても、正しい対処法を知らなくては、被害を広げる結果となってしまうかもしれません……」

茜「そ、そうなんですか!」

周子「んー、まあそうかもね」

茜「ど、どうすればいいのでしょう!?」

周子「いやあ、あたしも別にそういう勉強とかしてないし……」

文香「ですが、そのような知識を身につけることは、決して人生において損になるとは思えません」

周子「……えっと、つまり?」

文香「この機会に、3人で人助けの方法を学ぶのはどうでしょう……?」

茜「いいですねぇ!!!!!」

周子(……あっ巻き込まれた)


文香「では茜さん」

茜「はい!」

文香「あなたは事務所の廊下を歩いています」

茜「はい!」

文香「すると、倒れている周子さんを見つけました」

茜「はい!」

周子「えっ」

文香「周子さん、倒れてください」

周子「えっもう始まってるの?」

文香「演技力の向上にも繋がりますよ」

周子「なんでそんなに文香ちゃんがノリノリなん……」パタリ

文香「茜さん、どうしますか?」

茜「周子ちゃん!!! 元気ですかー!!!!!!」

周子「元気じゃないから倒れてると思うんだけど」

文香「病人は喋らないでください」

周子「理不尽じゃない!?」


文香「ボリュームは考えものですが、まず声かけをすることは正しいですね」

茜「ありがとうございます!!!」

文香「さすが茜さんです……」ナデナデ

茜「えへへ……」テレテレ

周子「いちゃいちゃせんと助けてよ」

文香「病人は喋らないでください」

周子「なんなん!?」


文香「……さて、倒れている周子さんに声かけをしても返事がありませんでした。どうしますか?」

茜「し、周子ちゃん!? 周子ちゃん!!! 大丈夫ですか!!! 返事をしてください!!! お願いです!!!! 周子ちゃん!!! し、周子ちゃーん!!!!!」ユサユサユサユサ

周子「諦めろや!!!!!!!」ガバッ

文香「病人は……」

周子「首もげる寸前だったのに!?」


文香「1度の声かけで反応がなかった場合、諦めた方が無難です」

茜「生まれ変わってもお友達になりましょうね周子ちゃん……!」ナムナム

周子「そこまで諦めろとは言ってないよ」

文香「このような場合に、まずは呼ぶべきものがありますね?」

茜「霊柩車!!!」

周子「完全に亡きものとして扱われてる」

文香「(人間はいつか死んでしまうものです。それまでに背負うであろう数え切れない悲しみや苦しみ……それを経験させない為にもここで人生を終わらせてあげるのが一つの優しさだとすれば……)100点です」

周子「曲解で甘やかすのやめなよ」


文香「ですが今回は、救急車を呼ぶルートで考えてみましょう」

茜「はい!!!」

周子「毎回そのルートの方がいいとしゅーこちゃん思うけどなぁ」

茜「えっと……救急車は……ひゃく……じゅう……」

文香「茜さん」

茜「はい!!!」

文香「もちろんこの場に茜さんしかいない場合は仕方がありませんが、周りに人がいる場合、連絡はその人たちに任せ、茜さんは救命措置を続ける方が効率的ですよ」

茜「な、なるほど! では次に何をすれば……」

文香「次は、呼吸のチェックをしましょう」

茜「息してません!!!」

周子「してるわ」


文香「息はありますね。続いて脈の有無です」

茜「ありません!!!」

周子「あるわ!!」

文香「手首を触ってみる方法が一般的ですね」

茜「し、失礼します!」ピトッ

文香「どうですか?」

茜「肌が白くてとっても綺麗です!!!」

周子(関係ないでしょ)

茜「それに、なんだかいい匂いもします!!!」

周子(それも関係ないし……)

茜「それはそれとしてスタイルがいいです!!!」

周子(も、もういいから……)

文香「お顔も綺麗ですね」

茜「はい!!! あれ!? なんだか脈が早くなってきました!!!」

文香「少し顔が赤いですね」

茜「元気ですか!!!!!」

周子「うっさい!!!!!!!」


周子「み、脈はもういいでしょ! 次!」

文香「こんなに周子さんも積極的になって……」

茜「周子ちゃんも人助けに目覚めたんですね……!」

周子「もうそれでいいから……」

文香「さて、呼吸や脈拍に異常がみられた場合には、胸骨圧迫を開始する必要があります」

茜「きょうこつ……?」

文香「『心臓マッサージ』の方が馴染みがありますか?」

茜「ああ! わかりますわかります!」

文香「実際に周子さんに対してやってみてもよいのですが……」

周子「いやいや、人形にしとこ?」

文香「では、偶然あった衣装用のマネキンを使いましょう。茜さん、心臓マッサージをやってみてください」

茜「わかりました!!! せーのっ!!!!!」ドゴォォォォ!!!!! バキベキバキボキ

周子「マネキンからやばい音した」

文香「死因:心臓マッサージ」カキカキ

周子「救命してよ」


見るも無残なマネキン「……」

周子(一歩間違えたら自分がこうなってたんかな……)ゾクッ

文香「弁償は折半ですね……」

周子「え、あたしも?」

茜「心臓マッサージの後はどうすればいいんですか!!!」

文香「それでも呼吸や意識が戻らない場合は……」

茜「場合は……?」

文香「人工呼吸となります」

茜「!!!」

周子「え」

文香「これも人助けです……」

茜「……ふ、ふつつかものですが!!!!!」ガシィ

周子「え? え? やんないよね?」

文香「しおあか……需要はあるかもしれませんね……」

周子「カップリング的観点から考えてないで!!!」



※人工呼吸は、救助者が訓練をしていないと十分な効果が得られない場合があります。また、人工呼吸用のマウスピースがない場合に、なんらかのウイルスが経口感染する可能性もあります。特に被救助者に吐血がある場合など、判断が難しい場合は胸骨圧迫を続けましょう。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

文香「このあたりで救急が到着するのが最善の流れなのですが、現実はそうならない場合も多いです」

茜「ど、どうすれば!?」

文香「AED……というものをご存知でしょうか……?」

茜「わかりません!!!」

周子(潔い)

文香「詳しい仕組みは私も把握できていませんが、自動で電気ショックを与え、心臓の動きを正常に戻してくれる装置のことです」

茜「すごいです!」

文香「この事務所にも、確か各階に設置してありますね」

茜「私でも使えますか!!!」

文香「……………………………………………………………………はい」

周子「躊躇い」


文香「こちらも、周子さんに対して試すわけにはいきませんね……」

周子「救命の練習で殺されるのは勘弁だからね」

茜「残念です……」

周子「使う機会が来ないといいね」

文香「ともあれ、以上が、倒れている人を見つけた際の手順となります……」

茜「なるほど……! 2人とも、ありがとうございました!!!」

文香「礼には及びませんよ」

周子「まあ……これで茜ちゃんが人助けができるようになったならいっか……」

茜「当然のことをしたまでです!!!」

周子「すでに救助後のインタビューの練習を……!?」


文香「ですが茜さん」

茜「はい!!!」

周子(今更だけど名前呼ばれる度に元気よく返事するのはエラいよね)

文香「世の中に助けるべきは、倒れている人だけですか?」

茜「へ?」

文香「例えば、重い荷物を持ったご老人。身動きが取れない盲目の方や車椅子の方。酔って介抱が必要なパリピなど……」

茜「た、確かに……!」

周子「パリピに限定する必要はあった?」


文香「どんな場合でも、必要なのは思いやりの心です」

茜「思いやりの……」

文香「はい。相手が何を求めているのか、冷静に判断できる大人になりたいものですね……」

茜「……」

文香「……どうかしましたか?」

茜「文香ちゃんはすごいです……私なんて……全然わからなくて……思いつきで動いちゃって……」

文香「……」

周子「茜ちゃん……」

茜「あっ……ご、ごめんなさい! せっかく2人が教えてくれたんですから! が、頑張ります!」

文香「……茜さん。助けを求めている人にとって、最も怖いことはなんだかわかりますか?」

茜「はい?」

文香「わかりますか?」

茜「え……た、助からないこと……?」

文香「いいえ、違います。それは”助けてもらえないこと”です」

茜「ええと……違うんですか?」

文香「はい。助かる、助からないは後の話です。何よりも怖いのは、自分のSOSを誰も受け取ってくれないことです」

茜「……」

文香「もしかしたら確かに、茜さんは適切な処置ができないかもしれません。それでも、茜さんは困っている人を見捨てることはしないはずです。ただ隣にいて、手を握って声をかけ続ける……これだけで救われる人はいるのです」

茜「文香ちゃん……」

文香「茜さんは、ご自身にできる方法で、誰かを助けてあげてください」

茜「はい!!!」

文香「良いお返事です」

周子「……」

周子(いつのまにかいい話になってる……)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

文香「おや……どうやら雨もやんでいるようですね」

茜「本当ですね!」

周子「けっこう話し込んじゃったみたいだね?」

茜「あ……」

文香「?」

茜「せ、せっかくですし、一緒にご飯に行きませんか!」

文香「良い考えだと思います。周子さんはどうですか?」

周子「ま、柄にもなく大きな声出してたらお腹空いちゃったし……しゅーこちゃんも行きましょっか」

茜「じゃあ、また降り出さないうちに!」


〜事務所・正面玄関〜


周子「どこ行こっか?」

文香「私はどこでも構いませんが……」

茜「あっ!!!!!」

周子「うわっ! びっくりした……」

文香「どうかしましたか……?」

茜「あそこ! 誰か倒れてます!!!」ダダダダダ

周子「! 本当だ」タッタッタッ

文香「だ、大丈夫ですか……!?」タッタッタッ

大原みちる「お、お腹が減りました……」コヒュー

周子「なんでやねん」


茜「元気ですか!!!!!」

周子「元気じゃないから倒れてると思うんだけど」

文香「給金の振込前だからでしょうか……」

周子「とりあえず拾って行こうか……茜ちゃん、おんぶできる?」

茜「はい!!!」

みちる「ありがとう……ございます……」フゴフゴ

茜「ああっ! 髪を食べないでください!!!」


周子「急ごっか……」

みちる「ですが……今……持ち合わせが……」

周子「あーもう! しゅーこお姉さんが奢ったるから!」

みちる「ありがとう……ございます……」

文香「いえ、待ってください」

周子「え?」

文香「あそこにも誰か倒れています……!」

周子「こ、今度こそ急病人!?」

茜「だ、大丈夫ですか!!!」

ライラ「うう……ライラさんは……ここまでなのですねー……」グゥゥゥゥゥゥゥ

周子「なんなのこの事務所は!!!」


文香「お仕事はあるはずなのですが……」

周子「茜ちゃんはみちるちゃん乗っけてるし……もう! ほら乗っかって! ご飯食べ行くよ!」

ライラ「ですが……ライラさんはお金がないのでございます……」

周子「奢るから!!!!!」

文香「あ、あそこにも誰か倒れています……!」

周子「勘弁して!!!」

道明寺歌鈴「いたた……またバナナの皮に転んじゃいましたぁ……」

周子「はいはいご飯行くよ!」ガシッ

歌鈴「へっ!? し、周子さん!? 文香さんと茜ちゃんと……えっおんぶしてる!?」ズルズル

文香「周子さんの中で”倒れてる人はとりあえずご飯を食べさせる”という方程式が成り立っていますね……」

歌鈴「な、何が起きてるんでしゅか!?」

茜「元気ですか!!!」

歌鈴「は、はい!!!」


周子「みんなファミレスでいいね!?」←ヤケクソ

みちる「……フゴ」

ライラ「……ですねー」

文香(死屍累々……)

茜「楽しみです!!!」

歌鈴「あっ! だ、誰か倒れてます!」

周子「今度は何!!!」

北条加蓮「あーポテト食べたいなー。誰か今からご飯行く人たちがいたら着いて行くのになー。いないかなー?」チラッチラッ

周子「どこのファミレスにしよっか」

茜「駅前がいいですかね!」

文香「あそこは混むので、駅の反対側の場所がいいかもしれません……」

加蓮「ちょっと」


加蓮「無視は酷くない?」

周子「茜ちゃん、加蓮ちゃんに心臓マッサージしてあげて」

茜「わかりました!!!」

加蓮「え?」

茜「せーのっ!!!!!」ドゴォォォォ!!!!!

加蓮「あっぶなっ!!!」

歌鈴「じ、地面がえぐれてます……」

加蓮「ちょっと! 殺す気!?」

周子「みちるちゃんとライラちゃんの料金を肩代わりしてくれるなら着いてくる許可をあげるよ?」

加蓮「あー、予定を思い出しちゃっ」

文香「茜さん」パチン

茜「加蓮ちゃんも行きましょう!!!」ガシッ

加蓮「うわ力強っ!」ズルズル

茜「みんなでパーティーですね!!!」

周子「人助けは気持ちいいねえ!!!」←ヤケクソ

歌鈴「こ、これはなんなんでしょうか……?」ズルズル

加蓮「諦めるしかないっぽいね」ズルズル

文香(私にも、こんなにたくさんの仲間ができたのですね……)

周子「いい話にしない!!!」



終わり





ありがとうございました。


直近の過去作


神谷奈緒「憎めない常務と春の魅力満載☆どきどきお花見会議……!?」

緒方智絵里「朋さんのパジャマが」白菊ほたる「すごくダサい?」

【モバマスSS】誇れ!なおかれん!

橘ありす「ウエディングプランナーフレデリカ?」


などもよろしくお願いします



このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年06月23日 (土) 20:57:24   ID: 0qsdcnUC

それでもほたるなら……!ほたるなら茜の心臓マッサージに耐えられるはず……!
まぁ…それ以前に心肺停止にならないだろうけど……。

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