あかり「夏休みは学校でいじめられないから嬉しいよぉ」 (43)

 

あかり「ふわぁ……あ、おはようお姉ちゃん

あかね「おはようって……もう3時よ」

あかり「えへへ、あかりお寝坊さんだねぇ」

あかね「……夏休みに入ってからずっとこんな調子じゃない」

あかり「大丈夫だよぉ、宿題だってもう終わらせちゃったし」

あかね「だから、そういうこと言ってるんじゃなくて……」

あかね「とにかく。お姉ちゃん人と会う約束があるから、ちゃんと留守番しててね」

あかり「わかったよぉ」

あかり「…………」

あかり「夜ごはんまで暇だなぁ」

あかり「本でも読もっと」


ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン

「あかりー!! 遊びに来てやったぞー!!


あかり「……はぁ」

京子「いやー涼しいねー、その上にお菓子まで食べられるなんて」

京子「あかりさまさまだね」

あかり「……あはは、これくらいなんでもないよぉ」

京子「お! この漫画読んでもいい?」

あかり「…………うん」

京子「さんきゅー……プッ! この主人公ばかすぎー」ゲラゲラ

あかり「…………」

あかり「そうだ、窓開けて空気入れ替えるね」

京子「えー」

あかり「ごめんねぇ、あかりの部屋湿気が溜まりやすくて」

京子「ふわぁ、喉乾いてきた……って、あ!?」ガチャン

あかり「あ!」

京子「あっちゃあ、ジュースこぼしちゃった」

あかり「…………」

あかり「ほら、京子ちゃん立って。すぐに拭かなきゃ」

京子「いやー、ごめんね」

あかり「……べつにいいよ」

京子「お、そろそろ暗くなってきたから帰らないと」

あかり「そうだねぇ、うちのお母さんたちも帰ってくる頃だろうし」

京子「ああー!!」

あかり「ど、どうしたの?」

京子「そうだよ、あかりに渡すものがあってきたんだ。いやー、すっかり忘れてたよ」

あかり「渡すもの?」

京子「ふっふふ、感謝したまえよ」ゴソゴソ

京子「あったあった。はい、プレゼントだよん!

あかり「……なにこれ、円盤?」

京子「もー、ちがうって。あかりだよぉ」

あかり「……え?」

京子「ほらほら。この丸いのが台座になってて、この上京子ちゃん特性あかりフィギュアが着いてるんだよ」

あかり「えっと、あかりには何もないようにしか見えないけど」

京子「そりゃそうだって、あかりの空気具合を再現してるんだから」

京子「ふふん! よくできてるでしょー」キラキラ

あかり「あ、あはは……」

京子「んじゃ。もう用は無いし帰るねー」

あかり「あはは、気をつけて帰ってね」

京子「あと、今度くるときはオレンジジュースじゃなくてコーラにしてねー」

あかり「ご、ごめんね気が効かなくて」

京子「ま、次から気をつけてくれればいいよ。それじゃあほんとにバイバーイ」



あかり「……」

あかり「ごちそうさまー」

母「あかり、ちょっと待ちなさい。

あかり「どうしたの?」

母「あんた最近だらしないんじゃないの? 毎日昼過ぎまで寝てるってお姉ちゃんがいってたわよ」

あかり「えっと、それは……」

母「それに最近ずっと家の中に引きこもってるみたいだし、たまには友達と遊びなさい」

あかり「友達……」

母「そうよ、京子ちゃんと結衣ちゃんでも誘ってみなさい。昔はよく一緒に遊んでたでしょ」

あかり「……うん」

あかり「……眠れない」

あかり「眠くなるまでテレビでも見てようかな」ピ


『×月○日に遺体で発見された女子高生について、イジメを受けていたという証言が同級生……』


あかり「……」ピ


『社会問題となってるイジメについて本日は専門家の先生を呼んでお話を……』


あかり「……」ピ

あかり「……」

あかり「……友達ってなんなんだろ」

…………
……………………

『グス……ヒグ……いやだよぉ……』

「なぁ、泣くなってばきょうこ」

『うぐっ……だって、あかりちゃが…!』

「きょうこ……」

「ほらさ、あんなの本気で言ったんじゃないって・あかりはどれだけ優しいかはお前だって分かってるだろ」

『でも、でもぉ!』

「きょうこ!」

『ひっ……!?』

「いったん落ち着きなって。私がいるから、ね」

『ゆい……』

『ごめんね……とり乱しちゃって』

「いいって、あかりだってきっとわかってくれるさ」

『……そう、かな』

「私も力を貸すからさ。だからまた頑張ろう」

『うん……ありがとね、ゆい』

『よし! わたし頑張る……あれ、ゆい?』

『ねえ! どこいったの!?』

『ゆい! ゆいぃ……!』


”仲良くするつもりなんてないくせに”


『え……!?』

『あかり……」


…………
………………
……………………

京子「うわぁ!」

京子「はぁ……はぁ」

京子「あれ……夢?」


”仲良くするつもりなんてないくせに”


京子「……どういうことなの」

結衣(私にとって歳納京子という存在は、もう一人の自分とも言えるほどに近しい存在だった)

結衣(物心つくころには、あの泣き虫な少女はそのたどたどしい足取りで私の後をついてきていた)

結衣(いつしか、そんな彼女を守ってあげたいと思う気持ちが大きくなっていく)

結衣(あかりを加えた3人での関係)

結衣(笑顔で笑いあい、野を駆け、手を繋いだ、そんな幼い日々のこと)

結衣(いつまでも、共に笑っていられると思っていた)

結衣(けれど、そうじゃなかったんだ)

結衣(あの日を境に、わたしたち3人の絆には大きなヒビが入ってしまった)

あくしろよ

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン

結衣「京子か……」

京子「やっほーん! 歳納京子ちゃん華麗に参上!」

結衣「はいはい、早くあがれ」

京子「はーい」


京子「それで、結衣のほうから呼ぶなんてめずらしいね」

結衣「あぁ……大事な話があるんだ」

京子「おー、もしかしてそっち系の話?」

結衣「ちゃかすな、真剣なことなんだよ」

京子「……結衣」

結衣「引きのばしてもしょうがないから、単刀直入に言うぞ」

結衣「わたし、転校するんだ」

京子「あ、あれ……転校って。ちょ、ちょっとどういうことなの!?」

結衣「言葉のとおりだ、2学期からは違う学校に通うことになってる」

京子「じょ、冗談になってないってば」

結衣「わかってくれ、京子」

京子「そ、そんなのってないよ!!」

京子「どうして、結衣はずっと私と一緒にいてくれるって言ったじゃん」

京子「なのに、なんで……っ!」

京子「なんだよ、結衣は……結衣だけは私の味方だと思ってたのにぃ」

京子「ウグ……あぁ、うえぇぇぇん」

結衣「なぁ、京子。わたしたちはいつまでも子供じゃいられないんだ」

京子「やだ、いやだ、やだやだやだやだぁ!! ずっとゆいといっしょがいい!」

京子「離れちゃうなんて認めないっ」

結衣「……昔のままなんだな」

結衣「いつもそうやって、嫌なことがあったら泣いて」

結衣「京子。今日はもう一つお前に話がある」

京子「もういい! ゆいのいうことなんか聞きたくない!」

結衣「あかりと向き合え。いつもみたいにふざけた態度じゃなくて、本当のお前で」

京子「ほんとの……わたし」

結衣「そうだ。自分でもわかってるだろ」

結衣「お前は、あかりが恐いんだって」

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