楓「温泉に行こうと思ってます」モバP「……」 (26)



モバP「温泉……」

楓「……」

モバP「旅行ですか?」

楓「ただ、疲れを癒したい。それだけです」

モバP「…………僕は反対です」

ちひろ「…………!」

楓(why……)



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モバP「先日のライブを見ましたが……あなたの疲労はまだ、菜々さんに及びません」

楓「……!」ピク

モバP「今温泉に行きたいという……。それは逃げじゃないですか?」

楓「っ、ちが……」

モバP「まして全国にはもっと疲れてる人がいるかも」

楓「…………」

モバP「とりあえず……あなたは日本一のアイドルになりなさい」


楓「――――――――!!」


モバP「鬼怒川温泉はそれからでは遅くはない」


楓「…………」

モバP「……わかって、いただけましたか?」





楓「……」ダッ!

モバP「あっ、ちょっと! ち、ちひろさん! 捕まえてください!」


楓「嫌です。意地でも温泉に行きます」ムスッ

モバP「わかってくださいよ~、今が大切な時期なんですから」

楓「ずっとそんなこと言ってますよね?」

モバP「いや、まあ。嘘は言ってないですし、ははは……」

楓「私、ずうっとまとまったお休みいただけていないんですけど」

モバP「それは悪いと思ってますよ。でもしょうがないじゃないですか。毎日仕事をもらえるなんて、この業界ではありがたいことなんですよ?」

楓「それはわかってます。私だって、仕事をもらえてわーくわくしてます。でも、流石にそろそろお休みをいただきたいんです」

モバP「ま、まぁ。うーん……」チラッ



ちひろ「……いいんじゃないですか?」



モバP「えっ」

楓「本当ですか!?」

ちひろ「はい! 仕事も大切ですけど、体を壊してしまったら元も子もないですから」

モバP「おかしい、ちひろさんがこんなこと言うなんて……」ボソッ

ちひろ「プロデューサーさん?」

モバP「あ、いえっ、なんでもありません」

ちひろ「……正直、私も疲れてたんですよね。どこかの誰かさんが、毎日のように仕事持ってくるから」

モバP「えっ、僕が悪いんですか」

ちひろ「いえいえ。でも、たまにはいいじゃないですか。頑張ってスケジュール調整してくださいね、プロデューサーさん」

モバP「はあ」


モバP(まぁ……)


楓「やった! それじゃ、2人で予約とっておきますから。久しぶりの温泉、夜のお酒も含めて楽しまないとですね、ふふっ」


モバP(楓さんも凄い喜んでるし、いっか……)


モバP「……ん?」

楓「はい?」

モバP「2人?」

楓「ええ、2人で」

モバP「楓さんと、ちひろさんですか?」

楓「いえ、私とプロデューサーです」

モバP「…………??」

ちひろ「あまり羽目を外しすぎないようにしてくださいね。何か問題が起こったら、結局もっと忙しくなってしまうかもしれませんし」

楓「ええ、私も大人なので、上手く調整します」



モバP「…………????」





楓「それじゃ、乾杯~!」

モバP「え、ええ。乾杯……」


カンッ



楓「んっ……ぷはっ。ああ、やっぱりおいしい。温泉も気持ちよかったし、最高ですね」

モバP「……今更なんですけど、どうして僕まで温泉に来る必要があったんでしょうか?」

楓「え? だって、プロデューサーもお休みだったじゃないですか」

モバP「まぁ、結果だけ言うとそうなんですけど」

楓「だったら、別に不自然なところはありませんよね?」


モバP「そ、そうですかねぇ? 休日に泊りがけでアイドルと温泉に行くプロデューサーって、中々に不自然だと思うんですけど」

楓「まあ、そんな些細なことはいいじゃないですか。飲んでください、グイっと」

モバP「……ちひろさんにも言われましたけど、あまり羽目を外しすぎないでくださいよ?」

楓「ええ、もちろん」

モバP(大丈夫かなあ……)



モバP「……ま、もう来ちゃったんだし、楽しみますか!」ゴクゴク

楓「それでこそプロデューサーです! このオフでビールをしこたま飲んで、羽根がのびーる気分を味わいましょう♪」ゴクゴク


――1時間後――


モバP「それでね、菜々さんに言ってやったんですよ! 『この馬鹿、高校生が酒なんて飲んでいいと思ってるんですか!』って!」

楓「ふふふっ。そういえば、菜々さん765プロの北沢さんのこと、ずっと『沢北さん』だと思っていたらしいですよ」

モバP「あははっ! 阿呆ですね菜々さん! その、ちょっと抜けてる所が魅力的なんですけどね」

楓「そうですねぇ。今日も、私たちが温泉に行くのすごく羨ましがっていました」

モバP「あぁ、そうですか。菜々さんも今忙しいですから。少し落ち着いたら、頑張って休み調整しますよ」

楓「そうですか! じゃあ、私たちは気兼ねなく飲みましょう飲みましょう!」ゴクゴクゴクゴク

モバP「違いねぇ! はっはー!」ゴクゴク


――2時間後――

楓「私、ブラックニッカをカッコよく飲む男性がタイプで」トクトク…

モバP「ちょ、つぎすぎぃ! いや、奇遇ですね。僕もブラックニッカをスルッと飲む女性がタイプなんですよ」

楓「……じゃーんけーんぽん!」

モバP「やったぜ。」

楓「……スルッといきます。……んぷっ、オロロロロロ」

モバP「だっはっはっは!」


モバP「落ち着きました?」

楓「ええ。それにしても……梅酒はうめえっしゅ」ゴクゴク

モバP「ちょ、パック直飲みはまずいですよ!」

楓「ングング…………んぶっ!?」

モバP(あ、止まった)

楓「……ンー……ンー」

モバP「ちょ、ちょっとまって下さいね。すぐに袋を――――」

楓「オロロロロロ」

モバP「だっはっはっは! ちょっと待ってくださいね! ティッシュ持ってきますから!」ゲラゲラ


――3時間後――


モバP「気持ちわりぃ…………」

楓「………………」

モバP「完全に、飲み過ぎ、ました、ね……」

楓「……プロデューサー、私の名前を言ってみてください」

モバP「……え? なんですか……」

楓「ちひろさんはちひろさん…………菜々さんは菜々さんってことです……」

モバP(……何だ……?)

楓「そして私は、私は誰なんでしょう?」

モバP「…………?」

楓「…………飲みます」トクトク……

モバP「……! か、楓さん! それ以上飲んだら――」




楓「はい、私は楓。酒癖の悪い女……」クイッ





楓「オロロロロロロロロロ」





モバP「何してんだこの人……」





チュンチュン


モバP「……おはようございます」

楓「おはよう、ございます」

モバP「調子は……悪そうですね」

楓「プロデューサーだって、顔色最悪ですよ」

モバP「そりゃまぁ、大学生みたいな飲み方したらそうなりますよ。……あー、頭痛い」

楓「私も、かなり……」

モバP「いっつもあんな感じなんですか? 美優さんとか、早苗さんとかと飲んだ時って」

楓「……いえ」

モバP「そりゃそうですよね、毎回あんなんじゃ体持たないですし」


楓「…………あなただから」

モバP「……?」

楓「プロデューサー、だけです。あんな風に、無茶して飲めるの……」



モバP「……そっすか。ま、程々にしてください。このままじゃ、将来結婚した時に旦那さんが苦労しますよ」

楓「…………」






楓「…………どあほう」

モバP「え、何故」

楓「……そういうところですよ」



おわり

読んでいただいてありがとうございました。
僕は小暮が好きです。

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