【ミリマス】女子力が招いた悲劇 (32)

「なるほどっ!」

ここは芸能プロダクション、765プロの所有している専用のライブ劇場

その劇場の控室に元気な声が響く

声の主は高坂海美、三つ編みが可愛らしい元気一杯の可愛らしい765プロのアイドルだ可愛らしい

そんな海美は今、劇場の控室で珍しく女性用週刊誌を読んでいた

使い込まれたのか、微妙によれているその週刊誌の表紙にはデカデカと

「究極の女子力特集!これを身に着ければあなたの女子力にみんなメロメロ!気になるあの人も振り向いてくれるかも!?」

と書かれている

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1511443162

因みにこの雑誌はとある所沢大好きアイドルが置き忘れていったもので、デートスポットや男が喜ぶ事など至る所に付箋が貼られていた

海美「つまり、料理が出来たら女子力が上がる!」

海美は握り拳を作り、顔を上げた

海美「こうしちゃいられない!すぐに美奈子先生に教えて貰わなきゃ!」

ガタッと立ち上がり、雑誌を置いて駆け出す海美

思い立ったら即行動がモットーの彼女らしい素早さだった

しかし

海美「えーっ!美奈子先生今日撮影なの!?」

P「ああ、夜まで掛かるはずだから直帰の予定だぞ」

海美「うーん…どうしよ」

P「美奈子に用事があるなら伝えとくぞ?」

海美「いや、いい!自分で伝える!」

P「わかった、それじゃあ俺は立合に行くから留守番よろしくな」

海美「任せて!」

元気よくプロデューサーを見送った海美は考える

美奈子がいないなら他の人に頼もう

でも料理が出来る人がぱっと思い浮かばない

海美がうーんと唸っていると

「海美ちゃん、どうしたの?」

海美「あ、歌織さん!」

エレガントな23歳のアイドル、桜守歌織が海美に声をかけてきた

海美「実は…」

事情を説明しようとして、海美はある考えに至った

歌織さんは大人の女性→大人の女性は女子力が高い→女子力が高いなら料理も出来るはず!

海美「歌織さん!」

歌織「な、なに?」

海美「私に、料理教えて!」

歌織「えっ」

海美「というわけで、よろしくお願いします!」

歌織「ふふ、よろしくね?」

ジュリア「なんであたしまで…」

不満げに口を開いたのはジュリア

控室でギターを弾いていたところを海美に強制連行された

海美「暇そうだったし、ジュリアも料理出来ないでしょ?」

ジュリア「あたしは無人島で人並みに出来るようになったんだけど」

海美「歌織先生!まずは何するの!?」

ジュリア「聞けよ」

歌織「歌織先生…!うん、まずはよく手を洗いましょう」

海美「その後は!?」

歌織「海美ちゃんは、何を作りたいの?」

海美「なんか女子力高そうなやつ!」

ジュリア「女子力高そうな料理ってなんだ…?」

歌織「それならマドレーヌなんてどうかな?」

海美「マドレーヌ!前に1回作ったことある!」

歌織「なら今回はアレンジしてみない?」

海美「うん!可愛く美味しくアレンジする!」

ジュリア「な、なんだ…急に嫌な予感が」

手を洗い、いよいよ調理に取りかかる海美と歌織

歌織「海美ちゃんは、どういうものが可愛いと思うの?」

海美「ピンク色とか、ハートとか!」

歌織「じゃあ粉に混ぜ込んでみましょう」

海美「うん!」

言うが早いか、手当たり次第にハート型のチョコや桃のペーストをぶち込んでいく海美

ジュリア「ちょ、ちょっと待て海美!ちゃんと分量を」

歌織「見事な手際だわ、海美ちゃん」

ジュリア「えっ!?」

目の前の奇行を褒める歌織に、ジュリアの嫌な予感が更に増していく

ジュリア「な、なあかお姉…かお姉は料理、したことあるんだよな…?」

歌織「もちろん、父に作ってあげたこともあるのよ?」

ジュリア「ちなみに、反応は?」

歌織「それはもう美味しそうに食べてくれてね、でも食べ過ぎちゃったのか何日かお仕事をお休みしていたわね」

ジュリア「ああ…もう駄目だ…お終いだ…」

その後も

海美「砂糖を適量って?」

歌織「思うように入れるってことだと思う」

海美「わかった!」

ジュリア「違う!しかもそれ塩じゃないか!?」

歌織「卵を入れると風味が増すみたい」

海美「わかった!」グシャァ

ジュリア「殻!殻入ってる!」

歌織「後は牛乳を入れて」

海美「うん!」

ジュリア「1パック丸ごと…ああなんかもうどうでもいいや」

歌織「少し混ぜたら焼いて完成」

海美「頑張った-!」

ジュリア「そうだな…」

歌織「海美ちゃんは、このマドレーヌを誰にあげるの?」

海美「プロデューサー!」

歌織「プロデューサーさんに?」

海美「うん!だっていつもお世話になってるし、男の人に手作り料理を振る舞えば女子力アップ間違いなしって雑誌に書いてたから!」

歌織「ふふ、プロデューサーさんきっと喜んでくれると思うわ」

海美「楽しみっ!」

ジュリア「今のうちに逃げろってメールしておくか…?」

歌織「焼き上がったわね」

海美「うん!」

ジュリア「嘘だろ…あれだけ滅茶苦茶だったのに見た目はちゃんとしてる…」

歌織「それじゃあ早速包みましょう」

海美「よーし!」

ジュリア「…なあ海美、かお姉…味見はしないのか…?」

歌織「え?」

海美「味見したらプロデューサーが食べる分減っちゃうよ?」

ジュリア「…そうか…」

ジュリア(プロデューサー、死ぬなよ…)

マドレーヌを袋に詰めた海美と歌織は、プロデューサーに渡すために事務室に向かう

そしてその道中

星梨花「あ、海美さん、歌織さん、ジュリアさん!」

茜「おやおや~?こんなところで何をやっているのかにゃ~?」

哀れな子羊が二人、今最も出会ってはいけない二人に遭遇してしまった

歌織「星梨花ちゃん、茜ちゃん、実は今マドレーヌを作ったのでプロデューサーさんにプレゼントしようと思って」

星梨花「マドレーヌですか?素敵です!」

茜「ほうほう、プロちゃんも幸せ者よなぁ」

海美「あ、そうだ!せっかくだから食べてみる?」

星梨花「良いんですか?」

茜「いただいちゃうよ?茜ちゃんは遠慮なんてせずにいただいちゃうよ?」

歌織「はい、どうぞ」

一つずつ、マドレーヌが手渡される

星梨花「ありがとうございます!」

茜「おー中々美味しそうではないか!これはもしかするともしかしちゃうかもねー!」

海美「感想聞かせてね!」

ジュリア「…」

海美達が去った後、控室に向かった星梨花達は早速貰ったマドレーヌに手をつける

星梨花「美味しそうですね!」

茜「うんうん、これは期待値高いよー!」

星梨花「あ、わたし紅茶を入れますね」

茜「ありがと星梨花ちゃん!」

とても良い香りの紅茶と、マドレーヌが並ぶ

星梨花「では、いただきます」

茜「あむっ」

美咲「プロデューサーさんなら撮影が早く終わったそうなので、もうすぐ帰ってくると思いますよ」

歌織「そうですか、ありがとうございます」

海美「ありがとうみさきち!」

事務室で作業していた劇場事務員、青羽美咲にプロデューサーの状況を聞いた二人

どうやらもうすぐ帰ってくるようだ

美咲「ふふ、でも手作りマドレーヌかぁ…良いなぁ」

歌織「良かったらお一ついかがですか?」

美咲「良いんですか!?よーし、頑張ってお仕事終わらせて食べよう!」

ジュリア「…」

美咲「うーん、美味しそう」

仕事がひと段落した美咲は貰ったマドレーヌをニコニコと眺める

美咲「海美ちゃんと歌織さんが作ったマドレーヌなら絶対美味しいよね♪」

美咲「…うん、今のうちに食べちゃお!」

美咲「あむっ」

海美達が美咲に状況を聞いた30分ほど後のこと

P「思ってたより早く終わったな」

プロデューサーが劇場に帰ってきた

P「後は書類整理終わらせて今日は帰るか…ん?メール、ジュリアからか」

プロデューサーは、メールが来ていたことに気付き、確認する

P「何々…?」

件名も何も書かれていないメール、その本文には

『逃げろ』

とだけ書かれていた

P「逃げろ…?なんだ?誤爆メールか何かかな、珍しい」

もしかしたらジュリアも疲れが溜まっているのかもしれない

一度オフを入れてゆっくり休んで貰おう

そんなことを考えながら一度荷物を置こうと控室の扉を開けると

星梨花「ぴーーーーーーーーーー」

茜「」

異様な光景が広がっていた

P「な、なんだ、何があったんだ!?」

P「星梨花、星梨花!」

星梨花「ぴーーーーーーーーーー」

P「駄目だ…完全にフリーズしている…茜は…完全に息が止まってるな」

怪音を発しながらフリーズしている星梨花と机に突っ伏して死んでいる茜

一体何があったんだ

P「…ん?」

良く見ると突っ伏している茜の指先に、何か文字が書かれていた

かお…

P「顔…?」

恐らくダイイングメッセージなのだろうが、一体何を伝えたかったんだろうか

P「しかし一体誰がこんなことを」

「プロデューサーさん」

後ろから声をかけられて振り返る

…次に気付いた時は、病院のベッドの上だった

結局プロデューサーは数日ほど入院した

入院する羽目になった理由を本当は覚えていないらしい、恐らく身を守るために心が封印したんだろう

バカネも奇跡的に生還したけど、マドレーヌがトラウマになったみたいだ

星梨花はフリーズから再起動した、やっぱり記憶を失っていた

そして今回の事件の主犯格二人はと言うと…

海美「めぐみーめぐみー、この服女子力高くない!?」

恵美「可愛いけど、女子力とは違うと思う」

海美「えー」

歌織「ふふ、料理も出来るようになったし、海美ちゃんの女子力はきっと凄く上がったと思うわ」

海美「やった!」

恵美「へー、海美料理が出来るようになったんだ、今度食べさせてよ」

海美「もちろん!もっと色んな料理を覚えて女子力増幅!」

恵美「女子力って増幅するようなもんだっけ…?まあいいや、楽しみにしてるね」

歌織「海美ちゃん、その時は私も手伝うわね」

海美「ありがとう歌織先生!」

新たなる犠牲者を探して、間違った方向に全速前進していた

尾張名古屋

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