【ミリマス】ジュリア「路地裏のギタリスト」 (27)


出会ったのは汚い路地だった。
地べたに座るそいつは、ボロボロに汚れたギターを一本抱えて歌っていた。


ホームレスに見間違うほどの汚れた服とボサボサの長髪は
目を合わせたくないと思う容姿だった。


昴「どうしたんだ?」

ジュリア「いや……何でもない」




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少し歩いた所で昴に「何か気になってるのか?」と聞かれた。図星だった。


気になるなんてもんじゃない。
魂が共鳴しちまったんだ。
あの人の歌に。


あの場所で歌うホームレスの歌に。
悔しいけれど、マジで。



ジュリア「悪い……そうみたいなんだわ。ちょっと行ってくる」

昴「おー? もう暗いんだから気をつけろよー」




駆け足で戻ると、さっき居た場所にはもう居なかった。
ホームレスみたいな見た目のくせに動きははえーんだな。


もっとこうホームレスってのは特にすることもなく、
その場にずっと居座っているような連中じゃなかったのか? 
あたしの偏見か?


「おかしいな……確かにこの辺だったんだけど」


息を切らしながら、そこら辺を探してみる。
でも特にそれらしき人影は見当たらなかった。
長い溜息をついてから昴の方に戻ることにする。



昴はとっくに帰っていたが。





――。


昴「今日も、何か上手くいかないって感じだったか?」

ジュリア「ああー早くこの意味分からんスランプ抜け出したい」

昴「それよりも何か集中出来てないって感じだったな。困るんだよ。1人じゃないんだぞ?」


ジュリア「ああ、すまん。……で、昨日なんで帰ったんだよ」

昴「はあ? 普通帰るだろ、あの流れは」

ジュリア「ちょっと探しちゃったじゃんか」

昴「ごめんって。で、探しものは見つかったのか?」


首を横に振る。
昴は短く「そっか」とだけ言った。


次の日のレッスンの帰り道、またあたしと昴は2人でいた。
昨日と同じ道を通って。




昴「寒いし暗いし、早く帰ろうぜー」

ジュリア「だな。さっさと帰ろうぜ」


口ではそう言いながらも、
あのホームレスを探していた。

耳はどこかであの音楽が流れていないか
聞き耳を立てていた。


昴の話なんて聞かずに。


昴「――聞いてんのか? おいってば」

ジュリア「おー……あ、すまん」



そして、見つけてしまった。



そのホームレスのおっさんは今日も居た。
昨日駆け足で戻ってきた時は居なかったのに。


今日もボサボサの髪の毛に、汚れた服。
汚いギターを抱えて歌っていた。


歌っている歌は……オリジナルか?
聞いたこと無い歌だ。


あたしは吸い込まれるようにホームレスの方に歩いて行く。



ジュリア「昴、この曲、知ってるか?」

昴「ん? ……いや、分かんない」


そうじゃない。
知ってる曲だったらあんなに気にならない。


知らない曲で、自分の魂と共感したからこそ気になったんだ。
この曲はどういう過程で生まれ、
どういう心境の元で描かれ、
どんな生活をした人が歌うのか。


気になって、仕方がないんだ。





あたし達2人は、昴は付き合わせたが、
そいつの一曲を終わるまで待っていた。


聞けば聞くほど惚れる歌だ。


別に歌声が言い訳じゃない。
ギターが神がかって上手いわけじゃない。
でも、それでも聞いてしまうんだ。


曲がやっと終わる。


ずっと聞いていたい気持ちが溢れていたが、
近寄りがたい風貌のその男に近づいていって聞いた。





ジュリア「あの、その曲ってオリジナルですか?」

「……。ああ、そうだが」


少し疎ましく思ったのか、
あたしのことを見てから目を逸らした。


ジュリア「すごい、なんていうか、本当にあたしの魂に響いたんだ」

「響いて……、どうだった?」





ジュリア「どう? あたしもあんたみたいな曲を作って皆の前で歌いたいって思った」

「……歌える場所を持っているのか。それは羨ましいな」


そう言うホームレスは別に羨ましくなんてなさそうだった。
自分にはここで十分だという顔をして、満足そうな顔をしていた。


ジュリア「あんたはなんでここで歌ってるんだ?」




「……さあな。気持ちが良いからだ」

ジュリア「あたしもあんたの曲を聞いて、すごく気持ちが良かった」

「そうか。それは良かった。昔、死んだ友人が作った曲だ。そいつも浮かばれる」



ホームレスは少し俯きながら、ギターを片付けはじめる。
手を動かしながら、こっちを振り向いて言った。





「君もギターやるんだろう? これ、あげるよ」

ジュリア「ピック? いや、いらねーけど」

「ふっ、それもそうだな。ギター、大事にしなさい」

ジュリア「ん? ああ」


ホームレスのおっさんは、寂しそうな顔をした。
やっぱり受け取ってやれば良かったかな、と少しだけ後悔した。




さっきこいつは死んだ友人が作った曲だと言っていた。
……こいつもいつかどこかで音楽をやる仲間が一緒にいたんだな。


でも今は、こいつ1人になっちまった。


寂しそうだからとか、あたしの自己満足だからとか、そういうんじゃない。
純粋にこいつと音楽をやったらどうなるのかが気になる。


もう一度、こいつにだって夢を見る権利はあるはずだ。




ジュリア「あのさあオッサン」

昴「ジュリア。それ以上は」


あたしの肩を掴み首を振る昴。
そうか。昴は怖いんだな。


昴は顔を少し青くして、
あたしの肩を掴む手は震えていた。


こんな風貌のおっさんをいきなり勧誘するなんて、
確かにちょっとどうかしてるのかもしれない。


でもこいつみたいに、こんないい音楽を作れる奴が怪しい奴なわけないじゃないか。




ジュリア「昴、大丈夫だ。このオッサンみたいに良い曲作る奴に悪いヤツはいねえって」


それでも昴は首を振る。
「そうじゃない」と言った。


じゃあ何が不満なんだ。ホームレスだからか?
こんな身なりだからか?




音楽を始めていいのは身なりの整った人間だけしかできないのか?
違うだろ。


誰が始めたって音を楽しめば音楽になるんだ。
それがギターだろうが、ドラムだろうが、ゴミ箱の蓋を叩く音だろうが、
手拍子だろうが、口笛だろうが、関係ない。



ジュリア「頼むよ、少し交渉してみるだけだって」

昴「違うんだよジュリア」







昴「お前、さっきから誰と話てんだ……!?」



ジュリア「は?」







振り返るとまだギターの片付けをしているだろうと思っていた
あのホームレスのおっさんはどこにも居なかった。



ジュリア「……は!? 違っ、居たんだよ!」

昴「……そこには最初から誰も居なかったよ」




ジュリア「曲は!? 聞いただろ!?」

昴「オレはジュリアが何を言ってるのか分からないって答えただけだ」



後ずさりするあたしは昴の少し青ざめた顔を見る。
やめろよ。そんな顔で見るなよ。


やめてくれよ。頼むから。




そんな中、手がポケットに辺り、中に違和感を感じた。
あたしはすぐに上着のポケットに手を突っ込み中を探る。



ジュリア「……オッサンの持ってたピックだ、これ」

昴「……ジュリアのピックでそんなのは初めて見た。言っちゃ悪いが何かだっせえな」



ピンクに金の文字で「GO FOR IT」(頑張れ)
その裏面には緑と赤で「Merry Xmas」と派手に書かれていた。




だいたいの事情を話すと昴は



昴「ははーん、なるほど。そりゃきっとギターの神様だな」

ジュリア「マジかよ。キツいセンスしてんなぁ」


どういう訳か、
あたしはこの日からスランプは抜け出せたみたいだった。


終わり



小学生の作文みたいですいませんでした。
オチも適当でごめんなさい。
愛美さんもお誕生日おめでとうございます。
ハッピーメリークリスマス。

終盤ゾッとした、ジュリアこういう体験と縁あるな.......
乙です

>>1
ジュリア(16) Vo
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永吉昴(15) Da
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