【ガルパン】好きな食べ物の、二人の話。 (19)

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【エリカ編】

私の好きな食べ物は、アイアシェッケという事にしている。
ちなみにアイアシェッケとは、ドイツの地方菓子で、簡単に言えば四角いチーズケーキ。

実際に食べた事は一度も無い。

何故こんな事をしているのか、端的に言えば本当の好きな食べ物を隠すため。
本当の好きな食べ物を知られて、周囲からの自分のイメージが変わる事を恐れているため。

その恐れの一端を担っているのが、我らが隊長、西住まほ。
隊長は雑誌のインタビューで、好きな食べ物ははカレーですと答えた瞬間から一気にカレーのイメージが広まってしまった。
今では戦車道に興味が無い層にも、カレーの人として覚えられている節がある。

まさにそれは、私が恐れている状況そのもの。

当の隊長は、結果的に戦車道の認知度向上に繋がるなら良い事じゃないかと受け止めているようだ。
そんな強さはたぶん、私には無い。

ある日の訓練の帰り、隊長に呼び止められた。
話があるので一緒に帰ろう、と。

まあ帰る先が同じ寮なので珍しい事でもない。
話というのも、今日の訓練の感触や成果についての意見交換などがいつもの流れ。
私は一緒に帰りましょうなどと積極的に誘ったりするタイプではないから、自然と隊長の方から誘う事が多くなる。
それが申し訳なくもあり、嬉しくもあり。
隊長は意見交換がしたいだけなのだと分かっていても、嬉しい。

案の定、話は今日の訓練のおさらい的な内容だった。
互いの感想や、他の隊員の様子など、今日感じた事を語り合い、次の訓練にどう活かすかの相談。
こういう地道な行為が強豪校を強豪校たらしめているのかと思うと身が引き締まる思いだ。
今まさに、黒森峰を強くしているのだという実感が湧く。

今日は少し話が長引いたので、部屋に寄っていけという事になった。

隊長の部屋は簡素だ。
簡素ではあるものの、いわゆる生活感の無い部屋とも違う。
本の並べ方や洗濯物の畳み方、そんな所々に几帳面な隊長らしさが垣間見える。
簡素で、落ち着く部屋だ。

その中で、珍しく机の上に置きっ放しになっている本が目に留まった。
へえ、恋愛小説とか読むんだ。

私の視線の先に気が付いた隊長が、それは借り物でな、と気恥ずかしそうに説明した。
その瞬間、隊長が隊長としてではなく、西住まほとしての顔を覗かせたように見えた。

考えてみれば隊長は私と学年がひとつしか違わない女子だ。
恋愛小説も読むだろうし、それを見られて恥ずかしがったりもする。
少しだけ、隊長が身近に思えた。

いや、元々身近ではある。
隊長と副隊長という間柄なのだから遠くはない、はず。
だけど普段、私にとって隊長は遠いのか近いのかよくわからない存在。
物理的に近いだけという気もする。

でも今は、近い。
確実に近い。
何となく、そう思えた。

今なら訊ける気がする。
思い切って、日頃疑問に思っていた事を訊いてみた。

隊長って本当にカレーが好きなんですか、と。

長いような、短いような沈黙があった。
それもその筈で、私の質問にはあまりにも脈絡が無かった。
どころか、そもそも私がここに居るのは訓練についての意見交換をするためであって、雑談をするためではない。

しまった、どうしよう、と思考を巡らせていると、不意に隊長が吹き出した。
思い詰めたような顔をして何を言い出すかと思えば、と言って隊長は暫く笑っていた。
私は相当に真剣な顔をしていたらしい。
どうやら怒ってはいないらしく、ほっと胸を撫で下ろした。

隊長は尚も笑いを噛み殺したような顔で、その話はカレーを食べながらするのがいいなと言って、台所に行ってしまった。
辞退できそうな雰囲気ではないので、ご馳走になる事にした。
なんだかんだで、私の疑問にも答えてくれるらしいし。
結構、ウキウキする。

けれど、それも束の間。
私はこれまでに無いほどの緊張を味わう事になる。
隊長も私に対して以前からの疑問があったらしく、それをぶつけて来た。

折角だから、お前のアイアシェッケの話も聞かせてくれ、と。

【エリカ編終了】

【まほ編】

とある雑誌のインタビューの中で、好きな食べ物を訊かれた。
私にはこれといった好きな食べ物が無かったのだが、特に無いですと答えるのが嫌で咄嗟にカレーと答えた。

それ以来、私の好物はカレーという事になった。

まあ、それが切っ掛けで嬉しい出来事もあったので、結果的にカレーは私にとって思い出の食べ物になっている。
つまり美味しいからではなく、思い出の食べ物として好きなのだ。

しかし、それが世間に伝わる事は無い。
記事になった時点では、咄嗟に答えたという以外の理由は無かったのだから。
西住まほ選手の好きな食べ物はカレーと記事に書いてあれば、書いてある通りにしか伝わらない。

勿論、エリカも例外ではない。

しかし、エリカのように毎日会う間柄であれば気が付く違和感もあるのだろう。
エリカは、私が本当にカレー好きなのか疑問を持っていたという。

黙っているつもりは無かった。
語る機会が無かっただけだ。

だが不意に、その機会が訪れた。
訓練後の意見交換が長引き、寮の私の部屋にエリカを招いた日。
エリカが突然、思い詰めたような顔をして切り出してきた。

隊長って本当にカレーが好きなんですか、と。

その直前まで、机の上にあった借り物の恋愛小説について話していたというのに。
その流れを丸ごと無視して、カレーの話である。
よほど訊きたくて仕方がなかったのだと思う。

エリカは堅い。
私などに言われたくはないだろうが、本当に堅い。

どうしても、元副隊長の妹と比べるような物言いになってしまうからエリカには言えない。
だが、私が堅物の見本のような女だからこそ、その補佐である副隊長にはもう少し緩くあって欲しい。
そんな願いの一端が通じたような気がした。

だから、思わず笑ってしまった。
副隊長としてではなく、逸見エリカとして質問をぶつけて来たような気がして、それが嬉しかった。

質問には答えなくてはならない。
しかし時計を見れば、長い話を始めるには遅い時間。
エリカに夕飯でも振る舞おうかと考えていると、買い置きのレトルトカレーがあった事を思い出した。

誂えたような状況に、また笑いがこみ上げた。

しかし、レトルトカレーだけでは寂しい。
カレーの湯煎をしている間、何か無いかと冷蔵庫を物色する。
エリカの好物でもあれば良かったのだが。

とは言え、私はエリカの好物のアイアシェッケとやらについて何も知らない。

訊いてみたいとは思っていたが、タイミングが無かった。
エリカとは日頃、戦車道の話ばかりしている。
毎日会うから身近だとは思っているが、実際はどうなのだろう。
考えてみると、近いのか遠いのかよく分からない。

だが、今は近い。
確実に近い。
今なら訊けるのではないか。

折角だから、お前のアイアシェッケの話も聞かせてくれ、と。

そう言ってエリカの方に向き直ると、妙に引き攣ったような顔をしている。
何だろう、まずい事を訊いてしまったのだろうか。

そうこうしている間に、カレーの湯煎が終わった。
カレーに載せてやろうと、遅れて鍋に放り込んだレトルトのハンバーグの湯煎ももうすぐ終わる。

エリカは、ハンバーグは好きだろうか。
楽しい夕飯になれば良いのだが。

【まほ編終了】

以上です

お付き合いありがとうございました


まほ「エリカ、顔が引きつっているぞ、どうしたんだ?」

エリカ「………」ダラダラ

こうですね

乙ー

ありがとうございます

会話ものも書いてみたいですが
どうにも独白形式の方が書きやすくて

会話形式は単純に言葉の掛け合いって感じで書いちゃって良いと思いますよ

深く考えずに気楽に書くくらいの感覚で

ただ長編を書くと前の内容を忘れてたりして変になったりすることはある

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