【ミリマス】福田のり子と下劣系女性P (17)

・某所に投稿したものです。
・エロくはないですが、下ネタ多めです。
・初投稿なので至らぬ点もあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。



 アタシの名前は福田のり子。格闘技とバイクと焼肉をこよなく愛す、ごくごくフツーのアイドルだ。

 元々、アタシは元気だけが取り柄のどこにでもいるような女の子だった。例えるなら、格闘技の試合を傍から眺めているだけ観客N。……もちろん、それだけでも楽しかったんだけどね。でも、そんなアタシをこの世界――スポットライトが降り注ぐ、華やかなリングの上に引き上げてくれる手があった。

「福田のり子さん。あなた、アイドルやってみない?」

 その言葉は今でも覚えている。プロレスの試合を見に行って、テンションが上がって、たまたま隣の席に座っていた女性と意気投合して、彼女と試合後に一緒に行ったファミレスで言われた台詞。笑顔で放たれたそれは、優しくて、力強くて、そして固い決意を秘めた声で……まるで強力な一撃を食らったみたいに、ガーンとアタシの脳天に響いた。

 アイドル? アタシが? 
 
 そんな風に、当然アタシは戸惑った。だってそういうのはもっと女の子女の子した子――例えば、TVで見た天海春香みたいな――しかなれないと思ってたから。……もしくは菊地真みたいにとびっきりカッコいい子か。だからアタシにアイドルなんてできっこない。別に可愛くもないし、ガサツだし、男みたいな好みしてるし、だからといってイケメンではないし。スタイルは……まあ、悪くないとは思うけどさ。

 それをそのまま伝えたら、その人はこう言った。
「アイドルは可愛くなくちゃいけないとか、女の子らしい趣味を持ってなくちゃいけないとか、誰がそんなこと決めたの? そういうバカげた常識は、貴女がぶっ壊せばいい」

 ――常識を、ぶっ壊す。

 ドクン、って、血がたぎるのが分かった。そんな言い方、ズルい。そんなこと言われたら、アタシもう燃えるしかないじゃん。
 アタシの眼に灯った炎を見て、その人は満足げにうなずき、それからアタシに向かってぐっと拳を突き出した。アタシも、拳を握り返してそれにぶつけた。……ちょっと力が入り過ぎて、ぶつけた時に痛かったのはここだけの話。

「いいね、いい笑顔」
 どうやら相手も痛かったようで、拳を離した後手をぶらぶらと振っていた。そしてにっと白い歯を見せて笑うと、アタシの目を真っ直ぐ見据えてこう言った。
「福田のり子さん――いや、のり子。アイドルの世界へようこそ!」

「あー、のり子の新衣装シコリティ高いわー。心のおちんぽが勃起しちゃう」
 ……という、セピア色の美しき記憶を遡っていたら、唐突にそんな下品なワードがアタシの耳に飛び込んできた。記憶の中と同じ声で。

 場所は昼下がりの事務所。小鳥さんや他のアイドルたちは皆出払っていて、室内にアタシとその人以外の人影はない。

「おっぱいとか北半球が見えちゃってるし、いったいこの衣装で世の男性諸君の子種を何リットル搾り取るのやら……ぐへへ」
 お願いだからアタシの素敵な思い出を汚さないでよ……。アタシは大きなため息をついて、ソファーから身を起こし、その気持ち悪い笑みを浮かべる変態――アタシのプロデューサーに視線をよこした。

「……うるさいよ」
「あ、のり子起きてたの?」
 おはよー、とプロデューサーがアタシにウィンクを一つ送る。なまじその仕草がサマになり過ぎているだけに、返って彼女の残念美人さを際立つ。全く、つくづくこの人は……。

 ――――アタシのプロデューサーは女の人で、しかもとびっきりの美人さんだ。日本人離れした整った目鼻立ちと艶やかな黒髪のロングヘアー。身長は貴音やあずささんと文字通り肩を並べるほど高くて、しかも二人に比べるとどちらかといえばすらっとしていてスレンダーなタイプだから、タイトなスーツがとてもよく似合う。あまりに綺麗すぎて、初めて会う相手には大抵アイドルと間違えられるくらいだ。
 そして、そのいかにも「デキる女」って感じの見た目通り、本当に仕事に関してめちゃくちゃ有能なんだからすごい。デスクワークに営業、イベントやライブの企画はもちろんのこと、衣装のデザインや振付の考案、さらには私たちの歌の作詞や作曲にまで携わっているんだとか。噂によれば、彼女は某名門国立大学を首席で卒業したらしいけど、これだけ何でもできるとそう言われても納得してしまう。

 そんなすごい人がなんで、よりにもよってアタシの前でだけああなのか……。他のアイドルや仕事相手の前では見た目通りの丁寧かつ穏やかな口調だって言うのに。アタシの記憶が正しければ、出会ってしばらくはアタシに対してもそういう感じで接してくれていた。だからアタシもその間はプロデューサーに尊敬と憧れの眼差しを向けていた。それがいつからだか徐々に本性を現し始め、今やこの始末……ほんと、なんでなんだろうなぁ。
 
「随分と不機嫌そうに見えるけど、どうしたの? あの日?」
「違うよ!」
 一体誰のせいだと……! アタシは精いっぱいの恨みを込めてプロデューサーを睨んだ。
「もー、そんな目で見ないでよ! 冗談だってば……生理はもうちょっと先だもんね」
「なんで知ってるの!?」

 ほんっっと、なんでなんだろうなぁ…………。


□   ◆   □

『のり子』
「なに?」
『ムラムラする』
「あっそう」
『冷たくなーい?』
「いきなりラインしてきたと思ったら二言目に変な報告されたアタシの身にもなって」
『いいじゃん、減るものじゃないし』
「アタシの貴重なオフの時間が減る」
『何かしてた?』
「雑誌読んでた」
「プロレスのやつ」
『エッチな雑誌?』
『あ、なんだ違うのか』
「そう言われると思って先手を打っておいた」
『さすがのり子、私がみそめたアイドルなだけある』
「褒めても何も出ないよ」
『えー』
『のり子のエッチな自撮り画像欲しい』
「は?」
『まんまんだと嬉しいけど、ぱいぱいでも可』
「何言ってるのこの人」
『あ、もしかして私が先に送った方がいい?』
「いらない」
『ちょっと待ってて、今脱ぐ』
「やめて」

「ねぇ」

「ちょっと、本当に脱いでるの?」
『あ、ごめん、書類仕事してた』
「は?」
『期待しちゃった?』(ニヤニヤ笑う猫のスタンプ)
「殴りたい」
『だめよ、アイドルがそんなこと言っちゃ』
「そのアイドルにエロ写メを要求するプロデューサーはもっとだめだと思うんだけど」
『それな』
「殴りたい」

「で、結局のり子のグラビアでオナりました」
「……」
「気持ちよかったです」
「……」

 朝、出社するなりプロデューサーの性生活の報告を受ける私は、一応アイドルのはずだ。

「ほら、視覚的なエロスはもちろんあるんだけどさ、自分の担当アイドルをオカズにしてるっていう背徳感がまた…………ん? どうかした?」
「……いや、ナンデモナイヨ」
 だめだ、福田のり子。拳を固めてはいけない。
 引きつった笑みでぎこちなく答え、アタシは必死に手だけは出すまいと自分を抑え込んだ。

「で、のり子は昨日オナニーした? プロデューサーとして、アイドルのオナニー事情はきっちりと把握……あいたっ」
 思わずデコピンを放ってしまった。……まぁ、出たのは手じゃなくて指だからセーフってことで。

「痛いじゃないの」
「いや、プロデューサーが変なこと聞くからだよ!」
 心外だと言わんばかりのプロデューサーの表情が腹立たしく、アタシは彼女をおもいっきり睨みつけた。

「ちょっと、そんな目で見ないでちょうだい。興奮して濡れちゃうわ」
「変態だ!」
「あぁ、今の罵倒もたまらないわ……録音していい?」
「お断りだよ!」
「じゃあ今ここでオナニー始めるけど、それでもいい?」
「どういう脅迫!?」

 そんな疲れるやりとりをしていると、ふとプロデューサーの表情がおふざけモードから真面目モードに変化した。

「――――とまぁ、冗談はここまでにして、真面目な話」
「!」
 アタシもまた、自然と真面目になって彼女の話に耳を傾ける。

「のり子はストレスが溜まっても、運動したりプロレスの動画を見たりして、うまく発散できるでしょう?」
「……まぁ、そうだね」
「それは確かに、ストレスの発散法としては極めて健全でいいものだと思うわ。ただ――」
 プロデューサーが少し前のめりになる。つられて、アタシも上半身を前に傾けた。

「そうやって『健全』にストレスの発散ばかりしてしまうと、今度は性的なものごとに関する知識や耐性がつかず、あとあと大変になってしまうのよ」
「っ、」
「普通の子はね、ストレス発散とか、性的な興味とか、そういう目的で自慰行為を行う中で性的に成長していくものなのだけど、あなたの場合はその成長が著しく遅れてしまっているんじゃないかって、私は心配しているの」
「……」
「だから、あなたの性生活について、あなたのプロデューサーとして――――仲間として、把握しておきたいのよ」
「……そっか」
 なるほど。プロデューサーの考えはよく分かった。

「……で、本音は?」
「のり子のオナニーをオカズにオナニーしたい……あいたっ」
 ぱこっ、という小気味よい音と共に2発目のデコピンが決まった。
「痛いじゃないの」
「真面目に聞いてた時間を返して!」
 部分的に赤くなった額をさすりながら、プロデューサーはまたも不満げな表情を浮かべた。

 これからは真面目モードのプロデューサーも要警戒だな……。


□   ◆   □

『あなたはあなたの好きなようにやればいいわ。それをサポートするのが私たちの役目だもの』
「?」
『あ、ごめん間違えた』
「別にいいけど、誰あて?」
『ロコ。自分の個性がみんなに受け入れられるのかなってちょっとナーバスになってたから』
「あーなるほどね」
『アナル?』
「うるさい」
『ま、そういうことだから、あなたもロコのフォローとかよろしくね』
「ん、わかった」
「ていうか、他のアイドルにはちゃんと真面目な話してるんだね」
『もちろん』
「なんでアタシの時だけこうなの?」
『あなたがト・ク・ベ・ツだから❤』
「普通がよかった……」
『またまたぁ、ほんとは嬉しいくせに』
「ない」
「断じて」
「ない」
『でもさ、正直ロコも割と気になる』
「は?」
『女の悦びを知った時に、果たしてあのロコ語が出てくるのか……』
「最低だこの人」
「というか、ロコまだ15歳だからね?」
「手を出したら犯罪だよ」
『つまり18歳なら手を出していいと?』
「法律が許してもアタシが許さない」
『ケチ』
「ケチじゃない」
『ケツ』
「は?」
『のり子のケツ』
『揉みしだきたい』
「自分のでも揉んでればいいじゃん」
『あのね、のり子。あなたは喉が渇いてる人に「唾でも飲めば?」って言うの?』
『つまり、そういうこと』
「どういうこと?」
「しかも、よそ様のアイドルの台詞パクッてるし……」
『まぁ』
『早い話』
『エロ写メください』

□   ◆   □

 既読無視してやった。

短いですが、ひとまず以上になります。
ありがとうございました。

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