仙崎恵磨「頭ワシワシ」 (39)


……LIVE会場……


恵磨「うっひゃー!! 疲れたー!!」

P「お疲れ様です」

恵磨「どーよプロデューサー! この会場の沸きっぷり!」

P「ええ……裏方でも十二分に伝わりますよ。出来ることなら、あのオーディエンスに混じって恵磨さんのライブを見たかった」

恵磨「それはダメかな! プロデューサーにはここで頑張ってもらわないとさ?」

P「ですね」フフッ


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アンコール!! アンコール!!

恵磨「っと、アンコールだ!」

P「着替えと水分補給を済ませ次第、もう一度ステージに上がりましょう。長い間待たせると熱が覚めてしまいますから」

恵磨「だな! よーしっ、ちょっくら着替えてくるぜっ!!」ダッ

P「あっ、裏は狭くて暗いから気をつけてください!配線もたくさん……」

恵磨「ダイジョーブ! 慣れてるから!!」タッタッタッ

P「……やれやれ、猫か天狗のような動きで……お願いですから転んで怪我はしないでくださいよ」

恵磨「おまたせーっ!!」ババッ

P「ちょっ、幾らなんでも早くないですか?」

恵磨「休憩なんて、ぱぱーっと着替えて、ちゃちゃっとエネルギー補充して、終わりっ!!」

P「全くもう……他のアーティストがアンコールに応える時間の半分も経ってないじゃないですか」

恵磨「早く歌って踊りたいじゃん!」

P「……行けるんですね?」

恵磨「モチロン!!」

P「わかりました。ぶっ倒れないように、全力のパフォーマンスをかましてきてください」

恵磨「まっかせろ! できるだけ倒れないからさっ!」

P「できるだけ、ですか……」フゥ…

恵磨「あ、そうだプロデューサー!」

P「なんですか?」

恵磨「あれやってよ、あれ!」

P「…………あれ?」

恵磨「頭ワシワシーってするやつ! 前のイベントの時もやってくれたじゃん?」

P「ワシワシ……ああ、そう言えば」

恵磨「あれで気合注入して! ステージでアタシが100%出し切った後も帰ってこられるように、101%目をちょうだい!」

P「……いいですよ。これが恵磨さんを支えられるならいくらでもっ!」ガシッ

恵磨「うおっ、思い切りいいなプロデュ」

P「そぉれっ!!」ワシワシワシワシ

恵磨「うおおおおおっ!?」

P「絶対にステージ上で倒れないでくださいよ!! 本当に心配なんですから!!」ワシワシワシワシ

恵磨「わ、わかってるって!」

P「本当ですか!?」ワシワシワシワシ

恵磨「ほ、ホントホント!! ちゃんと自分の足で歩いて袖まで戻ってくるから!!」

P「……はい、約束ですよ」パッ

恵磨「あー、びっくりした……でも!気合い入った!!」

P「それはよかった」

恵磨「よぅし、頑張るぞーっ!!」



恵磨「イェーイ!! みんなおまたせーっ!! あんなにでっかいアンコール……嬉しかったぜぇーっ!! サンキューッ!!」


ワァアアアアアアアア!!

……数日後……


恵磨「いやー、この間のライブは最高だった! みんなの腕が波みたいになっててさー……」

沙紀「演者の醍醐味っすよね、あの輝いた光景を見れるのは」

恵磨「もーぶっ倒れるくらいに声張った! 次の日のことなんて考えてなかったね!」

沙紀「いつだってエマは全力っすからね。もうステージで気を失いそうなくらい」

恵磨「あ、でもステージで倒れないようには気をつけたぜ!」

沙紀「…………えっ?」

恵磨「「えっ?」ってことはないんじゃね?」

沙紀「だって……マイクぶっ壊すくらいが調子いい、とかネジ外れたようなことをいつも言ってるじゃないっすか」

恵磨「別にネジは外れてないだろー!?」

沙紀「じゃあ緩んでるんすよ」

恵磨「それはそうかもな!」

沙紀「自信満々で言われても……で、そんなエマがよくセーブなんてできたっすね」

恵磨「プロデューサーと約束したからな!」

沙紀「……ふんふん、なるほどなるほど」

恵磨「何がなるほどなんだ?」

沙紀「いーえ別に?」

ガチャッ

P「おや、恵磨さんに沙紀さん。おはようございます」

恵磨「おっはよーっ!」

沙紀「おはようございます」

P「お二人の今日のスケジュールは午後からのレッスンだけだったと記憶していますが……」

恵磨「レッスンまで暇だったしな!」

沙紀「事務所は居心地良くて」

P「そうでしたか。それではレッスンまでゆっくりしていってください。私はまだ仕事があるのであまりお相手は出来ませんが……」

沙紀「お気になさらず。こっちはこっちでガールズトークしてるんで」

P「む、ガールズトークとなると私が聞いていいものでしょうか……」

恵磨「今更アタシらの会話聞いて困ることないでしょ?」

P「……それもそうですね」

沙紀「……あっさりと納得されちゃうと、それはそれで何か不服っすね」

P「…………」カタカタカタカタ

沙紀「それで、ライブは抑え気味だったんすか?」

恵磨「いや、セーブはしてない!」

P「…………」ペラッ、ペラッ、カキカキ

沙紀「あれ、でもさっきは倒れないように気をつけたって……」

恵磨「アタシが持ってたエネルギーは全部ライブに充てたけど、貰った分はステージで倒れないために使ったんだよね」

沙紀「貰った分……? ファンの声援とかっすか?」

P「…………」カキカキ

恵磨「それもあるけど、プロデューサーから貰った分が一番でかいかな。何せプロデューサーがアタシに倒れるなって頼んできたからさー。だから、ぶっ倒れない分のエネルギーを注入してもらったんだ!」

沙紀「へぇ、プロデューサーってばエッチなんすね」

P「」ガタッ、バサバサ

P「いきなり何を言い出すんですか!」

沙紀「だってエネルギー注入したって」

P「頭をワシワシするあれですよ! 涼さん含めた三人でユニット組んでるんですから知ってるでしょう!?」

沙紀「ジョーダンっすよ。あの犬にやるみたいなやつっすよね?」

恵磨「そう!」

P「恵磨さんがそうだって認めちゃうんですか……?」

恵磨「実際そんな感じでやってない?」

P「…………さ、仕事に戻りましょうか」クルッ

沙紀「逃げたっすね」

恵磨「でも、実際パワー貰えるんだよね!」

沙紀「へー」

恵磨「ちょっと、信じてないでしょ」

沙紀「いやまあ、やられたことありませんし」

恵磨「じゃあプロデューサー!」

P「……なんです?」

恵磨「サキにあれやってよ!」

P「いや、沙紀さんは嫌かもしれませんから……」

沙紀「別に嫌なわけではないんで、どーぞ」

P「ええ……」

P「じ、じゃあ……いきますよ」

沙紀「っす」

P「えい」ワシワシワシワシ

沙紀「うひょぉああああああああ!?」

P「あっ、痛かったですか!?」

沙紀「あっ、いやっ、想像していたよりも思い切りがよかったもんで……どうぞこのままワシワシしてくださいっす」

P「す、すいません……じゃあ続けますね」ワシワシワシワシ

沙紀「お、おおう……これは、なるほど……」

恵磨「どーよ沙紀! プロデューサーの頭ワシワシは!」

沙紀「なんか美容院のよく分からない頭皮マッサージ受けた気分すね……」

P「それは喜んでいいんですか?」

沙紀「まあ嫌ではなかったんで大丈夫かと……むしろそこそこ気持ちよかったんで」

恵磨「だろー!?」ドヤァ

沙紀「なんでエマが誇らしげにしてるんすかね」

P「うーむ、自分ではあまり上手だとは思ってないんですが……」

恵磨「ダイジョーブ! 自身持っていいよプロデューサー! そういうわけでアタシにもよろしく!」

P「はいはい」ワシワシワシワシ

恵磨「うひゃーっ!」

沙紀「……ま、恵磨が幸せそうならそれで」

…………

恵磨「プロデューサー!! 頭ワシワシしてー!!」

P「はいはい」ワシワシ

…………

恵磨「プロデューサー!! 今日もよろしくー!!」
 
P「は、はいはい」ワシワシ

…………

恵磨「プロデューサープロデューサー!!」

P「……は、はい……」ワシワシ

…………

……一週間後……


P「最近、恵磨さんから事あるごとに頭ワシワシを注文されます」

沙紀「知ってるっす。ところ構わずあれを要求してるエマを、この一週間に三回は見たんで」

P「……こうなった理由は知ってますか?」

沙紀「聞いたわけじゃないっすけど、大方予想は」

P「……よければ教えてもらえると……」

沙紀「うーん、こればっかりはプロデューサー自身が気づかないとダメかと」

P「そうなんですか……?」

沙紀「そうなんすよ」

P「今日も仕事前に来るでしょうか」

沙紀「事務所に寄るなんて簡単なことっすからね。多分来ると思うっすよ」

P「実は今から会議でして……もう出ないといけないんですよ。私が提案する企画もありますしね」ガサガサ

沙紀「……エマはどうするんすか?」

P「まあ大丈夫でしょう。頭ワシワシが生命線という訳じゃないでしょうし。それに、昨日ワシワシしたばかりですから」

沙紀「まあ、問題はないのかもしれないっすけど……」

P「では出かけてきますね。恵磨さんが来たら会議で外出だと伝えておいてください。数時間はここに戻ってこないと思うので、何かあったらメールか電話でお願いします」

沙紀「了解っす。行ってらっしゃい」

P「ええ、行ってきます」

バタン

沙紀「……問題は無いかもしれないっすけど、成果も無いかもしれないんすよ、プロデューサー」

ガチャッ

恵磨「おはようございまーすっ!!」

沙紀「おはようございます」

恵磨「おっ、サキ早いね!」

沙紀「暇だったんで」

恵磨「暇だったからって事務所に来るのは物好きだよなー」キョロキョロ

沙紀「まあ否定はしないっすよ」

恵磨「まあアタシも仕事前に事務所に顔出してるし、物好きユニットだな!」キョロキョロ

沙紀「折角ならリョウも巻き込んでしまいましょうか」

恵磨「それいいな!」キョロキョロ

恵磨「…………あれ、プロデューサーは?」

沙紀「外出中っす」

恵磨「……え、あ、そう?」

沙紀「残念ながら頭ワシワシはなしっすよ」

恵磨「そっかぁ……慣れない仕事だから気合い入れてもらおうと思ったんだけど……」

沙紀「……慣れない仕事? 一体どんな仕事っすか」

恵磨「コスメのCM撮るのと、そのポスター撮影」

沙紀「…………なるほど、確かに慣れてなさそうな仕事っすね」

恵磨「プロデューサーはどれくらいで帰ってくるって?」

沙紀「遅くなるみたいっすよ」

恵磨「そっか、参ったなぁ。要領分からないからついてきてもらおうと思ったのに」

沙紀「じゃあ、アタシがついていくっす」

恵磨「あれ、いいのか?」

沙紀「暇なんすよ。プロデューサーの代わりにはならないかもしれないっすけど、少しくらいは支えになれるかと。この間お色気を学んだばかりなんで」

恵磨「……じゃあ、お願いしよっかな!」

沙紀「任されたっすよ」

……撮影スタジオ……


カメラマン「じゃあこっち向いてー!」パシャッ

恵磨「はーい!」

カメラマン「次はポーズ変えてみようか!」パシャッ

恵磨「こ、こうかな?」

カメラマン「そうそうそんな感じ!」パシャッパシャッ

沙紀「…………」

沙紀(ぎこちない……緊張とはちょっと違うみたいっすけど)

スタッフ「うーん……ちょっと休憩しようか」

恵磨「あれ、もう?」

スタッフ「恵磨ちゃん、ちょーっと落ち着きすぎかな? 少し長めに休憩とるから調子戻してちょうだい!」

恵磨「は、はーい!」

恵磨「いやー、上手くいかないね!」ハハハ

沙紀「……調子でないっすか?」

恵磨「どうだろ? ただ、こういうシックな雰囲気にアタシのエネルギー使うのも違うから難しいんだよな」

沙紀「こういうのはエネルギーを抑えるものじゃないと思うんすけどね……」

恵磨「うーん、そうかぁ……」

沙紀「……なんか、顔色が良くないっすね」

恵磨「アハハ、そう見える?」

沙紀「ええ、見慣れた顔っすから」

恵磨「なんかね、こういうのをアタシがやっていいのかなって思うんだよ。もっとこう、適役がいたんじゃないかなーって」

沙紀「ふむ、その心は?」

恵磨「アタシってさ。声張って、身体動かして、全身で表現するタイプじゃん?」

沙紀「そうっすね」

恵磨「それってさ、立ち姿と表情だけでねじ伏せる仕事とは真逆なんだよな。モデルとパフォーマーだったら、アタシは間違いなくパフォーマーなんだ」

沙紀「…………」

恵磨「だから、こういうのは美嘉とかモデル慣れしたアイドルに回した方が正解だったと思うわけよ」

沙紀「……これは重症っすねぇ……。こんなに弱気なエマを見たのは初めてかもしれないっす」

恵磨「いやぁ、こんな日もあるって」ハハハ

沙紀「よし、それじゃあそんな弱気なエマを元気づけてあげるとしましょう」

恵磨「おっ、どうやって?」

沙紀「エネルギーの使い方が上手くなるデリバリーを呼んでおくんで、それに頼れば万事解決っすよ」ピポパ

恵磨「……デリバリー? ピザとか?」

沙紀「まあ着いてのお楽しみっす。それが来るまではリラックスしておきましょう」

恵磨「オッケー!」

沙紀(さて、どれくらいでここに着くか……楽しみっすね)

スタッフ「それじゃあそろそろ再開するよー!」

恵磨「あ、はーい!」

沙紀「うーん、流石に休憩時間が終わるまでには間に合わなかったっすか。まあ撮影時間中には来ると思うんで」

恵磨「ふーん? ところで、そのデリバリーって何だったの?」

沙紀「ああ、それは……」


バァン!!


P「えっ、恵磨っ……!! 恵磨さんは大丈夫ですかっ!?」ゼェゼェ

恵磨「あ、あれ、プロデューサー……」

P「恵磨さんっ!!」ガシッ

恵磨「へっ!?」

P「恵磨さんっ!! その……撮影っ、体調っ……!! 優れないから、すぐ来てって……!!」ゼェハァ

恵磨「ち、近い近い!! ていうか誰からそんなこと……あっ」

沙紀「……思った数倍は早く来ましたね……」

恵磨「デリバリーって、プロデューサー!?」

沙紀「ええ。これ以上ないデリバリーっすよ」

P「さっ、沙紀さん……!! どこがどうなってますか……!?」

沙紀「エマは慣れない仕事でどうにも調子が出ないみたいなんすよ。本当は今日プロデューサーについてきてもらって支えてもらおうとしていたみたいで」

恵磨「ちょっ、サキ!?」

P「そ、そうでしたかっ……!! そんな大事なことに気が付かず、申し開きの言葉もっ……!!」

恵麿「あ、謝らなくていいって! えーっと、えーっと、どうしたもんかな……」

沙紀「エマ。悩んでることとお願いしたいことをプロデューサーに伝えてみたらどうっすか?」

恵磨「え?」

沙紀「きっと撮影が好転するっすよ。なにせ、アタシたちのプロデューサーっすから」

恵磨「……そうかな?」

沙紀「そーっすよ」

恵磨「……そっか! そうだな!」

恵磨「あのさ、プロデューサー」

P「はぁ……はぁ……なっ、なんでしょう……!」

恵磨「アタシってさ、騒いで叫んで、全身引きちぎれるくらい使って表現するアイドルじゃん?」

P「……ええ。それは恵磨さんの大きな魅力の一つです」

恵磨「モデルかパフォーマーかって言ったら、当然パフォーマーな訳でしょ?」

P「……そうですね、そういう仕事ばかりでした」

恵磨「そんなアタシに……この仕事は向いてると思う?」



P「当たり前じゃないですかっ!!」

恵磨「!」

P「確かにっ! 今まではとにかく持ち味の元気をそのまま活かすだけの仕事ばかりでしたっ! でも!それだけが恵磨さんの魅力ではありません! 静かな表現力だってレッスンでしっかり培ってきています! 恵磨さんならこの仕事を完璧にこなせる……そう思って取ってきた仕事なんです!」

恵磨「あ、う……」

P「……それでも、恵磨さん自身はこの仕事に不安を覚えていた……。初めての挑戦とも言える仕事に不安を全く覚えないはずはない、そんな簡単なことにも気が回らなかったのは私の落ち度です。それについては後ほど誠心誠意謝罪させて下さい。ただ、今伝えるべきは謝罪でないと判断しました。失礼します」ガシッ

恵磨「へっ?」




P「えぇいっ!!」ワシワシワシワシワシワシ

恵磨「うひゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」




沙紀(頭ワシワシだ……)

スタッフ(あれが噂の頭ワシワシ……)

P「この仕事は確かに静かなものです。しかし! だからといって! 恵磨さんのエネルギーを抑えては意味がありません!」

恵磨「で、でも……」

P「ポージングに必要なのは何よりも「ノリ」です! いくらスタイルが抜群でも、いくら顔が整っていても、「ノリ」の分からない人にこの仕事はできません! それこそ全力で取り組まなければ完成しないものなんです! どんなお仕事にも全力を出してくれる恵磨さんが、この仕事をこなせないはずはありませんよ!」

恵磨「!」

P「私の言葉でどこまで元気づけられるかは分かりませんが……大丈夫です。恵磨さんがシックでクールなキャラクターを全力で演じてくれる姿は、きっと恵磨さんの糧になりますから」

恵磨「プロデューサー……」

P「だから、頑張ってください。全力で仕事に取り組む恵磨さんを、私が全力で応援しますから」

恵磨「……おうっ!!」

スタッフ「……そろそろいいかな?」

恵磨「あっ」

P「あっ」

沙紀「完全に二人の世界だったっすねー」ケラケラ

P「し、失礼しました! スタジオ内でこんな大声で!」アタフタ

スタッフ「大丈夫大丈夫! 並行してる仕事もなかったし、まだ休憩みたいなものだったしね。それに……」チラッ

恵磨「?」

スタッフ「うん、恵磨ちゃんも元気出たみたいだからいい撮影になると思うよ」

P「あ、ありがとうございます!」

スタッフ「それじゃあ恵磨ちゃん、準備よろしく!」

恵磨「了解っ!!」

P「……ふぅ」

沙紀「ども、お疲れっす。なかなかあっつい言葉を口にしましたね」

P「あんな電話を貰ったらそうなりますよ。飛ばしてきましたし」

沙紀「まあ「早く来ないとエマが危ない」はちょっと言い過ぎだったっすか」

P「……いや、過言じゃなかったと思います。スタジオに入った時、恵磨さんの顔が少し暗かったので」

沙紀「流石プロデューサー、そういう所だけは敏感っすねぇ」

P「だけとはなんですか、だけとは」

沙紀「深い意味は無いっすよー?」

沙紀「……あれ、そう言えばプロデューサー」

P「なんです?」

沙紀「会議って大丈夫だったんすか? 思ったよりかなり早く着いたんでびっくりしましたよ」

P「ああ、流石にちょっと無茶はしましたね。私がいないと話が進まないところは急ピッチで終わらせてきました。後の細々としたところは同僚に任せておいたので、余程何かトラブルがない限り大丈夫でしょう」

沙紀「……何か企画を提案するとか言ってたような気がするんすけど……」

P「ええ、きっちり通してきましたよ」

沙紀「……平然と言ってのけることではないと思うんすけど」

P「だからちょっと無茶をしたと言ってるじゃないですか」

沙紀(それでもちょっとなんすね……)

……一ヶ月後……


涼「で、これがそのポスターか……。へぇ、イカしてるね」

沙紀「超かっこいーっすよね、このエマ」

涼「何というか、色気マシマシだな。普段がパッション全開だから、こういう凛とした姿とのギャップが良いね」

沙紀「シックでクールなアダルトビューティー……これはファンがふえるっすね」

恵磨「やめろってー! 照れるだろー!」バシバシ

涼「いてっ」

沙紀「あたっ」

恵磨「いやー、最初はちょっと不安だったけど、やれば意外と出来るもんだなーって!」

沙紀「まあでもプロデューサーが来なかったらこうは上手くいってないっすよ」

恵麿「モチロン! プロデューサーには感謝してるさ!」

涼「こういう仕事に対しても、エネルギーは抑えることなくノリに全力を使え、か……。流石にプロデューサーはエマの扱いが上手いね」

恵磨「プロデューサーが持ってこなかったら絶対手を出さなかった仕事だし!」

沙紀「こういうのは役割みたいなものがあると思ってたんすけどねぇ……。アタシもちょっと前にセクシーな忍者役を演らせてもらったんすけど、おかげで新しい世界が開けたっす」

恵磨「自分じゃ見つけられなかった自分を知れるのは本当に楽しいよな!」

涼「本人に聞かせてやりたいな、その褒め言葉。みんなアンタのおかげで成長してるってさ」

沙紀「……まあ、エマに限ってはちょっと問題が出てきたんすけどね」

涼「問題?」

ガチャッ

P「おや、お三人方お揃いで」

涼「よおプロデュ」

恵磨「おはよープロデューサー!!」ババッ!!

涼「えっ早っ」

恵磨「なープロデューサー! いつものやってくれよ!」ウキウキ

P「……もうですか? 昨日の夜にしたばかりなのに」

恵磨「いいからほら! 早く早く!」

P「はいはい」ガシッ、ワシワシワシワシ

恵磨「うっひゃーっ!!」

涼「…………えっ、何このスムーズな流れ」ヒソヒソ

沙紀「……その……先日の一件以来、頭ワシワシに対する依存度が増したみたいで」ヒソヒソ

涼「……まさかあれから毎日か?」ヒソヒソ

沙紀「……日に二回やってる時もあるっす」ヒソヒソ

涼「……それって頭ワシワシにというか、プロデューサーに対しての依存が」ヒソヒソ

沙紀「……本人は無自覚なんすけど、恐らくはそうかと」ヒソヒソ

涼「……ちょっとそれはどうなんだ?」ヒソヒソ

沙紀「……まあでも」チラッ

恵磨「なあプロデューサー! やっぱりもうちょっと強めでやってみて!」

P「ダメです。頭皮痛めたらどうするんですか」

恵磨「ちぇー……まあいいや! 今日の分の気合いはしっかりもらったし!」

P「はい。しっかり注入しましたよ。だから頑張ってくださいね」

恵磨「まっかせとけ!!」



沙紀「……これはこれでいいコンビっすよ」

涼「……問題だけは起こさないで欲しいもんだ。スキャンダルとか特に」

沙紀「同感っす」ハハハ

終わりです。

仙崎さんの頭をワシワシしたいだけの人生でした。
アグレッシブゲイズ+をありがとうございます。

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