佐藤心「8月10日ははぁとの日だぞ☆」 (13)

P「え?」

心「だからぁ、今日は8月10日で『はぁとの日』だぞ☆」

P「理由を聞いてもいいですか」

心「8(はぁ)10(と)だからに決まってるでしょ♪ このにぶちんめ♪」

P「………はぁ」

心「と☆」

P「いや無理やりつなげないでください」


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心「というわけで、プロデューサーもめでたくはぁとの日の意味を理解したから」

P「はい」

心「祝って☆」

P「祝うとは」

心「日頃の感謝を言葉にするとかー、日頃の頑張りに対してご褒美を用意するとかー、ね?」

P「ね? じゃないですよ。先月誕生日をお祝いしたところじゃないですか」

心「もちろんそれはめっっっっちゃうれしかった! プロデューサーだけじゃなくて、事務所のみんなにお祝いしてもらえて……あぁ、はぁとは愛されてるんだな。普段ウザ絡みしてるのにみんないい子だなって……おまけに夜にはお母さんからも電話もらって『最後まで頑張って』って……うぅ」グス

P(心さん、意外と涙もろいんだよな……それだけいい誕生日だったんだろうけど。お祝いした側としてはうれしい限りか)

心「つーことで、今月もそのくらい幸せな思いを味わいたい☆ だから祝って♪」

P「なんて強欲なんだ」

心「ふふっ。はぁとが欲張りだなんて、いまさらでしょ?」キラーン

P「かっこつけて言ってますけどここまでのセリフのせいで台無しです」

心「ダメ?」

P「ダメです」

心「らめぇ?」

P「言い方変えてもダメです」

心「ラーメン」

P「棚にカップ麺ありますよ。じゃあ俺、会議行ってくるので」


ガチャ、バタン


心「………」

心「ちぇー、今日のプロデューサーつめたーい」

心「てことでさー、せっかくの記念日をあっさりあしらわれちゃったわけよ」ズルズル

梨沙「でもカップラーメンは食べてるんだ」

心「うわこれうまっ。このカップ麺うまっ。あとで買いだめしとこ」

飛鳥「美味いんだ」

梨沙「でもこれ、あんまり見ないカップ麺ね。どこで売ってるのかしら」

心「あー、確かにはぁとも初めて見たかも。期間限定商品かな?」

飛鳥「駅前から少し南に進んだところにあるスリーエフに売ってるよ」

心「わお、さらっと答えが出てきた」

梨沙「さすが……まるでコンビニ博士ね!」

飛鳥「研究したわけではないけれどね。散歩中によくいろんなコンビニに立ち寄るから、自然と知識が入ってくるのさ」フッ

心「それじゃ、今度そこのコンビニ寄って買ってくるわ♪」

飛鳥「あぁ。ではボクは少し外の風にあたってくるよ」

梨沙「アタシもジュース買ってくるから」


ガシッ


心「それでさぁ、プロデューサーが『はぁとの日』を祝ってくれなかった話に戻るんだけどさ♪」

飛鳥(捕まった……)

梨沙(めんどくさそうだから逃げようと思ってたのに……)



梨沙「そもそも、数字の語呂合わせ? で自分の記念日作るってどうなのよ。大物芸能人レベルじゃない、それ」

心「将来大物アイドルになるからモーマンタイ♪」

梨沙「も、モードレッド?」

飛鳥「モーマンタイ(無問題)。問題ないという意味の外国語さ」

梨沙「ふーん……って、ホントに問題ないわけ?」

心「大丈夫だって♪ 来年は3月10日を『佐藤の日』にしてそこも記念日にするつもりだし♪」

飛鳥「さらに増やすのか……ヒトの欲望とは罪なモノだ」

心「まあまあ、こういうのは形から入るのもいいでしょ? 自分の記念日作っても文句言われないくらいの大物になるっていう意気込みの表れよ☆」

飛鳥「本音は」

心「みんなに優しくされたいの☆」

飛鳥「理解っていたさ、その答えは」

梨沙「むむ……大物……アタシもそういう記念日作れるかしら……」

心「お、梨沙ちゃんひょっとして乗り気?」

梨沙「まあね! アタシを祝える日が増えるなら、パパもママもファンのロリコン達も喜ぶだろうし!」

飛鳥「ファン、か」

梨沙「? なによ」

飛鳥「いや、指摘するのは野暮というものさ」

心「よしよし、偉いぞ~♪」ナデナデ

梨沙「わっ! ちょっと、いきなり撫でるんじゃないわよー!」


梨沙「でも、うまい感じの語呂合わせが思いつかないのよね。うーん……」

心「はぁとはすでに2つも出ちゃってるんだけどなぁ。梨沙ちゃんの場合は……むう」

梨沙「飛鳥。なんかない?」

飛鳥「ボクに聞くの?」

梨沙「アンタ、勉強できるんでしょ? だったらなにか思いついてくれるかもって」

飛鳥「学校の成績と、そういった閃きとはそれほどリンクしていないと思うけど」

梨沙「そういう細かいことはいいの! 褒めてるんだから素直に受け取りなさいよ!」

飛鳥「む………ありがとう」

梨沙「それでよし!」ニカッ

心「褒められたら調子に乗るくらいでちょうどいいんだぞ~♪ 大人になってからストレス溜めないヒケツ☆」

飛鳥「………あぁ、そういえば」

梨沙「どうかした?」

飛鳥「今のキミの笑顔で思い出した。『リサ』という言葉は、スペイン語で『笑い』を意味するらしいよ」

梨沙「へえー、そうなんだ。笑顔ね……アタシにピッタリかも」

心「飛鳥ちゃん、ドイツ語以外にも興味あったんだ」

飛鳥「興味深そうなことなら、いろいろな国の言語に手を出すさ」

心「ねえねえ、はぁとの名前はなんかある? そういうの」

飛鳥「前にも言った気がするけれど、『sin』は英語で罪を指す単語だ」

心「つまり、はぁとのスウィーティーは人の心を狂わせる罪深き魅力を持つってことか……」

梨沙「すっごい前向きな考え方したわね」

飛鳥「いいんじゃないかな。言葉をどうとらえるか、それはその人自身だけが決められることだから」

飛鳥「きっと、誰にも左右されるべきことじゃない」

梨沙「そういうもの?」

飛鳥「そういうもの。とはいえ、このボクの言葉自体をどうとらえるかもキミ次第だけどね」

梨沙「んーー? それってなんか堂々めぐりっていうか、ループっていうか」

飛鳥「はは、少し意地悪だったか」

梨沙「やっぱり飛鳥の言うこと、難しくてわかんないわ!」

梨沙「でも、言いたいことはなんとなくわかるからオッケーよね!」

飛鳥「……なるほど。それもアリかもしれないな」


梨沙「ところで、アタシの記念日の話だけど」

飛鳥「覚えていたか」

梨沙「……アンタ、さてはごまかそうとしてたわね?」

飛鳥「さぁ、どうだろう」シレッ

梨沙「わかりやす……」ジトーー

心「あはは。このふたり、見てて飽きないなー………っと、メールだ」

心「プロデューサーから……」

『記念日はおいといて、今夜食事でもどうですか』

心「………」

心「はぁ~~なんだよ超スウィーティーかよ~~!!」

梨沙「なになに、どうしたの?」

心「プロデューサーがツンデレ発揮しちゃってさー♪ 今夜はしっぽりお食事デート☆」

梨沙「よかったじゃない。アタシもパパとオシャレなお店でごはん食べたいな~」

心「だったら今度、はぁとがおススメのお店教えてあげよっか?」

梨沙「いいの?」

心「恋する女の子は応援したくなるのが女の性よ♪ はぁとは案外こういうの詳しいしね☆」

梨沙「ありがと! 年の功ってやつね!」

心「一言多いぞ☆」

飛鳥「………」

飛鳥(8月10日。『ハートの日』か)

飛鳥(ボクらのハート、心のありようは様々だ。誰もかれも、向いている方向がバラバラだと言っていい。まさしくヴァリアスというヤツだ)

飛鳥(けれど不思議なことに、みんな『同じ方を見ている』。矛盾しているようだけれど、これは事実だ)

飛鳥(だからボク達は、仲間なんだろう。同じ場所を目指す、アイドルとしての仲間)

飛鳥(うん。やっぱり、人の心は面白――)グゥ~~

飛鳥「………」


飛鳥「コンビニ、行ってこようかな」

飛鳥(心もそうだけど、まずは腹を満たさないとね)

梨沙「なんかうまいこと言ったみたいな顔してる」

飛鳥「………ボクの表情、そんなに理解りやすいかな」



おしまい




おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
すでに日付変わってますがまあギリギリセーフということで許してください

シリーズ前作:佐藤心「あんにゅいはぁと」

その他過去作
モバP「なっちゃんと水着と夏祭り」

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