カヲル「シンジ君を待ちながら」 (17)


カヲル(約束はいいねぇ)

カヲル(それを果たしてしまう前から、人を幸せにするのだから)

カヲル(いや、僕は人じゃなかったな。使徒だけど幸せにしてしまうんだ)

カヲル(楽しみだなぁ、シンジ君とのハイキング##)

アスカ「あら、ナルシスホモじゃない!何よ、ニヤニヤしちゃって」

カヲル「根拠の足りない言いがかりはやめてくれ、ニヤついてはいるけどね」

カヲル「明日、シンジ君とハイキングに行く約束をしているんだよ」

アスカ「ハイキング~?あんなのの何が楽しいんだか」

カヲル「君は自然と戯れる悦びを知らなさそうだものね」

アスカ「ふーんだ、あたしにはもっと楽しい予定が待ってるのよ!」

アスカ「明後日にシンジとショッピングに行くんだから!第二新東京市までね!」

カヲル「えっ、君もシンジ君とデートの約束があったのかい?」

アスカ「いや、あんたのはデートじゃないでしょ」

カヲル「デートさ!」

アスカ「やっぱりホモじゃなーい!」


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カヲル「あれ?あそこにいるのはファーストじゃないか?」

アスカ「ほんと、なんかやたらそわそわしてるわね」

カヲル「珍しいね。彼女はあまり気持ちを表情に出さないから」

アスカ「おーい、エコヒイキ!なーにしてんのよ」

レイ「・・・セカンドの子と、フィフスの子」

カヲル「誰かを待っているのかい?」

レイ「・・・碇君」

レイ「今日は、碇君とクッキーを焼く約束してるの」

アスカ「何ィ!」

カヲル「うっ、羨ましい!」

レイ「この間・・・クッキーを作ったら、焦げたの」

レイ「碇君にあげたら、苦そうな顔をしたわ」

レイ「だから、碇君が教えに来てくれる」

アスカ「まったく、シンジはお節介なんだから!」

カヲル(そんなことより、シンジ君に手作りクッキーをあげるなんて、侮れないぞ・・・)

レイ(なんだか、ぽかぽかする)


アスカ「みーんなシンジと約束してるなんてね」

ミサト「あっ見つけた!おーい3人とも!」

ミサト「3人揃ってるなんてちょうどいいわ」

アスカ「ミサトぉ、どうしたの?」

ミサト「あのねーシンちゃんから伝言があって」

ミサト「なんかね、シンちゃんトウジ君たちと8泊9日の大阪旅行に行く約束をしてたらしくて」

ミサト「シンちゃん大慌てで新幹線に乗って行ったとこなのよ」

ミサト「トウジ君たちとの約束の方が早かったから、みんなとの約束を守れなくてごめんって!」

アスカ「ええ!何よそれぇ!」

ミサト「まぁそう責めてやりなさんな」

ミサト「約束は3ヶ月前からだし、もうホテルの予約料金も払っちゃってんだから」

カヲル「なら仕方ないですね・・・」

アスカ「もう!バカシンジ!」

レイ「・・・そう」

アスカ「お土産買ってこなきゃ許さないんだから!」

ミサト「じゃ、そういうことだから。じゃーねー」

カヲル「なんてことだ・・・約束が破棄されてしまった」

アスカ「あーあ、仕方ないからヒカリでも誘おうかな」

レイ「・・・することがないわ」


カヲル「ファースト、僕がクッキー作りに付き合うよ」

カヲル「そうしたらシンジ君が手伝う必要はなくなるし」

アスカ「ちょっと、何企んでんのよホモ」

レイ「あなたじゃ・・・ぽかぽかしない」

カヲル「君の買い物にも付き合うよ?シンジ君が荷物持たなくて済むからね!」

アスカ「ちょちょ・・・っ、あんた何か変よ?」

カヲル「うう・・・楽しみにしてたのに・・・シンジ君、なぜ・・・」

アスカ「そんなに落ち込んでるのぉ?いいわ、ハイキングにはあたしが付き合いましょ」

カヲル「君じゃ駄目だ!」

アスカ「さっきの仕返ししただけよ」

アスカ「ほんと・・・バカシンジなんだから」


<その日の晩>

アスカ「ねぇ、大阪ってどんなとこよ?」

ミサト「日本第二の都市よ。旧大阪市の大半は海に沈んでしまったけど、使徒が襲ってこないから栄えまくってるわ」

アスカ「そんなとこ、遊びに行く価値あるの?第二新東京でいいじゃない」

ミサト「何言ってるの、USJもあるし移築された大阪城とかの建物だってあるじゃない」

ミサト「あとは、海の中の旧大阪市街を見るツアーも人気らしいわね」

ミサト「東京が長野に遷都されてから、あそこは日本どころか世界屈指の観光地よ」

ミサト「トウジ君の案内で、大阪府をぐるっと観光するそうよ」

アスカ「ふーん、ガイドには困らなさそうね」

ミサト「シンちゃんたち、大阪だけでなく北上して京都にも行くらしいわ」

ミサト「羨ましいわよね~、あたしも仕事休めたら行きたいわ~」

アスカ「そういえば、シンジの仕事はどうなるのよ?」

アスカ「しかも、修学旅行にも行けなかったのに、個人的な旅行なんて」

ミサト「有給扱いよ。本人は忘れてたみたいだけど、3ヶ月前から申請されてたからスケジュール管理はバッチシ」

ミサト「修学旅行のときはパイロットが3人しかいなかったけど、今は渚君もいるでしょ?」

ミサト「ま、あの子もたまには羽根を伸ばすことも必要よね」

アスカ「ふーん・・・興味ないけど」

アスカ「もしもあたしが有給を申請したら、すぐに休めないの?」

ミサト「そんなの無理に決まってるでしょ、あなたたちの仕事は特殊なんだから」

ミサト「まぁ、休めてもせいぜい1日ね」

アスカ「あっそ」

アスカ(何よ、じゃあ追いかけて合流なんて無理じゃないの!)


<翌日>

カヲル「せっかくの非番なのに、何もすることがない」

カヲル「いいんだ、シンジ君が楽しんでいるのならそれで・・・」

カヲル「うう・・・いいなぁ、シンジ君と旅行」


レイ「いいの、仕方ないから」

<翌々日>

カヲル「セカンド、君はどうしてそんなに平気そうなんだい?」

アスカ「むしろこっちは何であんたが死にそうな顔してるのか聞きたいわ」

カヲル「シンジ君がいないからに決まってる」

カヲル「僕は気づいたよ。僕は人を愛してるんじゃなくてシンジ君を愛しているのだと」

カヲル「そして今、トウジ君とやらに嫌悪感を抱いているよ。憎しみとも言うね」

アスカ「ちょっとちょっと、発言が過激よ」

アスカ「少しは平常運転のエコヒイキを見習いなさいよ、ねぇ?」

レイ「・・・」

レイ「私はアヤナミレイと呼ばれる存在・・・」

アスカ「あれ・・・平常・・・運転?」

カヲル「じゃないと思うよ」


<翌々々日>

カヲル「よく見たら、ファーストとシンジ君はどこか似たとこがあるね」

レイ「そうかしら」

アスカ「そう言われれば、姉弟だって言われて信じる程度には顔似てるかもね」

カヲル「ファーストにシンジ君が言いそうな台詞を言ってもらえば、それっぽくなるんじゃないかな?!」

アスカ「えー?エコヒイキには無理よ」

レイ「・・・やってみる」

レイ(碇君が言いそうな言葉・・・優しい話し方・・・)

レイ「あ、あすかぁ!かをるくぅん!」

レイ「///」

カヲル「駄目だ駄目だ!もっと色気を出せないのかい?」

レイ「ごめんなさい・・・」

アスカ「シンジは別に色気があるわけじゃないでしょ・・・」


<翌々々々日>

アスカ「ちょっとぉ、何やってんのよあんたたちィ・・・」

カヲル「スハッスハッ、君の衣服に、僅かながらシンジ君の匂いが残ってる!スハッスハッ」

レイ「・・・いい匂い」

アスカ「気持ち悪い!やめなさいよ!」

カヲル「君はいいじゃないか!シンジ君と同居してるんだから、匂い嗅ぎ放題じゃないか!」

アスカ「あたしはそんな変態行為はしてないわよ、失礼ね!」

カヲル「そうだ、これから君のとこに行って、シンジ君の枕を貸してもらえないか?」

アスカ「はぁ?べ、別にあたしのじゃないからいいけど」

カヲル「シンジ君の枕と寝れば、少しは落ち着くかもしれない」

レイ「・・・碇君の、シャツが欲しい」

アスカ「後でシンジに怒られても知らないわよ!」


アスカ(あーあ、枕とシャツ取られちゃった)

アスカ(まぁいいわ。一番大事なシーツと掛け布団は残ったから)

モゾモゾ

アスカ「ふぅ」

アスカ(シンジの布団じゃなきゃ寝れなくなっちゃうなんてね・・・)

アスカ「シンジぃ・・・」


<翌々々々々日>

「カヲルくーん!」

カヲル「シンジ君かい?!」

シーン

カヲル「・・・ああ、幻聴だったのか・・・ああ・・・」


アスカ「急なのはわかってるわよ、とにかく大阪に行きたいの!」

アスカ「訳は言えないけど、あんたにとっても悪い話じゃないはずよ!」

ヒカリ『無理に決まってるでしょ、そんなお金ないわ』

アスカ「費用ならあたし持ちでいいから、お願い!」

ヒカリ『あたし、そういうの嫌なの。悪いけど、どうしても行きたいなら他の人を誘って』ガチャ

アスカ「もう!ヒカリのわからず屋!」

アスカ(偶然を装って合流しようと思ったのに)

アスカ(一人じゃ不自然過ぎて行けないじゃない!)


レイ「・・・大阪に行きたいけど」

レイ「お金、ないわ」


<翌々々々々々日>

カヲル(こうなったら、最終手段を取るしかない)

カヲル(僕がアダム本体と接触してニアサードインパクトを起こすんだ!)

カヲル(そうすれば、ネルフも政府も使徒来襲を一般人に隠しきれなくなる)

カヲル(大阪にいるシンジ君の耳にもニュースが入る)

カヲル(そうすれば・・・シンジ君は帰ってくる!)

キール「タブリスよ、お前は良からぬことを考えているらしいな」

カヲル「!?な、なぜバレたんだ」

キール「あまりリリンをなめないことだな」

キール「お前の仕事はずっと後だ。シナリオを早められては困る」

カヲル「嫌だ!僕はさっさとニアサードインパクトを起こして、シンジ君に会うんだ!」

キール「少年の体にこれを使うのは気がひけるが、この際だ。仕方がない」

カヲル「あっ」

カヲル(くそ、ATフィールドを出す前に何か薬を打たれた!)

カヲル(意識が朦朧としてきた)

カヲル「あああああっ」ビクッビクビクンッ

科学者「痙攣及び失禁が見られます」

キール「かまわん。もし死んでしまったら魂を別の体に入れろ」


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脳内シンジ「カヲルくん、ただいま!」

カヲル「し、シンジ君!」

脳内シンジ「約束破ってごめんね、今からハイキングに行こう!」

カヲル「もちろんさ!」


脳内シンジ「はぁっはぁっ・・・」

カヲル「シンジ君、眠っちゃ駄目だ!死んでしまうよ!」

脳内シンジ「ご、ごめん・・・僕が迷ったせいで、遭難しちゃって・・・」

脳内シンジ「寒い・・・あ・・・」

脳内シンジ「波打ち際で、母さんが手を振ってる・・・あっちに行きたいなぁ」

カヲル「まずいよシンジ君!そっちに行ったら戻れなくなる!」

カヲル「ええと、こういうときは確か、裸で温め合うのが一番・・・」

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カヲル「はっ!」

カヲル「夢だったのか・・・」

カヲル「うう・・・老人たちめ、第1使徒である僕に対してこの仕打ち、覚えておくよ」

カヲル「夢の中とはいえ、シンジ君の肌に触れることができて、少しは穏やかな気持ちになったみたいだ」

カヲル「でも、早く本物のシンジ君に会いたいよ」


アスカ「ふふふシンジったら、駄目でしょ。ご飯こぼしちゃー」

ミサト「あ、アスカ?何やってるの?それはペンペンよ!」

ペンペン「クヮァ・・・」(困惑)


レイ「碇君は大阪にいるの?いいえ、そこだけじゃないわ」

レイ「私の心の中にいるの」

レイ「私の中にある、暗くて何も見えない、そんな心の中に」

レイ「私の心はどこか欠けていて、それを碇君は埋めてくれるの・・・」

レイ「碇君・・・」


<翌々々々々々々日>

カヲル「もうすぐだね!」

アスカ「ええ、明日にはシンジが帰って来るわ!」

レイ「・・・やっと」

カヲル「ああ、生きてるって素晴らしい」

アスカ「シンジ、どんなお土産くれるのかなぁ?」

カヲル「シンジ君がくれるものなら、何だって嬉しいさ!」

<翌々々々々々々々日>

アスカ(ソワソワ

カヲル(ソワソワ

レイ(ソワソワ

ミサト「あ、3人とも!ちょうどよかったわ!」

カヲル「な、何でしょうか?」

アスカ「嫌な予感・・・」


ミサト「なんかね、シンジ君の大事にしてるカセットプレーヤーをどこかで置き忘れたらしいの」

ミサト「それで、見つけるまでここに戻らないって聞かないのよ、困った子だわ」

ミサト「今までに行ったところ全部探して回るそうだから、今日は帰れそうにないわね」

カヲル「そんな!」

アスカ「嘘でしょ!」

レイ「・・・」

アスカ「で、でも!あたし達の仕事上、そんなの認められないでしょ?」

リツコ「それに関しては私から説明するわ」

リツコ「あのカセットプレーヤーはシンジ君の精神安定剤のような役割を持っているの」

リツコ「そこで、シンクロ率の低下及びエヴァへの搭乗拒否を懸念して、特例として認めることになったわ」

リツコ「ま、修学旅行の時と違ってパイロットが3人待機してるんだから、別に問題もないでしょう」

アスカ「問題大有りよ!」

アスカ「シンジがいないんだったら、あたしエヴァに乗らない!」

カヲル「僕も乗りません!」

レイ「・・・私も、嫌」

ミサト「ワガママ言うんじゃないの!」

アスカ「嫌ったら嫌!」

リツコ「困ったわね、残りのパイロットがこれじゃあ、作業に支障をきたすわ」

リツコ「しょうがないわね、相談してみるわ」


ミサト「どーすんのよ?シンちゃんってかなり頑固なのよ?」

ミサト「カセットプレーヤーを諦めるよう説得するなんて無理よ」

リツコ「大丈夫、考えがあるわ」

リツコ「ある人が我慢すればいいだけのことよ」


冬月「碇、お前が適任だ」

リツコ「碇司令、あなたにはこれから大阪と京都に行ってカセットプレーヤーを探していただきます」

ゲンドウ「なぜだ。なぜ私なんだ」

リツコ「元々あれはあなたの物ですし、あなたはそこそこ土地勘もあるでしょう?」

ゲンドウ「そりゃ、学生時代はよく梅田や日本橋あたりまで遊びに行ったものだが、セカンドインパクト以前の話だぞ」

リツコ「それに、あなたが探しに行けばシンジ君が喜びます」

リツコ「シンクロ率は低下どころか爆上がりするとMAGIは予測しています」

ゲンドウ「だが、使徒が襲来したらどうする?私抜きでは困るだろ」

冬月「そこは葛城君に任せたらいいじゃないか」

冬月「というか、お前の仕事と言ったら口の前で手を組むことぐらいじゃないか」

ゲンドウ「冬月先生、あんまりです」


リツコ「いざという時は大阪から電話で指示をしていただきます」

冬月「たまには父親らしいことをしてやれ、碇」

ゲンドウ「そんな」


マヤ「すごい!全員シンクロ率、最高記録を達成しましたよ、先輩!」

リツコ「期待以上ね」

ミサト「司令がいない方が物事が円滑に進むだなんて、皮肉ねー」

カヲル(シンジ君と、一緒にハイキング・・・そして・・・///)爆↑

アスカ(バカシンジのご飯が食べられる・・・///)爆↑

レイ(碇君と、一緒・・・///)爆↑

シンジ(父さんが、僕のために大阪まで行って探してくれてる・・・///)爆↑


ゲンドウ「クソ!」

ゲンドウ「何がそこそこ土地勘があるだ!」

ゲンドウ「景色変わりすぎてて全然わからんわ!あのオバハン!」

終劇

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