奈緒「なぁ、返事してくれよ、加蓮!」 (19)

奈緒「加蓮! なあ加蓮!」

加蓮「……」

凛「奈緒……加蓮はもう……」

奈緒「うるさいっ!」

奈緒「約束してただろ! もっと一緒に歌おうって、踊ろうって!」

奈緒「なあ、返事してくれよ、加蓮!」

加蓮「……」

凛「……奈緒」

奈緒「止めるなよ、凛!」

奈緒「そんな涼しい顔しやがって……お前は何も思わないのかよ!」

凛「私だって信じたくないよ!」

奈緒「!」

凛「昨日まで楽しく話してたのに……一緒に笑ってたのに……!」

凛「でも……もう……」

奈緒「凛……」

加蓮「……」

奈緒「……加蓮」

奈緒「私も凛も、こんなに待ってるんだぞ? お前のことをさ」

奈緒「なあ返事してくれよ、加蓮……加蓮!」

奈緒「私と凛をおいてくのかよ!」

奈緒「起きてくれよ、加蓮! なあ加蓮!」」

奈緒「かれえええええええぇぇぇんっ!!!!!」

加蓮「うるさい!!!!」


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奈緒「お、加蓮。起きたか」

加蓮「そりゃ起きるに決まってるでしょ、あんなに耳元でうるさくされたらさあ!」

加蓮「っていうか何よ、さっきの三文芝居!」

凛「あれ、下手だった?」

凛「結構がんばったつもりだったんだけどな……」

奈緒「感情移入が足りてなかったのかもな」

奈緒「んー……こんな感じか……?」

奈緒「すぅ……」

奈緒「かれええええええええええぇぇぇぇぇんっっ!!!!」

加蓮「うるさい!!!」

加蓮「あー、もうっ! せっかく気持ちよく昼寝してたのに!」

加蓮「あんなに耳元で叫ばれるから目覚めちゃったじゃない……もう寝れないんだけど……」

奈緒「寝れなくていいんだよ」

加蓮「……どういう意味?」

奈緒「そのままの意味……わっ、そんな睨むなって」

凛「……もしかして忘れてる?」

加蓮「何を?」

凛「レッスン時間」

加蓮「え……あっ」

奈緒「……忘れてたな」

加蓮「……うん、忘れてた」

加蓮「そっか……だから二人とも私を起すために……」

凛「そういうこと」

奈緒「気持ちよさそうに寝てたからちょっと忍びなかったけどな」

加蓮「いや、それは嘘でしょ」

加蓮「起こすならもう少し普通に起こしてよ」

奈緒「いや……さ」

奈緒「一回、やってみたくならないか、こういうの?」

加蓮「ならないけど」

奈緒「そうか……」

加蓮「……」

凛「……昨日そんな感じのアニメ見たんだよ、奈緒」

加蓮「ふーん。で、それに感化されたってこと?」

凛「みたい」

加蓮「そう……でも、凛も止めてくれればよかったのに」

凛「それがさ……」

凛「……私も一緒に見たんだよね」

加蓮「凛……」

凛「い、いいじゃん、別に……面白かったから仕方ないし……」

奈緒「な! 面白かったよな!」

凛「うん……すごく面白かった」

奈緒「うんうん!」

奈緒「なあ、アレってまだ続きがあるんだ!」

奈緒「よかったら続きも一緒に見ないか?」

凛「わかった。いいよ」

奈緒「よし、決まりだな!」

加蓮「……ちょっと、私をのけ者にしないで欲しいんだけど」

奈緒「あ、すまん」

加蓮「むー……」

加蓮「……私も一緒に見に行っていい?」

奈緒「もちろん!」

加蓮「よかった……ふふ」

加蓮「……あ、でも大丈夫かな?」

奈緒「ん、何が?」

加蓮「続きから見るって事でしょ? 私ついていけるかな……」

奈緒「ああ、大丈夫」

奈緒「あたしが隣で必要な部分を逐一説明するから」

加蓮「……副音声みたい」

凛「ほんとにそんな感じだったよ」

加蓮「へぇ……」

加蓮「……ってそうだ! レッスン!」

凛「あ」

奈緒「あ」

加蓮「私を起こしたの二人なのに、なんで忘れてるの!」

奈緒「……へへ」

凛「……ふふ」

加蓮「笑ってごまかさないで!」

加蓮「ほら、早く行こう!」

奈緒「ああ」

凛「うん」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


奈緒「……」

加蓮「助けて! 凛!」

凛「どうしたの、加蓮!?」

加蓮「腕が……腕が抜けないの!」

凛「腕が……あっ!」

凛「もしかして、奈緒の髪の毛に突っ込んじゃったの!?」

加蓮「中どうなってるのかなって……気になっちゃって……」

奈緒「……」

凛「あんなに手を突っ込んじゃだめって言われてたじゃん!」

加蓮「そうなんだけど……寝てるときなら大丈夫かなって思って……」

加蓮「ねぇ、どうしたらいい……?」

凛「……もう諦めるしかないと思う」

加蓮「えっ……」

奈緒「……」

凛「奈緒の髪の毛は来るもの拒まず、去るもの許さず……」

凛「一度手を中に入れたら最後、体がすべて飲み込まれちゃう……」

凛「……そう、注意されたでしょ」

加蓮「うん……」

凛「だから……だから、もう……」

加蓮「そんな……!」

奈緒「……」

加蓮「あっ……いや、体が……飲み込まれて……!」

加蓮「助けて! 凛、助けて!」

凛「……ごめん、加蓮」

加蓮「いや……いやっ!」

加蓮「いやあああああああああああぁぁぁっ!!!!」

奈緒「うるさい!!!」

加蓮「あ、奈緒。起きた?」

奈緒「うるさいし重いし、起きないわけないだろぉ!」

加蓮「わっ、重いなんてひどい!」

奈緒「んなこといったって……人一人分は重いんだよ……どいてくれ!」

加蓮「えー……どうしよっかなー?」

奈緒「なあ、加蓮!」

加蓮「ふふっ、なーお♪」

奈緒「なんで余計に体重かけてくるんだよぉ!」

奈緒「あーもうっ、凛! 助けてくれ!」

凛「……」

凛「……えいっ」

奈緒「うわっ!」

奈緒「おっ、おい、凛! なんでお前まで……!」

凛「……なんとなく?」

奈緒「なんとなくって……あー!」

奈緒「なあ、つぶれる! つぶれちゃうから!」

奈緒「あたし、ぺしゃんこになるから、どいてくれ!」

加蓮「そうなったら私の部屋に敷いてあげるよ」

凛「ずるいよ加蓮。私だって敷きたいのに」

奈緒「怖い話するなよぉ!」

凛「ふふっ、冗談だよ冗談」

加蓮「そーそー。そんなひどいことするわけないじゃん」

奈緒「じゃあどいてくれよ!」

凛「……だってさ」

加蓮「えー? せっかくの両手に花状態なのにー」

奈緒「あたしだって花だよ!」

加蓮「あ、そっか」

凛「じゃあこれは……押し花になるのかな……ふふっ」

奈緒「だからぺしゃんこにするなってば!」

奈緒「あー……疲れた」

加蓮「おはよ、奈緒」

奈緒「……おはよう」

凛「あれ、不機嫌?」

奈緒「そりゃあ……せっかく人が気持ちよく寝てたのにさぁ……」

奈緒「あんな起こし方されたら……あーもう、なんかすっごい疲れた」

加蓮「仕返しだよ、仕返し」

奈緒「仕返し?」

奈緒「……あー、この前のか」

加蓮「そ。私だってこの前そんな気分だったんだから」

奈緒「……ごめん」

加蓮「仕返しはすんだから許してあげる、ふふっ」

奈緒「……」

奈緒「……で、あたしはなんで起こされたんだ?」

凛「レッスンの時間、そろそろだよ」

奈緒「……あー」

凛「忘れてたんだ」

加蓮「人のこと言えないじゃん」

奈緒「……まあ、あれだ」

奈緒「起こし方は納得いかないけど……起こしてくれてサンキューな」

加蓮「いえいえ」

凛「どういたしまして」

凛「ところで、奈緒」

奈緒「なんだ?」

凛「奈緒の髪の毛の中って本当はどうなってるの?」

奈緒「は?」

凛「いや、本当に何か収納されてたりするんじゃないかなって」

加蓮「りんごとか、バナナとか」

奈緒「んなわけないだろ」

奈緒「しいてボールペンが入ってるくらいだな」

凛「えっ」

加蓮「……ホント?」

奈緒「ああ。ちょっと待ってろ」

奈緒「よいしょっと……えーっと確かこの辺に……ああ、あったあった、ホラ」

凛「!」

加蓮「!」

奈緒「……なんてな」

奈緒「これ、この前――」

加蓮「――すごい、すごいよ奈緒! まさか本当にモノを収納することができるなんて!」

凛「わぁ……」

凛「ねぇ、ほかには何か入ってないの?」

奈緒「あ、いや……」

加蓮「ね、収納するところも見せて!」

凛「あ、私も見てみたい」

奈緒「……あ、ああ」

奈緒「よい……しょっと」

加蓮「おー」

凛「すごい……」

奈緒「……驚いてるところ悪いが、これただのマジックだぞ?」

凛「えっ」

奈緒「裕子から教わったんだよ……一発芸にできないかなって思ってさ」

奈緒「ま、そんな驚かれるんだったら大成功ってことだな」

加蓮「……」

奈緒「……な、なんだよ?」

加蓮「……いや、ボールペンくらいだったら本当にしまえそうだなって」

凛「ね……ちょっと試していい?」

奈緒「だめに決まってるだろ!」

奈緒「ほら、レッスンなんだろ、行くぞ!」

加蓮「はーい」

凛「じゃ、後でね」

奈緒「後でもやらせないからな!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


凛「……」

凛「……」

凛「……ん」

凛「んっ……」

奈緒「か、加蓮! 凛が! 凛が目覚めたぞ!」

加蓮「ほんと!?」

凛「奈緒……? 加蓮……?」

奈緒「奈緒と加蓮の記憶がある……!」

奈緒「やっぱりこの凛は本物みたいだ!」

凛「……どういうこと?」

加蓮「驚かないで聞いて、凛」

加蓮「実はあなたは今日までずっと寝ていたの」

加蓮「……あなたが生きていた時代から3000年後の今日まで」

凛「3000年後……?」

奈緒「ああ」

凛「……じゃあ、奈緒は3017歳で、加蓮は3016歳」

奈緒「そんなに人が生きられるわけないだろ」

凛「でも私は3000年寝てたって……」

奈緒「そりゃ凛は冷凍保存されてたからな」

凛「冷凍保存……」

加蓮「私たちはクローンだよ……あなたの知る奈緒と加蓮の」

凛「そうなの……?」

奈緒「ああ、凛が目覚めるのを待つためにな」

加蓮「うん。何十年も、何百年も……たくさんのクローンに魂を移して、凛が目覚めるのを待っていたの」

凛「私を……」

奈緒「聞いてくれ、凛」

奈緒「今この世界は滅亡の危機にある」

凛「……」

加蓮「悪の大魔王が復活して地球を滅ぼそうとしているの」

加蓮「そしてそれを防げるのは蒼の力を持つ凛だけ」

凛「蒼の力……」

奈緒「ああ……蒼は悪の大魔王の弱点なんだ」

奈緒「その剣をひとたび振るえば、たちまちにしてやつらは消滅するはずだ」

凛「……」

加蓮「……お願い、凛」

加蓮「私たちを……ううん、世界を助けて……!」

凛「……ちょっと待って、混乱してる」

加蓮「……そうだよね」

加蓮「目覚めてすぐの凛にたくさん話しすぎちゃったかも」

凛「うん……何がなんだかわからない」

凛「……でも、わかったことがひとつだけある」

凛「私のこの蒼の力で……世界を救えるんでしょ?」

奈緒「ああ」

凛「……それなら私は戦うよ」

奈緒「!」

加蓮「!」

凛「私の力で救えるのなら……」

凛「この蒼の力で救えるのなら」

凛「私はこの蒼の剣を世界のために振るうよ」

奈緒「凛……!」

加蓮「ありがとう……!」

凛「ふふっ……お礼は世界を救ってからでいいよ」

凛「……さあ、どんな奴でもかかってきな」

凛「私の秘儀――」

マストレ「渋谷、北条、神谷。いるか?」ガチャ

奈緒「えっ」

加蓮「あっ」

凛「――アイオライト・ブルーですべて消し去ってあげる!」

マストレ「ほう」

凛「……」

凛「……えっ」

凛「……と、トレーナーさん?」

凛「どうしてここに……?」

マストレ「それは私の台詞だ」

マストレ「私のレッスンをサボってまで、お前たちは何をやっていたんだ?」

加蓮「あちゃー……」

奈緒「やっべ……」

凛「……」

凛「……え、演技力レッスンです」

マストレ「ほう。それは私のレッスンよりも優先すべき出来事なのか?」

凛「それは……」

奈緒「……凛」

凛「うん……」

加蓮「その……トレーナーさん」

加蓮「ごめんなさい!」

奈緒「ごめんなさい!」

凛「ごめんなさい!」

マストレ「うむ。素直に謝ることはいいことだ」

マストレ「さあ来い。レッスンを始めるぞ」

加蓮「……許された?」ボソッ

マストレ「今日は足が動かなくなるまでみっちりしごいてやるからな」

奈緒「……だめみたいだな」ボソッ

凛「……」

加蓮「……ごめんね、凛」

奈緒「ああ……悪ノリがすぎた」

凛「ううん、ノった私も私だから……」

マストレ「ん、どうした? 腕も動かなくなるまでみっちりしごいてほしいか?」

凛「……」

加蓮「……」

奈緒「……」

マストレ「ははは、そうおびえるな。普段の1.5倍のレッスンを行うだけだ」

マストレ「たかがレッスンだ。死にはしない」

加蓮「ひっ……」

凛「う……」

奈緒「うぅ……」

加蓮「……ねぇ、凛」

加蓮「アイオライト・ブルーで何とかできない?」

凛「できるわけないでしょ……」






おしまい

わちゃわちゃはしゃぐTPが好きってノリと勢い

誤字脱字、コレジャナイ感はすいません。読んでくださった方ありがとうございました。

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