【モバマス】「芳乃とウサミンロボの節分始末」 (13)


 天才アイドル池袋晶葉によって製造されたウサちゃんロボの一部が選ばれ
 
 ウサミン星人安部菜々によってもたらされた異星の超科学ウサミン科学によって生まれ変わった

 超AIウサミニアックブレインとウサミニウム合金で身を包んだ無敵のロボ!

 アイドルの護衛とバックダンサーと団子作り、事務所の雑務を引き受ける、その名はウサミンロボ!!



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 うさうさ

 ウサミンロボは事務所のお掃除をしています。

 昨日節分行事を終えた事務所は、辺り一面豆だらけなのです。

 事務所で行われた節分豆まきバトルロワイヤルは大盛況でした。
 
 私マーメ、と歌いながら豆を投げていた特別ゲストもいました。

 ウサミンロボは豆を拾い続けています。
 節分行事に参加したアイドル達も勿論ちゃんと後始末とお掃除をしたのですけれど、どうしてもいくつかの豆を見逃してしまっているのです。
 しかし、ウサミンロボは豆を見逃しません。
 ウサミン星の超科学による豆センサーは、例え太平洋にぽつんと落ちた一粒の豆でも見逃さないのです。
 ちなみに、豆以外には反応しないので安心です。
 ウサミン星には名産のウサミン落花生があるため、豆センサーも発達しているのです。


 うーさ、うーさ

 豆を懸命に拾っていると、いつの間にか事務所の外に出ていました。
 事務所の外にも豆はこぼれ落ちています。
 投げた豆が窓から外に出てしまったのでしょう。

 勿論、事務所と無関係の豆ではありません。
 ちゃんと、ウサミン豆センサーで区別が付くのです。

「ウサミンロボ殿ー」

 ウサミンロボは豆を拾う手を止め、自分を呼ぶ声に向き直ります。

 うさ?

「お豆を拾っていると聞きました故ー」

 依田芳乃です。

 うさ?

 なんでしょうか? 豆に用事でもあるのでしょうか。


「ロボ殿の拾った豆を分けていただきたいのでしてー」

 うさ

 拾った豆は勿体ないけれどゴミです。そんなものをどうしようというのでしょうか?

 うーさ?

「食べるわけではありませんのでしてー」

 うさうさ

 どちらにしろ、豆は拾ったゴミと一緒になっています。そのままでは汚いので渡せません。

 芳乃は少し考えているようです。

「ではー、着いてきていただきたいのでー」

 うさ

 ウサミンロボの使命の一つがアイドルの守護です。
 芳乃に着いてこいと言われれば例えそこが火の中水の中、961プロでも着いていくのです。


「行くのでしてー」

 うさー

 しばらく着いていくと、芳乃はビルの隙間の小さな路地へと入っていきます。
 ウサミンロボは素直に着いていきます。
 すると、路地の行き止まり直前で芳乃がぴたりと止まりました。

 うさっ!!

 ウサミンロボは路地の先に未確認生命体を発見すると、慌てて芳乃の前に出ました。
 未確認生命体と芳乃の間に入って、ウサミン竹槍をマテリアライズさせます。

 うさっうさっ

 ……ちっこいの、そんなに怯えんでもいい。ワシにそんな力は無いよ……

「ロボ殿ー、この方は危害を加える方ではありませんのでー」

 うさ……

 ウサミンロボは素直にウサミン竹槍をおろしました。


 うさ……

 ウサミンロボは目の前の未確認生命体を見上げます。

 諸星きらりより大きいです。

 身長は2メートル以上あるようです。そのうえ、見るからに筋肉質の身体です。

 うさ

 類似の外見がデータベースにあります。
 そうです。これは、「鬼」です。伝説の「鬼」です。
 鬼は実在していたのでしょうか。

「この方はー、節分の鬼でしてー」

 うさ?

 昨日の節分で、モバPが鬼の扮装をして豆をぶつけられていたことをウサミンロボは知っています。
 小関麗奈が節分豆とパチンコ玉を入れ替えて、佐久間まゆがマジギレしていたことも知っています。
 でも、ここに居るのはモバPじゃありません。全然違います。


「鬼は外と呼ばれることで、現世の汚濁を一身に引き受ける御方でしてー」

 ……そう、たいした物ではない。ただの、一塊の物の怪よ……
 ……人が望むことによって一夜の生を受け、人が祓うことによって消えていく……
 ……人の投げ捨てた邪気を我が身に貯め消える。其れがワシの役目……
 ……かつて人の世で修羅よ羅刹よと恐れられたワシらの、せめてもの罪滅ぼしよ……

「せめてもの、救いでしてー」

 最後の一投は浄めの豆で。
 人により投じられ、邪気を祓う念を与えられた豆をさらに芳乃の手が浄化しようと。

「ロボ殿ー、豆をくだされー」

 うさ……

 ウサミンロボは背負っていたバックパックから豆を出します。

 うさっうさっ

 鬼は消えてしまうのでしょうか。悪い鬼ではないのに。

 うさうさ


「それが、鬼殿の定めでしてー」

 ウサミンロボは、なんだか悲しくなってしまいました。

 ……ちっこいの、お前はアイドルたちのためにがんばっているのだろう?

 うさ

 当たり前です。

 ……ワシも同じだ

 うさ……

 ……さぁ、一緒にワシを見送ってくれんか?

 うさっ!

 芳乃は静かに目を閉じていました。

「鬼殿のー、来世にー、幸をー」


 ロボから受け取った豆を芳乃が両手の平に広げると、豆はふわりと浮くように広がります。

 ロボには何故か、豆が輝いているように見えました。

「鬼殿にー、平穏を得た人々に代わり感謝をー」

 ……可愛らしいおなごと、勇敢なチビに見送られ、当代の鬼は幸せもんじゃ……

 うさ……

 荘厳にも見える仕草で、芳乃が豆を放りました。

 ……うむ……

 鬼の姿が消えていきます。

 うさ

「鬼殿はー、使命を果たされたのでしてー」

 使命。それはウサミンロボにも大切なものです。
 ウサミンロボにも少しだけ、鬼の気持ちがわかったような気がしました。

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