魁! IS学園 (411)

一夏(前略、千冬姉。晴れて私は、IS学園へ入学できました。一日も早く学校に慣れて、健やかな学園生活を送りたいと思います。…………ですが……)

山田「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」

女子「……………」

一夏(クラスに男が俺一人で、いささかとまどっています…)

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一夏(これは……想像以上にきつい……。緊張して有機ELD式勉強机のタッチペンを持つ手も震える……)

カコン

一夏(あ!! タッチペンを落としてしまった!)

のほほん「……」 スッ

一夏「え‥‥……、あ‥ありがとう‥」

のほほん「……」 ニパァ

一夏(なんだ‥‥中には親切な子もいるんだな――)

のほほん「」 バキン

一夏「な!?」

のほほん「」 ボリボリボリゴックン

一夏「…………」

のほほん「」 アーン...

一夏(た‥タッチペンを食った――。スティー○ン・セ○ールだってそんなことはしないだろ。とにかく普通じゃない…)

一夏(…………) ガラガラ

のほほん「………………」

一夏(…………)

のほほん「!」 ガボ

一夏「く‥‥食った‥‥!!」

のほほん「ごふ…」

一夏(いったい、この学園はなんだ? 本当にただの高校なのか? ‥‥っていうかコレは、女子高のノリってやつとかそういう問題ではない気もするけど‥‥)

一夏(なぜこんなトコにきてしまったのか‥‥。思えば2年前、中2の頃‥‥。俺は女尊男卑の風潮に巻き込まれ虐げられる毎日だった‥‥)

女子A「ちょっと織斑くん、お金貸してよー」

一夏「え、でも……」

女子B「いいじゃん、織斑くんのお姉さんブリュンヒルデじゃん。マージン相当貰ってるんでしょ?」

一夏「う……」

鈴「ちょっとアンタ! そんなブサイク女共に金なんか出すコトないわよ!」

女子A「は? 誰アンタ」

女子B「誰がブサイクよ貧乳女!」

鈴「金欲しいんならエンコーでもすればいいじゃない!」

一夏(それが凰鈴音との出会いだった――)

鈴「いたた‥‥、やっぱあの鬼ババアの生徒指導キッツイわ‥‥」

一夏「友達でもないのになぜこんなコトを……。俺が金さえ出せばそれですむ話なんがから‥‥」

パシッ

一夏「う!!」

鈴「その金は家族の金でしょ! アンタがかせいだワケでもないのに偉そうなこと言ってんじゃないわよ!」

一夏「‥‥ありがとう、俺が‥‥間違ってたよ‥‥」

一夏(鈴は女尊男卑に負けない勇気をくれた)

一夏(時は流れ、受験の季節――)

一夏「何!? お前帰国するのか!?」

鈴「うん‥‥。父さんと母さんが離婚しちゃってさ」

一夏「だから親権を取った母親と中国に帰るって――だけどお前は『料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』って言ってたじゃないか!!」

鈴「結局、女尊男卑には勝てないのよ。第一アタシの居場所なんてこの国のどこにも――」

一夏「IS学園へ行け! あそこならISに乗れたら日本に残れる」

鈴「ふざけないでよ! アンタの居ない学校になんて行ったってアンタとの距離は縮まらないじゃない!」

パシィ

鈴「う!! な、なにすんのよこの馬鹿!」

一夏「このあいだのおかえしさ。大切なのは距離なんかじゃない。互いを忘れなきゃどんな場所でも離れ離れになるわけじゃない」

鈴「一夏……う……ぐすっ」

一夏「鈴……」

鈴「うわぁぁぁぁ、一夏ぁぁぁぁぁぁ!」

一夏(この出来事が彼女をこの学園に行かせたのだ‥‥。‥‥俺は自分の行動を後悔していない‥‥。‥‥‥‥ただひとつの誤算は‥‥)

一夏(俺まで受かってしまったことだ‥‥)

一夏「藍越学園とIS学園って、似てるよな?」

鈴「一夏、今日のお昼ラーメンにしない?」

今日のテーマ 『私の適正高かった!!』自慢話大会

櫛灘「アタシはJCん時から高かったな~~~」

谷本「へぇ~~」

九段下「とにかく手のつけようがねーって言われて‥‥『閃紅の魔女』って呼ばれてた」

谷本「それって、九段下さんが伝説の『魔女』なの!?」

九段下「おう‥‥」

櫛灘「アタシも名の通った高適正者だったよ! アタシは一度怒ると相手を致命領域対応にするまで止まんなくて……ついた通り名は『七月のサマーデビル』なんだ」

谷本「『七月のサマーデビル』‥‥!」

九段下「‥‥あんまりカッコよくねえな‥‥」

のほほん「私は高かったけど――、一度も試合したことないよー」

九段下「え、何だソレ?」

のほほん「私見た目がユルいから相手が勝手に嘗めて試合しかけてこないんだー。それで付いたアダ名が『不戦勝ののほほん』」

九段下「‥‥で実際試合は強ぇの?」

のほほん「ううん‥‥だから一度もしたことないから、わかんないんだー」

谷本「すごいのかすごくないのか、よくわかんないね‥‥」

セシリア「はっきり言って極東の島国というのは、こうまで未開の地だとわかってガッカリですわ」

4人「む‥‥」

セシリア「このわたくし、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生……つまり、現時点で専用機を持っていますのよ。本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運なのよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

九段下「‥‥で、アダ名は何だったんだ?」

セシリア「え!? アダ名………………………………アダ名は‥‥………………」

セシリア「‥‥特にアダ名はありませんでしたわね‥‥」

3人「……」

九段下「‥‥じゃダメだ‥‥」

谷口「惜しい~~!」

櫛灘「それじゃ話になんないじゃん!」

セシリア「ちょっとお待ちになって! 別にアダ名なんて無くともよろしいでしょう!」

九段下「『七月のサマーデビル』とか『桜蘭の魔女』とかがなきゃ意味ねえだろ!」

谷口「そーだよ! 君影の埴御とか棗じゃ全然怖くないし‥‥」

櫛灘「ゼンゼンフツーだよね」

九段下「悪いけど、また次回挑戦してくれ」

セシリア「次回っていつですの!?」

鈴(……)

鈴「ねえ一夏!」 ガン

一夏「あいた、何だよ‥‥?」

鈴「アンタも中学生の時アダ名あったでしょ! 『ジジイDC』とか『朴念仁オブ朴念仁s』とか」

一夏「中学の時は『動く淫災』って呼ばれてたな」

鈴「うーん、間違ってないんだけど……」

のほほん「へー、おりむーって悪い事しそーなイメージないんだけどなー」

一夏「ああ‥‥ずっとバイト漬け生活だったからな。けど‥‥そんな俺でも一度だけ悪いことをしたことあるんだ」

相川「ま、織斑くんの悪さなんてたいしたことないんじゃない?」

鷹月「せいぜいパフパフ正面衝突とか?」

一夏「まあ‥‥ホントにたいしたことないんだけどな――」

鈴(もしかしてアレの事かな……?)

一夏「今からさかのぼること幼少期、神社の境内の落ち葉を集めて焼き芋を作ろうって話になったんだ。その時は千冬姉も居なくて子供だけだったんだけど――」

女子「……」 ゴクリッ

一夏「――それで火をつけたんだけど、つい火力が足りないなと思って落ち葉を投入したら――」

鈴「ぼや騒ぎに発展したと」

一夏「あれ? なんで鈴知ってんだ?」

鈴「小学校高学年の清掃ボランティアん時も焼き栗騒動でやらかしたじゃない! ってかアンタ前科あったのね!」

一夏「はっはっはっ」

鈴「笑ってごまかすんじゃないわよ!」

女子「」

夕飯休憩

相川「そろそろうちのクラスでも、クラス代表っていうの決めよー!!」

瀬名川「特にアタシらは個性が弱えから上でシキってくれるヤツがいねえとまとまんねえしな!!」

谷本「それはふつうのガッコウでいうところのクラス長みたいなものなの?」

のほほん「よくわかんないけど、たぶんそーだと思うー!」

鷹月「うーん‥‥ぜんぜん違うと思うんだけど‥‥」

九段下「けどいったいどうやってそのクラス代表を決めるんだ?」

風霧「まず、過去の試合実績をもとに何人かの女子をピックアップした。今からその生徒たちを紹介する!!」

女子「……」 ゴクッ...

風霧「この3人だ」

セシリア「……」

鈴「……」

一夏「」

一夏「ちょっと待ってくれ‥‥。何で俺がノミネートされてるんだよ‥‥」

九段下「バカヤロウ、コッチのセリフだ!! さっさと下がらねえとブッころがすぞ!!」

箒「一夏を推薦したのは私だ」

鷹月「え!! 篠ノ之さん!?」

箒「私たちは女尊男卑の世界に生きてきたから、ただ単に萌えるとかブヒれるキャラを見ても魅力を感じなくなってしまった。むしろ一夏のような普通の男子にこそ魅力を感じてしまう」

相川「篠ノ之さん、ムリしてない‥?」

箒「ていうかぶっちゃけ幼馴染だから推したい」

一夏「サッパリ意味がわかんねえよ!」

鷹月「‥‥で、そのクラス代表を決めるための方法はどうするの?」

相川「やっぱ試合だよ!」

九段下「あたり前だぜ、ビームの撃ち合いしかねえだろうが!?」

この後、数時間に渡る激論の末に『ガマン強くて艶かしい背中を持ったエロいヤツ』がクラス代表という事になり、その条件を満たす勝負で決める事になった。

フォルテ「先輩、今一年一組でクラス代表を決める勝負をしてるらしいっすよ」

ダリル「そいつぁおもしれーな! 見学すっか!」

薫子「はいはーい、新聞部でーす。クラス代表決定戦を取材に来まs」

3人「な!?」

鈴「ふっ、うぅっ、あっ、ひっ」 ガクンガクン

セシリア「あぁんっ、あっあっ、はぁん!」 ビクンビクン

一夏「うっ……くっ……はぐっ」 ギシッギシッ

フォルテ「こ、れは……」

ダリル「……オイルマッサージ?」

鈴「飛ぶぅッ!!」

セシリア「死んでしまいますわ~~~!!」

一夏「か、勝ったーーーー!!」

箒「……指、疲れた……」

女子「…………な~んか納得いかない‥‥」

一夏は、何とかこの学園を建て直したいという考えを日増しに強めていた――
だがそんな一夏をアザ笑うかのように、学園の女尊男卑は止まる所を知らなかった‥‥

一夏「だけど‥‥あきらめずに前へ進めばきっと光は見えてくるはずだ‥‥」

箒「それはムリな話だな‥‥」

一夏「ほ‥‥箒! 言葉を返すようだけど‥‥あきらめるのはカンタンだ。けど、それじゃ何も始まらない――」

箒「もしお前が『アイツ』を倒すことができれば、この学校も変わるかもしれない。‥けどそれはムリな話なんだ」

一夏「『アイツ』って?」

箒「1年3組にいるんだ、とんでもないヤツが‥。アイツがいる限りココは毎日がギャルのモンド・グロッソ状態だ……」

一夏「‥‥でも、そんなヤツがいたら九段下さんが黙ってないだろ‥‥」

箒「……あまり大きい声では言えんのだが‥‥、ダブリの九段下さんは勝負を恐れて逃げ回っている――」

一夏「え!!」

一夏(し、信じられない‥‥。あのダブリの九段下さんが背中を見せるほどの敵……!)

一夏「と、とにかくその子に会ってみるよ‥‥。で、名前は何ていうんだ?」

箒「いや‥‥名前は知らない‥‥」

一夏「知らないってどういうことだよ!? 名前もわからないんじゃ、行っても会えないじゃないか!」

箒「行けば‥‥わかる‥‥」

一夏「え?」

一夏(行けばわかる‥‥どういうことだ?)

一夏(1年3組‥‥ここか‥‥。ここに『ヤツ』がいる‥‥!) ガララ...

紗奈「あ。おはようございます、織斑さん」

クルル「……」

一夏(たしかに、このクラスの女子はレベルは高い‥‥。けど、みんな見慣れた女子‥‥。ひと目見ればわかるというほどの女子などドコにもいやしない‥‥。俺も幾多の修羅場をくぐっているうちにこのレベルの女子にはドギマギしなくなっている)

凛「……」 ネコミミピコピコ

一夏(今の俺なら口説いても落とせそうな気さえする。時間のムダだ‥‥帰ろう‥‥。たぶん箒が何か勘違いしたんだろう。この1年3組に、『アイツ』はいない!!) ガラララ

一夏(いた‥‥!!)

???「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」

一夏(ま、間違いない!! この子だ! ‥‥けどひとつ気になることがある!!)

???「ウィィィィラァァァァウェイズラァヴュゥゥゥゥゥゥゥ」

一夏(本当にこの子は高校生なのか? ‥‥というより、日本語が通じるのか!?)

???「……?」 ピタッ

一夏「は、はじめまして。‥‥1年1組の織斑と申します」

???「…………」

一夏「あの‥‥お名前は‥‥?」

???「…………」

一夏(自分の素性を明かしたくないのか、それとも‥‥本当に日本語が通じないだけなのか――)

山田「さあ、皆さん授業を始めますよ~~~」 ガラララ

一夏(せ、先生が来た‥‥!! ‥‥ということは‥‥!?)

???「……イィィィフ、アァァァァイ……」 ボソッ

一夏(この子は『先生』じゃないのか!!)

???「シュゥゥゥゥドゥ、ステェェェェェィ……」 スタスタ

一夏(一縷の望みが絶たれてしまった。ひょっとして『先生』じゃないかという考えもあったけど‥‥。まあ『先生』だったとしてもそれはそれで問題あるけど‥‥一体この子は何者なんだ……? そしてどこからやってきたんだ‥‥?

一夏「……結局、『アイツ』に会っても何もわからなかった」

箒「そうか、恐ろしい女だ‥‥」

セシリア「先月編入してきたらしくて生徒名簿にも名前がのってありませんでしたわ」

鈴「‥‥て言うか、ホントにウチの生徒なのアレ‥‥」

一夏「そこで俺は、『アイツ』の名前を考えてみたんだ」

3人「・・・・・・どんな?」

一夏「――『ホイットニー』でどうだろう?」

箒「ホイットニー?」

一夏「ホイットニー」

鈴「ホイットニー?」

一夏「ホイットニー」

セシリア「カヴァー元の『ドリー』でなくて?」

一夏「ホイットニー」

一夏「敵と戦う前には、まず、その敵のことを知る必要があると思う」

セシリア「なるほど‥‥ホイットニーのことをもっとよく調べろ、というコトですわね」

箒「今、ホイットニーに関してわかっていることと言えば『肌の色が濃い』ということぐらいしかないな」

鈴「しょせん、アタシたちは高校生だからね‥‥。難しい情報を集めるのはムリがあるわ。とりあえずカンタンな情報から集めてみましょう!」

箒「まずIS適正値から調べよう! 私の姉は篠ノ之束だから一発で当てる自信がある」

鈴「適正値~?」

セシリア「あまり意味がないと思いますけれど…」

一夏「そうだな‥まず、できることから始めていかないと先へは進めない!!」

鈴「いた?」

一夏「おう‥‥教科書を読んでる」

ホイットニー「ユゥゥゥゥ、マイダァァァァリングュゥゥゥ」

一夏「意外とマジメだなーーー」

鈴「心なしか唇少し厚くなってない?」

箒「勉強家は適正値Bの確率が高い‥‥」

セシリア「いえ、お待ちを! よく御覧なさい!」

一夏「き、教科書がさかさまになってる!!」

箒「おっちょこちょいは適正値B+に多いぞ!!」

セシリア「おっちょこちょいというか‥‥読んでいないではなくて!?」

一夏「あ、あれは!?」

鈴「どうしたの!?」

一夏「いきなり腕立てを始めたぞ!」

ホイットニー「ビィタァァァァスィィィィィトゥ、メェェェモリィィィィィィズ」 ググッ

箒「いきなり腕立てを始めるのは適正値Aの可能性が高い!」

鈴「それホント!?」

一夏「おい、アレを見ろ!」

セシリア「どうしましたの!?」

一夏「まだ腕立てを開始して一回目だってのに‥‥早くも挫折してるぞ!」

ホイットニー「……………」

セシリア「な、なんて根気の無い方ですの!」

一夏「箒、『根気の無い子』は適正値いくつ?」

箒「……すまない、研究書に載ってない」

鈴「『腕立て』があんのに、何で『根気の無いヤツ』が載ってないのよ!」

一夏「あ、あれは!?」

セシリア「え!?」

一夏「こ、古武術の無拍子を‥!!」

ホイットニー「ゾォォットイズオォォァル、アアァァイムタゥキング」 スッスッ

鈴「箒! 古武術の無拍子は!?」

箒「無拍子をするヤツは間違いなくAだ!」

セシリア「箒さん、その文献どこから引っ張ってきましたの?」

一夏「あれを見ろ!!」

鈴「……今度は何よ!?」

一夏「教科書をカバンに入れてる!!」

鈴「フツーでしょ!!」

4人「…………」 ジーーッ

ホイットニー「…………」 ガララ

鈴「……昼休みだからか教室を出たわね」

一夏「行動にまるで一貫性が無い‥‥」

セシリア「やはりあなどれない方ですわね……」

鈴「適正値ならわかると思ったけど‥‥これじゃ難しいわね‥‥」

箒「ホイットニーの適正値がわかったぞ――」

一夏「え!? ホントに!?」

鈴「アンタ、テキトーに言ってない?」

箒「勉強家でおっちょこちょいで、なおかつ腕立てと無拍子の連続技をあやつる女性‥‥」

3人「……」 ゴクリ

箒「このタイプは統計上67%の確率で適正値Bだ!!」

一夏「適正値B‥!!」

鈴「そっか! Bだったのねホイットニーは!!」

一夏「ホイットニーはBだったのか‥‥」

セシリア「‥‥そうでしたのね‥‥」

4人「………………」

セシリア「――で‥‥この適正値をもとに何をすればいいんですの、私たちは?」

箒「………………」

一夏「………………」

鈴「………………」 グゥゥゥゥ

箒「‥‥昼餉にするか」

一夏「そうだな」

鈴「この時間混むわよ」

セシリア「……戦うのではなくて……?」

食堂

4人「」

谷本「ホント面白いねデュノアさんって! お腹が空いちゃうとソウルシンガーみたいになっちゃうの?」 パクパク

シャル「うん‥‥そうなんだ。おかしいよね、ハハ‥‥」 モグモグ

のほほん「そんなことないよー、もっと食べる~?」 グッチャグッチャ

シャル「ありがとう。でもスニッ○ーズはもういいかな‥‥」

4人「………」

セシリア「なんですのこのオチ」

鈴「アタシたちの努力って一体……」

箒「わ、私……は、もうISは……使わない……」

一夏「いや落ち込み過ぎだろ箒」

IS学園には魔物が棲む‥‥

一夏「俺はそうゆう超常現象のたぐいは信じない‥‥。そうゆうのは思い込みとかヒトの心が原因だったりするのが多いから科学的に説明がついちゃうからな」

箒「別に私はそういう話をしているのではない!」

一夏「じゃ、どういう話なんだよ?」

セシリア「まあ、ここで話していてもラチがあきませんわ‥‥。まず確認してみないコトには‥‥」

鈴「じゃ、いくわよ」

4人「せーの」 ガラララ...

ゴーレムI「………………」

箒「ほら」

3人「」

一夏「アイツってたしか5月に攻めてきた不明機だよな」

鈴「何でフツーに教室にいんのよ‥」

箒「たしかにIS学園は世界中のギャルが集まってくる‥‥が‥しかし‥‥」

ゴーレムI「………」

箒「アンドロイド萌えか‥‥」

セシリア「萌えではありまんわ! っというか人間ではないでしょうアレは!!」

一夏「いくらうちの学校がザル警備だといっても、機械を入学させるとは思えない‥‥。となればアイツは人間だと考えるべきじゃないか……」

ゴーレムI「……」 プシューーッ

一夏「深くため息つくなんて人間らしいじゃないか‥‥」

箒「きっと友人関係で悩んでいるんだろうな、わかるぞ‥‥」

鈴「ただの放熱機構でしょ!!」

セシリア「アナタたち何を根拠にアレを人間だと言い張るんですの!?」

一夏「だって腕時計してるぞ」

鈴「ウソ!! しかもホワイトゴールドカラーのフルスペック腕時計じゃない!」

セシリア「ですが‥‥時計をしてるからといって人間と認めるワケには‥」

鈴「て言っても、何を基準にアイツが人間かどうかを計るのよ‥‥」

一夏「あ‥‥電話かけてる」

2人「え゙え゙え゙!!」

ゴーレムI「………」

シャル「へぇ~、そうだったんだ。それでその後どうしたの、ゴレ美ちゃん?」

一夏「シ、シャル(ホイットニー満腹形態)も電話してる!!」

鈴「ゴレ美!?」

セシリア「ま、まさか彼女が不明機に電話をしていますの!?」

箒「よく番号を知っていたな!!」

一夏「腕時計して電話かけてるんだから人間として認めてあげてもいいんじゃないのか!?」

セシリア「いいえダメですわ!」

鈴「逆に電話かけられない機械って何!?」

箒「お前たちも強情だな」

シャル「じゃあこういうのはどうかな?」

一夏「うわっシャル! いきなりどうした?」

シャル「今LINEをゴレ美ちゃんに勧めたんだけど、これからボクがゴレ美ちゃんにいくつかスタンプを交えた会話をするよ」

鈴「それでスタンプの意味を理解したゴレ美? が人間らしく答えられるかテストする――と」

セシリア「なるほど、LINE式チューリングテストですわね!」

箒「‥‥で、そのチューイングテストとは何だ?」

セシリア「シャルロットさん! さっそく実験開始ですわ!!」

シャル「うん。えーっと、『使い勝手はどう、ゴレ美ちゃん?』と」

鈴「そーゆーまどろっこしいのいいから、さっさとスタンプ貼って!!」

シャル「ええ? ‥‥じゃあ、これ」 ピッ

一夏「よし、これでアイツが人間か機械かハッキリするぞ!!」

セシリア「答えられるものなら答えてみなさい!!」

鈴スタンプ『察しなさいよね、ばかぁ』

5人「………」

シャル「さっそく課金してる・・・・・・」

4人「っていうか販促!?」

しゃべるIS インフィニット・ストラトス \240

ラウラ・ボーデヴィッヒ 正式名称「C-0037」
ドイツ軍が誇る軍用デザイナーチャイルドの1人――
少佐の階級を持ちIS操縦者のみで構成される特殊部隊「シュヴァルツェア・ハーゼ」を率いる隊長でもある――
ラウラは敬愛する教官がモンド・グロッソの決勝戦で棄権を余儀なくされた原因である織斑一夏に復讐するためIS学園に転校してきたのだった――

ラウラ「む‥‥ここがIS学園か。薄汚い所だ‥‥」

3年生「あら? アナタ噂の転校生? よかったら道案内を――」

ラウラ「大衆はブタだ!!」

3年生「ヒッ!?」 ビクッ

ラウラ「無能なブタどもに我々の理想を叩き込み、支配するのだ!!」

3年生「あ、あの‥‥」

ラウラ「おいそこの、1年1組はどこにある? さっさと案内しろ」

3年生(えらい子と鉢合わせしちゃった‥‥)

3年生「こ、ここが1組よ」

ラウラ「フッ‥ここからは私一人で十分だ。お前はそこで待ってろ。この私の前では、この学校も有象無象の一つでしかない」

3年生「は、はあ‥‥」

ガラララ...

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」

ラウラ「」

ホイットニー(シャル空腹形態)「ウィィィィラァァァァウェイズラァv」 カラララ... ピシャッ

3年生「ど、‥‥どうしたのキミ? 顔色が悪いわよ‥‥」

ラウラ「‥‥私の視力は1.5だ。今ソウルシンガーみたいな奴がいた気がしたが‥‥目の錯覚など‥‥」

3年生「まあ‥‥この学校は世界中の子が集まってるから‥‥」

ラウラ「いや‥‥国家とか人種とかそういう次元の話ではない!!」

名前欄ミスってない?
トリップになってない普通の文字列になってるけど

ラウラ「何てたとえたらいいのか――、宇宙飛行士の試験で10人分の点呼を取ったら妙に船の構造に詳しい11人目がいたような‥‥」

3年生「何だか余計にわかんないけど‥‥別に怯えることなんてないわよ。落ち着いて入りなさい」

ラウラ「‥‥それもそうだな‥‥。だが‥今度はお前も一緒に見るんだぞ!! 絶対!!」

3年生「‥‥はいはい」 ガラララ

一夏「ホイットニー! そこは俺の席だろ!!」 ペチペチペチペチペチ

箒「‥っと言うかお前、ウチのクラスではないだろう!!」 ペチペチペチペチペチ

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」 ペチペチペチペチペチ

2人「…………」 ピシャ...

3年生「何か‥‥頭ハタかれたわね‥‥」

ラウラ「ああ‥‥私も今、本気で驚いているところだ――」

3年生「でもイジメとかケンカっていうより単なるスキンシップっぽかったし、きっと優しい子なのよ‥多分」

ラウラ「いいや、そんなハズはない!! あれは私をあざむくためのカモフラージュだ!!」

3年生「大丈夫よ! もし人間関係でトラブルが起こったら、先生がケアしてくれるわ」

ラウラ「だが‥‥そんな事して告げ口したと逆恨みされたらどうしよう‥‥」

3年生「……思ったより心配性なのね‥‥」

ラウラ「‥っと言うかそれ以前に、何であんなヤツが入学できるんだ?」

3年生「この高校、入試は模擬戦だけだから‥‥」

>>42
指摘サンクス

3年生「とにかく落ち着いて‥‥どんなに相手と自分が違ってても、結局は同じ人間よ。そう思えば何も怖くないわ」

ラウラ「――ニンゲン、か」

3年生「さあ、ドアを開けましょう!! 自信を持って!!」

ラウラ「ああ‥」

ガラララ

ゴーレムI『ラーランラーラララーラララー♪』 プッシュゥゥゥゥゥ

2人「」

ゴーレムI『ラーランラーランラーララr』 ピシャ...

3年生「‥‥人間、じゃなかったわね」

ラウラ「クラリッサか!? すぐに来てくれ大至急だ!!」

ラウラ(私の名はラウラ・ボーデヴィッヒ――ドイツ軍のデザイナーズチャイルドだ。自分で言うのも何だが私は優秀であった。性能面において、最高レベルを記録し続けた。一度は失敗作の烙印を押される事もあったが、教官の厚意により私は救われ返り咲いた。我が恩師の恥辱はこの手で雪がなければならない!!)

3年生「え、じゃあキミ織斑くんに会いたかったの? だったら最初からそう言ってくれればよかったのに」

ラウラ「う、うるさい‥‥」

3年生「彼が、その織斑一夏くんよ」

一夏「え、何ですか?」

ラウラ「貴様か…どんな奴かと思えばつまらん男だ」

一夏「ちょっと、待ってくれよ‥‥一体何の話だ?」

バシンッ!

一夏「う?」

ラウラ「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

一夏「いきなり何しやがる!」

ラウラ「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」

一夏「……! あの時の――」

鈴「ちょっとー、シャルがまたス○ッカーズ欲しがってるわよー」

ラウラ「この私の前では、貴様も有象無象の一つでしかない。我がドイツ軍の精鋭部隊であるシュヴァルツェア・ハーゼが直々に消してやろう」

一夏「てめえ――」

箒「ちょっといいか?」

ラウラ「む‥‥何だチョンマゲ」

箒「ウチの学校は法律上でも国際上でも『どこの国でもない土地』だぞ? 一軍事組織が介入できるものか」

ラウラ「‥‥え?」

シャル(食事中)「特記事項第21、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。生徒手帳にキッチリ書いてあるよ」 モグモグ

ラウラ「え」

セシリア「つまり実質的にアナタは――」

鈴「――孤立無援ってことね」

ラウラ「」

ラウラ(どうしよう‥‥編入手続き済ませてるし‥‥この学校じゃ我が軍の精鋭が使えない――)

箒「傷むか、一夏?」

一夏「いや全然、蚊が刺したかと思った」

ラウラ(だが、ここまで言った手前もはや引っ込みがつかん‥‥!!)

シャル「‥‥どうする?」

鈴「吊るす?」

セシリア「廊下引き回しの刑ですわ‥‥!」

ラウラ(よし!! 決定!! 無理を承知でこのままウソで押し切ろう!!)

3年生「ち、ちょっとみんな落ち着いて‥‥」

ラウラ「えーい貴様ら、よく聞けい!!」

全員「!?」

ラウラ「私はたかが復讐のためにこの学校に来たのではない!!」

全員「‥‥え?」

箒「何が言いたいのだ、お前は‥‥?」

鈴「じゃ、何なのよ? おかしいわよアンタ」

セシリア「アナタが教官が~云々と仰っていたんではないですの」

ラウラ「えーと‥‥ちょっと待て――私はな‥‥」

3年生「‥‥」 ハラハラ

ラウラ「世界の裏で暗躍する、旧第3帝国軍によって作り出された、クローンIS操縦者軍団の1人なのだー!!」

一夏「‥‥は?」

箒「第3帝国‥‥?」

鈴「クローンIS操縦者軍団~~?」

ラウラ「そうだ。歴史の闇に葬られた我らにとって、国際条約など紙切れ同然。その気になればこんな小国、いつでも焦土にできるのだ」

3年生(うわーやっちゃった~。この子何てコト言うのよ‥‥。そんな出まかせ小学生でも――)

ΩΩΩΩ「な、なんだってぇぇぇぇぇェンダァァァァァァァア!?」

3年生「え゙」

一夏「第3帝国って‥‥最初にナのつくチョビヒゲが率いたあの鉤十字マークの!?」

箒「へ、平穏の裏でそんな連中が蠢いていたなんて」gkbrgkbr

鈴「馬鹿! 何でそんな大事なコトアタシたちに話したのよ!?」

ホイットニー(シャル激情態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア!!!」

3年生(信じてる‥‥)

ラウラ(自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。何とか収拾をつけなければ‥‥)

一夏「‥‥で、その悪の秘密結社の少佐殿がこんな学校に何のご用で?」

3人「少佐殿! 少佐! 代行! 代行殿! 大隊指揮官殿!」

ラウラ「え‥だいたい!? あ‥私の事か!! えーと‥その何だ‥‥」

3年生「……」

ラウラ「その悪の第3帝国を滅ぼすために決まっているだろう!!」

箒「‥だが黒幕はお前の恩師だろう?」

ラウラ「あ!! そうか!! ‥‥それはそれでえーと‥‥」

4人「<●> <●>」 ジーーーッ

ラウラ「たとえ師といえど、女には正義のために戦わねばならん時があるのだ!! ツライがな‥‥」

一夏「……ひとついいか?」

ラウラ(まずい‥‥さすがにバレたか!?)

一夏「手伝わせてくれ!! 正義のために!!」

ラウラ「え‥‥ホ‥ホントか?」

箒「何を言っている、一夏」

鈴「アタシたちを忘れんじゃないわよ!!」

ホイットニー(シャル激情態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア!!!」

一夏「バカヤロー!! もちろんみんなも仲間だろ!!」

ラウラ「よ‥よーし、役者はこれでそろったな――」

一夏「今日から俺たちは正義の仲間だな!!」

ラウラ「よーーし!! 明日からみんなでがんばろォォ!!」

全員「おおォォォッ!!」





喫茶『ななつき』

絢音「あらあら、なんだか元気がないわねえあの子たち」

3年生「……」

ラウラ「……えらいコトになってしまった……」

ちょっと一旦書き溜めます
ノシ

転校先の学校に自国で控える精鋭部隊を呼べないという不測の事態に陥ってしまったドイツ軍の少女将校、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
衝撃的すぎるデビューを飾ってしまった彼女は保身を図るためにウソの上塗りを続け取り返しのつかない窮地に追い込まれてしまったのであった――

3年生「‥‥いくらなんでもクローンIS操縦者軍団っていうのは‥‥」

ラウラ「やめろ!! 部分的に事実も混ざっているのが余計にタチが悪い‥‥!!」

3年生「え!? ‥‥けど‥あのストーリーからすると、ボーデヴィッヒちゃんはこれからあの子たちと大隊を結成して悪の黒幕と戦わなきゃいけないのよね‥‥」

ラウラ「フン‥冷静に考えてみろ。あんな話を真に受ける有象無象どもだ。一日たったらキレイサッパリ忘れているに違いない」

3年生「確かに‥‥とんでもないぐらい信じ込んでたけど」

ラウラ「おそらく今頃、どこかで浮かれて遊んでいることだろう」

一夏・箒「少佐!!」

ラウラ「うわああああああああ!!」 ビクゥッ

3年生(フツーに憶えてたー!!)

一夏(ドクコス)「いや~~探しましたよ少佐」

箒(大尉コス)「‥‥敬礼」 ボソッ

シャル(シュレディンガーコス)「Miauen///」 ネコミミピクピク

セシリア(リップバーンウィンクルコス)「ソノキレーナカオヲフットバシテヤリマスワー」 ガシャン

鈴(ゾーリンコス)「嫌いな食べ物? モミジおろし」

弾(ルークコス)「何で俺まで‥‥」

蘭(ヤンコス)「‥‥死なせて」 ボソッ

数馬(トバルカインコス)「挿絵皆無のキャラと厚着のキャラて相性ええね」

ラウラ「‥‥どこで買ってきたんだそんなコス‥‥」

3年生「しかも数が増えてる‥‥!!」

鷹月「何アレ‥‥」

相川「ショーサ?」

のほほん「おりむー何してんのー?」

谷本「こらっ、近づいちゃダメ!」

ラウラ(う‥‥凄く恥ずかしい!!)

ラウラ「き、貴様ら。人前で少佐と呼ぶのは控えろ‥‥」

一夏「ナゼでありますか少佐!!」

ラウラ(マズい! コイツら本気だ‥何とかしないと‥)

ラウラ「‥‥とにかくあまり目立ってはダメだ!! だいたい何だその格好は! 迷彩効果が薄すぎるぞ!!」

一夏「ああ、コレですか。ダブリの九段下さんに相談したら目を輝かせながら嬉々としてコレら一式を快く手配してくださいまして」

3年生(ホマレちゃんんんんんんんん!!)

ラウラ「そもそも織斑一夏! 私がここに来たのはお前を――!!」 ハッ

一夏「俺を‥‥何です?」

ラウラ(そういえばそうだった‥‥。コイツらを警戒するあまり当初の本懐を忘れてしまうところだった――。私はコイツを消し教官の雪辱を果たすためにこんな島国に来たのではないか‥‥!)

一夏「少佐殿‥‥?」

ラウラ(見ればコイツはどうも本当に殴られた事も綺麗に忘れてすっかり頭を垂れている。ならばその愚臣ぶりを利用してやろうじゃあないか‥‥) ニヤァァァ...

3年生「ボーデヴィッヒちゃん、大丈夫‥‥?」

ラウラ「‥‥お前を、護るためだ」

一夏「え?」

ラウラ「場所を変えて話そう。ここでは『ヤツら』に気取られる」

校舎裏

ラウラ「ここならば良いだろう」

一夏「少佐、一体なにを――」

ラウラ「目立つのを避けたのはお前たちに危害が及ぶのを防ぐためだったのだ」

3年生「危害?」

ラウラ「突然だが、我々の存在が彼のラストバタリオンの耳に触れるところとなった」

箒「何っ!? 敵の本隊にか!?」

シャル「Miauen!?」

セシリア「マーナントイウコトデスノー」

ラウラ「ラストバタリオン本隊は私がIS学園と接触したことに危機感を覚え、密かに量産体制を整えていた擬似IS『聖槍騎士団・ロングィノスXIII』の実戦投入を進めているという情報を掴んだ。おそらく明日にでもヤツらはこの日本に乗り込んでくるだろう」

3年生(うっわ~~またエライ事を言い出したわこの子‥‥。何よロングィノスXIIIって‥‥。プレステのゲームじゃあるまいし――)

鈴「ええっ!?」

一夏「擬似ISだって!?」

箒「ラストバタリオンの科学力、恐るべしだな!!」

シャル「Miauen!!」

ラウラ「………うん」

3年生(‥‥また信じてるし。って言うかデュノアちゃんは何でずっとネコ語なの?)

ラウラ「本音を言うとだな、私は最初みんなと大隊を結成する事は望んでいなかった。IS適正を持っているとはいえ、平和な国で生まれ育ったお前たちを巻き込みたくなかったんだ」

一夏「それで最初はあんなに邪険だったのか」

ラウラ「ああ」

箒「見晴らしの良い場所では格好の的だったからここに場所を移したのだな」

ラウラ「そうだ」

鈴「シャルロットが楽しみに取っておいたスニッ○ーズを黙って食べたのも毒殺を危ぶんだからなのね」

シャル「Miauen‥‥!」

ラウラ「えっ!? あ‥‥うん、その通りだ」

セシリア「――それで、これからどうしますの?」

ラウラ「決まっている、ここでお前たちとは手切れだ。この大隊を解散する。累が及ぶのは私独りでいい」

一夏「なっ――!!」

鈴「何言ってんのよ!! アンタ一人で置いていけるわけないじゃない!!」

箒「そうだぞ! まだ結成してから半日も経っていないんだぞ!!」

シャル「Miauen!!」

ラウラ「わからないのか!! 相手は一夏を誘拐した張本人なんだぞ!!」

一夏「」

鈴「え?」

箒「どういう、事だ?」

ラウラ「――第二回モンド・グロッソで教官、織斑千冬が決勝戦で棄権した事は知っているな?」

箒「ああ、知っている」

鈴「たしか機体とメンタルの不調が原因って報道されてたけど‥‥まさか!?」

ラウラ「そのまさかだ。教官はさらわれた一夏を救うため決勝戦を捨てざるをえなかったのだ」

箒「そんな‥‥」

鈴「嘘、よね?」

一夏「――本当だ」

箒・鈴「」

ラウラ「一夏にあんな恐怖をもう二度と味わわせたくない。だから、みんなとはもうこれっきりだ」

全員「…………」

ラウラ(ククク、誘拐の件こそ事実だが誰がお前をかどわかしたのかまでは知らん。せいぜい自分の罪に苛まれながら潰れて逝け)

一夏「わかった。お前とはもうこれっきりだ。ここで別れよう」

ラウラ「ああ」

一夏「ならここからは俺が大隊を継ぐよ」

ラウラ「‥‥は?」

箒「な、何言ってるんだ一夏! 相手はお前のトラウマそのものなんだぞ!!」

鈴「そうよ! アンタ自分が言ってる事わかってんの!?」

一夏「‥‥怖い」

箒・鈴・ラウラ「え?」

一夏「あの日を思い出すのは怖い。夢に見ればもう二度と目を瞑れなくなる。けど、俺は戦うより逃げる方が怖い」

ラウラ「何を‥‥」

一夏「逃げたら、もう俺には戻れない気がするから」

ラウラ「………」

箒「フーーーッ‥‥」

鈴「何でアンタはそういつも針のムシロに向かいたがるのよ」

一夏「男の子だからな」

箒「まったく、私が言いたかった事を全部言うな。馬鹿者」

鈴「こうなったら地獄の底まで付き合ってやるわよ、バーカ」

シャル「Miauen♪」

セシリア・弾・蘭・数馬「え」

一夏「そういう事だ。オサラバです少佐殿。いずれ地獄(リンボ)で」 ビシッ

ラウラ「…………」

寮への通学路

3年生「あーあ。ホントに行っちゃったね、織斑くん。よかったの? ホントの事言わなくて」

ラウラ「‥‥何故だ」

3年生「ん?」

ラウラ「何故ヤツはああまで愚直に他人を信じる事ができる? ヤツは本物の馬鹿なのか?」

3年生「――そーね。少なくとも私でもすぐにわかる嘘を真っ正直に受け止めちゃうぐらいにはお馬鹿さんかもね」

ラウラ「‥‥」

3年生「それにしてもあの子たちも大変よねー。真っ直ぐに他人を信じちゃう彼を持っちゃうと他人の嘘にも付き合わなきゃいけないんだもの」

ラウラ「な!?」

3年生「あれ、気がつかなかった? 周りの子たちはとっくに気がついてたわよ?」

ラウラ「ば、馬鹿な! では何故すぐに私を糾弾しない!?」

3年生「さあ? 面白がって付き合ってたのか、一夏くんの純真な心を壊したくなかったのかしらね」

ラウラ「‥‥わからない。何故ヤツらは私を見逃す? 何故私を捨て置く?」

3年生「キミってよっぽど酷い競争社会で生きてたみたいね。人って考えてるよりもずっと他人に無頓着な生き物よ。特に平和なほどとっても」

ラウラ「………………」

3年生「キミの事も織斑くんの事も詳しくないけれど、キミたちって案外似たもの同士だったりするのかもね」

ラウラ「私が‥‥ヤツと!?」

3年生「キミたち2人はあのエックスデーを境に、同時に織斑先生に救われた。織斑くんはテロリストに監禁された恐怖から、キミは昔の尊厳を追われる程の競争から。でもきっと、2人の見ている方向は違う」

ラウラ「見ている方向?」

3年生「織斑くんは『救ってくれる人への憧れ』、キミは『救われる前の悲惨な常識』。昨日と明日、それぞれ互いに見つめている方向に縛られている」

ラウラ「‥‥」

3年生「わかりやすく言ってあげよっか。どちらかといえば織斑もキミに負けず劣らずウソツキだよ。おんなじぐらいわかりやすいウソばっかりつく」

ラウラ「ウソ? ヤツが?」

3年生「『俺がみんなを守る』、『みんなを脅かすやつはみんなやっつける』。実際に彼が成し得た事なんてだいたい未遂かオコボレ、実力も全然及ばないしとっても頼りない。でもねアタシ見てみたいんだ」

ラウラ「見たいって、何を?」

3年生「あの子のついてきたウソが、いつかホントになる瞬間」

ラウラ「‥‥」

3年生「ああいうウソはね、言い換えると『夢』って言うんだよ」

ラウラ「夢‥‥」

3年生「だからキミも、どうせなら夢をつけるウソツキになりなさい」

ラウラ「‥‥」

3年生「もうすぐ寮ね。3年の寮はあっちだからこれで」

ラウラ「私は、明日ヤツに本当の事を打ち明ける」

3年生「!」

ラウラ「その後、ドイツに帰る。ここは、私には眩し過ぎる」

3年生「‥‥そうね。ここは西日がキツいから、その赤い目には堪えるかもね」

ラウラ「それでは、さようなら」

3年生「うん。またね」

ラウラ「‥‥!」



ラウラ(『またね』‥‥か)

ラウラ「ふふっ」 ガチャッ

一夏「おかえり」

ラウラ「」

箒「うむ、先に上がっているぞ」

セシリア「ふぅっ。あらボーデヴィッヒさん、シャワーお借りしましたわ」

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」

鈴「ちょっと! 冷蔵庫の中身乾パンしかないじゃない! 悪いけどホイットニー、これでガマンして」

ゴーレムI「………………?」

ラウラ「‥‥なぜ、ここにいる」

一夏「今日から泊りがけで、お前を守る事にした」

ラウラ「‥‥」

一夏「大隊指揮官として、お前だけを犬死にさせる訳にいかないからな‥‥」

4人と1機「大博士(グランドプロフェッツォル)殿! 大博士! 代行! 代行殿! 大隊指揮官殿!」

ラウラ「……ありがとうございます、大隊指揮官殿――」





喫茶『ななつき』

絢音「あら? あの子今日は一人なのかしら」

ラウラ「ますますえらいコトになった‥‥」

IS学園 臨海学校
真夏のビーチに餓えたギャルどもを乗せ、バスは一路花月荘へ向かう
そのバスの後部座席で一人、息をひそめる女――織斑千冬、24歳。

千冬(私は現在、実質責任者としてIS学園の1年を仕切っている。ISの実力、人望の厚さ――というか狂信ともいえる崇拝――、どれをとっても右に出る者はいない。学園長さえ一目置く存在だ‥‥)

一夏「シャル、そのブレスレットそんなに気に入ったのか?」

シャル?「うん、とっても嬉しいyユゥゥニィィィィィィィドゥ」 グゥゥゥゥ

箒「一夏、シャルのお腹が空き始めたぞ」

一夏「しょうがないなー」 ゴソゴソ

千冬(だが‥‥そんな私でさえも、ひとつの大きな悩みと闘っていた。その悩みとは――)

セシリア「一夏さん、シャルロットさんにばかりズルいですわ! 私にも――」

一夏「お? セシリアもお腹空いたのか?」

セシリア「違いますわ! 私にもお土産を‥‥でもいただきますわ」

千冬(私は‥‥『非常に乗り物酔いしやすい』ということだ――) ウプ......

千冬(しかし旅行は大好きだから欠席するワケにはいかない。特に花月荘のサービスは一線級だ。旅館の和室からビール片手に青い海をながめているだけで優雅な気分にひたることができる‥‥)

谷本「ねえ、見てよー。織斑先生ったら臨海学校なのにハシャぐどころか眉ひとつ動いてないよ」

相川「クールだなぁ、憧れるなあ」

のほほん「私たちもおりむーせんせーを見習ってしーっだね♪」

千冬(私は小学校の時からこの苦難を気合いと根性で乗り切ってきた。自慢じゃないが、まだ一度も吐いたことはない)

一夏「なぁぞらぁえたぁぁ、こたぁえなぁんて、ここにひつよぉぉないからっ、っちびょぉぉに、みぇたせっかいをぉぉぉ、つぅぎぃえぇぇぇ♪」

ラウラ「ほう、上手いものじゃないか」

一夏「まあな、これでもけっこう鳴らしたクチだぜ」 ドスッ

箒「おい、一夏‥‥」 ガタガタガタガタ

一夏「ん?」

千冬「」

一夏(や、やべえ!! 入学以来、順風満帆にやってきたのに、ここにきて取り返しのつかないコトをーー!!)

千冬「(『早くどけ』と言いたいが口を開けると吐きそうになるので何も言えない)」

一夏「あ! そうだ!!」

千冬(どいてくれるか、そうか)

一夏「マイク回すの忘れてた。次、九段下さんですよね」

九段下「お、おう‥‥」

千冬(‥‥バスからおりたらぜったいころがす)

アナウンス『左右に激しく揺れますので、ご注意下さい』 キキィー

一夏「あ‥」 グラッ

千冬「一夏っ!」 ガシッ

ラウラ「教官!」

一夏「あ、ありがとう、千冬n」

千冬「」

一夏「ち、千冬姉ぇ!? 顔色真っ青だぞ、しっかりしてくれ!!」 ユサユサ

千冬(頼むからもう私にさわらないでくれ‥‥)

一夏「ひょ‥ひょっとして千冬姉‥‥って『アレ』なのか!?」

千冬(ああそうだ! 車酔いだ! お前何年の付き合いだと思って聞いているんだ)

一夏「ごめん、千冬姉。俺、ずっと傍にいたのに気づかずに‥‥。でも、大丈夫! そういう時のためのとっておきをみんなにも勧めてたんだ」

一夏「プリン作ってきたんだ」

千冬「」

一夏「腹減ってるんだろ‥‥。旅館だからスイーツ無いと思って作ってきたんだよ。‥‥ちょっとぬるくなっちゃったけど――」

セシリア・シャル「」 チーン

千冬「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 グワッ





鈴「はぁ!? セシリアとシャルと千冬さんがプリン食べて失神したぁ!? どういう事よ!?」

全員「………………」

一夏「いざ、海に着いたら十一時(オーシャンズ・イレブン)!」

昼食休憩 兼 書き溜め開始
ノシ

一夏「はい、お茶」 コトッ

シャル「ん、ありがと」 ズズッ

鈴「あ゙~~~、やっぱ夏は麦茶よね!」 ガンッ

ラウラ「そうだな‥‥」 カラン

3年生「涼しい風の入るコテージもあいまって、風流よね!」

ゴーレムI「…………?」

箒「さて。今日、みんなに集まってもらったのは他でもない――」

5人・1機「‥‥」 ザッ

箒「私達の中で、最強のヒロインは誰なのか――をハッキリさせたいのだ‥‥」

ラウラ「フン‥チョンマゲもたまには良い事を言う‥‥望むところだ。私はいつ誰の挑戦でも受ける!!」

一夏「俺は誰がヒロインでもいいんだけどなあ、そんなに重要か?」

鈴「アンタ、少しは主人公の自覚持ちなさいよ」

セシリア「……お待ちになって‥‥」

箒「‥‥何だ?」

セシリア「誰が一夏さんにふさわしいかを決めたいという考えはよくわかりました‥‥。その気持ちは私もよくわかりますわ。けれど、一言だけアナタがたに言っておきたい事がありますの‥‥」

ガチャッ

チェルシー「皆様、お茶請けのケーキが仕上がりました。どうぞご賞味を」 コトッ

3年生「わぁ、美味しそう!」

鈴「来た来たぁ!」

ゴーレムI「‥‥!」 プシュゥゥゥゥッ

ラウラ「ふむ‥‥これがケーキか」

シャル「どっちかっていうと、ボクはヒロインの座よりこっちが目当てだったんだよね」 ジュルリ

一夏「えっ、なにそれちょっと傷ついた」

チェルシー「では、失礼します」 バタン

箒「‥‥で、言っておきたい事とは何だ、セシリア」

セシリア「ヒロインの座を競うのであれば、別に私の別荘でなくてもよろしいでしょう‥‥?」 プルプル

箒「‥‥なぜお前はいつもいつもいいところで水をさすんだ?」

セシリア「フローリングを補修したばかりですのよ!!」 ダンッ

シャル「ケーキの前には、これだよね!」 ムシャムシャ

セシリア「食前にス○ッカーズを開けないでくださる!?」

ゴーレムI『67/100%』 ビビビビビビ

セシリア「他人の家の電力を盗らないでくださいまし!!」

一夏「あっ! ここクマが出没するらしいぞ!!」

セシリア「どうしてそんな場所に別荘を建てましたの!?」

鈴「‥‥そりゃアンタの勝手でしょ」

箒「それはそれとして、誰がヒロインかを決めるにはやはりISが一番だな」

3年生「でも、許可なしでISを展開しちゃマズいんじゃ‥‥」

ラウラ「私有地であれば問題あるまい」

鈴「んな車じゃないんだから」

箒「では、試合表を発表する! 第1試合はセシリアvsゴレ美だ!」

ゴーレムI「‥‥!!」 プシューーーーッ

セシリア「ですからっ、なぜ勝手に決めますの!?」

3年生「なんか、オルコットちゃんが大声あげるとこ初めて見たかも」

セシリア「当たり前ですわ!! ここは私の敷地ですわよ!! とにかくっ、迷惑ですからここで展開されるのは絶対におやめくださいまし! どうしてもやりたいなら屋外でおやりなさい!!」

箒「だってクマ出るっていうし‥」

セシリア「これ以上何か仰いましたらケーサツを呼びますわよ!!」

一夏「じゃあ話し合いで決めようぜ。それなら誰にも怒られずに済むだろ」

箒「な、何故だ!? 私はとにかく紅椿を試したいのだ!! ここで!!」

セシリア「箒さん? ほんとにころがしますわよ?」

一夏「今までの試合・実戦の実績・対戦内容・武勇伝を調べていけば、おのずとヒロインが誰かわかるんじゃないか?」

ラウラ「―――よし‥!! では早いところ『ラウラ・ミレニアム』の中で最強のヒロインは誰なのか、ハッキリさせてやるとするか」

シャル「…………え?」

鈴「…………ラウラ・ミレニアム?」

箒「ラウラ‥‥お前ドサクサにまぎれて何というコトを言うんだ‥‥」

ラウラ「え? 違うのか!? だってあの時少佐殿って――」

3年生「待って、ラウラちゃんはある意味リーダー向きだよ‥‥」

ラウラ「お前――」

3年生「この世界――整合性はさておき『とにかく言ったモン勝ち』っていうのはアリだと思うの!!」

ラウラ「いや‥‥私はそんなつもりで『ラウラ・ミレニアム』と言ったワケではないのだが――」

箒「けれど、それではこの2人の立場がないだろう」

ゴーレムI「‥‥」

シャル「ん、おいし♪」

3年生「うーん‥‥この二人はどう考えても別枠じゃない?」

鈴「って言うか、アタシは未だにこの無人機がホントにウチの生徒なのか疑問なんだけど‥‥」

箒「そんな事ではいつまでたってもヒロインなど決まらんぞ」

ラウラ「ああ‥‥やる気が無くなってきた‥」

セシリア「だったら早いところお帰りいただけないかしら‥‥」

一夏「まあ‥ぶっちゃけそんなのどうでもいいんじゃないのか?」

鈴「アンタ、またそういう事を――」

一夏「だって、ここにいるみんなが集まれば『怖いもの無し』なんだからな」

全員「‥!」

3年生「よく考えたら、凄いメンバーだもんね。何しろアタシ以外みんな専用機持ちだよ?」

シャル「ゴレ美ちゃんも居るしね」

ゴーレムI「‥‥///」 プヒュッ

一夏「そういう事だ。このメンバーなら、どんな凶悪な敵にも勝てるに決まってる!!」

箒「‥‥そうだな。私たちにとって、この世に怖いモンなんかありはしない!!」

クマ「フゴッ」

全員「」

一夏「クマだー!!」

鈴「一夏っ! ベルト外して投げつけて! クマはヘビが苦手なのよ!!」

一夏「よ、よし‥‥!」 カチャカチャ

シャル「‥‥」 モグモグ

3年生「シャルちゃん!? ノンキしてケーキ食べてないで逃げるよ!!」

シャル「大丈夫ですよ。だってIS使えばイチコロじゃないですか」

全員「‥‥あ」

クマ「フッフッ」

鈴「フッフッフ‥‥覚悟しなさいよ熊公!!」 ジャキンッ

セシリア「私たちの力を見せてあげますわ!!」 ヴゥゥン

ラウラ「ふっ、やっとIS二次らしくなってきたな!!」 ガシャコンッ

箒「紅椿! 見せてみろ‥‥お前の力を!!」 キィィンッ

ゴーレムI「!!!!」 ガゴォォォォン

一夏「ち、ちょっと待て! 俺何のためにベルト外したの!?」 ヨチヨチ

シャル「‥‥」 モグモグ

3年生「シャルちゃんも食べてないでIS展開して!! 私唯一生身なの!!」

クマ「ガァァァァァァァッ!!」

チェルシー「指先ひとつでダウンです」 スッ

全員「え?」

クマ「うわらばっ」 ドバッ

全員「」 ドチャドチャッ

チェルシー「まぁ、新鮮な熊肉が採れました。この後は熊鍋をお出ししますね」 ニコッ

全員「」

チェルシー「それでは、ごきげんよう」 バタン

全員「………………」

セシリア「そういえば、チェルシーはアジアでツボ押し師の資格を取得していましたわね‥‥」

全員「すっげぇ怖え~!!」

数時間後 廊下

セシリア「まったく、今日は散々な1日ですわ!!」

チェルシー「あら、まだ日も落ちていないうちにお怒りのようですね」

セシリア「当たり前ですわ!! 返り血の所為で部屋の大掃除に駆り出される身にもおなりなさい!!」

チェルシー「生身だった一夏様とシャルロット様、3年生の方は泡を食っていましたね」

セシリア「本当に何故こんな事になったのかしら‥‥」

チェルシー「フフ‥‥」

セシリア「何を笑っていますの!?」

チェルシー「いえ、お嬢様がこんなにも楽しそうにしていらっしゃるのは久しくお見受けしませんでしたので」

セシリア「え‥‥」

チェルシー「それに‥別荘とはいえ邸宅に財産の話題に触れない方を招いたのも、このチェルシーはオルコット家にお仕えしていて初めて目の当たりにしました」

セシリア「‥‥それも、そうですわね」

チェルシー「さあ、次は最大のメインディッシュが待っていますゆえ、お嬢様はお部屋にお戻りください」

セシリア「熊鍋の後にまだ次がありますの?」

チェルシー「はい。それも特上かつ最高級の皿をご用意いたします」

セシリア「えらく力を入れますのね。では私もお手伝いして――」

チェルシー「お嬢様のお手が加わりますと暗黒物質が出来上がってしまいますのでお戻りください」

セシリア「メインディッシュを秘密にしたいからってその方便はあんまりではないかしら」

チェルシー「お・も・ど・り・く・だ・さ・い」

セシリア「わかりました!! わかりましたから凄まないでくださいまし!!」 タタタ

チェルシー「‥‥」 ピッ...

セシリア「まったく、どうして私の周りにはおかしな方しか居ないのかしら‥‥」

セシリア(――チェルシーの言う通り、思えば家に他人を招いたのはあの日、お母様の遺産相続の会議の日以来ですわね。あれ以来、誰も我が家に踏み入る者はおりませんでしたわ‥‥。もう、3年も経ちますのね)

ガヤガヤ

セシリア「ん? 何か騒がしいですわね」

一夏(いいか。始めるのは『せーの』って言ってからだぞ)

箒(『せーの』の『の』と言った瞬間か? それとも『の』と言った後か?)

鈴(ちょっと! タイミングが重要なんだから妙な勘ぐりやめなさいよ!!)

ラウラ(では間をとって『n』と『o』の間で撃つか)

3人(それどうやって見計らうんだよ!?)

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」

3年生(ウソでしょ!? さっき肉をたらふく食べたくせにシャルちゃんがもうホイットニーになった!?)

ゴーレムI(………………!)

セシリア「ちょっと!! 私のいない間に今度は何をお始めになりましたの!?」 ガチャッ

パンッ

セシリア「」

箒・ラウラ「ハッピーバースデー、おのれ~♪」

鈴「ハッピーバースデー、アンタに~♪」

一夏「ハッピーバースデー、親愛なる~――」

全員「セシリア~~~~~♪」

セシリア「」

3年生「ハッピーバースデー、アナタに~♪」

セシリア「………」

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」

一夏「よっしゃ、上手くいったぁぁ!!」

鈴「サプライズ大成功ね!!」

箒「いやあ、土壇場で成功したな!!」

セシリア「あ、アナタたち――」

ラウラ「なんだ、私達が本気で今頃ヒロインの座を談義しに来たと思っていたのか?」

3年生「みんな、この日のために仕込みをしてたんだよ」

シャルスタンプ『やったね!』

セシリア「………………」

箒「よし!! 今日はハメをはずすぞ!!」

一夏「ちょっと待てよ箒、無礼講だからってお前‥‥」

セシリア「いえ‥‥構いませんわ」

一夏「‥え!?」

セシリア「今日は私のために集まってくださったのでしょう? 私が怒る理由は何ひとつありませんわ。好きなだけお騒ぎくださいな」

3年生「セシリアちゃん、キミ‥‥」

鈴「最初GBL(グレートブリテンレイシスト)女なんて思ってゴメンね」

箒「お前と親友でよかったよ」

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」

セシリア「けれど‥‥アナタがたにひとつだけ言いたい事がありますわ――」

一夏「なんだよ、改まって」

箒「なんでも言ってくれ」

セシリア「今日は私の誕生日ではありませんわ」

全員「え」

セシリア「それどころか、正確に言うと今日は私の両親の3回忌ですわ」

全員「」

昼食休憩

セシリア「けれど、間違えてしまっただけなのでしょう? 悪気があったワケではない事はわかっていますわ――」

一夏「そ‥そんな‥‥!」

箒「せっかく人気アイドル『みな林栗美』さんのサイン色紙をプレゼントに持ってきたのに‥‥」

鈴「誰なのよ、今日が誕生日だって情報流したの!!」

シャル「ま、待って! よく見たら、このあいだボクらに一斉送信されたメールには今日が誕生日だとは書いてないよ!」

ラウラ「い、いつの間にかシャルに戻ってる‥‥」

セシリア「え? 一斉送信?」

3年生「うん、このあいだ誰のものかわからないアドレスから『この日に集まってセシリアのサプライズパーティを開け』ってメールが私たちのケータイに届いたのよ」

一夏「てっきり誕生日だと思ってたんだけど‥‥一体誰が何のために――」

セシリア「このアドレス、見覚えがありますわ‥‥!」

全員「え!?」

セシリア「このアドレスは‥‥けれど、そんなハズ‥‥!!」

チェルシー「あら、これはどういう事でしょうか?」

全員「!?」

チェルシー「たしかに今日この日を祝うようご進言いたしましたが、なるほど。そういう事でしたか」

一夏「チェルシーさん‥‥!?」

箒「まさか、貴女が!?」

セシリア「チェルシー‥‥」 ズカズカ

鈴「ちょ、セシ――」

パシィ

全員「!!」

セシリア「アナタ、何故このような真似をしましたの!? いくらなんでも悪趣味が過ぎますわよ!!」

チェルシー「‥‥」 ツー...

鈴「ちょっと、落ち着きなさいよセシリア!!」

シャル「ともかく、話だけでも聞こうよ! ね?」

セシリア「ッ――」 フーッ フーッ

チェルシー「‥‥この日を置いて他に」

セシリア「!」

チェルシー「旦那様と奥様をお祝い申し上げるのは忍びないと思いまして」

セシリア「ッ!!」 グアッ

鈴「ちょ、ストップストーップ!! いいから落ち着いて聞きなさいよ!」

セシリア「今日はッ、お母様がお父様と共に死んだ日ですのよッ!? それを、アナタは!!」

鈴「あーもうっ、ラウラ! アンタもボサッと見てないで押さえるの手伝いなさいよ!!」

ラウラ「‥‥チェルシー殿。私も大概だがアナタの言葉足らずも酷いと思う。そろそろ本題に入ってはどうだ?」

チェルシー「‥‥そうですね。実を言うと、どう切り出そうか悩んでおりました」 スッ

一夏「それは、デジカメ‥‥?」

シャル「古い型だね。‥しかも潰れちゃってる」

箒「見事なまでに粉砕されているな。これは一体‥‥」

チェルシー「旦那様と奥様が遭遇した越境鉄道横転事故における、お二人の最後の遺品です」

セシリア「な‥‥!?」

チェルシー「3年前、お二人がかの地に向かった際に記録された全てが、このカメラに入っておりました。故に、真実を巡り相続権の政争に利用される事を避けるため、わたくしめが隠匿しておりました」

箒「な、中身は‥‥?」

チェルシー「記録媒体は粉々になっており、当初データの復元は困難であると言われました」

一夏「じゃあ、何で今これを?」

チェルシー「‥‥そのデータの復元が、先日ようやく完了いたしました」

鈴「できたのね!! あーもう何ではっきり言わずのらりくらりと回りくどくすんのよアンタは!?」

チェルシー「これが現像できた唯一の写真です。どうぞ」 スッ

セシリア「‥‥これが‥お母様の‥」

チェルシー「はい」

セシリア「‥ふざけたサプライズでしたらその顔を潰しますわよ」

チェルシー「ご心配は無用ですが、お気に召すままに」

セシリア「………」

ペラッ

セシリア「これは‥!?」

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1116102.jpg

一夏「夕日‥‥?」

箒「他には、何も映っていないぞ?」

鈴「なんなのよ、これ?」

セシリア「これは‥‥見た事がありますわ」

ラウラ「なに!?」

3年生「どこで!?」

セシリア「たしか、お母様の寝室の棚に、同じような構図の写真が飾られていたのを憶えていますわ。けれど、あの写真は遺品整理の時に処分されてしまって――」

チェルシー「この写真は、奥様が旦那様をお見初めした場所と同じ場所で撮られたものです」

セシリア「‥‥え?」

一夏「見初めたって、セシリアの両親ってたしか――」

鈴「うん。前に聞いたけど、父親が不甲斐なさ過ぎて母親が愛想尽かして冷め切ってたって話だけど」

チェルシー「とんでもない。お二人はとても親密な関係でした」

セシリア「‥‥嘘よ」

チェルシー「お二人のご婚約は、けっして政略のためではなく互いの深い愛情ゆえでした」

セシリア「嘘よッ!! でしたら、なぜお母様はあんな目でお父様を見ていたの‥? なぜあんなお父様を愛したの‥?」

箒「セシリア‥‥」

セシリア「ずっと怖かった‥‥。あの情けない父の姿を見る母の目がとても怖かった。自分はあんな目で見られたくない一心で、私はずっと――」

ゴーレムI「ピーーガガガッ!!」

全員「!?」

ゴーレムI「ガガッピーーピーピーボボバッ」 ガクガクガク

シャル「ゴレ美ちゃん!?」

鈴「ちょっと‥‥いきなりバグったわよコイツ!?」

チェルシー「失礼しました。ちょうど良い映写機がありましたので少々お借りします」

3年生「ハッキング!? そんな芸当まで‥‥」

箒「というか、ISをハッキングできるって一体‥‥」

一夏「映像が出るぞ――」

ゴーレムI「③、②、①、……」 ジーーー...

ロリセシリア『おかあさまー!』

セシリア「!!」

鈴「あれ‥‥小さい頃のセシリア?」

箒「カールじゃなく直毛だ!」

一夏「いや箒、驚くとこはそこじゃないだろ」

セシリア「これは、いつ‥‥?」

ラウラ「現像できたのはその1枚だけじゃなかったのか? チェルシー殿」

チェルシー「ええ。なにせ値が張りましたので、他のデータはデジタル情報に留める他ありませんでした」

3年生「ずいぶん被写体が遠いね。どこから‥‥」

シャル「あ! ズームアウトするよ!」

セシリア「ここは‥‥あの人がいつも入り浸っていた――」

チェルシー「はい。旦那様お気に入りの庭園です」

鈴「どうしてこんな遠くから‥‥?」

シャル「あ、映像が変わった!!」

恰幅の良い男性「すばらしい、セシリアちゃん!! キミのバイオリンの音色はまるで天からの福音だ!!」

鈴「‥‥誰?」

一夏「セシリアの親父?」

チェルシー「こんな肥えた豚と旦那様を一緒にしないでください」

3年生「急に辛辣!?」

豪著な女性『まったくですわ!! この場に立ち会えたわたくし達は幸せ者ね!!』

恰幅の良い男性『ええ、本当に。では奥様、これからも我が○○財団をよろしくお願いしますよ‥‥!』

豪著な女性『我が△△コーポレーションも、是非ご贔屓に!!』

鈴「‥‥ああ。たしかに豚ね、コイツらは」

ラウラ「金に貪欲なハイエナどもとも言えるな。演奏会にかこつけてコネを得にやってきたといったところか」

3年生「美辞麗句ばかり並べて、まったく嫌になるわ」

一夏「‥‥で、奥様って呼ばれたこの綺麗な女の人が――」

セシリア「お母様‥‥!」

セシリアの母『――セシリア、よくできたわね』

ロリセシリア『‥‥! はい、おかあさま!!』

セシリア「‥‥この時の事は憶えていますわ。周りの方の圧に押され、緊張しながらも演奏を終えて褒められたのがすごく嬉しかった‥。けれど――」

チェルシー「はい。この時は奥様とお嬢様だけが向かい、わたくしめは邸宅の掃除をしておりました」

セシリア「では‥‥誰が!?」

チェルシー「他に居ないでしょう?」

セシリア「まさか――!?」

???『あ、やべっ』 ガタタッ

全員「!?」

???『‥‥う~ん、やっぱ涙腺にクるなぁ、こういうの。周りの連中が居なけりゃもっと良かったけど‥‥それはそれで正気を保っていられたかどうか……』

セシリア「嘘よ!!」

セシリアの父『えーと、記録を切るには‥‥あれ? どうするんだったけかな。機種変したばっかだからわかんないや』 ガチャガチャッ

一夏「これが、セシリアの‥‥親父?」

鈴「冴えない顔だけど、なんだかあったかそう‥」

セシリア「違うっ!! こんな人わたしは知らない!!」

箒「セシリア‥‥」

セシリアの父『む‥‥? あっもしもし、ママ? いやあ、あんまり素晴らしい演奏だったんでボク感動しちゃって――』

電話『――ッ!! ――――ッ!?』

セシリアの父『ッ!! わかってるわかってる‥‥。ちゃんと撮れてるよ。‥たぶん』

電話『―――ッ!?』

セシリアの父『ダァーッ!! わかった、告白するよ! 実はビデオの切り方がわかんなくってさ‥‥え? うん、映ってるよ、今』

電話『――ッ!!』

セシリアの父『‥‥‥ッ!! 大きな声を出すんじゃない。セシリアに気づかれたらどうするんだ‥‥』

鈴「‥‥絵に描いたようなダメ親父ね」

箒「冷え切ってるというか、尻に敷かれてる?」

セシリア「ちがう‥こんなの知らない‥‥!!」

セシリアの父『バレたらボクは今後どうやってセシリアの成長の記録を撮っていけばいいんだい』

セシリア「え‥‥!?」

電話『‥‥‥‥。‥‥‥‥。……?』

セシリアの父『‥うん。そうだね。それがボクらの『家族のカタチ』だ』

一夏「『家族のカタチ』‥‥」

セシリアの父『キミに出来ない事をボクが、ボクができない事をキミが。ずっとそうやってきたもんな』

電話『‥‥。…? ‥‥‥』

セシリアの父『あ! そうだった。えーっと、スタートボタンを押してそのあt』 ブツッ

シャル「次の映像になる‥」

セシリア「‥‥」 ジリッ

一夏「駄目だ」 ガシッ

セシリア「!?」

一夏「逃げちゃ駄目だ。最後まで見届けなきゃ」

セシリア「ッ!! 離してッ!!」 バタバタッ

チェルシー「織斑様の仰る通りです、お嬢様」

セシリア「ッ!?」

チェルシー「これは貴女が、最後まで見届けなくては意味の無い、お二人の真の遺言なのです」

セシリア「ッ――」

鈴「もう観念しなさい、セシリア」 ガッ

セシリア「鈴さん!」

箒「これは明らかに、お前に宛てた彼らの最期のメッセージだ」

ラウラ「‥‥」

シャル?「エン‥‥エン‥‥」 ウズウズ

3年生「シャルちゃん‥‥偉いわ。そのまま持ち堪えて」

セシリア「みなさん‥‥」

セミロリセシリア『‥‥』 パンッ

一夏「鳩を撃った!?」

ラウラ「VRのライフル競技だ。それにしてもあの距離を当てるとは」

鈴「自己記録更新って‥‥凄いじゃないアンタ!!」

セシリア「‥‥」 プイッ

箒「お前、まだそんな態度を――」

チェルシー「ッ」 ブホッ

全員「!?」

チェルシー「‥‥いえ、失笑でした。なまじこの先を知っていますもので、つい――」

一夏「この先?」

スタッフ『記録更新おめでとうございます、セシリア選手!! ‥‥おや? どうしました?』

鈴「え!?」

箒「泣いてる‥‥!?」

スタッフ『どうかしましたか!? どこか痛むのですか?』

セミロリセシリア『――とが――』

スタッフ『?』

セミロリセシリア『――はとがかわいそう‥‥』

全員「」 ズギュンッ

セシリア「違いますのよ!? 違いますの!!」

鈴「いや、その――」 トゥンクトゥンク

箒「ピュアァァァァァッ!!」 ボカァァァン

ラウラ「箒!?」

シャルットニー「エンダッ、エンダッ」 ググググッ

3年生「シャルちゃん、頑張って!!」

一夏「いいじゃんか、セシリアにもああいう頃があったって事だろ?」

セシリア「」 ガスッ

一夏「いてえッ」

セシリア「――お母様が来なかったのが悲しかったなんて、言えるものですか」

鈴「え?」

箒「では、これは――」

セシリアの父『』 グズッ グジュッ

全員「あ」

セシリアの父『ママァァ、凄いよぉぉぉぉ。ウチのセシリアが『鳩が可哀想』って‥‥とっても優しい子だよぉおぉぉぉ!!』 ボロボロボロ

全員「‥‥」 チラッ

セシリア「」 カァァァァァッ

チェルシー「」 プルプル

セシリアの父『ねえっ、ママ見てる!? ママァァァァァッ!!』

警備員『ヘイッ、ォワットゥァユドゥゥイング!?』 ダダダダダ

セシリアの父『あっやべえッ!!』 ブツッ

一夏「これは……想像以上にきつい……」

鈴「アタシ、こんな親父が居たら死ねるわ」

箒「激しく同意する‥‥」

チェルシー「」 ブブッホォォォォォ

セシリア「チェルシィ!?」

3年生「あっチェルシーさんだ」

チェルシー「!?」

ロリチェルシー『だんなさま、なにをなさっているのでやがりますか?』

全員「やがっwww」 ブホォォッ

チェルシー「」 カァァァァッ

ロリチェルシー『おくさまにいいつけやがりますですよー?』 ガタガタッ

セシリアの父『わっチェルシー!? ダメダメッ触んないで!!』 ガタッガタタッ

ラウラ「――内容は把握していたのでは?」 プススー

チェルシー「‥‥これは消去したはず‥‥」

ゴーレムI『ゲッゲッゲッゲッゲッ』

鈴「今笑った!? アイツ!!」

箒「最後の抵抗で復元させたのか!!

3年生(ただのノイズだと思いたい‥‥)

一夏「ちょっと待て? 時系列的にチェルシーさん幼すぎないか?」

ラウラ「うむ。今20代前半だと仮定してこれは少々年齢が‥‥」

チェルシー「わたしとお嬢様は3つしか違いませんっ!」

全員「え!?」

鈴「じゃあこん時アンタ10歳前!?」

チェルシー「‥‥そんなに年増に見えましたか?」 カチン

セシリアの父『‥‥他の使用人さんたちには内緒だよ? バレたらボク、セシリアを撮れなくなっちゃうから』

ロリチェルシー『‥‥なぜだんなさまはおじょうさまをとーさつしてやがるのですか?』

セシリアの父『どこで覚えたんだいそんな言葉。違うよ、成長の記録。ママがカメラ片手にセシリアをおっかけまわしてたらサマになんないだろう?』

ロリチェルシー『そうなのでやがりますか?』

セシリアの父『ああ。ママにはママのやるべき事が、ボクにはボクのできる事があるのさ』

チェルシー「‥‥あとで知ったのですが、この頃はISが実戦配備された事もあいまって奥様は通常の倍のスケジュールを要求されておりました。そしてここだけの話なのですが、この時点で既にお嬢様はIS操縦者候補として注目されていました」

セシリア「え‥‥」

鈴「聞こえはいいけど要は体のいいモルモットって事ね。大人ってどこまで‥‥」

チェルシー「奥様はその激務の中、お嬢様を庇って負担に軋む身体を押してずっと研究機関の追及をせき止めておりました。その間、旦那様はせめて自分だけは影ながら『普通の家族』であろうと務めたのです」

一夏「これがその末にできた、『家族のカタチ』‥‥」

夕飯休憩
脱線と蛇足が酷くて情けなくて泣けてくる
ノシ

セシリアの父『それとね、これはセシリアに対するラブレターみたいなものなんだ』

セシリア「え!?」

セシリアの父『アルバムとかホームビデオっていうのは、家族がみんな揃って見るだけじゃなくて、遺された人達が思い出を取り戻すための『生きた証』でもあるんだ。もしボクが居なくなった後でも、セシリアやその後に続く子供達が思い出せるようにね』

箒「いなくなる‥って」

鈴「ひょっとしてこの人‥‥!!」

チェルシー「いいえ、旦那様は決して死を予感していたワケではありません。寧ろ旦那様は残された側の人間でした」

セシリア「どういう事ですの!?」

チェルシー「旦那様は戦災孤児でした。かつての紛争で家族を亡くし、街で野垂れ死にそうになった所をかつての奥様とお会いしたそうです。出会いの時でさえ、アザだらけの顔でアルバムを大事そうに抱えていたそうです」

3年生「いつ、知ったんですか?」

チェルシー「‥‥遺品整理の時に、ようやく私は旦那様を知る事ができました」

鈴「それって、けっこうなシンデレラストーリーよね」

一夏「鈴!」

鈴「わかってるわよ。きっとこの人に、そんな下世話な考えなんか無かったのよ」

ロリチェルシー『だんなさまは、せーてきとーさくなのでやがりますか?』

セシリアの父『ホントにどこで覚えてくるのそんな言葉!? そうじゃなくて、えーと何て言えばいいのかな? まあ、大人になったらきっとわかるよ』

ロリチェルシー『ふーん‥‥ところで、こんどはあたくしめをとーさつしてやがるのですか?』

セシリアの父『だから盗撮じゃ‥‥え? あーーーーッ!! 居ない! どこ行ったセシリア!? あーどうしよ! そうだ、こんな時は落ち着いて記録を切って――』

セシリアの母『あなた?』

セシリアの父『‥‥!!』 クルッ

セシリアの母『‥‥』 ニッコリ

セシリアの父『‥やあ、マm』 ドゲシッ ゴロンコロッ ブツッ ザーーーーッ

全員「‥‥」

一夏「キめる時はキめるのにもったいないなーこの人」

鈴「ホント典型的なダメ親父ね」

セシリア「ふふふふふふ」

箒「セシリア‥‥!?」

セシリア「あはははははは! 見ました!? 今のお母様の顔!! あんな顔は初めて見ましたわ!!」

全員「」

鈴「やばい、あまりのダメ親父っぷりを見て絶望をループしちゃって逆にハイになっちゃってるわアレ」 ヒソヒソ

ラウラ「うむ、しばらくそっとしておこう」 ヒソヒソ

一夏「‥‥うん。そっと見守ろう」

セシリア「あはは、あは、お、お母様が、あんなに笑って‥あはは」 ポロポロ

箒「……」

シャイットニー「エンダッ!! ‥‥。エンッ!! ……」

3年生「お願い、もう少し持ち堪えて‥‥!!」

‥‥その後も、ずっと一人のダメ親父が幸せな娘が育っていく姿を映している映像が続いた。時々娘がこちらと目が合いそうになると、そそくさと悲しそうにダメ親父は去っていく。その姿にゲラゲラ笑い転げながら、でも時々、俺達は得体の知れない寂しさを覚える。
やがて娘がジュニアハイスクールに入り始めた頃から、娘が映る頻度が目に見える程に減っていった。そしてその日は突然に、『思い出』を締めくくりにやってきた。

ホイットル「ッ!! ‥‥。ッッ!!」 ギシッ ギシギシ

3年生「ごめんね‥! ホントにごめん! でももうすぐで終わりだから‥‥!!」

鈴「何も縛りつけなくても‥‥」

ラウラ「終わり‥か。そうだな」

箒「‥‥この日付は!」 ハッ

一夏「二人の、最期の日だ」

セシリア「‥‥‥‥」

セシリアの父『‥‥懐かしいなあ。ここでボクとママはお互いを好きになれたんだよね。セシリアにも見せてあげたかったなあ』

セシリアの母『ちょっと、思い出を撮ってるんでしょう? もう少しあの子がここで見ている風に撮りなさい』

セシリアの父『あ、そっか!! ほらセシリア、ご覧!! ここでパパとママは大好きになれたんだよ!! 見てる~!?』

セシリアの母『‥‥あーもうっ、貸しなさい!!』 ガタッガタタンガタッ

セシリアの父『あ、ちょ‥‥何をするだっちょっとぉぉ!!』 ガッタンガタッ ガチャリ

セシリアの母『うん、これでよし!!』

セシリアの父『あ‥‥あーー、こりゃ参ったなあ‥‥。ボクが被写体になってどうするんだい』

セシリアの母『何言ってるの、貴方が被写体にならなきゃ誰があの情けない父親のビジョンになるのよ、馬鹿』

セシリアの父『ッ!! ‥‥あ~~~、そっか。そりゃ困るな。ずっと映ってたキミが、こんなだらしのないパパだって覚えられるのはシャクだよねえ』

セシリアの母『‥‥それ0点。ジョーク以前の問題よ。こっち見なさい』

セシリアの父『ッ‥‥!!』 ジワッ

セシリアの母『なにこれ。イジメ? イジメ動画なの? 全世界にアップロードするぅ?』

セシリアの父『だってッ、だっ、て‥‥嬉しかったんだ。誰かに憶えられるって事が。こんなに嬉しい事だなんてッ、思わなかったんだッ!』 ボロボロ

セシリアの母『‥‥‥馬鹿』

セシリアの父『!?』 ガチャガチャッ

セシリアの母『ご覧、セシリア!! これがッ、アナタの母! んでコッチの、ロクデナシのカイショーナシのナキムシがッ、アナタの父! よぉく脳味噌に叩き込みなさいッ!!』

セシリアの父『わ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙い゙、ゼジリ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!! 見゙でる゙~~~~!? ロ゙グデナ゙ジでガイ゙ジョ゙ーナ゙ジでナ゙ギム゙ジの゙ヴァ゙ヴァ゙だよ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙!! ゔわ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ん゙!!』

セシリアの母『ッ!! もうっバカ、愛してる!!』 グイッ

セシリアの父『む゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙』

ジーーーーーーーーーーーーージジジジジジッ ピッ

鈴「‥‥」 グスッ グスッ

箒「‥‥」 ッチーーーーン

ラウラ「‥‥」

3年生「‥‥」 ポロポロ

シャrもうホイットニーかもしれない「~~~~~~~~~~ッ!!」 バタンッ バタンッ バタンッ

一夏「‥‥セシリア」

セシリア「‥‥ええ、受け取りましたわ。これが、二人の『生きた証』ですのね」

チェルシー「はい。 ‥‥この動画は、どうなさいますか?」

セシリア「‥‥消してちょうだい。それで、この思い出は決着ですわ」

箒「せ、セシリア!?」

鈴「なにも、消さなくても!!」

セシリア「いいんですの。二人の姿は、もうここに遺っていますわ」 トン

鈴「でもっ――!!」

一夏「いいのか? 本当に」

セシリア「ええ、構いません。どなたか、シャルロットさんを解放してさしあげて」

箒「あ、ああ」

3年生「‥‥? ちょっと待って。 この動画!!」

鈴「え? ‥‥あっ!!」

一夏「あと数分だけ、ログが残ってる!?」

チェルシー「‥‥」

ラウラ「つくづく人が悪いな、なぜ最後の記録を見せない。それも削除し損ねたのか?」

チェルシー「‥‥いいえ。こちらの記録は、ご覧になる覚悟がある方にしかお見せしないつもりでした」

鈴「覚悟って‥‥何よ」

箒「‥‥残ってるのか? 事故当時の記録が」

全員「!!」

チェルシー「‥‥はい。といっても、当時既にレンズが潰れてしまい映像はなく音声のみです。人が死んでいる姿が映っているような衝撃的なものではありません。ただ――」

一夏「人が死ぬ瞬間の肉声が、記録されている」

チェルシー「ええ。所謂、断末魔です」

全員「」

チェルシー「お聞きになる勇気がある方のみ挙手ください。もっともお勧めも強制もいたしませんが」

鈴「そんなの、すぐに決められるワケないじゃない‥‥!」

3年生「アタシも遠慮するわ。直接的な映像がなくても、こういうのは精神衛生上には絶対に良くない!!」

ラウラ「私は構わんぞ。実戦こそ経験はないが、銃殺刑ぐらいなら見覚えがある」

鈴「軍人サマの特権ってヤツ? 冗談だとしてもアンタの口からは聞きたくなかったわ」

ラウラ「‥‥辛くなかったとは言っていない」

箒「私は見ようと思う。いつかはみんな経験する事だ」

鈴「‥‥見ない。はい、これで同点ね。次、一夏よ」

一夏「見るよ。そんでシャルをどこか別室に連れて行ってくれ」

鈴「妙に急かすじゃない。ひょっとしてビビッてんの?」

一夏「いや、ずっと『アレ』が気になっててさ。どうやら時間は無さそうだ」

箒「『アレ』‥‥? あっ!」

3年生「ゴレ美ちゃんの充電が!!」

ゴーレムI『10/100%』 シュゥゥゥゥゥ...

ラウラ「これも計算済みか? 貴様、どこまで他人を弄ぶつもりだ」

チェルシー「試す、と仰ってください。それと充電の件は今はじめて知りましたので悪しからず」

鈴「だ、そうよ? どうするか決めたら? 『オジョウサマ』」

セシリア「‥‥」

 ――どこだろう? ここは。カメラは‥‥ああ、ダメだ。何も映らない。
 ‥‥でもよかった。見渡すと人がいっぱい横たわってる。――生きてるのかな、死んでいるのかな。
 これが遺るとしたら、とても見せられない。特に、『あの子』には。
 ――痛いなあ。どこかヤっちゃったかなあ‥‥。これ、帰れるのかなあ。
 あっ、また馬鹿な事考えてるって、ママに怒られちゃう。それは、嫌だなあ。悪い癖だなあ。
 ――そうだ彼女は? 彼女はどこに‥‥?
 ――! ああ、そんな‥‥! アレは、もう駄目だ。助からない。
 『あの子』が、泣いてしまう。それだけは、嫌だ。いやだ。イヤダ。
 誰かに遺そう。この声を、この心を。心無い誰かに『あの子』が傷つけられないように、優しい人に託そう。
 誰かあの子を――『セシリア』を助けてあげてほしい。
 とても優しい『あの子』を、守ってあげてほしい。ボクらにはできなかった事を、どうか‥‥!!

 ‥‥勝手に殺すな、馬鹿。

 ――ママ?

 ‥‥言ったでしょ。『被写体』が思い出に残らないでどうするの。

 でも、だってボクらはもう――いてっ!!

 伝えるならあの子に伝えなさい‥‥! 生きているうちに、精一杯伝えなさい! ずっと、言えなかったあの言葉を。

 あっ! そっかあ、まだ一度も言ってあげてなかったや。

 ‥‥そんな親があるか、馬鹿。

 うん。そうだね。‥‥『セシリア』、聞こえる?





『愛してる』























 ――あれ? まだ生きてるや。

 ホント馬鹿!! ビデオに残すならちゃんと切り方を憶えてなさいって言ってるでしょ!!

 あはは、そうだねえ。‥‥でもね、押したつもりだったんだ。

 え?

 押したつもりだったんだけど、――無いんだよ。

 ――ああ、もう馬鹿。

 いつまで続くのかな、これ?

 すぐよ、あっと言う間。

 じゃあ、伝えられるうちに。

 もう一個付け加えましょ。





『つよく、いきて』




………………。

ゴーレムI『EMPTY』

全員「‥‥」

チェルシー「以上が、お二人の正真正銘のご遺言です」

鈴「‥‥もう次は無い?」

チェルシー「ありません」

3年生「隠している事も?」

チェルシー「ありません」

箒「本当に?」

チェルシー「ありません」

ラウラ「必要なら尋問も辞さないぞ」

チェルシー「くどいですよ。本当にもう何もありませんよ」

一夏「‥‥だってさ。どうだ? 感想は」

セシリア「‥‥」

チェルシー「――しかし、意外でした。まさか反対していた方々までお聞きになるとは」

鈴「あとで逃げたって言われたらかっこつかないからね。でもかえってよかったわ。こうやって結束の強さを確認できたんだから」

3年生「けど、やっぱりキツいわね。こういうの」

ラウラ「‥‥」

鈴「アンタはどうなのよ。ずっとダンマリだけど、ひょっとして面白くなかった?」

ラウラ「あまり他人を馬鹿にするな。ただ、わからなかっただけだ。――家族というものが」

鈴「クローンIS操縦者軍団だから?」

一夏「鈴」

鈴「‥‥」

セシリア「私も、わかりませんでしたわ」

鈴「え?」

箒「セシリア?」

セシリア「ずっとわからず、結局わかりませんでしたわ。何故、二人がよりによってこの日にここへ向かう事を選んだのか」

箒「たしかに、二人がこの日に鉄道に乗らなければ事故には遭わなかった。でもそれは、既にタラレバの話だろう? どうしようもない問題だ」

鈴「終わった事だもん。しょうがないわ」

3年生「だけどこんなの、救われなさ過ぎる‥‥!!」

セシリア「私が知りたいのは、そのようなセンチな質問ではありませんわ」

箒・鈴・3年生「え?」

セシリア「どうしてチェルシーはこの日を『二人を祝う日』と言ったのか‥‥!」

全員「!!」

チェルシー「‥‥『彼女』の電源ケーブルはどちらでしょう?」

ラウラ「これだ」 スッ

チェルシー「どうも――」

ラウラ「‥‥」 フイッ

チェルシー「‥‥何のつもりでしょうか」

ラウラ「隠し事はするなと言った」

チェルシー「‥‥忘れ物ですよ」

ラウラ「‥‥」 スッ

ガチャッ

ゴーレムI「!」 ヴゥゥゥゥゥン

チェルシー「少々お時間をください。旦那様は無駄な画像ばかり撮られたもので」

鈴「今度は画像? グロいのは勘弁よ」

チェルシー「いえ、もっと過去のものです」

鈴「?」

チェルシー「これです」 ピッ

セシリア「これは‥‥二人の結婚式の?」

箒「当然の事だが、今までの映像より若い‥」

鈴「でも、これが何なのよ?」

ラウラ「‥‥なるほど、そういう事か」

鈴「え?」

3年生「あっ、見て!! 写真が撮られた年月日のタグ!!」

箒「これは‥‥」

一夏「二人の命日と同じ日‥‥!?」

3年生「そしてこの場所は‥‥!!」

セシリア「――あの場所ですわ‥‥!」

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1116102.jpg

チェルシー「もう、おわかりですね?」

セシリア「結婚記念日‥‥!?」

鈴「それじゃ、この場所に向かったのは‥‥!!」

チェルシー「ノロケ――のつもりだったのかもしれませんね」

3年生「その所為で、事故に遭っただなんて‥‥!!」

箒「理不尽な‥‥!!」

セシリア「ふ、ふふふふふ」

一夏「セシリア?」

セシリア「あはははははははははははははは!!」

一夏「セシリア!? おい、しっかりしろ!!」

鈴「ちょっと、とうとうマズいんじゃないの!?」

セシリア「ハッ! いいえ、もう大丈夫ですわ‥‥」

箒「しかし‥‥!」

セシリア「チェルシー。とんだ謎かけを出したものですわね。こんなものを見せるために、私を欺き続けてきましたの‥‥?」 ユラァ

チェルシー「‥‥弁明のしようもございません」

セシリア「――チェルシィィィィィィ!!」 ガシィッ

3年生「ちょっ‥‥!!」

箒「一夏ッ!!」

一夏「ああっ!!」

セシリア「――ありがとう」

全員「え?」

チェルシー「‥‥お嬢様?」

セシリア「これでやっと、やっとこの呪縛から解放されますわ‥‥」 ズルル...

チェルシー「お嬢様‥‥」

セシリア「ずっと、わからなかった。『良い子』を演じているうちに、自分が愛されているのかわからなくなっていた‥‥」 トサッ

箒「セシリ――」

一夏「‥‥」 スッ

セシリア「‥‥けれど、これでようやくわかった。私はお母様から、あの人から――」

チェルシー「‥‥」

セシリア「――『お父様』から、愛されていた」 ポロッ

チェルシー「‥‥はい!」 ポロポロ

セシリア「――よかったぁ‥‥ぁぁぁぁああああああああああああァァァ!!」 ボロボロ

箒「セシリア‥‥」 ポロ...

セシリア「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ‥‥!!」 ボロボロ

3年生「‥‥ッ!!」 ポロポロ

鈴「何よっ、知ってたわよ、バカァッ!!」 グシッ グシッ

一夏「‥‥ラウラ」

ラウラ「なんだ」

一夏「‥‥お前にしかッ‥!」 フルフル

ラウラ「‥‥」 コクリ

シャル?「‥‥?」

ラウラ「頼む」

シャル?「‥‥!」 スゥッ

全員「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア!! ウィィィィラァァァァウェイズラァヴュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥァァァァ!!」 ボロボロ

セシリア「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」 ボロボロ

チェルシー「‥‥ッ!!」 ボロボロ

ずっと、ホイットニーが歌っている曲は知っていたのに、その曲名を俺達は知らなかった。
けれど、それを今、おそらくここに居る全員が思い出していた。
題名は『I Will Always Love You』。
意味は――『いつまでもあなたを愛している』。

消化分報告
#1 不良上等
#2 ワル自慢だよ人生は
#4 ファイトクラブ
#6 ロックユー
#7 ラヴァー・ボーイ
#11 ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル
#13 野望の帝国
#14 帝国の逆襲
#15 北斗暗殺計画
#8 センチメンタル・バス
#22 キラー・クイーン
#23 前田最良の日
#41 We are the world (もうこじつけた)

...続く

「――以上が、織斑一夏の報告になります」

『そろそろ動くべきかしらね』

「正直、この件に関しては、対応が遅すぎる気がします」

「いろんなとこから小言がびっしり‥‥。もう待てないよ~‥‥」

『‥‥決めたわ、そろそろ動き出しましょう。このSSがこのSSであるために』

「では!?」

『近く、機を窺って接触するわ。あなたたちはバックアップを』

「りょ、了解しました!」

「承知~♪」

『覚悟してもらいましょう、織斑一夏くん』

「ところで、少々お話があるのですが」

『なあに?』





本音・虚「会長って、顔が大きいですよね」

メカ無『――そう?』

書き溜め開始
臭いSSにしちゃってスマン
ノシ

箒「一夏!! また凄い奴がよそのクラスにいるんだ!!」

一夏「‥‥もういいって。ホイットニーだのゴレ美だの‥悪いけど、この学校はいろんなのが出るからもう何を見ても驚かないぞ。だいたい前回とんでもない脱線事故起こしたんだから作者も慎重なんだよ。ラウラの時もセシリアの時も、ホントにアレ以上のテコ入れと自己解釈が出たら手に負えないぞ」

箒「何の話かわからんが、いいから来い!! とにかく凄いぞ‥‥あんなギャルは初めてだ‥‥」

一夏「毎回同じ事を‥‥言ってない気がするのは何故だろう? まぁホイットニー、ゴレ美ときたからどうせ次は淫魔とかその辺だろ? パンチ弱いって。もう俺は何が出てきても驚かないからな!」

箒「フン‥‥お前の発想は実にDT臭いな」

一夏「DT言うな! 見ればいいんだろ!?」 ガララ

メカ無『‥‥』

箒「見ろ」

一夏「」

箒「‥‥どう思う、一夏?」

一夏「タイプ的に考えるとゴレ美が『A.I.Sエクソーダ』で、アレが『コドッタ・イーデッタ』かなあ?」

箒「冷静に分析するな!! 素直に天丼を驚け!!」

九段下「おい、大変だメカ無!!」

メカ無『どうしたの? 何が大変なのかしら?』

一夏(下の名前できたかあ‥‥!)

箒(この場合、若本規夫さんか斎藤千和さんかで判断に困る!!)

九段下「聞いてくれ、メカ無!! 昨日ウチのアリが『放課後バトルフィールド』で相手チームとモメちまったらしくてよ‥‥そしたら向こうのチームから『闇の舞姫』が出てきちまったんだよ!!」

メカ無『『闇の舞姫』‥‥たしか人気VRサバイバルゲーム『放課後バトルフィールド』における悪名高いプレイヤーキラーね‥‥』

九段下「どうするよ!? アイツ出てきちゃウチも引くワケいかねーぞ!! こうなりゃウチも兵隊集めてやるしか――」

メカ無『‥‥待ちなさい』 ガシャン

九段下「‥え!?」

一夏・箒(今『ガシャン』っつった!?)

メカ無『要するに、先にチョッカイを出したのはアリ――榊くんなんでしょ? 私は運営にコネがあるから、そこを通じてレギュレーションに介入すれば済む話よ』

九段下「オイ!! それじゃあ皮被りの鳥野郎と変わらねえじゃねえか!!」

メカ無『心配しないで‥‥アナタたちのチームに累は及ばないわ。私自身の気まぐれでかき回したって事にしておくから』

九段下「な‥何でお前はいつもそうやって汚れ役買うんだよ? メカ無はホントに実力あるのに、これじゃあいつまでたっても安く見られちまうじゃねえか‥‥」

メカ無『――気にしないでください『先輩』。いくらダブリとはいえ、アナタは大切な『後輩』なんですから』

九段下「お前――まったく、やれやれだぜ」

メカ無『またお得意のジョジョ? 少し照れるわ』

一夏・箒(九段下さん何年ダブってんだよ)

メカ無『何ですって? もういちど言いなさい!!』

谷本「ッ!! ご、ごめんなさい会長!! 私、どうしてもあのソフトのISOデータが欲しくて、ついあのサイトに――」

メカ無『それでモメ事に発展したら元も子もないでしょう!! 別に謝られても私は何もしないし、何も嬉しくないわ』

谷本「そ、そんな‥‥!!」

メカ無『‥‥本当に謝る相手なら、そこにいるでしょう?』 クイッ

相川・鷹月「‥‥」

谷本「2人とも、どうして‥‥!?」

メカ無『私は寛容であると同時に非情よ。アナタの謝罪なんか欲しくなんてない。だから、今度は2人に安心を与えてあげて。私はそれで、充分だから』

相川・鷹月「癒子ちゃん‥‥」

谷本「2人とも‥‥ッ、うわああぁぁぁぁぁ!! ごめんなさい、心配かけてごめんなさいぃぃぃ!!」 ガバッ

相川「もうっ、次からは著作権法をちゃんと守ろうね!」

鷹月「リッピングなんか絶対にダメなんだから!」

谷本「うんっ、うんっ――!!」 ボロボロ

一夏・箒(何のミニドラマ!?)

櫛灘「やっぱりメカ無会長は、この学校の守護神だね‥‥!」

風霧「かなわないな‥‥メカ無会長には」

メカ無『‥‥よしなさいよ、もう』 ゴッシュ、ゴッシュ

一夏・箒(ウォッシングしてる!!)

九段下「なあ、メカ無。ちょっと話があるんだけど」

メカ無『なあに?』 キュッキュッキュッ

九段下「アタシさあ‥‥お前を初めて見た時から気になって気になって仕方ねえ事があるんだ‥‥」

一夏・箒(ついにツッコむのか!?)

九段下「たぶん、全校生徒のみんなが同じ事を思ってる‥‥。いや‥世間の連中もお前を見て気づいてると思う‥‥。ひょっとしたらお前自身だって気づいてるんじゃねーかと思うくらいだ‥‥。つーかむしろ‥‥気づいてんだろ?」

メカ無『水臭いわね、何の話かしら?』

九段下「いや‥‥何か‥その‥言いにくくてよ‥‥」

メカ無『私はアナタたちの事を『ファミリー』だと思っているわ。何を言われようと、私は気にしないわ』

一夏・箒(『ファミリー』?)

九段下「‥‥そっか。よし‥‥言わせてもらうぜメカ無――」

一夏・箒(頼む、ツッコんでくれ!!)





九段下「お前、タイ曲がってんぞ」

メカ無『え? あら、ホントだわ』 キュッ、キュッ

一夏・箒「そーじゃねーだろ!!」

昼食休憩
ノシ

断花「~♪」 トーマーラナーイースピードーデー オーモーイーガアーフレーテークー

ブツッ ....。

断花「あ、あれ?」

端末『記録メディアを認識できませんでした』

断花「あーー、まただぁ‥‥」 ピッピッ

九段下「あ? どした、断花ちゃん」

断花「あ、九段下さん‥‥。実は、最近このミュージックプレーヤーが媒体を認識してくれなくなってしまって‥‥。よくいいところで音が止まっちゃうんです」

九段下「修理に出すと金かかるぜ?」

断花「う~ん、誰か身近に機械に詳しい人が居ないでしょうか‥‥」

九段下「いるわけねーだろ――と言いかけたら整備学科の連中が居るじゃあねえか」

クルル「‥‥専門外」

九段下「んだよ。役に立たねーなあアイツら」 チッ

断花「誰か機械に強い人は‥‥」

クルル「‥‥」

九段下「――しゃあねー、またアイツに頼るしかねえか~」

九段下「ってわけでメカ無ィ、これ直してくんねえかなあ?」

メカ無『‥‥なるほど、事情はわかったわ』

一夏・箒「‥‥」 コソコソ

メカ無『じゃあ贔屓にしてるメーカーに問い合わせて直してもらうよう言っておくわ。代金は予算から落としておくから』

九段下「え? お前が直してくれんじゃねーの?」

メカ無『え?』

九段下「いや、今の流れ的にお前がチョチョイとあっという間に直してくれるパターンじゃあないのかよ?」

断花「できれば‥すぐに聴きたいです」

メカ無『申し訳ないけれど、それは流石にムリよ』

九段下「どして?」

メカ無『――実は私、機械オンチなのよ‥‥』

九段下・断花「えっ!」

一夏・箒(は?)

メカ無『私だって万能じゃないのよ? いつも言っているじゃない』

九段下「けどよー‥‥」

相川「かいちょおぉぉぉぉぉぉ!」

メカ無『今度はなあに?』 グルン(180゚)

鷹月「谷本ちゃんがまたやらかしちゃって‥‥今度はC○avingっていうフリーソフトで動画を落とそうとして間違えて破損データを突っ込んじゃってPCが動作不良を起こしちゃったんです!!」

谷本「うわぁぁぁぁん、なんとかしてくださいぃぃぃぃぃぃぃ!!」 ギャンギャン

メカ無『またぁ!? ホントに懲りないわねえアナタは!! タダより怖いものはないのよ!?』

鷹月「すみません、これからは強く言っておきますから‥‥」

相川「会長、なんとかなりませんか?」

メカ無『う~ん、パソコンねえ‥‥』

谷本・鷹月・相川「‥‥」

メカ無『――ごめんなさい、やっぱり私には機械はムリ』

谷本「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 ガーン

一夏・箒(なわけないだろ!!)

※ちなみに作者はPCを初期化して解決しました

虚「あ、会長。こちらにいらっしゃいましたか」 ガララ

メカ無『あら虚さん。書類の整理は終わったの?』

虚「はい、一通り。‥‥ところでこの後お時間は空いていますでしょうか?」

メカ無『構わないわ。で、用件は?』

虚「はい。‥‥本音」

のほほん「かいちょー! あたしのVitaに偽ト○キャプチャつけるの手伝ってー!!」

メカ無『あーもうっ!! 皆揃って一体なんなのよ!!』 ダンッ

全員「会長!?」

メカ無『どうして皆は私に押し付けてくるの!? それはアナタ達みんなのお願いは出来る限り叶えてあげたいわ! そのための努力も惜しまない! けれど――』

全員「けれど?」

メカ無『けれど、どうしても機械だけは絶対にダメなのよ~!!』

一夏・箒(嘘を言うなッ!!)

九段下「‥‥すまねえ。アタシら、知らず知らずのうちにお前を追い詰めちまってたんだな」

谷口「何となく会長は機械に強そうな気がしちゃって、ごめんなさい」

メカ無『いいえ、私も取り乱し過ぎたわ。許してちょうだい』 ゴッシュゴッシュゴッシュ

一夏・箒(またウォッシングしてる‥‥)

メカ無『何というか、機械とかそういうのは何て言うか苦手意識が強いのよ。ほら、よくあるじゃない? 何気なく過ごしていた日常は実はコンピュータで演算されていた仮想世界だってサイバーパンク小説』

断罪「まあ、使い古された設定ですよね」

九段下「まさかお前、普段からいちいちそんな事気にしながら学校に通ってたのか? ちょいと自意識過剰過ぎなしねーかメカ無」

メカ無『流石にそこまで私はセンチじゃないわよ。‥‥けれど、何というかとても不気味に思えて気持ち悪いのよ、そういう機械に支配されているような世界観が。まるで自分が、ただの時計仕掛けの人形だって言われてるみたいで‥‥』

一夏・箒(それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?)

九段下「ところでよー、ずっと聞きたかった事があんだけどさあ」

メカ無『悪いけれど、もう機械はまっぴら御免よ。ぶっちゃけもうキャパオーバーしちゃってるから』 プスプス...

九段下「そうじゃなくてよ、アタシ‥お前を初めて見た時から気になってしょうがない事が一つあんだよ‥‥!!」

メカ無『なんだか前もその話をしなかったかしら? 一体何なの?』

九段下「お前見るたびに気になってよ‥‥最近じゃあ夜も眠れねー有り様なんだよ」

一夏・箒(やっとツッコむのか)

九段下「きっと、みんな気になってると思うんだよ‥‥。けど、何かお前に言いづらくてよー‥‥もしかすっとコレ言ったらお前が傷つくんじゃってよ――」

虚「待ちなさい。会長への中傷はご法度よ」 ザッ

のほほん「そーだよー、めっ!!」

メカ無『下がりなさい2人とも。私はかまわないわ』

虚・のほほん「会長‥‥」

メカ無『生徒会長権限を以って、貴方の発言を許可します。さあ、何かしら?』

一夏・箒(そうだ、早くツッコめ!!)

九段下「よし――一回しか言わないからよく聞けよ‥‥」





九段下「お前、不気味なぐらい髪真っ青だぞ」

メカ無『そういうアナタだって真っ赤じゃない』

一夏・箒「たしかに気になったけどそこはどうでもいいだろぉぉぉぉ!!」







職員室

黒崎「あら、山田先生。今日も見事な緑の黒髪ですね」

泉堂「トリートメント、何使ってるんですか?」

山田「え~~? 特に何も‥‥」 デレデレ

まさか丸1日放置してしまうとは‥‥面目ない
書き溜めに入ります
ノシ

IS委員会 vs 亡国機業 抗争激化

亡国機業実行部隊が一『モノクローム・アバター』 定例会議

スコール「‥以上が潜入させたレインからの、IS学園の内情報告よ」

 スコール・ミューゼル(実年齢4~50代)
『モノクローム・アバター』の実質的指揮官。
 その圧倒的カリスマ性から、『黄金の八咫烏』の異名を持つ――。

スコール「来週に行われるIS学園の学園祭、この機を逃す手はないわ」

部下A「我々が着々と軍備を進めている事も知らず‥‥呑気なものだ」

部下B「他の部隊に先駆け、我らだけで事を済ませましょう」

オータム「‥‥」

 オータム(20代)
 スコールがその右腕として信頼する『モノクローム・アバター』のNo.2。
 かなりキレている構成員だがいつもスコールの傍に侍っており『できてんじゃあないか?』ってくらい仲が良い。

スコール「逸らないで。たしかにまたとないチャンスではあるけれど、同時に危険なリスクが付き纏うわ。今回は慎重を期して単独潜入による目標の拉致・必要であれば実力行使も厭わないわ」

オータム(……スコール、鼻毛が出てるぞ‥‥)

部下A「単独任務‥ですか」

部下B「報告では更識の手の者が付いているとの事ですが、その不測の事態に対応できる逸材が適任‥‥という事ですね」

スコール「場合によってはレインにも動いてもらうわ。それに‥‥あり得べからざる事態だけれど『M』を出す事も考えておくわ」

部下A「な‥‥!!」

部下B「アレを投入するおつもりで!?」

オータム(間違いなく出てんぞ、スコールゥゥゥ‥‥) プルプル

スコール「あり得べからざると言ったはずよ。本来なら彼女を出さないに越した事はないわ」

オータム(気になって気になって、ブリーフィングに集中できねえ――) ピキピキ

スコール「‥‥失礼」 スッ

オータム(よし!! 気がついたぞ!! アタシの祈りが通じたか‥‥。コレでアタシも安心して――)

スコール「」 ミョーン

オータム(な‥‥!? 移動しやがった‥‥!!)

部下A「しかし、だとしても『M』の制御はまだ万全ではありません! いくら何でも実戦に出すのは些か早計では‥‥?」

部下B「おい、よせ!!」

スコール「‥‥」 スッ

オータム(落ち着け‥科学的に考えて移動するワケねえだろ!! けど鼻をまた触った‥‥て事はひょっとしてまた移動すんのか?)

スコール「――くどいわ」 ボーン

部下A・B「!!」 ゾワッ

オータム(多重影分身しやがったぁぁぁぁぁぁ!!)

スコール「‥‥アナタ達2人には任せられないわね。やはりオータム、この件はアナタに一任するわ」

オータム「え‥‥アタシがぁっ!?」

部下A「あのオータムが、動揺している‥‥。あんなオータムを見たのは初めてだ‥‥」

部下B「オータムと『M』は酷く相性が悪い。やはり彼女にしてもこの任務は凄絶と映るのか‥‥」

オータム(やべえ‥‥全然話聞いてなかった‥‥)

スコール「まあ気持ちはわかるわ。アナタも内心興奮してるんでしょう? オータム」

オータム(一体何の話なんだ? いや‥‥んなこたぁこの際どうでもいい!! ああ‥いま自分が興奮してるって事は否定しやしねえ‥‥スコールの鼻毛の事を言うべきかどうかでな!!)

スコール「年端もいかない男の子を痛めつけるのを愉しみたくて、ゾクゾクが止まらないんでしょう?」 ニヤァァ

部下A・B「‥‥!!」 ゾクリ...

オータム(ちげーよ!! アタシが言いてえのはお前の鼻毛なんだって――!?) ハッ

スコール「?」

オータム(ああっ!? 今アタシはとんでもなく重大な事に気づいちまった!! ‥‥それは‥‥)





オータム(アタシも出てる‥‥) ミョーン

スコール「ふふ‥‥もう任務を終えてからの『オタノシミ』を考えてるの? しょうがない子ね」

オータム「‥‥」 ススッ

スコール「いいわ。まずは任務前に少しガス抜きしようかしら、ね?」

オータム「」 ボーン

具合が悪くなっていまいち更新できなくなった‥‥
もうちょい待っとくれえ
ノシ

IS学園 学園祭当日

3年生「1年1組は『メイド喫茶』かあ‥‥一夏くんも『おかえりなさいませ、お嬢様♪』なぁんて出迎えてくれるのかしら?」

シャル「いえ、一夏は別の格好で仕事をしているそうですよ、先輩」

3年生「え、じゃあそれって執事コスで来るのかしら。やだぁ///」

シャル「はは、楽しそうでよかったです。あ、着きましたよ」 ガララ

一夏「はい、サービス込みで3400円でーす」 ガチャガチャ、チキチーン\

弾「ボってんじゃねーよ!! オトモダチ価格で負けてくれよ~」

3年生・シャル「」

一夏「あ、HOHKIちゃんRINちゃん。お客様2名入りまーす」

HOHKI・RIN「お、おかえりなさいませ~、おじょうたま~♪」

3年生「たま!?」

シャル「な、なんか思ってたのと違う‥‥!」

HOHKI「ど、どうぞこちらへ~♪」 ヒクヒクッ

RIN「ご、ご案内いたしますぅ~♪」 ピキピキ

3年生「ちょ、ちょっとこれどういう事?」 ヒソヒソ

シャル「なんかメイド喫茶っていうか、未成年が働いちゃいけないお店みたいになってない?」 ゴニョゴニョ

HOHKI「‥‥聞くな」 ボソッ

RIN「アタシたちだって好きでやってんじゃないのよ‥‥」 ブツブツ

シャル「一体何が‥‥」

チェルシー「おかえりなさいませ、お嬢様がた。当店支配人のCHERRYと申します」

3年生・シャル(あんたの仕業かぁぁぁぁぁ!!)

チェルシー「2名様、窓際の席までお連れいたします」

3年生「チェルシーさん!! なぜアナタがここに!?」

チェルシー「‥‥業務中にプライベートは差し挟まない主義なのですが、アナタがたと私の仲です。質問にお答えいたします。実は一夏様から本場メイドの技術公証を依頼されまして」

シャル「全然間違ってませんかこれ!? まるでここ悪質なガールズバーですよ!!」

チェルシー「滅相もありません。当店は認可を受けているいたってクリーンな店舗ですよ」

3年生「言い方がもうソッチ系じゃない!!」

チェルシー「ご冗談を‥‥あら?」

モブA「いいじゃんよ~へっへっへ‥‥」

モブB「サービスだって、サービス~」

谷本「お、お客様。やめてください~」

3年生「ほらぁ、勘違いしてタチの悪い客が居るじゃない‥‥」

シャル「誰が招待したのあんな人達‥‥」

チェルシー「‥‥」 ツカツカツカ

シャル「チ、チェルシーさん?」

チェルシー「ご主人様、失礼ですが会員証はお持ちでしょうか?」

モブA「あ?」

モブB「かいいんしょう~?」

シャル・3年生(ホントに会員証って何!?)

モブA「じゃかましいんだよボケ! たかが女学生の出し物でウダウダ言うなや!!」 バシャッ

チェルシー「‥‥」 ポタッ ポタッ

3年生「酷い‥‥」

シャル「ホントに誰の招待で来れたの‥‥」

モブB「ギャハハハッずぶ濡れじゃのぉ。ほれ、ワシのズボン濡れたらワレが拭いてくれるんかいな?」

チェルシー「‥‥ハーマイオニー」 パチンッ

モブA・B「あ?」

チェルシー「どうやらお客様は酷く酩酊していらっしゃるご様子、少し介抱してさしあげて」

ハーマイオニー「ハァイ♪」 ズシン

モブA・B「」

3年生「デカァァァァァいッ!?」

シャル「ちょ、アレ頭身どうなってるの!?」

ハーマイオニー「エクスキューズミー♪」 むんず

モブB「ギャァァァァァァァァ!!」 グンッ

モブA「兄貴ィィィィィ!!」

ハーマイオニー「ビークァイエット、アンドドントビーアフレイド」 ユサユサ

モブB「ヒイイイイイイイイ!!」

モブA「こんワレ、兄貴を離さんかい!!」 ブンッ

ハーマイオニー「~♪」 ボフッ

モブA「な、ビクともせえへん!? まるで鉄板しこんだようなハラしとる‥‥!!」

シャル(背は高いし――)

3年生(腕力は凄いし――)

モブA(ごっついタフネス――)

ハーマイオニー「パナモ~ント、レプロブレ~モ~♪」

モブB(そして何より、エプロンドレスでおおわれてもなお、あふれ出すこの…『母性』……) トゥンク トゥンク

ハーマイオニー「モンナ~ム~~‥‥♪」

 ついていきたい、どこまでも――。





一夏「はい。抱っこサービス、写真撮影サービス、及び清掃代込みで54600円になりま~す」 チキチーン\

モブA「来年は先生も連れてきてええですか?」

一夏「考えておきます」

モブB「」 ポケー...

3年生「凄い‥‥しっかり商売が成り立ってる‥‥」

シャル「どこであんな人材拾ってきたんですか?」

チェルシー「私の職務上の同僚です」

ハーマイオニー「ミナサーン、ドーゾゴヒーキニー♪」

セシリア「あの、一夏さん」

一夏「あ、CECILEさんもう休憩ですかね?」

CECILE「そうでなくて‥‥アナタにひとこといいたいことがありますの。一夏さんは根がマジメですからひとつのことに集中すると、まわりが見えなくなっていますのよ‥‥」

RIN「それについてはアタシも言いたい事あるわ。だいたいアタシの名前の綴り『RIN』じゃなくて『LING』だし」

HOHKI「だがはっきり言うぞ! 今お前はとてもおかしな方向に走っている!!」

一夏「はあ? 俺のどこがおかしいっていうんだよ?」

CECILE「よく思い出してくださいまし! このお店に真に必要なニーズを!!」

一夏「え‥‥真に必要なニーズ‥‥?」

3人「‥‥」

一夏(そ‥‥そうか!)

RIN改めLING「思い出した!?」

一夏「ああ、ありがとうみんな! みんながいなかったら、俺はすべてを失っていたかも知れない!」

HOHKI「いや、わかってくれればそれでいいんだ」

CECILE「これで一安心ですわね」 ホッ

一夏「CHERRYさん! 今までのお客さんのお会計、消費税込みで計上し直してくれませんか!?」

3人「お前も接客しろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ドゲシッ×3

少し休憩
なんかどんどん銀魂っぽくなってしまうな‥‥
ノシ

裏方

ラウラ「‥‥難儀したようだな、お前も」 フキフキ

チェルシー「いえ、旦那様と奥様の遺産を巡る政争に比べれば何という事はありません」

ラウラ「そうか‥‥で?」

チェルシー「はい、やはり何人か紛れ込んでいるようですね。今のは末端ですらない雇われだったようですが、本隊はこの比ではないでしょう」

ラウラ「‥‥やはり狙いは――」

チェルシー「はい、一夏様で間違いないでしょう」

ラウラ「くっ、最悪の懸念が早くも現実のものになったか‥‥」

チェルシー「‥‥それにしても、意外です」

ラウラ「ああ、こんなにも早く連中が動くとは思わなんだ」

チェルシー「いえ。貴女の事です、ラウラ様」

ラウラ「‥‥?」

チェルシー「貴女たちの中で一番私を嫌っていた筈の貴女が真っ先に私を頼った事が一番の誤算でした。どういった心境の変化で?」

ラウラ「‥‥別に好き嫌いはこの際関係あるまい。実際今でもお前の事は好かん。ただ単に利用できると踏んだまでだ」

チェルシー「そうですか」

ラウラ「‥‥それに」

チェルシー「それに?」

ラウラ「こんな馬鹿な事をみんなで楽しんでいられるなら、私は何でもするさ」

チェルシー「‥‥そういえば学園祭の催し物でメイド喫茶を提案されたのは――」

ラウラ「話が長くなった。そろそろ仕事に戻ろう」

チェルシー「‥‥はい」

廊下の物陰

レイン『――ってなわけで、アタシが引き入れたチンピラどもは全滅だ。なんだか満ち足りた顔して出てきやがったから蹴り入れてやった』

オータム「チッ、大口叩いてたわりに役に立たねーじゃねえか」

レイン『そうがなるなよ。んじゃプランB頼んだぜ、巻紙さんよ』

オータム「ケッ、言われねえでも最初からそのつもりだよ。お前がモタついてた所為でキツいスーツに苦しめられる時間が延びちまったじゃねーか」

レイン『太った?』

オータム「ちげーよ!」

レイン『あっ、鼻毛処理したか?』

オータム「したわボケ!!」

レイン『あとそれからよ――』

オータム「しつけえんだよ!! てめえはアタシのオカンかよ!!」

レイン『――やり遂げようぜ、今度こそさ』

オータム「‥‥、おう」

レイン『ん。じゃな』 ブツッ

オータム「ったく。大きなお世話なんだよ、バーカ」

九段下「いやー、よかったなーメイド喫茶」 ガラララ

牧島「ああ。あのハーマイオニーさんがよかった」

オータム(‥‥おっし! んじゃ行くか) パンパンッ

巻紙「失礼しまーす! あのー織斑一夏さんはいらっしゃいますk」 ガラララ

ゴーレムI「\4,800」 チキチーン\

数馬「嘘やろ!? ぼったくりとちゃう自分!?」

巻紙「」

美術室前

レイン(――おせーなあ、アイツ)

ピピピッ ピピピッ

レイン「合言葉は?」

オータム『まみむめもッ!! おいレイン、話がちげーぞ!!』

レイン「‥‥? どうした、少し落ち着けよ」

オータム『ここにっ、ここに織斑一夏はいねえっ!! い、居るのは‥‥』

レイン「おい、しっかりしろ。結論だけ話せ!」

オータム『くそったれ!! なにがメイド喫茶だ!! ここは、ここは――』





ホイットニー・ハーマイオニー『エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア、ウィィィィラァァァァウェイズラァヴュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥァァァァ』

オータム『ただのメイド服着た化け物が居るクラブじゃねえか!!』

レイン「‥‥は?」

オータム『もう一度言う! ここには2メートル近い巨女とめっちゃ色黒のソウルシンガーしかいねえ!! レジ打ちも得体の知れねー何かが打ってやがった!!』

レイン「‥‥要するに、織斑一夏はそこには居ないんだな?」

オータム『居ねーつってんだろ!! レイン、どうなってんだチクショー!!』

チェルシー『‥‥お客様』

オータム『あ!?』

チェルシー『当店では店内での通話は禁止しております。電源をお切りになるか、こちらが物理的にお切りさせていただきますが、よろしいでしょうか?』

オータム『‥‥聞こえたか? 作戦失敗。繰り返す、作戦失敗! オーバー!!』 ブツッ

レイン「‥‥何なんだよ、一体」

フォルテ「せんぱ~い!!」 タタタッ

レイン「!!」

フォルテ「すんませんっす! 直前のお化け屋敷が面白くて長居し過ぎちゃいましたっす!!」

レイン「‥‥」

フォルテ「もしかして、怒ってるっすか‥‥?」

ダリル「――いいや、アタシも今来たとこだよ」 ニコッ

フォルテ「ホントっすか!? じゃあ約束通り、ここからは一緒に見て行きましょうっす!!」

ダリル「ああ、見に行こう。ドコから見に行く?」

フォルテ「はいッス!! あそこの美術部が今『爆弾解体ゲーム』をやってるみたいっすよ!!」

ダリル「そうか」

フォルテ「‥‥」

ダリル「‥‥何だって?」

フォルテ「爆弾解体ゲームっす!!」

ダリル「いやいや、それホントに美術部の出し物なのか?」

フォルテ「はい! 何でも、『芸術は爆発だ!!』って格言がニッポンにあるみたいっすよ?」

ダリル「それ、たぶん意味が違うぞ」

フォルテ「とにかく行きましょうっす!! 楽しそうっす!!」

ダリル「え~、でもなあ‥‥」

フォルテ「」 ウルウル

ダリル(う‥‥マズい。こうなるとフォルテは聞かねえからなあ。けど爆弾解体には苦い思い出がある。あれは2年前、アタシたちの部隊の1人が――)

フォルテ「」 ブワッ

ダリル「ダァーーッわかった、わかったよ!! 行くよ一緒に!! 2人で楽しもう!!」

フォルテ「は、はいっす!!」 パァァァッ

ダリル(はぁ、何でこうアタシはこういうのに弱いのかなあ?) ガラララ

一夏「弾、金髪と黒髪どっちが好きだ?」

弾「な、何だよヤブから棒に?」 プルプル

メカ無(自爆シークエンス)「」 ピッピッピッピッピッピッ

ダリル「」

もっかい休憩ついでに解説

ハーマイオニー:「キミP!!」より身長を割り増しして出演。黒人ではなくそのままスケールアップ。若干ローマイヤ先輩が混ざってる。歌ってたのは「愛の賛歌」。

九段下・断花・アリ・クルル・牧島・泉堂・闇の舞姫:「放課後バトルフィールド」よりほぼそのままで出演。

黒崎:「だぶる先生らいふっ」より出演。名前だけなら埴御も参戦。

凛・瀬名川:「よくばりサボテン」より出演。凛は名前だけなので戸惑った人も多かったはず。遠坂でもなければ渋谷でもない。

紗奈・風霧・絢音:「しまいま。」より出演。絢音さんはクロ高生が喫茶店に入り浸っていたので出番が増えるはず。

ホイットニー:作者がシャルロッ党に嫌われている原因。フレディに相当する歌手という事で抜擢。

こんな糞SSを贔屓にしてくださってありがとうございますm(__)m
ノシ

弾「ん~、金髪の方が好みかなあ?」

一夏「じゃあ青を切るか――ん?」 クルッ

ダリル「」

フォルテ「‥‥」

一夏「だ、駄目だぁぁぁ!!」

弾「え、何!?」

一夏「ここへきてイメージカラーが真逆のコンビが来ちまった!!」

弾「は!? どういう事!?」

フォルテ「なんか、どこからツッコめばいいんだかわかんないっす‥‥」

ダリル「ああ、アタシの場合は特にそうだ‥‥」

メカ無(自爆シークエンス)「」 ピッピッピッピッピッピッ

レイン(何で織斑一夏がここにいる? 何でよりによって更識と一緒にいる?? そんで何で更識が爆弾になってる!?)

ちょっと待て金と青ってどんな接点があるんだ!?

弾「で、結局どっちを切ればいいんだよ、一夏!?」

一夏「ちょっと時間をくれ!! ‥‥ってもう時間が――」

レイン(くっ、んな事考えてる場合か!? 今アタシがやるべき事は――)

一夏「くっそー、こんな事なら化学より技術の授業を集中して受けとけばよかった!!」

弾「化学は何やってたんだよ?」

一夏「化学兵器対策」

弾「やっぱこの学校ぜってーおかしいって!!」

ダリル「ええい、どけガキども!!」

弾「おわっ!?」

一夏「ダリル先輩!?」

ダリル「部長! この役、アタシが引き継ぐがいいか!?」

美術部部長「ええっ!? でも無力化フェイズをいきなり別プレイヤーがやるのはつまんn」

副部長「」 ゴニョゴニョゴニョ

美術部部長「‥‥! うん、オッケー☆ 存分に頑張って!!」

一夏「ええっ、いいの!?」

レイン(ぐぅっ、放っておけずつい引き継いじまったが、この配線を見ると久々に背筋が冷えてくる‥‥)

弾「おい、大丈夫かこの人? 顔色真っ青だぞ?」

レイン(思えば2年前、あの時もアタシの一瞬の躊躇の所為でアイツは犠牲になっちまった‥‥)





2年前

レイン「ジェロニモー!!」

オータム「よせレイン! アイツはもう間に合わない!!」

ジェロニモ「ワタシ‥モウタスカラナイ。コレ、中南米ノツネシキネ」 ピッピッピッピッピッピッピ

レイン「アタシの‥‥アタシの所為で‥‥!!」 グスッ グスッ

オータム「ウダウダ言ってんじゃねー!! さっさと逃げねーとアタシらも巻き込まれるぞ!!」 ガバッ

レイン「ジェロニモーー!!」

ジェロニモ「フフッ、コレデイイネ‥‥。コノ配線はブラフ、一度起動シタラ二度ト止メラレナイノネ。ワタシハコノ爆弾ト運命ヲ共ニスルネ‥‥」ピッピッピッピッピッピッピッピッ

5、4、3、2...

ジェロニモ「‥‥アレ? これひょっとして無理やり剥がして外に捨てれば助かったんじゃ」

ドオオオオオオオォォォォォォォン

レイン「ジェロニモォォォォォォォォ!?」





レイン(まさか、普通に標準語を話せたなんて‥‥) ポロポロ

フォルテ(先輩‥‥一体どんな辛い過去が?)

レイン(ぐぅぅ駄目だ、アタシには‥‥。ジェロニモ、アタシに力を‥‥!!)

美術部部長「それでは美術部主催爆弾解体ゲーム、再開しまーす!!」

フォルテ「ばっちこいっすー!!」 フンス

ダリル「」

一夏「頑張ってください、フォルテ先輩!!」

弾「どこの誰だか知らねえけど、この際アンタが頼りだ! 頼む!!」

ダリル「ち、ちょっと待てー!! 今のはアタシがやりきる感じの空気だったろうが!! 何でフォルテにやらせんだよ!?」

一夏「だってダリル先輩、やるって言ったくせにウダウダ回想してるっぽかったから‥‥」

弾「うん、時間無いし‥‥」

ダリル「だからってフォルテにやらせる事はねえだろう!!」

フォルテ「ダリル先輩、これは自分が決めた事っす!!」 ガチャガチャ

ダリル「な、フォルテ!?」

フォルテ「ダリル先輩、何だか辛そうだったから‥‥たとえゲームとはいえ、そんな先輩の顔なんて自分は見たくないっす!!」 ガチンッ バララ

ダリル「フォルテ‥‥」

フォルテ「大丈夫っす!! 自分、去年の技術の成績は1でしたけどミニ四駆の組み立ては得意っすから!!」 グッ

ダリル「やめさせろぉぉぉぉぉぉ!!」 ガタタッ

一夏「ちょ、落ち着いてください先輩!! 五反田、そっち押さえろ!!」 ガシッ

弾「ええっ、ちょっと待て! いきなり女子の身体触れって無茶言うな!!」

3分後‥‥

美術部部長「しゅ~~りょ~~!!」 カンカンカン

一夏「‥‥」

弾「‥‥」

ダリル「‥‥」

フォルテ「ふぅ‥‥起爆装置は解除したっす――」

メカ無「」 バラバラ...

フォルテ「‥‥ちょっぴり、細かくしちゃいましたっすけど」 テヘッ

美術部部長・副部長「」

一夏「メカ無さぁぁぁぁぁん!!」

弾「――で‥‥元に戻せるのか?」

フォルテ「―――ムリっす」

レイン(‥‥これは組織の勝利でいいのか?)

昼食休憩
やっぱり調子が出ない所為か更新が追いつかない‥‥
>>154
金=青の設定は原作での爆弾解体ゲームでのやりとりから(セシリア→金髪=ブルー・ティアーズ→青、黒髪だったら箒で赤になってたらしい)
ノシ

――その頃、1年1組「メイド喫茶」前

オータム「」

ゴーレムI『¥11,200』 チキチーン¥

オータム「払えってか」

ゴーレムI「‥‥」 コクリ

オータム「『コイツ』の分まで」

ホイットニー「‥‥」

ゴーレムI「‥‥」 コクリ

オータム「‥‥」

ゴーレムI「‥‥」



オータム「ッッッッッザッケんじゃねえぞこのガラクタ野郎!! てめえみてえな時計仕

掛けの人形風情に払う金なんざビタ一文たりとも持っちゃいねぇぇぇんだよぉぉぉぉ

ぉ!!」 ドガッシャァァァァァァァァッ



オータム「小銭無いんで2枚でいいですか(以上、妄想終わり)」 スッ

ゴーレムI「‥‥」 チキチーン¥

チェルシー「いってらっしゃいませ、奥様」

オータム(二度と来るか!!) ガラララ、ピシャッ

ホイットニー「イィィィィフ、アァァァァァァイ」

オータム(――ったく、何でコイツはついてくるんだ‥‥?) イライラ

メモ帳更新した直後に上げたから行ミスった‥・・

ホイットニー「!」 ココロノ、ヒダマリニー

オータム(コイツ、自分の? キャラソンを着メロにしてやがんのかよ。どんだけナルシストなんだよ――っと!)

ホイットニー「‥‥」 ピッ

オータム(あの糞メイドの所為で電源切らされてたんだった‥‥。にしてもコイツは誰と電話してんだ? ってかあれで会話が成り立ってるのか?) ヴゥゥン

ピピピッピピピッピピピッ!!

オータム(うおっ! さっそくかよ‥‥!!)

ホイットニー「‥‥!」 ニコニコ

オータム「‥‥、合言葉は?」 ピッ

レイン『まみむめも。どこで何してたんだよ、ずっとかけてたんだぞ!』

オータム「誘き出された化け物喫茶で缶詰状態だったんだよ、しゃあねえだろ!!」

レイン『‥‥まあいい。それより朗報だ! 今から指定するポイントに織斑一夏を送り込む!! お前はそこで待機して織斑一夏を捕獲しろ!!』

オータム「は? 送り込む? ちょっと待て。言ってる意味がわかんねえぞ」

レイン『細かい話は後だ! いいか、目標はガラクタを抱えてお前のとこに行く!! ちょっとオマケも付くかもしれねーが、そこは臨機応変に構えろ!!』

オータム「待て待て待て!! ホントに意味がわからんがホントにそこに来るのか? 今度こそマジか!?」

レイン『ああ、大マジだ!! とにかく急げ!! 場所は端末に送る!!』 ブツッ

オータム「‥‥この場所は!」

――技術室

一夏「あっ、居た居た! 貴女が『みつるぎ社』の巻紙礼子さんですか!?」

弾「ホントに居たよ‥‥これで何とかなるのか?」

メカ無だった物「」 ガラガラガラ

オータム(ホントに『ガラクタ』抱えて来たよ‥‥)

ホイットニー「‥‥」

オータム(そんで何でお前はまだついてきてんだ!?) イラッ

一夏「お願いします! 会長を、メカ無さんを助けてください!!」

弾「つーか、お前ら会長さんを躊躇なく解体してたのかよ」

オータム(つか『それ』更識の犬だったのかよ!?)

一夏「あれ!? ホイットニーもなぜか一緒だ!!」

弾「え!? アレは知り合いなのかよ!!」

オータム(しまったぁぁぁぁぁ、コイツ織斑一夏の仲間か!!)

ホイットニー「‥‥」 ジロ

一旦中断
ちょっとスタミナ弱いけど続かない
また明日上げられれば
ノシ

オータム(マズい! もしコイツに日本語が通じたらアタシの正体がバレちまう!!)

ホイットニー「‥‥」 スッ

オータム(織斑一夏に近づいた! やはりコイツ、すぐに始末するべきだった!!)

一夏「ん? 何だホイットニー?」

ホイットニー「‥‥」 ジーーッ

オータム(くそっ、かくなるうえはコイツを始末してから強引にでもヤツの身柄を――) スチャッ

ホイットニー「ビィタァァァァスィィィィィトゥ、メェェェモリィィィィィィズ」 ガチャガチャ

一夏「‥‥な!?」

弾「お、おい。この人、会長さんの部品を拾い始めたぞ‥‥?」

オータム(‥‥!?)

ホイットニー「ユゥゥゥゥ、マイダァァァァリングュゥゥゥ」 ポイッ

弾「す、捨てた!?」

一夏「いや、よく見ろ!!」

ホイットニー「ゾォォットイズオォォァル、アアァァイムタゥキング」 スッ、ポイッ、スッ、ポイッ

一夏「燃える方と燃えない方を分別してる!!」

弾「何で!?」

一夏「たぶん要る部品と要らない部品と分けてんじゃないか?」

弾「いや、元々ひとつのモノだったんだから要らない部品は無いハズだろ」

オータム(て、手を出すタイミングがわからねえ‥‥)

ホイットニー「ソォォアァイルゴォォォゥ、バダァァイノォォォォゥ」 カシュカシュ

一夏「おい‥‥今度はノリを溶き始めたぞ‥‥」

弾「ノリなんかで会長を組み立てられるとでも思っているのか‥‥」

一夏「いや、いくら行動が全く読めないホイットニーとはいえ、まさか児童誌の付録のペーパークラフトを組み立てるってコトでもねーだろうし‥‥」

ホイットニー「アァァァァイルスィンクォブユゥゥゥゥ、エヴリィィィセップアァァァブ」 ゴトッ

弾「アレは‥‥?」

オータム(説明書‥‥? いや――)

一夏「Xeno○earsの攻略本? しかもゼプツェンvsアハツェンまでしか載ってないヤツだ」

弾「何で今それを出した?」

一夏「そういえば、あの本の付録は――」

ガイドブック『ノンスケール・ヴェ○トールがキミの手に!! 是非組み立ててみよう!!』

一夏・弾・オータム「結局ペーパークラフトじゃねーか!!」

弾「オイ一夏!! いい加減一声かけた方がいいんじゃねーか!?」

一夏「落ち着け!! とにかくココは静観してみよう。まさか主役機を組み立てて終わりってことはないだろう‥‥。いくらなんでもホイットニーもそこまでバカじゃない――」

ホイットニー「ザウェェェェェェェィイィィィィィィィ」 ペタペタ、カタカタ

弾「‥‥慎重だな」

一夏「ああ、ここまでホイットニーが器用だとは思わなかった」

オータム(‥‥ガラ攫うなら今がチャンスか? いや、まだ待とう‥‥)

ホイットニー「‥‥」 コトッ

一夏・弾「おぉぉ~~」 パチパチパチ

ホイットニー「‥‥///」

弾「すげー、のりしろも裏側も全然見えねー‥‥」

一夏「継ぎ目がひとつも見当たらない‥‥まさしく芸術だな」

ホイットニー「‥‥」 スッ

オータム(!!) ガタッ

ホイットニー「‥‥」 スタスタ

一夏・弾・オータム「‥‥」

ホイットニー「‥‥」 ガラララ、ピシャッ

一夏・弾・オータム(帰りやがった!?)

弾「‥‥結局アイツ、ペーパークラフト組み立てて終わりじゃねーか」

一夏「うーん、さすがにこれは俺も計算外だった‥‥」

弾「で‥‥結局あの人は何をしたかったんだ!? ナゼいきなりペーパークラフトの組み立てを?」

一夏「たぶん何かアイツなりのメッセージだと思うんだが‥‥今はそれどころじゃないからペーパークラフトのナゾは次回解決しよう」

オータム(次回って何だよ?)

スマン
3日もかけておいてまた中断
頭がこんがらがってきた
ノシ

弾「これじゃ先に進まねーな‥‥どーすんだ一夏?」

一夏「‥‥やっぱりこうなった以上、専門家の巻紙さんに任せるしかないな」

オータム「は!? アタシ!?」

一夏「だって‥‥何の為にここで待ち合わせしたんですか」

弾「なあ一夏、ホントにメカニックの人なんだよなこの人?」

オータム(うぐっ‥‥んなコト言われたって、アタシは『作る』より『使う』側の人間なんだよ!! ガキどもがアタシに振んじゃねえ‥‥ん?)

偽造社員証『渉外担当<巻紙礼子>』

オータム(そ、そうだこれだ!!)

巻紙「い、いえ!! わたくし、実は開発担当ではなく渉外担当の部署の者でして‥‥!!」

一夏「はぁ!?」

弾「開口一番がそれかよ!? ホントにアンタ何しに来たんだ!?」

巻紙「ぐぅ!! ‥‥ですから、ここで皆さんと待ち合わせをして、これから専門の部署の方と待ち合わせするという――」

弾「どんだけ待ち合わせすんだよ!! アンタ言ってる事おかしいぞ!!」

オータム(知ってるよボケェ(泣)!!)

一夏「そっかあ、ホイットニーにはできて巻紙さんには無理かあ‥‥」

弾・巻紙「!?」

一夏「ホイットニーはメカ無さんこそ治せなかったけれど、こんなに凄い精巧なペーパークラフトができたんだよな。アイツがそんな事できたら、メカ無さんくらい余裕で治せちゃいそうな気がするぞ」

巻紙「」 カチン

弾「おい、一夏‥‥?」

一夏「しょうがない。巻紙さんを頼れない以上、俺が自力で治してみるか」 ガチャガチャ

巻紙「」 プッツン

弾「なあ一夏、ちょっとその辺で黙って――」 ブルブル

一夏「ホイットニーができるんだから、俺にできて当たり前だろ」

巻紙終了のお知らせ「」 ブチィッ

一夏「まずはこの部分を接続して、と――」

オータム「貸せ」

一夏「え?」

オータム「貸せっつってんだろガキィィ!! そこまで煽んなら直してやろうじゃねえか、ええ!?」

一夏「ま、巻紙さん‥‥!?」

弾「おい‥‥怒り過ぎてキャラ変わってんぞこの人‥‥」

オータム「ああ上等だ!! こんなケツの青いガキにできてこの亡国機業のオータム様ができねえハズねえんだよォォォォ!!」 ガチャチャチャチャチャッ

一夏「おお‥‥だんだん形が戻ってきたぞ」

弾「オイ‥‥これはひょっとしてイケるんじゃないか‥‥!?」

オータム「ゥオラァァァァァァァッ!!」 ガチャチャチャチャチャチャチャッ

――1分後

弾「ス‥‥スゲー‥‥!!」

一夏「カ‥‥カンペキ元に戻ってる‥‥」

オータム「あ、ああ‥‥おめーらが言うんならカンペキに元通りだぜ‥‥。……けどよ」 ゼェゼェ

メカ無(自爆シークエンス)「」 ピッピッピッピッピッピッ

オータム「――コレは元からこうなのか?」

一夏・弾「」

一夏「‥‥ま、いっか。どうせ学園祭の出し物のパチモンだし」

弾「だよな。まさか本物の爆弾使うワケねえだろ」

オータム「だな」

一夏・弾・オータム「あはははははは!」

オータム「――つーワケでそこに跪けガキども」 ガシャコッ

一夏・弾「え?」

ダンッ

一夏「え――」 ブシッ

弾「お、おい――」

一夏「あ‥‥、ぐああああああああぁぁぁぁぁ!!」 ドサッ

弾「一夏!! ちょ、誰か――」

オータム「おおっと、動くんじゃねえぞクソガキB」 チャキッ

弾「な、何なんだアンタ!! 何で拳銃なんか‥‥」 ブルブル

オータム「あ? 悪の組織が拳銃持ってんのが不思議かあ? ハハッ!!」

一夏「悪の、組織‥‥!? お前、まさか――」

オータム「そうよ! さっきも口走っちゃいたがよ、アタシは秘密結社『亡国機業』が一人『オータム』!! てめーのIS『白式』を戴くぜ、織斑一夏!!」 キィィィィン

弾「う、うわあぁぁぁぁ!!」 ドサッ

一夏「この光‥‥じゃあお前も‥‥!!」

オータム「いくぜぇ、『アラクネ』ェェッ!!」 ガシャキンッ

弾「ヒ、ヒィィィィィ!!」 ガタガタ

一夏「く、逃げろ五反田!!」

オータム「逝けよやぁぁ!!」 ブンッ

メカ無(自爆シークエンス)「」 ビィィィィィィィィィッ!!

一夏・弾・オータム「え」

ドカァァァァァァァァァン!!





ダリル「!?」 ブルルッ

フォルテ「どうしたんすか、先輩!?」

ダリル「い、いや‥‥いま変な音しなかったか?」 チラ、チラ

フォルテ「ち、違うっすよ!? 今のは誰かがジュースでも吹いた音で、アタシのオナラじゃないっすから!!」 オロオロ

ダリル「違うからラノベの美少女がオナラとか言うな!!」

弾「う、うう‥‥」

一夏「大丈夫か、五反田?」

弾「あ、ああ。何とか‥‥って、アレ?」

一夏「――よかった。咄嗟に白式を展開したから何ともないみたいだな」

弾「そうか‥‥ISのシールドバリアで――」

一夏「しかし、本物の爆弾を使うヤツがあるか!! 美術部のヤツらめ‥‥」

メカ無『いいえ、今のは私の攻撃よ。一夏くん』

一夏「え‥‥?」

弾「あ、あの人? 爆心地に居たのに何ともねえのか!?」

メカ無『ふふ、昔からよく頑丈な身体だって言われてたわ』

一夏「メカ無さん‥‥」 ホッ

弾「――なあ、一夏」

一夏「ん?」

弾「俺、お前ばっかり女がいっぱい居るハーレムに居てズルいって思ってた。けどよ、お前は毎度こんな目に遭ってたりしてるのか?」

一夏「んー、まぁどこの誰ともわからないISに襲われたり、ラウラのISの暴走に巻き込まれたり、米軍の最新型ISを止めに行ったり、熊に襲われたり、色々あったよ」

弾「‥‥」

一夏「けど‥‥俺はここに来て良かったと思ってる。今まで千冬姉の影でビクビクしてた時よりも、とっても『生きてる』って感じがする。思うんだよ、俺。『みんなのおかげで生かされてるんだな』ってさ」

弾「一夏‥‥」

一夏「うん」

弾「‥‥そのみんなの中に、俺や蘭も居たりするのか?」

一夏「当たり前だろ」

弾「へへ‥‥けど、こんな目に遭うのはもうゴメンだな」

一夏「そりゃそうだ」 ハハハ

メカ無『ふふ‥‥』

オータム「アハハウフフじゃねぇよガキどもォォッ!!」 ガキャァッ

メカ無『キャアアアッ!!』 ゴシャァッ

一夏「メカ無さん!?」

弾「あのクモ女、まだ‥‥!!」

メカ無『うう‥‥』

オータム「このアマ、調子乗りやがって!! 亡国機業ナメてんじゃねーぞコラァ!!」 ガァン、バゴォォン

弾「ヤ、ヤベーよ一夏!! あの人袋叩きにされてるぞ!!」

一夏「…………」

弾「このままじゃ、ホントに殺されちまう!! 今すぐ助けるんだ、一夏!!」

一夏「‥‥いや待て、五反田。止めるな」

弾「な、なんでだよ!?」

一夏「――たぶんあのクモ女なら、メカ無さんの事をツッコんでくれそうな気がするんだ‥!!」

弾「あ‥‥やっぱあの人フツーじゃねえの?」

オータム「思ったよかガマン強えガキだな‥ワビ入れるなら今の内だぜ!!」 ガギィン、ボガァン

メカ無『ふふ‥‥その程度の攻撃じゃ私は倒せないわよ‥‥?』

オータム「何だとこのガキャァッ!!」

弾「なあ、一夏‥‥。オレ恐ろしい事に気づいたんだが」

一夏「何だ、五反田‥‥」

弾「ひょっとして、あのメカ無さんに疑問を抱いているのはオレたちだけなんじゃねえのか‥‥」

一夏「まさか‥‥どういう事だよ?」

弾「オレたち以外はみんな‥‥メカ無さんが普通の女子高生だと思ってるんじゃねえか?」

一夏「――けれど‥‥どう見ても普通の女子高生には見えない‥。て言うか普通の人間にすら見えないぞ‥‥」

弾「だよなあ。だいたいハナとクチ無いしなあ…」

夕飯休憩
今日は何だか体調が良いぞ
なんとか投げ出さずに頑張るよ
ノシ

オータム「ブッころがすぞコラァ!! 更識の犬が、散々てこずらせやがってよぉ!!」 ガイィン、ゴォン

一夏「それはもしかして、俺たちの感覚がおかしいってコトか?」

弾「そうだ!! メカ無さんはごくフツーの高校2年生なんだ。‥‥そう思わねえと説明がつかねえ!!」

ゴバァン、ズゴォン

メカ無『フフ‥‥もう、それで終わりかしら‥‥』

オータム「クッ‥‥!! 口の減らねーメスガキが!!」

一夏「そういえば、あんな人いるような気がしてきた‥‥」

弾「だろ!? 駅前通り辺りに行けばああいう子二、三人はいるハズだ!!」

オータム「このクソアマァァ!!」 ジャキッ

弾「ア、アレは!?」

一夏「カタールだ!!」

オータム「ころがすなとは言われてはいるがよー、アタシはキレたぜ。こうしねえとおさまらねーんだよ!!」 ブワッ

弾「オイ、一夏!!」

一夏「ああ! 俺に力を貸せ、白式ぃぃぃぃ!!」 ゴォォッ

バキィィンッ

一夏・弾「え」

オータム「お、折れたー!?」

一夏・弾(いや、やっぱり人間じゃないって!!)

オータム「どういうことだよ? ア‥アタシのイチゴ味が折れちまった‥‥」

一夏・弾(イチゴ味って何!?)

オータム「アタシは‥‥今までコイツをただの対暗部用暗部の端くれだと思ってきたけどよ‥‥ひょっとしてコイツ――」

一夏・弾(よし!! やっと気がついたぞ!! 早くツッコんでくれ!!)

オータム「――体が異常に硬い女子高生なんじゃねーのか、オイ!?」

弾「」 ポン

一夏「」 コクリ

オータム「このアマァ、今度はマシンガンの至近弾を味わいやがr」

一夏「零落白夜ぁぁぁっ!!」 ズバァァァァァッ

オータム「がぁぁぁぁぁっ!?」 ドガァァァァッ

ドカァァァン...





ダリル「な、今のは技術室から!? まさかオータムのヤツ――」

フォルテ「違うっすって!! 今のもアタシじゃなくてどっかのガス管が爆発した音っすよ!!」

ダリル「だから何でお前はさっきから頻繁に反応すんだよ!? キャラが定着しちまうからもうやめろ!!」

オータム「ぐぅぅ‥‥今のはシールドバリア無効化攻撃‥‥?」 ガラガラ...

一夏「まだ、やるか?」 ガシャッ

オータム「な、なめんじゃねーぞガキが。アタシのシールドバリアはまだ――」

セシリア「あら、大きなクモが床にひっついていますわね」 ジャキッ

オータム「!?」

ラウラ「いや、セシリア。アレはな、這いつくばっているというんだ」 ガコォォン

セシリア「まあ、そうでしたわね。わたくしとした事が」

オータム「‥‥!!」

一夏「セシリア、ラウラも!!」

セシリア「お助けに参りましたわ、一夏さん!!」

ラウラ「その様子だと、必要なかったかもしれんがな」

一夏「いや‥とっても心強いぜ!!」

セシリア・ラウラ「///」

メカ無『さて、どう料理してあげようかしら?』 ギュイィィィィィン

弾(え、この人の右腕ドリルになんの!?)

オータム「くっそ‥‥調子に乗んなガキどもがぁぁぁ!!」

ピピピッ、ピピピッ

オータム(ッ!? 秘匿回線だと!? こんな時に‥‥!!) ピッ

レイン『オータム、まだ生きてるな!? 今すぐそこから離れろ、逃げるんだ!!』

オータム「ざっけんな!! こんなガキども相手にケツまいて逃げろってのか!?」

一夏(通信‥‥? 誰と話してるんだ!?)

レイン『違う!! 今そっちに『M』が行った!! 巻き込まれるぞ!!』

オータム「何ぃっ!?」

ズガガガガガガガガガガッ!!

一夏「!?」

弾「天井が‥‥うわぁぁぁぁ!!」

メカ無「危ない!!」 バッ

ズズゥゥゥゥン...!!

セシリア「一夏さん、皆さん!!」

ラウラ「上空から‥‥もう1機!?」

M「‥‥」

セシリア「アレは‥‥イギリス本国から奪取されたハズの――」

ラウラ「ブルー・ティアーズ2号機『サイレント・ゼフィルス』!!」

オータム「M‥‥てめえ、何でここにいやがる‥‥!?」 ガララ...

M「お前が不甲斐ないと聞いてな。ご命令通り助けてやりに来ただけだが? オータム」

オータム「てめぇ‥‥私を呼び捨てにするんじゃねぇ!!」

一夏「な、何だアイツ‥‥!?」

弾「一夏ッ!!」

一夏「弾? 無事だったか!!」

弾「オレは大丈夫だ!! けど、メカ無さんが‥‥!!」

メカ無『』 ジーージジジッガーーーーーッ

一夏「メカ無さん‥‥!! メカ無さんを‥‥よくも、てめぇ!!」

M「ッ!? 貴様は‥‥!!」 ドォォォッ

一夏「!?」

ラウラ「アイツ、一夏の所へ‥‥!!」

セシリア「させませんわ!!」 ドシュドシュッ

M「ふん‥‥」 ビシュッ、クワンッ

ラウラ「な!?」

一夏「レーザーが、曲がっ‥‥!?」

セシリア「偏光制御射撃‥‥!? そんな、わたくしのミサイルが――」

ドカァァァン

セシリア「キャァァァッ!!」 ゴバッ

一夏「セシリア!!」

M「‥‥逃がさん」 ドヒュゥッ

一夏「クッ――って、え?」

弾「ちょ、何でこっち来るんだよ!?」

M「邪魔だ」 バシッ

弾「グエッ!!」 ドシャァァァッ

一夏「五反田!! てめぇ‥‥五反田までよくも!!」

M「‥‥」 カチャカチャ、パチッ

メカ無『‥‥!』 ヴゥゥゥン

一夏「メカ無さんが‥‥息を吹き返した!?」

ラウラ「と言うか今パチッて音がしなかったか!?」

M「やはりそうだ‥‥! お前は――」

弾「おい、一夏‥‥ひょっとしてアイツ――」

一夏「五反田!! ‥‥ああ、きっとアイツは――」

メカ無『‥‥あ、貴女は――』

一夏・弾(アイツならメカ無さんをツッコんでくれる!!)

M「お前は‥‥そうだお前は、ロ‥ロ‥ロ‥ロ‥‥」

一夏・弾(もう一息!! ロボッ‥!!)





M「‥‥6巻で一緒にカラー挿絵を勝ち取った、メカ無じゃないか?」

メカ無『あら……ひょっとして貴女はマドカちゃん!?』

一夏・弾「え~~!? うっそぉ~~!!」



 ――それから、ひとしきり2人は談笑した後に当初の目的を思い出したように決裂し一夏たちの健闘むなしくオータムを取り逃がしてしまい、『亡国機業』という忌み名を残しMと呼ばれた少女は姿を消した‥‥。
 そして‥‥。

弾「う、う~~ん‥‥?」

虚「あ、気がつきましたか?」

弾「え、あ――」

虚「まだじっとしていてくださいね。頭を強く打っていたようですから」

弾「」

虚「‥‥? 何か?」

弾「綺麗だ‥‥」

虚「え‥‥」

のほほん「お姉ちゃん! 消毒薬とガーゼってどこだっけ~!?」

弾「」 アーノーヒアーノートキーアーノーバーショーデー

虚「」 キーミーニーアーエーナカーアーターラー

のほほん「‥‥? お姉ちゃん――」

 ――そして、ここに2人の男女が恋に落ちた。

原作読みそびれた所為で遅れて時系列順に出せなかったエピソード
「硝煙のシンデレラ -舞台裏-」

シャル「――じゃ、お願いします」

ラウラ(シンデレラ)「よし、任せろ」

箒(継母)「‥‥」

ゴーレムI(義姉)「‥‥」

ラウラ(シンデレラ)「オホン。お、お義母さま‥‥お義母さまはわたくしの何が気に入らないのでしょう‥‥」 ヨヨヨ

シャル「‥‥」

ラウラ「どうだ?」

シャル「うん! すごく義理の娘感が出てたと思うよ。でも、まだ始まったばかりだから気を抜かないでね‥‥。じゃ‥‥次は継母役の演技をお願い」

箒「‥‥」

シャル「‥‥」

箒「あ!? 私か!?」

シャル「もうっ! お願いだからしっかりやってよ‥‥」

箒(継母)「コホン。‥‥いえ、ね。最近掃除の姿勢がなってないんじゃないかと思っただけよ。ねえ、ゴレミーヌ?」

ゴーレムI(義姉)『クスクス』

シャル「‥‥う~ん、何かしっくりこないな‥‥」

鈴「何がよ?」

シャル「何というか、その‥ちょっとフィクション臭すぎるんだよね」

鈴「……なるほどね……確かにゴレ美の笑い方は女子レスラーが無理して棒読みしてるような大根芝居だもんね」

シャル「ううん‥‥それはいいんだよ。あくまでも演劇だから。確かに大根だけど」

箒「では何だというんだ」

シャル「いや、その‥‥ウチの本妻さんはもうちょっとキツめだったなあって」

セシリア「その原作設定、生きてましたの‥‥!?」

シャル「そーゆーのが今ひとつ出てない気がするんだよね‥‥。そこを踏まえてもう一度お願い」

箒「ああ‥わかった」

ラウラ(シンデレラ)「そういえば、もうすぐ舞踏会の季節ですね‥‥。きっと煌びやかなんでしょうね‥‥」 フゥッ

箒(継母)「あ、あら。もうそんな季節だったかしらねえ。でm」

シャル「ダメダメ!! 全然違うよっ。完全にラウラのペースに巻き込まれてる!!」

箒「おい、まだ途中だったんだぞ!! もうちょっと演技を見ていてくれ!!」

シャル「うん、セシリア。ちょっとお手本を見せてあげてよ。いかにも外戚腹の子を蔑むような継母って感じで」

セシリア「えっ、けれど‥‥よろしいんですの?」

シャル「いいから」

セシリア「え、あ、はい」

ラウラ(シンデレラ)「そういえば、もうすぐ舞踏会の季節ですね‥‥。きっと煌びやかなんでしょうね‥‥」 フゥッ

セシリア(継母)「妾腹風情が、同じ空気を吸わないでちょうだい?」 ハンッ

箒「お、おい!? いくら何でもこの寒気を劇場に持ち込むのはどうかと‥‥!!」

シャル「ううん、アレがリアルだよ。本妻である継母にとって側室の娘っていうのは扱いが難しくてね、特に自分の子供を産む事ができなった婦人は凄いコンプレックスに感じちゃうらしいんだ………。つまり継母にとって妾の子は憎むべき敵‥‥! そこを箒はわかってるの?」

箒「いや‥確かに‥言われてみれば私は浅はかだったかもしれない‥‥」

シャル「遊びじゃないんだからさ、真剣にやってもらわないと困るよ」

箒「す、すまない‥‥」

鈴(なんか今日のシャル怖くない‥‥?)

シャル「自分が宿し育むハズだった子供の椅子の卑しく座る妾の娘への厭悪……その思いを強く持てばキミはちゃんとした継母になれるはずだよ――」

箒「ああ、わかった。私が甘かった‥‥。もっと真剣にやってみる。そして立派な継母になってみせる――」

ラウラ(シンデレラ)「そういえば、お義母さまはお父さまとはどこで出会ったんですか‥‥?」

箒(‥‥)

セシリア(あ、これ私の過去を織り混ぜていますわね)

箒(継母)「貴女に母と呼ばれる覚えはないわ、妾腹が!」 クワッ

ラウラ(シンデレラ)「うっ」 グサッ

シャル「いいよ!! その感じだよ!! 今のセリフでシンデレラはひるんだよ!!」

ラウラ(シンデレラ)「ご、ごめんなさいお義母さま‥‥。けれど、私がお義母さまを『母』と呼ぶのは、貴女と本当の家族になりたいからなんです!!」

箒(継母)「か‥家族‥‥」

シャル「あ、さっそく来たよ」

鈴「気をつけなさいよ!! ラウラは口がうまいからっ」

箒(継母)「どの口がぬけぬけと‥‥そんな小汚い顔でよくもまあいけしゃあしゃあと言えたものね」

シャル「おお! いい感じ」

ラウラ(シンデレラ)「‥‥お言葉ですが、私は確かに側室の子です。けれど、それでも確かに私にはお父様の血が通っています。貴女が真にお父さまを愛してくださっているのなら、その血が流れる私にもご寵愛をいただく権利があるハズです!! それでも、貴女はわたくしを認めてくださらないのですか‥‥!?」

シャル「お‥ラウラもかなり強引な力ワザに出たね‥‥ん!?」

箒(継母)「」 ツーーッ

鈴「箒が‥な、泣いてる!?」

ラウラ「ぬぅ‥‥」

箒(継母)「そうよ‥‥これは私の独りよがりよ。でもね、それでも本当にここに居てほしかったのは貴女なんかじゃない!! 私の胎の中で死んでいった、あの子なのよ‥‥!!」 ボロボロ

シャル「………決まりだね‥継母役は箒で決定だよ!!」

箒「え、ホ‥ホントか?」 ダーーーッ

ラウラ「うがぁぁぁぁっ、私はシンデレラなんぞより継母役がよかった!!」

シャル「流産した実子に対する愛情と後悔から流れ出た涙……これに勝るものなんてないよ。箒は勝ったんだ‥」 グスッ

箒「そ、そうか。ありがとう! ということは‥」

シャル「うん、そうだよ……これで箒はもう立派な継母さ」

箒「り、立派な継母‥‥」

セシリア・鈴(おめでとう‥って言ってあげればいいのかなあ――) パチパチパチ





――屋上

箒「………………立派な継母‥」 ズーン

喫茶『ななつき』

箒「こんな所に呼び出されたので何かと思いましたが‥‥何のお話でしょうか、織斑先生」

千冬「ああ、楽にしてくれて構わない。ここでは昔のように『千冬さん』と呼んでくれ、篠ノ之」

箒「は、はい‥‥千冬さん」 モジモジ

千冬「いやなに、実はお前に話しておきたい事があってだな‥‥」

箒「別に私などでなくてもよかったのでは?」

千冬「まあ、誰でもよかったんだが‥‥お前になら比較的腹を割って話せそうだと思ってな」

箒「‥‥ひょっとして、悩み事とか?」

千冬「はは‥まあ悩みには違いないのだがな。だがこう‥‥何か言いにくくてな‥‥」

箒「なら、言ってみてください。私はこう見えて口は堅いので」

千冬「そうか、なら言っておこうと思う」

箒「‥‥」 ゴクリ

千冬「実はな………私は、乗り物酔いしやすい体質なんだ‥‥」

箒「え? 乗り物酔い‥‥!?」

千冬「笑えない話だ‥‥ブリュンヒルデなどと呼ばれ称えられたこの織斑千冬が気持ち悪くなるから乗り物は苦手とはな‥笑ってくれていい」

箒「乗り物酔いって、何ですか?」

千冬「」

千冬「いや‥‥『何ですか』って‥‥そんなセリフはないだろう!? ‥‥っというか、お前は『乗り物酔い』を知らないのか?」

箒「乗り物に乗って気持ち悪くなるという感覚というものがさっぱりわからなくて‥‥それは『病気』なんですか?」

千冬「いや‥‥病気というほどのものではないのだが‥‥っというか手術して治るぐらいなら入院してもいいと思っている程だ」

箒「しかし、そんなに深刻なものを抱えていたのによくISには乗れますね‥‥」

千冬「どうも感覚がだな、ローラースケートに似ている所為か自然と酔わなかったんだ」

箒「何ですかそれは‥‥」

千冬「ともかく!! IS学園の最後の砦たる私が『乗り物酔いです』などと言っては格好がつかないだろう。それが露見する前に何とか克服したいと思っているのだが‥‥」

箒「その堅苦しい考え方が悪いのではないでしょうか?」

千冬「!?」

箒「最後の砦だの絶対防衛線だのと格好をつけているから不様は晒せないだとか‥‥そういう精神的な負担がプレッシャーになるから気持ち悪くなったりするのではないでしょうか?」

千冬「篠ノ之、お前‥‥」

篠ノ之「心の重荷で体調が悪くなったりするコトはありがちだったりします。それが周囲にバレてしまったらどうしよう‥‥そんな風に思うから余計にプレッシャーになるんじゃないでしょうか? けれど、こうして私に打ち明けてくださっただけでも少しばかりは気が楽になったんじゃありませんか?」

千冬「ああ‥‥そういえば、とても心が軽くなってきた気がするな‥‥」

箒「私が言うのも僭越ですが、そんな悩みはたいしたコトありませんよ。千冬さんには『世界最強』の称号があるんですから、それだけで充分ですよ」

千冬「お前の言葉を聞いていたら‥‥何か心のわだかまりがとれたようだ」 ホッ

箒「やっぱり隠し事は良くありませんよ。人に打ち明けるのが一番です。それで打ち明けられた側も『この人もこんな事で悩んでいるのか』と思えて、自分自身も安心できたりするんですよね‥‥」

千冬「ああ‥‥そうだな。そういう事もある」 グビリ

箒「それで‥ですね、差し出がましいようですが私にも悩みというか‥‥隠し事のようなものがありまして‥‥。それでいろいろ悩んでいたのですが‥‥千冬さんのお話を聞いていたら悩んでいるのがバカバカしくなってきてしまって――」

千冬「――束の事か」

箒「‥‥やはり、見透かされますか」

千冬「言ってしまえ。誰かに話す以前に話す相手もいないしな。ここで綺麗さっぱり膿を出してしまえ!」 グイッ、ゴクゴク

箒「よかった‥‥それを聞いてほっとしました‥‥。じゃあ言いますが」 スッ

千冬「?」

箒「実は私、偽乳なんですよ」 ボロン

千冬「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 ガタタッ

箒「まあ‥千冬さんの悩みにくらべればたいした事はないかもしれませんが‥‥」

千冬「いや、お前の場合は悩みだとかいう次元の話じゃないぞ!! 私の悩みの方がどうでもよく思えてきたぞ!!」

箒「ほら‥‥千冬さんはご存知でしょう? 姉さんといい母さんといい雪子叔母さんといい、何というかこう‥ふくよかで‥‥」

千冬「まぁ‥‥立派だったな――」

箒「それで苦し紛れにこっそり父の胸囲もこっそり測ってみた事があって、今もその記録が残っているのですが――」

千冬「ちょっと待て、それは6年前の情報じゃないか?」

箒「それがですね‥‥未だに、超えられないんですよ‥‥」 ホロリ

千冬「」 カラン

箒「鈴やラウラという下級階層が居ると安堵していた時期もありましたが、それもぬか喜びで‥‥」 ポロポロ

千冬「もういい、言うな!!」 ガタッ

箒「うう‥‥」 グスッグスッ

千冬「っというか臨海学校の時はどう誤魔化していたんだ? 海も温泉もあったろうに‥‥それに今秋には健康診断があるんだぞ」

箒「海の時はなるべく人目に触れないようにして、温泉はご法度でしょうがタオルを巻いて乗り切りました。健康診断は‥‥もう腹を括ります」

千冬「‥‥不憫な」

カランカラン

絢音「あらぁ、一夏くんいらっしゃい♪」

一夏「ど、ども。お邪魔します」

箒「あ!! 一夏!?」 ビクッ

千冬「い、いかん!! 早く偽乳をつけなくては‥‥!!」

絢音「ん~? 今日はいつもの女の子たちは一緒じゃないの~?」

一夏「ああ、はい。今日は、一人で‥‥」

箒「あっ偽乳が床に落ちた!!」 バタバタ

千冬「何をやっている、早くしろッ!! ええい、もういい!! 私が拾う!!」 バタバタ

一夏「あれ? 千冬姉じゃないか」

箒・千冬「!!」 ギクッ

一夏「それに向かいに座ってるのは‥箒か? 二人して何してたんだ?」

箒・千冬「‥‥」

一夏「?」

千冬「‥‥ん? 何だ織斑か。何の用だ?」 ドタプ~~ン

箒「」 プルプル

一夏「」

千冬「どうした。 何か用があったのだろう? 何だ」

一夏「――すみません、人違いでした」 クルッ

絢音「あら? 一夏くん、もう帰っちゃうの?」

一夏「」 カランカラン

箒「‥‥」

千冬「‥‥」

箒「‥‥あ、あの」

千冬「意外と吸着性と弾力が良いな、コレは」

箒「え。あ、はい」

千冬「‥‥お互い、今日ここで誰にも会わなかった。それでいいな?」 スッ

箒「‥‥はい」 ドプリュンッ

ちょっぴり休憩
今夜はまだまだイケそうな気がする
ノシ

クロ高中期~後期の雰囲気がよく出てて面白い

 私の名前は乗り物酔い――いや織斑千冬だ。IS学園の実質的リーダーだ。
 ISの実力と人望の厚さにおいて右に出る者はいない。
 今日は北九州へファスト・ボール・ランの会場に出場する為に生徒たちを引率して

レースに臨むつもりだ。
 しかし試合に臨むには私のただ一つの弱点『乗り物酔い』を克服せねばならない。
 私は教え子によるカウンセリングを受けた結果、この日のために特訓を重ねてきた

‥‥。
 止まっている車に乗ったり、新幹線のホームで動く列車を眺めたり‥‥何もかも完

璧であり、何一つ落ち度はなかった。
 しかし‥‥まさか飛行機だったとは‥‥。気づくのが遅かった。心底後悔している


 しかもそれだけではない‥‥問題は――。

スコール「どうかしら、ブリュンヒルデ? たかがテロリスト風情に手玉にとられた気

分は?」

 亡国機業にハイジャックされているという事だ――。

またメモ帳ミスった‥‥(´;ω;`)  ウッ…

 だが、不幸中の幸いというか、とりあえず飛行機は離陸できない状態だ。
 このままいけばファスト・ボール・ラン行き自体中止になるだろう。
 国際IS委員会に対し借りはできてしまうが‥‥さすがに飛行機はドイツ行きでもう懲りた。
 まだ電車やタクシーも満足にクリアしていないのに空はないだろう‥‥。
 ISに無縁だった少年がいきなり代表候補生とタイマン張るぐらい無茶だ。
 どの道ハイジャックなど一夏たちが解決してくれるだろうし、飛行機が飛ばなければ私も苦しまずにすむ。

M「おい、スコール。この便に織斑一夏は乗っていないぞ」

千冬・スコール「え?」

M「さっき、そこらの生徒に聞き込みをしたんだが、織斑一夏は病欠で休んでいるらしい。ここに居ても意味が無いぞ」

スコール「ちょっと待ちなさい。じゃあ何をしに私たちはここに来たの?」

M「もうここは放っておいて学園に行かないか? 専用機持ちも全員オータムに任せればいいし」

オータム「おい、今何つったコラ」

千冬(ちょっと待て!! それは少し早すぎないか!?)

 まずい、下手を打つと今コイツらに学園に行かれたらファスト・ボール・ラン行きが再開するんじゃないか?
 だが‥いくらなんでもハイジャック直後にそれはないだろう‥‥。
 ――いや、このIS学園ならやりかねない!!
 かと言ってコイツらをけしかけて事件を長びかせるマネはできん‥。
 いくら束の悪事を傍観していはいても犯罪に加担するほど腐ってはいない!!
 そう‥やはりココは専用機持ちによる解決を信じるべきだ、一教師として!!

スコール「――そうね‥‥貴女の言い分はわかったわ」

オータム「じゃあ‥‥!?」

スコール「ええ、ではとりあえずこのまま会場まで飛ばして現地で暴れて織斑一夏を誘き出しましょう」

千冬「ちょっと待て!!」

スコール・オータム・M「え?」

千冬「『え?』じゃないこの馬鹿者ども!! 今の話の流れからすれば学園に攻め込んで織斑一夏を攫いに行く方がいいという話になっていくべきだろう!! スコールとか言ったか? 『よくわかった』と言っておきながら『飛行機を飛ばそう』と言って、全く話がつながっていないだろうが!! ヒコーキだけに話がとんでるなどとは通用しないからな!!」

スコール「ごめんなさい‥実は私飛行機に乗るのは久しぶりだったから気が動転してしまって」

オータム「いつも貨物船の密航メインだったもんな」

千冬「何? そうだったのか‥‥気持ちはよくわかるぞ。まあ一度冷静になって話を進めてみろ」

スコール「そうね。けれど私‥‥人の多い場所にいると緊張してしまって‥‥」

M(だから会議もいつも少数人数でやってたのか‥‥)

オータム「つーわけだからよー、できれば人の少ねー所でナシつけねーか?」

千冬「よし、なら私にいい考えがある」

谷本「う~、どうしよう‥‥」

相川「私たち、どうなっちゃうのかなぁ?」

箒「‥‥」 スッ

鷹月「し、篠ノ之さん?」

箒「みんな、少し待っていてくれ」

谷本・相川・鷹月「え?」

セシリア「行きますわね」 ガタッ

鈴「ったく、遅いのよ!!」 スタッ

ラウラ「このまま思い通りにさせてなるものか」 トッ

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」 ズン

谷本・相川「みんな‥‥!!」

鷹月(デュノアさんはあの状態で戦えるのかな‥‥?)

谷本「でも、相手はこの間学園に忍び込んだテロリストなんだよ‥!?」

相川「そうだよ! ケガなんかじゃ済まないよ!!」

箒「ならどうする? ここでガタガタ震えて怯えたままか?」

鈴「そんなの嫌だからね、アタシ」

セシリア「では、参りますわよ!!」

千冬「待て」 ガチャッ

全員「織斑先生!!」

千冬「お前たちはここで降りろ。ここは私が引き受ける」

ラウラ「き、教官お一人で!?」

鈴「そんなの無茶よ!!」

ホイットニー(シャル激情態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア!!」

セシリア「そうですわ!! ISも無しにテロリストと戦うなんて‥‥!!」

千冬「私を嘗めているのか?」

セシリア・鈴・ラウラ・ホイットニー「!!」 ビクッ

箒「先生‥‥理由を聞かせてください」

千冬「‥‥一夏がな、笑うようになったんだ」

ヒロインズ「?」

千冬「この10年間、月に1度ほどしか帰って来れなかった所為もあったがな、アイツの笑う顔など見た事がなかった。色々、あの小さな背中に背負わせ過ぎたからな‥‥」

ヒロインズ「‥‥」

千冬「だがな、先日アイツの笑顔を見て心臓が跳ね上がりそうになったよ。『ああ、コイツもこんな顔ができたんだな』とな。我ながら、姉のくせに恐ろしい事を感じたものだ」

ヒロインズ「先生‥‥」

千冬「それは思うに、お前たちのおかげだと思う」

ヒロインズ「!!」

千冬「アイツの孤独に価値を与えてくれたお前たちに、私は感謝している。だから、だからこそ、お前たちはアイツの元へ戻ってやってほしい」

ヒロインズ「先生ぇ‥‥!!」 ブワッ

千冬「頼んだぞ」 バタン

箒「‥‥!!」 フルフル

鈴「‥‥聞いたわね、アンタたち!?」 グシグシッ

全員「‥‥うん!」 ガタッ

セシリア「帰りますわよ、皆さん!!」 ポロポロ

全員「うん!!」 ボロボロ

ラウラ「‥‥」 ビシッ

ホイットニー(シャル激情態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア!!」




千冬「――という感じで全員降ろしたんだが、どうだ?」

スコール・オータム「グッジョブ!!」 グッ

M(なんか目的がズレている気がするんだが‥‥)

スコール「ふぅ~、人が居なくなったおかげでホッとしたわ」

オータム「オータムは人見知りするからな‥‥」

M「それはよかったな」

千冬(……というかなんで私は飛行機から降りなかったんだ?)

スコール「なんだか貴女がいると心強くなってくるわ」

千冬「え?」

オータム「そうだぜ!! コイツの言う事を聞いてりゃ無敵だぜ!! もう撤収する気なんざサラサラなくなってきたぜ!!」

千冬(いかん‥いつの間にか共犯者みたいになっている‥‥。しかも撤収どころかテロリストが私に指示を仰ごうとしてるし‥‥)

M「で、これからどうするんだ姉さん? ちなみに私たちはやる気マンマンだ」

千冬「ね、姉さん……?! ちょっと待て‥‥えーと‥‥」

スコール・オータム「‥‥」

千冬「よし!! では政府にとんでもなく無理な要求をしろ!!」

オータム「よっしゃぁぁぁ、了解!!」

スコール「では米国に揺さぶりをかけて新型機をせびってやろうかしら」

千冬「コレでいい。無理な要求をすれば国も簡単にはOKが出せない。時間を稼いでおけば自衛隊なり在日米軍なりが動いてくれるはずだ!! 私も飛行機から降りられる‥‥」

スコール「――あっさり取引を打診してきたわ‥‥」

オータム「ウソだろ!?」

千冬「ちょっと待てアメリカ!!」

――アメリカ合衆国 ネバダ州

 今さら言うのも何だが、私の名は織斑千冬。ISの強さと人望の厚さでは右に出る者はいない。弱点といえば乗り物酔い程度だ。
 とにかく強いのでIS学園で実質的責任者をつとめてきた。
 だが、それも今となっては過去の話。
 一体‥‥この道はどこまで続くのだろう。そして‥‥ここはどこなのだろう。

 思えばふとしたきっかけで亡国機業に寝返ったと勘違いされてこんな逃亡生活の日々を送るハメになった‥‥。
 幸運にも脱出できた後、国際IS委員会にかけあって誤解を解いて日本へ帰ろうかとも考えたが、いずれにしろもうヒコーキには乗りたくない‥‥

 今ごろ学園では私の話題で持ち切りだろうな‥‥。ガラにもなく淋しくなってきてしまった。
 そういえば、亡国機業の連中は取引は上手くいったんだろうか? 元はといえばアイツらのせいだが‥‥妙に憎めないヤツらだった。

 …………何て星がキレイなんだ‥‥。

――日本 IS学園

一夏「本当に先週は大変だったみたいだな‥‥。ファスト・ボール・ランに出場するはずが飛行機がハイジャックされて」

鈴「んで、当のアンタは鼻水すすりながら実家で五反田たちと誕生日会やってたなんてね」

セシリア「まったく、大急ぎで戻ってきて損をしましたわ!!」 プンプン

シャル「まあケガ人も出ないでみんな無事だったっていうのが何よりだよ‥‥」

ラウラ「しかし、みんな何か忘れ物をしている気がしないか?」

一夏「ああ。その場にいなかった俺が言うのも何だけど、みんな何か忘れてないか?」

箒「あっそうだ!! 参加費を返してもらっていない!!」

ヒロイン「それだ!!」

一夏「けど俺はカゼで休んだから途中キャンセルって事で半額しか返ってこなかったぞ‥‥」

鈴「バカ!! アンタは自分の都合で休んだんだから半額でもありがたいと思いなさいよ!!」

セシリア「私たちはアチラの都合でレースが中止になったんですのよ!! 全額戻ってきて然るべきですわ!!」

シャル「アッチの都合っていうか、ハイジャックの都合だけどね‥‥」

箒「――なあ‥少しいいか?」

全員「ん?」

箒「参加費の件もさる事ながら、私達はもっと大事な何かを忘れているような気がするんだが‥‥」

シャル「うーん‥‥? 何を忘れているんだろう、ボクたちは‥‥」

一夏「何か忘れてたっけ、千冬姉?」

マドカ「いや‥‥いつも通りだろう‥‥」

鈴「すごく言いたい事あるんだけど‥‥言っていいのかしらアタシ‥?」

夕飯休憩
タイプミス多くて困る‥‥
>>197原作中~後期って一番ダレる時ですやんやだー
ノシ

 前略、千冬姉。誕生日会を終えた翌週、なぜか千冬姉が小さくなっていました。

女子「カワイ~!! 千冬サマカワイ~!! どうなってんのこれ~!?」 キャッキャッ

マドカ「や、やめろ!! ころがすぞ!!」

3年生「事情は聞かせてもらったけれど‥‥」

鈴「何でああなったのよ‥‥」

セシリア「そんなの私に聞かれましてもわかりませんわ‥‥」

一夏「まあ、そんな事はどうでもいいんじゃないか?」

シャル「唯一の肉親なのにそんなスタンスでいいの!?」

メカ無『一夏くん、いる?』 ガララー

一夏「あ、メカ無さん!! どうしたんですか?」

メカ無『……紹介したい子がいるのよ』

一夏「え‥‥誰ですか?」

メカ無『私の妹のメカ無β――通称メ簪ちゃんよ』

メ簪『メカラッタ』

全員「な!?」

箒「メ‥‥メカ無さんの妹だって!?」

鈴「ここへ来て薫子さん、虚さんに並ぶ第3の眼鏡っ娘ですってぇ!?」

ラウラ「耳も鼻もないのに生意気な!!」

3年生「えっと‥‥何からツッコめばいいのか‥‥」

メカ無『こう見えてもメ簪ちゃんは日本の代表候補生でね、打たれ強いっていうのかしら、私の血を引いてるだけの事はあるわ‥‥』

鈴「日本の代表候補生‥‥!!」

一夏「流石メカ無さんの妹‥‥!!」

メカ無『何なら今度のタッグマッチで誰かと戦ってもらおうかしら? な~んて、フフフフ』

ゴーレムI『ラーランラーラララーラララー♪』 ガラララ

シャル「あ、ゴレ美ちゃん。おはy」

メ簪『メカラ゙ッ』 グシャァッ

メカ無『な!?』

全員「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 踏んじゃダメだよゴレ美ちゃん~~!!」

――数日後

箒「メ簪がやっと直ったぞ!!」

メ簪『メカラッタ』

鈴「すっご!! キレイに直ってんじゃないのよ!!」

一夏「さすが倉持技研の腕はたしかだな」

セシリア「‥‥けれど‥‥前より小さくなっていませんこと?」

メ簪『メカラッタ』

一夏「いいんじゃないか? ケータイも新しい機種になればなるほど小さくなるし」

ラウラ「む‥‥そういえば姉のメカ無さんはどうしたんだ?」

3年生「それが‥‥今回の事件が相当ショックで寝込んじゃったらしくて‥‥」

一夏「むしろそっちの方が心配だな‥‥」

箒「なあ‥‥今ふと思ったんだがな‥‥メ簪がいればどんな強いヤツと試合しても負けないんじゃないか?」

鈴「そう?」

3年生「メカ無さんも自信ありげだったけれど‥‥」

セシリア「電化製品は意外に壊れやすいものですわよ?」

箒「いや! 私は今コイツの秘めたる可能性を発見した!! 試してみよう」

一夏「一体この子を使って、どうやって試合に勝てるんだ?」

箒「ちょっと貸してみろ」

一夏「おう」

箒「死ねぇぇぇぇぇぇッ!!」 ブオンッ

一夏「うわ!!」 サッ

セシリア「キャアアッ!!」 サッ

ゴーレムI『!!!!』ガンッ

シャル「ゴレ美ちゃんっ!?」

箒「これで試合に勝てるだろう?」 ドヤ

一夏「人を投げるやつがあるか馬鹿!!」

箒「馬鹿とは何だ、馬鹿とは!!」

セシリア「だいたい、ここに居る全員が遠隔攻撃手段を持っているのですから意味がないのでは‥‥」

箒「あ」

メ簪『メ゙ガラ゙ッ゙ダ‥‥』 ジジッガーガーガージジッ

鈴「あーあ、ヘコんじゃった‥‥」

ラウラ「どんどん形が変わっているぞ‥‥」

シャル「大丈夫? ゴレ美ちゃん」

ゴーレムI『‥‥』 シクシク

3年生「こっちもヘコんじゃってるわね‥‥」

一夏「う~ん‥‥もし戦いに役立てるんなら、メ簪の特性を活かせないとダメだよなあ‥‥」

ラウラ「その通りだ。考え方を少し変えてみよう」

一夏「ラウラ……」

ラウラ「コイツは一応知能を持っている。そして歩行もできるし身体のサイズも小さい‥‥となれば使い道はひとつしかあるまい」

メ簪『メカラッタ』

一夏「何だよそれ?」

ラウラ「スパイだ」

全員「……スパイ!?」

セシリア「まさか‥‥ジェームズ・ボンドじゃあるまいし‥‥」

鈴「今時スパイなんて単語使うヤツいないわよ‥‥」

ラウラ「工作員として敵対クラスに忍び込ませて、あらゆる情報を拾ってこさせるのだ。敵の行動パターンをすべて把握できるぞ」

一夏「けどな~、ゴレ美の一件もあったワケだし誰かに踏まれるんじゃないか?」

ゴレ美『‥‥』

シャル「大丈夫!! ゴレ美ちゃんは何も悪くないよ!!」

3年生「それに情報を拾うどころか、誰かに拾われてお持ち帰りされちゃうんじゃ‥‥」

ラウラ「大丈夫だ。そういう事はちゃんと言って聞かせておく‥‥。何事も教育が大事だ、一から教え込めば一ヶ月程度で‥‥」

一夏「おい……ラウラ‥‥下、下!!」

ラウラ「む‥‥?」

メ簪『』

ラウラ「」

――翌日

一夏「メカ無さんが無事回復したからメ簪を迎えにきたいって言ってんだけど‥‥」

鈴「どうすんのよ!? メ簪は明日まで修理かかるって倉持技研に言われたわよ!!」

一夏「う~ん、妹思いのメカ無さんの事だから、メ簪がまた壊れたと知ったらきっと怒るだろうな‥‥」

箒「ああ‥‥あの人の怒った顔が目にうかぶぞ」 ズッ

鈴「怒ってもあんまり表情変わんないけれど」 ズズッ

チェルシー「皆様、お茶請けが入りました」 ガチャッ

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」

セシリア「あの‥‥なぜまた私の別荘に集まっているのですの?」

箒「まあ安心しろ。私に名案がある」

3年生「え‥?」

箒「セシリア、ちょっとそこの筒状デスクトップPC借りるぞ」

セシリア「な、何をしますの‥?」

箒「‥‥」 キュ、キュ

全員「‥‥」

箒「よし、できた!!」 ゴトッ

一夏「落書きしただけじゃねーか!!」

セシリア「そのPC、棗コーポレーション製の試供品なんですけれども!?」

箒「こうやって遠くに置けばわかるまい!! 今日一日ごまかして明日すり替えればオッケーだ!!」

一夏「……大丈夫なのかよ……」

箒「いいか、メ簪の話題には絶対に触れるな‥‥!! たとえ向こうが話をふってきても全力でかわせ‥‥何としてもだ!!」

全員「‥‥」 ゴクリ

3年生「何か‥‥犯罪でもしてるみたいな気分ね‥‥」

鈴「縁起でもない事言わないでよ‥‥!!」

ピンポーン

全員「!!」 ビクッ

鈴「メカ無さんじゃないの‥‥!?」

チェルシー「私がお迎えにあがります」 バタン

全員「‥‥」

チェルシー「こちらです」 ガチャッ

メカ無『久しぶり~、遅くなってごめんなさいね』

一夏「い‥‥いえ。ど、どうぞおかけになってください‥‥」

箒「いやあ、元気になってくださって何よりですよ‥‥」

メカ無『本当にごめんなさい、心配かけたわね。ところで、ウチのメ簪ちゃんは?』

全員「!!」 ギクゥッ

箒「だ、大丈夫です!! ココに元気で座ってますよ!! まあそんなことより、自分の家だと思ってくつろいでください」

セシリア(ここ私の別荘なのですけれども‥‥!!) ビキビキ

3年生(今は抑えて‥‥!!)

メカ無「そう、箒ちゃんは良い子よね‥‥。融通が利かないように見えて実はすごく気遣いがあったりして‥‥」

箒「やめてください‥‥そう言われると気を遣わずにはいられませんよ――」

一夏(よかった‥‥何とかバレずに済m)

箒「そういえば静かで落ち着きませんね! 何か曲をかけますか? フラッシュメモリ持って来てるんですよ!!」 ブスッ

メカ無『それどういうア○ルプレイ!?』

全員「馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!!」

メカ無『ちょっと!! よく見たらそれデスクトップPCじゃない!! ウチのメ簪ちゃんはどうしたの!?』 ガタッ

一夏「今、入院中です‥‥」

鈴(倉持技研にね)

メカ無『こんな物とすり替えるなんて、貴女ふざけてるの!?』

箒「い、いいじゃないですか。たいして変わりませんし‥‥」

一夏「おい、箒!!」

メカ無『人をナメるのもいい加減にしなさい!!』

箒「ええい、もうまどろっこしい!!」 ポチッ

メカ無『!!!?』 ピーーーー、ガガガガガッ

全員「!?」

メカ無『NO DATA』

箒「ふぅ‥これでよし」

一夏「何してんだよ!!」

チェルシー「とりあえずクローゼットに仕舞っておきましょう」 ガタガタッ

3年生「いよいよ犯罪ね‥‥」

セシリア「とんでもない事になりましたわ‥‥」

ちょい休憩
どんどん間隔が開いてて申し訳ない
ノシ

――翌日

一夏「妹のメ簪は無事修理が完了したぞ」

箒「コッチの方が扱いやすくていいな」

ラウラ「コンパクトで持ち運びにも便利だしな」

3年生「ねえ、ちょっといいかしら?」

一夏「何ですか?」

3年生「みんなフツーにしてるけれど‥‥そもそもこのメカ無一族って一体何なの? みんなは疑問に思わないの?」

全員「…………」

一夏「‥‥まあ、今さらそんな事言われてもなあ」

3年生「いや、今だから話し合うべきじゃないかしら!? 妹まで出てきちゃった今こそ!! このままじゃズルズル引きずっちゃうわよ!!」

全員「う~ん‥‥」

3年生「家はどこなの!? 親はいるの!? ‥‥というより誰が作ったの!? いろいろ疑問あるでしょ!?」

箒「……『誰が作った』って、先輩‥‥」

3年生「なんでみんなハッキリ言わないのよ!! だって、どう見たってこの子たちはロボッ‥‥」

箒「やめてください!!」

3年生「どうしてよ? 何を怯えているのよ?」

箒「先輩が言おうとしてる事はメカ無さんに対するイジメです。いいですか‥‥時として私たちは対立します。けれどイジメは絶対にしない。そうだったんじゃないんですか?」

3年生「‥‥ごめんなさい。もうそれは口にしないわ‥‥」

一夏(昨日円筒型PCと大して変わんないって言ったヤツがよく言えるな)

ラウラ「だが、メカ無一族の素性というか正体は気になるところだ‥‥。何か目的があってこのIS学園に乗り込んできたとも考えられる」





マドカ・ダリル「ヘックシ!!」

フォルテ「大丈夫すか、先輩?」

山田「風邪には気をつけてくださいね、織斑先生」

箒「くだらない‥‥こんなちっぽけなオモチャみたいなヤツに目的なんてあるワケないだろう。考えすぎだ」

シャル(舌の根も乾かないうちに‥‥)

一夏「でも携帯電話だって進化するほど小さいし、ひょっとしたらコイツだってとんでもない能力があるかもしれないぞ」

鈴「何言ってんのよ。何でもかんでも携帯電話と一緒にすんじゃないわよ、馬鹿!!」

メ簪『コーノーソーラハーミライ、アーナータガソバーニーイーテークーレタラー♪』 ム゙ー、ム゙ー

箒「わっ!!」

鈴「な、何よコレ!?」

ラウラ「着信音!?」

シャル「ホントに携帯電話なの、コレ!?」

3年生「‥‥ていうか誰からの電話なの!?」

鈴「と‥とにかく誰か電話に出なさいよ!!」

箒「できるか!! 気味が悪い!!」

一夏「ハイ、もしもし」 ピッ

鈴「い、一夏!!」

3年生「さすが男の子!!」

一夏「…………はい」

全員「‥‥」 ゴクリ

一夏「11月26日? 5枚? 何の事です?」

全員(何かどっかで聞いた事のあるやり取りしてる!!)

一夏「‥! そうです。はい……はい、そうです。では失礼します」 プツッ

3年生「だ‥誰からだったの‥‥?」

一夏「間違い電話でした」

3年生「そんなのすぐ切ってよ!!」

鈴「ねえ、ホントに今の間違い電話!? 何か意味深な暗号みたいに聞こえたけど!!」

一夏「何でだよ!? んなわけないだろ!!」

メ簪『コーノーソーラハーミライ、アーナータガソバーニーイーテークーレタラー♪』 ム゙ー、ム゙ー

鈴「ギャーッ!! また鳴ってるわよ!!」

箒「よし、では今度は私が出よう」

3年生「お願い、箒ちゃん‥‥」

箒「‥‥ハイ、もしもし……」 ピッ

全員「‥‥」 ドキドキ

箒「え!? ‥‥わかった!! 今すぐ行く!!」 プツッ

3年生「ねえ‥‥誰からなの?」

セシリア「病欠していたセシリアからだ! 何かあったらしくて別荘に来てくれと言っていたぞ!!」

一夏「セシリアが!?」

鈴「すぐに行くわよ!!」

ラウラ「あのセシリアが自分から別荘に来いと言うのは尋常ではないな‥‥」

3年生「‥‥ていうか、あの子はどこに電話をかけたのかしら?」

――セシリアの別荘

セシリア「来ましたわね‥‥もう私、どう説明したらよろしいのか‥‥」

チェルシー「お嬢様、深呼吸を」

セシリア「スゥーー、ハァーー‥‥」

シャル「一体どうしたの? セシリア」

セシリア「‥‥さっき‥クローゼットを整理していたのですけれど‥‥」 ガチャッ

鈴「え‥‥!?」

一夏「メカ無さんがいなくなってる!?」

箒「これは奇怪だな‥‥しかもこんな短期間でいなくなるなんて」

3年生「一人で歩きだしたのかしら?」

シャル「粗大ゴミに出しちゃった‥‥とか?」

一夏「とにかくみんな落ち着こう!! あわてると余計わからなくなっちまう!!」

セシリア「――一夏さんの仰る通りですわ。少し落ち着きましょう……」

チェルシー「ちょうどお茶のお時間です。皆様もどうぞ」

3年生「あ、ありがとうございます」

鈴「アタシ、ウーロン茶」

箒「緑茶を頼む」

ラウラ「抹茶はないか?」

一夏「スポーツドリンクください」

シャル「じゃあ麦茶をお願いします」

セシリア「紅茶をくださいまし」

チェルシー「はい、かしこまりました」 ガチャッ

メカ無『』 ム゙オーーーー...

全員「冷蔵庫に改造されてんじゃねーか!!」

書き溜め休憩
いよいよ中盤~終盤に来たぞ
ノシ

 前略、千冬姉。待ちに待ったタッグマッチもまた無人機の襲撃に遭って有耶無耶になってしまいました。
 けれど、みんなの絆の力で無事に生還し、学園にも平穏が訪れています。

箒「いやいや、一時はどうなるかと思ったぞ‥‥」

ラウラ「一般生徒の顔を見ていてこれ程嬉しい気分になった事は今までなかったな」

一夏「とにかく、みんな無事で何よりだよ‥‥。むしろあの体験のおかげで、これからの日々を充実させて生きていけるような気がしてくる」

鈴「何かアタシ、無性に勉強したくなってきたわー」

セシリア「よく言いますわ‥‥フフフフ」

シャル「専用機は当分使えなくなっちゃったけれど、また今日から前と同じ学校生活を送るコトができるんだね‥‥」

一夏「ああ‥‥前と同じだよ‥‥。ま、しいて変わったコトがあるとすれば――」

ゴーレムI『‥‥』

ゴーレムIII『‥‥』

3年生「無人機が1機増えてる‥‥」

ラウラ「あの片腕がブレードになってる禍々しい無人機、先日のタッグマッチに乱入してきた機体の内の1機だよな? なんでここにいるんだ」

鈴「またいつの間にか生徒になりきってるわね‥‥」

シャル「ゴレ奈ちゃんっていうのはどうかな?」

3年生「もう名前をつけ始めてる!!」

セシリア「とにかく、もうこんな変な教室はゴメンですわ!! 同じ無人機なんですからどちらか1機帰ってくださらないかしら!?」

箒「たしかに‥‥無人機が2機いても邪魔なだけだな。見慣れた古い方を残して新しいのは――」

ラウラ「いや待て、慣れているからといって古参ばかり優遇してはいつまでたっても新兵は育たない。多少賭けになるが新しいモノを取り入れる姿勢が大切だ。安全策に走って挑戦する心を忘れては成長などない」

3年生(新兵‥‥?)

ラウラ「それによく見てみろ!! 武装だけ見ればゴレ奈はゴレ美の完全な上位互換だ!! これは大きい!!」

箒「たしかにゴレ美に搭載されてるナックルやビーム砲はそのままに、鋭利な実体剣に強固なシールドビット、加えて反則スレスレのシールドバリア阻害システム。これだけの装備があれば並の敵は敵わないな」

鈴「実際メチャクチャ強かったしね‥‥」

セシリア「となりますと、ゴレ奈さんの方が有望ですわね」

ゴーレムIII「‥‥?」

シャル「期待してるよ、ゴレ奈ちゃん!!」

ゴーレムI「!!」 ガーン

ガラララ

3年生「あ!! どこに行くのゴレ美ちゃん!?」

一夏「ダメだろ!! みんながゴレ奈ばかりもてはやすから、いじけちゃったじゃねえか」

箒「ちょうどいい‥‥捨てる手間が省けたな」

一夏「なんて事言うんだ! 友達だろ!!」

セシリア「友達…?」

鈴「一度ころがされそうになったのに何を今さら」

一夏「他人からつまはじきにされるヤツの気持ちを、みんなは知ってるはずだ!! 自分が同じ事をされたらどう思うか、思い出してくれよ!!」

箒「!!」



ガキ大将A『やーい、オトコオンナ~』



セシリア「‥‥!!」



社交界の来賓客『アレを御覧なさい。没落寸前のオルコットの令嬢でなくて?』



鈴「‥‥!」



ガキ大将B『おらリンリン。笹食えよ笹、リンリン』



ラウラ「‥‥ッ」



軍高官『C-0037の性能は平均以下、か。廃棄処分も検討せねばな』



シャルル「‥‥」



継母『どうしてあの子じゃなくて、貴女みたいな泥棒猫が産まれてきたのよ!?』



3年生「‥」



一夏『え~と、すみません。名前何て言うんでしたっけ?』



全員「~~~~~~~ッ!!」

一夏「な、みんな?」

鈴「あーもうっ! わかったわよ!! 探せばいいんでしょ、探せばぁっ!!」

セシリア「ホンッッットに一夏さんは他人の古傷をえぐってきますわね!!」

箒「こうなったら送られてきた塩の分まで働いてやる!! どこからだ!?」

一夏「みんな‥‥!!」

3年生(アレぇ? 私だけ結構最近なうえ犯人が目の前にいるんだけどー‥‥)

――海浜公園

ラウラ「おーい、どこだゴレ美~?」

シャル「いたら返事して~!!」

鈴「ってかアイツって返事すんの?」

箒「ひょっとして海に身投げでもしてたらどうしよう‥‥」

鈴「ってかISがどうやって溺死すんのよ」

3年生「あ、あそこ!!」

全員「!!」

ゴーレム『‥‥』 チャポン

鈴「いたぁ!!」

ラウラ「海に石を投げている!!」

セシリア「よかった、みんなで行きましょう!!」 タッ

一夏「いや‥‥下手に刺激を与えたらまずい‥‥みんなで行くのはよそう」

3年生「じゃあ‥どうするの?」

一夏「――シャル、行ってくれるか?」

シャル「え、ボク?」

一夏「最初にアイツと話したのも、アイツに名前をつけたのも、俺たちの中で一番アイツと付き合いが長いのもお前だ。行ってやってくれ」

シャル「一夏‥‥」

鈴「おいしい役ゆずってやるっつってんのよ!」

セシリア「早く行きなさいな!!」

シャル「みんな‥‥うん!!」 ダッ

ゴーレム『‥‥』 チャポン

シャル「こんな所にいたんだ」

ゴーレム『!』

シャル「隣、いいかな?」 スッ

ゴーレム『‥‥』

シャル「まだ気にしてるの? みんな心配してるよ‥‥」

ゴーレム『‥‥』

シャル「みんなだって、本気でいなくなってほしいからあんな事言ってたわけじゃないんだよ。ただ、あんまり突然の事で戸惑ってるだけなんだよ」

ゴーレム『‥‥』

シャル「傷つく気持ちはわかるよ‥‥。けれど、みんなも今は反省してるからさ」

ゴーレム『‥‥』

シャル「ねえ、許してあげてくれないかな?」

ゴーレム『‥‥』 コクリ

シャル「‥‥! みんな!!」

セシリア「ゴレ美さん!!」 ダッ

ラウラ「すまない‥‥つい軽はずみな事を言ってしまって」

箒「ああ‥‥私たちが悪かった。この通りだ!」

鈴「ほ、本気にしてんじゃないわよ、馬鹿ぁ‥‥」

3年生「正直、今でも時々怖くなる時あるんだけどね‥‥」

一夏「‥‥」 コクリ

シャル「ね? ホントはみんなキミのコトが好きなんだよ。わかってくれるよね?」

ゴーレム『‥‥』 コクリ

シャル「だから、くよくよしないでよ。ね? ゴレ奈ちゃん!」 ポン

全員「え?」

ゴーレムIII『‥‥ッ』 ブオンッ、ドシュゥゥゥゥゥゥォ

子供A「すげー!! あのデカブツまた小石を何十回も跳ねさせてるぞ!!」

子供B「ナニモンだーっ、アイツ!?」

ゴーレムIII『‥‥///』 グッ

一夏「‥‥いつから気づいてたんだ、シャル?」

シャル「え‥‥じゃあみんなはずっと気がついてなかったの!?」

鈴「じゃあゴレ美はどこ行ったのよ~~~~っ!?」





――その頃、倉持技研

ゴーレムI『‥‥』

ヒカルノ「え? ドリルとかロケットパンチとか付けたい? 変形合体機能も? なにそれ怖い」

買い物にいってきま
うん、矛盾とか酷いね徹頭徹尾
ノシ

一夏「はい、はい、わかりました。すぐに伺います。はい、失礼します」 プツッ

メ簪『メカラッタ』 コトッ

一夏「ん、ありがとなメ簪」

鈴「すっかりケータイ感覚で使われてるわね、メ簪」

シャル「で、何て?」

一夏「ああ、やっぱり倉持技研に行ってたらしい」

鈴「何やってんのよアイツは!?」

セシリア「おおかた装備の調達に向かったのですのね。ゴレ奈さんに対抗心メラメラですわ」

箒「それで、すぐに出発するのか?」

一夏「ああ、俺とゴレ奈の2人で行ってくるよ」

鈴「え゙、ゴレ奈と!?」

一夏「どうも交換条件らしくてなあ、断れなかった」

3年生「交換条件って‥‥」

ラウラ「性能の高いゴレ奈の価値に目をつけたわけか」 チッ

一夏「とにかく行かないとラチがあかないからさ、行ってくるよ」

箒「き、気をつけてくれ!!」

一夏「ああ!!」 スタスタ

ゴレ奈『‥‥』 ズンズン

シャル「行っちゃったね‥‥」

ラウラ「ああ‥‥」

セシリア「思えばわたくし達、ゴレ奈さんとは、ほとんどお話できませんでしたわね」

箒「‥‥淋しくなるな」

――倉持技研

一夏「どうも‥‥先ほど連絡させてもらった織斑です」

ヒカルノ「やあやあ待ってたぜぇ一夏くん!!」

一夏「うわっスク水の化け物」

ヒカルノ「ほ~~、いいゴーレムじゃないの~♪」

一夏(いいゴーレムって何だ?)

ヒカルノ「じゃあこっちのお古は返しとくよ。約束だからね」

一夏「‥‥それじゃ2人とも。これでお別れになるけれど‥‥わかってくれるよな?」

ゴーレムI・III『‥‥』 コクリ

一夏「じゃ、ここで幸せに暮らすんだぞ、ゴレ奈」

ヒカルノ「おーい、そっち持って帰る方の機体だぞお一夏くぅん」

――IS学園

鈴「――それはそれは変な所長さんだったわね」

一夏「まあ何にせよ、ゴレ奈も幸せに暮らしていけると思うよ」

箒「けれど、その前に念のためひとつ確認しておきたいのだが‥‥またゴレ奈とゴレ美を間違えて連れ帰ってきていないだろうな」

一夏「ハハハ、箒も心配性だなあ」

ゴーレムI『‥‥』

一夏「ホラ!! 間違いなくゴレ美だろ?」

シャル「あ~~~よかったよかった。これでホッとしたよ」

セシリア「当たり前ですわ。いくら一夏さんでもそう同じミスを何度もくり返す訳ありませんわ」

一夏「それじゃ‥‥」

全員「改めてよろしく、ゴレ美ちゃん!!」

ゴーレムI『‥‥!』 プシューーーーッ

ゴーレムIII『‥‥』 ピロロロロロッ

ゴーレム?『‥‥』 グポーン

全員「」

鈴「な、何でゴレ奈も帰ってきてんのよ!?」

シャル「しかも更に1機増えてるし!!」

一夏「あっ、倉持技研からメールが」

ヒカルノ『すまん、やっぱムリぽ。手に負えないす』

全員「何じゃそりゃぁぁぁぁぁ!!」

書き溜め開始
今日はけっこうノリノリ
ノシ

IS学園 身体測定

山田「では、こちらに並んでいる方は体操服を脱いで、下着姿になってくださいねー」

九段下「っだよ、かったり~なあ」 ヌギヌギ

谷本「ホントに織斑くんが測定するの?」 ヌギヌギ

相川「ええええ、うそうそっ!? 私、昨日、ごはんおかわりしちゃったのに!」 ヌギヌギ

のほほん「やっほー、おりむ~。へへー、めっちゃんさんの秘策炸裂だね~」ヌギヌギ

箒「‥‥鈴。後でブラジャー貸してくれ」

鈴「何に使うのよ!?」

一夏(マ、マジで俺が測定するのか‥‥。千冬姉から目隠しもらったけれど、これ結局スケスケだから意味ねーんだよなあ)

山田「では最初の方、どうぞ~」

一夏(うわっもう来た!!)

メカ無『ハァイ♪ ちゃんと測ってくれないと、お姉さん怒っちゃうゾ☆』

一夏(何で1年生じゃないアンタが来てんの!?)

メカ無「は・や・く♪」

一夏「は、はい。じゃあメジャーあてますのでちょっと冷たいですけれどガマンしてください」 マキマキ

メカ無『‥‥』

一夏「‥‥」

一夏(これってはたから見ると、俺のやってる事ってすごいバカみたいに思えるんだけど‥‥)

メカ無『‥‥織斑くん?』

一夏(いや、いかんいかん。邪心を振り払え!! 測定に集中するんだ!!)

一夏「じゃ、次はウェストを測りまーす」

メカ無『そこはもうすでにヒップよ?』

一夏「な!?」

一夏(それって‥‥3サイズ全部一緒って事か‥‥!?)

一夏(もういい‥‥気を取り直して次にいこう)

マドカ「お願いします」

一夏「いや教師は病院で測定してもらえよ千冬姉!!」

マドカ「黙って測れ。ころがすぞ」

一夏「えー‥‥」

マドカ「‥‥」

一夏「‥‥じゃあとりあえずちゃんと脱いでくれないか?」

マドカ「ブラもショーツも脱げというのか? ころがすぞ」

一夏「そのいっつも展開してるハイパーセンサー取れっつってんの!!」


……
………

山田「次の方どうぞ~」

?「……」

一夏(ん? 誰だコイツ?)

?「早く‥‥測ってくれ‥‥」

一夏(はて、鈴とラウラ以外に貧乳の女子なんて居たっけか?) マキマキ

?「‥‥」

一夏「えーと、バスト72cm‥‥」

?「なぜ声に出して言う!?」 ガタッ

一夏「いや記録になんねえだろ!!」

?「残すな!!」

一夏「なんでだよ!?」

山田「ええと、篠ノ之さん。もう少し静かに――」

一夏「ええっ!? お前、ほうk」

箒「うわぁぁぁぁっ(泣)!!」 ゴッス

ドサッ

山田「大丈夫ですか、織斑くん?」

一夏「は、はい‥‥。次の、女子は――」

山田「え? いえ、今のゴレ美ちゃんで最後です」

一夏「え」

山田「だいぶ記憶が飛んじゃってるみたいですね‥‥今日はゆっくり休んでください」

一夏「あの‥‥内容を全然憶えてないんですけれど‥‥」

山田「‥‥その方がいい気がします」

一夏「?」





一夏「――で、あの後冷静になって思い出そうとしたんだが‥‥」

箒「ああ」

一夏「ゴレ美の体位測定をした憶えしかない」

箒「自業自得だな」

一夏「やっぱり俺、何かしたのか‥‥?」

箒「知らん」

一夏「????」

放課後 IS学園 屋上

鈴「それじゃ箒はお父さんに顔似てんのね‥‥ちょっと見てみたいけれど」

箒「ああ‥‥けれど父さんは巨乳ではないぞ」

ラウラ「そんな父親いてたまるか」

鈴「そう言えばあのビデオを見て思ったけれど、セシリアは絶対お母さん似でしょ」

セシリア「ええ! 皆さんもご存知の通りですわ。このヘアースタイルは亡き母を想って模ったものですの」

箒「やっぱりな」

鈴「そう言えば……え~~と……」

3年生「‥‥」

鈴「‥‥アンタは、お父さんとお母さんどっちに似てんのよ?」

3年生(ア‥アンタ……!?)

3年生「ううん‥‥私はおバアちゃんに似てるから‥‥」

鈴「なぁ~~んだおバアちゃんかあ、アハハハハ」

箒「ところで、子供の頃の夢ってあったよな? ラウラ、お前は何だった?」

ラウラ「私か? 立派な夫だ」

セシリア「慎ましいですけれど、それを言うなら妻では?」

箒「シャル、お前は子供の頃どんな夢があったんだ?」

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア」

鈴「もう何言ってんのよ。この状態のシャルに何聞いても無駄よ。‥‥聞けても暗い過去しか出てこないだろうし」

箒「――それで、え~~と‥‥」

3年生「………………」

箒「先輩は‥‥」

3年生「いい加減にしてよ!!」

全員「!?」

3年生「さっきから貴女たち私のことを『アンタ』とか『先輩』だとか呼んでるけれど、お願いだからちゃんと名前で呼んでよ!!」

鈴「名前って言ったって‥‥」 チラッ

箒「なあ‥‥」 チラッ

3年生「まさかと思うんだけれど‥‥私の名前を知らないなんてコトないよね‥‥?」

箒「‥‥」

セシリア「‥‥」

鈴「‥‥」

ラウラ「‥‥」

ホイットニー「‥‥」

3年生「‥‥」

全員「‥‥ごめんなさい‥」

3年生「え、ウソ!? 知らないの!? 私、もうすぐみんなと半年の付き合いになるのに!?」

ガラララ

メカ無『あら、みんなここにいたの』

メ簪『メカラッタ』

箒「メカ無さん、メ簪!!」

3年生「メカ無ちゃん~~!!」 ダッ

メ簪『メカラ゙ッ』 ドゲシッ

鈴「あっメ簪が蹴り飛ばされた!!」

3年生「メカ無ちゃん‥‥メカ無ちゃんは長いつきあいだし、いくらなんでも私の名前知ってるわよね?」

メカ無『‥‥』

3年生「‥‥」

メカ無『Access to databank』

3年生「データバンクにアクセスしないと分かんないってどういう事!?」

メカ無『!?』 ビーッビーッビーッ

全員「!?」

3年生「何? どうしたの!?」

メカ無『‥‥データが壊れてて読み込めない』

3年生「何で!?」

鈴「‥‥3年生全体のデータが?」

メカ無『いいえ‥‥なぜかこの子のデータだけ破損してる‥‥』

3年生「ピンポイント過ぎない!?」

ちょっと反動がキたので休憩‥‥
ようやくやりたかったネタが――
ノシ

3年生「もういいわ、わかったわよ!! じゃあ改めて自己紹介するわ!! 私の名前は‥‥」

箒「‥‥ところで話は変わるが‥‥一夏はどこ行った?」

鈴「ゴレ奈の事で倉持技研に直談判しに行ったみたいよ」

3年生「ちょっと!? いくらなんでもそれはないでしょォ!?」

セシリア「お二方‥‥確かに今のはひどすぎますわ‥‥」

ラウラ「ああ‥‥ここは黙って先輩の名前を聞いてやるべきだろう」

鈴「まぁ‥‥確かにアタシも大人気なかったわよ‥‥」

箒「すみません、先輩‥‥」

3年生「ありがとう――って言うのもおかしいけれど…じゃあ自己紹介させてもらうわ‥‥。私の名前は‥‥」

バシャ

セシリア「キャッ! ホイットニーさんがジュースをこぼしてしまいましたわ!!」

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァ‥‥」 ベト...

3年生「あぁ~~っも~~!! どいてっ!! 私が拭いてあげるから!!」

――1分後

3年生「どう!? キレイになったでしょ!? もう汚さないでね!!」

ホイットニー(シャル空腹形態)「エンダァ‥‥!!」 ピッカピカ

鈴「すっごい‥‥ちょっとしたコツだけでキレイになるもんなのね‥‥」

箒「先輩‥‥主婦に向いてるんじゃないですか?」

3年生「そりゃどうも‥じゃ、言うわよ‥‥。私の名前は‥‥」

ラウラ「む‥もうジュースがないぞ」

セシリア「ノドがかわいて死んでしまいそうですわ~~」

3年生「わかったわよ!! 今すぐ買ってくるから!!」

――5分後

3年生「30本買ってきたわ!! お金は要らないから大事に飲んでね!!」

箒「先輩‥‥もうお母さんみたいですね‥‥」

セシリア「自身の名前を言うためだけにここまで必死になる方は初めて見ましたわ‥‥」

3年生「よーし!! じゃ、言わせてもらうわよ!! 私の名前は‥‥」

ピピピッピピピッ

全員「!?」

鈴「ちょっと‥‥これ先生からの専用回線よ!?」

セシリア「何かあったのかしら‥‥」

3年生「」

山田『皆さん聞こえますか!? たった今、本校は所属不明部隊の襲撃を受けています!! 一般生徒は既に大半が緊急シェルターに避難を開始しています!! 各学年の専用機持ちの皆さんは至急マップの誘導に従い移動してください!!』

ブツッ

鈴「みんな聞いたわね!? すぐに向かうわよ!!」

全員「応ッ!!」 ダダダッ

3年生「‥‥」

メカ無『さあ先輩!! 急いでシェルターへ――』

3年生「‥‥ふっふふふ――」

メカ無『何してるんです!? さあ早く――』

3年生「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

メカ無『!?』

3年生「そう‥‥そんなにみんなは私の名前を聞きたくないの‥‥?」 ユラァ

メカ無『せ、先輩‥‥?』

3年生「‥‥いいよ? いいよいいよいいよ!? 別にいいよォォォォ!?」 グリン

メカ無『』

3年生「‥‥そっちがその気なら、こっちにも考えはあるもの」

メカ無『‥‥』

メ簪『メ、メカラッタ‥‥』

ようやく上がったのにまた休憩
頭痛がする は…吐き気もだ…
くっ…ぐう な…なんてことだ…この◆IM4j5.DbdYが……気分が悪いだと?
この◆IM4j5.DbdYがあの寝不足に頭を破壊されて…立つことが…立つことができないだと!?
ノシ

――IS学園 廊下(封鎖区域)

ドカァァァン

アンチネイムドA「‥‥防壁の爆破完了。この先は一直線です」

アンチネイムドB「ブリーフィング通りだ。障害となる勢力には実力行使で対応、その

まま地下特別区画を目指す」

アンチネイムドA「了解」

アンチネイムドC「分隊長、多少遊んでも構いませんね?」

アンチネイムドB「‥‥ヴェイル4、我々は特殊部隊であって虐殺者ではない。余計な私

刑は極力避けろ」

アンチネイムドC「‥‥」

アンチネイムドB「ただ“汚す”のは構わん。それぐらいのガス抜きは許す」

アンチネイムドC「ははっ、そうこなくちゃ!」

アンチネイムドD「ヴェイル4、独り占めはよしてくださいよ?」

アンチネイムドE「俺らだって溜まってんだ。分け前は残してくれよ」

アンチネイムドC「当たり前だろ? 女ってのはちゃんと人数分相手にできるような身体

になってんだからなぁ」

下衆野郎共「ギャハハハハハ!!」

アンチネイムドB「私語は慎め。ヴェイル3、アイツらを黙らせろ」

アンチネイムドA「」

アンチネイムドB「ヴェイル3? 復唱しろ」

アンチネイムドC「あれぇ? アレ、誰です?」

アンチネイムドB「?」

3年生「‥‥」

アンチネイムドE「何だアイツ?」

アンチネイムドC「警戒されている専用機持ちの中にはいねえぞ」

アンチネイムドD「って事は、逃げ遅れた生徒ですかねえ?」

アンチネイムドB「‥‥」

アンチネイムドD「どうしたの、お嬢ちゃん? ちゃんとシェルターに避難しなきゃダメだろう?」 スタスタ

3年生「‥‥」

アンチネイムドD「先生の言う事をキチンと聞かなきゃ、悪いヒトに乱暴されちゃうじゃないか‥‥」

アンチネイムドB「‥‥」

アンチネイムドA(だった何か)「」 ブラン...

アンチネイムドB「」

アンチネイムドD「何とか言えよガキィッ!!」 グイッ

3年生「ッ!!」 ドスッ

アンチネイムドD「」 ドサッ

アンチネイムドC「え?」

アンチネイムドE「ヴェイル5?」

アンチネイムドB「ヴェイル2、ヴェイル4‥‥戦闘態勢をとれ」

アンチネイムドC・E「はい?」

アンチネイムドB「わからんのか!! アレは敵だ!!」 ガチャッ

3年生「シィッ!!」 ゴォァッ

アンチネイムドC「くっ」 ドガガガガガガガッ

3年生「ッ!!」 ドンッ

アンチネイムドE「何だコイツ!? 弾が当たらねえ!!」

アンチネイムドC「この動き‥‥まさかハダリ!?」

3年生「‥‥!!」 グンッグンッグンッ

アンチネイムドE「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

3年生「シャッ!!」 ビシュッ

アンチネイムドE「」 ドシャッ

アンチネイムドC「ヴェイル2ぅぅぅぅぅ!!」

アンチネイムドB「今だ!! 前が空いた!! 急いでエレベータへ向かうぞ!!」

アンチネイムドC「ら、ラジャー!!」 ダッ

3年生「‥‥ッ」 ドドドドドドドドドドドドッ

アンチネイムドB「くっ‥‥!!」 ダダダダダッ

アンチネイムドC「ヒィィィィィッ!!」 ドタドタドタッ

3年生「シィィィィィッ!!」 ドドドドドドドドドッ

アンチネイムドC「も、もうダメだぁぁぁっ!!」

アンチネイムドB「見ろ、エレベータだ!! アレに乗り込むぞ!!」

カチカチカチカチ

アンチネイムドB「早く来い早く来い早く来い早く来い早く来い!!」

3年生「グァァァァァァァァァァァァッ!!」

アンチネイムドC「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ポーン ガララ

アンチネイムドB「来た!! 乗れっ!!」

アンチネイムドC「わっ!!」

3年生「‥‥!!」 ガラララララ

ピシャッ

アンチネイムドB「ふぅ‥‥これでもう大丈夫だ」

アンチネイムドC「くそっ!! F○ck、f○ck、f○ck!!」

ガシャァッ

アンチネイムドB・C「!?」

3年生「オォォォォプン、セスァミィィィィィ‥‥!!」 ギギギギギギギッ

アンチネイムドC「キャァァァァァァァドラキュラァァァァァァ!!」

アンチネイムドB「くそっ、何なんだお前はぁぁっ!!」 ガチャッ

3年生「‥‥きたい?」

アンチネイムドB「!?」

3年生「私の名前を聞きたい?」 ニマァァァ

アンチネイムドC「あは、あははははははは」 ガタガタガタガタ

アンチネイムドB「あああああああああああああ!!」 ダンッダンッダンッ

3年生「私の名前は――」 ガララララ

ピシャッ

――アンチネイムド キャンプ

オペレータ「チーム・ヴェイル!! こちらHQ、チーム・ヴェイル!! 応答せよ!!」

幹部A「一体何が起きているんだ‥‥」

幹部B「‥‥ボス、どうしますか?」

千冬「‥‥」

 マイネームイズ織斑千冬。私は、とある特務部隊の幹部となっている。
 しかし相変わらず乗り物には酔いやすい。
 思えばこれまでいろいろあった‥‥。
 短期間でここまでのし上がるのは大変だった。
 海路はゆっくりしてるから苦しみが長引きそうで嫌だったので空路で帰ってこれたが、まさか超亜音速ステルス輸送機に乗るハメになるとは‥‥死ぬかと思った。
 だがそんな私にも今では私を慕ってくれる部下がたくさんいる。

隊長「ボス、顔色が優れないようですが‥‥」

 そしてその部下の一人が、この『ヒューストン』だ。

千冬「なあ、ヒューストン‥‥私はかつて日本にいたんだが‥‥日本で何度かお前を見かけたような気がしてならないんだが‥‥」

ヒューストン「お言葉ですがボス、我々はパーソナルデータの一切を捨てた一装置に過ぎません。そして任務のために己を練磨してきた身ですが、私は日本は初めてですし日本の事は知りません。むしろ日本は嫌いです」

千冬「そうか‥‥それでは日本、あるいはフランスに姉妹とか親戚はいないか?」

ヒューストン「ボス、私は冗談を解しません。我々は既に存在しない人間です。親類縁者など最早意味を成しません」

千冬「そうか‥‥では、この話はもうヤメにしよう」

アンチネイムドB『‥‥こ、こちらヴェイル1‥‥』 ジジッザー

オペレータ「!! こちらHQ!!ヴェイル1、どうしました!!」

アンチネイムドB『て‥敵襲‥‥至急‥‥増援を要請‥‥』 ジージジジッガー

オペレータ「よく聞こえません!! 敵の装備、数は!?」

アンチネイムドB『は‥‥ハイスクール‥スチューデント‥‥』ザーザザッガーーー

ブツッ

オペレータ「‥‥」

幹部A「ハイスクール、スチューデント‥‥!?」

幹部B「一体何が‥‥」

千冬「‥‥私が出る」

幹部A「な‥‥ボス自ら!?」

幹部B「危険過ぎます!! いくらボスといえど‥‥!!」

千冬「私を侮るなよ」

幹部A・B「‥‥!!」

ヒューストン「ボス、私もお供します」

千冬「わかった。頼むぞ」

千冬(よし!! これで上手い事学園に帰れる!! 早いとここんな掃除屋集団から足を洗って再び教師に戻ろう‥‥)

ヒューストン「整備班!! 機体の準備は?」

整備班「隊長!! いつでも行けますよ!!」

ヒューストン「よし、出撃!!」

千冬(待っていてくれ、一夏!!)




――輸送車両

千冬「」

千冬「ヒューストン‥‥お前にだけは言ったハズだ。とにかく私は乗り物に弱い。タクシーで酔うのに輸送車両はないだろう!!」

ヒューストン「ご心配なく、ボス。ボスのハンガーは比較的後部座席に近づけましたし、酔い止めの薬も持ってきました」

千冬「……お前は本当に細かい所だけは気づくな‥‥」

ヒューストン「そういえば昔聞いた事があるのですが、乗り物酔いはヘソに梅干しを貼っておくと平気になるそうです」

千冬「それはすでに試した事がある‥‥だが単なる迷信だった。というか、お前の話を聞いているとどうも日本の事を知っているとしか思えんのだが‥‥」

ヒューストン「ボス、やはり日本が恋しいのですか?」

千冬「ああ‥‥たまに一夏が作ったお茶漬けを食べたくなる」

ヒューストン「ボス。私はブルックリンで野垂れ死にそうになっていた所をボスに助けられた時から、いつもそれを考えていました。いつかボスが日本に帰ってしまうのではないかと‥‥我々と決別する日が来るのかもしれないと‥‥。この感情をどう表現したら良いのでしょうか」

千冬「それはな、『淋しい』というんだ」 ゴトゴトゴト

ヒューストン「『淋しい』‥‥」 ガタガタガタ

千冬「‥‥というか、さっきから揺れが激しくなってきてるんだが学園にはまだ着かんのか!?」 ガガガガ

ヒューストン「いえ、もうすでに学園内部に侵入しています。地下特別区画まで突き進みます」 ドドドドドド

千冬「馬鹿かお前は!? ここまで来たならもうエネルギー温存も何もないだろう!?」 ゴガンゴガンゴガン

ヒューストン「昔から『果報は寝て待て』というじゃありませんか」 ズンガズンガ

千冬「お前やっぱり日本出身だろう!?」 ドゴンドゴンドゴン

ゴガァァァン

千冬・ヒューストン「!?」

ギギギギギギ

3年生「ハァイ♪」

千冬・ヒューストン「」

3年生「あれぇ? 織斑先生じゃないですかあ♪ どうしたんですかあ、こんなゴッツイ車なんかに乗っちゃってえ」

ヒューストン「くっ‥‥下がっていてください、ボス!!」 ガチャッ

千冬「よせ!!」

ドンッドンッドンッ

3年生「‥‥?」 シュゥゥゥゥ

ヒューストン「な‥‥歯で受け止めた、だと!?」

3年生「アレアレぇ? ホイットニーちゃんまでいるぅ。ひょっとしてぇ、デート?」

ヒューストン「うおおおおっ!!」 ヒュバッ

3年生「キャハッ、邪魔しちゃったかなぁ?」 ガシッ

ヒューストン「な!?」

3年生「ねぇ、センセ? 私の名前、覚えてますかぁ?」

千冬「何‥‥!?」

3年生「みぃんな酷いんですよぉ? 一夏くんも箒ちゃんもセシリアちゃんも鈴ちゃんもラウラちゃんも会長も、みんなみぃんな私の名前を覚えてくれなかったんですよぉ?」

千冬「‥‥ッ」

3年生「ねえセンセ、私の名前呼んでみて♪」

千冬「‥‥!!」

3年生「ねぇせんせ~、早く呼んでぇ♪ じゃないとぉ~‥‥」

ヒューストン「!?」

ボギッ

3年生「壊しちゃうから‥‥♪」

ヒューストン「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

千冬「倉嶋!!」

3年生「?」

千冬「いや、赤星? いや結城だったか‥‥」

3年生「‥‥」

ボギャッ

ヒューストン「~~~~~~~~ッ!!」

千冬「ま、待て!!」

3年生「酷いです、先生。先生ならきっと、私の名前を覚えてくれてるって信じてたのに‥‥」

千冬「‥‥!!」

3年生「し ん じ て た の に」

3年生「う‥‥う~~ん?」

鈴「あ、気がついた!!」

箒「先輩!! 私たちがわかりますか? 先輩!!」

3年生「‥‥鈴ちゃん、箒ちゃん?」

セシリア「よかった‥‥無事でしたのね!!」

シャル「一時はどうなるかと思いましたよ‥‥!!」

3年生「みんな‥‥一体、何が‥‥?」

箒「一夏が撃たれたメカ無さんと一緒に先輩を抱えて医務室まで連れて来てくれたんです。その後一夏は電脳ダイブした私たちを助けてくれて‥‥」

鈴「でもその後、敵の罠にハマって一夏も昏睡状態になっちゃったのよ!!」

セシリア「織斑先生もなぜか大きくなって戻ってきていて、しかも意識不明の重体なんですの‥‥!!」

ラウラ「教官‥‥!!」

千冬「う~ん‥‥」

鈴「あとついでに、何故かシャルとホイットニーが分裂しちゃってるし‥‥」

シャル「誰なんだろう、アレ‥‥」

ヒューストン「う~ん‥‥」

3年生「そう‥‥大変だったのね、みんな‥‥」

箒「はい。でも、みんな命に別条がなくて何よりです」

3年生「で、他には?」

全員「え?」

3年生「他に事件は無いのね?」

箒「せ、先輩?」

シャル「は、はい。一般生徒たちも、みんな無事です」

3年生「そうじゃなくて!!」

全員「!?」

3年生「他に私の名前を言う邪魔をする事件はないのね!?」

全員「」

3年生「もう他に事件はないのね!? 私が全部解決してあげるから今の内に言って!!」

全員「……ありません……」

3年生「よーし‥‥これで問題は全部片付いたわね‥‥。もうこれ以上はないでしょう。これでやっと心おきなく私の名前が言えるわ‥‥」

鈴(どんだけ自己紹介したいのよ、この人‥‥)

シャル(シッ!)

3年生「いい!? よ~く聞いてっ!! 私の名前は‥‥」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

鈴「な、何!?」

箒「地震か!?」

シャル「み、みんな見て!! 窓の外!!」

ラウラ「あ、アレは‥‥!?」

???「‥‥」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

セシリア「お、大きな段ボール箱‥‥!?」

鈴「何がどうなってんのよ!?」

3年生「ふ、ふふふふふふ‥‥」

シャル「せ、先輩!?」

3年生「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

全員「!?」

3年生「いいわっ!! たとえ相手が神であろうと‥‥私の邪魔はさせない!!」 カッ

バカッ

鈴「ギャアアアアアアアアッ、アタシのお腹から目ん玉みたいなの出てきたぁぁぁ!!」

箒「う‥お‥‥!?」 バカッ

セシリア「これは‥‥!!」 バカッ

ラウラ「待機状態のISが‥‥」 バカッ

シャル「共鳴してる!?」 バカッ

メカ無『』 バカッ

メ簪『メカラッタ!?』 バカッ

千冬「」 バカッ

一夏「」 バカッ





――教室

ダリル「こ、これは‥‥!!」 バカッ

フォルテ「先輩!!」 バカッ

九段下「うぅ‥‥」 ドサッ

ダリル「ッ!! 九段下!!」

フォルテ「先輩!! 周りの生徒たちも‥‥!!」

ドサッ ドサッ

ダリル「こりゃあ‥‥!!」





――地下特別区画

バカッ

マドカ「まさか‥‥!!」

黒崎「特別区画最奥部より、正体不明の高エネルギー体が急速接近中!! シールドバリア確認!!」

山田「まさか、また敵!?」

マドカ「いや違う………」

3年生に似た巨人「」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

黒崎「ヒト! 人間です!!」

山田「ひ…」

3年生に似た巨人「」 ズズズズッ

山田「ぎゃああああああああああああああ!!」

――地表

ドオッ

???「!」

ピシッ ギィィィィィィィィィィィ

???「‥‥」

ギギギギギギギギギギギ

3年生に似た巨人「ああああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

???「‥‥」 ピシッ

3年生に似た巨人「神よ、我が名を呼べ!!」

ギギギギギギギギギギギギギ バカッ

3年生に似た巨人「さあ!!」

浮き輪を持った犬のようなモノ「!!」 ゴゴゴゴゴゴ





――教室

谷本「」

鷹月「」

相川「」





――喫茶「ななつき」

絢音「」





――倉持技研

ヒカルノ「」





――五反田食堂

弾「」

源「」

蓮「」

蘭「一夏‥さん‥‥」





――アメリカ合衆国「イレイズド」

ナターシャ「」

イーリス「」





――某所 亡国機業本拠地

スコール「」

オータム「」

――IS学園 地下特別区画

黒崎「」 ドサッ

山田「名前が‥‥みんなの名前が消えていく‥‥。これが答えなの‥‥? 私の求めていた――」

カタカタカタカタカタ

山田「え!?」

千冬「‥‥」

山田「‥‥ッ!! 織斑先生!! 先生、先生、先生、先生、先生先生先生せんせいせんせいせんせいせんせ」

ドサッ

端末『Shoot my heart.』

――地表

浮き輪を持った犬のようなモノ「‥‥!!」 ドガガガガガガガ

3年生に似た巨人「誰か…名づけよ、我が名を…断末魔の叫びからでも、哀惜の慟哭からでもなく、静かなる言葉で…誰か、我が名を呼んでくれ…」

浮き輪を持った犬のようなモノ「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHH!!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

3年生に似た巨人「我が名は『3年生』にあらじ。我が、呼ばれたき名は…」





3年生「!!」 ガバッ

シーン...

3年生「ここは‥‥寮の部屋?」

シーン...

3年生「なぁに? 夢ぇ? あ~気持ち悪い夢だった~」

シーン...

3年生「いっけない、もうこんな時間じゃない!! 早く教室に行かなきゃ!!」 タタタタッ

――廊下

3年生「あれぇ?」






――食堂

3年生「‥‥」 モグモグ





――教室

3年生「‥‥」

シーン...

3年生「なんか、妙に静かね‥‥」

シーン...

3年生「‥‥」

シーン...

3年生「チャイムも鳴らないし先生も来ない‥‥」

シーン...

3年生「あっ、そっか! 今日は日曜日だった!! あーもう恥ずかし~~!!」

ザザーン...

3年生「‥‥?」

一夏「」

メカ無『』

3年生「アレって、一夏くんと会長? 何で浜辺なんかに居るんだろう?」

ザザーン...

3年生「よし!! ヒマだし今日は2人と遊ぼうかしら!! お~い、一夏くん、会長~!!」 ダッ

ザザーン...

真っ二つに割れた3年生に似た巨人「」 ザザーン...ザザーン...

第8章『3年生編』終了!!
また脱線しまくってオマージュネタに走ってしまった‥‥
次からはちゃんとクロマティに戻ります
ノシ

IS学園 大運動会 第一種目 100m走

 セシリア・オルコット(16)。私は物心ついた頃からセレブでしたけれど、足が速い事も自慢でしたわ‥‥。
 IS学園に入学して以来、今一つ目立てませんでしたがようやく脚光を浴びる日が来ましたわ。
 足の速さならば誰にも負けない、絶対に誰にも負けませんわ‥‥誰にも――。
 ‥‥と、さっきまでは思っていましたけれど――。

メカ無(バイク形態)『ブルンブル~ン‥‥』 ドッドッドッドッドッドッドッ

セシリア(――いくら何でも、アレは反則ではなくて‥‥?)

山田「い、位置についてぇ。よ~~い――」

バン

メカ無(バイク形態)『ブロォォォォォ!!』 グォォッ

九段下「ぎゃああああああああああ!!」 バキャッ

ティナ「ぐええええええっ!!」 ドコッ

キキィッ

山田「い、1位はメカ無さんです‥‥」

3年生「‥‥今、二人くらいひかれなかった‥‥?」

セシリア「当たり前ですわ!! どう見てもバイクではありませんの!! 誰か止めてくださいまし!!」

3年生「たしかにどう見てもバイクね‥‥。けれど、ついこの間までは制服を着て私達と一緒に授業を受けてた仲間だし‥‥ムゲに『貴女バイクじゃない』ってツッコミ入れるのはさすがに抵抗あるでしょ‥‥」

セシリア「‥‥というかメカ無さんがああなってしまったのは、先日の所属不明部隊の襲撃以来でなくて?」

3年生「そうね。あの時メカ無さんが敵の攻撃を受けて怪我をして、保健室に運び込まれて‥‥」

セシリア「その後――」

二人「‥‥」

3年生「何が起こったんだっけ‥‥?」

セシリア「私もここ数日の記憶が抜け落ちていますわ‥‥」

3年生「まあそんな事より、次の競技はさすがのメカ無ちゃんでも楽にはクリアできないでしょ」

山田「続いての競技は、走り高跳びで~す」

セシリア「高飛び‥‥」

3年生「走るだけならあの子の独壇場だけれど‥‥高飛びとなればあの子でも手も足も出ないわね」

セシリア「‥‥手足ありませんけれど」

メカ無(バイク形態)『ブロォォォォォ!!』 グォォッ

セシリア「人間誰しも得手不得手という物がありますわ‥さあメカ無さん、先輩面していられるのも今の内ですわよ‥‥」

メカ無(バイク形態)『ブロォォォォォ!!』 ゴォォォォォォォォッ

セシリア「とべるモノならとんでごらんなさい!!」

メカ無『V/STOL機構、作動シマス』 ガシャコッ

セシリア「え」

メカ無(飛行形態)『』 キィィィィィィン

セシリア・3年生「」

箒「とんでる‥‥」

鈴「もうIS要らないじゃない!!」

買い物行ってきます
ノシ

瀬名川「会長さんよ、ちょっといいか‥‥」

メカ無『なあに?』

瀬名川「こないだアタシら、バイト中にチンピラとモメちまってさ‥‥下手打ったらバイト先に迷惑かけちまいそうなんだ」

メカ無『私にどうしろっていうの‥‥?』

瀬名川「え‥‥ホラ、アンタけっこう社会的に顔が利くだろ? ナシつけてくんねーかなって――」

メカ無『瀬名川さん、権力というものはそう簡単に振りかざして良いものじゃないの。それにもうすぐ修学旅行よ。あまりモメ事は起こしたくないわ』

瀬名川「‥‥」

メカ無『助けてあげたいのはやまやまだけれど、私にだってできる事とできない事があるわ』

瀬名川「け、けどよ、お前しか頼る奴がいねーんだよ」

メカ無『瀬名川さん‥‥前から言ってると思うけれど、貴女が周りに壁を作っているからそんな事になるのよ。言うなれば自業自得よ』

瀬名川「‥‥おい、そりゃ言い過ぎじゃねえかメカ無さんよ‥‥!」 ビキッ

メカ無『もっと言ってあげましょうか‥?』 ギュィィン

九段下「よせよ、やめろ二人とも!!」

メカ無『九段下さん‥‥』

九段下「メカ無の言う通りだとアタシも思うぜ。アタシらはいつもメカ無にオンブにダッコだ。テメーのケツはテメーでふけって事だ‥‥そうだろメカ無?」

メカ無『ありがとう、九段下さん。貴女は本当に私の良き理解者よ‥‥。私は貴女を無二の親友だと思っているわ』

九段下「メカ無‥‥」

メカ無『けれど、ひとつだけ貴女に言っておきたい事があるわ……』

九段下「?」

メカ無『‥‥貴女が今私だと思って話しかけているのは自動販売機よ』

九段下「あ!!」

メカ無『とにかく‥‥貴女たちは私に頼り過ぎなのよ。そんな事じゃいつまで経っても一人立ちできないわ』

瀬名川「何だよ‥エラソーな事言いやがってよ‥‥。結局会長も頼りになんねーじゃねーか」

メカ無『貴女のために言っているのよ‥‥。それがわからないのなら私は帰らせてもらうわ。言いたい事があるのなら勝手に言いなさい』

瀬名川「そうかよ!! じゃこの際言わせてもらうぜ!! お前には前から言いたい事があったんだよ!!」 ガタッ

メカ無『だからそれは私じゃないわよ!!』





――職員室

山田「外出届け‥ですか?」

メカ無『はい‥‥よろしいでしょうか』

山田「もちろんですよ! このところメカ無さんも働き詰めでしたから、少し休んでください!」

メカ無『え‥ええ。ありがとうございます――』 ガシャ、ガシャ...

山田「‥‥? せっかく外に出られるのに、何だか淋しそうな?」

黒崎「ワカーホリックなところがありましたからね、彼女。委員会の仕事が居場所みたいな物だったのに、そこから逃げ出したがっている自分を認め切れずにいる自分がいる‥‥気持ちはわかります」

山田「‥‥時々忘れてしまいそうになりますけど、メカ無さんも思春期の女の子なんですよね」

千冬(メカ無‥‥)

――パチスロ屋

メカ無『よし!! クインテット・ストラトスきたッ!! 今日は稼ぐわよ‥‥!!』 チンジャラジャラジャラジャラ

モブA「おい‥アレ未成年じゃねえの?」 ザワザワ

モブB「ほっとけよ、別にチクって玉貰えるワケじゃねえんだし‥‥」 ヒソヒソ

メカ無(‥‥何やってるのかしら、私。あんな風に説教した手前、こんな姿絶対に見せられないわね)

筐体『私を狙えッ!!』 ガシャンッ

メカ無(亡国機業には何度も辛酸を舐めさせられ、無人機との戦いでも十二分に力を発揮できなかった‥‥。これじゃ17代目メカ無の名前なんて‥‥)

筐体『インフィニット・チャレンジ!!』

メカ無(‥‥もうどうでもいいわ。こうなったら堕ちる所まで堕ちてやる‥‥) ポチッ

シーン...

メカ無『あ、アレ?』 ポチッ、ポチポチッ

店員「どうかなさいましたか?」

メカ無『下のボタンを押してるのにゲームが進行しないんだけれど‥‥』

店員「申し訳ございません。今、見てみますので少々お下がりください」

メカ無『ええ‥‥』 ガシャン

店員「うーん‥‥どうやら配線の接触が悪いようでして……」 ガチャガチャ

メカ無『――いやそれ私なんですけど!?』

モブC「あれ‥‥玉出ないぞ‥‥」 コン、コン

メカ無『パッキーカードを押し付けないで!!』

店員「困ったなあ‥‥ちょっとバイトくん、手伝ってくれないかな」

一夏「はい!」

メカ無『い、一夏くん!?』

一夏「へ、メカ無さん!?」

店員「え? 何、君たち知り合い?」

メカ無『ち、ちょっとこっちに来なさい!!』 グイッ

一夏「え、あ‥ちょっと!?」

店員「お客さん! 玉~!!」





――アーケード街

一夏「――いやあ、寮で衣食住は賄ってるし学費も無償なんですけど、やっぱり千冬姉の給料の足しになれればなあって思って‥‥」

メカ無『だからってパチンコ店のアルバイトなんてしてたらダメじゃない!! どんだけブラックなのあの店!?』

一夏「そういうメカ無さんこそ、何であんなお店にいたんですか?」

メカ無『うっ』

二人「‥‥」

メカ無『と、とにかく! あんな所に2人揃って居たなんて学校中に知られたら、私達停学どころじゃ済まないわよ』

一夏「そうですね‥‥特に千冬姉にバレた日にはどんな目に遭わされるか‥‥」

メカ無『何とか上手く誤魔化せないものかしら』

一夏「う~ん‥‥あ!」

メカ無『何か良いアイデアでも思いついたの!?』

一夏「はい! 俺はともかく、メカ無さんがあそこに居た言い訳なら成り立ちそうな気がします」

メカ無『ならさっそく実行しましょう。どうすればいいの?』

一夏「デートしましょう!」

メカ無『』

危うく1ヶ月空けそうになったので更新がてら消化報告
・第1章「入学編」
#1 不良上等
#2 ワル自慢だよ人生は
#4 ファイトクラブ

・第2章「EU襲来編」
#7 ラヴァー・ボーイ
#11 ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル
#13 野望の帝国
#14 帝国の逆襲
#15 北斗暗殺計画

・第3章「臨海学校編」
#8 センチメンタル・バス

・第4章「夏休み編」
#22 キラー・クイーン
#23 前田最良の日
#41 We are the world

・第5章「学園祭編」
#17 未来世紀クロマティ
#18 ブレード・ランナーズ・ハイ
#25 会議は踊るよどこまでも
#187 Father's Little Helper
#EX ヒーロー☆伝説ニャンざぶろう(ハチミツとクローバーより)
#5 明日に向かってパシれ
#137 SPANISH BOMB
#138 RADIO MAGIC
#20 ロスト・イン・クロマティ

・第6章「キャノン・ボール・ファスト編(誤字ってレベルじゃなかったよ‥‥)」
#33 スカイ・ハイ
#34 LIVING IN AMERIKA(原文ママ)

・第7章「ヒーロー編」
#90 TWISTED BROTHER
#91 TOYS IN 前田家
#99 Beat It

・新章「学園襲撃編」
#102 ZOO STATION
#26 You know my name
#? ELEVATOR ACTION(HELLSINGより)
#47 日本男児 in N.Y.
#? 世界の中心(鋼の錬金術師より)
#? うしおととらの縁(うしおととらより)
#? まごころを君に(新世紀エヴァンゲリオンより)

・第9章「大運動会編」←今ここ
#56 RUN RUN RUN
#52 Born to be wild

乞うご期待

メカ無『ねえ、一夏くん‥‥。貴方パソコン持ってるんでしょう?』

一夏「‥‥は‥‥はい‥‥」

メカ無『学園で貴方が一番パソコンに詳しいって言うから‥‥貴方に一から手取り足取り教えてほしくって‥‥♪』

一夏「は‥‥‥‥‥はい‥‥」

メカ無『‥‥ちょっと一夏くん、ボ──ッとし過ぎ!! 一緒に選んでくれなくちゃデートにならないじゃない!!』

一夏「え‥‥あ‥いや、すみません」

メカ無『もう‥‥これが最善の解決策だっていうからここに来たのに‥‥』

一夏(そうだ‥‥俺はともかくメカ無さんなら何となくあのパチンコ店に居ても筐体だと思われるだろうし──実際思われてたし──、店に専門の修理を頼まれてここに持ち込んだと言えばメカ無さんへの追求は免れる!! ‥‥ハズだ。自分でも何考えてるか分かんないけれど)

メカ無『ちゃんとお願いね? なにしろ私、パソコンにさわった事もないんだから』

一夏「ええっ!?」

一夏(『パソコンにさわった事がない』!? それはある意味『IS操縦者が一次移行も済ませていない』というのに等しいんじゃないのか!? ‥‥というより今さらこんな事言うのもなんだけれど、彼女は一体何者なんだ!?)

ジャージ「やっぱこの寸胴良いよな‥‥チェンゲ最高」

ヤブ「はぁ? この青みは鉄人だろjk」

ヒ○コー「アレ? これゴッドスクランダーどこよ? 別売り?」

メカ無『ちょ、ちょっと‥‥』 タジ...

一夏「それは売り物じゃありません!!」

ヒ○コー「うおっ!!」

メカ無『一夏くん!!』

一夏「おっさん、アレはDX超合金でもなければリボルテックでもありません。‥‥おとなしく帰ってください‥‥」

ヒ○コー・ジャージ・ヤブ「お、おう‥‥」

メカ無『‥‥何だったのかしら、あのデブとジャージとチョンマゲ?』

一夏「き、気にする事ありませんよ‥‥。たぶん何かの間違いですから‥‥」

 ふ~~、あぶないあぶない‥‥。
 メカ無さんと行動を共にするのは凄く緊張感がある‥‥。
 そもそもあの人と電気店に来るというのはある意味最も危険な行為じゃないか‥‥。

メカ無『どれにしようかしら‥‥』

 ‥‥て言うか、別にオレもそんなにアセる事ないよな‥‥。
 考えてみりゃあの人は値札つけてここに並んでてもおかしくない‥‥。

メカ無『ねえ一夏くん。この数字の横についてる『TB』って何かしら? なんだか数字が多い程値段も高いんだけれど‥‥』

 いや‥‥違う!!
 彼女はれっきとした人間なんだ!! 何だかそんな気がしてきた‥‥!!
 今メカ無さんをかばってやれるのはオレしかいない!!
 何かそういう使命感が湧いてきたぞ!!

メカ無『この回線‥‥速度? これが速いと何がお得なのかしら‥‥』

 そうだ、あの人は同じ仲間じゃないか!!
 常識と友情ならあえて友情を取る!!

メカ無『あら‥‥? 何か背中がかゆいわね‥‥。一夏くん、ちょっと背中をかいてくれないかしら♪』

一夏「…………」

 ──以前なら「んなワケねーだろ」ってツッコんでるところだけれど、もうそんなツッコミは入れない!!
 この人は本当に背中がかゆいだけなんだ‥‥。

一夏「こ‥‥この辺ですか?」

メカ無『ん~~♪ もうちょっと下かしら‥‥♪』

一夏「はい。‥‥!?」

メカ無『どうしたの?』

一夏(こ‥後頭部にスイッチがついてる!!)

メカ無『何? どうしたのよ?』

一夏(‥‥‥‥‥‥‥‥押してみたい──)

 これはある種、他人のカサブタを見て「はがしてみたい」と思う心理に似ている。
 ‥‥けれど、断りもなく他人のカサブタをはがすのはとても失礼な事だ‥‥。
 それと同じで彼女に無断でこのスイッチを押すのはいけない事だ──。

メカ無『ねえ、ホントに何!? 虫!? 虫なの!?』

 けど押してぇ~~!!

メカ無『ヤダヤダヤダ!! 私、機械も苦手だけれど虫もダメなのよ!! 早く取ってちょうだい!!』 ガシャバタガシャバタ

 いや、待て!!
 そんな事どうでもいい‥‥落ち着いて平常心を取り戻すんだ‥‥。
 メカ無さんの頭にスイッチがついてるからといって、それが何だっていうんだ!!

メカ『嫌嫌嫌ァァァァッ!! 一夏くん気づいてるんでしょう!? 意地悪しないで早く取ってェェェェ!!』 ガッシャンバッタンガッシャンバッタン

 ‥‥ひょっとしたらオレが気づいてないだけで、オレの頭にもスイッチぐらいついているかもしれないだろ!!
 世界は広い、そういう人も三人くらいはいるに決まってる!!

メカ無『イヤァァァァァァァァッ!!』 ガシャンッ

ポトッ

一夏「あれ‥‥メカ無さん、何か落ちましたよ」

メカ無『えっ。ウソ、取れた!? あーよかった~~!』 ヘナヘナ...

一夏「!?」

メカ無「えっ、今度は何!?」

一夏(バネ!?)

 まずい‥‥!! オレとメカ無さんの友情がゆらぎ始めてきたぞ!!
 いくらなんでもバネは‥‥。

ピピピッ、ピピピッ

メカ無『‥‥? 秘匿回線! このアドレスは‥‥』

 いや!! 落ち着け!! 世の中は広い!!
 バネがついている人間くらいいくらでもいる!!
 現にセシリアの側頭部にデカいのが二つついてるだろ!!
 こんな事でメカ無さんとの友情は壊れない!!





──寮
セシリア「‥‥クシュンッ!!」

ルームメイト「大丈夫? 花粉症?」

セシリア「大丈夫ですわ‥‥。って言うか花粉症は春ですわ。今は秋ですわよ?」

一夏「メカ無さん‥‥。たとえまわりがどう思おうと、オレはメカ無さんを人間だと思っています‥‥」

メカ無「」

一夏「そりゃ、オレも貴女の事を誤解した時もありました‥‥。だけれど、それは過去の事です‥‥」

メカ無「」

一夏「今では貴女が親友のように思えてきたくらいですよ‥‥。そう‥貴女は人間です──」

店員「あの‥‥お客さん」

一夏「はい?」

店員「それ洗濯機なんですけれど‥‥」

洗濯機「」

一夏「」

作業員「はぁい、搬出準備できましたぁ!」

店員「わかりました。お願いします」

作業員「では行ってきまぁす」 ブロロォ

メカ無『‥‥』 ガタンガタン

一夏「ああっ、出荷されてる!!」

──在日米軍基地 港湾部

米軍兵「オーライ、オーライ」

士官A「‥‥しかし凄い量の荷物だな。こんなに積みきれるのか?」

士官B「余計な心配すんなよ。みんなあの最新型強襲揚陸艦『アルジェント』が何事もなく掻っ攫っちまうさ」

士官A「しっかし、何だって上はこんな時期にその新型空母をこの横須賀に寄越したんだ? あんなデカブツが寄港してたら大騒ぎだろ」

士官B「その上層部がジャップのお偉いさんに圧力かけて黙らせてんだと。全く、ホワイトハウス様々だな」

士官A「‥‥それって要は俺達にも黙れって言ってるって事だよな」

イーリス「そういうこった。無駄な詮索はやめて下士官とっととは持ち場に戻りな」

士官A「な‥‥イーリス・コーリング特務大尉殿!?」 シャキッ

士官B「もう、お身体はよろしいので‥‥!?」 シャキキッ

イーリス「おう! この通りピンピンしてるぜ。ナタルも呼ぼうか?」

士官A「い、いえ‥‥ご勘弁を‥‥」

イーリス「ハハハッ! 冗談に決まってんだろ。そら、鬼軍曹にシゴかれたくなきゃさっさと戻んな」

士官A・B「イ、イエス・マム!!」 ザッザッザッザッザッ

イーリス(‥‥しかしまぁ、士官どもの言う事もモットモだ。何だってアタシら『イレイズド』を駆り出してまでこの艦をここに泊めてる?)

検問「スタァップ、ハヴユゥライセンス?」

イーリス(運び込まれてる荷物も荷物だ。表向きは『E.O.S.用の電装品の調達』っつー話だが、どうもキナ臭い匂いがしてならねぇ)

検問「‥‥オケェイ、ゴォゥアウェェイ」 ブロロォ

イーリス(何事もなけりゃ、良いんだけどな‥‥)

メカ無『‥‥』 ガタンガタン

イーリス「」

メカ無『‥‥』 ガタガタガタン...

イーリス(‥‥どっかで見なかったか?)

買い物行ってきま
いつ帰るかは不明
みんなも季節の変わり目だから花粉症や風邪には気をつけような

──1時間後、沖合

スコール「──以上が、我が組織が得た英国の動向です。如何でしょうか、大佐?」

大佐「素晴らしい。流石は亡国機業、『国崩しを織り成す者』と言うだけはある」

スコール「お褒めに預かり光栄です。では、品物は‥‥」

大佐「ああ。大した事のないガラクタばかりだが、君の言う『魔法使い』が居れば全く段違いの代物に変わるのだろう?」

スコール「ええ。それも原初の魔法を扱う、飛び切りの‥‥」

大佐「しかし‥‥まさか『エクスカリバー』とはな。核抑止時代の遺物を持ち出すとは、向こうも相当焦っていると見える」

スコール「弾道兵器技術に疎かった欧州連合がこの10年で世界の覇者に成り代わった今、連合離脱を断行した英国は自前のノウハウを活かして次代の王国へと返り咲かんとしている‥‥。貴方がた米国もそのクチでしょう?」

大佐「ハッ、VHS全盛時代にレーザーディスクを買うような連中と一緒にされてはかなわんね。我々はもっと賢い手段で世界を取る」

スコール「無人IS技術‥‥ですか」

大佐「RQ-1『プレデター』‥‥アレは我が国が誇る最高の発明品だよ。人が血を見る時代は終わりつつある。次なる戦争は、機械同士が勝手に潰し合えば良い」

スコール「‥‥」

大佐「その為に是非とも、無人IS開発の協力を取り付けてくれたまえ」 ギュゥ...

スコール「‥‥はい、勿論」 ニコリ

ナターシャ「‥‥」





──密会所外部 『アルジェント』通路

メカ無(‥‥これで決まりね。米国は亡国機業とグルだった。国際テロ組織と特務部隊が癒着して世界経済を牛耳ろうとしていたという情報は入っていたけれど、まさかここまで根深いなんて‥‥) ガサゴソ

兵士A「おい、何だあの箱?」

メカ無(!!)

兵士B「ちょっと見てこい」

兵士A「ああ」 カッカッカッカッ

メカ無(‥‥)

兵士A「よっ‥こら‥‥」 ガタッ

メカ無『』 ゴロン

兵士A「‥‥」

メカ無『‥‥』

兵士A「なんだ、備品か」 ガポッ

メカ無(‥‥) ホッ

兵士B「異常なしか。次、行くぞ」

兵士A「ああ。‥‥しかし何であんな所に備品が置いてあるんだ?」 スタスタスタ...

メカ無(‥‥何とか撒いたわね。次は──)

ガタッ

メカ無『!!』 ギュイィィィィィン

一夏「わあっ!! こんな所で何してるんですか、メカ無さん!?」

メカ無『』

一夏「とにかく、そんな危ないモノしまってくださいよ! 怪我したらどうするんですか!!」

メカ無『一夏くん!? どうしてここに居るの!?』

一夏「‥‥!! メカ無さん、こっち!!」 グイッ

メカ無『!?』 ダッダッダッ

イーリス「‥‥ん~~? この辺で声が聞こえた気がしたんだけどなぁ」 スタスタ

一夏(ッ‥‥)

メカ無(‥‥!!)

イーリス「‥‥気のせいか」 スタスタスタ...

一夏「──ふぅ、行ってくれましたね。一時はどうなるかと‥‥」

メカ無『一夏くん、貴方その格好‥‥』

一夏「へ? ああ、これですか。なにしろずっと泳いできたもんで」 ビチャビチャ

メカ無『泳いで‥‥って、陸からこの距離をずっと!?』

一夏「んなワケないじゃないですか。 この艦が離れ始めたところをササッと‥‥ヘブシッ!!」

メカ無『なんて無茶な事を!! どうしてそこまで‥‥!!』

一夏「だって‥‥助けたかったから」

メカ無『』

一夏「このままヘタしたらどこの国かわからない所に連れて行かれるかもしれないってのに、放っておけないじゃないですか」

メカ無『貴方は‥‥もう、本当にバカ』

一夏「さ‥帰りましょう、メカ無さん」

メカ無『‥‥ごめんなさい。私はまだ帰れないわ』

一夏「へ?」

メカ無『いいえ、運が悪ければ二度と貴方達と会えないかもしれない』

一夏「な‥‥どういう事ですか、メカ無さん!?」

メカ無『‥‥かいつまんで状況を話すわ。場所を変えましょう』

一夏「え‥‥はい!」 タタタッ

イーリス「‥‥」

2点リーダが多い‥‥
書き溜め開始
こっから糞つまんないにわかミリタリと他作品パロディとテコ入れ入ります
閲覧注意

──強襲揚陸艦「アルジェント」 ボイラー室

一夏「‥‥敵の組織とアメリカの特殊部隊が結託!? 何でそんな──」

メカ無『まだ断片的な解釈だけれど、あの部屋に居たであろう将校は核抑止時代からの米軍の重鎮よ。彼の狙いはおそらく、合衆国を再び世界のトップに押し上げる事』

一夏「そんな無茶苦茶な‥‥」

メカ無『ここ10年で世界のパワーバランスは大きく変わり‥‥いいえ、大きく狂い始めたわ。世界一の核保有国だった合衆国は『白騎士事件』によって多くの弾道兵器を失い、その信用も失墜したわ。他の核保有国も同じように被害を被ったけれど、一番の痛手を負ったのは米国だった』

一夏「その為に次に手を出したのが、無人機技術だった‥‥?」

メカ無『再び列強ヨーロッパ時代を獲得した欧州連合に勝つ為に、米軍は自国を滅ぼしたISの無人化研究に着手したわ。けれど、その全てが徒労に終わった』

一夏「滅んだって‥‥まだアメリカはピンピンしてるじゃないですか!! 現に学園だって、あの国の圧力があってできたんでしょう!?」

メカ無『一夏くん。IS学園の設立は確かに米国の要請あってのモノだったけれど、彼らはIS開発に勤しむ欧州連合のメッセンジャーに過ぎなかったの。IS運用協定をアラスカで締結させたのは彼らがロケーションを用意したからだけれど、実際に事を有利に進める事ができたのはユーロの首脳陣だけ。ISに関わる技術を持った国家という意味では、米国は最早瓦解寸前なのよ』

一夏「だからって、その為に悪の秘密結社と手を組むっていうんですか!?」

メカ無『‥‥こんな話を知ってる? ある企業は政府との軍産複合体を形成して、巨万の富を得ていたわ。けれど、もはや敵の居ない政府に新たな兵器は必要ない。仮想敵国相手に従来の兵器で延々と訓練を続け、太平の世の中軍縮を続けていくの』

一夏「それじゃあ、会社は需要を失くしていつか捨てられるかもですよね。シャルの会社が良い例だ」

メカ無『そんな企業が、自社を延命させる為に何をしたと思う?』

一夏「え‥‥」

メカ無『反政府組織を支援して武器を売りつけたのよ』

一夏「」

メカ無『企業はある程度の水準を持った兵器を敵に売りつけ、今度は政府にその兵器に勝てる兵器を売りつけるの。あとは延々とイタチごっこを繰り返して、どちらかが音をあげるまで“商売”を続ける。自分達が作った物だもの、突け入る欠点なんて熟知してるわ』

一夏「そんな‥‥バレたら一巻の終わりじゃないですか!!」

メカ無『それはどちらも同じ事よ。例えば政府が企業に条約で禁止されている武器の製造を依頼するわ。それを一度でもすれば、企業にとっては最高の脅迫材料になる。敵も同じ。誰も企業に口出しできなくなる』

一夏「‥‥ちなみにその企業や政府って、モデルがあるんですか?」

メカ無『挙げればキリがないわよ。尤も、ほとんど好き者がでっち上げた都市伝説みたいな扱いでしょうけれどね』

一夏「‥‥」

メカ無『私が思うに、亡国機業は複数の国家を母体に持つ試作兵器の実験部隊よ。戦争を起こしたいとまでは思わないまでも、自国の軍事力を高める為に都合の良いテロ組織を捏造して兵器の性能をテストさせる。場合によっては複数の国家で共通の敵を潰すという美談も作れるからね』

一夏「そうなる事をわかってて、敵も国とつるんでる?」

メカ無『言ったでしょう? 脅迫のネタがあるのよ』

一夏「‥‥」

メカ無『話を戻すわ。米国の無人IS開発はそのどれもが水の泡になった。かつての大国の復権を見失う寸前、彼らは大いなる光明を見出したのよ』

一夏「大いなる、光明‥‥」

メカ無『それは今でも、私達の学園でのんびり暮らしているわ』

一夏「」 ジィィィィィィィィッ

メカ無『何で私を見るの?』

一夏「え、違うんですか?」

メカ無『根拠が見えないけれど全然違うわ。もっと身近にそれらしい子がいるでしょう?』

一夏「‥‥あっ!!」

メカ無『そう、全て始まりに繋がるのよ』

一夏「ゴレ美達‥‥!?」

メカ無『学園は緘口令を敷いたけれど、どうやらそれも筒抜けだったみたいね。先日の所属不明部隊も、恐らく彼女達を狙った米軍の命令よ』

一夏「‥‥根拠は?」

メカ無『この弾丸。私のお腹に残っていた物だけれどね、調べた結果この口径の弾丸を使う軍事組織は限られていて、しかもこれは燃焼薬莢式の最新モデル。これを使う組織はもっと絞られてきて、行き着いた国はひとつだった』

一夏「だったら、すぐにIS委員会に告発して部隊を摘発すれば‥‥」

メカ無『ゴレ美ちゃんやゴレ奈ちゃんをモルモットに差し出す事になるわ。できる?』

一夏「う‥‥」

メカ無『彼女達は現行のIS技術を遥かに超越したオーパーツよ。もし彼女達が委員会の手に渡ったら、最悪ネジ一本に至るまで解剖されてその技術は全世界に拡散される。ただ単純に友達を喪うだけじゃない。あの時学園で起こった悪夢が世界中で引き起こされるわ』

一夏「どうするんですか」

メカ無『そうならない為に、別の脅迫ネタでこの部隊を摘発するわ。幸い今は亡国機業と取り引きをしている。これは各国にとって共通の商売相手であり暗黙の了解だけれど、出し抜きたい国家としては一時的に制裁対象にしてくれるかもしれない。そうなれば少しの間だけれど米国の暴走を止められるかもしれない』

一夏「メカ無さん」

メカ無『なあに?』

一夏「貴女は一体何者なんですか」

メカ無『‥‥』

一夏「国やテロの内情を訳知り顔で口にして、冷静な表情で恐ろしい事を考えて、こんなの普通じゃない。メカ無さんはなんなんですか」

メカ無『‥‥更識家はね、代々日本の国防を影で支えてきたカウンタースパイの一族なのよ』

一夏「‥‥」

メカ無『ある時は東京への原爆投下を未然に防ぎ、ある時は国内での9月11日を予見し回避した。私はその17代目を継いだ次期当主。今度は私がこの国を守らなきゃいけない』

一夏「たった独りで、ですか」

メカ無『一人じゃないわ。布仏家も私達更識家のオブザーバーを務める一族よ。彼女達が拾った情報を頼りに私達一族は』

一夏「独りで戦わないでくださいよ!!」

メカ無『!?』

一夏「何が国防だよ、くそったれ‥‥。こんなちっぽけな背中にどれだけの物を背負わせてるんだ‥‥」

メカ無『一夏、くん‥‥?』

一夏「そんなの認めない。そんなの、まるで人間じゃないみたいじゃないですか!!」

メカ無『‥‥そうよ。私達は国を護る為の装置だもの』

一夏「──ッ!!」 パシッ

メカ無『ッ!?』

一夏「オレが人を殴るのは、これで二度目です」

メカ無『一夏く──』

一夏「横暴に聞こえるかもしれないけれど、大切な人にだからこそオレは殴るんです」

メカ無『!!』

一夏「だから帰りましょう、メカ無さん!! 俺は親友の貴女を、たかが国なんかの為に死なせたくない!!」

メカ無『一夏‥‥くん──』

ヒュッ

メカ無『ッ!? 危ない!!』 ガバッ

一夏「!?」 ドサッ

カッ

一夏「ナ、ナイフ!?」

イーリス「良い話じゃねえかよ。ロマンチックで泣けてきたぜ」

メカ無『‥‥!! 『イレイズド』のイーリス・コーリング!!』

イーリス「アクビを噛み殺した所で宣言するぜ。お前達はみんなの所には帰れない」 チャキッ

メカ無『くっ‥‥!!』 ギュィィィィィン

一夏「行ってください、メカ無さん!!」

メカ無『ッ!? 一夏くん──』

一夏「勝てると思う程には自惚れてません。けれど、貴女を生かす自信ぐらいはあります!!」

メカ無『なんで‥‥!!』

一夏「聞く暇あったら生きてくれよ!!」 キィィィィンッ

メカ無『!!』

イーリス「へぇ、それが『白式』ってやつか。イカスじゃねえか。上が欲しがるワケだぜ」 ヴゥゥン

一夏「来るなら来い!!」 ジャキン

イーリス「お前にゃ用はねぇ!!」 キィィィィィンッ

メカ無『一夏くん!!』

一夏「ここから‥‥」 ドヒャウッ

イーリス「ッ!!」

一夏「でていけぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 ドガァァァァァァァッ

メカ無『‥‥ッ!!』 ダッ

──「アルジェント」 データベース

メカ無『‥‥着いたわ。ここがこの艦のデータベース‥‥』

端末『Entry Passcode』

メカ無(‥‥一夏くんには悪いけれど、ここで最低限のデータを吸い上げる!) カタカタカタカタッ

端末『Wait......Complete』

メカ無(けれど、何故かしら‥‥。裏切り・騙撃なんて朝飯前なのに──) カタカタカタッ

端末『Serching...』

メカ無(こんなに胸が痛むのは‥‥何故なの?) タンッ

端末『No Data』 ビーッ

メカ無『!?』

端末『No Data』

メカ無(どうして!? 確かにスコールはかつて従軍していたはず‥‥!!)

端末『Serching...』

メカ無(‥‥)

端末『Her Dead』

メカ無『』

端末『Dead』

メカ無(死んだ‥‥!? だって彼女は現に‥‥)

端末『Die』

メカ無『!?』

端末『DieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDieDie』

メカ無『何なの‥‥!?』

端末『Die Everyone.』

メカ無『“みんな死んじゃえ”‥‥!?』

ズドォォォォォォォン

メカ無『!?』

アナウンス『第5エンジンルームで火災発生!! 航行の維持に支障あり!!』

メカ無『システムトラップ‥‥!? この艦もろとも消す気!?』

スコール「その通りよ、更識の狗」

メカ無『ッ!! 貴女は!!』

スコール「消えなさい」

ズドォォォォォォン

ドヒャウッ

メカ無(くっ、誤算だった!! まさか新鋭艦のシステムまで掌握していたなんて)

ズズズズズズズズ...

メカ無(艦が沈んでいく‥‥、一夏くんは!?)

一夏「食らえッ、『月穿』!!」 ビュィィィィィィィッ

メカ無(よかった!! まだ無事だったのね‥‥!!)

イーリス「ちげーよ、ネオ・ジオングのメガ粒子砲はここから始まってだな‥‥」

一夏「違いますよ、アレはネオジオンの紋章の軌跡を描いてるんですよ。イーリスさんのメチャクチャじゃないですか」

メカ無『』

大佐「コーリング特務大尉ィィィ!! てめっ艦が沈みそうだってのに何やってんだァァ!! ジュニアハイスクールの休み時間かァァ!!」

イーリス「大佐、昔OVAでやってたガンダムU.C.の技! アレこうですよね?」

一夏「大佐!! ガツンと言ってあげてください、やっぱりこの人バカです!!」

イーリス「んだとぉ!?」

大佐「二人ともバカだろーが!! ちなみにアレはジオン公国の国旗だ! アニメ全部劇場で見てた!」

メカ無(ホントに何してるのあの人たち!?)

今夜はここまで
明日できたら更新すr
         _,,..,,,,_ . _

        ./ ,' 3 /   ヽ--、
        l   /        ヽ、
       /`'ー/_____/
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄       スヤァ...

大佐「くっ! かくなるうえはデータだけでも回収して‥‥!!」

ナターシャ「こちらにあります、大佐」

大佐「おお、でかしたナターシャ・ファイルス特務大尉!! では早く脱出を‥‥」

ナターシャ「‥‥」 ジャコッ

大佐「な、何を‥‥!?」

ナターシャ「貴方の愛国心には敬意を表します、大佐。しかし、テロリストとの迎合には賛同しかねます」

大佐「貴様‥‥!!」

ナターシャ「イレイズド特務大尉として、テロリズム幇助の現行犯で貴方を拘束します」

イーリス「ったく、遅えんだよナタル!!」

一夏「これって‥‥一体‥‥!?」

イーリス「悪ぃなボウズ、茶番に付き合わせちまってよ」

一夏「え‥‥!?」

イーリス「アタシらはあの狸親父に網張っててな、おかげで捕まえる事ができそうだぜ」

一夏「芝居だったんですか!? じゃあ、ガンダムが好きなのは──」

イーリス「いや、それはホントに好き」

一夏「あ、そうですか」

イーリス「ムカつく事に荷物は全部回収されちまったが‥‥敵のアタマ押さえりゃお釣りがくるさ」

一夏「アタマ‥‥?」

イーリス「そら来るぜ、今回のラスボスがよぉ!!」

ドガァァァン

一夏「ふ、艦から何かが出て──!?」

イーリス「おいおい、コイツはエラいのが出てきたな‥‥!!」

ナターシャ「アレは‥‥!!」

大佐「金色の装甲、陽光の輝き、『ゴールデン・ドーン』‥‥!!」

一夏「じゃあ、アイツが!!」

イーリス「そうよ。コイツが今回の主犯、『土砂降りのスコール・ミューゼル』だ!!」

スコール「‥‥」

一夏「くぅ、眩しい‥‥!! 何の光だ?」

イーリス「第3世代ISで研究中の分子構造変換武装のテスト機体、その初期ロットだ‥‥」

一夏「分子構造を変換!? それって、銀の福音が使ってた光子榴弾みたいな──」

イーリス「そんな可愛いもんじゃねえさ‥‥そもそも分子構造変換武装自体、失われた核抑止神話を蘇らせる為に造られたようなもんだからな」

一夏「そ、それって‥‥まさか核融g」

スコール「特務部隊としては喋り過ぎじゃないかしら、イーリス・コーリング特務大尉?」

イーリス「!!」

スコール「秘密結社としての立場から言えば、失格よ」 メラァッ

イーリス「チィッ!! おいボウズ、てめえの身はてめえで守んな!!」 ビュゥッ

一夏「えっ、イーリスさん!?」

スコール「『ソリッド・フレア』!!」 ボォォァッ

一夏「ぐぁっ!!」 ドォォォッ

大佐「な、私まで‥‥!!」

ナターシャ「伏せてください!!」 ガバッ

大佐「!?」

イーリス「ナタルッ!! ぐぅっ!!」 バシュゥゥゥ

ナターシャ「イーリ!!」

イーリス「‥‥へっ、こんなもん屁でもねえ。それより何でそんな狸親父まで‥‥」

大佐「大尉‥‥なぜ?」

ナターシャ「‥‥別に貴方のような醜男にときめいたワケではありません。ただ、同じ祖国を守ろうとした愛国者として、然るべき裁きを受けてほしいだけです」

大佐「‥‥」

イーリス「ナタル‥‥」

大佐「‥‥フン、醜男は余計だ。その甘さもな」

イーリス「てめえ‥‥!!」

大佐「だがどうするつもりだ? 裁きも何も、アレの火力を凌げればの話だろう」

ナターシャ「彼らに委ねます」

イーリス「は!? おい、正気かナタル!!」

大佐「織斑一夏のシールドバリア無効化攻撃、そして‥‥」

メカ無『‥‥』

大佐「更識の奥の手か。だが分の悪い賭けだぞ」

ナターシャ「今揃っている手札としては、ベットを賭けるに値する戦力です」

大佐「前にもそう言ってカジノで無一文になったのは誰だったか‥‥」

イーリス「そうだぜ!! アタシだってまだ戦える、個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)を使えば──」

ナターシャ「万全での成功率が40%を切っているうえ、さっきの攻撃でスラスターを故障しているその機体でどうやって?」

イーリス「ッ!! お前‥‥」

ナターシャ「信じるのよ‥‥かつてあの子の翼を手折った彼らの力を!」

一夏(くっ‥‥セシリアの攻撃を防ぎきった『霞衣』を削り切るなんて‥‥!!)

スコール「どうかしら? 小さな太陽のお味は」

一夏(アレでこの威力なら本気で来られたら‥‥!!)

メカ無『一夏くん!!』 ビュゥッ

一夏「メカ無さん!! 敵が、亡国機業のISが!!」

メカ無『落ち着いて!! 敵は単機。しかも当面の目的を果たしている以上、彼女も長期戦を望んでいないはずよ』

一夏「でも、それじゃアイツを取り逃がしちゃうんじゃ‥‥」

メカ無『それでいいわ。勝つ事よりも生き残る事が先決よ!!』

一夏「けど‥‥!!」

スコール「少し、勘違いをしているわね」

一夏・メカ無「!?」

スコール「長期戦を望んでいない、という部分は正解よ、模範解答だわ。けれど‥‥」

メカ無『ッ!! 一夏くん退って!!』

スコール「逃げるというのも正解よ。ただ、貴方達は決して生き残れないわ」 ゴォォォォォッ

一夏「で、デカい!! さっきの比じゃない!!」

メカ無『一夏くん、早く!!』

スコール「遅いわぁ♪」 ズァッ

ドカァァァァァァァッ

一夏「ぐああぁぁぁ‥‥あれ? 熱くない‥‥?」

メカ無『間に合ったわね‥‥』

一夏「ッ!? これは‥‥」

イーリス「馬鹿デカい‥‥水球?」

スコール「アクア・クリスタルの液体制御ナノマシン‥‥! 地の利を活かしたつもりかしら?」

一夏(でも、いつもの水のヴェールとは比べ物にならない体積じゃないか‥‥! 一体どうやって‥‥!?)

メカ無『‥‥一夏くん、これが最後のチャンスよ』

一夏「え?」

メカ無『今のうちに逃げなさい‥‥! できるだけ遠くへ‥‥!!』 ジジーガガガッピー

一夏「メカ無さん!? 顔色が悪くなって──」

スコール「オーバーロード、かしら?」

一夏「!?」

スコール「ミステリアス・レイディは各国の最先端技術を総動員したフルスクラッチ機体、そのポテンシャルは未知数。けれど、元型機である『モスクワの深い霧』でさえ3ℓ程度の液体しか操作できなかったのに、目測で半径5mはあるこの水球を形成するのにどれだけの演算出力をかけているのかしら?」

メカ無『‥‥!!』 ジジジーガガガガッ

スコール「──貴方、彼を遺して死ぬ気?」

一夏「」

イーリス「さっさとボートに乗れよ狸親父!! アンタで最後なんだぞ!!」

大佐「やかましい!! 先週に孫が繰り出した稲妻十字空烈刃(サンダークロススプリットアタック)のダメージがまだ腰に残っているのだ!!」

イーリス「アンタどんだけマニアックな遊び教えてんだ!!」

ナターシャ「‥‥」

イーリス「諦めろナタル。ボウズはともかく、あの嬢ちゃんはハナから死ぬつもりだったんだ。こっちの追撃部隊を送ればヤツはボウズぐらいは諦めてくれるさ」

ナターシャ「‥‥選りすぐりの操縦者部隊を犠牲にして?」

イーリス「ナタル、夢見んのも大概にしな。これが今考え得る限りのハッピーエンドだ」

ナターシャ「‥‥」 ギュゥッ





スコール「らしくないわね、更識の狗。貴方程の女傑ともなれば、切り捨てるべきは何なのかは容易に想像がつくはずだけれど?」

一夏「そんな‥‥嘘だろメカ無さん!?」

メカ無『行きなさい、一夏くん‥‥!! アレの言う事に耳を貸さないで‥‥!!』 グググググッ

スコール「ダメね。意中の男に最悪の置き土産を遺して逝くようじゃ、女としても失格よ、貴女」 ズァァァッ

メカ無『ぐぅぅぅぅ‥‥あああああぁぁぁぁぁぁっ!!』 ジュゥゥゥゥゥッ

一夏「水球がどんどん蒸発していく‥‥!! もうやめてくれ、メカ無さん!!」

スコール「そうよ、更識の子。貴女が命を張る程、この国は重くないわ」

メカ無『‥‥黙りなさい!!』 ヴゥゥン

スコール「更に出力を上げた? ‥‥そう、残念だわ。貴女本当に死ぬ気なのね」 グォォッ

メカ無『早く‥‥行って!!』

一夏「何で‥‥どうしてそこまで!!」

メカ無『‥‥んでよ‥‥』

一夏「え?」

メカ無『何で皆寄ってたかって守られる理由を聞いてくるのよ!! 貴方達はただ、黙って私に守られていればいいのに!! 黙って救われていれば‥‥良いのに‥‥』 ミシミシッ

一夏「メカ無‥‥さん?」

スコール「‥‥更識特有の洗脳教育ね。可哀想に」 グゥゥッ

一夏「ッ!! 水球が消えていく‥‥」

スコール「来世では自由になれるように、塵も残さず消してあげる」 ボアァァァァァァッ

メカ無『あああああああああああああああっ!!』 バキバキバキバキッ

一夏「メカ無さん!!」

イーリス「だーっクソ!! じれってえ!!」 ドヒャウッ

一夏「え‥‥ぐあっ!!」 ガシッ

イーリス「ボウズ!! 何ボケ──ッっと浮いてんだ!! 言われた通りに逃げろよ!!」

一夏「ッ!! そんな事できるわけ──」

イーリス「犬死の大恥かかせんじゃねえ、クソガキ!!」

一夏「‥‥!!」

メカ無『コーリング特務大尉‥‥ありがとう‥‥!!』 ベキッ...ベキッ...

イーリス「‥‥礼なんか言われていいこたしてねえよ」

一夏「メカ無さん!!」

メカ無『一夏くん──』










楯無「大好き」

一夏「」

ドバァァァァァァァァァァァァッ

 “楯無”【たて-なし】:楯の不要なほど堅牢なものの意。
 源義光伝来の鎧とされる源氏八領のうちのひとつ。特に甲斐国の武田家に伝わる大鎧で名高い。

 私が襲名した名は、そんな厳めしい由来のものだった。
 17代続いた更識家の由緒正しい守護者の名。17の世を守る為、時空を超えて17人もの人間の名を食い潰してきた呪われた名。

「この名を受け継いだたった今より、お前は次なるこの国の守護者だ。鍛え上げた術の全てを以って、救国の為に振るうがよい」

 そう言って、先代の楯無は二度と姿を見せなくなった。
 以前、布仏の者にその行方を尋ねた事があったが、布仏は首を傾げて言った。

「布仏は後にも先にも、貴方様ただ一人にございます」

 嘘を言っていたわけではない。言葉を濁してはぐらかす程融通の利く人物でもなかったはずだ。
 その後、隠れて蔵から文献を調べて回ったが、先代が残した活動履歴は文字通り影も形も残っていなかった。

 ──否、初めから残されていなかったのだ。

 救国。響きこそ良いもののその為に必要なのは“英雄”という偶像ではない。
 “抑止力”という目に見えない力だったのだ。

 天罰、奇蹟、偶然、杞憂。あらゆる姿をとり楯無は力として顕現し、誰にも知られぬまま機能していた。
 ヒトを部品に、名を燃やし、ただ“楯無”というたったひとつの装置として、心を殺して機能しなくてはならない。

 私はその事に悲観した事は一度もなかった。そういう風に造りこまれていたからだ。
 “楯無”になれなかった余剰部品は全てを失い日常へ還り、楯無に守られる者達として機能する。そんな存在に憧れた事は、一度たりともなかった。
 ただ何も考える事もなく、救国の切り札として歯車のように回り続ける。
 そんな日々が、わりと心地がよかった。

「だって‥‥助けたかったから」

「独りで戦わないでくださいよ!!」

「聞く暇あったら生きてくれよ!!」

 ──あんな風に優しい言葉をかけられなければ、こんなに絶望する事もなかったのに。










 あーあ。










メ簪『メカラッタァァァァ!!』 ゴォォォォォォッ

メカ無『えっ!?』

スコール「何っ!?」

ドバァァァァァァァァァァァァッ

あああああああああああああああああああああああああああ

「布仏は後にも先にも、貴方様ただ一人にございます」

ちげーよ!! ここ布仏じゃなくて楯無だよバカぁ!!

ドヒャウッ

メカ無『ッ‥‥!! メ簪ちゃん、貴女!?』

メ簪『お姉ちゃん、諦めないで!!』

メカ無『ッ!? 貴女、喋れたの!?』

メ簪『思い出して、お姉ちゃん!! あの日、お姉ちゃんが今の身体になった時の事を!!』

メカ無『あの日‥‥?』

スコール「ママゴトは終わりよ、更識の狗!!」 ゴァッ

メカ無『!?』

一夏「さっきの火球が‥‥九つ!?」

イーリス「こりゃあ流石に‥‥あの嬢ちゃんでも‥‥!!」

スコール「今度こそ‥‥消し炭になりなさい!!」 ズォォォォォォッ

メ簪『思い出して、お姉ちゃん!! 先代が遺した、最期の言葉を!!』

メカ無『先代が‥‥遺した──』





16代目楯無『よくぞここまで残った。お前こそ新たなる“楯無”の名を受け継ぐに相応しい』

後継者「‥‥」

16代目楯無『では、これが最後の問いだ。お前が受け継ぐ器に値するか、この問いで決まる』

後継者「‥‥」

16代目楯無『汝は何の為に、この国を守らんと誓う?』

後継者「‥‥」

16代目楯無『この問いの回答に沈黙は要らぬ。己が臓腑より声を張り上げ、我が前に答えを示せ』

後継者「いやです」

16代目楯無『‥‥何と?』

後継者「いやです。わたしはたてなしになりたくありません」

16代目楯無『‥‥』

後継者「わたしのしょうらいのゆめは、おとうさんやおかあさんといっしょにくらして、かっこいいひとのおよめさんになることです」

16代目楯無『‥‥』

後継者「だから、かえしてください。わたしのなまえをかえしてください。わたしは、ふつうのおんなのこになりたいです」

16代目楯無『‥‥故に、資質を築きあげながら自ら楯無の名を棄てると?』

後継者「かえしてください」

16代目楯無『‥‥』

後継者「‥‥」

16代目楯無『‥‥くっくっく』

後継者「!?」

16代目楯無『ぐわぁはっはっはっはっは!! そうかそうか、楯無にならんとぬかすか!! ぐぁはははははは!!』

後継者「」

16代目楯無『くっくっくっく‥‥それにしても、こんな回答を返してきたのはな、ええ? お前が初めてだぞ。ガハハ』

後継者「‥‥」 ビクビク

16代目楯無『佳い、実に佳い。やはりお前にこそ、楯無の名を預けるに相応しい!!』

後継者「ッ!? わたしは、たてなしになりたくないって──」

16代目楯無『案ずるな、名までは奪わん。少しばかり預かっておくまでの事よ』

後継者「‥‥?」

16代目楯無『誇るがいい、小娘。お前は17代続いた楯無の中で、唯一人ヒトの身で楯無になれた女傑よ。羨ましい喃、眩しい喃』

後継者「え‥‥」

16代目楯無『これから襲名の儀を執り行うが、お前は我の事を悉く忘れてしまうだろう。これまでの装置として機能してきた楯無と同様、ただの抑止力として戦う事になる。だがな、お前には我らが失って久しい心が残される』

後継者「こころ‥‥?」

16代目楯無『お前が心を動かされた時、その時に我はお前に名を返そう。そして楯無を棄てヒトとして生きるがよい』

後継者「あなたは──」

16代目楯無『‥‥我らが焦がれたヒトとしての生を、その生涯の末まで謳歌するがよい』 スゥ...

後継者「!! まっ──」

16代目楯無『生きよ、ヒトの子よ。お前が誇るべきヒトの名は──』





メカ無『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』 ゴバァァァァァッ

全員「!?」

メカ無『‥‥あのボケ老人、散々ヒトを弄んでおいて、こんな仕掛けを用意してたの‥‥?』

一夏「め、メカ無さん‥‥?」

スコール「貴女、一体何を言って‥‥?」

メカ無『メ簪ちゃん!!』

メ簪『!!』

メカ無『やるわよ、アレを!!』

メ簪『うん、お姉ちゃん!!』

ドヒャウッ

一夏「な!?」

イーリス「高度を上げた!?」

スコール「無駄よ!! このゴールデン・ドーンに死角は無いわ!!」 ゴォォッ

メカ無『真名解放!!』

全員「!?」

メカ無『合!!』

メ簪『体!!』

ガシャーンッ

全員「」

一夏「‥‥メカ無さんの頭に」

イーリス「なんかちっこいのが挿さった‥‥」

メカ無・メ簪『』

スコール「‥‥ふふふふふふふ」

一夏・イーリス「!!」

スコール「‥‥ふざけるならあの世でしなさい」 ボォォォォッ

イーリス「こ、九つの火球がいっぺんに!!」

一夏「メ簪、メカ無さんッ!!」

メカ無・メ簪『』 ビコォォォォォン

全員「!?」 ビクッ

???『封印解除、拘束機構解放』 ガシャガシャン

イーリス「な、何だ? 更識の手足が引っ込んで──」

一夏「筒っぽに亀裂が‥‥!!」

???『真名解放を受理‥‥‥‥承認。本体を開放します』 バカァァッ

イーリス「ッ!? おい、何だありゃ!?」

一夏「メカ無さんの身体が‥‥!?」

???「‥‥清き熱情(クリア・パッション)ッ!!」

ドカァァァァァァン

一夏「ああっ、メカ無さん!!」

イーリス「‥‥いや、居ねえっ!!」

スコール「馬鹿な、一体どこに!?」

???「あら、ISの視界に死角は無いはずよ?」

スコール「ッ!! 後ろ!?」

イーリス「おい、アレ‥‥!!」

一夏「あ‥‥ああ‥‥!!」

スコール「‥‥貴女、一体何者?」

???「あら? 世界で有数の情報網を持っている亡国機業でも知らない事があるのね♪」

スコール「答えなさいッ!! 貴女は誰なの!?」





刀奈「私は17代目楯無の継承者、更識刀奈!! 救国の楯無に救えぬ者を救う、救国の楯無に討てぬ悪を討つ、“人間”刀奈として、ここに推参!!」

今日はここで終了
誤字も更新遅延も酷いけど一番酷いのは



メカ無さんが普通に端末使ってた
パソコンに触った事もないのに……

ナターシャ「な‥‥」

大佐「な‥‥」

イーリス「な‥‥?」

ナターシャ&大佐「中から人が出てきた~~~~!?」

イーリス「あ、やっぱ人だと思ってなかったのかよ」

一夏「楯無さん‥‥信じてましたよ! 貴女が人間だってことを!!」

刀奈「フフ‥‥」

スコール「‥‥それで?」

刀奈「‥‥」

スコール「生身を晒した事で、いったい何が変わったのかしら? ただのシールドバリアでは私の陽光は遮られないわ」

刀奈「甘く見られたものね。なら、もう一度見せてあげようかしら」

スコール「なんですって‥‥?」

刀奈「ッ」 フッ

一夏「また消え──」 バオッ!!

イーリス「‥‥この音は!!」

スコール(今度こそ捉えたわ。彼女の清き熱情<クリア・パッション>による極小規模な水蒸気爆発による瞬間的な高速移動)

刀奈(‥‥ッ!) ミシミシ

スコール(そして推進剤が爆発である以上、本体への負担は相当なもののハズ‥‥。いくらシールドバリアがあるといっても多用はできないはず!)

刀奈「ハァッ!!」 バッ

スコール「甘いわ!!」 クルッ

メ簪『メカラッタ!!』 ゴスッ

スコール「痛ぁっ!?」

刀奈「食らいなさい、『ラスティー・ネイル』!!」 ジャララッ

スコール「クッ‥‥貴女たち分離ができるの!?」

刀奈「あら、テロリストがまさか卑怯だなんて金言を言うつもりじゃないでしょうね?」

スコール「ふ、2人がかりなら‥‥まだ!!」

刀奈「2人じゃないわ」

スコール「なに?」

一夏「3枚だ」 ヒュバッ

イーリス「シン!?」

ナターシャ「いや誰よシンって?」

あれ?
キャッシュ消しちゃったから名前間違えた
すまん

一夏「零落‥‥白夜ァァァァッ!!」 バァァァァッ

スコール「ク‥‥なめるなぁぁ!!」 グバァァァァッ

一夏「ぐっ!!」

刀奈「一夏くん!」

スコール「‥‥遊びはもう終わりよ。これでまとめて消し飛ばしてあげる」 ドバァァァァァァ

一夏「な‥‥」

ナターシャ「今までの火球より比べ物にならない程大きい!!」

イーリス「こりゃあ‥‥いくらなんでも‥‥!!」

刀奈「‥‥一夏くん。あとは私に任せて貴方は退がりなさい」

一夏「‥‥また自己犠牲ですか」

刀奈「大丈夫。今度は根拠も勝算もあるわ」

スコール「消えなさいっ!!」 ゴゥォォォォォォォォ

刀奈「メ簪ちゃん!!」

メ簪『メカラッタ!!』 ドヒャゥッ

一夏「な、メ簪が楯な──刀奈さんに‥‥」

大佐「何をする気だ!?」

刀奈「『単一機能(ワンオフアビリティ)』、解放!!」 ギュバァァァァッ

一夏「か、刀奈さんのアクア・ヴェールの色が──」 デレレッデーデデデデデ

ナターシャ「──赤くなって‥‥!?」 デレレッデーデデデデデデデデデデデデー

イーリス「‥‥おい、さっきから後ろで鳴ってるこれ何だよ!?」 アーアアー アーアアー

刀奈「ごめんなさい。雰囲気つけたくて」 プチッ

イーリス「しょーもねえ機能つけてねーでマジメにやれッ!!」

大佐「これは‥‥『麗しきクリースナヤ』‥‥?」

ナターシャ「大佐‥‥!?」

大佐「聞いた事がある。ロシアIS開発局にて試作段階で開発がストップした『超高度演算形態』を実装したISの開発計画を‥‥」

ナターシャ「では、アレが‥‥!?」

イーリス「水が赤く見えんのは、構成しているナノマシンが赤熱してるからだってのか‥‥?」

大佐「いや、それだとまず水が蒸発するだろう」

イーリス「ッ!! マジレスしてんじゃねえよ狸親父!!」

一夏「何にしてもアレでどうやって‥‥!?」

スコール「消えなさいっ!!(2回目)」 ドォォォォォォォッ

刀奈「──ねぇ知ってる? 今NASAでは太陽系が滅ぶかもしれないって本気で研究されているらしいわよ」

スコール「‥‥何ですって?」

刀奈「幾らか候補は挙がっているけれど、まず第一がブラックホールによる圧壊ね。4000秒/kmで接近する中質量ブラックホールが接近して、辺りの星を手当たり次第に食べてしまう」

スコール「貴女‥‥何を?」

刀奈「光さえも飲み込む闇の奔流の前には、何者も無力なのよ。‥‥それがたとえ、『太陽』だとしてもね」 キュイッ

スコール「ッ!?」

一夏「何だ、あの真っ黒い‥‥球?」

大佐「アレは‥‥ッ、いかん、伏せろ!!」

イーリス「なんだよ狸親父!?」

大佐「『沈む床<セックヴァベック>』だ!! 5年前、当時のロシア代表が発現し過激派武装組織『スラヴ解放戦線』を壊滅せしめた、超極小ブラックホールを形成する事による捕縛攻撃だ!!」

スコール「なに!?」 シュォォォォォォッ

一夏「あ‥‥あの馬鹿デカい太陽が──」

ナターシャ「吸い込まれて‥‥消えていく」

シュポンッ

スコール「クッ‥‥ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁっ!!」 ギュォォォォォォッ

ガキンッ

刀奈「捕縛、完了♪」

一夏「す、凄い!! あのテロリストを、一瞬で!!」

ナターシャ「いえ‥‥まだ!!」

スコール「くっ‥‥こんなもの‥‥」 ギギギギギギッ

イーリス「クソッ!! やっぱIS相手じゃ分が悪いか!! アレじゃ1分と保たねえ!!」

刀奈「いいえ、10秒で充分」

一夏「え?」

ギュオォォォォォォォッ

イーリス「あ‥‥アレは‥‥」

ナターシャ「『ミストルテインの槍』‥‥!!」

刀奈「メ簪ちゃん、アンカー!!」

メ簪『メカラッタ!!』 ボォォォォォォォッ

一夏「清き熱情<クリア・パッション>をバックブラストに‥‥万全じゃないか!!」

スコール「フフッ‥‥これで勝ったと思わない事ね。既に品物は“彼女”の手に渡ったわ。私たちの勝利は揺るがな──」

刀奈「ねぇ、聞いてくれるかしら。私の槍って機関砲にもなるのよ?」

スコール「‥‥え?」

刀奈「打突のみならず射撃も可能っていう風にデザインして売り込んだのだけれど、メーカーは分かってくれなくてね、私の蒼流旋をただの槍だって認識してるのよ」

スコール「は?」

刀奈「おまけに‥‥ねぇ、見なさいよこのチャージ攻撃。これだけ揃っていれば資質は充分あったのに‥‥」 コォォォォォォォォォ...

スコール「ねえ待って。一体さっきから何の話をしているの?」 コォォォォォォォオオオオオオ

刀奈「なのに‥‥なのに‥‥──」





刀奈「なんで私の武器はガンランスじゃなくてランスなのよぉぉぉぉぉぉぉッ!!」 ドカァァァァァァァンッ

全員(まさかの随分昔のコラボへのクレーム!?)

すまん
1ヶ月もかけてここで休憩
クロマティ、カムバァック!!

一夏「や‥‥やったぞッ、ついにッ!」

刀奈「…………」

一夏「『合体』で進化した刀奈さんの『ミステリアス・レイディ』!! 一体、何をやったのかオレには良く見えなかったし、わからなかったけれどとにかく!」

イーリス「いや、まだだ!」

一夏「え?」

スコール「そう‥よ‥。なあに‥まだまだ‥」

大佐「な──」

ナターシャ「嘘でしょ‥‥」

刀奈「それが‥‥!! その様が“貴女”なの、スコール!!」

スコール『そうよ、これが私よ』 ジージジッガガービッ

一夏「ひっ‥‥左腕が‥‥」

イーリス「機械‥!!」

スコール『失礼な事を‥言う‥ものではないわ、坊やたち。私はしっかりと人間よ』

刀奈「化物(モンスター)。貴女はばけものよ」

スコール『違うわ。私は人間よ。人間が人間たらしめている物はただ一つ、己の意志よ』

イーリス(なぁ、いい加減このパロディ尽くしの流れ止めねえ? もうこれ何のSSかわかんねえよ) ヒソヒソ

ナターシャ「シッ!!」

大佐「‥‥無線神経義体(ナーヴレス・リム)、か──」

ナターシャ・イーリス「へ?」

大佐「傷痍兵や除隊した老兵を前線で運用できるように作られた、神経の無線化による強化兵士製造計画。ドイツのC計画とは別種の、人道から外れた悪魔の理論‥‥!!」

イーリス(また◆IM4j5.DbdY独自の設定が出てきちまったよ‥‥)

大佐「空間投影ディスプレイ等の神経系AR技術の発展系として開発され、新たな兵士の運用理論として構築された。だが──」

スコール『私達は非公式な戦場で“試験”と称して多くの汚れ仕事を背負わされてきた。脳髄では拒否していても、どれだけ拒絶しようとも脊髄神経と癒合したデバイスから発せられる擬似ニューロン・シグナルがそれを許さなかった』

一夏「うっ‥‥」

ナターシャ(‥‥)

スコール『ISの存在により私達の存在が間違い──要らないと知って貴方たちはあっさりと棄てた。そう‥‥大佐、貴方が仰ったように、“機械”同士の潰し合いは次の“部品”を求めたのです』

イーリス「ッ!! 狸親父!!」

大佐「‥‥ッ」

刀奈「‥‥だから、貴方の名前が退役軍人のリストではなく殉職者のリストに記載されていたのね」

スコール『上層部なりの気遣いだったのかもしれないわ。だからこそ‥‥私達は決起した』

刀奈「‥‥」

スコール『更識の子、貴女にならわかるでしょう? 部品として、装置として酷使されて‥‥そして傷ひとつ無い掌から捨てられていく私達の嘆きと、憎しみが』

刀奈(‥‥)

16代目楯無<‥‥我らが焦がれたヒトとしての生を、その生涯の末まで謳歌するがよい──>

刀奈「‥‥ええ、知っているわ。そうなり果てた人も知っているし、私自身がそうだった」

一夏「刀奈さん‥‥!」

刀奈「──けれど、それを言い訳に逃げて、ただの装置のまま甘んじて死んだままでいる貴女を、私は決して認めない」

スコール『‥‥残念ね。貴女ならきっと、私にとって第二の理解者になってくれると信じていたのに。けれど‥‥今の貴女は、とても良い目をしているわ』

刀奈「‥‥」

スコール『今の貴女となら、刺し違えてもいいわ‥‥!!』 メラァ...

一夏「あ、アイツまだ!!」

????「──ゥコオォォォォォォォルウゥゥゥゥゥゥゥ!!」

全員「!?」

メ簪『新たなISコア反応を確認!! これはッ──』

オータム「廻れッ、アラクネェェェェェェッ!!」 ズバァァァッ

刀奈「きゃうっ!!」 ガッ

一夏「刀奈さん!!」

イーリス「アイツは!!」

大佐「特許技術『エネルギーネット』の概念実証機、『アラクネ』か!!」

オータム「無事かスコール!? スコ──」

スコール『‥‥馬鹿な子。どうして‥‥来たの‥‥』 ピシピシッガガッピーガガッ

オータム「」

一夏「どうするんですか!? これじゃ2対2‥‥」

イーリス「いや、俺も入れて3対2だ!!」 ビュオッ

一夏「イーリスさん!!」

刀奈「待って、2人とも動かないで!!」

一夏・イーリス「!?」

オータム「──さねえ‥‥」

刀奈「‥‥?」

オータム「許 さ ね え」

全員「!!」 ゾワッ

オータム「エネルギーネット、最大展開!!」 ビュバッ

一夏「うっ!? デカい光の波が!?」

イーリス「クソッ、避せねえっ!!」

刀奈「『沈む床<セックヴァベック>』!!」 ギュオオォォォォ...

イーリス「おお‥‥! 光の波が消え──!?」

一夏「ああっ!? アイツらも居ない!?」

刀奈「追う必要はないわ!!」

一夏「でも‥‥!!」

刀奈「どう頑張っても、私たちの完敗よ‥‥」

一夏「‥‥!!」

イーリス「クッソォ!!」

スコール『オー‥‥タム‥‥』 ビュゥゥゥゥゥッ

オータム「喋んな。傷に障んぞ」 ギュォォォォォッ

スコール『‥‥貴女ならてっきり‥‥あのままツッコんでいくとばっかり‥‥思っていたわ‥‥』

オータム「そいつぁ甘く見られたもんだな。アタシぁこー見えてデリケートなんだよ」

スコール『‥‥』

オータム「身体の事、何で黙ってやがった」

スコール『‥‥古代中国に‥‥ある夫婦が居たわ‥‥』

オータム「‥‥」

スコール『2人は帝に天から遣わされた‥‥英雄だったの‥‥。英雄は‥‥地を焦がす九つの太陽を背負う‥‥カラスを射落としたわ‥‥』

オータム「‥‥」

スコール『なのに‥‥帝から誉れを賜ったのは‥‥ほんの一度きり‥‥。己が姪孫たる陽を射落とした英雄に‥‥帝は理不尽な仕打ちをしたわ‥‥』

オータム「‥‥」

スコール『神性を失った英雄がかつての姿に戻るにはただひとつ‥‥‥‥不死の秘薬を呑み天へと還る事‥‥。けれど‥‥さらなる理不尽が彼を襲うの‥‥』

オータム「──」

スコール『妻が裏切って‥‥ふふ‥‥秘薬を飲み干し月へ逃げたの‥‥!!』

オータム「────」

スコール『アハ‥‥アハハハハハ! 滑稽よね。結局我が身可愛さに‥‥愛した男さえ置き去りにしたの‥‥! そこまでしなければ自己を保てなかったのよ‥‥!!』

オータム「もういい、喋るな」

スコール『なのに‥‥どうしてかしら‥‥? どんなに砂を噛んでも‥‥どんなに硝煙にまみれても‥‥浮かぶのはあの人の笑顔なの‥‥』

オータム「喋らなくて、いい」

スコール『もうこの世に居ないって‥‥どこに行っても逢えないと知って‥‥初めて私は後悔したの‥‥!!』

オータム「‥‥」

スコール『だから私は蝦蟇(ガマ)になったの‥‥ばけものになったの!! そうでもしないと‥‥私には堪えられなかった‥‥!!』 ポロポロ...

オータム「‥‥」

スコール『弱い女だって‥‥過去にしがみつく毒婦だって‥‥幻滅したでしょう‥‥?』

オータム「‥‥いいじゃねえか、バケモンになったってよ」

スコール『え‥‥?』

オータム「アタシなんざ、カミサマに喧嘩売ってボコボコにのされて蜘蛛にされたんだぜ? お互いバケモンにゃ変わりねえよ」

スコール『オータム‥‥』

オータム「そんなばけもんだったから、アンタはアタシなんかの事を拾ってくれたんじゃねえか」

スコール『──ただの気まぐれよ』

オータム「どっちだろうがかまやしねえ、アタシにとっちゃそれが真実さ」

スコール『‥‥』

オータム「アタシだけじゃねえ。アンタの姪のレインだって、ムカつく事にMの奴だって、似たようなバケモンさ。だったらよ──」

スコール『‥‥?』

オータム「バケモンはバケモンなりに、徹底的に“カミサマ”おちょくってやろうじゃねーか!」 ニカッ

スコール『ッ──!!』 グッ

オータム「それとも何か? 今更あの狗っころの言う通りバケモンは嫌だってか?」

スコール『‥‥本当に、馬鹿な子‥‥』 ポロポロ

オータム「‥‥///」

スコール『ねぇ‥‥オータム‥‥お願いがあるの‥‥』

オータム「あんだよ、キスしてほしいってか? 悪ぃがバイザーが邪魔でよ──」

スコール『うなじを‥‥撫でてほしいの‥‥』

オータム「‥‥なんだよ、マニアックだなあ──」

サワッ...

オータム「ッ!! ‥‥お前──」

スコール『ごめんなさい‥‥やっぱり‥‥貴女の前では‥‥涙は見せたくないの‥‥』

オータム「‥‥ああ。おやすみ、スコール・ミューゼル。次に目を開けたら、また遊ぼうな」

カチッ

────...

一旦休憩
今回はほんの14日()のインターバルだし
イケそうな気がする!
次からはできるだけクロマティ成分を注入するぜ

──それから1時間後、港湾部

大佐「‥‥こうして何人もの戦犯にかけさせた手錠を自ら着けてみると、なかなか重苦しいものを感じるな」

イーリス「いいから行けよ、狸親父」

一夏「あの、ナターシャさん達はどうなるんですか?」

ナターシャ「囮捜査とはいえ、私たちも加担者に違いないわ。それなりに罰は受ける」

イーリス「ケッ、気に食わねえ‥‥」

一夏「そんな‥‥」

イーリス「‥‥おいボウズ」

一夏「はい?」

イーリス「今晩あった事は忘れな。アタシらの事を気遣ってるつもりなら、なおさらな」

一夏「な、なんでですか!?」

メカ無『コーリング特務大尉の言う通りよ、一夏くん』

一夏「刀奈さ──って、またメカ無さんに戻ってる!?」

メ簪『メカラッタ』

メカ無『私達は専用機を持っているとはいえ、まだ訓練課程中の高校生に過ぎない‥‥。たとえ国家や軍の何を知ってしまっても、本来なら関わる事さえ叶わない事なのよ』

一夏「だからって、見て見ぬフリしろっていうんですか!?」

イーリス「違ぇなボウズ、背伸びし過ぎだっつってんだよ」

一夏「え?」

イーリス「アタシらは軍人になるに相応しい訓練を経て軍事に関わってる。車の免許取ってさえいねえお子様にハンドル握らせちゃいけねえんだ」

ナターシャ「あらやだ、イーリにしては随分うまい例えね」

イーリス「うっせ!」

ナターシャ「貴方は早くに知り過ぎてしまったけれど、本来ならこういう事は私達ぐらいになって初めて関わるべき事。所謂“大人の戦い”なのよ」

一夏「大人って‥‥なんなんですか」

大佐「‥‥勘違いしているようだから言ってやるが、貴様も今からゆっくり大人になればいい。それまでは、“若者の戦い”に徹していけ」

一夏「え‥‥“若者の‥‥戦い”‥‥?」

イーリス「狸親父、黙ってろ!!」

大佐「いいや言わせろ。私もお前のように、若さゆえに焦り、先走って愚を犯した事が何度もあった。その為に大切な物を多く失った‥‥」

一夏「おっさん‥‥」

大佐「そういう愚を何度も拭ってくれたのは、他ならぬ私の上官だった。いいか小僧、若者は何度も間違えろ。間違える若者が居なければ大人なんぞ無用の長物だ。ただ間違いを繰り返さないように学んでいく事が“若者の戦い”であり、その間違いを正してやれるのが“大人の戦い”というものだ」

一夏「間違いを‥‥繰り返さない‥‥」

大佐「‥‥もっとも、今回はもうろくした老人が若者に尻を拭われたがな」 フッ

イーリス「もういいだろ、行くぞ」 グイッ

一夏「お、おっさん!!」

大佐「Luck and Pluck, for you!」 グッ

一夏「‥‥」

メカ無『へぇ‥‥あの大佐、魂までは腐ってはいなかったようね』

一夏「メカ無さん‥‥」

メカ無『さ、私たちも帰りましょう。彼の言う“若者の戦い”をする為に!』

一夏「は‥‥はい、メカ無さん!」

メカ無(バイク形態)『さあ乗って、一夏くん!』 ガシャーンッ

一夏「」

メカ無(バイク形態)『どうしたの? さあ早く!』 ドッドッドッドッドッドッドッ

一夏「は‥‥はい」

ブロオォォォォォォォォォォォォォォォ...

イーリス「なあ、アイツ本当に人間か‥‥?」

ナターシャ「ふふふ」

イーリス「‥‥? なに笑ってんだよナタル」

ナターシャ「ううん、ちょっと楽しみだなと思って」

イーリス「何が?」

ナターシャ「‥‥あの子たちが、どんな大人になるのかな、って」

 ここは北関東、キーオ峠──。山あいを縫うようにキレのいいカーブが続く道である──。

 俺の名前は結城遊馬。性別、オス。男。ヒト遺伝子XY。凸凹の凸のほう。
 勉強、それなり。運動、ちょっといい。顔、わりといい(友達が言ってた)。身長、モテめ?(友達が言ってた)
 性格、人当たりが良くてさっぱりしてる。少々優柔不断だが行動力はある。(これも友達が(ry)
 好きなモノはMTB(マウンテンバイク)とMP(ミュージックプレーヤー)。ただし音楽の固定嗜好なし。食べ物の好き嫌い、特になし。
 今は婚約中の美人な彼女が居て、同棲してる家でご飯を作って待っていてくれてる。
 で、俺は今絶賛MTBのペダルを猛スピードで漕いで家に向かってる。う~ん、幸せだなあ。

ブロロロロロロォォォォォォォ...

 ‥‥ん? はて、こんな時間にバイクのエンジン音?
 そういえば、この峠のカーブに魅せられたライダーたちがスピードを求めて、毎日腕を競いあっている──とかって噂があったな。
 ‥‥よし、ここは先輩である俺がきっちり文句言ってやるか。

遊馬「おい、アンタ! この暗い時間にそんなに飛ばしてるとケガすん‥‥」

メカ無(バイク形態)「ブロロロオォォォォォォォォォッ!!」

一夏「」

遊馬「」

ブロロロロロロロォォォォォォォ...

遊馬「」 キィ...





静流「は? ちょっと帰り遅くなる? 峠を極めたい? 馬鹿言ってないでちゃんと帰ってきなさい!」 コトコトコトコト

一夏「あの‥‥メカ無さん」 ビュゥゥゥゥゥゥゥ

メカ無『なぁに、一夏くん? 私がメカ無に戻ってる事がそんなに気になるの?』 ブロロロロロロロロロ

一夏「いや、それも凄く気になるんですけど‥‥そうじゃなくて」

メカ無『じゃあなぁに?』

一夏「メカ無さんは今、『自分は大人だ』って思ってたりしてるんですか?」

メカ無『‥‥』

一夏「‥‥すみません。ただ、あの大佐のおっさんの言葉がずっと胸につっかえてて‥‥」

メカ無『“大人になったつもりでいるしかなかった”‥‥ってところかしら』

一夏「え?」

メカ無『私たち楯無は、一種の人身供養みたいなものだったのかもしれないわ。少数の犠牲だけで、大勢の人が救われる奇蹟を祈った、残酷な儀式』

一夏「‥‥」

メカ無『いつの頃からか、私たち楯無はヒトとしての形を失った。それがどういう事なのか未だにわからないけれど、それは奇蹟の演出の為に必要な供物だったのかもね』

一夏「それでもメカ無さん──刀奈さんは人間でいる事を選んだ‥‥。先代はきっと、次代が自分たちと同じ末路を辿らないように、刀奈さんが人間として生きる事を是としたんですよね」

メカ無『ええ‥‥って一夏くん、何でその事を!?』

一夏「え? いや‥‥何となくそんな気がして‥‥」

メカ無『‥‥』

一夏「あ、あの‥‥的外れな想像で怒ってますか?」

メカ無『‥‥ううん、むしろ少し納得しただけ』

一夏「?」

刀奈(そっか‥‥あの時、私が唐突に昔の事‥‥楯無の事を思い出したのはきっと、一夏くんの白式とコアネットワークが繋がったから‥‥。じゃあ、あの時の気持ちも──)

一夏「メ、メカ無さん? なんか、メーターどんどん上がってますけど‥‥!?」

メカ無『い、一夏くん? ひょっとして、あ、あの時、私が口走った事、お、覚えて‥‥!?』 カァァァァ...

一夏「わ、わあ!! メカ無さん、スピード、スピード落として!! もう100km/h越してます!!」

メカ無『やだやだやだ!! 忘れてッ、今すぐ忘れてえぇぇぇぇぇ!!』 グンッ

一夏「うおっつ!! ‥‥あ! メカ無さん、見てくださいよ!!」

メカ無『‥‥ふぇ? 見るって、何を──』

一夏「こんな所から、学園って見えたんですね! 知らなかったなあ‥‥」

メカ無『』

一夏「ね、メカ無さん! こんなに速いとせっかくの風景が見れないから、スピード落としましょうって!!」

メカ無『‥‥そうね。ゆっくり、歩くような速さで』

一夏「いや、それだと今度は遅すぎますよ、メカ無さん」

 ──そんな速さで、強くなっていこうね。一夏くん。

数日後、学園

瀬名川「よお、会長さんよ」

メカ無『‥‥』

瀬名川「こないだの事、覚えてるよな。まさか忘れたってんじゃねえだろうな?」

メカ無『‥‥』

虚「ちょっと瀬名川さん! まだ根に持っているの!?」

本音「ケンカはめっだよー!」

瀬名川「取り巻きは黙ってろよ。アタシは会長さんと話してんだ」

虚「ッ、貴女──」

九段下「待ってくれ書記長! とりあえず、話だけでも聞いてやってくれねえか?」

虚「九段下さん‥‥!」

メカ無『‥‥いいわ、聞いてあげる』

虚「な、会長!?」

メカ無『貴女たちは下がってて。‥‥で、何かしら?』

瀬名川「‥‥よし、一回しか言わねえからよく聞けよ」

箒「」 コソコソ...

鈴「」 ドキドキ...





瀬名川「‥‥ごめんな」

メカ無『え?』

瀬名川「なんかその、あの時は気が動転しててよ。藁にもすがりたいって言ったら大袈裟だしアンタにも失礼なんだけどよ‥‥」

メカ無『瀬名川さん‥‥』

瀬名川「あれからアタシもあのチンピラたちとナシつけてきたんだよ。そしたら、実はけっこう良い奴らでよ‥‥!」

メカ無『‥‥』

瀬名川「全部‥‥アンタの言う通りだった‥‥。アタシが狭い殻ん中こもってて‥‥ガキみてえにダダこねてて‥‥それで‥‥」 グズッグズッ

虚「ちょっと、瀬名川さん!?」

本音「だめだよぉ、泣いたらめっだよぉ!」

九段下「‥‥この数日間、こいつもずっと悩んでたんだよ。ずっとアンタの気持ちを踏みにじってたんじゃってさ‥‥だからさメカ無、アタシからも頼む。コイツを‥‥瀬名川を許してやってくんねえか?」

メカ無『‥‥』

瀬名川「ごめんなっごめんなさっ‥‥うあぁぁぁ‥‥!」 ボロボロ

九段下「頼む!」

メカ無『‥‥謝るのは私の方よ』

瀬名川「‥‥ふぇ?」

虚「会長!?」

メカ無『私もずっと‥‥自分を追い詰め過ぎてて余裕がなかった。自分の事で一杯一杯になってて、周りが見えてなかった。子供みたいな理由で貴女を見捨てて、ごめんなさい』

九段下「メカ無‥‥!」

虚「会長!! 何もそんな‥‥!」

メカ無『だけど、これからは違う!』

虚・九段下「え?」

メカ無『みんなと同じように悩んで、みんなと一緒に悩む。そうして、みんなと寄り添っていきたい。そう思えたから、私はもう誰も見捨てない!』

瀬名川「メ゙‥‥!!」 ブワッ

女子生徒's「メカ無会長ォォォォォォォォォ!!」 ドドォッ

虚「な、貴女たちまで‥‥!!」

断花「会長!! 私、壊れた物はきっちり業者に見てもらうようにします!!」

谷本「私‥‥これからちゃんと著作権法守ります!!」

瀬名川「ゔわ゙ぁ゙ぁ゙ん゙、ゔわ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ん゙!!」

メカ無『貴女たち‥‥』

虚「‥‥もう、ウチってホント馬鹿ばっかり!!」 ウルッ

本音「よかったねぇ、よかったねぇ!!」 ズビーッ!

箒「ああ、本当によかった‥‥」 ウルウル

鈴「何よっ! ありがちなパターン苦手だって言ってんでしょ!!」 グスッグスッ

メカ無『みんな‥‥本当にありがとう。私、こんなに胸を打たれた事はないわ‥‥』

女子生徒's「会゙長゙ぉ゙‥‥」 ダァーッ

メカ無『‥‥けれど、ひとつだけ大事な事を言っていいかしら?』

女子生徒's「?」

メカ無『それは私じゃなくてロッカーよ』

女子生徒's「あぁっ!?」 ガーン

九段下「‥‥やれやれだぜ」

to be Continued...

鈴「で、一夏はどうしたの?」

箒「ああ、あいつなら──」

張り紙[下記の者、ノーヘル・無免許運転・スピード違反等の非行行為により自室謹慎とする。 ↓織斑一夏]

箒「‥‥」

鈴「アイツ何してんのよ、バカじゃないの!?」

やれる事はだいたいやれました
次回からは待望の京都編スタート!!
あと一昨日最新刊買いました
スタンドも月までブッ飛ぶ衝撃的な展開の連続で吐き気がしました(^p^)

 私の名前は織斑 千冬──。
 IS戦の強さと人望の厚さなら右に出る者がいない、IS学園1年生の寮長だ──。
 諸事情で詳しくは言えんがいろいろあって、アメリカを放浪した末にようやく日本へと帰ってきた──。
 だが──。





 よりによって今度は修学旅行の日だったとは──。
 これは、どう考えても乗り物に弱い私にケンカを売ってるとしか思えん‥‥。

谷本「ついにチフユサマが帰ってきたわ‥‥!!」

相川「またあの麗しの日々が始まるんだね‥‥!!」

鷹月「ねえ、みんなうしろ見ちゃダメよ! あまりの美しさに石になっちゃうわ!!」

箒「なあ、千冬さん二人いないか?」

 き‥‥気持ち悪い‥‥。

風霧「な、なんという顔をしているんだ‥‥あれは現世に降臨されたヴィーナs」 (石化)

鷹月「ホラぁ! だからうしろ見ちゃダメって言ったのに‥‥!!」

九段下「‥‥にしても毎回毎回、先生は何であんなスマシ顔してられんだ?」

櫛灘「でも惜しいなあ‥‥、せっかくロリチフユサマと入れ代わってホッコリしてたんだけどなあ」

マドカ「え‥ロリチフユ!?」

箒「何!! コイツはニセモノだったのか!?」

 ‥‥う‥‥、ノドまで来た。
 とにかく私は乗り物酔いがひどい──。
 だが、生徒たちにバレるワケにはいかん‥。
 今の内に最終点検をしておこう──。

 ビニール袋、OK──。

 酔い止めの薬は常備──。

 もちろん弁当はご法度だ──。

 あとは新鮮な空気を取り入れて‥‥と。





 ‥‥‥‥‥アレ?
 ま‥窓が開かない‥‥。
 そうか、新幹線はマドが開かないのか‥‥。
 私とした事が、これはうかつだった。

鈴(千冬さん、何してんのかしら‥‥?)

 やはり未知の乗り物に乗っている事もあいまって、精神的にも動揺しているようだ‥‥。この心の迷いが命取りとなる──。
 落ち着け!! 落ち着くんだ‥‥。





 そうだ‥‥‥‥‥!!
 乗り物に乗っていると考えているから精神的な不安が生じるのだ!!
 ‥‥‥‥‥‥よし!!
 ココは私の家の中だと思えばいいのだ!!

???「うひょ~!! このお守りの効力すげー!!」

相川「アヘェェェェェェ!!(※マッサージで悶絶してるだけです)」

風霧「んほぉぉぉぉぉぉ!!(※マッサージで悶絶してるだけです)」

谷本「キャァァァァ、大変よ!! 車内に偶然謎のお守りの効力で超絶ラッキー☆ドスケベが発動した不審者がぁ!!」

九段下「ヤベエよ、ありゃ本物だぜ。あんなのに捕まったらアタシら同人CGみてえな目に‥‥!!」

※このキャラクターは弓弦イズル先生の作品とは無関係のキャラクターです。

 ここは私の家ここは私の家ここは私の家ここは私の家ここは私の家──。





 さて‥‥フロにでも入るか。

鈴「な‥‥千冬さん!?」

九段下「無茶だ先生!! いくらブリュンヒルデのアンタでもラッキー☆ドスケベが相手じゃあ‥‥」

のほほん「エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!!」 ドキドキ

鷹月「ちょっとのほほんちゃん黙ってて!!」

不審者(え‥‥この娘たち今何つった‥‥!? ブリュンヒルデってまさか‥‥まさか‥‥!!)

千冬「」 ヌギヌギ

不審者(うっひょ~~~~~ッ!! マジかよ!! あの世界最強のブリュンヒルデのブリュリュンヒルデがぁぁぁぁぁッ!!) ボッキーン

谷本「イヤァァァァァァァァァッ!! 織斑先生があられもない姿に!!」

鷹月「」 ブクブク...バタン

九段下「くっそぉぉぉぉぉ、やっぱ先生でも謎のお守りにゃ勝てねーのか!!」

千冬「」 パタンパタン

九段下「あっ、服をたたむ理性は残ってんのか‥‥」

千冬「よっこいしょ‥‥と‥‥」

谷本「ギャァァァァァァァァ!! 織斑先生が“よっこいしょ”とか言ったぁぁぁぁぁ!!」

九段下「いや、そりゃあ別にいいだろ‥‥」

……ふ──、いい湯加減だ‥‥‥

谷本「ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!! 織斑先生がヘヴン状態にぃぃぃぃ!!」 ギリギリ

九段下「まだ何もされてねえんだけど‥‥」

不審者(‥‥? 何か今までと反応が違う‥‥。調子狂うな‥‥) シュン↓

千冬(さてと‥‥) キルキル

谷本「あぁっ!? 服を着戻したよ!! まだ理性が残ってたんだ!!」 パァァッ

九段下(擬音どうにかなんなかったのかよ‥‥)

不審者(え? 何で服着直してんだよ? こっからお楽しみタイムの予定だったじゃん!! どーなってんの!?)

 む‥‥台所からリズミカルな包丁の音がしてきたぞ──。
 一夏のヤツめ、今晩のオカズは何だ──?





 ──って、いかんいかん!! 食べ物を思い浮かべてどうする馬鹿者!!

不審者(いやいや待てよ? この素振り‥‥まさか、着たままが良いのか‥‥!?)

 うっ‥マズイ‥‥!! 食べ物の事を考えたら乗り物酔いがよみがえってきた‥‥。
 このままでは吐いてしまう──。

不審者(よぉしっ、アンタがそーゆーつもりだってんなら俺もノリノリだぜぇぇぇぇぇぇッ!! 実はそーゆーのも好みなんだよぉ!!) ボッキーン

 ‥‥こうなったら、精神力で「酔う」「吐く」というイメージを頭の中から消し去るしかない!!
 気合だ‥‥、精神を集中するんだ──。
 ‥‥‥‥忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ‥‥。
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。




 よし、忘れた!!
 今、完全に頭の中から「吐く」という二文字を消去したぞ!!

不審者「うっひょおおおおおおおおおおお!!」 グワッ

女子生徒's「チフユサマ、危なぁぁぁぁぁぁい!!」

マドカ「おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ‥‥」 (とても表現できない効果音)

千冬「」

女子生徒's「」

不審者「」 ヒュン↓

マドカ「ご、ごめんなさい姉さん。す、少し新幹線に酔ってしまって‥‥」

千冬「」 プツンッ





ラウラ「む? 何だかうしろの車両がやかましいな」

セシリア「そうですわね‥‥やだ、何か臭いませんこと?」

一夏「何にせよ千冬姉が何とかしてくれんだろ。ところでシャル、それダウトな」

シャル「一夏‥‥それヒューストンさんだよ‥‥」

ヒューストン(なんだか後部車両に居なくて良かった気がする‥‥)

今日はこの辺で中断
次の北斗・子分・前田はフォルテ・ダリル(レイン)・3年生でお送りします
乞うご期待!

 Καλημέρα σας(こんにちは)!
 どもっす! 皆さんご存知、フォルテ・サファイアっす!!
 私は今、一路京都を目指して新幹線に乗ってるっす!!
 ‥‥え、1年生でもないのに修学旅行に行くのかって?
 ううん、違うっす! 今日は──。

レイン「だ~か~ら~! ジャック・デニム持って来いよ、ジャック・デニム!! これから総力戦なんだぞ!!」

フォルテ「‥‥」

レイン「とにかく、お前みたいにIS戦ありきで考えてるほどこの戦いは甘かねえんだ!! ちゃんと白兵戦の事も考慮してだなあ!」

フォルテ「‥‥‥‥」

レイン「‥‥おう、じゃあ叔母さんによろしくな。んじゃ、オーバー」 ピッ

フォルテ「」

レイン「よお、待たせたな! ほら、自販でブラック買ってきたぞ!」

 ──先輩に口説かれてデートかと思ったら、先輩は先輩じゃなくてこれからレッツ・テロだそうっす。

レイン「なんだよ暗い顔してよ、まだ騙された事怒ってんのか?」

フォルテ「‥‥いつからダリル先輩はダリル先輩じゃなかったんすか?」

レイン「ああ、その話か。最初っから。一応本人って言えるような奴は居なくて完全オリジナルの偽名だよ」

フォルテ「‥‥」

レイン「‥‥なあ、そう怒るなって。たとえアタシの名前がウソだったとしても、今までの2年間は本当だったんだぜ?」

フォルテ「‥‥テロリストのガールフレンドになった覚えはないっすよ」

レイン「‥‥」

フォルテ「信じられないっす、最悪っすよ。亡国機業って言ったら国際IS委員会からマークされてるテロ組織っすよ!?」

レイン「フォルテ‥‥」

フォルテ「そんなの‥‥そんなの‥‥」 プルプル...

レイン「‥‥」

フォルテ「ドキドキしないワケないじゃないっすかぁぁ!! こんなアナーキーなピカレスク・ロマン初めてっす!! 先輩、どこまでもついていくっす!!」 キラキラキラキラ

レイン「フォルテ‥‥♪」

三年生(‥‥何でそうなるのよ)

三年生(どうしよう‥‥黒崎先生が有給とって京都で結婚式開くっていうからクラスのみんなでサプライズしようって話になったんだけど‥‥)

フォルテ「ところで、さっき電話で言ってたジャック・デニムって何すか!?」

レイン「ああ、銃の名前さ。PDWって言やわかる?」

三年生(‥‥よりによってハブられたところでケイシーさんのテロリスト事情に踏み入る事になるなんて思わなかったわ。前からおかしいところはあったけれど‥‥)

レイン「‥‥もう一人いるな」

三年生「!?」 ビクゥッ

フォルテ「へ? 何がっすか?」

レイン「仲間さ。もう一人要るな、と思ってな。ここぞという時にあいつの隠密性は役に立つからよ」

フォルテ「‥‥誰っすか?」

レイン「ほら、あいつだよ‥‥えっと、すぐには名前出てこないけれど‥‥えっと‥‥」

三年生「‥‥」 イラッ

レイン「ほらあいつだよ! いつも織斑一夏たちとつるんでる三年生!」

フォルテ「ああ、あの人っすね! 顔も名前もすぐには浮かんでこないっすけど!」

三年生(もっかいサード・インパクト起こしてやろうかしら‥‥) ゴゴゴゴゴゴ...

レイン「何か思い出せないのが腹立ってきた。ちょっと待ってろ!」 ガラララ

フォルテ「?」

バンッ、バンッ、キャァァァァァァァッ!!

フォルテ・三年生「!?」

ガラララ

レイン「お待ちどう!」

OL1「ヒィィィ‥‥」 ガタガタガタガタガタガタ

OL2「どうしてこんな目に‥‥」 ガタガタガタガタガタガタ

フォルテ「先輩、誰っすかこの人たち?」

レイン「おう、その辺で捕まえてきた。見覚えねえか?」

フォルテ「そんなのあるワケ‥‥ん? そういわれてみればどこかで‥‥」

レイン「おい、アンタら名前は?」 ジャコッ

OL1「ヒッ!? あ、赤星ですっ!!」

OL2「ゆ、結城です!! ゆ、許してぇ‥‥」

レイン「んで、いいかフォルテ? この赤星さんっぽい目と口してて、この結城さんっぽい輪郭と鼻してんのがアイツだ」

フォルテ「‥‥」

レイン「この二人をたして2で割ったカンジよ。わかんね?」

フォルテ「あの‥‥余計わかんなくなってきたっすけど‥‥。それに、いくらなんでもOLさんにメーワクじゃないっすか?」

レイン「それもそうだな。ほら、もう行っていいぞ」

赤星「ヒ、ヒィィィィィィッ!!」 ダッ

結城「もうやだァァァァァァ!!」 ダダッ

レイン「‥‥とまあ、こんなカンジで顔のつくりから追っていこう。んじゃ、探すぞ」

フォルテ「えっ、この広い車内をっすか!?」

レイン「しょーがねえだろ? 全部思い出し辛い顔してるアイツが悪いんだからよ!」 ゲシッ

三年生「‥‥」 グイィィィィン...

レイン・フォルテ「あっ」

三年生「‥‥」

レイン・フォルテ「‥‥」

三年生「‥‥」

レイン「そうそう、こんなカンジの顔なんだよ‥‥(棒)」

フォルテ「んじゃ、顔もわかったワケですし行きましょうっす(棒)」

三年生「待ちなさい、何か言う事はない?」

 前略、まだ見ぬオフクロ様──。
 どうにか千冬姉も静まってくれたようです‥‥。
 ようやく車内も平静を取り戻し修学旅行らしくなりました。
 謎のお守りでラッキー☆ドスケベ化した不審者が出たり、突然銃声が響いたりと常識外の事件が連発していますが‥‥修学旅行は一生に一度の思い出です。
 俺たちにも青春の一ページがあっていい‥‥。
 この京都への修学旅行を無事に終わらせるのは俺の使命のようにさえ思えてきています──。
 ですが‥‥ここに大きな問題が生じております──。
 それは‥‥。

セシリア「」 クー...クー...

ラウラ「」 スヤスヤ...

シャル「」 ムニャムニャ...

ヒューストン「」 グーグー...

アナウンス『まもなく、新大阪に到着いたします』

 とっくに京都を過ぎているという事です──。

すんません
今日もこの辺りで休憩です
うんこうんこと言いつつ拙作を読んでくださりありがとうございます
いよいよ終盤、ここから頑張っていきます!

一夏(あんな事言わなきゃよかった──)





──一時間前

セシリア「まあ! 綺麗な湖ですわ! 今はどの辺りかしら?」

一夏「ここは浜名湖だよ。景色もよくて有名な所なんだ」

ラウラ「一夏は地理にくわしいな‥‥」

ヒューストン「で、京都までどのくらいかかるんだ?」

一夏「えーっと、ちょっと待ってください‥‥」

シャル「ふわぁぁ‥‥僕ちょっと眠くなっちゃった。少し休むよ」

セシリア「そうですわね、ワタクシたちも一旦寝ましょう」

ラウラ「一夏、京都に着いたら起こしてくれ」

一夏「任せてくれ! 俺が責任を持って起こしてやるよ───」





──現在
一夏「……ヤバイ、俺まで寝てたよ‥‥」

一夏(うっかり寝ていた俺のせいだ‥‥。けれど、黙ってるワケにはいかない──言おう、正直に!!)

一夏「みんな、起きてくれ!!」

セシリア「ッ!? なんですの!?」

シャル「まだ眠いよぉ‥‥」

ヒューストン「‥‥どうした、一夏くん?」

一夏「みんな、ゴメン──重大発表だからよく聞いてくれ。実は──俺のせいで大阪まで来ちまった!! もう手遅れだ‥‥」

セシリア「‥‥は?」

シャル「ええっ!?」

ラウラ「な‥何だと‥!?」

一夏「俺の責任だ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

シャル「そんな‥‥そんな事って‥‥」

セシリア「まだ大阪なんですの!?」

一夏「ああ‥」

セシリア「‥‥」

一夏「……『まだ』?」

シャル「しっかりしてよ一夏! 僕らが降りる駅は京都だよ!?」

セシリア「一夏さん、まさかとは思いますがアナタ大阪と京都の見分けもつかないんですの!?」

一夏「え‥いや‥あの‥」

ラウラ「もういい、一夏も悪気があったワケではないんだ‥‥。その辺にしておいてやってくれ‥‥」

セシリア「ラ、ラウラさんがそう仰るのなら‥‥」

ヒューストン「一夏くん、次はちゃんと京都に着いてから起こしてくれ。頼んだぞ」

一夏「は‥はあ‥‥」

一夏(ヤバイ‥‥まさか外国人だから日本の地理がわかっていないのか……? 今さらながら大変な事になっちまった──。こりゃ生半可な事をしてちゃ解決できない。少し荒療治が必要なようだ──)

ツンツン

一夏「ん?」

ゴーレムI「‥‥」

一夏「ゴレ美‥? 起きてたのか。どうした?」

ゴーレムI「‥‥」 スッ

一夏「これ‥日本の地図じゃないか! ゴレ美‥お前ひょっとして──」

ゴーレムI「‥‥」 コクリ

一夏「お前‥‥本当に頼もしいヤツだなあ。けど、ひとつだけいいか?」

ゴーレムI「?」

一夏「気づいてたんならお前が起こしてくれよ‥‥」 ガクッ

ゴーレムI「‥‥!!」 ハッ

一夏「ちゅーもーく! みんな、ちょっと聞いてくれ──」

セシリア「今度は何ですの!?」

シャル「今度こそ京都に着いたの?」

一夏「今日は日本について勉強したいと思う」

ラウラ「は?」

ゴーレムI「‥‥」ピーー...

セシリア「ゴレ美さんまでスクリーン係になって協力してますわ‥‥!」

ヒューストン「どうやら只事ではないようだな、とりあえず真面目に聞こう」

一夏「ここに俺たちが今いる日本がある。IS学園は実質この国で運営されてるんだ」

セシリア「ちいさくてよく見えませんわ……」

ラウラ「こんな小さな島国で私たちは管理されていたのか‥‥」

一夏「‥‥で、地理的に学園があるのが関東で、東京から伸びてるこの線路の先に京都があるんだ」

シャル「それぐらい知ってるよ、それがどうしたの?」

一夏「でもって‥‥京都の先に大阪があるんだよ‥‥。ここ重要だからな! ちゃんとノートとっとけよ!」

シャル「‥‥え? ちょっと待って、それって‥‥!?」

一夏「ああ、つまり‥‥東京と大阪の間に京都があるんだ!!」

全員「!?」

一夏「‥‥もう、俺の言いたい事がわかったよな?」

ヒューストン「ああ、キミの説明はよくわかった。‥‥という事はつまり‥‥」

一夏「…………」

全員「まだ京都じゃないって事だな!?」

一夏「」

セシリア「一夏さん‥‥図解で説明してくださったのはとてもわかりやすくて感謝いたしますわ」

シャル「けれど僕たちだってバカじゃないんだよ? ひとこと言ってくれればわかったのに‥‥」

一夏「……うん──」

ヒューストン「一夏くん、三度目はナシだぞ。次こそ京都に着いたら起こしてくれ」

一夏「‥‥」

ゴーレムI「‥‥」 ポン

一夏「ゴレ美‥俺‥頑張ったよな‥‥?」

ゴーレムI「‥‥」 コクリ

一夏「‥‥グスン」



かくして、新幹線は京都に着く事もなく(当然)、一路終点の博多へ向かっていた──。

一夏(もうすぐ終点‥‥さすがにこうなったら説明もへったくれもないな───) ガタッ

一夏「みんな!! この電車は京都には行かないんだ!!」

ラウラ「は!?」

セシリア「何ですって!?」

一夏「よく聞いてくれ‥‥次は終点の博多だ!! これ以上この電車に乗っていても京都に着く事は絶対にありえない!!」

ヒューストン「何だって!! それは本当か!?」

一夏「……悪いけれど、何をどう言われてもそういう事なんだ。終点なんだから」

シャル「……それじゃあ‥‥!!」

一夏「……ああ‥‥」





セシリア「ああっ!! 切符を買い間違えてしまいましたわ!!」

シャル「もう、何で日本の鉄道の乗り換えってこんなに面倒なんだろう‥‥」

ラウラ「ん? どうした一夏、頭など抱えて」

一夏「どう言えばいいんだろ‥」

──一方、京都では‥‥

シン化マドカ「GAHHHHHHHHHH!!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

三年生のカタチをした血の塊「」

スコール「‥‥名前を持たない内に、一人の少女をトリガーとするなんて‥。篠ノ之束、委員会が黙ってはいないわよ?」

クロエ「やはり、あの二人で紅椿の覚醒は成りましたね」

束「うん。私たちの計画に辿り着くまで‥‥あと少しだよ~」

ヒカルノ「なるほど‥そういうヤツね。やっぱ匂いが違うからかな‥‥ヘックチ!」

千冬「この世界の理を超えた‥‥新たな生命の誕生‥!! 代償として、古の生命は滅びる‥‥」

箒「翼‥‥10年前と同じ‥‥!!」

千冬「そう‥白騎士事件の続き‥‥『黒騎士』の誕生だ!!」

鈴「ってゆーか一夏はどこで何してんのよ!?」

更新だぁぁぁぁぁぁ!!
3ヶ月かかってこれっぽっちかよ!!
この後ちょいちょい更新続けていきます
たくさんの梅ありがとうございます

一夏(前略、千冬姉。‥‥また新幹線に乗ってます。‥‥というよりもう、この新幹線どこに向かっているのかわかりません──。‥‥ていうか、これが新幹線なのかすらわからなくなってきました)

ラウラ「オイ、みんな聞いてくれ!! 今わかったんだがな──京都には五重の塔があるらしいぞ!!」

シャル「ごじゅうのとう‥‥」

セシリア「何ですの、それは?」

ヒューストン「初耳だな‥‥」

ラウラ「それだけではない‥‥“きんかくじ”というスゴイものがあるらしい」

セシリア「キンカクジ‥‥?」

ヒューストン「──それは‥‥ひょっとして宝クジのようなものなのか?」

ラウラ「そうだ‥‥おそらくな」

シャル「え!?」

セシリア「それって本当ですの!?」

ラウラ「私が思うに‥‥当たった者は“金貨”がもらえるのだろう‥‥故に“きんかくじ”なのだ──」

ヒューストン「日本語は不思議だな‥‥」

シャル「ちょっと待って。‥‥じゃ‥じゃあ、まさか“ぎんかくじ”は──」

ラウラ「‥‥そう‥‥“銀貨”がもらえる──!!」

セシリア「信じられませんわ‥‥!!」

シャル「そんなクジ知らなかったよ!!」

ヒューストン「‥‥で、そのクジは我々学生でもやらせてもらえるのか‥‥?」

ラウラ「‥‥それはわからないな……」

シャル「え~~そんなぁ」

セシリア「やっぱり世間は冷たいですわね‥‥」

ヒューストン「ま‥‥そうは言ってもきんかくじ・ぎんかくじというのは一応寺だからな‥‥やはりそれなりに洗礼は受けてからでなければ」

セシリア「そうですわよね、やっぱり宗教が絡みますと‥‥」

シャル「ブッキョーでも洗礼ってするのかな?」

ラウラ「古来から日本には法名という洗礼名のようなものもあるし、あるんじゃないか?」

ティナ「でも甘い物断ちしなきゃいけないんでしょ? だったらいいやー」

シャル「ティナはもうちょっと節制した方がいいと思う‥‥」

一夏「ちょっといいかな」

シャル「──え?」

一夏「聞いてるだけでめまいがしてくる会話はそのへんにして──悪いけどもうすぐ到着するから降りる準備をしてくれ‥‥」

ラウラ「なんだ、もう到着か‥‥」

セシリア「しかたありませんわね‥‥」





アナウンス『東京~~、東京です。次は新横浜──』

シャル「着いた着いた~~!」

セシリア「修学旅行は楽しかったですわね!」

ラウラ「‥‥む、どうした一夏?」

一夏「なんか‥‥むしょーに頭痛がしてきた」

メカ無(‥‥あの子たち、何でもう帰りの新幹線に乗ってたのかしら──)

アナウンス『次は~~京都、京都です』

メカ無『たまには学園の喧騒を離れてのんびりしたいわ────

メ簪『メカラッタ』

メカ『小旅行っていうのも悪くないわね‥‥温泉にでもつかってみましょうか‥‥‥‥』

メ簪『メカラッタ』





──温泉旅館・女湯

メカ無『ふう‥‥ゆっくりお湯につかりながら熱燗でも一杯──』

メ簪『メ..メカラッ....』 カスッカスッ

メカ無『あらやだ、間違えたわ‥‥‥』

メ簪『メカラッタ....』 チャポ

メカ無『都会に汚れたアカを落として、骨の芯まで温まる──。これこそ極楽ってものよね──』 グビ

???「このヤロー!」

???「ぎおえあー!!」

メカ無『あら‥‥となりは男湯ね』

メカ無『ま、これがいつものノリだったりすると‥‥何かの手違いで一夏くんが女湯に入ってきて一年生のみんなにタコ殴りにされるのがオチなのよね。そんなIS学園ならではのハプニングがあってもそれはそれで面白いけれど‥‥』

ピー、ピー

メカ無『う‥‥やだ、のぼせてきちゃった‥‥』

メ簪『メ、メカラッタ!』

メカ無『──そうね、ありがとうメ簪ちゃん。ちょっと横になるわ‥‥』 ゴロ....

ガラララ

笹塚「わぁっ、見てください先生! とっても広い温泉ですよ!」

黒崎「‥‥そうね」

夏姫「‥‥」

笹塚「は、埴御先輩も来ればよかったのになー。せっかくの黒崎先生の結婚式だったのにー‥‥」

黒崎「‥‥」

夏姫「‥‥」

笹塚「そっ、そういえばここのお湯ってたしか──」

黒崎「笹塚さん、アナタ今日は随分よくしゃべるのね」

笹塚「す‥‥すみません‥‥」

夏姫「いいじゃない、せっかく貴女の事を祝福してくれてるんだから。大人気ないわよ」

黒崎「‥‥」

夏姫「‥‥」

笹塚「そ、それじゃあ、身体を洗ってゆっくりつかりましょうよ、ね?」

カポーン....

黒崎「‥‥」

夏姫「‥‥」

笹塚「は‥‥ハハ、なんか、こんな偶然ってあるんですね。十宮先生と旅行に来てみたら、まさか黒崎先生が、結婚だなんて‥‥」 チャポ....

黒崎「‥‥」

笹塚「し、しかも、お相手がまさかかなm」

夏姫「都ちゃん」

笹塚「ッ!!」 ビクゥッ

夏姫「ちょっと‥‥熱燗買ってきてくれる?」

笹塚「え──」

夏姫「駆け足で」

笹塚「は、はい!!」 ザバァッ

タッタッタッタッタ....

夏姫「ふぅ‥‥」

黒崎「何のあてつけなの、これは?」

夏姫「都ちゃんが言ってたでしょ? ホントに偶然だったのよ」

黒崎「何で戻ってきたの」

夏姫「‥‥」

黒崎「偶然だなんてウソ。あのトラブルメーカーの埴御さんが来ないワケがない。‥‥十宮さん、貴女埴御さんから私を買ったわね」

夏姫「──やっぱアシがついちゃうかあ」 チャプ

黒崎「どういうつもりなの。何で今更私の前に現れたのよ」

夏姫「いやあ、やっぱり聞いたからには気になっちゃうでしょ。今、要くんがどんな顔で幸せなのか」

黒崎「ッ!!」 キッ

夏姫「やめなさいよ。せっかくの花嫁がそんな顔したら台無しでしょ」

黒崎「どの口がッ、どの口がそれを言うのよ!!」 ザバァッ

夏姫「どのって‥‥このおちょぼ口が」

黒崎「ふざけないでッ!! 何で貴女がそんな風に口をきけるの!? 私は‥‥私がッ‥‥」

夏姫「‥‥」

黒崎「──私が貴女から要くんを奪ったのに‥‥!!」 ポロポロ....

夏姫「‥‥あーあー、だから花嫁がそんな顔しない」

黒崎「こんな幸せ‥‥っ、あっていいワケがない‥‥!! 私は‥‥幸せになんかなっちゃ‥‥いけないのに──」 ボロボロ

夏姫「あの時も言ったでしょ。“恋は早い者勝ちだ”って」

黒崎「ウソ‥‥そんな事言ってないくせに‥‥」

夏姫「まあまあ、細かい事は気にしない」

黒崎「‥‥そういう貴女はどうなのよ」

夏姫「ん?」

黒崎「そんな風に言うぐらいなら‥‥どうして私から要くんを奪い返さないの‥‥?」

夏姫「‥‥」 ム....

黒崎「そんな事を言うぐらい要くんの事を好きなのに、何でそんな風に言えるのよ!?」

夏姫「‥‥いでしょ」

黒崎「え?」

パシィッ

黒崎「」

夏姫「そんな事、今のアンタには関係ないでしょ!!」

黒崎「‥‥!!」

夏姫「貴女は私に勝った!! だから要くんが貴女の隣りに居る!! 今はそれでいいじゃない!!」

黒崎「‥‥そんな理屈、良いワケないでしょう!!」

パシィッ

夏姫「ッ!! ‥‥貴女みたいに頭が良くて、学歴もある人ならこんな競争、屁でもないでしょう!?」 パシィッ

黒崎「ッ、それとこれは違うでしょう!!」 パシィッ

夏姫「違わないわよ、バーッカ!!」 ブンッ

メ簪『メガラッ!?』 ゴッ

黒崎「ちょっと! 飛び道具は反則でしょう!?」 ゴッ

夏姫「痛ッ! 貴女こそグーは無しでしょ、グーは!!」 ズボォッ

黒崎「ふごぉぉぉっ!! ならコッチは──」 ザバァァッ

夏姫「えっ」

メカ無『!?』グイッ

黒崎「うがぁぁぁっ!!」 グググググ....

夏姫「ち、ちょっと‥‥いくら何でもそれは──」

ガラララ

笹塚「夏姫先生、熱燗売り切れてまし‥‥ってちょっと!?」

夏姫「都ちゃん!? ごめん、今すっごく危ないっぽい!!」

笹塚「黒崎先生、暴力は駄目ですよ!」

黒崎「‥‥なたが‥‥」

笹塚「え?」

黒崎「貴女が幸せになるべきだったのよ、夏姫さん!!」

笹塚「ッ!!」

黒崎「それを‥‥それを私は、貴女から‥‥」 ゴトッ

メカ無『痛っ』

笹塚「黒崎先生‥‥」

夏姫「‥‥まったく、結婚したてホヤホヤのお嫁さんが、そんな事言ってちゃダメじゃない」

黒崎「えっ‥‥」

夏姫「私が貴女に会いに来た理由はただひとつ。言いたい事を言いに来ただけ」

黒崎「‥‥?」

夏姫「──要くんを幸せにしてあげて」

黒崎「!!」

夏姫「私にはできなかった事を、私からは届かなかった願いを、貴女が叶えて」

黒崎「な、夏姫さ‥‥」

夏姫「これはね、私からの貴女に対する個人的な願い事。だから責任もって叶えてね、時雨さん」

黒崎「夏姫さ‥‥うあぁぁぁ──」 ガクッ

笹塚「夏姫先生‥‥」 フルフル....

ガシャーン、バタバタ、ドッターン

???「ぐわぁぁー!!」

???「ぎおえあー!!」

???「ひえぇぇぇ!!」

女性三人「えっ」

一夜「てて‥‥いきなり押すヤツがありますかコノヤロー」

遊馬「お前が暴れるからだろ‥‥ったく」

要「──あっ」

笹塚「」

夏姫「か、要くん‥‥?」

要「いやっこれは違──」

黒崎「いやぁーーーーッ!!」 ガバァッ

メカ無『えっちょっ』

ゴガギンッ

──翌日 京都駅・ホーム

要「‥‥その、昨晩は本当にすみませんでした」 ボロッ....

夏姫「いーのいーの、要くんだったから気にしないわよ」

笹塚「いや、気にしますよそれは‥‥」

夏姫「で、憑き物は落ちたの? 花嫁さん」

黒崎「ええ、おかげさまですっきりしたわ」

夏姫「ま、せいぜいハネムーンを楽しみなさい。でも寿退社は遅めにしないと生徒たちが困るわよ?」

黒崎「なっ‥‥!」 カァァァァ....

笹塚「ちょっと、夏姫先生!」

夏姫「冗談よ、ジョーダン」

要「‥‥努力します」

黒崎「えっ」

笹塚「要先輩‥‥」

アナウンス『まもなく出発します。黄色い線の内側におさがりください』

三年生「黒崎センセー! もうすぐ出ますよー!」

鈴「あー、やっと帰れるわ‥‥」

箒「というか、本当に一夏はどこに行ったんだ?」

黒崎「じゃあ先に帰るわね、夏姫さん」

夏姫「その前に、餞別を持っていきなさい」

黒崎「餞別?」

夏姫「これ‥‥よっと!」 ゴトッ

メカ無『‥‥』ボロッ

黒崎「」

笹塚「な、夏姫先生‥‥。これって昨日の──」

要「あ、アハハハ‥‥」

黒崎「ふふふ、貰っておくわ」

夏姫「それじゃ元気でね、“十条”時雨先生♪」

黒崎「‥‥! ええ。貴女こそ、十宮夏姫先生」

プシューッ、ガシャン ガタンゴトン、ガタンゴトン....

笹塚「夏姫先生‥‥」

???「行ってしまいましたわね、夏姫先生」

夏姫「‥‥うん。色々ありがとね、埴御さん」

四五七「‥‥」

笹塚「埴御先輩、今までどこに‥‥」

四五七「どこにも何も、あの旅館は我が埴御グループの施設でしたので」

笹塚「じゃあ最初から仕組んでたんですか!! どこまで手広いんですか埴御グループ!!」

四五七「それで、これでよかったんですか?」

夏姫「いいの。言いたかった事も全部言えたし、これで満足よ」

四五七「本当に?」

夏姫「‥‥」

四五七「本当にこれでよかったんですか?」

笹塚「ちょっと、埴御先輩‥‥!」

夏姫「‥‥欲を言えば」

笹塚「え?」

夏姫「私も名乗りたかったなあ。十条って苗字」

笹塚「!」

夏姫「要くんとお揃いの名前で、どこへ行っても十条って名乗るの。でもいいのよ。教育実習生の身で生徒に手を出した私なんかより、ずっと好きな気持ちを我慢してきた時雨さんの方が」

四五七「夏姫先生」

夏姫「なあに?」

四五七「泣いてるんですね」

夏姫「──え?」 ポロポロ

笹塚「夏姫先生‥‥!」

夏姫「うそ‥‥やだなあ、私‥‥こんなつもりじゃ」 ポロポロ

四五七「‥‥」

夏姫「あ‥‥やだ、行かないで。置いていかないで、要くん。私、今度はいい子にするから‥‥」 ヨロヨロ

笹塚「‥‥」 ポロポロ

夏姫「だめ‥‥待って‥‥置いていかないでよ‥‥要くん!!」 ダッ

笹塚「夏姫先生っ!!」 ガバッ

夏姫「やだっ!! やだやだ!! やだよ要くん!! 私、要くんの事──」 ボロボロ

四五七「‥‥」

夏姫「うわぁぁぁぁ、あぁあぁぁぁぁぁぁ!!」 ボロボロ

笹塚「ッ──」 ボロボロ

夏姫「──どうか、幸せにッ‥‥ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ボロボロ

笹塚「先生‥‥」 ボロボロ

四五七「どうやら、貴女の憑き物もようやく落とせたようですわ、夏姫先生」

カサッ

四五七「あら? これは──」

紙『取り扱い説明書』

四五七「‥‥これは渡さなくてもよかったのでしょうか」

──IS学園

シャル「まあ‥‥旅行は楽しかったよね‥‥」

ラウラ「ああ‥‥そうだな‥‥」

ヒューストン「で‥みんな何が一番印象に残ってるんだ?」

外国人勢「…………」

ヒューストン「‥‥ま、私も特に何が印象に残ったというコトもないんだがな‥‥楽しかったからヨシとしようじゃないか」

セシリア「まあ‥‥旅行とはそういうモノですわよね」

箒「‥‥本当にそれでいいのか?」

シャル「え!?」

箒「私はうすうす感づいているんだがな‥‥ひょっとしてお前ら、京都に行ってないんじゃないのか?」

外国人勢「………………」

シャル「それを言わないでよ‥‥」

箒「いや、これはハッキリさせよう!! でないと、私たちは一生代表候補生のままで終わってしまうぞ!!」

鈴「アタシたちはいつもそうよ‥‥都合の悪いことは全部ウヤムヤにしちゃって──そうやって世間から笑われてきたんじゃないの‥‥!?」

全員「…………」

一夏「それ以上自分を責めるのはやめろよ、二人とも──」

箒「一夏‥‥」

一夏「‥‥“旅行に行く”って行為は物として残るわけじゃない──行った人の心の中にこそ残るものなんだ‥‥。心に積み重なった様々な思い出──それこそが本当の旅の証なんだ……。たとえ風景を写真に撮っても、それは単なる偶像にすぎない!! その人の心に残ってなければ行ってないに等しいんだ──」

ラウラ「なるほど……」

一夏「よく思い出してみてくれ。心に残っているいろいろな思い出を──。心の中にある大切な記憶──それが旅をしたっていう証なんだ」

全員「…………」

ヒューストン「ありがとう……私たちが浅はかだった‥‥本当に旅をしたかどうかは、私たちの心が決めるんだな──。旅行に行ったのかどうか‥‥これで自信を持って言えるよ」

一夏「……わかってくれたのか──」





外国人勢「やっぱ行ってない」

一夏「だろ?」

鈴「ねえ、コイツらにキチッと全部伝える?」

箒「緘口令が敷いてあるしな‥‥」

──某日

箒「うむ、おはよう」

シャル「おはよう───」

箒「なあ‥‥朝からこんな話をするのも何だが‥‥実は姉さんから電話が来てな」

一夏「‥‥ふ~~ん‥‥それで?」

箒「どうも姉さんの話によると‥‥イギリスの衛星兵器が突然暴走して日本に照準を合わせたらしい‥‥」

全員「‥‥‥‥」

一夏「‥‥‥‥‥で、それはいつ頃なんだ?」

箒「いや‥‥詳しい日程はわからないんだが‥‥‥たぶん来週あたりじゃないかと言ってた‥‥」

シャル「え──ッ!! 来週‥‥!? 早過ぎるよ!!」

一夏「あのな‥‥もっと早めに言ってくれないと困るんだけど‥‥」

箒「いや、スマン‥‥私もこの話を聞いたのが先週だからな」

マドカ「まったく急過ぎるな‥‥それでは何も準備できないではないか」

全員「‥‥‥‥‥‥」

箒「準備って‥‥何の準備だ?」

マドカ「いや‥‥だから衛星兵器との戦いに備えてだな──警察に連絡するとか──いや‥‥この場合は軍かな‥‥」

ラウラ「軍‥‥!? 貴様な、衛星兵器に軍が何の役に立つんだ?」

鈴「あのね──相手はレーザービームとか使ってくんのよ?」

マドカ「いや、ちょっと待て──それはお前らの勝手な思い込みじゃないか? 衛星兵器=レーザービームとか言うのは映画の見過ぎだ‥‥。実際はもっと地味な装備を搭載してる可能性だってあるだろうが。例えば、国家機密を暴露するとか‥‥」

ラウラ「ああ‥‥それなら勝てるかもしれんな」

シャル「とりあえず、今からでも遅くないから警察に連絡しようよ」

セシリア「いえ、お待ちになって‥‥。もう衛星兵器を暴走させた犯人が下準備をして警察機関を抱き込んでるかもしれませんわよ」

鈴「それじゃ結局どうしようもないじゃないのよ‥‥」

三年生「手の打ち様がないじゃない‥‥」

ヒューストン「何か助かる方法はないのか!? 何かないのか!?」

一夏「もうあきらめようぜ──」

鈴「え‥‥」

箒「何だと一夏!? お前──」

一夏「人間いつかはどうせ死ぬんだし──いつ死んでも悔いがないように充実した人生を送る方が建設的じゃないか。残された一週間でどれだけ充実した人生を送れるか‥‥衛星兵器と勝負だ!!」

鈴「一夏、アンタ──」

一夏「今までやらなかったこと‥‥やれなかったことをやろうじゃないか、人生の最後に!!」

箒「そうだな‥やってやろうじゃないか!!」

シャル「うん、やろう!! 衛星兵器なんかに負けないよ」

セシリア「何だか勇気がわいてきましたわ‥‥」

一夏「じゃ、また一週間後に会おう」

箒「ああ!! みんな、やるぞ!!」

全員「おー!!」

──某所

鈴パパ「鈴、お前‥‥まさか鈴か?」

鈴「‥‥うん。久しぶり、父さん」



──イギリス

チェルシー「は? お嬢様、今何と──」

セシリア「ですから、今この屋敷にある全財産を支援者の方々に分配してほしいんですの」

チェルシー「しかし、それでは旦那様と奥様の遺産が──」

セシリア「いいんですのよ。本当の遺産は、もう貴女から受け取りましたから」 トン

チェルシー「お、お嬢様‥‥」 ホロリ



──ドイツ シュヴァルツェ・ハーゼ基地

クラリッサ「やめさせろ~~~~ッ!!」

隊員A「大尉、これは隊長命令なのであります!!」

クラリッサ「しかし──」

隊員B「隊長、これも処分するんですか」 ボォォォォォォッ

ラウラ「うむ、頼む」

クラリッサ「呪ってやる~~~~~~~~!!」

──フランス デュノア邸

ホイットニー、ヒューストン『エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア、ウィィィィラァァァァウェイズラァヴュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥァァァァ』

ジェイムズ「おお‥‥ご覧になられておりますか、旦那様。シャルロットお嬢様はまるで母君の生き写しのようで──」 ウルウル

アルベール「うむ‥‥」 ズビーーッ

ロゼンダ(ていうか二人も産んでたかしらあの女)



──月 軌道上

スコール『ゲートロックを解除したわ、先に進んで』

オータム『衛星砲につながってるエネルギー増幅器から、レインとフォルテを引っ剥がすぞ』

レイン「う‥‥くっ‥‥」

フォルテ「‥‥うぅ‥‥」

アリーシャ『時間がない、急ぐのサ!!』

マドカ『見ていろ織斑一夏、これが私の充実した人生だーーッ!!』

ドカーーーン



──喫茶『ななつき』

三年生「え~~と‥‥ここにのってるの全部ください」

絢音「えっぜ、全部?」

──一週間後

一夏「あ~~‥‥いよいよ明日、日本が砲撃されるワケなんだけど‥‥みんな、もう思い残すことは無いか?」

鈴「もちろんよ!! もう何も困んないわ!!」

ラウラ「今までやらなかったコトはすべてやった‥もういつここが砲撃されても困らないぞ!!」

三年生「私なんか貯金全部使い果たしちゃったわ」

セシリア「ええ、それは何よりですわ」

シャル「どうせ死ぬんだから、お金持ってても意味ないもんね!!」

ヒューストン「これも箒のおかげだ、本当に助かった」

箒「…………」

一夏「どうした?」

箒「いや‥‥その衛星兵器暴走の話なんだが‥‥」

シャル「え‥‥どうしたのいったい!?」

鈴「まさか、ウソだったなんて言うんじゃ‥‥!?」

箒「実は所属不明部隊に襲われて十日後のクリスマス・イヴに延びたらしい」

全員「」





全員「‥‥‥困るよソレ‥‥」

三年生「私、明日からご飯抜きよ‥‥」

じつにもう3ヶ月も放置してしまいましたが、公約通り修学旅行編完結させました!
もうアーカイヴ化されてると思っていましたが、運営さんが残してくださり更新に漕ぎ着けました!
次回はISABトレース編にするか、原作者他作品テーマの話にするのか、それともいっそのこともう完結させるのか決めあぐねています
皆さん長らく応援ありがとうございます

──某日

マドカ「この先、一体どうすればいいのだろう‥‥? 来る日も来る日もテロリストと女子高生の二重生活‥‥‥。身の振り方に悩みながらも、いつも通り学校へと足を進める私‥‥」

スタスタ

マドカ「…………というか‥‥何で私は学校に行かなければならないんだ? しょせん私は犯罪に手を染めた身──今さら学をつけたところでどうなるという? それが罪のつぐないになるワケでもないのに‥‥」

三年生「‥‥おはよう」 ゲッソリ

マドカ「あ、ああ‥。ずいぶんやつれているな‥‥貯金を全て卸したというのは本当だったのか」

三年生「‥‥ええ、おかげさまでね~」 フラフラ

マドカ「なあ‥‥お前にひとつ聞いていいか?」

三年生「──え? なあに?」

マドカ「お前‥‥何のために毎日毎日学校へ行ってると思う?」

三年生「う──ん‥‥何だろ‥‥? 何て言ったらいいのかな‥‥。アタシたちギャルは無意識に『居場所』を求めてるんじゃないのかな?」

マドカ「『居場所』?」

三年生「ギャルっていうのはね‥‥みんな一人ぼっちなのよ‥‥。心に何か後ろめたいモノを背負ってたりね‥‥そういう人たちってみんな居場所がないのよ‥‥。貴女だって、何か後ろ暗いモノのひとつやふたつ背負っているんでしょ?」

マドカ「ああ‥‥ひとつやふたつどころじゃないがな‥‥詳しくは言えんが」

三年生「たしかに私たちの学校はヒドイ学校よ、動物園みたい。ううん、ヘタしたら動物園の方がマシかもしれない‥‥。けれど、そんなヒドイ学校でもあるだけマシじゃない? ‥‥学校には仲間もいる──学校がたしかに存在してくれるから、アタシたちに居場所があるんだよ」

マドカ「………………そうだな‥‥学校が消えてなくなるワケがないものな」

三年生「そうよ。何にもないアタシたちだけれど‥‥学校があるだけ幸せよ」

マドカ「そうだな!! 私たちには学校があるのだ!!」

ズドォォォォン

マドカ・三年生「!?」

谷本「た‥大変よ──ッ!! 第3アリーナに隕石が落ちたって───ッ!!」

マドカ「………」

三年生「………」

マドカ「‥‥そういえば最近ゴレ美が動物園でアルバイトを始めていたな」

三年生「待ってステイ、はやまらないで」

校内放送『緊急事態発生。緊急事態発生。未確認物質が第3アリーナに落下。全校生徒は各自、近くの建物に避難してください』

千冬「では、状況を説明する。先ほど、第3アリーナに謎の隕石とおぼしきものが墜落した。しかし、これはどうやら隕石ではない。この物体が観測されたのは宇宙だ。外淵宇宙からの飛来物という可能性もゼロではない」

一夏「はあっ!? それってつまり、宇宙人とかエイリアンとかって意味かよ、千冬姉!」

ゴスッ

千冬「説明の途中だ。それと、織斑先生、だろう」

一夏「す、すみません‥‥」

鈴「えらいコトになったわ‥‥」

ラウラ「これは一大事だぞ!!」

三年生「みんな、ちょっと聞いて!!」

千冬「何だ。というかお前はなぜここにいる」

三年生「たしかに学校に隕石が落ちてきたのは大事件よ‥‥けれど、どうしてもその前に私の名前を覚えてほしいのよ──」

箒「そう言えば、まだ先輩の名前を聞いていませんでしたね」

千冬「いまは作戦中だぞ。お前は早く避難を──」

三年生「お願いします!! ほんの5秒ほどで終わりますから‥‥」 ギラギラ

千冬「あ、ああ‥‥」 タジッ

全員(あの織斑先生が退いた‥‥)

三年生「じゃあ改めて言うわね‥‥アタシの名前は──」

ラウラ「オイみんな大変だ!!」

三年生「またコレぇ!?」

ラウラ「隕石のフタが開いたぞ!!」 パカッ

セシリア「な‥なんということですの!!」

シャル「一体僕たちどうなっちゃうの!?」

三年生「ねえ、みんなちょっと聞いてくれないかな」

鈴「はぁ!? 何よ!?」

三年生「貴女たち──そんなに隕石が大事なの? 隕石のフタが開いたからってそれが何!? そんな事よりもっと大切な事があるのを貴女たち忘れてない?」

ラウラ「もっと大切な事って何だ‥‥?」

三年生「私の名前よ。たしかに戦術上、隕石とおぼしき謎の物体の飛来は重大な事かもしれない──でも、もっと身近な友人の名前を覚えてあげるという方が先決なんじゃないかな?」

千冬「おい、ヤツは重力ブレーキを──」

一夏「先輩の言う事も一理ある‥‥けれど、それには『隕石』と『先輩の名前』のどちらが重要なのかをみんなで話し合わなきゃならない‥‥」

箒「けれど先輩の名前なんて知らなくとも私たちは普通に生きていけるぞ」

一夏「箒、それは言いすぎだろ──でももっともな意見でもあるな」

三年生「なら言うけれど、あの隕石について何を語ろうっていうの!? せいぜい『スゴーイ』とか『大変だ』とか騒ぐ程度でしょうが!! それとも天文学の知識が貴女たちにあるって言うの!?」

千冬「エ、エネルギー状の杭を──」

箒「う~~ん、それを言われるとツライですね‥‥」

三年生「でしょ!? だったら私の名前を覚える方が有意義だと思うんだけど──」

箒「仕方ないですね‥‥では、先輩の名前を聞いてあげますよ」

千冬「‥‥外淵宇宙──」

三年生「すみません!! ホントすぐに終わりますから」

千冬「‥‥うん」 グスッグスッ

山田(泣きじゃくってる織斑せんせ可愛い‥‥) ゾクゾクッ

三年生「じゃあすぐ終わるから聞いて。私の名前は‥‥」

シャル「大変だ!!」

三年生「今度は何なのよ!?」

シャル「宇宙人が顔を出してるよ──っ!!」

絶対天敵(格闘)「グルルル‥‥‥」 シュコー... シュコー... シュコー...

鈴「ギャ───ッ!! 虫っ! 虫はダメなのよ──っ!!」

シャル「ど‥どうしたらいいの!?」

絶対天敵(支援)『ユックリ降リテ下サイ‥‥‥』 ブラ...ブラ...

絶対天敵(格闘)『足下気ヲツケロヨ‥‥‥』 ブラ...ブラ...

箒「しかも縄バシゴで降りてきているぞ!?」

ラウラ「なんということだ‥‥」

セシリア「宇宙人がなわバシゴを使いますの?」

絶対天敵(格闘)『ハジメマシテ、ミナサン──私タチハ絶対天敵<イマージュ・オリジス>デス。コレカラ自己紹介シマス』

全員「な!?」

鈴「ふざけんじゃないわよ、虫なんかの自己紹介なんて聞く耳持たないわ!」 ダダッ

メカ無『き‥気持ち悪い──!!』 ダダッ

絶対天敵(支援)『ミンナ、イナクナッテシマイマシタ』

絶対天敵(格闘)『ウ~~ン、困ッタナ』

三年生「待って‥‥」

絶対天敵(支援)『ウン? アナタハ?』

三年生「アタシはいろいろな事情で自己紹介するタイミングを失ってしまった哀れな女よ──。もうこうなったら宇宙人でも絶対天敵でも構わないからアタシの名前を覚えて!!」

箒「な、先輩!?」

絶対天敵(支援)『‥‥ワカリマシタ。ドウゾ思ウ存分、我々ニ自己紹介シテ下サイ──』

三年生「ありがとう──。やっぱり宇宙人は話がわかるわ──地球人はダメね‥‥」

一夏(先輩‥‥)

三年生「じゃ、言うわよ絶対天敵!! アタシの名前は‥」

絶対天敵(支援)『隊長、時間デス』

絶対天敵(格闘)『ム‥モウ帰還ノ時間カ』

三年生「え~~!!」

シャル「ああっ、アレを見て!!」

ラウラ「アレは──」

鈴「宇宙船!?」

フィィィィィ.....

絶対天敵(支援)『迎エガ来マシタ』

ビ────..

三年生「ア・・アタシの名前は‥‥」

絶対天敵(支援)『サヨウナラ』

フワフワ

鈴「帰ってくわよ」

ラウラ「アイツら、何しに来たんだ?」

三年生「…………宇宙人にさえシカトされた‥‥」 ガクッ

一夏「ちょっといいですか?」

三年生「‥‥何よ」

一夏「今の宇宙人とのやりとりを見ていて反省しました‥‥。地球人として恥ずかしい──すみませんでした‥‥。先輩の名前をぜひ俺たちに聞かせてください!!」

三年生「‥‥織斑くん」

箒「私にも聞かせてください」

セシリア「ワタクシにもお願いしますわ」

鈴「アタシにも!」

シャル「僕にも!!」

ラウラ「‥‥フン」

ゴレ美「‥‥」 プシューッ

メカ無『私にも』

メ簪『メカラッタ』

絶対天敵(格闘)『君ノ名ハ』

三年生「みんな──」

全員「…………」

絶対天敵(格闘)『エ!?』

一夏「う、宇宙人!?」

鈴「何でまだ居んのよ!?」

シャル「ああっ、みんな! アレを見て!!」

ヒューストン「」

ラウラ「宇宙人が間違えてヒューストンを連れていったぞ!!」

セシリア「ヒューストンさん、カムバァァァァックですわ!!」

絶対天敵(格闘)『ワ、ワタシハドウヤッテ帰レバ‥‥』

三年生「‥‥当分アタシの名前、聞いてもらえないわね‥‥」

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