女「今の君を教えてよ」 (64)

男「……? なにを言ってるのか全然わかんねぇな」

桃色の吹雪が街を染め上げ、ほんのりとした温もりが人々を包む高校一年生の春、彼と彼女は出会った。

女「君は不思議だね」

男「初対面の人俺にいきなり君を教えてよ、とか言ってくるやつの方が不思議だけどな」

女「……」

何か言いたげな彼女を横目に男は去った。
教室につくと、初対面の人間となんとか仲良くしようと何気ない会話が飛び交っていた。

男(どいつもこいつもうるせぇな。そんな内容のかけらもない話したところで生産性皆無だろ)

背後から肩を叩かれる。

女「やあ。同じクラスだね。一年間よろしくね」

男「またお前かよ……」

女「いいじゃん話しかけたって。友達なんだし」

男「いやちげぇけど。さっき話しただけだろ。大体俺は他人と必要以上に関わる気ないから」

女「やっぱり君は不思議だね。理由を教えてよ」

男「はぁ? 電波ちゃんかよ、お前」

その日はこれ以上女が男に話しかけることはなかった。景色に橙が滲み始め、帰路についたとき後ろから声がした。

男A「女さん」

女「?」

男女二人組だ。

男A「さっき男と話してただろ? やめといたほうがいいぜ」

女「どういうことかな……?」

女A「話すと長くなるんだけど、聞いてくれる? 私たち二人ともあいつの被害者なの」




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ーー被害者。
言葉というのは偉大なもので、たった単語一つで人間の気持ちを変えてしまう。被害者と言う言葉も聞いただけでいい気分がしない。

女「うん。教えて」

次の日の朝。高校一年生という新しい環境に慣れず、そわそわしている教室。男は席に着こうとする女を一瞥した。

男(特に興味があって見たわけじゃないけど、無言でそらされるといい気分はしねぇな。まぁいいけど)

女の様子が昨日は明らかに違っていた。嫌悪、軽蔑、恐怖、きっとどれでもないのだろう。何かをずっと考えているような面持ちである。
昼休みの終わり頃、その日初めて女が男に声をかけた。

女「やあおはよう。一人でお昼食べてたでしょ。友達作らないの」

男「もう昼だけどな。余計なお世話だ。どうせ友達なんて作っても仕方ないからな」

女はどこか憂いを含んだ表情をしている。

男(なんだこいつ、なんか暗い顔してんな)

男「なーんか、昨日より暗いかおしてるけど? 失恋でもしたか? 興味ねぇけど」

女「……そうかな、ちょっと考えてて。男君はやっぱやさしいね」

男「そうかよ。やっぱってなんだよ知ったかぶりやがって」

女「君に聞いてもいいかな?」

男「なにを?」

女「君が心を閉ざす理由」

男「はぁ? なんだそれ。俺は元々そういう人間ってだけだよ」

女「……男君は優しい。痛みを知ってるよね? 君は。また放課後君に聞くね」

男「は? なに言ってんだ。もう話しかけてくんな」

女の様子が昨日は

女の様子が昨日とは

書き溜めありません。
不定期更新です!!

放課後。男は背後から肩を叩かれる。

男「またお前か、なんーー」

男A「お前、女さんと関わるな」

男「男A! お前同じ高校だったのか」

男A「あぁ、男Bもな」

男「そうか、じゃあ女Aも……」

男A「そうだ。お前と関わらなくなったあと3人でで同じ高校行こうって話したんだ。まさかお前がいるとは思わなかった。いまさら罪を償えなんていわねぇけど、女さんと関わるのやめろ。お前みたいなやつが関わっていい子じゃねぇ」

男「わかった。もう関わらない。気ぃ張らせちゃって悪かったな。じゃあ」

時は巻き戻せないと人々は言う。もし仮に時を操ることができれば、人間の後悔は減るのだろうか。それが可能だとして、時を巻き戻すことは正しい道であるのだろうか。それは甚だ疑問である。この男に至っても同じことが言えるのだろう。

おつきたい


男「最後に聞かせてくれよ男A」

男A「なにを」

男「女Aは……女Aはどうなった」

男A「どうなったじゃねぇよ!!! てめぇのせいで男性恐怖症になったんだよ!! 俺ら以外の男とは会話すんのも億劫になった。お前がそれ聞いてどうすんだ!?」

男「……ごめん」


人には、自ら命を絶とうと思う瞬間がある。それは、自分では未来を切り開けなくなった時である。現状という闇に支配され、未来という恐怖に握り潰され、異界に逃げ場を求めるのだ。
新学期の一週間の登校を終え、誰もが待ちに待った休日を迎えた。桜の花はほとんど役割を終え、日差しは勢いを増し始めていた。

男「母さん、昼飯はー?」

母「あー、いまから最近引っ越してきたご近所さんの家にお邪魔することになってるから、自分でどっかで買ってきて」

男「わかった。つか、近所さんと仲良くなるのやけにはええな」

母「昔知り合いだったから」

男「ふーん。コンビニ行ってくるわ、んじゃ」

男(あれ、コンビニの前に見覚えのある奴が…)

女「やあ。休日にあうなんて運命だね。なんて」

男「お前の運命の基準どうなってんだよ。そんで、家から10分のコンビニにお前がなんでいるんだよ」

女「家が近いからに決まってるでしょ。高校入る前にこっち来たんだ」

男「ふーん。まぁ俺用あるからじゃあな」

女「ちょっと待って! 少しお話ししよう」

男「しねぇよ。お前に関わんなって言われてんだよ」

女「男A君にかな」

男「なんで知ってーー」

女「少し、お話ししよう。男君」

男「わかったよ。ちょっと昼飯買ってくる」

昼下がりの閑散とした公園のベンチに二人は腰掛けた。もうすぐ初夏が来るというのに、この公園には木枯らしでも吹くのではないかという雰囲気が漂っている。

男「相変わらずの雰囲気だなこの公園は」

女「幽霊公園。あながち間違ってなさそうだね」

男「お前、詳しいな、なんで知ってんの」

女「まぁ、全知全能の神だから」

男「しばくぞ」

女は上を見上げた。
それにつられて男も視線を空にやった。人間の心が燻んでいても空は青く、雲は白い。そして太陽はいつでも世界を照らす。まるで空の世界はどれほど時が経っても変わらず居られるかのようだ。人間の世界は、絆の世界は、脆いのに。男は呆然としながらそんなことを考えていた。
女がぽつりと言う。

女「君は、太陽。私は街」

男「はぁ? ポエマーかな」

女「なんでもない。ところで君は、死にたいと思ったことある?」

男「そんなの……。お前に教える義理はないな」

女「そっか。私はあったよ昔。本気で死にたかった」

男「そんな感じしないのにな」

女「なにやってもダメで、自分に自信がなくて。そんな自分に嫌気がさして暗くなって。暗い自分にも嫌気がさして、負のスパイラル。いつしか私なんて生きてる意味ないんだって思い始めて、死ぬこと考え始めた。小学三年生くらいの時」

幼少期の暗い思い出を語り始めた女に、男の視線は釘付けになっていた。死を考えた人間は、どのようにして元の世界に這いずり上がるのか、気になったのだ。境遇は違えども、死を覚悟したことはあるし、常々生きてる意味について考えるからだ。

女「人が嫌いになった。馬鹿にするし、汚い言葉を平気で言うし、醜いなって。本気で死のうとして、家の二階から飛び降りたこともあったけど、そんなんじゃ当たり前に死ななくて、母親の悲しそうな顔見て、二度と自殺未遂はしなくなった。でも、死ねない私に逃げ道なんてもちろんなかった」

男「でも、いまのお前は死を考えてる人間には見えない」

女「今は思ってないからね。いまの私は人間が好きだもん。人間ていうのは綺麗だよ。人間同士の絆は美しいよ、男君」

男「きれいごとだ。人間は裏切る。人間は信用しないし、人の言葉に耳を貸さない。俺は心底人間が嫌いだ。人間のせいで死のうとまで考えたお前がなぜそんなことを言えるのかが気になってしょうがない」

女「気付かされたからだよ。人と関わることの素晴らしさに」

男「そんな簡単にそう思えるわけがない」

女「簡単にじゃないよ、何回も何回も、めげずに私に教えてくれた。あの人は」

男「そんな聖人どこの世界にいんだよ」

女「さぁね。でもその人がしてくれたように私は心を閉ざしてしまった人に手を差し伸べたいの」

男「余計なお世話だ、他をあたってくれ」

男は持っていたおにぎりをお茶で流し込むと、立ち上がった。

女「あの日、私は君にもう一度心を閉ざした理由を聞こうとした。放課後ね」

男は諦めたようにまたベンチに腰を下ろした。

女「でも君が男A君と話してるのを見て、気が引けてしまった。あんなに怒鳴られた後にこんな話されたくないだろうな、って」

男「見てたのかよ。じゃあ俺があいつらに嫌われてんのも知ったのか。まぁ知ったところで、俺は人と関わることをやめたから関係ないけどな」

女「一回目に聞いた時は元々そういう人間って言ってた。でもいまは関わらないようになったっていった。進歩だね」

男「うるせぇないちいち」

女「ちなみに、嫌われてるのを知ってるだけじゃなくて、なんでそうなってしまったのかも、知ってるよ」

男「……な」

自分の一番知られたくない過去を知られてしまった。次の言葉が出てこなかった。人に過去が知れてしまったことが原因ではなく、また人に嫌われてしまうと考えたからだ。男は、心を閉ざしきれていない自分に気づいた。そしてその脆弱な自分の心に嫌気がさした。

女「君は、人間が嫌い?」

男「……」

即答で嫌いと答えようとしたが、男は口ごもってしまった。人に嫌われたくないと少しでも考えてしまった自分は、本当に人間が嫌いなのだろうか、と。

男「……嫌いだ」

女「目そらした」

男「……俺の中に入り込んでくんな、虫唾が走る」

女「君は、本当に人間が嫌いじゃないよね。君は、人間の美しさを知ってるよね? 君は、痛みを知ってるよね!?」

男「黙れよ!!! 俺は人間と関わらないって言ってんだろ!! もう干渉してくんなよ!!」

一回休憩です。またきます

休憩が長いな

男は逃げるかのようにその場から去った。
男の家の付近に着くと、女子高生であろう少女が誰かを探しているかのようにうろうろしていた。

男(なんか、見覚えある顔)

女B「やっほー、ひさしぶりぃー」

男「お、お前っ」

女B「そんな嫌そうな顔すんなよぉー、中三の時あんなに仲良かったじゃーん。ーーで、女Aはどうなってんのいま」

女Bの表情が一変した。見られた人間を切り裂くかのような眼光と、冷酷な人相は彼女の人間性を物語っている。

男「あの時お前が言っていた通りに、なったよ」

女B「まじー! 満足満足。お前はどうなの?」

男(にやにやしやがって)

男「……それも、お前が言ってた通りだ」

女B「うけるぅ。まあそれならよかったわー、んじゃね」

男の話を受けると、満足いったと言わんばかりの面持ちで彼女は消えていった。

男「くそ……。くそ……」

ーーあの女さえいないれば。あの女さえ死ねば。
男は悔しさで震えた。女Bという女にさえ出会っていなければ、全ての今は変わっていただろう。それは火を見るよりも明らかな話だ。

男「あの頃の俺はバカだ……」

その夜、男は夢を見た。幼い5人の子供が和気藹々と砂場で遊んでいる夢だ。その様子が現実世界とかけ離れすぎているせいなのか、理由はわからないがなんとも言えない幸福感に包まれた。

男(朝か。いい夢だったな)

男は学校に行くのも憂鬱だった。今日女と会ったら、どのような態度をとっていいのかわからないのと、女Bと話したことで封印しようとしていた過去が漏れ出してきてしまっているからだ。
学校に着くと、別世界のように変わりのない日常がそこにあった。

女「やあ。おはよう」

男「お、おはよう」

女「ぎこちないね、昨日のせい?」

男「かもな。それよりも、クラスには男Aがいるんだから話しかけるの控えろよ」

女「いいじゃん、べつに。ーーねぇ」

男「?」

女「今日の放課後、幽霊公園ね」

男が反応を返す前に、女は去っていった。

なんの変哲もない日常を浪費していくうちに、気づけば夏休みに突入していた。これでもかというくらい凛とした日光と、生命の力強さを思わせる緑樹。夏という季節は、どうしてこんななにもパワフルなのだろうと、男は思った。
あの日男は結局幽霊公園に足を運ばなかった。人間との関わりを断つためだった。過去の自分が許さないし、人間への恐怖心が未だに拭えないのだ。
どうしてこんな生き方になってしまったのか、という頭の中での議論が始まった時、男の家のチャイムが鳴った。

母「男ー。女ちゃんだよ!」

男「まじかよ。てか、女ちゃんて……」

母「最近引っ越してきたお隣さんの娘さんなのよ。まぁそんなことどうでもいいから出てあげなさい、待たせてるんだから」

男「はいよ」

扉を開くと、真っ白な太陽の光が視界を覆った。白を帯びた景色がだんだんと元に戻っていくと同時に、目の前の少女の姿があらわになった。いつも学校で顔を合わしているはずだが、この日の彼女は、光に劣らないくらい輝かしくみえた。

女「やあ、お隣さん」

男「まじかよ。だから近くのコンビニにいたんだな」

女「正解だよ男君。いまからデートしよっか」

男「はぁ? また人間がどうとかの話でもするのかよ」

女「ううん。今日は違うよ。男君と一日過ごしてみたいだけ」

男「本当か?」

女「もちろん!」

男「お前はなんでそんなにも俺に手を差し伸べようとするんだ。何か理由があるとしか思えないけど」

女「すごく勘ぐるね、男君は。そーだねー、理由かぁ。秘密ってことで!」

女は笑みを含んだまま手を差し出した。おいで、とでも言っているかのように。
男は手を伸ばそうとしたが、その手をすぐに引っ込めた。

男「……」

女は不思議そうな顔をしている。ただ一日を共に過ごしたいだけ、という言葉に魅力を感じてしまった自分に、すぐに嫌悪感を覚えた。過去のことがありながら、人に求められることに心地よい感情を抱いてしまったからだ。

男「俺は、俺は……」

口ごもっている隙に、男は手を引かれていた。考える余地もなく、走り出していた。眩く光る白昼に、一夏の思い出が始まった。

女「男君、今まで生きてきた中で、夏の思い出ってある? 凄いところに行ったとか、衝撃的な出来事があったとかじゃなくても、なんとなくこれだけは忘れられないなって思い出」

中心街のショッピングモールの小窓に展示された洋服をまじまじと見つめながら女は言った。

男「んー……。鮮明に覚えてるわけじゃないけど、そういう思い出はあるよ。ずっと昔の話だけど」

女「そっか。私もあるよ、忘れられない思い出。この前君に言った、私に手を差し伸べてくれた人のことだけどね」

男「そっか、いい思い出だろうな。人間の美しさとやらを説いてくれる小学生なんて今のご時世滅多にいたもんじゃねぇからな」

女「そうだね。多分あの人自信も必死だったんだろうと思う」

男「ふーん。ところで、こうやって街をぶらついてる俺たちを男Aが見かけたら、どうすんの」

女「それはその時に考える」

男「気になったんだけど、なんで男Aはお前をそんなに俺から守ろうとするんだろうな。俺の過去の行いがあってのことだっていうのはなんとなく理解できるんだけど、知り合って間もないお前にそんなにこだわる必要あるのかなって」

女「知り合って間もなくないよ。昔会ってるもん」

男「あー。そういうことか。そりゃそうか幼馴染みたいなやつが、仲間を裏切って女を男性不信に陥らせたような男とつるんでたんじゃ心配だもんな」

女はふふっと笑った。

女「男君の中にまた立ち入れたみたいだね。自分から過去の話した」

男は軽く舌打ちをした。

男「なーんか、誘導尋問みたいだなこれ。面白くない」

女「まぁまぁ、そう怒らないでよ。次どこ行きたい?」

小さな川が流れるのどかな土手に二人の男は寝そべっていた。二人とも空間を見つめて、呆然としていた。

男B「なぁ、男っていいやつだったよな」

静寂を切り裂いて、男Bがぽつりとこぼした。

男A「なんだよ急に。あいつの話はしたくねぇ」

男B「お前らの前でこういうこというのもなんだけどさ、あれだけのことされても、俺はまーだ男のことをいいやつだったって思っちゃうんだよなー」

男A「ほんと前からお前はそういうよな。どこからその考えに至るのかが理解できねぇよ。俺ら三人とも碌でもない目にあわされてんだぜ」

男B「……なんか。なんか事情があったんじゃねぇかなって。思っちゃう。いや、そう思いたいんだよ俺は」

男A「あんなことに巻き込む理由が? そんなもんがあるならぜひ見せてもらいたいくらいだ。死ねばいいとさえ思ったこともある」

男B「んー……。なんだかなぁ」

男Aは言葉とは裏腹に煮え切れない表情を浮かべている。

男B「なぁー」

男A「ん?」

男B「空はいつでも青いよなぁ」

男A「たまに曇る」

夕暮れが街並みを染めはじめると、辺りには次第に静寂が訪れ始めた。廃れた地元の公園のベンチに腰掛ける二人。服の内側からジワリと滲む汗と、心地の良い風。夏の夕暮れを男は直に感じていた。

男「なんか、懐かしいなこの感じ。夏の夕方に友達とベンチで話すなんてもう一生ないと思ってた」

女「友達……?」

男はしまったと思った。心を閉ざすと決めていたのに、気づけば女に心を開いてしまっていた。

男「いや、あの、友達っていうのは語弊があったな。友達みたいなっていうか、知り合いっていうか」

女「友達でいいじゃない」

男「いや、人間は嫌いだ」

女「ほんきで人間に心を開くのが怖いの? だから心を閉ざすの?」

寝て起きたらまた来ます

おはよう
起きて

男「俺の過去の話は全部知ってるのか」

女「うん。大体聞いたよ。君は最低だって思った」

男「そっかり俺はあのとき最低なことをした。それは時間が経ったいまでも変わらない」

女「君は仲間を裏切った。人を使って、仲間と女Aさんに暴力をふるわせた」

男「……」

女「本当に最低だし、そんなことしておいてよく普通に生活できるよね」

男「……」

女「でも……。でも本当にそれだけで君の過去の話は終わり?」

男はハッとした。自分の心をまるで見透かされているようだった。

男「どういうことだ。だから俺はあいつらに心の底から嫌われている。それだけだよ」

女「私の目に映る君は、もっと綺麗な心をしているよ。それに、君は言ったよね。人間に裏切られたから、人間に聞き入れてもらえなかったから、って。その意味は? その話だと君だけが一方的に悪いようにしか聞こえないよ」

男「……」

次第に辺りの街灯がぽつりぽつりと明かりを灯し始めた。依然として公園は閑散としていた。

女「……」

男「……わりぃな。今日は帰る」

どこか悔しそうにも見える女を後にして、男はゆっくりと帰路についた。去り際に女を一瞥したが、そこから動く様子は見られなかった。

その日からの夏休みは特に変わり映えのないものだった。女が男の家に訪れることもなかった。迫ってくる新学期に向けて、積もりに積もっている課題を消費することが、男の夏休みの過ごし方であった。無心で作業を行うことによって、自分への嫌悪や葛藤を紛らわすことができたし、現実から遠ざかれるような気がした。
生き生きと緑の外装に光沢を放っていた葉は、秋を感じさせる色合いへと衣替えを始め、長いようで短い夏休みはとうとう終わりを迎えた。肌寒い風を肌で感じながら、高校生はせっせと学校に通い始めた。

女「やあ。この前会ったときは煮えるんじゃないかってくらい暑かったのに、気づいたらもう肌寒くなってきたねー」

女だ。あの一夏の思い出以来、男は一度も顔を合わせていなかったが、家が隣なので嫌でも登校途中に遭遇するのだ。

男「よう。久しぶりだななんか。ちょっと寒いかも」

女「宿題終わったー? 私終わってないんだけど」

男「もちろん。終わってないのにそんなに嬉しそうに言うな。怒られるぞ」

女「えー。男君手伝ってよ、あとちょっとで終わるからさー」

男「むり。ていうかもう今日提出だろーが」



男はほっとした。あの日以来一度も顔を合わせてなかったし、あの日の別れ方はなんとなく尾を引きそうだったが、思っていたよりも自然に女と会話ができたからだ。こころなしか、女もそのことで満足気な表情をしている気がした。

男「学校近づいてきたら、俺から離れろよな。男Aが心配するぞ」

女「うん……」

男「なぁ」

女「んー?」

男「夏休みは、どうだった? 楽しかったか」

女はどうしたの、と吹き出した。なにかおかしかっただろうか、と男は思った。

男「いや、笑う要素なかったろ」

女「なんかさ、ぎこちなさすぎて面白かった。男君が、私と進んで会話しようとしてくれる」

女はふふっと笑った。

男「別にそういうわけじゃないし」

女「はいはい、そういうわけじゃないですよねー」

男「なんか腹立つ」

女「短気。ちなみにだけど、夏休みは楽しかったよ! 一ヶ月しかないから、これでもかってくらい友達と遊んだから!」

男「俺に対する当てつけかなにかかな」

女「ひねくれ者」

男「うるさい」

女「男君ちょっと楽しそう。なんか私も楽しい」

男「楽しくない」

女「あっそ。素直じゃない」

男「学校ついた。離れな」

女「ん……」

登校の時の女との会話以外、その日学校で男が誰かと会話することはなかった。女も気を使ってか、学校にいるときは話しかけて来なかった。
放課後、下駄箱をあとにしようとした時に、男は後ろから呼び止められた。男A、男B、女Aの三人が横に並ぶようにして佇んでいた。

男「ど、どうしたんだ」

男A「ちょっと面かせよ」

この三人とは、小学生の頃から知り合いである。それだけでなく、例の一件があるまでは中学生になっても毎日のように一緒にいたような仲だった。この中の誰かに会うだけで気分が良かったし、高揚感があった。なにをするわけでもないような遊びでも、四人ならなんでも楽しく感じた。生涯手放したくない仲間たちだと、男は心の底から思っていた。しかし、今は顔を合わせるだけで、自己嫌悪感といたたまれない気持ちで胸が張り裂けそうになる。本音を言ってしまえば、会いたくないという素直な表現が正しいだろう。
四人とも無言のまま足だけが動き続けていた。無心で歩みを進めていると、辺りは見覚えのある景色になっていた。幽霊公園の目の前だった。

昔は、どんなに真面目な話をするときもどんな遊びをするときでもここに集まっていた。この幽霊公園に足を運ぶたびに、男の脳裏には過去の思い出がくっついて離れなくなる。
四人とも口を開かないままベンチに腰をかけた。

男B「俺たちさー、男と話がしたくてさ。ずっとお前と話したいことがあったんだよ。中学生2年生の冬から、俺たちの時間だけとまってただろ」

男Bが重い口を開いた。
それにつられるように男A、女Aも続けた。

男A「あんとき、お前はごめんしか言わなかった。俺たちはあの頃からなにも知らないままだ」

女A「男が考えてることなにもわからなかった。いまもだよ」

男「……」

全てを話せば、自分は解き放たれるのだろうか、三人は納得するのだろうか。何から話せば良いのか、どんな言葉を紡いだらいいのか、不意に男の頭の中は整理が追いつかなくなっていた。

男A「なぁ! 黙ってないで俺らに話せよ、お前のこと」

男B「俺は未だに信じられないんだよ、お前がいきなりあんなことするなんて」

女A「私も、納得いかないよ……」

男B「あんなことしただけじゃなくて、なんかお前自身も変わっちゃったよな。なにがあったのか俺は知りたい。全部を教えてくれよ」

男A「最近までお前とは縁を切ったつもりでいた。でも、俺はお前を昔から知ってる。男ってやつは優しいんだよ、俺の中では」

女「私もそう思う。だから、だからこそ男がよくわからないよ」

何度も。何度も何度も男は全てをこの三人に伝えようとした。だが、毎度言葉を発しようとすると、恐怖に支配されてしまう。自分が置かれている状況、ある人間の存在に怯えてしまうのだ。中学二年生からいままで、男は謝罪以外の言葉を口にしたことはなかった。

男「俺は……。俺は弱い人間だから……」

男B「それはどういうことだ?」

男「昔の俺は誰にでもいい顔してたから、それが全ての災いなんだ」

男A「どういうことなのかさっぱりわかんねぇ。もっと具体的に話してくれ」

男「これ以上は話せない。全員が危険になるから」

女A「……わかんないよ。なんにも……」

男「ごめん……」

男はその場を後にした。呼び止める者は誰一人としていなかった。

一旦切ります

早く書いてくれよ

その日はなぜだか家にすぐ帰るのも嫌で、コンビニを転々として日が暮れるまで時間を潰した。
少し前までの猛暑が信じられないくらいの涼しさ、消えていく湿気、そして澄んだ空気。空を見上げれば、曇り一つない空に星が広がっている。空気が澄んでいるおかげか、空が高く見える。
男は、自宅の前の道が昔からひどく嫌いである。なぜなら、その道だけ街灯がすくなく、夜になると視界が悪いので、なんとなく不吉な予感がしてしまうからだ。いままで特に何かあったことはないが、基本的に怖がりな男としてはそれだけでも十分な理由だった。その道に差し掛かった時、少し先に人影があるように見えた。

男(なんだろ。本当に幽霊とかだったらどうしよう)

怖いもの見たさでそこに佇む人影を男は見つめた。そして、一歩一歩刻むように距離を縮めていった。
--おかえり
突然人影が声を発した。男咄嗟に少し身を引いた。何事だろうと思い、様子を伺った。

女「そんなに怖がらなくてもいいんじゃないかな」

男「な、なんだ女か。そういえばお前家近かったもんな。焦ったわ、幽霊とかだったら終わりだなって思った」

突拍子もないことを言いながらも、本心から安堵している様子の男を見て、女は腹を抱えて笑った。

女「君は面白いね。そう思ったのはこの道の灯りが少なくてちょっと怖い感じだから?」

小馬鹿にしたように女が尋ねる。

男「そうだよ。わりぃか。大体この道に街灯を設置しないのが悪いと思わないか? そりゃ夜にこんなところに人影が見えたらびっくりするわ」

女「誰に怒ってんの一体。夜って言ってもまだ十時だよ。丑三つ時ですらないよ。男君は意外と怖がりだね」

男「うるさい。ていうか、なんでお前はこんなところに突っ立ってたんだ?」

女「君の帰りを待ってたんだよ、男君」

女はなぜだか得意げな顔でにやりと笑った。

男「待ってた、って……。俺が帰る時間なんてわかんないのによく待ってたな。それなら自分の家で待ってればよかったのに」

女「うーん。確かにほとんど君の家と隣の家だから、それもできた。でもね、なんか今日帰ってくる君にすぐに伝えたいことがあったんだ」

男「伝えたいこと? ってなんだ」

きっと女は、俺が放課後普通に帰ってくると思ってその時間から待っていた。単純に計算すると五時間は待っていたことになる。もちろん食事の際は家に戻ったのだろうが、それにしても長時間だ。

女「うん、それはね。--あっ、まって」

女は大事なことを忘れていたと言わんばかりの顔をした。そして続けた。

女「いまから私が君に伝えることは、心を無にして聞いてほしいんだ。君の心が開かないとか、私が人間に手を差し伸べるとか、そういうことは何も考えないで、純粋に聞いてほしい」

女があまりにも男のことを真摯に見つめながら話すので、なんとなく圧倒されてしまった。

男「わ、わかった。んで、なんだ」

暫しの沈黙が続いた。女はかなり緊張しているようだった。男も女が口を開くのを促すわけでもなかった。
--話せるようになったらでいいよ。と言うと男は空を見上げた。ずっと前しか向けない人間は、この星空を見ることができないんだろうなと思った。冬になれば、もっと綺麗で研ぎ澄まされた満天の星空をみることができる。この道で前ばかり向いていたら、一生涯空の世界に広がる何億以上もの光を拝むことができないのだろう。

女「私ね」

女が口を切った。話す気になったのだろう。目の前に居る女は、いつもの彼女より少し堅苦しいように見えた。そして、月と星に照らされている彼女は、いつもの彼女より幾分も綺麗に見えた。

女「私は男君、君が好きだ」

男「えっ。それはどういう--」

女「どういうもこういうもないよ。君に異性としての好意を抱いているってことだよ」

真っ直ぐぶれることなく男の両眼を見つめながら女は言った。男は、気が動転してしまって言葉の返し方がわからなくなっていた。

女「君は私の事を友達と言ってくれたね。ある程度は私に心を開いてくれたのかな、って思った。その時にはもう君を好きだった。友達じゃなくて恋人になれたらな、なんて思ってたよ」

男「なんていったらいいのかわからない……。強いて言うなら、女みたいな容姿的にも内面的にも異性から人気がありそうな奴が、どうしてこんな陰気くさい男を選ぶのかってくらいだ」

女「君は自分に自信がなさすぎるよ」

男「昔はあったけど、痛い目みたから」

女「そっか。君の心は人を惹きつけるんだよ、男君。私もその中の一人」

男「なんだそれ、他にもいっぱいいるみたいな言い回しだな」

女「いるよ、きっと。男君はそういう人だと思ってる」

男「わかったようなこと言うな」

女「君が思ってるよりも、私は男君のこと知ってるよ。たくさん」

男「……いまのお前の言葉には、なんの?いつわりもないんだっけか」

女「うん。そうだよ。私は君のことが好きだから恋人になりたいっていう言葉を素直に伝えたいだけだから」

男「そうか。返事はまた明日でもいいか? 一晩考えさせてほしい」

女「いいよ。まってる。じゃあおやすみ」

安心した反面、少し残念そうにも見える女を見送ったあと、男も自宅へと帰った。
女に想いを話された時、どこか懐かしい感じがした。というよりは、朧な遠い過去の記憶をうっすらと思い出すような感じがした。

次の日、男は学校に行くのが少し憂鬱だった。女と顔をあわせるのが少し気まずい、と思った。それに、男Aたちとも会うのが億劫だった。とは言っても、時間とは止まってはくれないもので、そんなことを考えているうちに教室まで足を運んでいた。

男(女、まだ来てないな……。具合悪いのかな)

その日結局女は学校を欠席した。自分せいかもしれない、と男は自分を責めた。

男(女の家寄ってみるか)

放課後、女の家のチャイムを鳴らすとすぐに本人が玄関から顔を出した。

男「よう。今日なにしてたんだよ」

女「昨日なかなか寝れなくて、起きたら夕方だった」

女の顔をよくみると、目が腫れているのがわかった。

男「そうか。泣いてたのか?」

女「うん……。なんとなくセンチメンタルになっちゃってさ。こんな顔だし学校行きたくなかったのもあるかも」

男「そうか……」

女「私ね、憧れの人を、人生に光をくれた人を探してこっちに戻ってきたの」

男「そうなのか。そいつは見つかったのか」

女「ううん。見つからない。追い求めて生活していくうちに、彼への恩返しをしようとしているうちに、今の君を好きになってた。未完成で不安定な君にたまらなく惹かれてた」

男「……」

女「返事はわかってる。君の返事は……。でも、それは終わりってことじゃない。そうだよね?」

男「俺は……俺という人間をお前に押し付けることができない」

女「だから!! だから、私に今の君を教えてよ!! やるべきことがあるんでしょ!?」

感情を曝け出す女を見て、男は胸が熱くなった。殻に閉じこもっている自分を跡形もなく消し去りたくなった。差し出された手を、掴んでしまおうと思った。

男「手を、掴んでもいいのかな……」

女「もちろん。私はいつだって手を伸ばすよ。ずっと奥の方にいる君に。何度だって伸ばすよ」

男の頬を一筋の涙が伝った。感情というのは不思議なもので、本人の意思とは関係なく昂ぶったり沈んだりするのだ。人は失敗をするたびに感情に殻をかぶせ、自分に従わせようとする。そうしていくうちに、心に光が足りなくなってしまう。

男「お前は、俺を照らしてくれるな、いつも」

女「全部吐き出して、弱音言って、私に君を照らさせてよ」

男「わかった……」

黄昏の時間、夕日は水平線の向こうへ姿を消し始め、世界は光と闇の絶妙なバランスを取り始めた。校舎の屋上に三人の影は、次第に景色に溶け込んできている。

男A「……もうさ、腹割ってみんなで話して全部終わらせようぜ」

男B「なんの話かよくわかんない」

女A「……」

男A「俺はずっと男を最低な奴だとばっかり思ってた。でも、女さんが言うんだよ。どんなにあいつのことを否定しようとしても、あの子は男を信じ続けてる」

男B「女ちゃんか……。昔とずいぶん変わったよな。初めて俺らと会った時は、もっと暗い雰囲気だったのに」

女A「きっかけは覚えてないけど、女ちゃんは変わったよね。あの子が変わったくらいから、ずっと私たち五人で遊んでたね」

男A「そうだな。男はなぜだかあの子のことを覚えてない。でも女さんは変わっちまった男に手を差し伸べ続けてる」

男B「それを裏切る訳にはいかない、か」

女A「男くんがいないと、私たちはいつまでたっても満たされ切らないと思うよ、私も」

男は、自分の過去を振り返りながら、一つ一つ語り始めた。

男「あの頃の俺は、八方美人で誰に対しても同じような態度で接してた。誰とでも仲良くなりたいし、それが楽しいことだと思っていた。それを気に入らなかったのか、中学二年生のとき、クラスメイトの女にはっきり言われた。お前のことが嫌いだと」

女「女Bさんのことだね」

男「お、お前なんでっ」

女「続けて」

男「それから、俺とつるんでるやつへの嫌がらせが始まった。本人は手を下さず、人間を使い、決してターゲットの俺に直接は何もしてこない卑劣なやり方だ」

女「だから君は決心した」

男「そうだ。嫌がらせをするなら俺本人にしろ、とあいつに直接話をした。その直後から嫌がらせの対象は俺に変わった。でも、あいつはそれだけじゃ飽き足らず、ついに俺に脅しをかけてきた。卑劣な脅しだ」

女「不良集団を引き連れて、お前が半殺しにされるか、仲間が半殺しにされるのどっちがいい、と。でも君は前者を選んだ。仲間を守ったんだ。結果は両方決行。男の子二人は病院送り、女Aさんはレイプ未遂。君が仲間を売ったことにされて、余計なこと話したら次は殺すとまで脅された」

男「なんでお前そこまで知ってんだ……?」

またきます

早く書いてくれよ

女「ねぇ男君。私は君のことをずっと昔から知ってる」

男君「……?」

女「覚えてないかな。昔よく五人で遊んだこと。君たち四人と一緒に私も居たこと」

男は、夢で見た光景を思い出した。夢で見た幼い五人とは、彼女を含めた自分たちの姿だったのだ。

男「なんとなく……覚えてる。幸せだったのも覚えてる」

女「私もだよ男君。私がこの町に戻ってきた理由は、憧れの人に会うためだった。私の人生を変えてくれた人に会うため。もちろん、昔の仲間に会うのも楽しみだったよ」

男「会えたのか」

女「ううん。その人はもうこの町にはいなかった。あの人がしたように、私も人に手を差し伸べることにしたの。そうすればいつか会える気がして」

男「会えるかもしれないな」

女「うん……。最初にここへ戻ってきた時、君たちの関係に驚かされたよ。男A君に話を聞いた直後から、毎日たくさんの人に協力してもらって君たちの中学時代の話を全部聞いた」

男「そうだったのか……」

女「全てを知りながらも君たちを黙って見てるのはとても辛かったよ。何度も助けてあげたいって思った。でも君たち本人が変わり始めることに意味があると思ってて、だからこそなにも手出ししなかった。ーー今は、全てを終わらせることができる」

男君「全てを終わらせる?」

女「うん。君たちの仲を元どおりにして、女Bも君の前から消す」

男「そんなこと、できるのか」

女「できるよ。やろうと思えば人生なんだって」

男「お前は一体なにものなんだろう」

女「さぁね。とりあえず、君の過去を終わらせたらさ、私の恋人になってほしいな」

男「考えておくよ」

女「釣れないなぁ。明日にでもみんなに本当の過去を話そうよ男君」

男「で、でもそれを話したらあいつらが危険にさらされる心配がある」

女「男君。人を使おうとする人間に、私は負けないよ」

力強い視線が、男の眉間を貫いた。

女「誓って。立ち向かうって」

言葉の力は偉大なものだと、常々男は感じている。言葉一つで人間を操ることも、励ますことも、楽しませることも、そして一つの人格を殺すことさえできてしまう。

男「……誓う。俺は全てに立ち向かう」

女「君は自分の人格を否定され、そして人間と接することすら億劫になったんだね。言葉人を殺せるけど、言葉はそれを呼び戻すことすらできるんだよ、男君」

男「……難しい話をするよな、お前」

女「そんなことないよ。言い方は違うけど、小学生の時に聞いた話をしてるだけ」

男「そうなのか。とても人間できた少年だな。俺とは真逆だ」

女「そうだね。君とは真逆。もしその人にあったら君はどうなるんだろうね」

男「どうだろうな」

その日の夜は安心しすぎたせいか、風呂にも入らず熟睡してしまった。彼女は何者なんだろう、とか彼女の過去の話を聞いてみたい、とかは考えたがすぐに意識が飛んでしまった。
次の日の放課後、男達は幽霊公園に集まった。

男A「なーんか、懐かしいなここで五人でこうして集まること自体」

女A「そうだね、全然なかったもんね」

男B「全部話してくれる気になったの。男」

男「うん。俺はお前らに言わなきゃいけないことがあったんだ」

女「男君は、優しい人だったよみんな」

またきますね

舞ってる

男は三人に全てを語った。女Bを恐れて何も話すことができなかったこと、無力な自分にどれだけ腹が立ったか。

男「俺は……。俺は、あの頃の自分に戻るのが怖いんだ」

女A「怖いって……」

男「また、あの頃みたいな悲劇が起こるんじゃないかと思ってしまうんだ。誰にでもいい顔する俺は、また誰かの恨みを買ってみんなを傷つけてしまうと」

男A「お前は、あの頃もいまも俺たちを頼れよ!! 俺たちは家族同然で、助け合うのが当たり前なんじゃねぇの!?」

男B「そうだよ、俺たちの誰かが間違えたら、俺たちみんなで助け合うべきだ」

女A「もっと私たちを信頼してほしいな」

男「みんな……」

女「男君、人の絆は美しいよ」

男「……」

女「さて男君。君はどうしたい?」

男「……昔に戻りたい。でも、女Bが」

女「大丈夫。私がなんとかするよ」

男「なんとかってどうやって……」

女「私は人間が好き。人間と関わるのが楽しくってしょうがない。だから、顔は広い方だよ」

男「どういう……」

それから程なくして、女Bは男を見かけても避けるようになった。女がどうにかしたのだろうか。噂によると女は暴走族のリーダーだとかなんだとか。

男「お前どうやったんだ」

女「人に色々手伝ってもらっただけだよ」

男「なんか恐ろしいなお前は」

女「そうかな、ところでどう最近は」

男「そうだなー。仲間は素晴らしいし、人間には女Bみたいなクソ人間もいるけど、たくさん良い人がいる。俺は全部含めて人間がやっぱり好きだ。昔に段々と自分が戻ってる感じがする」

女「そっか。人間は素晴らしい。陳腐な表現だけど、人は人なしでは生きられないと思うんだ」

男「そうだな。お前の言葉を借りるなら、絆は美しい」

女はふふっと微笑んだ。

女「その言葉は、君から貰った言葉なんだよ、男君」

男「え、どういうことだ」

女「君は覚えていないかもしれないね。初めて私が君たちにあった時のこと。ほかのみんなは覚えてたけどね。それだけ君にとっては当たり前のことだったんだろうね」

男「なんだそれ」

女「前に言ったでしょ? 私は暗くて、どうしようもないやつだったて。小学生の私と君たちを繋げるために男君、君はがむしゃらに頑張っていたんだよ。毎日毎日遊びに誘ってくれたね、いつもいつも声をかけてくれたね、諦めないで人間の楽しさを教えてくれたね。君は小学生ながらに精一杯人間に興味を惹かれるような言葉を私にくれた。その中で一番心に残ってるのが、人間の絆は美しいって言葉。ませた小学生だよね」

男「そんなこといったっけか……」

女「うん。確かに覚えてるよ。男君いまさらだけど、私に人というものを教えてくれてありがとう」

男「い、いやべつにそんな……。俺は逆にお前に助けられたしな」

女「昔の君が一番だからね」

男はにやりと笑った。

男「そっか」



女「やっと会えた。私の憧れだった人。やっとこうして目の前にいる」



男「?? 憧れの人とは会えなかったって……」

女「戻ってきたじゃない。過去から今に。恐怖に打ち勝って」

男「そういうことか……。なんか照れくさい話だな」

女「ところで男君。私の恋人になってくれるのかな」

男「喜んで」

女「やったぁ!」

男「素直だなお前は」

女「まぁね。あと、女Aさんのこと……」

男「わかってる。リハビリじゃないけどやってこうと思ってる。あいつの傷が癒えたら全部終わりになる」

女「君は優しいね。女Bに罰を与えようとはしないんだね。私に言ってくれればなんでもできるのになぁ」

男「恐ろしいなお前は。でも、そういうことがしたいわけじゃないんだ俺は」

女「さすが男君だね」

男「なんだそれ」

女は男を見つめて言った。

女「男君、今の君を教えてよ」


男「今の俺は……本当の俺だ」



おしまいです。短い物語書きたいなって思っていきなり始めちゃったんでクオリティはお察しですね

男「お前と幼馴染だったらよかった」http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1472582955

よかったら読んでいただけると嬉しいです

ではありがとうございました!

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