兵士1「暇だなー」兵士2「そーっすねぇ」 (45)

兵士1「剣と魔法が飛び交う戦争も、とっくの昔に終わっちまってよぉ」

兵士2「結局俺らは前線に駆り出されずにいつも通り極地の町の警備でしたしね。まぁいいことですよ」

兵士1「命あっての物種だからな。そのおかげか出世の機会も無いけどな」

兵士2「ハッハッハ」

兵士1「ハッハッハ」

兵士2「……ハァ」

兵士1「暇だな……」

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兵士1「どうだい若造、一杯やるか?」

兵士2「いいっすねぇ、昼間からお酒」

兵士1「平和でのどかな町の醍醐味だ。こうやって堂々とサボれるんだからな」

兵士2「犯罪も無ければ揉め事も無い」

兵士1「オマケに視察も来やしない」

兵士2「いい町ですねぇ」

兵士1「世界中ここみたいになっちまえば戦争なんてせずに済むのにねぇ」

兵士2「ですねぇ」

兵士1「……何人くらい死んだんだろうな」

兵士2「戦争でですか?」

兵士1「そうだ。もう終戦を迎えて3年が経つってのにさ、国の中心部はまだ復興作業を必要としている場所があるんだと」

兵士2「もし人手不足で復興が遅れているのだったら、沢山死んだんでしょうね」

兵士1「沢山死んだんだろうなぁ」

兵士2「嫌ですね、戦争って」

兵士1「だというのに、こんな昼間から酒を飲んでいる自分も嫌になる」

兵士2「止めればいいじゃないっすか」

兵士1「止められねぇのが長年染みついた習慣ってやつよ」

兵士2「長年サボり続けてたんですね」

兵士1「だがよ若造、もし人手不足って言うのなら、俺たちが召集されないのは可笑しな話じゃないのか?」

兵士2「そうですね、きっと人手は足りているのに指示を出すヒトがあまり仕事出来ないって感じなんじゃないですか?」

兵士1「官僚なんかにありがちだわな……無能な癖に到底無理難題を下に押し付けてくる」

兵士2「下の人間の気持ちもわかりゃしない」

兵士1「そういう奴に限ってエリート街道渡ってきたか」

兵士2「コネにコネを重ねて上ってきたか」

兵士1「俺たち兵士にゃ成り上がる力も伝手もねぇ」

兵士2「不公平ですねぇ」

兵士1「不公平だねぇ」

兵士2「こうして極地に勤務している俺たちの扱いも」

兵士1「決していい物とは言えねぇなぁ」

兵士2「実家に帰りたい」

兵士1「家族に会いたい」

兵士2「それでも仕事がある」

兵士1「こんなド田舎に押し込めて」

兵士2「かといって毎日同じこと。碌に変化もありゃしない」

兵士1「そこに安月給と来たもんだ」

兵士2「ま、楽は出来てるんですけどね」

兵士1「それを言っちゃあ泣き寝入りよ」

兵士1「嫌な上司に頭下げて」

兵士2「言いたいことも言えなくて」

兵士1「ストレス溜めては酒で発散」

兵士2「身体に悪いっすねぇ」

兵士1「早死にするかもな……へへ」


ガチャ


兵士1「お、誰だいこんなところへ」

兵士2「一般人は立ち入り禁止だよ」


側近「言い御身分ですね。こんな時間から我が国への不満を肴にお酒とは」


兵士1「」

兵士2「」

兵士1「あ、あああああ、貴女様は!?」

兵士2「し、失礼しました!!えっと……魔お……じゃなくて……」

側近「王国軍第一精鋭特殊部隊隊長兼国王補佐官……面倒なので側近でいいです」

兵士1「な、なぜそのようなお方がこんな辺鄙な場所に……?」

側近「……視察です。ウチの領土を見て回ることに何か不都合でも?」

兵士1「いえいえいえ!滅相もございません!!」

側近「よろしい、ですが減給は覚悟しておいてください」

兵士2「ええ!?」

側近「理由、私の口から言わせたいのですか?」

兵士1「は、反逆の意思はありません!これっぽっちもありません!国王バンザーイ!!」

側近「そっちじゃないです。勤務中の飲酒の方です」

兵士2「あ、何だ……」

兵士1「ホッ……」

側近「貴方たちが処罰を求めるのなら、今の発言全てに罪に問う事も出来ますが」

兵士2「申し訳ありませんでした!!」

兵士1「心を入れ替えて、警備に当たります!」

側近「現金ですね」

側近「愚痴を零すのは結構、しかし自分たちの立場を弁えた上での発言をしてください」

兵士1「は、はぁ……」

兵士2「あの……どこから聞いてたんですか?」

側近「……最後辺りですね」

兵士1(大したことは……)

兵士2(言ってないな)

側近「……」

側近「……必ずしも末端の貴方たちに無理を押し付けている訳ではありません」

側近「出来る事を可能な限りで……と、いう風にこちらも指示を出しているつもりですが」

側近「それが出来ない事ならば、貴方たちの努力が足りないか、それとも指示を出す人間が無能なのか……」

側近「ま、その時直接見てみなければ分からない事ですね」

兵士1(あれ……?)

兵士2(全部聞かれてた?)

側近「それでは私は失礼します。他の兵の様子も見なければいけないので、あと探し"者"と……」

兵士1「ハッ!それではお見送りを」

側近「結構です。飲んだくれの見送りは特に」

兵士2「ハッ!失礼しました!」

側近「それでは……」



兵士1「行ったか」

兵士2「行きましたね」

兵士1「怖い怖い」

兵士2「抜き打ちで城から視察が来るなんて思いもしませんでしたからね」

兵士1「ここは今まで連中が気にもかけなかった場所なのにな。驚きだ」

兵士2「それもナンバー2がですよ。しかも一人で」

兵士1「ひょっとしたらお忍びかもな」

兵士2「ははは、そんなまさか」

兵士1「税金使ってひっそり遊びほうけているかもしれないぜ?」

兵士2「それは俺たちも同じようなものですよ」

兵士1「おっと、税金泥棒なんて言われたくはないな。しっかり仕事しなきゃな、仕事」

兵士2「酒飲みながらよく言いますよ、俺もですけど」

兵士1「結局のところ、国が巻き上げた金は俺たちの給料以外にどこに消えているか分からねぇんだ」

兵士2「不思議ですよねぇ。何に使っているか分からないお金があるって」

兵士1「で、変なところでどこから出たんだその金は……ってのもあるからな」

兵士2「あんな可愛い見た目して、俺たちのお金を無駄に使ったり行方知らずにしたりしてるってのを考えると」

兵士1「えげつねぇなぁ。見た目が俺んとこの娘と大体一緒くらいだってのによ」

兵士2「側近さんって歳いくつなんでしょうね」

兵士1「俺はこの国で生まれ育ったが……30年くらい前から見た目変わってないよ。ひょっとしたらもっと前からかもしれないが」

兵士2「俺生まれてないじゃないっすか、それ」

兵士1「何にせよ、胡散臭い連中の集まりってこった。国のトップってのはよ」

兵士2「今お城勤めの人達ってほとんど英雄扱いみたいなことになってますよね」

兵士1「戦争で功績を残したか何だか知らないが、その手の話だって眉唾ものだな」

兵士2「よくありますよね、政治家で"私はこれをこうやった実績があります"っての」

兵士1「知らねぇよンなもんって声を荒げて言いたいな」

兵士2「自分のキャリアに箔を付けたいがために色々と無駄な事をしたりするんでしょうねぇ」

兵士1「それがさっきの税金の話に繋がってくるって訳だ。ま、ウチの国はどうなのかはわかったもんじゃねえが」

兵士2「散々文句垂れた後ですけど、ウチはまだマシなんじゃないっすかねぇ」

兵士1「戦争やってる時点でマシってのは無いと思うけどな」

兵士1「兵士兵隊ってのは戦ってナンボ。お国の為に命落とすのが仕事みたいなもんさね」

兵士2「俺たちみたいな辺境に飛ばされている連中はともかく」

兵士1「王都勤務と戦地近くの奴らは気の毒だな」

兵士2「それが仕事ですからねぇ」

兵士1「覚悟してこの職を選んだんだ、いざとなりゃ俺だって命は賭けれるさ。その機会がないだけでな」

兵士2「口だけじゃないことを祈ってますよ。俺は給料いいから選んだだけですけど」

兵士1「さっきは俺が安月給って言っちまったが」

兵士2「他と比べりゃ遥かにマシですよ」

兵士1「命の値段としちゃ安すぎるよ」

兵士2「そういえば、戦争をしないと決め込んだ国が戦地へ兵を派遣する、なんて話がありましたね」

兵士1「知ってる。残酷だねぇ、何も経験のない連中をポイと送り込むなんて」

兵士2「必要な事だとわかっていても」

兵士1「割り切ることなんて出来やしない」

兵士2「知らぬふりして見て見ぬふりもする、って出来ないんですかね」

兵士1「出来やしねぇさ。だから首を縦に振らざるを得ない、従わなきゃいけねぇ」

兵士2「自分の子供を戦地に送る……国が決めた事と割り切って出来ますか?」

兵士1「……無理だな俺は。泣きついて止める」

兵士2「危機感持たなきゃいけないけれど」

兵士1「今と昔じゃ話は違う……根本はそういう話じゃないけど、難しいねぇ」

兵士2「難しいですね」

トントン


兵士1「おっと」

兵士2「また誰か来ましたね。お酒、隠します?」

兵士1「いいよ、どうせ近所の飲んだくれが一緒に飲みに来たんだろ。開いてるから勝手に入ってきてくれー」


ガチャ

総隊長「あいよ」


兵士1「」

兵士2「」

総隊長「楽しそうにやってんなぁお前ら。昼間から酒とは」

兵士1「あ、あああああ貴方様は!?」

総隊長「王国軍第二突撃部隊隊長兼王国軍総隊長……これ空で覚えてる奴あんまりいないだろ、呼び方は何でもいいよ」

兵士2「な、なぜここに!?」

総隊長「なんでってそりゃ……えっと、アレだ!視察だよ視察」

兵士1「側近様といい総隊長といい……」

兵士2「珍客が多いっすねぇ」

総隊長「あー、側近もここに来てたか。ってことはハズレか」

兵士2「ハズレ?」

総隊長「あ、いやいや!こっちの話だ!気にすんな!」

兵士1「あ、あの……」

総隊長「ま、酒飲んでるってのは別に目を瞑ってやるよ。俺もたまにやるし、側近にもう咎められたんだろう?」

兵士2「ええまぁ」

総隊長「……」

兵士1「ほ、他に何か……?」

総隊長「国民ってのは国の宝だ、決して上は何も考えずに無下に扱っている訳じゃねぇ」

総隊長「失われていい命なんてない……兵士だってそうだ。死地に赴く連中に死んで来い、なんて言えるわけないだろ。例えそうであったとしても……」

兵士1「……」

兵士2「……」

総隊長「ウチの国の兵は志願制だ。無理な徴兵だけはしないようにと、先代と先々代の王が念を押していたからな」

総隊長「そんなんでよく戦争に勝てたなと思うよ、ホント」

総隊長「徴兵制の所は、逃げ出す事も出来ず向かうしかなかったと考えると……どうもいたたまれんな。他人事のように言うがよ」

総隊長「……幸い、戦時中は俺の部隊から脱走兵が出なかった。部下に恵まれたと思うよ……その分、死なせちまった仲間も一番多かった」

総隊長「決して何も思わない事なんてないんだ。決断を下さなきゃいけない人間のことも、少しは分かってくれ」

総隊長「ま、そーんな事を考えてるのはウチの国に限った事かもしれんけどな!他の国のことなんざ知ったこっちゃねぇ!ニヒヒ!」

兵士1「はぁ」

総隊長「それじゃあ俺は行くぞ。サボりも程ほどにな。もし咎められないか気になるのなら今度俺の部隊宛てに酒でも送ってくれや。じゃあな!」

総隊長「あー、どこ行ったんだウチのバカは……」


兵士1「行ったな」

兵士2「行きましたね」

兵士2「噂には聞いていましたけど、結構サバサバした人なんですね」

兵士1「あれでもウチの軍で一番強いらしいぞ」

兵士2「初めて話す人間に対してもああいったフランクな口調なんすね」

兵士1「心に余裕があるのかねぇ」

兵士2「どうっすかねぇ」

兵士1「しかし、どうも年下の上司ってなると複雑な気分だな」

兵士2「え、総隊長ってあなたより年下なんすか?」

兵士1「あの人リザードマンだから、俺らからしたら見た目で年齢分からないからなぁ。確かお前と歳が同じくらいじゃなかったか」

兵士2「うわ……同年代の上司ってのも変な感じですね」

兵士1「キャリアの違いを見せつけられるようで嫌だな」

兵士2「でも、ああいう人が直属の上司ならまだやりがいがありますよね」

兵士1「そうそう、俺らの部隊の上司なんて見てみろっての」

兵士2「ガッチガチの分からず屋」

兵士1「人のミスは指摘する癖に」

兵士2「自分のミスを指摘されれば知らぬふり」

兵士1「コミニュケーション取ろうにも話しかけづらいし性格だし」

兵士2「共通の話題も無し。自分の都合のいい時だけ何か話す」

兵士1「その分こちらの話題振りには無反応」

兵士2「頭でっかちなんっすよねぇ」

兵士1「優秀なのは認めるけどな」

兵士2「誰もかれもが仲良くなれる、なーんて思いませんけどね」

兵士1「必要以外なら、こうして話の合う奴と酒が飲めればそれでいいんだけどな」

兵士2「照れますねぇ先輩」

兵士1「毎度毎度奢ってやってるんだ、話に付き合ってくれなきゃ泣いちまうぞ?」

兵士2「俺はいつだってお付き合いしますよ」

兵士1「嬉しい事言ってくれるねぇ」

兵士2「そうしてればずっとただ酒飲めますから」

兵士1「ああ、そう言うと思ったよ馬鹿野郎」

兵士2「打算的なのも人付き合いでは必要な事っすよ」

兵士1「そういえば、戦争が終わった後に国のトップが変わったって話もあったが」

兵士2「先代の息子さんが王になったんでしたっけねぇ。側近様や総隊長は顔を知ってますけどそっちは見た事も無いです」

兵士1「雲の上の存在なんて興味ないからなぁ」

兵士2「国に仕える身としては知ってなくちゃいけないんですけどねぇ」

兵士1「世襲制なのかね、ウチの国は」

兵士2「そうでは無いって話は聞きますけどね。側近様が次の国王の候補に挙がってるくらいでしたから」

兵士1「確かその話は蹴ったんだっけか」

兵士2「ナンバー1よりナンバー2派なんでしょうね」

兵士1「偉くなればなるほど面倒になるしな」

兵士2「さっきまで上に対して愚痴零してた人の発言とは思えませんね」

兵士1「ばっか、実際自分が上に立ってみろ、面倒事しかねぇっての」

兵士1「それは適任がやるべきなんだよ。俺たち一兵はおとなしくしていればいいんだ」

兵士2「そしてストレスを溜めこんで」

兵士1「また酒を浴びるっと」

兵士2「実際、国の頂点って何を考えて生きてるんでしょうね」

兵士1「俺たちが普段考えない事だろ」

兵士2「例えば?」

兵士1「例えば……何なんだろうな」

兵士2「何なんでしょうね」

ドンドン

「誰か、誰かいるか?」


兵士1「おっと、またしてもお客さんだ」

兵士2「まさか今度は第三部隊の隊長が来たりしませんよね」

兵士1「すっげぇ美人のエルフだから一度は間近で見てみたいな」

兵士2「一度だけあった合同訓練で遠くから見たっきりですからねぇ」


「誰 も い ね ぇ の か !?」

ドンドンドン


兵士1「ま、声を聞くに男だろうな」

兵士2「夢破れたり……はいはい、今開けますって」

ガチャ


男「悪い、少し匿ってくれないか?」

兵士1「お、おう?」

兵士2「どうしたんですか突然」

男「分け合って追われてるんだ、頼むよ」

兵士2「怪しいですね」

兵士1「怪しいな、しょっ引くか」

男「やめて」

兵士1「とは言っても」

兵士2「こっちも仕事ですし」

男「これで許せ」ドン

兵士2「お、これは」

兵士1「おお、有名どころの酒じゃないか。確か王都の酒造で作られてる……」

男「いいだろう?こういう時の為に持ち歩いてんだ。さ、黙認しろ」

兵士1「今回だけですよ」

兵士2「早速飲みましょう!」

男「……こうもあっさり懐柔されると、ウチの国の行く末が心配だな……」

兵士2「ん?どうしました?」

男「いや、なんでもねぇ」

兵士1「しっかしこんな珍しい物を持っているとはなぁ。アンタいいとこの坊ちゃんかい」

兵士2「身なりがいいですしねぇ。そこそこの銘家とかじゃないっすか?」

男「ん、まぁ……な」

兵士1「そんな人が追われるなんて世も末だねぇ」

兵士2「無茶しすぎるとこの先持ちませんよー」

男「いや、兵士が昼間から酒を飲んでいること自体がだな……」

兵士1「ああ、銘家で思い出した。現国王の出生ってのがよ」

兵士2「先代の子じゃないんですか?」

兵士1「ああ、そうなんだけどよ。実は生まれてからずっと一般の国民に預けられて育てられてたらしいんだ」

兵士2「あー、聞いたことありますよ、本人も自分が国王の息子って知らされてなかったっていう。そういうのって何を目的としてるんでしょうねぇ」

兵士1「上に立つものとしてではなく、国民としての目線を知っておく必要があったんじゃねぇかなぁ」

兵士2「変な事しますねぇ」

兵士1「それで俺たちの事分かってくれてりゃ世話ねぇけどな」

男「……」

兵士2「でも、それで育ってきたのなら国王として勤まるんでしょうか?」

兵士1「普通なら無理だろうさ。本人がよっぽど努力もしなきゃいけないし。何より言ってしまえば素人だ」

男「そう、だからこそ近しい者からの助けが必要であり、民からの支えが必要なんだ」

兵士2「お?」

男「王とは孤高でなければいけない、されど孤独であってはいけない」

男「王とは信頼を得ねばならない、そして対等でなければいけない」

男「それと同時に自身が国民に支えられ、支える自覚と覚悟持たなければならない」

兵士1「……アンタ一体?」

男「って、なんか本に書いてあった気がするよ」

兵士2「受け売りですか」

男「受け売りだな」

男「必ずしも国民の期待に応えられるとは限らない。その為の批難を受ける事も覚悟しなきゃいけない」

男「国民の苦労全てがわかるなんてことも出来ない。だから少しずつでも対等でなければいけない」

兵士1「その為に一般に育てられたって考えも出来るけどな」

兵士2「へぇ、なんかよく分からないですけど壮大っすねぇ」

男「今の国王がよくやっているとは思わん。今平和でいるのは、それを取り巻く人々と、それを支える人達が一心になってくれたからこそのものだ」

男「ゆっくりとでも……成長して、自覚していかなきゃいけないんだな」

兵士1「そうあってくれれば、俺たち兵士もずっとそんな王についていけるんだがねぇ」

兵士2「そうならないのが世の常ってやつですよ」

男(……逃げ出している身としては耳が痛い)

ゴーンゴーン


兵士1「おっと仕事だ!こうしちゃいられねぇ!」

男「鐘の音……?なんだ?」

兵士2「近場で魔物が現れた合図っすよ」

兵士1「いくら平和だとはいえ、自然災害は無くならないからねぇ」

兵士2「いつもの事じゃないですか。今日は少ない方ですし」

兵士1「そんじゃ俺らは出陣しますかね!」

兵士2「モタモタしてたら町の人たちが怖がっちゃいますからね」

男「俺も行こうか?役には立つぞ?」

兵士1「そいつぁ必要ないぜ!」

兵士2「この国と人々を守るのが、俺たちの仕事っすから!」

男「……そっか」

男「……行っちまったな」


側近「行っちまった、じゃないですよ」

総隊長「ようやく見つけたぞ、糞国王」

男「ゲッ!?何でここにいるのが分かった!?」

側近「分かった訳ではありません。ちょっと野暮用を思い出しただけです」

総隊長「ん、俺も」

男「野暮用で見つけられるとは……災難だな俺も」

側近「仕事を全て押し付けて逃げたヒトのいう事ですか」

総隊長「こっちは自分の部隊の仕事を押して探しに来たんだ、文句言うな」

男「へいへい分かってますよーっと……」

側近「反省の色が見られませんので折檻ですね」

男「ところで、野暮用って何なんだ?」

側近「これです」コトッ

男「……酒?」

総隊長「奇遇だな、俺もだ」コトッ

男「……二人とも、俺が持ってきた酒と同じものじゃねーか」

側近「ここの兵士たちは日夜問わず出現する魔物たちと戦っていますので」

総隊長「労ってやろうと思ってな。王都にいると、こういう辺境の場所に気配りが出来ないしさ」

側近「国王、貴方もそれを分かって各所にお酒を配り歩いていたんですよね。視察もかねて……」

男「さて、何のことか」

側近「愚痴られるのもまた我々の仕事」

総隊長「部下の不満を改善してやるのも俺らの仕事」

男「それをまとめてどうにかするのが俺の仕事か……はぁ、ここの魔物被害もなんとかしてやらなきゃなぁ」

側近「さ、要も済みましたし私たちも魔物退治に参加するとしましょう」

総隊長「ここら辺の魔物は強いって聞いてるからな!兵達とも一度手合せしてみたいぜ!」

男「さて!それじゃあ愚痴垂れてた優秀な部下を助けに行きますかね!」




兵士1「暇だなー」兵士2「そーっすねぇ」
おわり

長編書き溜めてるとどうしても他に思いついたものを投下したくなる
内容の是非はともかく

もしお付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

過去作
http://blog.livedoor.jp/innocentmuseum/

面白かったけどこの国王は魔王だよな?
魔族と魔物が別な世界観か?

>>43
この国王は魔王じゃないです
魔族と魔物の違いはここで説明するのもアレなのでブログの方でそのうち何かしら書きます

失礼

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