ベジータ「何ィ!?オレがあんなヤツに…!?」 (29)


ベジータ「……!!ハッ!ハァァッ!」シュバババ

ベジータ「フンッ!」ババッ!!

ベジータ「フゥ…。…そういえばそろそろ腹が減ったな」



『ここは西の都、ブルマの家の最上階にある重力制御トレーニングルーム。
 来る人造人間達との戦いに向け、ベジータが猛特訓をしていた頃の話であった――』

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バタンッ

ベジータ「おいブルマ!メシだ!」

ブルマ「また!?アンタ今日それで何食目だと思ってんのよ!」

ベジータ「知らん。修行をすれば腹は減るもんだ」

ブルマ「ハァ…。いい加減自動調理器の使い方くらい覚えなさいよ、もう。
    アンタも機械オンチってわけでもないでしょうに」

ベジータ「あの機械の味付けは好かん」

ブルマ「…ハイハイ。言っとくけど本当に簡単なのしかつくんないわよ。ステーキとか」

ベジータ「充分だ。小腹を満たしたら、オレはまた修行の続きに入る」

ブルマ「…毎回毎回、牛の半身分を焼くこっちの身にもなりなさいよ、もう!」

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ベジータ「…!…!!」ガツガツ

ブルマ「孫くんといいアンタといい、ホント気持ちいいくらい食べるわねー」

ベジータ「ふぁいやひんはふぇんふぉうひんおくふぁふぁらなっ」モグモグ

ブルマ「思い出すわー、初めての天下一武道会の打ち上げ。
    孫くん一人でお店のストックを食べ尽くしてたわね」

ベジータ「フンッ!どうせなら町ひとつぶん食い尽くしてみやがれってんだ」ゲプー

ブルマ「バカね、アンタらあたし達の地球をどうするつもりよ」

ベジータ「…よし、腹ごなしにもうひと修行だ」ガタッ

ブルマ「ちょっと、サイヤ人の王子は『ごちそうさま』も言えないの!?
    こら、あとお皿くらいは下げて行きなさいよ!」

ベジータ「ヌ…。ご、『ごちそうさま』…」カチャカチャ

ブルマ「ん、よろしい」

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―― キッチン

ジャーッ

ブルマ(あー、はやく自動調理器を大量調理仕様に改造しないと身がもたないわ)

ブルマ(食器洗い機の使い方もさっさと覚えさせないと…)

ブルマ(……)

ブルマ(しかしほんと、アイツが来てからうちのエンゲル係数ヤバいわね…)

ブルマ(孫くんのところもこんな感じなのかしら…
    ああ、でもあそこは悟飯くんもいるから、倍率ドンで更に倍、か…)

ブルマ(……)

ブルマ(こ、今度、チチさんに何か差し入れでも持って行こうかな…?)



カサカサッ



ブルマ「…ん?」

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ブルマ「ぎゃああああああああああっ!!!!」






.


ベジータ(……)

ベジータ(フリーザのところで地上げ屋をやっていた頃には
     考えられなかったほど穏やかな毎日が続いている)

ベジータ(星の住民を根絶やしにし、移動しながら睡眠を摂るだけのあの頃…
     自分より強いヤツがいることを認識しながら、それに屈従していた日々…
     今ほど純粋に『自分の強さ』を追いかけていた時間など、なかった)

ベジータ(慣れない感覚だ…だが、今はそれに甘んじよう)

ベジータ(カカロットの奴を超える…オレはそのために…!)




『ぎゃああああああああああっ!!!!』




ベジータ「ッ!?」

.


バンッ!!

ベジータ「どうしたブルマ!?敵か!?」

ブルマ「あ、あわわ、わわわ」ガタガタ

ベジータ「…? 何だ、誰もいないじゃないか…?」

ブルマ「そ、そこっ!!そこの床ーっ!!」

ベジータ「ん?」



G「」カサカサカサカサ



ベジータ「な、なんだこいつはーッ!?」ガビーン

.


ブルマ「ごごご、ゴキブリ!!ゴキブリよッ!!」

ベジータ「ゴキブリ!?」

ブルマ「は、早く!なんでもいいからやっつけて!」

ベジータ「し、しかし…アレをか…!?」

ブルマ「あんたサイヤ人でしょ!?なんとかしなさいよ!」

ベジータ「無茶苦茶を言いやがる…!」



G「」カサカサカサ…



ブルマ「あーっ!冷蔵庫の下に行ったー!」

ベジータ「ちぃっ、何て素早さだ!」

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ベジータ「あんな生き物が地球にはいやがるのか…!
     おいブルマ、今の生き物…ゴキブリのことを詳しく教えろ!」

ブルマ「へ?ご、ゴキブリはゴキブリよ!見たでしょ、あの気持ち悪い姿!」

ベジータ「確かに…宇宙の星々を転々としてきたオレでさえ
     怖気を震うような、嫌らしい外見だったぜ…!」

ブルマ「とにかくなんとかやっつけてよ!こんな時のためのサイヤ人でしょ!」

ベジータ「よし、それなら相手の弱点を教えろ!」

ブルマ「え?弱点?」

ベジータ「え?」

ブルマ「え?」

.


ブルマ「普通に…その、叩き潰したら死ぬわよ」

ベジータ「何!?ブルマ、貴様でも倒せるのか!?」

ブルマ「そ、そう…ね…」

ベジータ「そんな相手に、何故あそこまで怯えたんだ!?」

ブルマ「だ、だって!いいベジータ、あいつを叩き潰したところを
    想像してごらんなさいよ!」

ベジータ「む?」

ブルマ「触覚や翅が飛び散る!内蔵がウニュっと出てくる!
    もしアイツがメスだったら、卵が飛び散ることだってあるのよ!?」

ベジータ「…そ、それだけか?」

ブルマ「それだけェー!?そんな気持ち悪いもの見てご覧なさいよ!
    その日の晩の夢に出るわよ!あたしはそんなの御免よ!」

ベジータ「……」

ベジータ(昔、殺した宇宙人の肉を生でかじっていたことをこいつに話したら
     白目を剥いて卒倒しかねんな…絶対に黙っておくか…)

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ベジータ「…叩き潰す以外に倒す方法はないのか?」

ブルマ「え?そ、そうね…。あっ!そうだわ!殺虫スプレー!」

ベジータ「ほう?それはどういうものだ?」

ブルマ「カンタンに言うと、毒の煙を相手に吹き付ける道具!
    うちにも一本、買い置きがあったはずよ!」

ベジータ「なるほどな。毒で殺せば死体が飛び散ることもないか」

ブルマ「でも、ゴキブリは体が大きいから毒の回りが遅いのよ。
    それに最近は毒が効かない奴もいるっていうし…確実ではないわ」

ベジータ「なんだと!?奴らは毒の耐性をつくることができるのか!」

ブルマ「そうなの…」

ベジータ(まるでサイヤ人並みの能力じゃないか…!虫のくせに侮れん!)

ブルマ「だから、ゴキブリを確実に殺すための道具というよりは…
    こういう狭いところから追い立てる、っていう使い方が多いわ」

ベジータ「文字通り『燻り出す』というわけか…」

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ブルマ「あたし、スプレーと新聞紙とってくる!ベジータはここ見張ってて!」

ベジータ「お、おい!?」

ブルマ「もし出てきたら何としても倒してよ!じゃっ!」バタン

ベジータ「おい待て!」


シーン……


ベジータ(……)

ベジータ(な、なんてオンナだ…!)

チラッ

ベジータ(……クッ!)

ベジータ(冷蔵庫の下から…嫌な気配を感じる…!)

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短いが続きは明日なんじゃ

(今そんなにdat落ち早いの!?
 2年ぶりだからよくわかってないゾ)


ベジータ(奴を殺すのは確かにそう難しくはない…)

ベジータ(だが!!)

ベジータ(生理的な嫌悪感というものはこのオレにもある…!)

ベジータ(かつて、宇宙の星々を巡り続けたオレだからこそわかる…)

ベジータ(アレは…)



ベジータ(宇宙でも最高レベルの不快生物だ…!)



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ベジータ(クッ…ブルマめ、早く戻ってきやがれ…)

ベジータ(…ん?待てよ?)

ベジータ(ヤツとて生き物であることに変わりはない…ということは、
     微弱であっても気を探れば、ヤツの動向を察知することも可能なはず…!)

ベジータ(よ、よし…これも修行の一環だ…!いくぞ!)

ベジータ「フンッ!」ゴッ

ベジータ(…居やがった!冷蔵庫の下、奥の奥…極小だが間違いない、
     これがヤツの気だな…!)


G「!!」カサカサカサ!!


ベジータ「な、何っ!?」

ベジータ(まさかヤツめ…オレの気に反応しやがったのか!?
     クッ!ヤツめ、その暗がりから出てくるつもりか!?
     どうする!?ブルマの到着は間に合わんっ!)

ベジータ「え、ええいっ!」ビッ!!


G「」ボムッ


シュゥゥゥゥ…

.


ベジータ(……)

ベジータ(と、とっさのこととは言え、エネルギー波で燃やしちまった…)

ベジータ(死体がボロクズの消し炭になったのはよかったが…)

ベジータ(…チッ!嫌な臭いがしやがる)

ベジータ(換気装置のスイッチは…?)

バンッ

ブルマ「おまたせベジータ!殺虫スプレーよ!」

ベジータ「遅い!!」

ブルマ「な、何よ!これでも超特急で…って、何?この臭い…」

ベジータ「……」クイッ

ブルマ「…まさか、そこで黒コゲになって煙上げてるのって…」

ベジータ「そうだ」

ブルマ「うっげー…。とりあえず換気扇回すわね…」

ベジータ「ああ、そうしろ。オレはスイッチの場所など知らんからな」

.


ベジータ「しかし、まさか地球にこんな生物がいるとはな」

ブルマ「意外と地球のどこにでもいる生き物のはずなんだけどね」

ベジータ「そうなのか?」

ブルマ「人類が生まれる前…それこそ何億年も前からいる生き物らしいわ。
    サイヤ人より古株の生き物かもしれないわよ?」

ベジータ「ほう…」

ブルマ「でも、イヤねぇ。『家の中で1匹見つけたら30匹いると思え』なんて
    よく言われてるのよね、ゴキブリって」

ベジータ「……」

ベジータ「ちょっと下がっていろ、ブルマ」

ブルマ「へ?」

ベジータ「フンッ!!」ゴォッ

ブルマ「きゃっ!!な、何よ!?」

ベジータ「静かにしろ!家中の小さい気を探っているんだ、集中させやがれ…!」

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ブルマ(そ、そんなこともできるんだ…)

ベジータ「…このキッチンにはもう残ってはいないようだな。よし、次だ!」

ベジータ「あっちの少し大きめの気達は…ブリーフ博士のペット共か…」ブツブツ

ブルマ「……」ゴクッ

ベジータ「…いたぞ、ブルマ。合計2匹のクソッタレ共が
     この家の中に潜んでやがった!」

ブルマ「えっ!?お、思ってたよりは少ないけど、まだ2匹もいるの…!?」

ベジータ「ああ。ククッ、殺虫スプレーがムダにならなくてよかったな」

ブルマ「で、どこどこ!?どこにいんのよ、ゴキブリは!」

ベジータ「具体的にどの部屋にいるかまではわからん。だが、メシの礼に
     ヤツのいる部屋の前まで貴様を案内してやってもいいぞ。どうする?」

ブルマ「もちろん行くわよ!ゴキブリと一つ屋根の下だなんてゴメンよ、
    安心して寝ることも出来ないじゃないの!」

ベジータ「いい度胸だ」ニヤッ

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ベジータ「1匹はここと同じ階…もう1匹はずいぶん上の方にいるようだな」

ブルマ「じゃあ、手近な同じ階の方から行きましょう」

ベジータ「そうするか…こっちだ」

スタスタ

ベジータ「ところで、その新聞紙は何に使うんだ?」

ブルマ「これを丸めてあいつをひっぱたくのよ」

ベジータ「そんな弱っちいものが武器になるのか?」

ブルマ「何度も叩けば大丈夫よ!それに叩いた後はすぐ捨てられるし、ね」

ベジータ「なるほど、考えてやがる。……む?」

ブルマ「どうしたの?」

ベジータ「……」

ブルマ「ねぇ、どうしたのよベジータ?」

ベジータ「…この部屋の中だ」

ブルマ「え!!??ちょっと、ここって…」

ベジータ「間違いなく、ここだ」



ブルマ「あたしの部屋じゃないの!!」



.

もうちっとだけ続くんじゃ

それと「明日」がウソになってすまんかった

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