雁夜「桜ちゃんをハッピーエンドに」 ウェイバー「なんでボクが!」 (66)

●注意●

FGOのFate/Accel Zero Orderイベントの世界があのまま続いたらという話です
ゲームイベントのネタバレを含みます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1464260711

雁夜「桜ちゃん、退院おめでとう」

桜「雁夜おじさんは退院しないの?」

雁夜「俺は……ゴホッ! ゲホォ! ヴォエ!(吐血)」

桜「……おじさん!」

雁夜「俺は桜ちゃんとは一緒に退院できないから、これからはこのウェイバー・ベルベットお兄さんにお世話になるんだよ」

ウェイバー「なんでボクが!」

ウェイバー(4度目になる冬木の聖杯戦争は抑止力と、異世界からのマスターとサーヴァント達の介入により幕を閉じた)

ウェイバー(汚染されていた聖杯は破壊され……ボクは……)




雁夜「桜ちゃん、ちょっと病室の外に出ててね。俺はウェイバーお兄さんとお話があるから」

桜「うん。おじさんばいばい」

ウェイバー「……」

雁夜「桜ちゃんを助けてもらったことは感謝してるよ」

ウェイバー「それは、ボクじゃなくてライダーが……」

雁夜「あっ! 新聞にこんな記事が! 冬木の屋敷全焼! 放火か? 犯人は未だ見つからず。大勢の人の雄叫びを聞いたとの情報も!? 一体、誰がこんなことを!?」

ウェイバー「」

雁夜「その屋敷の名前は……間桐だって!? 桜ちゃんが住んでた家じゃないか! 退院したら、桜ちゃんはどこに住んだらいいんだー!?」

ウェイバー「」

雁夜「住んでた老人も行方不明!? 桜ちゃんの保護者は? 俺がなってあげたいけど、もう余命わずかだしなー。このままじゃ、桜ちゃんが心配で死んでも死に切れないなー。蟲の大群に飲み込まれても死に切れないなー。桜ちゃんに幸せになってもらわないと死ねないなー」

ウェイバー「わかった! わかったよ! 桜を引き取ればいいんだろ!」

雁夜「ありがとう。君ならそう言ってくれると思ってたよ」

ウェイバー「……くそっ」

ウェイバー「でも、ボクが引き取ったところで、桜が幸せになる保証はないからな。ボクは冬木の一般家庭に暗示をかけて居候してるにすぎない。……おじいさんにはばれたけど」

雁夜「ライダーもだけど、君も結構やることやってるね」

ウェイバー「……。だから、今の家は一時的な住処であって……」

雁夜「一般家庭か。いいね。桜ちゃんには魔術とは関係なく幸せになって欲しいんだ」

ウェイバー「話聞けよ。だいたい、保護者になるボクは魔術師だぞ」

ーーマッケンジー邸


ウェイバー(というわけで、桜を連れて帰ってきたけど……)


グレン「おや、かわいいお嬢さんだ」

桜「……!」ビクッ

マーサ「ウェイバーちゃんのお友達かしら?」

ウェイバー「えーと、ボクの(サーヴァントがバーサーカーごと拉致して家を全焼させたせいで)知り合い(になってしまった奴)が病気で、その間、預かることになったんだ。な、桜?」

桜「……」

ウェイバー「……桜?」

桜「……」

マーサ「……?」

グレン「……?」

ウェイバー「……」


ウェイバー(まずい! おじいさん達が不審がってる……)

マーサ「ウェイバーちゃん、何か隠しているでしょう?」

ウェイバー「」

マーサ「正直に、話して」

ウェイバー「ボクハ、オジイサントオバアサンニマゴダトオモイコマセ、イエニカッテニアガリコンデイマシタ」

マーサ「それはずっと前から知ってたわよ」

ウェイバー「えっ」

グレン「マーサのやつ、ワシより早くに気づいていたようだ」

ウェイバー(ボクの魔術って……)

マーサ「それより桜ちゃんよ。人をひどく怖がっていて、ウェイバーちゃんの後ろから離れないわ。何かあったのね」

ウェイバー「……」

ウェイバー(とりあえず、桜が養子先の家で虐待に遭っていたことは打ち明けた)

ウェイバー(魔術に関わることは言えなかったけど)

ウェイバー(桜を助けたのがライダーだとも打ち明けた)

ウェイバー(家を王の軍勢で全焼させたとか、桜を奴隷にしたとか、雁夜さんの腕を切り落としたとかは言えなかったけどな!)

ウェイバー「ライダーのやつ! いなくなってからも、めちゃくちゃしやがって!」

桜「……ライダーおじさん、いないの?」

ウェイバー「……ああ。あいつは還ったよ……」

桜「帰っちゃったんだ……。私を助けてくれてありがとうって、言いたかったのに……」

ウェイバー「桜……」

桜「……あと、結婚してって言いたかったのに……」

ウェイバー「えっ? け、け、結婚? オマエとあいつが!?」

桜「うん」

ウェイバー「歳離れすぎだろ! 2300歳は離れてる!」

桜「私、ずっと誰かが助けてくれるのを待ってたの。ライダーおじさんは私を助けてくれた」

ウェイバー「……そうか」



ウェイバー(ライダーはとんでもないやつだったけど、桜にとってはヒーローなんだな……)

ウェイバー「じゃあ、ボクがいつかあいつに追いついたら、伝えておくよ」

桜「……」ジトー

ウェイバー「なっ、なんだよ!」

桜「自分で伝えるからいい。その方が早そう」

ウェイバー「馬鹿にしやがって! 見てろよ! ボクが先に追いついてやるからな!」

桜「クスクス」

ウェイバー「笑うなよ!」


マーサ「あら、なかよしね」

グレン「事情はわからんが、桜が笑顔を見せてくれてよかった」

ウェイバー「まあ、とりあえずは、おじいさん達が桜を受け入れてくれてよかったよな」

桜「おじいさん、おじいさまと違う。おばあさんも」

ウェイバー「そりゃあな……」

桜「おじいさまは?」

ウェイバー「……死んだ」

桜「そう……」

ウェイバー「……今日はもう遅いから寝るぞ。おやすみ」トコトコ

桜「……」トコトコ

ウェイバー「……」トコトコ

桜「……」トコトコ

ウェイバー「なんでついてくるんだよ。桜はおばあさんと寝るんだろ」

桜「……」フルフル

ウェイバー「変態国家の日本と違って、ボクの国では女児と一緒に寝たら通報されるんだよ!」

マーサ「まあまあ、ここは日本だし」

グレン「郷に入っては郷に従えというだろう」

ウェイバー(そういえば、ライダーも生前は侵略した国の文化を積極的に受け入れてたんだっけ)

ウェイバー「おじいさん達がそこまで言うなら仕方がな……」

桜「勘違いしないで。私は身長2メートル以上のマッチョにしか興味ないから。ウェイバー兄さんみたいな小さい人は守備範囲外だから」

ウェイバー「うるさいぞ桜! ボクだってあと30センチは身長伸ばしてやるからな!」

ーーウェイバーの部屋


桜「きたない」

ウェイバー「ライダーのやつが片付けずに還ったからな」

桜「きれい」

ウェイバー「そうかよ……」


ウェイバー「桜はベッドで寝ろよ」

桜「……」コクコク

ウェイバー「ボクはこっちの布団で寝る。当然だが、変なことはしないから安心しろ」

桜「そういう台詞は、身長2メートル超えのマッチョの人に言ってほしいわ……」ハァ…

ウェイバー「なんなんだよオマエ」

ウェイバー「日本人は床に布団を敷いただけでよく寝られるよ。ライダーもわざわざこんなので寝て、物好きな奴だったな」

桜「……! ライダーおじさんの使用済み布団で寝たい」

ウェイバー「まだ子供とはいえ、レディを床で寝かせられるわけないだろ」

桜「布団」

ウェイバー「おやすみ」

桜「布団」

ウェイバー「……」

桜「布団! 布団!」ジタバタ

ウェイバー「……わかったよ」

ウェイバー「じゃあ、ボクはベッドで寝るから……って、放せよ」

桜「眠れない」

ウェイバー「知るかよ寝ろよ」

桜「暗いと、間桐の家にいたことを思い出して怖いから……」

ウェイバー「……わかったよ。隣で本でも読んでやるからとっとと寝ろよな」

桜「うん」

ウェイバー(読み聞かせられるような本はイリアスしかないけど、子供には難しいからすぐ寝るだろ)

ーー翌朝


ウェイバー「はっ! ボクとしたことが、そのまま寝落ちしてしまった!」

桜「同じ布団なのに、本当になにもしなかった」

ウェイバー「馬鹿にするな。一応は、保護者だぞ」

桜「……だから驚いたの」

ウェイバー「…………。これが当たり前なんだよ……」

桜「……うん」

ウェイバー「……えーと、好き好んでライダーの使用済み布団で寝ようとする奴なんて、桜の言葉を借りれば守備範囲外なのが当たり前だ。あまり、深く考えるなよな」

桜「……うん!」



ーー

---


桜「今日はおばあさんのおつかい」

ウェイバー「財布はボクが持つからな」



ウェイバー(マッケンジー邸に来てからしばらく経つけど、桜も元気になってきた)

ウェイバー(でも、ずっとこのままというわけにはいかないよな)



桜「……あ!」

ウェイバー「どうしたんだ桜?」

凛「……!」

ウェイバー「誰だ?」

凛「そこのロリコン変態放火魔誘拐犯! 桜から離れなさい!」

ーー


ウェイバー「遠坂の娘……絶対に許さないからな。危うくご近所さんに通報されるところだったんだぞ」

凛「ご、ごめんなさい」

桜「姉さんったら、そそっかしいんだから」

凛「だって、間桐の家が謎の全焼、当主も亡くなって、桜も行方不明。それに魔術師が関わっているってお父様が話してるの聞いて心配で……」

桜「それで、ウェイバー兄さんをロリコン変態放火魔誘拐犯と勘違いしたのね」

ウェイバー(ロリコンと変態以外全て本当なんだけどな)

ウェイバー「ボクは雁夜さんに頼まれて、桜を保護をしているんだ」

凛「雁夜おじさんが桜を助けてくれたの?」

桜「ううん。私を助けたのは素敵な王子様」

ウェイバー「王様だろ」

桜「馬車に乗った白馬の王子様が助けてくれたの」

ウェイバー「猛牛が牽く戦車だろ。それに、あいつの馬も牛も黒い」

桜「はあ……、ものの例えよ。ウェイバー兄さんは乙女の心がわからない」

ウェイバー「身長2メートル超えの筋肉達磨を一般的な少女の理想像に当てはめる奴の心がわからないよ」

凛「……桜と仲がいいのね」

ウェイバー「どこがだ」

桜「勘違いしないで。私は身長2メートル超えのマッチョにしか興味ないから」

凛「……それは、よくわからないけど、ウェイバーさんだっけ? 桜と毎日いっしょにいられてうらやまし……ううん、なんでもないわ」

ウェイバー「……」

凛「今日は桜に会えてよかった。私、そろそろ帰るわね」

桜「もう帰っちゃうの?」

凛「お父様に魔術を教えてもらう時間だから。桜、またね」

桜「……ばいばい」



ウェイバー(その日から、桜が少し変わった)

ウェイバー「魔術を教えてほしいだって?」

桜「うん」

ウェイバー「でも、雁夜さんは魔術と関係なく幸せになってほしいって……」

桜「私が魔術を知りたいの」



ウェイバー(病院の雁夜さんに伝えると、吐血を反対した。あと少しで死にそうだった)

ウェイバー(桜をこれからどうすべきなんだろう)

マーサ「桜ちゃん、お料理が上手になったわね」

桜「おばあさんが教えてくれたからです」

グレン「ウェイバーもピコピコばかりしてないで、桜を見習ってお手伝いしなさい」

ウェイバー「……」

グレン「ウェイバー?」

ウェイバー「あっ、ごめんおじいさん」

グレン「いつもなら、ピコピコじゃなくてなんとか大戦略だーって、言うのにどうした?」

ウェイバー「……」

ーー夜


ウェイバー「ーー赤のライダーのアキレウスは、師であるケイローンと戦場で再会し……」

桜「Zzz……」

ウェイバー「やっと寝たな……」

桜「……」スヤスヤ

ウェイバー(全く、なんだって突然、魔術師になりたいだなんて言い出したんだ?)

桜「……お母様、お父様……」ムニャムニャ

ウェイバー(……もしかして、家に帰りたいのか?)

ーー翌日


桜「話ってなあに? 愛の告白なら身長を2メートル超してから出直してきて」

ウェイバー「馬鹿なこと言うなよ。せっかく、オマエに魔術を教えるか考えてやろうと思ったのに」

桜「えっ! 本当!?」

ウェイバー「その前に、聞きたいことがある」

桜「聞きたいこと? スリーサイズは……」

ウェイバー「誰が幼女のスリーサイズなんて聞くかよ馬鹿」

ウェイバー「オマエが魔術を教えてほしいと言い出したのは、遠坂の娘ーー実の姉に会ってからだ」

ウェイバー「姉に会って、家が恋しくなったんだろ?」

ウェイバー「魔術師になれば、遠坂の家に帰れると思ったんじゃないのか?」

桜「……うん」

ウェイバー「やっぱりな」

桜「おじいさんもおばあさんも、ウェイバー兄さんもみんな優しくしてくれるけど、お父様とお母様、姉さんに会いたい……。お家に帰りたい……」グスッ

ウェイバー「桜……」

ウェイバー「魔術を受け継ぐのは1人だけ。例え、桜がすごい魔術師になったとしても、遠坂には戻れない可能性の方が高い」

桜「それでもいいの。私だって、姉さんみたいに魔術師として誇りを持って生きてみたい。間桐ではできなかったけど、今ならできるから」

ウェイバー「間桐に比べたら、ボクなんか全然たいしたことないぞ」

桜「うん。なんとなく、魔術師としてはたいしたことなさそうだなって、気づいてた」

ウェイバー「」

桜「でも、私のことを考えてくれてるから。ウェイバー兄さんは頼りにならないけど、すごく頼りになる人だから大丈夫」

ウェイバー「なんだよそれ」



ウェイバー(そんなわけで、ボクと桜の魔術の授業が始まった)

ウェイバー(教えてみてわかったけど、桜は魔術の才能がある。すごくある)

ウェイバー(下手したら、将来はホルマリン漬けだ)

ウェイバー(名のある家に養子に出したのは魔術師の親としての愛情だったのかもしれない)

ウェイバー(今はいいけど、このままボクが護りつづけるのは難しいだろう)

桜「雁夜おじさんのお見舞いに行くの?」

ウェイバー「オマエに魔術を教えてることちゃんと説明しないといけないからな」

桜「雁夜おじさん、ショックで死んじゃわないかな?」

ウェイバー「そうならないように、うまくやるさ」

桜「大丈夫かな……」

ウェイバー「このくらい、汚れた聖杯に立ち向かった時に比べたらなんともないね!」


????「ほう、それでは、本当に君が聖杯を破壊したのかね、ウェイバー・ベルベットくん?」


ウェイバー「そ、その声は……!」

????「情報は回ってきていたが、まさか、本当に君がね……」

桜「誰!? この髪の毛が薄い人! ウェイバー兄さんもおデコが広いのよ! これ以上、薄毛を伝染させないで!」

ウェイバー「こら桜! なにケイネス先生に失礼なこと言ってるんだよ!」

ケイネス「私の大切な荷物を盗んだ君が一番失礼だろう」

桜「ウェイバー兄さんのおデコが広いからって、あなたの大切な髪を盗んだだなんて言いがかりはやめて!」

ウェイバー「」

ケイネス「」

桜「ごめんなさい。ウェイバー兄さんの先生だったんですね」

ケイネス「愚かな兄と違って、誤りをすぐに認めるとは。子供のしたことだ。近い将来、一流の家庭人となる身として、広い心を持って許そう」

桜「ウェイバー兄さんもごめんなさい。おデコはこの危ういままキープしていくのに。胃がいくら荒れても頭皮だけは守り続けていくのに」

ウェイバー「それ謝ってないよな」

ケイネス「コホン。兄妹喧嘩はそのくらいにして本題に入ろう」

ウェイバー「兄妹ではなく、保護者です」

桜「不甲斐ない兄ですが、よろしくお願いします」

ケイネス「本当に。桜といったかね。君も大変だろう」

桜「そうなんですよ。おうちのお手伝いもぜずに、ゲームをしてばかりで」

ケイネス「……ゲーム? チェスか何かかね?」

ウェイバー「誰もボクの話を聞かない」

ウェイバー「と、とにかく、本題っていうのは聖杯のことですよね」

ケイネス「君にしては察しがいいじゃないか」

ウェイバー「そりゃまあ、なんせあの聖杯が破壊されたんですから。時計塔にも情報はもう回っているんでしょう。そうでもなければ、わざわざあなたがボクに会いに来るはずがない」

ケイネス「いや、それ以外にも私が君に会いに来る理由が1つだけあるが……まあ、こちらについては、詳しく話を聞いてから決めよう」



ウェイバー(大聖杯を破壊したサーヴァントと抑止力は座に還り、異世界の奴らもこの世界を去った)

ウェイバー(アインツベルンと共に)

ウェイバー(ボクはこの世界で唯一聖杯を破壊した現場にいた存在になってしまった)



ーー

ーーー


ウェイバー「……と、以上が聖杯が破壊されるまでに起きた全てです」

ケイネス「あの男……諸葛孔明の疑似サーヴァントか……」

ウェイバー「先生もあのキャスターが気になるんですか?」

ケイネス「私もというのは?」

ウェイバー「ライダーのやつがやたらあいつを構い倒して……。それに、あいつ、ボクにやたら突っかかってくるし……」

ケイネス「やはりか……」

ウェイバー「え?」

ケイネス「いや、こちらの話だ。これで方向が決まった」

ケイネス「それより、この間桐の娘はどうするんだね?」

ウェイバー「……桜は、遠坂に帰りたいと」

ケイネス「それが現実的ではないことは理解しているのだろう」

ウェイバー「……はい」

桜「お家に帰れなくても、ウェイバー兄さんとずっといっしょに……」

ケイネス「それは無理だ。君には魔術の才能がありすぎる。ウェイバー君では君を護りきれない」

桜「そんな……!」

ウェイバー「……確かに、今のボクでは桜を護ることはできない。でも、桜が立派な魔術師になる頃には、ボクだって桜を護れるようになってる……いや、なるんだ!」

ケイネス「三流魔術師の君が、遠坂の血を引く彼女を守れると?」

ウェイバー「はい!」

桜「ウェイバー兄さん……」

ウェイバー「こっちはサーヴァントのデコピンで脳震盪起こしかけて、戦車で空飛んで、飲み会して、間桐を全焼させたんだ! 今更、なにが来ても怖くなんかないんだよ! 子ども1人護るくらい、汚れた聖杯に比べたら全然全くこれっぽっちもたいしたことない!」

ケイネス「はあ、君がここまで愚かだったとは」

ウェイバー「先生だって怖くなんかないぞ! ライダーの聖遺物は返さないからな!」

ケイネス「それは君にあげよう」

ウェイバー「えっ」

ケイネス「そのかわり、その娘と共に私について来なさい」

ウェイバー「拷問するなら、桜は関係ない」

ケイネス「そんなことする気はとうになくなった。いいから来なさい」

ウェイバー「……はい。行くぞ桜」

桜「うん」

ーー遠坂邸


ケイネス「いやあ、聖杯戦争ではお世話になったね」

時臣「まさか、ロード・エルメロイが戦いを放棄して逃げ帰るとは」

ケイネス「冗談を。私もまさかあの御三家が願望器などと大ボラを吹いて魔術師を騙していたなど心にも思わなかったよ」

時臣(さすが、ロード・エルメロイ! 聖杯戦争の真の目的に気づいていたのか!)



ウェイバー(ついて来いって、遠坂の屋敷かよ! しかも、険悪なムード……)

桜「……」そわそわ

ウェイバー(桜は嬉しそうだけど、このまま遠坂の家に帰すなんて簡単にはいかないだろうな)

葵「桜!」

桜「お母様!」

凛「どうして桜がうちに? もしかして、またいっしょに暮らせるのお父様?」

時臣「間桐がなくなったからね。次の養子先が見つかるまでは……」

桜「……私、またどこかのお家に行くの?」

凛「そんな!」

葵「仕方ないのよ……」

ケイネス「その件だがね。いい養子先がある」

桜「えっ!」

凛「いや!」

ケイネス「桜君は間桐で大変な目に遭っていたようだね。私の弟子がそれを目撃している。説明したまえ」

ウェイバー「はい」




--

---


葵「そんな! 桜がそんな目に!」

時臣「間桐め……」

凛「桜ぁ……」グスッ

桜「私もう、他のお家で怖い目に遭いたくないよ……」

ケイネス「そこで、彼女の身の安全が確実に保障される養子先がある」

凛「桜は養子になんかもうさせないわ!」ポカポカ

ケイネス「あっ、こら! 足を叩くな!」

時臣「まさか、エルメロイ家に桜を?」

ケイネス「私は婚約者がいる身でね。魔術だけではなく、家庭人としても大成するつもりだ。ソラウ……婚約者との幸せ家族計画進行中で養子を受け入れる余裕なんてない」

時臣「では、桜は……」

ケイネス「彼女をこのウェイバー・ベルベット君の養子にするというのはどうだね」

時臣「」

凛「えっ!」

葵「えっ」

ウェイバー「えええええっ!!!!?」

時臣「いや待ってほしい。ベルベット? 聞いたことのない家だが、君で魔術は何代目かな?」

ウェイバー「……3代目です、けど……」

時臣「」フラッ

凛「キャー! お父様が倒れた!」

葵「あなた! しっかりして!」

時臣「そ……」

ウェイバー「そ?」

時臣「そんな三流家系に娘をやれるか!!!!!」

ウェイバー「ヒッ!」ビクッ

ケイネス「三流……? 彼は聖杯を破壊した男」

ウェイバー(のうちの1人だけどな。ほとんど異世界の奴らと抑止力と……諸葛孔明の力で、ボクの力なんかじゃない)

ケイネス「先ほど、聞いたことのない名だと言ったが、セカンドオーナーならば、報告は受けているはずだが。もしや、ズタボロにされた要石の修復に忙しくて目を通す暇もなかったのかな?」

時臣「……ぐぬぬ」

ウェイバー(要石がズタボロ? 一体、誰がそんなひどいことを……)

ケイネス「桜君はどうかね? ウェイバー君の養子になるのは不満かね?」

桜「ウェイバー兄さんといっしょにいられるならいい」

時臣「桜!」

桜「ウェイバー兄さんは私にもわかるくらい魔術師としてはダメダメけど、親切にしてくれたし、間桐ではろくにさせてもらえなかった魔術のお勉強もさせてくれたの。身長と筋肉は足りないけど、ウェイバー兄さんの養子になりたい」

ウェイバー「桜……」

ケイネス「本人はこう言ってるが」

時臣「……ダメだ! それでは後ろ盾が!」

ケイネス「後ろ盾? ロード・エルメロイII世の称号だけでは足りぬと?」

時臣「ロード・エルメロイなら……ん?」

ウェイバー「ロード・エルメロイII世? えっ? 誰が?」

ケイネス「君だよウェイバー・ベルベット君。いや、ロード・エルメロイII世」

ウェイバー「」フラッ

時臣「こ、こんな三流魔術師がロードなど! 口からでまかせを!」

ケイネス「私がそんなくだらない嘘をつくとでも?」

ケイネス「そもそもこれは、聖杯戦争前から決まっていたこと。時計塔から枠をこえて2名参戦した時点でおかしいと思わなかったかね」

ケイネス「聖杯戦争の異変に気付いた私は、弟子に調査をさせることにした。それがウェイバー君だ」

ウェイバー(嘘だ。ボクがライダーのマントを盗んだだけだ)

ケイネス「そして、彼は見事汚染された聖杯を破壊した」

ケイネス「その実績を評価し、彼をロード・エルメロイII世にすると決めたのだよ」

ウェイバー(そんなデタラメな!)

ケイネス「まあ、それには仕事はセーブして新婚生活を楽しみたいという個人的事情もあるが」

ケイネス「誰かさんみたいに、跡継ぎは1人なのに、2人も子供ができたなど無計画な行動はしたくないからね」

時臣「//////」

葵「//////」

凛「?」

ウェイバー(こうして、ケイネス先生は、ライダー並の無茶苦茶な理論で押し切ってしまった)



時臣「桜、これからはロード・エルメロイII世のお世話になりなさい」

桜「うん。おじいさんとおばあさんのお家が近くだから、たまに遊びに来ていい?」

時臣「もちろんだよ」

時臣(ロード・エルメロイII世の祖父母かな? 彼に家族はいないという情報だったような)

葵「いつでも遊びにきていいのよ」

凛「お兄さん……いえ、新しいお義父様が嫌になったら、家出してきたっていいんだから!」

ウェイバー「この歳で、お義父様って……」

桜「改めて、よろしくね。ウェイバー義父さん」

ウェイバー「よ、よろしく……」

ーー帰り道



ウェイバー「あの、色々とありがとうございました」

桜「ありがとうございました」ペコリ

ケイネス「ふん」

ウェイバー「先生はどうしてボクを助けてくれたんですか?」

ケイネス「何を勘違いしているのかね。君を助けた覚えはない。ただ、借りを返しただけだ」

ウェイバー「借り? ますますわけがわかりません。借りどころか、ボクはライダーのマントを借りっぱなし……いや、盗みっぱなしなのに」

ケイネス「借りがあったといっても、正確には君であって君ではない相手だ」

ケイネス「聖杯戦争の最中、私の前にある男が現れた」

ケイネス「彼はまるで未来が読めるかのように振る舞い、私を聖杯戦争離脱へと誘導していった」

ケイネス「賢そうに見せかけていたが、まだ未熟な男だったよ。私が書きかけの恋文を誰かの目に触れるような場所に置くわけがない」

ケイネス「彼のいる未来で、私は死んでいたのだろう。彼ーー諸葛孔明の疑似サーヴァントの誘導に乗ってやったから、今ここに私はいる」

ウェイバー「それがなんでボクに関係が? まさか……!」

ケイネス「私もまさかとは思ったよ。だが、初めて会った時に感じた違和感ーーその田舎訛りの英語は君と同じだ。どんなに取り繕っても、生まれは誤魔化せなかったようだ」

ウェイバー「あいつがボク? だからライダーも……」

ケイネス「まあ、私は君に借りは返した。次は君が私に返す番だ」

ウェイバー「えっ? えっ?」

ケイネス「征服王のマントは返さなくていいと言っただろう。そのかわりに、君を一生涯かけてエルメロイでコキ使わせてもらう」

ウェイバー「えっ? えっ?」

ケイネス「私が家庭人としても才能を発揮し、立派な跡継ぎが育つまでの間、君には繋ぎのロードになってもらう。あとはそうだ、私の姪が家庭教師を探していたな。それからそれから……」

ウェイバー「そ、そんな……」

桜「私にも引き続き魔術を教えてね」

ケイネス「それもそうだ。感謝したまえよロード・エルメロイII世。性格も手グセも魔術回路もお世辞にもいいとは言えない君なんて、本来ならば妻さえできたか怪しいんだ。いきなり優秀な養子がもらえてよかったじゃないか」

桜「雁夜おじさんにも教えてあげないとね」

ウェイバー「あ……あ……」



ーー

ーーー


エルメロイII世「というわけで、桜は元気にやっているよ」

雁夜「よかった。はじめ君が桜ちゃんを養子にすると聞いた時は、驚きのあまり吐血して、緊急手術になったっけ」

エルメロイII世「あの時は、本当に雁夜さんが死ぬと思ったが……、あれから10年、あなたはなぜまだ生きているんだ? 余命わずかというのはなんだったんだ?」

雁夜「嫌だな。言ったじゃないか。桜ちゃんが幸せにならないと死んでも死に切れないって。桜ちゃんが幸せになるまで俺は死なないよ」

エルメロイII世「桜はまだ幸せではないと?」

雁夜「俺は悟ったんだ。幼い頃、葵さんと過ごした日々は幸せだった。だが、葵さんは時臣と結婚して……ウッ! ヴォエ!(吐血)」

エルメロイII世「おい! ここで吐血するな! 死ぬなら別のところで死ね!」

雁夜「とにかくだ……幸せは永遠には続かない。今、桜ちゃんは幸せだとしても、一寸先は闇かもしれない」

エルメロイII世「不吉なことを言わないでくれ」

雁夜「例え、桜ちゃんが幸せな花嫁さんになったとしても、跡継ぎの子供を作りすぎちゃったり……くそ! 時臣め! 羨ましい! 我が子が蟲まみれにされたり……くそ! 時臣め!」

エルメロイII世「あなたはライダーにもう一度殴ってもらったほうがいいのではないか?」

エルメロイII世「幸せな花嫁か……」

雁夜「ん?」

エルメロイII世「先日、冬木の桜からエアメールがきていたな。高校の先輩に憧れているとか」

雁夜「」

エルメロイII世「ライダーのように赤が似合いそうな男性らしい」

雁夜「」

エルメロイII世「筋力に関しては、このままだとD止まりなので、Bになるよう毎日プロテイン入り弁当を差し入れしているとか。健気なことだな」

雁夜「」

エルメロイに「……どうかしたのか?」

雁夜「……桜ちゃんを」

エルメロイII世「?」

雁夜「桜ちゃんを何処の馬の骨ともしれないやつにやれるか!!!」

エルメロイII世「」

雁夜「君も義父なら何も思わないのか!」

エルメロイII世「おじいさん達によると、なかなかの好青年らしいし、恋愛は自由だろう」

雁夜「恋愛は自由!? 最近ちょっと時計塔で一番抱かれたい男とか言われてるからって、調子に乗りやがって!」

エルメロイII世「それは生徒達が勝手に言っていることだ! 聖杯戦争の裏で精パイ性交をして女性を孕ませたって本当ですか、だから歳の割に大きな日本人の娘さんがいるんですねなど好き勝手に言われているこちらの身にもなれ!」

雁夜「ずっと葵さん一筋でふられて生涯独身の俺にそんなことわかるか! 君なんかに桜ちゃんを任せた俺が馬鹿だった!」

エルメロイII世「馬鹿はあなたのほうだ!」

グレイ「師匠、日本から娘さんがいらしてますが……」

桜「また雁夜おじさんと喧嘩してる……。これで本当に時計塔の講師なんて勤まってるんですか?」

グレイ「……ええ、まあ、一応は」

ケイネス「遠慮なく言ってやりたまえ。いつも生徒達と問題ばかり起こして、私も頭を抱えているんだ」

桜「通りで、頭皮がまた一段と……」

ケイネス「」

桜「もう、2人とも喧嘩はやめて」

エルメロイII世「桜!」

雁夜「桜ちゃん!」

エルメロイII世「ロンドンに来てたのか」

桜「ちゃんと手紙で予定を知らせましたよ」

エルメロイII世「そうだったか?」

桜「全く、どうせ部屋のどこかに手紙を行方不明にしたんでしょう」

グレイ(その通りです)

桜「お弟子さんにもケイネス先生にも、ご迷惑ばかりかけて。高校を卒業したら、私も時計塔に来て、しっかりと監視させてもらいますからね」

雁夜「じゃあ、俺は桜ちゃんがロンドンで幸せになれるか監視しようかな」

エルメロイII世「あなたは帰れ」

桜「さすがにそれはストーカーです」

アッド「ドン引きだぜ!」

グレイ「こ、こら!」

雁夜「」

ケイネス「やれやれ、彼女まで時計塔に来たら、また抜け毛の……いや、悩みの種が増えそうだ」




おわり

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