【咲-saki-】京太郎「清澄の怪異?」久「ええ」 (348)


ホラー風、短編集、なんでもありです。

ゆっくり更新。

それでは、はじまりはじまり・・・・・


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456848496


「めりいさん」


ううう・・・・・と最初はそう聞こえたーーーーーような気がした。

ううう・・・とか、ぐぐぐ・・・とか、何か動物の鳴き声めいた、妙な音。

鳥? いや鳥とは違う。

人の声?・・・そう言われるとそんな気がする。


ふと目を開ける。

朦朧としつつ辺りを見回す。

暗い部屋・・・部室だ。

月明りがほんの少しだけ差している。


俺は今、部室のベッドで横になっている。

・・・・・うう、うううう。

目を開けてなお、音が聞こえている。


「んぅ。」

女の人の声だ。

ギョッとしたが、すぐに平静を取り戻す。

何だ、隣で寝てたのか。

横へ顔を向けると、こちらに背を向けて、部長・・・竹井久が寝息を立てている。


突然、

ウ"ィィィィィィィィ、ウ"ィィィィィィィィ、

バイブが鳴る。勿論、ケータイのだ。


ピッ

「もしもし、キョウチャン?私今、・・・・・うう・・・・」

「何?咲か?どうしたんだ?」

隣の久を起こさないように、小声で話す。


うう・・・・・うう。

あぁ、うるさい音だ。

一体どこから聞こえてくるんだ?

さらに朦朧とし始めた意識の中で考える。


「今、・・・ううっ・・・にいるの」

「なんだって?よく聞こえない?」

煩い音のせいか、こちらの神経までおかしくなりそうだ。





「だから、今キョウチャンの、 と な り に い る よ。」ブチッ




「ひっ!!」

声にならない声を出す。

ベッドの隣の空間・・・暗闇に目を凝らす。


・・・・ううう。


暗闇の中で何かが光って見えた。

刃物? 刹那、全身が委縮する。

あ、あれは、まさか、・・・・・いや、咲がそんな事するはずがない。

、と頭の中で否定・・・する。


ううっ・・・・・・う・・・

すぐさま、隣で寝ていた久を起こそうとする。

「おい、久、起きろ。」

久の体を揺さぶる。

ぐわんと、まるで人形のように久の体が回転し、ベッドから落ちる。

「あ、・・・・・ああぁ・・・・・」

な、なんで、こんな・・・・・恐怖のせいか、驚愕のせいか、声が出ない。


弱い月明りだが、しかし、その部分だけははっきりと見える。

首から・・・久の首から・・・・・異様なものが飛び出している。

うぅ・・・・・ううう・・・・・いや、何かが首に突き刺さっている。


・・・・・包丁だ・・・うう・・・


恐怖でねじ曲がった久の顔、そしてその口から「・・・・うう・・・・んぅ・・・・ううう」


コトッ、コトッ、コトッ

何者かが、闇の中から月明りのもとへと姿を現す。


「あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」



カン

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)



以上、「めりいさん」でした。

徐々に近づく恐怖も怖いけど、いきなり隣に来てもいいじゃないか・・・・・


次の怪異話の構想を練ってきます。

アイデア?要望?等があればコメントしていただけると嬉しいです。

それでは・・・・・・ううぅ・・・・

ヒエッ

うーん、結局最後まで「うぅぅ」って何が言ってたのかよくわからんな
久死んでるし電話は切れてるし、他に何か鳴るようなものあったかな


>>10

人というものは意外と生に執着するものです。

久はまだ・・・・・ぎりぎり・・・・・ね。


>>9に捧ぐ。

「ヒエッ」


「あ、染谷先輩! おはようございます・・・って、もうお弁当食べてるんですか?」

「おお、咲、おはよう。弁当は2つ持ってきてるけん、大丈夫じゃ。」

そういう問題じゃないような・・・・・


そこで目線を下ろし、ふと気づく。


「あれ、その腕の包帯・・・?怪我でもしたんですか?」

「ん・・・?・・・ヒッ・・・・・
  (一瞬、染谷先輩の顔が歪んだ・・・・・気がした。)
  ・・・・・怪我?まぁ、そんなもんじゃ・・・。」

「どうじゃ、包帯の下・・・・見てみるか?・・・・咲?」

染谷先輩がこっちを真っ直ぐと見据えて・・・・・いない!!

「あ・・・・・・・あぁぁ・・・・・・・」

恐怖で言葉がうまく出せない。


染谷先輩の目は、あぁぁぁ・・・、ギョロギョロと四方八方を・・・・・不規則に向いている。

今にも目玉が取れんばかりに・・・・・左右の目が別々に・・・・・あぁぁ・・・・・


「どうしたんじゃ?咲? 大丈夫か?」

気が付くと、"いつもの"染谷先輩が心配そうな面持ちでこちらの顔をのぞき込んでいる。

「あ、あぁ、い、いえ、大丈夫です。」

何だか恐ろしくなり、そそくさとその場を離れる。


放課後になり、何事もなく部活が始まった。

染谷先輩は実家の雀荘"Roof-top"の手伝いがあると言い、先に帰っていった。

そして、部活も終わり帰宅する。


部長、京ちゃん、優希ちゃん、和ちゃんの順に別れ、一人で歩く。


住宅地に差し掛かったあたりで突然、

キェェェェェェェァ、ア"ァァァァァァァァァァ、ギェァァァァァァァ、

おぞましい声・・・・・の様なものが聞こえてきた。


付近は、夕焼けで全ての家、屋根、木・・・・が紅く、紅く染まっている。

まもなく訪れるであろう闇を渇望するかのように、その声・・・・・

  ・・・・・キェェェェェェェェェェ・・・グァァァァァァァァァァ・・・・・

は、こだまする。


全身に力が入り、半ば走るような状態で帰路を急ぐ。


・・・・・ガァァァァァァァァ、ヒァァァァァァァァァ・・・・・

しかし、その声の発生源へと徐々に近づいていっている・・・・・ような気がする。

「あ、あそこだ!!」

何故かしら、本能めいたもので、その声・・・・キィィィィィィィィィィ・・・・なるものの発生源を直感した。


「なあんだ、武道場か・・・・・」

大方、剣道でもやっているのだろう。

剣道は声をきちんと出さなければ、判定されない・・・・・確かそんなルールがあった・・・・・はず。

恐怖もなくなり、道場前を過ぎる時に横目で中を覗く。


「ッ!!!!」

染谷先輩!!??


入口の僅かな隙間からではあるが、その姿が染谷先輩・・・めいたもの・・・であることは確信した。

こんなところで何を・・・・・。


  ・・・・・キィェェェェェェェェ・・・・・ビィィィィィィィィ・・・・・・


この声がまたおぞましいものに聞こえてきた。


本能が中を覗いてはいけないと言っている・・・・・気がする。


しかし、足はふらふらと入口の方へ向かう。

・・・・・・キェェェェェェェ・・・・・

隙間を覗くと、そこには、・・・・あぁ・・・・・・そんな・・・・・・

染谷先輩は腕の包帯を外して、・・・・・・いやぁ・・・・・・・あぁぁ・・・・・・・・

  ・・・・・・・・ヒェェェェェェェェ・・・・・・・・ヒエッ・・・・・・・・・ヒエッ・・・・・・・・

何か甲高い声・・・・ヒェッ・・・・を出して・・・・・・・あああぁぁ・・・・・・


腕を、腕を、・・・・・・いやっ・・・・・・それは、皮を剥くやつ・・・・・・・野菜の皮を・・・・・・・・

あぁぁぁ・・・・・・・野菜ではなく、自分の腕を・・・・・・・・ヒェッ・・・・・・


・・・・・ヒェェェェェッ・・・・・・ヒエッ・・・・・・


カン



以上「ヒエッ」でした。

変な擬音とか怖いですよね。


そういえば最近、隣の民家がうるさいんですよ。

今度覗いてみますね・・・・・ヒエッ・・・・・

ヒエッ
やめてくれよ眠れなくなる


「私の京ちゃん」



ガチャ

京太郎 「ただいまー」

京太郎 (あれ? 誰の靴だろ・・・ お客さんかな?)

チラッ、リビング ノゾキー

京太郎 「あ、あぁ、あれは・・・・・」



...
......
..........
......
...


咲 「京ちゃん、おはよ。」

京太朗 「ん、あぁ、咲か。おはよう。・・・イヒヒ。」

咲 「どうしたの京ちゃん? 何だか、今日・・・・・キモイよ。」

京太朗 「おいおい、朝からそれは酷いぜぇ、咲ぃ~・・・イヒヒ。」

咲 「はぁ~。どうせ変なものでも食べたんでしょ・・・? ほら、早く行かないと遅刻しちゃうよ。」


咲 (うぅ~ん、今日の京ちゃん、なんだかいつもと違うような・・・? キモイせいかな・・・)




...
......
..........
......
...



咲 ペラ・・・ペラ・・・


京太朗 「咲ー。 やっぱり此処に居たか。」

咲 「あ、京ちゃん!」

京太朗 「まーた読書か。 そろそろ部活の時間だぞ、行こうぜ!・・・イヒヒ」

咲 「あ! もうそんな時間か。」

咲 (今日一日見てたけど、やっぱりいつもの京ちゃんか・・・・・キモイけど)


京太朗 「イヒヒ・・・さっ、早く行こうぜ!」タタッ

咲 「ちょ、ちょっと待ってよっ!!」ドサッ

京太朗 「おい咲。本落としたぞ・・・・・ウギイイ」サッ

咲 「う、うん。ありがと。京ちゃん・・・」ウケトリー

咲 (ど、どうしたんだろ京ちゃん・・・? そんなに本が嫌だったのかな?)




...
......
<<「鉛の夜」 ハンス・ヘニー・ヤーン>>
......
...


タタタッ

咲 「はぁ、 はぁ、 もう速いよ京ちゃん。」

京太朗 「咲は運動音痴だからなぁ~・・・・・イヒヒ」

咲 「むぅ~、またそうやって私を馬鹿にして!」

京太朗 「いひひ、悪い悪い。 さっ、後は階段を昇れば部室だぞ・・・おひめさま・・・・・イヒヒ」

咲 「はいはい」

咲 (やっぱり何処か・・・変・・・?)


京太朗 「イヒヒ、そうだ咲。・・・・・その前に・・・」

咲 「ん・・・何?京ちゃ ムググッ

咲 (え、な、何? 京ちゃんっ・・・ キ、キキ、キス・・・?)


咲、京太朗 「「んん・・・んんぅ・・・・」」


咲 (嫌だ・・・やめて・・・、怖い・・・・・苦しいよ・・・京ちゃん・・・・)

プハッ


咲 「はぁ、 はぁ、 き、京ちゃん。 やめて!こんなこと・・・」

京太朗 「はぁ!? 俺たち幼馴染なんだし・・・いいだろ? なぁ・・・イヒヒ」カチャカチャ

咲 「京ちゃん、やめて! 本当に怒るよ!!」


京太朗 「イヒヒ・・・はぁ、はぁ・・・いひひひ・・・」ボロン

咲 「ひっ!」

咲 (やだ、近づかないで・・・誰か助けて・・・お願い・・・)



ガヤガヤ

優希 「のどちゃんのせいで、来るのが遅れちゃったじぇ~」

和 「何を言ってるんですか! 優希が日直をさぼるのがいけないんです!」

ガヤガヤ



咲 (和ちゃん達だ・・・お願い気付いて・・・・・助けて・・・)

京太朗 「チッ!・・・いひひひひひっ・・・・ヒャァッハハハヒィィィ・・・覚えてろ・・・」タタッ

咲 (良かった・・・助かった・・・)


あれは、私の知ってる京ちゃんなんかじゃない!!

皆は気づいてないみたいだけど、私には分かる!!

前の京ちゃんは何処に行っちゃったの?

私の京ちゃん・・・私の・・・私の知ってる須賀京太郎を返して!!


カン



以上「私の京ちゃん」でした。

今回は、咲ちゃん助かったしハッピーエンドだね。



まだまだ、投下していきます。

ネタ、コメント等々大歓迎です。

それでは・・・・・イヒヒ・・・・・


「開けるなぁ」



母方の祖父が住んでいた家・・・今はもう無いが・・・のことをときたま思い出す。

旅行好きだった祖父は、なんとも言いようのない土産をよく買ってきてくれたものだ。

そうだ・・・たしかタコスを初めて食べたのも・・・祖父の家だった・・・・・ような気がする。


そんな祖父の家は、広い敷地に建てられた古い木造の2階建てで、なんとも不格好な家だった。

とにかく古いものだから、立て付けが悪く開かない窓があったり、雨漏りで使えない部屋があったりもした。ーーーーそんな記憶がある。


そうだ、そう言えば、裏庭に一つ、離れがあった・・・・・ような気がする。

周りを蔦か何かの植物でびっしりと覆われ、本来の小屋の壁はよく見えなかった・・・・・はず。


あぁ、そうだ。

入口は頑丈そうな扉で閉ざされていた。・・・そうだ・・・・・そうだった。

ノブや鍵穴の周りなど、金属でできたところも、ものの見事に錆びていて、開きそうにないな、と幼心に思った・・・・・ような気がする。



一体、中には何があるのだろう?

好奇心と共に、僅かな、ほんの少しであるが、恐怖心が芽生えたーーーーと思う。

父や母に聞いても、危ないから開けちゃいけません、と注意されるばかりだった。


そこである日、私は扉を開けようとしてみた。

錆びたノブを握り、押したり引いたり、叩いたり蹴ったりしてみたが、一向に開く気配はなかった・・・・・はずだ。

ボロボロの小屋のくせに嫌に扉が硬かった記憶がある。


そうこうしていると、

「こらぁぁぁぁぁぁ!!!開けるなぁっ!!!」

いきなり怒号が響き渡り、振り返るとそこには祖父がいた。

今まで見たことないような形相でこちらを睨んでいる。


「やめろっ!!!開けちゃいかん!!!」

厳しい声、表情と同時に、何かしら怯えている様な声と形相であった・・・・・ような気がする。



やがて祖父は他界し、家は取り壊されることとなった。

それ以来、父や母にその離れのことを聞いても、なにそれ?、と言わんばかりの表情でこちらを見てくる。



...
......
..........
......
...




「あら、今日は優希だけ?」

清澄高校麻雀部の部長、竹井久が遅れて部室へやってくる。

「咲ちゃんと和ちゃんはそろって、今日はお休みだじょ。・・・・・染谷先輩は?」

「あぁ、まこは今日、実家の雀荘の手伝いらしいわ。」

「二人だけじゃ、何もできないじょ。」

「え、いや、もうひとr・・・・・」

部長は何か言いかけた様だが、黙って口を閉じた。




「あ、そういえば、優希に朗報よ。」

といって、何やら鞄を探っている。

「あぁ、あったあった、これよ、これ。」

部長から差し出されたもの・・・チラシ?・・・を受け取り、目を通す。


「!! こ、これって・・・」

「そうよ。」

部長が嬉しげに微笑んでいる。

そう!単なるチラシではない、駅前のタコス屋の・・・割引券が付いた・・・チラシである。

「すごいじょ、部長! 流石だじぇ!! 早速行ってくるじょ!」

早速、駆けていこうとすると、

「ちょっと!! 部長の私を部室で一人にする気ぃ~」

部長が不満げな顔で私を見ている。

これはしまったじょ。


「たまには私もタコス屋に連れて行きなさいよ!」

そういい、部長は鞄へと手を伸ばす。

部長が一緒に来るなんて珍しい、そう思い私も鞄へと手をかける・・・



チャリーン



なにやら、金属音がした。

言いようのない不安に駆られ、鳥肌が立った・・・・・・ような気がする。


「あら! 優希、鍵を落としたわよ。」

と部長が言い、落とした鍵を拾う。

「・・・はい、・・・これ・・・・・。」

と言い、こちらに鍵を手渡す。

その時の部長は、どこか・・・遠くを・・・見つめていた。----ように思えた。


「ありがt・・・あれぇ・・・」

部長にお礼を言おうとして、はたと気づく。

これは、 ・・・い・・・かん・・・ 私のカギじゃ ・・・けちゃ・・・・・・いかん・・・・・ 私の鍵じゃない。

「これ、あたしの鍵じゃないじょ」

「・・・・・あら、そう?」

部長は胡乱な顔で答える。


鍵を良く見てみると、・・・鉄製で・・・かなり錆びている・・・ どうしてこんなものが、私のカバンから・・・?

もう一度部長へと目をやると、

「変よねぇ、良くないねぇ」

と呟いている。一瞬、まさか・・・と疑った。

まさか部長のいたずら・・・?

いやいや・・・そんなはずはない、こんな悪戯をして、何の意味がある?




結局、鍵は私が預かり、部長とはタコスを食べて帰宅した。

風呂、夕食、宿題を済ませベッドへダイブする。

「今日はなんだか疲れたじぇ・・・」

そう呟き、すぐさま眠りへと誘われる。


その夜、恐ろしい夢を・・・忘れていた夢を・・・見たーーーー気がする。



...
......
..........
......
...





不格好な家の、湿った薄暗い廊下を抜け、庭へと出る。

スカートのポケットに突っ込んだ右手。

そこには1本の古びた・・・鉄製の・・・鍵・・・が・・・・・

びっしりと蔦が絡みついた小屋、その前へと足を進める。



錆びたノブを左手で押さえ、右手に握った鍵を・・・・・鍵穴へ・・・・・

はまった!そう思った。

ゆっくり、ゆっくりと鍵を回す。


「開けるな!!」

背後からの怒号。タガが外れたような祖父の声が脳内に響く。

「やめろぉ!!開けるなぁ!!」

だが、 ・・・がちゃり・・・ 鍵が開く金属音がはっきりと聞こえた。

「開けちゃいかぁぁん!!!」

祖父へ目をやると、苦しそうにゆがんだ顔で・・・・開けるな!・・・・叫んでいる。



そして、扉が・・・ギィィィィィィィと音を立てながらゆっくりと開く。

いや、内側から押されて・・・・・開かれてゆく。

「いかん!!取り返しのつかないことにっ!!」

祖父は未だに叫んでいる。


・・・ギィィィィィィィ・・・


部屋の中がもう少しで見える。

そのとき、あぁぁぁ・・・やっと私は悟った・・・・あぁ・・・

これは、開けてはいけなかった・・・・・


扉は開かれてゆく。

内側から、ゆっくりと。

あああぁぁ・・・・・何てことを・・・・・



...
......
..........
......
...





「あら、今日も優希だけ?」

「そのようだじょ」

ここ数日、麻雀部の全員が揃うことが少ない・・・・・気がする。


「部長、ちょっとベッド借りるじぇ。」

そう告げ、ベッドへもたれる。

どうも最近よく眠れない。

何だか酷く ・・あ・・ける・・・な・・・ 怖い夢を見ている・・・・気がする。



横目で、何やら落ち着かない様子の部長を見ていると、睡魔が襲ってきた。

あぁ、これから夢の世界へ。そう思った時、


「優希」

「ん・・・部長? どうしたんだじょ?」

部長の一声により、現の世界へと連れ戻される。


「鍵・・・・・貸して」

「・・・鍵? あぁ、此処にあるじょ・・・」

まだ、眠気が拭い切れない頭で受け答えし、部長に・・・鉄製の、錆びた・・・鍵を渡す。


なぜ、こんな鍵を肌身離さず持ち歩いているのか・・・自分でも分からない。


理由がわからないホラーはハテナ???でなんの感慨も湧かないが、理由ありきのホラーこそ楽しめるのは俺が理系だからだろうか



「・・・・・こっちよ。」

そう言い。部長は部室から出ていく。

訝しむ間もなく言われた通りについてゆく。


何だか酷く眩暈がする。それに眠い・・・・・

朦朧とする頭で、何とか部長についていこうと必死に階段を下りる。

・・・下りる・・・

・・・下りる・・・

一体どれだけ階段を下りただろう。

もうとっくに、1階に着いているはずだ。----と思う。




やがて部長の足が止まる。

どうやら、一番下の階・・・勿論1階のはずなのだが・・・のようだ。

そこには、人ひとりが通れるだけの狭い廊下・・・いや、もう洞窟と言ってよいだろうか・・・が真っ直ぐに続いているだけだ。

1階じゃない?・・・上手く働かない頭で必死に考えていると・・・


「・・・この先よ。」

部長は足早に歩いていき、廊下の突き当りで再び足を止める。

ふらふらする体を、壁に手を付き支えながら、なんとか部長に追いつき、顔をあげる。


「いやぁ・・・そんな・・・・・あぁぁ・・・・・有りえないじょ・・・」

廊下の突き当りには、頑丈そうな扉が ・・・・そ・・んな・・・・


   ・・・・・錆びたノブと鍵穴が・・・・あぁぁ・・・・・・・


そして部長は古びた鍵を、鍵穴へとはめる。


「だめっ!!」

「大丈夫よ。」

部長はゆっくりと鍵を回し始める。


「あぁぁぁ、開けちゃダメぇ・・・・・開けるなぁ!!」

思わず叫んでいた。




眩暈がひどい。頭がガンガンする。

「大丈夫よ優希、落ち着いて・・・」

部長が優しく声を掛ける。


・・・がちゃり・・・


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

殆ど半狂乱で絶叫した。

「開けたら、開けたら・・・・・・うぅぅぅぅぅぅ」



「安心して・・・ね?・・・落ち着いて・・・・・ はい、優希、これを返すわね。」

そう言って私の方に、鍵穴から抜いた鍵を返す。








「おかげでちゃんと閉めることが出来たわ。これでもう大丈夫よ。」







カン



以上「開けるなぁ」でした。

やるな!と言われたら、余計に・・・ねぇ。

ともあれ、今回もハッピーエンドですね。



こういうホラーって人気ないんですかね。メゲルワ。

今度は、サスペンス調に挑戦・・・・・多分。



>>21>>41 に捧ぐ。



「眠れない夜にはサスペンスを」





とある日の朝、学校の近くの川・・・天竜川で水死体が上がった。

女性の水死体である。


そしてーーーー。

その第一発見者はこの俺、須賀京太郎だった。




...
......
..........
......
...




住宅地から少し歩くと、川沿いに遊歩道が設置してある。


俺の日課としているジョギングのコースだ。


中学時代からの・・・当時ハンドボール部に所属していたわけだが・・・毎朝の習慣である。


おかげで、今でも体力、筋力共に衰えない。




この前、ハギヨシさん・・・龍門渕高校の執事である・・・に、

   「んっふ、良い筋肉ですね。」

と褒められた。  ーーーーホモかよ。



ともあれ、買い出しの多い麻雀部だ。俺の筋肉も役に立てて、嬉しいだろう。

ピクッ、ピクッ

まるで俺の言葉に応えるかのように、筋肉が震える。・・・まぁ、俺が動かしてるんだけど・・・




気持ちよく晴れた朝だったが、昨晩の大雨のせいで、川はかなり増水している。

普段より激しい水音と野鳥のさえずりに包まれながらのジョギング、最高である。



ふと、視界の隅に気になるものが映った・・・・・ような気がした。

何か心地よい朝にそぐわないもの、あれは・・・なにか・・・?


・・・川に何か緑色のものが・・・・・

増水している川はまさに濁流だ、当然の如く濁っている。

しかし、その緑色の・・・・・水草?の様なものだけが、この清々しい朝に似合わない異彩を放っている。



妙だな・・・と感じたのは、何歩か足を進めて目を凝らしてみたときである。


あれは・・・・・そうだ、川にはあるはずがない・・・・・

 ・・・あぁ・・・そんな・・・・・




刹那、

「あれはワカメですね。」

隣から声がかかる。

一瞬緊張したが、声の主を確認して安堵した。


「ハギヨシさん!」

「えぇ、"奇遇"ですねぇ・・・・・須賀京太郎君。"たまたま"ジョギングしていたんですよ。」ンフッ


なんだよ、ホモくせぇなあと思いつつ尋ねる。


「それよりもハギヨシさん、あれ・・・」


「えぇ、どこからどう見ても、ワカメですね。」

おかしい、ワカメは川で取れただろうか?・・・・・はて




「なぜあんなところに・・・・・ッ!!!」

ち、違う・・・・・あれは・・・・・。


よく見るとワカメに胴体らしきものがあり、手足の様なものも確認できる。


「も、もしかして・・・・・人・・・?」

「どうやら、その様ですね・・・」


体が硬直して動けない俺をよそ目に、ハギヨシさんは何処かへ・・・恐らく警察だろう・・・電話をしている。



数分後、警察が駆け付け、死体を引き上げる。

俺は未だに、半ば意識が飛んだような状態でそれを見守っていた。


やっと意識が正常に戻り、帰路へ着こうとしたとき、

「すみません。」

警察の方から声がかかった。

どうやら死体の顔の確認をして欲しいらしい。

初めは戸惑ったが、最初に見つけたのは俺だ、と腹をくくり顔を確認する。


水死体の顔の部分だけ、布が取り払われる。


「あぁぁぁ・・・・・、そんな・・・・・、・・・どうして。」


心の底では分かっていた。この人物がだれであるか。


しかし否定したかった・・・・・





「そんな・・・・・染谷先輩・・・・・」



あぁぁぁぁ・・・地面にがっくりと膝をつく。


・・・・・そこではたと気づく。

染谷先輩の・・・腕・・・・・どうして、こんな・・・・・

最近、先輩が腕を怪我した・・・と言っていた・・・のは知っていた。


・・・しかし、・・・これは怪我ではなく・・・・・あぁぁぁ・・・・

緩んだ・・・・包帯の隙間から見えた腕に戦慄する。


・・・・・あぁぁ・・・・・・・どうして・・・・・


だが、心の底で・・・やはり、と思う自分がいた。


・・・・でも、・・・それでもどうして・・・・色が違う・・・・・

意識が遠のいて行くのが分かる。


「京太朗君ッ!!!・・・・・んっふ・・・」

遠くでハギヨシさんの声が聞こえる・・・・・やっぱり・・・・ホモかよ・・・・・


 ・・・そこで意識が途絶えた・・・



>>55
ミス
京太朗 -> 京太郎

あの話の後でこのミスは痛いです。



...
......
..........
......
...




んんんんんん

   んんんんんん

「うぅ~ん」

ごろり、と寝返りを打つ。

   んんんんんん

んんんんんん

「あぁ~、うるさい。」

ダンッ

投げつけた枕が本棚にあたり、バサバサッと本が落ちてくる。


   んんんんんん


それでもこの不快な音は止まない。




「もう我慢できん!」

そう言うと、眼鏡をかけることなく、近くにあったスプレーを掴み、


んんんんんん


「これでもくらえ!!」プシュー

部屋中にありったけの殺虫剤を撒く。



   んん・・・・・ん・・・・・



・・・・・ん・・・・・




「ふぅ」

不快な音・・・羽音も無くなり、落ち着くと眼鏡をかける。


ケータイを開き時刻を確認する・・・が、


「はぁ~、そうじゃった。」


ケータイの電源は入っていない。

以前からのクセで、ケータイの電源は切っている。

 ーーーー前は、迷惑電話が多くかかってきていたものだ。

竹井久部長が、それじゃ携帯の意味ないじゃない、と言っていた。

全くその通りである。




机上の時計を確認すると、午前3時過ぎ。


「目が冴えてしもうたわ。」


そう呟くと、何ともなしにテレビのスイッチを入れる。



TV 「・・・ショッピングの時間です。今日は・・・」


「ま、この時間はやってないかぁ」


TV 「・・・なんとこれ、野菜の皮がスルスルと・・・」


午前3時過ぎ、長野ローカルで面白い番組がやっている訳がない。


TV 「・・・他の・・・と比較してみましょう・・・」


「何か飲むか」

立ち上がり、飲み物を探す。


TV 「・・・この人参の皮なんて一瞬で・・・」


「ぷはぁ~」

豪快に飲み干すと、またベッドへと戻る。


TV 「・・・このピーラー、今なら何と ピッ


テレビを消し、また眠りの底へと潜ってゆく。


んんんんんん

   んんんんんん




...
......
..........
......
...




「京ちゃん、悪魔っていると思う?」

「ん? どうしたんだ咲? 突然。」


放課後、咲と二人で下校中だ。


実はこのところ咲の様子がおかしい。

部活に来ても、何かに・・・誰かに?・・・怯えている様子でオドオドしている・・・・・ような気がする。


「まぁ、ダミアンなんてものが実在したら、勝てるわけねーよな。」


「・・・」


咲は押し黙ってしまう。

?今の発言は何かまずかったか・・・



「咲、最近何か困ってることとかあるか・・・? 俺たち一応友達・・・というかその、俺は親友だと思ってるし、・・その・・・・」

恥ずかしくなって、それ以上のことが言えなくなる。


「・・・うん。ありがとう、京ちゃん・・・」



「「・・・」」沈黙。




「うん、そうだよね。京ちゃんには話しておくね・・・」

何かを決意したかのような表情で咲は話し始めた。



「実は先週、染谷先輩が・・・・・

   ・・・・ヒェッ・・・・・

   ・・・・・・・・・・・・

   ・・・・・・・ヒエッ・・

 それで、私怖くなって・・・」


聞いていた俺は、言葉を出せなかった。

 いや・・・・まさかそんな・・・・・

しかし、咲が嘘をついているとは到底思えない。


確かに染谷先輩は、怪我をした、と言って腕に包帯を巻いている。


しかし、狂った奇声 ・・・・ヒェッ・・・・ をあげる姿は想像できない。




「京ちゃん・・・・どうしよう」

咲が涙ながらに訴えてくる。


うむ、今の染谷先輩で不審な点はあるか・・・?


・・・・・あぁ、一つだけ・・・そうだ確かに・・・・あの色が・・・・普通ではない・・・・・・




その日は、怯えた咲を家まで送っていき、別れた。




翌日




部室へ向かうと、咲がすでに来て、本を読んでいた。

夕日が差し込む部室で、一人本を読む佇まいは、まさに文学少女そのものだろう。

と、感傷に浸っていると、咲がこちらに気付いた。


「あ、京ちゃん。」

「おう、咲! 大丈夫か?」

「うん、昨日話したおかげで少し楽になった。」ニコッ

「そうかそれは良かった。」


咲の顔に笑顔が戻り、少し安堵する。




そして咲に、染谷先輩のことを部長にも相談しないかと持ち掛ける。

もし咲の言うことが、本当に本当ならば、俺たちの手には負えないだろうと思ったのだ。

咲にもそのことを伝えると、彼女も同意見のようで・・・・・ちょうどそのタイミングで、


「あら、今日は二人か」


部長が部室へとやってきた。


咲へと目配せし、意を決して部長へ染谷先輩のことを伝える。




部長は終始落ち着いた様子で、ふむふむと頷きながら咲の言葉を聞いていた。

咲が一通りのことを話し終えると、




 「それは、悪魔ね。」



と、部長はきっぱりと言い切った。




俺と咲が呆気に取られているのを気にもせず、部長は続けて、


「私も少しはおかしいと思っていたのよ。でも、今の話を聞いて確信したわ。まこは悪魔に取りつかれている。 ・・・・・それにあの色・・・・・良くないわねぇ・・・・・・」

後半はブツブツと独り言のように呟いていた。



「じ、じゃあ、どうすればその・・・悪魔を追い払えるんですか?」

咲が部長に尋ねる。

「お、お寺とか・・・?」

「うーん、須賀くん、お寺は良いセンいってるけど・・・・・悪魔祓いはお寺では無理ね。」

「それじゃあ・・・」


身を乗り出す俺と咲を制し、余裕の表情で部長はこう答えた。





「私の知り合いに、・・・・・悪魔払いの専門家がいるのよ。」





...
......
..........
......
...




後日、染谷先輩の家の前に集合した。




俺、咲、部長、そして悪魔祓いの専門家、内木一太 ・・・うちの生徒会の副会長・・・ である。


 ーーーー優希と和には、このことを話すタイミングがついぞ無かった。


部長が、副会長 ・・・内木一太は部長と同じ3年生である・・・ を連れてきたときは、俺と咲も度肝を抜かれた。


まさか、副会長が悪魔払いの専門家であるとは、誰も思うまい。


染谷先輩が、あいつはロリコンじゃ、と言っていた印象しかない。・・・・・ごめんなさい、ロリコン副会長




顔合わせの後、副会長オブロリコンに、染谷先輩の様子を話そうとしたら、すごい剣幕で怒られた。

どうやら事前に情報がない方が、良いらしい。


部長曰く、染谷先輩の名前も含め、ロリコンは何も知らず、ここにきているらしい。


そんなので、悪魔が倒せるのか・・・?




ロリコン先輩に以前悪魔を祓ったことがあるのか聞こうと、そちらを向くと・・・誰かと通話中の様だ。


「うん、うん、分かった。・・・・・分かってるよ。」ピッ


俺と目線が会うと、キングオブロリコン副会長は申し訳なさそうに、妹が心配症でね・・・と言う。

その時、部長が俺に耳打ちした。


「先月、女の人に振られたショックで色々あって階段から落ちたんだって・・・・・・なんでも、それで頭を打って、悪魔払いの能力が付いたとか・・・」


色々突っ込みたいことはあったが、今はそれどころではない。





「では、行くわよ。」


部長の合図とともに、染谷先輩の家へと足を進める。


染谷先輩の親が経営している雀荘"Roof-top"から少し歩いたところに、染谷先輩の家があった。

塀で囲まれた敷地の中に、平屋が立っている。


内木ロリコン先輩は、雀荘のほうをチラチラと気にしていたみたいだが、そこにはロリメイドはいねーぞ、と内心毒づきつつ、家の方へと足を踏み入れる。



この時間は雀荘の方にいるご両親にも、家に入る許可をもらっている。

最近娘が学校にも行かず、引きこもっていたら、それは心配するだろう。

友人たちが来てくれたのを、とても喜んでいたようだ・・・・・まぁ、悪魔祓いに来たんですけどね・・・・・





家に入ると、俺と咲、部長は口を閉ざし、すべてを、副会長に委ねる。

染谷先輩の部屋は廊下の突き当りらしい。


廊下を進むにつれ、以上に気温が下がる・・・・・気がする。


先程から鳥肌が止まらない。


咲も同じ様子らしく、フルフルと肩を震わせている。




突き当りの扉を開ける。


 ギギィィィィィィィ・・・・・・


と大きく軋みながら扉が開く。



副会長を先頭に部屋へ入る。


グチョ


足元に不快な感覚が・・・・・水だ・・・・・

・・・一瞬で鳥肌が全身を回る

フローリングの床も、天井も、壁も・・・・・全てから水が、まるで染み出しているかのように・・・・・


・・・・・寒い・・・




部長へ目をやると、部屋の隅の一点を見つめている。


俺もそこを見ると、・・・





「うんんんんんん、んんんんんん・・・・・」



何だかワカメの塊・・・・・の様なものが呻き声をあげている。


・・・あれは・・・・・染谷先輩だ!・・・・・


"青い"包帯をした腕で、膝を抱きうずくまる形で、部屋の隅で唸っている。


「・・・んんんんんん、うううううううう・・・・・」



顔の様子は、ワカメが・・・・・髪がかかっていて全く分からない。


それに、乾燥ではなく生ワカメのように、じっとりと濡れている。


  ・・・・・それに、この部屋の臭いもなんだか、ワカメの様な・・・・・いや、それは無いか・・・・・

恐怖のせいで、あらぬ妄想までしてしまう。




副会長が染谷先輩に近づいてゆき、何かを唱え始める。

ロリコンと呼ばれるようになった元凶を倒すかのように、十字を切り、唱えている。



しばらくして、


「・・・・ヒェェェェェェェェ・・・・・・ギァァァァァァァぁ・・・・・」


突然、染谷先輩が叫びだした。


「いやぁっ」

咲が叫んで部屋を飛び出していく。

後を追おうと思ったが、恐怖の為か、足がうまく言うことを聞いてくれない。




「・・・・・・キィィィィィィ、・・・・・・・」



狂ったように叫ぶ染谷先輩に対して、副会長はまだ何かを唱えている。



そして、



「水の悪魔よ、出て行けぇぇッ!!!!」

大きく叫んだかと思うと、染谷先輩がぐったりとうなだれた。


未だに髪に隠されて、顔の様子が伺えない。





副会長が染谷先輩に近づいてゆき、髪を整え、顔色を窺う。



「ヒィッ・・・・・そんな・・・・・まさか・・・・・あぁ・・・・・」

突然、副会長は血相を変える。



その声に反応したのか、ううん、と染谷先輩が目を開ける。



「何だ!お前は!!」 

濡れた髪を狂ったように掻き毟りながら・・・ほどけた"青い"包帯を振り回しながら・・・染谷先輩が叫ぶ。



「帰れぇぇぇぇぇぇ!!! 来るな!! 二度と来るなぁっ!!!!」




...
......
..........
......
...






ほとんど追い出されるようにして、染谷家を後にする俺たちだった。

果たして、悪魔祓いは成功だったのか・・・・・それとも・・・・・



終始無言の副会長に声を掛ける。

「失敗・・・?だったんですか?」

胡乱な顔をあげて、副会長は答える。

「完全に・・・というわけではないけど・・・」

「祓いきれなかった、ということですか?」

先程落ち着きを取り戻した咲が尋ねる。

「うぅん・・・なんとも・・・・・」




俺は、最後に一つだけ、気になっていたことを聞いた。


「水の悪魔っていうのと、"青色の"包帯は関係あるんですか?」

「あぁ、それは・・・うん、悪魔にもいろいろ居て・・・例えば水だと青とか、火だと赤とか・・・だね。」


・・・・・それ以降は誰も口を開こうとはしなかった。




...
......
..........
......
...





天竜川に浮かんだ染谷先輩の死因は、溺死だった。


このことを、部長に伝えると

「水の悪魔に取りつかれた人の末路は、だいたい水で死ぬんですって。」

と言っていた。


悲しむ風でもなく、嫌にあっけらかんとしていた・・・・・ような気がする。


まぁ、俺もあまり染谷先輩の死を実感できていないのが現状だ。




...
......
..........
......
...





長野県の刑事が、清澄高校麻雀部の部室を訪ねてきたのは、それから数日後のことだった。



部室には、俺、部長、副会長の3人がいた。

刑事たちは、部長と副会長の顔を見るや否や、すぐに連れて行った。


なにやら染谷先輩の死に関与していたらしい。



・・・・・まさか・・・・・そんな・・・・・・あぁ・・・・



「そんなはずありません・・・・・部長と、副会長が・・・・・だって染谷先輩を悪魔から必死に救おうとしたんですよ!!」

俺は叫んでいた。


当たり前だ、同じ部活の仲間同士で、殺すなど・・・・・・そんなこと・・・・・・



そこで刑事さんは一言、こういった。



「色、ですよ。」



色?


ああああぁぁ・・・・・・そうだ。

あの時、染谷先輩の、血の気の引いた顔を確認したあの後・・・・・・


・・・・・あぁ・・・・・確かに・・・・・・・色が、包帯の色が・・・・・・・・・・おかしいと思った・・・・・


俺があの時見た包帯の色は・・・・・"赤色"だった・・・・・火の・・・・・悪魔・・・・・




部長の言葉を思い出す。

「例えば、火の悪魔は水を極端に嫌って、避けたりするらしいわよ。」


水を嫌う・・・・?

・・・・あぁぁ・・・・・ではなぜ、増水した川に近づいたのか・・・・・





これは後で警察の人から聞いた話だが、聞いてみるとなんとも呆気ない。ありふれた事件だった。

詳しいことは知らないし、語る気もないが、概要はこうだ。



あの日、悪魔祓いの日、"水の"悪魔はきちんと祓われていた。


そして、染谷先輩は正気になって目を覚ました。


・・・そこで、副会長、内木一太の顔を見たのだ。






どうやらあの副会長、内木一太は染谷先輩にしつこく付きまとい、ストーカー行為を繰り返していたらしい。

なんでも、電話をかけ続けたり、実家の雀荘にまで押し掛けたそうだ。

家の場所までは、知られなかったらしい。



ある日、部室の前で待ち伏せしていた内木一太は染谷先輩と揉み合いになり、不幸にも、内木一太は階段から転げ落ちた。


そして、軽度の記憶障害と共に、悪魔祓いの能力に目覚めた。


 ーーーー女の人に振られた・・・かぁ~、誰かの言葉を思い出す。





だから、正気に戻った染谷先輩は、目の前にストーカーの顔があり驚いた。

  ・・・・・くるな!・・・・・と叫んだ。



同じく、悪魔祓いの専門家としての内木一太は相手の素性を聞かない、つまり、対象が染谷先輩だとは知らなかった。


それで、お祓いが終わった後、顔を覗き驚いた。

  ・・・・・まさか・・・・・と。

この瞬間、もしかしたらすべてを思い出したのかもしれない・・・・・





後は簡単だ、内木一太は今の彼女、竹井久と競合して、染谷先輩を荒れ狂う濁流の中へと突き落とした。

詳しいことは分からない、階段を落とされた復讐かもしれないし、ロリコンと呼ばれた復讐かもしれない。



酷く偶然にも染谷先輩は、水の悪魔と入れ違いで火の悪魔に憑りつかれていた。



二人は夜、暗闇と大雨の中、染谷先輩を川の中へ突き落としたのだろう。


・・・・・腕に巻かれた包帯の色・・・赤色・・・を確認せずに・・・・・




刑事さん曰く



「もし包帯の色が青だったら、確実に自殺で処理されていたよ。でも、赤、つまり火の悪魔は、水を嫌うからね。んっふ・・・」


だそうだ。  ーーーーって、お前もホモかよ。




もはや、これ以上の興味は持てなかった。

警察の人は、単なる・・・痴情のもつれ、と言っていた。

・・・・・あぁ、なんてありふれた事件なのだろう。

咲が見てきたという恐ろしい出来事も、なんだか全て胡散臭く思えてきた。




「はぁ~・・・」

ため息を漏らし、一つ重大な事実に気が付く。


「あいつ、ロリコンじゃなかったのかっ!!!」




カン





以上「眠れない夜にはサスペンスを」でした。

もう短編じゃないね。疲れた。



次のネタはもうあるんですけど、疲れたので、少し時間を空ける・・・・・かもしれません。

そもそも、見てる人いるのかね・・・・・

では、また。


いつ更新来るのかとずっと起きて待ってたよ



>>93に捧ぐ。
「ずっと待ってた」




「ふふっ。」

思わず、頬がほころぶ。


そう、今日は待ちに待った日である。

部活の仲間たちとキャンプへ行くのだ。


「ふふっ、楽しみですね。」


昨晩は胸の高ぶり、興奮で良く寝付けなかった。


「これと・・・・・あれと・・・・・」カチャカチャ

荷物の最終確認をしてゆく。


「よしっ・・・・・行ってまいります。」

父親に向かって挨拶をし、元気よく家を出る。




...
......
..........
......
...




「ついたじぇ~っ!!」

「こら優希、走ると危ないですよ。」

そう言う私も小走りに駆け出す。

「ふふっ、ついに着きました。」



バスに揺られ1時間半、そこから徒歩で15分。


あたりは山々に囲まれ、眼前に広がる湖は、光を反射してキラキラと輝いている。

「ほぉ~、なかなか良いとこやのぉ。」

「だから言ったじゃない。素敵なとこだって。」

「よし、みんなの荷物はここら辺で・・・・・次はテントだな・・・・・ふう~」

「きょ、京ちゃん手伝おうか・・・?」

ワイワイ、ガヤガヤ




...
......
..........
......
...




~時は遡り、先週6日の金曜日~



「来週は、キャンプに行くわよ!!」




恐らく部員の誰もが、また部長が良からぬことを考え始めた、と思っただろう。


まぁ、確かに来週は金土日の三連休で、出かけるなら絶好の日程ですけど。


「ほぉ~、で、何処に行くんじゃ?」

染谷先輩だけは、またか、とでも言わん表情で冷静に答える。

「ふふん、よくぞ聞いてくれました。」

部長が、バンっとホワイトボードを叩くと回転し、裏側にはキャンプの詳細が書かれていた。



はぁ~・・・、キャンプに行く? ではなく、行くわよ! と言われた時から何となく想像はついていたが・・・・・どうやらもう決定事項らしい。



「来週の金曜の9時半に学校前のバス停に集合ね! そこからバスで、ここ! 結晶湖に向かうわ! そこでキャンプよ!」


ドクンッ、私の心臓が跳ね上がる。


「け、結晶湖・・・?」

咲さんが尋ねる。

無理もありません、そこまで知名度のある場所ではないですからね。

「学校近くを流れる天竜川の上流に湖があるんです。それが、結晶湖というんですよ。咲さん。」

ふふん、自信たっぷりげに、やや興奮した様子で答える。



それからというもの、キャンプが楽しみで楽しみで、浮ついた日々を過ごした。

時折、咲さんに心配されることもありましたが、大丈夫ですよ咲さん。


 少し、この衝動が抑えられないだけですから・・・・・




...
......
..........
......
...





男、須賀京太郎、この鍛えられた肉体を生かしてせっせとテントを設営してゆく。


テントを立てていると、あることに気が付いた・・・・・

 ーーーー顔のにやけが止まらない。


・・・・・そう、3人向けのテントが二つしかないのだ・・・・・


うひょぉぉぉぉぉ!!


思わず叫びそうになる・・・・・危ない危ない。

此処は紳士であれ・・・・・そう心に言い聞かせ、顔を引き締める。

ここで選択を見誤れば、後で待つ楽園へと行けないだろう。


うわぁ・・・・・和と一緒に寝られるのかぁ・・・・・


いかんいかん、とテント設営へ意識を戻す。




~夜~




テント(染谷まこ、竹井久)

テント(原村和、宮永咲、片岡優希)




寝袋 (須賀京太郎)


「ですよねぇ~」





...
......
..........
......
...





ドクン、ドクン、ドクン・・・・・



興奮で寝付けない。

周囲はもうとっくに暗闇に包まれている。


時折、

ギャァァァァだとか、グァァァァァだとか、

何者かの鳴き声が聞こえてくる。


その声が、さらに自分の心臓の鼓動を、内なる衝動を加速させる。


モソリ、と起き上がる。



 ギャァァァァ、グァァァァァ

先程よりも一層、大きく聞こえた・・・・・気がした。




...
......
..........
......
...




~翌朝~




キャァァァァァ

大きな悲鳴? で目を覚ます。

・・・・・寝袋寒い


時計を確認すると、朝6時前だ。

すると、


キャァァァァァ


「ッ!!咲ッ!!!」

慌てて咲たちのいるテントへ向かう。



「どうしたっ!?」

激しくテントの入り口を開くと、



「ウ"ォェェ・・・・」

思わず嘔吐してしまった。


・・・・・紅い・・・

  ・・・赤い・・・・・


テントの内側や、咲、和に血飛沫が飛んでいる。


そして、その血は・・・・・あぁぁ・・・・・優希・・・・・


 ・・・・・優希の首には・・・・・斧が・・・・・

 ・・・首と言うより、首の下の地面に・・・・・

手斧が貫通してめり込んでいる・・・・・あぁぁ・・・・・




咲はテントの外で激しく嘔吐している。


和は・・・・・意識があるのかないのか、座った状態で、目はどこか一点を見つめている。


よく見ると、テントの内側に血で・・・・優希の血でJ.V.と描かれている。



・・・・・ん?・・・

そこでさらに嫌な予感が頭をよぎった・・・


何故部長たちは起きてこないのか・・・?

・・・あれほどの叫び声、気付かないわけがない。・・・・・まさか

そう思い、急いで隣のテントへ向かう・・・・・



・・・・・うわぁぁぁぁ・・・・・

染谷先輩・・・部長・・・

二人・・・・・だった何か・・・は、もはや見る影もない。


 ーーーー紅い、赤い、朱い。


そこにもまた、J.V.の文字が残されていた。




...
......
..........
......
...





「はっ、はっ、はっ・・・・」

俺今、一人、ケータイを片手に走っている。

湖付近は山に囲まれており、ケータイの電波が入らなかったのだ。

バスは2時間に一本、電波の通じる場所まで走るしかない。



ありったけ叫んで気絶寸前の咲と、どこか胡乱な面持ちで放心状態の和はテント近くのベンチに残してきた。


早く二人のところに戻らねば、と焦るが、一向に電波が入らない。

「クソッ!!」

祈るように、ケータイの画面を見ながら走る。




「繋がった!!!!」

警察に事情を話し、すぐにキャンプ地へと戻る。





 ーーーー待てよ。



先程まで、気が動転していたが・・・・・


"誰が"あんなことを・・・・・

・・・しまった・・・部活仲間が死んだことに驚愕し、考える余裕もなかったが・・・


"何が"起きたかは分かったが、"誰が"やったのか分からない!!


・・・そうだ、あれは動物の仕業ではない・・・・・人間の仕業だ・・・・・




あぁぁ・・・・・この時、二人を置いてきてしまったことをひどく後悔した。




...
......
..........
......
...





「咲っ、和っ!!!」

決死の思いで駆け戻ってきた。

心臓は爆発しそうだ、息が出来ない、視界も霞んでしまっている。


「咲っ、何処だ!? 和っ!!」

辺りを見渡す。


「!!」

この瞬間悟った・・・・・遅かった・・・・・

 ・・・俺が・・・・・二人を置いていったばかりに・・・


「ふらふらとした足取りで、二人のもとへ駆け寄る。」



あぁぁぁ・・・・・何かで切り刻まれたようなあと・・・・・

・・・赤い、紅い、朱い


傍には、"マチェット"が転がっている。


和の顔には・・・・・薄汚れた"ホッケーマスク"が被せられていた・・・・・


・・・・・うああああぁぁぁ!!!・・・・・



もう気が狂いそうだ、いや既に狂ってしまっていたのかもしれない。


「そこに居るんだろ!! 俺も殺せよ!!! 殺してくれ!!!」

湖を背に、森へ向かって叫ぶ。


どこからか、チェーンソーの音が聞こえた・・・・・気がする。



「っはぁ、はぁ・・・・・」

未だに心臓が痛い。

野鳥のさえずりが聞こえる。

風がさわさわと木々を撫でる。





 ーーーー変だ。




此処には、J.V.の文字がない。

・・・・・そう思った



それに、・・・ホッケーマスクは被害者の顔に被せる為のアイテムではない。

"殺される側"ではなく"殺す側"のシンボルだろう。


・・・・・そうだ・・・もちろんそうだ。




近くで がさっ、と音がする。


・・・・・あぁ・・・・・


血だまりの上に倒れていた"彼女が"、おもむろに身を起こすのが見えた。


・・・・・まさか・・・・・


ホッケーマスクを顔に付け直し、投げ出されたマチェットに手をかける。


そして・・・・・。




J.V.のメッセージがここに無いのは当然だった。


殺人はもう一つ起こるのだから。


 ーーーーJ.V.を署名するのは、俺を殺してから・・・か・・・・・





 ~J.V. ジェイソン・ボーヒーズ~






...
......
..........
......
...





心臓が今にも口から躍り出てきそう。


「ふふん。」

来週の金曜日は13日、そして結晶湖・・・クリスタルレイク・・・

「ふふっ、楽しみになってきました。」カチャカチャ

持っていく荷物を選ぶ。 ゴソゴソ

手斧、マチェット、ホッケーマスク・・・・・カチャカチャ



「ふふっ」


楽しそうな・・・・・凶器に満ちた声が部屋に木霊する。





カン





以上「ずっと待ってた」でした。

副題は「-Friday the 13th-」です。

和が初登場だったので、"ハッピー"エンドにしました。



レスありがとうございます。

ネタ切れなので、少し溜めてきます。



>>1です。いくつかネタがあるんですが・・・・・





①「タイトル未定」・・・エロに挑戦

 1.無エロ  激グロ

 2.微エロ  激グロ

 3.激エロ  グロ激激


1.2.3のどれが良いですかね?

また、京太郎の"相手"を募集中・・・A or B。

 A. 竹井久

 B. 原村和




②「アコ」・・・プロット作成中。


③「ホモ熊嵐」・・・内容未定、没になる可能性あり。


④「」・・・ネタ、要望等々募集中。



少々猶予が必要ですので、

お時間がある方はレスして下さると嬉しいです。


希望があれば、グロシーンのみ、全員分作りますね・・・ヒヒッ・・・




それでは・・・・・



壊れてる…壊れてるよアンタ!!

安価は2

乙です
①2B



>>117 >>119に捧ぐ。
 「あい -what a broken world-」






・・・・・静かな夜だな。


ふわふわとした浮ついた頭で、俺は思った。


月明りだけが辺りを照らす。



麻雀部に入部した時から、和・・・原村和の存在が気になっていた。


・・・・・いや逆か、気になったから入部した。





才色兼備とは、正に彼女のことを言うのであろう。・・・・・あぁ、いい女だ・・・・・


俺の幼馴染・・・宮永咲が可哀想に見えるくらい、彼女はその全身から、若くて美しい女性としての魅力を放っていた。


俺以外の男もその甘美な空気に、取り込まれるのは当然だろう。





・・・・・まぁ、今となってはどうでも良い。


その和ともこうして今夜、早くも二人きりになるチャンスが訪れていたのだから。




...
......
..........
......
...






「山登り行くわよ!!」



またか。 部員全員がそういう表情をしていた・・・・・ように思う。


部活も終わり、外はとうに真っ暗。


皆いそいそと帰宅の準備をしている・・・・・そんな時だった。


麻雀部の部長・・・竹井久は突然そんなことを言った。



「行きましょう!! 登山!!」



二度も言わなくても聞こえてる・・・。



「それで・・・、何処に行くんじゃ?」


染谷先輩・・・染谷まこは観念した様に、部長の方を見る。


もう、ああなっては、誰も部長を止められない。






「かざこしの 嶺のつづきに 咲く花は いつ盛とも なくや散るらむ」



部長は続けて、



「風越山よ・・・! 風越山!」


と言う。


「かざこしやま?」


咲が不思議そうに尋ねる。



「あぁ、そういうことですか。」


「どういうことじゃ?、和。」


和には、部長の言わんとすることが分かったのだろうか・・・・・


染谷先輩が説明を求める。






「かざこしのみね・・・です。 所謂、歌枕ですね。・・・で、その基となったのが風越山。」



「流石、和、詳しいわね。」


和はすごいなぁ・・・・・俺も感心した。



「で、何処にあるんじゃ・・・その風越山とやらは。」


「天竜川の支流を遡った所にあるんだけど、・・・・・ほら、風越女子の近くに川が流れてるでしょ・・・あれよ。 ・・・で、その風越女子の裏に見える大きな山が風越山って訳。」




山登り・・・かぁ・・・・・。


どうせ荷物持ちだろうなぁ・・・・・。




...
......
..........
......
...





ベンチに腰掛ける二人。


妖しい月の光を浴びながら、誘うように髪を束ね上げた和の、うなじの白さが、京太郎の心を侵食してゆく。


ほのかに甘い・・・甘美妖艶な香りが漂っている・・・・・気がする。





「・・・・・して」




いきなりそう言われた。


京太郎は狼狽えながら、和の顔色を窺う。


彼女は、何処か遠くを見つめている。


 ・・・その瞳は、艶やかに光っている。





「キス・・・して」



和はうっとりとした表情で、こちらへと視線を移す。


・・・ああ・・・・・なんて甘い・・・




「ねえ・・・・・」


と細く呟き、京太郎の左腕に両手を絡ませる。


甘い香水の香りが、鼻をくすぐる。


・・・・・甘い・・・・・



急な展開に落ち着かず、京太郎は目線を泳がす。


    ・・・・・あまい・・・






「ねぇ・・・須賀くん・・・・・」


あだっぽい笑みをふくよかな唇に浮かべて、和は囁く。



「だめ・・・?」


「でも、俺たち・・・そんな、」


「今はただ、須賀くんが・・・・・欲しい、それだけ・・・」


和と目が合う。


妖しい光を放つ・・・・・甘い・・・・・目。






「抱いて・・・・・んっ」


柔らかな唇を京太郎の口が塞ぐ。


・・・・・あまい・・・・・あまい・・・・・


もうそれしか頭にない。








「・・・・・ん」


いったん唇を離す。


和は満足げに目を閉じる。


「んっ・・・・・」


そしてまた、口を塞ぐ。





首筋へ向かって舌と唇を這わせながら、ゆっくりと・・・優しく胸をまさぐる。


「んんっ・・・・・」



喘ぎ声が高まる。








ー愛ー


・・・・・は、夜の闇を身にまとい、その行為を見る。


ー哀ー









俺たちはもはや、欲望を満たす為だけの、獣となった。


いきり立った俺のペニスをズボンの外へ引き出すと、和はいったん身を離し、自ら下半身の衣服を脱ぎ捨てる。


はだけた下着から白い乳房がこぼれだし、俺の興奮を煽る。


「・・・・・ふぅ・・・んん・・・・・」







ベンチに腰かけた俺の膝の上に、和は自分から跨ってきた。


和の恥丘へと指を這わし、小刻みに手を動かす。



「・・・ああ・・・・・そこ・・・・・」


和は切なそうに声を震わせる。



 ーーーー二人はただただ快楽を貪る。








「何だか・・・・・変なんです・・・・・私・・・」


和の性器はさっきからの愛撫によって、もう十分潤っていた。


恥丘に触れるたびに、中から中から液が溢れてくる。





俺が上半身を抱き支えると、和はペニスに片手を添え、ゆっくりと腰を下ろす。


「・・・あっ・・・・・」


喘ぎ声がさらに高まる。


「んん・・・・・」


・・・・・あぁ・・・・・あぁ・・・・・









腰に絡みついてきた和の両足を持ち上げ、局部の結合を保ったまま、ベンチから立ち上がる。


和は俺の首に両手でしがみつきながら、


「あっ」


悲鳴のように、小さく叫んだ。



そのまま一歩、歩く。


ずんっ、と振動が腰に伝わり、和を突き上げる。



「ああっ・・・・・」








俺と和では30センチ程、身長差がある。



「・・・凄い。 あ、あ、すごい・・・・・」



歩みを進めるたびに、和は妖艶な・・・悦びの声をあげる。


「・・・・・あああぁ、・・・いい・・・・・」



俺の首にぶら下がるような体勢で、大きく上半身をのけ反らせる。


「・・・・・あぁ・・・・・んん・・・・・」








俺は和を抱き上げたまま、座っていたベンチの周りをゆっくりと回る。



「・・・・・んんっ・・・ああっ・・・・・あっ・・・・・」



その後ろ側には、緩やかな斜面があった。



汚れるのも気にも懸けず、俺は和の背中をその斜面に押し付ける。


「・・・・・んっ・・・・・」






頭を振り動かしながら、和は息を弾ませる。


「い、いい・・・?」


喘ぎ声の狭間で、和が問いかける。



「・・・・・気持ちいい?・・・」


「・・・・・あ、あぁ・・・・・」


体の芯から止めどなく生まれてくる快楽に浸りながら・・・・・耐えながら、俺は短く答える。







「・・・・・はっ・・・・・はっ・・・・」


「・・・あっ・・・・・んんっ・・・・・」






月が雲で隠れ、闇が木々を覆う。


二人の動きは次第に加速し、高みへと向かっていく。


「あぁっ、あ、・・・私・・・もう・・・・・」



和が絶頂を迎えようとした、・・・・・その時、











背後の闇の中から、杭を持った影・・・の様なものがすごい勢いで突進してくる。






「・・・・・ああ・・・・・・もう、・・・いく・・・・・」


「・・・・はっ・・・・・はっ・・・・・」









 ズドンッ





「ああああああぁっ!!」


和は絶頂を迎え、大きく背を反らせる。


「えっ・・・?」







杭は京太郎の腰に深く突き刺さった。


腸を貫き、凶器の尖端は勢いを保ったまま京太郎の腹から飛び出し、和の下腹部も突き破った。


和の体内で激しく動いていた京太郎のペニスをえぐる。


杭は和を貫通し、後ろの斜面に突き刺さって止まった。











「えぇっ! なんだ?」


初めは何が起きたのか分からなかった。


和は大きく体を反らせている。




俺は、体に違和感を感じた・・・・・と同時に・・・・・


「!!!!!」


激痛。


言葉が出せない。


和と密着した部分が、黒々と濡れている。





 ーーーー意識が闇に吸い込まれていった。






...
......
..........
......
...











雲が流れ、月が露わになる。






重なる二人を見下ろす影・・・・・


「大好きだよ。キョウチャン・・・・・、 これでもう、ずうっと一緒だね・・・・・」


少女の声が、妖しく漂う。








季節は春。


嶺には風が吹きすさび、桜の花が舞う。


まるで風越山の嶺に立つ少女を歓迎するかの如く。








カン、嶺上開花








以上「あい -what a broken world-」でした。


"愛"の形は人それぞれ、京太郎は少女の"愛"を受け取れたのでしょうか。





和歌によくある"かなし"には"悲"、"哀"、"愛"色んな字を当てますね。


 ーーーー昔の人はどの様に"かなし"かったのでしょう。






あぁ、◯ロシーンに力を入れすぎて、SAN値がやばいです。


本来の◯ロシーンは、今の数倍の文量あったのですが・・・・・流石に公開できないと思いカットしました。




それでは・・・・・・・ふぅ・・・・・




絢辻さんの殺人鬼を思い出した




>>145
あぁ、そう、それ!「殺人鬼」です。
セ◯ックスからの串刺しシーンだけが嫌に頭に鮮明に残っていたので、今回書きました。





>>1です。


只今のネタ在庫


①「あい -what a broken world-」の没ネタという名の、和以外との◯ロシーン抜粋。

 ジャ◯キー・チェン映画のNG集みたいなものです。


②「アコ」・・・エロホラーではなくエロのみの可能性あり。やや難航中。


③「ホモ熊嵐」・・・タイトルで察して下さい。


④「タイトル未定」・・・在庫なし。ネタ、要望等々ありましたら、レスいただけると嬉しいです。



実は未公開分の虐殺シーンを書いたせいで、割とガチSAN値ピンチなんで、休んできます。

(お気に入りの高校、人物、カップリングがあれば"出演"させますよ・・・・・イヒヒ・・・・・)



それでは・・・・・


地味に3が気になる

せっかくだし1も見たいな




ふぅ・・・・・では、いきます。


「あい -what a broken world-」




 ~NG集~


お口直し。気楽に見て下さい。





~TAKE1~





ベンチに腰掛ける二人。


月の光を浴びながら久は、怪しげな、しかし甘美な雰囲気を醸し出す。




「抱いて。」



いきなりそう言われた。


京太郎は狼狽えながら、久の表情を窺う。


艶やかな光を灯す目でこちらを見据えている。





「ねぇ・・・抱いて・・・」


と細く呟き、京太郎の体に腕を絡ませる。


久の髪が京太郎の頬をくすぐる。


・・・・・あまい・・・


甘美な香りが京太郎の情欲を駆り立てる。




「ねぇ・・・須賀くん・・・・・」


妖艶な笑みを唇に浮かべて、久は囁く。






「・・・須賀くんの体が・・・・・欲しいの・・・」


再び久と目が合う。


妖しげな光を放つ目・・・・・




何と答える間もなく、柔らかな赤い唇が京太郎の口を塞ぐ。


どこかで、理性のタガが外れる音が聞こえた・・・・・気がした。







俺はいきり立ったペニスをズボンの外へ出すと、服を剥ぎ取り、久の下半身を露わにさせる。


久の性器にむしゃぶりつく。


「・・・・・んん・・・・・・あっ・・・・・」


じんわりと生温かいものが溢れてくる。





「やらしい。こんなにねっちょり・・・・・」


「いや・・・・・」



羞恥の為か、久は両手で顔を覆う。




俺は目の前の地面へ久を四つん這いにさせる。


「・・・いいよ・・・きて・・・・・」


久は先程よりも一層、甘い声で呟く。




俺は自分の腰を下げ、久に近づく。













「須賀君。 そこ、お尻なんだけど・・・・・」




「えっ!!?」






ハイ、カットー

チョットー、シッカリシテヨ、キョウチャン!!

スガクン・・・・・




「え、・・・えっ!?」



>>1です。

>>147 「んっふ、そんなに愉しみですか。」まだ時間がかかります。ペッコリン

>>148 TAKE2はもう少しかかります。エロッエロナノヲ




~TAKE2~





・・・・・静かな夜だな。


ふわふわとした浮ついた頭で、俺は思った。


月明りだけが辺りを照らす。




隣には、染谷先輩が座っている。







あぁ・・・・・隣に居るのが和だったらなぁ・・・


そう思うと何故か興が冷めてしまった。


 ーーーー帰るか。




...
......
..........
......
...








ハイ、カットー


「って、なんでじゃ!!!」


「なんでわしじゃ、ダメなんじゃ、おおう!!?」


マアマア、マコ、オチツイテ・・・ネ?





>>155
エロはどこですか?(すっとぼけ)




>>158

~TAKE3~






腰に絡みついてきた優希の両足を持ち上げ、二人は繋がったまま、ベンチから立ち上がる。


優希は俺の胸に必死でしがみつきながら、



「んあっ」


悲鳴のように叫び、大きく背中をのけ反らせる。



そのまま一歩、歩く。


ずずんっ、と振動が腰に伝わり、優希を突き上げる。




「ああんっ・・・・・」






俺と小柄な優希とでは、大人と子供ほども体格差がある。



「・・・凄い。 あ、あ、すごいじょ・・・・・京太郎・・・・・」




一歩、歩くたびに、優希は悦びの声をあげる。


「・・・・・あああぁ、・・・いくっ・・・・いくっ・・・・」



俺の首にぶら下がるような体勢で、何度も何度も大きく全身を反らせる。



「・・・・・あぁ・・・・いい・・・・んんっ・・・・・」








俺は優希を抱き上げたまま、座っていたベンチの周りをゆっくりと回る。



「・・・・・いくっ・・・ああっ・・・・・いいっ・・・・・」



優希は俺の腕の中で、何度も何度も絶頂に達している。








「きょ、京太郎・・・・あぁっ・・・・・ちょっと・・・・・ああん・・・・・」


喘ぎながら、優希が何か訴えかける。



「・・・・・少し・・・ああぁっ・・・・・あん・・・・・降ろして・・・・・」


優希をベンチへと寝かせ、優希から離れる。



ぬるぬるとしたものが糸を引き、月明りでてらてらと光って見える。








「はぁ、はぁ、・・・・・んん・・・はぁ、はぁ・・・・・」


優希は時折、ビクンと震えながら肩で息をしている。





俺は辺りを見渡す。


月がやや陰りかけている。







優希はムクリと起き上がると、俺のペニスへと顔を近づける。




頭を振り動かしながら、優希は息を弾ませる。


「・・・どう・・・・・気持ちいいか?・・・京太郎・・・・・」


「・・・・・あ、あぁ・・・・・」


体の芯から止めどなく生まれてくる快楽に浸りながら・・・・・耐えながら、俺は短く答える。









「・・・・・京太郎の・・・・んっ・・・んっ・・・・・」


俺は快楽に身を任せる。





優希は頭を動かしながら、投げ出された鞄の中を漁っている。


何をしているのだろうと思ったが、今は快感に溺れ、何も分からない。





優希は何かを取り出した・・・・・トルティーヤだ!!








トルティーヤで俺のペニスを挟み・・・・・





優希の動きは次第に加速し、高みへと向かっていく。


「あぁっ、あ、・・・俺・・・もう・・・・・優希っ・・・・!」


俺が絶頂を迎えようとした、・・・・・その時、









ーーーーいつの間にか手にしていたマスタードを、今にも俺特製のタコス♂にかけようとしている。





「・・・・・んっ・・・・・んんっ・・・・・」


「・・・・はっ・・・・・はっ・・・俺・・・・もう・・・」







ぶちゅっ











「!!!!!!!」


激痛。


当たり前だ。




「ああああああああああああぁ!!」


俺の絶叫が闇に響いた。





ハイ、カットー


キョッ、キョウチャン!!!、ダイジョウブ?


「ああああああああああああぁ・・・・・」


ユウキ・・・・・






~TAKE4~





ベンチに腰掛け、夜空を見上げる二人・・・・・


月明りが優しく二人を照らしている。


まるで、俺たちの為の舞台を用意してくれている様だ。






と、唐突に


「月が、きれいですね。」


と言われた。




何と答えれば良いのだろうか、暫し言葉に詰まる。


「えぇ、 そうですね。・・・・・でも、あなたの方が美しい。」


今の返答で正解か・・・?



横目で相手の反応を伺う。








隣の相手は、頬をやや紅く染めている・・・・・ように見えた。




夜風が気持ちいい。


二人の間に多くの会話はないが、それでも、気まずい空気があるわけでもなく、むしろ、何かしら温かい空気が流れている。


それこそが二人の仲の良さ、信頼関係を表しているのだろう。






空の一点をぼうっと見ていると・・・・・キラッ


「あっ!!」


キラッ


まただ、・・・・・流れ星!!


横へ声を掛けようとすると、もう既に空を見上げていた。



何処か宇宙の彼方で星が爆発したのだろうか・・・?


 ・・・自分たちの星は無くならないで欲しい・・・


俺たちは離れ離れになりたくありません・・・と心の中で流星に祈る。








俺は意を決して、自分の言葉で・・・伝える。



「キ、キスしてもいいですか・・・?」


沈黙。



二人の間には、先程とは違う妙に緊張した、しかし、それでいてぽかぽかとした雰囲気が漂っている。



俺は相手の返事を待つ。







どのくらい時間がたったか、隣で動く気配がした。



横を見ると、・・・・・俺の胸に目を閉じてもたれてきた。


「温かい・・・・・。もっと温かくして・・・・・。須賀君・・・・・。」


俺の腕の中にすっぽりと抱かれて、心地よさそうにしている。




「はい・・・・・。」




俺はそう答えて、ゆっくりと唇を重ねる。














「温かいですね。・・・・・ハギヨシさん」


「えぇ、 もっと熱くなりましょう・・・・・須賀君・・・んっふ」


二人は再びキスをする。








ハイ、オッケーデース!!


「・・・んっふ」





二人は幸せなキスをして、・・・


・・・(NG集は)・・・


終了。









以上「あい -what a broken world- ~NG集~」でした。


やっぱエロは難しいですね。んっふ。



この話は、あと一つだけ・・・・・未公開シーンがあります。





~未公開シーン・舞台裏篇~






ガサッ、ガサッ


「うーん、出番はまだかなぁ・・・・・」


月明りの当たらない・・・森の・・・木々の中で、静かに待機する。



・・・・・アァ・・・アン・・・・・



「まだかなぁ・・・」



・・・・・ウッ・・・ソロソロ・・・・








「よし、スタンバイしよう。」


杭を握る手に汗がにじむ。





その時、・・・・・背筋にぞわり、と大きく鳥肌が走る。


ガサッ、ガサッ


後ろから誰かが歩いてくる足音がする・・・・・


「誰・・・?」


暗闇で全く見えない。





ガサッ、ガサッ





...
......
..........
......
...







~部室~





「咲ちゃんは最近どうしたんだじぇ?」


優希が尋ねる。


「心配ね、 須賀君は何か聞いてない・・・?」


部長が俺に尋ねる。


「いえ、俺も知らないんですよ。 なんで学校休んでいるのか。」


そう、咲はここ数日学校へ来ていない。


それに、麻雀部の部員の誰にも連絡が言ってないらしい・・・・・


「和は・・・? 和は何か聞いてるか?」


「・・・いいえ、 私も心配で・・・」


「うーむ、 それは心配じゃのう~。」


皆して難しい顔をする。








「仕方ない、取り敢えず明後日は助っ人を呼ぶわよ。」


部長が一言言い、その日はそこで解散となった。






~二日後、朝~



いよいよ今日が撮影の日だ。


と言うのも、文化祭の出し物として麻雀部は映画を作ることにしたのである。


タイトルは「清澄の怪異」である。



 ーーーー何と適当な名前だろう。流石は部長のセンスだ・・・・・







今日も咲は来られない・・・・・連絡がつかない・・・・・らしく、代役として・・・・・




「久しぶり、京ちゃん」


咲の姉、宮永照がやってきた。




そうして、風越山での撮影会が始まった。






...
......
..........
......
...








ガサガサッ


「ひっ・・・・・だ、誰かいるの・・・?」


森の中は完全に暗闇に閉ざされている為、何も確認できない。


「まったく、咲が逃げたせいで私が代わりにこんなことを・・・・・」ブツブツ




ガサッ


「ひっ・・・・・・うぅ、怖いよぉ~。」


麻雀の高校生チャンピオンらしからぬ弱気っぷりだ。




手に持った杭も、がたがたと震えて、今にも落っことしてしまいそうだ。







次の瞬間、ひと際大きい音が ・・・・ガサッ・・・・ したかと思うと、暗闇の中から、さらに漆黒の・・・・・何かかが飛び出してきた。


ドサッ



「うっ・・・・・」







何者かは、目の前で倒れ伏している人物 ・・・喉に杭が刺さっている・・・ を見下ろしている。


その目は酷くゆがみ、実の姉を見る目とはとても思えない。




そうして、


グシュッ


姉の首から杭を抜き、月明りのもとへ向けて駆け出す。








ズドンッ






「ああああああぁっ!!」


あの泥棒猫は大きな叫びをあげ、大きく背を反らせる。


「えっ・・・?」


京ちゃんは何が起こったか分からない、という風だ。





杭は京太郎と泥棒猫の二人を貫いている。







「えぇっ! なんだ?」


何だと思う・・・?


ふふっ、京ちゃんはこれからずぅっと私のモノになるんだよ・・・・・





「!!!!!」


あれ、もしかして京ちゃん喜んでくれているの・・・?


ふふっ、 嬉しくて声も出ないんだ・・・・・


 ・・・・・それに涙まで流して・・・ふふっ





「大好きだよ。キョウチャン・・・・・、 これでもう、ずうっと一緒だね・・・・・」


少女は妖しく囁く。





ガサガサッ


気が付くと周りには3つの影が・・・・・恐怖で皆足がすくんでいる様だ。


あ~あ、見られちゃったぁ・・・









季節は春。


嶺には風が吹きすさび、麻雀部員たちの悲鳴と血飛沫が舞う。


まるで風越山の嶺に立つ少女を畏怖するかの如く。








カン、嶺上開花






以上「あい -what a broken world- ~真実篇~」でした。


もう何も言うまい。






それでは・・・・・ふふっ・・・・・




>>1です。

レスありがとうございます。





さて、今あるネタですが・・・

「アコ -episode of side A- 」・・・難航中。

「ホモ熊嵐」・・・熟成(意味深)中。

「」・・・恋愛ホラーに挑戦したい。

・・・書き出してみると、ネタがないですね。




もし希望があれば、いつでもレス下さい。
1:ホラー風百合
2:ホラー風ギャグ
3:ホラー風感動
4:ホラー風サスペンス
5:ホラー風日常
6:ホラー風ホモ




・・・・・イヒヒ。



2

5

2で
京ちゃんがセクハラされ続ける某氏家風の猥談を思い出した





「狂気」





「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~

「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~

「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~

「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~



鼻で音を取りながら、その時を待つ。









しゅーーーーー・・・・・





始まった!!胸の高ぶりを感じつつ、その光景を目に焼き付ける。


何十回と見ても飽きない。





ウ"ォォォォォォォォ・・・・・

キィァァァァァァァァ・・・・・

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・

・・・・・・ウゥ・・・・

・・・・・・

・・・





「はぁ・・・・・」


うっとりとため息を漏らす。







ごとんごとんごとん・・・・・




ごーーーーー・・・・・







ツンと鼻を突く匂い。


「あぁ・・・・・」


すぅ~、とその空気を胸一杯に、体全体で味わう。


「はぁ~・・・・・あぁ・・・・・」


ビクンッ、と体が大きく跳ねる。


足がガクガクとし、目の前の手すりにもたれる。



「・・・・・はぁ」


つつぅ~、と太腿から足先にかけて生温かいものが流れる。






小さな小窓から覗く。


「・・・・・んっ・・・・・」


毎週水曜日の密かな愉しみだ・・・・・


この日、この瞬間の為に生きているといっても過言ではない。






家から近い訳ではない、交通費も馬鹿にならない・・・・・でも、それでも・・・・・


「あぁ~・・・・・」


脳髄から溢れる快楽は留まることを知らない。







友人は今日も、いつも何処に行くのか、と尋ねた。


「ひ み つ」


いつもそう言い誤魔化す。


別に隠すつもりはないが、一人で愉しみたい。


 ーーーーこの極上の快感は、自分だけのものだ。





トイレへ行き、持参したタオルで下半身を拭く、下着を履き替え、その施設を後にする。







「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~

「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~

「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~

「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~


気分は最高。


スキップしながらその施設の出口へと向かう。








がらがらがら・・・・・



大きなケージをいくつも台車に乗せて転がす、白衣姿の男性とすれ違う。



がらがらがら・・・・・




ケージの中からつぶらな瞳で此方を伺う・・・・・あいつら・・・・・


悲しげな目をするものや、状況を理解できずキョトンとするもの、怒り狂うもの・・・・・様々だ。





「あぁ・・・・・」


彼らの行く末に思いを馳せ、またむずむずと下腹部が熱くなってくる。








しゅーーーーー・・・・・





・・・・・また、始まる。






ウ"ォォォォォォォォ・・・・・

・・・・・ワンワンッ!!!

キィァァァァァァァァ・・・・・

・・・・・キュピッ・・・・・キュルル・・・・・

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・

・・・にゃぁ~・・・・・

・・・・・・ウゥ・・・・

・・・・・・

・・・








今日も行き場をなくした"彼ら"はやってくる。




ごとんごとんごとん・・・・・




そして・・・業火に焼かれる。





ごーーーーー・・・・・






特有の匂いが漂う。






「・・・はぁ~、いい・・・・・」


私は今日もうっとりと、"やつら"の声と香を愉しむ。







カン





以上「狂気」でした。


久々の短編。


愉しみ、嗜好は人それぞれですよね。




・・・・・ガラガラガラ・・・・・


おや、そろそろ"あの"時間の様です。





それでは・・・・・







>>1です。



いま、ホラー風日常ギャグコメディを書いています。

ギャグは難しいなぁ。

明日には投下出来ると思います。




今後の予定として、

清澄以外にも・・・徐々に狂気が広がっていきます。



ではまた・・・・・






>>194 >>195 >>198に捧ぐ。





「日常とギャグと蝶と」







これは、須賀京太郎の夢・・・・・かもしれない。











京「」


久「」ニヤニヤ


京(まぁ~た、何か企んでるな。 きめぇ顔。)


京「それで、此処に呼び出した理由は何ですか?」


久「実はね。 須賀君にはモンスターを退治してもらいたいの!」


京「はぁ~、モンスター、ですか。」


京(何言ってんだコイツ)







京「で、俺は何をすれば・・・?」


久「そんなの決まってるでしょ。 まこ、咲、和に憑依したモンスターを倒すのよ!」ドンッ


京(うわぁ、やっぱ馬鹿だこいつ)



京「優希のやつは?」


久「優希のは、もう閉じ込めたから大丈夫よ。」カギガアッタシ


京(なんかどうでも良くなってきた)


京「じゃ、行ってきます。」タタタッ






...
......
..........
......
...







京(じゃあ、まずは染谷の所に行くか。)



まこ「」ササッ


京「あっ! おい、染谷止まれ!!!」


まこ「・・・・・」ボソボソ


京(?)


京「聞こえねぇよ、なんだよ、 あ"?」









まこ「ぼくホイミン。」


京「うっせ」バコーン


まこ「」ズシャァァ








まこ「う、うぅ」フルフル


京「あ"、何か言えや、おら!!」





まこ「・・・・・」






まこ「いまはホイミスライムだけど。にんげんにな ドゴォッ


まこ「」ズシャァァ


京(・・・・・)




京(よし、取り敢えず次に行こう!)タタタッ








まこ「・・・」ポツーン


まこ「・・・」




まこ「ぼくをなかまにしてよっ」



蝶「」ヒラヒラ






...
......
..........
......
...






京(お、和だ! あ~、踏まれてぇ)


京「おっす、和!」


和「ねぇ、私・・・・・きれい・・・・・?」


京「もちもち、モチのロンです。和さん。」ニヘラー


和「本当に?本当に・・・・・きれい?」


京「あぁ、当たり前だろ!」ドヤァ


和「・・・・・」







和「・・・・・」



和「マスクしているのに・・・・・どうして分かるのォ~?」



京「えっ・・・・・」



京「んなもん、みりゃ分かるだろ!!」ドヤァ


京(全裸で歩いてんのに、何聞いてんだ。)


京(そりゃ、和の◯◯◯はきれいに決まってんだろ!!)ハナジダラー








和「・・・・・」






京「あ"~もぉ~、分かったよ。 そのホッケーマスクを外してください。和様。」


和「ふふっ、分かりました。そこまで言うのなら・・・」


京(いや、お前が言わせたんだよ。)


和「」サッ





京「・・・・・」




京「・・・・・」






京「口、くっせ!!!!!」タタタッ




タタタッ

京(くそぉ~、何だよ! 下のお口は芳醇なスメルがしてたくせにぃ~!)

タタタッ





蝶「クッセェ」ヒラヒラ






...
......
..........
......
...








咲「」ムキムキ


京「お、咲。 いま帰りか?」


咲「ん? どォしたのォ、キョウチャン・・・?」ムキッ


京(咲ってこんなに筋肉隆々だったか?ウホッ)



京「あ、あぁ・・・、一緒に帰ろうぜ!」


咲「そんなことよりもさァ、キョウチャン。 ぃつも一緒ぉにいる、あの女はダあれェ?」ムキムキムキッ







京(ん? あの女って誰だ。)


京「お、おい、咲。 いったい誰のことを言って ドギャァッ!!!


京「」ブベラシャァ



咲「口答エするんだァ~。 なァにか私に言ウこと無いのォ~? キョウチャン。」ムキムキムキッ


京「」ビクッビクッ


京「・・・・・ハッ」


京(このままではまずい。)


京「え、ええと、その女の特徴とか、教えて頂けませんかね。咲さん。」ビクビク








咲「ウぅ~ん、ちぃさくてねェ。キュルキュル鳴くヤツだよ。キョウチャン。」ムッキリ



京(キュルキュル鳴くヤツ・・・? 俺の知り合いにそんなヤツ・・・・あっ!!)


京「さ、咲さん。もしかしてうちのペットのカピバラですかね・・・?」


咲「ペットぉ~?ふゥ~ン・・・そうイう関係なァんだぁ~。」ムキムキ



咲「・・・・・」ムキムキ



京「・・・・・」ビクビク




咲「・・・・・コロスゥ・・・・・」ビキビキビキッ!!!


京「ひっ・・・ま、待って下さい。咲さん。・・・どうかご慈悲を。」ドゲザー







咲「なァんてネ・・・・・冗談だよォ~、キョウチャン・・・・・」ムキッムキ


京「あ、で、ですよねー」ハハハ


京(冗談に見えねぇよ)




咲「でもォ~、 もう保健所ォに連れてイっちゃッたからねェ~。」ムキッニコニコ


京(は?)


咲「ァあ~、でもでもォ~、私はァ、コロしてなァいからねぇ。 キョウチャン。」ムッコリ



京「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ァ!!!???」



京「お"い、今なんつった、てめえっ!!!」








咲「」





咲「あッるぇ~? もシかしてェ、怒っちゃったぁ~? キョウチャン。」ムキムキムキムキ


京「俺は、俺は怒ったぞぉ~。 うおおおおおお ドグシャァア


京「」チーン



咲「・・・・・」



京「」



蝶「」ムキムキ



咲「・・・・・」



京「・・・・・ハッ」


京(あれ? 俺は一体何を・・・・?)



京「ん? おう咲! どうしたんだこんな所で。」









咲「」タタタッ


京「お、おい咲! ちょ、待てよ!!」イテテ


京(何故か知らんが、全身が痛いぜ。)




まこ「」トテテ


京(ん?)






まこ「・・・・・」






まこ「ぼくホイミン。」


京「うっせ」バコーン


まこ「」ズシャァァ


京「黙って回復に専念しろやごるァ!!」


京「ちっ」タタタッ



京(まったく、今日は災難だぜ・・・・・あれ? そうだっけ?)







京(さて、俺もそろそろ家に・・・・・ 「うううぅ・・・・・」


京(ん?今声・・・・・の様なものが・・・・・ 「うぅう・・・・・」


京(気のせいかな・・・・・)


「うううううううううううううううううう」


途端に、世界が回転する。


京「うわわわわ・・・・・」






ううう・・・・・と最初はそう聞こえたーーーーーような気がした。

ううう・・・とか、ぐぐぐ・・・とか、何か動物の鳴き声めいた、妙な音。

鳥?いや鳥とは違う。

人の声?・・・そう言われるとそんな気がする。



ふと目を開ける。

朦朧としつつ辺りを見回す。

暗い部屋・・・部室だ。

月明りがほんの少しだけ差している。

俺は今、部室のベッドで横になっている。

・・・・・うう、うううう。





カン



以上「日常とギャグと蝶と」でした。

これって、日常ギャグ・・・・・ですよね?



今回の短編は正に、この短編集のテーマの一つですね。

「胡蝶の夢」。





それデは・・・・・うぅ・・・・・





>>1です。



ネタは十分にあるんですが、

「アコ -episode of side A- 」

の仕込みに時間がかかってます。(もう短編じゃあないね)




息抜きに短いネタを投下していく・・・・・かもしれません。



それでは・・・・・








「あつい贖罪の日々」








じじじじじじ・・・・・


   ・・・・・じじじじじじ




「今日もあついねぇ~。」

「そうだねえ。」ガヤガヤ




「あついよ。」

「うんうん、少し休もうか。」ガヤガヤ




・・・・・じじじじじじ





「ねえねえ、あついし明日プール行かない?」

「おっ、いいね~。」

「その前に、水着買い直そう!」ワイワイ





じじじじじじ・・・・・








ーーーーあつい、あつい、あつい、あつい・・・・・





ああああああああああああ!!


煩い、うるさい、五月蠅い、うるさい、うるさい!!



・・・・・じじっ・・・


「うっ・・・ヴゥェ・・・」


また嘔吐する。



足元がふらつく。意識が朦朧とする。


視線の先が、ゆらゆらと揺らめいて見える。




すれ違う人々が私をじろじろと、なぶるように見ていく・・・・・ような気がする。



・・・・・じじじじじじ






「う、うぅ。」


また吐き気が襲う。




どうしてこんなことになったのか・・・・・


     ・・・・・あつい


よく思い出せない。


     ・・・・・あつい



いや、辛うじて、微かに、思い出せる・・・・・と思う。


・・・うん、そうだ。


あの時も確か・・・・・じじじ


・・・・・あつい日だった・・・・・様に記憶している。





...
......
..........
......
...







じじじじじじ・・・・・



小学生になったばかりの時。



・・・・・じじじ・・・



私の実家は旅館・・・松実館を経営していた。


そして私たち姉妹は、そこへ宿泊に来る子供たちとよく遊んでいた。





その日は、そう・・・・・かくれんぼをしていた。


私は鬼ではなかったから、何処か・・・に隠れていた。







・・・・・じじじじじじ




次第に、たまらなく用を足したくなって、小の方だったから、その場ですることにした。


下着を下ろし、しゃがみ込む。



ちょろちょろと小水を放出していると・・・・・



「みっけ!」



鬼役の男子が近づいてきた。




   ・・・・・じじっ・・・・・じじじじ


何とか止めようとするが、


ちょろっ・・・ちょろちょろ・・・


一度出た小水は止まるはずもなく、その男子はじっと、私の露わな姿を見ていた。



「いやぁ・・・・・」



咄嗟に、近くに落ちていたボロボロの・・・桃色の、マフラーで陰部を覆う。


マフラーに染みが広がり、重くなっていくのが分かる。






暫く、その男子は無言で見つめていたが、



「おしっこしたな」



脅しはそれで充分だった。


彼はゆっくりと近づいてきて、わざとらしく、



「なんで冬でもないのにマフラーしてんの・・・?」


「剥いて確かめてやる」


・・・・・そう言い、私のマフラーを剥く。



「うぅ・・・」



 ・・・じじじじ・・・じじ



それから毎日、彼の家族が旅館を発つまで、彼は私に要求してきた。







翌週、下腹部に鈍い痛みを感じた。



意識すると消えてしまうような弱い痛み。


それでいて忘れたころに、ずぅぅぅんと押しかけて来る痛み。




母に痛みを訴え、病院へ連れて行ってもらった。




じじじ・・・・・じっ・・・



一通り診察を終えると、私は診察室から追い出されるようにして連れ出された。



診察室から、母と医者の声が聞こえてくる。


田舎の病院だからか、廊下は冷房の効きが悪く、額にじっとりと汗をかく。



「・・・・・」


「・・・・・あつい・・・ですねぇ。」


「・・・そんなにあつい・・・・・どうして・・・」


「うぅ~む。・・・・・このむしは・・・・・」


「・・・・・あつい・・・・・」


「・・・・・」







ずぅぅぅぅん、中の声に耳を傾けていると、今までないほどの痛みが襲ってきた。



「っう・・・・・」



声が出ない。


診察室内の二人はこちらに全く気が付かない。



「・・・あつい・・・」


「・・・あつい・・・」


「あつい・・・」



なにがそんなにあついのだ!!!


意識が朦朧とする中、幼心に激しい怒りを感じた・・・・・ように思う。


あつくない、あつくない、あつくない!!!・・・・





・・・・・じじじじじ・・・





「うるさい!! あつくなんかないっ!!」


いつの間にか腹痛も何処かへ行き、廊下で叫ぶ。



「あつくない、あつくない!!!」



・・・じじっ




霞みゆく視界の端で、診察室から慌てて出てくる母の姿・・・・・







...
......
..........
......
...







「うっ・・・・・」



また吐き気を催す。





何やら昔のことを思い出していたようだ。



「寒い・・・・・」



ぽつり、と呟く。


周囲の人々が私をちらり、と見る。


それもそうだ、真夏にマフラーをする人などいる訳がない。




いるとすれば、その人は・・・どこか、壊れているのかもしれない。




・・・・・じじじ・・・



「うるさいっ!!」



叫ぶ。


何人かがこちらを振り向くが、気にもしない。






・・・・・じっ・・・




私の声に反応して、どうやらアイツは居なくなったようだ。



「あつくない・・・・寒い、寒い、寒い・・・・・」



首に巻いた桃色のマフラーは、汗を吸い込んだのか、ずっしりと重い。






「ふぅ~。」


大きく息を吸い、足を踏み出す。


今日も、いつもの場所へ向かう。







...
......
..........
......
...






コツ、コツ、コツ、


足音がいやに響く。



吉野総合病院の精神科病棟。


談話室と名付けられたホールを抜け、真っ直ぐと目的の病室へ向かう。




入院中の母を見舞いに来るのは、随分と久しぶりな気がする。


実家の旅館が繁盛期で、日常の多忙に追われていた・・・・・気がする。







ところで、私の母は昔、死んだ。





 ・・・・・ということになっている。


精神科病棟に入っており、一生出ることは出来ない、などと一体誰に言えようか。






コツ、コツ、コツ、


白い壁、白い天井・・・相変わらず飾り気のない、どこか寒々とした場所だ。


何度来ても好きになれない。



「寒い・・・・・」


今日着ている白い服のせいか、今にも壁と同化して建物に飲み込まれてしまいそうだ。


再び吐き気が襲ってくる。



「うぅ・・・。」



母が入っている個室は、107号室。


奥の角を曲がってすぐ左の病室だ。






吐き気と、眩暈に苦しみながら歩を進める。



ふらふらとした足取りで角を曲がると、向こうから来た人物とぶつかった。




ドンッ!!




私は自分の体を支えられなくなり、倒れた。



「ごめんなさい。大丈夫ですか。」



ぶつかった相手は若い看護師だった。慌てて駆け寄ってくる。



「ごめんなさい、ぼんやりしてて。」



そう言い、看護師は手を伸ばしてくる。


胸につけた四角い名札を見ると、そこには、荒川と書かれていた。



新人だろうか、初めて見る顔だ・・・・・と思う。








私は、


「ありがとうございます。」


と答え、いまだにふらつく頭で何とか立ち上がる。





「え、えぇと・・・・・」



「松実です。・・・・・母の見舞いに来ました。」



「まつみ・・・さん・・・?」



彼女は物問いたげな顔で、こちらを伺う。



「あ、ええと、107号室に母がいるんです。私は娘で・・・・・松実宥といいます。」



そう答えると、彼女は納得した風だった。


やはり新人で、ここに来たばかりなのだろうか? そう思い、看護師の顔を伺う。







すると突然、


彼女の目から、にょろにょろとした・・・・・



「ひっ・・・・・」


声にならない声が出る。



・・・・・にゅるり、にゅるり


と、その看護師の・・・・・荒川という看護師の目から・・・・・




・・・・・なにか、細長い・・・・・




あぁ、そうだ。確かあの時、写真で見た・・・・・


・・・・・寄生虫の様な・・・にゅるり・・・・・



・・・・・むし・・・・・



にゅるり、にゅるっ・・・・・


「あ・・・・・あぁぁ・・・」



もう空になったはずの胃の中身が、喉元にまた込み上げてくる。



「うっ・・・・・」






・・・・・にゅる




「だ、大丈夫ですか? 松実さん・・・」



ふと、新人看護師の声が聞こえた・・・気がした。


顔を上げる。



「あぁ・・・・・」


看護師の顔は、・・・・・食い荒らされ、ボロボロになっている。



「・・・・・松実さん」



その口・・・・・だったものから私を呼ぶ声がする。


闇の底へ、私を誘うかのような声・・・・・





・・・にゅる・・・・・





その時、


「松実さん」


背後で声がした。


この声には聞き覚えがある。此処の婦長さんだ。




「・・・はぁ・・・・・」



我に返り、深呼吸する。


荒川という看護師は、不安げな面持ちで傍に屈んでいる。



・・・・・勿論、その顔には何らおかしなことはなく・・・・・





「何があったのですか、荒川さん。」
小走りにやってきた婦長さんが言った。




「出会い頭にぶつかったんですよ、それで少し眩暈がして・・・」


看護師が口を開く前にそう答えた。



あぁ・・・・・寒い・・・


今度は酷く寒気がする。


壁に片手をつき、ゆっくりと立ち上がる。







婦長さんは私の方に向き直った。


「松実さん・・・・・これからお母様のお見舞いに?」


「ええ。 母の様子は?」


「お元気ですよ。 最近はすっかり落ち着かれたようで・・・」


「それは・・・・・良かったです。」



「ですけど刺激しないように気を付けて下さいね。」


「はい。 分かっています。」



私は小さく会釈して、二人に背を向けた。




その時、視界の端でちらりと、看護師の様子が見えた。


訝しげな、それでいて、憐れみを含んだ様子で私を見ていた・・・・・ような気がした。







コツ、コツ、コツ、



107号室の扉の前に立つ。



「はぁ・・・・・」


ゆっくりと、薄い緑色の扉を開ける。





ーーーー途端、全てを思い出す。




「ああああああぁ、うわぁぁぁぁぁ」


誰かが・・・いや、私が叫んだ。





ーーーー婦長と、荒川という若い看護師が、私を談話室の方へ連れてゆく。






...
......
..........
......
...







「宥、大丈夫よ。・・・宥。」



「でも・・・・・あついって何・・・?」



「大丈夫、大丈夫だから。宥はなんにも心配しなくていいから・・・ね?」



お母さんは諭すような、優しい、そしてどこか淋し気な口調でお姉ちゃんに語り掛けている。




・・・・・じじじじじ





布団に横になるお姉ちゃんと、傍らで見守るお母さん。


その様子を、私は不安な気持ちで障子の隙間から見ていた。







・・・・・というのも、先ほど、


お母さんがお姉ちゃんを抱いて帰ってきた。


どうやら、二人で病院に行き、そこでお姉ちゃんが癇癪を起したらしい。


今は布団に横になり、落ち着いているが・・・・・




  じじ・・・・・じじっ・・・・・




お母さんはその時からずっと、お姉ちゃんに、


「大丈夫、大丈夫・・・・・」


と語りかけている。




 ・・・・じじじじじっ・・・・・




外では、・・・・このあつい季節になると出てくる・・・・・アイツらが鳴き叫んでいる。




・・・・じじじ・・・・・




「お姉ちゃん・・・・・」


お姉ちゃんは、愛用の桃色のマフラーを今日も巻いている。






・・・じじじじじじじじ・・・

・・・・・じじじっ・・・・・

・・・・じ・・・じっ・・・

・・・・・・

・・・









・・・・・そして、





"それ"が起きたのは、その夏の終わりだった。






朝、いつもは真っ先に起きているはずの母が、その日はなぜか、まだ起きて来ていなかった。



「あれ、どうしたのかな?」


何故か、ざわざわと嫌な胸騒ぎを覚えた私は、急ぎ足で母の寝室へ向かった。



タッ、タッ、タッ、



いつの間にか小走りになる。


・・・母の寝室に近づく度に、嫌な胸騒ぎが全身を駆け巡る。





母の寝室の扉の前に立ち、


「ふぅ・・・・・」


一呼吸つくと、ゆっくりと扉を開けた。








「お母さん、どうしt・・・・・」




思わず足が止まる。


部屋は一面に、まるで桜吹雪が舞った様に、白と赤のコントラストで埋め尽くされていた。




「きれい・・・・・」




そんな言葉が、知らず口に出る。


部屋を見渡すと、どうやら部屋中央の・・・・・"ふくらみ"から放射状にその紋様が広がっているようだった。




あの"塊"は何だろう。


そう思い、一歩近づく。



もはや部屋の光景に圧倒されて、母のことなど頭から消えていた。



また一歩近づく。


「・・・・・う"っ・・・・・」





そのふくらみ・・・・・塊は、母だった。



いや、母の死体だった。



「・・・・・ぅ・・・・・」




その後の記憶はない。








...
......
..........
......
...







「うぅ・・・・・」


嫌なことを思い出した。




手にじっとりと汗をかき、視界がやや霞む。



そうだ、あの時私が見た光景は、悲惨だった。


美しいと思ったものが、一瞬で・・・・・あぁぁ・・・・・






私の姉は狂っていた。


何時からなのかは定かではない。



・・・・・じじじじじ・・・・・



でも、確かに狂っていた。



「お姉ちゃん・・・・・」


一人、ガラスを前にして呟く。









・・・・・あの夜。



私の姉は、母が寝ている間に、母の口内に消火器をぶちまけたのだ。


母の腹部は消火器の・・・・・白い粉末でいっぱいになり・・・・・


 ・・・・・膨れ・・・


そして・・・・・





パァン





私が見た・・・・・美しい・・・・・


・・・・・白と赤のコントラストは・・・・・





「・・・・・ぅ・・・」


此処へ来るといつも思い出してしまう。






さらに、


後で分かったことだが、私の姉は精神的な病だけでなく、別の・・・・・


・・・・・確か・・・・・ガショクコチュウ・・・・・そんな名前だ・・・・・


別の何かにも侵されていたらしい。


・・・・・今でも刻々と姉の体を蝕み、いつか全てを喰らい尽し表へ出てくるだろう。




まるで、大声で鳴く時を待つアイツの幼虫の様に・・・・・じじじ・・・・・








過去の禍々しい記憶に憑りつかれていると、





「ああああああぁ、うわぁぁぁぁぁ」





ガラスの向こうから、悲鳴、いや絶叫が聞こえた。


二人の女性・・・・・婦長と、若い看護師が、奥の通路の方へ駆けていくのがガラス越しに伺える。






しかし私には瞬時に、その声の正体が分かった・・・・・と思う。





「お姉ちゃん・・・・・」






...
......
..........
......
...









「大丈夫ですか、松実さん。」



駆け付けた婦長が、私に言葉をかける。




「はい・・・?」


私は、長い長い悪夢から覚めるような心地で、ゆるりと頭を振り動かした。




どうやら誰かが・・・・・いや私が、大声を出したらしい。



「あ、あぁ・・・、婦長さんですか。」


「今日の、お見舞いは終わりましたか・・・?」


「えぇ・・・・、はい。」


「それじゃあ、談話室の方へ戻りましょうか。」








日課となっている贖罪の儀式を今日も終え、記憶は元通りに閉ざされる。


婦長と若い看護婦に付き添われ、私は談話室へと戻る。







じじじじじじ・・・・・


   ・・・・・じじじじじじ




患者「今日もあついねぇ~。」


婦長「そうだねえ。」




何人かが振り返り、私をちらりと見る。




患者「あついよ。」


荒川「うんうん、少し休もうか。」





・・・・・じじじじじじ




患者「ねえねえ、あついし明日プール行かない?」


患者「おっ、いいね~。」


患者「その前に、水着買い直そう!」




じじじじじじ・・・・・








広い談話室では、患者たちがしゃべっている。


ある者は同じことを繰り返し、ある者は一人二役を演じ・・・・・


・・・・・そしてある者は・・・・・





「うるさい!!あつくない!!」




また大声を出し、ふと"窓"の方に視線を移す。


「玄ちゃん!!」


"窓"の外で、妹がこちらを見ている。







そして、107号室の患者は、二人の女性・・・・・婦長と看護師に連れられて、病室へと戻る。


白い壁、白い天井、白い服・・・・・薄い緑の色をした扉の中で、今日もその患者は・・・・・





...
......
..........
......
...








突然だが、私の母と姉は昔、死んだ。




 ・・・・・いや、実際には姉は生きている。



精神科病棟に入っており、一生出ることは出来ない、などと一体誰に言えようか。


それに、何者かが、姉の体を蝕んでいるらしい。





姉を収容している病院・・・・・吉野総合病院の先生によれば、姉は昔のことを全く覚えていないらしい。


・・・・・でも、たまに・・・ふらりと歩き出し・・・・・叫ぶ・・・・・


もしかしたら、一瞬でも過去のことを思い出しているのかもしれない。


その時、姉は何を思うのだろうか・・・?


・・・・・誰かに、赦しを請うのだろうか・・・・・









カン







以上「あつい贖罪の日々」でした。



いやぁ、実は私、昨日から熱が出てしまって、"熱い"んですよ。


早く治したいんで、"厚い"服を着て、部屋を"暑く"しています。


皆さんも、風邪にはご注意下さい。





・・・・・特に、インフルエンザは"篤い"ですからね ・・・・・じじじ・・・・・






それでは・・・・・







「アコ -episode of side A- 」







「はぁ・・・・・」


季節は夏も、真夏。


この辺りが山に囲まれているとはいえ、やはり、暑い。


「・・・・・ふぅ」



退屈な授業も終わり、部室へと向かう。


このところ部員の集まりが悪い、様な気がする。








何とかしたほうが良いのかな、と微かに思ってみたりもするが、この暑さのせいで、そんな考えはするすると頭から抜けてゆく。


「暑い。」



廊下には、冷房は付いていない。


教室から部室まで遠いわけではないが、今は真夏、汗で下着が肌に張り付く。


「・・・・・はぁ」


気持ち悪い。


一度そう思うと、全身を虫が這っている・・・そんな感覚が心を蝕んでいく。







「・・・・・」


ひと気のない廊下を歩く。


この暑さだ、皆、部室や教室にいるのだろう。


廊下には誰一人いない。


私は一人、部室へと続く廊下を進む。








すると、いつのも・・・彼女の調べが聞こえてきた。


「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~

「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~

「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~

「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~



どうやら、今日は部室に来ているようだ。



汗ばんだ手で、ゆっくりと部室の扉を開ける。


二人の顔が同時に、こちらを向く。









私たちは麻雀部だ・・・が、特に麻雀をするわけでもなく、それぞれが気ままに過ごす。


結局、その日部室に来たのは、私たち3人だけだった。




じゃあ、また。

さよなら。

おつかれ。


それぞれが別れの言葉を告げ、帰路につく。



ただ一人、私を除いて・・・・・



「よし・・・・・」


今日も自分自身に喝を入れ、夜の街へと繰り出す。







しかしそれにしても、馴れとは怖いものである。


「ふふっ・・・・・」


自嘲気味に笑う。


始めは抵抗があった。当たり前だ。


あんなの抵抗無しに受け入れられる奴がいるだろうか。


いたら、そいつは・・・真正のビッチだろう。



「ふん・・・・・」


また卑屈な笑いがこぼれる。




いけない、いけない。


こんな表情で彼らの前に出る訳にはいかない。


手鏡を右手に持ち、笑顔を作る。


・・・・・できるだけ、自然な笑顔。







これはお金の為、そう、お金の為だ・・・・・


何度自分に言い聞かせてきただろう。


たまにふと、自分は人として大切なものを失ってしまったのではないか、と思うことがある。



「あぁ・・・・・」


不安や恐怖、様々な複雑な思いが入り乱れた感情に押しつぶされそうになる。


視界が波打つ。



「・・・・・う」


こんなところで泣いている場合ではない。


袖口で目頭を拭い、顔を上げる。





すると、


「おっ、アコちゃん、今日も早いね~。」


手をひらひらと振りながら、1人の男・・・サトシが近づいてくる。








そして・・・・・





安っぽいドアを開けると、早速、サトシはベッドにごろりと転がる。


六畳間の真ん中に、ぽつんと寂しく置かれたベッド。




「暑いな。」


サトシはそう言い、エアコンのスイッチを入れる。




この後は、いつも通りだ。


私がそっとベッドに腰掛けると、サトシはタックルするように私を押し倒す。




そして、両手両足、舌を使って絡み合い、セックスにとりかかる。








サトシは小刻みに腰を動かす。


壊れたロボットの様に、ただ単調に動かす。



たまに思う。


男はロボットなのではないか・・・哀れなロボット・・・・・





「あああ、いいい・・・・・」


などと、私も一応喘いでおく。





後半、サトシの腰の動きがさらに激しくなる。


「んん、おおおお・・・・・」


低い声が部屋に響いたと思うと、サトシはぐったりと私の上に倒れこんできた。








私は、サトシの髪を優しく撫でてやる。



「どうだった・・・? どうだった?、俺のフシギダネ♂のタネマシンガン・・・」


サトシは虚ろな目で聞いてきた。


「ねぇ・・・・・」


その目がもう一度聞いてきたので、私は返した。


「凄かったよ。 もうすっごく、気持ちよかった。」


「本当? 他の男よりも・・・?」


「うん・・・・・」








そう、"他の男"・・・・・


私は週に三度、男とセックスしている。


別に、好きでやっているわけではない。


お金の為・・・そう、そうだ・・・そうに決まっている。





月曜日はサトシ20歳、火曜日はマサト18歳、木曜日はタケシ24歳。


本名かどうか知らない。


年齢も正確じゃないだろう。



重要なのはそう、お金だ。







結局、サトシとあれから2回セックスし、あの寂れた六畳間を後にした。


勿論、報酬も頂いた。


時刻は、夜9時前。


疲れた体を引きずるようにして、ようやく帰路につく。








翌日の放課後も、また街へ繰り出す。


いつもの場所で待っていると、また暗い思考がぐるぐると頭の中を駆け巡り始めた。



ーーーーセックスは好き?


ーーーー嫌い。


ーーーーホントに?


ーーーーお金の為なんだ、お金の・・・


ーーーー楽しんでない?


ーーーー違う!!やめて!!!




「よっ!」


男の声によって思考は中断する。


今日は火曜日、相手はマサト。







ベッドに腰を下ろした途端、スカートが捲られ、下着が下ろされ、足を割られる。


マサトは他の二人よりも、群を抜いて性急だ。


が、私にとっては断然いい。


ねちねちと訳の分からない前戯をやられるよりかは随分ましだ。




そして・・・・・




マサトもロボットの様に、一定の腰の動きを繰り返す。



「・・・ん・・・ああああ」


私も一応喘いでおく。




ーーーー気持ちいいんだ


「違う。」


思わず声に出る。




マサトは、しかし、行為に夢中で気付いていない。






気持ち良くなんかない・・・これはお金の為・・・・・


ふと、横に置いた鏡に目を向ける。


・・・・・良かった。


そこに映っていたのは、よくあるポルノの情景で、ばかばかしいものだった。


鏡の中の私は、みっともなく足を広げ、マサトはその中にすっぽりとはまり、そしてやはりみっともなく、腰を小刻みに動かす。


・・・・・良かった。


いい顔で快楽を貪っていたら・・・と思うと、自分がどうにかなってしまいそうになる。







ひと通り行為を終えると、マサトは、


「今日の君も最高だったよ。 なんかいつもよりあそこ、ヌレヌレでさ。 ホント、すっごくねっちょりしてる。」


と、まだ呼吸も整わないくせに、私の性器に再び指を這わせてくる。




「ほら、まだこんなに・・・・・」


私の中から、じんわりと温かいものが溢れてくるのを感じる。


・・・・・嫌!! そんな、違う・・・・・


ーーーー楽しんでるんだ・・・?


ーーーー違う・・・・・



「まだ欲しいの? じゃあ・・・・・」


そう言い、マサトは私を四つん這いにさせる。







~~~~






翌日、放課後。






今日も、誰もいない廊下を、部室へ向けて歩を進める。




部室へ近づくが、今日は彼女のいつもの調べは聞こえてこない。


部室の扉を開けると、案の定誰もいなかった。




このままではいけない、何とかしなくては・・・・・


と、今日も思うが、結局この暑さでうやむやになってしまう。




今日は誰一人として部室に来なかった。






外が暗くなるまで部室で涼んだ後、一人、部室を後にする。


今日は街へ赴く必要はない。


家のことをしないと・・・・・



「・・・・・はぁ」


大きく溜息をつき、家路を急ぐ。







~~~~







木曜日。






今日はタケシだ。


実家の店で働いているらしい。


3人の中で最も体格がよく、引き締まった体に程よく筋肉がついている。


一つ難点があるとすれば、横暴なまでの性欲・・・・・




ーーーー気持ちいい?


ーーーーなわけない!!


ーーーーセックス依存症


ーーーー違う!!やめて!!やめて!!!




ひどく眩暈がしてくる。


この暑さで脳がやられてしまったのか、さっきから頭の中で会話している。









と、


「・・・ラシソラドレシド・・・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~





背筋が凍る。


何処か近くで、部活仲間のいつもの調べが聞こえてきた・・・様な気がする。




咄嗟に辺りの雑踏を見渡す。



「気のせいか・・・・・」


そう呟いた瞬間、


・・・・・あぁ・・・・・そんな



人ごみの隙間から微かに、しかし、はっきりと見えた。





楽し気に肩を並べて歩く、二人組の姿が・・・・・








そして、最悪のタイミングで、


「アコちゃん、待った?」


能天気な顔をしたタケシがやってきた。







...
......
..........
......
...








「ふふっ・・・・・」


私は今、夜の街に繰り出している。


これほど心躍るのは久々だ。


先ほどまでの私の心が、一瞬で浄化されていく。








「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~


「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~


「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~


「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~





隣で歌う幼馴染・・・高鴨穏乃も上機嫌のように見える。







最近、シズの様子がどうもおかしかった。


だから、今日誘ってくれたのはとても嬉しい。



「ねぇ、シズ。 どこか行きたいとこある・・・?」


「うぅ~ん、 憧とだったら何処でもいいよ。」



ああぁ、可愛い。


愛しい・・・私の・・・シズ。







最近シズは毎週水曜日の放課後、何処かへ行っているようだ。


私が聞いても、いつも


「ひみつ。」


で誤魔化される。





始めは、シズに男が出来たのかと思った。


でもどうやら、そうではないらしい。



・・・・・気になる。


シズのことを全部知りたい。


そういう思いが、私の心中を渦巻いていた。








そうした不安定な、どろどろとした日々を過ごしていた中。


今日の放課後、私は職員室に呼び出された。





「ああ、新子さん。 あなたのことで良くない噂を聞いて。 私は全く信じていないけど、教師として確認しなくちゃいけないの。 気を悪くしないで聞いてくれる・・・?」


「っ!!・・・・・えぇ、はい。」


良くない噂・・・!?それって・・・いや、まさか・・・・・


「新子さんが・・・・・援助交際している、って聞いて・・・・・ 気を悪くしないでね、でも、そういう話を聞いた以上、確認をするのが教師の務めなの。」


「え、援助交際!!?? そんな、私・・・・・私そんなことしません!!」



援助交際だなんて、誰がそんなデタラメな噂・・・・・いや、決まっている・・・・・



・・・・・あいつだ!・・・・・こんな噂を流すのは、アイツしかいない・・・・・








・・・・・あ・・・・・こ・・・・・


・・・・・・・あこ・・・・・・・・


「ねぇ・・・・・憧!!」


「っ!!!」



気が付くと、親友が心配そうな面持ちでこちらを覗き込んでいる。



「んん、ああ、ごめんごめん、考え事してた。」


「私と遊んでるのに、他のこと考えてたんだ。」ムスー


「ごめんってシズ。 お詫びにあそこのラーメン奢るから・・・ね?」


「ホント? わーい、憧大好き!!」ヤッター


「まったく、調子が良いんだから・・・・・」




大好きだなんて・・・そんな、シズ・・・・・








「・・・ラシソラドレシド・・・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~


「・・・ラシソラドレシド・・・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~



シズは、いつものを口ずさみながら楽しそうに歩いてゆく。


私も、そんなシズと夜の街中を・・・雑踏の中を肩を並べて歩く。








と、


「アコちゃん、待った?」


「え?」









...
......
..........
......
...








春。


そうだ、春だ。


あの頃はまだ、暑くなかった。


・・・・・あぁ







「いらっしゃいませ。」


私は店番をしていた。


「あ、玄。 なに? 冷やかし・・・?」


そこへ突然やってきたのが、松実玄だった。


「・・・・・」


何やら玄のまとう雰囲気がいつもと違う。







「ねぇ、灼ちゃん家のボウリング場さぁ。 先月分、払ってないよねぇ。」


思わず背筋がゾクリとした。


玄が今までにない表情をしていた・・・・・気がした。



「先月分? ごめん、玄。 何のことか分からな・・・」



「へぇ~、はぁ~? ふぅ~ん、そうなんだぁ。


 ・・・・・おばあちゃんから何にも聞いてないんだぁ・・・・・


 ・・・・・ふぅ~ん・・・・・


 ・・・まぁ、でもぉ・・・・・


 死人に口なしって言うしねぇ。」




「っ!!!玄っ!!何のつもり!!!」


そう、私の祖母は先週亡くなったばかり、だった。


玄の意図が読めない。


私はキッと、玄をにらみつける。








「だぁからぁ、此処で商売するにはうちの"旅館"の許可が必要なんだよぉ。」


「それでぇ、先月分のショバ代もらってないってわけぇ。」


「ホントは利息込で今すぐ払って欲しいんだけどぉ、まぁ、灼ちゃんは友達のよしみでぇ・・・・・」


「・・・・・体で払ってくれればぁ・・・・・チャラにしてあげるけどぉ・・・?」







「・・・え・・・?」


あまりの展開に、頭がついていかない。


今までの玄の姿と、今自分の前に立っている玄の姿が同じとは到底思えない。



半ば夢見心地でいると、突然視界が真っ暗になった。




・・・どこかへ運ばれる






頭に被せられた袋が外されると、私は小さな部屋にいた。


後のことは覚えていない。



・・・・・いや、思い出したくない。







それ以来、玄は何かあれば私を・・・・・私の体を要求するようになった。


その度に、大勢の・・・・・








~~~~








体を渡すか、金を渡すか。


迫られた私は、金を渡すことにした。


しかし、とても高校生に払える金額ではない。





何度かこの吉野から逃げ出そうとした。


警察に駆け込んだ。


でも・・・・・駄目だった。






そして今、その金を稼いでいる。


文字通り、体を張って・・・・・








しかし、それも今この瞬間、崩れ去ろうとしている。


「アコちゃん、待った?」




あぁ・・・・・なんというタイミングで話しかけてくるのだろう。


・・・・・もうおしまいだ・・・・・あぁ・・・・・





能天気な顔をしたタケシが、私に声をかけてくる。


そのタケシのすぐ後方で、二人組が振り返る。



私のよく知る幼馴染の二人組、穏乃と・・・・・憧が。







次の瞬間、私は思わず駆けだしていた。


「お、おい! アコちゃん!!」


タケシの声が遥か後ろで聞こえた・・・・・気がした。




ーーーーねぇ、気持ちいい?


ーーーー嫌、やめて!!



玄の言葉が走馬灯のように脳内を駆け巡る。




その思考を振り切るように、さらに速く走る。


心臓がはち切れてしまいそうだ。



ーーーーホントは楽しいんでしょう?


ーーーーなわけない!!








「っ・・・・・はぁ、はぁ・・・」


どのくらい走っただろう。


人にぶつかるのも気にせず、ただただ夜の街を闇雲に走った。


息が苦しい、肺が潰れてしまったみたいだ。



電柱にもたれ、呼吸を整える。






すると、


「みーつけた。」



「っ!!・・・・・」









二つの影が近づいてきた。



一人は元気な声で、どこか楽しそうに話しかけてくる。


「もう、灼さんったら、、急に逃げちゃうんだから。 どうしたんですか?」




もう一人の方へ、恐る恐る目を向ける。


私が名前を借りていた人物・・・新子憧はどこか悲し気な、そして私を見下すような目でこちらを見ている。






そうして・・・・・







...
......
..........
......
...








「はぁ・・・・・」


季節は夏も終わり。


この辺りは山に囲まれている為、時折吹く風が肌寒く感じる。



「・・・・・ふぅ」


退屈な授業も終わり、部室へと向かう。


このところ部員は全員、部活に来ている。





教室や部室には、もう冷房は付いていない。


「・・・・・」


廊下には誰一人いない。


私は一人、部室へと続く廊下を進む。









こうしていると、あの暑かった・・・・・最悪の夏を思い出す。






あの日、穏乃と憧に私のことがバレた日。


私は死を覚悟した。


そして、二人に洗いざらい話した。


これでもう、玄に殺される。そう思った。




・・・すると、どうやら、憧も玄に脅されていたらしい。






それを聞いていた穏乃が、いきなりこう言いだした


「クロ豚の焼肉食べたいなぁ。」


その翌日、どうやら穏乃は一人で焼き肉を食べに行ったらしい。






その日以来、松実玄は見ていない。









過去に浸っていると、いつのも・・・彼女の調べが聞こえてきた。



「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~

「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~

「・・・ラシソラドレシド・・・」 ♪~

「・・・ラシソラドレシドシ・・・」♪~




どうやら、今日も部室に来ているようだ。









部室の前に立ち、ゆっくりと部室の扉を開ける。


二人の顔が同時に、こちらを向く。






私たちは麻雀部だ・・・が、特に麻雀をするわけでもなく、それぞれが気ままに過ごす。


部員は、部長の私、1年の穏乃と憧の3人しかいない。











そして私は今日も、夜の街へ赴く。







カン










以上「アコ -episode of side Arata- 」でした。


鷺森灼は何故、未だに、夜の街へ行くのでしょうかね。


お金の為でしょうか、それとも・・・・・





怪異というより、狂気、猟奇でしたね。


この話は色々と、派生?外伝?があるので、忘れた頃にぼちぼち投下していきます。





それでは・・・・・









>>1です。


少々立て込んでいるので、更新遅れます。ペッコリン








その間に・・・・・


清澄、龍門渕、阿知賀女子、姫松、千里山女子


のメンバーで、"出演"希望者を募りますね。キヒヒ









あぁ、後、参考までに・・・・・


ラシソラドレシド♪ラシソラドレシドシ♪


https://www.youtube.com/watch?v=FN6jIvKiYOs







それでは・・・・・ラシソラ♪~・・・













「鈴虫」








ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・・・




今日も、日課のジョギングに勤しむ。



いつもよりハイペースで走ったせいで、呼吸が乱れる。




ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・・・






「ふぅ。少し休むか。」








天竜川沿いに敷かれた遊歩道は、春になると桜が美しく。



地元の人々の間では、ひそかに花見スポットとして親しまれている。



その歩道沿いのベンチに腰掛け、一息つく。








鉛色の厚い雲が空を覆っている。



こりゃ、今晩はひと雨降るな・・・そう思いながらベンチに深くもたれる。




・・・・・良くないわねぇ・・・・・



部長のいつもの口癖が、ふと脳裏をよぎる。





人通りのない遊歩道に一人。



なんだかこちらの気分まで沈みそうになる。




「いかん、いかん。」



そう自分に言い聞かせ、ベンチから立ち上がる。










すると、










・・・・・がらん





と音が鳴った・・・・・気がする。











周囲に目を向ける。



しかし、そこには既に早朝の静けさが戻っていた。



聞こえるのは、川のせせらぎと野鳥の微かなさえずり、そして自分の息遣いだけである。










がらっ、がららん・・・・・







ベンチを挟んで後ろから・・・生い茂った木々の中から、今度ははっきりと聞こえてきた。



「ッ」



思わず息をのむ。




注意深く、木々の生い茂った場所へ目を凝らす。




すると、鬱蒼とした木の葉に隠れるように、小さな色褪せた鳥居が立っている。



毎日のように、此処をジョギングしているが、はて、今までこのようなものがあっただろうか・・・・・










鳥居の奥から覗く闇に吸い寄せられるように、歩みを進める。






・・・・・


京ちゃん、・・・・・って知ってる?


・・・・・? なんだそれ・・・


えっとね。・・・・・


・・・・・









昨日、咲と交わした会話を思い出しかける。





・・・・・あれ、何話したっけ?


確か・・・・・がらん・・・・・










唐突に蘇ってきた曖昧な記憶を探りながら、・・・些か不吉な予感めいたものを抱きながら、・・・鳥居をくぐり細い石段を登ってゆく。




苔むした石段を登り切ると、前方にすぐ建物が見えた。





廃神社。



そんな言葉が思い浮かんだ。



半ば朽ちかけたようなささやかな社と、賽銭箱。



そして、賽銭箱の手前上方にぶら下がっている、人の頭ほどの大きさの・・・・・鈴。










そろそろと建物の手前まで進むと、その退廃具合がいっそう際立つ。



誰も管理するものがおらず、捨てられた小さな神社・・・・・





そんなことを思っていると、










がらん。








「え?」



自分の頭上で鈴が鳴った。









目の前にぶら下がった鈴緒が大きく揺れている。



当然、自分が触れたわけではない。



恐る恐る、顔を上へと向ける。







と同時に、がぁぁぁん、と頭に強い衝撃が走った。



「うぅ・・・あぅ・・・・・」



後頭部を殴られたような衝撃。



最近、こんな頭痛が多い・・・・・ような気がする。












両手で頭を抱えながら、片膝を地面につき、何とか上を見ようと顔をあげる。







がららん。








また、頭上で鈴が鳴る。




「うぅ・・・・ッ!」




鈴が独りでに・・・・・がらん・・・・・揺れている。



そんな、馬鹿な・・・・・










がんがんと痛む頭で、必死に状況を整理しようとする。







がらっ、がらん。







不自然に大きな、丸い鈴は一層激しく鳴りだす。




いや・・・・・ああぁ。



・・・・・まさか、そんな・・・・・



鈴の音に呼応するかのように、頭痛と眩暈が激しくなる。










・・・・・京ちゃん、レイチュウって知ってる?・・・・・







恐ろしいことが起こってしまった気がして、必死に鈴緒を掴み、動きを止めようとする。



しかし、・・・・・がらん・・・・・



幾ら緒を押さえつけても、鈴は鳴りやまない。








・・・・・えっとね。鈴の虫って書いて、レイチュウって読むんだけど・・・・・








「あぁ。」



そこでようやく悟った。




"あの中"なのだ・・・と。













がらん。








あの人の頭ほどの大きさの鈴の中に・・・何かがいて・・・・・




「そんな。」




その時、ぐらぁぁ・・・・・ひと際大きい眩暈に襲われる。




その場に仰向けに倒れ伏し、薄れゆく意識の中でその丸い鈴を見ていた。










丸い鈴の黒い隙間から・・・・・がらん・・・・・



何だろうか、黒い、いや紫色の・・・見るからに異様な・・・



・・・"そいつ"がやおら、穴から這い出してきて・・・・・








「うわぁぁぁぁ。」








...
......
..........
......
...











気が付くと、俺は天竜川沿いの遊歩道に設置されているベンチに腰掛けていた。




「あれ?」





いつの間にか、ベンチで寝てしまっていたのだろうか。



何故だろう、凄く恐ろしいことが・・・・・がらん・・・・・あった気がするが、良く覚えていない。











「うーむ。さぁ、続きを走るか。」



もやもやとした雰囲気を振り払うかのように、勢いよく立ち上がる。




・・・・・とたん、







がらん。









微かにではあるが、神社の鈴の様な音が鳴った・・・・・ような気がした。







俺のこの、ぼんやりとした頭の中で。








カン








以上「鈴虫」でした。



天竜川沿いのジョギングのせいで、須賀京太郎は色んな目にあってますね。






それでは・・・・・がららん



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