男「連帯保証人になったよ」女「何やってんの!?」 (21)

―カフェ―

男「俺さ、連帯保証人になったよ」

女「……は?」

男「友達からどうしてもって頼まれてさ、保証するぐらいならいいかなって……」

女「アンタ、何やってんの!?」

男「な、なんだよ……いきなり怒鳴るなよ」

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女「とりあえず……どういう流れでそうなったか、説明してくれない?」

男「えぇ~と、少し前の話なんだけど……友の奴が200万だか300万だか借金するらしくて……」

女「正確な額も覚えてないなんて……」ハァ…

男「で、連帯保証人が必要らしいからさ。俺がなってやったわけよ」

女「なんかもう頭痛くなってきたわ……」

女「アンタさ、連帯保証人ってなんなのか分かってるの?」

男「そりゃあれだろ?」

男「コイツは借金踏み倒すような奴じゃないですよ、ってのを保証する感じのアレだろ?」

女「バカ! 全然違うわよ!」

男「え!?」

女「連帯保証人ってのはね……」

女「いってみりゃ、アンタも借金しちゃったのと同じってことよ!」

男「は、どういうこと?」

女「つまり、もし友君が借金返せなかったら、アンタが返さなきゃならないのよ!」

男「なんで!?」

女「そういうもんだからよ!」

女「ていうか、連帯保証人になる時そういう説明受けなかった? 受けたはずだけど」

男「たしかに説明はあったし……書類も見せてもらったけど……」

男「はっきりいって聞き流してたし、流し読みだった……」

女「そんなことだろうと思ったけど……」

男「俺……もしかしてやっちまった?」

女「やっちまったわね」

女「連帯保証人になったせいで、人生破滅した人って結構いるのよ」

女「借金取りに追い回されて、借金に振り回されて、最後は……ってね」

女「せめて友君に頼まれた時に、私に相談してくれれば……」ハァ…

男「くっ……!」

女「ま、これも自業自得ってやつね。人生を適当に生きてきた罰よ」

女「私、借金背負った男なんか危なっかしくて嫌だし、今日で別れましょ」

男「ああ……そうだな……」

女「なんて言うわけないでしょ!」

男「え……!?」

女「ちょっと借金背負ったくらいでなによ!」

女「私だって少しぐらいは貯金あるし」

女「私はアンタとなら、たとえ地の果てまでだって夜逃げしてやるわよ!」

女「二人でノープラン逃避行ってのも、案外オツなもんじゃない!」

男「あ、ありがとう……」

女「だけど、諦めるのはまだ早いわ!」

女「こうなったらいっそ、知り合いみんなに相談するのよ!」

女「私らだけで話しててもいいアイディアなんか浮かびっこないけど」

女「たくさん人が集まれば、きっと道は開けるわ!」

男「そうだな……やれるだけやってみるか!」

―居酒屋―

ザワザワ… ザワザワ…

男「皆さん、俺のために集まってくれてありがとう」

男「こうして借金地獄に陥りつつある俺ですが、どうか皆さんの力を貸して下さい!」

女「お願いします!」

マッチョ「やれやれ、連帯保証人になっちまうとは、お前らしいというかなんというか」

マッチョ「ま、だけどお前のことはオレが守ってやるから安心しろい!」

マッチョ「ヤバイ取り立て人が来たら、片っぱしからブッ倒してやるぜ!」

マッチョ「オレはナイフだろうが拳銃だろうが怖くねえからな!」

男「頼りにしてます、先輩!」

インテリ「連帯保証人など、そう簡単になれるものではありません」

インテリ「あなたに落ち度はあるとはいえ、その手続き方法にも色々と問題はありそうです」

インテリ「もし問題を見つけられれば、連帯保証人の効力を失わせることも可能です」

インテリ「私はそういったところから探りを入れるとしましょう」

男「優秀な知人がいてくれて、感謝するよ!」

探偵「なんだったら、オイラたちが弱みを握っちまうってのもいいな」

探偵「債権者の身辺調査をして、いっそこっちからゆすりをかけるってのも面白え!」

探偵「なあに、悪徳金貸しの可能性もあるし、容赦なんてすることねえ」

探偵「可愛い元助手のためだ。いくらでも力になってやるさ」

男「昔、あなたの事務所でバイトしてた頃を思い出しますね」

老人「ふぉっふぉっふぉ……」

老人「もし、本当に借金地獄に陥ってしもうたなら……ワシに言うがよい」

老人「戦後の闇に埋もれた、XYZ資金を動かしてしんぜよう」

老人「いつだったか、道に倒れていたワシを病院に運んでくれた礼じゃ」

男「ありがとう、謎のじいさん!」

女「みんないざとなったら協力してくれるって! よかったじゃない!」

男「ああ、なんだかワクワクしてきたぜ! 遠足前夜みたいな気分だ!」

女「だけどもし、結局どうにもならなくて、二人で夜逃げすることになっちゃっても……」

女「それはそれで悪くないかも……」チラッ

男(おいおい、コイツがこんな色目を使ってくるなんて初めてだぞ!)

男(なんつうかアレだな。借金まみれってのもいいもんだな)

男(風邪ひいた時みたく、みんなが助けてくれる!)

男(俺って今まで目的もなく生きてたから、借金返すっていう明確な目標ができるのも悪くねえしな!)



男(なってよかった……連帯保証人……!)

――

――

友「借金? あんなのとっくに返し終わったぞ」

男「え……」

友「いやー、お前にも迷惑かけたな! もしかして俺がバックれるんじゃってハラハラした?」

友「ぶっちゃけ絶交されるかなと思ってたのに、快く引き受けてくれてありがとう!」

友「これ少ないけど謝礼を……」

男「テメエ!」グイッ

友「ごっ、ごめ……っ!」

男「なんで返済しちゃったんだよぉぉぉぉぉ!!!」

友「ええええええええええ!!?」





―終わり―

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