【艦これ】クウェンサー「艦娘?」ヘイヴィア「深海棲艦?」【ヘヴィーオブジェクト】 (103)

「おいクウェンサー」

さっきと変わらずヘイヴィアの声が隣からする。

「なんだよヘイヴィア」

さっきと変わらず『資本企業』製第一世代オブジェクトの主砲はこちらを向いている。

でも、

「なんだよじゃねえぞ相棒。現実に目向けやがれ!」

「第一世代にロックオンされる以上に厳しい現実なんてあるわけないだろ、ヘイヴィア」

「まあそりゃそうだが」

さっきとは変わって、

「命綱なしでのバンジーもなかなかだよな。もう一生味わえないんじゃね?」

「そりゃ死ぬからな!とりあえず口閉じろヘイヴィア!」

俺とヘイヴィア、そして第一世代は逆さまの状態で空中にいた。

どうやら真下はだだっ広い海らしい。

(浅かったら普通に死ねるぞこれ!?)

詳しいことは後で考えるとして、まずはこの状況をなんとかしなければならない。

とは言っても、自由落下が始まった今どうこうできるはずもなく、流れに身を任せるしかない。

幸い、向こうのエリートも混乱しているようでさっきから下位安定式プラズマ砲を3発、見当違いな方向にぶっ放していた。

だから、賭けは着水後にあった。

幸い、あの第一世代と先ほどまで戦っていたフィールドは陸地だ。

ゆえに今あの戦略兵器は海戦用のフロートをつけていない。

いかに第一世代といえど、水深が50mもある海に着底してしまえば詰みだ。

だから、賭けるものは双方の命。

(せめて向こうのエリートが女の子じゃありませんように)

(せめて向こうのエリートがおっさんでありますように)

そして、そのときはすぐに訪れた。

鼓膜に雷鳴のように響くのは、ボールのような巨大兵器が着水した合図。

おそらく、上空から観察しているものがいれば大小三本の水柱が上がるのが見えただろう。

海面に打ち付けられた体とともに意識が深く沈みそうになるのを、歯を食いしばりなんとか海面を目指す。

「ガハッ」

顔を上げると、勝ち誇ったような顔のヘイヴィアがいた。

「クウェンサー、どうやら俺たちの勝ちみたいだぜ」

「そりゃよかった」

その言葉通り、周りを見渡しても第一世代はもうどこにも見当たらない。

50mじゃすまない深海に沈んでいったのだろう。

馬鹿みたいに笑おうとして、違和感を感じてヘイヴィアの方に向き直る。

「なんだよ相棒、しけた顔しやがって。俺たちは第一世代を撒けたんだぜ。今くらい喜ぼうじゃねえか」

「いや、ヘイヴィア。……まだ終わってない」

「だから何がだよ―――」

ヘイヴィアが文句を言いかけたとき、ついに周囲の様子が一変する。

目の前の海面が膨らんだ。

「―――あ?」

「思い出せヘイヴィア、ジブラルタルでトライコアを沈めたとき俺が死にかけたのと同じだ」

いや、それは膨らむなどという生易しい表現ではすまされない代物だった。

高さ50mの波―――オブジェクトにも匹敵する脅威が壁となって押し寄せてくる。

「機密保護装置か!?」

まともなオブジェクトならばオニオン装甲に覆われているため百年経っても海水で溺死することはないだろう。

しかし、それでも海中で身動きが取れず詰みに等しい状態なのには変わりない。

ならば、機密保護という名目で設置された自爆装置が起動するに足りる。

「……クウェンサー、死ぬ前に言いたいことあるか?」

「あああるぜ、山ほどあるけど絞れた。そういうお前はどうなんだよヘイヴィア」

「この俺を誰だと思ってやがる。イケメン貴族ヘイヴィア様だぜ?」

「ハハハ。じゃあせーので叫ぶぞ」

死はもうそこまで迫っていたが、だからってしんみりした最期はごめんだ。

「せーの!」

「もう戦場なんてこりごりだ!結婚したい!」

「もう戦場なんてこりごりだ!金持ちになりたい!」

直後、俺たちは波に呑まれて一瞬で意識を失った。

太平洋・某所
―――――――┘
「……龍驤さん、偵察機からの報告です。××島東北東五○キロで同部隊三機が撃墜されました」

「なんやて?」

「付近で大きな水柱が上がり、約1分後にそこを起点として小規模な津波が起こったそうです」

「……怪しいな」

「続報です。…………え?」

「筑摩、どないしたんや?まさか、レ級でもおったか?」

「いいえ、水面に人を確認したようです。様子からみて意識を失っているようだと」

「なんちゅうこっちゃ……。筑摩、鎮守府に連絡入れてな。うちらは現場に行くで!」

「はい!……大淀さん、緊急です!……」

太平洋・××島沖
――――――――┘
馬鹿二人は気を失ってプカプカと浮かんでいた。

仰向けになっているから辛うじて呼吸はできるが、波でうつ伏せになればそれすら危ない。

また、この海を陣取る人ならざる怪物に見つかればどうなるかわかったものではない。

が、幸運なことにそれよりも先に救いの手が伸びた。

「……おーい、あんたら大丈夫?」

「龍驤さん、完全に気を失っています。どういうわけかはわかりませんが先ほどの津波に巻き込まれたのでしょうか」

「しっかし、どこからどうみても日本人やないな」

「このあたりの島に外国人が住んでいるとは聞きませんし……それに、彼らが着ているのは軍服ではないでしょうか?」

「ま、事情を聞くのは司令官たちの役目や。もう連絡は入れたし横須賀まで連れて帰るしかないで」

「それもそうですね」

仕方なく、二人でそれぞれ背負うことにした。

この状況で深海棲艦と出くわすとなると頭が痛いが、鎮守府から水雷戦隊が向かってきているので心配はいらないと思いたい。

仮に彼らが起きて悪さをしようとしても艦娘に人間の扱える銃は通じないし機関も弄れるような代物ではない。

もっとも、この二人が深海側からのスパイだとかいう展開ならさすがに諦めるしかないが。

「ん……?」

筑摩の背負っているクウェンサーが、声を発した。

「ちょっと、あんた大丈夫か?」

龍驤が声をかける。

「え……?」

その声でクウェンサーはようやく目を開けた。

だが、

「日本語……?はは、もう三途の川まで来ちまったか。あ、アヤミ婆さん先に来てたのか」

圧倒的な水の暴力で頭をやられたのか、完全に寝ぼけていた。

そして、それだけ言ってまた眠ってしまった。

「……とりあえず命に別状はなさそうやな」

「ですね」

そんな話をしていると、二人の目の前に人影が映った。

それは、筑摩からの緊急連絡を受けて鎮守府から派遣された水雷戦隊だった。

太平洋・深海
――――――┘
時は戻る。

海中でオブジェクトが自爆したときまで。

深海棲艦の本拠地はその名の通り深海にある。

制圧した海域に一応の拠点として陸上施設を設置することはあれど、全ての源流は深海にあった。

もちろん、深海で暇を潰している者もいる。

このときは、ちょうど南方棲戦姫と重巡ネ級、雷巡チ級が集まって駄弁っていた。

「……イマ、ナニカバクハツシタナ」

「ケッコウアサイトコロナキガスルケド、デモ」

「マタ、ンキュウガナニカシタノカナ」

「ヨンダ?」

「・・・・・・ウワサヲスレバ」

三人の輪に加わったのはイージス艦ン級。

真っ当な方法で建造された真っ当な深海棲艦だが、ある事情により海戦には参加できずにいた。

そのため技術顧問として建造時から活動しているが、チャレンジャー精神旺盛で割と危なっかしい。

「サッキノバクハツノハナシ?」

「アンタガヤッタンジャナイノ?」

「チガウヨ……」

「ジャアナンナノヨアレ、ンキュウイガイニヤリソウナヤツナンテコノアタリニハ」

「アノバクハツ、コノヘンカラジャナイ。ムシロ、カナリアサイ」

「……ナンデスッテ?」

クウェンサー、ヘイヴィア、そして第一世代オブジェクト。

この世界に降り立ったイレギュラーは、その全てが余すことなく世界を狂わせ始める。

             i!
        ___ノ;}

      ,  ´: : : : : : : : `ヽ、,_ _
    /: : : : : : : : : : : : : : :\: ::ヽ 
   /: : : l: : : : | : : : : : : ト、 : ヽ : :ヽ

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  l: :「ヽ: :| : ノ TT    TT  :i: |: : ::j  (一旦終わります)
  ヽ:ヽィ: : :|  U     U   |: | : :,'
   \: : : :i   , ,      , , :l:八丿
    ヽ :::|_     _,   ィ~

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          /    fv∧   ',、   _人_ヽ
         ,′    |   丶   ', \ Υ   ',     人
  _人_     f      レ´ ̄`\  ',⌒\ ',   ',     Υ  (E-6割れる気配がしない)
   Υ      | |   | | , --、 \ ', ハるl    ! _人_
           | |   | |〃うぃ    ヾ 弋リ ! |   '  Υ
           l _人_ ヽ! 弋リ   `! /// リノ   |
         ! i Υ   | //// ____,  /|  | !
         ||',    !    ト-─一::イ   !   ! |       (再開します)
    __人__   ! | ',   '、   ',:/⌒ヽ|  /|  ,': |
      Υ    | |  '、  ',丶  \::::::::ノ /ソ .ハ∧ ̄ ̄> 、
       _人_ | |  ヽ\ ∧:::>:.. _/─//:/  `     > 、
        Υ  j八ト、 {ハ\{∨斗彡    { {   γ─────‐、
          rr────‐〈 ̄{::{       { {    /          \

横須賀鎮守府
――――――┘
目を開けると、白い天井が見えた。

顔には酸素マスクがつけられ、腕には点滴の針が刺さっている。

なぜ助かったのか知らないが、なんにせよ俺は生きているらしい。

針が刺さっていない左腕で酸素マスクを外し、上体を起こさないままなんとなく相棒の名前を呼んだ。

「…………よう、ヘイヴィア」

「ようクウェンサー。生きてるってどうだ?」

やっぱりヘイヴィアも生きているようだ。

まったくもって笑えないが俺たちは悪運が強い。

「最高……って声高らかに言えないのが悲しいところだな」

「そりゃそうだ。おいクウェンサー、こっち見ろ」

「え……?」

言われるままにだるさの抜けない体を起こす。

すると、ヘイヴィアとともに一人の男が目に映った。

「クウェンサー=バーボタージュくんだね?」

「……はい」

「私は日本国海軍横須賀鎮守府の管理を任されている者だ。今は中将と呼んでくれ」

(鎮守府……?)

あまり聞き覚えのない単語だ。

確か、かつての海軍で軍港を指した言葉だったはずだ。

ただ、疑問を口に出しすぎるのはこの状況ではあまりいい判断とはいえないだろう。

「日本……(『島国』か……)ああ、確か三途の川を彷徨っていたような」

「ふっ、龍驤から話を聞いたよ。日本国籍を持っていないのにその手のネタに詳しいとは」

「国籍……あっ」

今のやりとりでなんとなくわかったことがある。

ここは俺たちの『オブジェクトが戦争の全てを決める世界』じゃない。

どういうわけかは知らないが、第一世代にヘイヴィアとともに追い詰められていたあのタイミングで俺たちとオブジェクトだけがこの別世界にやってきたということだろう。

そして、つまりそれは俺たちのいた世界とこの世界では世界情勢が異なっていてもなんらおかしくないということだ。

世界に国家という単位が存在するなら、大多数の人間はそれに対応した国籍を持っているはずだ。

それが、俺たちにはない。

日本国籍どころか、この世界のどの国家にも俺とヘイヴィアの情報は存在しない。

それが意味することは。

「クウェンサーくん、そんな深刻な顔はしなくてもいい」

「……すみません」

中将に声をかけられ、深刻な考え事の途中で現実に引き戻された。

「どういうわけか君たちはどの国の国籍も持っていない。君たちが着ていた軍服もどの国、組織のものとも一致しない。はっきり言って私は困っている」

「なら」

「でも条件を呑んでくれるなら、得体の知れない君たちのこともしばらくは様子見としよう」

「条件?」

「ああ、私の部下になってくれないか?」

「……はあ」

どんな条件が飛び出てくるかと思えば、部下ときた。

といってもこちらの立場は弱い。

こちらがこの世界で自由に身動きを取れないのをいいことに、容赦なく使い潰された末に一斗缶にコンクリート詰めにされて海に投げ捨てられてもおかしくない。

だが、そうは言っても慎重に進めなければならなかった。

なんにせよ俺たちのこれからがかかっているのだ。

「しばらく、というのは?」

「ああ、私の上にバレるまでだ。バレたら容赦なく切り捨てるから営倉にぶち込まれたくなければせいぜい功績をあげてくれ。私も鬼じゃないから君たちの戦果を強奪したりはしない」

「…………」

とんでもなく理不尽な要求であるはずなのに、気分が晴れた。

要するに今までと同じというわけだ。

オブジェクト撃破の武勲を命令違反その他諸々の事情で帳消しにされるか、営倉にぶち込まれないよう仕事に励むか。

「……わかりました。中将、しばらく世話になります」

「そうか。ヘイヴィアくん、クウェンサーくんはこう言っているが君もそれでいいのか?」

「ええ、今までもそうでしたから」

「では、部下の君たちの新しい職場に案内しよう」

太平洋上・某所
―――――――┘
「……なあヘイヴィア」

「……なんだよクウェンサー」

「なんで俺たちはまた太平洋に戻ってきたんだ!?」

「知るかよ、そもそも考えてみればおかしかったんだ。あんなうまい話があるはずねえだろうが!」

「ははは、ちょうど新設された泊地へ着任する人員が足りなくてね。君たちは現状の知識こそまだ乏しいが実戦経験は豊富なようだからそこを任せようと思ったんだ」

ヘイヴィアと口喧嘩していると、中将が戻ってきた。

俺たちは今その泊地へ向かうためにこの国の軍艦に乗っていた。

それにあたって必要な知識は簡単にだが一通り教えてもらったはずだ。

この世界で、海に深海棲艦なんていう船の化け物が現れてから、イージス艦や原子力空母などを主力とする既存の海軍は崩壊したという。

今俺たちが乗っている軍艦もかつてはそこそこ活躍した護衛艦らしいが、今では民間の客船や輸送艦と同じような扱いで、むしろ護衛される側になっていた。

かつての海軍戦力から引き継ぐ形で現在の世界の制海権を守っている、艦娘と呼ばれる存在に。

「にしてもあいつら、普通の船よりずっと小さいんだな。確かに軍艦より小回りは効くんだろうけど」

「兵器の擬人化かあ……。まあベースは普通の人間の女の子だから厳密には違うのかもしれないけど。なんつーかグロいよな」

初めて見る存在に対して思い思いの感想を抱く俺たちに中将は少し苦笑する。

「それを本人たちの前で言ってやるなよ。そして、あんななりでも火力はちゃんとある。そして軍艦が深海棲艦に対抗できなかったのはサイズの問題だけじゃない」

「どういうことですか?」

「奴らは、既存のレーダーじゃ絶対に見つけられない」

「……は?」

「厳密には動けば波でわかるが、あの頃はそこまでの技術を戦術に転用できなくてね。それに、それは艦娘も同じだから軍艦では誤射してしまうかもしれない」

「……なんなんだよ?艦娘とか深海棲艦とかってのは」

「さあな。私たちにわかっているのは、艦娘も深海棲艦も太平洋戦争終結までの数十年間に各国海軍に所属した艦船を中心とする船を模した存在だということと、今のところ艦娘は人類の味方で深海棲艦は人類の敵だということ。それだけだ」

オブジェクトも大概ぶっとんだ存在だが、オカルトは一切混ざっていなかった。

ならば、話を聞く限りではオカルト要素満載なこの世界の海戦の要は、オブジェクト以上かもしれない。

「ところで、あの子たちの艦種はなんなんです?」

「先頭にいるのが軽巡洋艦、他は皆駆逐艦だ。……なんだ、遠い未来から海戦のスペシャリストでも来たのかと思ったが違ったのか」

なにか勝手に期待されていたらしく勝手に落胆されてしまった。

「ちなみに君たちが最初に部下として会うことになるのは駆逐艦娘だ。呉で訓練を終えたばかりだが気合いは十分だと聞いている」

「はあ」

全体を見れば下っ端もいいとこだが、部下の管理なんてのは俺もヘイヴィアも初めてのことだ。

これまではオブジェクト相手に俺はハンドアックスを、ヘイヴィアは銃を持って逃げ回っていたのだから俺たちの身に及ぶ危険は少なくなるだろうが、逆に他人の命を預かることになる。

フローレイティアさんの気持ちもわかりそうだ。

「まあそう気を落とすな。しばらくは気が向いたら艦娘をそっちに送る。あとは艤装を建造したら本土に輸送してくれ。その分は新人をそちらに送ろう」

そんなこんなで話をしているうちに、島が見えてきた。

「あそこが俺たちの拠点か」

「みたいだな」

「私は君たちの執務室まで案内したら横須賀に戻る。君たちの健闘を祈ろう」

軍艦が港に着き、俺たち三人は目の前にある建物に入った。

「ここが泊地の庁舎だ。執務室に駆逐艦がいるからあとは彼女に教えてもらってくれ」

階段で3階まで上がり、執務室の扉を開けた。

              ─v─‐ 、_
           // Y⌒\ \ヽ
          ′f(フ三三乂)ヽ ', 'γヽ
         /i  !v、::、::::ハ::ハ ノ!  | |乂⌒ヽ     (今日はここまでで)
         /ノ  | ∩ ヽ′ ∩ |  | {⌒ヽ⌒ヽ
       /  ノ ∪    ∪ ∨ \γ∨ 乂ノ)
       ( ..:/:i⊂⊃ _ ⊂⊃\ `ーァー)ヽ    (安価出しますね)
        (三))ゝ  `ー(三))。)三\_/_ノ_ノ

《↓三 駆逐艦(ブラウザ版の初期艦でなくとも可)》

リゾレッテたんがオブ娘化しませんか?しませんね分かりました

>>21

             /j . -‐…‐-. 、 .、
            / : : : : : : : : : rヘ/
.        /: :./!!: : : : /!!: !: l./: !
        iイ:./ T',: : / Tl:j: :!: : !   (まあ深海側で研究が進めばあるいはってやつですねー)
.        l:Vー-‐V'' ー-‐!: ;': : ;    
        _「l:〈 ''' r‐‐ァ '''/:/: : /    
      { ー)、>ァ+-‐=,7:/、¨´     (さすがにいきなりオブ娘化は馬鹿2人をもってしても人類詰むんで陸上型+0.5世代あたりからですね)

        7/{/Vヘ_/{/_ ` <   
.         ヘ   _.jュ-.ュ-'、` 、  /
        ゝ ´ .}:!::‐:::l:ヽ{_/  /     (イベントさっさと終わらせて五月雨ちゃんつっつき回しますので次回はしばしお待ちを)
            {:l:::::::/::::ヾ==!

      ,,,--—--..、  
    /:::::::::::::::::::::ヾ::::. 
     '/:::::ノリ\::ヾ:::::ヾ::i    (E-6ヤバい)
    λ:イ ●  ●\:::!::| 
     /:〈 " 、,  "i:::ソ::l 
    i:::: リ`ァ-y--イリ:::::l    (次回はしばしお待ちを、と言ったな。あれは嘘だ)
   人:::::/,1介イ i::::::メ

     ヾfJ----i_メp::::::::\ 

<一日目>

扉の先に見えたのは、執務室の机で書類を整理する一人の少女の後ろ姿。

今は艤装をつけていないようだが、おそらく中将の言っていた新人駆逐艦だろう。

先ほど軍艦を護衛していた水雷戦隊の中に同じ制服を着た駆逐艦娘がいたからだ。

最初に目についたのはやはり透き通るような青色の長い髪――――

いや、それよりも腋だ。

さっきの子といいこの子といい今は12月の半ばだっていうのになんでノースリーブなんだ。

いやそりゃあこの島は太平洋上だけあって暖かいんだろうけど。

なんというかすごくそそるものがある。

そこまで第一印象を脳内に書き連ねたところで、後ろから蹴りを入れられた。

「おいクウェンサー、いつまでボサッと突っ立ってんだ。入れねえじゃねえか」

「うわっ!?」

俺たちの声でようやく気づいたのか、少女が振り返る。

「あっ、すみません!」

「あ、ああ」

そして顔を見て、一人の少女を思い出した。

今どこで何をしているのかもわからない、表情の割に喜怒哀楽が豊かでがんばりやのお姫様に、この少女はどことなく似ているように感じた。

「五月雨っていいます!よろしくお願いします」

「この泊地を任されることになったクウェンサー=バーボタージュだ」

「同じく、ヘイヴィア=ウィンチェルだ」

「聞いていると思うが二人ともここの提督だ。五月雨、あとは頼んだぞ」

「あ、はい。中将様、おつかれさまです」

中将はそのまま出ていった。

執務室には三人だけになる。

「朝早くからおつかれさま。それで五月雨、早速だけど泊地の案内を頼みたい」

「はい、お任せくださいね!」

五月雨は、部屋の端にかけていたコートを羽織った。

「…………………………チッ」

無意識にしてしまった舌打ちは五月雨にも聞こえていた。

「あ、あれ。提督、どうかしましたか?」

「あ、いや。五月雨はそれで寒くないんじゃないのか?ここへ来るまでにみた駆逐艦はみんな寒そうな格好してたけど」

「艤装をつけていればある程度は無視できるんですが、普通にしているときはやっぱり寒くて」

「あー、そうなのか。ごめんごめん、気にしないでくれ」

「?それじゃあ案内しますね」

五月雨はそのまま執務室の扉を開けて歩いていった。

二人になったところで、ため息をつく。

「クウェンサー、露骨に残念がるなよ。見えないときがあるからこそ見えたとき感動することだってあるんだ」

「そりゃまあそうかもしれないけどさ」

やはりヘイヴィアは腐れ縁だけある。

こいつがいなけりゃ今頃どうなっていたやら。

「で、だ。クウェンサー」

「なんだよヘイヴィア」

「俺たち、二人ともここの提督なんだよな?」

「あー……」

「おいクウェンサー。勝った方が名前に様付けで負けた方が提督ってのはどうだ?」

「なにで勝負するんだってなんで手鳴らしてんだよ!殴り合いでお前に勝てるわけ」

「いいか、クウェンサー。お前はオブジェクトなんて理不尽に何度も立ち向かったんだ。これくらいなんとかしてみせろ!」

「結局お前が様付けで呼ばれたいだけだろ!おいちょっと待」

「どうかしました?」

あと十秒でボロ布同然の負け犬になっていたところに、救いの手が伸びた。

俺たちがついてきていないことに気づいた五月雨が戻ってきたのだ。

「そうだ五月雨、俺とヘイヴィアについてなんだが二人とも提督じゃわかりにくいだろ?なにかいい呼び方思いつかないか?」

「あっこらテメエ」

「そうですね……あっ、いい考えが思い浮かびました!これから食堂行きましょう!」

「え?」

「ついてきてください!」

なにか秘策があるのだろうか。

なにはともあれこれで負け犬にならずにすんだのだから五月雨に感謝するしかない。

「行くぞヘイヴィア。決着つけようぜ」

「ったく、調子のいいこと言いやがって」

俺たちは五月雨の後ろについていき、食堂に向かった。

「ここが食堂です。ちょっと待っていてくださいね」

そういうと、五月雨は厨房のカウンターまで走っていった。

「間宮さん、伊良湖さん。提督が到着されました」

「司令官がいらっしゃいましたか」

「それじゃあご挨拶しないと」

すぐに、厨房から二人の女性が出てきた。

あと十秒でボロ布同然の負け犬になっていたところに、救いの手が伸びた。

俺たちがついてきていないことに気づいた五月雨が戻ってきたのだ。

「そうだ五月雨、俺とヘイヴィアについてなんだが二人とも提督じゃわかりにくいだろ?なにかいい呼び方思いつかないか?」

「あっこらテメエ」

「そうですね……あっ、いい考えが思い浮かびました!これから食堂行きましょう!」

「え?」

「ついてきてください!」

なにか秘策があるのだろうか。

なにはともあれこれで負け犬にならずにすんだのだから五月雨に感謝するしかない。

「行くぞヘイヴィア。決着つけようぜ」

「ったく、調子のいいこと言いやがって」

俺たちは五月雨の後ろについていき、食堂に向かった。

「ここが食堂です。ちょっと待っていてくださいね」

そういうと、五月雨は厨房のカウンターまで走っていった。

「間宮さん、伊良湖さん。提督が到着されました」

「司令官がいらっしゃいましたか」

「それじゃあご挨拶しないと」

すぐに、厨房から二人の女性が出てきた。

>>29 おっと二重になってしまった

「こちらが食堂を仕切っていらっしゃる給糧艦のお二人です」

「給糧艦間宮です」

ふむ、悪くない。

(これはなかなか見応えがある)

「給糧艦伊良湖です。司令官、よろしくお願いします」

こちらは……今後に期待できそうだな。

(あいつと同じくらいか)

「どうも、クウェンサー=バーボタージュです」

「ヘイヴィア=ウィンチェルだ」

「あら?提督はお二人いらっしゃるんですか?」

「はい、そのことでお二人にも話しておきたいことがあるんですが」

そこで五月雨がこちらを振り返った。

「ここで決めましょう。じゃんけんで勝った方が提督、負けた方が司令官でどうですか」

「…………え?」

「…………は?」

「ダメでしたか?」

「い、いや。ダメってことはない」

事実、先ほど伊良湖は司令官と呼んでいた。

ならば、五月雨のいう方法がもっとも解決に適しているのだろう。

どちらかが一人勝ちというのも泊地という狭い社会の中ではよろしくないだろうし。

「仕方ねえなあ。おいクウェンサー、決めるぞ」

「おう」

「じゃあいきますよ。最初はグー、じゃんけんぽん!」

俺がグーでヘイヴィアがチョキ。

「……おい提督」

「……なんだよ司令官」

「決まりですね。間宮さん、伊良湖さん、またお昼になったら来ますね」

「はい、お待ちしていますね」

「いつでもいらしてください」

俺たち三人は一度食堂から立ち去った。

「五月雨よ、次はどこ行くんだ?」

「工廠です。本土の鎮守府と比べると規模は小さいですが機能は充実していますよ」

「なあ、五月雨。さっきの人たちは給糧艦って言ったよな」

「はい。ですのでまず間宮さん、伊良湖さんが出撃することはありません。しばらくは私一人での出撃となるので進軍海域は限られますが、私も一生懸命がんばりますので」

「頼りにしてるよ」

「はい!……提督、司令官。あそこです」

庁舎の外に出た五月雨が指さしたのはのはいかにもな感じの建物だった。

中に入ると、手前には工場のようにたくさんの機械が、奥にはたくさんのコンテナのようなものが並べてあった。

「へえ」

なんとなく、第37機動整備大隊のベースゾーンを思い出すような光景だった。

「手前が艤装の建造と開発に関わる工廠、向こうは装備品の倉庫です」

「なるほど」

「この場所は艤装の修理も兼ねていますので、大体はここで済むと思います」

「……今からでも建造ってできるか?」

「はい。ただ、資源との兼ね合いもありますから最初は軽巡か駆逐艦以外は建造できませんね」

「それでもいいさ。仲間ってのは多いほど心強いもんだからな」

「それもそうですね。ひとまず3隻分くらい建造してしまいましょうか」

「うん、しばらくは本土からまた別に寄越すって中将が言ってたし」

そんなこんなで必要最小限の資源を消費して建造を始めた。

「この後の工程は自動化されているそうなので、お昼までその辺りを散歩しましょうか」

「あー、五月雨。もうちょっとここの工廠見て回りたいんだけど」

「はあ、いいですけど。でも今はまだ装備品も少ないですし機械とかはあまり触らない方が」

「こいつは元々こういうのが専門だからそこは心配しなくていいと思うぜ」

「そうだったんですか」

「なんならヘイヴィアと五月雨はその辺散歩しててくれ」

「了解。いくぞ五月雨」

「あ、はい」

ヘイヴィアは五月雨を連れてさっさと出ていった。

この工廠でどうやって艦艇と同等の戦力を造りだしているのか。

五月雨は一連の作業に疑問を抱いている風ではなかった。

それは未知のものとして割り切っているのか、艤装をつけ艦娘になった時点で直感的に理解したのか。

できればヘイヴィアにはいてほしかったが、会ったばかりの五月雨を一人にするのも気が引けた。

「とにかく、ここの提督として確認しないとな」

そして数十分が経った。

「おかしい……」

ひとつひとつの工程にぱっと見違和感はない。

だが、近づいてみると設置された機械だけでは終えられないほどの作業が必要となることに気づく。

こうしているうちにすでに艦娘2隻分の艤装は仕上がってしまっている。

『信心組織』のような発想だが、この機械―――――箱の中には小人がいて彼らが働くことで艤装が造られているのではないかとすら考えてしまう。

「意外と技術職向きなんですね、提督は」

そのとき、後ろから声がかかった。

俺以外には誰もいないはずの工廠で。

「あんたは……誰だ?」

反射的に振り向くと、そこには艤装だと思われるクレーンを背負った女性がいた。

「工作艦です。まだ艦娘ではありませんが」

「どういうことだ?」

「工廠が建っていればわたしはいます。媒体となる女の子はまだ来ていないので、普通であればまだ人前に顔出しはできないんですが」

「似たようなのがいたからわざわざ出てきたってこと?まあ、それはいいや。じゃあ」

「ああ、ここのシステムですか。一段落したみたいですしちょっと呼び出しましょうか」

なにを、という前に結論はやって……いや、湧いてきた。

「え……」

マジで小人だった。

いや……なんかデフォルメされてるし妖精の方が近いのかな。

「作業はこの子たちがやってくれてるんです。私も正規採用されれば少しは手伝えるんですが」

「…………艦娘ってなんなんだろう」

「じきにわかるようになりますよ、提督も」

「そんなあっさりと……」

先延ばしにされるのは好きではないが、ここまで来たらもう口で語って説明できるようなことではないだろう。

「あ、司令官と五月雨さんが戻ってきますね。それでは私たちはこれで」

妖精たちを箱に帰らせると、彼女の姿も消えていく。

「ああ、会える日を楽しみにしてる」

「はい」

それだけ言うと、謎の工作艦の姿は完全に消えた。

それと入れ替わるように、ヘイヴィアと五月雨が工廠に入ってきた。

「クウェンサー、もう建造は終わったか?」

「ああ、どれも駆逐艦の艤装だ」

「そうか、じゃあ本土に」

「誰が輸送の護衛するんですか?」

「あ」

「五月雨を送ったらここがガラ空きじゃねーか……そもそも護衛は単艦でできるのか?」

「先に横須賀から艦娘が来るのを待つしかないですね……」

「とりあえず輸送の準備だけでもしておこう。そうしたらいい時間だし食堂行こうか」

「はい!」

そんなこんなで昼食の時間になった。

食堂に入った俺たちは厨房に一番近いテーブルに座る。

すぐに伊良湖が厨房から水を持って出てきた。

「三人ともお疲れさまです。お品書きが完成したので置いておきますね」

「ありがとう。五月雨から決めていいよ」

「ありがとうございます。そうですね……じゃあ私はとんかつ定食で」

「おっ、じゃあ俺もそれにしようかな」

「俺も」

正直にいって、トンカツなるものを俺は知らない。

定食っていうのはそこにライスとスープとジャパニーズピクルスが加わったメニューだとフローレイティアさんから聞いた気がするが。

まあ、五月雨が頼むからにはうまいのだろう。

「わかりました」

注文を聞きおえると、伊良湖はまた厨房に戻っていった。

「間宮さんと伊良湖さんの料理はすごくおいしいんですよ~。ってあれ、大丈夫……ですか?」

「いや、俺たちの軍じゃ今までほとんどまともな飯にありつけなかったからつい涙が……」

「この匂いだけでもう腹いっぱいかもしれねえ……」

「お二人とも、今までどんな部隊にいたんですか……?」

なんか口を滑らせたような気がするがここはスルーするか。

「まあこれからは毎日うまい飯が食えるんだ。今まで以上にがんばらないとな」

「おいおいクウェンサー、さすがにそれだと深海棲艦相手に俺たちが戦わなきゃならないことになるぜ」

「本当になにしてたんですか……」

ヘイヴィア、スルーっていうのは自分たちだけで話題を共有して第三者を置き去りにすることじゃないと思うんだ。

「司令官、お品書きを少し寄せてくれませんか」

「っと、悪い悪い」

「はい、とんかつ定食三人前です」

そんなことを話しているうちに、タイミングよく間宮さんと伊良湖が定食を持ってきた。

……ん?

思ったより量があるな。

俺たちは問題ないにしても、五月雨はこの量を食えるのか。

「おいクウェンサー、さっさと食べようぜ。冷めちまう」

「じゃあ、いただきます」

「いただきます」

「いただきます」

手を合わせて食事の挨拶をする。

フローレイティアさんが日本マニアであることに助けられる日がくるとは思わなかった。

それはそうとして、五月雨はこの量を食べられるのだろうか。

「やっぱりお二人の料理はおいしいです!」

ところが五月雨は、俺の心配などどこへやら、少女らしからぬ速度でカツを食べていた。

「おいおい……いくら成長期だからってよ、こんな量腹に収まるのか?」

「何言ってるんです司令官。腹が減っては戦はできぬ。深海棲艦の前でお腹がすいて倒れたらどうするんですか」

「お、おう。そうだな、うっかりしてた」

はじらう気配すらなかった。

しかし、食べるスピードこそ早いがそれでもがっついてはいないあたりが五月雨の性格を表しているのかもしれない。

俺もそろそろ食べよう。

幸い、箸をフルに活用するような料理ではないためなんとか取り繕うことはできた。

「ふふ、提督も司令官も、箸を持つ訓練しないといけませんね」

だが、間宮さんにはお見通しだったらしい。

いや、あるいは日本人がみれば一瞬でわかるくらいおかしな持ち方をしているのだろうか。

まずはライスを口に運んだ。

次にスープの具を口に運んでスープを飲む。

トンカツは切り分けてあったのでそのまま口に運んだ。

「……うまい」

「うお、こいつはいけるな」

更にキャベツを口に放り込んでカツとともに味わう、これだ。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした。さて五月雨よ、この後はどうするんだ」

「そうですね……もうイチサンですしそろそろ出撃したいです」

「単艦でか?」

「まあ、この泊地の周辺はたまにはぐれたイ級が紛れこんでくる程度だとは聞いてるけど」

駆逐イ級。

形状、武装からして駆逐艦というよりでかい魚雷で、開いた口から砲撃や雷撃を行うものの大体その前に倒されるため肩慣らしに沈められることやいないものとして扱われることも多い。

もっとも、上位種はだんだん手強くなっていくらしいがもちろん泊地の周辺にいるのはノーマルなタイプであるわけで。

そのため、新人の五月雨でも周辺の掃討くらいなら朝飯前のはずだ。

しかし、それでも心配なものは心配だ。

ちょうどそんなことを考えていたとき、ヘイヴィアが口を開いた。

「五月雨、雑魚狩りだろうとなんだろうと絶対に気は抜くなよ。戦場ってのは一歩間違えればマニュアルなんか通用しねえ。ピクニック気分で行って足元すくわれたんじゃ飯のネタにもならないからな」

「……」

それは、俺たちが通ってきた道。

第37機動整備大隊の規模は、俺たちが武勲を挙げるたびに膨らんでいった。

しかし、そのぶん犠牲はでた。

どの戦場でも多くの同僚が死んだ。

それこそ、最初の方はクリーンな戦争気分が抜けないまま死んだ者もいたのだ。

この海にどんな危険が潜んでいるかどうかはまだわからない。

でも、その言葉は五月雨だけじゃなく、俺に、そしてヘイヴィア自身にももう一度覚悟を決めさせた。

「……今の言葉、よく覚えておきます」

「へっ。よし、それじゃ出撃準備だ。初陣なんだから派手にやってこい」

「はい!」

太平洋・深海
――――――┘
イージス艦ン級は、艦種の特徴としてメカに強い。

ン級が謎の爆発を起こした兵器について解析を進めていると、一人の深海棲艦が彼女の工廠に入ってきた。

「アレノブンセキハススンデルカ?」

戦艦棲姫。

深海の誇る超弩級戦艦であり、量産化があまり進んでいないため滅多なことでは制海権争いに顔を出さない、海軍から「姫」と呼ばれている数少ない存在の一角。

深海棲艦は、一部例外を除き皆人類と同じ言葉で会話できるが、「姫」と「鬼」以外は海戦において言葉を発することはない。

言葉を発するのは余裕の表れ、転じて強さの象徴だ。

実際に彼女らは性能だけなら艦娘を軽く陵駕している。

「コノギジュツハ……アキラカニコノジダイニカイハツデキルモノジャナイネ」

「……アノキボノバクハツナンテ、カクデモツカワナケレバアリエナイヨ」

「デモ、チガッタ。ウミカラサカナガキエタケドタンニヒナンシタダケ。オセンレベルハタイシタコトナイ」

「マ、ナンニセヨコノアタリヲカンムスガケイタイシハジメタノハカンガエモノダナ」

海軍には謎の爆発をオブジェクトの出現と結びつけられなかった。

しかし、イレギュラーな事案なのは変わらない。

深海棲艦が新技術を投入したのか、あるいは隕石でも墜落したのか。

おまけに急な来客まで重なり、海軍は慌てふためいていた。

馬鹿二人は、対外的には意識不明の重体で事情聴取できるような状況ではないということになっている。

「ウン。……ソレデ、カイセキケッカキキニキタンデショウ」

「デキタノカイ?」

「トンデモナイギジュツダネ……。ゲンシリョククウボ、ゲンシリョクセンスイカン、イージスカンナンテメジャナイ」

「ヘエ。デモソレホドノヘイキナラジュンビモタイヘンナンダロウ?モウジンコウエイセイノウチアゲケイカクナンテトウブンカンベンシタイネ」

深海棲艦は所有している陸上施設を用いてロケットを打ち上げようとしたことがある。

建造したイージス艦を活用するためには人工衛星が必須であるためだ。

無論、計画段階で偵察中の艦娘に発見されて徹底的に潰されたが。

そのため、イージス艦ン級は海戦に参加できない。

ベースとなる沈没艦の装甲が第二次世界大戦期と比べて薄すぎたことと、早々に見切りをつけて旧海軍が海戦に出さなくなったためにデータが少なすぎることが枷となった。

だから、彼女らは深海棲艦からン級の名で呼ばれる。

イロハ歌に存在しない平仮名を冠するのは深海棲艦の悲願であるからだ。

しかし、

「イヤ、ソンナモノハヒツヨウナイヨ」

「ドウイウコトダイ?」

その兵器は、あまりにも革新的すぎた。

                     _
               .. : :´ : : : : : :. :. :`ヽ

.     、 ! ,      /{.: : : :. :. :. ̄ ミヾ: : : : .
.       ○       /: :\: :\: : : : : : : :.\: : :.\
.      (       /: : : {: :\: : \: : : : : : : : : : : : \
         )    /: : : : :Ⅳ: : :\: : \-─-: : : : : : : :.ヽ
            {: : : : : | \: : : :`ヽー―――.: : : :.ヽ: :\
             /i: : : : :_|   \}\: :\ _  \_|: :} ! : : : : ヽ
             : : : : :.イ. !.       `ー 乍≡= | イ i.: : : : :. :.)        (五月雨ちゃん、伊良湖、明石さんに司令官と呼ばせるのは結構勇気入りますね)
.            i.: : : :. :.iⅥ  -   ,    ////.レ !.勹}  / >、
 ̄ ̄|        }、: : : :i. \≠"              / (ソノ=ニ二  }
    |        { : ー } }ヽ 〃///              π: :ヾー- ´}
__|.     _ ヽ : : // }:} // '    c =ァ   /.: :. :. :.\  ノ
        \   ノ }  \       | |   /// : : : : : : i\
__.         ー/\.    `ー. 、__ |.れノ/ И´: : : `ヘ !: : \       (今日はここまでで。コンマ判定ありますので付き合ってってください)
   |.        <.: : : :.ー- 、.   ∨` Π  ´{ { !.: : : : : :. :.}>、: : .\
.    |       r´/ィf:´ : `<i   {\_ 」l  ≠人.: : : : : : :.// \: : :.\
    |.     /{/{´: : : : : / ヽ  }∧ . |l  ////<   ̄/∨/// >,: : :.`: :...
.     |   / : : : :`:.T  ̄i  \ノ/∧. ll. /////`>´ !. ∨//,∧: : : : : :.\
     |   : : :. :./: : :!   {    .}/∧|!.////   ∨≦彡∨///∧.: : : :. :. : \
.     L / /.: : :. :. :.∨   i     .{≧>ヾ ≦        Y   ! ∨///∧: : : : :. :. :. :.ヽ
      ∨ /.: : : :.∨    i     K crっ  >     .|      y≦∧ ∨: : : : : : : : :
.        ∨ /: : : : :`ー= i       i ∨j ヽ)/       \く三彡: : :.∧. ∨ 「_ \20 ]: .∨
.       ∨ /.: : : :. :.|ヲ´      .∧ ||  ||.       __./三三彡.: : : :./´ >‐ 、|| rーヽ
         ∨ /: : :./´    , 、ん....,,||_||__> ´ `\  }: : :.r‐t_f   L!r´ >― >
         ∨ /_ ⊥ ──┤ /                   ): :「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄i
.           ∨-―.      { (                 /: : :| チ ロ ル ボ ー キ |

《攻略難易度(~???) 直後コンマ》
1-5 ノーマル
6-8 ハード
9 ベリーハード(一部遠征が1-6ベースになります)

          _ -:.:.:.:.:.>=ニ: : : : : : : ≧s。,: : :>s。,
        _ -:.:.:.:.:.:_ア゚: : : : : : _:-: ^: : : : : :__ : : : : : :`:.。
      /:.:.:.:.:.:._ア゚: : : : : : /: : : : : : ,。si[: : : : : : : : : : : \
      /:.:.:.:.:.:.:.:.:/: : : : : : :,:': : : : : : :〃: : : : : : : : V: : : : : : : V
    k:.:.:.:.:.:.:.:.: /_: : : : : :〃: : : : : : ∥: : : : : |{: : : :}: : : : : : : : :V
     \:.:.:.:.:∥: \: : :∥: : : : : : :.j{: : : : : : j{: : : :}: : : : : : : : : W

       》:.:.:.j{: : : : :≧: : : : : : : : :j{: : : : : :./ }: : : } \: : : : : :.:.|i
      〃:.:.:.j{:.V: : : : j{: : : : : : : :.j{-―:-:,, _ :}: : / -=ニ: : : : : |i   (ところで>>25の時点では腋ネタのためだけに12月ということにしていましたが)
     ∥:.:.:.:j{: : V: : :.j{: |: : : : : :.:j{: : : : :/  }: /     V: : : j{
     j{:.:.:.:.:j{: : : : ミx: :j{=-: : : : {: : :/    ~      }: : :.,
      ニ=- ' |: : : : : :|: j{: : : -=ニ!/         xz==: /    (ここで一つ決めておきます)
         |: : : : j{:|:/Λ: : : : :.|  xz==      ,, ,,/i[
         |: : : :j{: |:!  、: : : : :|  ,, ,, ,,      `
         |: : : j{: :|:>s。\: : :,            /

           ,: : : j{: :.|: : : : ^: :\:.:,     ‐- ‐  , '
           ,: : : j{: :.:.|: : : : : : : :ハ{]is。__r、     /ハ
.         /:/: /:.__-=ニ:_: : : : : :/ \「  ス_=-__i「: : : :}
        //j{:./⌒`、  `、=ニ\ .i{// / |_jI斗-=:、
.       / j{く ,ィ^~"{  _ V   ^i{     {J 、    !
      / .j{:, ' j{   >、 ~ 、     、.    V V   《
.     /  j{:「 .j{       .}        \.   V V   `、
    /  .j{:八.j{      丶_  i 、  >―}    }  }   《
.   /   j{: : : :i{, : ^  " : 、  }ii  , ´ ,、*\__  ,j{}i、.  ̄}  )
《曜日 直後コンマ》

日月火水木金土
     0 1 2 3
4 5 6 7 8 9

 |   i  ト、                     f ̄ ̄ヽ
 |i    ,.≫x、.    ヽ  i| ヽ|  !         |:.:.:.:.:.}:.:ヽ.,.-..、   
 |!  ト、 《 ト心ヾ    i  i! _,.ji,ィ升    ||  j_:.:.:.Y:.:/:.:.:.:.:\  
 |   |ヘ  | 弋ソ  ヽ  | /´  {rじ!    i!  /´:.:.`:ノ‐ヽ:.:.:.:./:.:.ヽ  (やっべえ昼にカレー食い忘れた......)
 |   |:|ヽ ! `      !  レ'  、_ヾ_リ    /  〈__/ '⌒ヽ\:.:.:.:.:.:V
 |  |:| ∧、ヽ    j         7   /><'´∠    \ヽ:.:i:.:.i:.
 |  |:| ト、、``    ソ     u ′  《´  f´  「       Y:.:.:|:.
 ト、  vヘ!:::| ヽ  ヽ、_      / /   》`V i!      o   |:.:.:!:.
ヽ!∧ V:::::::! /ヽ. ヽ 、二ニァ /イ   /::V∧.!   i     l >o V:.:.:.
 ` ∧ V::::ト、ト、 \ `こ´   イ   /:::::::V∧'.   !    o     i!:.:.:
   ||ヘ、ヽ:::|  \ >.-‐<  / /勹:::/ Vァ八__ ヽ       j|:.:.:.
   ||::::::\ヽ!    `ー 〉 r' _//´ /::::/  ⅵ、 ヽ::::::\    /ノ:.:.:
   ||::::::::| `ヽ 、ヽ.   / 7´   / |:::::|   V、冫 `≪_ヽ//:.:.:.:.:
   ||::::::::|    \ヽ |  | ー‐'__/ |:::::|    |`/:`≪_/.ニイ、___/

艤装について一通りの確認を終えた五月雨は艤装を身につけ、俺たちとともに桟橋に立っていた。

「では、駆逐艦五月雨、出撃します」

五月雨は桟橋から飛び降りて靴代わりに艤装の一部を装着した足を付け根まで海面に沈み込ませると、
そのまま機関を動かしてまっすぐ桟橋から離れていった。

すぐに、五月雨の姿は見えなくなる。

「大したもんだよなあ」

ヘイヴィアが五月雨の進行方向を眺めながらそう言った。

「本当に大丈夫かなあ」

とはいえ心配なものは心配だ。

「……まあ、俺たちもあのときはベイビーマグナムがやられるなんて思ってもなかったからな」

「何もないといいけど」

ちょうどそのとき、五月雨から通信が入った。

『司令官、敵艦を発見しました』

《敵艦 直後コンマ》
1-3 1-1-A
4-6 1-1-B
7-9 1-1-C(ボス)

通信機越しに聞こえる五月雨の声は、妙に張り詰めていた。

「……艦種はなんだ?」

『ホ級……軽巡です。後ろに駆逐艦も確認しました』

「軽巡だと?……それより、大丈夫か」

『今のところは』

「一度でも被弾したら帰って来い。機関がぶっ壊れたときにはもう遅いぞ」

『……はい』

『戦闘開始します。やぁーっ!』

緊張を吹き飛ばすためか雄叫びを上げた五月雨は、そのまま突撃していったようだ。

「……最低で二隻だって?」

たったひとりでの初陣となる五月雨には多すぎるように感じた。

ましてや軽巡洋艦。

駆逐艦より砲撃戦では勝る艦種なのだから。

泊地正面海域
――――――┘
「やぁーっ!」

岩陰から飛び出し、一気に第一戦速まで上げた。

向かう先はホ級の率いる水雷戦隊。

続く駆逐艦はイ級が2隻、計三隻だった。

さっきまでは3隻とも原速で航行していたが、これだけ派手に動けば必ず気づかれる。

その証拠に、ホ級の主砲が旋回した。

このまま突っ込めば、反航戦となる。

その状態でイ級が砲撃戦に参加できるのかはあながち疑問だが。

もうすぐ、同様に第一戦速まで上げた深海棲艦の真横を通り過ぎる。

反航戦なら、こちらの主砲が当たりにくい代わりに向こうの砲撃も回避しやすくなる。

今の自分には最適といっていい戦闘状況だろう。

手に持った12.7cm連装砲を、イ級に向ける。

《五月雨ちゃんってどのくらい訓練してきたの 直後コンマ》
1-3 艤装を背負うのは初めて
4-6 練習航海やってきた
7-9 横須賀で軽巡から訓練受けてきた

「てぇーっ!」

深海棲艦を撃つのは初めてだが、躊躇している暇はない。

一番後ろのイ級を仕留めた、その直後に。

先頭を走るホ級を追い抜く直前、軽巡洋艦の主砲が火を噴いた。

「っ!」

毎回毎回が疲れで吐きそうなほどだった訓練で身につけた艦隊運動。

全身に染みついた経験を駆使し、速度を上げずに回避する。

まだ、2隻残っている。

私にはかすり傷ひとつない。

ならばと思い、魚雷発射管と2隻の深海棲艦を交互に見る。

どうやら逃げ帰ろうとしているようだが、自分に配備されている魚雷の性能ならまだ十分届く距離だ。

「司令官、駆逐イ級1隻撃沈しました。これより魚雷戦に移りたいと思うのですが」

『艤装にかすり傷ひとつないんだろうな?』

「ありません」

『……ぶちかましてやってもいいが、あまり追いかけすぎるなよ?それ撃ったら終わりだ』

「わかりました」

許可は取れた。

訓練のときには、魚雷が高級品であるためわざわざ撃ったものを取りに行かなければならなかった。

だからこそ高揚感が湧いてきていることは認める。

しかし、それ以上に

「魚雷、発射!」

1隻だけでは物足りなかった。

《命中判定 直後コンマ》
1-3 避けた上で撃ちかえしてくれるよ
4-6 イ級に命中、ホ級は逃げ帰る
7-9 2艦命中

「くっ!」

嵌められた。

1隻減ったとしても、こちらを仕留めれば向こうにとっては十分な戦果だ。

そう、艦娘と深海棲艦では消耗速度の差が圧倒的だからこそ。

そして、こちらが撃った魚雷は1隻分。

対して、向こうの魚雷は2隻分。

ホ級、イ級はあらかじめ私が魚雷を撃つことを想定していた。

私は油断して速度を落としていた。

この差は、命取りとなりうる。

だからこそ、

「まだまだ、これから……!」

その差を埋められるのは練度。

近くまで迫る雷跡、少し遅れてやってくる雷跡。

それらを全て見て、之字運動で回避してみせる。

そのまま、第二戦速まで上げる。

私が魚雷に翻弄され足元をすくわれる様を見ようとしていたホ級が、慌てて砲身をこちらに向けた。

しかし、その砲塔が火を噴く前に

「やぁーっ!」

私の主砲が、隣で同じように砲を向けていたイ級をぶち抜いた。

それを見たホ級は慌てて旋回し、一目散に逃げた。

主砲を向けた頃には、既に射程外だった。

『司令官、イ級計2隻撃沈。ホ級は仕留め損ねました』

「あのなあ……」

ヘイヴィアが頭を抱える。

魚雷を撃ったら帰ってこいという約束が、10秒後にはなかったことにされていた。

一応、深海棲艦が魚雷を撃ってくるという非常事態ではあったものの、回避運動を取りながら敵艦に接近する必要は果たしてあったのだろうか。

しかし、通信機越しでも感じたが五月雨は思ったより戦いにうるさいタイプなのかもしれない。

食堂で出撃したいと言い出した時点で気づくべきだったことかもしれないが。

『帰投しますね』

「……ああ、話はあとだ」

ヘイヴィアがデカくため息をつく。

「おいヘイヴィア」

「なんだよクウェンサー」

「……なんでお前がずっと通信機持ってるんだよ」

「なんでって、五月雨が渡してきたからだよ」

「……俺よりヘイヴィアの方が印象いいのか?マジで?」

「そりゃコートを着ればキレられるわ悲鳴は上げるわで好印象抱かれる要素がこれっぽっちもねえだろ」

「後半お前のせいじゃねえか」

【今日はここまでで】

.    . -―――- _

    .′ニニニニニニニニニ  、
    |ニニニニニニニニニニニニニ\      (おら航空支援で消し飛べよあくしろよ)
     、ニoニニニニニニニニニニニニ\
     〉ニニニニニニニニニニニニニニ. \
      、ニニニニニニニニニニニニニニニ ' .
.      ` r---- 、ニニニニニニニニニ , (安価から始めます)

        `¨'. .r. \ニニニニニニニニ′
           W   ¨  - ------.′

《馬鹿二人&五月雨 安価↓三》
1、反省会 in 桟橋
2、この島どうなってるの?
3、五月雨「そろそろイチゴーですね」
4、自由安価

「にしても五月雨のやつ、ずいぶんと派手に戦ってたな」

「……あいつ、多分ただの新人じゃねえな」

「ああもすんなり2隻沈めるなんてな。ここに来るまでどんな訓練してたんだか……」

「ただ、実戦は初めてだったんだろうさ。口調が必要以上に堅くなってたように思えるな」

「まあ、五月雨が思ってたよりずっと頼りになるってことがわかったからよしとしようか」

「なんにせよいつまでも一人で出撃させるわけにもいかねえが。明日にでも本土から来ないかね」

そんなことを桟橋に座って話していると、こちらにやってくる人影が見えてきた。

五月雨だ。

「五月雨、帰投しました」

「おつかれさん。艤装に傷がないかもう一回確かめとけよ」

「はい。あれ、もうイチゴーですか」

「むしろ昼飯食べてからまだ二時間しか経ってないのが不思議なくらいだ。まあ、でも五月雨も疲れただろうし、今日はもう休んでもいいと思うよ。食堂でなんか食べようか」

「あ、はい!ありがとうございます」

実戦での緊張感がほぐれたのか、出撃前までの五月雨に戻っていた。

「じゃ、このあと庁舎の入口で」

《おやつ 自由安価↓三》

【さすがに無茶ぶりがすぎるんで上の安価はやめときます】

「このお饅頭、おいしいです!」

「ありがとうございます」

五月雨は、伊良湖が作った新メニューの試食をしていた。

すっかり、戦場での疲労を落とせたようだ。

そして、対する俺たちはというと、

「五月雨ちゃんとのつき合い方がわからない?」

「わかりますか間宮さん」

「どうも戦場と日常とでスイッチの切り替わりが激しいというか……いやそれ自体はいいことなんですが」

端的に言えば、間宮さんとの面談中だった。

「そうねえ。提督、五月雨ちゃんはどう見える?」

「五月雨が……?がんばり屋って感じはします。いや、これは知り合いと印象が被ったからでもあるんですけど」

「司令官からだとどうかしら」

「どうも急ぎすぎてるような……なんか危なっかしいんだよなあ」

「私も艦娘になってからそんなに長くないんですが……駆逐艦の子たちはみんな急いでるんです」

「そりゃまたなんで……」

時間が解決してくれる類のものでもないと思うが、深海棲艦との戦いは急いだってどうにかなるものではない。

急ぎすぎて足を滑らせては本末転倒のように思えるのだが。

「……あの子たちは、戦場ではもっとも沈みやすい艦種なんです」

「そんな」

「私たちのような例外を除けば、他の艦船よりずっと装甲が薄い」

「じゃあ」

「だから、必死に戦ってるんです。少しでも他の艦種の力になろうとしている」

「……」

「実際、あの子たちはル級だって沈められる最終兵器を持っていますから」

「魚雷か」

「ええ。だから、一生懸命小さな体で立ち回っている。そんな子を今まで何人も見ましたから」

だからなのだろうか。

単艦で出撃したいと言った。

1隻沈めただけでは不満げだった。

魚雷を撃たれても、むしろそれが隙だとでもいうように接近戦へと持ち込んだ。

主砲の口径が小さかろうと、紙と形容されるような装甲だろうと。

速さと一撃必殺の武装と、そして気合いで補うのが駆逐艦の生き様だということか。

「……ありがとうございます、間宮さん」

「こちらこそ、ゆっくり話せてよかったです」

「さて、行こうぜクウェンサー。今日の報告書を片付けに」

「げ。そうか……俺たち管理職だったなあ」

「こればっかりは仕方ねえだろ。さ、行くぞ……」

ヘイヴィアに引きづられる形で、俺たちは食堂を去ろうとする。

「あ、そうです。引っ越しで忙しくて忘れていましたけど、金曜日でしたね」

と、そのとき間宮さんが当たり前のことを言った。

「あ、そうでした。ということは!」

「ええ、今日の晩はカレーですね」

「……ん?」

「……え?」

その言葉で何か盛り上がる五月雨と伊良湖。

俺たちは若干ついていけなかった。

「あー、艦娘の間では金曜日はカレーを食べることになってるんです。なんでも曜日感覚を失わないためだとか」

そこに、五月雨が解説を入れてくれた。

なるほど、確かにカレーはメインだし一週間というスパンは適しているのかもしれない。

「では、そうですね……。ニーマルになったらいらしてください」

その間宮さんの言葉に返事をして、俺たちは今度こそ執務室に戻ろうとして。

俺たちが階段を上がろうとしたところで、五月雨が追いついた。

「私も司令官たちの仕事手伝いますね」

「ん?いや助かるけど。俺たちは書類整理だし五月雨の管轄外じゃないのか?」

「私しか手の空いている艦娘がいないんですから秘書は私の仕事ですよ?」

「艦娘ってそこまで仕事に入ってるのか……」

とりあえず、俺たちは執務室に戻った。

【今日はここまでで。目指すは野中隊】

            
                            _( ̄ ̄う、  _,==_

                      ( ̄`つ  (    _) (   )
   、、         l|         し-、ノ   ヽ、_ノ   し~し´
    ヽ\       l l、     ┌──‐ー┐
あ   C、`)コ    .( ̄)     |:::::::::::::::::::::::|      (とりあえず完走できました)
 ら    ヽ\,-ー-- l l、、    Ll ̄ ̄ ̄ ̄|
 あ     \____ヽヽ   l         |     (E-6でアレだけメンタル削られたのにE-7がストレートすぎてなんじゃこりゃ)
  ら    //´(、lヽ、ゝi l \ |____ _|
    〉  / /●  ● i l  レ .|     /, ヽ    (甲でやってきたのを丙に落としたから当然と言えば当然ですけど)
   〈_, 〈  l  ヮ  ノ i  _ ,ゝ    / / ○〉    
      ヽl    ∠_ノ VV  i    / /  〈    (明日には続き投下します)
       l          └──〈 〈    ヽ -、
       l                  ̄ ̄ ̄ ̄  `ー 、_
       ヽ                          `ー 、

        \______________===----"´

               _,-- 、
        ___  (   ヽ,
      ,  ´     `ヽヘ、  ヽ,
    /            \>   i 
   /   /          ヽ   | (二二型甲良性能じゃねえか5月5日朝の俺を死ぬまで殴りたい)
   /    l   ,、     ,ヘ、  ヽ  |
   ,     !  / ヽl∧,N   ヽ |  |
   l 「ヽi. ヽ/ ___     ___ i |  | (投下します)
   | .ヽィi |.   U      U  | .|  |
   |   | |            l | |
   l   | l_    )ー=-'   .イ| | ))
  .i   .| |.、=‐-t--r-ァ:イ/||ル'
  i    l l, '` <::::::| 、, |::::7,'  i
  i    ヽi/  ,' ':#::)人,|;:/ |   i
 i   ∧ /  , ,,∞;; ,,,;";;;;;、 ヽ i

「一回の出撃でこれか……まあまだ五月雨一人だから大したことなかったけど」

「にしても、この程度の消耗で2隻も沈めたのか?もうちょっと飛ぶもんだと思ってたが」

「ここに来るまで相当訓練してきましたから」

俺たち三人は、61cm魚雷弾頭、12.7cm砲弾、そして燃料の消費分についての報告書を手分けして書いていた。

軍の書類だけあって色々と書くところがあり面倒くさい。

俺とヘイヴィアは五月雨に教えてもらいながら何とか書き上げた。

ところどころで解説を入れたりしてくれたが、さすがに装備を振り回している当の本人はよく理解していた。

必要以上に時間がかかったが、それでも、五月雨が無傷で帰還したおかげで書類数枚分の手間は省けた。

「もう8時か……晩飯の時間だな」

「では行きましょうか」

「ああ。ったく、堅苦しい書類とにらめっこなんていつぶりだか」

「それがこれから毎日続くっていうんだからなあ」

「こんなこと続けてたら腱鞘炎になるんじゃねえのか?」

そんなことを言い合いながら、食堂に向かった。

「こんばんは~」

「カレー、そろそろできますよ」

「やった!」

俺たちは昼と同じ厨房に一番近いテーブルを選んだ。

すでにカレーのいい臭いが漂ってきていた。

「……俺たちは幸せもんだ」

「明日になったら覚めたりしないよな?」

「馬鹿野郎、そんなもん明日になったらわかるんだよ」

「それもそうか」

五月雨がついていけないと知りつつも二人で割と笑えないバカ話に花を咲かせる。

と、そこに伊良湖がカレーを三人前持ってきた。

「できあがりました。ごゆっくりどうぞ」

「ありがとう。じゃ、食べようか」

「はい。いただきます!」

「いただきまーす」

「いただきます」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでしたー」

「ごちそうさまでした!」

「すみません、あまり少ないとどうしても焦げついてしまうので」

「うまかったんでいくらでも食べられますよ。それにたらふく食えるのも今のうちだからな」

カレーは大鍋で作るため、ある程度の量を一気に作らなければならない。

そのため、3人で3回ほどおかわりすることになった。

おかげでもう満腹だったが、それでも苦しさを感じないのは間宮さんと伊良湖のカレーがうまいからだろうか。

「じゃ、間宮さん、伊良湖さん。おやすみなさい」

「ええ、提督も司令官も五月雨さんも、明日からもよろしくお願いします」

「うん、おやすみ」

「もう少ししたらもっと賑やかになりますね」

「そうだな。五月雨ががんばればすぐにこの泊地に艦娘が集まるぜ?」

「は、はい!」

そして食堂を出てすぐ、艦娘寮に向かう五月雨と別れる。

「じゃ、また明日」

「五月雨はこれから寝るまで寮の巡回だって?誰もいねえってのに」

「秘書艦の役目ですから。むしろ誰かが入ってくる前だからできるんです」

「まあ五月雨がいいっていうなら構わないけど。途中で寝落ちして床で目覚ましたりすることのないようにね」

「しませんから!……じゃあ、私はこれで。おやすみなさい」

「おやすみ」

「ちゃんと寝ろよー」

そうして五月雨は寮に、俺たちは執務室に足を運んだ。

執務室の扉を閉め、俺たちはそれぞれ適当な位置まで椅子を引きずって座る。

「……でだ、クウェンサー」

「ああ、ヘイヴィア。これで落ち着けるし状況確認でもしよう」

そう、まだ何一つ話せていなかった。

俺たちの身に起こった、あの時点の出来事について。

「……つまるところ、ここは俺たちのいた世界とは違うんだろうな」

「ああ。ただ過去にタイムスリップしただけってわけじゃなさそうだ」

「どういう理屈で?」

「さあな。あのオブジェクトはブラフで、本命は俺たちをあの世界から引き剥がすことだったんじゃねえのか?」

「『資本企業』にもフライドみたいな奴がいたってこと?」

「俺たちをあのクリーンな戦争全盛の時代からつまみだしたい連中は山ほどいるような気がするがな」

「……となると、戻るあてもなし、か」

「ま、部隊の連中やあいつともう騒げないかもしれないとなるとちょいと残念だな」

「…………へっ」

「…………けっ」

「ま、もうこうなったらここで派手に暴れるしかないだろ」

「言うと思ったぜ。ま、せいぜい誰も死なないようにやるか」

「決まりだな」

「ああ」

このあと一通りバカ話で時間を潰した後、俺たちは寝ることにした。

<1日目終了>

【今日はここまで】

《2日目・新人 直後コンマ》
1-3、来ません
4-6、駆逐艦
7-9、軽巡洋艦

《2日目朝 行動安価↓三》
1、出撃
2、大掃除
3、自由安価

《軽巡洋艦 安価↓三》

これから投下します

<二日目/師走 20日>
太平洋・第37号泊地近海
――――――――――――
太陽が昇りようやく寒さも和らいできたころ、洋上を5隻の艦娘が航行していた。

「夕張さんも大変だねー。艦娘になって早々に泊地だなんて」

「……涼風ちゃん、私みたいな新人にさん付けしなくていいのよ?」

前から二番目の駆逐艦は涼風。

深海棲艦との交戦経験こそ少ないが、入隊以降ずっと軽巡による訓練を受けているため練度は高い。

先日も、新しく着任した提督を泊地まで護送する任務についていた。

その前にいるのが軽巡洋艦・夕張。

こちらは正真正銘の新人で、練習航海に何度か参加した程度の経験しかなかった。

今日、夕張は新設された泊地に着任することになっていた。

「んなこと言われましてもね。もう染みついちまって軽巡を呼び捨てなんて寝ぼけてもできませんよ」

「そっかあ……」

「あたしは夕張さんはいい軽巡になれると思います」

「僕も白露に賛成だね」

「私もそう思います。それに、向こうには五月雨がいますから」

そして、二人の後ろに白露、時雨、春雨の三隻がつく形になった。

この航海の目的は夕張を新設された泊地に送り届けることだった。

「五月雨ちゃん?」

「はい、この前まで私たちと同じ駆逐隊だったんです」

「でもその五月雨が新設された泊地の秘書艦に抜擢されちまってね」

「それで涼風が代わりにやってきたんだ」

「まあ、あたしたちのなかで一番訓練についていけてたからねえ、五月雨。一番だよ一番」

「へえ……」

夕張の顔が暗くなったのをみて、涼風が白露を小突き夕張に気づかれないよう小声で囁く。

「(白露、無理にテンション上げるのはいいとしてよ、夕張さんにあんまりプレッシャーかけんなよ)」

「(あっ……ごめん)」

「(まあ、僕らにもまだまだ競えるチャンスはあるさ)」

「(私たちだってこれからもがんばっていけばいいんです)」

「(……うん、そうだね)」

そんなことを話していると、夕張が後ろを振り向いたので顔がこちらを向く前に4人は元の陣形に戻った。

「ねえ、みんな。泊地ってあの島だよね?」

夕張が指差す方向には、そこそこの大きさの島があった。

家がちらほらみえるが、鎮守府らしき建物は見当たらない。

おそらくは向こう側にあるのだろう。

深海棲艦の出現以降、世界中の海岸沿いから人々の賑わいが一度完全に消えた。

それどころか、一時期は情報の錯綜から小川や小さな用水路すら塞いでしまおうという計画すら立てられ、食糧危機がますます加速した。

艦娘が台頭した後はそんな動きもなくなったが、今でも爪痕は残る。

たとえば日本では四島やその周辺の海沿いには人々が戻ってきたものの、そこから離れた島々に人々は今でも寄りつかない。

だから海軍はここ最近、かつて栄えた島に徐々に艦娘の拠点となる泊地を設けるようになった。

そのおかげか、泊地の周辺には徐々に人々が戻りつつある。

今はまだ小さい動きだが、いつの日かあの島もまた元の賑わいを取り戻せるだろう。

「よかった。じゃあ時間も予定通りだしそろそろ通信しようか」

「わかりました」

涼風が通信機の周波数を弄り、深呼吸してから声を出した。

「第37号泊地秘書艦、応答せよ。軽巡洋艦夕張及び第二七駆逐隊は、まもなくそちらの泊地に入港します」

『時間通りだね、涼風。うん、すぐ提督と司令官連れてお迎えするからそのまま入ってきていいよ』

「了解。お堅くなった五月雨が出てくるかと思ってビビって損したよ」

『なるほど、涼風のリクエストなら聞こうかなあ』

「ははは、そいつは勘弁したいね。じゃ、あと10分もすれば着くからよろしく」

『待ってるね』

五月雨がそれだけ言うと通信が切れた。

「五月雨が元気そうでなによりだよ」

「んだな」

「んー……?」

「夕張さん、どうかしました?」

「さっきの娘……五月雨ちゃん、『提督と司令官』って言わなかった?」

「あっ、そういえば」

「二人いるってありえるの?」

「あんまり聞かないなあ」

「まあ、行ってみればわかるんじゃないかな」

「それもそうかな」

第37号泊地
――――――
三人が桟橋で待ちはじめてすぐに、湾の左側から小さな人影が現れた。

「おっ、見えてきた見えてきた」

「1、2、3、4、5……」

「あれで全部か」

1分もしないうちに、その艦隊は桟橋に到着した。

桟橋に上がってきた5人のうち、五月雨と同じ制服を着た少女が前に出る。

「第二七駆逐隊及び軽巡洋艦夕張、到着しました」

「おつかれさま。ここの指揮を任されたクウェンサー=バーボタージュ少佐だ」

「同じくヘイヴィア=ウィンチェル少佐だ。それでうちに来る軽巡ってのは……」

「私です」

そう言ったのは入港の際先頭にいた青い髪を青いリボンで束ねた少女。

よくみると、なるほど確かに艤装のサイズが駆逐艦より一回り大きい。

「軽巡洋艦夕張、本日付で横須賀鎮守府より移籍となりました」

「よろしく」

「よろしくな」

「よろしくお願いしますね、夕張さん。私はここの秘書艦の五月雨っていいます」

「これからお世話になるわね」

挨拶を軽く済ませると、先ほどの……ではなくその隣にいる少女が口を開いた。

「それでは提督、僕たちはそろそろ横須賀に帰るよ。次の任務があるものだから」

「ああ、お疲れ。横須賀にはこっちから連絡しておく」

それだけ話すと、第二七駆逐隊は桟橋から降りて泊地から離れていった。

「みんなと話す時間なかったなあ」

「同じ艦娘ならまたいつでも会えるだろうよ」

4人の姿が見えなくなるまで見送った後、俺たちはひとまず戻ることにした。

「じゃあ、執務室に戻ろうか。そこで夕張も入れて作戦会議だ」

「ああ、ありゃ三人じゃちょっと片付けられねえ」

「……すみません」

「え、なにかあったんですか?」

夕張が怪訝そうな声を発した。

まあ当然だろう。

色々な手順をすっとばしていきなり作戦会議などと言われれば誰だって疑問を抱く。

「ああ、ごめん。話すと長くなるけど……」

それも、外から来る敵の問題ではなく内から生じた特大の厄介事に巻き込まれようとしているのだからご愁傷様というしかない。

太平洋・第37号泊地近海
――――――――――――
「はああああああ」

涼風が大きなため息をついた。

「慣れない仕事お疲れさま、涼風」

「助かったよ、時雨。どうもああいう堅っ苦しいのはいけない」

「まあいい経験にはなったんじゃない?それでも一番は譲らないけど」

「そういえば、本当に二人もいたんだね」

「しかも日本人じゃありませんでした」

「んー、まあ先の大戦と違って外国人だからどうってわけじゃねーけどなあ」

「でも妙だよね」

深海棲艦討伐には各国の海軍が艦娘を動員して取りかかっている。

だが、まだそれぞれの国は劣勢か互角で押しとどめられている。

とてもじゃないが他国から人ひとりだって援軍を頼める状況ではなかった。

しかし、今考えていても仕方がないことなのでもう一つの気がかりな話題を春雨が切り出した。

「五月雨もがんばってるみたいでした」

「……どこかでドジ踏まなければいいけど」

「時雨、そういうのは噂すっと本当に起きるぞ」

「おっと。でも五月雨、がんばりすぎて気が緩むときあるからさ……」

「あるねえ。空回りっていうのとはなんか違うんだけど」

「ましてやこれからはしばらく秘書艦……。余計に心配です」

そして4人の心配は、運悪く的中してしまっていた。

遅くなってしまったがEOを片付けていただけで忘れていたわけでは......
次はもう少し早くします今日はここまで

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