白垣根 「花と虫」 (6)

・帝春

・時系列は新約15巻の翌日。

・初投稿なので文は稚拙です。あと多少のキャラ崩壊とめちゃくちゃなオリ設定があります。それでもOKならどうぞ??




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十二月の風が、二一学区の小高い丘の上に寂しげに吹き抜けた。緩やかな斜面の先に広がる夕方五時の学園都市は、眠ろうとしているように茜色に微睡んでいる。空の真上にはまだ透明な青色が残っていて、東からは色の濃い夜が迫ってきている。時計の短針のように徐々に淡々と下がっていく気温にぶるっと震えながら、初春はティーカップの中の紅茶をすすった。

「はぁ、あったかい」

設置された椅子に座ったまま、手前のテーブルにカップを置き、初春はふぅと一息ついて紅茶の味を堪能する。テーブルの上にはティーセットが並んでいる。花の香りのするフレーバーティーに茶菓子。そして、もう一つのティーカップ。

「だんだん冷えてきましたね。この野外ティータイムも、そろそろ終わりですかね」

ティーポッドの中、残り少なくなった紅茶の量を見て、初春は目の前に座る者に話しかけた。

「ええ。初めての貴方との茶会。室内ではなく野外というとこがなかなか『オツ』だった。とても素晴らしい時間でしたよ」

彼は微笑み、手元の紅茶に口つけた。

「嫌だなぁ。そんなに褒めないでくださいよ。あんまりこういうのやったことないし、野外っていうのもどうかって思いましたけど、思ったより良かったです。景色もいいし」

右手に広がる学園都市。無機質に地面から生えたビルの群れも、この時間になると今命が芽生えたような、夕焼けの色を灯す。香りがしそうなほど鮮やかな風景。

「ホント、今日。あなたと一緒にいれて良かった」

そう言いながら初春は笑う。それを見た彼の表情は静かなまま、動こうとしない。花も、虫も生きれない、全ての気配と香りを打ち消す冬のように。

「初春さん」

彼は口を開いた。

「なんですか? 垣根さん」

「貴方に伝えたいことがある。私ではなく、もう二度と戻らない『本来』の私から、貴方への最期の想いを」

垣根帝督は、初春飾利の手に、自らの手を重ねた。









とある魔術の禁書目録SS

白垣根「花と虫」

冒頭の三日前、佐天涙子はダイヤノイドにいた。ティーンに人気のカフェスペース、「star books」のテラス席に座り、立ち並ぶテナントの中央に流れる廊下へ目を配る。衣服、雑貨、食品のスペースはいずれも人混みで溢れていて話し声が絶えない。しかし彼女は一言も発せず、ただ廊下を見つめていた。


「本当なんですの? 佐天」


相席していた白井黒子も、固唾を飲んで視線を佐天と同じ方向へ向ける。


デパートの廊下など絶えない人の流れを浮かべているだけの場所だが、無論そんなことは彼女らも承知だ。つまり、彼女らが見つめているのは空間ではなく、そこに点在する人。


「間違いないよ。初春が待っているのは、十中八九彼氏・・」


廊下の中心部。吹き抜けの広間になっているその真ん中に、イタリアの街を思わせる白い小さな噴水。いかにも集合場所らしいその手前にいたのは、佐天の親友、花飾りの少女、初春飾利だった。


「考え過ぎじゃありませんの? 普通にご学友を待っているだけじゃ……」


「ふっふっふっ。親友の目は誤魔化せんぞ初春。白井さんもちゃんと見てくださいよ。あれが女友達と遊ぶ前の女の子ですか・・」


不敵な笑みを浮かべ佐天は指を指す。そんなことも知らない初春はというと、噴水の周囲にある木製ベンチに座り、少し頬を染めながら頭の花の様子を確認している。小さな人差し指で撫でられた白いコスモスが、色気ついたように静かに揺れた。初春は微笑みながら、前髪を人差しでくるくる巻き始める。


「………こっちにまで匂って来そうな甘〜い仕草ですの。確かに最近浮かれ気味なニヤけ面が多いと思ってましたけど」


「そうでしょ白井さん? 私と話してる時もなんか上の空なんだもん。さぁ〜て、お姉さんに隠し事をした罪は重いぞ初春ぅ。是非とも彼氏さんの姿、拝ませていただきます・・」


手元にあったカップコーヒーを一気に啜りながら佐天は観察を続行した。が、勢いよく飲み過ぎたせいかむせてしまい、ゲホゲホと俯いて咳き込んでしまった。


「静かにするんですの・・ せっかくの張り込みが……うん?」


小声で佐天に注意する黒子だったが、その時彼女は素早く変化を捉えた。視線の先の初春がベンチから立ち上がり、手を振っているのだ。


「こ、これは。いよいよお出ましですの」


「おお。遂に彼氏さんが・・」

復活して顔を上げる佐天。そして現れたのは。




「お待たせしました。初春さん」


「もう、女の子を待たせるなんてダメですよ。垣根さん」




「」


「」



絶句。


想像の斜め上をワープして宇宙空間に突き抜けた後、迫りくる隕石をドリルバンカーで破壊したような衝撃。


現れたのは白人というにはあまりにも白い、色白と言うより白色と言うべきほど白い男。顔立ちは端正で、瞳には柔和な雰囲気を灯しているが、何故か緑に発光している。ともかく現実は、この異邦人と花飾りの少女が笑顔で話ながら、共に廊下の向こうへ歩いて行く光景が進行しているのだ。


やがて我を取り戻した彼女たちは、急いでコーヒー代を払い、二人の後を追って行った。

とりあえずここまで。字が詰まってるのは過去編ということで(汗)

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