フィアンマ「ローマ正教内部を見学しようと思うのだが……」 (929)



・本編より前のお話という設定です

・設定はまもりたいけど……目をつむっていただけると幸いです

・キャラ崩壊にご注意を



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459311386


………イタリア・聖ピエトロ大聖堂………

フィアンマ「どうだ?」

教皇「それは……」

フィアンマ「それはなんだ? 続きを言わないと分からないぞ」

教皇「好奇心があるのは悪いことではないだろう」

教皇「しかし、その好奇心は今まで秘匿され続けていた神の右席の存在を明るみに出すような行為につながりかねない」

フィアンマ「そんな回りくどい言い方をするな」

フィアンマ「要は、見学とか面倒なことはやめてくれ、と言いたいんだろ?」

教皇「分かっているのなら、わざわざ口に出して私に尋ねなくても良いだろう?」

フィアンマ「いや、やめてくれと言われてもやめるつもりはなかったからな」

フィアンマ「つまり、さっきのはただの独り言だ」

教皇「やめて欲しい理由が分かるのならやめてもらえないものか……」

フィアンマ「拒否だ。やめろと言われてもやめるつもりは毛頭ないと言っただろう?」

フィアンマ「人の話はちゃんと聞いておくべきだ」


フィアンマ「そもそも、おかしいのはお前たちの方だろう?」

教皇「何のことだ?」

フィアンマ「ローマ正教の裏のトップである俺様が全く組織の内情を把握できていない」

フィアンマ「これは大問題だろ!!」ギリギリ

教皇「お前にあまり詳しい事情を知られると、勝手に行動し、そのことによって神の右席の存在が露見してしまう恐れがある」

フィアンマ「……どう動くかはその報告を聞いた後、俺様が決めることだ」

フィアンマ「それに、バレないための配慮くらい俺様だってしている」

教皇「万が一にも知られてはならないのだから、本当なら有事の時以外は閉じ込めておきたいくらいなんだぞ?」


フィアンマ「……俺様の立場、分かっているのか?」

教皇「私の……相談役だ」

フィアンマ「……まあ、力関係的には逆転しているが、そこは置いておこう」

教皇「……」

フィアンマ「本来なら下から現在のローマ正教について記された書類などが渡されて当然なはずだ」

フィアンマ「しかし何も無い」

フィアンマ「ならば、俺様自らの足で調べるしかないじゃないか」

教皇「……書類などを渡しても即燃やしてしまうだろう?」

フィアンマ「そんなのは当然だ」

フィアンマ「目を通して覚えたものは必要ないだろ?」

フィアンマ「未来の俺様がそんな紙切れ一つに足を引っ張られる羽目になるのも興ざめだしな」


教皇「……紙がもったいないとは思わないのか?」

フィアンマ「全く。少しも思わないな」

フィアンマ「なんのためにあんなに大量の寄付金を集めているんだ?」

フィアンマ「……紙代程度で困るほど金不足になるはずないだろう? 宗教というものは稼げるからな」

教皇「宗教は金を稼ぐ道具ではない」

フィアンマ「そうかい。だが、そんな話はどうでもいいんだ」

フィアンマ「実際問題、信者どもから金を取っているのだからな」

教皇「っ……」

フィアンマ「まあ、そのことについてどうこう言うつもりは全くない」

フィアンマ「俺様はただ単にローマ正教に属する奴らの活動を観察したいだけだからな」

教皇「……」

教皇(困った、神の右席の存在は一般教徒に知られるわけにはいかない……)

教皇(配慮していると言ってはいるが、何かあった時に自分の正体を明かしてしまう危険がある)

教皇(その上フィアンマは他人のことなど気にしない……騒動を起こしかねない)


「それなら私が同行するのである」

フィアンマ「ん? アックアか」

フィアンマ「ここに入るときはちゃんとノックしろと言っただろう」

アックア「はじめから中にいたんだが」

フィアンマ「!!?」

教皇「……いいのか?」

アックア「もちろん、フィアンマを一人で歩かせるとどうなるか想像もできないのである」

フィアンマ「む、それはどういう意味だ。返答次第では殴るぞ」グ-

アックア「お前が私を殴っても、お前の関節を痛めるだと思うが……それでもいいなら殴ればいい」

フィアンマ「……攻撃するぞ、魔術で」

アックア「はぁ……お前が一人で敷地内を歩くと迷うだろう?」

アックア「だから私が案内をしてやろうという提案をしたのである」

フィアンマ「ああ、なるほどな。そういう意味か」

フィアンマ「てっきり俺様を馬鹿にしているのかと思ったじゃないか」

アックア(本当はそういう意味だったけど黙っておくべきか)ウンウン


教皇「ふむ、分かった」

教皇「アックアを連れていくならローマ正教内部を見学することを許可しよう」

アックア「了解した」

フィアンマ「アックアが話に参加してから進むのがスムーズすぎるだろう……」

教皇「あともう一つ条件がある」

フィアンマ「なんだ? さっさと言え」

教皇「身分を隠すことだけは厳守してもらいたい」

フィアンマ「……いいだろう」

フィアンマ「神の右席の存在を隠したいというお前の意思をたまには尊重してやるのも悪くはない」フム


フィアンマ「だが、それだと自由に見て回れないな……」

フィアンマ「一般の見学者は表の部分しか見学できないのだろう?」

アックア「確かにそうだな……」ウムム

教皇「それは……この紙を持っていれば大丈夫だ」サラサラ

フィアンマ「ふむ、署名付きの許可証か」ピラリ

教皇「それさえ見せれば大体のことは許可がもらえるはずだ」

フィアンマ「……よし、行くぞ、アックア」

アックア「分かった」

教皇「頼んだ」ソコッ

アックア「任せるのである」


……………………

フィアンマ「……」ウズウズ

アックア「そんなに楽しみなのか?」

フィアンマ「楽しみ? 遊びに来ているんじゃないのだから楽しみを求めるわけが無いだろう」

アックア「そ、そうか」

フィアンマ「純粋に俺様がローマ正教のために何かできることはないかと考えただけの話だ」ニヤリ

アックア(嘘であるな)

アックア(まず、フィアンマのことを語るために純粋という単語を使うことがありえない)

フィアンマ「なにか失礼なこと考えているだろう」

アックア「まさか、新参者の私がそんなことをするわけがないだろ」

フィアンマ「……ずっと前からローマ正教に属している俺様より、ついこの前きたお前の方が地の利があるとはどういう事なんだろうな?」

アックア「さあ?」

アックア(きっと、今までの行動から判断されたに違いない)


フィアンマ「奴からの信頼度も違うみたいだしな」

アックア「ん? 気づいてたのか」

フィアンマ「当たり前だ。その程度の感情を察知できなければ、俺様は今生きてないさ」

アックア「……人の気持ちがわかるとは……見直したのである」

フィアンマ「いや、それは普通に失礼だぞ」

フィアンマ「……今回の見学もとい視察はより人間の感情について調べる、という意味もあるんだからな?」

アックア「わざわざそんなことをしてどうするつもりだ?」

フィアンマ「今後の俺様の活動方針を固めるためだ」

フィアンマ「人の感情とは利用できるか否か、それをこの際よく調べておこうと思ってな」フフン

アックア「……む、さっきの見直したというのは訂正させてもらおう」

アックア「やはり自分の為でしかないのか……」


フィアンマ(……)ニヤァ

フィアンマ「おいおい、俺様だって年頃の男だぞ?」

フィアンマ「友とかガールフレンドとやらも欲しくなるものだ」

アックア「そ、そうか……邪推してすまない」

フィアンマ「いやいや」

フィアンマ「俺様も誤解させるようなことを言ってしまったからな」

フィアンマ(ま、新参者のお前に俺様の思考を理解できる訳が無い)

フィアンマ(物心ついた頃から俺様に付きまとうマタイの奴でさえ、俺様の考えは闇だ、と理解を放棄している有様だからな)

フィアンマ(くくっ、結果が楽しみだ……)

アックア「なぜニヤニヤしている?」

フィアンマ「新しい領域に踏み込むというのは実に興味深いものだからじゃないか?」

とりあえず一区切り
フィアンマとアックアがローマ正教の中を散策します


『マジカル☆シスターズ』



フィアンマ「はぁはぁ、別の建物に移動するなんて聞いてないぞ」

フィアンマ「第三の腕使用での移動もできないから疲れたんだが」

アックア「移動するのは当たり前である」

アックア「全て一箇所に集結させていたら、襲撃を受けた際にローマ正教の全機能が停止してしまうのである」

フィアンマ「いや、その理屈は分かるが、この距離じゃ意味が無いだろう?」

フィアンマ「バチカンから少し出ただけじゃないか。それでもかなり歩いたが」

アックア「ああ、この程度の距離じゃ施設を分けているとはいえない」

アックア「まあ、それは考えあってのことなのであろう」

フィアンマ「……意味がなかったらショックだな」ハァ

フィアンマ「で、ここは?」


アックア「アニェーゼ部隊の本拠地である」

フィアンマ「アポしたのか?」

アックア「アポする? ポアみたいに言うな」

フィアンマ「……アポとったのか?」

アックア「いいや。突撃しないと視察の意味が無いのである」

フィアンマ「ふむ……確かにそれは一理あるな」

アックア「しっかり普段の動きを見たいなら隠れてみるのが一番であるが……無理だな」チラ

フィアンマ「……ああ、体を使わねばならない行動はあまり得意ではない」

アックア「見栄はらないでできないと正直に言うのである」

フィアンマ「キャンノットではない。だが、ウェルでもない」

アックア「……」


フィアンマ「……まあ、入るか」

アックア「であるな」

フィアンマ「……」コンコン


アニェーゼ『はいはい、今出るんで待っててください』


ガチャ

アニェーゼ「もう出発って命令ですか?」

フィアンマ「……視察に来たぞ」

アニェーゼ「……え?」

アックア「お邪魔させてもらうのである」ズイ スタスタ

アニェーゼ「ちょ、あ、え? あんたら何もんですか!!」アセアセ


フィアンマ「強引で申し訳ないが、これでも見て理解しろ」スッ ズイ

アニェーゼ「ちょ、待ってくださいっての!!」グッ バタン

フィアンマ「!?」ズザッ

フィアンマ(……アックアは入れたのに俺様は小娘に押し戻される……だと?)

アニェーゼ「あ、すみません」アセ

アニェーゼ「まだ中で着替えていたもんで」

フィアンマ「……いや、俺様も悪かったな。強引に入る必要はなかった」スック

アニェーゼ「分かってもらえてよかったです」


フィアンマ「ところで、先に入ったゴルフウェアのようなものを着た男はどうしている?」

アニェーゼ「ええと、ちょっと待っててください……」ガチャ

バタン

アニェーゼ「タコ殴りにされてますね」

フィアンマ「それって大丈夫なのか?」

アニェーゼ「まあ、私たちは戦闘部隊ですが、シスターなんで貞操観念はしっかりしてますよ」

フィアンマ「いや、その殴っているシスターたちの手とかは問題ないのか、という意味で聞いたんだ」

アニェーゼ「鍛えてますから」

アニェーゼ「殴った程度で痛めるほどやわな手をしちゃいません」

フィアンマ「そうか、それならいいんだけどな」

アニェーゼ「……あの男性の心配はしないんですか?」

フィアンマ「心配する必要性がないからな」


アニェーゼ「で、もう一度聞きますが、あなた達は一体何者なんですか?」

アニェーゼ「視察とか何とか言っていましたけど」

フィアンマ「それはその紙に書いてあるはずだ」

フィアンマ「読んで分からなかったら、俺様に聞け」

アニェーゼ「は、はあ……」ジー

フィアンマ「……読み終わったか?」

アニェーゼ「教皇のサイン付き!?」

フィアンマ「ああ。俺様とさっきの付き人は教皇公認で視察に来ている」

アニェーゼ「そ、それは失礼いたしました!!!」ペコリ

フィアンマ「そんなに改まる必要はないぞ。さっきのままでいい」


アニェーゼ「……ま、誠に申し訳ありません……」

フィアンマ「だから、さっきのままでいいと言っているだろう」

フィアンマ「反省しているなら、さっさとそこをどいて通してもらいたいのだが」

アニェーゼ「は、はい。分かりました」ガチャ

アニェーゼ「どうぞ」

フィアンマ「……最初からこれを見せるべきだったな」

フィアンマ「次からは気を付けるとしよう」


アックア「お、やっと来たのであるか」

シスター「はあはあ……殴っても蹴ってもびくともしない」ポカポカ

シスター「一体何者? 聖人レベルの耐久力じゃない」ボコボコ

アックア「だから私は聖人だと何度も言っているのである」

シスター「人の着替え中に部屋に押し入ってくる聖人がいる訳無いです」ドスドス

シスター「さっさと出て行って下さい!!!!」ナミダメ

フィアンマ「えっと……お前はそういう趣味の持ち主だったのか?」

アックア「断じてそんな事は無いのである」

フィアンマ「……この状況を見てその言葉を信用できる者はそうそういないだろうな」

シスター「な!! 別の男が入ってきてる!?」

シスター「ど、どういうことですか、シスター・アニェーゼ!!」


アニェーゼ「静まって下さい!!」

アニェーゼ「この二人は教皇公認で視察に来た方々です!」

シスター「ええ? この男どもが!?」

シスター「そんな……」

アニェーゼ「とにかく! この二人に危害を加えるのは教皇に逆らうことと同義です」

アニェーゼ「幸いにも今までの無礼は水に流してくれるそうなので、今後一切無礼の無いよう気を付けてください!」

シスター「……り、了解しました」

シスター「あ、あの、先ほどはすみませんでした。そんなお方だとは知らず……」

アックア「構わないのである。聖人はあの程度では痛くもかゆくもないのでな」

シスター「本当に聖人だったんですか」

アックア「だからそうだと何度も言っている」


フィアンマ「このシスターたちもよくこんな小娘の言うことを聞くな」

アニェーゼ「人心掌握は結構得意なんです」エッヘン

フィアンマ「ふむ、コツとかはあるのか?」

アニェーゼ「そうですね……しいて言うなら部下の言葉はちゃんと聞くこと、ですかね」

フィアンマ「……」

アニェーゼ「あ、こんな小娘が偉そうにすみません」

フィアンマ「いや、参考になった」

フィアンマ「ところで、俺様は無礼な行為を水に流すとは言ってないんだが……」

アニェーゼ「……えっと、そこは小娘の人心掌握術に免じて見逃してもらえませんかね?」アハハ…


フィアンマ「さて、どうしようか」

フィアンマ「俺様はこのシスター軍団がどうなろうと構わないからなぁ……」ニヤニヤ

アニェーゼ「っ……」

フィアンマ「……ま、人心掌握術は役に立ちそうだし、見逃してやろう」クク

アニェーゼ「いいんですか!!」

フィアンマ「魔術を使わずにこの人数をまとめ上げる手腕には驚いたからな」

アニェーゼ「よ、よかった……。本当にすみません」ペコリ

フィアンマ「まあ、顔をあげろ」

フィアンマ「それに自分の部下を守ろうと必死な感じも伝わってきたからな」

フィアンマ「そういうところを下の奴らは慕っているのかもしれない」フッ

アニェーゼ「……」カア


アックア「話は終わったのであるか?」

フィアンマ「ああ。正式に話を付けてきた」

アックア「そうか」

フィアンマ「なあ、少し聞きたいんだが」

アックア「なんだ?」

フィアンマ「そういう趣味を持っているわけでもないのに、なぜあのシスター達の攻撃を甘んじて受けていたんだ?」

フィアンマ「疑われても仕方がないと思うぞ」

アックア「手加減があまり利かないからである。怪我させるのはまずいだろう?」

フィアンマ「なるほどな。聖人も大変だな」

アックア「大変というほどでもないのである。もう昔からの習慣だからな」

フィアンマ「ふむ……そういうものか」クビカシゲ

こんなところでひとまず
はじめはアニェーゼ部隊にお邪魔します


フィアンマ「おい」

アニェーゼ「な、なんですか?」

フィアンマ「俺様が入ろうとした時、出発が何だかんだって言っていただろう?」

フィアンマ「今何をしている所なんだ?」

アニェーゼ「ああ……それは……」

ガチャ

ルチア「……!!」

ルチア「な、何です、この男どもは!!」

アンジェレネ「どうしたんですか?」ヒョコ

ルチア「あなたは私の後ろに隠れてなさい!!」


フィアンマ「おいおい、あいつらもお前の部下だろう? ちゃんと指導しておくべきだぞ」

アニェーゼ「では少しこの紙借りますね」ピラリ

フィアンマ「あ、ああ」


アニェーゼ「心配いらないです。シスター・ルチア、シスター・アンジェレネ」

アンジェレネ「え?」

アニェーゼ「この二人は……視察の方々なんで」ピラ

ルチア「教皇のサイン付き……!?」ビク

アンジェレネ「この印籠が目に入らぬか、みたいですね!!」ワクワク

アックア「どこかで聞いたようなセリフであるな」

フィアンマ「説明するのが面倒だからと言ってその紙で片付けるのははどうかと思うぞ」

アックア「ならお前が説明すればいいのである」

フィアンマ「そういう説明をするのが上司の役割だろ」

ルチア「……失礼ですが、あなた方のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」


フィアンマ「いいだろう。俺様は神の右s、モガッ」ガバ

アニェーゼ「神のう?」

アンジェレネ「噂か何かで神の右席とかいう組織が存在するって聞いた事有りますよ!!」

アックア「いや、噂の裏組織とは何も関係ないのである」アセアセ

アックア「えっと、彼は教皇の親戚なのである。なあ、フィアンマ?」

フィアンマ「あ、ああ、そうだ」

フィアンマ「将来はローマ正教の中核を担うことになるかもしれないからよろしく」

アニェーゼ「……そんなすごいお方だったんですか!?」

フィアンマ「ま、まあそんなところだ」

フィアンマ(やりづらい役だな……)


フィアンマ「で、こっちは聖人のアックアだ。俺様の付き人だな」

アックア「よろしくなのである」

アックア「私へのちょっとした攻撃なら見逃すが、フィアンマに攻撃した者には容赦しない」

シスター達「ひぃっ」ビクッ

フィアンマ「そんな気遣いは無用だ」コソ

アックア「私だって本気でそんなことをするつもりはないのである」コソ

アックア「だがそれくらい言っておかないと、付き人らしくないのであるから、仕方があるまい」コソ

フィアンマ「なるほどだが、気色悪いな」コソ


アニェーゼ「何話してんですか?」

フィアンマ「いや、こっちの話だ。気にする必要はない」

アニェーゼ「そうですか」


アニェーゼ「でも現教皇の親戚ってことら、次期ローマ正教の教皇候補ですか……」ボソ

アニェーゼ「きちんとゴマすっておかねぇと……」

ルチア「シスター・アニェーゼ、声に出してもいいんですか?」

アニェーゼ「あっ……」

フィアンマ「ごますりか」

フィアンマ「まあ、頑張るといい」

アニェーゼ「なっ! 今のは、今のは無しで頼みます!」

フィアンマ「面白いことを言う女だな」

フィアンマ「ただ俺様は頑張っていたらその分だけ報告してやろう、という意味で言ったんだがな」

アニェーゼ「え、そうなんですか?」

フィアンマ「ああ。俺様は嘘はつかないからな」

アックア(信頼を得るためとはいえ、思ってもないことを言うとはな)

アックア(まあ、偽りの言葉は人間関係においても重要か)


フィアンマ「ところで、今は何をしているんだ?」

フィアンマ「さっきはとある二人のせいで内容を聞くことができなかったからな」

アニェーゼ「それは……」

アンジェレネ「ある魔術結社討伐の準備ですよー」

ルチア「し、シスター・アンジェレネ! 口にしてはならないと言ったでしょう!」

ルチア「相手に聞かれてたらどうするんです!」

アニェーゼ「いや、もうとっくにバレていたみてぇですよ」


ドゴオオオォォォン……


アンジェレネ「私たちの結界が破られた!?」

ルチア「これは、まずそうですね」ジャキッ

アニェーゼ「いやぁ、私たちだけ別の建物に移動しておいて正解でした」ハァ


フィアンマ「ふむ……しばらく後ろで見ているとしよう」スタスタ

アニェーゼ「ええ! ちゃんと見ててください!」ジャラ

アニェーゼ「で、上に報告頼みますね」ダッ

フィアンマ「はいはい。頑張れよー」



フィアンマ「俺様が助太刀したらゲームバランス崩壊だからな」

アックア「ゲームバランスとか言うな」

アックア「というか、どこでそんな単語を学んだ?」

フィアンマ「そこでアンジェレネとかいうガキとゲームの話をしていた時だ」

アックア「視察中にゲームの話などするな!」


フィアンマ「アニェーゼ部隊といったか、この組織はどれほどの規模なのだ?」

アックア「この魔術が飛び交う中でよくそんな話ができるな」

フィアンマ「効かない攻撃は怖くないからな」

アックア「現時点で百人いかない程度の人数らしい」

フィアンマ「そうか……やはりそこそこ大きなグループだというわけか」ジー

フィアンマ「俺様はたった三人をまとめることもできないというのに……」

アックア「神の右席のリーダーぶるのやめてもらえるか?」

フィアンマ「実質リーダーだからいいだろう」

フィアンマ「ま、神の右席は一人一人の癖が強過ぎるからまとめるというより、うまく動くよう仕向けるっていうのが正しいがな」

アックア「人身掌握術を聞いた意味がなかったみたいであるな」

フィアンマ「仕方が無いだろう? 組織によって違うのさ、そのあたりはな」ジー

アックア(軽口をたたきつつもしっかり戦闘を観察している辺り、視察に来たというのはふざけているわけではないらしいな)


アンジェレネ「行けっ!!」ジャリリリ

魔術師「金貨の入った袋、か」

魔術師「火焔の鎖よ、溶かせ!」ゴオォォ!

アンジェレネ「火!?」

アンジェレネ「は、弾けて!!」ブツッ ジャラララララ

魔術師「っ……」ドドドッ

魔術師「いってぇな……でも、もう武器はなさそう、だな?」ニヤ


フィアンマ「……自分の身を守るものを自爆させてどうするんだ……」スック

アックア「ん? ゲームバランス崩壊ではないのであるか?」

フィアンマ「助っ人とかではない。ゲーム知識のお礼だ」

アックア「無理矢理な言い訳であるな」

フィアンマ「ふん、俺様が見ていたのに人が死んだら神の右席の名が泣くだろう」


魔術師「柱支えし者の一人、嵐となりて、仇なす悪鬼をねじ伏せ――」

アンジェレネ「っ!」

アンジェレネ(かなり強いのが来る!!)


「怒りを鎮め、席へ還れ」


魔術師「なっ、解呪されただと!?」

フィアンマ「よっと、間に合ったみたいだな」スタッ

アンジェレネ「フィアンマさん!」

フィアンマ「あまり人が集中しているところから離れるな」

フィアンマ「あまり離れると下手したら集中砲火を喰らうぞ」

フィアンマ「まあ、相手は上手くバラして一人ずつプチプチ潰すつもりだったらしいが」チラ

魔術師「なんだ、コイツは?」

フィアンマ(この腕が使えれば瞬殺なんだがな)


フィアンマ「とにかく俺様が適当に引きつけているうちに、このコイン袋でも使って、再度術式を構築しろ」ジャラッ

フィアンマ「丁寧に、な」

アンジェレネ「わ、分かりました!」タッ


フィアンマ「さてと、お待たせしたな」クルッ

フィアンマ「また詠唱しなくてはならないのは面倒だから、さっさと勝負をつけさせてもらうぞ」

魔術師「っ……一度術を見破ったくらいで調子に乗るなよ?」グッ


女魔術師「はいはいどいてねー」ペタッ

魔術師「なっ、お前はリーダーのガキと戦えと言ったはずだ!!」

女魔術師「そっちよりもこっちのお兄さんの方がよっぽど強そうだったから助太刀に来たのよ」ズザッ

魔術師「な、何をする!」ズテ

女魔術師「ほら、伏せないと頭飛ぶわよ。お姉さんの胸にでも頭うずめてなさい」パチン

魔術師「もごご……」ガシッ


ドゴオオオォォォン モクモクモク……


魔術師「やったか?」

女魔術師「……それ、フラグよ」ジッ

フィアンマ「ほう、面白い魔術を使うではないか」カツッ

フィアンマ「見破るのに少し時間がかかった」

女魔術師「まあ……効くわけないか」アハハ…

フィアンマ「いやいや、なかなか面白かったぞ」

フィアンマ「そのお礼と言ってはなんだが俺様のとっておき手前の技を見せてやる」パチン

魔術師「うぐっ」バタ

女魔術師「ぐっ」バタ

アンジェレネ「え、な、何したんですか?」

フィアンマ「頭に衝撃波を叩き込んだ。これでしばらくは起きないはずだ」

フィアンマ(ちなみにとっておきでもなんでもない)


アンジェレネ「あ、危ないところをありがとうございました!」

フィアンマ「いや、お礼とかはいいからさっさとその二人を縛って、他の奴らの援護に行くといい」


フィアンマ「これでゲーム知識の恩は返せただろう」スタスタ

アックア「お疲れなのである」

フィアンマ「ああ。普通の魔術もたまには悪くないな」

アックア「瞬殺だとつまらないからな」

フィアンマ「む、お前らしくない事を言うな」

アックア「そうであるか? 強い相手と戦うのは私も好きなのである」

フィアンマ「まあ、俺様の前では強い弱いは全く関係ないがな」

アックア「それは非常につまらない戦いであるな」

フィアンマ「楽だからいいのさ」フッ

とりあえずは一区切り。
魔術とか適当になってしまった……


…………………………
……………

アニェーゼ「はぁ、はぁ、なんとか倒せました……」

アニェーゼ「皆さんお疲れ様です」

アンジェレネ「拘束拘束!」タタタッ

ルチア「づっ……終わりましたか」ガクッ

アニェーゼ「シスター・ルチア、どうしたんです?」タッ

ルチア「背中を少し深く斬られて……でも大丈夫です」

アニェーゼ「回復魔術が得意なのは……」

シスター「皆、魔力は残ってません!」

アニェーゼ「そうですよね……」ジー

アンジェレネ「……」ジー


フィアンマ「なぁ、俺様達すごい見られてないか?」

アックア「いや、私は見られてないのである」

アックア「全シスター達の目線がお前に集まっている」

フィアンマ「……期待しているところ非常に申し訳ないが、俺様は他人のための魔術にはそこまで聡くないのだが」ボソボソ

アックア「こっちを向いて小声で言うのをやめるのである」

アックア「男に小声で話しかけられても気色が悪いだけである」

フィアンマ「え、俺様の意図汲んでくれないの?」

フィアンマ「どう断ればいいんでしょうか、という意味で言ったんだぞ」

アックア「別に断る必要はないのである」

アックア「ガールフレンドが欲しいのだろう? なら絶好のチャンスだろう? 出来ないわけじゃないんだから」

フィアンマ「……」

フィアンマ(仕方が無い)

フィアンマ(今回は俺様が面倒な嘘をついてしまったツケだ)


フィアンマ「はぁ……今回だけ特別に俺様が回復魔術かけてやるから、傷がひどい奴だけ俺様を呼べ」

フィアンマ「とりあえず、ルチアといったか」

ルチア「……は、はい」

フィアンマ「悪いが体に触れるぞ。その方が魔術の効率が上がるんでな」

ルチア「お願いします」ペコ

フィアンマ「動くな。傷に響くぞ」スッ

ルチア「っ……」ピク

フィアンマ「……」パアァ

フィアンマ「……こんなところだ。傷はとりあえずは塞いだが、あまり激しい動きをすることはオススメしない」スック

ルチア「!! ありがとうございます!」

フィアンマ「ああ。ここはどういたしまして、と言うべきか」

フィアンマ「次いるか?」

フィアンマ(俺様のせいとはいえ、なぜ俺様がこんなことをしなくてはならないのだ……?)ハァ


……………………

フィアンマ「ふう、こんなところか」

アックア「であるな」

アニェーゼ「ありがとうございます。おかげで助かりました」

フィアンマ「そんなに改まるな。変な気分になる」

アックア「ふっ、普段とはまるで別人のようなことを言うのであるな」

フィアンマ「うるさいうるさい!」

フィアンマ「俺様のことはどうでもいいだろう」


ルチア「シスター・アニェーゼ、反省会は?」

アニェーゼ「ええ、拘束が終わったら始めます」


シスター「拘束、終わりました!」

アニェーゼ「よし、じゃあ受け渡しの担当が来るまで反省会します」

フィアンマ「反省会か。なら少し俺様から言いたいことがあるのだがいいか?」

フィアンマ「戦闘を見てて気になった点なんだが」

アックア「!」

アニェーゼ「おおー、ちゃんと見ててくれたってわけですね」

フィアンマ「当たり前だ。視察に来たのだからな」

フィアンマ「部下の得意戦法を見極めるいい機会にもなった」

アンジェレネ「じゃあ弱点も見えましたか?」

フィアンマ「ああ。それを今話そうと思う」

アックア(フィアンマが人にアドバイスをするだと……)


フィアンマ「まずアンジェレネといったか。お前からだ」

アンジェレネ「は、はい!」

フィアンマ「お前はもう少し術式の隙をなくせ。簡単に解呪されるぞ」

フィアンマ「それどころか術に割り込まれて、乗っ取られかねないな」

アンジェレネ「隙をなくすって、どうしたらいいんですか?」

フィアンマ「……術の理論をしっかり頭で理解することが一番大事だろう」

フィアンマ「そうしたら術の中から相手が割り込めるような隙が減るはずだ」

フィアンマ「それに詠唱も短縮できるはずだ」

アンジェレネ「なるほど……」

フィアンマ「あとは相性悪い相手と当たってしまった時のため、弱点を補い合うことのできる奴と組んで動くべきだ」

フィアンマ「そうだな……水属性の魔術が得意な奴と組むといいんじゃないか?」

フィアンマ「金は水の効果を増幅させると聞いたこともあるしな」

アンジェレネ「ペアを組むべき……水属性」メモメモ

フィアンマ「だが、まあ、金が火に弱いことを覚えていたのは良かったと思うぞ」

アンジェレネ「あ、ありがとうございます!!」


フィアンマ「次は車輪女……ルチアだったな。お前へのアドバイスだ」

フィアンマ「聞くも聞かないもお前次第だが」

ルチア「……」ゴクリ

フィアンマ「お前はもう少し術と術の間をなくせ。蜂の巣にされるぞ」

フィアンマ「術式そのものの精度は歳から考えると見上げたものだが、遅い」

フィアンマ「そのせいで隙が目立つ」

ルチア「……」

フィアンマ「少し思い出してみろ」

フィアンマ「車輪の形を戻す時とか隙だらけだろう?」

フィアンマ「戦闘開始直後はそこにフォローが入っていたから、攻撃を受けずに済んでいたみたいだな」

フィアンマ「だが、終盤はみな個々の相手に必死だった。だから、相変わらず隙だらけなお前は背中を斬られた」


ルチア「……よく見てますね」

フィアンマ「さっきも言ったが、視察に来たんだから当然だ」

フィアンマ「話を戻すが、隙ができてしまうことへの根本的な解決にはやはり、魔術の鍛錬は必要不可欠だ」

フィアンマ「だが、それだと時間がかかる」

フィアンマ「だから、対症療法的な方法で申し訳ないが、相手の足を止められる程度の魔術を習得するのが一番手っ取り早いだろう」

フィアンマ「車輪の形を戻しながら行使できるくらいの簡単なものでもいい」

フィアンマ「隙だらけの自分に敵を近づけないことが最優先だ」

ルチア「……」フムフム

フィアンマ「そんなところだ。術式の精度は誇っても良いくらいだから、その良さを損ねないよう鍛錬に励んでくれ」

ルチア「分かりました! 有益な助言をありがとうございます」ペコ

フィアンマ「頭を下げられるほどではない。思ったことを言っただけだからな」


フィアンマ「最後に、アニェーゼ、お前にも一言ある」

アニェーゼ「へっ!?」

アニェーゼ「わたしもですか?」

フィアンマ「ああ」

フィアンマ「私は何も言われねーに決まってますよ、みたいな顔をしていたからな。言いたくなった」

アニェーゼ「Sですね」

フィアンマ「なんとでも言えばいい」

アックア「フィアンマは何を言われても全く意に介さないから、言っても無駄だと思うのである」ハァ

フィアンマ「そういうことだ」ウンウン


フィアンマ「まず……」

フィアンマ「さすがはリーダーだな。組織をまとめ上げるに足る強さだと思うぞ」

アニェーゼ「え、マジですか?」

フィアンマ「マジだ。俺様は嘘は言わないと言ったような気がするが?」

アニェーゼ(確かにお世辞は言えねぇでしょうね)

フィアンマ「死に物狂いで努力したんだろうということが伝わってくるような座標攻撃の正確さだった」

フィアンマ「ローマ正教以外に何か趣味なかったの? 人生損しているぞ、と煽りたくなる程だな」

フィアンマ「……褒めすぎは毒だな」

アニェーゼ「いえ、後半は悪口でしかなかったです」

フィアンマ「まあ、謙遜するな」

アニェーゼ「してません」


フィアンマ「だが、やっぱり組織全体での連携をもう少し取った方がいいと思うぞ」

フィアンマ「常に戦況を見極め、皆の能力を把握し、的確な命令をするのが司令官の仕事だ」

アニェーゼ「指揮官……」

フィアンマ「さっきもアンジェレネとかいうシスターにも言ったが、これだけの人数いたら個々の苦手を補い合うことができるだろう?」

フィアンマ「魔術の発動が遅い奴のフォローに武器を振り回す系の奴をまわす、とかな」

フィアンマ「その辺をより円滑に、効率よくするため、お前の指示があった方がいいと思うぞ」

アニェーゼ「つまり、連携のための指示ですか?」

フィアンマ「ああ。出来ると見込んでのアドバイスなんだが、どうだ?」

フィアンマ「上手くいけば車輪女のような目に遭うシスターは減り、戦力ダウンも抑えられる」

アニェーゼ「……いいじゃないですか。やってやりましょう」


アックア「……意外と真面目なアドバイスができるのであるな」カンシン

アックア(……善意であるかは判断できないのであるが、な )

フィアンマ「お前は一体俺様を何だと思ってるんだ……」

アックア「いや、馬鹿にしているわけではないのである。ただ、魔術面だけの指摘ではなかったということに驚いた」

フィアンマ「ああ、そういうことか」

フィアンマ「実戦に関しては遠見の霊装でよく見てたしな。暇つぶしに本も読んでいた」

フィアンマ「天才だからといって、努力しないわけではないのさ」

アックア(自分で天才というのはどうかと思うんだが……)

アニェーゼ「意外ですね」フフッ

フィアンマ「知り合って間もないお前に言われたくはない」ムカー

アニェーゼ「いや、私にあんなこと言うくらいですから、さぞかし高尚な趣味をお持ちなのかと予想してたんですよ」

アニェーゼ「だけど実際は私と大差ないですねって思っただけです」


フィアンマ「もしかして、俺様は煽られているのか?」

フィアンマ「お前も趣味持ってないじゃないかって嘲られているのか?」

フィアンマ「人生損してるぞって馬鹿にされているのか?」

アニェーゼ「戻ってきてくださいよ」ツンツン

アニェーゼ「すこし皮肉っただけですから」

フィアンマ「そうか……俺様は皮肉られていたのか」

アックア「……私の趣味を紹介しようか?」

フィアンマ「そ、それは全力で拒否させてもらう」

とりあえず少し休憩。


フィアンマ「ところで、そこの奴らはどうするんだ?」

アックア(……物理的にも魔術的にも拘束されているのである)

魔術師「……」

アニェーゼ「ローマ正教に仇なす存在ですし……まあ普通でしたら拷問の後、処刑でしょうね」

フィアンマ「拷問か」

アニェーゼ「不愉快な想像させちまいましたか?」

フィアンマ「いや、別にそんなことはないが、拷問はイギリス清教の十八番じゃなかったか?」

アニェーゼ「ああ……確かにイギリス清教には劣りますけど、ローマ正教もそこそこいい設備が整ってるらしいですよ」

アニェーゼ「気持ちのいい話ではねえですけどね」


フィアンマ「……ほう、初耳だな」

アニェーゼ「上の方に拷問の話をすることなんて滅多にないですから」

アックア「イギリス清教の拷問、か……」

フィアンマ「アックアは何か知らないのか?」ボソ

アックア「そんな機密事項を教会派でもなかった私が知っているわけが無いのである」ボソ

アニェーゼ「さってと、そろそろ話はやめて、引き渡しのための準備でもしますか」

ルチア「分かりました」

アンジェレネ「了解しましたー」トテトテ

ザワザワ……


………………………

フィアンマ「そういえば」

アニェーゼ「どうしました?」

フィアンマ「この女だけやたら現代っぽい服装だが……リーダーか何かなのか?」

女魔術師「……」

アニェーゼ「えっと、事前に行った調査結果の中にはなかった顔なんで、多分雇われでしょう」

フィアンマ「雇われか……それにしては強かった気がするが」

アニェーゼ「よくあることなんです。戦力が心配な魔術結社が強い魔術師を雇うことは」

アックア「つまり傭兵のようなものということであるな」

アニェーゼ「ええ。まあ、そんな感じです」ウンウン


フィアンマ「……」ジー

フィアンマ「……」ジー

アックア「どうしたのであるか? そんなに黙りこくって」

フィアンマ「おい、アニェーゼ」

アニェーゼ「何ですか?」

フィアンマ「……俺様がこの女の尋問担当してもいいか?」

アニェーゼ「は?」

アックア「な、何言ってるのである。それは拷問官の仕事である」

フィアンマ「俺様がしようと思っているのは拷問じゃない。尋問だ」


フィアンマ「雇われなら口を開きやすいかもしれないだろう?」

フィアンマ「組織の思惑なぞ雇われた身からしたらどうでもいいだろうしな」

ルチア「そんなことはないかと。高額な口止め料をもらっているはずなので」

フィアンマ「……」

ルチア「いかにあなた方、司教クラスの権力を持っているの人間であろうとも教皇の許可なく拷……尋問の代行はできないかと」

アニェーゼ「いや、そんなことないです」スッ

アニェーゼ「この方々は今回の戦闘の功労者ですし、この紙を使えば間違いなく融通を利かせてもらうことができます」ニヤ

アニェーゼ「大した情報もってなさそうですしね」


ルチア「しかし……」

アニェーゼ「いいじゃないですか」

アニェーゼ「魔術を封じたとはいえ相手は肉弾線も得意な雇われの魔術師」

アニェーゼ「わりとボロボロな私達じゃ引渡しまで不安ですよ」

ルチア「……」

アニェーゼ「その上調査結果にはなかったんで、他にも隠し技がある可能性あります」

アニェーゼ「わたし達はそれに対処する余力はねぇかもしれません」

ルチア「……そ、それは……」

アニェーゼ「なら、聖人をつれている彼の方が安心じゃないですか?」

アニェーゼ「それにあっちから提案してきたことですし、万が一のことがあっても、私たちの組織が潰されるって事は無いでしょうし」

ルチア「……分かりました」


フィアンマ「どうだ、話はついたか?」

アニェーゼ「ええ。一応隠し技などがあるかもしれませんのでご注意ください」

アニェーゼ「ま、言う必要無いと思いますけど、一応ってことで」

フィアンマ「ああ、その辺りはアックアに何とかさせる」

アックア「人任せとは、神の右席が聞いて泣くな」コソ

フィアンマ「おや、俺様が言おうとすると一々口を塞ぎに来るくせにお前は普通に口にするんだな」

アックア「小声ならいいと判断しただけだ」

フィアンマ「……さてと、じゃあいくぞ、アックア」

アックア(やはり、私が運ぶことになるのか……それ自体に文句はないが……)

アックア「それではお邪魔して済まなかった」ヨッコラ

アニェーゼ「いえいえ、うまく情報を引き出してくださいよー」

フィアンマ「ああ、尋問の結果は後で報告書でも作成して伝えてやる。楽しみに待ってるといい」

ガチャ



アンジェレネ「楽しみですね」

ルチア「そうですか? 私はただ心配なだけですけど」

アニェーゼ「さて、どうなるか……」

アニェーゼ「報告書が楽しみですね」

今日はここまでー!



『尋問体験』


アックア「視察はもう終わりにするのか? 流石に早すぎる気もするが……」

フィアンマ「続ける」

フィアンマ「ただし尋問の後だ」チラ

女魔術師「……」グッタリ

アックア「……なぜそんなにこの女の尋問にこだわるのであるか?」

アックア「他の奴の尋問でも大差はないと思うが」

フィアンマ「やってみたいから」

アックア「は?」

フィアンマ「やってみたいからだと言った」


アックア「まさか、それだけとは言わないよな?」

フィアンマ「そうだが、ダメなのか?」

フィアンマ「細かいことはアニェーゼがやってくれるはずだから気にする事は無いだろう?」

アックア「むむ、私はあくまでお前が変なことをしないか観察するためだけに来ているのである」

アックア「だから無理に止めるつもりはない」

フィアンマ「それは結構」

アックア「ところで、どこで拷、尋問する気なんだ。このまま行くとお前の部屋にたどり着く」

フィアンマ「仕方がないだろう? どこに何があるか分からないのだから部屋も借りられないのさ」

アックア(その辺りをあのシスターたちに任せればよかったのでは?)

アックア「……まあ、お前の部屋なのだから何をしても別に構わないか」

フィアンマ「そうだ。お前が案ずることではない」


………フィアンマの部屋………

フィアンマ「ようやく到着だ」

アックア「誰に言っている?」

フィアンマ「この女」ユビサシ

女魔術師「……」

フィアンマ「目隠しされてるから分からないだろう?」

アックア「それもそうか」

ガチャガチャ

アックア「……開かないのである」

フィアンマ「ああ、少し待ってろ。開け方があるから」ガチャ

フィアンマ「開いたぞ」


アックア「……防犯対策はしっかりしているみたいだな」

フィアンマ「ああ、俺様以外はこの部屋に侵入できないよう防衛、迎撃術式を展開させている」

アックア「迎撃……そこまで用意する必要はあるのか?」

フィアンマ「当然だろう。極秘の書類なども結構置いてあるのだからな」

アックア「燃やすんじゃなかったのか?」

フィアンマ「……燃やさないものもある。予算案とか、教会の建設計画書とかだな」

アックア「割と現実的だな……」

フィアンマ「どうでもいいだろう、そんなこと」

フィアンマ「それより、入らないのか?」

アックア「仕掛けなどがありそうな予感がするのである……」

フィアンマ「勘が良いな。だがさっき解除したから心配いらない」

アックア「それでは……失礼するぞ」ガチャ


アックア「……」

フィアンマ「人の部屋に来たのに感想もなしか?」

アックア「あまりに普通すぎて驚いていただけだ」

フィアンマ「普通って……俺様は別に変な趣味を持っている訳じゃないんだから、部屋が普通なのは当然だ」

アックア「……そ、そうであるな」

フィアンマ「それより、そろそろそいつ降ろしたらどうだ? そこの椅子使わせてやるから」

アックア「……ふう」

フィアンマ「お疲れ様だ。お前はその辺で休んでるといい」

フィアンマ「俺様は尋問を始めるからな」

アックア「別に大したことは無かったが、ここは素直に休んでおくか」


フィアンマ「まず、名前は?」

女魔術師「……」モゴモゴ

フィアンマ「あれ……なぜ黙ってる?」

アックア「……はぁ、口封じである」

アックア「拘束中に仲間と意思疎通ができないよう口が利けないようになる魔術を使っていたはずだ」

フィアンマ「あ、なるほどな。解呪しないとならないのか」

フィアンマ「……」サッ

フィアンマ「これで大丈夫だろう?」


女魔術師「あら、ホントだ。声が出る」

女魔術師「……お兄さん、さっきも思ったけど本当に魔術上手なのねえ」

フィアンマ「まあ天才だからな。というか、お前と年の差は大してなさそうだが?」

女魔術師「でも坊やって年でもないでしょう? だからお兄さんでいいじゃない」

フィアンマ「俺様はフィアンマだ。ちゃんと名前がある」

女魔術師「怖い顔しないでよ。お姉さんのマゾな部分に火がついちゃうでしょう?」

フィアンマ「名前は?」

女魔術師「無視!?」

フィアンマ「名前を言え」

女魔術師「……お姉さんの名前はオリアナ=トムソンよ」


フィアンマ「オリアナ=トムソンか」カキカキ

フィアンマ「……とりあえず、これでも飲め」スッ

オリアナ「自白剤かしら?」

フィアンマ「いやいや、そんな科学っぽいものを俺様が持っているわけ無いだろう?」

オリアナ「じゃあ何かしら? 媚薬とか?」

フィアンマ「……普通のココアだが、どうしても心配なら確かめてみればいい」

オリアナ「どうやって? 私は今魔術を封じられているのよん」ニコ

フィアンマ「なら解呪しようか」

オリアナ「は?」

アックア「何を言ってるのである」

フィアンマ「いいじゃないか。この女一人が暴れたとしてもそれを鎮圧するのは赤子の手をひねるより容易だろう?」

アックア「そ、そうであるが……」


フィアンマ「まあいいや。いらないなら無理に飲ませる気はない」

フィアンマ「俺様が飲もう」ゴクゴク プハー

フィアンマ「長丁場になるかもしれないから、と好意で糖分補給を勧めたというのにな」ニヤニヤ

オリアナ「そういうことは先に言ってもらわないと分からないわ」

フィアンマ「……いるか?」スッ

オリアナ「ただのココアならいただきたいところだけど、拘束されてるから飲めないわね」

フィアンマ「アックア、飲ませてやれ」

アックア「……分かった」


オリアナ「それで、お兄さんたちは私とそういうコトしたいから助けてくれたのかしら?」

フィアンマ「頭大丈夫か」

アックア「念のために回復魔術かけておこう」パアア

フィアンマ「アックア、生まれつきの欠損にはどんな魔術であっても効果は無いぞ」

アックア「魔力の無駄か……」

オリアナ「え、ひどい反応」

フィアンマ「そもそも俺様はお前を助けたわけじゃない」

フィアンマ「だから今のところお前が処刑されるのを止めるつもりもないし、道理もない」

フィアンマ「ただ、捕まっているのに妙に余裕そうな表情をしているのが気になったから連れてきただけだ」


オリアナ「あら、そんなに私のこと見てくれてたの?」

オリアナ「お姉さん嬉しすぎて少し濡れちゃったみたい」

フィアンマ「……会話しづらいな……」コンワク

フィアンマ「……話し方がどうであれ、お前が有益な情報を持っていたのなら、刑を軽くするように言ってやってもいいがな」

オリアナ「それはつまり、身体で払えってことかしら?」ウフン

フィアンマ「アックア……疲れた、交代してくれ」ヘナー

アックア「断固拒否だ。これほど面倒な人間は初めてだからな」フン

フィアンマ「……じゃあ少し感情のスイッチを切らせてもらう」スゥ


フィアンマ「とりあえずあの組織について知っていることがあるなら全て吐け」

フィアンマ「ここで沈黙を貫いても何もいいことはないぞ。むしろ状況は刻一刻と悪化していく」

フィアンマ「返答次第では処刑は免れるかもしれないのだから、どんなに小さなことでもいいから答えろ」

フィアンマ「分かったな?」

オリアナ「あら、本格的に無視の体制に入っちゃったか」

オリアナ「分かった。お姉さんも真面目に話すからその冷たい目はやめてもらえるかしら」

フィアンマ「……本当だな?」

オリアナ「ええ。お姉さんの目を見たら裏切るつもりはないってわかるでしょう?」

フィアンマ「……そう言って、油断した俺様に目を合わせる事によって発動するまじないか何かを使おうとしていることは読めている」ギロ


オリアナ「あらら、お兄さん本当に頭が冴えてるのね」

フィアンマ「魔術は封じられているとはいえ、魔術まで至らないおまじない的行為は警戒しているに決まってるだろう」フン

オリアナ「うーん、もう降参。小細工加えたりしないでちゃんと答えたげるわ」

フィアンマ「初めからそうしてもらいたかったな。今の会話でどれくらい時間を無駄にしたことか」ハァ

オリアナ「仕方ないわ。それがお姉さんの個性だから」

フィアンマ「これほど相手に迷惑をかける個性は初めて見た」

オリアナ「お姉さんの個性については後でいいわ。それより早く尋問始めましょう?」

フィアンマ「自分からそんなことを言うなんてな」

フィアンマ「まあいい」

とりあえず一区切り……
乙ありです!


フィアンマ「まず、あれは何を目的とした魔術結社なんだ?」

オリアナ「ローマ正教という邪教を排除し、宗教に縛られない世界をつくる、とか言ってたわ」

フィアンマ「ありがちでつまらないな」

オリアナ「まあ、お姉さんはそんなのはどうでも良かったんだけどね」クスクス

フィアンマ「……」サラサラ

フィアンマ「主に使う魔術系統は?」

オリアナ「北欧系から陰陽師系統まで国や宗教関係なく様々な種類の魔術を使う感じだった気がするわ」

オリアナ「色々取っ替え引っ替えってのはあまり好みじゃないんだけど。お姉さんは一途なのが好きよ」

フィアンマ「……その余計な語りはいらない」ハァ

オリアナ「あら、ついクセで」


フィアンマ「……それにしても、ずいぶんサクッと話すんだな」

フィアンマ「口を開こうとしない被疑者を、様々な手を使って自白させることを楽しみにしていた俺様としては少し拍子抜けなんだが」

オリアナ「様々な手って、エロ漫画みたいなことするのかしら?」

フィアンマ「お前に言った俺様が馬鹿だった……」

アックア「実際どんな手を使うつもりだったのだ?」

フィアンマ「言わない」サラサラ…

オリアナ「聖人のお兄さん、私が実際黙ってみれば分かるんじゃない?」

フィアンマ「それはやめろ。面倒な予感しかしないから」カキカキ

オリアナ「じゃあ普通に続けましょう?」

フィアンマ「……そうだな」


フィアンマ「組織のボスは?」

オリアナ「あの、お兄さんに解呪された魔術師よん」

フィアンマ「え? それは本気で言ってるのか?」

オリアナ「もちろん」

フィアンマ「リーダーと言えるほど強くないだろ……」

オリアナ「擁護するわけじゃないけど、そこそこの強さはあるわ。だってあのシスターちゃんは苦戦してたでしょう?」

フィアンマ「た、確かにそうだが……そんなものなのか?」

オリアナ「たかが小さな魔術結社にそんな戦力を期待しないでね。明け色の陽射しとかとは違うんだから」

フィアンマ「黄金、か」

フィアンマ「確かに万が一それが標準だとしたら、世の中はとても危険になるな」

オリアナ「分かってもらえて良かったわ」


フィアンマ「一つ関係ないかもしれないが、いいか?」

オリアナ「拒否権はないでしょう?」

フィアンマ「まあそうだが……」

フィアンマ「俺様としてはありがたいし、心配するようなことでもないんだが、口止めとかはどうしたんだ?」

オリアナ「あら? そんなことどうでもいいんじゃない?」

オリアナ「でも、強いて言うなら、お兄さんの独特な雰囲気に惹かれたから、かもしれないわ」

フィアンマ「……」

オリアナ「分かった、分かったからスルーはやめて?」

フィアンマ「もう、こんなに疲れるとは思ってなかったから、限界が見えてきてな……」ハァ


フィアンマ「……よし、話してくれ」

オリアナ「大丈夫?」

フィアンマ「ああ、俺様はそんなにヤワじゃない。疲れたけど」チラ

アックア「私の方を見るな。お前がやりたいと言い出したんだから最後まで責任をもってやるのである」

フィアンマ「分かってる」

オリアナ「えっと、本当はまだ口止め料貰ってなかったのよ」

オリアナ「というか、契約金みたいなのもなくて、完全に成功報酬って感じだった」

オリアナ「だから今回の件は完全にタダ働きだったってわけ」

オリアナ「お金を払ってもない、情もない組織のために私が身を削ってまで情報を隠す必要はないでしょ?」

フィアンマ「なるほど、アイツらがバカだったという話か」カキカキ

オリアナ「バカっていうか、結果を急ぎすぎたのが運の尽きだったのかな?」


フィアンマ「だが、なぜそんな報酬が出るかもわからない仕事を受けようと思ったんだ」サラサラ

オリアナ「上手くいけば、私の目的も果たすことができそうだったから協力したってだけ」

フィアンマ「なるほど。目的が達成できるなら報酬なんかいらないか」

フィアンマ(目的を聞くのも悪くないが……急ぐこともないか)サラサラ…

フィアンマ「次は、あの単語帳のような魔導書……にしては不安定すぎる紙を使う魔術は一体なんなんだ?」

オリアナ「だいたい分かってるんじゃない」

フィアンマ「確認だ。万万が一俺様の理解が間違えていたら面倒だからな」カキカキ

オリアナ「使い捨ての魔導書。様々な要素の組み合わせによって無限と言っても過言じゃないくらいの魔術パターンを即座に構築して、扱うことができるわ」

オリアナ「持続時間は短いけどね」

フィアンマ「ふむ、まあ安定していないのだから、持続時間が短いというのも納得か」サラサラ


オリアナ「……お兄さん、字綺麗ね」ジー

フィアンマ「と、唐突だな」ピタッ

オリアナ「あら、ごめんなさいね。気になっただけなの」

フィアンマ「……別に言うほど綺麗じゃないがな」

オリアナ「謙遜はいらないわ」

フィアンマ「事実だ」

フィアンマ「と、とにかく、続きやるぞ」

オリアナ「はいはい、分かったわ」


フィアンマ「なぜ捕まってしまったという絶体絶命の危機に妙に余裕に満ちた表情をしていたんだ?」カキカキ

オリアナ「そうね……やっぱり逃げきれるだろうという気持ち半分と、お兄さんの何かを企んでいるような顔に賭けてみようって気持ちが半分ね」

フィアンマ「だな」

フィアンマ「完全に油断していた俺様も悪かったが、あの局面で魅了を使おうと思うお前にも少し興味が湧いたから拾ってやった」

フィアンマ「お前の命をな」

オリアナ「あら、バレちゃってたの?」

フィアンマ「当然だな。俺様に魔術的な隠し事をしようとしても無駄だ」

フィアンマ「だが、気に入った」


オリアナ「あら……意外なこともあるのね」

フィアンマ「お前の性格、言動はとても苦手だが、行動は嫌いじゃない」

アックア「へ? 何を言ってる?」

フィアンマ「俺様が雇う」

オリアナ「え?」

フィアンマ「オリアナは俺様が雇う」

アックア「ど、どうしたのである」

アックア「この女は一応罪人なのであるぞ」

フィアンマ「そんなことは言われなくても分かってる」


フィアンマ「だが、俺様が直接使える部下も欲しい」

フィアンマ「それもそこそこ腕の立つ奴だ」

オリアナ「え? 聖人のお兄さんは……?」

フィアンマ「…………あ、アックア以外にもってことだ」

アックア「……」

アックア(確かにフィアンマが動くより、この女が動いた方が周囲の被害は少なくて済むかもしれない……)

アックア(フィアンマを抑えることは私にはできないが、この女を抑える事なら容易……)

アックア「悪くはないかもしれない……」

フィアンマ「一応言っておくが、教皇には言うなよ?」

フィアンマ「面倒なことになるからな」


オリアナ「えっと、お姉さんが言うのもアレだけど、これはいったいどういうことなのかな?」

フィアンマ「お前を俺様が雇ってやる、と言ってる」

フィアンマ「このままだとどうせ給料未払いのまま処刑されるだけだろう?」

フィアンマ「この程度の情報では処刑は免れるのはほぼ不可能だろうしな」

フィアンマ「悪くない条件だと思うんだが……」

オリアナ「それは大人しく部下になれば見逃してもらえるってことかしら?」

フィアンマ「ああ。少し面倒かもしれないが、必ずなんとかすることを誓おう」

オリアナ「対価はカラダなのかな?」

オリアナ「お姉さんはそれでもいいんだけど、どう?」

フィアンマ「そのいちいち異性を誘惑するような面倒臭い話し方も徹底的に直してやる」


オリアナ「あら? もしかしてお兄さんも誘惑されちゃってたのかしらん?」

フィアンマ「俺様がその程度の言葉に揺れると思ったら大間違いだ」フン

アックア(少し赤くなっているのである)

オリアナ(揺れてるわけじゃないけど、ウブなだけなのかな)

オリアナ(可愛いところも有るのに惜しいわね)

フィアンマ「お前ら、今失礼なこと考えていただろう?」

アックア「そんなことはない。被害妄想は良くないと思うぞ」

オリアナ「お兄さんは基本鋭いけど、こういうところまで鋭いのは少し手強いなぁ……」


フィアンマ「まあいい」

フィアンマ「拒否権は無に等しいが、一応お前の意志を確認するとしよう」

フィアンマ「無理矢理部下にしたせいで、後になって裏切られても困るしな」

オリアナ「無理矢理って……そういうのも嫌いじゃないけど、今回は合意の上でってことにするわ」

オリアナ「よろしくね、お兄さん」

オリアナ「と、聖人のおじさん」

アックア「私はまだそんな歳ではない」ムッ

オリアナ「冗談冗談、よろしく、聖人のお兄さん」

アックア「うむ」

ひとまずここまでー


オリアナ「じゃあ契約の証としてプレゼントをあげるわ」

フィアンマ「はじめから思っていたが、馴れ馴れしいぞ」

フィアンマ「今は部下なんだからそれっぽく振舞え」

フィアンマ「ここは割と上下関係が厳しいのだから、そんな態度だとつまみ出されるぞ」

オリアナ「うーん、じゃあ少し気をつけてみるわね」

フィアンマ「ああ、一度やってみろ」

アックア「……」ドキドキ

オリアナ「契約の証としてプレゼントをあげましょう」

フィアンマ「よし、諦めよう」

オリアナ「奇遇ね。お姉さんもそう思ってたわ」


フィアンマ「アックア、とりあえず拘束を解いてやれ、プレゼントをくれるらしい」

アックア「いいのであるな」

フィアンマ「いいって。何かあっても俺様が何とかしてやる」

フィアンマ「それに女からのモノを拒む男など有り得ないだろう」グッ

オリアナ「その言い方は少しお姉さんでも反応に困るわね」

フィアンマ「ほう、お前が反応に困ることもあるのか」

フィアンマ「これは役に立つ……覚えておくべきだな」フム

アックア「……解いたのである」スッ

オリアナ「ありがとう、聖人のお兄さん」チュッ

アックア「!?!?」

フィアンマ「おい、反応しすぎだ」

アックア「お前には言われたくない!!」


フィアンマ「で、プレゼントってのは何なんだ?」

フィアンマ「唐突過ぎて良く分からないんだが」

オリアナ「ん? 期待しちゃってるのかしら?」

フィアンマ「なんでもいいだろう。余計なことを言ってないで、さっさと見せてみろ」スッ

オリアナ「雰囲気もクソもないわね」

フィアンマ「元々そんなものは期待してはない」

オリアナ「……だから女の子に嫌われるのよ、お兄さんは」

フィアンマ「……」

オリアナ「まあ、私は雇われた以上嫌でもお兄さんの性奴隷として生きなきゃならないわけだけど」

フィアンマ「……俺様は嫌われていたのか……確かに自覚はあったが」


アックア「お前が接触したことのある女なんて、ヴェントぐらいしかいないだろう?」

アックア「だから、そう気を落とすな」

フィアンマ「そ、そうだな」シュン

フィアンマ(実際そこまで女に興味なくても刺さるものだな)

フィアンマ(アックアも嫌われていること自体は否定しなかったし)

オリアナ「お、お兄さん? お姉さんは別にお兄さんのこと嫌ってないわよ」

オリアナ「さっきお兄さんに惹かれたって言ったじゃない」

フィアンマ「そ、そうか」パァ

オリアナ(……大人びたように振舞ってるけど、年相応の表情もあるのね……)

オリアナ「さっきのはあんな態度を取り続けてたら女の子に嫌われちゃうよっていう忠告よん」

フィアンマ「……ふん、俺様はそんな理由で行動を変えたりしたりはしない」

オリアナ「そうね。そういうとは思ってたけど」クスッ

フィアンマ「あと……性奴隷ってなんだ?」

フィアンマ「俺様が雇うと決めた存在をそんな劣悪な職場環境に放り込むわけが無いだろう」ムカ

フィアンマ「俺様を舐めてもらっちゃ困る」

オリアナ「なめる?」ペロリン

フィアンマ「舌引き抜くぞ」ハァ

オリアナ「冗談よ、お姉さんジョークだって」

フィアンマ「お姉さんジョークは俺様には通用しないから諦めるんだな」

オリアナ「そうね」クス


オリアナ「あ、そうそう、プレゼントね」スッ

フィアンマ「ありがとう……って携帯電話か?」

アックア「ガラケーと呼ばれるタイプっぽいな」

オリアナ「そう、それはガラケーよ」

フィアンマ「……英語を無理矢理日本語に訳したみたいな話し方をするな」

フィアンマ「それにしても、なぜこんなものを用意してたんだ?」

オリアナ「私のスペアよん。ここで通信の魔術を使ったら盗聴されかねないでしょう?」

フィアンマ「魔術を使わない連絡用ってことか?」

オリアナ「そういうこと」フフッ

フィアンマ「ふむ……面白いな」ポチポチ


フィアンマ「まあ、俺様レベルの魔術なら盗聴されることもないだろうがな」ドヤ-

オリアナ「お姉さんレベルだと心配なのよ。だからこういう時は科学に頼るの」

オリアナ「私のせいでお兄さんの足を引っ張っちゃうといけないでしょ?」

フィアンマ「……くくくっ、よく考えてるじゃないか」ポチポチ

アックア「確かにお前には盗聴されてはならないような情報に溢れているからな」

フィアンマ「だな」ポチポチ

フィアンマ「まあ、全く使い方は分からないがな」ポチポチ

オリアナ「あ、分からなかったの?」

オリアナ「ここはこうして……」ポチポチ

アックア「ふぁあ……」ゴシゴシ

今日はここまでー!
乙ありでしたー


チュンチュン

フィアンマ「ぬ……朝か」ムク…

アックア「お、起きたか」

フィアンマ「んー」ノビー

フィアンマ「ふう……俺様は早起きだからな」

フィアンマ「にしても椅子で寝たせいか体の節々が痛いな……」モミモミ

フィアンマ「おい、アックア、揉んでくれないか?」ポンポン

アックア「拒否する。ちゃんとベッドで寝なかったお前のせいであろう?」

フィアンマ「冷たいことを言うなよ。俺様達の仲じゃないか」

アックア「俺様達の仲という程じゃないだろう」

フィアンマ「……くくっ、それもそうか」


フィアンマ「ところで、オリアナはどうした?」

フィアンマ「そっちの椅子に座っていたはずだが……」キョロキョロ

アックア「お前と同じで寝落ちしていたから、お前のベッドに運んでおいた」

フィアンマ「は!?」

フィアンマ「なぜそんな余計なことをしたんだ……」

アックア「あれでも一応女だ」

アックア「お前は言っていたよな?」

アックア「俺様が雇う以上、そんな劣悪な労働環境には置かないとかなんとか……」

フィアンマ「……確かにお前の言い分も分かるが……この場合は主人である俺様を運んでおくべきだろう」


アックア「お前がいくら華奢だからといって、男が男を抱き上げてると意味深に見えてしまうだろう?」

フィアンマ(華奢……)

アックア「特にあの女はそういう妄想に走りかねない」

フィアンマ「いや……誰も見てないんだから気にするな! まさか自意識過剰なのか?」

アックア「いや、お前が寝落ちしてからしばらくは彼女は起きていた」

フィアンマ「それはつまり……」

アックア「お前が一番早く寝たということだ」

フィアンマ「……そうだったか……」ハァ

アックア「そのせいで私はオリアナ=トムソンの監視のため起きていなくてはならなくなったんだぞ」


フィアンマ「……それは悪いな」

フィアンマ「だが、この部屋はセキュリティは抜群だって言わなかったか?」

フィアンマ「俺様の許可なしにはドアの開け閉めもできないように魔術的ロックをかけている」

フィアンマ「だから解析されたりしない限り、監視などいらないぞ?」

アックア「それを先に言え!」ブンッ

フィアンマ「お、おい!」

フィアンマ「徹夜明けのイライラを俺様にぶつけるな!!」アセッ


……………………

アックア「ちっ、さすがに建物を壊すのは気が引けるからこの辺でやめておいてやる」アスカロ-ン

フィアンマ「やっと落ち着いたか……」

フィアンマ「これでは聖人というより野蛮人じゃないか」ハァ

アックア「確かに私たちがどちらになれる素質も兼ね備えていることは否定しない」

フィアンマ「自覚あるのか」

アックア「ちっ」ブン

フィアンマ「花瓶を投げるな!」パシッ

フィアンマ「こんなところで第三の腕使っているのを見られたらどうするんだ」

アックア「……」ツーン


フィアンマ「知らないふりか。そんな奴が俺様の監視なんか務められるものなのかね」

アックア「寝ている時も観察しているから問題ない」

フィアンマ「犯罪臭しかしないな」

アックア「変なことを言うな。私のイメージが悪くなるだろ」

フィアンマ「事実なのだから諦めろ」

アックア「……犯罪臭と言えば」

フィアンマ「そこから話を広げないでくれ」

アックア「彼女はお前の寝顔を見てニヤニヤしていたぞ」

フィアンマ「確かに少しは犯罪臭するが、お前の発言の方がよっぽど……」

アックア「まあまあ、この話には続きがある」

フィアンマ「……」


アックア「お前の寝顔を見て言ったことが……」

オリアナ「起きている時はあんなにむすっとしてるのに、寝てると可愛いのね、だったかしら?」ムク

アックア「む?」

フィアンマ「お、起きてたのか?」

オリアナ「ぐっすり寝てたけど、お兄さんたちの喧嘩がうるさくて起きちゃったわ」

フィアンマ「そうか。それは悪いことをしたな」

フィアンマ(第三の腕見られてないよな?)

オリアナ「大丈夫よ」

フィアンマ(心読まれた!?)

オリアナ「男は拳で語り合うものだもんね」

フィアンマ「……そ、そうだな」ハァ


オリアナ「男と女はあんなことやこんなことで語り合うんだけど」ウフフ

フィアンマ「朝からそんな話をするな」

オリアナ「……夜ならいいのかしら?」

フィアンマ「夜だけにしろ、と言っても言うこと聞かないだろう?」

オリアナ「うーん、一応雇われの身だからある程度のことならいうこと聞くわ」

フィアンマ「そうか、なら卑猥なことは一切言うな」

フィアンマ「ピュアな俺様のためにも」

アックア(ピュアな……俺様……)フッフフ


オリアナ「それはお姉さんに死ねって言ってるのと同じよ。だからゴメンね」

フィアンマ「そんなこと言うからアックアに犯罪臭と言えば、とか言われるんだ」

オリアナ「それは仕方ないわ。お姉さんは存在が変態って言われたこともあるくらいだし」

フィアンマ「存在が変態か……簡潔にお前の性質を言い表せて便利だな」

オリアナ「お兄さんに言われるとすごい腹が立つんだけど」ムッ

フィアンマ「そうか。それはその画期的な言葉を作り出した奴に言え」

フィアンマ「俺様としては、そいつを褒めたたえて、それなりの報酬を与えたいレベルだがな」

オリアナ「そこまで言うの!?」

フィアンマ「ああ、自覚を持て」


フィアンマ「……さてと、じゃあそろそろ朝食持って来させるから少し待っててくれ」

アックア「私たちの分はどうなる?」

フィアンマ「アックアの分は普通に持ってきてもらうが……」

オリアナ「……ん?」

フィアンマ「オリアナの分は俺様の分を多めにしてもらって分けるという形でいいか?」

オリアナ「ええ」

フィアンマ「……妙に物分かりがいいな」

オリアナ「……お兄さんと間接キスできるんでしょう?」

フィアンマ「はじめに分けるから無い」


オリアナ「そんなにムキにならないで。寝てる時は可愛いんだから」

フィアンマ「例えそうだとしても起きている時は可愛くないということを覚えておけ」パシッ

アックア「それは?」

フィアンマ「質問ばっかりだな」ムッ

アックア「お前の部屋は初めて入るから今のうちに情報を集めなくてはならないだろう」

フィアンマ「犯罪臭しかしないな……」

アックア「犯罪臭などしないのである」

フィアンマ「一応答えてやるが、これはただの通信礼装だ」フリフリ


アックア「ふむ……あまり見ない形である」

フィアンマ「見たら分かる形にしたら防犯上良くないだろ?」

アックア「なるほど……」

アックア「だが、あんなに強固な守りがあるのに警戒する必要はあるのか?」

フィアンマ「昨日も言ったはずだが、俺様の情報はある種、パンドラの箱でもあるからな」

アックア「パンドラの箱か……言い得て妙だな」

オリアナ「……?」

フィアンマ「じゃあ連絡するから少し待ってろ」

オリアナ「はーい」


………………………………
…………………

フィアンマ「さてと、腹ごしらえも終わったし視察再開するか」

オリアナ「お姉さんはどうしたらいいかな?」

フィアンマ「……」

アックア「とりあえずはここで待たせておけばいいと思うが、どうする?」

フィアンマ「……そうだな」

フィアンマ「俺様がなんとか話をつけてくるから、それまでは待機だな」

オリアナ「分かったわ」

オリアナ「はやく話つけてくれるとありがたいわ」

フィアンマ「ああ。まあ、大して時間はかからないだろう」


オリアナ「じゃあその間にお兄さんのエロ本でも探してようかしら」

フィアンマ「……そんなものは無い」フン

オリアナ「まずはベッドの下ね」

フィアンマ「迎撃術式を作動させておくか」

オリアナ「図星ってことか」

オリアナ「それならゆっくり術の解析でもして待ってることにするわ」

フィアンマ「ふん、できるもんならやってみろ」

フィアンマ「行くぞ、アックア」

アックア「はぁ、大人しくしているんだぞ」

オリアナ「はいはーい、いってらっしゃい。進展あったら電話ちょうだいね」

フィアンマ「進展あったらな」

ガチャ

今日はここまでー!


………アニェーゼ部隊の部屋・跡地………

アニェーゼ「あ! フィアンマさんとアックアさんじゃないですか!」タッ

フィアンマ「ん、アニェーゼか。昨日の魔術師達の移送は終わったんだな」

アニェーゼ「ええ。一日経ちましたし」

アックア「ならなぜこんなところにいるのであるか?」

アニェーゼ「えーっと……それはあなた方に報告でもしておこうかと思いまして」

アニェーゼ「あそこまで手伝っていただいたのに事後報告なしってのは恩知らずかと」

アニェーゼ「でも中々居場所が掴めねぇんで、昨日いた場所を右往左往してたってわけです」

フィアンマ「なるほどな。それは見つかって良かったな」

アニェーゼ「ええ」

アニェーゼ「魔術師達の移送は無事完了いたしました、ご協力ありがとうございます」ペコリ

フィアンマ「ああ。感謝されるほどでもない」フイ

アックア「ふっ、あまり感謝されたことないから恥ずかしいのだな」

フィアンマ「からかうな!」


アニェーゼ「あ、そうそう……」ゴソゴソ

アニェーゼ「これ、ありがとうございました」スッ

フィアンマ「ああ、教皇の紙か」

アニェーゼ「上手く話、通しておきましたよ」ニヤリ

フィアンマ「そうか。それは何よりだ」ニヤリ

アックア「おい、その表情は何なのであるか」

フィアンマ「さあな」フイ

アックア「目を逸らすな、こっちを見るのである」

フィアンマ「おいおい、がっつくなよ。俺様はガールフレンドうんぬんは言ったが、ボーイフレンドはお望みではないぞ」


アックア「そういう意味ではない!」

アニェーゼ「……あ、あはは」

フィアンマ「ほら、苦笑いされているぞ」

フィアンマ「見苦しいものを見せてしまったな」

アニェーゼ「いえ、上層部の方にもこんなおかしな方々……じゃなくて、面白い方々がいらっしゃると知ることができて良かったです」

フィアンマ「おかしな方々、だと?」ガ-ン

フィアンマ(おかしな方々……俺様が? 冗談じゃない)

フィアンマ(もし、万が一俺様がおかしな方々の一員だとしたら、ローマ正教の実質トップはおかしな方が務めていることになるんだぞ!)

フィアンマ(ローマ正教終わりじゃないか)


フィアンマ「……」ブツブツ…

アニェーゼ「あ、あれ? どうしたんです?」

アックア「問題ないのである」

アックア「たまに独り言ぶつぶつ呟いていることがあるからな」

アニェーゼ「それって大丈夫なんですか?」

アックア「もちろん」

アニェーゼ「そ、そういうことにしておきます……」


アニェーゼ「ところで、尋問は順調ですか?」

フィアンマ「……ああ、とても順調だが……」フッカツ

フィアンマ「というか、もう聞き出せることは聞き出しきった」

アニェーゼ「えっ、早くないですか? まだあの女の判断力も落ちてないでしょうに」

フィアンマ「口止め料も払ってない組織の情報を隠してやる義理なんかないって言ってたぞ」

アニェーゼ「うわぁ、そりゃ馬鹿な組織ですね……」

アニェーゼ「そんな奴らに私達が押されてたと思うと悔しいですね……」

フィアンマ「……こういう場合は結果オーライというのではないのか?」

フィアンマ「もちろん次に同じような事があったときは負けることはおろか、押されることすら許されないが……」

フィアンマ「今回の経験は次への糧になるのではないか、と思うぞ」


アニェーゼ「……ずいぶんポジティブですね」

フィアンマ「俺様はポジティブが売りだからな」

アックア「それは絶対にないのである」

フィアンマ「この世に絶対などないさ」

アニェーゼ「ポジティブですか……」

フィアンマ「ああ」

フィアンマ「とりあえずは、昨日俺様が言ったところを中心に、気になるところを少しずつ改善していけば俺様みたいに強くなれるかもしれないぞ」ドヤ

アニェーゼ「いえいえ、あなたのようにローマ正教が趣味の方レベルまで強くはなれませんよ」

アニェーゼ「うちの部隊は皆自由時間は本当に自由に過ごしてますし」

フィアンマ「お、おい、俺様の趣味を勝手に決めるな」

フィアンマ「その言い方だと俺様がローマ正教大好きみたいになるじゃないか」

アニェーゼ「違うんですか?」

フィアンマ「違う!」


フィアンマ「……っ、と、とりあえず報告書だ」バッ

アニェーゼ「っと、昨日の今日なのに結構枚数ありますね……」パラパラ…

フィアンマ「ついつい夜まで話し込んでしまったからな」

アニェーゼ「よ、夜まで話し込んだって、やっぱりローマ正教大好きじゃないですか」……パラパラ

フィアンマ「それは違うと言っているだろ」ムカー

フィアンマ「夜まで話し込んだというのも、別の話に花を咲かせてしまっていたからだ」

フィアンマ「聞くべきことはすぐに聞き終えてしまったのでな」ウンウン

アニェーゼ「……あの女との会話がそんなに楽しかったんですか?」


フィアンマ「いや、むしろいちいち気分を害してくる変態だった、な?」

アックア「気分を害してくるかは知らないが、変態というところは激しく同意である」

アニェーゼ「そ、そうなんですか……」パラパラ

フィアンマ「……ここに書いてあるだろ。性格に難アリって」ピラ

アニェーゼ「あ、本当ですね」

アニェーゼ「って、ここから三十枚くらい性格の問題について指摘し続けてるじゃないですか」パララララ

アニェーゼ「……組織の情報にはどれくらい触れてるんですか」パラパラ

フィアンマ「その束のうち五枚分もないだろうな」

フィアンマ「ほとんどは性格、言葉遣いについて記させてもらった」


アニェーゼ「あ、あはは……」

フィアンマ「問題があるなら言ってくれないと分からないぞ?」

フィアンマ「そういうものを書くのは初めてだからいまいち勝手がわからないんでな」

アニェーゼ「……あの……アックアさんはこれ見て何も思いませんでしたか?」バサバサ

アックア「私はフィアンマが変なことをしないように見張るのが主な……じゃなかった」

アックア「ごほん、私はフィアンマの警護が主な仕事。それゆえその他のことには基本的に口を挟まないのである」

アックア「……だから少し性格について書きすぎじゃないかとは思ったが、スルーさせてもらった」

アニェーゼ「あ、やっぱりおかしいとは思ったんですね」

フィアンマ「なんだか俺様抜きで価値観の共有が行われているんだが……」


アニェーゼ「このまま提出しちまっていいんですか?」パラパラ

フィアンマ「もちろんだ。一応、正式書類の形式はマタイのを盗み見て学んでるからな」

アックア「……」ピク

アニェーゼ「ま、マタイ? もしかして教皇のことですか?」

フィアンマ「……そうだが。何かおかしいか?」

アニェーゼ「……そういえば親戚だって言ってましたね」パラ…パラ…

フィアンマ「ああ。奴……じゃなくて彼は俺様が小さな時から良くしてくれた」フフフ

アックア「そ、そうであったな」


フィアンマ「アックアは昔からこうだったが」

アックア「変なことを言うな」ムッ

アックア(ある程度の嘘は見逃すが、私のイメージを悪くするのはよさないか)ツウシン

フィアンマ(こんなところで魔術つかってるとバレるぞ。自重しろ)ケッ

アックア(その言葉そっくりそのまま返すのである)

アニェーゼ「教皇に良くしてもらってた、ですか……いいですね」パラ…パラ

フィアンマ「まあ、良くも悪くも善良だからな」

フィアンマ「俺様のこの素晴らしい人格を形成するのに一役買っているのは間違いなかろう」

アックア「素晴らしい人格……」クツクツ…


フィアンマ「どうだ? 最後まで目を通せたか?」

アニェーゼ「ええ、まあ、とりあえずは」

フィアンマ「不備などは無いはずだがどうだ?」

アニェーゼ「ええ、それも大丈夫なんですけど……」

フィアンマ「ん? 何かあったか」

アニェーゼ「俺様が彼女を雇用することに決定したってどういうことですか?」

フィアンマ「ああ、それはそのままの意味だ。俺様の手足としてこき使うことにした」

フィアンマ「技量も十分だしな」

アニェーゼ「は、はあ……」


アニェーゼ「良かったですね……」

アニェーゼ「罪人の処遇は拷問官の裁量に委ねることができるっていう規則があるんです」

アックア「そ、そんな規則があったのか」

アニェーゼ「ええ、放免も処刑も拷問官の匙加減一つ。もちろん重罪人は除きますが」

アニェーゼ「だから罪人からの賄賂などがはびこらないよう、拷問官には信心の篤い者が選ばれるんですよ」

アニェーゼ「で、そういう者たちは教皇と神は絶対な人種なんです」

アニェーゼ「だからあの教皇のサインで簡単に説得できたってわけなんです」

フィアンマ「それこそローマ正教大好き人間だな」

アニェーゼ「そうですね。彼らは真性です」

アニェーゼ「私らとは真剣さが違いますし」


フィアンマ「話は変わるんだが、お前、今日暇か?」

アニェーゼ「私ですか?」

フィアンマ「アニェーゼ以外いないだろ。アックアは俺様に勝手にくっついてくるしな」

アックア「言い方が気に食わないのだが」

フィアンマ「少し黙れ」

アックア「……」ムッ

フィアンマ「もし暇なら俺様の視察案内を頼みたいんだが」

アニェーゼ「忙しいって程ではないですけど……」

アックア「案内なら私で十分なのである」

フィアンマ「もう忘れたのか?」

フィアンマ「お前がアニェーゼたちの更衣室に特攻していったせいで大変な目に遭ったことを」

アニェーゼ「いや、更衣室じゃないです」

フィアンマ「あれをもう一度体験させるのは酷だろうと思っての提案だったんだが……」

アニェーゼ「私は全然構いませんよ。あれは確かに悲惨でしたし」ウンウン

フィアンマ「じゃあ決定だ」

とりあえずここまで。
乙ありです!

童貞臭たしかにありますね……




『写メと携帯解説者』



フィアンマ「……」スタスタ

アニェーゼ「あの……私が後ろをついて行って大丈夫なんですか?」

アニェーゼ「案内役の意味を全くなしていないような気がするんですけど」

アックア「さあな。私はもういちいち突っ込むことに疲れた」

アニェーゼ「く、苦労しているんですね」

アニェーゼ「表情が本当に死んじまってますよ」

アックア「ああ、本当に常識はずれな人間の相手をするのは疲れるから仕方がない事なのである」ハァ

アックア「だから放っておいた方が楽なんだが……」チラ


フィアンマ「この部屋にでも突撃でもしてみるか」

フィアンマ「案内役、この部屋には何があるもしくは居る?」

アニェーゼ「そ、その部屋は……!!」

アックア「枢機卿であるペテロ=ヨグティスの部屋だったはず」

フィアンマ「ふむ、まあそれなら構わないだろう……」

アックア「どうした?」

フィアンマ「実は、アイツのことはあまり好ましく思っていないんだよな……」

アニェーゼ「あ、アイツ、ですか?」フルフル

アニェーゼ「枢機卿のことを言ってるんですよね?」

フィアンマ「ああ。アイツなんてアイツでいいんだ」


アニェーゼ「……ここでそんな話してて聞こえたりしてねぇんですか?」

フィアンマ「そりゃ、聞こえているに決まってる」

アニェーゼ「ええ!?」

フィアンマ「というか、あちらさんも必死にこっちの会話に耳を傾けている頃だろうよ」

アックア「分かっていたのか」

フィアンマ「まあな」

フィアンマ「悪口は聞こえるように言ってやらんと陰口になってしまうというのが俺様の持論だ」チラ

フィアンマ「さて……そろそろ待ちくたびれている頃だろうし、入るか」


コンコン

アニェーゼ「あの、ノックした後に言うのもなんですが」

フィアンマ「なんだ?」

アニェーゼ「私みてぇなただのシスターが入ってもいいんでしょうか?」

ギイイイイ

フィアンマ「いいんじゃないか? 扉も勝手に開いたし」チラ

フィアンマ「恐らくようこそということなんだろう」

アニェーゼ「て、適当じゃないですか!!」

フィアンマ「まあ、そんなに固くなる事は無い。マタイの奴に比べたら奴はただの小者だ」


カツッ

フィアンマ「久しぶりだな」スタスタ

ペテロ「さっきまで私の陰口を言っていたお前がそんなことを言うとは思って無かったな」

フィアンマ「俺様は人の予想を裏切るのが趣味なんでね」

フィアンマ「あと、もう一度言っておくが、聞こえるような悪口は陰口ではない」

ペテロ「それはお前の持論でしかないだろう」

アニェーゼ(空気重っ、今すぐ帰りてぇんですけど……)

ペテロ「おっと、自己紹介が遅れたな」

フィアンマ「いや、いらないけど」

ペテロ「いいや、初めましての者もいるから一応な」


ペテロ「フィアンマから紹介されていると思うが、私がペテロ=ヨグティスだ」

ペテロ「よろしく」

アックア「初めまして、だったか。私はアックア。所属は……」

ペテロ「それはいい。事情は噂で聞いてるからな」

フィアンマ「お前には噂を教えてくれる相手などいないだろう?」ククッ

ペテロ「お前ほどじゃないさ」

ペテロ「して、そちらのお嬢さんは?」

フィアンマ「無理していい人キャラ作る必要もないだろう?」

フィアンマ「今までの会話のせいで何の意味もなくなっているぞ」

ペテロ「……はあ、別にそんなつもりは全くなかったが」


ペテロ「もう一度聞かせてもらうが、君は?」

アニェーゼ「アニェーゼ=サンクティスと申します」

ペテロ「ふむ、昨日の異教徒集団殲滅戦にあたったアニェーゼ部隊の指揮官ってことかな?」

アニェーゼ「はい。昨日は襲撃を許してしまい……」

ペテロ「いやいや、謝る事は無い。任務はこなしたのだからな」

ペテロ「今回の件は諜報部隊に問題があっただけだ」

ペテロ「ま、たまたまフィアンマとアックアがいてよかったな。おかげで組織ごと潰される事は無かったんだから」

フィアンマ「む? まさか今回失敗したら潰す気だったのか?」

ペテロ「さあ? そんな小さなことに私は関与する気はないさ」


ペテロ「だが、その程度の任務の達成さえできない組織は淘汰されるのがこの世の理だ」

フィアンマ「そうか。ならこの世の理にならうなら、組織の戦力低下も厭わないのだな」

ペテロ「その辺はもちろんよく考えて切り捨てていくべきだとは思っている」

ペテロ「組織力の低下はそのまま組織の瓦解につながる」

フィアンマ「まあ、その考えを否定する気は無いが……」

ペテロ「そんなことより何をしに来たんだ?」

ペテロ「その様子を見ると私に何か大事な用があるわけでもないらしい」

フィアンマ「視察だ」


ペテロ「……なるほど、どおりで教皇がずっとそわそわしているわけだ」

ペテロ「私がそんなことを頼んでやる義理はないが、もう少し奔放な行動は控えたらどうだ?」

フィアンマ「そんなの俺様が気を使う必要はないな」

フィアンマ「奴にだされた条件は守っているのだから文句をつけられるのはおかしいだろう?」

ペテロ「それもそうか」

ペテロ「……話は戻るが、視察とは言ってもここは見るものなどないぞ?」

フィアンマ「いやいや」パシャパシャ

ペテロ「け、携帯電話?」


フィアンマ「ああ、カメラ機能付きのな」パシャ

ペテロ「っ、フラッシュ!?」バッ

フィアンマ「何故だろうな」カツカツ…

ペテロ「……何がだ」

フィアンマ「みな枢機卿の名を聞くとアニェーゼのように硬直してしまう」

フィアンマ「だが、枢機卿といえども自分たちと変わらない人間だろう?」

フィアンマ「だから一般信徒にもそれを理解してもらい、親近感を持ってもらうための掲示物でも作成しようかと思ってな」

フィアンマ「そのための写真撮影だ」

ペテロ「親近感を持たれる必要などない」

フィアンマ「そうお固いこと言うなよ。頭が固いのはいいことではないぞ」

ペテロ「だが……」

フィアンマ「……誰かさんは言ったらしい。神のもとではみな平等とな」パシャパシャ


フィアンマ「人気になるのは悪くないと思うぞ?」パシャパシャ

フィアンマ「良いことはあれど、悪いことはない」

ペテロ「例えば?」

フィアンマ「くくっ、やはり食いついてくるか」

フィアンマ「まあ、一番わかりやすい例を挙げるとすれば、人気がある方が次の教皇の椅子を手に入れやすいんじゃないか?」コソ

ペテロ「教皇選挙は一般人に投票権はない」

フィアンマ「ふん、そんな当然の事を言うな」

フィアンマ「他の枢機卿の奴らだって権力大好きなギラギラした眼の奴より人望厚いギラギラした眼の奴に投票したいに決まってる」コソ

ペテロ「私の目はギラギラしている前提なのか?」

フィアンマ「もちろん。信じられないなら鏡でも見てみるといい」パシャパシャ

フィアンマ「あ、この画像でも良く分かるぞ」スッ


アニェーゼ「な、何を話してるんでしょう?」コソ

アックア「さあ? だがフィアンマのことだ。多分黒い話でもしているのだろう」

アニェーゼ「え、そういう人なんですか?」

アックア「初めからそうだ。まあ、今回の視察自体は黒い目的の為ではなさそうだがな」

アニェーゼ「つまり、純粋にローマ正教を見て回ろうと思ったけどついついいつもみたいなことしちゃった、みたいな感じですか
ね?」

アックア「いつもみたいなことか。そんな感じかもしれないな」

アニェーゼ「へぇ、意外ですね」

アックア「それは見かけのイメージに騙されているだけである」

アニェーゼ「見かけのイメージですか?」


アックア「認めたくはないが、フィアンマは少しクセがあるものの、基本はただの爽やか系美形である」

アニェーゼ「あ、認めたくねぇんですね」

アックア「……まあ、それ騙されないよう注意するべきであるな……うん」

アニェーゼ「……確かに人は見かけじゃないって言いますね」

アックア「それに、普段はアニェーゼ部隊の視察の時のように良い人系な振る舞いはしない」

アックア「……と教皇は言っていた」

アニェーゼ「あ、伝え聞いた話なんですね」

アックア「まあ、意味もなく相手に害をなすことはないはずだから安心してもいいだろう」

アニェーゼ「はぁ、それ聞いて安心しました」

アックア「……そうか」

アックア(逆に言えば、意味があれば他人の犠牲などは厭わないんだが……ま、それを言う必要はないな)


ペテロ「どうだ、良い写真は撮れたか?」

フィアンマ「……ま、まあまあだな」

フィアンマ(……携帯電話の画質で良い写真なんか撮れるわけがないだろう)

フィアンマ(いや、電話のせいじゃないな。俺様の技術不足も目立つ)

フィアンマ(逆光、手ブレ、指の写り込み……隠しておかなくては)

ペテロ「ちょっと見せてみろ」スッ パシッ

フィアンマ「なっ、返せ!」

ペテロ「……」

フィアンマ「おい、勝手に見るな!!」


ペテロ「ほう、この写真とかいいじゃないか」スッ

フィアンマ(逆光の!?)

ペテロ「さすがと言うべきか、普段見ることのできない技法が使われているみたいだな」

ペテロ「被写体の輝きを写真に投影するという技か?」

フィアンマ(そんな技ないぞ!! だが……うまく誤魔化せるかもしれない)

フィアンマ「よ、よく分かったな。俺様の技を見破るとは見上げたものだ」

ペテロ「ふっ、これでも芸術センスはあるほうだと自負しているからな」

フィアンマ(絶対に言わないが、お前の芸術センスは皆無だ)

アックア「どんな写真なのだ?」

ペテロ「これだ」スッ


アックア「……」

アニェーゼ「っ……」

アックア(逆光……)

アニェーゼ(え、逆光じゃねぇんですか?)

フィアンマ(お前ら、絶対に言うなよ?)

フィアンマ「そ、そろそろ返せ」

ペテロ「そうだな。このレベルの技術を持っているならカメラマンを志せば良かったのにな」スッ

フィアンマ「いやいや」

フィアンマ「今の生活は俺様の能力にぴったりだからほかの生活なぞ考えられないさ」

フィアンマ「これはあくまで遊びだ」

ペテロ「確かに今のはお前にとって天職か」

ペテロ「お前の力はそのためのものだと言って間違いないしな」

フィアンマ「そういうことだ」ウンウン


ペテロ「では、張り紙楽しみにしているからな」

フィアンマ「あ、ああ……」コンワク

アックア「なんだかんだで乗り気なのか」

ペテロ「せっかく撮ったのだから支持率上昇のために使って欲しいだろう?」

フィアンマ(やっぱりギラギラした目をしているではないか)ハァ

フィアンマ「分かった。俺様が言い出したことだし何とかする」

ペテロ「ああ、頼んだぞ」

フィアンマ「……じゃあ、次行くか」カツカツ

アックア「それではまた」ペコ

アニェーゼ「失礼しました」ペコ

ギイイイイイ バタン

今日はここまで!
おつありですー

声は……脳内再生できませんね……


アニェーゼ「はぁ、緊張した……」ヘナヘナー

フィアンマ「そんなにか?」

アニェーゼ「私みたいな普通のシスターが枢機卿に会うことなんて滅多にないので大目に見てくだせえ」アハハ…

フィアンマ「ふーん、やはりそういうものか」

アックア「私も初対面だから少し緊張していたが、大したことなかったな」

アニェーゼ「聖人と普通のシスターじゃ違うんです!」プン

アックア「……すまなかったのである」

フィアンマ「ふっ、変なこと言って悪かったな」

アニェーゼ「いえいえ」


フィアンマ「さて、次行くか」デンゲンオン

アニェーゼ「どこに行くんですか?」

フィアンマ「……ん? 気の向くままに、風の吹くままに、だ」ポチポチ

フィアンマ「俺様もどこへ向かってるかは知らないさ」ポチポチ

アニェーゼ「風は吹いてませんよ」

フィアンマ「……物の例えだ」ポチポチ

アックア「ずっと携帯をいじっているようだが、何をしてるんだ?」

フィアンマ「画像の選別だ」

フィアンマ「ブレてたり、逆光になってたりするモノを消している」ポチポチ


アニェーゼ「……もしかして、本当に撮った写真を張り紙にするつもりですか?」

フィアンマ「そんなわけないだろ」

フィアンマ「綺麗な写真で面白いコラ画像を作って楽しむだけだ」ポチザザザザザッ

フィアンマ「暇があったら張り紙も作ってやってもいいがな」

アックア「そんなことの為に携帯を使いこなすのか……」

アニェーゼ「ガラケーでコラ画像って作れるんですね」カンシン

フィアンマ「まあな。俺様の努力の結晶だ」

アニェーゼ(なぜガラケーなんだろう)

アニェーゼ(時代はスマホなのに……?)


プルルル

アニェーゼ「鳴ってますよ?」

フィアンマ「そ、そんなこと分かってる!!」プルルル

フィアンマ「……」アセアセ

アニェーゼ「出ないんですか?」

フィアンマ「……どうやって応答したらいいのかわからないんだが!!」プルルル

アニェーゼ「……ちょっと見せてください」スッ

フィアンマ「どうしたらいいんだ?」プルルル

アニェーゼ「……ここを一回押したら出られるはずです」

フィアンマ「こ、ここだな?」

アニェーゼ「ええ」

フィアンマ「こんな時にかけてくるだなんて……オリアナか?」ピッ


???『はぁーい? あ、やっと繋がった』

フィアンマ「えっと……どちら様ですか」

???『ヴェント、前方のヴェント』

フィアンマ「……そうか。じゃあ切るぞ」

ヴェント『ちょっと、え?』

ヴェント『何十回もかけてようやく繋がったのにそれはひどくなあい?』

フィアンマ「何十回もだって?」

フィアンマ「……」

ヴェント『え、沈黙?』

フィアンマ「……お前は俺様のストーカーか何かか?」

ヴェント『繋がらないんだから仕方がないでしょ』


フィアンマ「……怖いんだが」

ヴェント『いや! だからストーカーじゃないから!』

フィアンマ「じゃあ質問だが、なぜ俺様の番号を知ってるんだ?」

ヴェント『そりゃアンタんとこの新入りさんに聞いたからに決まってるでしょ』

フィアンマ「は?」

フィアンマ「いや、オリアナは俺様の部屋に閉じ込めておいたはずだが……?」

ヴェント『そうだね』

ヴェント『でも解析させてもらったのさ』

フィアンマ「な、どういうことだ!」


ヴェント『そのまんまの意味だよ』

ヴェント『最近視察を称して、遊び歩いてるらしいじゃん?』

フィアンマ「視察だ、遊び歩いてなどない」ムカ

ヴェント『視察だろうと遊びだろうと私にとってはどうでもいいんだけどね』

ヴェント『とにかく、少し相談したいことがあって、アンタの部屋に行ったんだけど、いつもどおり強固なセキュリティがあった』

フィアンマ「ああ」

フィアンマ「だが、お前もいつもはそれを突破しようとなどしないだろう?」

ヴェント『そうだね……まあ、ちょっと私の話を聞きな』

フィアンマ「拒否だ」

ヴェント『強制だよ』


………フィアンマの部屋の前………

ヴェント「……」コンコン

シーン

ヴェント「……」ガチャガチャ

シーン

ヴェント「……留守だなんて珍しいこともあるもんだ」ハァ

ピーン

ヴェント「……ん? 魔力?」チラ

ヴェント「……」

ヴェント「気のせいじゃないか……」

ヴェント「でもアイツの魔力ではないし……」

ヴェント「だけど、自分の部屋においそれと他人を招くような奴でもなかったはず」

ヴェント「……よし、こうなったら突き止めないと気が済まないね」


ヴェント「……まあ、アイツの魔術だしね、そう簡単に解呪できるわけもないか」

ヴェント「どんな系統の術を重ね掛けしてるのかは何となくわかるんだけど……解く方法はサッパリだ」

ヴェント「……いや、待てよ?」

ヴェント「中の人物にコンタクト取れりゃいいんだから、防音の部分だけ取り除けばいいのか」

ヴェント「中の人ー? 聞こえてんなら少し手伝ってくんないかなぁ?」

ヴェント「アイツが部屋ん中入れるくらいだし相当の手練だと思うんだよね」

ヴェント「まあ、無理にとは言わないけど」

ヴェント「手伝ってくれたらそれなりの見返りは保証してあげる」

ヴェント(……反応ありか。よし、行ける気がしてきた)スッ


ヴェント「よしっ、とりあえず防音だけは突破だ……」フゥ

オリアナ「どうかしらー? 声届いてる?」

ヴェント「良好だよ」

オリアナ「そう。じゃあひとまずお疲れ様ね」

ヴェント「お互い様でしょ」

オリアナ「それもそうか」クスッ

オリアナ「ところで、突然聞くのも失礼かもしれないけど、どなたかしらん?」

オリアナ「お兄さんの知り合い?」

ヴェント「うーん……」


ヴェント「上手い言い方が浮かばないから、先に教えてくれるとありがたいんだけど」

オリアナ「そうね、お姉さんとしたことがうっかりしてたわ」

オリアナ「お姉さんはオリアナ=トムソン。オリアナとでも呼んでちょうだい」

オリアナ「ただの魔術師なんだけど、昨日お兄さんに拾われて雇われたところ」

オリアナ「よろしく」

ヴェント(ただの魔術師だって?)

ヴェント(あのプライドの塊であるフィアンマがただの魔術師なんか雇うとは考えづらいんだけど……)クビカシゲ

ヴェント「私はヴェント」

ヴェント「厳密には違うけど、フィアンマの同僚だと考えてくれればいいかな」

オリアナ「ど、同僚? あの堅物そうなお兄さんに同僚がいるなんて驚きね……」

ヴェント「堅物か……ま、アイツが人にどう判断されようと知ったことじゃないか」


ヴェント「で、オリアナはどうしてその中に閉じ込められてるのかな?」

オリアナ「……まだ信頼できる実績がないからかしらね?」

ヴェント「へぇ、自分で雇っておきながら信頼できないとは、笑い草だね」

オリアナ「……雇われることになった経緯が経緯なだけに、信用してよ、とは言えないわね」フフ…

ヴェント「ふーん、まあアイツが人を信用することなんてそうそうないから、落ち込むことはないさ」

オリアナ「落ち込んでなんかいないわよん。まあ、多少萎えてはいるけどね」

オリアナ「そんなことより、ヴェントさんはどんな用があってここに来たのかしら」

ヴェント「……フィアンマに少し話したいことがあってね」

オリアナ「話したいこと……それなら電話すればいいんじゃない?」



ヴェント「電話? アイツは電話なんか持ち歩いてなかったはずだけど……?」

オリアナ「今は持ってるはず、とりあえず番号は教えるわね」

ヴェント「番号はってどういうこと?」

オリアナ「番号を教える代わりに……」ゴニョゴニョ

ヴェント「へぇ……それならやってやるしかないか」


ヴェント『……こんな感じで電話番号を手に入れたわけだ』

フィアンマ「こんな感じで、じゃないだろ」

フィアンマ「なぜ二人がかりで俺様の努力の塊を崩しにかかってるんだ!」

ヴェント『だってアンタが人を部屋に入れるなんて気になるじゃないか』

フィアンマ「……いよいよ俺様が一人ぼっちみたいになってきてるんだが……」

ヴェント『神の右席の中では奴の部屋は魔境だ、とか奴が認めた者しか入れない、とか言われてるよ』

フィアンマ「……おい、誰だ、そんなふざけたことを言い出したやつは」

ヴェント『誰ってわけじゃないさ。自然に流れはじめた噂だよ』

フィアンマ「ず、ずいぶん悪意に満ちた噂だな」メキッ


アニェーゼ「あ、携帯が……」

アックア「相当怒らせるようなことを言ったんだろう」

アニェーゼ「フィアンマさんをあそこまで怒らせるとは、一体何者なんでしょうね」

アックア「いや、怒らせるぐらいならフィアンマの周囲にいる奴はみなやってのけるから、それだけで判断するのは難しいな」

アニェーゼ「え」

アックア「フィアンマの周りにいる奴は私も含めてみなクセがある奴ばかりだからな」

アックア「あれくらいなら度々ある」

アニェーゼ「そ、そうなんですね……」


アックア「まあ、電話から漏れ聞こえる声を聞けば誰からの電話か判断するのは容易だがな」

アニェーゼ「え、聞こえるんですか?」

アックア「聖人だからな」

アックア「普通の人間より聴力は優れている」

アニェーゼ「へぇ……電話相手は誰なんですか?」

アックア「……この声はヴェントだな」

アニェーゼ「ヴェント? 女の人ですか?」

アックア「ああ、かなり面白い魔術を使う、フィアンマの同僚といったところか」

アニェーゼ「フィアンマさんの同僚……確かにクセがねえとやってられないでしょうね」

アックア(……私も同じ立場なのだがな……)


フィアンマ「アックア」ギロ

アックア「なんだ?」

フィアンマ「俺様の部屋の噂は知ってるか?」

アックア「当然だ。だからこそあまりに普通の部屋で驚いていたのである」

フィアンマ「……そうか」

フィアンマ「なら今度は俺様の部屋は普通だと広めておけ。何なら画像も渡す」

アックア「……努力しよう」

アックア(……自分の噂とか気にするのであるな……)


フィアンマ「……で、オリアナは電話番号の代わりに何を要求したんだ」

フィアンマ「どうにも嫌な予感しかしないんだが……」

ヴェント『大したことじゃないから気にしないで』

フィアンマ「……大したことじゃないなら言ってもらおうか」

ヴェント『……はぁ、女の好奇心にいちいち口を挟むなんて野暮だね』

フィアンマ「あいつは女である前に部下だ」

フィアンマ「しかも俺様の部屋で何かをしているとなったら把握しておきたくなるのも当然だ」ケッ

ヴェント『……男の部屋に入った時の定番、ブツ探しの手伝いに決まってる』

フィアンマ「ブツ探しの手伝いだって?」


フィアンマ「……ブツが何なのかは置いておいて、お前は外にいるんだよな」

ヴェント『もちろんさ』

ヴェント『これ以上、無理矢理ドアの防御を突破しようとしたら、迎撃術式が作動してしまいそうだからね』

フィアンマ「はぁ……だよな。少しは安心した」

ヴェント『なぜそんなことを聞くのかな、俺様のセキュリティには自信があるんじゃないの?』

フィアンマ「万が一ということがあったら困るからな」

フィアンマ「後で脆弱性を確認した上で、もう二度と突破されないよう、穴を埋めておくから覚悟していろ」

ヴェント『別に普段はそんなことしないし、どうでもいいんだけど』

フィアンマ「……とりあえずセキュリティ面では当面の危機は去ったらしいから置いておこう」


ヴェント『そろそろ私から話してもいいでしょう』

フィアンマ「……そうだな、少し話が一方的過ぎたかもしれない」

フィアンマ「自由に話せばいい」

ヴェント『結局のところなんで彼女を雇ったの?』

フィアンマ「自由に使える部下を確保するためだ」

フィアンマ「他意はない」

ヴェント『……アンタの他意はない、ほど信頼のおけない言葉はないね』

ヴェント『誤魔化さないで正直に言いな。女の勘は誤魔化せるもんじゃない』


フィアンマ「……お前にも女の勘などがあるのだな」クツクツ

ヴェント『話を逸らそうとしたって無駄さ』

フィアンマ「……いいだろう、それなら今からそっちで話してやる」

ヴェント『え、こっちで?』

フィアンマ「ああ、どうせまだ俺様の部屋の前で色々してるんだろ?」

フィアンマ「ブツ探しやら何やらは近くにいないと何もできないだろうからな」

フィアンマ「それを上司として、被害者として、しっかり叱ってから話してやる」

ヴェント『ちょ、待って』ピッ



フィアンマ「アックア、アニェーゼ、行くぞ」

アックア「だいたい把握した。まあ、今回は奴にも非があるのである」

フィアンマ「奴にも、というか、奴にしかないだろ」

アニェーゼ「あの……えっと……」

フィアンマ「……心配はいらない。ヴェントの話を直接聞いてやるためという建前もあるからな」フッ

アニェーゼ(なんの話してるんです?)

フィアンマ「ん? なぜそんなポカーンとした顔をしているのだ?」

フィアンマ「アニェーゼが怯える必要はない」

フィアンマ「ヴェントは装飾が異常だから嫌悪感を持つかもしれないが、そこまで怖くはないぞ」

アニェーゼ「……あの」

フィアンマ「なんだ?」

アニェーゼ「事の顛末が分からないんですけど……」

フィアンマ「それは……済まなかった」

今日はここまで!
おつありですー

アンデルセン神父の逆鱗に触れ、フィアンマが狂気を味わうはめに


………………………

フィアンマ「というわけだ」

アニェーゼ「ブツ探しって何なんでしょうね」

フィアンマ「それは……俺様も知らないから聞きに行くんだ」

アックア「嘘は感心しないぞ」

フィアンマ「黙れ」

アニェーゼ「アックアさんは知ってるんですか?」

アックア「この世には知らない方がいい物もあるのである。そう私は思うから今回は
フィアンマに加担させてもらう」

アニェーゼ「知らない方がいい物……?」

フィアンマ「それが女に露見したが最後、俺様のイメージは崩壊してしまうだろう」グッ

フィアンマ(だが、俺様もなんだかんだ言って年頃の男なんだがな……)

フィアンマ(体裁を保つのも面倒なものだ……)ハァ


アニェーゼ「……ブツ探し、手伝いたいですね」ボソッ

フィアンマ「そんなこと言ってると置いていくぞ」

フィアンマ「わざわざ敵を増やすような真似はしたくないからな」フン

アニェーゼ「い、いえ! 冗談ですよ!」

フィアンマ「信用ならないな」ジト-

アックア「裏切ったら許さないぞ?」

アニェーゼ「裏切りませんって!!」

アックア「それならいい」

アニェーゼ(あまり仲が良さそうには見えない二人がブツ探しの件では半端じゃないくらいの連携をとっている……)

フィアンマ「男という名の運命共同体だからな」

アックア「被害が私にも拡大しては困るのである」

アニェーゼ「……そうですか」ハァ


………フィアンマの部屋の前………

ヴェント「次はどんな術がある?」

オリアナ「うーん……解読するから待っててねん」ブツブツ…

フィアンマ「間に合ったか」ザッ

ヴェント「うわ、急いだけど間に合わなかったか……」チッ

アックア「もうやめるのである」ヌッ

ヴェント「アックアまで!?」

ヴェント「二対一は卑怯じゃない?」

フィアンマ「ふん、どうせならテッラを呼んでもいいんだぞ?」

ヴェント「ちっ、オリアナ! フィアンマが帰ってきたよ」

オリアナ「聞こえてるわ。でも、やりきらないと、女がすたる!」

フィアンマ「すたれていいからやめろ!!」


ガチャ

オリアナ「か、帰ってきちゃったわね」

オリアナ「ヴェントさんにも手伝って貰ったのに……お姉さんの負けよ」ガクッ

フィアンマ「ふん、俺様の魔術に勝負を挑もうとすること自体無謀なのさ」

フィアンマ「もう少し腕を磨いてから再挑戦するといい」ククク

オリアナ「……そうね。二人なら何とかなるかもって少し舐めてたわ」

フィアンマ「だから舐めるなと言っただろう?」

フィアンマ「ヴェントもな」

ヴェント「ぐっ……」


アックア「……ということは、まだ見つかってなかったか」

フィアンマ「ああ、ここで見つかっていたら皆を道連れにしてしまいかねないからな」

アックア「……とりあえずは安心ということであるな」ハァ

オリアナ「お姉さんの探索能力でも見つからないなんて……」

オリアナ「本当にこの部屋にはブツなんて存在しないんじゃないかと疑いたくなるわね……」

オリアナ「いや、それは男じゃないか」

フィアンマ「存在するわけがない。というか、アニェーゼの教育によくないからよせ」

オリアナ「アニェーゼ?」

フィアンマ「俺様達が世話になったシスターだ」

フィアンマ「……あの戦闘の時にいたシスター軍団のリーダーだな」

オリアナ「ああ……あの杖を持った……」ナットク


アニェーゼ「おお、これがフィアンマさんの部屋ですかー」トトトッ

ヴェント「シスター? この娘はいったいどうしたんだ?」

フィアンマ「……俺様がオリアナに説明してたのを聞いてなかったか?」

ヴェント「あまりの悔しさに打ちひしがれてたし、あまりに普通の部屋で驚いてたから」

フィアンマ「もう一度だけ言うからちゃんと聞いていろ」

フィアンマ「……俺様達が昨日から世話になっているシスターだ」

アニェーゼ「アニェーゼと申します、よろしくお願いします」ペコ


ヴェント「へぇ、フィアンマが素直に世話になったって認めるとはね……相当すごいことをやってのけたってことかな?」

アニェーゼ「い、いえ、むしろ私たちの方がお世話になりました」

アックア「謙遜は不必要である。フィアンマの無茶な要望にもある程度応えてくれて……」

アックア「少し申し訳ないと思うくらいである」

フィアンマ「申し訳ないとまで言わなくてもいいだろう!」

オリアナ「あの……楽しく談笑している所申し訳ないんだけど……」

前方・右方・後方「楽しく談笑などしてない!!」

アニェーゼ(ハモった!)


オリアナ「お兄さんたちは何をしに帰ってきたのかしらん?」

フィアンマ「俺様の部屋にいつ帰ってこようと俺様の自由だろ」

オリアナ「そうだけど、理由を聞きたいなって思っただけよ」

オリアナ「もしかしたらお姉さんと刺激的な時間を過ごしたくなったのかもしれないでしょ」

フィアンマ「……それはない」ハァ

アニェーゼ「し、刺激的な時間!?」

ヴェント「……確かに教育によくないね」

オリアナ「あ、お嬢ちゃんにはまだ早かったかしらね」


フィアンマ「……答えるから黙っていてくれないか?」

オリアナ「もう、最初からそう言ってくれればいいのに」

フィアンマ「……ヴェントの相談とやらを受けてやろうと思ってな」

フィアンマ「ついでにブツ探しをする輩を潰して、オリアナを雇った理由を話してやろうと思ってきた」

ヴェント「ついでに、の使い方を間違えているみたいだね」

フィアンマ「安心しろ、わざとだ」

フィアンマ「本当はブツ探しを止めるのが最優先事項だった」


フィアンマ「後はどうでも良かった」

アックア「であるな」ウン

アニェーゼ「止められて良かったですね」

フィアンマ「ふふふ、そもそも俺様の魔術は何人かで解読しようとしてできるほど脆弱じゃないのさ」

フィアンマ「だから、本来なら心配いらないんだが……」

フィアンマ「自信があってもやはり不安はつきもの。こればかりは人間の性というものなのだろうな」

オリアナ「ここでブツ見つけることができたならお嬢ちゃんみたいな純粋な子も、男の本性を知ることができたのに……」

フィアンマ「それは残念だったな」

フィアンマ「俺様たちは安心したという気持ちしか無いがな」


ヴェント「……じゃあそろそろついでに入るとしよう」

フィアンマ「ヴェントの相談だな」ウン

ヴェント「いや、オリアナを雇った理由」

アニェーゼ「確かに気になりますね」

アックア「……」

オリアナ「お、お姉さん?」

フィアンマ「扱いやすい部下が欲しかったからだと言ったろう?」

フィアンマ「アックアはとてもじゃないが、扱いやすいとは言えないからな」

アックア「否定はしないのである」


ヴェント「本音のところはどうなんだ?」

ヴェント「アンタが部下として普通の魔術師を雇うとは、意外だよ」

フィアンマ「普通の魔術師? いやいや、あれはただの変態だ」

フィアンマ「ただ、その潔さを気に入っただけさ」ククッ

ヴェント「潔さ、か」

オリアナ「ふふふ、潔いだって」

アニェーゼ「ただの変態とも言われてましたけどね」

オリアナ「ダメダメ、そこは突っ込むところじゃないのよん」

アックア「別の意味に聞こえるのである」ズーン

フィアンマ「アックア、いい加減慣れろ」ハァ

アックア「そ、そうだな……」


ヴェント「潔いって絶対褒め言葉ではないよね」

フィアンマ「褒めてるに決まってるだろう?」フン

フィアンマ「それよりも早くお前の相談とやらを聞きたいのだが?」

アックア「ここで聞くのか?」

フィアンマ「俺様もここで答えたんだから当然だろう」

ヴェント「別に大したことじゃないんだけどね」

フィアンマ「なら、さっさと言うんだな」

ヴェント「なぜ視察なんてしようとしたんだ?」

フィアンマ「それは相談じゃなくて質問じゃないか」

ヴェント「……それもそうだね」


ヴェント「本当は別に話があったんだけど、どうでもよくなっちゃったのさ」

フィアンマ「ふーむ、まあ確かに突然視察するぞ、とか言い出したら不審だもんな」

ヴェント「そうそう、遊び歩いてるわけじゃないって言い張るんだし、それなりに理由はあるんでしょ?」

アニェーゼ(ローマ正教の中核を担うだとか何とか言ってましたっけ……?)

オリアナ(そういえば聞いた事なかったわね)

アックア(今回はどう誤魔化すのか見物であるな)フム

フィアンマ「……」

フィアンマ(腹をくくるしかないみたいだな)

フィアンマ「俺様が視察をしようと言いだした理由は……」


フィアンマ「見識を広めるためだ」

オリアナ「へぇ、お兄さん向上心あるのねえ」カンシン

アックア(ガールフレンド云々はどうした!?)

アニェーゼ(まあ、そうでしょうね)

ヴェント(将来のために情報を仕入れるって意味か)

フィアンマ「今まで言っていたのはほとんど建前だ」

フィアンマ「別に隠す必要もなかったがな」

オリアナ「ならお姉さんもお兄さんに倣ってブツ探しに精を出さなくちゃならないわね」

ヴェント「そうね」ウン

アックア「それはおかしいのである!!」


フィアンマ「言いたいことがそれだけなら俺様たちは視察に戻るが、もう何もないか?」

オリアナ「無いわ」

オリアナ「お姉さんはブツ探しに戻らないと」

ヴェント「私もないね」

フィアンマ「そうか、オリアナは……やっぱりまだここにいろ」

オリアナ「言われずとも」ニコ

フィアンマ「……じゃあ、オリアナ以外皆部屋から出ろ」

フィアンマ「ロック掛けるから」

ヴェント「はいはい……」スタスタ

今日はこんなところで。
>>186
Amen




『趣味探し』



アニェーゼ「オリアナさん置いてきてもよかったんですか?」

フィアンマ「いいんだ。ブツ探しに熱中してるみたいだし、特に仕事もないからな」

アックア「じゃあ、次はどこへ行くのであるか?」

フィアンマ「風の吹くまま、気の向くまま……と言いたいが」グウ

アニェーゼ「お腹が空いたってことですね」

フィアンマ「そういうことだ」

アックア「開き直られると少しイラッとするな」

フィアンマ「人間の生理現象なのだから仕方がないだろう?」

フィアンマ「恥ずかしがるというのも俺様らしくないしな」


アックア「……確かに恥ずかしがっているのは少し違和感があるな」

アニェーゼ「でしたら食堂行きませんか?」

フィアンマ「食堂か」

アニェーゼ「私もお腹減ってきましたし」アハハ…

アックア「賛成である」

フィアンマ「……お前も人のこと言えないじゃないか」ジロ

アックア「私はお腹を鳴らしたわけではない」グウ

フィアンマ「……くくっ」

アニェーゼ「強がらなくてもいいんじゃないですか?」


アックア「強がってなどいないのである!!」

フィアンマ「その言葉が強がりだということの何よりの証明だ」ビシッ

アニェーゼ「ですね」

アックア「っ……」

フィアンマ「さて、行くか」

フィアンマ「案内頼むぞ、アックアは今使い物にならないからな」

アニェーゼ「了解です」

アックア「お、置いていくな!」ダッ


………食堂………

フィアンマ「ほう、ここが食堂か……昼時だからか混んでいるな」

アニェーゼ「初めてですか?」

フィアンマ「そうだな」

フィアンマ「特に外へ出る理由がない時は基本的に引きこもりのような状態だからな」

アックア「飯も人に運ばせるという堕落ぶりである」

フィアンマ「ほほう? つまりお前も堕落しているということか」

フィアンマ「聖人様ともあろうお前が!」

アックア「なぜそうなるのだ!」

フィアンマ「今日の朝食、忘れたとは言わせないぞ」


アックア「っ! 一回はセーフだ」

フィアンマ「くくっ、子供の言う三秒ルールみたいに幼稚だな」

フィアンマ「この場合一発でアウト、レッドカードだ」

アックア「いや、セーフである!」

フィアンマ「……堕落というものは一度身を委ねてしまえばずるずると引き込まれて行く」

アックア「引きこもりには言われたくないな」

アックア「お前の方が堕落しているのである」

フィアンマ「ふっ、やると思ってたぞ。話題転換」

フィアンマ「誰でも自分が窮地に追い込まれるのは避けたいものだしな」


アニェーゼ「あの……大丈夫ですか?」

フィアンマ「いつも通りだ」

アックア「っ……」

フィアンマ「引きこもりという言い方が悪かったな……」

フィアンマ「一応言っておくが、俺様は仕事はこなしているし、バチカンの辺りを散歩したりもしているからな」

アニェーゼ「それで引きこもりとか言ってたら本物に叩かれますよ」

フィアンマ「そうか? まあ、叩きたければ叩けばいいさ」フッ

アックア「……そろそろ食べないか」

フィアンマ「む、そうだな、待たせて悪かったな」


アニェーゼ「じゃあ、何食べます?」

フィアンマ「あの有名な食券とかがあるのか?」ワクワク

アニェーゼ「えっと……」コンワク

アックア「無いのである」

フィアンマ「え……」ガ-ン

アックア「そこのボードに書かれている今日のメニューから何を食べるか選ぶのである」

フィアンマ「そ、そうか……」

アックア「今日はカルボナーラ、チキンセット、サラミサラダ、サンドウィッチ、お好みピザセットがあるらしいな」

フィアンマ「それくらい見たらわかる!!」ムカッ


フィアンマ「はぁ……俺様はオムライスを食べたかったのに」

アニェーゼ「子供ですか?」

アックア「文句は言うべきではないのである」

フィアンマ「む、分かっているが……オムライス」ハァ

「あの……オムライス作りましょうか?」

フィアンマ「え?」

フィアンマ「いいのか?」

???「ええ、私の作るものでよろしければ」ニコ

アニェーゼ「……その声は!」

???「あれ? アニェーゼではないですか」


フィアンマ「ん? 知り合いなのか?」

アニェーゼ「はい、彼女はオルソラで、簡単に言えば顔見知りですね」

フィアンマ「顔見知りか」

オルソラ「よろしくお願いします」ペコ

フィアンマ「俺様はフィアンマだ、よろしく」

アックア「アックアである」

オルソラ「フィアンマさんとアックアさんと……」チラ

アニェーゼ「アニェーゼです!」

オルソラ「ああ、そうでございました」ニコニコ


フィアンマ「……さっき名前言ってたじゃないか」

アニェーゼ「そういう人間なんですよ、彼女は」

アニェーゼ「むしろ、そこが売りと言ってもいいのかもしれません」ハハ…

アックア「お、面白い人間であるな」

アニェーゼ「いや、面白いっていうより不思議って感じですよ」

アニェーゼ「私には何考えてるか理解できてねぇですし」

フィアンマ「ああ、そういう奴いるよな」

アックア「まさにお前のことだろう!」


フィアンマ「知らんな」

アニェーゼ「確かにフィアンマさんも結構謎めいてますよね」

フィアンマ「そんなことはないだろう。俺様はだいぶ分かり易いはずだ」

アックア「自覚症状が無いのが一番面倒だな」

フィアンマ「……そんなことより!」

フィアンマ「オルソラ、本当にオムライス作ってくれるのか?」

オルソラ「もちろんでございます」

オルソラ「そこの二人の食器を洗い終わったら作るのでお待ちくださいね」

フィアンマ「そこの二人?」チラ


アンジェレネ「ほいひーへふへ」モグモグ

ルチア「……」モグモグ ゴクン

ルチア「シスター・アンジェレネ、口に物を入れたまま話してはならないと何度言ったらわかるんですか?」

アニェーゼ「……うっ」ピク

ルチア「確かに美味しいですけど、飲み込んでから話なさい」

アンジェレネ「……」ゴクン

アンジェレネ「ごめんなさい」シュン

ルチア「まあ、食事中は基本的に話さず、静かに過ごすのが一番なんですけどね」


フィアンマ「……見覚えのある二人だな」

アックア「……なぜここにいる?」

アニェーゼ「ああー」ポン

フィアンマ「おい、何一人で納得しているんだ」

アニェーゼ「いえ、この二人はいつもオルソラに料理を振舞ってもらっていると言っていたのを思い出したんですよ」

アックア「ほう、食堂ではそんなこともできるのか……」

オルソラ「ええ、食堂の一角を借りてちょこちょこっと作らせてもらってます」

アニェーゼ「へぇ、食堂で作ってたんですか」

オルソラ「邪魔にならないよう注意はしているのでご安心を」ニコニコー

フィアンマ「……有能なシスターもいるんだな」

アニェーゼ「ですね!!」

フィアンマ「なぜキレてるんだ?」


アンジェレネ「……あ、視察軍団のみなさんじゃないですか!」モグモグ

ルチア「……」ハァ

フィアンマ「視察軍団ってなんだ……」

アックア「ああ、一日ぶりであるな」

アックア「元気にしていたか?」ポンポン

アンジェレネ「はい! すごい元気でしたよー」エヘヘ

アックア「そうであるか」ウンウン

フィアンマ「お前はアンジェレネの親か何かか?」ハァ

アックア「そんな大層なものじゃないのである」

フィアンマ「いや、言われなくても分かってるからな」


ルチア「あなた方は問題ありませんでしたか?」

ルチア「あの女とか……」

フィアンマ「ああ、オリアナのことか」

フィアンマ「ただの変態なこと以外は普通に使えそうな魔術師だよ」

ルチア「使えそう?」

アニェーゼ「雇うことにしたらしいですよ」

ルチア「え!? どういうことです!」

フィアンマ「そのままの意味だが?」

フィアンマ「アニェーゼ、報告書を見せてやれ」

アニェーゼ「あ、それが一番ですね」スッ


ルチア「……」パラパラ…

アンジェレネ「うわあ、文字ばっかりじゃないですか……」

アックア「まあ、フィアンマが書いても書き足りないと言ってたからな」

フィアンマ「報告書は後でもいいからさっさと食べてくれないか?」

フィアンマ「食器が片付かないだろう?」

アンジェレネ「す、すみません!」

ルチア「急ぐの良いですけど、のどに詰まらせない……」

アンジェレネ「んんー!!」

ルチア「言ったそばから……」 

フィアンマ「……そんなに急がなくてもいいからな?」


フィアンマ「そういえば、アニェーゼはオルソラに作ってもらっているわけじゃないのか?」

アニェーゼ「ええ。たまに作ってもらうこともありますが、私は普通に食堂のメニューですね」

オルソラ「作ってもらうじゃないのでございますよー」スッ

フィアンマ「おわ! 作ってもらうじゃないってどういうことだ?」

オルソラ「ですが、あまりにも作ってほしいという人数が多いときは食堂本来の業務を邪魔してしまうので……」

オルソラ「寮で作って振るうのでございますよ」

フィアンマ「おい、話し戻ってないか?」

オルソラ「……どこで料理を作ってるかの話では……?」

フィアンマ「違うぞ」


フィアンマ「アニェーゼの話だ」

オルソラ「ああ! そうでございましたね」ウンウン

アニェーゼ「作ってもらうじゃないってどういうことなんです?」

オルソラ「私がアニェーゼに料理をふるまったのはですね……」

オルソラ「アニェーゼ寝込んでいて、ご飯を食べないとか言いやがった時のことでございますけど……」

フィアンマ「……口調乱暴になってるんだが……」

オルソラ「いえいえ、それは幻聴でございますよ」

フィアンマ「……続きを」

オルソラ「ええと……中に入れるチキンライスのケチャップの量の話……」


フィアンマ「ご飯を食べないと言いやがってどうしたんだ?」

オルソラ「勝手に食べやすそうなものを作って押しかけたんでございますよ」

アニェーゼ「あ、そういえばそうでしたね」

オルソラ「自分で頼んでくれることが無いのでございますよ」ウフフ

フィアンマ「ふーん、そうなのか」

アニェーゼ「へへ、うちの二人がいつも世話になっちゃってるんで」

アニェーゼ「さすがに少しは考えねぇとダメでしょう?」

オルソラ「そんなそんな……もし迷惑でなければ作るのでございますよ」

オルソラ「私の料理で喜んでもらえるのでしたら、それで私は満足でございますから」


フィアンマ「まずは俺様のオムライスだからな」

アニェーゼ「……では、私はカルボナーラで」

フィアンマ「それ……メニューになかったか?」

アニェーゼ「いいんです、ほっといてください」フン

オルソラ「カルボナーラでございますね、分かりました」ニコ

ここまででございますよ!
おつありでございます。

テッラさんはまだ生きてるから出番あるのでございます。
やはり一緒にアイスコーヒー飲めるほど仲良くはないのでございますけど。


アックア「ところで、二人は何を作ってもらったのであるか?」

ルチア「私はスープとサラダです」

アックア「……質素であるな」

ルチア「そうですか? いつも通りですけど」

アンジェレネ「私は、ホットケーキとチョコレートドリンクと……」

アックア「あと、サラダか」

アンジェレネ「うう……シスター・ルチアが付けなさいって言うから」

アックア「野菜が苦手か」

アンジェレネ「はい……」


アックア「うむ、子供の頃は辛抱するしかないのである」

アックア「私も野菜は苦手だったからな」

ルチア「そうなんですか?」

アックア「聖人なのに、と言いたいのだな?」

ルチア「……」

アックア「ふっ、黙る事は無いのである。子供はいつの時代も野菜嫌いだからな」

アンジェレネ「シスター・ルチアは野菜嫌いじゃないですよ?」

ルチア「別に好き好んで食べてるわけじゃないですけどね」

ルチア「栄養バランスを気にしているだけです」


……………………………

アンジェレネ・ルチア「ごちそうさまでした」

オルソラ「お粗末様でございます」ニコニコ


フィアンマ「お、じゃあ次は俺様たちの番だな!」

アニェーゼ「がっつきますね……」

アックア「そろそろ空腹にも耐えられなくなってきたのである……」

フィアンマ「ははは、聖人が何を言っているんだ」

アックア「むしろ私が聖人を何だと思ってるんだ、と聞きたい」

フィアンマ「テレズマを身に宿すことのできる人間だか何だかじゃなかったか」

アックア「そうである、分かってるならいいんだ」

アックア「決して食欲を人以上に我慢できるスーパー人間ではないのである」


ルチア「それでは皆さん、先に失礼します」ペコ

アンジェレネ「失礼します」タタタッ

フィアンマ「ああ、励めよ」

アニェーゼ「あ、シスター・ルチア、この報告書を届けてもらえますか?」

ルチア「分かりました、それでは」タタッ


フィアンマ「……食後の運動は腹が痛くなるから苦手だ」ウウッ

フィアンマ「走るとかは本当に無理だ……」

アックア「お前の食後三十分はティータイムではないか」

フィアンマ「まあ、そうだけどな」ハハ


ジャ-

フィアンマ「皿洗いか」

オルソラ「はい。皿洗いでございます」ゴシゴシ

フィアンマ「……」

オルソラ「なぜそんなにじっと見ているのでございますか?」

フィアンマ「いや、水仕事は手荒れの要因の一つ聞いたことがあったからな。気になっただけだ」

フィアンマ「だから気にするな」

オルソラ「はあ……」

オルソラ「ぱっくりなどは付き物でございますよ」

フィアンマ「それは……大変だな」

オルソラ「大変でもやらなきゃならない事でございますから」ニコニコ

フィアンマ「……そうか、ちゃんとハンドクリームとかはつけた方がいいぞ」

オルソラ「ええ、ありがとうございます」


アックア「そこまで心配なら手伝ってやるのはどうだ」

フィアンマ「え、どうして俺様が」ムッ

アックア「二人でやれば負担も軽減するのである」

オルソラ「いえいえ、手を借りるまでもございませんよ」

オルソラ「大したことではないので」ウフフ

フィアンマ「……」

フィアンマ「いや、手伝ってやる……じゃないな」

フィアンマ「俺様も手伝うぞ」グッ

オルソラ「ええ?」


アニェーゼ「というわけで、皿洗いをしていると……」

アックア「そうである」


ガチャ-ン

フィアンマ「あ、割れた!」

オルソラ「まあ、怪我はございませんか?」

フィアンマ「……ああ、それは大丈夫だが……」

オルソラ「それなら良かったのでございます」ニコ


アニェーゼ「……あの調子だと手伝うことでオルソラの手間が増えてるんじゃないかと思うんですよね」

アックア「まあ、皿を割ってるしな」

アニェーゼ「大丈夫なんですかね」

アックア「皿は……まあ、ローマ正教は資金が豊富だから問題ないだろう」

アニェーゼ「おお、流石上の方は言うことが違いますね」

アックア「後始末は魔術を上手く使えばすぐにかたがつくからな」

アニェーゼ「なるほど……」


フィアンマ「……悪いな。だいぶ散らかしてしまった」ズーン

オルソラ「いえ、ちゃんと片付けをしてもらえたので十分でございます」

フィアンマ「まあな……」

フィアンマ「自分で言うのもなんだが、綺麗好きだからな」ゴシゴシ

オルソラ「なるほど、オムライスはケチャップ多めが好みなのですね」ニコニコ

フィアンマ「おい、話が飛んでるぞ」

オルソラ「綺麗好きとは素敵でございますね」

オルソラ「潔癖症までいくと少々面倒でございますけど」ゴシゴシ

フィアンマ「ああ、それは同感だ」

フィアンマ「潔癖症は面倒を通り越して苛立ちすら覚えるな」

オルソラ「イライラするのはあまり良くないのでございます」ニコニコ

フィアンマ「む、そうだな」


フィアンマ「とは言っても、ずっと笑顔でいるのは疲れるだろう?」ゴシゴシ

オルソラ「いえ、疲れませんよ」ニコ

フィアンマ「凄いな、俺様はそんなことできない……」

オルソラ「何もみんながいつも笑顔でいる必要はないのでございますよ?」ゴシゴシ

フィアンマ「……なら、なぜオルソラはずっと笑顔なんだ?」

オルソラ「簡単なことでございます。沈んだ顔より笑顔の方がいいでございましょう?」

オルソラ「それに私もずっと笑顔というわけではございません」キュッキュ

フィアンマ「ほう……ローマ正教も捨てたもんじゃないな」キュッキュ


オルソラ「捨てたもんじゃないとは?」

フィアンマ「……いや、なんでもない」カチャカチャ

フィアンマ「よし、こんなところで皿洗いは完了か」

オルソラ「そうでございますね。ありがとうございます」

フィアンマ「気にするな、飯を作ってもらうのだからそれくらいはしなくてはな」

オルソラ「……お返しを求めてのことではないのでございます」

フィアンマ「だろうな」

フィアンマ「それなら俺様もオルソラと同じく好意でやったということにしておいてくれ」

オルソラ「そうですか……では、ご好意ありがとうございますね」ニコ

フィアンマ「どーも」


オルソラ「ところで……そこのゴルフウェアの方は何を食べたいのでございましょうか?」

フィアンマ「アックアか……」

アックア「私はマルゲリータを頼む」

オルソラ「了解でございます」

フィアンマ「なんでも請け負うんだな」

オルソラ「作れるものは作る主義なのでございますよ」ドヤ

フィアンマ「万能だな」

オルソラ「料理は趣味ですからね」

オルソラ「それで皆さまが笑顔になってくれるなら、それほど嬉しいことはございませんから」

フィアンマ「ふっ……そうか」


アニェーゼ「あれ、戻ってきちまったんですか?」

アックア「オルソラと話していたのではないのか?」

フィアンマ「火を使い始めたからな」チラ

オルソラ「……」ジュージュー

アックア「怖いのであるか?」

フィアンマ「そんなわけ無いだろう! 俺様は火を司っているんだぞ?」

フィアンマ「あ……」

フィアンマ(口が滑った!)


アックア「……」ハァ

アニェーゼ「怖くないんですか……つまんねぇですね」

フィアンマ「……つまんねぇで悪かったな」フンッ

フィアンマ「火は俺様の手足と言っても過言じゃないのだからな」

アニェーゼ「では、なぜ?」

フィアンマ「オルソラの邪魔になるだろう?」

フィアンマ「俺様が見ていたせいで火傷とかされたら申し訳が立たないからな」


アニェーゼ「なるほど」ニシシ

フィアンマ「なんだ、その意味深な笑みは……」ムッ

アニェーゼ「いえ、何でもないです」

アニェーゼ「あ、やっぱり何でもありました」テヘヘ

フィアンマ「なんだ?」

アニェーゼ「火傷させちまったら、回復してやればいいんじゃないですか?」

フィアンマ「そういう問題ではない」

アニェーゼ「え?」

フィアンマ「そういう問題じゃないと言った」


フィアンマ「あんなレアな愚かさ……いや眩しさと言うのかな」

フィアンマ「ともかく俺様たちの持っていないものを持った人間を無駄にしたくないだけだ」

フィアンマ「……ほら、レア物は丁寧に保存しておくに限るというものだろう?」

アックア「またゲーム的思考である……」

アニェーゼ「そ、そういう考えですか……」

フィアンマ「ローマ正教の利益に繋がるやもしれない」

フィアンマ「それにあのような人間は嫌いじゃない」フッ

アックア「気に入ったのであるか」

フィアンマ「……かもしれないな」

とりあえず一区切り……
ストックがなくなってきた……


………………………

アニェーゼ「できるまでまだ少し時間がかかるそうです」

フィアンマ「そうか」

アックア「……」グゥ

フィアンマ「なら少し歩き回ってきていいか?」

アニェーゼ「歩き回る、ですか?」

フィアンマ「ああ、知り合いでもいないかと思ってな」

アックア「オルソラのところへ行かないのか」

フィアンマ「……だから邪魔になると言っただろう」ウッ

アックア「そうか。まあ、勝手にすればいいのである」

フィアンマ「ああ、勝手にさせてもらおう」


フィアンマ(さてと……)カツカツ…

フィアンマ(いるのは基本的にシスターや衛兵などか)

フィアンマ(…………!?)

フィアンマ「ヴェント!?」

ヴェント「ああ、フィアンマか」モグモグ

フィアンマ「どうしたんだ、その格好は」

ヴェント「けっ、少し考えたらわかるでしょう」

ヴェント「こんな人前であの格好してたら目立って仕方が無い」

フィアンマ「……つまり、それがお前のデフォルトというわけか?」

ヴェント「そうだけど?」


フィアンマ「……嘘だろ、ピアスとメイクをやめるだけで人間はこんなに変わるのか!?」

ヴェント「そんな大差ないと思うけどね」

フィアンマ「いやいやいや、そんなこと言うならアックアにも聞いてみろ!」

ヴェント「アックアは女の化粧はそんなものであるとか言ってたっけね」

フィアンマ「なっ、女の化粧はそんなものなのか?」

ヴェント「そんなものだよ。女は皆顔を偽ってるんだ」

フィアンマ「……そ、そうなのか」

フィアンマ「だが、お前の場合は絶対にメイクなしの方がいいと思うぞ」

ヴェント「いや、そうはいかないさ」

フィアンマ「……ああ、なるほど」


ヴェント・フィアンマ「天罰術式」

ヴェント「そう、この顔じゃぜんぜん効果が出なくなっちゃうからね」

ヴェント「嫌悪感を持ってもらってなんぼな魔術だから」

フィアンマ「面倒な制約があったものだな」

ヴェント「その代わり効果が絶大だから」

フィアンマ「それもそうか」

ヴェント「で、どうしてこんなところにいるの?」

フィアンマ「ああ、視察だ」

ヴェント「……ご飯食べに来たってことか」


フィアンマ「ああ、料理が上手いシスターがいるらしくてな」

ヴェント「あー、オルソラ=アクィナスか」

フィアンマ「知ってるのか?」

ヴェント「まあ、噂くらいわね」

ヴェント「女子寮ではかなり重宝されているらしい」

フィアンマ「女子寮か」

ヴェント「まあ、伝え聞いた話だけど」

フィアンマ「ほう……それはますます楽しみになってきた」

ヴェント「何頼んだんだ?」




フィアンマ「オムライス」



ヴェント「ごめん」

ヴェント「謝っても謝り足りないけど、これで勘弁して欲しい」

フィアンマ「な、なぜ謝るんだ」

フィアンマ「話の流れがよく分からないぞ」

ヴェント「言いたくないことを無理に言わせてしまったっていう反省だよ」

フィアンマ「まさか、オムライスが馬鹿にされているというわけじゃないよな」

ヴェント「いや、そうだよ」

フィアンマ「なぜ!!」

ヴェント「なぜって……子供っぽいからかな」

ゴツ


フィアンマ「悪いな、衝動的に殴ってしまった」

フィアンマ「魔術ブースト込みで」

ヴェント「うう……」バタ

フィアンマ「さて、他に知り合いはいないものか……?」カツッ


フィアンマ「……」カツカツ

フィアンマ(視線を感じるような……)チラ

フィアンマ(気のせいか……はぁ)カツカツ

???「フィアンマ」

フィアンマ「ん?」クルッ

???「こんなところで何をしているんだ?」

フィアンマ「……っと……ああ」

フィアンマ「ビアージオ=ブゾーニとか言ったか!」パアア

ビアージオ「そうだが」

フィアンマ「そうかそうか、俺様は今視察中さ」ニッコリ


ビアージオ「……神の右席なのにか?」

フィアンマ「だからこその行為だ」

フィアンマ「マタイの奴のせいか、ローマ正教内部の情報がいまいち入ってこなくてな」ヤレヤレ

フィアンマ「仕方が無いから、自分の足で調査してみようと思った次第だ」

ビアージオ「なるほどな」

フィアンマ「今度は俺様から質問なんだが、お前は司教様だったよな」

ビアージオ「……今はな」

フィアンマ「今は、か。権力欲あふれる一言だな」

フィアンマ「なぜ司教様ともあろうお方がこんなところで飯を食っている?」


ビアージオ「個人の勝手だ」

ビアージオ「さっきまで前方のヴェントもそこで食べていただろう?」

ビアージオ「ここはローマ正教で働く人間は誰でも使用可能だからな」

フィアンマ「それはそうだが……司教クラスになったらそこそこ豪華なものが運ばれてきたりするのではなかったか?」

ビアージオ「飽きだ」

ビアージオ「たまにはこういう質素な食事も悪くない」カチャカチャ

フィアンマ「質素な食事って……別にお前が今食べているものは質素ではないだろう」

ビアージオ「普段よりは質素だ」

フィアンマ「……そうか」


フィアンマ「じゃあ、そろそろ俺様は戻るとするか」

ビアージオ「戻る?」

フィアンマ「まだ俺様は昼ごはんを食べてない」

ビアージオ「そ、そうか」

ビアージオ「引き止めて悪かったな」

フィアンマ「いや、司教様の食事事情を伺うことができ、光栄の極みでございます、だ」

ビアージオ「その司教様ってのは皮肉がこもってると受け止めていいのか?」

フィアンマ「さあ? ご想像にお任せする」

ビアージオ「むむ……」モグモグ

フィアンマ「それじゃあ、俺様たちのためにも仕事頑張れよー」カツカツ


フィアンマ(そろそろオムライス出来ただろうか……)

アニェーゼ「あ、来た来た。料理とっくにできてんですけどー」

オルソラ「あ、戻って来たのでございますね」

フィアンマ「ああ、待たせたみた……」

アックア「おお、美味しいのである」モグモグ

フィアンマ「え、待っててくれたわけじゃないのか?」

アックア「もちろん」モグモグ

フィアンマ「そ、そうか……」ズーン

アニェーゼ「私達はまた食べてねぇですよ」アセアセ

フィアンマ「そ、そうか!」パァ

アニェーゼ(分かりやすいですね)

アックア(なぜか罪悪感がすごい……)モグモグ


オルソラ「ケチャップはかけるのでございましょうか?」

フィアンマ「ああ。絵を描くのが至高だと聞くが……どうしたものか」

アニェーゼ「I LOVE YOUとかどうです?」

フィアンマ「……大丈夫か、アニェーゼ? もしかして熱でもあるのか?」

アニェーゼ「真面目に心配されちまいましたね」

フィアンマ「そりゃ、オリアナじゃあるまいしな」

オルソラ「こんなのはどうでしょう?」ブチュ-

フィアンマ「効果音の割に随分細かい絵を描くんだな」

オルソラ「こういうのは凝ったもの勝ちでございましょう?」


オルソラ「できました!」

フィアンマ「おおっ! 俺様の似顔絵か!」キラキラ

アニェーゼ(こいつ……できる!)

フィアンマ「これは……撮っておかなくてはならないな」パシャパシャ

オルソラ「お気に召したようでございますね」ニコニコ

フィアンマ「ああ、食べるのがもったいないほどだ」

フィアンマ「どうだ、アックア。羨ましいだろう?」

アックア「……良かったな」

フィアンマ「つまらん反応だ」


アニェーゼ「なんやかんや言いつつ結局食べるんですか」

フィアンマ「食べ物だからな。惜しかったが食べ物だからな」

アックア「なぜ二回」

フィアンマ「大事なことだからだ」

オルソラ「そんなに気に入っていただけたのなら、また作るのでございますよ?」

フィアンマ「お、そうか! 」

フィアンマ「遠慮はしないからな」ニヤッ

オルソラ「ええ、遠慮なさらず、なのでございますよー」

フィアンマ「くくっ、楽しみが増えたな」

オルソラ「そうでございますか」ニコニコ

とりあえずここまで。


オルソラ「そう言えば、フィアンマさんとアックアさんとアニェーゼはどのような関係なのでございましょうか」

フィアンマ「関係? 関係か」フフフ

フィアンマ「そうだな、簡単に言えば部下と上司といったところだろう」

オルソラ「部下と上司なのでございますか」ヘ-

フィアンマ「先に言うなよ……」

オルソラ「楽しそうな上下関係でございますね」

フィアンマ「そうか? アックアは扱いづらいし、アニェーゼは直属の部下ではない」ケッ

フィアンマ「引っこ抜いて引きずり回してしまってるところだな」

アニェーゼ「あ、自覚はあるんですね」

フィアンマ「まあな」

フィアンマ「誰直属の部隊かは知らないが、俺様が名前も知らない程度の地位の者なら俺様に逆ら、いや、文句は言えないさ」

フィアンマ「だから引っこ抜こうと何しようと本人の承諾さえあればいいと思ってる」


オルソラ「オムライスは美味しいでございましょうか?」

フィアンマ「だいぶ話変わったな!」

オルソラ「口に合わなかったのでございましょうか……」

フィアンマ「いや、美味いけども」

オルソラ「それは良かった」ニコニコ

アニェーゼ「あれ、そろそろこの話法にも慣れてくる頃だと思ってたんですけど……」

フィアンマ「無理だな、この話し方に慣れろというのは俺様には酷だ」

アックア「確かにピザもそのへんのモノとはひと味ちがうのである」

フィアンマ「その話を続けるんだな」


オルソラ「本人の承諾でございますか」

オルソラ「上の方らしからぬことを言うのでございますね」

フィアンマ「も、戻ったか。上の方って言っても一緒くたにはできないってことだ」

アニェーゼ「ですね。私もフィアンマさんみたいな人を使い慣れてなさそうな人は初めてですし」

フィアンマ「う、そ、そうか?」

オルソラ「ええ」

アックア「ふっ」モグモグ

フィアンマ「おい、アックア。こそっと笑ってるのバレてるからな」ムカッ

アニェーゼ「ちょ、ここでは抑えて欲しいんですけど」

フィアンマ「……それは心配いらない」

フィアンマ「力抑えてる俺様じゃアックアには勝てるわけがないからな」


フィアンマ「そうだ!」

フィアンマ「オルソラ、ご飯の代わりと言ってはなんだが、いいことを教えてやろう」

オルソラ「なんでございましょう?」

フィアンマ「実は俺様は視察に来ているんだ」

オルソラ「視察……何か面白いものは見れたのでございますか?」

フィアンマ「そうだな……」

フィアンマ「ケチャップの俺様とか、同僚の素顔、変態な部下を手に入れたりとかいろいろだな」

オルソラ「まあまあ、思っていた視察とだいぶ違うのでございますね」

フィアンマ「まあな」ヘヘ

フィアンマ「オルソラは魔術知ってるのか?」

オルソラ「ええ、回復だけならすこしかじっているのでございますよ」

フィアンマ「そうか! じゃあそっち関連の話も……」ハハッ


アニェーゼ「随分饒舌ですね」

アックア「多分気に入ってるのである」

アニェーゼ「オルソラを?」

アックア「……フィアンマの周りには天然タイプの女性はいない」

アックア「ハマってしまっても致し方ないのである」

アックア(あんなにニタニタして……)ハァ

アックア(どう考えても策や裏がある時と態度が違うのである……)

アックア(ま、それで大人しくなってくれれば最良なのであるが、ありえないな)


フィアンマ「ごちそうさまっと」フゥ

フィアンマ「お前らは食べ終わったか?」

アックア「お前がペラペラ話しているうちに、とっくにな」

アニェーゼ「同じく」

フィアンマ「そうか、それは悪かったな」チラ

オルソラ「……どうしたのでございますか?」モグモグ ゴクン

フィアンマ「……いや、俺様まだお腹いっぱいじゃないな」チラ

フィアンマ「何かないかなー?」チラ

オルソラ「チキンライスの余りがあるのでございますよ」

フィアンマ「よし、それだ」


アニェーゼ「え、まだ食べるんですか?」

フィアンマ「良いじゃないか。まだオルソラも食べていることだしな」

アックア「はぁ……なら私もいただくのである」

アックア「どうせ私とアニェーゼだけでは視察の意味が無いからな」

フィアンマ「そうだな」

アニェーゼ「じゃあ私はスムージーでも飲んで待ってますかね」ハハハ

オルソラ「では、私もスムージー飲んで待ってるのでございますよ」

フィアンマ「おい待て、オルソラは自分の目の前にあるご飯に集中しろ」ビシッ

オルソラ「そうでございますね」ニコニコ

フィアンマ「わ、分かってくれればいいんだ」タジタジ


オルソラ「どうぞ。おかわりでございますよー。あとスムージーでございます」ゴト ゴト

アックア「ありがとうなのである」

フィアンマ「いただくぞ」

アニェーゼ「やったー、ありがとうございます!」

オルソラ「いただきます」ペコ

フィアンマ「ちょっと待て、オルソラ。なぜお前までおかわりしているんだ?」

オルソラ「まあ、不要でございましたね」

フィアンマ「ああ、不要だったな」

アニェーゼ「何やってんですか……」ハァ

アックア「コントである」

フィアンマ「コントじゃないからな」


フィアンマ「作るのは速いけど、食べるのは結構ゆっくりだよな」

オルソラ「すみません、あまりお腹が空いていないのでございますよ」ハハハ…

フィアンマ「いやいや、責めてるわけじゃないから謝る必要はないぞ」

フィアンマ「俺様も食べてるしな」モグモグ

オルソラ「そうでございますか?」

オルソラ「……お忙しいのにお待たせしてしまって申し訳ないのでございますよ」

フィアンマ「いや、だから気にするなと言っているだろ?」

フィアンマ「別に忙しくないし、待たされていると思ってもいない」

アックア(やっぱり待っていたのであるな……)

アックア(よし、応援してやるのである。まあ、何もしないがな)

フィアンマ「というか、急いで食べて喉つまらせたりするなよ?」


オルソラ「ご心配ありがとうございます」

オルソラ「そこまで言ってくださるのでしたら、お言葉に甘えさせていただきますね」

フィアンマ「そうしろそうしろ、俺様は会話できればいい」

オルソラ「あまり面白い話はできないのでございますよ?」

フィアンマ「面白い話は期待してないさ」

オルソラ「まあ、でしたらどんな話がよいのでしょう?」

フィアンマ「そうだな……」

アニェーゼ「フィアンマさんが視察の詳しい話でもすればいいんじゃないですか?」

フィアンマ「ふむ、それはいい。そうしよう」

アックア(でかした!)

アニェーゼ「……」グッ

フィアンマ「……?」




オルソラ「では、まずは変態な部下のお話をお願いするのでございます」

フィアンマ「それから!?」


ここまでー!
乙ありです


…………………………………

オルソラ「それで、次はどこへ行くつもりなのでございましょうか?」

フィアンマ「風の吹くまま気の向くままと言っただろう?」

フィアンマ「まあ、そうだな……何かオススメな場所でもあったら聞くが」

オルソラ「そうでございますね……何かあるのでございますか、アニェーゼ?」

アニェーゼ「私ですか!?」

アックア「何かあるのであるか?」

アニェーゼ「そうですね……あ、バチカンの端っこにあるという小さな小麦畑とかどうです?」

フィアンマ「小麦畑?」

アックア「あ……そこは……」


アニェーゼ「なんでも怪しい人が夜な夜な農作業を行っているとかなんとかで噂なんですよ」

アニェーゼ「通称、小麦の悪魔」

アニェーゼ「土地の所有者がローマ正教であることは間違いないんですが……」

フィアンマ「夜な夜な、か……」

アックア「お、おい、少し待つのである」

フィアンマ「なら、夜になったら見に行ってみるとしようか」

フィアンマ「面白そうだ」ニヤ

オルソラ「決定したみたいでございますね」

フィアンマ「ああ。明日にでも話を持ってきてやるから待ってるといい」


オルソラ「では、朝食でも作って待っているのでございますよ」

フィアンマ「ははっ、楽しみじゃないか」

フィアンマ「朝食にはオムレツを付けてくれよ、似顔絵入りのな」

オルソラ「似顔絵入りでございますね、わかったのでございますよ」

アックア「正気であるか?」

フィアンマ「ん? もしや聖人様とあろうものが怖いのか?」

アックア「そんなわけないだろう」

フィアンマ「なら決定だ」

アックア「はぁ……」




『禁書目録救済論』



フィアンマ「さて、日が落ちるまで時間もあるし、ぶらぶらと視察を続けるとしようか」

アックア「どこ行くのか、とはもう聞きはしないのである」

フィアンマ「学習したみたいだな、進歩じゃないか」

アックア「お前に言われると皮肉に聞こえるという不思議」

アニェーゼ「二人って仲いいんですか?」

アックア「違う!」

フィアンマ「アニェーゼ、そんなことをもう一度言ってみろ」

フィアンマ「ローマ正教にいれる保証はないからな」

アニェーゼ「そんなに怒ってるんですか!?」


フィアンマ「ふん、俺様が我慢できるうちにやめておいた方がいい」

アニェーゼ「は、はあ」

フィアンマ「……」

フィアンマ「少し言い過ぎたな。こんなことで権力を振りかざすのは幼稚だった」ククッ

アニェーゼ「……普通じゃないですか?」

アニェーゼ「権力は振りかざすためにあるんですし」

フィアンマ「そうか? ここぞという時にだけ使うようにしなくては」

フィアンマ「事あるごとに使っていたら何が起こるかわからないしな」ケラケラ


アックア「いつも人をこき使うお前がよく言うものだな」

フィアンマ「ははっ、男と女で対応が違うのは当然だろ」

フィアンマ「それに俺様がこき使うのは同僚とま、教皇と直属の部下だけじゃないか」

フィアンマ「言いがかりをつけるはよせ」

アックア「おい、教皇をこき使うのはおかしい!」

アニェーゼ(フィアンマさんはフィアンマさんってことですかね)

アニェーゼ(それにしても仲いいなぁ)


フィアンマ「よし、次はこの部屋に突撃だ」

アックア「少し待つのである」

フィアンマ「なんだ?」

アックア「一応部屋の主を確認するべきだろう」

フィアンマ「ふむ、アックアにしては気が利くな」

フィアンマ「よし、アニェーゼ、ここは何の部屋だ?」

アニェーゼ「すみません、私もこの棟はあまり来ないから詳しくないんです」

フィアンマ「そんなことがあるのか……アックアは分かるか?」

アックア「……確か」




アックア「隠秘記録官の仕事場だったはずである」



アニェーゼ「かんせらりうす、ですか?」

フィアンマ「聞き覚えがあるな……」ウ-ン

アックア「魔術の使用傾向と対策を魔道書として書くのが彼らの仕事らしい」

アックア「私も細かいところは良く分からないが」

フィアンマ「ああ! 教会のための魔道書を書く者、だったか」

アックア「そう、それである」

フィアンマ「だが、昼時だから人が居ませんでした、みたいなオチはなしだぞ?」

アックア「中に人の気配がするからそれはないだろう」

アニェーゼ「はわー、魔道書を書く人達とかワクワクしますね」

フィアンマ「だな!」


アックア「ノリノリのところ悪いのであるが、静かにするのである」

フィアンマ「おいおい、俺様のことを舐めてもらっては困る」

フィアンマ「場の空気に沿った振る舞いくらいはできるつもりだが」

アックア「一応注意しただけだ」

フィアンマ「だとよ、分かったか、アニェーゼ?」

アニェーゼ「私は基本的に黙ってるんですけどね」

フィアンマ「むむ、それもそうだな」

フィアンマ「じゃあ、アックア、お前も
黙っているんだぞ」

アックア「注意した人間に注意し返すとはな。面白いことをするものだ」


フィアンマ「分かってるならいいんだ」

アックア(それは私のセリフなのである……)コンワク

フィアンマ「じゃあ、行くぞ!!」

アニェーゼ「おお!」

アックア「……静かにするのである」シ-

フィアンマ・アニェーゼ「あっ……」

ギイイイイ

ここまでー!
インさんの出番か!?

小麦粉の人が出て来る時のために一覧表置いておきますね(^_^;)
テッ/ラ
フレ/ンダ
上/条
暮/亞←new!
去/鳴←new!


シーン

フィアンマ「……」

アックア「……」

フィアンマ「……えーっと、おい、アックア」

アックア「なんだ」

フィアンマ「ガキ一人しかいないように見えるんだが?」ボソボソ

アックア「いや、お前も十分ガキだろう? 人のこと言えないはずである」ボソ

フィアンマ「黙れ」

フィアンマ「こういう場所では静かにしないとダメだと言ったのはお前だ」コソコソ

アニェーゼ「ガキってほど小さいですかね?」

フィアンマ「……アニェーゼから見たガキの基準と俺様から見たガキの基準は違うってことだろ」

アニェーゼ「あ、なるほど」


アックア「……ガキガキ言うのはよせ」

アックア「一応言っておくが、彼は隠秘記録官最速筆の男だぞ?」

フィアンマ「隠秘記録官最速筆……はっ!」

アニェーゼ「どうしたんです? 心当たりでもあったんですか?」

フィアンマ「アウレオルス=イザード、隠秘記録官の期待の新人だとか……聞いた気が」

アックア「ほう、良く知ってるな」

アニェーゼ「アウレオルス=イザードですか。知らねぇ名前ですね」

アックア「まあ、そこまで有名でもないからな」

アックア「隠秘記録官の名を知らなかったアニェーゼが知っているはずもないだろう」

アニェーゼ「あ、あはは……」


フィアンマ「その上、禁書目録の教育係をしているとかマタイの奴が言っていたな」

アックア「そうであるか」

アックア「って禁書目録だと!?」

アニェーゼ「いんでっくす……禁書目録ってイギリス清教のもんですよね?」

フィアンマ「ああ。様々な原典が頭に入ってる、イギリス清教所属のシスターだ」

アックア「……あんなに重要なものをあの女がこちらに寄越すとは思わないのだが?」

フィアンマ「ああ、確かにそうだろうな。奴はそういう女だ」

フィアンマ「だが、この場合は仕方が無いんだろうよ」

フィアンマ「今アレはローマ正教が保管している原典などの記憶作業をしているらしい」


アックア「ローマ正教がイギリス清教の禁書目録のために原典を貸すとは……」

アニェーゼ「あり得るんですかね?」

フィアンマ「その辺は色々な思惑が交錯しているんだろうさ。俺様は興味ないが」

アニェーゼ「原典を暗記とか……気が狂っちゃわねぇですか?」

フィアンマ「さあな」

フィアンマ「実際狂ってはいないらしいから、何らかの対策を講じているのだろうよ」

アニェーゼ「……正気の沙汰じゃねぇですね……」

フィアンマ「んで、記憶させる時以外は精神安定のためにこの少年と過ごさせているんだと」

アニェーゼ「はぁ……普通にシスターしてるだけじゃ知ることはできねぇ話ですね」

アックア「であるな」

「漠然、それは本当のことか?」


フィアンマ「……む、せっかく集中していると思って話しかけなかったのに、そっちからくるとはな」

アニェーゼ「いや、ここまでべらべら話してたら集中なんかできねぇですよ」

フィアンマ「ふむ、それもそうか」

アウレオルス「……ここでも彼女が原典を記憶させられているというのは本当なのか?」

フィアンマ「そんなにがっつくな」

フィアンマ「事実だろうと嘘だろうとお前にできることは何もないのだからな」

アウレオルス「……」

フィアンマ「まあ、答えはイエスなんだけどな」

フィアンマ「俺様が言うのだからまず間違いないぞ」ククッ


アウレオルス「当然、彼女の重い枷を取り払うことは出来ないのか!?」

フィアンマ「……重い枷って何のことだ」

フィアンマ「唐突に変なこと言われても困るんだが」

アウレオルス「原典を頭に保管しなくてはならない、それは彼女の仕事だから仕方が無いだろう」

アウレオルス「だが、一年周期で記憶を消さなくてはならないなんていうのはあまりに酷だ」

フィアンマ「一年周期で記憶を消さなくてはならない?」

フィアンマ「そんなことは知らないぞ、なあ?」

アニェーゼ「ええ、元々細かいことはあまり知らなかったですし」

アックア「私も同じだ」


アウレオルス「漠然、そういえばお前たちは何者なのだ?」

フィアンマ「ああ、そういえば言ってなかったな」

フィアンマ「俺様はフィアンマ。視察に来ただけだ」ピラ

アニェーゼ(あ、例の紙ですね)

アックア「フィアンマのそば付きのアックアである」

アニェーゼ「案内役のアニェーゼっつーもんです」

フィアンマ「できればそっちも紹介してもらえると助かる」

アウレオルス「自然、それは申し訳ない。私はアウレオルス=イザード」

フィアンマ「若くてもしっかりしてるのだな」

アニェーゼ(ガキとか言ってたのはどこのどいつでしたっけね)


フィアンマ「話を戻して、禁書目録の枷の話は聞いたことのないものだったが、イギリス清教が付けたものなら排除するのは無理だろうな」

アニェーゼ「え、そうなんですか。フィアンマさんは魔術堪能でしょう?」

フィアンマ「そうだが、そういう問題ではないのさ」

アウレオルス「憤然、ならばどういう問題だ」

フィアンマ「……一応上の人間として言っておくが、禁書目録のことに関してはイギリス清教とのことだから、命令された以上のことはするなよ?」

フィアンマ「仮に枷を取ってやることができたとしても、取ってはならないんだ」

アックア「……イギリス清教とローマ正教の仲がさらに悪くなるのである」

アックア「戦争の引き金にもなりかねないということか……」

フィアンマ「大袈裟に言うとそんな感じだな……いや、大袈裟でもないか」


フィアンマ「とにかく、勝手なことをしたらローマ正教もイギリス清教も敵に回すことになる」

フィアンマ「だから悪いことは言わない、やめておけ」

アニェーゼ「そ、それにしてもこの本の山はすごいですね。何の為に?」

アウレオルス「当然、彼女の枷を取り払う方法を模索するためだ」

フィアンマ「熱心なものだな」

フィアンマ「だが……」ペラペラ

フィアンマ「内容が十字教由来に偏りすぎている」

アックア「何をするつもりだ?」

フィアンマ「アドバイスだ。言っても諦めそうではないからな」


アックア「は!?」

フィアンマ「いいじゃないか、覚悟ある若者には良質な知識を与えるべきだろ?」ピース

アックア「良質な知識とか自分で言って恥ずかしくないのか」

フィアンマ「そんなものは無縁だな」

アックア「だろうな」

アウレオルス「騒然、何のつもりだ」

フィアンマ「救いたいというのは悪いことではないと思うぞ」

フィアンマ「だからもし、離反してまでそうしたいという覚悟があるならアドバイスをやる」

アウレオルス「アドバイス……」

今日はここまでー
>>288
暮亞ちゃん!?

>>288
もはやs/a/r/o/m/eじゃね


ギイイイイイッ

「遊びにきたよー」トテトテ

アウレオルス「な、インデックス!?」

フィアンマ「へえ、あれが有名な……」

アニェーゼ「可愛らしい女の子なんですね……」

アックア「呆然……こんなに小さな少女だとは」

インデックス「あれ、この人たちは?」

フィアンマ「ごほん、俺様はローマ正教のフィアンマだ」

アニェーゼ「同じくアニェーゼです」

アックア「フィアンマの付き人のアックアである」


インデックス「へぇ、ローマ正教の人なんだね!」

インデックス「私はインデックス、正しくはIndex-Librorum-Prohibitorumっていうんだよ!」

インデックス「よろしくね」

フィアンマ「ああ、よろしくな。インデックス」フッ

トテトテトテ

インデックス「ねえ、アウレオルス、なんで今日はこんなに人がいるの?」コソッ

インデックス「もしかして、私と遊んでくれるのかな」ヒソヒソ

アウレオルス「蓋然、多分言ったらそうしてくれるのではないか?」

インデックス「そっか。じゃあ、遊んでもらおうかな」

アウレオルス「そうするといい」


トテトテ

インデックス「ということで、よろしくね」

フィアンマ「え、ちょ、俺様たちは視察の途中だぞ!!」

アニェーゼ「いいじゃないですか、こんな可愛い子と遊べる機会なんてそうそうないですよ?」

アックア「ロリコンであるな」

フィアンマ「黙れ」ギロ

フィアンマ「ともかく、遊んでやればいいのだろう?」ヤレヤレ

インデックス「え、ううん、邪魔になっちゃうんなら大丈夫だよ」シュン

フィアンマ「っ……そ、そんな顔するなよ……」アワワ

アニェーゼ「……」ジー

フィアンマ「アニェーゼもそんな目で見るな!」


フィアンマ「分かった、じゃあ俺様たちと視察しないか?」

インデックス「視察? ローマ正教の?」

フィアンマ「ああ、そうだ」

フィアンマ「それならお前もいいだろう?」

アウレオルス「当然、彼女がついて行きたいと言うのならそれがいい」

アウレオルス「どうする、インデックス?」

インデックス「行ってみたいんだよ!」

インデックス「というか、アウレオルスも行こうよー」

アウレオルス「毅然、私は仕事があるから遠慮させてもらう」

インデックス「そっか。じゃあお仕事頑張ってね」

アウレオルス「ああ、そちらもローマ正教巡りを楽しむといい」

フィアンマ「視察な」


アウレオルス「では、インデックスを頼む」

フィアンマ「当然、請け負ったぞ」

アニェーゼ「話し方を真似てるみたいですけど、声はもう少し低い方がいいかと……」

フィアンマ「そこは突っ込まないでくれ。恥ずかしいだろ」

アニェーゼ「す、すみません」

インデックス「それじゃあ行ってきまーす!」トテトテ

アウレオルス「……」

アニェーゼ「お邪魔しました」ペコ

アックア「お邪魔したのである」ギイイィィ


フィアンマ「……」ジー

アウレオルス「行かないのか」

フィアンマ「……夜までは預かってやるから、さっさと枷を壊す方法を見つけてやるんだな」

アウレオルス「さっきと言っていることが違うような気がするが」

フィアンマ「……あれは上の人間としての言葉。今のはインデックスの行く末に興味のある俺様の言葉だ」

フィアンマ(まあ、あの女に作られた枷を破壊できるとは思わないがな)

アウレオルス「はあ、随分無責任な言葉だな」

フィアンマ「ま、実際俺様はローマ正教とイギリス清教がぶつかり合っても構わないというか、そうなる計画だからな」

フィアンマ「まだ時期尚早だが」

アウレオルス「判然、野望か」

フィアンマ「いいや、希望だ」


アウレオルス「……何を考えているのやら」

フィアンマ「ふん、そんなことを考えている暇があるのなら、方法を探すんだな」カツッ

フィアンマ「どうせ考えたところで分かるようなことでもない」

アウレオルス「頑然、興味など無い」

フィアンマ「そうか、じゃあ俺様も行くとしよう」ギイイィィ


インデックス「ああー!! やっと来た」

インデックス「遅すぎるかも!!」

アニェーゼ「インデックスちゃんの言う通りですね」ウンウン

アックア「私もそう思う」

フィアンマ「なぜみなそんな態度取るんだよ!! 寂しくなるだろ!」

インデックス「ご、ごめんね。少しふざけちゃっただけなんだよ」

フィアンマ「いや、実際そんなに寂しくなかったから、謝る必要なんてない」

インデックス「そっか! それなら良かったんだよ」ニコ

フィアンマ「う……そうか」フン


アックア「純粋な笑顔に弱いのであるな」ボソッ

フィアンマ「……何をメモしてるんだ?」チラ

アックア「お前には関係ないのである!」

フィアンマ「部下の分際で俺様に隠し事とはな」

アニェーゼ「別に大したことじゃねぇですよ」

フィアンマ「ん、そうか」

インデックス「ねえー、視察って次はどこに行くつもりなの?」

フィアンマ「それはだな……」ニヤ

アックア「風の吹くまま、気の向くままだ」

インデックス「へぇ、じゃあ決まってないってことだね」

フィアンマ「……そういうことだ」

今回はとりあえずこの辺で。
乙ありですー。
寝落ちしてすみません。
新約15やっと読み終わりました!
>>301
確かにその方が近いかも……


インデックス「ところで、お腹が減ったんだよ」

インデックス「食べ物をくれると嬉しいな」

フィアンマ「……は?」

アックア「まだ昼ご飯を食べてないということであるか?」

インデックス「ううん、食べたよ」

アニェーゼ「……でもまだ昼時では?」

インデックス「一時間くらい前に食べたけど、お腹が減っちゃったんだよ」

フィアンマ「えっと……誰か食べ物持ってるか?」

二人「いや」

フィアンマ「……俺様もだ」


………食堂………

インデックス「うまうまなんだよ!!」ガツガツ

フィアンマ「おいおい、か弱い系シスターの正体は暴食少女ってどういう冗談だよ」

アニェーゼ「あわわ、見たこともない食べっぷりなんですけど……」

アニェーゼ「アンジェレネも裸足で逃げ出すレベルじゃねぇですか」

アックア「アニェーゼ、アンジェレネの場合たくさん食べられるのは甘いものだけである」

アニェーゼ「え、なんでアックアさんがそれを知ってんですか」

アックア「本人から聞いただけだ」

アニェーゼ「あ、そうなんですか」

アニェーゼ(……意外に合う組み合わせかもしれねぇですね。父親と娘、みたいな?)


フィアンマ「あー、本当はオルソラの作ったとびきり美味いご飯を食べさせてやりたかったんだがな」

インデックス「そのオルソラって人の料理はそんなにおいしいの?」

フィアンマ「ああ、割と少食の俺様でもお代わりしてしまうくらいだからな」

インデックス「へぇ……食べてみたいんだよ」

フィアンマ「夕飯の時にでもいたら頼んでみるといい。いい奴だからお前のも作ってくれるだろうよ」

インデックス「うおー、スペシャルコックさんだね。夜ご飯が楽しみなんだよ」

フィアンマ「ああ、楽しみにしてるといい」

アックア「……彼女の本職はシスターであるぞ」


フィアンマ「それにしても……見てるだけでお腹がいっぱいになる食いっぷりだな」ウップ

アニェーゼ「はうう、おやつ食べられなくなりそう……」

インデックス「え? アニェーゼがおやつ食べないなら私がもらってあげるんだよ」

アニェーゼ「い、いや、自分で食べますよ! 気遣い無用です」

フィアンマ「いや、今のは気遣いじゃないと思うぞ。多分狙ってただけだ」

フィアンマ「その証拠に……」ユビサシ

インデックス「ちっ、大人しく渡せばよかったんだよ」

アニェーゼ「怖っ!」

アックア「アウレオルスはどんな教育を施してるんだ……」


インデックス「あ、アウレオルスの授業はすごく面白いんだからバカにしたら許さないんだよ」ガツガツ

アックア「アウレオルスの教育のせいではないということか」

インデックス「むー、そこはかとなくバカにされてる気がするかも」

フィアンマ「安心しろ、気がするじゃなくてバカにされてるんだぞ」

インデックス「そ、そうなの!? それはもっと許せないんだよ!!」ガルルル

アニェーゼ「なに余計なこと言っちまってんですか!」

フィアンマ「大丈夫大丈夫。俺様でもこのくらいのガキを押さえ込むことくらいはできる」ドヤァ

インデックス「むぅ、完全に舐められてるんだよ。これはその辺のガキとの格の違いを見せないとダメだね」ギラリ

アックア「……さらばである」ナムー

ガブッ

フィアンマ「ああああああ!!!」


インデックス「さてと、ご飯が冷めちゃうんだよ」バクバク

フィアンマ「あああ、腕の肉が……」クッキリ

アニェーゼ「うわぁ、くっきり痕付いてんじゃねぇですか」ヒキ

フィアンマ「か、回復魔術だ……」パアァ

フィアンマ「え!? 効かない?」

インデックス「噛み方は工夫したからね」ドヤーン

フィアンマ「いだだだだ……」サスサス

アックア「頭じゃなくて良かったと考えればいいんじゃないか?」

フィアンマ「不幸中の幸いか。頭蓋骨もぶち抜く強靭な歯の持ち主だからな」

アニェーゼ「えっと……お疲れ様です」

フィアンマ「はぁ……」


フィアンマ「噛みグセとか、アウレオルスの教育はなってないな」

インデックス「アウレオルスは悪くないよ」

インデックス「この技は私が自分の身を守るために考案したものなんだよ」

アニェーゼ「考案もクソもねぇんじゃ……すごい原始的ですよ?」

インデックス「そこは突っ込んではならないんだよ」

フィアンマ「それにしても、こんな凶悪なクセを直してやらないって奴はどういう思考をしてるんだ?」

アックア「ドMだったに違いない」

インデックス「アウレオルスに噛み付いたことはないんだよ」

フィアンマ「……俺様はそんなに悪いことしたか?」


インデックス「フィアンマの肉はあまり美味しくなかったんだよ」

フィアンマ「人肉を食したのか!? 流石に肉までは削れてないはずだが」チラッ

インデックス「少し削れたよ」

フィアンマ「……今度やったら口封印な」

インデックス「はっ!? こんないたいけな少女にそんなことができちゃうの!?」

フィアンマ「できちゃうできちゃう。俺様は割と冷酷だからな」

フィアンマ「心遣いを期待するのは間違いだ」

インデックス「うわぁ、素直に怖いんだよ」

フィアンマ「安心しろ、俺様もお前が怖いからな」


フィアンマ「っと、少し手洗い行ってくる」

アックア「食事中にそういうことを言うのはマナー違反である」

フィアンマ「俺様は食事してない!」

アックア「人の食事中にそういう言葉を発するのはマナー違反である」

フィアンマ「オブラートに包んでもダメってどういうことだよ……」

フィアンマ「とりあえず行ってくるからな」

アニェーゼ「場所大丈夫ですか?」

フィアンマ「多分な、さっき見たはずだ」

フィアンマ「もし万が一分からなかったら聞くつもりだ」

インデックス「分かったんだよ、行ってらっしゃい」

フィアンマ「ああ、帰ってくるまでに食べ終わっておけよ」

インデックス「努力はするね」

今日はここまで。
明日は原作読みつつ書きためるからお待ちください……
おつありですー


フィアンマ「……さてと、どうにか監視の目から逃れてきたわけだが」

フィアンマ「どうしようかね」

フィアンマ「……とりあえずトイレ行っておくか」カツカツ

「聞いていたより根は真面目な様子……」

フィアンマ「ん? 俺様のことを知ってるのか」クルッ

フィアンマ「誰だ?」

???「申し遅れました、リドヴィア=ロレンツェッティと申します」

フィアンマ「……ああ、聞き覚えがあるな」

フィアンマ「布教命のマゾ女、だったかな?」

リドヴィア「ええ、布教することはされた相手を救うことと同義ですので。マゾ女というところは心当たりありませんが」


フィアンマ「……」

フィアンマ「あ、悪いな。つい黙ってしまった」

リドヴィア「いえ、私達人間より天使に近いという貴方に謝る必要などないですので」

フィアンマ「……そう言われると逆に困るな」

リドヴィア「……?」

フィアンマ「まあいいや、何の用だ?」

フィアンマ「用もないのに俺様に話しかけてくるはず無いだろうしな」

リドヴィア「そんなことはないです」

リドヴィア「布教が最重要項目とは言えど、神の右席のメンバーなどそうそう見ることもできない存在ですので。興味で話しかけるかもしれません」

フィアンマ「オーケーオーケー。気持ちは良くわかったから本題入ろうじゃないか」


リドヴィア「分かりました、忙しいところを呼び止めてしまったわけですので」

フィアンマ「別に忙しくはないけどな」

リドヴィア「昨日今日とローマ正教内の視察をしていると聞いたんですが……」

フィアンマ「そうだが、実際は気になるところにお邪魔しているだけだからな」

リドヴィア「でしょうね。シスターの皆が赤い人とゴルフウェアの男とシスター・アニェーゼが共に行動しているところを目撃したと噂してましたので」

フィアンマ「赤い人って……」

リドヴィア「イケメンだとか言ってましたね。意味は理解しかねますが」

フィアンマ「よし、赤い人と言ったことを許そう」ウン


リドヴィア「その際に優秀な部下を手に入れたとか……」

フィアンマ「あー、オリアナのことか」

フィアンマ「誰が優秀な部下だなんて噂を流したんだ……いや、確かに口さえ開かなければ優秀だが」

フィアンマ「……で? それがどうしたんだ?」

リドヴィア「少し私の計画に力を貸していただけないかと思いまして」

フィアンマ「計画だと?」

リドヴィア「ええ、最近はどこの部署も人材不足ですので。なかなか人を出してくれないんです」

フィアンマ「……別にオリアナを遣わせるのはいいんだが、計画の内容が分からないと……」

フィアンマ「それにオリアナが了承するかも分からないしな」


リドヴィア「ええ、計画はきちんと伝えるつもりですので」

フィアンマ「じゃあオリアナ呼んでおくか」

リドヴィア「よろしくお願いします」

フィアンマ「……」ピポパポ

プルルルル ガチャ

オリアナ『もしもし……』フアァ

フィアンマ「もしもし、俺様だ」

オリアナ『ああ、お兄さんね。何の用かしらん』

フィアンマ「えっとだな……」

オリアナ『もしかして欲を発散したくなっちゃったの?』

オリアナ『それなら部屋に戻ってきたらいいことしてあげるけど』

フィアンマ「……切るぞ」


オリアナ『ちょっと待ってよ、お兄さん。そういうところも好きだけど、何か用件があっての電話でしょう?』

フィアンマ「分かってるなら無駄な話挟むな」

オリアナ『うふふ、ごめんね。ついクセで』

フィアンマ「嫌なクセがあるものだな」

オリアナ『お褒めに預かり光栄です』

フィアンマ「……十分くらいで出てこれるか?」

フィアンマ「少し会わせたい奴がいてな」

オリアナ『別に暇人だから構わないけど、開かないのよん、ここ』

フィアンマ「それは……今解除した」


オリアナ『あ、本当に解除されてる……地味にショックねぇ』

フィアンマ「ん? どうしてだ、外に出れるんだぞ?」

オリアナ『私が何時間も試行錯誤して開けようとしたのに開かなかったドアがこうも簡単に開いてしまうと、努力が水の泡に……ってね』

フィアンマ「なるほどな。それは実力の差だから埋めるしかないんじゃないか」

オリアナ『そうね。でもローマ正教大好き人間に敵うほど魔術できるようになるのかな』

フィアンマ「けっ、本物を見てからそういうことは言った方がいい」

オリアナ『本物?』

フィアンマ「今俺様の目の前にいるのはローマ正教大好き人間というよりは布教こそが全て人間だが似たようなものだろ?」


オリアナ『ふーん、その人に私を会わせたいってことね』

フィアンマ「そういうことだな」

オリアナ『分かったわん。お兄さんがどこにいるのか教えてちょうだい?』

フィアンマ「……言ってわかるのか?」

オリアナ『突撃かける前にその敷地内の地図を調べて逃げ道をいくつか用意しておくのはこっちでは常識なのよ』

オリアナ『だからすぐに行けるわ』

フィアンマ「……情報漏洩とはな。セキュリティゆるゆるじゃないか」

オリアナ『仕方ないことよ。だって凄い人数が出入りするんだもの』

オリアナ『むしろ部屋の配置図が漏れる程度で済んでいることに私は驚いたものよん』


フィアンマ「……一応結界の修繕などを担当している部署に伝えおくべき事項だな」

フィアンマ「とりあえず……食堂に一番近いトイレまで来い」

フィアンマ「分かるって言ったんだから細かい説明は省かせてもらうぞ」

オリアナ『ふむふむ、うん、場所は大丈夫かしらね……今すぐ行けばいいんでしょう?』

フィアンマ「まあ、早ければ早いほどいい」

オリアナ『了解! じゃあ今から行くからちゃんと身体を清めて待っててねん』

ピッ

フィアンマ「一応注意しておくが、卑猥人間だから覚悟しておくんだな」

リドヴィア「え、それはもう少し早く言っていただきたかったのですが」

フィアンマ「それは、済まない」

とりあえずここまで!
おつありですー


………………………

オリアナ「ふう、少し時間かかっちゃったかしら?」

フィアンマ「いや、問題ない」

オリアナ「デリバリーへるもごっ」バッ

フィアンマ「少し黙っていろ」

オリアナ(そういうプレイがお好みなのかしら?)

フィアンマ(通信の魔術もやめろ)ハァ

オリアナ「もう、かたいわね」

リドヴィア「……随分べったりくっついてますが、そういう関係なんですか?」

フィアンマ「誤解しないでほしい。本当にただの部下だ」


オリアナ「とりあえず自己紹介しておくわね」

オリアナ「お姉さんはオリアナ=トムソン、よろしくね」

リドヴィア「私はリドヴィア=ロレンツェッティです。リドヴィアとでも呼んでくれれば」

オリアナ「で? お兄さんはお姉さんとお嬢ちゃんを引き合わせて何がしたいのかしらん?」

フィアンマ「一応先に言っておくが、お前が想像しているような事ではないことだけは確かだ」

オリアナ「お兄さん、私を変態要員にするのはやめてね? これでも今は仕事モードなんだから」

フィアンマ「お前……ここに来た時の言動をもう忘れたか」

オリアナ「あー、あれはミス。忘れてちょうだい」

フィアンマ「いや、それはできないな」


リドヴィア「えっと、そろそろ話しても良いですか?」

オリアナ「ええ、もちろん」

オリアナ「何の話か知らないけど」

フィアンマ「リドヴィアのある計画に人手が必要らしくてお前が呼ばれたってわけだ」

オリアナ「へぇ、随分信用があるのね」

リドヴィア「バックが凄い人ですし、手綱はちゃんと握ってくれている思ってますよ」

フィアンマ「そんな期待をされても困る」

フィアンマ「とにかく、後の話は二人でしてくれ」

フィアンマ「俺様は忙しいからな」

オリアナ「うーん、それもそうね。せっかく外に出してもらえたんだし、お兄さんにずっと監視されてるのは勘弁かな」


フィアンマ「やっぱり俺様も聞いてるか?」

オリアナ「いやいや、お兄さんは視察を続けた方がいいと思うわよ」

オリアナ「みんな持たせてるんだろうし」

フィアンマ「ああ!!! そうだった!!」

フィアンマ「ずっと監視とか言ってる場合じゃなかったな」

オリアナ「うんうん、そうでしょう?」

リドヴィア「あの、では協力の方は……?」

フィアンマ「受けるか受けないかはオリアナが決めていい。俺様は面倒だし関わらない」

オリアナ「了解よん」


リドヴィア「いいんですか? 計画を聞かなくても」

フィアンマ「ああ。聞きたくなったらオリアナに聞くから心配するな」

フィアンマ「俺様は部下の自由意思は尊重するからな」

フィアンマ「だが、もし問題があったら全然言ってくれて構わないからな」

リドヴィア「分かりました」

フィアンマ「んじゃあ、俺様は待たせてる奴らがいるから行かせてもらうぞ」

オリアナ「ええ、何があったかお姉さんにも教えてね?」

フィアンマ「ああ、話せる限りのことは話してやるから、ちゃんということ聞いてやれよ」

オリアナ「はいはい」

リドヴィア(一体どんな関係なのでしょうか?)


フィアンマ「ただいまー」

インデックス「遅すぎなんだよ」ガツガツ

フィアンマ「えっと、もう1時間近く経ったよな?」

インデックス「うん、そうだけど……?」

フィアンマ「まさか……」

アニェーゼ「フィアンマさんがお手洗い行ってる間もずっと食べてましたよ」

フィアンマ「は、はぁ、それは胃を苦しめて快楽を得るという新種のマゾか?」

インデックス「まぞ? 私は食べ物を食べてる間は間違いなく幸せなんだよ」

フィアンマ「そうか……言ってもムダってやつかな」

フィアンマ「だが、見てるだけで胃がキリキリしてくるからそろそろやめにしないか」


インデックス「むー、でも久しぶりに大量のご飯食べられたしいいかな」

インデックス「みんなありがとなんだよ」ニコッ

フィアンマ「ははっ、感謝されるとはな」キリキリ

アニェーゼ「そんな表情で言っても……」

フィアンマ「胃が痛いのが治らないんだよ」

アックア「そういうときは腹パンが効果的であるそうだ」

フィアンマ「え?」

ブンッ

フィアンマ「うごっ」バタ

アニェーゼ「やりたかっただけじゃねぇですか」


フィアンマ「……」ピクピク

インデックス「フィアンマ? 大丈夫?」ユサユサ

インデックス「ねえ、アニェーゼ、フィアンマが起きないんだよ」

アニェーゼ「まあ、理不尽に殴られてたし仕方がねぇですよ」

アニェーゼ「でも起こさないと……」ユサユサ

アックア「夜になってしまうのである」

インデックス「いや、あなたのせいなんだよ?」

アックア「知らないな」

アニェーゼ「まさかの責任放棄!?」


フィアンマ「……」ムクッ

フィアンマ「アックア……」

アニェーゼ(めちゃくちゃ怒ってるじゃないですか)

インデックス「あ、フィアンマが起きたー!!」ツンツン

インデックス「大丈夫? 心配したんだよ」

フィアンマ「それはありがとうな。アックアよ本気の腹パンは確かに効いたから大丈夫だ」

アックア「あの程度、本気でもなんでもないのである。まあ、撫でよりも少し力を込めた程度だと考えてもらえると分かり易いか」

アニェーゼ「え、体くの字に曲がってましたけど」

フィアンマ「いや、良く考えたら、防御も何もしてない俺様がアックアの本気の殴りを受けたらノーバウンドで……」

フィアンマ「死んでいたかもしれない」


アニェーゼ「ノーバウンドで、の続きを言うのが面倒になったからか結論だけ言いましたね」

インデックス「解説ありがとなんだよ」

フィアンマ「とにかく胃のキリキリは治ったから心配いらない」

フィアンマ「ただ、殴られたせいで吐き気がおさまらなくなったがな」ハハハ

アニェーゼ(笑い事じゃねぇですよ!!)

インデックス「とりあえずここでもどすのはやめて欲しいんだよ」

インデックス「吐きたいなら私がトイレまで背中さすってついて行ってあげるから」

フィアンマ「いや、吐かないけどな」

アックア「少女に背中をさすってもらえるなんてご褒美である」

フィアンマ「お前変態か?」

インデックス「変な想像しないで欲しいんだよ!」ガブウッ


インデックス「いたた……アックアは硬すぎて、歯が折れるかと思ったんだよ」

アックア「折れなくて良かったな。もし折れていたら、アウレオルスにブチ切れられるぞ」

アックア「フィアンマが」

フィアンマ「責任転嫁!?」

アニェーゼ「こういう時トップのせいにされちゃいますよね」

アニェーゼ「気持ちわかりますよ」

フィアンマ「やめて、そういう同情はいらないから……」

フィアンマ「だってこの場合は自己責任だろう?」

インデックス「アックアが変なこと言わなければ良かったんだよ」プンスカ

ここまでー!

アックアもどんどんボケ側に…


フィアンマ「……そろそろ満腹になったか?」

インデックス「仕方無いね。ずっとここに居座っていても、つまらないしね」

フィアンマ(やっと気づいてくれたか、俺様嬉しい)

アックア「ということは、ようやく移動であるな」

アニェーゼ「しばらく食べ物は見たくないですね」ハハハ

フィアンマ「悪いがその願いは叶わない」

フィアンマ「アニェーゼ、アックア、インデックス空腹対策にカロリーメイトを持っておけ」

アニェーゼ「なるほど、了解です」ゴソゴソッ

インデックス「私をなんだと思ってるのかな?」

フィアンマ「大食いシスター」ザンッ

ガブッ


インデックス「はえ?」キョロキョロ

インデックス「外した?」

フィアンマ「俺様が何度も大人しくかじられてやると思ったら大間違いだ」スタッ

フィアンマ「何されるか分かっていたら、避けるくらいわけないに決まってるだろう?」クツクツ

インデックス「なっ、あんなところに!? 一体何の魔術を使ったの?」

アックア(……禁書目録の前で第三の腕を使うのはまずいだろう……)

アックア(気付いてないからよかったものの……)ハァ

アニェーゼ「瞬間移動!? もしやフィアンマさんも聖人だったっていうオチですか?」

インデックス「いや、間違いなく魔術使ってたんだよ。分からないんだけど」


フィアンマ「まあまあ、分かりもしないことを延々と考え続けても時間の無駄だ」

フィアンマ「その知識はもっと役立つように使うべきだろ」

インデックス「役立つように?」

フィアンマ「そうそう」ニヤ-

アニェーゼ「次は風の吹くまま気の向くまま、なんですか?」

フィアンマ「いや、インデックスの知識を試してやろうと思う」

インデックス「試す? ふふっ、受けて立つよ」ニッ

フィアンマ「じゃあアニェーゼ、案内人として頑張れよ?」

フィアンマ「霊装の保管場所だ」


………霊装保管室………

アックア「この場所は私も知らなかったのである」

フィアンマ「まあ、アニェーゼが知ってる保管場所ってことは戦闘用の霊装が保管されている場所だろうからな」

フィアンマ「アックアは使う機会がまずない」

アックア「なるほど」

アニェーゼ「……戦闘用以外の霊装は別に保管されているっつーことですか?」

フィアンマ「そういうことだ。それらは一つ一つの効果が強すぎるから簡単に入れるような所にはおいてないのさ」

フィアンマ「俺様はどこにあるか知ってるけども」

インデックス「細かいことはどうでもいいから入ろうよー」

インデックス「私を試すんでしょ?」

フィアンマ「その目的半分、俺様の知識チェック、更新半分だな」

アニェーゼ「じゃあ、開けますよ」ガチャ


アックア「ただの鍵……ではないのであるな」

アニェーゼ「ええ、中の霊装を盗まれたら困るので、扉を開けることの出来る人は限られてんです」

アニェーゼ「鍵をさして、魔力を流してやると扉が判断して開けてくれると」

フィアンマ「ほう、アニェーゼを呼んでおいて正解だったな」フムフム

フィアンマ「まあ、いなかったらアックアに破壊させればよかったんだが」

アックア「そんなことはしない」

フィアンマ「しないなら俺様が破壊しても、インデックスに解析させて俺様が解除しても良かったんだがな」

アニェーゼ「私の存在意義は!?」

フィアンマ「……」ス-ッ

アニェーゼ「目を逸らした!?」


インデックス「安全に開けるのが一番なんだよ、そんなに気に病むことはないんだよ」

アニェーゼ「ううう、フォローが身にしみます」

ギイイイィ

フィアンマ「建て付け悪いな」カツカツ

アックア「重厚な感じを出すためのものではないのか」スタスタ

フィアンマ「だとしたらどうでもいいところに必死になってるわけだな」カツカツ

フィアンマ「っと、アニェーゼ、インデックス、置いていくぞ」

インデックス「ああっ! 待って欲しいんだよ!!」トテトテ

アニェーゼ(最悪扉が閉まってもまた開けられるんですけどね)スタスタ


フィアンマ「ふむ、思ったより数が多いんだな」

アニェーゼ「アニェーゼ部隊だけでもかなり人数いるんで」

フィアンマ「それもそうだな。全世界20億の中心部だから何がいくつあっても不思議ではないか」

インデックス「だけど、結構珍しい霊装もたくさんあるんだよ」トテトテ

インデックス「少し触ってみてもいいかな?」

フィアンマ「ああ、魔力を練れないお前なら触れても問題ないだろう」

インデックス「へぇ、よく知ってるね」

フィアンマ「俺様は博識だからな。当然のことを言われても困るぞ」フフフン

アックア(すごいご満悦そうであるな……)


フィアンマ「どうした?」

アニェーゼ「魔術勝負じゃないんですか?」

フィアンマ「さっき言っただろう? インデックスは誰かさんのせいで魔力を練れないんだ」

フィアンマ「そんな奴に魔術勝負を挑むのは酷だろう。それこそ赤子の手をひねるどころじゃないぞ」

アニェーゼ「……確かに。では知識勝負ってことでいいんですね?」

フィアンマ「ああ、自信はある」

アニェーゼ「……それでは……」スッ ガチャ

アニェーゼ「これ、霊装としての効果は……というものですが」

アニェーゼ「この霊装はどんな伝承、伝説を元にしたものでしょうか?」

>>349-350
無意識だった……気を付けなくては。
ここまででーす!

いや、修正して欲しくて書いたわけじゃないんだ。
面白いし、>>1の好きに書いちゃいなよ。


…………………………

インデックス「圧勝だね!」ニコニコ

フィアンマ「か、完敗だ……」ズーン

アックア「であろうな」

アニェーゼ「まあ、そうでしょうね」

フィアンマ「……た、たまには敗北も経験すべきなのだろうさ」

アニェーゼ(目が血走ってる……とてつもなく悔しがってんじゃねぇですか)

アックア(それでもブチ切れるのを我慢しているあたりは評価するべきであるな)パチパチ

フィアンマ「なぜ手を叩いている……」

アックア「ただの拍手である」パチパチ


フィアンマ「くそっ、とりあえず問題のおかげで俺様の知識の更新も行えた」

フィアンマ「それで良しとしようじゃないか、俺様よ」ウンウン

フィアンマ「ということで、そろそろ出るぞ」

アニェーゼ「え、もう出るんですか?」

フィアンマ「もうって、あんなに問題を出すからもうじき日が落ちる時間だぞ?」

アックア「ということは」

フィアンマ「ああ、例の小麦畑に行かなくてはならない」

アニェーゼ「そうですね、確かにそろそろ活動時間に入りますね」


インデックス「例の小麦畑って何?」

フィアンマ「夜な夜な小麦をせっせと育てる怪しい人影がいるらしいぞ」

フィアンマ「もしかしたら、幽霊とかがいるかもしれないな」ニヤニヤ

インデックス「そ、そんなものはこんな十字架だらけのところに現れたりしないもん!」

インデックス「負けたからって意趣返しに脅すのは卑怯なんだよ」

フィアンマ「卑怯で結構。俺様は大人げない人間なのさ」クツクツ

フィアンマ「さて、怖がっているインデックス嬢、俺様と不気味な小麦畑へ繰り出そうじゃないか」ニヤァ

アニェーゼ「大丈夫なんですか?」

アックア「ああいう手合いは放置が最良と聞く」

インデックス「放置放置……」ブツブツ


フィアンマ「……無視か」

インデックス「だって怖いんだもん! 私は行きたいないんだよ」

フィアンマ「そうだな……もし幽霊とやらが出たとしても俺様がばっさばっさなぎ倒してやるから怖がらなくてもいいんだぞ?」

インデックス「いや、フィアンマはお化けに倒されちゃうよ?」

フィアンマ「かなり舐められてるな……」

フィアンマ「ま、もし本当に万が一のことがあったら禁書目録を使ってでも逃がしてやるから安心しろ」ポンポン

インデックス「あうう……」

フィアンマ「ただしアックアは道連れだが」

アックア「だろうな」


インデックス「そっか、そこまで言うなら行ってあげてもいいんだよ」

インデックス「で、私も戦うの手伝うんだよ」

フィアンマ「それじゃあ意味ないが……ありがとうな」

インデックス「うん!」

フィアンマ「幽霊はアックアに任せて、俺様がお前らを守って逃げるのも悪くないな」

インデックス「おおー、それはナイスアイデアだね!」ウンウン

アックア「おい」

アニェーゼ(あ、これ絶対フィアンマさんも怖いだけのやつだ)


フィアンマ「よし、役割分担もできたことだし、突撃と行こうか」

インデックス「ほ、本当に行くんだね?」

フィアンマ「ああ、腹くくるんだな。俺様も全く怖くないわけじゃないんだから」

インデックス「そ、そうだね。頑張るよ」

アックア(……戦闘になることはありえないのであるが……)

アニェーゼ「そんな難しい顔してどうしたんです?」

アックア「……いや」

アニェーゼ「あ、もしやアックアさんも怖いとか?」

アックア「いや、私は正体を知っているから、フィアンマたちの気分を削がないために黙っていようと思っただけだ」


アニェーゼ「ほうー、その正体って何なんですか?」

アックア「アニェーゼにも言わないのである。万が一口をすべらせたら子どもたちの夢を壊してしまう」

アニェーゼ「夢とか言ってますけど、あの二人が驚いたり、怖がったりするのを楽しみたいだけですよね」

アックア「ふっ、言うようになったものだ」

アックア「確かにそれもあるにはあるが」

アニェーゼ「あるんですか」

アックア「当たり前である」

アックア「あの憎らしいフィアンマが飛び跳ねて驚くとは思えないが、もしそうなったら非常に面白いだろう?」

アニェーゼ「ひでぇ趣味してるんですね」

アックア「?」


フィアンマ「ええと……出口はこっちだったか?」カツカツ

アニェーゼ「いえ、あっちです」ユビサシ

インデックス「博識なフィアンマは出口も分からないんだね」

フィアンマ「トゲのある台詞を吐くな。インデックスはもっと見ため通りの少z……」

フィアンマ「いや、なんでもないな」

インデックス「そこまで言っておいて続きを言わないと気になるんだよ!」

フィアンマ「けっ、勝手に気になっていればいいさ」

アックア「おーい、さっさとするのである。口動かしながら歩けないのか?」

フィアンマ「少しぐらい待ってくれても良くないか……」タタッ

インデックス「ああー、待ってよー」トテトテ


ズテッ

インデックス「うごっ」

フィアンマ「……」

インデックス「……」ズキズキ

アニェーゼ「だ、大丈夫ですか?」タタッ

インデックス「……血、なんだよ」

フィアンマ「……これはアックアが急かしたせいだな」

アックア「いや、お前がインデックスのペースに合わせて走らなかったせいである」

アニェーゼ「責任の擦り付け合いはどーでもいいんで、さっさと手当しないと」


二人「……悪かった(のである)」

アニェーゼ「痛いですか?」

インデックス「だ、大丈夫なんだよ」フルフル

アニェーゼ「……消毒してから回復魔術ですね」

フィアンマ「む? 消毒がいるのか?」

フィアンマ「ルチアの時はただ回復魔術をかけただけだったが」

アニェーゼ「緊急の時はそんな暇ないですけど、今回は余裕があるから後々のために消毒した方がいいんですよ」

アニェーゼ「膿んだりしたら困りますし」

フィアンマ「はぁ、さすがリーダーやってるだけあるな」

アックア「一方、実質リーダーはそういう点では無知というわけであるな」

フィアンマ「ふん、俺様は怪我しないからいいんだ」

今回はここまで!!
>>360
うれしいことを……


………………………

アニェーゼ「消毒液が少ししみると思いますが、我慢してください」ツンツン

インデックス「づっ……」

フィアンマ「……痛そうだな」

フィアンマ「いや、かじられた俺様の方がよっぽど痛い思いしたんだろうけど、それを言うのは野暮ってもんだ」

アックア「ガッツリ言ってるのであるが……っと、それをいうのは野暮であるな」

アニェーゼ「……」ビチャー

インデックス「ちょ、アニェーゼ! 激痛なんだよ!!」ビクッ

アニェーゼ「あ、すみません。ばかばかし過ぎて気が抜けちまいました」


インデックス「あああ……本当にしみるんだよぉー」

アニェーゼ「すぐ治るんで待っててくださいねー」

フィアンマ「……」パアァ

アニェーゼ「フィアンマさん?」

フィアンマ「……手当てを手伝ったからこれでさっきのはチャラだ」

インデックス「あ、ありがとう!」

フィアンマ「……また転んだら面倒だから、自分のペースで歩くんだな」

インデックス「む、子供扱いされてる気がするんだよ!」

フィアンマ「実際子供だろ。アックアの奴は一人で勝手に行かせればいい」

フィアンマ「その為に案内はアニェーゼに任せてるんだしな」

アックア(な、仲間はずれは良くないのである)


フィアンマ「さて、じゃあ今度こそ行くか」

インデックス「フィアンマー、お腹がすいたんだよ」

フィアンマ「……これでもかじってろ」スッ

アニェーゼ「早速カロリーメイトが役立つとは!!」

アックア「着くまで持つのであるか?」

フィアンマ「三箱持ってるからまず大丈夫だろう」

インデックス「よっし、ガンガン食べるよー」

フィアンマ「自重しろ」




『夜のバチカン』



インデックス「……うう、だいぶ薄暗いんだよ」ガサガサ

フィアンマ「完全に日が落ちきってないあたりが気味悪さを増幅させているような気がするな」ガサガサ

アニェーゼ「もう少しなんであんまガタガタ言わねぇでください」

アニェーゼ「あっちに気付かれちゃここまでこっそり裏道使ってきた意味がなくなるんで」

フィアンマ「なるほど、それは悪かったな」

アックア「お前は動きやすくていいな」バキバキ

フィアンマ「あまり枝を折るなよ……」

フィアンマ「一応言っておくが別に俺様は身長小さいわけじゃないぞ?」

アックア「分かっている。私に比べての話である」

フィアンマ「……あっそ」


アニェーゼ「あ、そろそろ見えてきます」

インデックス「で、でそうな雰囲気が漂ってるね」

フィアンマ「お、おい、そんなことを言うな……」ガタガタ

フィアンマ「ああ、足が震えるだろう!」

インデックス「はい、シャーラップだよー。深呼吸して落ち着いてくださーい」ポンポン

フィアンマ「おい、俺様は子供ではないからな?」

インデックス「え、そうなの!?」

フィアンマ「……二度と口聞けなくするぞ」

アニェーゼ「しっ! 人影が現れました!」


フィアンマ「すぅはぁ……」ドキドキ

アニェーゼ「見てください」ユビサシ

インデックス「……本当だ、畑を耕してる」ヒョコッ

アックア「……」

インデックス「フィアンマも見てみなよ」クイッ

フィアンマ「こ、こころの準備が!」

インデックス「んもー、エリマキトカゲが逃げちゃうよ?」

フィアンマ「エリマキ……トカゲだと?」ヌッ

エリマキ-


フィアンマ「……なんだか見覚えのあるシルエット……」

アックア(……バレたか?)

フィアンマ「……いや、だが、俺様の知り合いにはこんな奇異なやつはいなかったはずだが……」

アックア「だろうな」

アニェーゼ「……なんか言ってますね」

インデックス「……本当だ」

「よいしょー、よいしょー」ガスッガスッ

フィアンマ「……よいしょーって言いながらこっちの頭を砕きに来たら怖いな」ボソッ

インデックス「なっ!?」ビクッ


インデックス「変なことを言わないで欲しいんだよ!」プンスカ

フィアンマ「ん、思ったことを言っただけなんだが……まあ、悪かったな」

「よいしょー、よいしょー」

アニェーゼ「もう少し明るかったら正体がわかるんですけどね……」ウ-ン

フィアンマ「正体なんてないんじゃないか?」

フィアンマ「多分霊の仕業に違いない」

インデックス「ええっ!? 本当にお化けなの?」

フィアンマ「あくまでも俺様の目にはそう見えると言っただけだ」

アックア「幽霊とか正気であるか?」


フィアンマ「……じゃあお前はなんだと思う」

「人間ですねー」

フィアンマ「おいおい、アックア、調子に乗るのもいい加減にしろよ?」

アックア「……何も言ってないが?」

三人「え?」

シーン

???「どうしたんです? 反応がなくなりましたねー?」ガサッ

フィアンマ(に、逃げるぞ!!)ガシッ

インデックス「うわああああ!!!」ヒシッ

アニェーゼ(本当に幽霊が出るなんて!!)ダッ

アックア「え」

???「あれ?」

今日はここまでー!


フィアンマ「なななっ、なんなんだ!!」ダダッ

インデックス「うおお! フィアンマ速ーい!」ビューン

アニェーゼ「インデックスちゃんだけおんぶされるとは……」ダダダダッ

フィアンマ「アニェーゼは自分で走った方が早いだろう!」

アニェーゼ「ですね」ウン

フィアンマ「!!」ズザッ

インデックス「ど、どうしたの? フィアンマ?」

アックア「待つのである」ガシッ

フィアンマ「アックア!? 離せ! お前は自分で走れるだろう!!」

アックア「そういう事ではないのである」

アニェーゼ「って私も掴まれてるじゃねぇですか!」アワワ


アックア「ふう、あの人影は幽霊ではないのである」

フィアンマ「は? なぜそんなことを言いきれる」

アックア「フィアンマ、あれは本当にお前の知り合いなのである」

???「はぁはぁ、さすがにそんな全速力で逃げられると疲れますねー」

フィアンマ「て、テッラだと!?」

テッラ「私の畑を見学したいのなら先に言ってくれればいいんですがねー?」

フィアンマ「おい、ちょっと待て……」

フィアンマ「もしや、あの小麦畑はお前の……」

テッラ「ええ、そうですが……どうかしました?」

フィアンマ「いや……怯えて損をした気分だ」


テッラ「怯えたって、ちゃんと報告した筈ですけどねー」

テッラ「バチカンのはずれに小麦畑を作ってもいいか、と」

フィアンマ「……ん? 確かにそんなこと言っていたか」

フィアンマ「悪いな」

インデックス「え? つまりフィアンマはこの畑がただの畑だってことは知ってたってことなの?」

フィアンマ「正しくは忘れていただが」

インデックス「むー、怯えて損をしたって言いたいのは私なんだけど」ムスッ

アニェーゼ「ははは……気が抜けちまいましたね」


フィアンマ「とりあえずカロリーメイトで許してくれ」スッ

インデックス「ふん、乙女の心を弄ぶのは重罪なんだよ!!」ベ-

フィアンマ「な、なんだって?」

フィアンマ(秘技、餌付けが効かないだと!?)

テッラ「そろそろ夕食の時間ですし、小麦料理食べていきませんかね?」

テッラ「最近のフィアンマの噂の真相も聞かせてもらいたいところですしねー」

テッラ「どうです?」

インデックス「私も行くんだよ!」

フィアンマ(なるほど、餌のレベルが足りなかったのか)ナットク


テッラ「……ん? あなたは?」

フィアンマ「禁書目録……インデックスだ」

テッラ「イギリス清教の……」

フィアンマ「お客さんだから手荒な真似や、不当な扱いなどをしたら承知しないからな」

テッラ「……なるほど、気をつけるとしましょう」

アニェーゼ「ど、どういうことです?」コソッ

アックア「奴はローマ正教徒以外の人間をひどく軽視する傾向にあるのである」

アックア「下手したら人間とすら思っていないだろうな」

アックア「いわば過激なローマ正教徒といったところだ」


アニェーゼ「だから警告をしていたってことですか」

アックア「まあ、そうだな」

アニェーゼ「同じ十字教なのに……不思議なもんですね」

アックア「自分で言うのはなんだが、私と奴は相容れない関係であるから、考えを理解したいとも思わないのでな」

アックア「詳しくはフィアンマに聞くといい」

インデックス「こそこそ話してどうしたの?」

アニェーゼ「どんな料理を振舞ってもらえるのかなーって話してただけです」

インデックス「なっ、そういう話なら仲間はずれしないで欲しいんだよ!!」ムスー

アニェーゼ「あ、すみません」


フィアンマ「小麦をここで栽培しているというのは分かったんだが、なぜ夜に作業をするんだ?」

テッラ「おや、それは説明しませんでしたかねー?」

フィアンマ「してたか? まあ、してたとしても忘れたからもう一度説明しろ」

テッラ「基本的に私が夜型の人間だからという至極単純な理由ですよ」

テッラ「昼間は働く気が起こらないという」

フィアンマ「なるほど、ダメ人間か」

インデックス「遅寝遅起きってこと?」

テッラ(……子供に正しい信仰を求めるのは酷ですかね……)チラ

インデックス「あれ、聞こえなかったのかな……」

テッラ(それに、アックアとフィアンマとの関係に角が立つようなことは避けたい……はぁ)


インデックス「……ねえ」

テッラ「はぁ……何か言いましたか?」

インデックス「あなたは遅寝遅起きなの?」

テッラ「……遅寝でも遅起きでもありませんねー」

テッラ「ただ単に昼夜が逆転しているだけですよ」

フィアンマ「それを遅寝遅起きって言うんじゃないのか……新たな発見だな」ウンウン

アニェーゼ「いや、昼夜逆転=遅寝遅起きで間違いねぇと思いますよ」

フィアンマ「なっ!? じゃあお前は俺様に嘘をついたということか!!」ムカー

テッラ「ははは、冗談冗談」


フィアンマ「いいか、冗談というのは皆が面白いなーと笑えるものでないとアウトなんだぞ」

アニェーゼ「新たな名言来ましたね」

テッラ「冗談がそんな高度な物だったとは……」

フィアンマ「まあ、あくまでも俺様の中での定義だが」

アックア「そんなところだろうと思ったのである」

アニェーゼ「ですね。悪口はってやつと同系統ですよ」

フィアンマ「む、俺様の論法がバレ始めているのか?」

インデックス「きっと、分かり易いんだよ」

フィアンマ「なるほど」

今日はここまで!!
乙ありですー。


テッラ「……話は食べながらするとして、移動しませんかねー?」

フィアンマ「ああ、そうだな。そろそろ空腹怪獣が目覚める頃だ」

フィアンマ「二人ともカロリーメイトでインデックスの食欲をコントロールしておけよ?」

アックア「そうであるな。またかじられるのは勘弁だろう」

フィアンマ「ああ、結構痛いからな」

アニェーゼ「移動時間くらい我慢できるんじゃ……?」

インデックス「私のことをなんだと思ってるんだよ」ムッ

フィアンマ「大食いシスター」

アニェーゼ(デジャブ……)


フィアンマ「……あれ? 来ないんだな」

フィアンマ「せっかく回避のための魔術の準備をしていたのに……」

インデックス「だって、そこのエリマキさんに難癖つけられるかもなんだもん」ボソ

フィアンマ「……もしかしてなんか言われたのか?」

インデックス「っ……何でもないよ!!」ギラ

フィアンマ「じ、時間差だと!?!?」ビク

インデックス「いただきますなんだよー」ガブゥ

フィアンマ「食欲魔神がお目覚めになったああああああああ!!!!」


フィアンマ「……っつう……」ズキズキ

インデックス「上手く油断させた私の勝ちだね!!」

フィアンマ「ああ、これからは常時警戒態勢で行くことにする」

フィアンマ「アニェーゼ、これは消毒なしでも大丈夫か……」

インデックス「あれ? 三人ともどっか行っちゃったみたいだね」

フィアンマ「え、俺様がおちょくられているうちにか?」

インデックス「おちょくってなんかいないもん」

フィアンマ「……参ったな」

インデックス「フィアンマー、こんなところに地図みたいなのが落っこちてるよ?」スッ

フィアンマ「地図だと?」パシッ


フィアンマ「……」ピラ

フィアンマ「ふむ、これはバチカンの地図か」

インデックス「そうみたいだね」

フィアンマ「これがどうした?」

インデックス「ほら、ここに畑って書いてあるでしょ? で、道筋の線を辿っていくと赤い丸がある」

フィアンマ「……つまり」

インデックス「多分アニェーゼ達が落として行ったんじゃないかな?」

フィアンマ「じゃあ、この赤い丸のところまで行けば合流できるってことか?」

インデックス「多分」


フィアンマ「なるほど……」

フィアンマ・インデックス「じゃあ案内は頼んだ(んだよ)」

フィアンマ「は?」

インデックス「え?」

フィアンマ「完全記憶能力とやらをフル活用して案内してくれるんじゃないのか?」

インデックス「見たことのない道なんて覚えてないんだよ!!」

インデックス「それより、このバチカンに住んでいるフィアンマの方が道に詳しいんじゃないの?」

フィアンマ「……いや、ほとんど分からない」

インデックス「えええええ!!!」


アニェーゼ「アックアさん……」

アックア「なんだ?」

アニェーゼ「一体どうしたんですか?」

アックア「さっきのじゃ不完全燃焼だったからな」

テッラ「何がしたいのか全く分かりませんが面白そうですねー」

アニェーゼ「……ちゃんとたどり着けるんでしょうか?」

アックア「地図通りに行けば、な」

テッラ「しかし、フィアンマも禁書目録も土地勘はないのでは?」

アックア「だから丁寧に地図まで置いといたのであるぞ」


アニェーゼ「なんだか方向音痴ペアみたいな感じじゃないですか」

テッラ「へえ、そんなことまで知ってるんですねー」

テッラ「フィアンマは地図読むのがあまり得意じゃないことを隠していたはずですが」

アニェーゼ「いえ、ただの勘ですよ」

テッラ「なるほど……」

アックア「まあ、魔術以外はそこまで秀でていないからな」

アニェーゼ「ばっさり切って捨てましたね……」

アックア「いいのである」

アックア「ああいう奴は調子に乗らせないよう周りがコントロールしてやるのが重要であるからな」

テッラ「本人が聞いたらまた機嫌悪くしますねー」

アックア「その辺りの管理は……私は知らないのである」

アニェーゼ「あ、お得意の責任放棄ですね!!」


アックア「最近、責任感ない系人間のレッテルを張られているような気がするのだが……」

アックア「釈然としないのである」

アニェーゼ「事実ですからね……」

アックア「私だってこんな血の流れない平和な仕事の時くらいふざけたいのである」

テッラ「あ、移動し始めましたよ」スタスタ

アニェーゼ「ああ! 素早く、隠密な追跡ですからね!!」トトトッ

アックア「無視か……」

アックア「……ふむ、フィアンマがいないと私がこのポジションになってしまうのだな」

アックア「…………本人はいないが一応謝っておこう。悪かったのである」

ここまでー
おっつんありでーす!


フィアンマ「ええと……まず畑まで戻ってから歩いた方がいいよな」

インデックス「うん、それが一番安全だと思うよ」

フィアンマ「テッラから逃げてきた道筋は覚えているな?」

インデックス「任せて! それくらいなら簡単なんだよ!!」

フィアンマ「やはり完全記憶能力は便利だな」

インデックス「そうかもしれないけど、いいことばかりじゃないと思うよ」

インデックス「どんな便利なものでも、何かしらの欠点があるんだよね」トテトテ

フィアンマ「……確かにそうかもしれないな」スタスタ

インデックス「次の角を右なんだよ」

フィアンマ「了解」カツカツ


……………………
…………

インデックス「あ! 見えてきたね」

フィアンマ「思っていたより走ったんだな」

フィアンマ「俺様の隠されていた体力に脱帽だ」

インデックス「私のこともおぶってたもんねー」

フィアンマ「ああ、俺様は約束されたことは守るからな」

フィアンマ「その約束をどんな風に解釈するかは俺様の気分次第だが」

インデックス「おお、その結果があの火事場の馬鹿力なんだね」

フィアンマ「約束は多分関係ないな」

インデックス「そ、そうだったの!!」


フィアンマ「で、目的地までの距離は1キロないくらいか」

インデックス「結構遠いんだね」

フィアンマ「仕方がないだろ。迷子どもを放っておくのは上司失格だからな」

インデックス「仕方ないなー。フィアンマの理想とする上司像を守るために私も手伝ってあげるよ」

フィアンマ「お前は食べ物を求めて、だろ」

インデックス「邪推は良くないと思う」

フィアンマ「邪推じゃない。事実だ」

インデックス「むー……」

ガブッ


フィアンマ「いづ……まさかこの程度でお怒りになるとは予想外だった」

インデックス「れでぃーに失礼なことを言った当然の報いだね」

フィアンマ「そろそろ俺様の右腕が可哀そうになってきたぞ」

インデックス「私も可哀そうだと思う」

インデックス「私に噛まれるような発言をする人の腕ってだけでいっぱい噛まれるという運命になってしまったんだから」

インデックス「同情するんだよ、フィアンマの右腕くん」

フィアンマ「お前が噛まなければ俺様の右腕はそんな業を背負わずに済んだんだがな」

フィアンマ「あと、俺様の右腕はくんではなくちゃんだからな」

インデックス(何言ってるの、この人)

フィアンマ「可哀そうな人間を見るような目で俺様を見るな」

インデックス「あ、ごめんね」


フィアンマ「ところで、俺様はあまり地図が得意ではないんだが、インデックスは読めるか?」

インデックス「うん、余裕だよ」

フィアンマ「なら問題ないな」

インデックス「でも……そろそろお腹が空いて歩けないんだよ」

フィアンマ「そうだったな。食欲コントロールを俺様がしなくてはならないのだったな」

フィアンマ「はい、カロリーメイト」スッ

インデックス「ありがと、いただきまーす」ガブッ

フィアンマ「ぎゃあああああああ!!!」


アックア「む、あれはフィアンマが噛まれたようだな」

アニェーゼ「またですか。ホントよくやりますね」

テッラ「噛まれた?」

アニェーゼ「多分あれはインデックスちゃんの信頼の表現なんでしょうけど……」

アニェーゼ「フィアンマさんがインデックスちゃんに意地悪なことを言ったり、無神経なことを言ったりすると、怒ってフィアンマさんの腕に噛みついちゃうんですよ」

テッラ「噛みつく……?」

テッラ「あのフィアンマが敵対行為をする人間を看過するとは思えないですねー?」コンワク

アックア「悪意や敵意、害意がないのは確かだから許しているのだろう」

アックア「相手は子供だしな」


アニェーゼ(同じ土俵に立ってわいわいやってるようにしか見えませんが)

アックア(そこは……フィアンマの威厳の為に黙っておくのである)

アニェーゼ(あれ? アックアさんがフィアンマさんの擁護とは珍しい……)

テッラ「ということは、今のフィアンマはちょっとやそっとでは怒らないということですかねー?」

アックア「かもしれないが、死にたくないなら余計なことはするべきでないのである」

テッラ「それくらいは分かってますよ」

テッラ「これでもこの3人の中で一番彼との付き合いが長いんですから」

アニェーゼ「へぇ、意外な組み合わせですね」

テッラ「そうですかねー?」クビカシゲ


アックア「とりあえず声がした方へ急ぐのである」ダッ

テッラ「あの地図と逆に向かっているような気がしますねー?」シュババ

アニェーゼ「はじめてのおつかいみてーですね」タッ

テッラ「はじめてのまいごの方が近い気がしますねー」

アニェーゼ「フィアンマさんのことですし、自分たちじゃなくて私たちのことを迷子だと思ってそうですよ」

テッラ「ははー、確かにその可能性は非常に高いですねー」

アックア「フィアンマは少なからず傲慢だから当然と言えば当然であるな」

アニェーゼ「本人のいないところで……悪口大会みたいになってますね」ハハハ

アックア「曰く、本人が聞いてないところで言う悪口は陰口だとかなんとか……」


アニェーゼ「言ってましたね」

テッラ「陰口と悪口の違いってなんなんですかねー?」

アニェーゼ「そこもフィアンマさんなりの定義があるんじゃ?」

アックア「っ、噂をすれば影」

アックア「あっちにから声がしたはずあのに、またこっちに向かってきたのである」

アニェーゼ「本格的に迷い始めたんでしょうか?」

アックア「どちらにしろ今度こそ見失わないように追わなくては」

アニェーゼ「ですね」

ここまでですー!


インデックス「うーん、私の空腹センサーがこっちって言ってるんだよ」

フィアンマ「空腹センサーじゃなくて地図を見ろ」

フィアンマ「空腹センサーより正確な情報が載ってるはずだから」

インデックス「地図はもういらないよ」

インデックス「ここにインプットしたからね」

フィアンマ「なら、俺様に返せ」

インデックス「え? 読めないんじゃないの?」

フィアンマ「全く読めないわけではないから、明らかに違う方へ行っていると思ったら言う」

インデックス「それならいいんだけど……心配しなくても大丈夫だよ?」

フィアンマ「悪いが空腹センサーとか言ってる奴を案内人にするのは不安なのさ」


インデックス「むぅ、そんなこと言う人はちゃんと見返してあげるんだよ」ムスー

フィアンマ「はいはい、健闘を祈る」

インデックス「扱いが適当だと思うんだけどー」グイグイ

フィアンマ「服を引っぱるな」ブンブン

インデックス「ツンデレさんは好かれないんだよ。私みたいに可愛くあれ」

フィアンマ「……自分で可愛いって言うとか、ありえないな」

インデックス「そんなことないもん! あ、そこは右に曲がった方が近道かも」

フィアンマ「む、ちゃんとした案内もできるんじゃないか」

インデックス「べーっ、今更褒めたって喜んであげないんだよー!」


フィアンマ「子供か……?」

インデックス「だから子供扱いしないでって何度言ったらわかるの?」

フィアンマ「そんなどうでもいいこと覚えてるわけ無いだろ」ケッ

フィアンマ「それより右に曲がればいいんだな?」

インデックス「……左だったかも」

フィアンマ「はぁ!?」

フィアンマ「はっきりしないと困るんだが」

インデックス「ふーんだ。私がいないと地図も読めないフィアンマが私に文句を言う筋合いはないんだよー」

フィアンマ「よし、右だな」カツカツ

インデックス「ああー、待ってよー」トテトテ


アックア「む? 地図に道筋は書いたはずであるが……」

テッラ「違う方に向かってますねー」

アニェーゼ「ショートカットしてんじゃねーんですか?」

アックア「……ふむ、だが、フィアンマは石橋を叩いて渡るタイプの人間だったはずである」

アックア「また迷うというリスクを背負いながら、ショートカットなどするだろうか?」

アニェーゼ「リスクってほどでもないと思いますよ」

アニェーゼ「だってインデックスちゃんいますし」

テッラ「なるほど、完全記憶能力の無駄使いですねー」


インデックス「っくし!」

フィアンマ「大丈夫か?」クルッ

インデックス「う、うん、ただのくしゃみなんだよ」

インデックス「もしかしたら誰かが私の噂をしているのかも」トテトテ

フィアンマ「……入れ違いになったりしたら面倒だな」

インデックス「大丈夫、アックアは戻ってこないよ」

インデックス「多分私たちがいないことに気付きすらしないから」

フィアンマ「よく分かってるな。ついでにエリマキさんも俺様たちは放置だろうな」

フィアンマ「だが、アニェーゼに諭されて戻って来るかもしれない」


フィアンマ「それにしても……いつになったらつくんだ?」

インデックス「まだ五分も歩いてないんだよ」ハァ

フィアンマ「うるさい。俺様はインデックスをおぶってかなりの距離走ったんだぞ?」

フィアンマ「元々体力少なめな俺様にまだまだ歩けなどという酷な要求をしないでくれ」

インデックス「む、それを言われたら言い返せない……もうすぐ着くんだよ」

フィアンマ「ふむ、今この地図ではどこを歩いているんだ?」スッ

インデックス「ここだよ」ユビサシ

フィアンマ「……道筋と違う気がするが。この線をたどっていくと、裏道使わないはずだろう?」

インデックス「食べ物の匂いたどって近道歩いてるからね」


フィアンマ「」

インデックス「フィアンマ? 大丈夫?」ユサユサ

フィアンマ「おい、まさかさっきの空腹センサーとやらを頼りにして来たのか?」

インデックス「うん。でもそれを言ったらフィアンマは怒るでしょ?」

フィアンマ「……いや、もうすぐ着くんならいいんだ」

フィアンマ「ただし、万が一着けなかったりしたら許さないからな」

インデックス「うわー、こんな小さな私にそんなプレッシャーかけるとかありえないんだよ」

フィアンマ「ふん、俺様の前ではろうにゃくにゃん……」

フィアンマ「ろうにゃくなんにゃ……」

フィアンマ「老いも若いも男も女も関係ないのさ」



インデックス「フィアンマ、ろうにゃくにゃんにょじゃなくて老若男女だよ」

フィアンマ「……指摘しないで」シュン


アックア「む、また見失ったのである」

テッラ「無能ですねー。言いだしっぺが足を引っ張るなんて」ケラケラ

アニェーゼ「まあ、裏道行ったりしてますし仕方ねーんじゃないですか?」

アックア「慰めなどいらないのである」

アニェーゼ「は、はぁ……」コンワク

テッラ「で、どうするんですか?」

アックア「仕方が無いから先回りするのである」ダッ

アニェーゼ「ですね、急がねーと行き違いになるかもしれません」タッ

テッラ「間に合わない可能性も高いですけどねー」

ここまででー!!
おつありですー!


………red circle………

カランカラン

インデックス「赤丸……」

フィアンマ「店名ってことか……」

インデックス「バチカンに食べ物のお店があったなんて少し意外なんだよ」

フィアンマ「いや、イギリス清教の本拠地……なんていったか?」

インデックス「聖ジョージ大聖堂」

フィアンマ「ああ、そうそう。その近くにもそれくらいはあっただろう?」

インデックス「うん、そうなんだけど、ローマ正教の人達は私たち以上に十字教に誇りを持っていそうだったからてっきりね……」

フィアンマ「なるほど」

フィアンマ「確かに宗教命って奴がいることは否定しないが、ほとんどの信者はそっちと大差ない普通の人間らしい」


インデックス「伝聞形なんだね」

フィアンマ「まあな。お前と同じで外出はあまりできないのさ」

インデックス「へぇ、なのに視察してたの?」

フィアンマ「だから、と言った方が正しいな」

フィアンマ「ま、そういう込み入った話は食べながらでいいだろう」キョロキョロ

店員「……いらっしゃいませ、二名様でよろしいでしょうか」

フィアンマ「いや、待ち合わせをしているはずなんだが、おかしな三人組を見なかったか?」

店員「おかしな……ですか?」


フィアンマ「アックアというゴルフウェアを着た筋肉質な男とアニェーゼという三つ編みがたくさんある小柄なシスターとエリマキトカゲ風のテッラという男の三人だ」

店員「ははー、テッラさんのお知り合いでしたか」

フィアンマ「さん?」

店員「あの方はとても格安でうちに無農薬の小麦を卸してくれるんですよ」

フィアンマ(まあ、あれだけの面積使って小麦作ってたら余るよな)

フィアンマ「それは初耳だな。で、そのテッラは来てないのか?」

店員「ええ、本日はいらっしゃってないはずですけど……」

フィアンマ「ふむ、そうか」

フィアンマ「なら、奴が来たらフィアンマは畑にいると伝えておいてくれ」

店員「かしこまりました」


インデックス「え、また畑に戻るの?」

フィアンマ「ここにいても余計腹が減るだけだろう?」

インデックス「うへぇ、もう疲れたー」バタバタ

フィアンマ「こんなところで暴れるな」

フィアンマ「……はぁ、俺様がまたおぶってやるから我慢しろ」

インデックス「よし、行こう!」

フィアンマ「態度変わりすぎだろ……」

インデックス「だってフィアンマの上乗ったらすごい高い視線が体験できるんだよ?」

フィアンマ「あー、はいはい、そうですか」


カランカラン

アックア「っ、遅かった……」

フィアンマ「お、やっと来たのか。迷える子羊たちよ」ニヤリ

アニェーゼ「インデックスちゃん大丈夫でした?」

インデックス「うん、フィアンマがいたからね」

インデックス「アニェーゼは迷子でも大丈夫だったの?」

アニェーゼ「え、迷子?」

インデックス「うん、フィアンマと探しても見つからなかったから」

アニェーゼ(迷子はどっちだったんでしょうね……)

テッラ「何はともあれ合流できてよかったですねー」


フィアンマ「テッラ」ボソッ

テッラ「何ですかねー?」

フィアンマ「お前、インデックスに何か余計なことしたか」ギロ

テッラ「おお、怖い怖い」

テッラ「何もしてませんよ」

フィアンマ「そうか」

フィアンマ「……まあいい、俺様が何かを見ていたわけじゃないしな」

フィアンマ「ただし、もう一度言わせてもらうが、余計なことをしたら……覚悟しておけよ」

テッラ「分かってますよ」ニヤ

フィアンマ(信用ならないな)


テッラ「さてと、面倒な話も済ませたことですし、食事の時間としましょうかねー」

フィアンマ「……」ジロ

フィアンマ(面倒な話呼ばわりか)

インデックス「やった、ご飯タイムだー」

アニェーゼ「どんなメニューがあんでしょうね?」

アックア「小麦を使うものは非常に多いからな。想像がつかないのである」

インデックス「パスタとかあるんじゃないかな?」

フィアンマ「どうだろうな?」

テッラ「イタリア料理と呼ばれるものなら基本的に何でもあったはずですねー」

一区切りだからここまでー!
おつありです!!


店員「は、テッラさん!」

テッラ「こんばんは、今日はこの四人にここのとっておきを食べさせてあげようと思いましてねー」

店員「そうなんですか」

インデックス「楽しみにしてるよ!」グッ

店員「ええ、お気に召していただけるよう、作りますのでよろしくお願いしますね」

インデックス「うん!」

アックア「……とっておきとは何なのであるか?」

フィアンマ「それは来てからのお楽しみってことなんだろうさ」

フィアンマ「あえて言っていないことからそれくらい汲み取れ」


店員「それでは空いている席にどうぞ」

アニェーゼ(絶対にこの店員さんのスルースキル高いですね)ボケー

フィアンマ「おいアニェーゼ、置いて行くぞ」

アニェーゼ「あ! すみません!」タッ


インデックス「うまうまなんだよー」ガツガツ

フィアンマ「もう少し年相応な食べ方をしろ」

フィアンマ「マナーがなってないぞ」

インデックス「マナーとか気にして食べてたら一番おいしく食べられる時を過ぎちゃうような気がするんだよね」

フィアンマ「過ぎてもいいから、少しは気にしろと言ってるんだがな……」

アニェーゼ「うーん、おいしい……」

インデックス「ほら、アニェーゼもおいしいって言ってるんだけど」

フィアンマ「いや、俺様はお前のうまうまというセリフを否定したわけじゃないからな?」

フィアンマ「誤解するなよ?」


アックア「みんな大満足のようだな」

テッラ「ええ、私の作った小麦で作られた料理ですからねー」

テッラ「最高の材料に優秀なコック、この二つがかけ合わさることで最高な料理ができるんですよ」

アックア「……そ、そうであるな」

テッラ「おや、もしかしてアックアの口には合いませんでしたかねー?」

アックア「いや、料理自体は文句なしなのであるが、飲み物がぶどう酒と水しかないってどういうことであるか……」

テッラ「ああ、そんな些細なことですか」

アックア「全然些細じゃないのである」

テッラ「ぶどう酒しかないというところもこの店のいいところの一つですねー」

アックア「なるほど、魔術のためであるか……」ハァ


アニェーゼ「そういや、なんでテッラさんは小麦育ててんですか?」

テッラ「私の魔術……あ、魔術分かる方ですかねー?」

アニェーゼ「え、ええ。大丈夫です」

アックア(魔術の秘匿について無頓着すぎるのである……)ハァ

インデックス「私も参考までに聞かせて欲しいんな……」

テッラ「ええ、たいしたことではないので構いませんよ」

フィアンマ「おい、一応言っておくが、光の処刑のことはくれぐれも話すんじゃないぞ」ボソ

テッラ「そんなの釘を刺されるまでもないですねー。今話すつもりがあるのは小麦の術式だけですよ」ボソ

フィアンマ「ならいいんだが……」


テッラ「そもそも、光の処刑が知られたとしても、相手には使えないのですから無意味でしょう」ボソ

フィアンマ「弱点に気づかれたら終わりだろう」

テッラ「なるほど……確かにあの弱点を看破されると面倒ですねー」

テッラ「まあ、どちらにしろ話す気など毛頭ありませんので」

テッラ「自分の切り札、命綱をそう易々と晒すような馬鹿ではありませんので」

フィアンマ「口を滑らせたりしないよう気を付けろよ」

テッラ「しつこいですねー。あなたみたいな若造に忠告されずとも問題ありませんよ」

フィアンマ「おい、俺様のことを若造呼ばわりするなといつも言っているだろう!!」

テッラ「その程度で怒るから言われるんですねー」

フィアンマ「炭にするぞ?」

アックア「落ち着くのである」


インデックス「おおー、このトマトソースおいしいんだよ!!」パクパク

アニェーゼ「すぐ隣で結構怖い会話が繰り広げられているのによく普通に食べてられますね……」

インデックス「何か言った?」

アニェーゼ「いえ、テッラさんの魔術についてはいつ聞けるのかなーって思っただけですよ」

インデックス「会話の内容的にフィアンマと同等の地位にある可能性が高いんだよ」

インデックス「だからフィアンマレベルの魔術を使うんじゃないかな」

アニェーゼ「む、インデックスちゃんはフィアンマさんが使う魔術知ってるんですか?」

インデックス「ううん、多分フィアンマは一生懸命それを隠し通そうとしてるから、知ることはできないんだよ」

インデックス「聞く気もないけどね」

今日はここまでー!!
ゴールデンウィーク最高!!


アニェーゼ「テッラさんは隠そうとはしてないですけど?」

インデックス「きっとサブの魔術だったりするんじゃないかな」

インデックス「基本的に魔術師の切り札は窮地に陥ったりしない限り使われないからね」パクパク

アニェーゼ「なるほど、さすが魔術については詳しいですね」

インデックス「むぅ、魔術についてはってどういうことかな」

アニェーゼ「あー、他意はねーですよ」アハハ

インデックス「まあいいや、アニェーゼは初犯だから許してあげる」

アニェーゼ「初犯!? 言葉のチョイスにトゲを感じるのは気のせいですかね……」


フィアンマ「さってと、どうだ、アニェーゼ」クルッ

アニェーゼ「何がです?」

フィアンマ「お味はいかがですか、と聞いている」

インデックス「おいしーんだよ!」

フィアンマ「そうか、良かったな。だがインデックスには聞いてないからな?」

アニェーゼ「美味しいですよ。このチーズが入ってるソースとか絶妙なコショウの混じり加減が最高ですね」

フィアンマ「そうか、良かったな」

アニェーゼ「ですが、なぜ突然? さっきも言った気がすんですけど」

フィアンマ「美味い食事を食べているのにあんなむさい男どもと話してばっかりいるのはつまらないからな」ケッ

アックア「お前もむさい男の一員である」

フィアンマ「いや、俺様はさわやか系男子の一員だ。勝手に同じにするな」


テッラ「いえ、フィアンマは人の感想にそうか、良かったなとしか言えない系男子ですねー」

フィアンマ「……」グニャ

フィアンマ「おい、お前。何度喧嘩を売れば気が済むんだ」イライラ

インデックス(わざわざ魔術を使ってフォークを曲げるなんて……力がないなりの怒りの表現なのかな?)

アックア「しつこいのである。二人ともいい加減にしろ」

フィアンマ「いい加減にしろと言いたいのは俺様なんだがな」カチャン

インデックス「……」ソォ-

インデックス「アニェーゼ、曲がったフォークだよ」ジャーン

アニェーゼ「先が普通のフォークより鋭利になってるから置いとかないと危ねーんじゃ……」


インデックス「ちぇー、詰まらないのー」

インデックス「そうだ……エリマキさん! 小麦の魔術はいつ教えてもらえるのかな」

アニェーゼ(空気を読もうぜ!!)

テッラ「私はエリマキさんじゃないです、テッラという名前があるのでそちらでお願いしますねー」

インデックス「じゃあ、テッラー、小麦の話まだ終わってないんだよ」

テッラ「まだ私はフィアンマとの……」

フィアンマ「……さっさと話してやればいい」ケッ

テッラ「はぁ……仕方が無いですねー」


テッラ「私は小麦をギロチンのようにして、攻撃する魔術を好んで使いますねー」

アニェーゼ「あ、攻撃魔術なんですね」

テッラ「ええ、下の者では対処できないような相手を処刑したりするのも仕事なんで」

アニェーゼ「す、すごいですね……さすがフィアンマさんの同僚なだけありますね」

テッラ「ああ……そういえばあなたの部隊はフィアンマに救ってもらったことがあったんでしたっけねー」フム

インデックス「フィアンマもそういう仕事なの?」

フィアンマ「いや、俺様はそんな面倒な事はしないさ」

フィアンマ「テッラとヴェントとアックアと俺様は同じ部署のようなものに所属しているが、仕事内容は結構違うのさ」

インデックス「じゃあ、フィアンマは何してるの?」

フィアンマ「基本的にはマ、教皇の相談に乗ったりしてやってる」


インデックス「ええっ、フィアンマってそんなすごい人だったんだね」

インデックス「意外すぎて驚きだよ」

フィアンマ「意外とは何だ、意外とは」ムギュー

インデックス「うわああ、ほっへはほひっはふほははんほふはんはほ!!!(ほっぺたを引っ張るのは反則なんだよ!!!)」ジタバタ

フィアンマ「ふん、俺様がこの程度で許してくれたことに感謝するんだな」

アックア「今日はあまり機嫌がよくないのであるか?」

フィアンマ「いや、一日中動き回ったせいで疲れただけだ」

インデックス「こんないたいけな少女に八つ当たりとか有り得ないんだけど!!!」

ここまで!!
乙ありです。

明日の投下はできないかもしれません。できたら夜中に。

ヴェントさんはラストの方で出番あるぜ(多分)


ギャーギャー

テッラ「に、にぎやかですねー」

アニェーゼ「ずっとこんな調子なんです」

テッラ「らしくないことをするもんですねー」

テッラ「まあ、あなた方を救ったというのも彼の普段からは考えられませんからねー」

テッラ(視察という名の遊び歩きがなにか影響を与えたのかもしれませんねー)

アニェーゼ「……普段のフィアンマさんってどんな感じなんですか?」

テッラ「そうですねー」ゴクゴク…

テッラ「一言でいうなら自己中心的、ですかねー」

アニェーゼ「それだと今と大差ない気がしますけど」

テッラ「あと、基本的に冷たかった……いや、冷酷でしたねー」


アニェーゼ「あ、それは違うかも……」

テッラ「でしょう? 他人の犠牲などは厭わない系男子なんですよ」

アニェーゼ「厭わない系とか響きが怖いですね」

アニェーゼ「っていうかそんな系はねーですよ」

テッラ「確かに系で括るには少し強大すぎますね」

アックア「何の話をしているんだ?」

テッラ「来年の今日の夕食の予想大会ですよ」

アニェーゼ(バレバレすぎる!!)

アックア「なるほど、随分無意味なことをしているのであるな」

アニェーゼ(信用しただと!?!?)


アニェーゼ「ど、どうしたんですか?」

アックア「そろそろ帰ろうかと思って、とフィアンマが言っていた」

テッラ「? なぜ本人が言わないんですかねー?」

アックア「半分寝ているインデックスの世話でてんやわんやしているらしい」

アニェーゼ「アックアさん、手伝ってあげればいいのに……」

アックア「私の業務内容に子守りは含まれないのでな」

アニェーゼ「それ、フィアンマさんもないんじゃ」

アックア「インデックスを預かると言ったのは奴だ」

アックア「つまり、業務内容に含まれるのである」

アニェーゼ「あ、そうですか」


テッラ「でしたら、先に出ていてください」

テッラ「私が払っておきますので」

アックア「いや、払うのである」

アックア「フィアンマが」

アニェーゼ(黒い……)

アニェーゼ(ぜってえアックアさんの方が本性はヤバいですね)

テッラ「フィアンマに払わせるならその方が面白そうですが、あまりおちょくりすぎて本気で怒らせてしまってはまずいので」

アックア「……そうだな。アレを振り回したりされたらひとたまりもないのである」

アニェーゼ「アレ?」

アックア「結構おぞましい物だから知らない方がいいのである」

アニェーゼ「そ、そうですか……」

今日はここまでっ!
おつありですー!
部活の引退だったので遅れました、すみません。


フィアンマ「おま、インデックス……喧嘩売ってるのか?」

インデックス「はげちゃえはげちゃえー」グイグイ

アニェーゼ「い、インデックスちゃん!?」

アックア「フィアンマ、魔術は使うなよ?」

フィアンマ「ちっ、それくらい分かっている!」

フィアンマ「だが、一度目を覚まさせないと俺様の頭皮のライフが無くなってしまう」

フィアンマ「それにこの歳で髪のことで悩みたくはないから振り落としても大丈夫か?」

インデックス「ふぁあ……フィアンマは私のこと投げようとしてるの?」ウルッ

フィアンマ「うっ……お前、それはどう考えてもずるいぞ!」

インデックス「……はげちゃえはげちゃえー」グイグイ


アニェーゼ「インデックスちゃん寝ぼけすぎじゃないですか?」

フィアンマ「そんなの俺様に言うな!!」

フィアンマ「そして、俺様の頭皮と毛根を助けてください……」ズーン

アニェーゼ(こっちはこっちでおぞましい出来事が起こってますね)

アニェーゼ「えっと、私がおぶってきましょうか?」

フィアンマ「頼む。俺様が請け負った仕事なのに押し付けて済まないな」

アニェーゼ「気にしねぇでください。私も肌色が目立つ頭のフィアンマさんは見たくねぇんで」

フィアンマ「肌色が目立つ……頭皮!?」

アニェーゼ「ほら、さっさとインデックスちゃん貸してください」

フィアンマ「あ、ああ」スッ


ガシッ

フィアンマ「ん?」

インデックス「……」スヤスヤ

フィアンマ「おい、アニェーゼ」

アニェーゼ「どうしたんです、さっさとしてくれませんか?」

フィアンマ「こんな安らかな顔で寝ているのに腕がほどけないんだが」グイグイ

フィアンマ「髪を引っ張って、次は腕を離さないとはどんだけ迷惑な奴なんだ」ハァ

アニェーゼ「んじゃあ、いいんじゃねーんですか?」

フィアンマ「は? 何を言ってるんだ」

アニェーゼ「髪を毟られる危険もなくなったじゃないですか」

フィアンマ「むむむ……正論か」ハハァ…

アニェーゼ(それにまんざらでもなさそうな顔してますし)クスッ


フィアンマ「仕方が無いな。よっと」グッ

フィアンマ「俺様が連れて帰ればいいんだろう」パサ

アニェーゼ「あ、ベール落ちましたよ」スッ

フィアンマ「ベール?」

アニェーゼ「インデックスちゃんが頭に被ってたやつですよ」

フィアンマ「ああ、謎の被り物か。悪いな」パシッ

テッラ「……」ヌッ

フィアンマ「うわっ、突然出てくるな! 驚いただろうが」

テッラ「払い終わったので、そろそろ外へ出ようかと思っただけなんですけとねー?」

フィアンマ「お前が払いっておいたとかいうと不吉な予感しかしないんだが……」

テッラ「いえいえ、今回は何も企んでませんよ」

テッラ「第一、あなたは一食の貸し程度では何もしないでしょうし」

フィアンマ「まあ、そうだが……お前に借りがあるという状況は好ましくないから、後で金は返す」

テッラ「いやいや、奢りですから気にしないでください」


カランカラン

アニェーゼ「結局払ってもらうことになったんですか?」

フィアンマ「しつこいから俺様が折れただけだ」

フィアンマ「もちろん、明日にでも金は押し付けるつもりだがな」ハァ

インデックス「おおおお、かっこいいね。金を押し付けるとか一度でいいから言ってみたいよ」

フィアンマ「今言えばいいだろう」

インデックス「金を押し付けるつもりだがな!」

アックア「そんな威勢よくなかったのである。少し面倒くさそうに、テンション低めに、である」

フィアンマ「変な解説はやめろ」

アックア「拒否するのである」


インデックス「そういえば、エリマキさんはどこ行ったの?」

アックア「畑仕事があると言って畑の方へ帰って行ったのである」

インデックス「ごちそうさまって言おうと思ったのになー」

アニェーゼ「そうですね、私も言いそびれちまいました」

フィアンマ「俺様が言っておくから安心しろ」

フィアンマ「また奢って下さいね、とでも言っておけばいいんだろう?」

アニェーゼ「いや、全然違います」

インデックス「私はそれでいいよー」

フィアンマ「承った」

アニェーゼ「承らねぇでください!!」


フィアンマ「おい、ちょっと待て」

インデックス「誰に言ってるのか分からないよ?」

フィアンマ「……今俺様の背中に乗っかってる白い修道服を着た修行中のシスターさんに対しての言葉だ」

インデックス「あっ……」

インデックス「……ぐーぐー」ガシッ

アックア「完全に起きていたが……今のは声をかけずにさっさと降ろすべきであったな」

フィアンマ「二十秒前の俺様に言ってやってほしかった」

アックア「後の祭りである」

フィアンマ「こうなるともう降ろせないからなぁ……」グイグイ


今回はここまでー
おつありでした!
なんとか五月中に終わるかな?


アニェーゼ「もう諦めるしかないんじゃないですか?」

アニェーゼ「そんな距離ないですし」

フィアンマ「そういう問題じゃないんだよな」

フィアンマ「俺様の髪を寝ぼけた振りして毟ろうとしたという重罪を犯しているのだから」

アニェーゼ「まあまあ……抜けたわけじゃないですし、インデックスちゃんも歩きすぎて疲れちゃったんですよ」

フィアンマ「……」スッ

アックア「赤い……糸であるか?」

フィアンマ「俺様の髪の毛だ。インデックスの手に握られたいたものだ」

フィアンマ「つまりインデックスが俺様の頭から抜いたものだ」


アニェーゼ「……け、結構量ありますね……」フルフル

フィアンマ「ざっと三十本ほどか」クスッ

フィアンマ「やっぱり振り落としてもいいか?」ニコニコ

アニェーゼ「えっと……」

アニェーゼ(下手なこと言えねぇ!!)チラ

アックア「そこまで見越してアウレオルスからそれを預かったのであろう?」

アックア「その責任はお前にあるのだから最後まで面倒を見るべきである」

フィアンマ「ふむ、お前にしては正論だな」

アックア「保護者に保護対象を帰すまでが保育園である」

フィアンマ「……最後のは意味不明だ」


フィアンマ「よいしょっと……」グッ

フィアンマ「もういい、さっさと帰るぞ」

アニェーゼ「あ、はい! 荷物持ちましょうか?」

フィアンマ「いや、いい。こいつは俺様が連れて帰る」

アニェーゼ(ベールの話なんですけど……)

アックア(そういう気遣いは無用である。保護対象の持ち物も保護者に返す……)

アニェーゼ(そうですか……ま、兄妹みてーでほほえましいですし、ほっときますか)





『大人の時間』




フィアンマ「ふう、到着っと」

アニェーゼ「すごい距離歩いた感出してますけど、一キロも歩いてませんよ」

フィアンマ「俺様はこいつを背負っていたのだから仕方がないだろう」

フィアンマ「疲れも二倍だ。無理やりにでもアックアに押し付けるべきだったと後悔すらしているぞ」

アックア「いいではないか。鼻歌歌いながら歩いたのだから余裕はあったんだろう?」

フィアンマ「む……鼻歌とは……無意識だったな」フム

アックア「アニェーゼに至っては兄妹みたいで微笑ましいとまで言ってたのである」

アニェーゼ「い、言ってねーですよ!! 思っただけです!」

フィアンマ「ほう? ヘロヘロな俺様を見てそんなことを考えていたと??」


アニェーゼ「あ、あはは……」

フィアンマ「……」ジー

アニェーゼ「す、すみまs」

フィアンマ「まあ……妹ってのも悪くはないかもしれないな」ボソ

アニェーゼ「え?」

アックア「」

フィアンマ「ごほん、とにかくさっさとインデックスをアウレオルスのところに帰しに行くぞ」

アニェーゼ「ちょ、待ってください!!」タッ

アックア「はっ、さっきの発言は幻聴か?」


アニェーゼ「あの……」

フィアンマ「なんだ」

アニェーゼ「さっき何て……」

フィアンマ「妹と言うのも悪くはないかもな、と思っただけだ」

フィアンマ「手はかかるし、かなり迷惑だが……」

フィアンマ「まあ、寝てるのを見ると悪くないと思わないか?」

アックア「デレ期であるか?」

フィアンマ「今日のお前は意味不明なことばかり言うな。大丈夫か?」

アニェーゼ「そういうことは直接言った方がいいと思いますよ」

フィアンマ「言ってるだろう? 頭大丈夫か、と」

アニェーゼ「そっちじゃねぇよ!」


アニェーゼ「……ごほん」

フィアンマ「一応聞かなかったことにしといてやる」

アニェーゼ「ありがとうございます」

フィアンマ「で、何を誰に直接言った方がいいんだ?」

アニェーゼ「インデックスちゃんにさっき言ったみたいなことを、ですね」

フィアンマ「それは無理だな。いや、不必要と言った方がいいか」

アニェーゼ「なんでですか? 懐かれてるのに」

フィアンマ「そりゃ、直接言うようなことでもないだろう?」

フィアンマ「俺様の場合態度で分かってもらえるはずさ」

二人「それはない」

きょうはここまでー!
おつありです。


フィアンマ「なんだと、二人そろって俺様を馬鹿にしてるのか?」

アックア「お前の態度からじゃせいぜい嫌われてはいない程度しかわからないのである」

フィアンマ「別に構わないだろう。それで十分じゃないか?」

フィアンマ「なあ、インデックス?」

インデックス「うん。私もそれで十分だと思うよ」

インデックス「そう、真の兄妹に言葉など不要! なんだよ!」

フィアンマ「そうそう、その通りだ。まあ、真の兄妹でも何でもないがな」

アックア「お、起きていたのであるか?」

インデックス「着く五分くらい前には起きちゃって」テヘヘ

フィアンマ「お前全然寝る気ないよなってこそこそ話しながら帰ったわけだ」


フィアンマ「さってと、アウレオルスがいたとこってどこだったか……」

アニェーゼ「……インデックスちゃん、つまり、全部聞いてたって……」

インデックス「全部じゃないけど、ほとんど聞いたんだよ」

インデックス「そんなことよりフィアンマー」ペシペシ

フィアンマ「叩くな。何の用だ?」

インデックス「今日はアニェーゼのとこにお泊りしたいんだけど」

フィアンマ「いや、それは俺様に言われてもな……」

アックア「アウレオルスとアニェーゼの許可が出れば私は良いと思うが?」

フィアンマ「はあ……仕方がない」ポチポチ

フィアンマ「俺様は少し電話してくるから……」トスッ

フィアンマ「インデックスをちゃんと見ていろ」カツカツ…


インデックス「やったー! アニェーゼとお泊りだね!」

アニェーゼ「私はなんも言ってませんけどね」アハハ…

インデックス「なっ、それはつまり無理ってことなの?」ガ-ン

アニェーゼ「部屋片付けねーとですね。手伝ってくれるならいいですよ」

インデックス「うおおお! 絶対手伝うよー!」

アニェーゼ「よろしくお願いします」

アックア(なぜだろう、邪魔する未来しか見えないのである……)


フィアンマ「ふう……話を付けてきた」

フィアンマ「インデックスに友が増えるのはいいことだからぜひ良くしてやってほしいとのことだ」

インデックス「ごくろうさま、なんだよ!」

フィアンマ「何様だ」

インデックス「禁書目録さま」

フィアンマ「はぁ……」

アニェーゼ「と、とにかくよかったですね、インデックスちゃん?」

インデックス「うん、満足いく結果だよ」

フィアンマ「だから、お前は何様だ」

インデックス「インデックスさまだよ!」


……………………………
………………

フィアンマ(さてと、インデックスたちとは別れたし、アックアも帰らせたし、やっと一人だな)カツカツ

フィアンマ(人といるのが苦手というわけではないが、人間一人の時間も大事にするべきだろう)

フィアンマ(ここ二日間は一人でいた時間が皆無と言ってもいいからな)

フィアンマ(とりあえず部屋に戻って、シャワー浴びて……)

フィアンマ(視察を踏まえて、これからのことでも考えながらワインでも飲むとしようか)

オリアナ「あらら、こんな時間にどうしたのん?」

フィアンマ「オリアナか……」

フィアンマ(俺様の一人の時間はここまでか……十分もないじゃないか)

オリアナ「え、そんなにあからさまにテンション下げちゃうとお姉さんも少し傷つくな」

フィアンマ「あっそう」


オリアナ「お兄さん、何か嫌なことでもあったのかしらん?」

オリアナ「お姉さんで良ければ聞くけど」

フィアンマ「なぜ嫌なことがあったと思うんだ?」

オリアナ「表情が何だか不満そうだったから」

フィアンマ「ふむ、しっかり分かってるじゃないか」

オリアナ「ふふん、お姉さんはその辺り鋭いからね」

フィアンマ「じゃあ、一人にしてもらおうか」

オリアナ「え?」

フィアンマ「俺様は一人の時間が欲しいんだ。悪いが一人にしてくれないか?」


オリアナ「……」

フィアンマ「どうした? さっさとしないか」

オリアナ「別にどっか行ってもいいんだけど、男の人がそう言う時って大体聞いてほしいことがあるのよね」

フィアンマ「む……」

オリアナ「どう? 話したいことがあるならお酒くれたら聞いてあげるわよん」

フィアンマ「酒を要求するのか」

オリアナ「人の話なんて酒がないとだるくて聞いてらんないわよ」

フィアンマ「……なるほど、だが、大した話ではないんだ。ただ面倒なだけだ」

オリアナ「とにかく酒」

フィアンマ「わがままな女だ……」

とりあえず一区切り。
おつありですー


………フィアンマの部屋………


フィアンマ「っと……疲れたからシャワー浴びるか」

オリアナ「あらら? もしかして、お姉さんはお兄さんに犯されちゃうのかしら」

フィアンマ「あー、うるさい奴にわざわざ話すようなことでもないんだがなー」オオゴエ

オリアナ「んもう、お兄さんは本当にSね」

フィアンマ「勝手に漁ったりするなよ?」

オリアナ「はいはい、分かってるわよ。どうせロックかかっててどこも開かないってのは知ってるから」

フィアンマ「……あ、そうだったな」

フィアンマ「じゃあ入るが、突撃して来たりしたら燃やすからな」

オリアナ「さすがのお姉さんもそこまで命知らずじゃないんだけどね」クスッ

フィアンマ「そういえば、俺様の魔術を受けたんだったな」

オリアナ「そういうこと。それじゃいってらっしゃい」


ガチャ…

オリアナ「さてと、探索タイムと行きますか」

オリアナ(ダメだと分かっていた程度で諦めるようじゃトレジャーハンターの名が廃るわ)

オリアナ「ま、トレジャーハンターなんか名乗ってないけどね」ゴソゴソ

オリアナ「今回はあまり捜索できなかった机の鍵付きの引き出しと格闘してみようかしらん」ツンツン

オリアナ(……あれ? ここは魔術がかかってない……?)

オリアナ「ただの鍵だけってことかしらねえ?」

オリアナ「……大した鍵でもないみたいだしちょちょいと開けてみようかしら」

ガチャガチャ…



オリアナ「本?」

オリアナ(一通り探ってみたけど、本一冊しかないわね……)

オリアナ「とりあえず初収穫だし、しっかり読んでみないとかな」

オリアナ「日記帳とかだったら最高の収穫なんだけど、どうなのかしらねん」ピラ

ピラ…ピラ…

 オリアナ「 ……これは、見ちゃまずいやつだったみたいね……」

ガチャ

オリアナ「っ……!!」バッ


フィアンマ「くくっ、やっぱりそれを読んでいたか」フキフキ

フィアンマ「違和感を出すためにわざわざ漁るなと言ったが……まさかここまで効果覿面だとは」

オリアナ「……お姉さん、危機管理はしっかりしてる方だと思ってたけど、全然だった」ジリッ

フィアンマ「そんなに臨戦態勢を取る必要はないさ」

フィアンマ「それを読めるような状態にしておいたのは俺様だからな」

オリアナ「意図的にこんな風に置いておいたってことね」

フィアンマ「その通り。俺様は不注意で人に情報が盗まれるようなことになるほど抜けてないからな」

オリアナ「髪が?」

フィアンマ「いや、そのネタはもう……ってなぜ知ってるんだ!?」


オリアナ「何のことかしら?」

フィアンマ「いや、知らないならいいんだ」

オリアナ「……何のためにこれをお姉さんに読ませたの?」

オリアナ「罪の共有による束縛でも狙ってるのだとしたら、その手には乗らないわよ」

フィアンマ「何を言ってるか分からないが、いつも通りの発言ができるようなら問題ないだろう」

フィアンマ「表情を見た感じ、内容も理解できているようだしな」クク

オリアナ「これは一体どういうことなのか教えてもらえるのよね?」



オリアナ「お兄さん……いや、右方のフィアンマ」


フィアンマ「もちろんそのつもりだ」

フィアンマ「俺様の話をきちんと理解してもらうには長い前置きが必要になってしまうから、その本でサクッと予備知識のインプット済ませてもらっただけだ」

フィアンマ「俺様の素性、能力、経歴。そして……俺様の計画」

オリアナ「神の右席なんてものが本当に存在するなんて驚いたんだけど」

フィアンマ「火のない所に煙は立たぬ、だ」

フィアンマ「何かしら怪しい動きをしてしまったのだろうよ。先代だか先々代だか知らないがな」

オリアナ「……まあ、そうよね」

オリアナ「お兄さんが怪しい動きしたんじゃないの?」

フィアンマ「だから俺様はそんなに抜けていない」


オリアナ「……と、ふざけるのはこの辺にして」

フィアンマ「ふざけてたのか」

オリアナ「この計画って一体どういう事なのか説明してもらえるかしら?」

フィアンマ「そうだな。そこが今回の悩みの根本的な原因でもあるから詳しく説明してやる」

オリアナ「悩みならお姉さんとトリップして忘れちゃう?」

フィアンマ「……トリップしてもなくならないだろう」

フィアンマ「正直、迷っているんだからな」

オリアナ「迷ってる……?」


フィアンマ「本に書いてある通り、俺様には不完全な聖なる右が備わっている」

フィアンマ「それを完全なものにし、人間の悪性を敵として認識させることにより、絶対的な善の到来を目指すという計画だったろう?」

オリアナ「た、確かにそう書いてあったわ」

フィアンマ「だが、この二日ほどローマ正教を視察して回って思ったんだよな」

フィアンマ「こんな簡単に考えが変わるというのは恥ずかしいんだが……」

フィアンマ「この世界は俺様の求める平和とは程遠いが、平穏とは言えるのではないかと」

オリアナ「お姉さんには少し荷が勝ちすぎる話題ね」

フィアンマ「我慢しろ、難しい話をするつもりは全くないからな」

オリアナ「現時点でだいぶ小難しい話になってるけど」

フィアンマ「それは気のせいだ。本の内容をさらっと要約しただけだからな」


オリアナ「何と何で迷ってるの?」

フィアンマ「世界の平和と、この平穏の継続だ」

フィアンマ「俺様には世界を救う力があるのだから、そのために行動するのはもはや義務といっても過言ではない、と物心ついた頃から思っていた」

フィアンマ「しかし、こんな狭い世界でも思っていたより居心地が良かった」

フィアンマ「俺様の方法で世界を平和にしようとするとまず間違いなくこの平穏は崩れる」

フィアンマ「だから、どちらを取るべきなのか迷ってるのさ」

フィアンマ「俺様が裏でどう動くかによってローマ正教の命運も変わるだろうしな」

オリアナ「ひとつ言わせてもらうとしたら、今のお兄さんの気持ちはかなり平穏とやらのほうに寄ってるってことかな」

フィアンマ「ふむ……確かにその通りだな」コポポポ スッ


オリアナ「えー、ここで酒とかタイミング悪くない?」

フィアンマ「ふん、俺様はタイミングなんかに縛られる必要はないさ」クイッ

フィアンマ「ふう……世界を一個人で平和へと導けるのはおそらく俺様だけだろう」

フィアンマ「だから、俺様個人が平穏に寄っているからとはいえ、そっちを選んでいいわけではない」

オリアナ「つまり立場上平和を選ばなきゃならないけど、個人的には平穏を望んでいるってことか」

フィアンマ「まあ、そうだな」

フィアンマ「俺様の方法だと悪意を持っている人間は皆粛清対象だから平和と平穏は同時に成立しない」

フィアンマ「だから迷うんだ」


オリアナ「誰もそんな形での平和は望んでないんじゃないかと一応ローマ正教徒であるお姉さんは思うけど」

フィアンマ「望まれようと望まれまいと関係ないのさ、俺様の体にはそれをなすだけの力があるからやらないとならないというただの義務だ」

オリアナ「……その力を別のことに使うってことはできないのかな」

フィアンマ「……別のことだと?」

オリアナ「そう、平和ってのを別の見方で考えてみるってことかな」

オリアナ「平和を諦めるんじゃなくて、ちょこっとした平穏をたくさん作ることによって平和を目指す……みたいな?」

フィアンマ「……」

オリアナ「あー、やっぱりお姉さんこういうのは苦手かも」クスッ

オリアナ「酒入れても無理なもんは無理ねー」


フィアンマ「俺様の思う平穏には人間の悪意がついてまわっている。だから平和とは似て非なるものだ」

オリアナ「人間の悪意があっちゃダメなの?」

オリアナ「お兄さんの言ってる平穏は私が思う平和そのものだけど?」

フィアンマ「……」

オリアナ「でも……そんなに悩むなら、明日にでも皆に聞いてみればいいんじゃないかしら」

オリアナ「俺様は平和のために何をしたらいいかって」

フィアンマ「一々事情を説明しろと?」

オリアナ「ううん、その必要はないわ。ただ、それを聞くだけでいいの」

オリアナ「そしたら多分予想もしなかった回答の数々が届くと思うわん」


フィアンマ「予想もしなかった回答だと?」

オリアナ「そう。それを聞いたらきっとお兄さんの考えも変わるかもしれない」

オリアナ「これだけでいいのか、これが平和なのかってね」

フィアンマ「ふむ……まあ、やってみる価値はあるか」

フィアンマ「まずオルソラ辺りにでも聞いてみるか」

オリアナ「へぇ、オルソラちゃんね……」

オリアナ「お兄さんのお気に入りだっけ?」

フィアンマ「ぶふっ!!」ブシャッ

オリアナ「……」ポタポタ


オリアナ「あらら、お姉さんこんなふうに濡らされるとは予想してなかったわん」

オリアナ「お兄さんったらせっかちなんだから」

フィアンマ「確かに俺様も悪かったが、今回はお前にも非がある」

フィアンマ「オルソラのことは例に出しただけでお気に入りとかそういうのじゃない」イライラ

オリアナ(そこでイライラしちゃう辺り、図星だって言ってるようなもんだと思うけど……)

オリアナ(ってそんなこと言ったら余計話が面倒になっちゃうかしら)

フィアンマ「とりあえず……タオルで拭いておけ」ポイッ

オリアナ「む、これさっきまでお兄さんが使ってたやつじゃない」

オリアナ「お姉さんにマーキングしたいからってこれはちょっと……」

フィアンマ「それは未使用だ。使ったのはこっち」スッ

オリアナ「それはそれで残念ね。お兄さんのだったら使ったやつでも良かったんだけど」フキフキ

フィアンマ「さ、さすが卑猥人間は違うな」ドンビキ


オリアナ「とにかく、聖人のお兄さんでもヴェントさんでもアニェーゼちゃんでもいいから聞いてみるの」フキフキ

オリアナ「そうしたら、もしかしたら人間の悪性を敵としてお兄さんの力で屠る以外の方法が見つかるかもしれない」

オリアナ「……じゃないか。お兄さんの知識があればきっと何とかなるとお姉さんは信じたいわね」フキフキ

フィアンマ「さっきまで変態発言をしていたくせに急に真面目なことを……」

オリアナ「お姉さんはここの切り替えで相手を翻弄する戦法が得意なの」ウフ

フィアンマ「……はあ、別の考えが浮かべばいいと俺様も思うよ」

フィアンマ「そううまくいくものかとは思うがな」

オリアナ「ま、やってみるだけやってみればいいわ」

オリアナ「お姉さんだけじゃ何とも言えないしね」


フィアンマ「ふふ……少し気が楽になった気がする」

フィアンマ「付き合わせて済まなかったな」

オリアナ「いえいえ、参考になったなら良かったわん」

オリアナ「お兄さんを攻略できる日も近いかしらね」

フィアンマ「それは永遠にこないから」

オリアナ「厳しいこと言うわね」クスクス

フィアンマ「当然だ。俺様がこんな卑猥な奴の面倒を見きれる訳がないだろう」

フィアンマ「部下としても少々持て余してるのだからな」


オリアナ「あらら? たった一日半で持て余すとか言われると少しこっちも困るわね」

フィアンマ「仕方がないだろう、癖が強すぎる」

フィアンマ「さてと、タオルで拭くだけではベタベタするだろうし、シャワー使うか?」

オリアナ「そうねー。お兄さんの香りが残っていることに賭けようかな」

フィアンマ「寒気がするから変なことは言うな」

フィアンマ「そんなことばかり言うなら貸さないぞ?」

オリアナ「うそ、うそだから貸してください!」

フィアンマ「ふん、はじめからおとなしくそう言っておけばいいものを」

オリアナ「そこは仕方がないわ。そこはお姉さんの中に染み込んじゃってるものだから」

フィアンマ「矯正する気も失せるよな……」ハァ


オリアナ「それじゃあ、行ってくるわね」

オリアナ「お姉さんはシャワー中に入ってこられるのも歓迎だから覚えておいてね」

フィアンマ「はいはい。何でもいいからさっさと行け」

フィアンマ「お前が期待しているようなことをするつもりは全くないからな」

オリアナ「もう……強情ね。そういうのもお姉さん好きだけど」

フィアンマ「服は適当に修道服でも持って行け。まあそのベタベタな服が良ければそれでもいいが」

オリアナ「うう……あいにくだけどお姉さんもベタベタの服を着るような趣味はないの。ごめんね」

フィアンマ「冗談に決まってるだろう」


フィアンマ「何でもいいからさっさと入ってこい、風邪をひかれたら困るからな」

オリアナ「あら、心配してくれてるのかな?」

フィアンマ「訂正、風邪をひかれたら迷惑だからな」

オリアナ「その訂正は辛辣ねえ……」

フィアンマ「ま、ワインでも飲んで待っていてやるから、さっさとしろよ」

オリアナ「さっさとがしつこ過ぎよん。でもそろそろ本当に風邪ひきそうだから行ってくるわ」

フィアンマ「はいはい、いってらっしゃいませー」コポポポポ

クイッ

ここまでです。
おつありですー!

シリアス路線とギャグ路線どっちがいいんだろ?


………………………………

オリアナ「ふー、気持ちよかったー」

オリアナ「なんだかんだ言って昨日はシャワー浴びれなかったから、すっきりしたわ」フキフキ

オリアナ「軽くお兄さんの香りもしたし」クスッ



オリアナ「お兄さーん、出たわよん?」ガチャ

フィアンマ「……」クークー

オリアナ「……寝てるみたい」

オリアナ「昨日もそうだけど、隙あらば寝てるわねえ……」

オリアナ「はぁ……お兄さんの方が風邪ひきそうだし……仕方がないか」


~~~少し前・アニェーゼの部屋~~~

アニェーゼ「ここが私の部屋です」ガチャ

インデックス「へえ、アニェーゼって一人部屋だったんだね?」

アニェーゼ「ええ。これでも一つの部隊まとめてんで」

インデックス「そ、そうなの!?」

インデックス「つまり、アニェーゼはお頭ってことなんだね」

アニェーゼ「まあ、そうなりますね」

インデックス「ほえー、フィアンマもアックアもアニェーゼもすごいんだね」

アニェーゼ「いやいや、あの二人と比べたら私なんて大したことねえですよ」

アニェーゼ「あ、ベット腰掛けてもらっていいですよ」

インデックス「うん、ありがとうね」ボフン

アニェーゼ「私は……ベッドで寝っ転がっちまいましょうかね」ゴロン


インデックス「ええ、アニェーゼもう寝ちゃうの?」

アニェーゼ「んなわけねーじゃないですか。お泊り会の恒例行事をまだ行ってないってのに」

インデックス「お泊り会の恒例行事?」

アニェーゼ「そうです、分かりますか?」

インデックス「分かった! 掃除でしょ!!」

アニェーゼ「不正解です」

アニェーゼ「お泊り会に来て掃除するってどーいうことです?」

インデックス「だってアニェーゼが掃除するなら来てもいいって言ったんでしょ」

アニェーゼ「あ……そういえばそんなこと言ってましたね」

アニェーゼ「あれは冗談です」

インデックス「冗談とかそういうのは言ってくれないと分からないんだよ!」ポカポカ

アニェーゼ「うわああ、すまねーです!」


コンコン

インデックス「あれ? 誰か来たみたいだけど」ポカ…

アニェーゼ(ふう、やっと止まった……)

アニェーゼ「ああ……多分、視察に付き添ってる間、部隊の方を任せてた二人組が報告にでも来たんでしょう」ムク

インデックス「へえ、アニェーゼがそんなに大事なものを任せるってことは信頼してる人ってことなのかな?」

アニェーゼ「ええ、まあ、ただの部下ではないんですよ」

アニェーゼ「しいて言うなら家族みたいな感じですね」

インデックス「家族かぁ……」

『早く開けてくださいよー』ドンドン

『ちょ、シスター・アニェーゼにも都合っていうものがあるんですよ……』

アニェーゼ「今開けるんで、ドア殴らねえでください!」タッ


ガチャ

アンジェレネ「こんばんわー」

ルチア「こんばんわ」ペコ

アニェーゼ「こ、こんばんわ」

アニェーゼ「……今日の報告なら明日でもよかったんですけど?」

アンジェレネ「……報告、ですか?」

ルチア「……ああ、それならちゃんとまとめてあるので安心してください」

アニェーゼ「はぁ……相変わらずこまけー仕事ぶりですね」

ルチア「任されたからにはきちんと仕事をこなさなければ……」

ルチア「そうでしょう? シスター・アンジェレネ?」


アンジェレネ「そうですけど、それよりも聞いてほしいことがあるんですよ」ボソ

アニェーゼ「何です?」

アンジェレネ「私が……任されたとか言って結構浮かれてましたよー、シスター・ルチア」コソ

アニェーゼ「へえ、そーなんですか」

アンジェレネ「あれ、あまり興味ないですか?」

アニェーゼ「正直そうですね。彼女はいつもそうですし」

ルチア「……? 何の話をしてるんですか?」

アンジェレネ「い、いえ、なんでもないですー!!」アセアセ

ルチア「?」

ここまでですー!
乙ありがとうございます。
シリアルを食べるフィアンマ……アンジェレネとかならありかもしれない。


インデックス「むー、いつまで話してるのかな……」ヌッ

アンジェレネ「あ! あなたが噂のインデックスさんですかー?」

インデックス「うん、そうだけど……どうして私のこと知ってるの?」ヒョコッ

ルチア「そちらの方が……思ったより幼いんですね」

インデックス「幼いとか失礼なんだよ!!」

ルチア「あ、ええ、ごめんなさい……?」

インデックス「うん、許してあげる」

アニェーゼ「あれ? 二人とも大して驚かねーんですね」

ルチア「ええ、私たちはインデックスさんに会おうと思って来たので」

インデックス「ええ?」

アニェーゼ「……ど、どういうことなんです?」


アンジェレネ「フィアンマさんから聞いたんですよ」

アンジェレネ「インデックスというガキがアニェーゼのところに泊まるから、見かけたら優しくしてやってくれって」

アニェーゼ「はあ……なるほど」

インデックス「へえ、有能だね、フィアンマは」

アニェーゼ「だから何様なんですか」

インデックス「いんでっくすさまー」

ルチア「だからインデックスさんに会ってみようと思って押しかけたというわけです」

ルチア「迷惑でしたら帰りますが」

アンジェレネ(シスター・ルチア……スルースキル高すぎです……)


インデックス「とりあえずここで立ち話もなんだし、入りなよ」

インデックス「お茶くらいしか出せないけどさ」

アンジェレネ「あ、はい! お邪魔しますねー」トテトテ

ルチア「それでは私もお邪魔します」スタスタ

アニェーゼ「なに勝手に許可してんですか!?」

インデックス「ダメだったの? それならごめんね」シュン

アニェーゼ「……い、いえ、私もここでずっと話してるつもりでは無かったんですが……」

インデックス「やったあ、それならノープロブレムだね」ニコ

アニェーゼ(文句は……言えねーですね)アハハ…


インデックス「それで……恒例行事って何なの?」

アンジェレネ「恒例行事って何のですか?」

アニェーゼ「お泊り会ですよ」

アンジェレネ「お泊り会の恒例行事……」

アンジェレネ「分かります……?」チラ

ルチア「……うーん、私は予想も出来ませんね」クビカシゲ

アンジェレネ「分かりました! 枕投げですよね!!」

ルチア「なるほど……確かに定番中の定番ですね」ウンウン

アニェーゼ「ぶぶー。不正解です」


インデックス「いい加減おしえてほしいかも」

アンジェレネ「ですよね。もう思いつきません―」

アニェーゼ「仕方ねーですね」

アニェーゼ「お泊り会恒例……恋バナ大会です!!」

インデックス「うおおおおお!!」

アンジェレネ「ふええええええ!!」

ルチア「はああああああああ!?」


アニェーゼ「はいはい、三人ともいいリアクションありがとうございます」

インデックス「どーも、なんだよ」

アンジェレネ「どうもですー」

ルチア「こ、こ、恋バナってどういうつもりですか」

アニェーゼ「そのまんまですよ」

アンジェレネ「でも、男性の方と話す機会なんてそうそうないですし……」

アニェーゼ「う……そうですよね」ハァ

アニェーゼ「憧れだったんですけど……」

インデックス「それなら肝試しとかどうかな?」

インデックス「小麦畑の件は結局エリマキさんの仕業だったんだし」


アンジェレネ「え、それってバチカンのはずれにある小麦畑の話ですよね!!」

インデックス「うん。夜な夜な怪しい人がよいしょよいしょ言いながら畑を耕してるって話だったよね?」

ルチア「通称、小麦の悪魔でしたっけ」

アンジェレネ「あれ? シスター・ルチアが噂を知ってるなんて珍しいですね」

ルチア「……その話は部隊の中でも相当有名なものですから、自然と耳に入ってくるんですよ」

ルチア「主にあなたから」

アンジェレネ「うう……」

ルチア「その話に進展があったってことですよね?」

アニェーゼ(シスター・ルチアがこの手の話に興味を持つなんて珍しいですね……)ホエー

インデックス「そうだよ。正体が判明したの」


アニェーゼ「あ! それ以上言っちゃダメです」

インデックス「えー、なんでー?」

アニェーゼ「こういう話はタネが割れたらつまらねーじゃないですか」

アンジェレネ「こ、ここで止めちゃうんですか!?」

アニェーゼ「真相は自分の目でお確かめください」

ルチア「え……」

ルチア(寝れなくなってしまう!!)

ルチア「な、なら、確かめに行きませんか?」

ルチア「インデックスさんの言っていたエリマキさんというのも気になりますし」

きょうはここまで。
ガールズトークのやりづらさは異常

酉ミスった……
すみません


アニェーゼ「べ、別に私は構いませんが、シスター・アンジェレネは大丈夫ですか?」

アンジェレネ「い、行きますよ!!」

アンジェレネ「こんなに積極的なシスター・ルチアを見れる機会なんてそうそうないんですから!!」

インデックス「決定だね」

アンジェレネ「ところで、門限を過ぎたここを抜け出す方法なんてあるんですか?」

アンジェレネ「確か強力な結界が張ってあるとかなんとか……」

インデックス「結界なら私が開けられると思うよ」

アンジェレネ「ええ!? この寮ができた時からずっと寮を守ってる結界ですよ?」

アニェーゼ「インデックスちゃんの頭ん中には10万3000冊の原典があるんですから」

インデックス「そうだよ!」フフン


ルチア「ああ、イギリス清教の禁書目録がインデックスさんということですか」

ルチア「ならば小麦畑まで行っても怖いものなしですね」

インデックス「……」コンワク

アンジェレネ「シスター・ルチア……? 深夜テンションなんですか?」

アニェーゼ「もう十一時回ってますし、仕方がねーですよ」

インデックス「あの……ルチア?」

ルチア「はい、なんですか?」

インデックス「すごく浮かれているところ申し訳ないんだけど、私は自分で魔力を練る事は出来ないから、魔術は使えないの」

ルチア「え……」


……………………………

ヒュオオオ

アニェーゼ「ふふふ、夜中の外出とかワクワクしますね」ニシシ

インデックス「うんうん! 背徳感が興奮を増幅させるよ」

ルチア「ほぅ……風が気持ちいいですね」

アンジェレネ「ほ、本当に窓から外出るんですか……?」

アニェーゼ「ええ。この時間に廊下へ出ると怪しまれますし、正面玄関から出るなんて無謀ですからね」

ルチア「まあ、腹をくくるしかないんです」

アンジェレネ「ううう……」

インデックス「大丈夫だよ。三階から落ちても打ち所が悪くなければ死なないから」

アンジェレネ「つ、つまり打ち所が悪かったら死ぬ!?」

インデックス「うん」


アニェーゼ「あんまり脅さないでやって下さいよ」

インデックス「いや、打ち所悪かったら死ぬのは本当だもん」

アンジェレネ「ええ!? やっぱりそうなんですかー」

ルチア「はあ、そんなに慌てることではないです」

ルチア「魔術で衝撃を和らげるんで」

アニェーゼ「そんな当然なことを改めて言う必要はねーですよ」

アンジェレネ「はあ……そういうことなら先に……」

アニェーゼ「……さすがにそこまで命知らずな真似は……」

インデックス「アンジェレネの心配も解消されたみたいだし、行こうよー」

アニェーゼ「そうですね」


アンジェレネ「ううう……」グルグル…

インデックス「うーん、楽しかったー」

ルチア「……シスター・アンジェレネ? 大丈夫です?」ユサユサ

アンジェレネ「うう……もう二度とやりたくないです……」

アニェーゼ「さっさと出ねーと見つかっちまいますよ」

インデックス「大丈夫だよ、もうすぐ出れるから」ブチブチ…

アンジェレネ「何してるんですか?」

インデックス「あれ、復活したんだね」

インデックス「特定の形に草を毟ることで、その部分だけ結界を無効化してるんだよ」

アンジェレネ「は、はあ……何が何だか理解できません」


インデックス「よし、これで出れるよ」

アニェーゼ「草毟るだけで結界を無効化するなんてすげーですね……」

インデックス「正しくは無効化ってより期間限定で通行可能な状態にしただけなんだけどね」

ルチア「期間限定ですか……?」

インデックス「この結界にはかなり強力な自動補修機能がついてるみたいだから」

アンジェレネ「ええ!? じゃあ早く出ないと!」

インデックス「アンジェレネはもう結界の範囲外に出てるから大丈夫」

インデックス「ほかの二人も出てるから心配いらないんだよ」

ルチア「……それでは例の小麦畑に行きますか!!」

アンジェレネ「お、おお!!」

一区切りー!
ギャグっぽいものがやりたくて仕方が無い


………女子寮前………

カツカツ

オリアナ「さてと……」ヨイショ

オリアナ「さすがのお兄さんと言えども女子寮の視察までは出来てないはず」

オリアナ「女装までさせたんだからきっとバレずに入れる……はずよね」

オリアナ「万が一のことがあったとしても、お嬢ちゃんにもらったこの寮の鍵を見せれば……」

オリアナ「お兄さんも寝ているし」チラ

フィアンマ「くかー」

オリアナ「よし、行くか」タッ


ドンッ

オリアナ「え?」

オリアナ(こんなところに……敵!?)ズザッ

アンジェレネ「ひええええ!! すみませんすみません!!」ズザザザッ

オリアナ(……ん? 子供、シスターかあ……)ハァ

オリアナ(ブルって損したかな)

ルチア「黙りなさい、シスター・アンジェレネ」ペチペチ

ルチア「中の人間に聞こえてしまうでしょう!」

アンジェレネ「あうう、でも……」


オリアナ「あはは……ごめんね」

オリアナ「私も急いでて、あまり前を気にしてなかったの」

アンジェレネ「い、いえ、私が飛び出したから……」

オリアナ「それはお互い様。痛いところとかはないかな?」

アンジェレネ「す、すみません。大丈夫です」スック

オリアナ「そう、それは良かった」ニコ

アンジェレネ「……って、あなたは!」

オリアナ「あらら、気づかれちゃったかな」

ルチア「昨日の!?」


オリアナ「お久しぶり……って程でもないか」

オリアナ「とにかく、こんばんわ。可愛いシスターさんたち」

アニェーゼ「はぁ、こんなところで何やってんですか?」タタッ

アニェーゼ「それにこんな遅くに」

アンジェレネ「し、シスター・アニェーゼ!」

アニェーゼ「しー、バレちまいます」

アンジェレネ「す、すみません……」

オリアナ「お姉さんはこれからお世話になる部屋の見学に来ただけよん」

アニェーゼ「なるほど……」


アニェーゼ「確かにフィアンマさんにこき使われていたとすればこの時間でも納得ですが……」

オリアナ「そうそう。さすがのお姉さんでもあまりのハードスケジュールに足ががくがくなのよ」

アンジェレネ「足ががくがく?」

アニェーゼ「……あまりそういう発言はここではしねーでもらいてーんですが」

アニェーゼ「まだ幼いのもいるんですし」ジロ

オリアナ「あらら、そんなに睨まないでよ。ほんのジョークだから」

オリアナ「冗談も通じない女はモテないと警告はしておくわ」

アニェーゼ「そんなのこっちから願い下げですんで」

オリアナ「あら、つまらないなあ」


ルチア「し、シスター・アニェーゼ、この女は……」

アニェーゼ「あれ? フィアンマさんの報告書見せましたよね?」

ルチア「ああ……あの分厚い……」

アンジェレネ「お名前は何というんですか? あ、えっと、私はアンジェレネです」

オリアナ「あの不思議なお兄さんに雇われることになった、オリアナ=トムソンよん」

オリアナ「オリアナとでも呼んでね」

トテトテ

インデックス「はあ、はあ、待ってよぉー」

アニェーゼ「来た来た」

インデックス「私が結界破ってあげたのに、三人でさっさと出てきちゃうなんてひどいんだよ」ブー

アニェーゼ「あー、それは悪かったですね。私も見つかるのは勘弁なんで」

今日はここまでですー

少しネタに走るのだ


オリアナ「……その白い子は一体?」

インデックス「インデックスだよ!」

オリアナ「ああ、イギリスの」

インデックス「うん、そうだけど……物知りなんだね?」

オリアナ「お姉さんだから」エッヘン

インデックス「へえ……お姉さんはすごいんだね」

オリアナ「ええ。お姉さんだから」

インデックス「へえ……お姉さんはすごいんだね」

ルチア「会話がループしそうな予感がするんですが」

アンジェレネ「既にハマりかけてますけどね」アハハ…


オリアナ「ところで、あなた達こそこんな時間に抜け出し来てどうしたの?」

オリアナ「子供達は寝る時間よ」

インデックス「子供扱いしないで欲しいんだよ!」

オリアナ「じゃあ……家出でもしたい年ごろなのかな?」

インデックス「そんなことを尋ねるってことはもしかしてお姉さんは私たちの敵なのかな……?」

アニェーゼ「っ……そうかもしれねーですね」

オリアナ「あれ? これはやましい理由があると解釈してもいいのかな?」ザッ

インデックス「望むところ!」

ルチア「……そういうことは朝起きてからやってください。近所迷惑です」

インデックス「ふー、仕方ないなぁ」

オリアナ「仕方が無いわね」


インデックス「……ん!?」クンクン

オリアナ「と、突然どうしたの?」

インデックス「近くにフィアンマの匂いがする」

アニェーゼ「匂いでわかるんですか……」

インデックス「いい匂いだからね」

オリアナ「ああ……お兄さんなら私の背中の上だけど……」

アンジェレネ(そこかしこに変態臭が漂ってますね)

インデックス「な!? なんでそんなところに!?」

オリアナ「もしかして……お兄さんの知り合い?」


インデックス「私とフィアンマは兄妹の契りを交わした仲なんだよ!」

インデックス「ね、フィアンマ?」

フィアンマ「そんな契りを交わした記憶はないがな」ムク

オリアナ「あらら、起きちゃった」

アニェーゼ「な、なんですか、その格好は!!」

ルチア「まさかそんな女装で寮監目を欺いて女子寮に侵入しようと……」ブルブル

ルチア「け、汚らわしい!」

アンジェレネ「え? あれがフィアンマさんなんですか!?」

アンジェレネ「か、可愛い……」ポケー


フィアンマ「……何を言ってるんだ、お前たちは?」

四人「……」ジー

フィアンマ「……む? ここは女子寮の前か」

フィアンマ「ってオリアナ!? 何してるんだ!!」

フィアンマ「なんなんだ、この状況は!」

アニェーゼ(もしや、自分の惨状に気づいてない?)

インデックス「えっと……とりあえず鏡貸してあげるね」スッ

フィアンマ(この時のことは一生忘れないだろう……鏡にはとても可愛い女の子の顔が写っていたんだ)

フィアンマ「な、なんだこれは!!!!!!!」

ひとくぎり。
テスト期間に入る前に書き溜めたやつを吐き出すつもりです。



『反省会』


インデックス(そのあと、寮監のお姉さんにガッツリ怒られて……)

アニェーゼ(フィアンマさんに絞られ……)

オリアナ(お姉さんは+αでお兄さんにげんこつされ……)

アンジェレネ(フィアンマさんの部屋の前の廊下で一晩正座……)

ルチア(寮にはデジタルな包囲網もつけられたそうです)


インデックス「ふあぁ……もうねむねむなんだよぉ」バタバタ

フィアンマ「俺様の方がねむねむなんだが?」

インデックス「フィアンマはオリアナの背中の上ですやすや眠ってたもん」

フィアンマ「そんなの知るか! あの事件に俺様の意思は無かったんだ……」

オリアナ「まあ、完全にお姉さんの趣味だしね」

フィアンマ「はあ……なぜ俺様が反省の監視などをしなくてはならないのやら」ウウ…

ルチア「上司も連帯責任ということでは?」

フィアンマ「そんなこと言われなくてもわかってる。だがな……」ムゥ


オリアナ「なら、反省なんかやめちゃわない? どっちにも得がないわ」

オリアナ「お互いの口裏合わせておけば疑われないだろうし」

ルチア「悔しいですが、賛成ですね」

ルチア「このメンバーがこの程度で反省するとはとても……」

インデックス「そ、そうだよ。時間の無駄だってー」

フィアンマ「確かに意味のない時間かもしれないが、次のためにやらなければならないことでもあるだろう」

アニェーゼ「やっぱりそうですか」

オリアナ「お兄さんって変なところで強情なのよね……」ハア

フィアンマ「それが俺様のいい部分だろう?」ドヤ

インデックス「そうだけどー」ブー


フィアンマ「……それにしても」チラ

アンジェレネ「……」スースー

フィアンマ「……俺様が見てる前で堂々と寝れるとはな」クツクツ

ルチア「シスター・アンジェレネ!」

アンジェレネ「っは!」キョロキョロ

フィアンマ「……おはよう、アンジェレネ?」ニッコリ

アンジェレネ「ひ、ひゃいいっ!」

インデックス(あー、やっちまったんだよ。バイバイ、アンジェレネ)

フィアンマ「少し俺様の部屋へ来い。拘束は解いてやるから」

アンジェレネ「はわわわ」ブルブル…

ルチア(シスター・アンジェレネ……強く生きてください)


フィアンマ「こんな感じか」パッ

アンジェレネ「拘束が……解けた?」

フィアンマ「解いた、な」

フィアンマ「ほら、立て」クイクイ

アンジェレネ「あ、はい……」フルフル

フィアンマ「俺様たちは少し部屋にこもるが……インデックス、勝手に拘束を解いたりしたら……分かってるよな?」

インデックス「う、うん。目がマジなんだよ」

フィアンマ「アンジェレネもそう震えることはない。聞きたいことがあるだけだからな」ポンポン

アンジェレネ(なぜ寝てたとか聞かれるのでしょうか)フルフル

アンジェレネ(眠かったからと答えるしかないですー!!)

オリアナ「……」クスッ

ここまでー!!
女装フィアンマは可愛い(確信)


………フィアンマの部屋………


フィアンマ「さてと……早速質問いいか?」

アンジェレネ「す、すみません!! 眠かっただけなんです!!」

フィアンマ「は? 何を言ってるんだ?」

フィアンマ「俺様はお前の思う平和を聞こうと思っただけなんだが……」

フィアンマ「もしや、まだ寝ぼけているのか?」

アンジェレネ「へ?」

フィアンマ「へ、じゃなくて平和だ」

アンジェレネ「えっと……突然どうしたんですか?」

フィアンマ「ん? 何かわからないことでもあったか?」

フィアンマ「そうだ……喉は渇いてるか?」


アンジェレネ「あ……喉乾きました!」

フィアンマ「そうか……じゃあこのココアでもやろう」スッ

アンジェレネ「あ、ありがとうございます」ペコ

フィアンマ「ちゃんと冷ませよ?」

フィアンマ「舌を火傷すると、口内炎的な苦痛を味わう羽目になるからな」

アンジェレネ「は!! その気持ちわかります!」フーフー

アンジェレネ「食べたいのに食べられないって辛いんですよ……」フーフー

フィアンマ「あ、ああ……そうなんだが、いつまで冷ましてるんだ?」

アンジェレネ「す、すみません!!」フーフー


アンジェレネ「ふーふー……甘いですね」ゴクゴク

フィアンマ「まあ、特別甘くしたココアだからな」

アンジェレネ「え?」

フィアンマ「アニェーゼとアックアがアンジェレネは甘いものが大好きだと言っていたから、砂糖多めにしたわけだ」

アンジェレネ「確かにシスター・ルチアが入れてくれるのより甘いですね!!」ゴクゴク

フィアンマ「甘いものは別腹ってことなのだろうな」

アンジェレネ「もちろんですよ! 甘いものならいくらでも行けますから」ゴクゴク

フィアンマ「シスターとは思えないセリフだな」

アンジェレネ「あはは……シスター・ルチアにもよく怒られます……」


アンジェレネ「ぷはぁ……」ポケー

フィアンマ「……非常にリラックスしているところ申し訳ないが、答えは出たか?」

アンジェレネ「えっと……スケールが大きすぎて少し分からないです」

フィアンマ「ああ……それは済まなかったな」

フィアンマ「じゃあ……お前地震の平和ってなんだ?」

アンジェレネ「うーん……幸せを求める余裕がある状態なんじゃないかなって思います」

アンジェレネ「少しくらい嫌なことや辛いことがあっても、幸せがあれば平和なんじゃないかなって」

アンジェレネ「わ、私みたいな見習いシスターが言うのはおこがましいんですけど」アハハ…


フィアンマ「なるほどな……幸福の追求ができる環境か」

アンジェレネ「す、すみません、変なこと言っちゃって」アセアセ

フィアンマ「いや、いいと思うぞ」

アンジェレネ「そ、そうですか!!」パァ

フィアンマ「……少し参考にさせてもらうがいいか?」

アンジェレネ「も、もちろんです!」

アンジェレネ「これくらいでいいんでしたら、はい……」チビチビ

フィアンマ「くくっ、そんなにビクビクしなくてもいい」

アンジェレネ「は、はあ……」


フィアンマ「よし、聞きたかったのはこれだけだからもう出ていいぞ」

アンジェレネ「え? これだけなんですか?」

アンジェレネ(つまり、寝ていたことに対するお咎めはなし!?)

フィアンマ「そうだと言ってるだろう?」

フィアンマ「出たらインデックスを呼んでくれるか?」

アンジェレネ「こ、拘束は……?」

フィアンマ「自分で外せるはずだ」

アンジェレネ「……分かりました。失礼しました」

パタン


……………………………

フィアンマ「幸福……幸せか」

フィアンマ「俺様には良く分からないものだな」ボフッ

フィアンマ「ね……眠い」


ガチャ

インデックス「お、お邪魔するんだよー?」ソォ-

フィアンマ「ん、来たか」ギシッ

インデックス(私たちが正座で拘束されてたってのに……)

インデックス(フィアンマだけベッドに寝ている!?)

インデックス「……がうがう」

フィアンマ「え、ちょ、ど、どうしたんだ!」ムクッ


インデックス「一人だけぬくぬく寝てるなんてずるいんだよ!!」ガウウウウ

ガブー

フィアンマ「あああああああ!!!」ジタバタ


フィアンマ「くそっ……せっかく収まったと思ってたのに」サスサス

インデックス「何が収まったと思ったのかな?」

フィアンマ「お前の噛みグセに決まってるだろ」イタタ

インデックス「私の唯一の攻撃手段だからね。収まるわけが無いんだよ」

フィアンマ「お前といるとき、いつもピリピリしていなければならない俺様の気持ちも汲んで欲しいものだ」

インデックス「大丈夫だよ。フィアンマが変なことしたり、言ったりしなければ、私は何もしないんだから」ニコッ

フィアンマ「何も参考にならないな。俺様だけはその笑顔にも騙されないぞ」

インデックス「えー? 今のは純粋な好意だよ?」

インデックス「変なことしなければ私はフィアンマのこと大好きなのになー」

フィアンマ「そうか。俺様は噛むやつに好かれても迷惑なだけだがな」


インデックス「め、迷惑なの?」ウルッ

フィアンマ「ちょ、泣くのは反則だろう……」

インデックス「ひぐっ……えぐっ」グスグス

フィアンマ「……分かった分かった、迷惑じゃないから。嬉しいから」

フィアンマ「だから泣くな、俺様が泣かせているみたいだろう?」

インデックス(……けっ、ちょろいな)ニヤ

フィアンマ「おい、今本心が顔に出てたぞ」

インデックス「ほ、本心って何のことかな?」シランプリ

フィアンマ「コイツ本当にちょろいな……みたいな笑みだった」

インデックス「い、いや、そんなこと考えてないんだよ」

フィアンマ「そ、そうなのか?」


フィアンマ「とにかくだ、本題に入っていいか」

インデックス「うん、無駄話を続けても時間の無駄だもんね」

フィアンマ(……分かってるなら大人しくしてくれ)

フィアンマ「お前の幸せって何なんだ?」

インデックス「え? フィアンマらしくないこと聞くね」

フィアンマ「俺様は何だと思われているんだ?」

インデックス「お前の幸せなんて踏みにじってやる、ぐははーみたいな?」

フィアンマ「本当に踏みにじってやろうか?」

インデックス「嫌なんだよ!」キリッ


フィアンマ「ああ、もういいから早く答えろ」

インデックス「そうだね……」

インデックス「……アニェーゼ達がご飯くれて、アウレオルスが真面目に本書いてて、アックアがいつも通りフィアンマに突っ込ん
でて、フィアンマが私と遊んでくれたら幸せかな」

インデックス「だから、私は今幸せなんだよ」ニコッ

フィアンマ「……そんなことなのか? それっぽっちのことでいいのか?」

インデックス「え? 私の願う幸せはすごい贅沢なことだと思うんだけど」

インデックス「だって私の記憶は消されちゃうでしょ?」

インデックス「だからその前にいっぱい思い出を作っておきたいんだよ」

インデックス「私のこと、覚えていて欲しいから」

インデックス「みんながいたらそれでいいの」


フィアンマ「……そうか。その幸せは続くといいな」ポンポン

インデックス「うん……なんだかフィアンマじゃないみたいだね」

フィアンマ「……踏みにじる系男子は卒業するつもりだからな」

インデックス「へぇ……個性なくなるね」

フィアンマ「俺様は個性で溢れているから問題ない!」

フィアンマ「っていうか俺様がいつ踏みにじる系な面を見せた!!」

インデックス「うーん……雰囲気かな」

フィアンマ「……もう聞くことはないから出ろ。ついでにアニェーゼかルチアを呼んでくれ」

インデックス「え? 二人は拘束されているんだよ?」

フィアンマ「解呪してやれ」

インデックス「りょーかい」

キイィィ バタン


…………………………

フィアンマ「……」カリカリ

フィアンマ(それくらいのことなら俺様でも叶えられるかもしれないな……記憶の方はイギリスの方が面倒なんだよな……)

フィアンマ「んあー、柄にもないことを!」ガシガシ

ガチャ

フィアンマ「誰だ? アニェーゼかルチア?」

オリアナ「残念、お姉さんでしたー」グッ

オリアナ「少し経過が聞きたくてやってきちゃったわん」

フィアンマ「拘束はどうしたんだ」

オリアナ「自分で解呪したに決まってるじゃない。部屋のロックに比べたらちょろいもんよ」クス

フィアンマ「はあ……手を抜くべきじゃなかったな」


オリアナ「そうね。お姉さんの実力を甘く見ちゃいけないわ」

フィアンマ「いや、お前の実力は他の誰より認めているつもりだが」

オリアナ「あら、お兄さんがそんな嬉しいことを言ってくれるなんて……」

オリアナ「熱でもあるの?」

フィアンマ「そんなわけないだろう」

フィアンマ「とてつもなく眠いが、健康体さ」

オリアナ「……ということは本当に認めてくれてるってことでいいのかしらん?」

フィアンマ「変態方面でな」

オリアナ「……ああ、なるほどね」


フィアンマ「で、何の用だ?」

オリアナ「経過を聞こうと思っただけだって」

オリアナ「お兄さんの心境に変化は訪れたかしらん?」

フィアンマ「まあ……思うところはあった」

オリアナ「お、収穫ありね」

フィアンマ「少しだがな」

オリアナ「そ。少しずつでも進歩できれば上出来よん。お姉さんも応援してるから」

フィアンマ「いらない応援だな。まあ、ありがたく受け取っておくが」


オリアナ「あらら? 素直じゃないのね」

フィアンマ「ふん、素直な俺様なんて気持ち悪くて仕方が無いだろう?」

フィアンマ「俺様は少しひねくれてるくらいがちょうどいいと思うわけだ」

オリアナ「なるほどね。確かにそうかもしれないわ」

オリアナ「気持ち悪いお兄さんも見てみたいけど」

フィアンマ「それは多分俺様じゃないな」

オリアナ「かもしれないわ」

フィアンマ「だが、俺様が白かったら完全無欠だろうな」

オリアナ「それはないと思うわ」


フィアンマ「むっ……そろそろアニェーゼかルチアが来るから帰れ」シッシ

オリアナ「分かった分かった。お兄さんは怒らせない方がいいって聖人のお兄さんも言ってたことだし」

フィアンマ「ふん、この程度で怒るものか。さっさと行け」

オリアナ「はいはーい、オトナなことは子供が寝静まってからするべきよね」クスッ

フィアンマ「……少なくともお前とすることはないよ」

オリアナ「あら、残念。でも諦めたりはしないから」

フィアンマ「ああ、そうかい。せいぜい頑張るといい」

バタン

一区切りー
あまりギャグを挟めない雰囲気なのでさっさと投下しちゃいたいパートですね


………………………

ルチア「私の幸せ……ですか」

フィアンマ「ああ。あまり深く考えることはない」

フィアンマ(前二人に比べてとてつもなくやりやすいな……)

フィアンマ(はじめにルチアにしとくべきだったか)

ルチア「自分勝手なことになってしまいますが、よろしいですか?」

フィアンマ「ああ、全然構わないぞ」

ルチア「私の幸せは部隊の皆が不自由なく生活できることですね」

ルチア「シスター・アニェーゼもシスター・アンジェレネも……」


フィアンマ「…………なあ」

ルチア「なんですか?」

フィアンマ「……自分のことは無いのか?」

ルチア「私は見習いですが、シスターの端くれ」

ルチア「欲を持つのはあまり良い事ではありません」

ルチア「しかし、皆のための欲なら神もお許しになる……かなと思っただけです」

フィアンマ「なるほどな。それくらいなら許してくれるだろうさ」

フィアンマ「神というくらいだ、見習いの行動にいちいち目くじらを立てるほど狭量ではないだろうしな」

フィアンマ「いや、神が許さなくとも俺様が許してやる。できる限り実現させてやる」

ルチア「……はぁ、何様なんですか?」

フィアンマ「俺様だ」


ルチア「……では頼んでおきます」クスッ

ルチア「この生活の継続を」

フィアンマ「ああ、出来る限り、だがな」

ルチア「期待はしませんが」

フィアンマ「む、言ったな?」

フィアンマ「後で俺様にこんなことを言ったことを後悔するといい」

ルチア「できるといいですね」スック

ルチア「それでは」ペコリ

フィアンマ(キツめなシスターだと思っていたが、それはあくまで表側だけでしかないということか)


…………………………

アニェーゼ「幸せ、ですか……」

フィアンマ「そうそう。俺様も少し疲れてきてるからすぐに答えてくれるとありがたいんだが」

アニェーゼ「え、適当過ぎる気がすんですけど」

フィアンマ「ああ、少し適当風になっているのは認める」

フィアンマ「大体行動方針は固まってきたからな」ノビー

アニェーゼ「そ、そうですか……」

アニェーゼ「でも、私はちゃんと考えといたんで待たせねーですよ」

フィアンマ「そうか。アンジェレネ辺りから聞いたのか?」

アニェーゼ「いえ、アンジェレネはぐっすり寝てますよ」

フィアンマ「そ、そうか……」


フィアンマ「やっぱりきちんとしめておくべきだったな」

アニェーゼ「あ、えっと部下の失態ですし、私が謝るんで許してあげて欲しいです」

フィアンマ「許す? 別に大して気にしていないさ」

フィアンマ「ルチアの言っていたとおり、あのメンバーを正座させたところで反省などしないだろうしな」

アニェーゼ「確かに……」

フィアンマ「で? 考えてきたなら教えてもらえると嬉しいんだが?」

アニェーゼ「私の部隊のシスター達が昔みて―にひもじい思いや寂しい思いをしねーことですね」

フィアンマ(ルチアが言っていたことと似ているな)


フィアンマ「なるほど……」カリカリ

フィアンマ「実にアニェーゼらしい考えだな」

アニェーゼ「そうですか?」

アニェーゼ「彼女たちにはあまりよくしてやれてねーんですけどね」

フィアンマ「そうか? 本人たちはお前の努力をよく分かっている様子だったがな」

アニェーゼ「いやいや、大変な目に遭わせてばっかですよ」

フィアンマ「ふむ……どこまでやればいいんだろうな」

アニェーゼ「へ? なんか言いました?」

フィアンマ「いや、独り言だ」


アニェーゼ「あの、こっちからも一つ尋ねてもいいですか?」

フィアンマ「なんだ? 俺様もそろそろ寝たいから手短にな」

アニェーゼ「フィアンマさんの幸せって何なんですか?」

フィアンマ「俺様の?」

アニェーゼ「私たちには散々聞いたんですから答えてもらわねーと」

フィアンマ「……」

アニェーゼ「アンジェレネには平和について聞いたらしーんで、そっちでもいいですけど」

フィアンマ「……さあな? 分からないから聞いただけさ」


アニェーゼ「うわあ、そういう風に追及を逃れんですか……勉強になりますね」

フィアンマ「ふん、言わないとは言ってないだろう」

フィアンマ「とりあえず答えは保留だ」

アニェーゼ「むう……まあいいでしょう、それで我慢します」

アニェーゼ「でも、絶対に教えてください」

フィアンマ「分かってる。話はこれで終わりだ」

フィアンマ「お前も反省組に加わってこい」ビシッ

アニェーゼ「はいはい、分かりましたよ」ガチャ

フィアンマ「はぁ……態度悪くないか?」

今日はここまでー!


……………………………

グッ…ガチャ

オリアナ「あらら? ドアのロックが外れたままじゃない」

フィアンマ「……」カリカリ…

オリアナ「お兄さん?」

フィアンマ「……ん? オリアナか」

オリアナ「何してるの?」

フィアンマ「あいつらが言っていたことをまとめてるだけだ」カタン

フィアンマ「今後の参考にするためにもな」

オリアナ「へえ……お兄さんって意外と真面目?」

フィアンマ「元々だ」


フィアンマ「……で、何の用だ?」

オリアナ「どんな結論に至ったのかなーって思って」

フィアンマ「結論なんかないよ。俺様には理解できないからな」

オリアナ「理解できないって、何を?」

フィアンマ「俺様は平和の定義を人間の悪性が存在しないことから万人が幸せを享受する権利を持つということに変えて考えること
にした」

フィアンマ「だが、幸せというものの定義も曖昧だったからそこを聞いてみることにしたわけだ」

オリアナ「ふむふむ……」

オリアナ(なんだか難しそうな単語ばっかり使うなあ……)


フィアンマ「その結果が理解できないんだ」

フィアンマ「どいつもこいつも金持ちになるーだとか権力が欲しいーだとか言わないんだよ」

フィアンマ「他人の平穏を祈ったり、他人とのつながりを求めたり……」

フィアンマ「自分の中で完結するものじゃなかった。他人がいないと成り立たないものだった」

フィアンマ「ローマ正教の人間だってのにさ。俺様の認識と大きく食い違っている」

オリアナ「へえ、つまりお兄さんの認識を変えるいい機会になったってことじゃない?」

オリアナ「でも、まあ、みんながみんなお兄さんが思ったようなことを幸せだと思ってるわけじゃないと思うけどね」

フィアンマ「そうなのか?」

オリアナ「お金があれば幸せって言う人なんて五万といるわよん?」

フィアンマ「ふむ……まあ、明日になったらもっと多くの人間に聞いてみるつもりさ」

フィアンマ「そうしたら共通点も自ずと見えてくるはずだ」


オリアナ「そうねえ、自分で理解するのが一番早いだろうし」

オリアナ「お姉さんもそれはいいと思うわよん」

フィアンマ「だな。百聞は一見にしかずとはよく言ったものだよ」

オリアナ「んふふっ、話が一段落したところでお姉さんと気持ちいいことしない?」サワッ

フィアンマ「はぁ、何度も何度も懲りないな」

オリアナ「いいじゃない、お姉さんと一緒に刺激的な夜を―」

フィアンマ「……酔っぱらってるのか?」

オリアナ「それはないわ、お姉さんは酒で潰れることは絶対に無いからね」

フィアンマ「そんな若い年から飲んだくれとは……親が泣くぞ」


オリアナ「いいのよ、親なんて勝手に泣いてれば」

オリアナ「顔も覚えてないしね」

フィアンマ「ふーん、そうなのか」

オリアナ「き、興味なさげね」

フィアンマ「実際興味など無いからな……」

オリアナ「お兄さんってときどき容赦ないこと言うわね」

オリアナ「でも、お姉さんはMにもなれるからいいんだけど」

フィアンマ「安心しろ。俺様はMでもSでもないからな」


オリアナ「……よっし、じゃあそろそろ反省組も解放してあげた方がいいかな」スック

フィアンマ「いや、お前が一番反省すべきだからな?」

オリアナ「いいじゃない。あの格好、すごく似合ってたし」

オリアナ「お姉さんも驚いちゃった」ガチャ

フィアンマ「も、もう掘り返さないでくれ……」ズーン

ここまでー!
おつありですー!!


ギイイイイッ

インデックス「……むにゃ」スースー

アンジェレネ「……」クカ-

ルチア「……」コクコク

アニェーゼ「……ふにゃー……」クークー

オリアナ「あらら、みんな寝ちゃってるわね」

フィアンマ「はぁ、どうやら反省する気が無いらしいな」

オリアナ「起こすってこと?」

オリアナ「お姉さんとしてはお兄さんの良心を信じたいところだけど?」

フィアンマ「……こいつらはまだ子供だ」

フィアンマ「徹夜は成長に影響を及ぼすだろう」


オリアナ「……つまり起こさないってことね」

フィアンマ「そんなことは一言も言ってない!」

オリアナ「はいはい、分かったから運ぶの手伝ってちょうだいね」

フィアンマ「俺様の鍛えてない体を見てから言ってくれ」

オリアナ「……鍛えるチャンスなんじゃない?」

フィアンマ「だ、黙れ。俺様には魔術があるんだ……鍛える必要などない」

オリアナ「……」

フィアンマ「無反応?」

オリアナ「黙れって言われたから仕方が無いでしょ」


オリアナ「言うこと聞かないと変なことされそうだし」クスッ

フィアンマ「変なことするのは主にお前だr」モガッ

オリアナ「お兄さん、しー」

フィアンマ「……ちっ、言われなくても分かってる」

オリアナ「怒鳴るのもダメよん?」

フィアンマ「バカにしてるとしか思えないな……」


オリアナ「あら、バレちゃった。お仕置きされちゃうのかしら?」

フィアンマ「はぁ……運ぶんだろう? 卑猥なこと言ってないでさっさとしろ」

オリアナ「はいはい、お姉さんはお兄さんの使いっ走りとして働きますよ」

フィアンマ「俺様も運ぶんだから文句言うな」

オリアナ「女であるお姉さんの方が多く運ぶことに疑問を感じてるだけよん」

オリアナ「別に文句言ってるわけじゃないから気にしないで」


フィアンマ「……やっぱりアックア呼ぶか」

オリアナ「あの聖人のお兄さんが女子寮に入れるとでも?」

フィアンマ「え、何を言ってるんだ、俺様だって入れない……」

フィアンマ「……まさか」ゾクッ

オリアナ「お姉さん特製、お兄さん女装セット!」ジャーン

ゴオオオオオッ

フィアンマ「一応燃やしておいたが、他にも持ってるなら今のうちに出しといたほうが身のためだと忠告しておく」

オリアナ「ああ! お兄さんの正装がああああ!!」

フィアンマ「正装などではない!!!!!」


オリアナ(結局、お兄さんは女子寮の前まで白いシスターさんを運ぶことしかしてくれませんでした)

オリアナ(怒らせちゃったからかな?)

オリアナ「本当にお兄さんったら真性のSなんだから……」ハァ

ここまでー!
おつありです。

本当にみんないい子




『のどかな朝食』




………食堂………


フィアンマ「んんーっ……」ノビ-ッ

フィアンマ「眠い……」カツカツ

オリアナ「ちょっと待って、お兄さん!」

オリアナ「身支度してる女を放っていっちゃうのは紳士失格よん」

フィアンマ「うるさい……俺様は紳士になんざなろうと思った事は無いんだ」

フィアンマ「そんなキーキー言われると頭痛が悪化するだろう……」ウ-ン

オリアナ「あら、もしかして低血圧さんかしらね?」

フィアンマ「その可能性も高いな」

フィアンマ「昨日の朝は大丈夫だったんだが……」

フィアンマ「はぁ、医者に見せれない体ってのはこういう時面倒だな」


オリアナ「お姉さんが見てあげようか?」

フィアンマ「拒否する。お前が言うと別の意味にしか聞こえない」

フィアンマ「まあ、何かしたいと言うのなら、俺様の体に配慮してくれると助かる」

オリアナ「そうねぇ……頑張ってみるわ」

フィアンマ「ああ」

フィアンマ「まず、その口を閉じるところから始めることを勧める」

オリアナ「ええ!?」

フィアンマ「はい、減点」

オリアナ(まさかの減点方式!?)


インデックス「あ! フィアンマだー!」トテトテ

アニェーゼ「ちょ、インデックスちゃんここで走んねーでください!」

インデックス「いいじゃん、ちょっとくらいー」トテトテ

ドンッ

ヴェント「ん?」

インデックス(あ、怖そうな人にぶつかっちゃったんだよ……)

インデックス「ご、ごめんなさいなんだよ……」

ヴェント「いや、別に構わないけど、アンタ見ない顔だね」

インデックス「私はインデックスだよ。あなたも見たことのない顔だけど……」


フィアンマ「何してるんだ、あいつらは?」

オリアナ「さあ、朝の挨拶ってところじゃない?」

フィアンマ「はい、減点」

オリアナ「お兄さんから話しかけたのに!?」

フィアンマ「俺様を無視しても減点だからな?」

オリアナ「鬼畜仕様に進化してる……っていうかまだ続いてたの?」

フィアンマ「うーん……面倒だしやめるか」フアァ


アニェーゼ「はぁ……おはようこざいます。朝から騒がしくて申し訳ねーです」

フィアンマ「お前も大変だな……」

アニェーゼ「押し付けられたようなもんですけどね」

フィアンマ「まあ、インデックスも楽しそうにしていたしいいんじゃないか?」
アニェーゼ「そ、そうですけどね」エヘヘ
オリアナ「……お疲れみたいだけど、大丈夫?」
アニェーゼ「昨日はあんまり寝てねーですし仕方がないんです」

グイッ

オリアナ「あら、寝不足は肌の敵。若いからって油断してると痛い目見るから要注意よ」

アニェーゼ「ち、忠告ありがとうございます」

ここまでー


アニェーゼ「それにしても昨日はお手数かけちまってすみませんでした」

アニェーゼ「私の部隊の者まで運んでもらっちまって……」

オリアナ「だって、お兄さん?」

フィアンマ「ふん、そのことならオリアナに感謝しておけ」

フィアンマ「俺様は……非力だからインデックスしか運んでないからな」

アニェーゼ「え、ええ!?」

アニェーゼ「じゃ、じゃあ、あなたが三人運んだんですか?」

オリアナ「お姉さんは運び屋とも呼ばれるからね」

オリアナ「依頼主の命令だったら、なんでも運ぶのよん」


オリアナ「だから、その判断を下したお兄さんにお礼は言ってね」

アニェーゼ「あ、ありがとうございます」

フィアンマ「む……大したことをしていないのに感謝されるのは居心地が悪いな」

オリアナ「それが上司ってもんよ。部下の手柄で褒められる」

オリアナ「そのあとでちゃんと部下を褒めてあげれば居心地の悪さも減るんじゃない?」

フィアンマ「つまり、褒めろと言ってるのか?」

オリアナ「別に? お姉さんは子供みたいな褒め方じゃ満足できないしね」

オリアナ「ベッドで褒めてね」


フィアンマ「……アニェーゼ、変なものを聞かせて悪かった」

フィアンマ「これは部下の手綱を握れなかった俺様の責任だ」

アニェーゼ「いえ、幸い私しか聞いてなかったんで問題ねーです」

オリアナ「……あれ? お姉さんの扱いが酷い?」

フィアンマ「心配するな、後で部屋に帰ったらきちんと褒めてやる」

オリアナ「ふふん、当然かしらね」

フィアンマ「もちろん説教の後にな」ニッコリ

オリアナ「」


フィアンマ「それとも説教は食事中にするか?」

オリアナ「いや、部屋でいいです」

フィアンマ「じゃあ、朝食を頼みに行くか」

アニェーゼ「オルソラですか?」

フィアンマ「ああ、そうだが……?」

アニェーゼ「……フィアンマさんが噂を流したせいで長蛇の列になっちまってますよ」

フィアンマ「な!?!? なんだって?」

アックア「待つしかないのである」

フィアンマ「突然出てくるな!!」


アックア「仕方がないのである」

アックア「私とてお前といるのはあまり気分が良くないが、教皇の命令だからな」

フィアンマ「はあ……」

アックア「それに昨日の夜、私が油断して去った後に問題を起こしたと聞いているのである」

オリアナ「あ、女子寮侵入の件だっけ……?」

アックア「それである」

フィアンマ「おい、オリアナ、首謀者が知らん顔をしているとはどういうことだ!」

アックア「さすがにオリアナに罪を擦り付けるのは無理があるぞ」

アニェーゼ(わー、誰も擁護してくれねーですね)

フィアンマ(アニェーゼ……助けて……)

ここまでー!
乙ありです!


タタッ

インデックス「フィアンマー!」

フィアンマ(ナイスタイミング!!)

インデックス「みてみてー、友達できたんだよ」グイグイ

アニェーゼ「友達……?」ブフッ

オリアナ「……見なかったことにすべきかな……?」

アックア「……ず、随分面白い友達ができたのであるな」クツクツ…

インデックス「うん! エリマキさんとも知り合いなんだって」

フィアンマ「……何やってるんだ、ヴェント?」

ヴェント「知らないよ」

ヴェント「少し話してたら、フィアンマ達にも紹介してあげようとか言いだして引っ張られたんだよ」


インデックス「あれ? 三人とも知り合いだったの?」

フィアンマ「まあな」

フィアンマ「紹介してなかったが、ヴェントも俺様達の同僚なんだ」

インデックス「えー、せっかく自慢しようと思ったのにー」

フィアンマ「それなら、アウレオルスに紹介するといい」

フィアンマ「多分知り合いじゃないだろうからな」

フィアンマ(それにアウレオルスもインデックスに友達ができたことを喜ぶだろう)

フィアンマ(まさに一石二鳥だな)


インデックス「アウレオルス? 確かに名案かも!」

インデックス「アウレオルスのところ行くよー」グイグイ

ヴェント「アウレオルスって誰!?」

アックア「隠秘記録官の男である」

インデックス「何でもいいから行くんだよー」

ヴェント「ちょ、朝食!!!!」ズルズル…

アニェーゼ「……おお、あのヴェントさんが翻弄されてますね」

フィアンマ「いや、あれはわざとだろうな」

フィアンマ「ほとんど抵抗してないし、表情もいつもより柔らかい感じだった」

アックア「本人曰く、面倒見は良いらしい」


フィアンマ「なるほどな。まあ、過去を考えればおかしなことでもない」

アニェーゼ「え?」

フィアンマ「アニェーゼな知らなくてもいいことだ」

アニェーゼ「は、はあ……」

オリアナ「大人の世界の話なのよ、きっと」

フィアンマ「一人で大人の世界へ行ってろ」

オリアナ「あらあら、お兄さんといえどもその暴言は見逃せないわ」

オリアナ「あまりの寂しさで少し濡れちゃったじゃない」

フィアンマ「はぁ……そんなにもれるようならおむつでも履いた方がいいんじゃないか?」

オリアナ「もれるじゃなくてぬれる!!」


オリアナ「お姉さん、そろそろ本格的にお腹空いてきたから普通に食べちゃっていいかな?」

アニェーゼ「あ……私も仕事があるんで、先に食べちまっても大丈夫ですか?」

フィアンマ「別に俺様の許可を得る必要などないだろう」

フィアンマ「勝手にすればいい。まあ、オルソラの料理を食べずに後悔するのはお前たちだがな」

アニェーゼ「では、お先に失礼します」

オリアナ「じゃあ、お姉さんもアニェーゼちゃんと話しながら食べようかな」

アニェーゼ「え……別にいいですけど…
アックア「行ってしまったのである」

フィアンマ「本当に行くとは……まあ、男二人の朝食もたまにはいいか」

アックア「ムサイのである」

フィアンマ「それはいってはならないお約束だ!!」


フィアンマ「うーん、こんな男二人が見つめ合っているという構図もなんだし、少し席を外す」

アックア「ん? オルソラの料理を食べたかったのではないのか?」

フィアンマ「一時的に席を外す」

アックア「わざわざ言い直さなくてもいいのである」

フィアンマ「そうでもしないと理解してくれそうになかったからな」

アックア「……どうした、さっさとどこへでも行ってしまえ」

フィアンマ「結構刺さる物言いだな」

アックア「女々しいお前なぞ需要がない。ぐだぐだ言ってないでさっさと行け」

フィアンマ「はあ、孤独が好きなようだし、俺様は行くよ」

アックア「ああ、二度と戻ってくるのではないぞ」

フィアンマ(なんだかいつも以上に当たりが強いんだが……)

ここまでー!
乙ありです


………………………………

アックア「どこに行ってたのであるか?」

フィアンマ「なんだ? 寂しかったのか?」

アックア「……」

フィアンマ「無視か」

アックア「お前の方が寂しがり屋なんじゃないのか?」

フィアンマ「いちいち人を苛立たせないと満足できないのか……」

アックア「ふん、こんな傭兵崩れに何を期待しているのであるか?」

フィアンマ「いや、何も期待してないが」

アックア「それはそれで癇に障るな」

フィアンマ「くくっ、お互い様だろうよ」


フィアンマ「それにしても、さっきまでイライラしていたのにどうしたんだ?」

フィアンマ「機嫌が治っているように見える」

アックア「イライラしていた……?」

アックア「ああ、それは単純に女性を侍らせていたからである」

フィアンマ「女性を侍らせていたからである、じゃない!!」

フィアンマ「それは真顔で言うようなことではないだろう!!」ムカムカ

アックア「というのは嘘で、なぜお前が人に慕われるのかと考えていたら自然とそうなってしまったのである」

フィアンマ「おいおい、もしや俺様の人気に嫉妬ってことか?」

アックア「寝言は寝て言え」


アックア「理由はもちろん分かってるのである」

フィアンマ「本性を隠してるから、だろ?」

アックア「ああ、そうだ。彼女たちを騙しているとは思わないのであるか?」

アックア「私はそんなことできないがな」

フィアンマ「ふん、ならその通りになればいいだけだろう」

アックア「……は? 何を言ってるんだ」

フィアンマ「なんだ? 気が狂っただけだよ」

フィアンマ「柄でないのは俺様自身が一番分かってるが……」バン


フィアンマ「皆の話を聞いていたら悪くもないと思ってな」

アックア「……ノート?」

フィアンマ「話をまとめたものだ」

フィアンマ「やはり本当の幸せは誰であっても他の存在無しでは成立しないものだというものらしい」

アックア「……さっきは話を聞きに行っていたということであるか」

フィアンマ「そういうことだ。その結論がそれだ」

フィアンマ「なら俺様はこの力を使って、周りの幸せを守ってやることで平和を目指す」

フィアンマ「それが俺様の今後の方針だ」


アックア「……たかが視察程度でそこまで変わるものか」

フィアンマ「……違うな。会った人間の影響だろうさ」

フィアンマ「人間の悪性を無理して消す必要は無いんじゃないかと考え直すきっかけになった」

フィアンマ「俺様が言いたいのはそれだけだ」

アックア「……まあ、私はどうこう言うつもりはないのである」

アックア「お前が無実の人間を傷つけようとしたりしない限りは私は関与しない」

フィアンマ「ああ、放置してくれていい」スック

フィアンマ「さて、そろそろ空いてきたし行くか」カツカツ

ここまでー!
いつも乙ありですー


インデックス「ふあー、お腹すきすぎて死ぬんだよー」ズリズリ…

フィアンマ「ん? 帰ってきたのか」

インデックス「うんー、ヴェントとアウレオルスがずっと話しててつまんないから帰ってきたよ」

インデックス「もう空腹に耐えられないってのが一番大きいんだけどね」アハハ…

アックア「それなら今から一緒に行くのである」

インデックス「昨日フィアンマが言ってたオルソラって人の料理が食べたいなー」

インデックス「フィアンマが絶賛する料理とか興味があるかも」

フィアンマ「ちょうど頼みに行くところだ」

フィアンマ「アックアの言う通り一緒に行くか?」

インデックス「うん、どこにいるか分からないから案内頼んだんだよ!」

フィアンマ「はいはい……」

アックア「……」


スタスタ

フィアンマ「……おはよう、オルソラ」

オルソラ「フィアンマさんでございますか、おはようございます」ニコ

アックア「おはようである」

インデックス「おはよー」

オルソラ「おはようございます……あれ、そこの小さなシスターさんはどなたでございましょうか?」

インデックス「インデックスっていうんだよ! お腹がすいたからご飯を食べさせてくれると嬉しいな」

オルソラ「まあまあ……可愛らしい子でございますね」

フィアンマ「それを否定するつもりはないが、問題児だろうよ」

インデックス「むー、なんでそういうこと言うかな。素直に認めれば可愛いのに」

フィアンマ「あいにく俺様は可愛さなど求めてないのでな」


オルソラ「して、お二人は何を注文するのでございますか?」

フィアンマ「ほら、さっさと食べたいものを頼め。待たせるのはアレだしな」

オルソラ「大丈夫でございますよ」

オルソラ「もう並んでいる方もいないようでございますし」

インデックス「フィアンマは何にするの?」

フィアンマ「俺様は昨日のうちに予約済みさ」

インデックス「え、すごいね!」

フィアンマ「くくく、俺様レベルになるとそれくらい当然なのさ」

インデックス「俺様レベルになるって、何が俺様レベルになるのかな?」クビカシゲ

フィアンマ「……なんだろうな?」


アックア「よし、私はマルゲリータを頼むのである」

フィアンマ「……ん? お前昨日と同じじゃないか」

アックア「だからどうしたのであるか?」

アックア「お前もどうせ似顔絵付のオムライスなのだろう?」

インデックス「に、似顔絵付!!」

インデックス「私もフィアンマと同じやつがいいんだよっ!」

フィアンマ「え? ちょ、俺様のは……」

オルソラ「大丈夫でございますよ、フィアンマさんは十分可愛いのでございますよ」

フィアンマ「え? どこまで戻っているんだ」

フィアンマ「というか、俺様のどこに可愛さなどある!」

アックア「強いて挙げるとすれば……軟弱さであるな」

フィアンマ「それは可愛いとは言わない……」


フィアンマ「じゃない! 似顔絵二つ作るのはきついんじゃないのか?」

オルソラ「ふふふ、私を何だと思っているのでございますか?」

オルソラ「あの行列を一人でさばいたのでございますよ?」

フィアンマ「つまり?」

オルソラ「この程度造作もないのでございます」

オルソラ「二つともしっかり作るのご安心を」

フィアンマ「そ、そうか……よかった」

インデックス「そんなに似顔絵付のがいいなんて子供だね」

フィアンマ「うるさい。そんなのは人の趣味だろう? ケチをつけるな」

インデックス「うーん、正論かもだけど子供っぽいのは間違いないかも」


アックア「まあ、そこはそっとしてやるのである」ボソッ

アックア「子供の頃はお前のように魔術魔術している日常を送っていたんだ」ボソッ

インデックス「……子供の頃からなの?」

アックア「……あ、ええと、教皇の親戚だからな」コソ

インデックス「そ、そうなんだ」

アックア「今までさんざん我慢してきたものを今発散させているところなのだからあまり押さえつけないでやって欲しい」ボソッ

インデックス「……そうだったんだね」チラ

フィアンマ「おい、インデックス、何を吹き込まれた」

インデックス「ううん、何も。ただフィアンマは少し大変だったから曲がっちゃっただけなんだって」

フィアンマ「……別に俺様は曲がってなどいない。ただ、少し特殊なだけだ」フン

フィアンマ「少しな」

今日はここまでー!
終わりが見えてきた……


フィアンマ「……そんなことより、少しオルソラの方を見に行ってみるとするか」スック

インデックス「えー、行っちゃうの?」

フィアンマ「少し様子を見てくるだけだ。アックアとでも遊んでいろ」

インデックス「むー、仕方無いなー」

インデックス「今日だけ特別だからね」

フィアンマ「はぁ……お前は何様なんだ?」

インデックス「インデックス様だよっ!」


オルソラ「ふんふーん♪」ジャージャーッ

フィアンマ「ご機嫌だな」

オルソラ「あ、フィアンマさん」

オルソラ「まだできてないのでございますよ?」

フィアンマ「いや……何か手伝えることはないかと思ってな」

オルソラ「手伝えること……」キョロキョロ…

オルソラ「うーん、特には無いのでございます」

フィアンマ「だよな……まあ、あれだけを捌ける人間に手伝うことなどないよな……」シュン

オルソラ「はい、ですから、また面白いお話をしてもらえたら嬉しいのでございますが……」

フィアンマ「……ふむ、いいだろう」


インデックス「フィアンマ楽しそうだね」

アックア「まあ、そういう年頃だからな」

インデックス「どういう年頃?」

アックア「他人が気になりだす年頃だ」

アックア「……とにかく、邪魔してやるな」

インデックス「えー? 理由はー?」

アックア「奴は今オルソラに猛アタック中なのである」

インデックス「猛アタック?」

アックア「ほら、しっしとやってるだろう」

フィアンマ「……」コッチコイ!!

インデックス「うん、そうだね」


フィアンマ「なぜ来ない!?」

オルソラ「きっと忙しいのでございますよ」ジャーッ

フィアンマ「む……まあ、あいつは機嫌を損ねやすいから大変なんだ」

オルソラ「フィアンマさんもテンションの変動激しいのでございますよ」

フィアンマ「え?」

オルソラ「基本的にフィアンマさんのテンションはそこまで変動しないって聞いたのでございますけど、そんなことは全くないのでございますよね」

フィアンマ「は、は!? いや、俺様は冷静沈着でクールな男だぞ?」

フィアンマ「テンションの上下とは最も無縁なはずだが?」


オルソラ「そういうことを言う人ほど縁があるものでございますよ」パシュ

オルソラ「しかし、無自覚さんは見ていて面白いのでいいのでございますけど」

フィアンマ「ふむ……なら、見て楽しむといいさ」

フィアンマ「俺様はいまいち理解できないが」

オルソラ「では、そのようにさせてもらうのでございますよ」

フィアンマ「ああ、勝手にしろ」


オルソラ「ふう……」

フィアンマ「お、完成か?」

オルソラ「そうでございますよ。ほら、フィアンマさん」スッ

フィアンマ「……不機嫌そうに見えるんだが」ムスー

オルソラ「む? とかふむ、とか言って少し思案している感じを書いたのでございますよ」

フィアンマ「む、よく見ているな……」

フィアンマ「インデックスの方はどうなんだ?」

オルソラ「こっちでございますね」スッ

フィアンマ「こっちはふつうか」

オルソラ「フィアンマさんだってはじめは普通に作ったのでございますよ」

フィアンマ「それもそうか」


インデックス「ごーはーんー」カンカン

アックア「こら、フォークでテーブルを叩くな」

インデックス「だってー、遅いんだよー!!」

インデックス「もしかしたらフィアンマだけオルソラと食べてるのかもしれないんだよ」

アックア「いや、それは無いだろう……」

フィアンマ「俺様がどうしたって?」スタスタ

アックア「何でもないのである」

フィアンマ「まあいい、持ってきたぞ、インデックスのとアックアの」コト コト

アックア「お前のはどうしたのである」

フィアンマ「三つも四つもいっぺんに持って来れるか!」


アックア「なるほど、オルソラに使役させられてるというわけか」

フィアンマ「人聞きの悪いことを言うな。俺様が手伝ってやってるだけだ」コト コト

インデックス「言い方は違ってもやってることは一緒だよね」

フィアンマ「それは言っちゃならないお約束だろ」

オルソラ「あ、全部運んでくれたのでございますか」

フィアンマ「当然だ。俺様は運び屋も兼任しているからな」

アックア「嘘である」

オルソラ「でございましょうね」ウフフ


インデックス「うわぁ! 私の顔だー!」キラキラ

フィアンマ「すごいだろう?」

インデックス「フィアンマがさも自分の事のようにすごいだろうっていうのが少し気に食わないけどすごいね!」

フィアンマ「……」シュン

オルソラ「まあ、フィアンマさん、大丈夫でございますか?」ツンツン

アックア「返事がないただのしかばねのようだ」

フィアンマ「だあああああっ!」ブンッ

アックア「ダメであるな。お前ごときの拳じゃ私には届かない」

インデックス「うわわっ、突然飛び起きられるとびっくりするからやめて欲しいんだよ!」


オルソラ「今日も面白そうな漫才をしているのでございますね」

フィアンマ「漫才じゃない!」イライラ

インデックス「もぐもぐ、確かに美味しいんだよ」

オルソラ「確かに? どういうことでございましょうか?」

インデックス「オルソラの料理はフィアンマのおすすめなんだよ!」

インデックス「だから確かにって言ったの」

オルソラ「なるほど……」チラ

フィアンマ「むむむ、やはり俺様の顔を崩すのは気が乗らないな……」

アックア「はい」ズサッ

フィアンマ「き、貴様あああああああああ!!」ゴオオオオッ


インデックス「あーあ、アックアがフィアンマ怒らせたー」

アックア「大したことないのである。二分くらい走らせれば、疲れて追うこともできなくなるのである」

オルソラ「二分はさすがに……」

アックア「百聞は一見にしかず、ほら、見てみるのである」ユビサシ

フィアンマ「……はぁ……はぁ……」グッタリ

オルソラ「ふ、フィアンマさん!? 大丈夫でございますか?」

フィアンマ「お、俺様の鍛え不足だ……」

オルソラ「それくらいはわかるのでございます」

オルソラ「とりあえず……お水をどうぞ」スッ

ゴクゴクゴク

フィアンマ「ぷはあ、生き返った……」


フィアンマ「世話をかけたな」

オルソラ「いえいえ、似顔絵ならまた描くので今日は味を楽しんで欲しいのでございますよ」

フィアンマ「そ、そうだな。絵も上手いが、味はピカイチだもんな」

インデックス「うんうん、ピカイチだよね」

アックア「インデックス、空気を読むのである」

フィアンマ「いや、お前がまず空気読め」

アックア「は?」

フィアンマ「空気読め」

アックア「……努力はするのである」

フィアンマ「これほど信用できない発言は初めてだ」


…………………………


三人「ごちそうさま」

オルソラ「お粗末さまでございますよ」

フィアンマ「今日はオルソラも早かったな」

オルソラ「基本はこれくらいなのでございますよ?」

オルソラ「昨日のはたまたまと言うやつでございます」

アックア「で? 今日はオルソラの皿洗いを手伝うのか?」

フィアンマ「いや、先に教皇、マタイのやつに話しておこうと思ってな」

フィアンマ「まあ、あまり時間がかかるようなものでもないし、早く終わったら手伝ってやる」

オルソラ「大丈夫でございますよ」

フィアンマ「心配するな、皿は割らないから」


インデックス「じゃあ、フィアンマが遊んでる時はオルソラの手伝いしてるね」

オルソラ「手伝い、でございますか?」

インデックス「うん、お皿を拭いたりとか」

オルソラ「なるほど、それくらいなら頼むのでございますよ」

インデックス「よっしゃ、ドンと来いや!」

オルソラ「キャラ崩壊でございますね……」

インデックス「自分でも分かってるよ……」


フィアンマ「じゃあ俺様は視察終了の報告と少し話をしてくるが、インデックスは大人しくしていろよ?」

フィアンマ「でないと、アックアに叱られるからな」

インデックス「分かったー」

フィアンマ「あと、オルソラも手が付けられなくなったらアックアに言ってシメてもらえ」

オルソラ「了解でございます」

アックア「さり気なく置いていくな」

フィアンマ「む……お前は脳筋だと思っていたが、まだ脳みそが残っていたようだな」

アックア「今まで聞いたことのない罵倒であるな……」

フィアンマ「ども」





『右方のフィアンマ』




………聖ピエトロ大聖堂………


ギイィィッ

フィアンマ「入るぞ」

教皇「ノックしてから入れと何度言ったら分かるのだろうな」

フィアンマ「ノック? そんなこと分かっているさ」

フィアンマ「だが、お前にそこまでの敬意をもって接する理由がないからな」

アックア「申し訳ないのである。さすがに細かな挙動の一つ一つまでは制することはできない」

教皇「ああ、確かにここまで厄介な人間を一人に任せるというのは悪魔の所業だろう」

フィアンマ「俺様は何だと思われてるんだ……?」


教皇「して、ここへは何をしに?」

フィアンマ「視察は終わった、と報告してやろうと思ってな」

教皇「なるほど」

教皇「お前から見て、どうだった?」

フィアンマ「ローマ正教も捨てたもんじゃないな、というのが一言での感想だな」

フィアンマ「俺様は全体が腐っている上のためだけの宗教になり果てていると思っていた」

フィアンマ「だが、実際は違うのだな」

フィアンマ「権力を貪欲に求めるような奴は上層の一部の人間だけなのだと分かってな」

フィアンマ「それ以外の下層の人間たちは、純粋にローマ正教の為に頑張ったり、人のために尽くすような……」

フィアンマ「いい意味で馬鹿な奴らばかりだった」クスッ


フィアンマ「だが、まあ、そんな馬鹿な奴らが権力欲にまみれてしまう可能性もあるのだと考えると、こんな世界とは関わらない方が良かったんじゃないかという人間もいるにはいた」

フィアンマ「結論としてはだな」

フィアンマ「とてもいい経験と出会いを得ることができた……と思う」

フィアンマ「あくまでも俺様の価値観で、だからな」

教皇「ふむ、言いたいことはそれだけなのか?」

フィアンマ「くっ、お見通しとでも言いたいのか?」

教皇「考え方が大きく変わったんだろうということくらい、話をきちんと聞いていれば分かる」

教皇「その考えは話してもらえるのかな」

フィアンマ「……」


フィアンマ「俺様はこの右腕を使って平和を目指している」ズオォ…

アックア(やはり禍々しい力の渦とでも例えればいいのだろうか……)

教皇「使うのか……?」

フィアンマ「ああ、宝の持ち腐れになってしまうからな」

フィアンマ「ここで聞きたいことがあるんだ」

教皇「お前が聞きたいことがある、か。珍しいこともあるものだ」

教皇「で、聞きたいこととは何なのだ?」

フィアンマ「大したことではないさ」


フィアンマ「世界最大の宗教、ローマ正教の頂点に君臨する教皇であるお前の考える平和ってなんだ?」

教皇「平和……平和か」

教皇「争いがなく、皆が笑顔で過ごせる世界……」

教皇「と言いたいところだが、人間は争う生き物だ」

教皇「切って離すことは不可能なのかもしれない」

フィアンマ「ふむ、よく分かっているじゃないか」

フィアンマ「争いは人間の悪性、欲から生まれるものだからな」

教皇「だからといっても平和は人間がいては成り立たない、だから消すという考えは安直だろうな」


フィアンマ「だろうな。お前はそういうことを言う奴だ」

フィアンマ「なら、俺様は平和のために何をしたらいいんだ?」ニヤ

フィアンマ「何をすべきだと思う」

教皇「……それはもう分かっているんだろう、いや、決まっていると言うべきか」

教皇「私くらい長年人を見ていると分かるんだよ」

教皇「お前のように歪んでいる人間でも、何を考えているかわからないような人間でも、本当に正しい道を選択したときは目に出る」

フィアンマ「っ……」

教皇「視察前の何かを企んでいるような目とは全然違う」


フィアンマ「違うからなんなんだ」

教皇「思うようにやればいい、今まで通り」

教皇「本当に間違えていたら、やり直せばいいんだからな」

フィアンマ「教皇だってのに無責任な……」

教皇「無責任な教皇もたまにはいいだろうさ」

教皇「後継者のためにも神の右席はそれなりの組織に育てておかないとな」

フィアンマ「ふん、お前に育てられるなんて真っ平御免だ」ギイィィッ




フィアンマ「行くぞ、アックア」

アックア「はぁ、仕方が無いのである、付き合おう」

フィアンマ「……ああ、これからは忙しくなるぞ」

フィアンマ「俺様の目指す平和のために……!!」




~おしまい~


番外編やるつもりだったけど、やっても大丈夫ですかね……?


テッラ「……やっぱりマズイですねー」ゴクゴク

「……今度は昼間から酒か」

テッラ「おや? フィアンマですか」チラ

フィアンマ「つまみも無しでそんなまずい酒、よく飲んでられるものだな」

テッラ「仕方が無いですよ。楽しむために飲んでる酒ではありませんしねー」

テッラ「仕事の一環って感じですねー」

フィアンマ「それは大変だな」

テッラ「ええ。つまみの一つでもあればもう少し楽しめるかもしれませんが」ゴクゴク

フィアンマ「……そうか」

フィアンマ「じゃあ、俺様の話をつまみに一献どうだ?」コト

テッラ「そうですねー……では、そちらの生ハムでもいただきましょうか」スッ

フィアンマ「おい」


〜〜〜とある朝〜〜〜


フィアンマ「……ん」ムク

オリアナ「おはよう、お兄さん?」

フィアンマ「……オリアナか……」

フィアンマ(いや……待て、なぜ俺様のベッドの中にいるんだ!?!?)

オリアナ「どうしたの? そんなに慌てたような顔をして」

フィアンマ「え、なぜお前がここに……!?」

オリアナ「ああ……昨日は楽しかったわね」ニコ


フィアンマ「お前がそういうことを言うと変な意味にしか聞こえないからやめろ」

オリアナ「そういう意味だよ?」

オリアナ「あんまりにもお兄さんが積極的だったからお姉さんも興奮しちゃった」

フィアンマ「え? 何を言ってる?」

オリアナ「普段は飄々としてるけどベッドの上では私の体を貪りまくってたでしょ?」

オリアナ「予想外すぎて、応えるのは大変だったけど……」

オリアナ「でも激しくてもテクニックは凄かったから気持ち良かったわ」

フィアンマ「お、おい、冗談だよな」チラ

フィアンマ「アックア?」


ガチャ

アックア「呼んだか?」

フィアンマ「俺様とオリアナが一夜を共にした……なんてことはないよな?」

アックア「私は別の部屋にいたから知らないのである」フン

アックア「だが、別に男女の仲についてどうこう言うつもりもない」

アックア「公序良俗に反することのない範囲で勝手にすればいい」

オリアナ「……」ニコ

フィアンマ「お、俺様がそんな無責任な真似をするわけが無いだろう」ブンブン

オリアナ「うん、お姉さんもそう思ってたんだけどね」

オリアナ「予想とはだいぶ違ったわ」

フィアンマ「いや、俺様はきちんと婚姻の儀を交わした相手としかそんなことはしないぞ!!」

フィアンマ「一夜の過ちとか俺様から最も縁遠い言葉なんだからな!」ボスッボスッ


二人(本当にピュアだった)

オリアナ「ゴメンね、坊や」ポンポン

オリアナ「さっきのは嘘なの」

フィアンマ「嘘だと!?」

フィアンマ「いやちょっと待て、嘘なのは安心したが、坊やってどういうことだ!」バシ

オリアナ「あらら、怒らせちゃったかしらん?」

フィアンマ「俺様は上司だぞ!! 坊やは撤回しろ!!」

アックア「いや、坊やで十分だろう」

アックア「……慌てふためく姿はなかなか愉快だったのである」


フィアンマ「アックア、お前……」ギリギリ

フィアンマ(あとでオリアナがいないところで潰してやる」

アックア「フィアンマ、声に出ているのである」

フィアンマ「なら今潰してやる!!!!」タッ

アックア「レッツランニングタイム」ダッ

オリアナ「……さてと、今日は何分持つのかな?」クスクス


テッラ「坊や、ですか」

フィアンマ「ああ。非常に気に食わない」

テッラ「ですが、確かに私から見てもあなたは坊やですねー」

フィアンマ「は?」

テッラ「なに一人前ぶって酒飲んでんだよって常々思ってますねー」

フィアンマ「……そのカミングアウトここでする必要なかっただろ」

テッラ「そうですかねー? 本人に直接言えば問題ないって誰か言ってたような」

フィアンマ「それは陰口から悪口になるだけだ。別に無罪にはならないぞ」

テッラ「そうですか。失敬失敬」


フィアンマ「……はぁ、つまみとしてはどうだ?」

テッラ「悪くないですねー」

テッラ「ローマ正教徒が同じ教徒の不幸を楽しむのは少しまずい気がしますが、あなたなら構わないだろうという思考が働き、非常に楽しみやすいですねー」

テッラ「つまり、この類の話は酒の肴にはピッタリですねー」コポポポ

テッラ「ということで続きをどうぞ」

テッラ「あとこれも」スッ

フィアンマ「やる気なくなるな」ゴクッ

フィアンマ「……マズっ」

とりあえずここまで

リドヴィアやインちゃんの件も触れる予定

あまり縛られず書けるのは楽しいな


フィアンマ「オリアナ、いるか?」
オリアナ「何かしら、坊や?」ヌッ

フィアンマ「坊やはやめろと何度言えばわかるんだ」

オリアナ「仕方ないわね。どうしたの、お兄さん?」

フィアンマ「……まあ、お兄さんなら我慢するか」

オリアナ「何かお姉さんに命令でもしたいの?」

フィアンマ「一応言っておくが、俺様が上司だぞ?」

オリアナ「分かってるわ。だからなんなりとお申し付け下さい」

フィアンマ「……張り紙を作りたい」


オリアナ「張り紙?」

フィアンマ「そうだ。ペテロの画像を使った張り紙だ」

フィアンマ「あんなにバシャバシャ撮ったんだからな」

フィアンマ「それに、皆からの印象が良くなるように使わないと文句言われかねないからな」

オリアナ「……バシャバシャ」

フィアンマ「卑猥な想像を働かせるな」

オリアナ「あれ、バレちゃったか」

フィアンマ「当たり前だ。いい加減お前の思考回路も読めてきたからな」

オリアナ「以心伝心ねん」

フィアンマ「したくないな」


オリアナ「うーん、張り紙かぁ……」

フィアンマ「できないか?」

オリアナ「いや、パソコンがあればできるはず」

オリアナ「これでもお姉さん、デザインするの得意だから」

フィアンマ「そうか、ならその手腕を信じて任せるぞ」

フィアンマ「パソコンはヴェントが持っているから借りるといい」

オリアナ「ヴェントさんが……意外ね」

フィアンマ(最も相手に天罰術式を効くような顔をデザインするために使っていたはずだ……)


~~~数日後~~~


オリアナ「お兄さん、こんな感じで作ってみたんだけど、どうかな?」カチカチッ

フィアンマ「ほう、もうできたのか」

オリアナ「第一案だけだけどね」

オリアナ「ヴェントさんに見せたら大爆笑だったのよね」スッ

フィアンマ「そんなに面白いのか?」ピラ

オリアナ「面白さは求めてないからどこが面白いかは分からないわ」

オリアナ「何か文句があったら言ってね、変えるから」

フィアンマ「……こ、これは……」


フィアンマ「ぶっ、な、何なんだ!」

オリアナ「選挙ポスター風に作ってみたんだけど、何が面白いのか分かるかしら?」

フィアンマ「いくらなんでもやりすぎだろう」クツクツ

オリアナ「そんなに笑われるとお姉さんも困るんだけど……」

フィアンマ「困るのはこっちだ!」

フィアンマ「なぜこんなに美化されてるんだ」

オリアナ「……ああ、顔の加工のことね」

オリアナ「プリクラでも使用されている、美白加工と目を大きくする加工、あとは……顔をシュッとさせる感じに加工しただけよ?」

フィアンマ「つまり別人だということだろう?」


オリアナ「そんなことはないわよん?」

オリアナ「ほら」

フィアンマ「な、何だこれは?」

フィアンマ「証明写真か何かか?」

オリアナ「プリクラ。私の顔もこういう風に加工してくれるのよ」

フィアンマ「……さすが学園都市……おぞましい技術を発明したものだな」

オリアナ「お兄さんの顔も加工してあげようか?」

フィアンマ「本気で言っているのだとしたら、俺様はお前の頭を心の底から心配するぞ?」

オリアナ「あら? ひどい言われようね」


オリアナ「まあいいや、修正が必要ならやるけど?」

フィアンマ「くくっ、いや、このままでいいだろう」

フィアンマ「俺様はあいつのことがあまり好みではないからな」

オリアナ「あらら? 仕事に好き嫌いを持ち込むなんて……公私混同もいいところね」

フィアンマ「構わないさ。俺様はその程度で誰かに咎められるような低い立場ではないからな」

オリアナ「うーん、じゃあ私が咎めるしかないのかな」

フィアンマ「まあそれが一番いいだろうな。いうことを聞くかは別として、な」

ここまでー
乙ありです!


フィアンマ「で、できた張り紙はアニェーゼ達に協力してもらって、様々なところに貼ったというわけだ」

テッラ「……いくらローマ正教徒の人間だとは言っても上司にこの態度というのはいただけませんねー」

フィアンマ「分かってくれるか」

フィアンマ「でも一応言っておくと、オリアナだけじゃなく、お前も俺様の部下だからな? 弁えろよ?」

テッラ「いや、神の右席はみな同等の立場ですよ?」

フィアンマ「確かにそうだが、実際は俺様がトップのようなものだろ?」

テッラ「そういうことを言っちゃうから坊やなんですよねー」

フィアンマ「なっ、おい!」

テッラ「どうしても上に立ちたい坊やそのものですねー」

フィアンマ「あまりおちょくってると俺様も怒るぞ」

テッラ「おお、怖い怖い」


フィアンマ「そんなことよりペテロの張り紙、見たくないか?」

テッラ「いや、その辺にありますから嫌でも目に入るんですねー」

フィアンマ「む、それもそうか」

テッラ「ですが、本人はあれを見てどのように激昂したかは気になりますねー」

フィアンマ「激昂? 何言ってるんだ?」

テッラ「え?」

フィアンマ「口では文句のようなことをブツブツ言っていたが、まんざらでもなさそうな顔してたぞ」

テッラ「」ボーゼン

フィアンマ「まあ、その話は後で」


カツカツッ

オリアナ「あ、いたいた」

フィアンマ「噂をすれば影とはよく言ったものだな」

オリアナ「ん? なにか噂してたのかしら?」

テッラ「彼女がオリアナ=トムソンですか」

オリアナ「こちらの方は?」

フィアンマ「左方のテッラだ」

オリアナ「ああ!」

オリアナ(お兄さんがエリマキトカゲっていっていたあの……)


テッラ「あの、フィアンマ?」

フィアンマ「なんだ?」

テッラ「失礼なこと吹き込んでませんかねー?」

フィアンマ「言いがかりはよせ。みっともないぞ」

テッラ「そうですね、すみませんねー」

フィアンマ「おちょくってるだろ」

テッラ「いえいえ、そんなことないですねー」

フィアンマ「その『ねー』ってのがムカつくと言っているんだ!」

テッラ「口癖はそう簡単に治せませんねー。フィアンマが俺様と言うのをやめたら考えてもいいですが」

フィアンマ「悪い、俺様の考えが甘かった」


テッラ「ところで、あなたはここに何の用で?」

オリアナ「ただの雑用よん。お兄さんに書類を届けに来たの」パララッ

テッラ「書類ですか……珍しい」

フィアンマ「くくっ、口を開かなければ優秀な人材が手に入ったんだ」

フィアンマ「使わないと損だろう?」

テッラ「しかし、別に仕事があったのでは?」

オリアナ「あのお嬢ちゃんはここのお兄さんと違って休憩をくれるから大丈夫なの」

テッラ「まさかの労基法違反ですかねー」

フィアンマ「ここに労基法など存在しない。ブラックな俺様についてしまった方が悪いのさ!!」

オリアナ「なんというブラックさ……」


テッラ「そうだ、雑用ついでに少し話していきませんか」

オリアナ「お姉さんが?」

テッラ「ええ。酒がまずいもんで、肴になるような話があったら聞きたいんですがねー」

オリアナ「……あ、とっておきがあるわよ」

テッラ「とっておきですか。フィアンマの恥系の話ですかねー?」

オリアナ「いや、かわいいお兄さんの話よん」

オリアナ「ベロンベロンに酔っ払っててかわいいの」

フィアンマ「おい、それは!」

テッラ「それは面白そうですねー」

オリアナ「私ほどではないけど、お酒に強いお兄さんの話をどうぞ」

ここまで!!
おつありです!


………ベランダ………


フィアンマ「……ううっ」

フィアンマ「飲み過ぎたか……」ウッ

オリアナ「あらん? そんなにベロンベロンになってどうしたのかしら?」

フィアンマ「オリアナ……か。お前には関係ないだろ」ヒック

オリアナ「はぁ、お酒の飲み方も知らない坊ちゃんが無闇に飲みまくるからそんなことになるのよん」

フィアンマ「ふん……飲み方くらい、心得ている……」ハァ

フィアンマ「だが、酒を呷ることでしか洗い流せないようなこともあるだろ」

オリアナ「いや、まあ、それは否定しないけど……」

オリアナ「しっかし、ホントに酒臭いわね……」

フィアンマ「……酒飲んだからな」


オリアナ「でも様子を見る限りお兄さんの悩みか何かは酒でも洗い流せてないみたいだけど?」

フィアンマ「……」

オリアナ「何があったのか話してみる気ない?」

オリアナ「やけ酒するよりも人に吐き出してみた方がいいこともあるわ」

フィアンマ「……」

フィアンマ「お前も未成年のくせによく言う……」ウッ

オリアナ「ちょ、吐かないでね?」

オリアナ「とりあえず袋よ」スッ

オリアナ(二日酔いの薬でも探してきた方が役に立つかもしれないわね……この調子だと)


オリアナ「お姉さん、少し薬を……」グイ

オリアナ「え?」

フィアンマ「話、聞くんだろう?」

オリアナ「……」

フィアンマ「聞くって言ったよな?」

オリアナ「言ったけど……このまま飲み続けると明日痛い目見るわよ」

オリアナ「お兄さんはただでさえ頭痛持ちなんだから」

フィアンマ「そんなことはどうでもいい。酒の勢いに任せないと言えないこともある」

オリアナ「……はぁ、仕方が無いわね」

オリアナ「お姉さんが特別にお兄さんの愚痴に付き合ってあげるわん」

フィアンマ「ふっ、頼むぞ」


オリアナ「とりあえず、私も安酒でも持ってこないとね」

オリアナ「人の愚痴なんて酒無しじゃ聞く気も起こらないわ」

フィアンマ「いい、俺様のやつを分けてやる」チャプ…

オリアナ「えー、美味しい酒をやけ酒するのに使うなんてありえないわ」

オリアナ「酒は用途に応じて使い分けないとダメよ」

オリアナ「そのお酒は悩みが解決した時のためにとっておくべき」

フィアンマ「む、そうか」

オリアナ「ってことで、少し待っててねん」タッ

フィアンマ「ああ……」

フィアンマ(はぁ、何バカなことをしているんだ、俺様は)クイッ

フィアンマ(やけ酒をしたからどうなるわけでもないのに)ハァ


オリアナ「よっと、潰れないで待っててくれたかなー?」スタッ

オリアナ「お兄さん?」

フィアンマ「ああ、起きている。嫌に目が冴えてしまうからな」

オリアナ「そ。で、どうしちゃったの?」

オリアナ「そんなになるまで飲んで」

フィアンマ「……よく考えたらわけが分からなくなってな」ククッ

フィアンマ「むしゃくしゃして、この有様だ」

オリアナ「むしゃくしゃ? 悩み事かな?」

フィアンマ「ああ。誰にも言うなよ?」

オリアナ「オーケーオーケー」

オリアナ(話によってはちょうどいい感じに拡散するつもりだけど)

おつありです!
ここまでです!


フィアンマ「あ、そうか……後で記憶消しておけばいいのか」

オリアナ「サラッと物騒なこというのね」

フィアンマ「記憶消しで済ませるのは最高のお人よしというか甘ちゃんだろ」

フィアンマ「本気で口封じしたければ殺すのが常識だ」

オリアナ「お兄さんが言うと、本気度100%に聞こえるからやめて欲しいわ」

オリアナ「っと、話がそれたわね」

フィアンマ「別にそれても構わない。夜は長いからな」

オリアナ「でも物騒な話はお姉さんあまり好きじゃないの。だから本題にちゃちゃっと入りましょう?」

フィアンマ「……実はオルソラのことなんだが」

オリアナ「ぷっ、なんだ。予想通り過ぎるわね」

フィアンマ「な、何笑っている」


オリアナ「いや、予想通りだけどあまりに予想通り過ぎるからあえて外してくるかもって思ってただけ」

オリアナ「色恋沙汰ってお姉さんの好物よん」ニヤ

オリアナ「だけど安心して、誰にもいうつもりはないから」

オリアナ(皆、気付いているはずだけど)

フィアンマ「なぜ知ってるんだ?」

オリアナ「そうね……経験不足ゆえのぎこちなさがモロに出てたから、かしらね?」

フィアンマ「け、経験不足だと? 何の経験だ?」

オリアナ「恋愛経験の話」


オリアナ「お兄さん、顔はイケメンだからモテるだろうし、女の子から声かけられたこともあったでしょ?」

フィアンマ「そんなことあるわけないだろ」

フィアンマ「もしそうなら嘘でもガールフレンド云々という理由を言ってまで視察しないぞ」

オリアナ「え? 発言はともかく顔はいいじゃない」

フィアンマ「む、そう言われてもな。無いものはないんだ」

オリアナ「鈍感なだけなのかしらね……じゃあ告白したことは?」

フィアンマ「……無いな。そんな感情を人間に対して抱いたことも皆無だ」

オリアナ「ははっ、そこは予想通りね」

オリアナ「で、オルソラちゃんがどうしたのかしら?」

フィアンマ「よく分からないんだ」

フィアンマ「自分の気持ちがよく分からない」


オリアナ「……自分の気持ちが?」

フィアンマ「ああ、オルソラに対してどんな感情を抱いているのかとかだな」

フィアンマ「何らかの好印象を持ってるのは間違いないが、経験したことのない気持ちなんだ」

オリアナ「……そう。お兄さんってば寝てなくても可愛いところあるのね」

フィアンマ「からかいは無用だ」

オリアナ「ま、端的に言わせてもらうと、お兄さんはオルソラちゃんを好きなんじゃないのかな?」

フィアンマ「……」ゴクゴク フゥ

フィアンマ「……まさか、俺様とあろうものが」

オリアナ「ただの、シスターを好きになるわけがないって言いたいのかしらん?」

フィアンマ「む……」


オリアナ「確かにお兄さんがただのシスターAを好きになることはないかもしれない」

オリアナ「だけどお兄さんにとってオルソラちゃんがシスターであるかどうかは大した問題じゃないのよ」

オリアナ「オルソラちゃんはオルソラちゃんってことよ」

オリアナ「納得いくかしらん? お兄さんにとってオルソラちゃんは有象無象じゃなくて唯一無二ってこと」

フィアンマ「俺様にとってオルソラは唯一無二……」

フィアンマ「……」

今日はここまで
おつありです!


オリアナ「実際どうなの? オルソラちゃんと話すお兄さんはかなり楽しそうだって聞くけど」

フィアンマ「ああ、この際だから認めるが、少なくともオルソラと話すのは楽しい」フフッ

フィアンマ「一日の楽しみと言っても過言ではない」

オリアナ「へぇ……やっぱり話しやすいからかな?」

フィアンマ「ああ、ゆるゆる話せる感じが楽しい」

フィアンマ「俺様のどうでもいいような話も笑顔で頷いてくれる辺り、いいヤツだなぁと思うしな」

オリアナ「そうね。お兄さんのどうでもいい話とか誰も興味ないもの」

フィアンマ「……結構バッサリいくんだな」

オリアナ「もちろん。大して面白い話でもないんだろうし」

オリアナ「まあ、そんな話を楽しみにしてる例外はいるみたいだけど」

フィアンマ「例外?」

オリアナ「そこは自分で考えるの。頑張ってね、お兄さん」

フィアンマ「……?」


オリアナ「ま、それは宿題ってことにしておいて、少し吐き出してみて、気分はどう?」

フィアンマ「……話しすぎたな」

オリアナ「いいのいいの。お兄さんの思いの丈を聞けてよかったわ」

オリアナ(参考になるし)

フィアンマ「……なんだか時間差で恥ずかしくなってきたんだが」フイッ

オリアナ「なっ、こんな中途半端なとこで止まってたら、自分で自分の気持ちを理解できないわ!」

オリアナ「さ、飲んで飲んで!」ジャババ

フィアンマ「ええ!?」


フィアンマ「うぐ……少し、やりすぎではないか?」

オリアナ「んー、そうね」

オリアナ「でも、無理にでも話してもらわないと話を進められないわ」

フィアンマ「……」

オリアナ「じゃあ、オルソラちゃんにどんな感情を抱いているのか、話してもらえるかしらん」

フィアンマ「だから、わからないと言ってるだろう」

オリアナ「箇条書き風で良いわよ」

フィアンマ「そ、そうだな……安心感とか、共にいて楽しいとか……でいいのか?」

オリアナ「ええ、そんな感じ」

フィアンマ「そう言えば、毎食食堂へ行くようになったな」

オリアナ「会いたいって気持ちの体現かしらね」

フィアンマ「会いたい……ふむ、間違ってはないな」

オリアナ「……ふーん」


フィアンマ「うーん」ノビ-

フィアンマ「だが、やはり良く分からない。好きだとかなんとかというのは」

オリアナ「だから気持ちの整理がつかなくてむしゃくしゃしてたんでしょう?」

フィアンマ「そ、そうだが」

オリアナ「だから、とりあえず深いことは考えずにぶちまけちゃおうぜ」

フィアンマ「例えば?」

オリアナ「例えば……オルソラちゃんとしたいこととかないの?」

フィアンマ「……」

フィアンマ「……オルソラとご飯を食べつつ他愛もない話をして、あの笑顔を見ている……というのは贅沢だろうか?」

オリアナ「さあ?」

フィアンマ「だが、それがどういうことなのか、何をしたら実現できるのかが全く分からないんだ」

フィアンマ「それが分からないからこそ、さそ俺様はむしゃくしゃしている」

オリアナ(初恋にありがちな悩みねぇ……初々しいのは嫌いじゃないけど)


オリアナ「そうね……なら、オルソラちゃんに相談に乗ってもらえばいいんじゃない?」

オリアナ「彼女もシスターでしょ?」

オリアナ「弱音を吐くのは意外と重要な恋愛のためのファクターだったりするわ」

フィアンマ「弱音など人に聞かせるものではないだろう。しかも張本人だろ!」

オリアナ「いや、現にお兄さんは弱音吐きまくってた気がするんだけど」

フィアンマ「っ……」

オリアナ「大丈夫だって。さっきも言ったけど、彼女はああ見えて凄い優秀なシスターよ」

オリアナ「だから無下にすることだけは決してないなず。誓うわ」

フィアンマ「……そんなこと俺様が一番分かっているさ」

オリアナ「もちろん神の右席のことについては話さないほうがいいと思うけどね」


フィアンマ「それも分かっている」

フィアンマ「オルソラを無駄な争いに巻き込むのは勘弁だからな」

オリアナ「あら、私は巻き込んでもいいって受け取ってもいいのかしらー?」

フィアンマ「おいおい、お前は俺様の直属の部下だろう? 実力を認めている証だから誇っていいだろうさ」

オリアナ「んふ、褒められるのは悪い気はしないわね」クスッ

オリアナ「そう言えば、そのおつまみって……」

フィアンマ「オルソラに作ってもらった物だが……それがどうかしたのか?」

オリアナ「くふふっ、良かったわねおつまみまで作ってもらってるなんて」

フィアンマ「何が言いたいんだ?」

オリアナ「いやいや、何でもないわ」

オリアナ「ただ、結構親しいみたいだな、と」


フィアンマ「……」チラ…

フィアンマ「悪いか」

オリアナ「いえいえ、滅相もない」

オリアナ「お姉さんはお兄さんの恋路を応援してるんだから喜びこそしても、文句を言ったりはしないわ」

フィアンマ「ふっ、恋路とはな。そんな似合わない言葉をどこで覚えたんだ?」

オリアナ「これでも女ですからね」

フィアンマ「よく言うな」

フィアンマ「だが、相談はできない」

オリアナ「そう? 弱みを見せられるってことは心を開いている証拠でしょう?」


オリアナ「心を開いてくれる男を嫌がる女の子なんていないわ」

オリアナ「助けてあげたくなるしね」

フィアンマ「心を開く、か」

オリアナ「お兄さんは多分自分の殻に閉じこもっちゃうタイプだから」

フィアンマ「……」

オリアナ「黙ってないで自分から行動しないとダメよ?」

フィアンマ「だが、オルソラに恋人やら何やらがいたらどうするんだ」

フィアンマ「右席権限で解雇か??」

オリアナ「職権乱用ね」


オリアナ「でも大丈夫よ、オルソラちゃんにはそういう人はいないみたい」

オリアナ「好きな人がいるどうかまでは知らないけど、そこは自分で聞くべきよね」

フィアンマ「……」

フィアンマ「アニェーゼ使って調査させるか」ピッ

オリアナ「おい!!」

フィアンマ「はっ、嘘だ。嘘に決まってるだろう?」

フィアンマ「俺様もたまには本気を出さないとな」ゴクゴク

ここまでです!
乙ありですー

巨乳はみんな大好きなんやでー


…………朝・食堂…………


フィアンマ「ふぁあ……」ゴシゴシ

フィアンマ(さすがに酒飲みすぎた次の朝は頭が痛いな)グワングワン

オルソラ「……」トントン

フィアンマ「……おはよう、オルソラ」

オルソラ「は、おはようなのでございますよ。今日は早いのでございますね」ニコッ

フィアンマ「俺様は早起きなんでね」ドヤ

オルソラ「はあ……何か用事があるのでございましょうか?」

フィアンマ「いやいや、特にそういうわけではない」


フィアンマ「ただ……あ、そうだ、昨日のつまみ美味かったぞ」

オルソラ「そうでございますか。良かったのでございます」ニコニコ

フィアンマ「……」フッ

オルソラ「ですが、飲み過ぎは感心しないのでございます」ムッ

フィアンマ「え、なぜ知ってるんだ?」

オルソラ「さっきオリアナさんにフィアンマさんが泥酔していたという話を聞いただけでございます」トントン

フィアンマ(オリアナの奴……)

オルソラ「体調は大丈夫でございますか?」

フィアンマ「まあ、そうだな。多少頭痛はあるが、大したことはない」

オルソラ「そうでございますか……では、りんごでも食べるのでございますよ」スッ

フィアンマ「りんご?」

オルソラ「二日酔いに効くらしいのでございます」トントン

フィアンマ「……ありがとう」シャクシャク


オルソラ「いえいえ、自己責任とはいえ早く本調子に戻ってもらいたいのでございますよ」

フィアンマ「自己責任とは……厳しいな」

オルソラ「これに懲りたら、これからは適度に飲むようにするのでございますよ」

フィアンマ「……そうだな」ハハハ

フィアンマ「そうだ、今日は一緒に飲まないか?」

オルソラ「二人で、にございますか?」

フィアンマ「そうだ。一人酒より楽しそうだし、今日は満月だから月が綺麗だろうからな」

オルソラ「そうでございますね……」ウ-ン

フィアンマ「いい酒もあるぞ」フフフ

オルソラ「……では、お言葉に甘えさせてもらうのでございますよ」

フィアンマ「そうかそうか、良かった」ニマニマ


………………


フィアンマ「……」チビッ

コンコン

フィアンマ「勝手には出てきていいんだが……」

フィアンマ「どうぞ」

オルソラ「失礼するのでございます」ガチャ

フィアンマ「よう、こんばんはの時間だな」

オルソラ「ええ、こんばんは」ニコニコ

フィアンマ「……いつもと変わらない格好なのか……」

オルソラ「ええ、パジャマもありますが、人と会うのにパジャマというのは少し常識知らずでございましょう?」

フィアンマ「そんなに気にしなくてもいいんだけどな」

オルソラ「いえいえ、一応上司なのでございますから、けじめはしっかりしなくてはならないのでございます」


フィアンマ「上司……」

フィアンマ「もしかして、嫌々だったのか?」

オルソラ「そ、そんなわけないのでございますよ!」ブンブン

オルソラ「むしろ楽しみでございましたよ」

フィアンマ「そ、そうか?」

オルソラ「他の方と違って地位の差を感じないような態度で接してくれるから、あまり硬くならずに済むのでございます」

オルソラ「だから私はフィアンマさんのことは好きでございますよ」

フィアンマ「す、好きだと!?」カアアアッ

オルソラ「ええ」

オルソラ「他の部下の方とも仲が良さそうですから、きっと良い人格をしているのでございましょう」


フィアンマ「……いや、良い人格ではないな」

フィアンマ「だが、俺様も……」

オルソラ「俺様も……?」

フィアンマ「お、オルソラのことが好きだぞ」フイッ

フィアンマ(言ってしまった……)

オルソラ「そうでございますか。パジャマの方が良かったのでございましょうか」

フィアンマ「その方が良かったけども! 話戻ってるぞ!」

オルソラ「まあ、すみません……」アセッ

ここまでー
乙ありです!!

かわいいフィアンマさんの話ですからね!


オルソラ「ですが、私の料理が好きと言ってくださるのは自信につながるのでございますよ」

オルソラ「それに、今後のやる気も出るのでありがとうございますね」

フィアンマ「え? 料理?」

オルソラ「え? おつまみが良かったのでございますよね?」


フィアンマ「いや、オルソラは俺様のこと……」

オルソラ「上の方々はこういっては失礼かもしれませんが……」

オルソラ「権力が大好きだったり、人を物のように扱ったりする人が多くて苦手なのでございますよ……」アハハ…

オルソラ「そういう方々に比べてフィアンマさんはまだ若いからかもしれないのでございますが、理不尽に怒ったりしないところに好感が持てるのでございますよ」

フィアンマ「……そんなことを言われたのは初めてだ」

フィアンマ(好きとはそういう意味か……早とちりして恥をかくところだった)

フィアンマ(いや、もう言ってしまったのだが)

オルソラ「みなさん思っているのではございませんか?」

フィアンマ「そんなことないさ。俺様はいつだって目の上のたんこぶ扱いだからな」

フィアンマ「ま、オルソラが本当に許せないやつがいたら俺様が何とかしてやる」

オルソラ「それは不要でございますよ」

オルソラ「そんな形でフィアンマさんに頼りたくはないのでございますよ」

フィアンマ「そうか。ま、別に俺様はどちらでも構わないんだがな」


フィアンマ「さてと、次はもう少し明るい話をしないか」

フィアンマ「……」コポポポ

フィアンマ「ほら」スッ

オルソラ「あ、ありがとうございます……」

オルソラ「これは……?」

フィアンマ「俺様が一番好きなワインだ。口に合うといいんだが」

オルソラ「……」チビチビ

オルソラ「!!」

フィアンマ「どうだ?」

オルソラ「すごい美味しいのでございます」コクコク

フィアンマ「そうか。それはよかった」


オルソラ「ところで、どうして私を誘ってくれたのでございますか?」

フィアンマ「……一人酒より二人酒だろ? 一人ってのはどうにも好きになれないのさ」

フィアンマ「結局ぼっちってことだし」

フィアンマ「だから良かったら付き合ってくれないかって言ったわけだ」

オルソラ「なるほど、一人ぼっちは寂しいものでございますよね」

オルソラ「言いづらいことを言わせてしまい申し訳ありませんでした」

フィアンマ「謝る必要はないさ。俺様は天涯孤独の身だからな」

フィアンマ「……一人には慣れているのさ」

オルソラ「……」

フィアンマ「うむむ……俺様の話をしようとするとどうしても暗くなってしまうな」

フィアンマ「オルソラは何かないか?」


オルソラ「そうでございますね……」

オルソラ「フィアンマさんは好きな食べ物とかあるのでございますか?」

フィアンマ「なんだ? 言ったら作ってくれたりするのか?」

オルソラ「私ができる範囲でよろしければ」

フィアンマ「……ならオルソラの作る似顔絵付きオムライスだな」

オルソラ「いつも頼まれるのでございましたね。ですが、他には無いのでございますか?」

フィアンマ「俺様は基本的に好き嫌いはないからな。オルソラの作る料理は格別だがそれ以外はほぼ同格だ」

オルソラ「そ、そんなお世辞を言う必要はないのでございます」

フィアンマ「お世辞じゃない。俺様はそんな面倒な事は言わない……」フイッ

オルソラ「……そうでございますか……ありがとうございます」カァ

ここまでー!!


フィアンマ「……顔が赤いが、熱でもあるのか?」

オルソラ「なな、なんでもないのでございますよ!」アセアセ

フィアンマ「ふむ……ならいいんだが……」

フィアンマ「なあ、少しプライベートなこと聞いてもいいか?」

オルソラ「ええ、大丈夫でございますよ」

フィアンマ「オルソラは恋心をいだいている男はいるのか?」

オルソラ「だ、男性の方でございますか!?」

フィアンマ「ああ、どうなんだ?」

オルソラ「……は、はぁ……密かにお慕いしている方でしたら……」チラ

フィアンマ「い、いるのか……」ズーン

オルソラ「ふ、フィアンマさんはどうなのでございますか?」

フィアンマ「いる……で、間違ってないはずだ」ジー

オルソラ「そうでございますか……」ショボン

二人「はぁ……」


フィアンマ「……とりあえずなんだが、そういう悩みの相談を受けてもらいたくてな」

オルソラ「そうでございますか……」

フィアンマ「いいか?」

オルソラ「……ええ、フィアンマさんのためになるのでございましたら」ズーン

フィアンマ「じゃあ早速だが、俺様は好意を持った人間に露骨と言っても過言ではないほどのアプローチをしている」

フィアンマ「……つもりなんだがな?」

フィアンマ「相手は全く気付いてないようなんだ」

オルソラ「あー、良く分かるのでございますよ。私がお慕いしている方もそうなので」

フィアンマ「そ、そうなのか。お互い苦労するものだな……」

オルソラ「ええ。多分、それは鈍感さんでございますよ」

フィアンマ「鈍感さん? なら俺様はどうしたらいいんだ……?」


オルソラ「直接思いを伝える他無いのでございますよ」

オルソラ「鈍感さんは相手の気持ちの変化に鈍いので……」チラ

フィアンマ「やはりそれしかないか」ウムム
オルソラ「もちろん、私にそんな勇気はないのでございますけど」

フィアンマ「くくっ、俺様も同じだよ」

フィアンマ「実行になんか移せないさ」チラ

オルソラ「ですが、早く動かないと誰かに先を越されてしまうのでございます」

オルソラ「……とても魅力的な方なので……」

フィアンマ「……そうだな。俺様もそうかもしれない」ゴクゴク…

フィアンマ「早く動かないとならないのかもしれない」


………………………………

オルソラ「ふにゃー♪」ベロンベロン

フィアンマ「俺様に注意した人間が潰れるってどういうことなんだ……?」ヨッコラ

フィアンマ「ほら、行くぞ」

オルソラ「ふぁいー。んふふ」ガシッ モニュ

フィアンマ「っ!!」ピクッ

フィアンマ「…………はぁ、俺様じゃなかったら襲われてたぞ?」

フィアンマ「……オルソラ?」クルッ

オルソラ「……」スースー

フィアンマ「ずいぶん気持ち良さそうに寝ているものだな……」

フィアンマ「……おやすみ、オルソラ」スタスタ

ギィィィ バタン



フィアンマ「……記憶は消しておいたはずなんだが」ジロッ

フィアンマ「なぜそんなにペラペラ話せてるんだ!」

フィアンマ「というか、朝と夜の話はどこから盗み聞きしてた!!」

オリアナ「酔っ払いの魔術なんて大したことないわ。効くわけないでしょ」

オリアナ「朝と夜の話は普通に盗聴器使っただけよん」

オリアナ「市販の探知機で見つけられちゃうくらいちゃっちい物だけどこんなに役立つとはね」ジャン

テッラ「……」ナマアタタカイメ

フィアンマ「おい、テッラ! そんな目をするな!!」

テッラ「いえ、このことがきっかけになってあなたが少しでも丸くなってくれればこっちとしても嬉しいですねー」


フィアンマ「うるさいうるさい!!」

フィアンマ「そのことはもういいだろう!!」カアァァァッ

オリアナ「あらら? 真っ赤になっちゃって可愛いわね」ニシシ

フィアンマ「だああああああ!」

フィアンマ「真っ赤になんかなってない!!!」バンバンバン

オリアナ「こういう年相応の反応っていいわねぇ」

テッラ「……その、オルソラというシスターのことは好きなんですかねー?」

フィアンマ「そ、そうだが……正しくは共にありたいだけだ」ボソボソ

テッラ(ははあ、本当に丸くなっている様子ですねー。弱み入手っと)


フィアンマ「はぁ、はぁ……」

オリアナ「あはは、マラソンの後みたいになってるわよん」

テッラ「フィアンマがマラソン走れるとは思いませんがねー」

オリアナ「例えに決まってるでしょう」ケラケラ

テッラ「でしょうねー」ケラケラ

フィアンマ「二人揃って俺様のことをバカにするなよ……」ハァ

オリアナ「ごめんね、お兄さん。でもテッラさんのいい肴にはなったと思うんだけど」

テッラ「やはり、普段弱みを見せないというか、存在しないと思われていた弱みを知ることができたのは大きな収穫ですねー」

テッラ「最後の一言とか、肴としても最高ですし」


オリアナ「それじゃあ、休憩もそろそろ終わりだからお嬢ちゃんのとこに行ってくるわね」

フィアンマ「クソっ、勝手に行ってしまえ!」

オリアナ「あらら、少しやり過ぎちゃったかな」

フィアンマ「フン」

オリアナ「まあいいや。後はよろしくねん」タッ

テッラ(面倒なものを押し付けられましたねー)

フィアンマ「……」ムッスー

テッラ(ま、たまにはこういうフィアンマも悪くないのかもしれませんねー)ゴクゴクッ

ここまでー
とりあえず一区切りっと


テッラ「で?」

フィアンマ「……何がで? だ」

フィアンマ「きちんと言語を使ってくれないと分からないぞ」ムカムカ

テッラ「他には無いんですかねー。話は」

フィアンマ「あんな恥をかかせておいて、図々しいにも程があるだろ」

フィアンマ「まあ……無いわけではないが」

フィアンマ「だが、今回の話は面白いというよりはほのぼのとした話だからな。うん」

テッラ「ふむふむ、ですが、私としてはフィアンマがほのぼのしているだけで既にネタとして成立しているのでご心配なく」

フィアンマ「お前は本当に人の神経を逆なでするのが得意だよな……」

テッラ「はぁ、フィアンマが人を褒めるとは……」

フィアンマ「褒めてない!!」



インデックス「フィアンマー!」トテトテ

フィアンマ「ん? アウレオルスはどうした」

インデックス「置いてきた」

フィアンマ「は?」

アックア「何をしているのであるか?」
フィアンマ「いや、インデックスがアウレオルスを置いてきたと言うから……」

インデックス「ええとね、仕事が忙しいって言うから置いてきた」

フィアンマ「なるほど、置いてきたのか」

フィアンマ(インデックスの記憶をそろそろ消さないとならない時期らしいし、何とかする方法でも探しているのだろう)

フィアンマ(俺様なら解呪できないこともないだろうが、イギリス清教との関係を悪化させるわけにはいかないしな……)ハァ


アックア「では、何をしに来たのであるか?」

インデックス「スイーツを食べに行きたくてね!」

フィアンマ「スイーツだと?」

インデックス「うん! アニェーゼたちが食べに行ったらしいんだけど、そこのケーキがすごい美味しかったんだって」

フィアンマ「ふーん、場所は?」

アックア「ここであるな」ユビサシ

フィアンマ「また歩くのか……」チラ

インデックス「?」

フィアンマ(まあ、最後になるかもしれないし、今は不穏な動きもなさそうだし行ってやるか……)ハァ


フィアンマ「よし、行くか。特別に付き合ってやる」

アックア「本当は行きたいだけだな」

フィアンマ「二度とそんなことを言うな」

フィアンマ「別に行きたくなどないが、暇だし、インデックスが行きたいと言うから連れていくだけだ」

アックア「なら、お前は紅茶だけ飲んで待ってるのであるな?」

フィアンマ「極端すぎるだろ。俺様も行きたいと言わなくてはケーキも食べられないのか」

インデックス「喧嘩はダメだよ。みんなでケーキ食べればいいんだよ」

インデックス「美味しいもの食べたらイライラなんて吹き飛ぶし」

フィアンマ「ふっ、それもそうだな」


フィアンマ「あ、でも、お前シスターだったよな?」

フィアンマ「そんなに甘いもの甘いものって言っていていいのか?」

インデックス「むー、オルソラだってシスターなんだよ!!」

フィアンマ「そ、それがどうした。俺様とは関係ないだろう?」

インデックス「シスターのことが好きなフィアンマには言われたくないかも」プクッ

フィアンマ「オリアナの奴……まさかこうも早く噂を広めているとは……」ギリッ

フィアンマ「口が軽い奴は部下失格だな……」

インデックス「オリアナ? 何言ってるの、フィアンマ?」

フィアンマ「え?」


フィアンマ「一応尋ねさせてもらうが、そのことは誰から聞いたんだ?」

アックア「はぁ、そんなこと聞かなくても分かるのである。態度や表情に出し過ぎだ」

インデックス「アックアの言う通りだよ。誰からも聞いてないんだよ」

フィアンマ「……早めに箝口令を敷くべきか」

インデックス「それは意味が無いと思うよ。だって知らないのはオルソラだけだし」

インデックス「恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思いそめしか、だよ!」

フィアンマ「え、突然日本語を使うな。訳が分からないだろ」

アックア「こっそりと恋してたが噂になってしまった、か」

フィアンマ「なっ!!」


フィアンマ「だ、だが、オルソラには別に好きな人間がいるらしいからな。俺様の出る幕じゃないのさ」

フィアンマ「だから、この話は早急に忘れろ」

インデックス「……はぁ」チラ

フィアンマ「なんだ! その失望したようなため息は!」

インデックス「……いや、少し呆れただけだよ、ね?」

アックア「……であるな」

インデックス「とりあえず、フィアンマのお話はケーキ食べながら聞くことにしようよ」

アックア「そうであるな。なかなか面白そうな予感がする」

インデックス「それじゃあ早く行こー」グイグイ

アックア「ああ」

フィアンマ「話さないからな!!!」

ここまで!


………とある喫茶店………


カランカラン

アックア「だいぶ落ち着いた感じであるな」

インデックス「あまーい匂い……お腹ペコペコだよ……」

フィアンマ「まあ、適当なところにでも座ろうか」

インデックス「あ! ねぇフィアンマ、アソコがいいんだよ!!」

フィアンマ「テラス席か……まあ構わないが」チラ

アックア「私も構わないのである」

インデックス「早く早くー!!」

フィアンマ「安心しろ。ケーキは逃げないんだぞ?」


インデックス「うむむむむ……すごく迷うんだよ」

インデックス「りんごタルトも美味しそうだし、チーズスフレも捨てがたい……」

インデックス「はわわ、モンブランもいいなぁ」

フィアンマ「俺様はりんごタルトにするか」

インデックス「ええ! 私が食べるつもりだったのにー!!」

フィアンマ「じゃあチーズスフレか」

インデックス「ええええ!」

フィアンマ「……モンブランなら満足か?」

インデックス「ぐぬぬ……」


フィアンマ「……いい加減にしろ。そんなに迷うのなら俺様のも少し分けてやるから一つに絞れ」

インデックス「い、いいの!?」キラキラ

フィアンマ「ああ、相手するのにも疲れたしな」

インデックス「じゃあ、フィアンマはりんごタルトね」ユビサシ

フィアンマ「はいはい」

インデックス「アックアは?」

アックア「ん? 私のケーキも取ろうというのか?」

フィアンマ「……アックア、ここは折れないと永遠に終わらないぞ」

アックア「……はぁ、分かったのである」

インデックス「やった、じゃあ、アックアはモンブランね!」

アックア「了解である」


店員「注文はお決まりでしょうか」

フィアンマ「ああ。おすすめケーキセット三つだ」

店員「ケーキは何にいたしますか?」

インデックス「モンブランとチーズスフレとりんごタルトだよ!」

店員「ご注文は以上でよろしいでしょうか」

インデックス「うん」

店員「それでは、注文確認します」

店員「おすすめケーキセット三つで、ケーキはモンブラン、チーズスフレ、りんごタルトでよろしいでしょうか」

フィアンマ「ああ。よろしいよろしい」

店員「……えっと、それでは失礼します」


フィアンマ「ふう、こういう所には入ったことがないから少し緊張してたが、大したことなかったな」

インデックス「そんなことよりフィアンマの話が聞きたいんだよ」

フィアンマ「俺様は喫茶店の話をしているだろう? それだって俺様の話しさ」

アックア「いや、だったらお前の思うオルソラの話で構わない」

フィアンマ「しないと言っただろう」

フィアンマ「そう言えば、お前たちはオルソラの好きな人間は知ってるのか?」

インデックス「いや……ねぇ?」チラ

アックア「……であるな」


フィアンマ「なんだ、その意味有りげな反応は」

インデックス「うーん」

フィアンマ「言わないなら何も話さないぞ」

インデックス「え、それは困るんだよ。オルソラの好きな人はもがっ」バッ

フィアンマ「なぜ邪魔をする? 話さなくていいのか?」

アックア「話さなくていいのである」

アックア「彼女が好きな人間を知ったらお前は何も成長できないのである」

アックア「この機会にオルソラが好きな人間とかオルソラの気持ちとかを理解しようとしてみることをオススメするのである」

アックア「オルソラは比較的分かり易い人間であるからな」


インデックス「そっか。フィアンマの成長のためなら仕方が無いかも」

フィアンマ「ちっ、こっちはそれが気がかりで夜も眠れないというのに……」

アックア「どうでもいいのである」

フィアンマ「……まあいい。お前たちがそう言うのなら俺様は別の奴に聞くだけだ」

フィアンマ「言うだろう? 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と」

アックア「安心しろ。本人以外には箝口令敷いたのである」

アックア「どうしても聞きたければオルソラ本人に聞くのである。それでどう思われても知らないが」

フィアンマ「……それはやめておこう」

ここまでです!


店員「お待たせいたしました」

店員「おすすめケーキセットのりんごタルト、チーズスフレ、モンブランと、セットの紅茶です」コト

店員「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

フィアンマ「ああ。大丈夫だ」

店員「それではごゆっくりお楽しみください」

店員「紅茶のポットが空になりましたら、新たなものと交換するので、店員をお呼びください」

スタタッ


インデックス「それじゃあ、いただきます!!」ガブッ

ガツガツ…

フィアンマ「おい、こういうものは味わって食べるべきだろ」チョビチョビ

インデックス「アックアー、モンブラン!」バンバン

アックア「……はぁ」スッ

インデックス「よっしゃ」ガツガツ

アックア「お前はそれでも男であるか?」

アックア「男はもう少しガツガツいくものであるぞ」

フィアンマ「お前の理想の男像を俺様に押し付けるな」

フィアンマ「食べ物をガツガツ食べるのは行儀悪いから苦手なのさ」


アックア「そんなこと言ってチマチマ食べているから……」

インデックス「……」ギラリ

アックア「狙われるのである」

フィアンマ「さ、寒気が……」

フィアンマ「や、やらないからな!!」

インデックス「……」ウルウル

インデックス「もしかしてフィアンマは約束を破るのかな……?」

インデックス「アックアはきちんとくれたのに」

フィアンマ(アックアでさえ二、三口しか食べてないのに……俺様なんかアックア換算で一口分も食べてないんだぞ!!)


フィアンマ「少し待て。半分食べたらやるから」

インデックス「今までのペースだと半分食べるのに五分はかかるんだよ?」

インデックス「待てるわけ無いじゃん」

インデックス「だからさっさと寄こせー!!」ガウウ

アックア(もう諦めるのである)チラ

フィアンマ「ああ、分かったよ!!」

フィアンマ「ほとんど全部と言ってもいいくらい余ってるが、もうやる!」スッ

インデックス「やったー!!」

インデックス「ありがと、フィアンマ!」


フィアンマ(……味は悪くなかったし今度オルソラを誘って来たらいいだけだ)

フィアンマ(あわよくば……)ニマニマ

アックア「何ニヤニヤしているのであるか?」

フィアンマ「ふん、言うわけ無いだろ」

フィアンマ「俺様のケーキを取った奴と、それをサポートした奴にはな!!」

インデックス「もぐもぐ、食べ物の恨みは怖いんだよ」

フィアンマ「お前が言うな!!」


フィアンマ「……と、せっかく行ったというのにケーキをぶんどられた」

テッラ「振り回されてますねー」

フィアンマ「だな。本当に疲れる」

フィアンマ「が、嫌なことばかりではない」

テッラ「ですねー。話を聞く限りじゃ、本当に兄妹みたいですねー」

フィアンマ「そんなものが実際にいたらどうなっていたことやら」ハァ

テッラ「ふむ、それもそうですねー。どんな目に遭うか想像できませんよ」

フィアンマ「だろ? だからいなくて正解だ」

フィアンマ「本当はインデックスみたいに懐いてくれる奴は嫌いではないんだけどな」クツクツ

ここまで!


フィアンマ「次の話は……」

テッラ「いえ、この辺で今日は切り上げておきましょうかねー」

テッラ「今日のノルマはクリアしたんで」

フィアンマ「ふむ、そうか」

フィアンマ「じゃあ俺様は戻るとしよう」

フィアンマ「俺様も暇ではないのでな」スタスタ

テッラ「みたいですねー。ま、私は興味ありませんが」

フィアンマ「……次はもう少し上等な酒を用意しておけよ?」ガチャ

フィアンマ「俺様は酒にはうるさいからな」バタン

テッラ「そんな酒があったら自分で飲みますねー」

これでとある左方暴露大会はおしまい。
次はストーリーに割と関係ある部分のifですー


………食堂………


フィアンマ「……」チラ

オルソラ「……」ジュージュー

フィアンマ(オルソラが列を捌ききるまで少し振り返ってみるとするか)

フィアンマ(俺様の活動を)パラッ


………数年前………


フィアンマ「……俺様の周りの幸せを守るとは言ったものの、何から始めたらいいかよく分からないよな」カツカツ

アックア「そんな愚痴じみたものを私に言うな」スタスタ

フィアンマ「……ただの独り言だ」

フィアンマ「返答なんか求めてない」

アックア「の割には呼びかけ口調だったのが非常に気になるのである」

フィアンマ「……うるさい」

フィアンマ「っていうか、そろそろ俺様の監視をやめてほしいのだが……」

アックア「教皇からの命令である。仕方がない」

フィアンマ「はあ……」

フィアンマ(ん? あそこにいるのはインデックスか……?)タッ

アックア「……インデックスであるか」スタスタ


インデックス「……」ボケー

フィアンマ「おい、インデックス」

インデックス「……」グラッ

フィアンマ「……インデックス?」

インデックス「はっ、フィアンマ……呼んだ?」クルッ

フィアンマ「む、顔赤くないか?」

インデックス「え……そう?」ペタペタ

フィアンマ「風邪でもひいたのか?」


インデックス「え? ひいてないよ?」

インデックス「だって私元気だから」

フィアンマ「……」ペタ

フィアンマ「っ!」

フィアンマ「おい、すごい熱だぞ!!」

インデックス「ふえ……?」バタッ

フィアンマ「……インデックス?」ガシ

フィアンマ「おい、インデックス!!!」ユサユサ


アックア「っ!」ダッ

アックア「何があったのであるか」

フィアンマ「……倒れた」

フィアンマ「インデックスが倒れた」

フィアンマ「……回復魔術は一通り試したが、意味がなかった」

アックア(この数秒で……)

アックア「……とりあえず私が救護室まで運ぶ」

アックア「お前はアウレオルスに連絡をしろ」

フィアンマ「……悪い、手間をかけるな」

アックア「……いや、大したことではないのである。気にするな」タッ

アックア(あんなに顔面蒼白になっているフィアンマは初めて見たのである……)

ここまでですー

インちゃんインちゃん……


………救護室………


アウレオルス『インデックスが倒れただと!?』

フィアンマ「……ああ、そうだ」

アウレオルス『……今の容態はどうなんだ』

フィアンマ「熱は四十度手前まで上がってるが、とりあえずは落ち着いて寝ている」

アウレオルス「そうか……今すぐ向かう」

フィアンマ「ああ、すぐにだからな」ピッ

フィアンマ「……はぁ」

アックア「落ち着いたか?」

フィアンマ「……元々俺様は冷静だ」

アックア「……そうであるか」

フィアンマ「……」

アックア「……」


アックア「……もうそろそろ、ということであるな」

フィアンマ「……ああ、どうやらそうらしい」

フィアンマ「なぁアックア、お前はどうして記憶を消さなくてはならないのか分かるか?」

アックア「……脳が情報でパンクしてしまうからではないか?」

フィアンマ「……ふむ」

フィアンマ(……それは違う。アックアも理解してないということか)

ガラララッ

アウレオルス「インデックス!!」

フィアンマ「……ようやく来たか。だが、少し静かにしてくれ」

アウレオルス「自然、そうだな……」


アックア「そう言えば、お前ならインデックスの記憶を消さなくてはならない理由、分かるのであるよな?」

アウレオルス「……」

アウレオルス「必然、彼女の頭には一年周期で爆発する爆弾がある」

アウレオルス「それは彼女は完全記憶能力のせいで、普通の人間が無意識に行う記憶の整理、削除ができないというものだ」

アウレオルス「そのため、普通の人間の何倍もの記憶が日々溜まっていく」

アウレオルス「つまり、短期間で容量オーバーが来てしまう」

アウレオルス「爆弾が爆発する周期が一年」

アウレオルス「魔道書で圧迫された彼女の脳では一年分の記憶を貯めるのが限界らしい」

アウレオルス「だから、一年周期で記憶を消さなくてはならない」

アウレオルス「でないと、彼女は死ぬ」


フィアンマ「……」

アックア「なるほど」

アックア「きちんとした理屈があったというわけであるな」

アウレオルス「ああ、その上、記憶を消す刻限の直前になると、彼女の体調は悪化する」

アウレオルス「負担の上乗せと言っても過言ではないが、それは彼女の体が上げる悲鳴なのだろうな」

アウレオルス「記憶さえ消せば治る症状なのだから」

アウレオルス「しかし、記憶を消せば彼女の中に存在する思い出は消える」

アウレオルス「彼女の痛みを取り除きたい」

アウレオルス「しかし、取り除いたら、彼女は痛みが消えるのと引き換えに思い出も全て消えてしまうという……」

アウレオルス「皮肉だ」

ここまでー
乙ありです!

やっぱりシリアスな雰囲気がだせない……


フィアンマ(あの女も嫌な仕掛けを作るものだ)

フィアンマ(何が一年周期で記憶を消す必要がある、だ)

フィアンマ(そう設定したのはあの女、イギリス清教の魔術だろう)

フィアンマ(それも魔道書図書館であるインデックスの手綱を握るためのもの)

フィアンマ(だとはいえ、あんな少女に残酷なもんだな)

フィアンマ(そもそも、脳が容量オーバーというのがおかしいということに気付かないものか……)

フィアンマ(記憶をいじる魔術さえ知ってれば異常に気づけるはずだが……?)

フィアンマ(どちらにせよ、関係を良好に保つためには、解呪してはならない術式であることは間違いない)

フィアンマ(奴らと敵対してもいいことは何もないからな……)


フィアンマ(だが……その結論で本当にいいのだろうか……)

フィアンマ(これからもインデックスは毎年苦しみながら、愛した人間や仲の良かった人間のことを忘れなくてはならない)

フィアンマ(それはどれほどあの少女にとって辛いことなのだろうか)

フィアンマ(その運命からインデックスを救うことができる俺様は黙って見てるだけなのか?)

フィアンマ(何もしなかったら俺様は後悔するのだろうか?)

フィアンマ(……どんな気持ちになるのだろうか?)


アックア「教皇曰く……五日後にイギリス清教の使いの者が来るらしい」

フィアンマ「まるで竹取物語のようだな」

アウレオルス「……言い得て妙だ」

アウレオルス「私は一年周期で記憶を消さなくてはならないという決まりを打ち壊すことができなかった」

アウレオルス「だから、彼女は私では手の届かない存在になる」

フィアンマ(俺様もイギリスとの関係を壊さず、インデックスを救う方法が見つけられなかったばかりに、インデックスを失うことになるのか?)

フィアンマ(本当に、本当にそれで俺様はいいのか?)

フィアンマ(何か方法はないものか……)

今回は少しだけ。


………夜………

ムクッ

インデックス「ここは……」

アックア「む、起きたか」

インデックス「アックア?」

フィアンマ「……」スースー

アウレオルス「……」クークー

インデックス「フィアンマもアウレオルスも……」

インデックス「一体何があったの?」

アックア「覚えてないのであるか? 倒れたのである」

インデックス「……ああ、そっか……もう時間なんだね」

アックア「分かるのか」

インデックス「……直感だよ」


インデックス「自惚れかもしれないけど、フィアンマもアウレオルスもすっごく取り乱してたでしょ」

アックア「……よく分かったな」

インデックス「ふふっ、やっぱり?」

インデックス「だってそういう人なんだもん。私のことをすごく大切に思ってくれてたのは良く分かってるから」

インデックス「それだけ困惑してしまうのも仕方が無いんだよ」

アックア「ペラペラ話しているが大丈夫なのであるか?」

インデックス「うん。倒れるのは発作的なものだからね……」

アックア「そうか、ならいいが……」


インデックス「私の記憶がなくなったあとの二人がすごい心配なんだよ……」

インデックス「大丈夫だと思う?」

アックア「全然ダメである。特にアウレオルスは何をしでかすか……」

インデックス「……そっか。じゃあ手紙書いておこうかな」

インデックス「本当に何をしちゃうかわからないから」

アックア「二人に書くのであるか?」

インデックス「別々にね」ピラッ

インデックス「今までありがとうってことと、私の記憶がなくなってもそんなに落ち込まないでって」カリカリ


アックア「なら、直接本人に話した方がいい」

アックア「その方が奴らは喜ぶはずである」

インデックス「うーん、でも声にしたら伝えられないかもしれないから手紙も書いておくの」カリカリ

インデックス「居なくなったあとに届いた方が響く言葉もあるかもしれないし」

アックア「なるほどな。保険ということか」

アックア「なら、伝えきれなかったら私に手紙を渡すよう言ってくれ」

アックア「そうしたら、きちんと責任をもって渡すことを誓うのである」

インデックス「ありがとう」

インデックス「アックアが一番私情を挟まないで渡してくれそうって思ってたけど、まさにその通りみたいだね」カリカリ


アックア「まるで私が情のない人間みたいだな」

インデックス「そんなことないよ」

インデックス「だってフィアンマとあんなにコントやってるんだもん」

アックア「いや、あるだろうな」

アックア「そこに散らばってる書類を見ても分かる通り二人ともお前を救うことを諦めてないのである」

アックア「だが、私はコイツらほど一生懸命にはなれない」

アックア「私にできるのはサポートするだけだ。それも二人が諦めない限りはという制限付きの」

インデックス「そっか……」

インデックス「でもそれくらいの関わり方が一番いい関わり方だと思うんだよ」

アックア「だろうな。辛くならずに済む。自分の無力さを嘆く必要もない」

アックア「まあ、一人のために躍起になれるのが羨ましくないと言ったら嘘になるのであるが」


ピラッ

インデックス「……」

インデックス「二人の魔術知識なら、私の症状をどうにかするのは無理だって気づいてるはずなんだけどね」

インデックス「どうしてなんだろうね」

アックア「大切な人間の為に不可能を可能にする程度できないようでは魔術師である意味が無いとか言っていたのである」

インデックス「……その気持ちは嬉しいかも」

インデックス「やっぱりちゃんと話してみるよ」

アックア「だな」

ここまでー


フィアンマ「っ、寝てしまってたか……」ムク

インデックス「あ、フィアンマ。おはよう」

フィアンマ「……起きたのか」

インデックス「うん、熱もだいぶ引いたからね」

フィアンマ「……待ってろ」ポン

フィアンマ「俺様らしくもないが、必ずお前を救う術を示してやる」

インデックス「フィアンマ、それは……」

フィアンマ「……じゃあ、後は任せたぞ」

アックア「ああ」

ガチャ バタン

インデックス「……」

アックア「二人とも行ってしまったな」

インデックス「……記憶なくさないようにって方に目を向けすぎなんだよ」

インデックス(それより私はもっと……)

アックア「……であるな。全く届いてない」

インデックス「うん、でも話さなくちゃダメだから」


アックア「どうする、呼ぶか?」

インデックス「ううん、フィアンマの邪魔はしたくないんだよ」

インデックス「もしかしたら本当に方法を見つけてくれるかもしれないし」

アックア「かもしれないな」

アックア(仮にやり方を見つけたとしても、イギリス清教の許可なしではできないだろう)

アックア(下手したらイギリス清教との亀裂を生む可能性すらある)

アックア(それは当然奴らも理解している……)

インデックス「だから話すのは最後の日にするよ」

インデックス「私がいなくなっても、二人に重荷は残さないようにね……」


………フィアンマの部屋………


フィアンマ「おい、オリアナ」

オリアナ「ん……んん?」ムク

オリアナ「ふぁあ……何のようかしら、お兄さん」ノビ-

オリアナ「まだ三時よ?」

フィアンマ「起きろ」

オリアナ「もう起こされたわー。起きてる起きてる」

フィアンマ「これからしばらく徹夜だ。頭を貸せ。報酬は望むだけやる」

オリアナ「頭? 一体どうしたの、お兄さん」

オリアナ「お姉さん的には頭より身体の方が価値あると思うんだけど」

フィアンマ「俺様的にはお前の身体よりお前の頭の方が価値があるんだ」

フィアンマ「正しくは頭脳だな」


オリアナ(普段の数倍は真面目そうな顔ね……)

オリアナ「……何か事情があるってことかしら?」

フィアンマ「大したことではない。気にしないで俺様の言ったことに従え」

オリアナ「……インデックスちゃんのことでしょ? だいぶ広まってるけど?」

オリアナ「記憶消さなくちゃ死んでしまう、しかし記憶を消すのを回避したい、だっけね?」

フィアンマ「……なぜ知ってる?」

オリアナ「そりゃ、私だってインデックスちゃんのとこ行ったし」

フィアンマ「……」

オリアナ「お兄さんに命令された仕事をキチンとやったのに報告する相手が行方不明じゃね……?」

フィアンマ「……突然姿を消したのは悪かった」

オリアナ「んー、まあ、事情が事情だから文句言う気はないわ。スヤスヤ寝ているお兄さんを起こせなかった私にも責任あるし」

オリアナ「だけど、報酬上乗せね」

フィアンマ「ちゃっかりしてるな」


オリアナ「さてと、お姉さんは何をしたらいいのかしら?」

フィアンマ「イギリス清教の組織図、ローマ正教が握ってる弱点、イギリス清教に握られてる弱点、内部情勢、ローマ正教と繋がりがある部署、全部洗い出せ」

オリアナ「まあ、ヘビーな仕事ね」

オリアナ「他の人には回さないの?」

フィアンマ「アニェーゼたちにも任せようと思ったが、あいつらは別に仕事があるからな」

オリアナ「……オルソラちゃんとかは情報収集や交渉は得意らしいけど?」

フィアンマ「……なら朝ご飯を食べに行く際に聞いてみるとしよう」

オリアナ「お姉さんは三時から酷使なのにオルソラちゃんは朝からだなんて、贔屓するわね」

フィアンマ「おいおい、こういう風に使いたい時使える人材が欲しかったから、お前を直属の部下にしたんだからな?」

フィアンマ「文句を言わずに取り掛かれ」


オリアナ「はいはい。その間にお兄さんは術式でも構築するのかしら?」

フィアンマ「ある」

オリアナ「は?」

フィアンマ「術式ならもう完璧なのがある」

オリアナ「それなら使えばいいじゃない」

フィアンマ「それでイギリス清教との関係を悪化させ、戦争まで発展しては困る」

オリアナ「なんで悪化するの?」

フィアンマ「……誰にも言わないか?」

オリアナ「お金さえくれればね? あ、あとお兄さんが平和を追求してくれる限りは、かな?」

フィアンマ「今回は真面目な方だ。オルソラの件みたいにペラペラ話すなよ」

オリアナ「そこの分別ぐらいつけられるわ」


フィアンマ「……記憶を消さなくてはならないという枷はイギリス清教によって付けられたものだ」

フィアンマ「魔道書図書館であるインデックスの動きを縛るためにな」

オリアナ「ははあ、なるほどね」

フィアンマ「だから、俺様は上手く関係を取り持ちつつ、インデックスを何とかする術を探る」

フィアンマ「その為の材料探しを頼むというわけだ」

オリアナ「へぇ、理解したわ」

オリアナ「ということは、弱みの方を重点的に、かな?」

フィアンマ「ああ、交渉に使えそうな情報収集を頼む」

オリアナ「ええ、たまにはお兄さんの力になってあげるのも部下の仕事だものね」クスクス

フィアンマ「期限は残り五日だからな」

オリアナ「んふふ、十分よ」

オリアナ「三日で上質な情報をプレゼントするわ」

ここまでー
乙ありです

このスレ好きとか初めて言われた……感動

番外編なのにこのスレで終わる気がしないなぁ……詰め込むか


………翌朝・食堂………


フィアンマ「っ……」ヨロッ

フィアンマ(やはり普段はやらない徹夜は体にこたえるな……オリアナのやつはピンピンしてるが)ドスッ

フィアンマ「す、済まない……って壁か」

オルソラ「おはようございます、大丈夫でございますか?」

フィアンマ「ああ、肩が壁にぶつかっただけだから問題無い」

オルソラ「いえ、そうではなく、インデックスさんのことでございます」

オルソラ「解決策を探すのにだいぶ無理していると聞きましたので……心配で」

フィアンマ「ああ……心配させたか」

フィアンマ「だが大丈夫だ。まだ一徹だ、余裕余裕」


オルソラ「……顔色真っ白でございますよ?」ペタ

フィアンマ「っ!」

オルソラ「オリアナさんも心配していたのでございます」

フィアンマ「心配するな……それより似顔絵オムライスとサンドウィッチ頼めるか?」

オルソラ「……私もいっしょに食べてもよろしいでございましょうか?」

フィアンマ「別に構わないが、いいのか? 人気コックがそんなことをしていて」

オルソラ「……今日はお休みでございます」

オルソラ「今のフィアンマさんの状態ではちゃんとご飯を食べるかも怪しいので」

フィアンマ「なるほどな……それなら一緒に食べるか」

フィアンマ「安心させる意味も込めて」


オルソラ「お待たせしましたのでございます」スタッ

フィアンマ「いや、大して待ってない」カタカタ

オルソラ「パソコン……でございますか?」

フィアンマ「ああ……」パタン

フィアンマ「そう言えばサンドウィッチは別に箱とかに入れておいてもらえると助かるんだが……」

オルソラ「オリアナさんの分でございますよね?」スッ

オルソラ「入れてあるのでございますよ」

フィアンマ「おお、言うのを忘れていたのに気が利くなぁ」

オルソラ「ふふ、なるべくフィアンマさんの手を煩わせたくはないので」コト


オルソラ「こちらはフィアンマさんの分でございますよ」

フィアンマ「ありがとう。やっぱりこれを見るとなんだか笑えるな」クスッ

オルソラ「そう言われると作った甲斐があるのでございますよ」ニコ

フィアンマ「……今日は眠たそうな顔か?」

オルソラ「ええ、寝不足はお肌の敵でございますよ」

フィアンマ「それは話が違う気が……?」

オルソラ「とにかく寝ないとダメでございますからね?」

オルソラ「オリアナさんにも伝達おねがいします」

フィアンマ「……まあ、考えとこう」


フィアンマ「お? オルソラもオムライスか?」チラ

フィアンマ(……? 俺様の絵?)

オルソラ「!!」ピクッ

オルソラ「私の絵を書こうとしたのですが、失敗してしまって……」バババッ

フィアンマ「……ふーん?」

フィアンマ(何を隠しているんだ……?)

フィアンマ「とりあえず食べるか」

オルソラ「ええ、そうでございますね」

二人「いただきます」


フィアンマ「……オルソラ、少し頼みたいことがあるんだが、いいか?」モグモグ
オルソラ「なんでございましょう?」

フィアンマ「インデックスを救うために手伝って欲しいことがある」

オルソラ「……私にできる事があるのでございますか!?」ズイッ

フィアンマ「あ、ああ……それでインデックスを確実に救えるとは言わないがな」

オルソラ「いえ、可能性があるのでございましたら協力させていただきたいのでございます」パシッ

フィアンマ「そ、そうか」

フィアンマ「なら、オルソラの交渉力、情報収集の能力を俺様に貸してくれ」


オルソラ「どちらも人に誇れるほどではないのでございますが……」

フィアンマ「そんなに謙遜するな。そんなだから目を付けられるんだ」

オルソラ「何のことでございましょうか?」

フィアンマ「いや、こっちのことだ」

フィアンマ「やってくれるか?」

オルソラ「もちろんでございます。期限はどれくらいでございましょうか?」

フィアンマ「無理を言って悪いが、今日を含めて五日だ」

フィアンマ「弱点を重点的に調べつつもインデックスのことについても調べて欲しい」


オルソラ「了解でございます。それくらいならやってやるのでございますよ」

フィアンマ「悪いな」

フィアンマ「俺様はそれを元に解析して、イギリス清教をつつくつもりだ」

オルソラ「……それだと主に交渉ばかりになるのでは? 具体的な解決策はどうするのでございますか?」

フィアンマ「解決策のための交渉だ」

オルソラ「イギリス清教の方々も何ともできないことだから交渉も何もないのでは……?」

フィアンマ「……インデックスの記憶を消さなくてはならないというのは103000冊の魔道書を外部の魔の手から守るためにイギリス清教が施した処置なんだ」

フィアンマ「反逆を防ぐと言う意味も大きいな」

オルソラ「そ、そうなのでございますか!?」

オルソラ「つまり今苦しんでいるのもその魔術のせいということでございますか?」

フィアンマ「ああ、そのとおりだ」


フィアンマ「まあ、だからといってイギリス清教に非人道的だと文句を言いたいわけじゃないんだ」

フィアンマ「記憶を縛ることによってインデックスにある程度の自由を与えることができるようになっているのだからな」

フィアンマ「俺様が今回する交渉は、俺様がインデックスをきちんと管理するのと引換にこの縛りを解除する許可がほしい、というものなんだ」

オルソラ「……つまり……」

フィアンマ「解除するための方法はもう分かってる」

フィアンマ「だが、勝手に解除するのはイギリス清教との関係を悪化させるだけだ」

フィアンマ「だから、解除法は分かっていても行動に移せないということだ」

オルソラ「なかなか難しい問題なのでございますね……」

フィアンマ「だが、交渉する以外に方法がないから仕方が無いさ」

ここまでー
乙ありです

救済はあるのでしょうか……


オルソラ「アウレオルスさんには言ったのでございますか?」

フィアンマ「言えるわけあるか」

フィアンマ「言ったらアイツは間違いなく術式を解除してしまう」

フィアンマ「それでイギリス清教とローマ正教で戦争が起きてみろ」

フィアンマ「様子見してた学園都市に潰されかねない」

フィアンマ「だから、俺様はイギリス清教の許可を得て、関係を壊さずに解除するために動かなくてはならないというわけさ」

オルソラ「交渉決裂したら?」

フィアンマ「……それは、分からない」

フィアンマ「俺様も一応人間だ。なってみないと何をしだすかわからない」


フィアンマ「イギリス清教との関係なんか無視して、インデックスにかけられた術式を解呪したり、魔道書の記憶を消したりしてしまうかもしれない」

オルソラ「良かった……」

フィアンマ「……何が良かったんだ? ローマ正教にとっては大問題だろ」

オルソラ「最近のフィアンマさんはフィアンマさんらしくなかったので」

フィアンマ「俺様らしいって……」

オルソラ「自分勝手にやって、結果的に最良の結果を導き出すことでございますよ」

オルソラ「アニェーゼ部隊の戦闘に介入した時のように」

フィアンマ「……あれか」

オルソラ「つまり、万事休すの状態になったら、後のことや周りなんて気にせずドカンとやって欲しいなと」

フィアンマ「……大博打を打つには大切な人間が増えすぎた」


オルソラ「インデックスさんも大切な人間でございましょう?」

オルソラ「でしたら大博打でもなんでもして、悪あがきするしかないと思うのでございますよ」

フィアンマ「……はぁ」

フィアンマ「賭けに出れそうな項目を探すくらいはしておこう」

オルソラ「ええ、その方が後悔が少なくて済むと思うのでございますよ」

フィアンマ「ああ、悪いなグダグダしてしまって」

オルソラ「いえいえ、協力すると決めたからにはきちんとサポートさせてもらうのでございます」グッ

フィアンマ「心強いものだな」クスッ


オルソラ「ところでフィアンマさん、協力するためにちょっとした条件をつけてもよろしいでございましょうか?」

フィアンマ「なんだ? 報酬ならいくらでもやるが」

オルソラ「報酬はいらないのでございます」

オルソラ「ただ、フィアンマさんにきちんと睡眠をとってもらうこと、これが条件でございます」

フィアンマ「……」

フィアンマ「この切羽詰まった状況で何言ってるんだ」

オルソラ「切羽詰まってるからでございます。最後の最後の追い込みの時に倒れたら、インデックスさんの記憶が消されてしまうのでございますよ」

フィアンマ「……分かった。一日三時間くらいでいいか?」

オルソラ「ええ、それだけ寝れば大丈夫でございましょう」ニコ


フィアンマ「……オルソラって意外と強情なんだな」モグモグ

オルソラ「え? そんなことないのでございますよ?」パクパク

フィアンマ「いや、報酬を俺様の睡眠にしてまで、睡眠をとらせようとする奴はいないだろう?」

オルソラ「……それは、フィア……今回の条件を考えて一番よい方法を選んだだけでございますよ」

フィアンマ「ふむ……おっとりしてるようだが意外と頑丈でビックリした」

フィアンマ「例えるならアルデンテみたいな感じだな」

オルソラ「フィアンマさん」

フィアンマ「なんだ?」

オルソラ「アルデンテは食べる頃には歯ごたえがいいくらいになっているのでございますよ」

オルソラ「芯が硬く残ってるわけではないのです」

フィアンマ「ほう……学習した」

きょうはここまで!
乙ありです!

書くのが間に合わなくなってきた……


フィアンマ「ふう、ごちそうさま」

オルソラ「お粗末さまでございますよ」

フィアンマ「ん、もう食べ終わってたのか」

オルソラ「フィアンマさんがパソコン打ちながらやってるからですよ」ムッ

オルソラ「焦っていても食事と寝る時間くらいはリラックスしてもらいたいのでございますよ」

フィアンマ「……済まない。焦りすぎてオルソラの気持ちも汲んでやれなかったな」

フィアンマ(俺様としたことが、公私混同してしまったか)

オルソラ「いえ、そういうことではないのでございますが……」

フィアンマ「……ん? 何か言ったか?」

オルソラ「いえ、体を壊さないよう頑張りましょう」スック

フィアンマ「そ、そうだな」

オルソラ「それでは、私はお皿を洗ってくるので、また後で……」ペコリ


フィアンマ(つまり、俺様はオルソラが俺様にリラックスしてもらおうと思って作ったオムライスを、仕事しながら食べてしまったということか……)

フィアンマ「悪いことをしたな……」カタカタ

フィアンマ「……」カタカタ

オルソラ「ふー……あれ?」タタッ

オルソラ「どうしてまだここにいるのでございますか?」

フィアンマ「オルソラのことを待っていただけだ」

オルソラ「……え?」

フィアンマ「……ええと、そうだ!」

フィアンマ「俺様の部屋は俺様の許可なしでは入ることも出ることもできないようになっている」

フィアンマ「それどころか迎撃術式も作動させている」


オルソラ「まあ……すさまじいセキュリティなのでございますね」

フィアンマ「まあな。だからオルソラ一人で行かせるのは危険すぎると思って待ってたわけだ」

オルソラ「心配してくれたのでございますね。ありがとうございました」

フィアンマ「当然だ。雇い主として当然の義務を果たしただけだ」

フィアンマ「いや、違うか」

フィアンマ「今回の場合は協力者、チームだな」

オルソラ「チーム……よろしくおねがいします」ペコリ

フィアンマ「ああ、よろしく。お互い頑張ろう」


………フィアンマの部屋………


フィアンマ「と、いうわけで連れてきたぞ」

オルソラ「よろしくおねがいします」

オリアナ「あ、オルソラちゃんの勧誘できたのね」

フィアンマ「俺様の口がうまかったから」

オリアナ「良かったじゃない。お兄さんのやる気も倍増かな?」

フィアンマ「黙ってろ」トン

フィアンマ「それはサンドウィッチな」

オリアナ「あら、ありがとう、オルソラちゃん、お兄さん」

オルソラ「いえいえ、お互いインデックスさんのために頑張るのでございますよ」

オリアナ「そうね。頑張りましょう」


フィアンマ「じゃあ、俺様は交渉方法と他にインデックスを何とかする方法がないか探してみる」

フィアンマ「だから、黙っててくれ」

オリアナ「はいはい。お兄さんの命令だもんねえ」

オルソラ「頑張ってください」グッ

フィアンマ「ありがとうな」


パラパラ

フィアンマ「まずは法の書か」

フィアンマ(……地下の図書館にあったような)パラパラ

フィアンマ(これを使えば……いや、使うぞと脅すだけでイギリス清教を黙らせることができる)

フィアンマ(その上関係を悪化させることなく、インデックスの術式が破壊できるわけか)

フィアンマ(だが、肝心の解読が全くできないという……)

フィアンマ(その上、法の書の解読を完了させたとしても、それは十字教そのものの存在を脅かすもの)

フィアンマ(つまり、十字教を敵に回すことになる……)

フィアンマ(そうしたらオルソラやオリアナ、アニェーゼたちや枷を取り払ったインデックスなどが敵に回ることになる)

フィアンマ(……却下だ。そもそもインデックスでも解析できてないものを専門でもない俺様が解析したところでトラップに引っかかるだけだ)


フィアンマ(だとしたら、もう俺様の力でイギリス清教を黙らせるとか?)

フィアンマ(実力行使で負けることはないだろうが、回数も限られているから、ひと薙ぎでロンドン潰すくらいしなくては負ける可能性がでてくる)

フィアンマ(その上ロンドン丸ごと潰したら世界の反感を買いかねない)

フィアンマ(そうしたらローマ正教の立場も危うくなる)

フィアンマ(却下だ……そもそも不必要な犠牲はなるべく出さないようにすると決めたはずだ)

フィアンマ(魔道書の記憶だけをごっそり取り除く……いや、意味がないか)

フィアンマ(今現在でも記憶容量は十分に残っているのに一年毎に記憶を消さなくてはならないんだ)

フィアンマ(記憶容量を増やしたところで変わらない)

フィアンマ(それどころかイギリス清教との関係も悪化して……ダメだ、却下だ)

ここまでー


フィアンマ(インデックスを異端審問にかける……)

フィアンマ(十字教を否定する悪書が記憶されていた)

フィアンマ(これは背信行為なんてものじゃない)

フィアンマ(異端者そのものだ)

フィアンマ(と、無理やり罪を作り上げ、異端審問の結果インデックス自体に罪はないとする……)

フィアンマ(だが、悪書を教徒が持っているのは問題だから頭の中の悪書の記憶だけ消すことにする)

フィアンマ(その作業でミスをして、枷を外す……か?)

フィアンマ(却下。ダメだ)

フィアンマ(これも関係を悪化させる)


フィアンマ(いっそのこと魔術も宗教も関係ない、科学に解決の糸口を見出してみるか?)

フィアンマ(巨大な科学サイドに立ち向かえるほどイギリス清教に力はない)

フィアンマ(つまり戦争は起こらないし、イギリス清教の奴らも科学サイドに文句をつけることはできない)

フィアンマ(最高の作戦だが……決行する手立てはない……)

フィアンマ「くそ……作戦が思いつかない」ガツッ


………二日後………

オリアナ「お兄さん、集められる資料は全部集めたわ」ドン

オルソラ「急ごしらえでございますが、ある程度の情報と引換にイギリス清教とのパイプを築いたのでございます」

オルソラ「こちらは電話番号とパスでございます」ピラ

フィアンマ「ああ……悪いな」

オルソラ「……フィアンマさん、大丈夫でございますか?」

フィアンマ「ああ、少し考え過ぎただけだ……案が浮かばなくてな」

フィアンマ「とりあえず助かった。ここからは俺様の仕事だからゆっくり休め」

オルソラ「……」

オリアナ「ほら、さっさと出ないと邪魔になるわよ」グイグイ

オルソラ「そ、そうでございますね……」ジー

ガチャ バタン

フィアンマ「……よし、じゃあざっと読むか」ピラ


フィアンマ「……なるほど、結構深いとこまで調べてあるな」パラパラ

フィアンマ「おい、この文の猫ってどういう意味だ?」

内通者『本当にあの女の上司か? 猫は禁書目録のことだろ』

フィアンマ「あくまでも確認だ。他はだいたい解読済みだしな」

内通者『は!? 解読!?』

フィアンマ「結構面倒だが、法の書ほどじゃない」

内通者『……何が目的なんだ』

フィアンマ「必要ないことに答える気はない」ビリッ ポイ

フィアンマ(オルソラのパイプも暗号解析、情報収集に使える……普通のパイプよりも使い勝手がいいな)


カリカリカリッ

フィアンマ「はぁ、解析完了」ノビ-

フィアンマ「ええと……禁書目録の操作礼装について……だと?」

フィアンマ「操作礼装!?」パラパラ

フィアンマ(首輪、自動書記……なるほどな……)

フィアンマ(脳の容量はコイツに取られていたということか)

フィアンマ(とりあえずこの機能を消しされば、記憶容量が戻ってくることは変わらないな)

フィアンマ(だが、この異常なほど圧迫されていた記憶容量がただの枷ではなく、インデックスの自由意思すら奪うものだったとは……)

フィアンマ「参ったな」

フィアンマ「トップシークレットの情報じゃないか……」

フィアンマ「これは、破壊したら確実にあの女の標的になる」

フィアンマ「ローマ正教とイギリス清教の関係が悪化するどころの騒ぎじゃない」

フィアンマ「確実に戦争に発展する……」

ここまで!
おつありです


………記憶を消す前日・救護室………


ガチャ

フィアンマ「……」

フィアンマ「インデックス起きてるか……」

インデックス「あ、フィアンマ……」グッ

フィアンマ「無理して起き上がる必要はない」

フィアンマ「俺様は少し伝えたいことがあってきただけなんだ」

インデックス「奇遇だね。私も言いたいことがあったんだ」

フィアンマ「そうか。なら、先に言うといい」

インデックス「ううん、フィアンマが先に言ってよ」

フィアンマ「……分かった」


フィアンマ「はじめに謝らせてくれ」

インデックス「要らないよ。謝らないで欲しいな」

フィアンマ「……なぜだ、俺様の力不足で、お前のことをどうにもできないんだぞ?」

インデックス「うん、でも頑張ってくれたんでしょ?」

インデックス「オルソラもオリアナも……フィアンマも」

フィアンマ「……そんなことない」

フィアンマ「確かにオルソラもオリアナもお前のために頑張ってくれた」

フィアンマ「二人の仕事が終わったあと報酬をやろうとしたら断られたんだぞ」

フィアンマ「オルソラははじめからいらないいらない言ってたから予想はできていたが、口止め料がなかったから、とか、報酬は弾んでね、とか言っていたオリアナでさえ断ったんだぞ?」


フィアンマ「二人は本当にお前のために動いてくれた」

フィアンマ「アニェーゼたちやヴェント、アックアの奴らもお前の看病をしてくれたと聞く」

インデックス「うん、みんないつもどおりだけど、心配してくれてたよ」

フィアンマ「だろう? 皆お前のことが好きで動いてたんだ」

フィアンマ「俺様もお前のわがままに付き合うのは嫌いじゃなかった」

フィアンマ「いや、正直に言うと、妹ができたみたいで嬉しかった」

フィアンマ「だからこそお前にかけられた術式を解呪できるようにイギリス清教のやつに掛け合ってみようと思った」

インデックス「あれ? 魔術なの?」

フィアンマ「ああ、この際だから言ってしまうが、お前が苦しめられているのはイギリス清教のやつがかけた魔術のせいだ」


インデックス「そっか。それは魔道書図書館である私の最低限の自由を保証するため……」

フィアンマ「らしいな」

インデックス「なら仕方ないよ」

インデックス「フィアンマはちゃんとローマ正教の皆を守らなきゃいけないんだもん」

インデックス「イギリス清教との仲を悪くしたら戦争にまで発展しかねないよ」

フィアンマ「両方守りたい、というのは俺様程度の力じゃわがままだったらしいな」

インデックス「わがままなんかじゃないよ。私がフィアンマでもそう思うもん」

インデックス「でも、それを実行しようとして、不可能だって分かって、私に報告に来るなんてね」

インデックス「私だったらできないよ。残酷すぎるでしょ?」


フィアンマ「だな。不可能だって、余命宣告だ」

インデックス「違うよ。それは聞けてよかったよ」

インデックス「聞けなかったらフィアンマに頑張ってくれてありがとうって言えなかったかもしれないし」

インデックス「何が残酷かって……フィアンマが私に報告することはフィアンマを傷つける可能性が高いんだよって」

フィアンマ「……」

インデックス「っていうか、実際にかなり傷ついてるんじゃないかな」

インデックス「俺様のせいで、俺様のせいで言ってるしさ」

フィアンマ「それは事実だ」


インデックス「自分を責めすぎないでよ」

インデックス「自分で自分を責めて傷つけて、人に責められると怯えて傷つく」

インデックス「その上私に面と向かって報告してまた私に申し訳なくなって傷つく」

インデックス「そんなフィアンマばっかり傷つくのは見たくないんだよ」

インデックス「私はいつもは冷静でニヒルに笑ってるけど、たまに優しくしてくれるフィアンマがいいの」

インデックス「優しすぎて自分の首を絞めるフィアンマのことは見てられないよ」

フィアンマ「ふっ、誰が一番優しいのやら」

フィアンマ「残念そうな顔一つせず俺様のことを考えている」

フィアンマ「とんだお人好しだよ。お前は」


フィアンマ「……本当は忘れたくないんだろう?」

インデックス「そりゃね」

インデックス「だけど、みんなを危険にさらしてまで私は記憶を持ちたいとは思わないかな」

フィアンマ「奴らはお前のためなら自分たちが多少危険な目にあうことも厭わないだろうよ」

フィアンマ「だが、俺様はその意思を無視した」

フィアンマ「お前を治せるのに治さないことにした」

フィアンマ「最低だろう? 皆の声も聞かず、言うことは分かっているのに、全くその意思を汲まない」

インデックス「私が最後に望むことを優先したかったから」

インデックス「そうでしょ?」

ここまでー
乙ありです!

フィアンマさん&インデックス編はそろそろクライマックス……


インデックス「その判断をしてくれたのに残念そうな顔するわけ無いでしょ」

インデックス「皆が望む判断じゃないから、皆からは何か言われるかもしれない」

インデックス「そんな重圧もあるのに、私の望みをきちんと汲んでくれた」

インデックス「ね?」

フィアンマ「……お前の痛みを取り除きたいのにその方法はお前に痛みを与えることしかできないという……とんだ皮肉だな」

インデックス「痛みを与える?」

フィアンマ「ああ。記憶をなくしたくないって言ったんだろう? アウレオルスに」

インデックス「あはは……知ってたんだ」


フィアンマ「紛れもない痛みじゃないのか?」

フィアンマ「それをお前に課すことにしたんだ。俺様はな」

フィアンマ「だからそんなに気を使わないでくれ」

インデックス「……うっ、ひっぐ……」

インデックス「だって、だって、フィアンマには重荷を残したくないんだもん」

インデックス「一生懸命やってそれでもダメだった。そしたらフィアンマは絶対に自分のことを責めるでしょ?」

インデックス「今みたいに」

フィアンマ「……」

インデックス「ずっ……もちろん、皆を犠牲にして欲しいと言ってるわけじゃないよ」

インデックス「皆を犠牲にしないのを選んでくれたのは本当に嬉しい。でも、私もこれからもここでみんなといろんな思い出作りたかった」


インデックス「ねえ、フィアンマ」

インデックス「みんなと思い出を作っていくこととみんなを犠牲にしないことの両方を望むのってワガママなのかな」ポロポロ

ナデ

インデックス「フィアンマ……?」

フィアンマ「ワガママなんかじゃない」

フィアンマ「それはみんなが当たり前に持ってる権利だ」

フィアンマ「俺様もお前も……だれもが持っていてしかるべきのものだ」

フィアンマ「だが、お前はその権利が奪われてる」

フィアンマ「だからこれは俺様の贖罪だ」

フィアンマ「何年かけてもお前の自由を取り戻してみせる」

フィアンマ「そうしたらまたみんなで思い出を作ろう。今までの思い出よりもっと鮮やかで楽しい思い出を」


インデックス「……本当に?」

フィアンマ「ああ。絶対にだ」

インデックス「だったら贖罪じゃなくて約束にしようよ」

フィアンマ「……約束か」クスッ

フィアンマ「そうだな、約束しよう」

フィアンマ「お前の自由を取り戻そう。たとえ何年かかったとしても、だ」

インデックス「……ねえ、フィアンマ、こっち寄って?」

フィアンマ「なんだ?」スッ

チュ


フィアンマ「っ!!」

インデックス「フィアンマ、大好きだよ」

フィアンマ「そ、それは……」

インデックス「兄妹とか友だちとかじゃなくて、純粋に恋愛的な意味で好き」

フィアンマ「いつもサバサバしてるけど、私のことを大事にしてくれたフィアンマのことが好き」

フィアンマ「い、インデックス?」ペタペタ

インデックス「あはは……でもフィアンマはオルソラのことが好きなんだよね」

インデックス「困らせちゃってごめんね」

フィアンマ「突然どうした……?」

インデックス「伝えておきたかったの」

フィアンマ「……気持ちは嬉しい」

フィアンマ「だが、俺様は好きな人がいるのでな」


インデックス「うん、別に隠さなくても知ってるって」

フィアンマ「隠してなどない。お前らが予想しているのが間違えているだけだ」

インデックス「……オリアナに聞いたのでも間違えてるの?」

フィアンマ「……ああ……そう言えば暴露してたな」ガク

インデックス「フィアンマに好きな人がいるのは知ってるけど、今夜だけ私のそばにいて欲しいんだよ」

インデックス「手を握って欲しいとか、抱きしめて欲しいとかは言わない」

インデックス「ただ、見守ってて欲しいの」

フィアンマ「……ああ、これも贖ざ……」


インデックス「ううん、贖罪じゃないよ」

インデックス「私の願いだよ」

インデックス「叶えてくれる?」

フィアンマ「……叶えないわけないだろう。お易い御用だ」

インデックス「良かった……一人の夜はどうしても私の記憶がなくなったらって考えちゃうんだよか」ゴロン

フィアンマ「……それはインデックスらしくないな」

フィアンマ「だが俺様が……いや、すぐにそんなことを考えなくてもいいようにしてやる」

インデックス「うん、待ってるね、フィアンマ」

ここまでー
乙ありなんだよ!

なんか……長すぎ。


フィアンマ「そうだ、一応試しておきたいことがあるんだが、いいか?」

インデックス「いいけど……何?」

フィアンマ「幸運のおまじないだ」

インデックス「おまじない?」

フィアンマ「お前にかけられた魔術はひどく複雑だ」

フィアンマ「だから、解呪方法を誰かが見つけてくれたとしても、それは記憶の制限を解くだけであって根っこの部分……」

フィアンマ(つまり、操作霊装に繋がる部分は破壊できない可能性が高い)

フィアンマ(俺様ですら、オルソラとオリアナの尽力なしには存在に気づけなかったのだから)

フィアンマ「分かりづらい部分は残り、お前は完全に自由にはなれない」


インデックス「……フィアンマじゃない人が解呪できるの?」

フィアンマ「正しくは破壊という手段かもしれない」

フィアンマ「だが、何者かがお前の枷に気付き、解呪または破壊したとしたらすぐにイギリス清教のやつらが追ってくるだろう」

フィアンマ「完全に自由になったお前は危険だってな」

フィアンマ「……その時は俺様が何とかしよう」

インデックス「できるの?」

フィアンマ「もちろん。俺様は十字教最大勢力のローマ正教の右ほ……フィアンマだぞ?」

フィアンマ「むしろできないことの方が少ないのさ」


フィアンマ「まあ、このまじないはあくまで保険だ。俺様が解呪してやるのが一番いいのだからな」

インデックス「ふむふむ……」

インデックス「私のためにいろいろ考えてくれてありがとね、フィアンマ」

フィアンマ「……次善の策以下でしかないがな……」

フィアンマ「まあ、最低限のことだ。俺様は褒められるようなことも感謝されるようなこともしてない」

フィアンマ「せめてお前の脳内に解呪に関する記載があれば、宗教に関わってない魔術師に……」

インデックス「そのことに関する書は何も記憶してないよ」

インデックス「本のジャンルが偏ってるとは思ってたけど、記憶関連のがなかったんだね」


フィアンマ「はっ!!」

フィアンマ「インデックス、お前は魔道書を暗記するために来ていたんだよな」

インデックス「うん……ここにあるのは一通り覚えたけど……それがどうかしたの?」

フィアンマ「もう一冊覚えられるか?」

インデックス「魔道書とか原典とかならできるけど」

フィアンマ「なら、俺様の魔道書を記憶したらいいんだ!」

インデックス「え? フィアンマの魔道書なんてあるの?」

フィアンマ「薄いが、俺様が作った魔術の全てを駆使して書いた、日記型の魔道書がある」

フィアンマ(今は日記そのものだが、今から魔術的記号を加えれば覚えられるはずだ)

フィアンマ「文字の形なら覚えていられるだろう?」

フィアンマ(体験を覚えてられるわけではないが……全てを忘れるよりは遥かにマシだ)

インデックス「な、なるほど!」

フィアンマ「やってもらえるか?」

インデックス「うん!」

ここまでです
>>858
すみません、ここから先はかなり削り目にします…


………記憶を消す当日………


インデックス(……今日だね)パチッ

インデックス「……」チラ

フィアンマ「……」クークー

インデックス「フィアンマ……ちゃんといてくれたんだ」クスッ

アニェーゼ「ありゃりゃ? 起きちまいましたか」

ヴェント「おはよう」

インデックス「あれれ……どうしたの?」

アニェーゼ「友だちですから。少しでも長く一緒にいたかっただけですよ」チラ

アニェーゼ「まあ、ヴェントさんも同じ考えだったのには驚きましたが」

ヴェント「うるさいね。散々振り回されたんだから最後くらいはこっちに付き合ってもらおうか?」


インデックス「ふふっ、ローマ正教の人って異教徒はサルだーみたいに思ってるって聞いてたからすごい意外かも」

アニェーゼ「まあ、それは事実ですね」アハハ…

ヴェント「私はローマ正教はどうでもいいんだけどね」

フィアンマ「っ……んん」ムクッ

アニェーゼ「お、フィアンマさん、おはようございます」

フィアンマ「……なぜアニェーゼが……ん? ヴェント、なぜお前が?」

ヴェント「さーね。あんたに話す必要はないよ」

フィアンマ「まあ、実際興味はないけどな」

ヴェント「じゃあ聞かないでくれるかな?」

フィアンマ「ふん」


フィアンマ「……インデックス、全部記憶できたか?」

インデックス「うん……でも解読できなかったよ?」

フィアンマ「ああ。俺様の気持ちだけが解読の鍵だからな」

インデックス「へえ? そうなんだ……でもだいぶ恥ずかしいこと書いてあったよ」

フィアンマ「う、うるさい!!」

アニェーゼ「何の話です?」

フィアンマ「お、俺様の書いた魔道書を覚えてもらっただけだ」

ヴェント「へえ、魔道書なんて書いてたんだねぇ」

フィアンマ「伊達にひきこもっちゃいないのさ」

ヴェント「自覚ありか」


インデックス「そうだ……」ムクッ

フィアンマ「起きても大丈夫なのか?」

インデックス「うん、大丈夫……だと思う」

アニェーゼ「わざわざ起きて何するつもりですか?」

インデックス「えへへ……フィアンマ、オルソラはいるかな」

フィアンマ「……今の時間なら基本的に食堂にいる」

ヴェント(……ん? なぜ分かるんだ!?)

インデックス「そっか。じゃあみんなでご飯食べようよ」トテトテ…

インデックス「じゃなかった……最後にみんなでご飯食べたいな」ジワッ


フィアンマ「……だとよ」

フィアンマ「お前ら手伝……」ポチポチ

フレメア(ローマ正教のグループラインにっと……)

ヴェント「さてと、いろいろ呼んでくるかな」

アニェーゼ「では、私はオルソラの料理を手伝わなくては!!」タッ

フィアンマ「……ふっ、良かったな、インデックス」ピロリン

フィアンマ「みなお前のために集まると言ってる」スッ

インデックス「うん……」

フィアンマ「……ふん、最後くらい笑っていた方が皆喜ぶと思うがな」カツカツ

バタン

インデックス「……フィアンマだって涙目になってたくせに……」

ここまでー
でも削らなかったら確実に2スレ目入るのよね……


訂正

× フレメア(ローマ正教のグループラインにっと……)
○ フィアンマ(ローマ正教のグループラインにっと……)


………食堂………


オリアナ「ああ、もう……」アセアセ

フィアンマ「……オリアナ?」

オリアナ「あ、お兄さん!!」

フィアンマ「何を焦っているんだ」

オリアナ「イギリス清教の使いが昼には着くらしいのよ」

フィアンマ「それがどうした?」

オリアナ「……さすが、隠秘記録官と言ったところかしら」

フィアンマ「まさか……」

オリアナ「ええ。隠秘記録官のお兄さんが魔術の解除法に気付いちゃったみたい」


フィアンマ「ちっ、そうくるか」

フィアンマ(見つけられないだろうとタカをくくっていた俺様のミスだ……)

オリアナ「今は理論の最終チェックをしてるらしいから、まだ少しかかると思うけど」

フィアンマ「……クソっ!」

オリアナ「お兄さん、どうするの? 昼までにはあのお兄さんは術式を完成させるわよ?」

オリアナ「お姉さんにできることがあったらするけど」

フィアンマ「それを知ってるのは?」

オリアナ「私と聖人のお兄さんだけ」

オリアナ「盗み聞きだしね」

フィアンマ「……これ以上広めないようにしろ。あと……少し考えさせてくれ」

オリアナ「ええ。お姉さんはお兄さんの判断に従うわ」ポチポチ


フィアンマ(……くそ)

フィアンマ(ここでアウレオルスを止めれば、俺様はインデックスのことを完全に見捨てたことになってしまう)

フィアンマ(今までのことなら、魔術が失敗する恐れもあったから使うのを断念しただけだと言い訳がつく)

フィアンマ(それでも、自分が出来ることはしたのだから仕方がないと無理矢理諦めることもできただろう)

フィアンマ(それに、インデックスはもう記憶をどうにかする気の無い俺様じゃなく、アウレオルスの方を頼りにするはずだ)

フィアンマ(待ってるとか言っていたが、その表情は俺様を傷つけないためのものだったことも知ってる)

フィアンマ(だというのに、俺様はアウレオルスを止めなくてはならない)

フィアンマ(インデックスを完全に絶望させなくてはならない)

フィアンマ(俺様の決めた平和のために一人を犠牲にしなくてはならない)


オリアナ「お兄さん、あくまでもお姉さんの意見だけど、できるんなら隠秘記録官のお兄さんは止めた方がいいわ」

オリアナ「お姉さんって割と非情だから、ローマ正教なんかどうでもいいけど、知り合いがより多く助かってくれた方がいいの」

フィアンマ「インデックスもローマ正教もというのはワガママだということはもう分かった」

フィアンマ「だから、ローマ正教を選んだ俺様はインデックスに恨まれようと、この道を行かなくてはならない……」

オリアナ「お兄さん、お姉さんも手伝うわよ?」

フィアンマ「お前はインデックスのために食事の準備でも手伝ってろ」

フィアンマ「アウレオルスを邪魔することはインデックスの希望を切り捨てることだ」

フィアンマ「だが、それは禁書目録を道具ではなく、人間として扱ってしまった、情を捨てて接することができなかった俺様の授業料のようなもの」

フィアンマ「二度と同じことを繰り返さないための戒めといってもいい」


フィアンマ「ということで後は任せたぞ」タッ


オリアナ「なーんでそこまで自分に圧をかけたがるかなぁ」

オルソラ「あれ、フィアンマさんはどうしたのでございますか?」

オリアナ「さーねー? お手洗いでも行ったんじゃない?」

オルソラ「はぁ……」

オリアナ「お兄さんのことが気になる気持ちはわかるけど、オルソラちゃんは料理に集中しないと」

オルソラ「そ、そうでございますね」

オリアナ(……お兄さん、ちゃんと本命ちゃんを守りなさいよね)

ここまでですー!
フレメアは気付かなかった


コンコン

アウレオルス「む、誰だ?」

フィアンマ『俺様だ』

アウレオルス「ああ……」

フィアンマ『インデックスのことで相談があるんだが、少しいいか?』

アウレオルス「ああ、入ってくれ」

ガチャ

フィアンマ「どうだ、進捗は?」

フィアンマ「俺様はダメダメなんだが」

アウレオルス「ギリギリ間に合いそうだ」





フィアンマ「まあ、そういう連絡を受けてきたのだがな」ズアッ




アウレオルス「っ!!」

アウレオルス「憤然っ、なんのつもりだ!!」

フィアンマ「この魔力量と、この右腕を見てもわからないのか?」

アウレオルス「づっ……お前もインデックスを救うつもりだったはずではっ!」

フィアンマ「悪いが俺様にはインデックス以外にも大切な人間がいるものでな」

フィアンマ「はは、こういうと気に食わない上の奴らと俺様は変わらないな」

フィアンマ「一応上の役職についてる俺様はイギリス清教徒一人よりローマ正教徒二十億を考えなくてはならないんだよ」

アウレオルス「……」

フィアンマ「インデックスとお前には悪いがはじめから本気で行かせてもらう」





フィアンマ「全力の足止めだ」




オルソラ「……フィアンマさん、遅いのでございますよ……」

オリアナ「便秘なんじゃないかしらね? もう料理出来上がっちゃうじゃない」

アックア(……何をしているのであるか? 記憶を消して戻ってくればいいだけの話なのだが)

アックア「少し見てくるのである」ダッ

オリアナ「じゃあ、お姉さんもついていくわ」タッ

オルソラ「い、インデックスさんは呼びにいかないのでございますか?」

アニェーゼ「じゃあ私が行ってきますよ。人員不足みてーですしね」

オルソラ「……そう言えば、さっきのフィアンマさん、少しおかしかったような……」

ここまでです
乙ありです


フィアンマ「……」

アウレオルス「……おい、なぜ殺さない……」ギリ

フィアンマ「インデックスが悲しむだろ」

アウレオルス「……解決策が失われたことの方が悲しむに決まってる」

フィアンマ「いや、アイツは自分の枷を取り払ったせいで、今までここで仲良くしてきた人が傷つく方が悲しむさ」

フィアンマ「例えば、自分のための術式を探していたせいで、お前が俺様に殺された、とかな」

アウレオルス「仮にそうだとしても彼女が他人のために我慢する必要などないはずだ!」

アウレオルス「当然、彼女は何も悪いことはしていない!」

フィアンマ「だな。だが、それでもローマ正教に害をなすようなお前の行為を俺様は見過ごせない」

フィアンマ「インデックスの為でもだ」


ガチャ

オリアナ「はぁ、何してるの、お兄さん」

フィアンマ「む、オリアナか。もう料理はできたのか」

アックア「そうである」

フィアンマ「……時間切れだな。もう間に合うまい」ジュウッ

アウレオルス「いや、まだ間に合う」

フィアンマ「いやいや、あと一時間くらいだぞ」

フィアンマ「だから、俺様の自分勝手で申し訳ないが、無駄なあがきはやめて、インデックスとの最後の別れをするんだな」

フィアンマ「場は設けてある」

フィアンマ「まあ、死ぬわけじゃないし、今生の別れというわけでもあるまいし、無理にとは言わないが……」

フィアンマ「……インデックスはお前に会いたがっていたということだけは伝えておこう」カツッ


ガチャ

オリアナ「あら? これは来る必要なかったかしらん?」

フィアンマ「ああ。不必要だ」

オリアナ「こういうことを片付けるのは苦手かと思ってたんだけどね」

フィアンマ「まだ片付いてなどないさ」

アウレオルス「フィアンマ」

フィアンマ「なんだ」

アウレオルス「私も行く。彼女には謝っても謝り足りないが、だからといって何もせず何も言わずに別れるのは不誠実極まりない」

フィアンマ「そうか。場所は食堂だ。さっさと行くといい」


アウレオルス「……お前の立場も言い分も、分からないわけではない」

アウレオルス「だが、私は引くつもりはない」

フィアンマ「俺様だってお前の立場も言い分も良く分かる」

フィアンマ「できればインデックスも救ってやりたかったからな」

アウレオルス「できなかったからこの結果、というわけか」

フィアンマ「ああ。恨みも憎しみも怒りも悲しみも、ぶつけたければぶつければいい」

フィアンマ「その代わり、俺様はお前がローマ正教に属しながらインデックスの枷を取り払おうとする限り、邪魔し続けるがな」

アウレオルス「……そうか。ならインデックスを救うその時までお前のことを恨むよ」カツカツ

フィアンマ「……」


アックア「……フィアンマ」

フィアンマ「アックアまで……なんなんだ」

アックア「さっきのはつまりローマ正教を抜けろと言っていたのか?」

フィアンマ「奴がインデックスを救うのならまず間違いないと信頼できるからな」

フィアンマ「それにインデックスを救うためなのなら、ローマ正教を抜けるためのサポートもするし、十字教勢力でなければインデックスの枷を壊してもイギリス清教との問題にはなるまい」

オリアナ「へえ……人任せにするの?」

フィアンマ「……そうかもな。だが、俺様もイギリス清教に貸しを作って、それを交渉材料にして、とやるつもりだ」

フィアンマ「インデックスの平穏をまもりながらな」

アックア「勝手にするといいのである」

フィアンマ「ああ、勝手にさせてもらう」

ここまで


………食堂………

インデックス「ああ! やっと来たー」

インデックス「いくら便秘だからって遅いかも!」

フィアンマ「は? 何の話だ?」

オルソラ「あれ、オリアナさんがそう言っていたのでございますよ?」

フィアンマ「いや、便秘じゃない!!」

フィアンマ「というか、食事前に下品なことを言うもんじゃないぞ」

インデックス「ぶー、心配してたんだけど」

オルソラ「……ふふっ」

フィアンマ「なぜ笑ってるんだ」

オルソラ「いえ、いつもと変わらないな、と思っただけなのでございますよ」

フィアンマ「……まあな」


インデックス「アウレオルスもー! ご飯冷めちゃうから早く座ってよ」グイグイ

アウレオルス「インデックス……」

インデックス「ぶー、そんな泣きそうな顔しないでよ」

アウレオルス「ま、漫然、ボーっとしてただけだ」

インデックス「仕方ないなー。許してあげるから座って!」

インデックス「フィアンマはこっち!」

フィアンマ「あ、ああ……」

インデックス「私の隣だよ」

フィアンマ「……俺様がそんな特等席でいいのか?」

インデックス「私がいいって言ったらいいの」

フィアンマ「それなら……」スタ


アックア「なら、私はそのとなりで」

オリアナ「なら、お姉さんはさらにそのとなりで」

オルソラ「でしたら私はオリアナさんのとなりで……」

アニェーゼ「私もインデックスちゃんの隣……げふんげふん」

オルソラ「……あの、インデックスさん」

インデックス「んー?」

オルソラ「立食会にしてはいかがでございますか? さすがにインデックスさんには負担が大き過ぎるので、座っててもらいますが」

インデックス「ううん、私もみんなとたって歩き回って、最後の挨拶したいかも」

インデックス「オルソラ、お願いしていいかな?」

オルソラ「ええ、みなさんも手伝ってもらもらうのでございますよ?」ニコ

アニェーゼ「お、オルソラ、ありがとうございます」

フィアンマ(ふむ、ナイスオルソラだな)


………………………

インデックス「え、乾杯?」

アウレオルス「ああ、主役の挨拶だ」

インデックス「……オレンジジュースでもいいのかな?」

フィアンマ「構わないさ。俺様もよいたい気分じゃないから、オレンジジュースにしておくぞ」

アウレオルス「なら私も……」スッ

インデックス「……二人ともありがと。それじゃあ」

インデックス「乾杯っ!」


「「「乾杯!」」」

保守ありがとうございます。
酉忘れてしまったので、このスレのどこかでミスってしまったこの酉でいきます。
遅くなってすみません……


インデックス「うまうま……やっぱりオルソラの料理は美味しいね」ニコニコ

フィアンマ「だな。俺様もそう思う」モグモグ

アウレオルス「……当然、私もだ」

オルソラ「まあまあ確かに美味しいのでございますよ……」

オリアナ「いや、オルソラちゃん、あなたのことよ?」

オルソラ「と、いうことは自画自賛してしまったということでございましょうか」

オリアナ「良いんじゃない? 謙遜しすぎるのも良くないし」

オルソラ「なるほど……」コクコク

アックア(それでいいのであるか?)


フィアンマ「おい、オルソラ」

オルソラ「なんでございましょう?」

フィアンマ「美味いな、みんなで食べる食事は」

オルソラ「……そうでございますね。最後くらいは笑顔で別れたいとはインデックスさんらしいのでございます」

オルソラ「……しかし、私としては私の料理をあんなに美味しそうに食べてくれる方が居なくなってしまうなんて……寂しいのでございますよ」

フィアンマ「皆そうだろうよ。俺様でさえ寂しいさ……自分のせいだが」

オルソラ「……それは皆のことを考えての判断でございましょう?」

フィアンマ「……それが正しかったのか、俺様にはまだ分からないがな……」


アニェーゼ「あ、あの、インデックスちゃん」

インデックス「アニェーゼ? どうしたの? 震えてるよ?」

アニェーゼ「っ、い、今までありがとうございました!!」ポロポロ

インデックス「え、そ、な、泣かないで欲しいんだよ……」ナデナデ

アニェーゼ「すまねぇです……でも、寂しいんですよ……」ポロポロ

インデックス「ううっ……ずっ、もう……お別れは笑ってが良かったのに……」ポロポロ

インデックス「アニェーゼのばかぁ」ポカポカ

アニェーゼ「うう……本当はもっと遊びたかったんですからね?」ポロポロ

インデックス「……また遊びに来るから。記憶なくなってても仲良くして欲しいな」

アニェーゼ「もちろん、もちろんです!」


ヴェント「……」

オリアナ「あら? なんでそんなところでボーっとしてるの?」

ヴェント「いや、特に理由はないけど?」

オリアナ「……ちゃんとインデックスちゃんと話しとかないと後悔すると思うけど?」

ヴェント「……柄じゃない」

オリアナ「そう? インデックスちゃんは喜ぶんじゃないかしらね?」 

オリアナ「もちろん強制はしないけど」

ヴェント「……はあ、行くか」


インデックス「アニェーゼえええっ」ギュー

アニェーゼ「インデックスちゃああああんっ」ヒシッ

ヴェント「……涙のお別れのところ悪いけど、私もいいかな?」

インデックス「ヴェントまで……わざわざ話しかけに来てくれるとは思ってなかったんだよ」

ヴェント「散々好きなだけ振り回しといて突然居なくなるなんてズルいもんだ」

アニェーゼ「なっ、インデックスちゃんだって辛いんですよ?」

インデックス「アニェーゼ、ごめんね、少し話させて」

アニェーゼ「……」


ヴェント「……柄じゃないけど、アンタがいなくなんのは悲しいんだ」

インデックス「……ヴェントもそう思ってくれるんだね」

ヴェント「……あんだけ振り回されたからね」

インデックス「うん、ごめんね、嫌だったかな?」

ヴェント「いや、小さな時にこんな経験がしてみたかったもんだ」

ヴェント「……また来たら振り回してもらえるか?」

インデックス「うん、記憶なくてもまた振り回しちゃうよ」ニコ

ヴェント「……それは楽しみだね」


フィアンマ「……」ジ-

フィアンマ「こういうのを見ているとより思うんだ、俺様の判断は正しかったのかとな」

オルソラ「あまり自分だけに責任を押し付けないで欲しいのでございます」

フィアンマ「俺様の独断だから仕方が無いさ」

ギイイイッ

フィアンマ「ん?」チラリ

ステイル「……イギリス清教の使いの者だ」

ステイル「禁書目録、正式名称Index-Librorum-Prohibitorumの引き渡しを頼む」

アウレオルス「……」ギリッ

フィアンマ「……ああ、分かった……」

ここまで
乙、保守ありです!


フィアンマ「……すまない、インデックス」

インデックス「うん、大丈夫」

インデックス「皆のおかげで最後のお別れもきちんとできたから」ウルッ

ステイル「……こちらも本来の期日より長く待っているのだから早くしてもらえるかい?」

ステイル「彼女のリミットは刻一刻と近づいてるんだ」

アウレオルス「……必然、インデックスはどうなるんだ」

ステイル「……一通り原典は覚えさせたから、僕たちが管理……いや、保護することになる」

ステイル「安心してくれ、この子に非人道的な事をするつもりはない。できる限りの自由も保証する」


フィアンマ「……あの女がそれを認めるとは思えないがな」

ステイル「……かもしれない」

ステイル「だけど、そうなったら僕はできる限りの抵抗はさせてもらう。罪のない女の子をいじめるのは趣味じゃないんだ」

フィアンマ「……くくっ」

フィアンマ(このガキも禁書目録を道具として見れない口か……)

フィアンマ(まあ、仕方があるまい)

ステイル「何がおかしい」

フィアンマ「いや、失礼。俺様と貴様はよく似ているらしい」

ステイル「……」

スタスタ

フィアンマ「……せいぜい情が移らないよう気をつけるんだな」ボソッ


ステイル「お前は一体……」


フィアンマ「そら、さっさと連れていけ」ドンッ

インデックス「フィアンマ!?」

フィアンマ「……さっさとしろ。お前の荷物はもう下の奴らにまとめて外に出させてある」

インデックス「そっか、手間かけさせてごめんね」

フィアンマ「……ふん」

アニェーゼ「インデックスちゃん、記憶なくなっても遊びに来て下せぇよ!!」

ヴェント「ま、いつでも待ってるから」

オルソラ「ご飯作って待ってるのでございますよ」

アウレオルス「必然、また会おう」

インデックス「……うん、みんな、ありがとう」


ステイル「それじゃあ……」

インデックス「みんな……バイバイ」ニコッ

ステイル「行くぞ」

インデックス「うん……」

インデックス(フィアンマは何も言ってくれないのかな……)

インデックス(いや、わがままはダメなんだよ……)


フィアンマ「インデックス!!」

インデックス「フィアンマ?」クルッ

フィアンマ「俺様たちはいつまでも、いつまでも待っているからな!!」ポロポロ

フィアンマ「必ず! 必ず遊びに来るんだぞ!!」ポロポロ

インデックス「うん! また絶対に来るから!!」ポロポロ

ステイル「……行くよ」グイ

インデックス「うん、もう大丈夫」

インデックス「みんな待っててくれるから」

乙ありです。
駆け足なんてもんじゃないですが、インちゃん退場です。


………食堂………


オリアナ「おはよう、オルソラちゃん」

オルソラ「おはようございます」キョロキョロ

オリアナ「お兄さんなら部屋で落ち込んじゃってるわよ」

オルソラ「そ、そうでございますよね……」シュン

オリアナ「ああ……オルソラちゃんまでテンション下げないでちょうだい。ただでさえみんなテンション低めなんだから」

オリアナ「それに、ご飯食べたらまた励ましに行くから、ね?」

オルソラ「ええ、しかし落ち込むのも無理はないのでございますよ」

オリアナ「まあね。お兄さん、らしくないくらいインデックスちゃんには良くしてたし」

オルソラ「……アニェーゼもインデックスさんとはかなり仲良くしてたようで、なかなか堪えてる様子でございました」

オリアナ「ヴェントさんもでしょう?」

オリアナ「挨拶してみたけど返す気力もなかったみたい」


オリアナ「……知らない間にインデックスちゃんは大事な仲間になってたってことなんでしょうね」

「そうであるな」

オルソラ「アックアさんでございますか」ビクッ

アックア「驚かせたのなら悪かったのである」

オリアナ「あら? なんで戻ってきたの?」

アックア「攻撃までされたからな」ハア

オリアナ「あまり無理やり引っ張り出すべきじゃないでしょ、こういう時は」

オルソラ「どうしたのでございますか?」

オリアナ「聖人のお兄さんがお兄さんのことを叱咤してきたらしいんだけど、攻撃されたから仕方がなく帰ってきた……でいいのよね?」

アックア「ああ」


アックア「正直奴がここまで精神的に引きこもることは初めてだからな」

アックア「無理に引っ張り出す必要はないが……」チラリ

オルソラ「どうしましたか?」

アックア「……奴もただの引きこもりではなく、周りの人間にも影響を与えるようになってきたから、引きこもらせるわけにはいかないのである」

オリアナ「随分他人中心の理論ねえ」

アックア「仕方が無いだろう。インデックスほどではないにしろ、奴も変わってからは人に慕われるようになってきたのである」

アックア「だというのに、また引きこもっていたら皆の士気が余計に下がる」

アックア「ゆえに無理してでも普段通り振舞ってもらう必要があるのである」


オリアナ「まあ、そうよねー」

オリアナ「お姉さんも実際思ってたよりメンタル来てるし」

オルソラ「……しかし、フィアンマさんもインデックスさんがいなくなったことを悲しむ時間くらいは……」

アックア「それすら許されないのが組織の上に立つ者の宿命である」

オルソラ「……」

オリアナ「でもなんだかんだで一日くらい食べてないのはまずいと思うのよね」

アックア「……その程度なら問題ないと思うが? 引きこもっている方がよっぽど問題である」

オルソラ「……え、どういうことでございましょう?」

オリアナ「昨日の昼は数口しか食べてなかったし、夜は引きこもりだし、朝も引きこもってるじゃない?」

オルソラ「……」


オリアナ「あ、そうだ! オルソラちゃんが行けばお兄さんも開けてくれるんじゃない?」

アックア「安直な考えであるな」

オリアナ「そうね。でも食べ物を持っていくついでって体でオルソラちゃんが行けばお兄さんは追い返せないでしょ」

オリアナ「で、慰めてくれば完璧ね」

オルソラ「……行くのでございますよ」

アックア「じゃあ、ついでに引っ張り出すのも頼むのである」

オルソラ「……フィアンマさんが嫌がることはしないのでございますよ。ただ話してくれるならそれを聞くだけでございます」

オルソラ「あの方は自分で乗り越えられる方だと信じてますから」

ここまでです。
乙ありです!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom