男「息子を一人置いて海外に行く両親とかありえなくね?」 (27)

父「突然で悪いが、オレと母さんは明日から海外へ行くことになったから」

男「……は? どのぐらい?」

父「ん~……未定」

男「未定て……」

母「というわけで、明日からは一人暮らしを満喫してね」

男「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

男「息子を一人置いて海外に行く両親とかありえなくね?」

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母「どうして?」

男「どうしてって、だって俺まだ高校生よ? 未成年よ?」

男「フツーなら俺も連れてくとか、あるいは親類の家に預けるとか、そういう話が事前に出るもんじゃないの?」

男「仮に俺が一人暮らしするのがベストだとしても、突然海外行きまーすなんてありえないだろ!」

母「そぉう?」

男「そうだよ! 色々ときっちり根回ししてから行くもんだろ!」

男「下手すりゃ近所でウワサになっちまうよ……」

男「最近あそこの子の両親、見ないねえ。もしかしてあの子が殺して埋めちゃったんじゃないの? ――みたいにさ」

男「そんなのごめんだよ、俺」

父「いいじゃないか、ご近所七不思議の一つになれるぞ!」

男「そんなもんになりたかねえよ!」

父「まあまあ、これもお前のためなんだぞ?」

男「へ……?」

父「オレたちは家にいない方が、お前にとっても都合がいいんだ」

男「都合がいい……? ……どういうことだよ」

父「たとえば――」

父「オレたちがいなければ、お前のガールフレンドである幼馴染ちゃんを好きなだけ家に連れ込むことができる!」

男「なっ……!?」

母「私たちがいるとジャマでしょ? おちおちエッチなこともできないじゃない」

男「し、しねえよ、そんなこと!」

父「赤面しちゃって……我が息子ながら可愛い奴だ」

男「うるせえよ!」

父「他にも、急にわけの分からない居候が押しかけてきても安心だ!」

男「わけの分からない居候……!? なんだよそれ」

母「宇宙人とか異世界人なんかがこの家に押しかけてきても、いつでも受け入れられるってことよ」

母「私たちがいないから『こいつを住まわせていい?』って許可を取る工程が不要になるのよ。手間を省けるってわけ」

男「どういう想定をしてるんだよ、あんたら……」

父「それと、もし敵と戦う展開になっても、両親がいない方が格好がつく!」

男「敵……!?」

母「もし、あなたがすごい能力を手に入れて悪の組織と戦うことになったとして――」

母「『俺はすごい力を使って悪と戦っている! ただし毎月のお小遣いはもらってる!』じゃ格好つかないでしょ?」

母「私たちがいないことで疑似自立してれば、そんなこともなくなるしね」

男「はぁ……」

父「しかも、三食を母さんに頼らなくなれば、自炊の達人になれるぞ!」

母「そうよ、一人暮らしの男の子は料理の腕がプロ級になるものなのよ」

男「なるかなぁ……」

男「プロってそんな甘いもんじゃない気がするけど……」

父「とにかくだ。思春期の男にとって『両親』という存在はジャマなんだ! いないに越したことがないんだ!」

父「かといって他界したことにすると物語が無駄に重くなるし……」

母「家にいるけど全く描写しないって手法もあるけど、それだと色々と不自然だしねえ」

母「結局『両親が海外に行ってる』って設定がベストなのよ」

父「海外に行ってるって設定だけで、両親はすごい人なんだと思わせることができるしな」

母「『両親が北海道に行ってる』じゃ、ハッタリがきかないものね」

男「……もう反論する気も起きなくなってきた」

父「そういうわけだ! 明日からはお前一人でこの家で暮らしていけ!」

母「決して無責任とか放任なわけではないのよ。あなたのためを思って海外に行くのよ」

男「ええい、とっとと行っちまえ!」シッシッ

……

男「……本当に行っちまいやがった」

幼馴染「どうしたの?」

男「いやさ、俺のオヤジとお袋、いきなりそろって海外に行っちまったんだよ。信じられねえだろ」

幼馴染「あらら……相変わらずあんたんとこのお父さんとお母さんは変わってるわね」

男「ってことで、今日ウチに寄ってかないか? ちょっと寂しいしさ」

幼馴染「えっ、いいの? 行く行く! なんならあたしが夕ご飯作ってあげよっか?」

男「…………」

男(たしかにこういうのも悪くない……)

男(こうなったら俺も開き直って、自由にやらせてもらうか……)

……

……

……

父「あれから一年……久々の日本だ」

父「アメリカにヨーロッパ、中国にロシア、オーストラリアにアフリカに北極南極……楽しかったね」

母「ええ、楽しい一年だったわ」

父「ところで……日本ってこんなに空が暗かったっけ?」

母「あちこちを光る円盤が飛び回ってたり、奇妙な姿の兵隊が歩き回ってるしねえ」

父「!? ――なっ、なんだ、あれは!?」

父「オレたちの家が……巨大な城になってる!?」

母「しかも、お城の外壁は真っ黒に塗られてるわ……どういうことなの」

父「とっ、とにかく、息子の無事を確認しなければ!」

母「そっ、そうね!」

オ・トーコ「貴公らは……我をこの世に産み落とした二人組であったな。おぼろげながら記憶がある」

オ・トーコ「我は神聖暗黒宇宙帝国皇帝オ・トーコなり」

父「オ・トーコ……!?」

オ・トーコ「すでに我は宇宙の2/3を支配した……残る1/3もまもなく支配できるであろう……」

母「う、宇宙を……!?」

オ・トーコ「ちなみに我が最愛の妃オ・サーナにはすでに100人の我が子を産ませた……」

父「たった一年で!?」

オ・トーコ「貴公らのことは歓迎するぞ。あちらに全宇宙から取り寄せた最高級料理を用意してある」

オ・トーコ「フッハッハッハッハッハッハ……」

父母「どうしてこんなことになってしまったんだ……!」



※こうなるおそれもあるので、子供を一人きりにして長期にわたって海外へ行くのはなるべくやめましょう。





―  END ―

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