佐藤心「やっぱり女は度胸と愛嬌☆」 (29)

心「プロデューサーのはぁとに対する扱いが雑な件について」

P「なんですかいきなり」

P「俺は担当してる人についてはみんな大切に接してるつもりですよ」

心「そんなことありませんー嘘ついてますー」プクー

P「脚をぶらぶらさせない。子どもじゃないんだから」

心「これははぁとのハートが振り子のように悲しく揺れている証拠なのだ☆」

P「はあ、そうですか」

P「今日ミニスカートだから、あんまり激しく振ってると下着見えますよ」

心「………」チラ

心「っ!?」シュバッ!

P「神速でスカートを抑えつけるその速度を見て、俺は彼女の反射神経を活かしてスポーツバラエティの企画に出せないものかと思案した」

心「よくわからんナレーションつけんな! てゆーかどっから仕事のネタ思いついてんだ!」

P「ポロリもありで」

心「やるなら早めに言えよ、ガチで身体絞らなきゃいけないんだから」


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心「だいたい仕事中に急用が入って抜けるパターン多すぎ! この前の白無垢の時だって、テキトーに一言二言残しただけではぁとをボッチにして……」クドクド

P「しょうがないじゃないですか。悪いとは思っていますけど、別にわざとじゃないんだから」

心「そうだけどさぁ……ほら、もっと言い方ってものが――」

P「あ、電話だ。すみません、この話はあとで」スタコラサッサ


心「ほら、ね? たとえば、急に抜けちゃった埋め合わせに食事とか……♪」モジモジ

心「って、いつの間にかいねーし!」

心「もう怒った! 本気で怒った!」プンプン

心「本気で怒った!」

麻理菜「ああ、そう」ペラ

心「怒ったったら怒った!」

麻理菜「そう」ペラ

心「あーもうマジで怒ったね☆ これは大マジだね☆」

麻理菜「ふーん」ペラ

心「………」

心「お願いだから話聞いておくれよ~おねーちゃーん」ワーン

麻理菜「最初からそう言えばいいのに。あとおねーちゃん言うな」

麻理菜「なるほど、そういうこと」

麻理菜「扱いが雑、ね……そうなの?」

心「そうなの! ったく、こっちが多少芸人気質だからって失礼しちゃうぞ♪」

麻理菜「自分から芸人属性持ちだと認めていくんだ……」

麻理菜「でも、途中で急用が入っちゃうのは故意じゃないのよ? そんなに怒らなくても」

心「あんだけ急用が入るってことは普段の仕事量が多すぎるってことの証明でしょ? もうちょっと自分の身体を労われっての、まったく!」プンスカ

麻理菜「……あ、そういう気遣い方面で怒ってるんだ」

心「………あ」

心「も、もちろん単純にムカつくっていうのもあるぞ☆」

麻理菜「やさしいねえ、心は」ニコニコ

心「うぅっ……違うからな! ムカつくが9……8割くらいだから!」

麻理菜(この子、私と同い年とは思えないくらいかわいい……というか、イジリがいがある)

P「ただいま戻りましたー」

麻理菜「あ、Pくん戻ってきた。じゃあ私は用があるからこの辺で」

心「えっ!? ちょ、マリナル!?」

麻理菜「Pくん、私ちょっと外出てくるから。レッスンまでには戻るね」

P「はい、わかりました」

麻理菜「それと、お姫様がご機嫌斜めだから、ちゃんとフォローしておくこと」

P「はい?」

麻理菜「じゃあ」


ガチャ、バタン


P「お姫様……はて、いったい誰のこと――」


心「むすー」

P「……ああ、なるほど」

心「怒ってるわー、マジ怒ってるわー☆」ジトー

P「これほど直球な『怒ってますアピール』は初めて見る」

心「こんな時はスイーツでも食べてスッキリしたい気分だわー」チラッチラッ

P「しかもさらっと交換条件出してるし」

心「これが大人の怒り方ですー」

P「大人というか、あざといというか」

P「まあいいや。スイーツ求めてるならちょうどいい」

心「え?」

P「これ、駅前の店のケーキです。みんなで食べようと思っていろいろ買ってきたんで、心さんが最初に選んでいいですよ」

心「な、なんでそんな都合よく」

P「いや……俺も、心さんの時だけ現場抜けてるのは悪いと思っていたので。お詫びのしるしとして買ってきました」

P「バッチリ要望に応えられたあたり、俺たち相性いいのかもしれませんね」

心「………あ、ありがと」パカッ

心「あ、これ食べたかったやつ……うれしい♪」

P「これで機嫌直してもらえますか?」

心「……うん、許す!」ニコッ

心「なんか先読みされたみたいで、ちょっとだけムカつくけどな☆」

P「そんなぁ」

心「冗談、冗談♪」

心「『相性がいいのかも』か……ふふっ」ニコニコ

P「………」ジーー

心「ん? どした?」

P「やっぱり心さんはいい笑顔するなー、と」

P「そういう顔が一番似合いますよ」

心「っ……な、なんだよなんだよ♪ いきなりはぁとを口説く気かー?」

P「別にそういうつもりじゃないですけど……怒っているよりは、うれしそうにしている顔がいいっていうのは普通でしょう」

P「特に心さんのは魅力たっぷりですから。アイドルやっていくうえで大きな武器になるくらいの」

心「そ、そうかな……」テレテレ

P「ま、怒ってる顔も怒ってる顔でいいですけどね」

P「さっきまでの顔とか、膨らんで風船みたいでおかしかったですし」ハハハ

心「なんだとぉ? プロデューサー、やっぱり反省してないだろ☆」

P「あ、また怒らせちゃいましたか」

心「怒った怒った! デリカシーのない男にボディブロー食らわせたい気分♪」

P「こわっ。すみません許してください」

心「だめー、許しませんー♪」

心「許してほしいならプロデューサーのぶんのケーキもよこせ☆」

P「えー? 嫌ですよ、俺も食べたいと思ってたのに」

心「むー! ケーキとはぁと、どっちが大事なの?」

P「………」ウーム

心「本気で悩むな☆」グイグイ

P「うわっ、服引っ張らないでくださいよ」

麻理菜「ただいまー……っと」


心「プロデューサーはいっつも乙女心ってやつがわかってない!」

P「乙女……?」

心「そーいうところがわかってないって言ってんだ♪」

P「そんなこと言い出したら、心さんだって男心わかってないじゃないですか」

心「なにー!?」

P「なにおう!」




麻理菜「また喧嘩してる……」

麻理菜「けど、どっちも笑ってるし問題なさそうね」ウフフ

別の日


美優「Pさん」

P「美優さん。どうかしました?」

美優「これ……お菓子を焼いてきたんですけど、よかったらもらっていただけないでしょうか……」

P「えっ、いいんですか?」

美優「Pさんには、いつもお世話になっていますから……そのお礼です」

美優「といっても、このくらいではお礼にもならないと思いますけど……」

P「そんなことないですよ! うれしいです」

P「今いただいてもいいですか」

美優「もちろんです」

P「では早速……おお、おいしい」

美優「ほ、本当ですか?」

P「本当です、ありがとうございます」

P「これならいくらでも食べられそうだ」ガツガツ

美優「うふ……気に入ってもらえたようで、よかったです」

美優「あまり一気に食べ過ぎないようにしてくださいね」ウフフ




心「ムムム……!」グヌヌ

麻理菜「口がへの字になってるよー」

心「なにあの愛嬌。見てるこっちも思わず嫁にもらいたくなるわっ!」

麻理菜「あの人は本当、色気と可愛げを兼ね備えた美女よね」

心「プロデューサーもデレデレしちゃって……はぁとが手作りお菓子渡した時と反応が違うぞ☆」

麻理菜「あんなにデレデレしてなかった?」

心「してなかった。フツーに『あっ、ありがとうございます』だけだった」

麻理菜「ちなみにどんな感じで渡したの」

心「『受け取れぇ♪ はぁとのスウィーティーなご褒美を☆』って感じで袋を投げつけた」

麻理菜「それは渡したあんたにも問題があると思う」

麻理菜「もっとおしとやかに渡せば、Pくんの反応も違ったと思うけど」

心「それはそうかもしれないけど……」

心「だって、ほら……面と向かって静かに渡すと、照れるじゃん……」イジイジ

麻理菜「普段グイグイいってるくせに何言ってるんだか……」ハァ

麻理菜「いい? 女は度胸! 肝心なところでヘタレてたらダメ!」

心「ぐぬぬ、耳が痛い……!」

麻理菜「本気で獲物を捕らえたいなら、なおさらね」

心「………本気で」

麻理菜「そ、本気で」

麻理菜(本当はアイドルがこんな会話しちゃいけないんだけどね……ま、心のモチベーションに関わる問題だし)

麻理菜「同郷の友達として、私はあなたを応援してあげる」ニコ

心「本気で……獲物……手に入れる……」ブツブツ

麻理菜「……お姉さん渾身のデレ台詞、聞こえてないし」

夕方


麻理菜「それじゃ、また明日」

P「お疲れ様です。気をつけて帰ってください」

麻理菜「Pくんもお疲れさま。あんまり遅くならないようにね」


ガチャ、バタン


心「………」

P「心さん? みんな帰りましたけど、まだ残ってるんですか?」

心「うん……ちょっと考え事してるから、それがまとまったら帰る」

P「そうですか。俺ももう少し作業残ってるんで、それが終わるまではいいですけど」

心「サンキュ♪」

P「……俺が力になれるようなことなら、いつでも相談してくださいね」

心「うん。多分それは一生ないと思う」

P「?」

P「………」←パソコンで作業中

心「うーん……」


P「………」カタカタ

心「度胸と愛嬌……どうしたらいいかなぁ……」


P「……もうちょっと頑張れるか」カタカタ

心「どうしたら………」

心「あんなこととか、こんなこと……」ウトウト






P「……よし、終わった!」

P「心さん、そろそろ帰りましょうか……って」


心「すぅ………」グッスリ

P「寝てる……ここのソファー、座り心地いいもんな」

P「毎日レッスンしてるし、疲れが溜まってるのかな……」

心「……ぐぅ」

P(……しかし。こうして寝顔を見ていると、改めて美人だとはっきりわかる)

P(普段はかなーり元気でアグレッシブだから忘れがちだけど……きれいな人だ)

P(このままずっと見ていてしまいそうな……)

P「………」ジーー

心「すー……すー」



心(え、なにこの状況)

心(うとうとしていたと思ったら、いつの間にかプロデューサーがこっちをガン見している件について)

心(なにこれ、なにこれ? めっちゃくちゃ照れるっていうか、どうしたらいいかわかんないんだけど!)

心(今目が覚めたフリして起き上がる? でもでも、このまま待ってたらプロデューサーのほうから何かしらのアクションがある可能性も)

心(ていうか、そもそもコイツはなんではぁとの寝顔に夢中なの? 惚れてるの? だったらめっちゃうれしいけど!)

P「……綺麗な顔だな」

心(き、きれい……!?)キュン

P「黙ってれば」

心(余計なお世話だコノヤロー☆)

P「あれ、今顔が引きつってたような」

P「………」

心(……いつまで見てるつもりなんだろ。もう10分くらい経ってる気がする)

心(こんなの、相当な暇人か……それか……見惚れてるか、しかなくない?)

心(プロデューサーは仕事忙しいから暇じゃないし。だとしたら……)

心(はわわわわ……!)



心(も、もしかして。このまま寝顔にそっと口づけなんて、ロマンチックな展開が)

P「………」

心(来い、来い! ロマンチックな何かが来い!)

P「………」

P「………」



P「そろそろ起こすか」

心(なんでだーっ!)


がしっ


P「えっ」

心(しまった、思わず腕をつかんじゃった!)

心「あ、えっと……」パチッ

P「あー……もしかして、起きてました?」

心「………うん」

P「す、すみません。俺、ちょっとぼーっとしてて」アタフタ

P「か、帰りましょうか。もう外も暗いし」

心「え……」


心(さ、散々やきもきさせといてこれで終わり?)

心(そんなことが許されるだろうか、いやない)

心(女は度胸と愛嬌……愛嬌はさっきの寝顔で見せつけたはず)

心(だったら、あとは)

むんず


P「……心さん? あの、そろそろ手を離してもらえると」

心「……コンジョーなしめ」グイッ

P「うわっ!?」

心「そっちがそのつもりなら、こっちから行ってやるんだからな……!」グググ

P「ちょ、なに顔近づけて……まさか」

心「覚悟決めろ☆」

P「だ、ダメですよ! 俺はプロデューサーで、あなたはアイドルで」

心「………」


心「……今だけ、全部忘れて」

P「心さん……」

P「………」ゴクリ

心「プロデューサー……」




美優「すみません。私、ここに忘れ物しちゃったみたいなんですけど……」ガチャリ



P「」

心「」


美優「………」


美優「し、失礼しました……っ!」ダダダー!


心「ちょ、ちょっと待って美優ちゃん! これは違うの!」

P「無言で逃げないでくださいー!」

翌日


麻理菜「なるほど。私が帰った後にそんなことが」

麻理菜「それで朝から、美優ちゃんがPくんに恨めしげな視線送ってるのか」


美優「………」ジトー

P(仕事しづらい……)


心「なんか、保たれてた均衡が崩れた感が半端ないんだけど」

麻理菜「………」

麻理菜「ガンバレ!」ポン

心「……ま、それしかないよね♪」

心「こんなんじゃキスは遠いかなーとか弱音吐いてる場合じゃない!」

心「やってやる、やってやるぞ!」グッ




麻理菜「次回、シュガーハート荒野に散る」

心「変なナレーションつけんな☆」


おわり

読んでくれた方々に感謝を
ところどころ某エロゲOPリスペクトです

前に書いたSS
モバP「桐生つかさは意外と……」
モバP「桐生つかさは意外と……」 - SSまとめ速報
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