【DARIUS BURST】名もなき戦士たちの物語【CS発売記念】 (38)

ダライアス暦201年 
惑星ダライアスにベルサー襲来
ベルサーを撃退するものの、ダライアスは死の星と化す
多くの人類は惑星オルガや惑星ヴァディスに移住を開始する


ダライアス暦1642年 
惑星ヴァディスに移住した人類の一部が、故郷である惑星ダライアスへの帰還作戦を開始する


ダライアス暦1813年 
ダライアスから太陽系に移住した人類の子孫が、ベルサーに襲われる。救難信号をうけた惑星オルガの民は救出作戦を開始した

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ダライアス暦1904年

人類はベルサーのウイルス攻撃により、亜空間ネットワークを寸断された

ネットワークへリンクしていた機体は情報伝達手段を失い、宇宙軍は抵抗する間もなく壊滅してしまう

唯一、惑星ダライアスにおいてバースト機関を搭載したシルバーホークだけが難をのがれ、2機の新型機は人型AI端末であるTi2、テストパイロットのリーガ・プラティカに託された

ネットワークのサポートを受けられない孤立無援の状況で、シルバーホークバーストは敵部隊へと戦いを挑む

2人の英雄は見事勝利を収め、惑星ダライアスは無事解放された




そして…ダライアス暦1910年。


鮮血に染まる空
降り注ぐ光の雨が日常を焼き払う

無敵と信じていた伝説達を
頭上の悪魔は次々と落としていく…

何もかも失ったこの日を、決して忘れはしない



あの日以来目覚めが良かったことは無い
悪夢を振りほどく様に頭を振る

「今日で最後か」

独り言を言いながら身支度を始める
今日は、私達第7期訓練兵の修了式だ
いよいよ実戦配備。ここまでの道程は長く険しいものだったが…
復讐の為ならと思うと苦痛さえ喜ばしいものだった

仇を取らなければならない。あの紫の戦艦を落として
いつか、必ず






いつも通り、セットしていたアラームが鳴る前に身支度を始める。…最後までこのアラームに起こされることはなかった

そしていつも通りモニターがONになる


B「おはようA。いつもより機嫌が良さそうね?」

A「おはようB、機嫌?あぁいいさ。今日でお前との勝負に決着がつくからな。私の勝ちでだ」

B「最後は私の勝ちよ、きっと」

A「言ってろ」

B「今日はどうするの?式の後はフリーだけど」

A「いつも通りさ。これからって時に遊んでいられない」

B「またシミュレーターとデートするつもりかしら?だめよ、今日ぐらい…最後ぐらい付き合いなさい。Cなんてきっと泣いて喜ぶわ」

A「大袈裟だろ…」

B「ともかく!今日は三人で過ごすから。よそに浮気しないでね?」

A「はぁー…俺に浮気する相手がいないのはよく知ってるだろ?わかった、付き合うよ」

B「ありがとうA。それじゃあ朝食でね」


そう言うとBは通信を切る
Bは、小柄で整った顔立ちの少女だ。友達も多い
Bと私は…所謂ライバルだ。成績トップを争っているうちにいつの間にかよく一緒にいるようになった
お互いに高め合える良きライバルだ
話をしながら身支度を済ませた私はBの待つ食堂に向かう

食堂に向かいBとCを待つ
Cは私と同じコロニー出身でBよりも長い付き合いの男だ
大きな体からは想像できない臆病な性格だが、一度だけ私とBを負かしたことがあり、平均的な順位は124名中12位…良いパイロットと言えるだろう

壁にもたれて待っていると2人がやってきた


C「話は聞いたぞ!今日は遊び倒すからな!」

A「はぁ…朝からうるさいぞ」

C「お、おうすまん」

B「おはようA」

A「おはよう…ってさっきも言っただろ」

B「まぁいいでしょ?…言ってもC泣かなかったわ」

A「みたいだな」

C「なんの話だ?取り敢えず朝飯食べながら予定を決めよう!」

朝食を取って席に座る。Cは見た目の通りよく食べ、そしてBは小食だ

A「でもよかったのか?B」

B「何が?」

C「他に誘われてるんじゃないか?俺たちの方に来ちゃってもよかったのか?」

B「あぁ…いいの。向こうに行っちゃうと大人数になるし、私苦手だから」

A「ふーん…」

B「ねぇ嬉しい?嬉しいでしょ?」

A「あー嬉しい嬉しい。…午後からなんだが少しだけ時間が欲しい」

B「…お墓参り?」

A「ああ」

C「俺も行こうと思ってたんだ。悪いけどB、少しだけ待っててくれ」

B「私も付き合うわ」

C「しかしだな…」

B「一人だけ置いて行かれるのは嫌よ」

A「…すまんな」

B「それにAのご両親にちゃんと『私が勝ちました』って報告しないといけないから」

A「悪いけどその報告はきっとできないぞ」

C「どっちが勝つかねぇ…」

A「よし私が勝ったら一つおごってもらおうか」

B「いいわ。今日は財布、いらなさそうね」

A「いってろ」

C「はぁ…最後までこれだ」

朝食を済ませた後、一度部屋に戻り式の準備を始める
荷物は先日送ったので部屋の中にある荷物は鞄ひとつに収まるくらいだ
空っぽの部屋を見ていると、今の私に残されたものなんて何もない、そんな考えが頭をよぎる

身支度をしながらふと、あの日の事を思い返す

私の住んでいたコロニーがベルサー軍に襲われたのは4年前の事だ
学校で、いつも通り友達と談笑していた時だった。突然コロニー中にサイレンが鳴り響き、避難するようアナウンスが流れ始めた

私達は困惑しつつも避難を始めた。後から聞いたことだったが、コロニー外での戦闘は開始から僅か30分程度で自軍が壊滅状態になったらしい

敵戦艦が港を食い破って攻撃を始めたのはサイレンが鳴ってからすぐだった
レーザー砲が放つ無数の光が人や街を焼いていった
シルバーホーク部隊が攻撃を加えるが殆ど効果は無く、敵戦艦は次々とシルバーホークを落としていった

脱出艇に向かう途中、着弾したミサイルの爆風に巻き込まれて私は意識を失い、次に目を覚ましたのは病院のベットだった

両親を亡くした私は、惑星スカラに住む叔母のもとに預けられた。叔母には何度も止められたが、私はその年に軍に志願した
訓練生となりCに会えた時は思わず泣いてしまった。Cはあの日、この星にある祖母の家に来ていた為難を逃れたそうだ



身支度が済んだ。私は昔のことを思い出すのを止め、鞄を持って部屋を後にする

あの日コロニーを襲った戦艦の事を調べたが、データは無かった

修了式も進み、校長からの挨拶を残すだけになった。首席の発表と配属司令書が入った封筒が手渡される

いよいよだ…Bは今頃どんな顔をしているのだろうか?

校長「今期の訓練生諸君、君たちのスコアを見させてもらった。ひとまず、よくやった……と言っておこう。この成績ならば、すぐにでも実戦に出られるだろう」

校長「敵の侵攻は激しく、状況は乏しくない。諸君らの敗北はすなわち、この星の敗北である」

校長「諸君らには早いもので明日、そうでなくとも近日中には出撃命令が下るだろう。ここにいる何人が生き残るか…恐らくそう多くはないだろう」

校長「各員の奮闘を祈る」

校長「首席の発表をする。第7期訓練生主席は───」

式が終わり教室に移動する。教室での教官の話は全く耳に入らなかった
解散がかかり、それぞれが動き出すが私は動けなかった
結果として…私はBに負けた。しかし今はどうでもいい
私の配属先は…
封筒を開け中の配属司令書を取り出す…





中に入っていた紙は────白紙だった

B「A?どうしたの?すごい顔してるわ」

C「はぁ~お前にかけてたんだけどなぁ…大負けだよ」

A「…B、お前の配属先はどこだ?」

B「まだ見ていないわ」

C「俺『ブラッククロウ』だってさ。聞いたことねえや」

A「今見てくれるか?」

B「ちょっと待って………あれ?白紙?」

A「お前もか…クソ!なんなんだよ!」

B「そんなにイライラしないで、A」

C「何かの手違いじゃないのか?それか配属先未定…とか?」

A「はぁ!?そんな訳ないだろ!!!」

B「A!少し落ち着いて」

C「わ、悪かったよ、そんな怒んなよ…」

A「いや…ごめん。私の方こそ…頭に血が上ってしまった」

C「いいんだって!それにしても1位と2位が白紙なんて何かあるんじゃないか?教官に…ダメだなみんなに捕まってる。じゃあ校長!校長のとこいってみよう」

A「校長?別に今教官に聞けばいいだろ?」

B「A、校長の所に行こう。教官が何か知ってるなら向こうから来るはずよ」

A「はぁ…わかったよ」

C「よし!いきますか~!」



B「…」

あれこれ意見を交わしながら校長室まで移動する

C「んー…二人にスペシャルミッションとか?」

B「新人二人に任せるスペシャルミッションって何?」

A「どんな司令だって完璧にこなしてみせるさ」

B「あら2位のくせに大した自信ね?っと…ついたね」

C「じゃ、俺ここで待ってるから。直接関係ないし」

A「すぐ戻る」

ノックをして入ろうと───ノックより先に扉が開く

校長「…やぁ来たね、さぁ入りなさい」

A(部屋の主がお出迎え…か。Cが当たりの可能性が高いな)

B「B訓練生入ります!」

A「同じくA、入ります!」

「初めまして、君がAだね?」

校長室の椅子に座っていたのは────
惑星スカラ軍総司令だった

A「はい!自分がAであります!」

総司令「はは、良い若さだ。…さて時間がない、本題に入らせてもらおう。かけたまえ」

A「失礼します」

B「失礼します」

総司令「ではまず…本物の配属司令書だ」

A「はい……!!ピースキーパー!!?じ、自分が、でありますか!?」

ピースキーパー隊──────
我が惑星最強のシルバーホーク部隊だ
敵との機体性能差の激しい今の状況で次々と戦果を挙げているスペシャルチームだ

総司令「そうだ。君と────」

総司令「そう、Bに穴埋めをしてもらう」

A「穴埋め、ですか?」

総司令「先日大規模な敵勢力との交戦があり、その時に4人のうち2人を亡くしてしまったのだ」

総司令「我々も"サベージファング"や"センチネル"などから引き抜こうとしたのだが……リーダが変わり者でね、どうせなら新人が欲しいと言ってきたのだ」

総司令「もちろん、君のスコアを見て決めたことだ。そこは、勘違いしないでくれたまえ。君は実戦経験こそないが、技術は素晴らしいものを持っている」

総司令「さて、ここまで理解できたかね?」

A「はい!…一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」

総司令「なにかね?」

A「2人を亡くしたのは先日とおっしゃっていましたが、なぜここまで急ぐのでしょうか?」

総司令「ふむ…それは、ピースキーパー隊にはもともとスペシャルミッションが課せられていたからだ」

A「スペシャル…ミッションですか?」

総司令「そうだ。…よし、そろそろ君の乗る新しい機体を見に行こう。ついてきたまえ」

総司令について行った先にあったのはシークレットドックだった
そこにある1機の戦闘機に目を奪われる


A「これが、俺の機体…?」

総司令「そうだ。これが君の機体」




『ネクストシルバーホークバーストだ』

ここまで


二箇所ほどAの一人称が「俺」になってますが間違いです。「私」です

総司令「君の知っているシルバーホークとは随分と違うだろう」

総司令「ネクストは、バースト機関搭載型シルバーホークの2号機で、高い安全性と安定した攻撃力を備えた機体だ」

総司令「現在のシルバーホークとは桁外れのスペックを持つこの機体は、我ら人類の母星とも言える【惑星ダライアス】から送られてきたデータを元に作られたのだ」

総司令「つい3時間程前ロールアウトし、23機が配備された。送信データを元に既存の量産型シルバーホークにも改良を加える予定だ」

A「───────!」






私の感嘆の声はドックに入り込んできた轟音で掻き消された

3機のシルバーホークがそれぞれのハンガーに着陸する。ネクストが2機ともう一つ、見慣れた形の機体────おそらくあれがシルバーホークバースト1号機なのだろう

総司令『キーパー01テスト飛行はどうだったかね?』

キーパー01『ああ、良好だ。これだけの運動性と機動力を両立させておいて操作性も悪くない…こいつがあればベルサーなど一捻りだ』

総司令『それは結構。02とともにブリーフィングルームに向かいたまえ』

キーパー01『了解』


総司令はネクストとの通信を終え私に向き直る

総司令「あのネクストに乗っているのが君の配属される部隊、『ピースキーパー』の2人だ」

A「先頭の機体は1号機なのでしょうか?」

総司令「その通り。先頭の機体はバースト機関搭載型シルバーホークの1号機、レジェンド」

総司令「パイロットを"非人間"に限定することで、機体性能を限界まで引き上げ、ネクストを超える機動力と運動性を持っている」

総司令「B、いや"ヴィーツ"専用機と言っていいだろう」

ヴィーツ…?
いやそれよりも……"非人間に限定"…?

A「い、一体何を言っているんですか…?Bは…」

総司令「さて…君達もブリーフィングルームに向かいたまえ。そこでミッションの説明と、真実を伝えよう……」

ブリーフィングルームで総司令を待つ
総司令がさっき言った言葉をBに尋ねることはできなかった
Bはいつも以上に静かで、特に会話もなく時間が過ぎていく
静寂を止めたのは扉が開く音だった


総司令「…2人とも揃っているね」

B「…」

総司令「彼女は、Ti2型アンドロイド"ヴィーツ"……人間ではない」

A「B…」

B「ごめんなさい…騙すようなことをして」

総司令「惑星ダライアスから送られてきたのはバースト機関の事や新型シルバーホークのことだけではない…」

見た目…感触や仕草、話し方。どれを取っても機械らしさなんてなかった
未だに信じられない私は不毛な質問をBに投げかける

A「本当に、機械…いやアンドロイドなのか…?」

B「…そうよ」

総司令「誤解しないように言っておくが…ヴィーツはただの人工知能ではない。人と同じように考え、同じように感情があるのだ」

困惑する私に総司令は追い討ちをかけるように真実を語り続ける

総司令「そして…Bが、もしただの人間だったなら…君はこの世にはいないだろう」


この世に、いない…?


A「そ、それはどういうことでしょうか?」

総司令「君が、コロニーでミサイルの爆発に巻き込まれた時に受けたダメージは…通常の医療行為では助かる見込みがないほど深刻なものだった」

総司令「両目と四肢、内臓の一部そして…」

総司令「脳の一部、思考や計算などを司る領域が欠損していた」




脳の……
一部………!

総司令「君の命は絶望視されていたが…一つだけ助かる方法が見つかった」

総司令「Ti2タイプのアンドロイドには、フレッシュボディを維持するためにフレッシュファクトリーと呼ばれる培養装置が内臓されており、ここで、DNAを元にナノマシンを合成して欠損した肉体を再生する事が可能だったのだ」

総司令「不安要素はあったが…無事、肉体を再生することに成功し、君は一命をとりとめた」

総司令「ただ回復しただけではない。君は…脳に組み込まれたナノマシンにより高い反射速度、計算能力及び思考能力を得たのだ」

A「…」

B「A…」



────そんなこと

総司令「…以前の君と、今の君は別人といっても過言ではないだろう」


─────そんなことは、


A「どうでもいい!!」

総司令「…!」

A「私は、ただ、復讐ができれば、それで、それでいいのです!」

私の中の、あの光景と、悲鳴…
失った物の中に私も居た、ただそれだけのことだ

総司令「少し急過ぎた、とは思う。しかし時間が無いのも事実だ。許してほしい」

A「構いません」

B「……」

総司令「では作戦の説明を彼らにしてもらおう。2人とも入りたまえ」

総司令の呼びかけに、2人の男が入ってくる

総司令「…紹介しよう。彼らがピースキーパー隊の2人だ」

キーパー01「よろしくたのむ」

キーパー02「…」


どちらもただならぬ雰囲気をまとっており、歴戦の勇士であることを実感させる

総司令「さて隊長、早速作戦の説明を始めたまえ」


総司令に促され隊長は説明を始めた

キーパー01「はい。さて…まず、現在の我が惑星の状況は最悪だ、と言っておこう」

キーパー01「4年前、惑星ダライアスとの亜空間通信が回復してから様々な情報のやり取りをしていたが…約3ヶ月前だ。亜空間通信システムがベルサー軍によりハッキングを受けダウンした」

キーパー01「これは敵の大艦隊による侵攻の前兆であることは間違いない。しかし…」

キーパー01「我が軍の戦力では恐らく敵の大規模侵攻には勝つことは難しい。敵の新型機とまともに戦えるのはつい先ほどロールアウトしたばかりのネクスト23機とレジェンド1機だけだ」

総司令「…本来ならネクストがロールアウトするのはあと2ヶ月先の予定だった。開発者には相当な無理を言ってロールアウトしたのだ」

キーパー01「今までもベルサー軍との小競り合いはあった。バースト機関を搭載していない旧型の戦艦とな」

キーパー01「しかし先日攻めてきた奴らは最新型、バースト機関搭載型だった」

キーパー01「圧倒的なバーストビームの火力に押され、多くの味方が犠牲になった」

キーパー01「なんとか撃退する事は出来たが…あれは偵察部隊だ。そう遠くないうちに大規模侵攻が始まるだろう」

キーパー01「だが、幸運なことに敵主力艦隊が駐留する惑星の特定に成功した」

キーパー01「ここにネクスト12機を送りこみ先手を打ち、8機のネクストで惑星の防衛に当たる」

A「では私たちの任務は一体」

キーパー01「我々の仕事は亜空間通信システム及びワープゲートを奪還し、惑星ダライアスへの航路を切り開き援軍を要請することだ」

キーパー01「ワープゲートは現在相当数のベルサー艦隊が占拠している。これの奪還は我々にしかなし得ないのだ」


キーパー01「作戦の失敗は惑星スカラが敵の手に落ちることを意味する…」

間が空きましたが、ここまでです

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