私はこの子に逆らうことができない。
弱みを握られている。

常務が提示したトライアドプリムスという新たなユニット。
ニュージェネを捨てるわけではないから、新しい何かをみつけてみないか　そう加蓮、奈緒に言われた。

でも私はニュージェネを、いや卯月を捨てることができない。
私は卯月に恋をしているから、彼女の側を片時も離れたくない。
そんなこと誰にも言えるわけがなく(卯月本人にも告白すらしていない。)
そんな悶々とした気持ちを抱えながら自室のベットでごろごろしていた
どうやって奈緒と加蓮に謝るか。言葉を探していた
すると、私の思考を遮るかのように加蓮から「話があるの。近所の公園まできてくれる？」というＬＩＮＥが飛んできた。
どんな言葉を尽くしても私が卯月、と未央の側を離れることはない。
しかし、加蓮が必死になっているので話くらいはしっかりときくのが礼儀だろう。
そう思い私は指定された公園に向かった。

「ごめんね、こんな時間に呼んじゃって。」
「大丈夫だよ。ちょっと暇してたし。というか加蓮一人なんだね。」
「うん、これから話すことを考えたらね。」加蓮の表情が硬い。なにかを躊躇っているようだ
「話ってトライアドのことじゃないの？」
「・・・・うん、半分は、ね。もう半分は君のことかな。」
「私の事？」
まさか卯月への恋慕がバレたのではなかろうか。だが美波とアーニャのようにアイドル同士の恋愛は黙認される。
むしろ場合によっては事務所が公認すらする。百合というやつだ。
これをネタにして揺さぶろうとでも思ったのだろうか。やれやれ、加蓮はいい子だな。
そんなことで良心の呵責を起こさなくてもいいのに。

「うん、君のことだよ。男の娘の渋谷凛くん。」

今、彼女はなんといったのだろう。男の娘？　いやいや私は正真正銘女・・・
「正真正銘女　ということにしていて正体が今までバレたことない凛。残念ね私は貴方の秘密を知っているの。」
「まって。加蓮、何をいきなり荒唐無稽なことをいってるの、私は女だよ、流石に怒るよ？」
つとめて平静を装いつつ、加蓮を詰問する。
「ごめんね。証拠提示しないとダメだよね。」
「証拠、そんなものがあるわけないじゃない。」
「凛、私貴方に会ったときいったよね？　同じ中学だったって。」
「そういえばそんなこといってたね。でもそれがどうしたの？」
「でも貴方は私の存在を知らなかった。他クラスというのもあったけど、私は病気がちだったから。」
「そう。病気がちな加蓮。アンタ今も病気みたいね。きっと疲れてるからそんなこと誇大妄想するんだよ。風邪ひかないようにね。じゃあ」
そういって公園を後にしようとする。
「まぁ、最後までききなよ凛。病気がちだから、私、保健室にはすごくお世話になったんだよね。」

思わず足をとめる。保健の・・先生、まさか・・・
加蓮がニヤァと笑った、ような気がした。

「凛。貴方の女装は完璧だったし、今でも完璧。ホンモノの女をことごとく欺いている。大したものよ。
でも、身体的なデータはごまかすことができない。協力者なしには。」
「協力者は、今はちひろさんとプロデューサー。そして当時は・・保健の先生。」
「あ、大丈夫だよ？保健の先生が口を割ったわけじゃないんだ。私が保健室で寝てる時、たまたまベッドの下にあるのをみたんだ。身体計測のときの　渋谷、男とバレないよう方法　っていうノート。」


終わった・・・・・・・・完璧に、言い逃れができない

「・・・・・私をどうするつもりなの？」
「愛しの卯月ちゃんとの時間が減るだろうけど、私と奈緒とトライアド、やってほしいな。」


卯月の事まで・・・・

「あぁ、卯月に恋してるってのは凛が男と気が付いてない他のひとも気が付いてることだから」
加蓮はコロコロと笑う。
「そう・・・」

本来なら卯月への恋慕がまわりにバレていることに動揺すべきことなんだろうけど、今は私が男だとバレたことで頭がいっぱいだった。
「まぁ、卯月と離れ離れになるわけじゃないし、ね、お願い。私と奈緒とトライアド、やらない？」
そういう彼女の表情は愉悦につつまれながらも一抹の寂しさをたたえているようにみえた・・・と思う。

北条加蓮。
私はこの子に逆らうことができない。
弱みをにぎられている。