俺「俺の会社の応接室にヤクザがやってきた」(24)

<会社>

課長「なんだね、この報告書は!?」

俺「どこか問題がありましたか? きっちり書いたつもりでしたけど……」

課長「ごちゃごちゃと色々書きすぎてて、結局何があったのかが全然分からん!」

課長「君の個人的感想など、誰も求めてないんだ!」

課長「取引先でどういうことがあったか、事実だけを書きたまえ! 事実だけを!」

俺「はい……申し訳ありません。すぐ書き直します……」

課長「まったくもう……」ブツブツ

先輩「お前、また課長に怒られたのか?」

俺「はい……報告書の書き方がなってない、と」

先輩「どれどれ」スッ

先輩「たしかに……こりゃちょっとひどいな」

先輩「今までは込み入った商談とかなかったから、我流で何とかなったんだろうけど」

先輩「本とかで、ビジネス文書の書き方をちゃんと勉強した方がいいぞ」

俺「そうですね……そうします」

先輩「お前たちの世代も、そろそろ同期同士でちょっとずつ差がついてくる頃だ」

先輩「あんまりぼやっとしてると、みんなに置いてかれちまうぞ」

先輩「お前がダメだと、俺の評価まで下がっちまう。もっとしっかりしてくれよな」

俺「はい……すみません」

俺「よし、できた! もう一度、課長に提出しよう!」

俺「先輩、課長はどこにいますか?」

先輩「課長? 今、どっかのお客さんと応接室にいるはずだけど」



社員「た、大変だ!」

先輩「どうした?」

俺「どうしたんですか?」

社員「実はさ、今応接室に来てるの、どっかのヤクザらしいんだよ!」

先輩「ええっ、ホントかよ!?」

社員「でさ、なんでも、うちの社のスキャンダルを握ってるなんて言ってて」

社員「それをネタに、法外な要求をしてるんだと!」

社員「部長と課長が相手してるけど、どうにもならないみたいなんだ」

先輩「いっそ、警察呼んだらどうだ?」

社員「だけど、下手に刺激したら、かえって泥沼に……」

先輩「だけど、このままじゃ……」





俺「……」スッ

給湯室――

俺「あ、それ応接室に持ってくコーヒー?」

女「うん、だけど怖い人が来てるんでしょ? できれば、イヤなんだけど……」

俺「だったら俺が持ってくよ」

女「え、ホント? ありがとう!」

応接室――

ヤクザ「ったく、分からねぇ奴らだな!」

ヤクザ「だから、おたくらのスキャンダルのことを黙っててやる代わりに」

ヤクザ「うちの息がかかってる企業に、おたくの製品を入れてくれりゃいいんだよ!」

課長「しかし……こんな条件では、とても受けられませんよ……」

部長「ええ、大赤字になってしまいます……」

ヤクザ「あぁん!? 今すぐ会社が大ダメージ受けるよりは、マシだろうが!」

俺「失礼いたします。コーヒーをお持ちしました」ガチャッ





課長「ん……なんだ、君か」

ヤクザ「あぁん!? だれだ、こんな時に――」

ヤクザ「!?」ギョッ

課長「悪いが、今取り込み中なんだ。すぐに出ていきたまえ」

俺「……」スタスタ

俺「ところで、そちらの方に質問なのですが」チラッ

ヤクザ「!?」ギクッ

課長「なっ!?」

部長「コ、コラッ! なにをしとるんだ、君は! 下がりなさい!」

俺「弊社には、どのようなご用件でいらしたのですか?」

課長「お、おいっ! 君の出る幕は……!」

ヤクザ「いや……あの……えぇと……」オドオド

課長&部長(え!?)

ヤクザ「あ、あの……なんであなたが、ここに……?」

俺「は? 私はただの会社員ですよ。あなたのような知り合いはおりませんが」

ヤクザ「えっ……あっ、そ、そうですよね!」

俺「やだなもう、しっかりして下さいよ! アハハハハ!」

ヤクザ「ア、アハハ……ハハ……」

俺「あ、そういえば……」

ヤクザ「な、なんですか?」

俺「肋骨と……あと右腕はもう大丈夫ですか?」

ヤクザ「……!」ゾクッ

ヤクザ「ひゃ、ひゃいっ! だ、大丈夫ですっ!」

俺「そうですか。それはよかった」

俺「それでは改めてもう一度うかがいましょう。弊社にどんなご用件が?」

ヤクザ「あ……いや、その……」

ヤクザ「あ、あのっ! 部長さん、課長さん!」

課長&部長「は、はいっ!」

ヤクザ「さっきまでのお話……えぇと、なかったことにして下さい……えへへ……」

課長&部長「ええっ!?」

ヤクザ「それじゃ失礼しますっ!」タタタッ バタンッ



シーン……

課長「あの……君はいったい……?」

俺「課長!」

課長「はいっ!」

俺「あとでもう一度、報告書を見てもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」

課長「あ、ああ、もちろんだよ! ハハ……ハ……」

俺「それでは、私も失礼します」バタン…

俺「課長、いかがでしたか?」

課長「いやぁ、もうバッチリ! 素晴らしい! 最高の報告書だったよ!」

俺「はぁ、どうも……」



俺(会社の役に立てたのは嬉しいけど、なんだかやりにくくなっちゃったなぁ……)







おわり

以上、私がよくやる妄想をお送りいたしました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom