ハルヒ「SOS団はキョンの家で合宿をします!!」 (38)

部室

ハルヒ「最近、たるんでるわよね」

キョン「そうか? パスだ」

古泉「おや。では、ここでスペードの8を出すしかありませんね。涼宮さん、それはどういうことでしょうか?」

ハルヒ「SOS団としての活動ができていないんじゃないってことよ」

キョン「そもそもこの集まりの目的からして不明瞭な点が多い気がするけどな」

ハルヒ「今だってキョンと古泉くんは七並べをして時間を無駄にしてるだけだし。もう少し青春を有意義に使ったらどう?」

キョン(この集まりの根底を揺るがす発言だな)

ハルヒ「このままではダメだと思うのよ。だから、もう一度、SOS団のあるべき姿を取り戻すために全員が一致団結しなければならない!!」

長門「……」ペラッ

朝比奈「おぉー」パチパチ

キョン(長門、本を読み進めるのもいいが、少しぐらい反応してやれ。朝比奈さん、素直に感心していて可愛いです)

ハルヒ「そこであたしは提案します!! SOS団を見つめ直すため、そして我々の結束をより強くするためにSOS団はキョンの家で合宿をします!!!」

古泉「それは素晴らしいですね。大賛成です。すぐに準備をしましょう」

キョン「ちょっと待て。百歩譲って合宿をするのはいいが、何故俺の家なんだよ。理由を言え」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442919626

ハルヒ「これは火急の案件なの。今から合宿所を手配するなんて、いくら古泉くんでも無理でしょう?」

古泉「はい。無理です」

キョン(嘘をつくなよ!)

ハルヒ「だったら、もうキョンの家しかないじゃない!! これは決定事項よ!!」

キョン(こうなったハルヒを止められる奴は宇宙上には存在しない。反論するだけ無駄だ)

朝比奈「キョンくんの家でお泊りするんですかぁ……」モジモジ

キョン(あぁ、恥じらっている朝比奈さんが可憐すぎる。考えようによってはマイエンジェルこと朝比奈さんが俺の家に泊まるなんて幸せなことなんじゃないか?)

長門「……」

キョン(気が付けば長門が読書を止めて、俺を見つめている。合宿に興味があるか? 夏休みにしただろ)

ハルヒ「うんうん。どうやら賛成多数のようね。よって、合宿は決定です!! 反論は許さないわよ!!」

キョン「今しがた決定事項と言っただろうが」

古泉「合宿の予定日は?」

ハルヒ「そうね。今週の土日でいいんじゃない?」

キョン「あしたじゃねーか!!」

ハルヒ「あら、今日って金曜日だったの? まぁ、いいじゃない。キョンの家なんだから」

キョン「分かってて言ってるだろ」

ハルヒ「それじゃ、明日は不思議探索後、みんなでキョンの家に行くわよ。ちゃんとお泊りグッズをもってきてね。とくに、みくるちゃん」

朝比奈「はい?」

ハルヒ「乙女にとっては色々と必要なものがあるだろうけど、それをキョンの家でうっかり落としたりしちゃダメよ?」

朝比奈「は、はぁ」

キョン(何を落とすっていうんだ。乙女に必要なものってなんだ)

古泉「嬉しさが顔に出ていますよ」

キョン「顔が近い。なんだよ」

古泉「涼宮さんを家に招待できて舞い上がるのはわかりますが、ポーカーフェイスを意識したほうがいいかと」

キョン「断じて違う。朝比奈さんを招待できることに歓喜してるだけだ」

古泉「そうですか。申し訳ありません」

キョン「で、古泉。今回のハルヒの思いつきはどう分析する?」

古泉「不思議なことをおっしゃりますね。涼宮さんはただ男子の家にお泊りしたいだけなのですよ。異性の家に泊まる。少しだけ大人になった気になりませんか?」

キョン「否定はしない」

古泉「涼宮さんもそうした経験をしたいのでしょう。高校生にあってもおかしない好奇心かと」

キョン「あってもおかしくない好奇心ねえ」

キョン(ハルヒにそんな普通の好奇心があるのか、甚だ疑問だが)

古泉「涼宮さんは至って普通の高校生です。彼女の力を除けばですが」

キョン「それは何度も聞いた」

古泉「失礼しました。けれど、僕も時々忘れそうになるので、一応言っておこうかと」

キョン「そうだな。俺はよく忘れる」

ハルヒ「いい? パジャマは絶対だからね。着替えの下着もいるし」

朝比奈「ひぇぇ……」

長門「……」

ハルヒ「歯ブラシはいるわね。流石にキョンのを使うわけにはいかないもの」

キョン(俺だって使って欲しくねえよ)

ハルヒ「歯磨き粉はキョンのでもいいけどね。それかシャンプーとかも必要になってくるわ。キョンのご家族に迷惑ですもの」

キョン(では、まず泊まりいって迷惑じゃないかな?ぐらいは思ってほしいもんだ)

ハルヒ「なんか文句でもあるわけ?」

キョン「別に」

ハルヒ「それじゃ!! また明日ねー!!!」

キョン(そういってハルヒは元気よく通学路の坂を下って行った。準備するものが多いので先に帰ると言い出したのだ)

古泉「明日が楽しみですね」

キョン「そうか? 俺は憂鬱だぜ」

古泉「そうは見えませんが」

キョン「怒るぞ」

古泉「冗談です。とはいえ、僕も楽しみにしています」

キョン「はいはい」

朝比奈「んー……」

キョン「朝比奈さん? どうかされましたか?」

朝比奈「あ、いえ。なんでもないです」

キョン(明らかに考え事をしていたように見えたが)

長門「……」

キョン「長門も何か俺に言いたいことでもあるのか?」

長門「特にない」

翌日 駅前

キョン(15分前には到着したが、既に四人の姿があった)

ハルヒ「遅い!! 罰金!!」

キョン「もはや決め台詞だな」

ハルヒ「キョンが毎度遅刻するからじゃない」

キョン(時間には間に合っているんだがな)

朝比奈「おはよう、キョンくん」

キョン「おはようございます。大荷物ですね」

朝比奈「キョンくんに家にお泊りするので気合をいれてきましたっ」

キョン(一泊二日のはずだが、朝比奈さんの中では三泊するぐらいの気概が見える)

長門「……」

キョン「長門の荷物は?」

長門「特にない」

ハルヒ「有希ー、お風呂とか入ったあと着替えないといけないでしょ?」

長門「必要ない」

最近ハルヒSS増えたな
支援

ハルヒ「もしかして、キョンのを借りる気?」

長門「……」

キョン(俺を見るな。まぁ、ぶかぶかのシャツを着る長門もいいかもしれんが)

ハルヒ「スケベ」

キョン「なんでそうなる」

古泉「いやぁ、夜が楽しみですね」

キョン「本当に楽しんでるな、お前」

古泉「それはもちろんです。貴方の家に宿泊する機会は滅多にめぐってはきませんから」

キョン「俺も古泉を泊める機会には恵まれたくないね」

ハルヒ「とりあえず喫茶店に行きましょ。探索班を決めなきゃいけないし」

キョン「そうだな」

キョン(そして俺の奢りか。ルーチンワークだな)

ハルヒ「あともう一つ、重大なことを決めなきゃいけないわ」

キョン「重大なこと?」

ハルヒ「決まってるじゃない。今日の合宿で何をするかをよ」

喫茶店

キョン「合宿ですることは話し合いなんだろ?」

ハルヒ「相変わらずのアホっぷりね、キョン。その話し合いの内容を決めなきゃいけないのよ」

キョン「それはSOS団の目的を見直すってのがテーマなんだろ?」

ハルヒ「テーマはそうでも、話しあいの中身は何一つ決まってないじゃない」

キョン(昨日、決めずに帰ったからな)

ハルヒ「だから、ここで決めます!! さぁ、何かあるかしら!?」

キョン(と言われて意見を出す奴はいない。これもいつもの光景だ)

ハルヒ「何かあるでしょ?」

キョン「お前はどうなんだ?」

ハルヒ「そうね。先にクジをひきましょう」

キョン(何も考えてねえのかよ。昨日、先に帰って何をしていたんだ。このやろう)

ハルヒ「はーい、クジひいてねー」

朝比奈「はぁい」

長門「……」コクッ

ハルヒ「それじゃ、よろしくね。行くわよ、有希、みくるちゃん」

朝比奈「それでは後ほど」

長門「……」

キョン「今日はお前とか」

古泉「昨日、涼宮さんは何をされていたと思いますか?」

キョン「さぁな。俺の家をどうメチャクチャにするのかで悩んでたのかもな」

古泉「涼宮さんの変化に気が付きませんでしたか?」

キョン「変化? いつもと変わらないだろ」

古泉「今のは聞かなかったことにしておきます。涼宮さん自身、気づかれていないことにはそれほど不満を持っているわけでもありませんが」

キョン「どこか違ってたか?」

古泉「髪を整えていたではありませんか。数ミリ程度のものですが」

キョン「気づくわけねえだろ」

古泉「実はいうと僕も涼宮さんが美容室に行ったという森さんからの情報がなければ気が付かなかったでしょう」

キョン「美容室? それで早く帰ったのか」

古泉「ええ。そうです。涼宮さんも身なりには気を遣いますからね」

キョン「少し前までは男子の目の前で服を脱いでたっていうのにな」

古泉「涼宮さんとて感情が変化すれば、行動も変化します」

キョン(そういうもんなのかね。ハルヒには当てはまらないような気もするが)

キョン「で、なんでまたハルヒは美容院なんかに行ったんだ? 予約してたのか」

古泉「分かり切った答えを聞くのですね。貴方の家に泊まるから以外に何があるのですか?」

キョン「意味がわからん」

古泉「森さんの情報ではパジャマも下着も新調したらしいですよ」

キョン(森さんはハルヒのストーカーか何かか? 新川さんでなくてよかったが)

古泉「歯ブラシも全て新しく買いそろえたようです。それはなぜか。貴方の家に泊まるからですよ」

キョン「それだけこの合宿に力を入れてるってことか」

古泉「わざとですか?」

キョン「ふんっ」

古泉「力を入れているのは本当でしょうね。ただ、SOS団の今後については口実でしかありません」

キョン(古泉に指摘されるまでもない。ここまで条件が揃えば俺だってわかるさ)

キョン「ハルヒは楽しみたいんだな。この合宿を」

かえったら佐々木が居候してたらいいなぁ
ついでに橘も

古泉「その通りです」

キョン(あいつの我儘で決まったことだが、ここで変にごねてもいい方向には転がらない。なら、俺も全力で楽しまなければ損だ)

キョン「朝比奈さんが一晩でも俺の家にいると思うとうれしいね」

古泉「しかしですね、『機関』のほうで一つ懸念があるのです」

キョン「懸念?」

古泉「夏休みの魔の八日間。まだ覚えていますよね」

キョン「どうやれば忘れられるのか知りたいぐらいだ」

古泉「それはよかったです」

キョン「まさか……」

古泉「涼宮さんが力を入れるとどうなるか。想像できますね?」

キョン「ちょっと待てよ、古泉。そりゃ、ハルヒがまた宇宙の時間を止めちまうってことか?」

古泉「お泊り会だけに、そういうこともあり得ます」

キョン(笑えない。座布団没収だ)

古泉「失礼しました。けれど、あり得ないことではありません。今回も涼宮さんの中でどうしてもやりたいことがある。しかし、それを涼宮さん自身が自覚できていないとすれば……」

キョン「永遠に土日が繰り返されるっていうのか……? 冗談じゃないぜ」

古泉「機関の懸念とはまさにそれです。エンドレスの週末が発生するのではないか、と」

キョン「また俺たちは強烈な既視感に悩まされるだけかもしれんが、長門はそうはいかないぞ」

古泉「そうですね。それでまたエラーを起こされては事ですから」

キョン「そういう問題じゃねえだろ。長門は……」

古泉「僕たちの仲間ですから。長門さんだけに無理はさせられません」

キョン「それが分かっているならいいけどな」

古泉「今回の一件。先手を打とうと思います」

キョン「先手? ハルヒが何を望んでいるのかわかるのか?」

古泉「夏休みでは友人同士で夏休みの課題をやる。それが涼宮さんの願ったこと。心の中で引っかかっていたことでした」

キョン「迷惑なやろうだ」

古泉「それでは、今回はどうでしょうか?」

キョン「夏休みのことを考えるなら、今回も似たようなものじゃないのか? 友達同士でお泊り会をしたい。そういうのだろ」

古泉「その程度のことならば、涼宮さんは過去に何度も経験していると思います。夏休みの課題とは違い、友人と遊ぶだけなのですから」

キョン「まぁ、そうかもしれんが。それが違うっていうなら、何を望んでいるんだ?」

古泉「あくまで一般論でありますが、異性の家に泊まることになったとして、何を期待するでしょうか?」

古泉「考えるまでもありません、異性との情事でしょう」

キョン「はぁ!?」

古泉「あくまでも、一般論です」

キョン「あのハルヒがんなことを考えているわけ……!!」

古泉「おや? 何故? 涼宮さんも健康的な女性です。そういった欲がない、なんてことはまずないでしょう」

キョン(確かにハルヒは体を持てあますとかなんとか言ってたけど……。って、あれはそういう意味じゃねえだろ)

古泉「涼宮さんがそれを望んでいるとしたら、この週末は永遠に突破できないかもしれません。もしかしたら、既に我々は数回、数十回、同じ時間を過ごしている可能性もあります」

キョン(ハルヒならやりかねないな)

古泉「さて、涼宮さんの願いを叶えるためには、どうするのがベストでしょうか?」

キョン「わからん」

古泉「まずは涼宮さんの唇を奪い……」

キョン「古泉、本気か?」

古泉「割と」

キョン「誰がそんな自殺行為をするんだよ」

古泉「役得でしょう?」

キョン「いや、だが……」

古泉「あの涼宮さんとですよ? 貴方ほどの幸せ者がこの宇宙に存在するでしょうか」

キョン「お前が楽しんでいる理由が今、分かった気がする」

古泉「これでも世界のことを想っているのですが」

キョン「そんな風には見えないね」

古泉「お願いできませんか? 世界を守るために」

キョン「世界のため、か。そう言われると、反論できないな」

古泉「姑息な手段であることは承知しています。けれど、貴方はそれを実行しなければならない」

キョン「可能性の話だろ」

古泉「ええ」

キョン(俺がハルヒと……? くっそ、想像しちまった……)

古泉「実行されるのであれば全力で支援させていただきますが」

キョン「……考える、時間をくれ」

古泉「勿論です。涼宮さんにとっても人生のターニングポイントになる日かもしれませんからね。慎重になりすぎて悪いことはありません」

キョン(本当にあのハルヒがそんなことを考えているのか……? いや、ハルヒに限って、それも俺となんて……)

正午 ファーストフード店内

ハルヒ「それじゃ、午後のクジを決めるわよ」

朝比奈「はぁい」

キョン(いかん。ハルヒを意識しちまう……。あいつがそんな低俗なことを考えてるわけねえだろ。いつもバカなことしか言わないが)

ハルヒ「赤色、だーれだ?」

キョン「俺だ」

長門「……」スッ

ハルヒ「キョンと有希がペアね。それにしてもキョン。いつもいつも赤い印がついているのを引くわよね」

キョン「あ、ああ。そうだな」

ハルヒ「あんた、超能力でも使えるんじゃないの?」

キョン「なわけないだろ」

ハルヒ「……どうしたの? 顔、赤くない?」

キョン「な、なんでもない!! 気にするな!! 空調のせいだ!!」

ハルヒ「あたしは丁度いいけど」

キョン(あぁ、ダメだ。午後なんてあっという間に終わって、決断ができないまま夕方を迎えるのが目に見えてるぞ……)

興味深いです

並木道

長門「……」

キョン(古泉に言われたことを相談しようかとも思ったが、冷静に考えて長門や朝比奈さんに相談できることじゃなかった)

キョン(八方塞がりとは、このことか)

長門「……涼宮ハルヒによる空間補正が始まっている」

キョン(あぁ、そら、来ちまった)

長門「恐らく、夏休みの規模と同等」

キョン「ちなみにだが、長門はまだ繰り返していないよな?」

長門「ない。この時間平面は一度も経験していない」

キョン「それならよかった……。ああ、いや、また夏休みと同じようなことが起こるんだよな?」

長門「その可能性は極めて高い」

キョン(長門に負担をかけないためにも、ハルヒの暴走は止めなきゃならんが。その方法はなんなんだ?)

長門「不明」

キョン(長門でもハルヒの脳内までは解析できないんだよなぁ……。長門の目的は観測だからな)

長門「……」

キョン「一応聞くが長門の予想ってのは何かあるか? ハルヒの能力はこうすれば抑えられるんじゃないか?程度でも構わない」

長門「私は涼宮ハルヒの行動を観測するためにここにいる。涼宮ハルヒが行動を起こしてからでなければ対処はできない」

キョン(立場上、ハルヒの行動を事前には潰せないってことは分かるが)

長門「これから起こる事象に対して、私ができることはない」

キョン「この週末に閉じ込められることがわかっていてもか?」

長門「それが私の役目だから」

キョン(一度、無意識に世界を改変させても、その役割は全うするってわけか)

長門「……」

キョン「どうしたら閉じ込められずに済むのかも言えないか?」

長門「……」

キョン(まさかとは思うが、長門も古泉と同じ考えなのか?)

キョン(ああ、そうかもしれないな。一度、閉鎖空間に閉じ込められたとき、朝比奈さんも長門も古泉も同じ解決方法を伝授してくれたからな)

キョン(それしかないってことなのかよ……)

長門「古泉一樹が貴方にどのような助言をしたのかは分からない。しかし、きっと私はそれとは別の解を提示することができる」

キョン「ほ、ほんとか!?」

長門「本当」

キョン(流石、長門だぜ。だが、その助言をしてしまえば、長門の立場は……)

長門「しかし、私がその解を提示するのは、もう一度貴方が同じ質問をするときになる」

キョン「そういうことか……」

長門「そう。この空間補正がどのような結果をもたらすのか、知っておかなくてはならない」

キョン「同様のことが起こるんだろ?」

長門「そう。けれど、涼宮ハルヒの力を全て理解できていない。絶対ではない」

キョン「もし二周目は気が付かず、俺が長門に質問できなかったら?」

長門「観測を維持する」

キョン「長門……」

長門「……」

キョン(心の底では言いたくてたまらないのかもしれないな。かといって、無理に口を開けさせれば長門のボスがどんな行動にでるかわからん)

キョン(長門に何かするならハルヒを突き動かす覚悟は持ち合わせているが……)

長門「それは推奨できない」

キョン(分かってるさ。長門がそれを望んでいないことぐらいな。さて、長門の力を借りずになんとかループさせない方法を見つけなければならなくなったが、古泉の方法だけが唯一だとは思いたくないね)

キョン「なぁ、長門。お前なら男の家に泊まることになったら何を期待する?」

長門「……」

キョン「……」

キョン(しまった。俺は長門になんてことを聞いてるんだ!? 焦りすぎだ!!)

キョン「すまん、長門。聞き流してくれ。忘れてくれ」

キョン(長門にセクハラ紛いの質問をするなんて、どうかしてるぜ)

長門「……わからない」

キョン「え?」

長門「その男性は私にとってどういった存在なのかで答えが変化する」

キョン「あ、ああ。そう、だよな」

長門「好意を寄せている相手と過程するなら……」

キョン「な……」

キョン(まさか、長門の恋愛観なるものを聞けてしまうのか? なんか複雑な気分だ)

長門「……共に同じ空間にいるだけで、十分」

キョン(実に長門らしい。確かに長門とは会話がなくても気にならないからな)

夕方 駅前

キョン(長門の意見を参考にさせてもらうとしても、果たしてあのハルヒに当てはまるのかどうかは、はっきり言って微妙だ)

キョン(そういった部分がないとは断言できんが、ハルヒの恋愛観は谷口曰く常軌を逸してる。傍で見ている俺でもハルヒのそれはよくわからん)

ハルヒ「今日も収穫なしっと。真面目に探したの?」

キョン「ああ。一応な」

ハルヒ「一応ってなによ!? SOS団衰退の原因の8割はキョンのやる気のなさよ!!!」

キョン「それが結論でいいなら、今日は解散するか?」

ハルヒ「予定に変更はないわ。雨天中止もあたしの中ではナンセンスよ。何よ、雨天中止って」

ハルヒ「野球ならまだしも遠足なら屋内に移動するだけで済むじゃない。晴れの日しか遠足に行けないなんて職務怠慢よ」

キョン(メチャクチャ言ってやがる。遠足が中止になって悔しい思いでもしたのだろうかね)

ハルヒ「さ、キョンの家に行きましょ」

古泉「はい」

朝比奈「わかりましたぁ」

長門「……」

キョン(地獄の始まりにならないことを祈るばかりだ)




俺には合わなそうだ
ばいばい

ハルヒ「ふっふふーん!」

キョン(威風堂々と先頭を歩くハルヒを見ていると、俺の不安は大きくなる。マジでどうなっちまうんだ)

朝比奈「キョンくん、キョンくん」

キョン「なんでしょうか?」

朝比奈「あの、今日のお泊り会なんだけど……」

キョン「はい?」

朝比奈「わたし、泊まらないほうがいいかなぁ、って……」

キョン(何故!? ホワイ!!)

キョン「その大荷物は気合の表れだったんじゃないんですか?」

朝比奈「これは、その、涼宮さんのことを考えて……」

キョン(なるほど。泊まる気満々であることをアピールしておけば、お泊り会から逃げ出す際に突っ込まれないもんなぁ。朝比奈さん、それはズルいです)

朝比奈「わたしとしては、こうしたほうがいいと思います」

キョン「それはどうして?」

朝比奈「その……涼宮さんだって……女の子ですから……」モジモジ

キョン(可愛い!)

キョン(いや、よからぬ妄想をする朝比奈さんにあらぬ劣情を抱いたところで、何の意味もない)

朝比奈「涼宮さんは期待していると思います」

キョン「期待っていうのは?」

朝比奈「それは……あの……ですから……」

キョン(しまった!! 長門のときと同じ失敗をしているぞ!! 落ち着け!!)

キョン「す、すみません! 今のは流してください。質問にも答えなくて結構ですから」

朝比奈「そ、そうですか……。よかったぁ……」

キョン(こんなにも焦燥感にかられるとは。今までの異常事態とはまた異質だな。主に古泉の余計な助言の所為だが)

朝比奈「とにかく、キョンくん。わたしは隙を見て、お泊り会から抜け出します。あとのことはよろしくお願いします」

キョン「あとのことと言われましても……」

朝比奈「涼宮さんだって女の子ですから、あの、あまり、乱暴なことはしないであげてください」

キョン(朝比奈さんのいう乱暴とは、なんなのか)

朝比奈「信頼、していますから」

キョン「分かりました」

キョン(分かっていいのか? いや、ダメだな。こういわれた場合、どう答えればいいのか誰か教えてくれ)

いいぞいいぞ

見事な八方塞がりだ…

まあ原作でも全員からキスするようにお膳立てされてたしセックスのお膳立てされても違和感ないな

朝比奈「お願いしますね」

キョン「あのですね。正直なところ、お願いされても困るんです」

朝比奈「どうして?」

キョン「だって、それは……」

キョン(そもそもハルヒがそれを望んでいるのかも定かではない。長門だって古泉とは別の解決法を知っていると言ってたし、それだけが手段とは思えない)

朝比奈「キョンくんは嫌なんですか?」

キョン「嫌と言うか、ハルヒが俺に何かを期待しているとは限らないんじゃないかってことです」

朝比奈「そうかもしれない。でも、期待しているかもしれない。試してみないと分からないことだと思う」

キョン(朝比奈さんの言っていることは正しい。このまま何もしなければ、日曜日か月曜日を迎えることができないという事態に陥ってもなんら不思議ではない)

キョン(試す価値は十分にある。あるのだが……)

朝比奈「涼宮さんの気持ちにも応えてあげてほしいの。これはキョンくんにしかできないこと」

キョン(もはや殺し文句だな。世界のため、俺にしかできないこと。何度か聞かされてきた気がする)

朝比奈「だから、お願いします」

キョン「……考えてみます」

キョン(考える時間なんて殆ど残されていない。あと十数分で俺の家に到着する。日付が変わるまではあと6時間もない)

キョンの家

妹「わーい、ハルにゃんだー」

ハルヒ「元気だった?」

妹「うんっ」

ハルヒ「あたしたち、今日はお泊りするの。キョンから聞いているでしょ?」

妹「うんっ。今日はみんなでお泊りなんだよねー。たのしみー」

キョン(うちの妹は無邪気に喜んでいるな。ちなみに両親もクラスメイトを泊めるだけならと快諾してくれている。もう少しぐらい渋っても良かったんだがな)

朝比奈「お邪魔します」

妹「あがってあがってー」

ハルヒ「とりあえずキョンの部屋に行こうかしらね。晩御飯はそのあとにしましょう」

妹「ごはんまだなの? それならお母さんが今から作ってくれるよ」

ハルヒ「いいの? そこまでは流石に悪いと思って、色々と買ってくる予定だったんだけど」

キョン(ほう? ハルヒにしては実に常識的な考えだ。コンピ研部長氏宅で勝手に冷蔵庫を漁っていた頃よりは成長しているな)

ハルヒ「でも、作ってくれるっていうならお言葉に甘えましょうか。いいわよね、キョン?」

キョン「ああ。昨日からそのつもりで買い出しもしていたしな」

ハルヒ「気が利くじゃない。感心、感心」

キョン(何様だ)

古泉「僕たちもご馳走になっていいのでしょうか?」

キョン「気にするな。食材は大量にある」

古泉「では、遠慮なく」

長門「……」

キョン(そういえば、長門はどのくらい食えば満足するんだ?)

古泉「僕が抜け出すのは食事後になりそうですね」

キョン「お前、泊まる気ないのかよ」

古泉「泊まっても構いませんが、お二人の邪魔になるのではありませんか?」

キョン「どういう意味だ」

古泉「傍で友人が寝ていては気が散って、集中できないと思うのですが」

キョン「おい!! なんだそりゃ!!」

ハルヒ「どうしたの、キョン。いきなり大声出して」

キョン「い、いや、なんでもない」

それそれで興奮する

ないのか

はよ

久々と思ったら
終わってた

キョンの親にガチギレされて説教くらえばいいのに

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年10月09日 (金) 06:05:40   ID: mO09kjfL

続きはぁぁ!?

2 :  SS好きの774さん   2015年10月19日 (月) 23:57:39   ID: mabgvntA

続きはよ

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom