南条光「悪をもって悪を制す!」 (14)


光「アタシはヒーローであらんと生きてきた。強く正しく優しく熱く、激しく生きてたいと過ごしてきた!」

光「けれど、アタシは悪役の……それも、どうしようもない悪党を演じなきゃいけない……アタシには、『大泥棒ヒカル』の気持ちが全く理解出来ない」

光「ならば役作りをしなきゃいけない。彼女のするように、悪を、やっちゃいけないことをやるしかないだろう……」

モバP(以下P)「ンな、歌舞伎の修行じゃないんだし」

光「両方とも。同じ舞台だろ。……お願い……!」ブルブルブルブル

P(震えるほど嫌なら辞めればいいのに……でも、光が積極的に人を頼るなんて本当に珍しいし、引き受けるべきだな)

P「わかった。ただ、痛いのは控えてくれよ」

光「ごめん……そして、ありがとう!」

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光「さて、やっちゃいけないことの典型と言えば、これに限る!」グッ

P「なっ! 痛いのはイヤだと言っただろ!」

光「だからやるんだ。やれる……やれるさ……役のためなら……南条の姓は悪役を任ずるんだ、はは、ははははっ……」ブツブツブツブツ

P(うわ、目がグルグルになってる)

P「く……なら、せめてココにしてくれ」クルッ

光「背中?」

P「特に肩胛骨の周りをこう、リズミカルにな」

光「わかった! どんなリズム?」

P「とんとんとととん」

光「トントントトトン♪」トントントトン

P(チョロいチョロい)


光「頼んでない物を押しつけられるのって、気遣いは嬉しいけど迷惑だよな!」

P「確かに困るなー」

光「ってことで、熱いから気をつけてね!」コトッ

P「おお、ありがとう。ついでに言うと、それで感謝を求められたりすると、迷惑極まりないよな」ゴクッ

光「そうなのか?」

P「押しつけがましいだろ?」

光「あー確かに。じゃあえっと、ありがとう言って?」

P「美味しいぞ。淹れてくれてありがとう」

光「えへへ、どういたしまして!」ニコッ


光「お茶に合わせてさ、お菓子も用意したぞ!」スッ

P「このお饅頭は?」

光「監督に挨拶したとき譲って貰ったんだ! 甘くて旨いし半分どう?」ブチッ モグモグ

P「甘くなくて不味い饅頭なんて、考えたくもないな。……かっらぁっ!?」

光「どうだっ!? これでアタシもヒカルの気持ちをちょっとはわ辛っ!」

P「何で光も食べたっ!?」

光「半分こしたかったから、んっ、ごめんお茶ちょうだい!」ゴクッ

P「辛いもの食べた後に熱いものなんか飲んだら!」

光「んむぅぅぅ……!!」ジタバタ

P「牛乳とってくるから座ってろ!」


光「あー、酷い目にあった……自業自得だけど……」

P「どっちらかというと自爆じゃ?」

光「悪いことをしたらこうなるもんだ。でも、ならヒカルは何で好き好んでやるんだろ?」

P「まだわからないんだな……」

光「けど、修行は納豆のようにねばり強くやるものだ。だからまだ諦めず、コツコツ積み上げてく……!」コトコト

P「何をやってる?」

光「本の順番を入れ替えて散らかしてるんだ! 番号がメチャメチャだから、探すのがたいへんだ!」コトコトコトコト

P「ンな地味な!」

光「目をつむっててもやれる! こっちの本を右に、左に! こっちは左、上! 下、下!」コトコトコトコトココトコトコトコトコ

P「ヘンなところで光って器用だよなぁ」

光「こういう風に! こういう風に!この本もそうしてやる! この本も! ああっ、ああっ、気分が!」コトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコト

光「悪い……」ゼーゼー

P「おつかれ。整理整頓してくれたおかげで、整理の手間が無くなったぞ」ナデナデ

光「んっ、どういたしまして! ……え?」

本棚「元通りでやんす」


P「光がはたら、……おほん、散らかしてくれたお陰で、昼の雑用が一つ減ったぞ」

光「それはよかっ! ……よくないかぁ……」

P「はいはい。まあとにかく、これで今日は外出して昼が食べられそうだ」

光「最近はおにぎりで済ませてたもんなあ」

P「ああ。たまにはオサレ(死語)なカフェでランチとかしてみたいもんだ」

光「……ならアタシは、Pが得たお昼ご飯を選ぶ自由を奪う!」

P「わ、それはかなり迷惑だな」

光「ぬ、ぬぬ、だよな……」

P「まぁ方法次第だな。光はどうやって、俺から自由を奪おうとしたんだ?」


光「これだ!」ゴトッ

P「手作りだ!」

光「五時に起きて作った!」

P「えらいえらい」ナデナデ

光「どういたしまして!」

P「で、作ってもらってなんだけどだな、役作り真面目にやってるのか?」

光「……またダメだった……」シュン……

P「どうしても大泥棒ヒカルが理解出来ないのか?」

光「うん。悪いことだってわかってるのに、何故やるんだ?」

P「食うに困って……ないよなぁ。ルパンだし。というか怪盗紳士がなんでこんなべらんめぇなんだろうな」

光「それは仕方ない。でもさ、悪いことをしたいって思ったら、こう、胸が締め付けられる感じするだろ?」

P「罪悪感だな」

光「なのに、実際に悪いことまでやって、誇らしい顔でいるなんて……やってることが恥ずかしくないのか?」

P「恥ずかしい?」


光「しちゃいけないって気持ちが足りなくて結局しちゃうのは、弱い自分に負けたってことだ。それは悔しいことなのに、どうして高笑いをして見せびらかせられるんだろう?」

P「うーん……そもそも、恥ずかしいことだと思ってない、とかはどうだ?」

光「どういうこと?」

P「美味しいご飯が目の前にあったらどう思う?」

光「食べたいと思う!」

P「で、どうする?」

光「我慢して我慢して、一番最後に残ったのをいただく!」ビシュ!

P「そういう奴なの忘れてた。まぁ俺なら食べるけどな。いただきます!」パカッ

光「お味噌汁もあるぞ!」トクトク

P「この風味は、枯れ節とシイタケか?」ゴクッ

光「輝子さんのオススメだ!」

P「ハンバーグは……デミグラスとシメジか。おお、しっかり肉汁が閉じこめてある! 頬張った瞬間のジューシィさが素晴らしい!」パクパク

光「アルミホイルで包んで焼いたぞ!」

P「レシピはオリジナル? それともクックパッド?」

光「インターネットの便利さに凄く助けられた!」

P「勉強家だな!」

光「まだあるから、おなかいっぱいになってねっ!」


P「あー美味かった。ご馳走様でした」

光「お粗末様でしたっ」

P「さて、ここまで光の悪行には目をつむってきたけどな、そろそろお灸を据えようと思う」

光「そ、そんな……いや、仕方ない。罰せられてしかるべきアタシだ、来い!」ババッ

P「随分潔いな」

光「ヒーローは言い訳しない! そして、自分の失敗から逃げない!」

P「なるほどな。じゃあ早速、ママより怖いお仕置きだべぇ~」ゴトッ

光「ブ、ブラックコーヒー……!」

P「これはお茶の分だ。ヒーローならこう、カッコよくクイッと飲めるだろ。……いや、今は悪役だったか」ニヤァ

光「くっ! そうまで言われたら……いただきます!」ゴクッ

P「どうだ?」

光「美味しい! オレンジみたいな香りがする!」

P「鮮度のいい豆を探したんだ。次、お饅頭のお仕置き」ゴトッ

光「箱に入ったチョコだ! ……これ、けっこう高いんじゃ?」

P「高い物を押しつけて罪悪感を与える嫌がらせだぞ参ったかフハハ」

光「なんて悪辣な嫌がらせなんだっ……まさに外道!」

P「で、食べるのか、食べないのか?」

光「いただきます!」モグモグ

光「……~♪」ニコニコ

P「本棚の件はノーカンにするから、背中向けてくれ」

光「ん、こう?」クルッ

P「じゃ、失礼するぞ。わー凝ってる凝ってる」グリグリグリグリ

光「ぬ、ぬぬぅっ!? い、いたた、ちょっと手加減をっ」

P「しないなぁ。何処か気になってるところはないか?」

光「うーん、背筋?」

P「ここ?」

光「ああいやちょい右、ちょい左、そう、そこをまっすぐ」

P「ぐいーっと」オヤユビノダイイチカンセデグリグリー

光「ああぁぁぁー……♪」

P「じゃ、これで肩の件は終わりっと」

光「ふぃー……お疲れさまP! スッキリしたよ!」

P「どういたしまして」

光「……楽しそうだなぁ……」ハァーッ


P「何か悩んでるのか?」

光「ヒカルをまだ掴めてないのは悩んでるよ」

P「いや、そっち意外で何かないか、と思ったんだ。勘違いか?」

光「あはは、大丈夫。大したことじゃ無いって」

P「大したことじゃないなら、つまり人に言うのを悩むほど重大な問題じゃないんだし、聞いていいよな」

光「う……」

P「話してくれよ」

光「……Pは悪い女の方が好きなのかなって思ったんだ。今日さ、すごくよく笑ってたよ?」

P「そう、……だな。ああ、確かに楽しかった」

光「いつものアタシじゃ、今のPを見られない気がしてさ。もしかしたら、アタシはお堅い唐変木だったりしたのかなぁ、って……」

P「そんなことはないぞ?」

光「うん?」

P「光が俺をあてにしてくれたのが、一番嬉しかったんだ」

光「Pのことはずっと信頼してるぞ」

P「サラっと殺し文句を言うな。本当にそうなら、今後は積極的にやってくれよ」


光「迷惑じゃない?」

P「信頼、してるんだろ?」

光「……うん! じゃあ早速いい?」

P「なんだ?」

光「えっとだな、お仕置きを一つ、忘れてるはず、だよね?」

P「あー……お弁当?」

光「そう! それのことなんだけど……執行して欲しいんだ!」

P「俺、悪は許しちゃいけないと思うが、罪を憎んで人憎まずだとも思うんだよなぁ」

光「許す心も強さだと思うけど……アタシはヒーローだから!」

P「おい、役作りは何処行った?」

光「ヒカルは自分の正義を信じてる! 周りはそれを悪だって言ってる! でもヒカルは貫く! そういうことなんだ……周りを気にしない!」

P「おおー、一歩前進だな」パチパチ

光「へへへー」テレテレ

光「もっとも、悪いことをしたら理由は言い訳にしかならないし、やっぱり悪は許さない!」

P「潔癖だなー」


光「まぁとにかく、さっきも言ったけど、ヒーローは自分の過ちから逃げちゃいけないんだ! 筋が通らないから!」

P「屁理屈こねてないか?」

光「理屈だな!」

P「まったく……じゃあ、レストランとか?」

光「やったぁっ♪ ……おほん、裁きは甘んじて受けるぞ!」

P「首を洗って待ってろよ。明日の午後でいいな?」

光「うん。ありがと、楽しみにしてるからっ!」

おわり


誕生日までに復元したかった…。誕生日のセリフ良かったですね。次の再登場はテキストを読み返してから書く人に担当して欲しいです。依頼出してきます。

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