高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「たまにはジャンクフードでも」 (65)

――某ジャンクフードショップ――

北条加蓮「……んー……さすがにどう取り繕っても、藍子にここはちょっと似合わないなぁ……」

高森藍子「人の出入りがすごく早いんですね。なんだか、目が回りそう」

加蓮「早さが売りのジャンクフードだからね。店内でのんびり、なんて普通はやらないよ」

藍子「いろんな人が来るんですね……あっ、あの子ども、楽しそうっ♪」

加蓮「こういうお店が好きだよね、子供って。ちっちゃい頃は連れてってもらうだけでワクワクしてたなぁ」

藍子「そんなにお好きだったんですか?」

加蓮「っていうより、なんか特別感があってね。今にして思えば、何がそんなに楽しみだったんだろって」


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以下の作品と同じ設定の物語です。
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

藍子「ふふっ。加蓮ちゃんの言う通り、ハンバーガーやポテトを持って帰る人が多いみたいですね」

加蓮「車の中で食べたりするかな……電車に持ち込むのは厳禁だよ。白い目で見られちゃうから」

藍子「行儀の悪いことは、あんまりしたくないです」

加蓮「こうして座ってぼんやり眺めるのも、なかなかに面白いかな」

藍子「私に気を遣ってくれたんですか?」

加蓮「……真顔で頷いたら、藍子はどこまで重荷に思ってくれる?」

藍子「もうっ。すぐにそういうことを言うんですから!」

加蓮「そういう時にさ、いや、加蓮ちゃんは冗談を言っているんだ、って見抜けるようになってみたら?」

藍子「うぅ……だって、もしそれで、加蓮ちゃんが本気だったらって思うと」

加蓮「そっか。ふふっ、じゃあもうしばらく藍子のことを騙し続けちゃおう」

藍子「『じゃあやめよう』ってなってくれないんですね……」

加蓮「はい、ポテト。あーん」

藍子「あーん。わっ、しょっぱいっ」

加蓮「私はこれでも足りないな。舌が慣れすぎてるのかなぁ……」

藍子「ケチャップがついているんですね」

加蓮「つけたらちょっとは甘くなるかもよ?」

藍子「そうしますっ」モグモグ

加蓮「……仕事をするとしてさ。大変な仕事と楽な仕事、どっちがいい?」

敦子「んぐっ……急にどうしたんですか?」

加蓮「とりあえず答えてよ」

藍子「そうですね……私、モバP(以下「P」)さんや加蓮ちゃんみたいにてきぱきするのは苦手ですから……」

藍子「楽なお仕事の方がいい……のかもしれません」

加蓮「アイドルってだいぶ大変な仕事だと思うけど」

藍子「それは、Pさんやみなさんがフォローしてくれるからですよ。私1人じゃなんにもできませんから……」

加蓮「……そろそろその過小評価にどつきたくなるなぁ」

藍子「えっ」

加蓮「ほら、よくあるじゃん。これだけは言われたら許せないって奴。あれってさ、本人が言っても同じだと思うんだよね」

加蓮「ん……分かりやすく言うと、例えば藍子のことを『何もできない子』って言われるのがどうしても許せないとして」

加蓮「それを藍子自身が言った時も、同じように許せないなってこと」

藍子「なるほど……あれ、だったらもしかして、私、いつの間にか加蓮ちゃんが許せないことを何回も……!?」

加蓮「うん、そうなるね?」ニコッ

藍子「え、えええっ!? もっと早く言ってくださいよそういうの……!」

加蓮「くくっ」

藍子「あ! ……あの、もしかして、また冗談――」

加蓮「ううん。今回は半分くらい本気……私、冗談は撒き散らすけど、嘘って嫌いなんだよね。嘘つきの大人ばっかりだったから」

藍子「うそつきの大人?」

加蓮「昔さ、ホントにガチに……ベッドの上でしか行動できなかった時にね。看護婦、あ、看護師だっけ、がたまに言うんだ」

加蓮「天国はいいところだよ、美味しい食べ物がいっぱいあるよ、って。わざわざ絵本まで持ってきて」

加蓮「それってつまり、私の容態がヤバイってことだよね。……ちゃんと教えてくれないんだ」

加蓮「嘘つきばっか」

藍子「……小さい子には、やっぱり、正直に言えないと思います。決まりとか、ルールとかじゃなくて……」

藍子「私がもしナースさんだったら、ちゃんと伝えられる自信はないです」

加蓮「藍子は優しいからね……病院の人達なんてどいつもこいつもさ、ってこれは前にも話したかな」

藍子「はい。だからもう、嫌な思い出はお話ししなくていいんですよ」

加蓮「ん……」

藍子「もちろん、加蓮ちゃんがお話ししたいなら……私は聞きますけれど、でも……」

藍子「自分の心に自分でナイフを刺すなんて、見ているだけでも痛々しいですから……」

加蓮「……うん」

藍子「あの、どうしてもナイフが手放せないなら、私を刺しちゃってください!」

加蓮「へ? …………ぶっ、くくっ、う、うくくっ、なにそれ、なにそれっ……!!」

藍子「そ、そんなに笑わなくていいと思いますっ」

加蓮「あははっ、おかしい……もう。何か買って欲しい物でもあるの?」

藍子「そんなんじゃないですよ……もうっ……」

加蓮「あははははっ……分かった。じゃあ、どうしても手の力が抜けなかったら、藍子に痛い目に遭ってもらうね?」

藍子「…………で、できれば、お手柔らかに」

加蓮「いいんだよ。そこで頷けないことを悔やまなくても。どうせ藍子を殺したりしたら、私が死ぬほど後悔するだけだから」

藍子「…………」

加蓮「…………」

加蓮「っていう演劇の話ね? フィクションの話だよ? うん。マンガとか小説とかそういう話」

藍子「そうしちゃいましょうっ」

加蓮「脚本をやるとかは……うん、私には無理だな」

藍子「私だったら、キャラクターみんなが幸せになるお話を描きたいですっ」

加蓮「童話なんていいんじゃない?」

藍子「あはっ。まずは絵を描くところからですね」

加蓮「藍子はヒロインっていうより主人公だね。いろんなことに悩んじゃう主人公。あ、ハンバーガー食べる?」

藍子「どうせだから頂きますね。うーん……どれがいいかな……」

加蓮「ほら、ハンバーガー1つでもこんなに悩む」

藍子「あうっ」

加蓮「ゆっくり選びなさい。決まったら私が注文しにいくから。ね?」

藍子「はぁい……」

加蓮「ふふっ……」ホオヅエ


藍子「決まりましたっ! 私、エッグバーガーにしますね」

加蓮「じゃ、ポテトの分まで注文に行ってくるね。ちょっと待ってて」

藍子「はいっ」

加蓮「……」テクテク

加蓮「……はい。エッグバーガーとポテト1つずつ。塩辛にしてね」

加蓮「……」ウーン

加蓮「……」チラッ

藍子「~~~♪」ニコニコ

藍子「~~~!」アッ

藍子「~~~♪」テヲフル

加蓮「もう……」ニガワライ

加蓮「うん、ありがと。……ただいま、藍子」

藍子「はい、お帰りなさい」

加蓮「落ち着かないなぁ……私、こういう雰囲気は結構好きだけど、藍子といるとすごく落ち着かないよ」

藍子「あむっ……んぐ?」

加蓮「食べ終わってからでいいよ。つまんないことを言ってるだけだから」

藍子「んぐ」コクン

加蓮「……」ホオヅエ

加蓮「新しいこととか、新しい発想とか、大切だってよく言うけど……藍子は、ずっとそこにいてほしいな」

加蓮「って、それじゃアイドルとして前に進めないっか……難しいなぁ。ふふっ、アイドルに向いてないって言ってるの、なんだか意味が分かった気がする」

藍子「…………」ゴクン

藍子「私、やっぱり、色々な意味でアイドルに向いていないって思います……もし、加蓮ちゃんがそれで怒っちゃったとしても」

藍子「すぐには、考え直すのは難しいです」

加蓮「そうだね……しょうがないな。じゃあずっと、藍子に文句を言い続けようか」

藍子「きっと、私にはそれくらいがちょうどいいです」

加蓮「あれ? 今、私って藍子にプロポーズしちゃった?」

藍子「ふふっ、そうかもしれませんね」

加蓮「よし、今度これPさんに言ってみよう。Pさんは私が見張っていないと……ううん違うな。ずっと近くで見ていたいです……そこまで言うと変な物食べたかって言われそう?」

藍子「毎朝のお味噌汁を作れるように、練習してみるのはどうでしょうか」

加蓮「わ、私だって味噌汁くらい作れるし」

藍子「……」

加蓮「作れるし」

藍子「……3日前、食べたことがないくらい塩辛いお味噌汁を飲みました♪」

加蓮「うっさい!」

藍子「ふふっ」

藍子「はいっ、加蓮ちゃん。あーん」

加蓮「んー。あれ、思ったより美味しいね、エッグバーガー」

藍子「私、こういうところにあんまり来ないので……でも加蓮ちゃんとなら、来てみるのもいいですねっ」

加蓮「やめときなさいやめときなさい、似合わない似合わない」

藍子「そんなこと言って、美味しいハンバーガーを独り占めしたいだけじゃないですか?」

加蓮「お、言うようになったね? でもこれはホントだよ。やっぱり藍子はカフェにいる方が似合う」

藍子「ありがとうございます♪ でもたまには食べてみたいから、その時は加蓮ちゃんにも買ってきますね」

加蓮「いやいや。それなら私に頼んでよ。私が買ってくるから」

藍子「そんなっ、悪いですよ」

加蓮「たまには私にもそーいうことさせてよ」

藍子「お散歩ついでですから!」

加蓮「たまにはこういうところに来たいの!」

藍子「……むー」

加蓮「もう」

藍子「加蓮ちゃんはカフェもハンバーガーショップも、どっちも似合いますよ?」

加蓮「オシャレで静かなカフェに行った時は、ちょっとお嬢様っぽく振る舞ってみるとか」

藍子「ロングスカートを履いてみたり?」

加蓮「両手を前にして、深々とお辞儀してみたり」

藍子「まるでドラマの撮影ですね」

加蓮「あんまり入れ込みすぎると、普段の生活にまで侵食してくるんだよね」

藍子「つい『ごきげんよう』って言っちゃったり!」

加蓮「Pさんのことお父さんって言った時にはマジで死にたくなった」

藍子「学校でありそうなお話ですよね」

加蓮「むしろPさんの反応がなー。あそこまで大笑いされるか」

藍子「それだけ加蓮ちゃんが可愛かったんですよ」

加蓮「『ごきげんよう』も、Pさんに言った日には大笑いされるね。気をつけなきゃ」

藍子「加蓮ちゃんなら、イタズラでやっちゃうんじゃないですか?」

加蓮「間違って言って、笑われるより前にイタズラだって取り繕うとか」

藍子「私だったら、言った瞬間に『あ……!』ってなって、何もできなくなっちゃうかも」

加蓮「私が、あれ? もしかして5年後の藍子? って言えば綺麗に流れるよ」

藍子「頑張れば通じてしまいそうですよね、私たちの事務所」

加蓮「超常現象が普通に起きるからね。昨日は誰のひいばあちゃんが化けて出たんだっけ?」

藍子「そんなことがあったんですか……?」

加蓮「お盆だからね。私の大好きだったおじいちゃんはいつ出てきてくれるの?」

藍子「さ、さあ?」

加蓮「ハンバーガー、もうちょっとちょうだい」

藍子「はいっ。あーん♪」

加蓮「んー。飲み物がほしいな。何か飲む?」

藍子「うーん……なんだか、味が強そうな物ばっかりで……炭酸じゃない飲み物ってありますか?」

加蓮「シェイクかなぁ。いや、あれはねっとりしててむしろ喉に悪いかな……アイドルになってからは飲んでないや」

藍子「もうお水でもいいかも……」

加蓮「カルピスなら大丈夫だと思うよ? 飲んでみる?」

藍子「じゃあ、それでっ」

加蓮「行ってくるね」

加蓮「ただいま」

藍子「おかえりなさい。あれ、1人分だけですか?」

加蓮「もし藍子が飲めなかった時のことを考えて。Lサイズにしといたから、これなら2人で飲んでも大丈夫でしょ」

藍子「……え、でも、それじゃ私が飲めなかった時に、加蓮ちゃんがぜんぶ飲むことになるんじゃ……」

加蓮「2人分ならキツイけど、Lサイズ1つならなんとか。はい、藍子。何事も挑戦だよ」

藍子「はいっ! えいっ」ゴクゴク

藍子「……うん、これくらいなら大丈夫、かな……? 私が知ってるカルピスより、ちょっとねっとりしてる気もするけれど……」

加蓮「よかった。私もちょっと頂戴。……んっ……ふうっ。んー、ポテトうまー」

藍子「ごくごく……」

加蓮「……よくカフェに行くから余計に思うのかな。なんか藍子が近い」

藍子「え? ……言われてみれば、加蓮ちゃんがちょっと近いです」

加蓮「変な感じだな。それだけカフェに行き慣れてるってことかも」

藍子「にらめっこをしたら、加蓮ちゃんには負けちゃいそう」

加蓮「そんなに強くないし、これだけ近いとさすがに照れちゃうよ。それに、ここ、人も多いから」

藍子「変に思われちゃうかもしれませんねっ」

加蓮「もしアイドルだってバレたら、どういう風に週刊誌にすっぱ抜かれるかな」

藍子「スキャンダルにはならないと思いますよ?」

加蓮「甘い。甘いって藍子。なんだってネタにする連中だよ? 遊び半分で記事にされるからね」

藍子「くすっ、それは大変ですね」

加蓮「ぜんぜん大変だって思ってない顔」

藍子「加蓮ちゃんとなら、それでもいいかなって」

加蓮「えー。私に迷惑がかかるのに?」

藍子「………………えっと……さすがに、はっきり言うのは、ちょっと勇気がいるけれど……」

藍子「加蓮ちゃんなら………………許してくれそう、だから…………」

加蓮「……! ……ふふっ、そっか!」

藍子「あ、あのぅ……」ウワメヅカイ

加蓮「それでいいよ。それでいいって言ったじゃん!」

加蓮「そうだ。もしホントにすっぱ抜かれたらなんてタイトルになるか、ちょっと考えてみよう」

藍子「えっと、密会とか、熱愛とか? ……あ、私たち女の子同士でした」テヘ

加蓮「男の気がないから同性に!? レズビアン疑惑! ……あれ、おかしいな、藍子が相手なら別にいいやってなりそう」

藍子「あははっ、私もです♪」

加蓮「よし、それを防ぐ為にPさんとデートしよう」

藍子「なるほど、その手――それ余計に駄目になっちゃいますよね!?」

加蓮「あははっ。週刊誌の疑惑なんてもんはさ、開き直ってりゃ勝てるのよ、こういうのは」

藍子「加蓮ちゃんは、こういうお話に強いですよね」

加蓮「藍子のところに下衆いインタビュアーが向かったら私がまとめてなぎ倒してさ、文句ある!? って怒鳴ってみたい」

藍子「途中から加蓮ちゃんのやりたいことになっていませんか?」

加蓮「ほら、あるじゃん。一生のうち1度は言いたい言葉って」

藍子「『ここは俺に任せて先に行け』とかですか?」

加蓮「おお、意外と過激なのが。『前の車を追って!』」

藍子「『ここからここまで全部くださいっ』」

加蓮「『別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?』」

藍子「『犯人はあなたです!』」

加蓮「『闇に飲まれよ!』」

藍子「それは言おうと思えば言えるのでは……?」

加蓮「『大丈夫、貴方が育てたアイドルだよ』」

藍子「実際に言ってますよね!?」

加蓮「『あ・ら・もー」

藍子「ニヤニヤしながら言わないでくださいっ!」

加蓮「週刊誌のタイトルだっけ。プロダクション離反の会議!? とか」

藍子「もしそんなお話になったら、さすがに思いっきり首を振っちゃいますっ」

加蓮「縦に?」

藍子「横に!」

加蓮「そこでこう言うの。アシスタントに言われてやりました」

藍子「そ、それだと今度はちひろさんが危ないですっ……!」

加蓮「あの人なら放っといてもいい気がする」

藍子「…………………………あ、あはは」

加蓮「んー? なんで今の否定しなかったのかなー? 藍子ー? んー?」

藍子「も、もう、いじわるはやめてくださいっ」

加蓮「うちの事務所ってそういうのないよね。週刊誌で誰かが蹴落とされるとか」

藍子「そうですね……。きっと事務所のプロデューサーさん皆さんが、私たちを守ってくれているんですよ」

加蓮「まあ一部、変なキャラ付けされてるのはいるけど。あのね、言っとくけど私はそんなすぐに死んだりしないからね?」

藍子「あはっ、誰に向かって言っているんですか~」

加蓮「え? やたら世話を焼きたがるお節介な誰かさんに向けて」

藍子「………………」ジトー

加蓮「疲れることはあっても死ぬことはないし」

藍子「週刊誌が大げさな物だとしたら、書かれていること、嘘ではありませんよね」

加蓮「むぅ」

藍子「ハンバーガー、ごちそうさまでした」

加蓮「ん。ポテト食べる?」

藍子「もうお腹いっぱいですから……」アハハ

加蓮「そっか。じゃあ自分で食べよ」パク

藍子「……」ゴクゴク

加蓮「……」ングング

藍子「……」フウッ

加蓮「あ、なんか急にここの店の制服が着たくなった」

藍子「ホントに急ですね」

加蓮「そういうことってない?」

藍子「うーん……学校が違う子の制服を見た時に、少しだけ? ほら、電車に乗ると、色々な学校の学生がいますから」

加蓮「あるある。セーラー服とかちょっと憧れてるんだよね……うぁ、ちょっと思い出したくない思い出が」

藍子「???」

加蓮「昔の話」

藍子「加蓮ちゃんは、お嬢様学校の制服なんかが似合うかな……?」

加蓮「初日から改造して登校する」

藍子「入学式を迎える前に生徒指導室行きになっちゃいますよ!?」

加蓮「風紀委員の藍子とかどう? 学校じゃそういうのないの?」

藍子「ありますけれど、漫画みたいなのじゃないですよ?」

加蓮「さすがにね。藍子が風紀委員だったら、いたずらっ子の私に振り回されてそう」

藍子「……風紀委員じゃなくても、そうなってます」ムゥ

加蓮「じゃあ生徒会とか」

藍子「生徒会ですか?」

加蓮「漫画で大きく取り上げられる筆頭の。この学校は私のだー、はははははー! って……お、ちょっと似合いそうじゃない?」

藍子「……加蓮ちゃん、私に似合わないキャラをやらせたいだけですよね」

加蓮「違う違う。ホントだって」

藍子「ううん……ならせめて、皆さんが楽しく暮らせる学校にできるなら、生徒会もいいかもしれませんね」

加蓮「でしょ?」

藍子「加蓮ちゃんが生徒会長になったら、どんな学校にしたいですか?」

加蓮「さー? まあそもそも、アイドルやってるとどうも学校って場所が遠くて」

藍子「あはは……ちょっぴり、分かっちゃいます」

加蓮「壁っていうのかな。違う世界って感じがしちゃうんだよね。なんか浮くっていうか」

藍子「友達、ちゃんといますか?」

加蓮「ぼっちでいいやってなりそう」

藍子「寂しいですよ。1人じゃ寂しいです」

加蓮「だって事務所に行けば誰かいるしー」

藍子「そうですけど……」

加蓮「藍子とクラスメイトなら面白そうだけどね。今から藍子の学校に転入しちゃおっかな」

藍子「また急なことを言うんですから。理由はどうするんですか?」

加蓮「うーん。学校の空気と立地がどうしても体に良くないので、とか」

藍子「そんなこと言われたらみんな困っちゃいます」

加蓮「転校を認めさせるのが目的でしょ? ならいいじゃん」

藍子「じゃあ、もしもそれで、泣いてお別れする人がいたりしたら」

加蓮「それでも藍子を優先する」

藍子「ちょっとくらいは悩んであげてください……」

加蓮「学校の去り際に涙を拭う演技を見せれば綺麗なハッピーエンドになるかな?」

藍子「なんだか学園ドラマみたい」

加蓮「いっそうちの事務所で1つの学校を作ればいいのに。人はメチャクチャ多いんだし」

藍子「あっ、それ面白そうです!」

加蓮「小学校から高校、ううん、大学までか。ぜんぶを事務所に入れちゃって、先生はプロデューサーさん達と大人組で」

藍子「授業でアイドルのことをやったりするんでしょうか」

加蓮「それなら学校も退屈しそうにないのに」

藍子「みんなでテスト勉強をするとか、すごく面白そう……!」

加蓮「制服もみんなで作っちゃおっか。アイドルが着る物だもん、そこらへんの市販品じゃダメだよね」

藍子「LIVEの衣装を、そのまま制服にしちゃいましょう!」

加蓮「いいねそれ。2週間おきくらいに制服が変わりそう」

藍子「学校の規則が大変なことになっちゃいます」

加蓮「テレビとかでも話題になるよ。見る度に制服が違う学校! って」

藍子「そうしたら、入りたくなる人も増えちゃうかもしれませんね」

加蓮「アイドルのことは先輩アイドルが教えるんだ。私、ちゃんと教えられるかな?」

藍子「加蓮ちゃんなら大丈夫ですよ。やっている姿を見せるだけでも、きっと分かってくれます」

加蓮「体力のつけかたなんかは逆に教えてほしいね」

藍子「基本トレーニングからですねっ。懐かしいなぁ……」

加蓮「ふふっ」

藍子「あはっ」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……で、さ」

藍子「はい」

加蓮「妄想とか想像とか、話すじゃん」

藍子「お話ししますね」

加蓮「じゃあ実行しよう、ってなっちゃうよねぇ……」

藍子「あはっ、私もかなり具体的に考えちゃいました。……アイドルのお仕事って、そういう風に生まれていってる感じがします」

加蓮「イメージを形にするのもアイドルの仕事……だって、Pさんが言ってたっけ」

藍子「なんだか、思ったことを簡単に口に出せなくなっちゃう気がします……」

加蓮「だからこうやってプライベートでやるんだよ。話をして、家に帰ったら、もう忘れてる」

加蓮「そういうところでは、アイドルじゃない部分も覚えておきたいかな」

藍子「なんだか難しいですね、アイドルって……」

加蓮「藍子」

藍子「はい」

加蓮「ほっぺた。塩がついてる」スッ

藍子「わっ。えっ、もしかしてずっとついていましたか!?」

加蓮「最初にポテトを食べた時からずっとなんだ、実は」ジー

藍子「も、もうっ、気付いたんなら言ってくださいよー」

加蓮「ふふっ、ごめんごめん」

加蓮「えいっ」ユビサシダシ

藍子「むぐっ」ユビクワエ

加蓮「しょっぱい?」

藍子「……」コクコク

藍子「ちゅぱっ……加蓮ちゃんの指も、しょっぱいです」

加蓮「ポテトの味がする?」

藍子「ちょっぴり。ポテトのにおいが」

加蓮「あはは、ちょっとお得な気分? ……ゃっ、くすぐったいっ。こらっ、藍子、指と爪の間はくすぐったっ、もうっ」

藍子「れろっ……あれ……? なんだか、これ、落ち着く……」

加蓮「そ、そう? 私はなんか変な感じなんだけど」

藍子「んぐんぐ……」

加蓮「ま、落ち着くんなら満足するまでやればいいよ」

藍子「ふぁい……」

加蓮「へんなの。お腹もいっぱいだし、そろそろ出よっかなぁ」

藍子「れろっ……あ、もう、ポテトの味がしなくなっちゃいました」

加蓮「指1本じゃ、ついてる塩もたかがしれて……」

藍子「えいっ」パクッ

加蓮「わっ。あ、そう。別の指を舐めるんだね」

藍子「……おいしい」

加蓮「噛まないでね? 舐めるくらいなら、まあ、いいけど。……それ楽しい?」

藍子「ポテトの味と、しょっぱい味と……加蓮ちゃんの味」

加蓮「私の味? どんなの、それ」

藍子「分かんないです……でも、加蓮ちゃんの味です」

加蓮「噛み付いたら分かるかな。……うん、やめとこ。腕も手首も汗っぽいし」

藍子「あむっ……」

加蓮「変な癖がついてもしらないよ?」

藍子「加蓮ひゃんなら、それでもいいかな……♪」

加蓮「……猫にでもなつかれた気分」

――帰り道――

加蓮「1時間かけて10本ぜんぶの指を舐めた訳だけど、ちょっとは満足した?」

藍子「はいっ」

加蓮「私はいいんだけどね……てっきり、終わった後に恥ずかしがるかと」

藍子「ちょっとだけ恥ずかしいですけど、あの……よかったら、またお願いしてもいいですか?」

加蓮「ハマっちゃった?」

藍子「ちょっぴり」アハハ

加蓮「それこそ週刊誌にすっぱ抜かれるよ? 変にいやらしく書かれてさ」

藍子「そうしたら、加蓮ちゃんがなぎ倒してくれるんでしょ?」

加蓮「これを機に加蓮ちゃん無双を発売して病弱イメージをふっ飛ばそう」

藍子「すごく体力がないキャラクターができちゃいそうです」

加蓮「ぐぬぬ……」ジトー

藍子「あはっ。ごめんなさい~」

加蓮「もう。ま、別に私の指を舐めようと顔を舐めようといいんだけどさ。あんまり人前でやらないでよ? それこそ変な噂になるんだから」

藍子「分かりましたっ。気をつけますね」

加蓮「はいはい。……そのうち私の指を食べたいとか言うようにならないでね?」

藍子「そっ、そこまでは言わないですよっ」

加蓮「藍子がいつもの笑顔で猟奇的なことしてたら、さすがに私でも引くよ」

藍子「やりませんってばっ」

加蓮「どうだか。藍子みたいな真面目な子の方が危ういってよく言うし」

藍子「加蓮ちゃんだって真面目じゃないですか」

加蓮「私は発散できてるからね。こうやって、藍子をからかって」

藍子「……どこからが冗談ですか?」

加蓮「マジシャンがタネ明しをしないっていうのと同じだよ」

藍子「もぅ……。指、がじがじって噛み付いちゃいますよ」

加蓮「ネイルしている時なんかは変な味がするのかな。なら、しばらくはマニキュア抜きにしとこ」

藍子「あ、事務所が見えてきました!」

加蓮「ホントだー。はー、まだまだ暑いね。戻ったらシャワーでも浴びよっかな」

藍子「着替え、持ってきているんですか?」

加蓮「無かった。貸してよ藍子」

藍子「制服の衣装でいいなら……」

加蓮「そうしたらどこかに出かけてみよっか。名前も知らない先生に呼び止められたりして」

藍子「そうなっても、加蓮ちゃんなら平気で対応できそうですよね」

加蓮「うーん。『あれ、先生じゃん。外で会うなんて偶然だね~』」

藍子「すごくそれっぽいっ」

加蓮「『ところで何を買ってるの? うわー、先生がこういう物を買っていいのかな? 黙っててほしい? ふふっ、どうしよっかなー』」

藍子「……加蓮ちゃん、もしかして普段もそういうことしてるんじゃ」

加蓮「やだな、そんなことをするのはPさんか藍子にだけだよ」

藍子「私もですか!?」

加蓮「藍子の弱みってなかなか見つけられないんだよねー。ね、ちょっとスマホ貸してよ」

藍子「嫌ですよっ!?」サッ

藍子「それに、別にスマホを見られても何もないですしっ」

加蓮「えー? ホントに? Pさんの隠し撮りとかないの?」

藍子「ありませんっ」

加蓮「じゃあ私の寝顔とか着替えとか」

藍子「………………」アッ

藍子「な、ないですよ?」

加蓮「え?」

藍子「え?」

加蓮「…………」

藍子「…………」


<待てコラァ!! 撮るなって言ったでしょうがああああああああああああ!!
<ひゃ~~~~~っ! ち、違うんです、ホントにないんです~~~~~っ!!



おしまい。

乙、このシリーズ好きだなー
シリーズ名ないなら加蓮と藍子をもじって「蓮藍喫茶」シリーズ…なんて、センス皆無w

更新速度がゆるふわしてない(褒め)

読んでくださり、ありがとうございます。

>>58
シリーズ名……一応、ぼんやりと「レンアイシリーズ」とだけ書き留めていた私が今ちょっと半泣きになってそっち見てます
「カフェテラスシリーズ」でもいいのですが、よく考えるとあんまりカフェテラスに行っていないんですよね……。
ちょっと考えてみますね。他の方も、何かいいのがあったらアイディアを頂けると幸いです。

それと、そのシリーズ名案、ちょっとそのままお借りしてもよろしいですか?
別のアイディアが浮かんだ物でして……。


>>59
(・ω<)ワァイ

>>60
おっとと、やぶへびだったかな(センス)
いや、俺も実際この二人もじったら「れんあい」だよなーとかぼんやり思ってたものでw
何か使っていただけるってことですかね、どうぞご随意に!

>>61
ネーミングセンスがアレなのは自覚しているので大丈夫ですよ~
ご許可いただきありがとうございます。では、ちょっとお借りしますね。

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