モバP「余命ドッキリ」 (115)


・これはモバマスssです
・P表記で進めます
・キャラ崩壊があるかもしれません
・書き溜めはありませんが2日以内に終わらせます


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P「誰も来ないとする事ありませんね」


ちひろ「いやこの書類終わらせてから言って下さいよ」


P「あっはっは、いいでしょう!いいですとも!」


ちひろ「なんだか深夜のテンションみたいになってますよ?何徹ですか?」


P「いやいや、今日は普通に寝てましたよ」


ちひろ「ほんとですか?体調壊したら元も子もありませんし、ドリンクでも飲んだら…」


P「…そう言えばちひろさん、こないだ他のプロデューサー達から聞いたんですけど」


ちひろ「何をですか?」


P「なんでも、あいつら定期的に無料でドリンク貰ってるみたいなんですよ」



ちひろ「あー、成果に応じて配布されるみたいですね」


P「ハゲとホモを貶めるわけじゃないですけど、俺の方が上げてると思うんですけど」


ちひろ「でもこのあいだ、Cu部門のプロデューサーのおかげで危険なお薬常用者が減ったみたいですよ」


P「割と新入りのガタイのいいプロデューサーも良くタダで貰うって言ってますし…」


ちひろ「…まぁまぁ。よそはよそ、うちはうちですよ」


P「そうですか…」


ちひろ「あっ、そんな事よりプロデューサー。そろそろアイドル達が来るんで書類仕上げちゃって下さいね」


P「…うぃっす」



P「ゲホッゲホッ…あ、ちひろさん」


ちひろ「何ですか?手が動いていませんよ?」


P「最近、余命ドッキリがはやってるらしいんです」


ちひろ「余命ドッキリ…ですか?」


P「はい、なんでもアイドルとの絆を確かめるのに最適だとか」


ちひろ「確かによく、765さんもやってると聞きますけど…」


P「かの偉大な765プロダクションも行っているんですから、うちの部署でもやってみようと」


ちひろ「構いませんけど、私は責任とりませんからね…」




ちひろ「で、どんな設定にするんですか?」


P「あれ?結構ノリノリですね」


ちひろ「どこぞの事務員が、特典映像として今後のCDにつければ大儲けと」


P「あ、流石に撮影は無しでお願いします。幾ら何でもアイドルに悪いですし」


ちひろ「…じょ、冗談ですよ?ですからその冷たい視線は辞めて下さい」


P「…」



P「取り敢えず…胃ガンで余命あと半年くらい、という設定でどうでしょう」


ちひろ「胃ガンですか。確かにわかりやすく重い病気ですよね」


P「それでも年末までは働く予定という設定でいきます」


ちひろ「仕事人間ですねぇ。ドッキリを仕掛けるのは来たアイドル全員にですか?」


P「いえ、午前中に事務所に来る予定の5人にします。今、大切な話があるから早目に来てくれとメールしました」


ちひろ「全員分のスケジュールを把握してるなんて流石ですね」


P「うちの部署はまだ数十人しかアイドルがいませんから」


ちひろ「もし765さんと比べているんだとしたら、比較対象間違えてますよ」



P「ふぅ…あー、緊張してきました」


ちひろ「とは言え今更引けませんからね。気合い入れて下さい!」


P「はぁ…ノリノリですねほんとに」


ちひろ「あっ、来たみたいですよ」


P「…さて、覚悟を決めますか」


ガチャ


凛「おはよう、プロデューサー、ちひろさん」


P「おう…おはよう…」


ちひろ「…おはよう、凛ちゃん」



凛「どうしたの?大切な話なんて。それに二人とも、何だか暗いよ」


P「…ん、あぁ、ゴメンな。少し考え事してて」


ちひろ「…プロデューサーさん…本当に伝えるんですか?」


P「…はい、いつかは言わなければいけない事でしたから…」


凛「…二人とも、本当どうしたの?」


P「…なあ、凛。アイドルやってて、楽しいか?」


凛「そりゃ、楽しくなきゃ辞めてるよ。それが?」


P「いや、少し気になってな。最初の頃は、どうにも楽しみ切れてないみたいだったから」



凛「変なプロデューサー。今日なんかおかしいけど、寝不足?」


P「…凛は、さ。もしこれから何があっても、アイドルを続けていけるか?」


凛「…本当に大丈夫?今日のプロデューサーおかしいよ」


P「頼むよ、大事な事なんだ!」


ちひろ「プロデューサーさん、落ち着いて…」


P「あっ…す、すみません…」


凛「プロデューサー…」




P「これからまだまだ沢山、大変な事があると思う。壁にぶつかる事もあると思う。そんな時…」


凛「大丈夫だよ。私は絶対に諦めない」


P「凛…」


凛「プロデューサーが教えてくれたでしょ。私達は一人じゃないんだから。困った時も、仲間がいれば乗り越えられるって」


P「…そう、だったよな」


凛「だから、私が諦める事なんてない。絶対にね」


P「そうか…それなら安心だ」


凛「それに、そんな時はプロデューサーが必ず側に居てくれるでしょ?それなら、絶対大丈夫だよ」



P「…凛、本当に申し訳無いんだけどさ…」


凛「ん?何?まだあるの?」


P「あぁ…落ち着いて聞いてくれるか?」


凛「…プロデューサー?」


P「俺は…多分もう、凛を側で支えてやる事は、出来ない…」


凛「…え?…ど、どう言う事?」


ちひろ「プロデューサーさん…」


P「俺な…もう、長くないんだ」


凛「…は?」



P「実は、胃ガンでな…医者が言うには、もう1年も無いって…」


凛「…ウソ…でしょ?」


P「すまん…い、一応年末までは働かせて貰う予定で


凛「そんな事どうでもいい!!プロデューサーは?本当にどうにもならないの?!」


P「…ほんとにすまん…」


凛「…なんで…」


P「凛…」


ちひろ「凛ちゃん…」




凛「なんで?!折角目標が見つかったのに!プロデューサーと一緒にトップを目指すって決めたのに!」


P「凛…」


凛「どうしてプロデューサーは…またそうやって私から離れていっちゃうの?!」


凛「私が最初にデビューして、その頃はいつも二人三脚で歩いてくれたよね。いつも私と一緒に居てくれたよね!」


凛「でも、それからどんどん別のアイドルも担当して…気付けば私だけのプロデューサーじゃなくなって…」


凛「頭では理解してても、心は苦しかった。それでもまた、あの頃みたいにずっと側に居てくれる様になるって!」


凛「そう信じて頑張ってきたのに!トップアイドルになれば、今度こそ私だけを見てくれる様になるって!」


凛「なのに…どうして…」



P「凛…ほんとにすまん…」


凛「嘘なんでしょ…」


ちひろ「凛ちゃん…」


凛「嘘って言ってよ…」


P「凛…」


凛「嘘って…言ってよ…ねえ!」


P「…あぁ、嘘だぞ」


凛「………は?」



P「まぁ、うん。ドッキリです。はいちひろさんこれ持ってー」


ちひろ「わ、何時の間に作ったんですか。はい、ジャーン!」


凛「………ドッキリ…成功…?」


P「見事に引っかかってくれたなぁ、凛!お父さん嬉しいぞ!」


ちひろ「どうせなら録画しておきたかったくらいです!」


P「こうも綺麗にきまると面白いですね!」


ちひろ「ええ!流行るのも分かる気がします!」


凛「…言い残す事は?」


P「…調子乗ってすみませ



P「…ふぅ、辛かった」


ちひろ「大丈夫ですか?かなりボコボコにされてましたけど…」


P「あれ、全然力入ってませんでしたよ。目をウルウルさせてましたし」


ちひろ「可愛いですねぇ。それに、凛ちゃんもしっかりと目標をたててるみたいでよかったです」


P「大丈夫、とは言い難いですけどね。でも、あれなら挫折する事は無いでしょう。凛も成長してるなぁ」


ちひろ「何良い話だった風にまとめてるんですか…」


P「それにしても、心が痛い…」


ちひろ「辞めれば良いのに…」


P「いえ、続けますよ。辛いですけど、続けなければいけないんです…」


ちひろ「プロデューサーさん…?」


P「あぁいえ、メールしちゃったから引き下がれないなぁと」




ちひろ「で、次に来るアイドルは?」


P「記憶に違いがなければありすです」


ちひろ「うわぁ…まだ子供なのにエゲツない…」


P「子供扱いをするなと言ったのはありすの方ですからねぇ」


ちひろ「プロデューサーさん、目が輝いちゃってますよ」


P「おっといけない、ハイライト消しておかないと」


ちひろ「なんでそんな事出来るんですか…」


P「ホモのところのアイドルに教わりました」


ガチャ


ありす「おはようございますプロデューサー、ちひろさん」


P「おう…おはよう、ありす」


ありす「プロデューサー、何度も言ってますが、ありすではなく橘です」


P「あぁ、そうだったな、悪い悪い」


ありす「まったく、一体何度言えば…」


P「あぁ、本当にすまないな、ありす…」


ありす「ですから…プロデューサー、大丈夫ですか?」


P「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら大丈夫じゃない方だな。なぁ、ありす。アイドルやってて楽しいか?」



ありす「楽しくなかったらとっくに辞めてます」


P「まぁ…そうだよな」


ありす「プロデューサー、どうしたんですか?調子が悪いなら病院に…」


P「それはもう良いんだ。それより、さ。これから先、もし壁にぶつかったとしたらどうする?」


ありす「解決方法を調べるので大丈夫ですから」


ありす「なんて、冗談ですよ」



ありす「以前の私だったら、困ったら直ぐタブレットに頼っていたかもしれません」


ありす「でも、今は違います。此処には仲間がいて、プロデューサーがいて」


ありす「お互いに頼りあえて、助け合える。ですから」


ありす「もしこの先にどんな大きな壁があったとしても、必ず越えていけます」


ありす「時々嫌な格好をしなければならない時もありますけど、それもプロデューサーが私の事を考えての選択だと信じてますし」


ありす「これからも。プロデューサーや仲間が、私を導いてくれますから」


ありす「ですから、その心配は必要ありません」


ありす「ですよね、プロデューサー?」


P「そうだな、ありす。お前には沢山の仲間がついてる」


P「でもな、もう俺は…」


ありす「プロデューサー…?」


P「俺がお前を導いてやれるのは、此処までだ」


P「大丈夫だ、これからだってお前は絶対に進んでいける」


ありす「え?どう言う事なんですか?!」


P「ありす…落ち着いて聞いてくれ。俺は…」


P「胃ガンでな。あと1年も無いんだ…」


ありす「胃ガン…?え、プロデューサー、胃ガンだったんですか…?」


P「あぁ…もう結構進行しててな…。助かる見込みは無い、って」


ありす「す、少し待って下さい。…胃ガン、ですよね?レーザー治療は?」


P「それで対処出来るのは初期、早期発見出来た時だけだ。胃ガンってのはなかなか見つかりにくいもんでな、発見出来た時点でもう手遅れだった」


ありす「それでは…抗癌剤は?」


P「今も延命用に使ってるよ。でも、やっぱり見つかるのが遅過ぎた。放射線治療も、もう今更意味は無いって…」


ありす「他には…他に何か手は無いんですか?!」


P「無い…一応年末までは、働かせて貰える事になってるから、それまでは一緒にいられるが…」



ありす「…」


P「だからって、ありすが悲しむ必要は無いからな。ちゃんと引き継ぎ先も決まってるし、仕事が無くなるわけじゃ


ありす「私は…私は、プロデューサーに何も出来ないんですか?」


P「ありす…」


ありす「調べたところで、胃ガンなんて私にはどうしようも無い事です…私は、何も…」


P「…ありす、一つ、いいか?」


P「ありすには、笑っていて欲しい。俺に笑顔を見せて欲しい」


P「正直、今もかなり辛い。それこそ胃がよじれそうなくらい」


P「それでも、そんな苦しみを吹き飛ばしてくれるくらいとびきりの笑顔を、見せてくれないか?」


P「ありすにしか、出来ない事なんだ…!」



ありす「プロデューサー…ズルイです。そんな事言われたら…余計、泣きそうになるじゃないですか…」


ありす「笑えなんて…無理です…無理に決まってるじゃないですか!」


ありす「やっと…自分の名前が好きになれたのに…私の名前を呼んでくれる事を、嬉しいと思えたのに!」


ありす「何でですか!何で1年なんですか!」


ありす「私の夢は…まだあと4年は叶わないのに…」


ガバッ!ギュッーー


P「ありす…ゴメンな…」





ありす「…許し…ません…何度言ってもありすって呼ぶプロデューサーなんて、許してあげません…」


ありす「でも…」


ありす「橘なんて呼んだら、もっと許しませんから…」


P「…ありす、もう一つ、いいか?」


ありす「…なんですか…?」


P「抱き着いたままでいいから、後ろを見てごらん。プレゼントだ」


ありす「プレゼント…ですか?」


P「あぁ、今のありすなら、きっと喜んでくれると思う。さぁ、ほら」


ありす「プロデューサー…」


グルッ


ちひろ「はい!ドッキリ大成功でーす!」


ありす「」



ちひろ「ありすちゃんも気持ち良いくらい綺麗に騙されてくれましたねぇ」


ちひろ「いやー、プロデューサーさんどこでそんな演技力身に付けたんですか?」


P「…ちひろさん、ほんと良い笑顔してますね。ありす涙目で出てっちゃいましたよ」


ちひろ「それはプロデューサーさんのせいでしょう。貴方がドッキリを仕掛けなければ良かっただけなんですから」


P「ドッキリ…ですか…あーそれにしてもお腹痛い」


ちひろ「プロデューサーさんも内心笑い堪えてたんじゃないですか」


P「でも、ありすもかなり成長しているんですね。やっぱり嬉しいです」


P「ほんと、良かったです…」


ちひろ「プロデューサーさん…?」


P「あ、そろそろ楓さんが来ると思いますよ」



ガチャ


楓「おはようございます、プロデューサーさん」


P「おはようございます楓さん。ワザワザ少し早く来てもらっちゃってすみません…」


楓「いえいえ、ところでお話しとは?」


P「ええと…楓さん、アイドルやってて、楽しですか?」


楓「それは…どう言う意味ですか?」


P「本当にそのままの意味です。今の仕事を楽しめていますか?」


楓「ええ、もちろん楽しいですよ。もし言葉にするとすれば、ワークワークしてます」


P「ツッコミませんよ?」


楓「そう言えば、蝉の鳴き声ってどんな意味なんでしょう」


P「思いついたダジャレを直ぐ口にしないで下さい…」


楓「ふふっ、でもこうして楽しくお喋りできる様になったのもプロデューサーのおかげなんですよ?」


P「確かに、最初の頃はあまり喋らない人でしたからね…」


楓「そんな自分に不満はあれど、変わろうとは思いませんでした」


楓「ご覧の通り、今は違いますけれど」


楓「一緒に何度も温泉に行きましたし」


楓「今は…楽しい事だらけです」


ちひろ「…プロデューサーさん?アイドルに手を…」



P「いやいや、出して無いですから!楓さんも、まだ温泉なんて行った事無いでしょう…」


楓「まだ…?という事は


ちひろ「プロデューサーさん…?わかってますよね?」


P「あっはっは、まぁ機会があればご一緒しますよ。機会があれば…」


楓「言質、取りましたよ?」


P「えぇ…一緒に温泉、行ってみたかったです…」


楓「プロデューサー…?」


P「…楓さん…落ち着いて、聞いて頂けますか?」



P「…俺、胃ガンなんです…」


P「医者から、もう一年も無いって言われてて…」


ちひろ「プロデューサーさん…」


楓「…ほんと…なんですか?」


P「ショックを受けるのは分かります…でも、本当の事なんです…」


楓「…プロデューサー…」


P「ほんと、すみません。貴女をトップアイドルまで導く約束、守れなくて…」


楓「…」



楓「プロデューサーさん…ドッキリだってバラすなら今のうちですよ…?」


P「ドッキリでこんな事…言うはず無いじゃないですか…」


楓「…ですよね…すみません…」


P「…楓さん?」


楓「すみません、プロデューサー…少しの間だけ、むこうを向いて貰えますか?」


楓「暗い顔を、見せたくないので…」


P「…泣かないで下さい、楓さん」


P「俺は、貴女という女性に出会えて幸せでした。こんな時まで駄洒落で俺を励まそうとしてくれる、そんな貴女の事…俺は…」




P「楓さん、少しむこうを向いていて貰えますか?貴女に…見せたいものがあるんです…」


楓「はい…」クルッ


P「喜んで貰えるか分かりませんが…」


P「ちひろさん、例のアレをお願いします…」


ちひろ「はい、どうぞ」スッーー


P「楓さん、こっちを向いて下さい。俺から貴女への、サプライズです」


楓「一体、なんで…す…」


『ドッキリ大成功!!』



楓「ドッキリ…だったんですか…?」


P「…申し訳ありませんでしたぁ!ほんとにすみません!!」


ちひろ「うわぁ…アイドルがしちゃいけない笑顔になってますよ…」


P「何でもしますから許して下さい!ちひろさんが!!」


ちひろ「なんで私なんですか!私は止めたじゃないですか!」


楓「…ふふっ、私は怒ってませんよ?プロデューサー?」


P「あっはい。ほんとにすみません…」


楓「あ、今週末私オフでしたよね?一緒に箱根に行きませんか?」


P「いやいや、幾ら何でも男の俺と二人きりと言うのは…」


楓「プロデューサーはこねーんですか?これだけ私を傷付けておいて、ですか?」


P「かならず金曜日までに仕事は全部終わらせます」


楓「では、仕事に行ってきます」


楓「それと、プロデューサー?こんなドッキリを許してあげるのはこれ一度っきりですからね?」


P「はい…ほんとすみません…」


ちひろ「いってらっしゃい、楓さん」


バタン


ちひろ「プロデューサーさん?分かっているとは思いますがアイドルと温泉なんて…」


P「…はぁ」


ちひろ「プロデューサーさん?」


P「あっ、分かってますよ。何とかします…」


P「…楓さんの涙、もう見たくないなぁ…」


ちひろ「なら、今後こんな嘘はつかなければいいだけですよ」


P「そう…なんですけどね…」


P「そろそろ、小梅が来る時間だな…」


ちひろ「小梅ちゃんですか…なんだかあの子なら嘘だって見抜けそうな気がしますよね」


P「俺はまだ生きてますし、流石に分からないんじゃないでしょうか…」


ちひろ「でも実際、魂が薄くなってる!とかあるのかもしれませんよ」


P「鬼か悪魔かにでも吸い取られてるんですかね、俺の魂」


ちひろ「お金と魂ってどっちの方が大切ですか?」


P「どっちも大切なんで俺に近寄りながら財布に手を伸ばすのは辞めて下さい」


ガチャ


小梅「…え、えっと…おはようございます」


P「おう…おはよう小梅」


ちひろ「…おはようございます、小梅ちゃん…」


小梅「二人とも暗い…けど…どうしたの?」


P「小梅…落ち着いて聞いてくれ」


P「俺、胃ガンであと一年しか保たないんだ…」


小梅「あと一年…しか?」



小梅「…ほんとう…なの…?」


P「あぁ…冗談でこんな事言えるはず無いだろ…」


小梅「も、もし嘘だったら…一緒にこれ、見てもらう…」


『ムカデ人間1〜3』


P「…ほんとごめんなさい、ドッキリです」


ちひろ「うわぁ…」


P「普通のホラーなら大丈夫なんです。全然怖くないんです」


P「でもアレ怖いとかそう言うのじゃないんですよ」


P「男にはプライドより大切なモノがあるんです」


ちひろ「何をいきなり熱弁してるんですか…」



小梅「…だよね…」


小梅「だって…本当はそんな…」


P「…小梅、悪いけど少し早目に現場に向かって貰えるか?」


小梅「は、はい…」


ちひろ「…」


小梅「…えっと…お大事に…?」


P「あぁ、小梅も体調気を付けろよ」


ちひろ「小梅ちゃんって一体何者なんでしょうね?」


P「さぁ…まぁアイドルですし」


ちひろ「アイドルって一体何なんですか…」


P「さぁ…あ、次来る奈緒で最後です」


ちひろ「分かりました…」


P「……」


ちひろ「……」


ちひろ「……あの…」



ちひろ「そう言えば、プロデューサーさんって胃ガンって言う設定なんですよね?」


P「はい、それが何か?」


ちひろ「普通に病気でーとか癌でーとかでも良いと思ったんですよ。どうして胃ガンなんですか?」


P「一般的に、日本人で一番多いのは肺ガンなんです」


P「でも俺は喫煙してないじゃないですか。それだと本当に肺ガンなのかどうか疑われてしまうかもしれません」


P「そうでなくても、喫煙者だったんだと思われるのも嫌ですから」


P「ですから、次に多い胃ガンにしたんです」


P「ほんとに…それだけの理由です」


ちひろ「…それにしても、ありすちゃんとの会話を見てて思いましたけど、少し胃ガンに詳し過ぎませんでした?」


P「あの程度、少し調べれば直ぐ分かる事ですよ」


ちひろ「…なんで、調べていたんですか?」


P「…どうして、でしょうね」



ちひろ「それに、幾ら何でも演技上手すぎませんか?」


P「いつもアイドル達の演技を間近で見てますからね」


ちひろ「それにしても、ですよ…」


ちひろ「まるで、いつかそれを告げる日に備えて、いつも練習してたみたいに…」


P「…お褒め頂き光栄ですよ。アイドル達にバカにされない程度には、俺も勉強してるんです」


P「目のハイライト消して…っと」


P「俺、もう長くないんです…」


P「どうです?なかなかうまいでしょう…?」


ちひろ「ええ…でもそれって


バンッ!!

恋の病気になれば出来るんじゃないですかね、多分


加蓮「ねぇ!どう言うこと?!」


P「え?加蓮?!」


ちひろ「…プロデューサーさんの記憶違いですか?」


P「いえ…そんな筈は…」


加蓮「ねえ!長くないってどう言う事なの?!」


P「…予定より来るのが早いな、加蓮…」


加蓮「………」


ちひろ「………」


P「…はぁ。落ち着いて、聞いてくれるか?」


P「胃ガン、なんだ…あと一年も無いって、医者が…」


加蓮「え…うそ…」


P「黙ってて、すまなかった…」


加蓮「ほんと…なの?ドッキリとかじゃ…」


P「……」


加蓮「……」


P「申し訳無いけど、お前たちのプロデューサーとして働けるのも今年の末までだ…」


P「まぁ、引き継ぎ先は決まってるから仕事に関しては心配しないでくれ」



加蓮「…プロデューサーはどうなるの…?」


P「なんとかギリギリまで仕事させて貰えるよう頼んだからな」


P「そしたら残りは…そうだな、のんびり過ごすよ」


ちひろ「プロデューサーさん…」


加蓮「プロデューサー…私…」


P「ほんとうに、ごめん…」


加蓮「……」


P「…な、なーんつってな。ドッキリだよ、ドッキリ」


P「あ、あははは。綺麗にひっかかってくれたなぁ、加蓮!」


加蓮「プロデューサー…」


P「……」


ダッ!


バタンっ!!


ちひろ「…加蓮ちゃん、出てっちゃいましたね…後で説明


P「ドッキリだよ、かぁ…」


ちひろ「…プロデューサーさん…?」


P「あぁ、すみません。少し緊張でお腹痛くて…」


ちひろ「…ほんとうに緊張で、ですか?」


P「…そろそろ奈緒が来ます。最後の一人なんで、頑張りましょう」


P「っ!ゴボッ、ゴボッ!」


ちひろ「ぷ、プロデューサーさん?!」


バタン


奈緒「おはようごさいま…って、プロデューサーどうしたんだ?!」


P「おう…おはよう奈緒」


奈緒「そんな事より!大丈夫なのか?!」


P「なに、ちょっとむせただけだよ」


奈緒「なんだ…おどかすなよ…」


P「心配してくれたのかぁ?にやにや」


奈緒「ば、ばか!別に心配なんか!てゆーか、口でにやにやって言うなよ」



P「…そうだな、俺は馬鹿だ…ほんとに…」


奈緒「お、おい…別にそこまで言ってないだろ…」


P「…なあ、奈緒。落ち着いて聞いてくれ…」


奈緒「な、なんだよ急に改まって…」


P「…今まで色々と迷惑かけて、すまなかったな」


奈緒「…は?」


P「まだこの仕事に慣れてなかった頃の俺を、馬鹿だのアホだの言いながら支えてくれて、凄く感謝してる」


奈緒「ば、はか!いきなりそんな事言い出すなって!」






P「そうやって素直になれないながらも、それでも周りの事をちゃんと考えてあげられるいい子だって、俺は知ってる」


P「ほんとに今まで、どれだけ助けられてきた事か…」


P「そして、そんなお前に対して、俺はもう何もしてやれない」


P「返せない程の恩があるってのに、返すだけの時間が無いんだ…」


奈緒「おい、ほんとにどうしたんだよ!」


P「俺…俺な…長くて、あと一年なんだ」


奈緒「…は?…え?」


P「胃ガンで…な。医者も、もうどうにもならないって…」


奈緒「…な、なぁおい、嘘なんだろ?いくらなんでも…」


P「ほんとうに、すまない…」


奈緒「…と、唐突過ぎて何がなんだか…」


P「いきなり過ぎるかもしれない。でも、いつかは言わなきゃいけなかったんだ」


P「明日こそ、明日こそと思ってた。でもな、今の俺にとっては、明日が確実なモノじゃないんだよ」


P「だから、今日。こうやって、感謝の気持ちとともに伝えさせてもらった」


P「ほんとうに…ごめんよ。そして…ありがとう…」


奈緒「…」


ちひろ「…プロデューサーさん…」


P「…一応、年末までは働かせてもらえることになってるんだ」


P「だからそれまで…少しでも、恩返しをさせてくれ」


奈緒「…恩返しなんて、いいよ…」


奈緒「そんなん…そんなん!どうだっていい!」


奈緒「馬鹿じゃないのか?!恩返しだの!感謝してるだの!」


奈緒「確かにあたしはプロデューサーの為に、って頑張った事もあった」


奈緒「でもそれは、それ以上にプロデューサーが私の為に頑張ってくれてたからなんだ!」


P「奈緒…」


奈緒「だから!一方的な感謝の気持ちなんかじゃなくて…そうじゃなくて…」



P「…そう、だよな」


P「俺たちは、お互いに支え合って進んできた、そうだよな」


P「…はぁ。また奈緒に借りができちゃったなぁ」


奈緒「お互い様、だろ…でも、忘れないでくれ」


奈緒「あたしだって、プロデューサーに対して言葉に出来ないくらいに感謝して


P「ゴボッ!ゴボッ!!」


奈緒「?!プロデューサー!」


P「大丈夫だ!こんなん、もう慣れたよ…ゴボッ!」


奈緒「慣れたって…病院行った方がいいんじゃないか?!」


P「ほんと、奈緒は優しいな…でも、病院に行ったところでどうにもならない」


P「だから…ゴボッ!…少しでも長く、この事務所で皆と過ごしていたいんだ」


奈緒「…プロデューサー…」


P「あぁ…そうだ…奈緒に、コレを見せてあげなきゃ」


P「俺からの、感謝の気持ちだ…ちひろさん、それをとって下さい」


ちひろ「…はい、どうぞ…」


P「奈緒、今までほんとにありがとう。これを、どうしてもお前に見せたいんだ」


奈緒「なんだよ!そんな別れの言葉みたいなの辞めろよ!」


P「締め括りと言う意味では、確かに間違って無いな。さ、ほら…」




『ドッキリ大成功!』





P「ぷくくくくくくく、あっはっは!」


P「可笑しくって腹痛いわぁ!!」


P「いやー、なかなかいいモノ見せてもらったぜ!」


P「うわぁっはっはっはっはぁぁぁぁ」


奈緒「…プロデューサー…」


P「…はい」


奈緒「救急車は呼んであげる」


P「あっ、ちょっ、流石にその分厚いクリアファイルの角はやば



P「…顔が痛いです」


ちひろ「流石に笑い過ぎでしたよ」


P「まぁまぁ、あのくらいふざけないと暗いままになっちゃうじゃないですか…」


ちひろ「そう、ですね…」


P「ゴボッ!ゴボッ!…あー、お腹痛い」


ちひろ「プロデューサーさん…?」


P「あぁ、笑い過ぎて、ですよ。それにしても、ほんとに良いアイドルに恵まれてますね、俺」


P「みんな、あった頃より格段に成長して」


P「これなら安心だな…うん、大丈夫だ」


P「これなら…」


ちひろ「プロデューサーさん…貴方ほんとは」


P「すみませんちひろさん。少し、外の空気吸ってきます」


バタン




P「…ちひろさん、心配してたなぁ…」


P「はぁ…」


P「…」


P「…」


P「…」


P「はは…」


P「ははは……」


P「くっくっくっ……」


P「ふふふっふっふっふっ……」


P「ひひっひっひっひっひひひぃ…」


P「あっはっはっはっはっはっはっ!!!」



P「見事に騙されやがって!黄緑蛍光色の悪魔め!!」


P「即興で考えたドッキリなのに綺麗にハマってくれやがって!!」


P「案外チョロいじゃないっすかぁ!」


P「あっはっはっはっほぉ!!」


P「ま、アイドル達の演技力に感謝だな」


P「『逆ドッキリに協力してくれてありがとう。アドリブだってのに、流石アイドルだな!』っと」


P「いやー、凛の重さもありすの焦りも楓さんのいつも通りを装おうとする健気さも」


P「小梅のわざとドッキリを失敗させてからの変化球も奈緒の必死さも!」


P「完璧だったぜぇ!こりゃ誰だって騙されるわ!」



P「常日頃から俺の事をATM扱いした罰だ!」


P「たっまらねぇな!この爽快感!」


P「やばい、癖になりそう!」


P「あーっ、もっと早くにやってみればよかったなぁ」


P「っと、そろそろ仕事進めないと…」


P「……………」


P「……………あ」






P「………加蓮、どうしよ…」






くぅ疲
6人で2日なら余裕だと思ってゆっくり書いてたらオーバーしました。
ほんとにすまない、非力な私を許して下さい。
HTML化依頼出してきます。
加蓮の続きはまた別に投稿しますのでそちらもよろしくお願いします。

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