男「オレは都市伝説になりたいんだッ!」(19)

男「妙なこと聞く奴だな。もちろんあるさ」

友「なになに?」

男「オレの願いはな……」

男「都市伝説になりたいんだッ!」

友「!?」

友「都市伝説? なにそれ?」

男「知らないのかよ! だったらレクチャーしてやるよ!」

友「別にしなくてもいいけど……あとで自分で調べるし」

男「うるせえ! するったら、するんだ!」

男「オレと知り合ったばかりのお前は知らないだろうが」

男「オレは、“レクチャー押し売り野郎”として有名だからな!」

友「はあ……」

男「いいか? 都市伝説ってのは、いってみりゃ“すごく広まったウワサ話”だ」

男「こんな事件があったらしい、こんな動物が出たらしい、なんてのが」

男「どんどん広まっていくと、都市伝説って呼ばれるようになるんだ」

友「なるほど、ようするにホントかウソかよく分からない話ってことか」

男「そういうこと。まぁ、ほとんどの場合、作り話だろうけどな」

友「たとえば、どんなのがあるの?」

男「そりゃもう、いっぱいあるさ」

男「人間の顔した猫“人面猫”とか、鼻の穴が裂けてる“鼻裂け女”とか」

男「ある企業のビルは有事の際には要塞に変形するとか」

男「あの大事故は実は事故じゃなく、仕組まれたものだったとか」

男「名前を書くと人が生き返るメモ帳、面接中暴言吐いたら採用された大学生……」

男「黄金でできた土地、願いを叶えてくれる幽霊、猛烈に足がくさいオッサン……」

友「なんかもう、ウワサ話じゃなくてホントのことまで混じってるね……」

男「――ってわけだ! オレもこういう都市伝説になりたいんだ!」

友「なるほどねえ」

男「なんか、レクチャーしてたらウズウズしてきた!」

男「よぉし、こうしちゃいられねえ!」

男「オレは都市伝説になる!」スタタタッ

友「お、おいっ! どこ行くんだよ!」

男(今は真夜中の午前2時……)

男(夜中にダッシュしまくって、“夜中ダッシュ男”といわれるようになるぞ!)

男「うおおおおおっ!」ダダダッ

男「うおおおおおおおおっ!」ダダダッ

男「うおおおおおおおおおおっ!」ダダダッ

男「うおおおおおおおおおおおおっ!」ダダダッ

警官「そこの君」

男「おまわりさん!?」

男「まさか、オレは早くも都市伝説になったんですか!? やったぁ!」

警官「都市伝説? なにをいってるんだね、君は」

警官「大声で叫びながら走っている不審者がいると通報があった」

警官「ちょっと交番まで来てもらおうか」

男「ううう……そんなぁ……」

男(あぁ~くそっ、ひどい目にあっちまった)

男(だったら……資格を取りまくって)

男(都市伝説“パーフェクト資格コレクター”と呼ばれるようになってやる!)

男(もちろん、こういう人種は現実にもいるにはいるらしいが)

男(さすがにこの世に存在する全ての資格を取得した人間はいないはず!)

男「そうと決まれば、さっそく勉強だ!」

男「…………」

男(書店に行って、資格コーナーを覗いてみたら、資格ってあんなにあるのかよ!)

男(ナメてたよ……資格ってやつを……)

男(あれを全部取得しようとしたら、都市伝説になる前に)

男(オレの人生が終わっちまうっての!)

男(やっぱり、怪奇現象の方向から攻めるのが手っ取り早いよな)

男(こうなったら……!)

男(近所の公園の池に潜んで、都市伝説“魚人間”としてデビューしてやる!)

男(オレは……都市伝説になる!)チャプ…

男「……ぷはぁっ!」ザバッ

男「ゲホッ、ゲホッ、ゴホッ、ゲホッ!」

男「ハァ……ハァ……」

男「あ、あやうく溺死しちまうところだった……」

男「しかも、水はきったねぇし……うええっ!」ゲホゲホッ

男(オレがなりたいのはあくまで都市伝説であって、ニュースになるのはゴメンだぜ!)

男「くそっ、オレは都市伝説になることはできないのか!」

男「こんなに頑張ってるのに、オレの願いは叶わないのか……!」

友「いや……そんなことないと思うよ」

男「へ?」

友「このサイトを見れば分かるよ」スッ

男「……都市伝説を扱う最大手サイトじゃないか」

男「こ、これは!?」

新都市伝説『都市伝説になりたがる男』

重度の都市伝説マニアである男。

その男はついに自分自身が都市伝説になりたくなってしまい、

夜中に猛ダッシュしたり、資格を勉強しようとして挫折したり、池で溺れかけたり、

さまざまな奇行を繰り返しているという。

もしかしたら、あなたの前にも現れるかも……。



男「うおおおおお……!」

男「これ、まさに……オレのことじゃねーか!」

友「ね?」

男「しかも、すげえ反響じゃん! こんだけ大騒ぎされりゃ、もう立派な都市伝説だ!」

男「いやぁ、まさか都市伝説になりたがる行為そのものが都市伝説になっちまうなんてな」

男「だけど、結果オーライってやつかな!」

友「さて……これでようやく願いを叶えられたようだ」

男「へ? どういう意味だ?」

友「少しの間だったけど、友だちでいられて楽しかったよ」

男「!」ハッ

男「お前……まさか……!?」

友「ふふ、君の話で、自分が都市伝説とやらになってると知った時はビックリしたよ」

友「それじゃあね……」フッ…



男「じゃあな……。同じ都市伝説同士……また会えるといいな」







おわり

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom