仮面ライダー×艦これ オンドゥルこれくしょん 夏休みスペシャル  (155)


夏休みといえばヒーロースペシャル! 

以前投稿した、オンドゥルこれくしょんシリーズの過去作四作(>>2参照)を総括・一部再編・追加した『再投稿』版です。

本編は>>3から開始します(>>2は元になった過去作一覧)


※仮面ライダー剣と仮面ライダーフォーゼ(その他もろもろのライダー)と艦これ(※アニメ版)のコラボSS
※事前に上記三作、ならびに仮面ライダー剣のドラマCDのおさらいを推奨します。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439209892



    仮面ライダーという名の仮面 財団Xとの決着
                  
 前書き   白井虎太郎


仮面ライダー、それはただの都市伝説ではない。

読者の皆様は覚えているだろうか? これまで人類を脅かした邪悪なる者達を。

秘密結社ショッカー、デストロン、ブラックサタン、秘密結社ゴルゴム、クライシス帝国、グロンギ、アンデッド・・・

人ならざる怪人達は次々と人類に襲いかかり、社会を恐怖に陥れ、罪なき命を奪っていった。

だが、人類の自由を守るため立ち上がった戦士達が人知れず戦い、平和は守られた。その戦士達の名は、仮面ライダー。その出自を問わず、人間の自由のために戦う者達にのみ与えられる称号である。

だが、悪の芽は留まることを知らない。死の商人達が結成した財団Xという組織が再び人類を脅かそうとしていた。

彼等は人類だけではなく、艦娘と呼称される少女達を弄び、踏みにじろうとしていた。だが、仮面ライダーは少女達を救うため再び立ち向かった。




私は仮面ライダーと関わりを持った少女、艦娘達から緻密な取材を重ね、本書の発刊に成功した。

本書は財団Xによって翻弄された悲しき少女達と、彼女達を救うために立ち上がった、仮面ライダーの物語である。

ここに記そう。艦娘たちが目撃した、衝撃の真実を。



第一章 如・月・救・出



私の名前は如月。艦娘という存在。

艦娘が何者なのか、私はよくわかっていなかった。

分かっていたのは深海棲艦と戦う使命があるということ、そして大好きな仲間達が、睦月ちゃんたちがそばにいてくれたこと。

ある日の戦いで、私は敵の特攻を受け、沈んでしまった。

激しい痛みと、身体を纏う水の感覚に体が震えた。

冷たい・・・、私死ぬんだ・・・。

ふと、睦月ちゃんの事を思い出した。そういえば戦いが終わったら会おうって、約束してたっけ・・・

(約束・・・まもれなくてごめんね・・・)

そして、艦娘たちの顔が次々に浮かんできた。

吹雪ちゃんや夕立ちゃん、同じ部隊の仲間達や夕張さん・・・。

最後に、水の中で私はこう呟いた。

「如月のこと、忘れないでね・・・」

そして、意識が少しずつ薄れていった。



深い深い、光の届かない闇へと落ちていった。



その時だった。



『Screw,Rocket,On』



どこからか、誰かが私を呼んでくれた気がした。

誰かが、私を持ち上げてくれた。

誰かが、私を暖かく抱きしめてくれていた。

「海の底から、宇宙キター!!!」

私は、海の底から押し上げられた。白い、宇宙飛行士のような人の手で。

水しぶきが舞い上がると共に、私はお姫様だっこされながら、暗い海の底から明るい青空へと舞い上がった。

幸い、特に後遺症もなく、すぐに回復した。艤装はすべて海に沈んじゃったけれど。

陸へ降ろしてもらい、お姫様だっこをしてくれた人を改めて見つめた

昆虫のような目を持つ、ロケットのような白い鎧に包まれた大きく力強い手。

「俺は世界中のみんなと友達になる男、如月弦太朗だ!! 今日から俺とダチになってくれ!」

大きな手を差し出され、私もわけがわからないまま疲れた手を差し出す。

そして、二人で硬い握手を交わし、彼にされるがまま、げんこつをコツンとぶつけ、上下に重ね合いっ子したの。


私は、ある人――確か我望とか言った気がする――の言葉を思い出した。





「宇宙」 ・・・、無限のコズミック・エナジーを秘めた、神秘の世界。



若者達は、アストロスイッチでその扉を開き、未来を創る・・・!



Space on your hand! その手で宇宙を掴め!



助けてくれた人は、如月弦太朗と名乗った。私と同じ名前だ。

白い姿から人間の姿になった弦太朗さんは奇妙な姿をしていた。 動きやすそうで派手な赤いTシャツ。それはいいけど、その髪型はリーゼントだった。顔はイケメンなのにちょと残念かも・・・。

とりあえず、ずぶ濡れになっていた私は、そのままじゃ風邪引くぞと弦太朗さんに言われ、ある場所に連れられた。

それにしても、こんなに海水でベトベトになっちゃうなんて・・・。髪が傷んじゃう。


一緒にバイクに乗って、一時間ほど走った後に着いた所は宇宙京都大学という大きな学校だった。とても大きいけど、静かで、厳粛な雰囲気の場所だった。

木は整然と並んでいて、重々しい校舎がいくつも建っている。鎮守府では見たこともない、異世界の風景が広がっていた。

何より驚いたのは男の人達の多さだった。鎮守府には男の人がいなかったから、ちょっと怖かった。

私は弦太朗さんに手を引っ張られ、とある大学の研究室に連れて行かれた。

その部屋にはちょっと丸顔の静かな雰囲気の男の人と、見るからに明るくて元気そうな女の人がいたの。

「おぅ、ユウキ! 久しぶり! 日本には昨日帰ってきたのか!!」

「そんなことより弦ちゃん弦ちゃん! この子ダレ? まさか彼女だったりする!?」

「彼女じゃねぇよ、海で溺れそうになってたところをたまたま助けたんだ!! 確か名前はっと・・・」

「如月・・・です・・・」静かに私は呟いた。

「私は城島ユウキ、よろしくね! とりあえず、着替えよっか!」

私はかわいらしいはやぶさくん(ユウキさんのデザインらしい)がプリントされたTシャツを貸してもらい、着替えたあとで研究室の丸椅子に座らせてもらった。

「俺は歌星賢吾。ここの大学で宇宙について研究をしている。

それにしても、キミも如月か・・・。フルネームを教えてくれないか?」

でも私にそんなものはない。 艦娘には苗字なんてなかった。

「それが・・・、私、なぜか苗字はないんです。名前が『如月』なんです・・・」

「そうか・・・。キミについて、知ってることをできるだけ教えてほしい。できる限りで構わないよ」

丸顔の男の人は静かに尋ねてくれた。穏やかな表情から、私に気を遣ってくれてるのが分かった。



「私は鎮守府という場所で、艦娘として働いていました。深海棲艦っていう、大きなクジラみたいな怪物と戦ってたんです」

「深海棲艦か。最近、日本近海を荒らし回っている正体不明の怪物・・・」

賢吾さんが言った。

「私が知っているのはそれくらいです・・・。そして今日、負けてしまって海へ・・・!」

暗い口調で私は言葉を紡いだ。

「海へ・・・、しずみ・・・、そうに・・・!」

私は思い出してしまった。弦太朗さんに助けてもらえなければあそこで死ぬところだったことを思うと、背筋が震えだしてきた。

怖い・・・、怖いよ・・・!

「だっ、大丈夫!如月ちゃん!?」とユウキさん。

「はっ、はい・・・。とにかく、私に分かるのはそのくらいです・・・」

震えが止まらなくて、そう言うのが精一杯だった。

「・・・辛い事を聞いてすまない。ユウキ、悪いが一緒にお風呂にでも連れて行ってあげてくれ。その間にこちらで情報を集めておく」

「うん、分かったよ・・・」



震えが止まらない私は、ユウキさんと一緒に近くのホテルの大浴場へと向かったた。

全国展開のビジネスホテルだったけど、お風呂はすごくきれいで広くて清潔感あふれる場所だった。入渠用のお風呂とどっちがいいかな。

浴場の温かい湯気が口から入り込んで身体を芯から暖めてくれた。それが私の恐怖を少しだけ忘れさせてくれた。

二人でお風呂に入ると、隣に座ったユウキさんの一糸まとわぬ姿が目に入った。

綺麗な髪だったけど、お肌は少し荒れて、あちこちにすり傷や腫れ跡が見えた。でもそれがかえって彼女をエロティックに見せていた。

やだ、なんか恥ずかしい・・・。

「ユウキさんは・・・、賢吾さんの恋人なんですか?」

恥ずかしさをごまかそうと変な質問をしてみた。

そしたら「ウェ!?」と奇妙な声を上げた。ユウキさんは年頃の少女みたいに赤面していた。いやだ、私より年上っぽいのにかわいい・・・。

「き、き、如月ちゃんにはまだ早いって!! それに私にはまだまだやらなきゃいけないこともあるから!」

「やらなきゃいけないこと、ですか?」

「うん、私は宇宙飛行士になるんだ! そのために今アメリカの大学に留学中なの!」

「宇宙ですか・・・」

艦娘は海の底の怪物と戦う。この人は遥か空を超えて宇宙へ行く。目指す場所が正反対だな・・・

「うん、応援してくれた弦ちゃんや賢吾くんやみんな、それに宇宙へ行く厳しさを教えてくれたエリーヌちゃんのためにも、頑張らなきゃなぁって・・・。

3年の秋くらいからそりゃもう必死になって一生懸命勉強してね、以来ずっと訓練やら勉強やらで大忙しなんだ!」

いいなぁ・・・。夢があるって。

そう言えば、戦いが終わったらどうするかなんて、考えたこともなかった。男の子とデートくらいはしたいとか、漠然なことばかりだった。

私の夢って、なんだろう・・・?




お風呂に入って落ち着いた私は、髪を念入りに洗って乾かしたあと、賢吾さんの研究室へ戻った。

女の人がいてくれたのはすごく助かった。今着ている青い制服もユウキさんが用意してくれたものらしい。ちょっとだけ胸がきつかったけど。

戻って来た私を見て、「おっ、落ち着いたか?」と弦太朗さんは声をかけてくれた。

「はい・・・」

「うん! 風呂は心の洗濯だ! 暗い気持ちを洗い流せたなら、青春パワーは蘇る!」

よくわからないことを言ってきた。でもなぜかホッとしたような気がした。

「ありがとうユウキ。こればっかりは、俺達じゃできないことだからな」

「いえいえ、お安い御用ですケンゴハカセ」とユウキさんがおどけて敬礼する。

「よせ、まだ博士号は取ってないよ」とケンゴハカセ。

・・・やっぱり、この人たちは恋人というか、夫婦みたいな気がする。

だって、長年のコンビの貫禄や絆が滲み出てるんだもん。

「ところで、情報はどうだった?」

「それなんだが、未確認生物研究所の「たちばな」さんに連絡したんだが、有力な情報を持ってるそうだ」

「『タチバナ』さんから・・? って、賢吾。江本教授はもう・・・」

「違う。仮面ライダーギャレンに変身する方の橘さんだ。以前ラビットハッチに招待して、ダチになったんじゃなかったのか?」

「・・・そうだ! そう言えば前にダチになったな・・・!」と弦太朗さん。


「ったく、お前は友達友達言うくせに、時々大事なことを忘れることがあるぞ。気をつけろ・・・」

「そうだな・・・、俺ってヤツは・・・。ってか、賢吾。人のこと言えんのか・・・」

「お前を思って言ってるんだぞ。人の忠言は素直に耳に入れておくもんだ。特にお前のようなバカはな」

「バカは余計だろ、お前こそ一言おおいっつーの、余計マン賢吾」

「なんだとこのリーゼント?」

二人は頬の引っ張り合いをし、意味不明な言葉を口にしながら子供みたいな喧嘩を始めた。

「・・・え? け、喧嘩ですか?」

「ううん、アレは賢吾くんと弦ちゃんの・・・、一種のコミュニケーションかな」

ユウキさんが微笑んだ。彼女は止めようともせず、二人の喧嘩を見守っていた。

「ふふ、いいですね・・・」

「あの二人はね、言いたいことが素直に言い合える。でも決して絆は切れたりしない、最高の親友なんだよ・・・」

「親友か・・・」

睦月ちゃんの顔が頭に浮かんだ。彼女は今どうしてるだろう。

心配して泣いているだろうか。それとも如月のことを忘れちゃってるのかな・・・ ?

そんな不安が胸をよぎった。




その翌日、ユウキさんのホテルに泊めてもらった私は、橘さんという人に会うことになった。

ホテルに備え付けの会議室を借りて、今後のことを話し合うことになった。

ロビーに行くと、弦太朗さんに手を振る男の人が見えた。クールな雰囲気をまとった端正なイケメンの学者さんだ。

「よぅ、橘さん!」

弦太朗さんは嬉しそうに飛びつき、握手を求めた。その男の人も微笑みながら握手に応じた。

弦太朗さんも髪型さえリーゼントじゃなければなぁ・・・。

「はじめまして、歌星くん。キミの噂は各方面で伺ってるよ」

そのイケメンさんは賢吾さんにも手を伸ばし、 静かな笑顔で握手を求めた。

だけど、賢吾さんの表情は強ばっていた。

「はっ、速水校長・・・!?」

「賢吾・・・!」

小声で弦太朗さんが小突いた。

「速水? 人違いだ。俺は橘。ギャレンだ・・・」

イケメンの学者さんは言った。 校長って言うくらいだから、賢吾さん達の恩師なのかな?

「すっ、すみません・・・。以前似たような方と知り合いだったもので・・・」

「そうか・・・。いいさ。とにかく、話を始めようか」と橘さん。

賢吾さん達は、彼をホテルの会議室へと案内した。 賢吾さん、ちょっと複雑な顔をしてるけど、どうしたんだろう?


純白の壁に包まれた会議室の中。私たちは橘さんの話を聞き、衝撃を受けていた。

「改造実験体トライアルシリーズ?」

「あぁ。人工的に不死生命体・アンデッドを作り出すために作られた、実験生命体だ」

「不死生命体? アンデッド?」

「知らないか? 以前、白井が出した本にも詳しく書いてあったはずだが・・・。

とにかく、人の手では決して殺すことのできない怪物を再現しようとする実験が進められていた」

橘さんは詳しく話してくれた。

不死生命体、通称アンデッド。その怪物は生命の進化に介入するための争いをずっと続けていて、10年前に復活して人類を襲ったらしい。

その秘密を求めた広瀬という科学者が、亡き妻を蘇らせるために狂気に走りトライアルなる怪物を作ったと、橘さんは説明してくれた。

「トライアルは一定以上の威力の攻撃でなければ決して破壊することはできない。その強靭な力、世界中の軍需産業が興味を持つだろう」

「まさか・・・!」と弦太朗さん。

「そうだ。我々は一連の深海棲艦の大量出現も、財団Xが関与してるのではないかと推測している。トライアルの技術を元に深海棲艦を生み出したとしたなら・・・」

「確かに財団Xなら、研究資料を手に入れ、実験していてもおかしくはないですね」

怪訝な顔をして賢吾さんが言った。

「だが、世界の深海棲艦達にはあの七人が中心となって立ち向かっている。恐らく心配はないだろう」

「そうかそうか! あの七人なら大丈夫だ!それを聞いて安心したぜ!」

ホッとした表情を浮かべた弦太朗さん達。あの七人って誰?


一通り深海棲艦のことを話し終えると、橘さんは私の方に向き直った。

「そしてキミの言う艦娘、つまりそちらの如月さんのことだが・・・」

「はい?」

こちらを見つめる橘さん。

「我々の研究所でも、艦娘の目撃情報は大量に入っている。君達のことは鎮守府によって極秘とされているようだが、既に情報は掴んである」

「は、はぁ・・・」

何を言われるんだろう。ちょっと不安になってきた。

「橘さん、彼女たちに何か?」と賢吾さん。

「考えてみろ。普通の女の子が、武装してるとは言え、怪物の砲弾を生身で受けても大した怪我を負っていない」

そう言えばそうだ。

確かにあんな攻撃を受けたら、普通ならお腹に穴があいて死んでてもおかしくない。

なのに、私の身体は轟沈したにも関わらず、傷ひとつ付いていなかった。

「トライアルは人間の姿になることもできた。断言はできないが、もしかしたらその如月って子にも何か関係があるかもしれない・・・。」

「え・・・?」

「君も、トライアルシリーズの一体なんじゃないのか?」

私の耳に信じられない言葉が突き刺さった。

私が、怪物ですって・・・?

ウソだ。そんなのウソよ・・・!

「いや、いやぁぁぁぁ!!」

信じられなくて、怖くて、私は耐えられずその場を飛び出しちゃった。 背中側から、弦太朗さんが彼の胸ぐらを掴んで怒り出す声が聞こえた。

「ふざけんな! あの子もバケモノの仲間だって言うのか橘さん!? いくらアンタでも、言っていいことと悪いことがあるぞ!」

弦ちゃんが胸ぐらに掴みかかる。

「落ち着け弦太朗。まだそうと決まったわけじゃない」

「すまない。彼女を怪物扱いするつもりはなかったんだが・・・」

橘さんの申し訳なさそうな響きの声も、私の心には届かなかった。



(ウソだ、私が怪物なんて・・・!)

「はぁ・・・、はぁ・・・」

私が、深海棲艦と同じバケモノ・・・?

そんなはずない、そんなはずない。でも・・・



『君も、トライアルシリーズなんじゃないのか・・・?』



橘さんの言葉は呪詛のように頭の中で響き渡った。

「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

その言葉から逃げるように、現実からも逃げるように、私は走り続けた。


その後、大学を出た私は道に迷ってしまった。ヨロヨロと街を一人で歩き回っていた。

気がつくと、何時の間にか何処かの海岸の近くまで来ちゃった。

「ここ、どこかしら・・・?」

私は怪物。同じ艦娘もいない。

どうしようかと迷っていると、ふと何処からか甘い匂いがした。

その匂いに惹かれ、海が見える公園にたい焼き屋さんの屋台があった。よく見ると隣にたこ焼き屋もある。

その屋台の看板にはこう書かれていた。

『いろはにほへと組 愛のたい焼きたこ焼きを召し上がれ』

その看板を見つめてると、

「おう、らっしゃい! たい焼き焼きたてやでー!」

「たこ焼きもアツアツやでー! いやん、なんかウチらみたいやなっ!」

元気のいい声で、二人の男女が私に声をかけてくれた。

「あ、でも私、お金持ってないんです・・・」

「かまへんかまへん、今回はおごりや!! 昨日から白井先生が宣伝してくれたおかげで大繁盛しまくってな!!」

戸惑う私に、男の人は半ば強引にたい焼きを渡した。

とりあえず、渡されたクリーム味のたい焼きを食べることにした。

「おいしい・・・」

思わず声に出してしまうほどの味だった。間宮さんにも匹敵するレベルだと思う。

「せやろ? うちらのたい焼きとたこ焼きは、日本一やからな!」

たこ焼きを焼いていたお姉さんが自慢げに言った。


でも食べ終わると、私はまた暗い表情に戻ってしまっていた。もう私は一人ぼっち。行くところなんかない・・・

それをたい焼き屋さんは察してくれたのか、

「お嬢ちゃん、なんか悩みでもあるんか? 俺らでよかったら聞くで?」と言ってくれた。

この人たちなら話してもいいかもしれない。私は全て話すことにした。

「私、今悩んでて・・・。私、もしかしたらバケモノの、深海棲艦の仲間かもしれないんです・・・。

誰かを傷つけちゃうかもしれないんです・・・。これからどうすれば・・・?」

「何言っとんねん、俺らのたい焼き美味しそーに食べてくれたんやから、悪い子ちゃうやろ!」

たこ焼き屋のおじさ・・・、お兄さんが言った。

「え・・・? 私が・・・」

その言葉は暗い海の底に沈んでいた、私の心に光を与えてくれた。

「前にコイツそっくりに化けてた黒いバケモンがおったんやけど、ソイツはウチらをヘビのバケモンから守ってくれたんやで!」

「まっ、俺も倒すのに手ェ貸したんやけどな!」とドヤ顔のお兄さん。

そんなお兄さんを、お姉さんが「調子に乗んねんっ!」と引っぱたいた。

「私・・・、バケモノじゃない・・・。ですよね・・・?」

「何言うとんねん、どっからどー見てもかわいい女の子やんか!」

何気ない言葉だけど、嬉しかった。

私は、バケモノじゃない。ひとりぼっちじゃないんだ・・・!

「ありがとう・・・ございます・・・」

そういうのが精一杯だった。

嬉しかった。涙が溢れてきて、止まらなかった。

胸の中に詰まっていたつかえがすっぽりと抜け落ちたような気分だった。


そこに、ユウキさん達がやって来た。

「いたいた! ナゲロパちゃんご苦労様!!」

気がつくと、私の周りを小さな円盤のような機械が光を放つ妖精のように飛んでいた。 食べ物と動物を混ぜ合わせたような機械たちが、私の周りで優しく吠えかけた。

「如月ちゃん。生まれなんか関係ないよ。アナタがどう生きていくか、それが一番大事なんじゃないかな?」

「私が、どう生きていくか・・・?」

「そう。私も昔、怪物になっちゃったことがあったから、わかるんだ・・・」

静かにユウキさんは言った。どこか懐かしむような暗い表情をしていた。

「でもね、弦ちゃんの、ううん、みんなの友情が、私を助けてくれたんだ」

「そうだったな・・・」と賢吾さん。

「あの時気づいてくれたの、賢吾くんが一番最初だったんだよね。ちょっと嬉しかったんだよ、あの時・・・」

「いやっ、そのっ、アレは・・・」

クールな雰囲気がどこへやら、しどろもどろに顔を赤くしてそっぽを向く賢吾さん。ちょっとかわいい。

「ふふっ・・・」

こほんと咳払いをし、賢吾さんが話し始めた。

「如月ちゃん。たとえキミがトライアルの技術を使って生まれた者だったとしても、キミの心は間違いなく人間だ。少なくとも俺はそう断言できる」

「賢吾さん・・・」

嬉しかった。みんなが私を受け入れてくれていた。

ヤダもう・・・! 涙で顔がしわくちゃだよ・・・!

「おぉ、そうや! 如月ちゃん言うたっけ? アンタもし良かったら、いろはにほへと組で住み込みで働かんか? ちょーど人手足りんて困っとったんやわ!」

「え・・・?」

「えぇなぁ! はじめもまことも、お姉ちゃんができて喜ぶやろな!! あ、はじめとまことって、うちらのかわえぇこども達や!」

私は戸惑った。でも、賢吾さんとユウキさんが黙って肩を叩いてくれた。

「はい・・・、ありがとうございます・・・!」

変だな・・・。

すごく嬉しいのに、なぜか涙が止まらなかった。




後に弦太朗さんに聞いたところ、橘さんと彼はこんなことを話していたらしい。

「すまない・・・。俺のせいで彼女を・・・」

「大丈夫だ! あんたに悪気がねぇのは俺にもわかったよ」

「彼女の気持ちも憚らず、迂闊だった・・・」

「気にすんなって! ちゃんと如月ちゃんに謝りゃいいだけだろ!? 俺もしょっちゅうダチと喧嘩してっけど、すぐ仲直りできる!喧嘩は心の耕作、仲直りは心の種まきだ! しっかり耕した畑には青春の綺麗な花が咲く!」

「・・・ありがとう、弦太朗くん。・・・失礼、電話だ。・・・何だと!?」

「橘さん、どうしたんだ?」

「深海棲艦がこの近くの海域に!? 場所は!?」




その後、いろはにほへと組の連絡先を教えてもらった私は、明るい気持ちでユウキさん達と海岸を歩いて行った。

「良かったな、如月ちゃん・・・」

「はい!」

嬉しくてついスキップまでしてしまった。まるで子供みたいだった。

だけど、その幸せな気分も長くは続かった。

砂浜から突如、巨大な怪物が静かな海面を破って現れてきた。

深海棲艦だった。 それも軽空母ヌ級。クジラのような巨大な口と体に、ゴリラのような腕と脚が生えていた。

「グチググァン、ムッコロス・・・!!」

奇声をあげ、怪物が襲いかかってきた。

「まさか如月ちゃんを狙って・・・!」

「って言うかアレって船だよね!? なんで陸を動いてるの!?」

「恐らくヤツ等も進化して、陸上での活動が可能になったんだろう・・・」

「賢吾くん、冷静に解説してる場合じゃないからぁ!」

ミサイルや機銃が私たちを容赦なく襲い、私たちを掠めて街の方まで届いた。あちこちでガラスが割れる音が響き、悲鳴が上がった。たくさんの人が傷ついていく様子が簡単に想像できた。


(いやだ・・・、優しいみんなが傷つくのは・・・!)

そう思った私は二人の手を振り切り、深海棲艦の前に手を広げて立った。

「もうやめてぇっ!! 狙いは私でしょ? もう誰も傷つけないでっ!!」

「如月ちゃん!?」

「馬鹿な真似はよせ!早く逃げるんだ!」

二人の声が聞こえた。でも手遅れだった。私は深海棲艦の腕に捕まってしまった。

「イイガグゴドゥア・・・。マズバギザマグァラムッコロス・・・!!」

もうダメか・・。 目を閉じたその時だった。



【イメージBGM:颯爽と、ギャレン】ttps://youtu.be/-1LlTQACB70



「待て! その子に手を出すな!!」

何処からか、銃撃の音が聞こえた。その方向に目をやると、孔雀の羽を背中に携えた金色の戦士さんが空を飛んでいるのが見えた。

その戦士さんは銃のカードリーダー部に、コウモリのようなカードを読み込ませた。



『Scope』



コウモリのオーラが戦士さんの身体に吸い込まれ、戦士さんは銃弾を放った。

見事に銃弾が私を掠めてギリギリのところで深海棲艦の指に命中して、肉片を弾き飛ばした。

「・・・っ!?」

私は拘束から解かれて落下した。けど、戦士さんがすぐに飛んで来てくれて抱っこしてくれた。

「あ、あなたは・・・?」

「俺は橘、今はギャレンだ・・・。さっきは君を傷つけるようなことを言ってすまなかった。君は必ず俺が守る!」

力強く言い残し、私を砂浜の後ろの方に下ろすと、橘さんは、ギャレンは、再び怪物へ向かっていった。

ギャレンは3枚のカードを取り出し、銃のカードリーダー部分に読み込ませた。



『Bullet,Rapid,Fire,Burningshot!』



ギャレンの後ろに3匹の動物のオーラが現れた。

アルマジロが回転し、キツツキがものすごい勢いで嘴を動かし、ホタルが炎を上げる。

そのオーラが銃に吸い込まれ、ギャレンは宙に舞い上がり炎の銃撃を連続で浴びせた。

狙いは正確。全て深海棲艦の眉間に命中した。でも、攻撃は効かなかった。ヌ級は傷一つさえもなかった。

「俺の攻撃が、効かない・・・!?」

逆に、ヌ級は機銃でギャレンを一斉掃射した。

「うわぁぁぁぁっ!!」

左腕の機械が銃弾を浴びて壊れ、翼が蜂の巣にされてしまう。そのまま、ギャレンは私の目の前に墜落しちゃったの。


「くっ・・・」

「ジャバボノハギエダ・・・、ツギバボマベダァ・・・」

深海棲艦がゆっくりと私に向かって迫ってきた。

「させるか・・・。この子に手出しはさせない!」

ギャレンは私の前に立ちはだかり銃撃を続ける。身体がボロボロにも関わらず。 でも深海棲艦は痛くも痒くもないといった表情をし、歩みを止めない。

「もうやめて・・・、逃げて・・・!」

やがて、深海棲艦は再び巨砲をこちらに向けて発射した。

橘さんは何も言わずに、カメの描かれたカードを取り出して銃に読み込ませる。



『Rock』



その瞬間、身体が岩のように硬くなり、鉄壁となって私を守ってくれた。それも焼け石に水で、大砲の連撃ですぐに堅い鎧は壊れてしまった。

「うわぁぁぁ!!」

それでもギャレンは逃げなかった。砲撃を受け、身体が傷つくことも構わずに、真正面に立って私を機銃からかばってくれた。

「ナズェダァ・・・、ナズェギザマラバ、オデダチニダチムガウ・・・? ナズェカンムスゥヲバモル・・・?」

「人間なら、当たり前だ! アイツもきっと、そう言うだろうからな・・・!」

「橘さん・・・」

私に背を向けたまま、もう一度ギャレンは必殺技を放つ。

再び、ギャレンの後ろに3匹の動物のオーラが現れた。



『Bullet,Rapid,Fire,Burningshot!』

そしてもう一度、炎の連弾を与える。だけど、まったく通用しない。ベルトが弾け飛び、変身が解除されてしまった。それでも橘さんは立ち上がって私を庇い、十字の形で仁王立ちになった。

「トドメドゥア・・・!!!」

「いやぁぁぁぁ!!!」


無情な機銃が放たれたその時だった。


「小夜子、桐生さん・・・。俺も・・・」

諦めたかのように橘さんは呟いた。だけどその時、



『Powerdaiser!』

「俺のダチをこれ以上傷つけさせはしねぇ! ライダーロケットパンチ!!」



猛スピードで巨大な黄色い機械と弦太朗さんが駆けつけ、私たちを庇ってくれた。

弦太朗さんがライダーロケットパンチで、ヲ級を殴り飛ばす。不意打ちを喰らい、ヌ級は砂浜に大きな砂埃を舞い上げて倒れっちゃった。その隙に黄色いロボットさんがヌ級の脚を掴み、砲丸投げみたいに海へ投げ飛ばしちゃった。まるで大きな石を投げた池みたいに、海に大きな水柱ができた。

「大文字準、ただいま参上!!」

黄色いロボットさんが私たちを助けてくれた。

コクピット越しにガタイの良いお兄さんがこちらに視線を向ける。キラーン☆ そんな愉快な効果音が似合いそうな流し目ポーズを取った。

「俺達も、忘れないでほしいっすネ!!」

「ライダー部名誉会長、ただいま見参よ!」

「深海棲艦、ちょっといいかも・・・。でも、私の友達に手は出させない!」

いかにもチャラそうな顔をした男の人と、気の強そうなお姉さん、そして暗いオーラを纏った黒服の女の人がそれぞれ武器を携えて現れた。 賢吾さんとユウキさんも食べ物のおもちゃみたいな武器を手にしていた。

弦太朗さんは一度変身を解き、橘さんに手を差し出した。

「ったく、橘さんは無茶しすぎだぜ・・・!」

「なに、このくらい、何ともないさ・・・」

ボロボロになりながら橘さんは答え、手を握り返した。その体は血だらけで、どう見ても重傷そうなのに、まだ立ち上がろうとしていた。

「おっ、なんか弦太朗さんたちの卒業式を思い出しますねぇ!」とチャラ男さん。

「そう言えばアレ、アルゴ・ゾディアーツに似てるかも・・・」

黒服のお姉さんが呟いた。 一方、ヌ級は怒りに燃えて吠え出した。

「ギザマルゥァ・・・ナンニヴォノドゥア・・・!!」

「人類の自由と平和を守る部活、仮面ライダー部!!・・・のOBとOGよ!!」

気の強そうな女性が堂々と叫んだ。



「・・・オノレ、イデヨ、ワグァジモヴェドゥモヨ・・・!!」

ひっくり返った身体を直そうともがいていた深海棲艦が奇声を上げると、突如海の底から無数の空飛ぶ海魔たちが現れた。

「すっ、スゲェ数だ・・・!?」

深海棲艦の艦載機だ。どれもこちらにミサイルを構えている。

でも、無数の爆撃機がミサイルを放とうとした瞬間、どこからか現れた蒼い流れ星が一気に弾き飛ばしちゃったの。

「流星さん!!」

黒服の女の人が嬉しそうに声を上げた。蒼い星の中から、フォーゼによく似た仮面の戦士が現れた。

「ったく、いきなり香港から呼び出しやがって。相変わらず無茶苦茶だなお前は・・・」

「へへっ、わりぃな流星・・・!」

「まぁいい。露払いはしてやるから思いっきり暴れて来い!」

「おぅ、サンキューみんな!」

「さぁ、仮面ライダー部! 同窓会の始まりよ!! 暴れるわよ!!」

気の強そうな女性が言った。

「仮面ライダーメテオ! お前の運命は俺が・・・、俺達が決める! ホォワッチャァッ!!」

仮面ライダー部が大暴れした。私たちを庇うように深海棲艦の前に立ちはだかり、戦ってくれた。

巨大な黄色いロボットが艦載機を次々になぎ倒し、青い戦士がカンフーの連撃で次々と空中の敵を殴り倒しちゃった。

ユウキさんと賢吾さんは食べ物のオモチャを武器にして深海棲艦を翻弄し、ほかの三人が艦載機を銃で撃ち落としていった。

やがて、敵艦載機は全滅しちゃったの。

「ンナラブゥア・・・、ギザマラマドメデムッコロス!!」

深海棲艦が砲塔を此方へ向けた。


【BGM:フォーゼ変身】https://youtu.be/MYFptZjWnTU



弦太朗さんと橘さんは怯みもせずに、その前に立ちはだかった。

「行くぜ、橘さん!」

「あぁ!」

弦太朗さんはベルトを取り付け、スイッチを全てオンにした。

その横で、身体がボロボロの橘さんもベルトに手をやり、腰に装着した。

二人は拳を顔の横に構え、似たようなポーズを取った。



『3』



 『2』

   『1』

「変身!」



「変身!」『TurnUp』



弦太朗さんがレバーを引くと、上空に不思議な輪っかが浮かび、上から下へと移動していく。その輪っかの中で宇宙に手を伸ばしていた弦太朗さんは白い仮面ライダーに変身していた。

同時に、橘さんの目の前に宝石のように輝くステンドグラスが張られた。その綺麗なステンドグラスは飛んできた敵の攻撃さえも弾き返してしまった。そのステンドグラスを橘さんが通り抜けると、橘さんもまた仮面ライダーになった。

「っしゃあ!宇宙キター――――――ッ!」

「う、宇宙キター――――――ッ!!」

弦太朗さんと橘さんが、両腕を広げて湧き上がる宇宙の神秘の力を身体で表現した。



【BGM:Switch On!】ttps://youtu.be/9V_-QRuxup4

白と赤のふたりの仮面ライダーが現れた。

「深海棲艦! 仮面ライダーフォーゼと!」

拳を突き出した弦太朗さんと、

「仮面ライダーギャレンが!」

同じく拳を突き出した橘さんが、

「タイマン張らせてもらうぜ!!」

共に力強く叫んだ。

仮面ライダーフォーゼと、仮面ライダーギャレンのタッグマッチが開始されたの!




「弦太朗! まずは深海棲艦を氷漬けにするんだ!! フリーズとウォーターを同時に使え!」

賢吾さんが指示を出した。フリーズとウォーター?

「おぅ!まず、その前にヤツの動きを止める!!」



『Giantfoot,On』



フォーゼの脚にへんてこな靴が装着された。

脚を動かすと、深海棲艦の上にも巨大な足が現れる。あの巨体をあっさりと踏み潰しちゃった。

「ウェアァァ!!!」

でも、さすがにヌ級も頑丈で、潰れたりはしなかった。

続いてフォーゼは装着したばかりのスイッチを取り外し、3つのスイッチをベルトに装填した。



『Rocket,Water,Freeze,On』



両脚に水道の蛇口と冷蔵庫がくっつき、右腕にロケットが装着される。すっごくへんちくりんな姿だった。

そのままフォーゼは空中へ舞い上がり、ベルトのレバーを引いた。



『Limitbreak!』



「ライダーブリザードクラッシャー!!」

フォーゼが脚をばたつかせながら深海棲艦に蹴りを入れる。でも、深海棲艦の堅い鎧には通じなかった。

「ハハハ・・・ギガヌァワ・・・オデハザイギョウダァァァ!!!」

でも、ヌ級が笑っていられるのもそれまでだった。

フォーゼの左脚から勢いよく噴き出した水が深海棲艦の身体に降り注ぎ、右脚から放たれた冷気がその水や周りの海水を凍らせちゃった。

やがて、巨大な深海棲艦の体は氷に包まれて動けなくなっちゃったの。

「ツベタイ・・・ガラダガウゴガナイ・・・!」


「よし! 動きを封じたら、頭部の中心にリミットブレイクを叩き込むんだ!!」と賢吾さんが叫んだ。

「カテゴリーキング、力を借りるぞ・・・!」



『Evolution』



ギャレンがクワガタのカードを取り出し、銃に読み込ませる音が聞こえた。でも、一見するとどうにもなっていないようだけど。一体何の意味があったんだろう?

「準備はできた。行くぞフォーゼ!」

「あぁ、ギャレン先輩!!」

フォーゼはスイッチを入れ替えてレバーを引き、ギャレンは3枚のカードを銃に読み込ませた。



『Rocket,Drill,On』『LimitBreak!!』



『Drop,Fire,Gemini,Burningdivide!!!』



その直後、ギャレンの背後に三枚のカードが並び立った。鯨が踊り、蛍が燃え上がり、縞馬が分身する。その三匹はギャレンに取り憑き、力を与えた。

フォーゼはロケットの力で真上に直進し、ギャレンも同じくらいの高さまで飛び上がり、空中で二人に分身しちゃった。



「ダブルライダーバーニングドリルキィック!!」



分身したギャレンとフォーゼが、二人(三人)同時にライダーキックを放った!!

ダブルギャレンの炎の蹴り―確かつま先蹴りって言うのよね?―が深海棲艦の頭部にクリーンヒットし、ドリルキックが身体を一気に貫いて穴を開けてゆく。

あの堅い巨体があっけなく倒されてしまった。

「さすがだ! 凍りついた体に連続で衝撃を浴びせることで、その堅い巨体も脆く崩れやすくなる!」

賢吾さんが叫んだ。その言葉通りだった。

「オノレ・・・オノレ・・・ガメンライダー・・・、ウワァァァァァァァァァァ!!!!」

深海棲艦の体にヒビが入る。堅い鎧が次々と壊れて、砕けてゆく。やがて、怪物は業火に包まれ、沖合で大爆発を起こした。


「へへっ・・・!」

「・・・」

キックの余波で海中に突っ込んじゃったフォーゼが勝利の喜びを身体で表すようにこちらに腕を大きく振ってきた。

同じく海に浮かんでいたギャレンも控えめなサムズアップを交わしてくれた。

「やったぁぁぁっ!!」

「さっすが弦太朗さんっス!」

口々に勝利を祝い、ライダー部のみんなと一緒に、私は二人の仮面ライダーに手を振った。 勝利を祝う、ささやかな祝福を。




「改めて言うが・・・。本当にすまなかった。如月ちゃん・・・!」

戦いの後、橘さんは私に謝ってくれた。

「ううん、こっちこそありがとうございます。命懸けで守ってくれて」

私たちの肩を弦太朗さんが優しく叩いてくれた。

私達は弦太朗さんに教えてもらった友だちのシルシを交わし、握手した。

橘さんの手は傷だらけだったけど、とても優しい気持ちになれた。




その事件から暫く経って落ち着いた後、私はいろはにほへと組大阪支部に引き取られた。 ちょっと変わってる人達ばかりだけど、みんな根は優しく温かい人ばかりだった。

はじめちゃんやまことちゃんともすぐに仲良くなれた。今ではみんなが家族みたいなものだった。

私はそこで看板娘として働いている。

「いらっしゃいませ・・・! あら、今日も来てくれたんですか?」

「如月ちゃんはかわぇぇからな。何度も来てまうわ!」と常連のおばさんが言ってくれた。

あれから、私にも夢ができた。たいやきを食べる人達を笑顔にしたいっていう夢が。そして、彼のように、弦太朗さんのようにたくさんの人と友達になり、絆を紡ぎたいという夢が。

お勘定をおばさんに渡し終えると、扉の鈴が鳴った。お客さんだ。

「いらっしゃいませー!」と元気よく声を上げた。

すると、予想もしてなかった人が目の前に現れた。

「あ、あなたは軽空母の・・・!?」

軽空母として戦っていた祥鳳さんだった。噂には聞いたことはあったけど、別鎮守府の人なので会うのは初めてだった。

「この子が新しくウチにバイトに来てくれた子やわ。よろしく頼むで、如月ちゃん」

了さんが言った。

「もしかして、あなたも元艦娘だったの?」

「はい、よろしくお願いします!」

私は先輩に向けて頭を下げた。祥鳳さんも同じく深々と頭を下げてくれた。

仲良くやっていけそうかな、そんな予感がした。

「そうだ、友だちのシルシ、やりましょう・・・」

「・・・友だちのシルシ?」

「握手してゲンコツをかち合わせるんですよ・・・!私の友だちから教えてもらったんです!」

「うん・・・、よろしくね如月ちゃん」

私たちは柔らかく握手を交わし、ゲンコツを優しくぶつけ合い、友だちのシルシを交わした。



弦太朗さん。



私にも、新しい友達ができたよ・・・!





これが、私が出会った仮面ライダーのお話。



でも、このお話にはまだ続きがあるの。



その物語については、私の友達・祥鳳さんが教えてくれました。



(文:如月)(※睦月型二番艦・駆逐艦)




第一章結び 研磨されし金剛石



戦いが終わり、ふたりの男は崖の上で水平線の先を見つめていた。夕陽が彼らを照らす。まるで、激戦に疲れた戦士たちを癒すかのようだった。

しばらくの沈黙の後、ふと橘が口を開いた。

「俺は今、人ならざるものとなった友を、人間に戻すための研究をしている。

もしかしたら、その過程で、彼女達も普通の少女として生きられるようにできるかもしれない・・・」

「本当か?」

「ああ。人を愛し、結婚し、子を産んで、安らかに眠れる・・・。そんな普通の女の子に戻してやらなければな・・・」

「そうか・・・。楽しみにしてるぜ! 先輩!」

「また何かあったら、一緒に戦ってくれるか?」

「おぅ!俺達はずっとダチだ!! 助けが必要なら、いつでも呼んでくれ!」

弦太朗は右手を差し出した。

「ありがとう、弦太朗くん・・・」

そして赤い夕日に染められながら、二人は握手を、友だちのシルシを交わす。

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去って行った友を見送り、橘朔也は一人崖の上で夕陽を見つめた。

「ダチ、か・・・」

彼の脳裏に、もう一人の大切な友の笑顔が浮かんだ。あの日、誰にも告げずに何処かへと去り、今も戦い続けている男の笑顔が。多分彼は今も戦い続けているのだろう。 どこかで、運命と。

彼はそっと静かに口を開き、誰にも聞こえないよう静かに呟いた。

「俺にもいい友達ができたよ。お前にもいつか紹介してやる・・・」

その目が潤み、涙がこぼれ落ちた。

「待っているからな、剣崎・・・!」



(文:白井虎太郎)




第二章 永遠の鳳




私は祥鳳。軽空母の艦娘。

あの日、別鎮守府からの要請で青葉さんや衣笠さん達、そして天龍さん達と共に援軍として派遣された。

MO作戦の時は、いろんなことが起こりすぎてはっきりとは覚えていない。

唯一はっきり覚えているのは、いつものように出撃に向かう時の、あの子との挨拶。

「気をつけてね、祥鳳・・・」

「うん、行ってくるね」

不安げに見つめる幼い少女を優しく撫で、私は仲間と共に出撃した。



特に不安はなかった。演習通りやれば問題ない。そう信じていた。 でも、現実はそんなに甘くなかった。



突然の奇襲だった。予想だにしてなかった敵襲に私は孤立させられ、空母ヲ級から集中攻撃を受けてしまった。

「危ない!!」

青葉さんの声が聞こえた気がした。でも、もう手遅れだった。

「きゃあぁぁぁぁっ!」

敵の砲撃を受け、私の身体は炎に包まれた。

損傷も大きすぎる。もう助けが来たところで、どうにもならない。

(もう、ダメだ・・・)

逃げるよう叫ぶ青葉さん達の声が聞こえたけど、私は早々と自分の運命を受け入れてしまい、目を閉じてしまった。



ふと、あの子のことが頭に浮かんだ。

瑞鳳。

小さい身体なのに大人びた、大切な、かけがえのないかわいい妹。

卵焼き作りが上手な、私の妹。

(みんなごめんね・・・。瑞鳳。貴方は、生き残って・・・)

最後に目に浮かんだのは、妹の笑顔だった。

身体のバランスが崩れ、私は海へと沈んだ。だけど、冷たい水が身体を覆う瞬間、何処からか力強い鷲の鳴き声が聞こえた。

あぁ、死神の声ってこんな声なんだ・・・



「おい大丈夫か!? しっかりしろ! おい!」

私はしばらく気絶していたみたいで、誰かの呼び声でやっと意識が戻った。

暑苦しい男性の声とゴツゴツした岩の感触。

目を開くと、眩しい太陽の光を背にした若い男の顔が映った。

(だ、だれ・・・?)

頭に疑問が浮かんだ瞬間、突如胸が苦しくなった。恐らく水を多量に飲んでしまっていたのだろう。

ゲホゲホと咳き込んで、水を吐き出した。

「おい、大丈夫か!?」

背中を叩いてもらって、なんとか肺に溜まっていた水を吐き出した。まだ、自分にも生きる機能が備わっていた。

そして何とか呼吸が整った頃には自分の置かれた状況が理解できた。

あの時沈んだと思っていた私は、ゴツゴツした岩の上にびしょ濡れでいた。そして、隣にいた若い男の人もまたずぶ濡れだったことが。

苦しい息が漸く収まり、私は助けてくれたらしい隣の男の人に話を聞いた。

「あ、貴方は・・・? 鎮守府所属の方ですか・・・?」

「真珠?」

「・・・鎮守府です」

この人は鎮守府を知らない。ということは、少なくとも鎮守府の関係者ではないとすぐに分かった。


「俺は剣崎一真。訳あって、旅をしている」

「けんざき・・・さんですか? ・・・『剣(つるぎ)』に『埼』と書くんですか?」

指で手のひらをなぞり、漢字を書いてみる。

「そうそう、だいたいそんな字だよ」

「そうなんですか・・・」

なんとなく親近感が湧いた。かつて自分も『剣埼』という名前を持っていたような記憶があった。何処からかその記憶が来ているのかわからないけど、なんとなくそんな気がする。

とにかく、お礼を言わなきゃ。

「はじめまして、祥鳳と申します。この度は助けていただき、本当にありがとうございました」

「艦娘・・・? なんだそりゃ?」

剣崎さんは不思議そうな顔をした。そうか、一般の人に艦娘のことは知らされてないのか。

「私達艦娘は、深海棲艦という怪物と戦っています」

「そうなのか・・・。最近人を襲う怪物が海によく出るって聞いてさ。襲われてる人がいないか調べてたんだ。そしたら、爆炎が上がっていたから、君を助けに行ったんだ」

「そうでしたか・・・、本当にありがとうございます!」

私は頭を深々と下げた。

「よせよ、照れるだろ・・・」と剣崎さん。

それでも彼の目線はどこか変な方向にずれていた。


「ところで、祥鳳・・・ちゃん?」

「なんでしょう・・・?」

「男物で悪いけど、これ着ててくれないか・・・?」

バツが悪そうに、剣崎さんは此方から目を逸らしたまま、上着を貸してくれた。

ふと、自分の胸元に目をやる。そして、自分の状況に漸く気付き、一気に赤面した。

チューブトップが炎に焼かれてしまいボロボロで、お辞儀した拍子に胸からハラリと落ちてしまっていた。

この時、自分がとても殿方に見せられるような格好ではなかったこと、そして剣崎さんが目線をずらしてた訳にもようやく気付いた。

「ごっ、ごめんなさい!」

慌てて背を向け、私は戴いた上着を着た。ひどく恥ずかしくて、しばらくまともに会話できなかった。



その後、剣崎さんが女性用下着や食糧を20km先の衣類店で買ってくるまで、私はずっと一人で岩場のすぐ先の公園にいた。

人気のない海岸の公園で夕日をじっと見つめていた。

ベンチに座ると、色々と考えが頭に浮かんでは消える。

深海棲艦に負けてしまったこと。 妹のこと。 そしてこれからのこと。

「これから、どうしようか・・・」

瑞鳳は心配しているだろうか。みんなは今頃どうしてるだろうか。

そもそも、鎮守府に戻れるんだろうか。

どうしようかと考えていると、バイクの轟音が聞こえた。剣崎さんだ。

不思議な形をしたバイクには、いくつかスーパーのビニール袋が下げられていた。 赤面しながら、バイクから降りた剣崎さんが袋を渡してくれた。

「ほら、早く着替えな。風邪引くぞ」

ちょっとぶっきらぼうに渡された袋を開けると、女性用の下着とかわいい絵柄のTシャツ、それにタオルが入っていた。私はすぐに草むらに隠れ、すぐさまボロボロだった服を着替えた。

幸い、サイズはなんとか合っていた。胸だけは少し苦しかったけど。

「あぁ・・・、これでまた27円生活に戻るのか・・・」

と剣崎さんがぼやくのが聞こえた。いたたまれくなって、私は頭を下げた。

「すっ、すみませんっ! 私なんかのために!」

「何言ってんだよ。キミの命に比べたら、俺の金なんて安いもんさ」

剣崎さんは爽やかな笑顔でそう言ってくれた。

「はっ、はい・・・!」



「あとコレ。こんなもんしかなかったけど・・・、食べなよ」

剣崎さんが袋を渡してくれた。その中にはたい焼きがはいっていた。すごく温かい。

私は夢中になってたい焼きにかじりついた。甘くて温かい味が口のなかに広がり、お腹の中がすごく暖かくなった。

「そう言えば、君はその深海棲艦とかいう怪物と戦ってるんだって?」

たい焼きをかじりながら剣崎さんが尋ねてきた。

「はい・・。私だけじゃなく、私の妹や他の艦娘達も」

「大変だな、キミ達みたいなかわいい女の子が戦うなんて・・・」

「へっ!? わっ、私が・・・?」

また顔が赤くなってしまった。

かわいい。そんなこと、言われたことがなかった。まして、こんなカッコいい男の人に言われることなんて初めてだった。

「そっ、そんなっ・・・。私なんかよりかわいくて人気の子なんて大勢いますよ・・・」

「何言ってんだよ、キミだって十分可愛いだろ」

「・・・・・・」

私は顔を赤くしたまま、黙ってたい焼きにかぶりついた。

「とにかく、食べたら俺の寝袋貸すから、そこで暫く寝といてくれ・・・。しばらくしたら、その・・・、真珠なんとかってとこまで送るよ・・・。住所は分かる?」

「それが・・・、私も詳しい場所はよくわからなくて・・・」

「きみ、もしかして記憶喪失なのか?」

「私達、昔の記憶がはっきりしてなくて・・・。よくわからないんです」

そう言えば私たちはどうやって生まれてきたのだろう。瑞鳳が妹なのに、私には彼女と過ごした幼い日の記憶がない。

なぜなのかはよくわからない。これまでは特に気にしてなかったが、なぜなのだろう。

「ま、いいっか。明日警察に行って、相談しよう・・・。今夜は俺が見張っててやるから、もう休みな」

「は、はい・・・。おやすみなさい・・・」

彼の言葉に素直に従い、私は男っぽい匂いがする寝袋の中に入る。

そのまま、疲れた身体を横にして、眠りに就いた。

考えてみると男の人が隣にいる経験さえ初めてだった。にもかかわらず、私は安心して眠ってしまった。

彼の笑顔がとても穏やかで優しかったから、何も不安がなかったのかも・・・



次の日、私は弓も矢もなくしていたことに気付き、剣崎さんに相談していた。

「艦爆がないと、戦えません・・・。どうしたら・・・?」

「艦爆?」

「私たちが遣ってる武器です。弓から矢を放つと、矢が戦闘機になるんです」

大真面目に答えたつもりだったけど、剣崎さんには不思議な顔をされた。

「どっちにしろ、金属なら何とかなるかもな・・・」

「何か方法があるんですか?」

「まぁ見てなって」

そう言うと、剣崎さんは懐から奇妙な道具を取り出した。小さな箱のように見える。彼がそれを腰に構えると、カードのようなものが飛び出て腰にまとわりついた。そして、不思議な―でもかっこいい―ポーズを取り、彼はこう叫んだ。

「ヘンシン!」

彼は叫ぶと同時に箱を操作する。その瞬間、青い畳のようなものが彼の前に出現する。そのまま青い『畳』をすり抜けた彼は、甲冑の鎧と昆虫のような仮面を被った奇妙な姿に変化した。

「今の俺はブレイド。これは怪物と戦うための装備でライダーシステムって言うんだけど、こんな使い方もあるんだ」

ブレイドとなった剣崎さんは小さな剣を構え、その中に収納されていたカードホルダーを開いた。その中に収まっていた奇妙な動物の絵のカードのうち、磁石のような角を持つ牛のカードを手に取り、剣に読み込ませた。



『MAGNET』



その瞬間、剣から奇妙な光が飛び出て、海に沈んでいた凡ゆる金属が引き寄せられる。錆びた自転車や朽ち果てた鍋など、海の藻屑となった金属が次々と剣崎さんの周りに集まってきた。

このカードって、龍驤さん達の式神みたいなものなのかな。そう思っていると、私の弓矢も磁力に引き寄せられて剣崎さんの手元に来た。

「やったぁぁぁっ!! 私っ、嬉しいですっ!」

弓矢を無事取り戻せたのが嬉しくて、思わず飛び上がって叫んでしまった。

「何かあった時のために、橘さんにベルト送ってもらって助かったよ・・・」

剣崎さんが呟いた。


不思議なカードの力で弓矢を取り戻した後、駐在所で行き先を確かめるため剣崎さんのバイクに乗せられて小さな街まで辿り着いた。

だけど、

「なんてことだ・・・!」

「ひどい・・・!」

その小さな街は、何者かによって蹂躙され、無人の街になっていた。

民家は焦土となり、あらゆる建物が崩れ落ち、そしてあちこちに焼死体が転がっていた。異臭が鼻を突き、ちょっと吐きそうになったけど何とか堪えた。

「これも、深海棲艦の仕業・・・!?」

「許せない・・・、こんな酷いことをするなんて・・・!」

剣崎さんは拳を握りしめ、怒りに震えた。私も同じ気持ちだった。

(こんな酷いことをするなんて、許せない・・・!)

「ニガヂダケイクウボ・・・ココカ・・・!」

その時、静寂を破るかのように深海棲艦が波しぶきを立てて現れた。私を倒したのと同じ個体、空母ヲ級だった。なぜ陸に上がれたかは分からない。でも、こちらを狙っていることだけは確かみたいだった。

「ケイグウヴォ・・・ガクゴジィロ・・・!」

どうやら私を追って来たらしい。上陸し、私めがけて歩いてきた。

「お前か・・・! 絶対に許さない!!」

怒りに燃える剣崎さんは、さっきのようにベルトを腰にやり、ポーズを構えた。

「変身!!」




【BGM:急げ!剣崎】ttps://youtu.be/5j2qe-ZhqTM



剣崎さんはブレイドの姿になり、巨大な深海棲艦へ斬りかかっていった。

私も戦おうと弓を引き絞り、矢を放った。

「攻撃隊、出撃してください!」

だけど、

「!?」

弓矢が艦載機に変わることはなかった。ただの弓矢となり、敵の硬い装甲にカツンと命中するだけに過ぎなかった。

「う、うそ・・・!?」

先程の戦いで轟沈した私は、艦娘としての力を失ってしまっていた。

入渠していれば、まだ回復した見込みもあったかもしれない。

でも、こんなところに修復剤は存在しない。羅針盤もない。

そもそも鎮守府が何処にあったか、詳しい情報さえも教えられてなかった。

「ウソ、ウソよこんなの・・・」

私が呆然としている間にも剣崎さんは戦っていた。流麗に剣を振り、深海棲艦の巨体から繰り出される攻撃を次々にかわした。

やがて、一瞬の隙ができた時、剣崎さんは二枚のカードを剣に読み込ませた。



『Slash,Thunder, Rightningslash』



二枚のカードを剣に読み込ませると、剣が雷を帯び、光輝いてゆく。

ブレイドは剣を振り放ち、額に斬撃を浴びせた。

「はぁぁぁ・・・、ウェイッ!!」

ズバッ・・・。そんな音が聞こえたきがした。

「シビレル・・・、イダイ・・・カラダハボロボロダ・・・!!! 」

そして雷の斬撃を受けたヲ級は、何処かへ逃げ出してしまった。とりあえず、なんとか危機は去った。


だけど、私は命が助かった安心感よりも絶望感のほうが強かった。

(もう、戦えない・・・、私は艦娘じゃない・・・)

艦娘じゃない私は、みんなとは戦えない。みんなに見捨てられる・・・

「大丈夫、怪我はない?」

優しく、剣崎さんはブレイドの姿のまま声をかけてくれた。でも、私にはそれさえも辛かった。

「おい、待てよ祥鳳ちゃん!」

恥ずかしくて、悔しくて、悲しくて、情けなくて、どこかへと走り出してしまった。

「はぁ、はぁ・・・」

気がつくと、私は海岸にいた。このまま、海に沈もうかなと考えていると、息を荒げた剣崎さんが追いついてきた。

「どうしたんだよ祥鳳ちゃん・・・?」

「もう私、戦えないんです。艦娘としての力を失ってました・・・」

「気にするなよ。アイツは必ず俺が倒すから」

彼の言葉も私の耳には届かなかった。

「いいんです・・・。私なんか、あそこで沈んだほうが良かったんです・・・」

「バカなこと言うな」

「運命に、身を任せたほうが良かったのかも・・・」


「そんな悲しいこと言うなよ!」

突然、剣崎さんが声を荒げた。思わず私はびくりと震えた。

「・・・ごめん。でも、もっと自分を大切にしろよ。祥鳳ちゃん」

「でも、もう戦えない私なんか生きてたってしょうがないんです・・・。生きてたって辛いだけです・・・」

この時私は絶望していた。もう艦娘としては戦えない。みんなの役に立てない。そんな私に何の価値があるって言うの? その言葉が頭を支配していた。

「だったら・・・、その痛みを生き抜いてやるって言うバネに変えろ・・・。俺たちはそうやって、生きていくしかないんだ・・・」

でも剣崎さんは真剣な眼差で言ってくれた。思わず、その眼差しに言葉を失った。

「俺さ・・・、火事の中から両親助けられなくてっさ・・・。すごく悔しかったんだ・・・。でも俺は、それをバネに生きてきた・・・。だからキミも・・・」

「でも、艦娘でなくなった私なんて。戦えなくなった艦娘は沈んでくのが・・・」

「それが君の運命だって言うのか?」

私は黙ったままだった。

「もし運命なんてものがあるんなら、その運命と戦うことだってできるんじゃないかな? 少なくとも、俺はそう信じてる」

「剣崎さん・・・」

しばらく、私たちの間に沈黙が流れた。

運命と戦う・・・。私なんかに、できるのかな・・・?


その時だった。

「オノレ、カブトムシ・・・!!」

さっき撤退したはずのヲ級が再び現れ、私に襲いかかった。 しかもなぜか巨大化していた。

「祥鳳ちゃん、危ない!!」

私を庇った剣崎さんが深海棲艦に弾き飛ばされ、数十メートル吹き飛ばされる。

「ぐはぁぁっ!!」

「ゲイグウヴォ・・・、コロス!!」

攻撃をなんとかかわした。でも、ここは陸の上。逃げて逃げて逃げ回っても、巨大な怪物はすぐに私に追いついた。そもそもなんで深海棲艦が陸を歩けるのか分からなかった。

やがて、深海棲艦は私に狙いを定め、砲撃を放った。

「ゲイグウヴォ・・・、ムッコロス!!」

猛スピードで飛んでくる艦載機の爆撃。

ダメ、避けきれない。

「きゃあぁぁ・・・・!?」

私は怖くて身をすくめてしまった。

やっぱり、ダメか・・・。

(私なんかじゃ、運命に勝てないんだ・・・)

諦めかけた瞬間、剣崎さんが「変身!」と叫び、次いで急いで一枚のカードを取り出したのが見えた。

時計を背負ったスカラベのカードだった。




『Time』



その音が耳に届いた瞬間、時が止まったような気がした。

そしてその直後、

「ぐわぁぁぁぁっ!!」

彼は何時の間にか私の前に立って、砲撃をその身で受け止めてくれていた。

鎧はあちこちが吹き飛ばされ、ボロボロになっていた。内部の機械構造や配線が見えてしまい、傷ついた皮膚まで見える。

「剣崎さんっ!?」

惨状を見て、私は悲鳴をあげた。いくら強固な鎧を着ているとは言え、どう見ても普通の人間が耐えられるようなモノではない。

それでも、彼は体から煙を上げ、力強く立ち続けていた。

「キミは必ず俺が守ってみせる・・・! だから生きろ!運命と戦うんだ!」

「剣崎さん・・・!」

「俺は・・・、俺は負けない! 全ての人を守ってみせる!!」

彼の力強い言葉に、私の胸も勇気づけられた。

「マズハオマエカラダ・・・カブトムシ・・・」

ヲ級は剣崎さんを、ブレイドをその巨体で掴み取った。

「ぐわぁぁぁぁっ!!」



【BGM:ELEMENTS】ttps://youtu.be/bx6JHfbXj8A


(運命と、戦う・・・!)

そうだ。私は甘えてた。たとえ艦娘として戦えなくたって、人間としてなら戦える。

「私やります・・・! 私だって、元艦娘です!」

艦載機に変化させられない以上、ただの弓矢に過ぎない。けど、射たずにはいられなかった。

私だって戦える。剣崎さんの力になれる。そして運命とだって戦えるんだ!

矢は深海棲艦の額に命中した。さっき剣崎さんが切り裂いた斬撃の傷跡だった。さすがに傷口を射たれたら動揺したのか、のたうちまわり、剣崎さんを手から離してしまった。



「祥鳳ちゃん・・・!」

「剣崎さん、今ですっ!」

その隙を逃さずに、剣崎さんはカブトムシが描かれたカードを取り出し、左腕に装着された機械に読み込ませた。



『ABSORB QUEEN』



『EVOLUTION KING』



黄金の光がブレイドの身体を覆ってゆき、あっという間に傷ついた鎧が修復された。飛び出た13枚のカードは、鷲やカブトムシ、牛やトカゲなど、様々な動物のエンブレムとなって鎧を彩る装甲となった。

やがて、ブレイドは神々しい光を放つ金色の戦士へと姿を変えた。

「きれい・・・」

思わず私はその輝きに見とれてしまった。

「オノレ、カブトムシメ・・・!」

深海棲艦は沢山の砲弾を放った。でも、何発命中しようと、どれだけ艦載機が爆撃しようと、地面が焼けてえぐれるだけで、金色のブレイドには傷一つつけられなかった。

ブレイドは悠然と歩きながら5枚のカードを手に取り、装填した。



『Spade10,Jack,Queen,King,Ace...RoyalStraightFlash!!』



大剣が黄金の光を宿すと、5枚のカードが深海棲艦の前に立ち塞がった。狼狽える巨大な海魔に向け、金色の剣士が飛び上がり、大剣を振り下ろした。

「はぁぁぁ・・・、ウェェェェーイィッッッ!!」

黄金の一閃が深海棲艦を真っ二つに一刀両断した。

次の瞬間、断末魔の雄叫びをあげて深海棲艦は爆散した。

「ウゾダ・・・ドンドコドーン!!」

煙を天に吹きあげて、物凄い爆音と光を巻き上げ、怪物は吹き飛び、海へと沈んでいった。



「す、凄い・・・」

私は驚愕し、戻ってきた剣崎さんを出迎えた。

「ありがとうございます、剣崎さん!!またも助けていただいて・・・」

私は頭を下げながらお礼を言った。だけど、変身を解いた剣崎さんの身体を見て、私は驚愕した。

その体からは、緑色の血が流れていたから。

「け、剣崎さん・・・?」

そう、剣崎さんもまた、人ならざるものだった。

剣崎さんは、傷ついた腕を押さえてしばらくじっと私の顔を見つめた。その後、カバンの中を探り、黙って名刺みたいな小紙を渡してくれた。

「君を追ってた怪物は倒した。後はもういいだろう・・・。そこのお店に行くんだ。きっと手助けしてくれる」

「剣崎さん?」

バイクのハンドルを手に取った剣崎さんを見て、嫌な予感がした。彼がこれからなんと言うのか、すぐに想像が付いてしまった。

「俺にはもう一つやらなきゃならないことがある。もう、一緒にはいられない」

「嫌です・・・! 私も剣崎さんと一緒に・・・! 一緒にいたい・・・!」

もう一人ぼっちは嫌だった。私は力の限り必死で叫び、呼び止めた。



「来るな!」

でも、彼に厳しい怒声をあげられ、私は怯んだ。

「君にはやることがあるはずだ。人間として、自分の運命と戦い続けろ・・・!」

「剣崎さん・・・。行かないで・・・! お願い・・・!」

「大丈夫、俺たちは離れてても、ずっと友達だから」

さっきとは打って変わって、穏やかで優しい表情で剣崎さんは言った。

「君は、人間たちの中で生き続けろ・・・!」

言葉が続かなかった。私は潤んだ瞳で頷くことしかできなかった。

もう彼は何も言わなかった。静かに此方に微笑みかけたあと、バイクのエンジンに火を点け、何処かへ走り去って行った。

緑色の血を垂らし、静かに、何処かへ・・・

「剣崎さん・・・!」

だんだんと彼が小さくなっていった。

私はその場にしゃがみこんで、涙が枯れ果てるまで泣き続けた。




第二章結び 切り札は何処へ



その後、私はとある喫茶店で住み込みで働くことになった。

剣崎さんに教えられたハカランダと言うお店だ。ここに暫く身を寄せてもうらことにした。

そのお店には若い男性と母娘が住んでいて、剣崎さんから紹介されたという話をしたら、みんな暖かく迎えてくれた。

「それで、剣崎はなんて言ってたんだ・・・?」

とりわけ若い男性はしきりに剣崎さんのことを聞きたがった。剣崎さんの友達なのかな。

「人間たちの中で生き続けろ、運命と戦い続けろ、って言ってました」

「アイツらしいな・・・」

彼は静かに微笑んだ。どこか懐かしそうに、そして悲しそうに。

「剣崎さん・・・」

艦娘だった私が、どこまで人の社会で生きてゆけるかどうかはわからない。



でも、剣崎さんもきっと、緑色の血を流して、誰かを守るためにどこかで必死に闘っているはずだ。

あるいは、どこかの砂浜をバイクで走り続けているのかもしれない。

だから、私も運命と戦ってみよう。






彼がくれた輝くような勇気を、この胸に確かに閉じ込めて。



文:祥鳳(祥鳳型一番艦・軽空母)

ちょっと急な仕事が入ったので投稿一時ストップします
二時間後くらいに再開いたします

乙。スレタイでもしやと思ったらアナタでしたか。全シリーズ楽しく読ませてもらいました。


第三章 比叡カレーの行方





それから、如月ちゃんとも知り合い、生活も落ち着いてきた頃だった。私の脳裏に浮かぶのは鎮守府においてきた妹、瑞鳳のことばかりだった。

でも、私は瑞鳳に会う気にはなれなかった。戦えなくなった自分が彼女に拒絶されるかもしれない。そう思うと、怖くて会いにいくことができなかった。そして、そもそも今までいた鎮守府がどこにあったのかも思い出せなかった。

しばらくは栗原さんや相川さんにお世話になりながら、時々「いろはにほへと」にアルバイトに行く日々を過ごしていた。

そんな私の背中を押してくれたのは比叡さんだった。


ある日私がハカランダで皿洗いをしていると、橘さんが比叡さんを連れてハカランダにやって来た。

「いらっしゃいま・・・、何だ橘か」

「何だはないだろう。いきなりですまんが、この子に料理を教えてくれ」

「・・・なぜ俺に頼む? 料理ぐらい白井や広瀬にでもできる。奴等に頼めばいいだろ」

「白井は牛乳王子の仕事で忙しい。広瀬は芸能人と結婚したからな。お前が適任だろう」

「まぁいい。二三日教えるくらいなら構わん。今は撮影に行く予定もないからな」

「相川さん、これからよろしくお願いします!」

「あっ、あぁ・・・」

比叡さんに少し戸惑った様子を見せて、相川さんが返事した。

「あっ!? これもしかして、真崎剣一の写真じゃないですか!」

「・・・知ってるのかい?」

「はい! どれもすっごくいい写真ですよね!お姉様も私もお部屋に飾ってます!」

「そうか・・・、ありがとう」

「へ?」

「いや、何でもないよ・・・」

相川さんはどこか寂しそうな顔をして、視線を逸らした。


私は比叡さんには目線を合わせず、手元の仕事を片付けていた。今、如月ちゃん以外の艦娘には会うのは億劫だった。

しばらくすると、突如若い男性がお店に入ってきて、不機嫌そうな表情で橘さんに話しかけてきた。

「睦月か。よくここがわかったな」

男性とは対照的に、穏やかな口調で橘さんが言った。

「研究所の人から聞きました。・・・もうあんな実験やめてください! アンデッドとの融合係数を無理やり上げる実験なんて!」

「睦月。アイツを人間に戻すには、人間がなぜアンデッドと融合するのか詳しく知る必要がある。やめるわけにはいかないんだ・・・」

「だからって・・・。これ以上は、橘さんの身体に何が起こるかわからないんですよ! 研究所の人から聞きましたよ!今だってもう身体がボロボロらしいじゃないですか・・・! テロメアとかいう遺伝子にも影響が出てるって!」

「いいんだ・・・。アイツがあれだけのものを背負ってるんだ。これぐらい、アイツを思えば何ともない」

「橘さん・・・!」

悲しげに睦月さんという若い男性が項垂れ、それっきり何も話さなくなった。

「そう言えば祥鳳くんは?」

気まずい雰囲気を払拭するためか、橘さんが話題を変えて、私の話題を出した。

「祥鳳ちゃんか・・・。元気でやってるよ。ここでいい看板娘として働いてくれてる」

褒められてしまい、私は顔が赤くなった。


「・・・え? あなたが祥鳳さんなの?」

比叡さんが私の顔をじっと見て言った。

「そっ、そうですよね・・・。私なんか、大した戦果も上げてないですし、誰も心配してくれなかったみたいですし・・・」

「ちっ、違うの!そう言う意味じゃなくて、別の鎮守府所属の人だからわからなかっただけだよ! ほ、ほら!祥鳳さんって、あの弓を構えるセクシーでかっこいい姿が有名じゃない! それでね・・・」

「そっ、そんなイメージが広まってたんですか? ちゃんと普段は着てるのに!」

私は落ち込んでしまい、体育座りをしていじけてしまった。

「ごっ、ごめん! ホントに私が悪かったから! そんなに落ち込まないでよぉ・・・!ひぇぇぇ・・・」

涙目で謝る比叡さんに、私のほうが動揺してしまった。

「えっ・・・。そっ、あっ、あの私の方こそいじけすぎて・・・。ごっ、ごめんなさい!」

「わっ、私こそ祥鳳さんのことちゃんとわかってなくて・・・。ごめんなさい!」

私達はお互いに謝りあった。

「ふふ。別に祥鳳さんが謝らなくてもいいのに・・・」

「比叡さんこそ、気にしすぎですよ・・・」

お互いの謝りぶりがおかしくなって、思わず私たちは吹き出してしまった。



私達をよそに、橘さんと相川さんも話が盛り上がっていた。

「そういえば天音ちゃんの近況を聞いてなかったな、最近どうだ?」

「天音ちゃんなら元気だ。今は一人暮らしをして、カレッジライフを楽しんでるよ。一時期ゴスとかいう変なファッションと黒魔術にハマってたがな・・・。たまに帰ってきて祥鳳ちゃんとも仲良く遊んでる。あの子、世間知らずなお嬢さんみたいだから、色々教えてるらしい」

「なるほどそうかぁ・・・」

ニヤニヤしながら睦月さんが相川さんを見つめた。

「なんのことだ?」

「相川さん、天音ちゃんがいなくなったから・・・」

からかうような口調で睦月さんが言った。 恐らく場を明るくしようと無理に話題を作ったんだろう。

「ふざけたことを言うな。あの子の面倒を見てるのは、アイツの知り合いだからだ」

「えっ・・・!?」

「突然転がり込んできたときには驚いたのよ」

微笑みながら遥香さんが会話に入ってきた。

「行き場もないと言っていたからな。ここでしばらく預かってる」

「そうだったんですか・・・。その・・・、すみません・・・」

睦月さんは申し訳なさそうに小さくなった。

「ふふっ、でも良かったわ・・・」

「遥香さん?」

「彼、今もどこかで元気でやってるみたいじゃない。彼も隅に置けないわね、あんな可愛い子と知り合いだなんて・・・」

「そ、そうですね・・・」

相川さんは寂しそうに呟いた。 私にも相川さんの気持ちが痛いほど分かった。私だって、あの人に会いたい。


お店がしまった後、比叡さんがカレーを作ってくれた。

「・・・なんだこれは」

「ボーキサイトをふんだんに使った、比叡スペシャルカレーですっ!」

「・・・いただきます」

「いただきます」

「いただきま~す」

「い、いただきます・・・」

私達は、恐る恐るカレーを口にした。

「・・・!?」

「んっ・・・!?」

たちまち、私を含めたみんなの顔が紫色に染まり、倒れてしまった。

私は泡を吹いて苦痛に呻き、気絶してしまった。

薄れゆく意識のなかで、相川さんはテーブルに突っ伏し、睦月さんは椅子からひっくり返って倒れてしまうのが見えた。そして、「ひ、ひぇぇぇぇっっ!?」と悲鳴をあげるカレーを作った張本人の声が聞こえた。

だけど、橘さんだけは美味しそうにカレーを食べていたようだった。

「どうしたみんな? 別にこれといって問題は見当たらないが」

「・・・冗談だろ?」

「俺は普通に美味かったと思うが?」

橘さんはお鍋をジッと見て、

「これ食ってもいいかな?」

と笑顔でお替わりを要求した。

最期に私の耳に届いたのは、

「・・・好きにしろ」

という相川さんの呆れた返事だった。


その後、重症だった睦月さんは家に帰って静養することになり、望美さんという恋人に連れられて帰ってしまった。

「ひぇぇ・・・。皆さんホントごめんなさい・・・!」

比叡さんが必死でみんなに頭を下げた。

「・・・想像以上にひどかった」

「始、言い過ぎだぞ・・・」

私は何も言えずに脇へ目を逸らした。

「すみませんっ! 本当にっ! すみません!!」

「確かに、橘には任せておけないな」

「・・・うるさい。俺は味覚のストライクゾーンが広いだけだ」バツが悪そうに橘さんが言った。

相川さんは私が持ってきた材料を白い目で見ながら、

「そもそも材料にこんな変なものを混ぜる必要はない。食い物ですらない」

ボーキサイトを相川さんは庭に投げ捨ててしまった。

「・・・ですよね」

「俺が今まで食べた料理の中で、一番美味いのを教える。ちょっと待っててくれ・・・」

そう言い残し、相川さんは厨房へと入っていった。


暫くすると、器にある食べ物が盛られていた。透明な液体の中に白く柔らかいお米と細かく刻まれたネギが浮かんでいる。

「これって・・・」

「おかゆだ。いいから黙って食べてくれ」

比叡さんは言われるがまま、相川さんに渡されたおかゆを口にした。

「おいしい・・・!」

「あぁ、俺も初めて食べたときそう思ったよ」

私もおかゆを少し分けてもらった。

暖かく、旨みと塩味がちょうどいい塩梅になっている。とても素朴で、温かい味だった。

「初めて食べたのはボロボロの山小屋だったな・・・。ひどく不器用で粗末な料理だった。でも、今まで食べた中で・・・、一番美味かった・・・」

静かに、相川さんがポツリポツリと言い始めた。

「始、それはなぜだと思う?」と橘さん。

「それは・・・。アイツが・・・、俺のために・・・」

「そう。あのお粥こそが、アイツの優しさだったんだ・・・」

「そうか。私、料理を作る上で大事なこと、忘れてました・・・!」

料理は食べる人のことを考えて作るもの。

多分、相川さんはそれを教えようとして比叡さんにこのお粥を・・・

「・・・まずは、これから始めてみろ。カレーは・・・、それからだ・・・」

相川さんの言葉が途切れ途切れになり、瞳が潤んだ。そして、涙が零れ落ちた。

きっと、大切な人が作ってくれた料理なんだろう。




その後、比叡さんはたいやき名人養成ギブスをつけながら相川さんの元で数日の間修行と特訓を重ね、お粥を作れるようになり、最終的には何とか美味しいカレーを作れるようになった。

(でも、たいやき名人養成ギブスは何の意味があったんだろう?)

私は比叡さんの片付けを手伝った。

ふと、気になった事があって、私は彼女に話しかけた。

「比叡さんは、お姉さんや妹さんがいらっしゃるんですよね・・・」

「そうだよ! 金剛お姉様は強くて格好良いですし、榛名や霧島も可愛くて頼りになる妹だよ!」

比叡さんは心からそう言っているようだった。私は彼女がうらやましかった。

「いいですね・・・。一応私にも、瑞鳳って妹がいるんです・・・」

「そうなの? 今度、私にも紹介してね!」

「それは、できないです・・・」

「え?」

「艦娘としての力を失った私なんかが、瑞鳳に、妹に、今更会いに行っても迷惑ですよ・・・。もう艦娘でない私が会っても、混乱させちゃうだけです・・・」

私には妹に会う資格なんかない。もう艦娘じゃない私なんかが、彼女に会いに行く意味なんかない。


でも、比叡さんは私に向かって言ってくれた。

「そんなことないよ!」

「え・・・」

「絶対会いたがってるよ、瑞鳳さん! きっとあなたに会いたくて寂しがってるよ!」

「でも、今の私は戦えない、役立たずですから・・・。今更会ったって邪魔になるだけなんじゃ・・・」

「そんなこと関係ない! 今の貴方がどうだろうと、貴方は妹さんにとって、たったひとりのお姉さんなんだよ! 姉妹の絆は絶対に切れたりなんかしないから!」

「そう、なんですか・・・?」

戸惑いながら私は返事をした。

「うん、絶対そうだよ!!だから祥鳳さんも信じよう。妹さんを! ねっ!?」

「はい・・・。ありがとうございます、比叡さん・・・」

いつの間にか、涙が零れた。

嬉しかった。私にそんな優しいことを言ってくれるなんて。

「ひぇっ!? ごっ、ごめんなさい。また私、酷いこと言っちゃった・・・!?」

「ううん、嬉しかったです・・・。ありがとう、比叡さん・・・」

あの時、比叡さんが励ましてくれたから、私は勇気を持てた。

比叡さんの優しさが、あの時本当に嬉しかった。


その時だった。山奥から突如轟音が鳴り響いた。

「まさか・・・!?」

比叡さんの電探に深海棲艦の反応が出ていた。

「こんな陸地にまで・・・!?」

信じられない。普通は海域のみに出現するはずなのに・・・。

「祥鳳ちゃん、遥香さんとお客さんたちを頼む」

「・・・はい!」

相川さんに頼まれ、私はお店にいた人達を引き連れてお店の裏へと避難した。その一方で、相川さんと橘さんは爆音の方向へと走り出す。

「行くぞ始!」

「言われるまでもない・・・!」

橘さんはベルトを取り出し腰に装着させる。拳を前に構えた。一方で相川さんはカードを懐から取り出し、突如出現したベルトに向けて構えた。

「変身!」

二人同時にそう叫に、橘さんはベルトを操作し、相川さんはベルトにカードを読み込ませた。



『TurnUp』



クワガタの紋章が飛び出て橘さんがそれをくぐり抜けると、彼を仮面の戦士に変え、



『Change』



カードをベルトに相川さんの姿が弾き飛ぶ水のように吹き飛び、黒いカマキリのような戦士になった。

「あの二人が・・・!」

相川さんが渡してくれた「仮面ライダーという名の仮面」にはこう書いてあった。

嘗てアンデッドという怪物が現れた時、人々を守るため戦った都市伝説のヒーロー、『仮面ライダー』。

謎の怪物・アンデッドと戦った伝説の四人の戦士、ブレイド・ギャレン・レンゲル・カリス。

まさか、あの二人が剣崎さんと同じ仮面ライダーだったなんて!?


「私も行きます!」

比叡さんは入口に泊めておいた艤装を呼び出し、装着した。

「ヒァァハハハハハ・・・!!」

比叡さんが置いてくれた通信機越しに不気味な笑い声が届いた。

深海棲艦がそこいら中に砲撃を撒き散らす音も聞こえた。木が吹き飛ばされ、鳥や虫達が悲鳴をあげて逃げ出すのも。

遠くからでも、その深海棲艦の姿はよく見えた。

声の主は戦艦棲鬼、不気味な女の体に巨大な頭と不気味な腕が乗っかかった怪物だった。

「始、一気に決めるぞ。援護を頼む!」

「・・・分かった」

ギャレンは3枚のカードを引き抜き、銃のカードリーダー部分に読み込ませた。 カリスも同じように、持っていた弓のカードリーダーに一枚のカードを読み込ませた。蔦の生えた怪物のカードだった。



『Drop,Fire,Gemini, Burningdivide』

『Bio』



弓のような武器から生えてきた蔦が戦艦棲鬼を縛り、その隙にギャレンが飛び上がり、二つに分身して炎の浴びせ蹴りを繰り出した。

爆風が巻き起こり、深海棲艦は吹き飛んだかに思われた。


「やった・・・!」

比叡さんが勝利を確信して叫んだ。だけど戦艦棲鬼は倒れていなかった。

「何・・・!?」

「ウソ・・・!?」

「ヒャハハハハ・・・!!」

それどころか不気味な笑い声をあげ、余裕綽々の様子だった。

「うわぁぁぁ!!」

「くっ・・・!」

「きゃぁぁぁっ!?」

棲鬼は突如恐ろしいスピードで動き、格闘戦であっという間に私達を叩き潰してしまった。

「く、くぅ・・・」

比叡さんの苦しむ声が通信機から聞こえた。ギャレンとカリスも、ボロボロだった。

「オレハサイキョウダァ・・・、オマエタチガガナウハバズモナイ・・・、アキラメロ・・・!!」

戦艦棲鬼が倒れた比叡さん達を見下し、せせら嗤った。


【BGM:ラストバウト】https://youtu.be/eOLRvzh4tho



「・・・違うな」

「ナニ・・・?」

黒い戦士と赤い戦士はそれでも立ち上がろうとしていた。

「こんなものは、本当の強さなんかじゃない・・・!」

カリスが、相川さんが静かに言った。

「ナニイテンダ・・フジャケルナ・・・」

「俺は嘗て、血に飢えた怪物だった。だが、あの家族が、そしてアイツが、人の心を、心の強さを教えてくれた・・・!」

「そうだ。こんな俺を支えてくれた人達のためにも、そしてアイツのためにも、俺は負けられない・・・!」

「ケケケ・・・、オマエダチノカラダハモウボドボドナノニ・・・」

「人の心は、そんな力など凌駕する!」

すごい・・・。この人たちも剣崎さんの仲間だけあって、強く優しい人達だった。

「・・・本当に強いのは!」

相川さんが吠えた。

「強いのは!」

橘さんが叫んだ。

「 人 の 思 い だ ぁ ぁ ぁ ! ! 」




「ゴタグヲビウバ・・・、ドドメドゥア・・・!!」

砲撃音と共に、私達の前に巨大な弾が放たれた。

だけど、咄嗟にカリスがカードを引き抜き弓矢のカードリーダーに読み込ませ、



『Reflect』



光の壁が黒い戦士達を包んだ。その壁に衝突した砲弾は弾き返され、海魔に降りかかり爆発した。

「ゾンナァ・・・ゾンナァ・・・ナズェダァ・・・! ナズェダァ・・・! ナズェダァ・・・!!!」

戦艦棲鬼の砲塔に被弾し、痛みに苦しみ出した。

「ハートのカテゴリー7は、あらゆる攻撃を弾き返すバリアを形成する。お前のその攻撃にはうってつけだったわけだ」

ついで黒い戦士は、ラクダの描かれたカードを読み込ませた。



『Recover』



緑色の血が流れていた黒い戦士の傷が癒え、たちまち回復した。

「橘、お前もこれを使え」

黒い戦士が橘さんにカードを投げ渡した。彼に倣って、橘さんもカードを読み込ませた。

『Recover』の呪文が唱えられ、橘さんの鎧の傷が一瞬で回復して仮面も元に戻った。



「ナラオマエカラダ、センカンメ・・・!」

「比叡ちゃん!」

通信機越しに喜んでいたのも束の間、比叡さんは棲鬼の巨大な腕に捕縛されてしまった。

「くっ・・・!」

比叡さんの体が縛られ、ギシギシと骨が軋む音が届いた。聞くだけでも痛々しかった。

「ごめんなさい、お姉さま・・・。帰れないかも・・・」

比叡さんの小さな声が聞こえたその時だった。

「バーニング、ラァァァブ!!」

何処からか砲撃が放たれ、海魔の腕を大きく抉りとった。

「ウェァァァァ・・・・!! ンナズェダ・・・!!」

「Hey Sea Monster!これ以上、私のSisterに手は出させまセーン!」

「お姉さまっ!!」

比叡さんの姉、金剛型一番艦の金剛さんだった。

「もうダイジョーブね、比叡!! 私が来たからにはBigshipにRideしたつもりでいてクダサーイ!」

比叡さんの言うとおりだった。本当に、姉妹の絆は絶対なんだ。


「壊させはしない! アイツが護ってくれた、この世界を!」

カリスは朱色のハート模様が描かれたカマキリのカードを取り出した。



『EVOLUTION』

カリスは黒かった鎧が水が撥ねるかのように脱皮し、真紅の鎧へと姿を変えた。胸のハートは赤から緑色になり、その腕には美しい黄金の鎌が備わっていた。



ギャレンも赤く光るクワガタのカードを取り出し、左腕のカードリーダーに読み込ませた。



『ABSORB QUEEN』



『EVOLUTION KING』



その瞬間、ギャレンの身体を黄金の鎧が覆い、その角は巨大なクワガタ、いや王冠のように大きく逞しくなった。

「イロガガワッダグライデナンドゥア・・・!」

戦艦棲鬼が叫ぶ。

だけど、赤いカリスは物凄い速さで動き、あっという間に鎌のような武器で戦艦棲鬼の腕を切り裂いた。

「ウェアァァァ・・・・!!!」

腕を切り裂かれ、戦艦棲鬼は悲鳴を上げた。

そしてギャレンは巨大な双砲を備えた銃に、5枚のカードを装填した。

カリスもまた、鎌を弓に変形させ、一枚のカードを読み込ませた・



『Dia10,Jack,Queen,King,Ace...RoyalStragihtFlash』



『Wild』



カメレオン、孔雀、海蛇、そしてクワガタが2匹、全部で五枚のカードが海魔の前に並び立ち、ギャレンの構えた巨銃が黄金に輝いた。

その隣のカリスの背中に丸い石のようなオーラが浮かび、直後それは弓矢に吸収され、弓に閃緑の光が灯りエネルギーが蓄積された。

「はぁぁぁぁっっ!!」

5枚のカードめがけて、ギャレンの巨砲から二つの炎の渦が発射された。

「ふっ・・・!」

同時に、カリスの弓から閃緑の矢が発せられた。

「グウエァ・・・!!」

その猛攻で深海棲鬼の大きな頭が砕け散り、その動きが鈍った。体から炎を巻き上げ、既に大破していた。


「やったぁぁっ!!やりましたぁ!」

私は子供みたいにはしゃいで大喜びした。

「やったな・・・」

ギャレンはカリスに手を差し伸べた。

「あぁ・・・」

カリスも黙ってその手を握り返した。


戦いが終わった後、比叡さんは金剛さんと一緒に帰ることになった。

彼女いわく、比叡さんを探していたらたまたま深海棲艦を発見したので追跡していたのだという。

「まったく...お姉ちゃんや妹に心配かけちゃNoデス!」

「はい・・・、ごめんなさい・・・お姉さま・・・」

「反省してるならOkayネ! さっ、榛名と霧島もWorryしてマース! 帰りまショウ!」

金剛さんは優しく妹の頭を撫でた。

「相川さん、橘さん、それから祥鳳さん・・・。短いあいだですが、お世話になりました! 遥香さんにも、よろしく言っておいてください・・・!」

「比叡さん。私、今度瑞鳳に会いに行こうと思います・・・。きっと、あの子も、待っていてくれるような気がしますから・・・」

祥鳳さんが言った。

「うん、頑張ってね・・・」

「はい、ありがとうございます」

比叡さんは私を励ますかのように、手を握ってくれた。

その時だった。

「Oh! Youも元艦娘ね!? だったら此処に行くといいヨ!」

お姉様は懐からチラシを取り出す。そこには、「いろはにほへと組」と書かれていた。

「そこで、今まで倒れた艦娘達を預かってマース! 昔ウチの鎮守府にいた如月ちゃんも、そこでHappyに暮らしてるとInformationが入ってマース! 今度は鎮守府にも慰問に行くそうデース! そこなら妹さんに会えるでショウ!」

「三上了、面白いことをする男だ・・・」と相川さんが微笑んだ。

なぜか、どことなく嬉しそうだった。

「ありがとうございます、比叡さん・・・!私頑張ります!」と祥鳳さん。

「うん、妹さんと、幸せにね・・・」

「それじゃ、行きマース・・・、See you!again!!」

比叡さんと金剛さんは海へと走り出し、トラック泊地へと向かった。

はるか水平線の彼方へと去って行く二人に、見えなくなるまで手を振り続けた。


その後、比叡さんから聞いたところによると、トラック泊地で振舞ったカレーはちゃんと食べられるものになっていたらしい。

ただ、味が辛すぎて食べにくかったとか。

後にその話を橘さん達に振って、その原因が分かった。

「え? 橘さんと相川さんって、辛党だったんですか?」

「俺は辛味噌が好きだが・・・?祥鳳ちゃんは甘党なのか?」

「俺もそうだ。甘ったるいカレーなど、食べてられるか」

そう、二人は激辛カレーが好みだった。

「っていうことは、まさかあのカレー、辛すぎたんじゃ・・・?」

今度比叡さんに出会ったら、スパイスの調整について教えようと思った。



文:祥鳳(祥鳳型一番艦・軽空母)



第三章結び 瑞祥の日  



それは、鎮守府の慰霊祭の日だった。提督がこれまでの苦労を労うため、そして轟沈した艦娘達を弔うため、特別に開いてくれたのだという。

『あの日』が過ぎてから、私の日常はまるっきり変わってしまった。

祥鳳に同行してた天龍さんは、泣きながら「すまねぇ・・・」と私に土下座して謝りに来た。青葉さん達も何度も何度も私に謝ってくれた。伊勢さん達もすごく優しくしてくれた。

みんなが私を気遣ってくれた。私もそれに答えようと、必死で頑張った。 なんとか、祥鳳がいなくなった現実を受け止めようとした。でも、本当は泣きたかった。泣いて泣いて何もかも枯れ果てるまで泣き続けたかった。

でも我慢した。

みんなに弱さを見せるのが恥ずかしかったし、泣いたら祥鳳がいなくなったことを認めることになっちゃうから。 だから無理やり涙をこらえて、笑顔を作り続けた。

「祥鳳・・・」

時が経てば経つほど、祥鳳に会いたい気持ちは強まる一方だった。

これまで姉妹としてろくに接する時間もなかったから、もっと甘えたかった。 艦爆の脚についてお酒を飲みながら語り合いたかったし、特製の卵焼きも食べて欲しかった。

何より、ちゃんと「お姉ちゃん」って呼んであげたかった。多分、あの人もずっとそう呼んでほしかったんだと思う。それなのに、恥ずかしくて言えずじまいだった。

どうして私はそんな簡単なこともできなかったんだろう。一生後悔することになったのに。


ふと窓に映った自分の顔を見ると、自分が暗い表情をしてることに気付いた。

(いけない、またみんなに心配かけちゃう・・・)

頬を叩いて無理やり笑顔を作り、明るい人ごみへとまぎれた。

ステージでは何かイベントが行なわれていた。

「鎮守府の皆様、お待たせいたしました!これよりいろはにほへと組による特別イベント、『アルティメットフォーム・超スペシャルターボでたいやきたこ焼き作ります』が開催いたします!青葉も一押しですっ! ところでアルティメットフォームってなんでしょう?」

特設ステージの上に、司会担当の青葉がいた。ハイテンションなのは相変わらずみたい。 でも、その声は私の中には響かない。ぽっかり空いた心の穴は、誰にも埋められない。

やがて、たいやき名人アルティメットフォームなる仮面を被った美女がたい焼きを焼いて、みんなに配っていた。

どうでもよかった。祥鳳が隣にいてくれないなら、どんな高級料理だっておいしくなんかない。

「おぉぉっ!! 会場からも賞賛の声が、声が続々上がっております!! 

それでは、美味しいたいやきとたこ焼きを披露してくださった、たい焼きたこ焼き名人アルティメットフォームマークツー改さんに、皆さん大きな拍手ぅ!!!」

青葉に従い、観客たちが拍手を捧げた。

「あっ、ありがとうございますっ!! こんなに褒めていただけて、私嬉しいです!!」

歓声と拍手が上がり、たい焼きたこ焼き名人はまるで子供のようにピョンピョンとはねた。

どうでもいい。全てが虚しく思えた。



でも、その時だった。

「あっ・・・、ふあぁぁぁっ!?」

名人は飛び跳ねているうちに誤ってバランスを崩し、転んでしまったのだ。 大きな音を立て、ヘルメットが転がった。

「あいったたた・・・」

名人は倒れてしまい、装備が其の辺に散らばり、素顔があらわになった。
その顔を見たとき、私は信じられない気持ちでいっぱいになった。

「・・・し、祥鳳?」

そこに、命を落としたと思っていた姉がいた。

大人びた容姿の割にちょっと子供っぽい、でも優しくて素敵な姉が。

「あはは・・・。瑞鳳、また恥ずかしいところ見せちゃったね・・・」

照れくさそうに俯いて姉は言う。でも、そんなことどうでもよかった。

私は人目も憚らず、ステージの上へと駆け出して行った。

「祥鳳・・・、祥鳳・・・!!」

祥鳳に抱きついた瞬間、嬉しくて嬉しくて、今まで我慢できなかった涙が爆発した。

生きててくれた・・・。生きててくれた・・・!

「ず、瑞鳳!? そ、そんなに泣かないでよぉ・・・!」

そう言いながらも、祥鳳も泣きだしていた。

「バカバカバカ! 生きてたなら、もっと早く帰ってきてよ! 祥鳳のバカ・・・!」

自分で言うのもなんだけど、まるで子供みたいだった。

「よかった・・・! ホントによかったよぉ・・・!」



私は同じく涙でクシャクシャになった姉を見つめて言った。

今まで、ずっと言えなかったことを。



ずっと言いたかった想いを、ようやく伝えることができた 。



「おかえりなさい・・・、祥鳳お姉ちゃん!」

(文:瑞鳳)(※祥鳳型二番艦・軽空母)




瑞鳳に再会できた私は、その後連絡先を教えて彼女と別れ、たい焼き屋のお仕事に戻った。

離れていてもいつでも会える。

私は暫くの間、露店でたい焼きを売る仕事を如月ちゃんと続けた。街の人たちはみんな親切で、たい焼き屋の売上も好調だった。

ある日、私と如月ちゃんは、大門凛子という女性と稲森真由という女の子と知り合いになった。話をしてみると、彼女達もまた仮面ライダーに関わった人達で、さらに驚いたことに、真由さんも仮面ライダーメイジだという。

仮面ライダーに好意的だった私達はすぐに意気投合し、二人は私たちの露店の常連になった。それからしばらく経ったある日のことだった。

「真由さん、こんにちわ」

「ふふ。如月のたい焼き屋にようこそ」

穏やかに挨拶をかわした私と如月ちゃん。それに対してどこか真由さんの表情は重苦しかった。

「落ち着いて聞いてください。艦娘が、祥鳳さんの仲間が危ないんです・・・!」

「えっ・・・?」





(文:祥鳳)(※祥鳳型一番艦・軽空母)





第四章 新たなる運命へ・・・!

まえがき     

白井虎太郎



ここからは、再び白井が筆を執らせていただく。本章では、多くの艦娘の証言をもとに財団Xの最期について記そうと思う。

世界を恐怖に陥れた闇の組織がどのようにして潰えたか、ご覧いただこう。




春雨の夜、降りしきる雨の中。横断歩道を、二人の若い男女が歩いていた。

相合傘で歩くさまは、傍から見るととても仲の良さそうなお似合いのカップルに見える。事実、そうであった。このふたりは、幼い頃からの長い長い付き合いになるのだ。

「睦月、お腹は大丈夫・・・?」

「あぁ、なんとかね・・・」

苦笑しながら、気の弱そうな温厚な青年、上城睦月は言った。

「それにしても驚いたよ。久々に電話してくれたと思ったら『助けて~、お腹が痛~い』なんて!」

「あ、あはは・・・」

睦月は腹を擦り、苦笑した。隣の女性はそんな彼氏にため息をつき、「バカ・・・」と小さく呟いた。

「でもホントは嬉しかったんでしょ望美? 俺が電話してきて」

「うるさいよバカ睦月・・・!」

望美は肘打ちを腹に喰らわせる。「ぐほっ!」と悲鳴をあげ、睦月はお仕置きを食らった。

ちょっと暴力的なやりとりをしながらも、二人は幸せそうな顔をしていた。

普通の生活、普通の恋人。普通の会話。ありきたりな光景だったが、睦月と望美はそれが一番幸福な人生だと誰よりも知っている。

過去に辛いことや苦しいことがあったが、それも二人で乗り越えてきた。だからこそ、彼等はこうして二人でいる時間を大切にしていた。



「吹雪ちゃん・・・、夕立ちゃん・・・!」

同じ頃、白い吐息をあげて短髪の少女が雨の中の街を走っていた。ずぶ濡れであちこちに擦り傷が見られる。だが悲しきかな、この都会で彼女を気にするものは誰ひとりいなかった。寧ろ、異物として白い目を向けていた。

しかし少女はそんな周りの目線に気付かない。とにかく必死で走り回るだけだった。

「吹雪ちゃん、夕立ちゃん・・・!」

だが彼女はちゃんと前を見ていなかった。

「うぉぉぉ・・・!」

少女はずぶ濡れのまま、睦月に衝突して転倒し、尻餅を付いた。

「キミは・・・!?」

「お願いします!吹雪ちゃんを助けてください!お願いします!!」

少女は、いきなり訳のわからないことを口にし出す。睦月と望美はどうしたものかと顔を見合わせた。





少女に何かしらのっぴきならない事情があると判断した二人は、とりあえず彼女を望美の部屋に連れて行くことにした。

望美が服を着替えさせてシャワーを浴びるように言った。彼女の着ていたセーラー服は今、乾燥機の中でくるくると回転していた。

「それで、えっと・・・睦月ちゃんだね・・・。キミは艦娘って言う仕事をしていて、それで今まで深海なんとかとかいう怪物と戦っていたと」

「はい・・」ブカブカのパジャマを着ながら、頭から湯気を立ち上らせて睦月という少女が小さく頷いた。

「それで、何であんなに必死で走ってたの?睦月ちゃん」ココアを差し出し望美。

「いや、俺に聞かれてもわかんないよ」と睦月が言う。

「アンタじゃなくて、女の子の方の睦月ちゃんに聞いてるの」と、望美は冷たいツッコミを浴びせた。

「はい、今から説明します・・・」

ポツリポツリと、『睦月』は静かに話し始めた。



深海棲艦との決死の戦いを終えた吹雪達。彼女達を鎮守府基地内で出迎えたのは、兵士達の無機質な視線と黒い銃口だった。

「な・・・、どっ、どういうことなんですか提督!!」

「やぁ吹雪・・・」

驚く吹雪に、提督が笑顔で出迎える。

「てっ、提督・・・! これは一体・・・!?」

「決まっている。不要な兵器の殺処分さ」

狼狽する艦娘達。目の前にいるのは紛れもない自分達の提督だった。だが、その提督は端正な容姿に似合わぬ歪んだ笑顔を浮かべていた。

「今まで明かさなかったが、私の名はタナカ。財団Xの総帥だ」

「提督・・・? なんのことだかさっぱりわかりまっセーン・・・?」と金剛。

いつものお気楽な彼女さえも突然の提督の豹変には動揺を隠せない。

「君たち艦娘は人間ではない。我が財団Xの生物兵器なのだよ・・・!」

「え・・・?」

全員が絶句した。私達が、人間ではないだって・・・?

「考えてもみたまえ。なぜ、君たちは『在りし日の記憶』なんて持っているのかな? なぜ、見た目がふつうの女の子なのにも関わらず、身体が異様に頑丈なのかな?」

確かに変だった。どこかのアニメみたいなバリアがあるわけでもないのに、深海棲艦の弾丸が命中しても多少の傷程度で済んでいた。



「もともと我々は深海棲艦を、制海権を掌握するための生物兵器として開発していた。メズールという怪物の細胞を使ってな・・・。だが、コントロールに失敗し、一部が暴走してしまったのだ」

全員、呆然としていた。誰かを守るための、私達の戦い。それがただの尻拭いだっって言うの・・・?

「そこで君たち艦娘を、天王寺の残したトライアルのデータを元に開発したわけだ。人間をベースに製造したため記憶操作も容易だった。さらに『在りし日の記憶』などとニセの記憶を植え付けたのが大正解。そんな曖昧なモノに動かされて、君たちは見事私たちのテストに合格してくれた!生物兵器として、君たちは高値で売れるだろう!」

「まさか、作戦が筒抜けだったのも、提督が行方不明になったのも・・・!?」

「私が在りし日の記憶に悩まされていたのも・・・?」

長門と赤城が動揺しながら言葉を紡いだ。その手は怒りで震えていた。

艦娘達の中でも、彼女の怒りはとりわけ深かった。如月や祥鳳の犠牲は、今まで倒れていった仲間達の犠牲は、そんなつまらないもののためだったというのか・・・!?

「ご名答! ちょっとしたイタズラさ! このゲームを楽しむためのスパイスってとこさ! ついでに言えば、足柄くんの合コンや大井と北上の逢瀬もちょっとした茶番だよ!君達の思考を少しいじってな・・・!」

「こんのぉ・・・!」

足柄は拳を握り、恥辱に震えだした。

「そして吹雪! キミはよくやってくれた! 最高の兵器、いや私の最高の伴侶としてふさわしい女に育ってくれたよ!」

下劣な笑い声をあげ、タナカは言い放った。その心ない言葉に、吹雪の誇りはズタズタに傷つけられてしまった。

「さて・・・、次はどんな任務を与えようかな? 長門、君には都市攻撃を任せようかな?」

「おのれ・・・、提督・・・。貴様ぁっ・・・!!」

長門がその目に涙と怒りを備え、タナカに殴りかかった。足柄も下劣な男に蹴りを入れようと動き出した。

だが彼が手にあるスイッチを押した直後だった。

「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!」

悲鳴をあげ、二人は突然頭を抱えて倒れこんでしまった。 そして、それは彼女達だけではなかった。

「いやぁぁぁぁ!! 那珂ちゃん解体されたくないよぉぉぉ!!!」

「北上さぁぁん!」

同時に他の殆どの艦娘達も悲鳴をあげて頭を抱え、その場に倒れこんでしまった。大鳳も、霧島達も、ほとんどの艦娘が気絶してしまった。

「テ、提督・・・」

金剛も愛した男に手を伸ばしながら、気絶した。タナカは、その手を冷たく踏み躙った。


「ウソ・・・、ウソですよね提督・・・?」

吹雪は呆然としたまま、突っ立っていた。

彼女や夕立達は、何故か頭痛に苛まれることがなかった。

「逃げるよ、吹雪ちゃん睦月ちゃん!」

夕立の毅然とした声に吹雪は我に帰る。三人はそのまま、おぼつかない足取りで走っていった。

吹雪はもう一度振り返った。顔を歪めて笑う提督を、悲しげな視線で見つめながら。

「あっ。しまった、あの駆逐艦3匹には停止装置を付け忘れていた・・・。まいったなぁ・・・!」

提督はまるで飼育してる子猫が庭に逃げたかのような口ぶりで言う。その後、スマートフォン状の機器を操作し、部下達に彼女達を追いかけるよう命じた。

艤装を装備して海へと逃げ出す彼女たちを、どこからか現れた深海棲艦や兵士達が追いかけてきた。銃弾を放ち、砲弾を撃ち込み、彼女たちを追い詰めようとする。外れた銃弾が艦娘達の学び舎を砕き、破片が飛び散る。

「うっ・・・」

「きゃあっ!」

夕立と吹雪の脚から血が流れ出る。影に潜んでいた、深海棲艦の弾丸が命中してしまった。

脚を引きずる彼女に肩を貸し、必死で走ろうとする睦月達。だが、何時の間にか敵に囲まれてしまった。

「睦月ちゃん逃げて! ここは私達が食い止めるから!」

「ここは私たちに任せて逃げるのがいいっぽい・・・!」

「でも・・・!」睦月は尚も躊躇う。

「行って・・・! 睦月ちゃんだけでも助かる方が嬉しいっぽい・・・!」と夕立は笑った。

二人の目には強い決意と悲壮な覚悟が宿っていた。その目をみた睦月も二人の意志を理解した。吹雪と夕立が隙を作り、その隙をめがけて、睦月は猛スピードで逃げ出した。

「待ってて吹雪ちゃん、夕立ちゃん! 必ず助けを呼んでくるから!」

睦月は艤装を装備し、海原へと走り出した。どこにいるかもわからない、救援を求めて。




睦月は、震えながら自らの事情について、そして艦娘のこと、これまでの戦いのことについて、なんとか説明した。

「それで、気がついたら東京にたどり着いて・・・。でも、どこに行けばいいのかわからなくなって・・・」

「そうだったのか・・・」と、上城睦月。

「お願いします! 吹雪ちゃん達を・・・、一緒に助けてください!」

ココアを飲み干すと、睦月はいきなり頭を下げて頼んだ。 彼らが何者なのか、睦月には分からない。だが、同じ名前を持つ者同士、なぜか信じられるような気がしていた。

「えっ、ちょ、ちょっと落ち着いて睦月ちゃん! そんなこと言ったって私達そんな戦う力なんか・・・!」望美が動揺しながら言う。

その時だった。突然、金属の擦り合う音が睦月達の耳に聞こえた。

「え・・・?」

望美も、上城睦月も、言葉を失いその音の方向にあるモノを見た。嘗ての睦月にとって悪夢そのものだった、レンゲルのベルトが何時の間にか来ていたのだ。まるで、睦月に対して『戦え』と言うかのように。

ベルトを見ているうち、睦月の頭の中に忌まわしきあの声が聞こえてきた。

『戦え・・・戦え・・・!』

あの蜘蛛の声だ。カテゴリーA、スパイダーアンデッドだった。

だが、様子が以前とは異なる。なぜか、邪悪な意志は自分の心を操ろうとはしなかった。






「もともと我々は深海棲艦を、制海権を掌握するための生物兵器として開発していた。メズールという怪物の細胞を使ってな・・・。だが、コントロールに失敗し、一部が暴走してしまったのだ」

全員、呆然としていた。誰かを守るための、私達の戦い。それがただの尻拭いだっって言うの・・・?

「そこで君たち艦娘を、天王寺の残したトライアルのデータを元に開発したわけだ。人間をベースに製造したため記憶操作も容易だった。さらに『在りし日の記憶』などとニセの記憶を植え付けたのが大正解。そんな曖昧なモノに動かされて、君たちは見事私たちのテストに合格してくれた!生物兵器として、君たちは高値で売れるだろう!」

「まさか、作戦が筒抜けだったのも、提督が行方不明になったのも・・・!?」

「私が在りし日の記憶に悩まされていたのも・・・?」

長門と赤城が動揺しながら言葉を紡いだ。その手は怒りで震えていた。

艦娘達の中でも、彼女の怒りはとりわけ深かった。如月や祥鳳の犠牲は、今まで倒れていった仲間達の犠牲は、そんなつまらないもののためだったというのか・・・!?

「ご名答! ちょっとしたイタズラさ! このゲームを楽しむためのスパイスってとこさ! ついでに言えば、足柄くんの合コンや大井と北上の逢瀬もちょっとした茶番だよ!君達の思考を少しいじってな・・・!」

「こんのぉ・・・!」

足柄は拳を握り、恥辱に震えだした。

「そして吹雪! キミはよくやってくれた! 最高の兵器、いや私の最高の伴侶としてふさわしい女に育ってくれたよ!」

下劣な笑い声をあげ、タナカは言い放った。その心ない言葉に、吹雪の誇りはズタズタに傷つけられてしまった。

「さて・・・、次はどんな任務を与えようかな? 長門、君には都市攻撃を任せようかな?」

「おのれ・・・、提督・・・。貴様ぁっ・・・!!」

長門がその目に涙と怒りを備え、タナカに殴りかかった。足柄も下劣な男に蹴りを入れようと動き出した。

だが彼が手にあるスイッチを押した直後だった。

「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!」

悲鳴をあげ、二人は突然頭を抱えて倒れこんでしまった。 そして、それは彼女達だけではなかった。

「いやぁぁぁぁ!! 那珂ちゃん解体されたくないよぉぉぉ!!!」

「北上さぁぁん!」

同時に他の殆どの艦娘達も悲鳴をあげて頭を抱え、その場に倒れこんでしまった。大鳳も、霧島達も、ほとんどの艦娘が気絶してしまった。

「テ、提督・・・」

金剛も愛した男に手を伸ばしながら、気絶した。タナカは、その手を冷たく踏み躙った。





睦月は、震えながら自らの事情について、そして艦娘のこと、これまでの戦いのことについて、なんとか説明した。

「それで、気がついたら東京にたどり着い・・・。でも、どこに行けばいいのかわからなくなって・・・」

「そうだったのか・・・」と、上城睦月。

「お願いします! 吹雪ちゃん達を・・・、一緒に助けてください!」

ココアを飲み干すと、睦月はいきなり頭を下げて頼んだ。 彼らが何者なのか、睦月には分からない。だが、同じ名前を持つ者同士、なぜか信じられるような気がしていた。

「えっ、ちょ、ちょっと落ち着いて睦月ちゃん! そんなこと言ったって私達そんな戦う力なんか・・・!」望美が動揺しながら言う。

その時だった。突然、金属の擦り合う音が睦月達の耳に聞こえた。

「え・・・?」

望美も、上城睦月も、言葉を失いその音の方向にあるモノを見た。嘗ての睦月にとって悪夢そのものだった、レンゲルのベルトが何時の間にか来ていたのだ。まるで、睦月に対して『戦え』と言うかのように。

ベルトを見ているうち、睦月の頭の中に忌まわしきあの声が聞こえてきた。

『戦え・・・戦え・・・!』

あの蜘蛛の声だ。カテゴリーA、スパイダーアンデッドだった。

だが、様子が以前とは異なる。なぜか、邪悪な意志は自分の心を操ろうとはしなかった。



「カテゴリーA、なぜ俺を操ろうとしない・・・?」と睦月。

『もう貴様には敗北したのだ・・・。潔く貴様に従ってやろう・・・。少なくとも、今はな・・・』

「今は?」

『急げ。急がねば貴様の同族も、我が眷族達も滅びてしまう・・・。戦え・・・!』



気がつくと、レンゲルのベルトは腹部に勝手に装着されていた。だが、邪悪な意思が彼を操ることはなかった。上城睦月の意思が闇を乗り越えるほど強くなったのか、カテゴリーAがその言葉通り従っているのかは彼にもわからない。だが、戦う力を得た以上、自分がやるべきことは一つだ。

上条睦月は黙って立ち上がり、「その友達の居場所はわかる?」と睦月に尋ねた。

「睦月、まさかアンタ・・・!」

「助けに行くさ。こんな女の子が、酷い目に遭わされてるんだ。黙って見てるわけにはいかない・・・!」

その目には強い決意が宿っていた。彼の意思を変えることは望美にもできなそうだ。

望美は思った。

いつも睦月はそうだ。いつも仮面ライダーがどうとか、仕事がどうとか言って突っ走る。人の気持ちも知らないで。

「・・・そう言うと思った。行かないで、って言っても絶対行くもんね。さっさと行って、帰ってきなさいよ」

「望美・・・」

そう言うと、望美はプイッと背を向けてしまった。それっきり、睦月に背を向けて話そうともしなかった。

後ろ髪を引かれる思いで、上城睦月は乾燥機から服を取り出して着替えた睦月と共に部屋を出て行った。

「睦月の、バカ・・・」

ドアが閉まる音を聞きながら、望美は小さく呟いた。



望美のマンションを出ると、道路には緑色のバイクが待っていた。レンゲルの愛車・グリーンクローバーだ。この緑色のバイクも、戦いを予期して自ら駆けつけて来たのだろう。上城睦月は愛おしそうに愛車を優しく摩った。

そして、上城睦月は両腕でXの字を作りながら顔を覆うようなポーズを取り、ベルトのバックルを引っ張った。

「変身!!」



『Openup』



上城睦月がバックルを引っ張った次の瞬間、蜘蛛のオーロラが彼を包み、上城睦月は蜘蛛の戦士・仮面ライダーレンゲルに姿を変えていた。重厚な鎧と複眼、蜘蛛の意匠を持った仮面の戦士である。その腕にはクローバーを象ったような杖・レンゲルラウザーが握られていた。

「行こう睦月ちゃん。後ろに乗ってくれ!」

レンゲルが驚いて言葉を失っている睦月を、グリーンクローバーに乗るよう促したその時だった。

「睦月・・・!」

マンションの部屋から降りてきた望美が彼を呼び止める。その腕には何かがぶら下げられていた。

「良かった。間に合った・・・! これ、おにぎり作ったから・・・。急ごしらえだけど」

彼女はおにぎりの入ったバッグをレンゲルに手渡す。レンゲルも黙ってそれを受け取った。

「必ず・・・、帰って来てね・・・!」

「ありがとう。すぐ戻る・・・!」

自分を見送る恋人に背を向け、レンゲルはグリーンクローバーに乗って走り出した。

彼を見送る望美の瞳から、静かに涙が零れた。




東京湾へと走り出したレンゲル。

とりあえず睦月が上陸した港まで行き、進路を確認することにした。

睦月が港に置いていた艤装を回収した後、波止場にたどり着いたが、グリーンクローバーのライトが黒い何かを照らし出す。

深海棲艦だった。

「ミヅケダ・・・グヂググァン・・・。ムッコロス!!」

「こ、コイツ等が深海棲艦・・・!?」

彼らの行く手を巨大な戦艦ル級が阻んでいた。

「くっ、どけ・・・!」

レンゲルはパネルを操作し、グリーンクローバーからミサイルを放つ。何発か命中したが、ル級は微動だにしなかった。

「睦月ちゃん、ちょっと降りてて・・・!」

レンゲルは睦月を一度降ろして安全な場所まで避難させ、再び自身のバイクに騎乗する。

バイクを駆りながら、レンゲルはカードホルダーから白熊の描かれたカードを取り出し、グリーンクローバーにスキャンさせた。



『Blizzard』



グリーンクローバーに氷の力が宿り、吹雪を纏った。レンゲルはそのままバイクごと特攻して、ル級に体当たりする。その冷気によって、一瞬でル級は凍りついてしまった。

「よし!」

レンゲルは直ぐ様睦月のもとまで戻り、彼女を乗せて逃げ出そうとした。だが、ル級は直ぐ様氷の戒めを力づくで破ってしまった。

「なに・・・!?」

まずい。レンゲルが焦りだしたその時だった。




【BGM:カリス激情!】ttps://youtu.be/n3jX-dEtcqQ



何処からか、光の矢が放たれ、深海棲艦の目に命中した。

「ウェアァァッッ!!」

黒い戦士が現れた。仮面ライダーカリスだった。その隣には緑色の不気味なバッタのような怪物もいた。ただ、こちらを襲ってこないとこから見て、どうやら敵ではないらしい。

「上城、お前は先に行け・・・!」黒いライダー・カリスはレンゲルにある物を手渡す。

プロペラのついたトンボの描かれたカードと、黒い箱のような機械・ラウズアブゾーバーだった。

「相川さん、なぜここに!?」

「説明してる暇はない。さっさと行け・・・!」

「・・・ありがとうございます!」

レンゲルは睦月を抱きかかえたまま、トンボのカードをレンゲルラウザーのカードリーダー部分に読み込ませる。



『Float』



その瞬間レンゲルにトンボの力が宿り、睦月と共に空へと浮き上がった。

「えっ、えぇぇぇぇぇっ!?」

驚く睦月の声が夜の港に響く。そのまま彼方へと飛び去る二人を確認した後、カリスはル級に向き直った。

「行くぞ、風祭真・・・」

緑色のバッタの怪物、いや、善の心を持ちし戦士・仮面ライダーシンは黙って頷く。

カマキリとバッタの仮面ライダーは、深海棲鬼にその鋭い刃で立ち向かっていった。二体の刃がル級の腹部を切り裂く。ル級は痛みに呻き、悲鳴をあげる。

その隙にカリスは飛び上がり、アンモナイトのような巻貝と鷹の描かれしカードを、弓矢のカードリーダーに読み込ませた。



『Drill,Tornaid,Spiningattack』



次の瞬間、カリスは竜巻に包まれて浮き上がり、回転しながらドリルキックを浴びせた。ル級はろくな反撃もできず技を喰らい、爆散した。




フロートの力で海を渡ったレンゲルと睦月は、数時間の飛行の後、鎮守府のある港まで到着した。早速戦いになるかと思いきや、港は不気味なほど静かだった。

レンゲルはカテゴリーQのカードを使い、ラウザーのチャージをしておいた。これでしばらくは保つだろう。

とりあえず睦月と相談して腹ごしらえをしようということで、望美が渡してくれたバッグを開いた。包みのラップを開いて食べてみると、梅おにぎりとシャケおにぎりだった。

冷凍したものを急遽解凍したためか、シャケが少しだけ冷たかった。

「おいしいですね・・・」と睦月。

「あぁ、なんか美味いんだよ。アイツの・・・」上城睦月は言った。

このおにぎりは変わらない。昔から、望美の愛情が篭もっている。嘗て上城睦月は己の弱さから闇に囚われた時期があったが、この愛情によって、彼は救われたのだ。

そんな事情から、上城睦月は望美のおにぎりが今でも一番の好物だった。

「如月ちゃんと、一緒に食べたかったな・・・」と睦月は寂しそうに言った。

「そっか、キミも仲間を・・・」 と上城睦月。

「上城さんも、もしかして・・・」

「あぁ・・・。こんな俺を救うために、自分を犠牲にしてくれた人たちがいたんだ・・・」

上城睦月は、古傷に触れるように、ゆっくりと話し始めた。

自分が弱さゆえに闇に落ちて大勢の人々を傷つけたこと、嶋昇という男と名も分からない女、いや心優しき怪物たちが自分を導き、種族の繁栄や自身の存在を投げうって彼を闇から救い出してくれたことを。

「ごめん、なんか暗い話になっちゃったな・・・」と、上城睦月は優しい笑顔をみせた。

「いえ、私こそ・・・」と睦月。

「さぁ、早く友達を助けに行こう!」

「はい・・・!」

二人は、過去の痛みを振り切るように走り出した。その先に待つであろう睦月の仲間達を目指して。



その後、二人は鎮守府の中心部へと歩いた。そこはまるで閉園後のテーマパークのように静かだった。甘味処や食事亭は看板を開いたままだが、中には誰ひとりいない。電灯には灯りこそ点っているが、その下に照らされる者は誰ひとりとしていなかった。

しばらく歩いていると、気味の悪い機械音が聞こえた。その方向に向かって走り出した睦月と上城睦月は、信じられない光景を見た。

「那珂先輩!? 第六駆逐艦隊のみんなも・・!?」

そこでは、意識のない那珂達が今にも電動ノコギリで解体されようとしていた。

「させるか!」

上城睦月は直ぐ様レンゲルに変身し、その杖で刃を砕いた。

「おい!しっかりしろ、おい!!」

すべての機械を打ち砕いた後、上条睦月は傷ついた少女達に手をかけ、目を覚ますよう声をかけた。

「アレ・・・、那珂ちゃんを呼ぶのは誰・・・? ファンの人・・・?」

最初に目を覚ましたのは那珂だった。こんな時にも彼女はファンへの気遣いを忘れていなかった。

「俺は仮面ライダーレンゲル。無事で良かった・・・」

「あ、ありがとうございます! ちょっと怖い顔だけど・・・」と那珂は礼を述べる。

「ありがとなのです! 仮面ライダーさん!」

次に目を覚ました電も元気な声で言った。意識を失っていた暁、雷、響、川内、神通も次々と目を覚ましてゆくが、動きはまだぎこちなかった。。

「ひ、ひどい・・・!」

仲間の受けた仕打ちに睦月が憤る。レンゲルもまた同じ心境だった。

(こんな幼い少女たちまで・・・! 財団X・・・!)


その直後、何処からか爆発音が聞こえた。数百メートル先の波止場からだった。

「とにかく、早く安全な場所に逃げるんだ!」

とりあえず那珂達に安全な場所へ逃げるよう指示し、レンゲルと睦月は爆音の方向へと向かった。

レンゲルと睦月が駆けつけた場所は、先程の港だった。静かな波止場には、一人の軍服を着た男がいた。

「貴方は、提督・・・!?」

「やぁ、キミがレンゲルか! 噂には聞いていたが実に美しい・・・! 我が財団Xの幹部にならないかね?」と、飄々とした口ぶりでタナカ提督は言った。

「ふざけるな! すぐに艦娘を解放しろ!」

杖を構え、レンゲルが叫んだ。

「提督、吹雪ちゃん達を返してください・・・!」

睦月は怯えながらも力強く叫んだ。

「ダメだ。吹雪は私の嫁になる女だからな・・・」

顔を歪ませ、タナカは言い放つ。なんて醜い顔だ。レンゲルはタナカを内心蔑んだ。

「力づくでも、返してもらう・・・!」とレンゲル。

「そうはいかん。キミは勝てない・・・!」

「何・・・?」

タナカは懐から、奇妙なスマートフォンのような機械を取り出した。

「これは天王寺の置き土産。キミの持つリモートのカードを再現した装置。アンデッドを解放し操作する力を発揮するものだ」

タナカはまるで新しい玩具を楽しむかのように、その機械を操作し、スイッチを押した。



『Remote』



低い、不気味なボイスが発せられ、レンゲルのカードホルダーから三枚のカードが飛び出した。次の瞬間、そのカードの中から三体の不死生物・アンデッド達が出現した。

「ウ、ウソだろ・・・!?」

レンゲルは自身の目が信じられなかった。

彼の目の前には、派手な色の蜘蛛の怪物、虎と女性を混ぜ合わせたような怪物、そして堅牢な鎧を身にまとった象の怪物が立ちはだかっていた。敵意に満ちた目を、睦月とレンゲルに向けながら。

「素晴らしい・・・! 最強のアンデッド3体がここに揃ったのだ!」

怪物達は、一斉にレンゲルに襲い掛かった。



【BGM:祈り】ttps://youtu.be/nYk4JNa84h0



その頃、タナカ提督が統括する鎮守府とは別の場所にある第二鎮守府。

暗い地下牢目指し、三人の少女と、ひとりの男が走っていた。その三人は、祥鳳と如月、そして稲森真由。前者二人は嘗て深海棲艦との戦いで敗れ、仮面ライダーに救われた少女達だ。

そして後者の少女は、魔法使いこと仮面ライダーメイジ。彼女はある日、怪物と希望を身に宿し、異形の戦士に変身する力を得てしまった。愛する両親、そして誰よりも大切だった双子の姉を引き換えに。

この少女たちは、たい焼き屋の露店で知り合うことになった。仮面ライダーに関わった者同士、そして望まぬ戦いに巻き込まれた者同士、彼女達はどこか意気投合した。そしてある日、真由が務める国安ゼロ課という組織に「艦娘たちがある場所に囚われている」との情報が入り、慌てて鎮守府の場所を割り出して駆けつけたわけだ。

「懲罰用の営倉はこちらのはずです! 急ぎましょう・・・!」と祥鳳。

彼女は焦りながら走っていた。それもそのはずだ。この鎮守府には、彼女の妹・瑞鳳が着任している。その安否を気遣うのは姉として当然のことだった。

真剣な眼差しをして走る少女たちの後ろを、やや遅れて金髪の派手な毛皮のコートを着た若い男が追いかける。

「真由ちゃん! 俺腹減って動けねぇ・・・!」息を切らしながら、その男はあとを追ってきた。

「つべこべ言わずにさっさと走ってください、仁藤さん!」と真由。

「わかってるよ、皆まで言うな!」

だが、少女たちと仁藤攻介の距離は開くばかりだった。仕方なく少女達はペースを落として仁藤に合わせる。この場では戦う力がある者は仁藤と真由しかいない。何が来るかわからない以上、戦力分散はできなかった。

「ところで祥鳳ちゃん・・・だっけ? その変てこな格好はなんだ・・・?」と仁藤。

「これですか・・・? 了さんに、着てけって言われて・・・」祥鳳は恥ずかしそうに頬を染める。

祥鳳はたい焼き名人アルティメットフォーム改二を纏っていた。

だが、無駄に重く、無駄に暑苦しい。なんとか過去の鍛錬のおかげで着こなせていたが、今の彼女にとっては重荷に過ぎなかった。

改良型スーツと言われて渋々渡されたのだが、ただただ重いだけである。背中にはたい焼きを焼く鉄板が装備され、常時熱を帯びている。

スイッチを押せば一瞬で焼き型を加熱してたい焼きを高速で焼くことができるらしいが、ここでは何の意味もない。むしろ背中が暑いだけで邪魔なだけだった。それでもわざわざその鎧を身にまとっている辺りに祥鳳という少女の誠実さが表れていると、如月には思えた。

「と、とにかく急ぎましょう・・・!」

四人は営倉へ向かい走り出した。


営倉で彼女たちを待っていたのは、兎角悲惨な光景だった。

「これは・・・!?」。

「ひどい・・・!」

真由が目を見開き、如月も思わず息を飲んだ。

営倉内には、艦娘達が囚えられていた。縄や鎖で縛られ、身体には無数の傷跡がある。狼藉を働かれた痕跡こそないものの、破られかけた服の痕跡から、いずれ彼女達を辱めるつもりだったことは明白だった。

「瑞鳳!」

その中で、祥鳳は妹が鎖に縛られているのを発見した。ただちに鎖を解こうとするが、上手くいかない。

「瑞鳳、起きて! 私よ、祥鳳よ!」

彼女は無我夢中で傷だらけの瑞鳳を揺さぶった。

「落ち着いてください! 脈はあります・・・!」

真由が瑞鳳の手首を握り、彼女を制する。

すると、その騒ぎを聞きつけ、瑞鳳はゆっくりと瞼を開いた。

「し、祥鳳お姉ちゃん・・・?」

「瑞鳳・・・!」その瞳には、姉の姿が映った。変な格好をしているが、れっきとした彼女の姉だった。

祥鳳は無骨な鎧を着たまま、彼女を抱きしめた。

「瑞鳳、こんなに怪我させちゃってごめんね・・・。でも、もう大丈夫だから。今、鎖をほどいてあげるからね」

祥鳳は鎖に手をやり、なんとか解こうとした。



だが、

「もういいよ、お姉ちゃん・・・」瑞鳳は力なく答えた。

「ずっ、瑞鳳・・・!?」

「こうして最期にお姉ちゃんに会えたから、もういいの・・・。早く逃げて・・・」

「なっ、何を言ってるの・・・?」と祥鳳。

「お姉ちゃん・・・。あの時会えて、本当に嬉しかったよ・・・。艦娘じゃなくなっても、ずっと私のこと応援してくれるって言ってくれたとき、嬉しかった。これからも艦娘として頑張ろうって、思ったんだ・・・」

瑞鳳は静かに話し始めた。

「でも、提督に聞かされたの。私たちは所詮ただの兵器だって・・・。役目が終わったお前達はもういらないって・・・」

「馬鹿なこと言わないで! ここから逃げ出せば、私達ずっと一緒に暮らせるんだよ!」

「私、ホントは人間じゃないんだよ・・・。人の中で生きていくなんて、無理だよ・・・!」

絞り出すように胸の奥の苦痛を吐き出すと、小さな少女は静かに頭を傾けた。

その少女の姉は暫く黙っていた。

だがやがて、「瑞鳳、聞いて・・・」少女の肩を抱き、祥鳳は話し始めた。

その目には強い意思が宿っていた。艦娘として戦っていた時以上の、強い意思が。

「私も戦えなくなった時、おんなじこと思ったよ。もうだめだ、運命に抗うことなんてできないんだって・・・」

「・・・お姉ちゃんも?」

「でも、それは違うって、『あの人』は教えてくれた。誰でも、運命と戦うことはできるって」

祥鳳の脳裏には、傷つきながらも戦い続けた紫紺の戦士の記憶が強く焼きついていた。

その戦士の強さは、彼女にも受け継がれていた。そしてその強さが今、彼女の妹の心をも支えようとしていた。

「お姉ちゃん・・・」

「瑞鳳、一緒に運命と戦おう。大丈夫、私がそばにいるから。ねっ?」


「そうよ。諦めちゃダメ・・・。始まりも終わりも、全て自分自身で決めるものよ・・・!」

真由も横から言う。

「私の大切な人が教えてくれた・・・。たとえ貴方が誰かに利用されるため生まれたとしても、たとえ瑞鳳さんの戦いが誰かに操られたものだったとしても、貴方達のおかげで救われた人だっているはず。それに、今あなたの目の前にいる人は、貴方がいなければ救われないの・・・!」

「お姉ちゃんが・・・?」その言葉を受け、祥鳳が黙って頷く。

「貴方の大切な人のためにも、絶望に負けないで・・・! 私にはもうできな・・・」


「あ~あ、姉妹感動の再会ってわけかぁ・・・。泣けるねぇ・・・!」

真由の言葉は、突然の乱入者によって遮られた。

その男は小太りの醜い容姿にもかかわらず、恐ろしいスピードで祥鳳達を突き飛ばすと、あっという間に瑞鳳の拘束を砕いてその手に抱き寄せた。

気持ち悪い・・・。瑞鳳はその生暖かい手の感触に触れ、嫌悪感を覚えた。

「私は財団Xのヨシノ。この鎮守府の提督を勤めていた者だ。人の所有物に手を出すとは、いけないねぇ・・・」

「おめぇか・・・。女の子をひでぇ目に遭わせてるヤツってのは・・・。マズそうで食う気にもなれやしねぇ・・・!」

「こんな少女を傷つけて弄ぶなんて・・・、許せない・・・!」

仁藤と真由が怒りに燃えて悪魔を睨む。

「私に勝てるかな、魔法使いの諸君・・・?」



『MAIHIME!』



ヨシノは懐からメモリを取り出し、腕に突き刺す。そのメモリを刺した瞬間、ヨシノはマイヒメ・ドーパントへと変貌した。醜い男には似つかわしくない、美しい踊り子のような風貌の怪物だった。

「行くぜ真由ちゃん。食う価値もねぇ変態にお仕置きしてやろうぜ」

『Driver,On』

「えぇ・・・」

『Driver,On…Shabadobitattihensiiin...!』

仁藤と真由はそれぞれベルトを召喚する。獅子の刻まれし古のベルトと、手が描かれし不思議なベルトだった。

仁藤は腕を高くあげて指輪をベルトに装填し、叫んだ。

「へ~んしぃんっ!!」



『Set,Open!! L・I・O・N! LION!!』



獅子の咆哮と共に、仁藤は古の魔法使い・ビーストに変身した。

彼の隣で真由も腕を高く掲げ、クルリと華麗に回転してベルトに指輪を読み込ませ叫んだ。

「変身・・・!」



『Change,now...!』



腕を軽やかに広げ、背中を美しく傾けた直後、魔法陣が真由を覆い、少女は琥珀色の魔法使い・メイジへと姿を変えた。

「さぁ、ランチタイムだ!」

「さぁ、終わりの時よ!」

二人の魔法使い、仮面ライダービーストと仮面ライダーメイジは、敵に向かって同時に宣言した。

「フッ、できるかな・・・!」

不敵に笑い、マイヒメ・ドーパントの目が光った。この怪物が手指を不気味に動かした瞬間、魔法使いたちの動きは封じられてしまった。

「なっ・・・?!」

「かっ、身体が動かない・・・!?」

動揺する魔法使い達。

「マイヒメメモリは、思うがままに相手を動かす。まさに艦娘を思うがまま操る提督の私に相応しいメモリなのだよ。ヒャハハハハハ!!」

メイジとビーストは操り人形の如く手足を操られ、人形劇のようなポーズを無理やり取らされる。そして、いつの間にやら見えない糸で拘束され、壁に縛り付けられた。

「ハハハ、無様だな魔法使いども!」

瑞鳳をその手に抱きながら、魔法使いたちをマイヒメ・ドーパントは嘲笑った。白い鳥と緑のグリフォンの彫像が主を助けようとマイヒメに攻撃を挑むが、あっけなく弾かれてしまった。

「提督・・・、いやヨシノ!! 瑞鳳を離しなさい!」

「そうよ!」

縛られていない祥鳳と如月が叫んだ。

「おや? そこの駆逐艦は沈んだと思ったのに、まだ生きていたのか? まっ、悲劇を演出するいい役者になってくれたがね・・・!そこの軽空母もだ。我らの兵器ごときが、いちいち偉そうに・・・」

まるでゴミを見るような目で、マイヒメ・ドーパントは二人を蔑んだ。

その暴言を横で聞き、瑞鳳の胸に怒りが湧き上がる。

「許さない・・・!」

お姉ちゃんやみんなを、私の大切な人達を侮辱するなんて・・・!  

瑞鳳は背負っていた鏑から一本だけ残っていた弓矢を直接取り出し、勢いよくドーパントの身体へと突き刺した。

「くっ、小娘がぁ・・・!」

怪人と言えど、流石に至近距離で刺されるのは痛いのか、怒ったマイヒメ・ドーパントは瑞鳳を壁に投げ飛ばした。

「きゃぁぁぁっっ!!」

「瑞鳳!」

「うっ、しっ、祥鳳・・・」

激痛のショックと苦痛に呻き、瑞鳳が気絶した。

「気が変わった。瑞鳳、貴様は生かしておいてやるよ・・・。姉と違って、幼い少女の風貌をしたキミは商品価値が高いからなぁ!」

笑いながら邪悪な舞姫は言い放った。



【BGM:銀河戦闘フーファイター】ttp://goo.gl/ofzRfk



(商品価値が・・・高い・・・?)

その言葉が、祥鳳の中の何かに火を点けた。

(人の妹を、みんなを、道具みたいに扱うなんて・・・!)

その手が震え出す。見ているもの全員に、彼女の怒りが伝わってきた。

「よくも・・・、よくもやったわねヨシノ!」

「えっ、まさか祥鳳さん・・・?」

如月が戸惑う。今、祥鳳の手にあるのはたいやきの焼き型だった。しかも、既に十分熱された状態である。謂わば、灼熱の鉄棒だ。

「喰らえぇっ、瑞鳳の仇!!」

怒れる祥鳳は鎧に備えられたスイッチを押して更に加熱し、焼き型を棍棒のように敵にぶつけた。

怪人とは言え、生き物に熱した鉄塊をぶつければどうなるか。結果は火を見るより明らかだった。

「ギヤァァァァッ!! アツイ、アツイイイイイイッ!!」

祥鳳のスペシャルターボが炸裂した。完全な不意打ちに隙を突かれたマイヒメ・ドーパントは、熱したたい焼き器の焼き型にクリーンヒットしてしまった。あまりの熱さと苦痛に耐えられず、悲鳴を上げて倒れてしまった。

「痛い、痛い、助けてぐれえぇぇぇ!!!」

その顔は真っ赤になり、おまけにかわいらしいたい焼きの烙印を押されてしまった。それは見るもの全てに間抜けで哀れという印象を与えた。

「やったぁぁ!! やりましたぁぁぁ!!」

巨大なたいやき型を振り回し、祥鳳は子供のように無邪気に喜び飛び跳ねた。

「ついでに私も・・・! 如月きっく♪ てへっ☆」

如月も、どさくさにまぎれて必殺きっくを叩き込んだ。それも、たい焼きの型が付いた顔の一部分である。

如月の筋力ではあまり大したダメージは与えられないはずだが、追い討ちを掛けられて、マイヒメ・ドーパントはみるみるうちに弱っていった。

「あなたみたいな人、ミッツマングローブが許しても、マツコデラックスが許さないんだから☆」

軽い冗談を混じ合わせ、容赦なく急所を蹴り飛ばしていった。美しい舞姫の顔は、凸凹だらけの醜いものに変貌した。


【BGM:Beastbite】ttps://youtu.be/j37xNqYaDkQ

一方、操り人形から解放されたビーストとメイジは、その惨状を冷や汗を流しつつ唖然と眺めていた。

だが、野獣は倒れた獲物を見逃したりはしない。

「とっ、とりあえずアイツ倒すか、真由ちゃん・・・!」

「そっ、そうですね・・・!」

ふたりは見えない糸を振り払い立ち上がる。

「そうだ。真由ちゃん、これ使いな」と、ビーストは小声である指輪をこっそり手渡した。

そのオレンジ色の指輪を見て、メイジはその意図を理解し、無言で小さく頷いた。

「おのれぇぇ、また縛ってくれるわぁぁぁ!!」

火傷した顔を右手で抑えながら、マイヒメは倒れたまま見えない糸を放ち、ビーストとメイジを縛り付け、壁に投げつける。

メイジは焦りもせずに、縛られたまま手を器用に動かし、ビーストに手渡された指輪をベルトにスキャンさせた。



『Beast...!』



次の瞬間、獅子の咆哮が部屋中に響き渡り、メイジの身体は羽となって消えてしまった。

「なに・・・!?」

縛られていたのはビーストだけだった。次の瞬間、メイジは何時の間にか別の場所に立っていた。

「こういう魔法もあるって、知らなかった?」

ビーストリングは鳥獣の力が宿りし、古の魔法の指輪だ。だが、その指輪をウィザードが使った時、獣の力の替わりに特殊な魔法が発揮される。それはメイジが使用した場合も同様であった。ビーストが渡したリング、それは隼の力が刻まれしファルコリングであった。それをメイジが使った場合、メイジは羽となって攻撃を躱し任意の場所に瞬間移動が可能となるのだ。

そして次の瞬間、

『Connect,now...!』という呪文をベルトが詠唱した。

メイジは何処からか銃を取り出し、マイヒメの指を撃ちまくる。変則的に動く魔法の弾丸がマイヒメの両腕を容赦なく正確に貫き、ビーストの拘束を破壊した。

「ぐわぁぁぁぁ!!」

これで見えない糸は使えなくなった。動けない獲物に止めを刺す時が来たのだ。メイジの弾丸によって拘束を解かれた野獣も、敵に対してその牙を剥けた。

「行くぜ、真由ちゃん・・・!」

「はい!」

二人の魔法使いは必殺魔法を発動するための指輪をそれぞれベルトにセットした。



『Kickstrike,Go!』

『Yes! Kickstrike!!Understand!?』



ビーストの身体に獅子の力が宿り、メイジの身体に膨大な魔力が宿る。

「うおりゃぁぁぁ!!」

「はぁっ!!」

二人は宙に舞い上がり、獅子の咆哮と共にダブルライダーキックを放った。

「うわぁぁぁぁぁぁっっ!!」

獣に噛み砕かれ、魔法少女の裁きを受け、ヨシノは爆散した。マイヒメメモリも体外に排出され、粉々になって砕け散った。

「ごっつぁん!」

「最後を決めるのは、私達だったわね・・・!」

二人は勝利を実感し、決めゼリフを放った。


だが、ヨシノはまだ諦めてはいなかった。

「くっ・・・。まだだ・・・! この鎮守府にいる他の幹部たちさえ来れば・・・!」

「その別働隊なら、ここよ」

長髪の美女が、黒焦げになった男達を引きずって現れる。

彼等はことごとく縄で縛られ、まるで干物のような有様だった。その手には焼け焦げたガイアメモリもある。

「アンタは・・・?」と仁藤。

「私はミーナ。財団Xに、嘗て実験台にされていたクォークスの生き残りよ・・・!」

「まさか・・・超能力兵士ごときに・・・俺が・・・」と、中年の男は呻く。

「これ以上、私や克己のような悲劇は繰り返させない!」

力強く、ミーナは宣言した。

「ハナダ、クサカワまでもが・・・!ならば、金剛型2番艦!」ヨシノが渾身の力で叫んだ。

彼の目の前に、祥鳳が嘗て出会った短髪の少女が現れた。

「ハハハ! こんなこともあろうかと、私専用の洗脳プログラムを仕掛けておいて助かったよ! さあ比叡よ、今こそ目の前の敵を倒せ!」

(まさか、比叡さんが・・!?)

祥鳳は目の前が真っ暗になるような絶望感を覚えた。あの心優しく強い人までが敵に回るなんて・・・!

だが、彼女の心配は杞憂に終わった。

比叡はヨシノの前に足音を立てて迫り、

「司令には!操られたりなんか! しませんっ!!」と、怒りをこめてその醜い顔に鉄拳を叩き込んだ。

「くっ・・・、な、なぜ・・・!?」

万策尽き、ヨシノは力尽きて床に倒れた。

「祥鳳さん!お久しぶり!」

祥鳳に向き直り、比叡は明るい笑顔を向けた。

「比叡さん!」

「私も捕まって動けなくなってましたけど、橘さんが助けてくれました!」

比叡に続いて、仮面の戦士・ギャレンが歩いてきた。

「危ないところだったが、歌星くん達と協力して、なんとか艦娘の洗脳プログラムを解除する装置を開発できた。これで彼女達は自由だ・・・!」

「ったく、おせぇっつーの・・・」憎まれ口を叩きながらも、安心した様子でビーストが言う。

周りを見渡すと、艦娘達は次々と目を覚まし始めていた。天龍や龍田、青葉や伊勢や龍驤らも目を覚まし、鎖を早く外せと喚き出す。

ギャレンや比叡が慌てて駆けつけ、囚えられた艦娘達の解放に回っていった。次々に自由になってゆく少女達を見て、瑞鳳も安堵した。

「そっか・・・。私達、もう戦わなくていいんだね・・・!」

目を覚ました瑞鳳が、ホッとしたようにつぶやく。その目の前には、姉がいた。

命懸けで自分を救ってくれた、優しい姉が。

「そうだよ。これからは、ずっと私が守ってあげる・・・」

「お姉ちゃん・・・!」

「瑞鳳・・・!」

そんな姉の言葉に安心したのか、瑞鳳は静かに姉に抱きついて泣き出した。

そんな妹を優しく抱きしめていた祥鳳もまた、涙を流していた。戦いで引き裂かれた悲しき姉妹に、ようやく安息の時が訪れたのだ。

「良かった・・・」

その様子を見て、真由は涙ぐんだ。

自分にはもう二度と訪れない幸せを、あの姉妹が掴んでくれた。あの姉妹は、大切なお互いを失わずに済んだ。それが、たまらなく嬉しかった。

「・・・やったな、真由ちゃん」

仁藤は涙に濡れる少女の肩を優しく叩いた。その暖かさに、彼女の心も少しだけ癒された。


【BGM:レンゲル、大地を揺るがし】ttps://youtu.be/gNrQY0arlew



一方、港ではレンゲルとアンデッドのバトルファイトが再開されようとしていた。

港に備え付けられた街灯がレンゲルを照らす。

一応ライダーシステムによって暗闇でも目が見えるが、それでも街灯で見えやすい状況にあるのはありがたかった。

ただでさえ彼は動揺していたのだ。自分を救ってくれた者達が自分に襲いかかるこの状況に。

「きゃあぁぁぁっ!」恐ろしい怪物に襲いかかられ、睦月は悲鳴をあげた。

レンゲルは三匹のアンデッドから睦月を守り、必死に戦っていた。

タランチュラアンデッドの爪が襲いかかり、タイガーアンデッドの蹴りがレンゲルを打ち付けた。

更にエレファントアンデッドの鉄球がレンゲルを殴りつけ、装甲にヒビを入れた。

レンゲルは睦月を守るのにせいいっぱいで、防戦一方だった。何よりも、彼自身がこの三匹の怪物を傷つけることを躊躇していた。

無理もない。この怪物達はそれぞれ形こそ違えども、彼のためにその身を投げ出して戦ってくれたのだ。彼がそれを再び封印することなど、できるはずもなかった。

「嶋さん、みんな・・・、目を覚ましてくれ・・・!」

彼は叫ぶが、操られしアンデッド達には届かない。

「どうすれば・・・!?」

レンゲルは、上城睦月は混乱しかけていた。


『上城睦月・・・! カテゴリー8を使え・・・!』

その時、突然カテゴリーAの声が再び頭に響いた。

「なんだって・・・!?」

『アンデッドポイズンを打ち込み、奴等の本能を活性化させるのだ・・・!』

それっきり、カテゴリーAの声は聞こえなくなった。

「とにかくやるしかない・・・!」



レンゲルは蠍の描かれしカードを取り出す。ライダーの武器に毒の力を与える、強力なカードだ。この毒のショックがあればあるいは・・・。レンゲルはカテゴリーAの言葉に賭けた。

嘗て、自分を翻弄し続けた悪魔。それが今は何故か自分に助言するようなことを言っている。なぜかはわからないが、カテゴリーAを信じるしかない。レンゲルは蠍のカードを読み込ませた。



『Poisson』



杖に毒の力が宿る。レンゲルはレンゲルラウザーの刃「天」「地」「人」を開き、毒の宿りし刃で三体のアンデッドを次々に切り裂いていった。

「てやぁぁぁぁぁっ!!」

緑色の血が飛び散り、一瞬、アンデッド達の動きが止まった。

(頼む、アンデッドの毒で正気を取り戻してくれ・・・!)


だが、アンデッド達は一瞬動きを止めただけで、すぐに再びその爪をレンゲルに向けてきた。


「嶋さん、思い出してください・・・! 貴方は俺を闇から救ってくれた・・・! その貴方が闇に堕ちてどうするんだ!?」

だが、タランチュラアンデッドは攻撃を止めなかった。

「カテゴリーQ・・・、貴方は俺に生きることの意味と誇りを教えてくれた、気高い戦士のはずだ!」

タイガーアンデッドは誇りを忘れてしまったのか、ただ唸り声を上げるばかりだ。

「カテゴリーJ!お前だってそうだ! たった一度だけど、俺たち一緒に戦った仲間だろ!?」

エレファントアンデッドも記憶など知ったことかと言わんばかりに襲いかかる。

更に追い討ちをかけるかのように、突如怪人が現れた。

「アレは、まさか・・・!?」

上城睦月はその姿に見覚えがあった。

嘗て、四人のライダーが力を合わせてようやく倒せた地獄の番犬の名をもちし怪物。それと瓜二つだった。

「これぞ、天王寺の置き土産。試作品のケルベロスだ。便宜上、ケルベロスMkⅡと呼んでるがね・・・」

ケルベロスは猛スピードでレンゲルを攻撃し、地べたに這い蹲らせた。

「さぁケルベロスMkⅡよ!トドメを刺せ! そして、二体のジョーカーも封印し、我々が世界の覇者となるのだ!」

(あの人達を、封印するだと・・・?)

ボロボロのレンゲルに闘志の炎が蘇った。人間の中で幸せに生き続けている彼を、そして全てを背負って今も戦い続けている先輩を、封印などさせない・・・!

「絶対に、絶対にそんなことはさせない!」

倒れていたレンゲルに力が戻る。そして、魔犬を物凄い勢いで叩き出す。その勢いに、魔犬は押されてゆく。

「相川さんを・・・、剣崎さんを・・・! みんなの想いを踏みにじらせてたまるか!」


大切な仲間のためにレンゲルは吠えた。その叫びは、三体のアンデッド達の中の『何か』を動かした。

睦月にその爪を向けようとしたその瞬間、三体のアンデッドはまたもや動きを止めた。一向に進まない戦況に業を煮やし、タナカは吠える。

「・・・何をしているアンデッドども! さっさとケルベロスに加勢しろ!」

だが、エレファントアンデッドがタナカの方へと向き直り言った。

「・・・めんどくせぇなぁ!」

鉄球を投げつけながら、気怠そうに。

「バ、バカな・・・!?」

すんでのところで鉄球を避けたが、タナカは動揺していた。まさか、洗脳装置が破られるなんて・・・!

「睦月くん、我々にも聞こえたよ。君の風の声が・・・。君の想いが、私達の呪縛を破ってくれたんだ・・・!」

「すまない睦月・・・。この借り、戦いで返す!」

三体のアンデッドは、一気にケルベロスMkⅡへと襲いかかった。エレファントの鉄球がケルベロスに鉄槌を与え、タランチュラの毒爪がケルベロスの動きを鈍らせる。そして、タイガーの爪がケルベロスの肉を抉りとった。

うずくまっていた睦月は、アンデッド達がレンゲルと共闘している場面を目にし、大いに驚いた。

「すごい・・・。レンゲルさんの、思いが通じたんだ・・・!」

睦月は驚いた。上城睦月の仲間を思う心が、あの怪物たちをも動かしたことに。

(私も、友達を、吹雪ちゃん達を助けなきゃ・・・!)

上城睦月の心の叫びは、睦月にも種を蒔いていた。その種が芽を出すのも、時間の問題だった。



やがて怪物達の猛攻により、ケルベロスMkⅡは動きが止まった。封印の準備が完了した。

「今だ睦月、ヤツを封印しろ!」

「はい!」

レンゲルはコブラの描かれたカードをスキャンさせた。



『Bite』



コブラの力がレンゲルに宿り、彼は挟み蹴りを放って何度も何度も魔犬を蹴り飛ばし、止めを刺した。その蹴りを受けて、ケルベロスのバックルが開き、完全に動きが止まった。彼はカードホルダーから万能封印カード・コモンブランクを取り出し、ケルベロスMkⅡへと突き刺した。

魔犬はカードの那珂に吸い込まれ、そのカードには赤いエースの紋章を守る、三つ首の赤い魔犬が刻まれた。





「上城さんの言ってた優しい怪物さん達って、あなた達だったんですね!」と睦月。

恐ろしい外見だったが、彼女はこの怪物たちの中に秘められた優しさを実感していた。

「変なもんだなぁ・・・、人間に褒められちまうなんて・・・」

「グズグズしてる暇はない、行こうか・・・」

「はい!」

レンゲルと睦月、そして三体のアンデッド達は先に進もうと動き出した。



「ケルベロスMkⅡが倒れるとは・・・、やるねぇ・・・!」

一方、タナカは自らの配下があっけなく倒れたにも関わらず、悠々としていた。

「タナカ、諦めろ!」

「我らの誇りを傷つけた罪、償ってもらうぞ!」

タイガーアンデッドが爪を研ぎ、タナカに詰め寄ってゆく。

「ふふ・・・、切り札は最後まで取っておくものだよ!」

タナカは慌てた様子もなく、指をパチンと鳴らす。すると、何処からか財団Xの兵士が現れ、蒼いメモリを取り出してその逞しい胸板に突き刺す。



『Ocean!』



次の瞬間、兵士は大量の海水に包まれ、巨大なクジラの怪物となって空に浮かんだ。その身体にはフジツボのような砲塔が無数に張り付いていた。

「行け、オーシャン・ドーパント!」

主の命令に従い、オーシャン・ドーパントは砲塔にエネルギーを充填する。

「くっ・・・!」

これまでか・・・。レンゲルは一斉掃射に死を覚悟した。睦月を庇いうずくまるが、恐らくそれも無駄に終わるだろう。

砲撃が次々と打ち出されてゆく。鼓膜が破れるような音が何度も何度も放たれた。


だが、砲撃が止んでも、睦月とレンゲルは無事だった。

「めんど・・・くせぇなぁ・・・」

レンゲルが頭を上げると、彼を三体のアンデッドが腕を開き、身を挺して庇っていた。その体からは、閃緑の血が滝のように流れていた。そして、ウロボロスの刻まれし彼等のバックルは全て大きく開いていた。

「今だ睦月くん。私達を封印するんだ・・・」嶋昇の姿になり、タランチュラは静かに言った。

「でっ、でも・・・」

レンゲルは逡巡した。嶋さん達は俺のせいで封印されたのに、再び彼らを封印するなんて・・・

「気にしないでいい。我々はまた眠ることに異論はないさ・・・」

「嶋さん・・・」

「めんどくせぇから早くしてくれ。俺は戦いが嫌いなんだ・・・」とエレファントアンデッドは気怠そうに言う。

レンゲルは暫くの間ためらったが、結局彼にはアンデッド達の願いを無視することはできなかった。

ベルトのカードホルダーから三枚のプロパーブランクを引き抜き、震える手で三体のアンデッドに突き刺す。

「じゃあな・・・」とエレファントアンデッド。

「忘れるな睦月。自分との戦いは決して終わらない。これからも戦い続けろ・・・!」

カードに吸い込まれる瞬間、タイガーアンデッドは美女の姿になって言い残した。

「これからもたくましくあれ、睦月くん・・・」

最期に嶋昇の姿になり、タランチュラアンデッドは言った。

三体のアンデッド達はカードに封印され、レンゲルの手元にはK,Q,Jの三枚のカードが揃った。

黄金の象、鋼の虎、そして光輝く大蜘蛛が描かれていた。

「嶋さん、カテゴリーQ、カテゴリーJ・・・!」

レンゲルは身体を震わせ、じっと3枚のカードを見つめた。

「上城さん・・・」

睦月は、仮面の下で上城睦月が泣いている姿が見えた。その気持ちは、同じく友を失った彼女にも痛いほど伝わってきた。


【BGM:華麗なるブレイド】https://youtu.be/3XSRSJjGU-0



直後、オーシャン・ドーパントが第二砲撃の準備を整えつつあることにレンゲルも気づいた。

躊躇っている暇はない。彼は二枚のカードを取り出した。

虎と象のカードだ。その中には、共に戦った二体のアンデッドの想いが、魂が詰まっている。

「今こそ俺と共に戦ってくれ・・・。カテゴリーJ、カテゴリーQ!」



『ABSORB QUEEN』



レンゲルはラウズアブゾーバーを起動し、その中にカテゴリーQのカードを装填する。そのアブゾーバーは、相川始が彼に手渡したものだった。

「させるかぁ!!」

オーシャンは第二砲撃を発射した。



『FUSION JACK』



ゾウのカードを読み込ませた瞬間、金色のゾウの幻影が飛び出し、雄叫びと共にレンゲルと融合する。次の瞬間、レンゲルの身体は筋骨隆々の姿に変化していた。その上半身はゾウの腕のごとく逞しくなり、肩には象牙のような突起が備わっていた。そしてその強さを誇るかのように、杖の先端には鋭い刃が宿っていた。

ここに、レンゲル・ジャックフォームが誕生したのだ。

「なんだと・・・!?」

驚いたオーシャンは狙いが反れてしまった。僅かに当たった砲撃も、その強靭な鎧には傷一つつけることができない。

レンゲルは睦月を下がらせ、モグラと白熊の描かれた2枚のカードを取り出し、杖にスキャンさせた。



『Screw,Blizzard, Blizzardgale!!』



モグラがドリルのような腕を回し、白熊が猛吹雪を放つ。その2体の力が杖に吸い込まれてゆく。

レンゲルはその巨体から考えられないような跳躍力で飛び上がり、オーシャン・ドーパントに向かって杖から強烈な冷気の竜巻を放った。その冷たい竜巻によって、巨大なクジラの怪物は凍りついてしまい、自重でゆっくりと地上へと落ちてしまった。

地響きを立てて着地したレンゲルは、その隙を逃さない。荒々しく突進し、その回転をかけた強烈な拳で凍りついた怪物を殴りつけた。

その衝撃に怪物は耐え切れなかった。体内の燃料部分に引火し、火を吹いて爆散した。

オーシャンのメモリも体外に排出されて崩壊し、怪物は兵士の身体へと戻った。


「お前の手駒はもうない! 観念しろ!」

杖を向け、レンゲルは言った。だが、それでもタナカは諦めた様子を見せない。

「まだだ、まだ終わらんよ・・・!」タナカは再び指を鳴らし、更なる増援を呼んだ。

「何・・・!?」

巨大な四足歩行の獣が吠えた。次の瞬間、レンゲルと睦月は数十メートル先の格納庫のシャッターまで突き飛ばされた。

二人の目の前には、全長10m程度の、三つ頭の巨大な醜い犬が目の前に立っていた。その犬は倒れていた兵士を一瞬で飲み込み、咆哮をあげる。さらに真ん中の首の額にはセーラー服を着た少女が融合し、取り込まれていた。

吹雪だった。その目には光はなく、ただ虚ろな表情で磔にされていた。




【BGM:ゴルゴム】https://youtu.be/LSF0FkSL0pg



「吹雪ちゃん!?」

「おぉ、すばらしいよ吹雪、いやケルベロスⅢ! 私を助けてくれるとは!! さぁ吹雪、私と一つになろう・・・!」

気持ちの悪い笑みを浮かべ、タナカは腕に取り付けられたカードリーダーに奇妙なカードを差し込んだ。

「へんしん・・・!」

次の瞬間、タナカの身体はドロドロに溶け出し、ケルベロスの口に飲み込まれた。そして、魔犬の胸の部分にタナカの顔が浮かんだ。

「ゆ、融合した・・・!?」

「私だけではないぞ、見るがいい!!」

タナカが笑う。後ろを振り返り、レンゲルは驚愕の光景を目にした。

無人と思われていた港には、怪物達が勢ぞろいしていた。

いつのまにか、魔犬は鎮守府基地の頂上の屋根に移動していた。ケルベロスⅢは遠吠えをする狼のごとく吠え始める。その咆哮に呼ばれ、あらゆる怪人達が現れ、レンゲル達を取り囲んだ。

「イカデビル!」

「シオマネキング! アヒアヒアヒ・・・」

「大怪人ビシュム!」

「カメバズーカ!」

「最強怪人・グランザイラス!」

「ユートピア・ドーパント」

「サジタリウス・ゾディアーツ!」

「グレムリン・・・!」

「マンモス怪人」

怪人達がレンゲルの前に現れ、名乗りを上げる。地に、空に、海に、無数の怪人、怪物が蠢いていた。

オーシャン・ドーパントももう一体出現し、空には巨大な翼竜、カニや海竜のような怪人が大量に見られた。

そして近海には、無数の深海棲艦が海を覆い尽くしていた。


「平伏すがいい。這いつくばるがいい。これが財団Xの総力を挙げて作り出した、最強再生怪人軍団だぁ!!」

サジタリウス・ゾディアーツが先陣を切り、弓を放った。降り注ぐ無数の光の矢の雨がレンゲルを貫いた。

「うわぁぁぁぁ!!」

そのあまりの猛攻には、ジャックフォームの堅い装甲も役に立たなかった。それでも、レンゲルは血だらけになりつつも、なんとか睦月の盾となり、彼女だけは傷一つつけずに守りきっていた。

身体はもう限界に近い。それでも、レンゲルは立っていた。絶対に負けられない。その思いが彼を奮い立たせていた。

「俺は、俺は負けない・・・!」

「戯言を・・・! とどめだ! 戦艦ども、一斉掃射!」

無数の砲弾がレンゲルと睦月を襲った。

「もう、ダメなの・・・?」

睦月が死を予感し、頭を抱えて身を伏せ呟いた。だが、もう一人の睦月はあきらめない。

「諦めちゃダメだ! 友達を助けるんだろ!?」

レンゲルは尚も立ち上がり、彼女の盾になり続ける。ボロボロにされても、その意思は揺るがなかった。

「睦月ちゃん。運命を言い訳に諦めちゃいけない・・・! 友達を助け出すまで、絶対に諦めちゃいけない!」

「上城さん・・・」

睦月はその不屈の闘志に支えられた。

負けるかもしれない。でもそれでもいい。最後まで立ち上がって、戦おう・・・!

彼女もまた、弱々しい小鹿のように立ち、震える手で機銃を構えた。その目には、運命に抗う者の強い意志が宿っていた。

それでも砲撃は容赦なく彼らに放たれた。

無数の弾丸が彼らを貫こうとしていた。





その時不思議な事が起こった。



【BGM:光の戦士】https://youtu.be/ubEqe_FKDEc



「キングストーンフラッシュ!!」

何処からか輝く力強い光。それが怪物達に降り注ぐ。あまりの眩しさに彼らは目がくらみ、その歩みを止めた。

その一方で、その光はレンゲルに暖かな力と安らぎを与え、傷を癒した。まるで、優しく強い太陽の光のようだった。



『Luna,Trigger!!』

『Launcher,On』

『Defend...Please!!』



さらに無数の砲弾は、どこからか飛んできた奇妙な軌道を描く銃弾が撃ち落した。

艦載機達はミサイルが寸前で弾き飛ばし、撃ち漏らした砲弾もレンゲル達の前に現れた石の壁が全て弾き返してしまった。

「ったく、世話の焼ける先輩だな・・・」

「フフ、キミが一番心配してたくせに・・・」

「バッ・・・うるせぇよ、フィリップ!」

青と黄色のはんぶんこ怪人が現れる。彼は左と右の目をそれぞれ光らせながら別々の声で喋り始めた。まるで独り言を言う変人のように。

「大丈夫ですか、レンゲル先輩!?」

「これ以上、俺のダチに手は出させねぇ!」

「ふぃ~、ぎりっぎりセーフ・・・!」

三色の戦士、白い戦士、そして赤いマントの戦士も現れた。

そしてさらに、レンゲル達を庇うかのように、別の仮面ライダー達がその前に立ちはだかっていた。

「仮面ライダー1号!」雄々しく腕を伸ばし1号が立つ。

「仮面ライダー2号!!」拳を構え2号が勇姿を見せる。

「仮面ライダー、V3ィィッ!!!」指をVの字にしてV3が現れる。

「ライダーマン!」右腕の武器を携えたライダーマンが叫ぶ。

「Xライダー!」左腕を前に構えてXライダーが降臨する。

「仮面ライダーアマゾン!」野獣の如くアマゾンが吠える。

「天が呼ぶ。地が呼ぶ。人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ。俺は正義の戦士! 仮面ライダーストロンガー!」

そして、悪に雷を落とさん勢いでストロンガーが現れる。

伝説と呼ばれた仮面の戦士、栄光の七人ライダーが勢ぞろいしたのだ。

それだけではなかった。

「仮面ライダースーパー1!」

宇宙に届かんくらいの叫び声をスーパー1があげる。

「俺は太陽の子! 仮面ライダーBLACK RXッ!!」

黒き光の戦士・RXも、その神々しい姿を見せた。




「財団X! 罪も無き命達を弄び、無垢な少女達を兵器として利用するなどっ、この俺がゆ゛る゛さ゛ん゛!」

新たに現れた、13人の仮面ライダーを見て、ケルベロスⅢが動揺して吠えた。

「キサマら、なぜ此処にぃぃっ!?」

「決まってんだろワン公! お前ら財団Xの、後始末だよ・・・!」

「まったく、呉やら舞鶴やら横須賀やら、出張だらけだね・・・」

はんぶんこ怪人こと仮面ライダーダブルの右と左が目を光らせ、それぞれ交互に言った。

「誰かが助けを求める時、俺達仮面ライダーは必ず手を伸ばす!それだけのことだ・・・!」

三色の仮面ライダー、オーズが力強く宣言した。

「財団X!これ以上俺のダチに手出しはさせねぇ!」

白い仮面ライダー、フォーゼが拳を突き出し言い放った。

「もう目の前で誰ひとり絶望させない・・・! 俺が、俺達が・・・、最後の希望だ・・・!」

赤いマントの仮面ライダー、ウィザードが熱い意志をこめて叫んだ。

四人の仮面ライダー達がそれぞれ宣言する。

「深海棲艦・・・」「そして財団X・・・」

「さぁ、お前の罪を数えろ!」

「さぁ、ショータイムだ!」

「仮面ライダーフォーゼ、タイマン張らせてもらうぜ!」

「いや、タイマンじゃなくて乱戦じゃ・・・? ま、いっか!」と、オーズが野暮なツッコミを入れる。

「おのれライダーども・・・。かかれぇぇぇっ!!」

ケルベロスⅢの掛け声を受け、無数の怪人達がライダーに飛びかかった。



仮面ライダーと怪人達の乱戦が始まった。海で、陸で、空で、あらゆる場所で戦いの炎が上がっていった。

そのさなか、RXがレンゲルの前に立ち彼の叩き、言った。

「レンゲル!ここは俺に任せて、その子を連れて早く行け!」

「はい・・・!」

レンゲルは力強く頷いた。その答えを聞いたRXもまた、満足げに頷いた。

「いいな。いくら俺達に力があろうと、捕らえられた少女の心を救うのは、あの子の友にしかできん! 早く連れて行き、救いだすんだ!」

「はい!」

そしてRXは少女に向き直る。

「いいかい、必ず君の友達を助け出すんだ! 俺にできなかったことを、君がやってくれ・・・!」

黒き光の戦士は少女の肩を優しく叩いて励ました。RXは大切な親友を救えなかった過去があった。故に、彼はせめて睦月達に同じ道を歩んで欲しくはなかったのだ。

「・・・分かりました! 私・・・、必ず吹雪ちゃんを助けてみせます!」

睦月は頷き、レンゲルに背負われながら突き進んでいった。

RXはその光り輝く太陽の杖・リボルケインで、彼等の行く手を阻む怪人達を次々となぎ払い、道を切り開いた。



【BGM:レッツゴー!!ライダーキック】https://youtu.be/EdFAkh7BKDY



7人の仮面ライダーの向かう所に、敵はなかった。いや、この7人のあまりの強さに、どんな怪人も相手にならなかった。

シオマネキングはストロンガーの稲妻を帯びた鉄拳に痺れ、イカデビルの触手はアマゾンによって切り裂かれた。

サジタリウスの放った矢はライドルスティックによって全て弾き落とされ、空から襲いかかろうとしたビシュムはライダーマンのロープアームによって捕縛されて地面へと叩きつけられる。

V3の手刀がマンモス怪人のキバを折り、カメバズーカは大砲を発射する前に2号の拳を受けて転倒した。

そして1号の徒手空拳が最強の怪人、グランザイラスを吹き飛ばした。

狼狽えながら、巨大な白いイカの怪人が叫ぶ。

「何故だ・・・!何故貴様ら仮面ライダーはいつも邪魔をする!? 人間、艦娘・・・、どちらもつまらぬ生き物・・・、我等がどう操ろうと勝手ではないか?」

「わからんのか!?」

「なにがだ・・・!?」イカデビルは言う。

「俺達仮面ライダーが在る限り、貴様ら悪が栄えた試しはない!」1号が叫ぶ。

「ずっと昔からそうやって戦ってきた。人間の自由を守るためにな!」2号が拳と熱い想いを叩き込む。

「あいも変わらず馬鹿なヤツ等め・・・。人は常に悪に、終末の闇に落ちる・・・。貴様らがいくら守ったところで無駄なのだよ!」とイカデビルが嘯いた。

だが仮面の戦士たちはそんな言葉に惑わされたりなどしない。

「フッ・・・。邪悪に落ちた者には、限りある命を輝かせる人の価値など分からんだろうな!」と、V3。

「確かに人は闇に落ちることもある・・・。だが、闇の中で光を取り戻すこともできる!」ライダーマンが叫んだ。

「それを見守り、手を差し伸べるのが俺達の使命だ!」とXライダー。

「アマゾン、トモダチマモル! ズット・・・!」アマゾンが吠える。

「こんなところで倒れていたら、ユリ子やおやっさんに顔向けできんからな!」とストロンガー。

栄光の名をもちし七人の戦士は、あっという間に怪人達を追い詰めていった。




「みんな行くぞ!」

「おう!」

1号の叫びとともに7人が宙へと飛び上がる。

「ライダーダブルキック!!」

1号と2号が怪人にダブルライダーキックを浴びせ、

「V3きりもみキィック!」

V3がきりもみ回転から強烈なキックを放ち、

「ロープアーム!」

ライダーマンがロープアームで空へと逃げようとする敵を何度も打ち付けた。

「Xキック!」

高空で大車輪のように回転したXの必殺キックが炸裂し、

「スーパー大切断ッ!」

アマゾンの斬撃が敵を切り倒し、

「ストロンガー、電キック!」

雷電の力を帯びた必殺キックをストロンガーが繰り出した。

伝説の七人の必殺技が、怪人達に同時に炸裂した。

「おのれ・・・、仮面ライダーどもぉぉっっ!!!」

再生怪人達は、断末魔の雄叫びと恨み言を天に木霊させ、爆発した。


【BGM:仮面ライダーBLACK RX】https://youtu.be/z2VQyUqaZ4o



深海棲艦と怪人の連合軍が業を煮やし、レンゲルめがけて突進してゆく。軍団は量産されたグランザイラスとトライセラトップス・ドーパント、そして深海棲艦によって形成されていた。だが、その前にスーパー1とRXが並び立つ。

「レンゲルの邪魔はさせん、リボルケイン!!」

RXは腰のベルトから光り輝く杖・リボルケインを取り出した。

「はっ!!」

光の杖を振り回し、瞬く間に角竜怪人達を薙ぎ払ってゆく。

怪人たちはあっという間に角を折られ、身体を貫かれ、次々に倒れてゆく。やがて、100を超えていた角竜怪人兵団は、あっという間に絶滅させられてしまった。

「ウォノレェェェェェ!! ムジゲラドゥモブェ・・・!!」

戦艦棲鬼や泊地棲鬼が業を煮やし、RXめがけて砲弾を発射する。速い。避けきれない。スーパー1がRXの危機を予感した。

「ふんっ!」

だが、RXは一瞬でその姿を変える。ベルトが唸りその姿は黒から橙色へと変わった。

「俺は炎の王子、RX・ロボライダー!」

RXは無敵の鎧を纏いし戦士、ロボライダーになった。その鋼の身体にはどんな砲弾も通じない。なおも必死に深海棲艦達が機銃を浴びせるが、ロボライダーはまるでビニール製のボールに当たったかのごとく平然としていた。その体には傷一つさえもつけられなかった。

「そんなものでこの俺を倒せると思ったか! ボルテックシューター!」

ロボライダーは必殺銃・ボルテックシューターを手に取る。正確無比の射撃が次々と深海棲艦の急所を撃ち抜き、爆破していった。爆音が上がり、深海棲艦の悲鳴が上がる。

たちまち、RXの周囲は深海棲艦の残骸だらけとなってしまった。

「むっ・・・!」

そこに、シャチの姿をした女怪人・メズールが現れた。ロボライダーはボルテックシューターを放つが、液状化してかわされてしまった。

「むんっ・・・!」

それに怯むRXではなかった。再びベルトが唸り、ロボライダーは変幻自在の激流の戦士、バイオライダーに姿を変えた。

「俺は怒りの王子、RX・バイオライダー!」

バイオライダーもまた液状化し、同じく液状化したメズールを追跡し始めた。メズールはなんとか逃げようとあがくが、液状化を解いた一瞬の隙を突かれてしまった。バイオライダーの方が通常の形態に戻るのが早かったのだ。

「スパークルカッター!」

バイオブレードの一閃がメズールを一瞬で切り裂く。メズールはあっけなくメダルを噴き出し、爆散した。




「・・・もうアイツ一人でいいんじゃないかな?」

RXのあまりの強さに、スーパー1は思わず呟いてしまった。そんなことを考えていると、目の前には巨大な怪人の大群が並んでいた。

「・・・おっと、冗談を言っている場合ではないか!」

スーパー1の拳が、怪人達を次々となぎ払ってゆく。彼に襲いかかる戦艦棲鬼や空母棲鬼の牙を砕き、次々と怪物達を打ち砕いた。

「この拳、この命は、少女達の夢のために!」

スーパー1は跳躍し、遥か上空へと飛び上がる。月にも届くような、遥か空の果てであった。

そして、そのまま急降下し、急降下爆撃機の如く強烈なライダーキックを放った。

「スーパーライダー月面キィック!!」

そのキックにはさしもの南方棲戦鬼達も耐えられなかった。深海棲艦達はことごとく引火して燃え上がり、爆散していった。


その頃、解体をまぬがれた川内達は深海棲艦の艦載機に囲まれていた。地上には無数の怪人達が並んでおり、彼女たちに逃げ場はなかった。対抗しようも艤装が全て外された状態ではどうしようもない。

「くっ・・・!」

艦載機が爆撃を放ち、彼女達を蹂躙しようとしていたその時だった。

「スカイキック!」

「ZXキック!」

空飛ぶライダー・スカイライダーが次々と艦載機軍団を空中で爆破した。

さらに地上では、赤と銀の仮面ライダーZXが多数の怪人達を蹴散らし、すぐさま十字手裏剣で川内達に襲いかかった怪物達を撃破した。

「すごい・・・、忍者の仮面ライダーだ・・・!」

川内は恍惚としてゼクロスの手裏剣投げを見つめた。

「艦娘たち、大丈夫か!」

「はっ、はい!」

「良かった」

ゼクロスとスカイライダーは微笑んだ。

「あの・・・、何か私達にお手伝いできないですか?」

神通が尋ねた。

「なら、俺達のことを最後まで応援してくれ」

「仮面ライダーを応援する?」と那珂。

「倒れそうになった時、君達の応援があれば、俺達仮面ライダーはいつでも蘇ることができる」

「仮面ライダーを、信じる・・・」

だが、間髪入れずに再び艦載機と怪人達が襲いかかってきた。

スカイライダーとゼクロスは武装を剥がされた少女達を守るため、怪人の群れに再び立ち向かっていった。



【BGM:Cyclone Eddect】https://youtu.be/8dmY48fFi48



ダブルとオーズは、空と陸で、それぞれ怪人の大群と戦っていた。



『Luna,Trigger!』



再びルナトリガーとなったダブルは空飛ぶバイク・ハードタービュラーに跨り、銃撃で次々と深海棲艦の艦載機達を落として仲間を支援していた。やがて、彼の目線は空中に浮かぶ巨大な鯨へと向けられた。

だが、オーシャン・ドーパントを守るが如く、敵艦載機の集団が現れた。

「団体さんのおでましか!」

ダブルは右側のメモリを緑のものに入れ換えた。



『Cycolone,Trigger!』



「はぁっ!!」

サイクロントリガーとなったダブルは、連撃で次々と艦載機達を落としていった。空飛ぶ黒い悪魔は、まるで蠅のように叩き落とされていった。

だが、敵も一筋縄ではいかない。突然、ダブルは背後から奇襲を受けた。

「おっと!」

緑色の鳥の怪人や、巨大な翼竜の怪人軍団が彼に襲いかかってきた。彼らもまたオーシャン・ドーパントを守ろうとするかのように、次々と火球や弾丸でダブルに攻撃を仕掛けてきた。

「ケツァルコアトルスにバードか・・・。懐かしいね・・・」

「ったく、ちょこまかと・・・!」

出力不足のサイクロントリガーで対抗するには、流石に巨大で数が多すぎた。

「翔太郎、サイクロンとメタルだ」

「あぁ・・・!」

ダブルは黄色のメモリを外し、代わりに銀のメモリを取り出してベルトに装填した。



『Cyclone,Metal!!』



その瞬間、黄色と青のダブルは緑と銀の色に、サイクロンメタルに変化した。同時に、その手に鋼鉄の杖・メタルシャフトが生成された。

「さぁ行くぜ、小鳥ちゃん共!」

風の力を得たメタルシャフトは防御力が強化される。サイクロンメタルは攻撃力や防御力が増強される反面、スピードが少し鈍るのが欠点だが、ハードタービュラーの性能がそれを補っていた。ダブルは次々とメタルシャフトを振るい、空飛ぶ怪人達の火球を叩き落としてゆく。その後、彼らは銀のメモリをメタルシャフトに装填した。

「これで決まりだ・・・!」



『Metal,MaximumDrive...!』



「メタルツイスター!!」

二人の声がハモリ、暴風を帯びたメタルシャフトが高速回転する。ダブルはハードタービュラーに乗りながら、筋斗雲で突撃する孫悟空のごとく、ケツァルコアトルス・ドーパントやバード・ドーパントに次々と鉄槌を下してゆく。

空飛ぶ怪人達は次々と打ち落とされ、空中で爆炎に包まれていった。

メモリが抜け、その素体となっていた海鳥たちが飛び出る。彼等は爆風に怯え慌てて戦場から逃げ出し、ハードタービュラーやダブルの頭の上に避難した。


【BGM:Time Judged all】https://youtu.be/Lpovxw43wBY



地上にいたヤミーの再生怪人を剣でなぎ払いつつ空の様子を注視していたオーズは、上空の飛行戦力がほぼ全滅したことを悟り3枚のメダルを取り出し、鳥の模様が刻まれた三枚の赤いメダルをベルトに装填した。

「アンク、行くよ・・・!」



『タカ! クジャク!! コンドル!!! タ~ジャ~ドル~!!!』



不思議な歌が詠唱され、炎に包まれたオーズは翼を持った赤い姿になった。孔雀のように羽を広げ、コンドルのように凛々しく飛び立ち、そして鷹のように力強く羽ばたいてゆく。

オーズは、オーシャンの巨体にも全くひるまず、機銃を全て避けながら残った艦載機や飛翔する怪人に炎の弾を浴びせ、遥か上空へと昇った。

彼には守らねばならない約束がある。それが彼をより一層強くしていた。未来で再び会うあの男の為にも、彼は負けられないのだ。

「おのれ、ちょこまかと・・・!」

オーシャンは砲塔にエネルギーを蓄積し、一気に掃射しようとする。

「おっと、後輩たちにばっかカッコつけさせねぇぜ・・・!」



『Luna,Trigger!』



再びダブルは青と黄色のメモリを装填して青と黄色のルナトリガーへと姿を変え、構えた銃にメモリを装填する。



『Trigger! MaximumDrive...!!』



「トリガー、フルバースト!!」



青と黄色のダブルが銃を構え、次々と発射する。くねくね曲がる無数の銃弾が正確に砲塔を打ち抜き、全て爆破した。

「今だ、オーズ!!」

「ありがとうございます、翔太郎さん!フィリップさん・・・!」 

「気にすんなって。ライダーは助け合い、だろ?」

ダブルが指でポーズを取る。オーズはそれに頷き、さらに上空へと舞い上がる。そして、左腕の円盤・タジャスピナーに3枚のメダルを嵌め込み、右腕のもう一つの円盤・オースキャナーで左の円盤をスキャンさせた。



『タカ! クジャク!! コンドル!!! ギンギンギン!!!ギガスキャン!!!』



燃える翼を誇る鳳凰を纏い、オーズは天高くから左腕の円盤を構え、突撃する。

「セイヤァァーーーーッ!!!」

鳳凰の裁きが降った。炎の鳥に包まれたオーズがマグナブレイズを放ち、巨大なオーシャン・ドーパントの身体を一気に貫いた。その衝撃と業火に耐え切れず、クジラの怪物は天空で派手に爆発した。

「ふぅ・・・」

オーシャンを撃破したオーズを見て、満足げにダブルの左がため息を付いた。だがその瞬間、頭の上に止まっていた海鳥が、白い落し物をダブルにプレゼントした。

「うわぁぁぁぁ!!」

「恐らく戦いの場から離れて安心したんだろう。興味深いねぇ・・・!」

「どわぁああぁぁっ!! 俺の頭がぁぁ!!」

先程の華麗な戦いぶりは何処へやら。ダブル、いや左翔太郎は情けない醜態を晒した。



【BGM: Giantstep】https://youtu.be/0lnvcR4sk1k



地上ではフォーゼとウィザードが戦っていた。

フォーゼはユートピア・ドーパント、グレムリンに二対一の戦いを挑んでいた。

ユートピアのその手はあらゆる希望や生気を吸い取る。だが、フォーゼの拳を受け止めても、何も吸い取れない。逆にフォーゼに横面を殴られ、無様に大地に転がった。グレムリンも刃を振りかざし襲いかかるが、逆に刃を叩き折られるだけだった。

「なぜだ!? なぜ何も吸い取れん!?」と、ユートピアが虚しく叫ぶ。

「決まってんだろ!」フォーゼが答えた。

「俺たちの友情パワー、青春のパワーは無限大だ! お前が吸い取れるほどちゃっちぃもんじゃねえ!」

「わ、わけがわからん・・・!」

弦太朗に言わせれば、友情とは言葉では説明しきれない、無限に広がる大宇宙のようなもの。 故に、時にそれは無限に近いパワー、コズミックエナジーを生み出す。

フォーゼの友情パワーは、まさに無限大だった。彼は数多くの者と友情を結んできた。その友情の大きさ故に、彼の希望をユートピアは吸い取れなかったのだ。

「俺達はこれからも進んでゆく! 希望を胸に! ずっと!! 仲間と!!!」

フォーゼを倒そうと、深海棲艦達も群がってくる。それに気づいた白い戦士は、蒼いスイッチをベルトに装填した。



『SuperLauncher,On』



そのスイッチを装填し、フォーゼは蒼いランチャーステイツに変身した。両肩と両脚にミサイルランチャーが備わった形態だった。

まさか、卒業式の再現になるとは彼も予想だにしていなかった。フォーゼは迫り来る怪物達に対峙し、ベルトのレバーを引いた。



『Limitbreak!!』

「ライダーフルブラストファイヤー!!」



無数のミサイルが放たれ、その全てが怪人達に命中する。絶望の魔人と理想郷を謳いし者は共に爆散した。襲いかかってきた深海棲艦達もまた、ミサイルの雨に襲われて爆死した。


【BGM:Mysticliquid】https://youtu.be/wbi7DCJlb1I



「希望を、ずっと、仲間と・・・、か・・・!」

さすが先輩だな。ウィザードが素直に敬意をこめて、呟いた。

その目の前に、巨大なクラーケンのような怪物とカニのバケモノが襲いかかる。メズール暴走体とキャンサー・ノヴァだった。走行空母姫や中間棲鬼も、攻撃の準備をしようとしていた。だが、ウィザードは全くひるむことなく、その攻撃をかわしてゆく。まるで踊るように、軽やかに。

「さぁ、ダンスタイムだ・・・!」マントを風に舞わせ、ウィザードは蒼い指輪を取り出し、ベルトにスキャンさせた。



『Water,Dragon...! Jabajababasshaan! Zabunzabuun!!』



魔法陣がウィザードを包んだ後、蒼い竜が水しぶきをあげながら彼を包み、ウィザードは蒼き竜戦士・ウォータードラゴンへと強化変身した。彼は驚く怪物達に隙を与えない。



『Chooiine! Blizzard...Saikooooou!』



ウィザードは直ぐ様指輪を付け替えて氷の魔法を発動する。詠唱と共に、その手から強烈な冷気が放たれた。その猛吹雪が海面ごと巨大な怪物や深海棲艦を凍らせてしまった。それはまるで、氷の芸術のようだった。その後、スケートのようにウィザードは凍った海を滑り、巨大な氷像達の元へと突進する。

「フィナーレだ!!」



『Special,Saikoooou!』



ベルトが魔法の呪文を唱えると、蒼い竜の幻影が現れ、ウィザードに重なる。そして、ウィザードは巨大な龍尾を身体に宿した。尾がうねり、何度も氷を砕く。そのまま、ウィザードは天へと舞い上がった。

この場にスケートの審査員がいれば、恐らく誰もが満点を与えたことだろう。

「今のアタシと書いて、冷凍ガニと説く!!」

突如、キャンサー・ノヴァが口を開く。凍りつきながらも、僅かに話すことぐらいは可能だった。

「そのこころは!?」

ウィザードが尋ねた。

「ははっ、『こおり』ゃ『かに』ゃわない!」

「・・・はぁぁっ!」

ウィザードは座布団の代わりに、メズールとキャンサー・ノヴァ、そして深海棲艦達に次々と龍尾の一撃・ドラゴンスマッシュを放った。氷漬けの巨大な怪物達はドラゴンの力で粉々に砕け散った。その破片は宙に舞い上がり、凍った海に雪を降らせた。まるで、美しい雪原のような風景だった。

「ふぃぃ・・・・」

目の前の敵を撃破し、降り積もる氷雪の中でウィザードはため息を吐いた。



【BGM:勇壮たるレンゲル】https://youtu.be/QqNaFe0UPpw



レンゲルは睦月を左腕に抱え、ケルベロスⅢのもとへ向かってゆく。重い足音が大地を揺らしてゆく。目指すは鎮守府基地の屋根の上で、我が物顔に戦場を見つめるケルベロスだけだ。

「一気に決める・・・!」

彼は三枚のカードを取り出し、カードリーダーに読み込ませる。



『Rush,Blizzard,Poisson, Blizzardvenom』



列車のような犀が鼻息を鳴らして吠え、凍れる白熊が吹雪を巻き上げ、毒蠍が毒を撒き散らす。 三体のオーラが杖に吸い込まれ、レンゲルに力を与えた。

「せぇぇやぁぁぁ!!」

レンゲルは強力な冷気を杖から放って魔犬を氷漬けにし、突進して毒の力を打ち込んだ。だが、ケルベロスⅢは平然としていた。その巨体を覆う氷の戒めさえも、すぐに破ってしまう。

「きっ、効かない・・・!?」

「ハハハ! 私と吹雪が合体したケルベロスⅢに、ライダーごときが適うわけがない・・・!」

魔犬は嗤いながら、三つの頭から怪光線を放った。

「ぐはっ・・・!」

「きゃぁぁぁっ!!」

レンゲルが光線を浴びてしまい、睦月を手放してしまう。なんとか睦月は着地できたが、レンゲルはそうはいかなかった。

直ぐ様魔犬が倒れた彼を踏みつけ、ジリジリと傷つけてゆく。

「上城さん!」

「ぐっ・・・!」

流石に直接対決では、10m以上もあるであろう魔犬に力比べでは勝てない。レンゲルはいいように弄ばれていた。

踏みつけの拷問に飽きた魔犬は、動きの鈍ったレンゲルを咥える。そして、そのまま鈍い音を立てて噛み砕き、下に投げ捨てた。


レンゲルがいなくなり、睦月には何一つ盾がなくなった。だが、それでも睦月は怯むことはなかった。一歩ずつ、ケルベロスの前へと歩み寄ってゆく。

「睦月、諦めろ。まぁ、今生の別れぐらいはさせてやろうか」

ケルベロスⅢは睦月を噛み砕こうとすらしなかった。最早、勝ったと思い込み、余裕を見せているつもりなのだろう。

「吹雪ちゃん・・・! お願い目を覚まして!!」

「睦月・・・ちゃん?」

吹雪は、焦点の定まらない目で睦月を見つめた。

「吹雪ちゃん! 私だよ!睦月だよ! 今助けるから!」

「ごめん、もう無理みたい・・・。私はいいから、逃げて・・・」

吹雪は既に何もかも諦観していた。艦娘の真実を伝えられて、彼女は絶望していた。何もかも、自分が頑張ってきたことは全て茶番だった。その絶望が、彼女から全てを奪い取っていたのだ。

「いや! 絶対に逃げないよ!」

それでも睦月は吹雪に叫び続ける。

彼女はなんとしても友達を救いたかった。もう如月のように誰かを失いたくない。その思いが彼女を奮い立たせていた。

そして仮面ライダーレンゲルが知らずのうちに彼女の心を支えていた。彼の勇姿が、同じ名を持つ少女にも勇気を与えてたのだ。

「いいよ。どうせ私、もう役にたてないもん・・・! 私なんか、こうなるのが運命だったんだから・・・」

「そんなの関係ない! 私は吹雪ちゃんを・・・、友達を守りたい! もう二度と、誰も失いたくなんかないの!」

「睦月ちゃん・・・!」

吹雪はそれでも動こうとしない。

「みんなで一緒に帰ろう! 夕立ちゃんや金剛さん達と、みんなで!」


「お別れは済んだようだな・・・! では死ね!!」

ケルベロスⅢが左の頭を伸ばし、その鋭い牙で睦月を咥えた。

「きゃあああ!!」

「睦月ちゃん!」

睦月は噛まれ、何とか拘束から逃れようとあがくが、牙は彼女を縛り続け、今にも食い込もうとしていた。

それでも、彼女に諦めるという選択肢はなかった。

「負けない・・・! 私、絶対に友達をあきらめない・・・!!」

睦月は偶然自由になっていた腕を必死で動かし、12cm単装砲の引き金を渾身の力で引き絞り、ケルベロスの目に接射で弾丸を撃ち込んだ。

「ぐぉぉぉぉっ!」

当たった。さすがに至近距離からの目のダメージは痛むのか、ケルベロスは睦月を離してしまった。

睦月はなんとか着地し、そのまま吹雪を縛っていたワイヤーにも銃撃を放った。

吹雪を拘束していたワイヤーがちぎれ、そのまま彼女は拘束から解き放たれ、ゆっくり下へと落ちた。

「ぐぅ・・・、まさか・・・!?」

ケルベロスの体に生えていた鋭いトゲが抜け落ちていった。エネルギー供給源だった吹雪を失い、その体は少しずつ弱りはじめた。


一方、ケルベロスに投げられたレンゲルは、鎮守府基地の真下へと落下していた。ケルベロスの牙と叩き落とされた衝撃で、レンゲルはジャックフォームから通常形態へと戻ってしまった。

身体は傷つき血だらけで、骨もあちこちが折れていた。腹部も『あの時みたいに』損傷していた。牙が内臓にまで及んでいたのか、酷く痛む。

「ダメか・・・」

立ち上がろうにもこの体ではどうしようもない。動こうにも動けない。

やがて、レンゲルの、睦月の身体を、あきらめが、脱力感が包んでいった。

(やっぱり俺は、剣崎さんや橘さんのようには行かないか・・・)

弱い自分を自嘲したその時だった。


『睦月、お前は弱くなんかない・・・! 自分の闇に打ち勝ったじゃないか・・!』

剣崎さんの声が聞こえた。とても優しく強い声で励ましてくれてる。

『睦月。お前の優しさは、強さなんだ。そんな強い男が、ここで倒れるはずがない。立ち上がるんだ・・・!』

『どうした上城睦月。お前はこんな弱い人間じゃなかったはずだ』

橘さんと相川さんだ。二人とも相変わらず厳しいな・・・

『睦月、立って! 必ず帰ってくるって約束したじゃない!』

望美の声が聞こえた。あのおにぎり、美味しかったな・・・

『めんどくせぇなぁ・・・。さっさと奴を倒して、俺たちをゆっくり眠らせてくれ・・・』

『立て睦月! カテゴリーAに打ち勝ったお前が、こんなまがい物に倒されてどうする!?立ち上がれ!』

『睦月くん・・・、風の声に耳を澄ませるんだ・・・! 君を応援する声が聞こえないかい?』

カテゴリーJ,カテゴリーQ、そして嶋さんの声だ。



いや、それだけじゃない。


風の中から、微かだが、確かに声が聞こえた。



少し離れた場所から、高台から自分を応援してくれる声が。

「がんばれー! 杖の仮面ライダー!!」

「がんばれなのでーす!」

「がんばれ・・・!」

「ほら、レディーに恥かかせる気!? もっとがんばりなさい仮面ライダー!」

声の聞こえた場所を振り返ると、少女たちがいた。さっき助けた艦娘達だ。小さな少女達が、力いっぱいの応援の声を出して、自分を励ましてくれていた。

いや、それだけじゃない。

「がんばってください仮面ライダー!」

「負けんなよ杖の仮面ライダー・・・!」

「ほら、もっと声あげて応援してー! 那珂ちゃんと一緒に! せーのっ!!」

神通、川内、そして那珂が叫ぶ。

「仮面ライダー!!」

「がんばって仮面ライダー!」

「まけんじゃねぇぞ仮面ライダー!!」

「がんばるのじゃ仮面ライダー!」

「仮面ライダー!」

「仮面ライダー!」

彼女たち以外にも、たくさんの少女たちの応援する声が聞こえた。

仮面ライダーを応援する呼び声を。





聞こえた・・・! 

俺を応援する声が・・・! 

支えてくれたみんなの声が・・・!



(そうだ・・・、負けられない・・・! 剣崎さんや橘さん、望美達のためにも・・・! そして嶋さん達のためにも・・・!)




一方、ケルベロスⅢは思い通りにならない兵器たちに怒りの叫びをあげていた。

「おのれ吹雪・・・、貴様は私の嫁だ! 私の所有物だ・・・! 勝手な真似は許さん・・・!」

「いいえ! 私達は誰のものでもありません!」

睦月に支えられながら、吹雪が力強く言う。その目には力強い光が戻っていた。

「私達艦娘は、大切な人を守るために生まれました! あなたの邪な欲望のためなんかじゃありません!」

その時だった。

「ブッキー! よく言いマシター!!」

陽気な叫びとともに、海から砲弾が飛んできた。

「Hey、提督! ブッキーに告白するのはいいけど、時間と場所を弁えなヨ!!」

「我等ビッグセブンの誇り、今こそ見せてくれる!」

「お姉様、橘さん、長門さん、大和さん! 行きましょう!」

「あぁ・・・!」

「大和、推してまいります!」

長門、金剛、比叡、そして大和が並び立っていた。その隣にはジャックフォームとなったギャレンもいた。

金剛、比叡、長門、そして大和達戦艦が、それぞれ巨大な砲塔を構えた。同時に、ギャレンも三枚のカードを銃のカードリーダー部分に読み込ませた。



『Bullet,Rapid,Fire...BurningShot!!!』



「クアトラプル・バーニング・ラァァァァブッッ!!!!」

金剛達が、一斉に叫んだ。業火の連弾と四大戦艦の超ド級の全弾砲撃がケルベロスに命中した。

「ぐぉぉぉぉぉ!!!」

彼女たちの支援砲撃により、巨大なケルベロスの身体が砕け、装甲の一部が崩壊し、緑色の血が流れ出した。



【BGM:クライマックスⅧ】ttps://youtu.be/8dmY48fFi48



「俺は・・・、俺は・・・! 俺は仮面ライダーレンゲルだ・・・!!」

レンゲルは身体の痛みを振り切って、再び立ち上がった。

人間の、人の心を持ちし者達の自由を守るため。

自分を支えてくれた、大切な人達のため。

レンゲルは一枚のカードを取り出した。タランチュラが描かれた黄金のカードだ。

「一緒に戦ってください、嶋さん・・・!」

彼は左腕のラウズアブゾーバーに虎のカードを装填した。



『ABSORB QUEEN』



そして、黄金に輝くタランチュラのカードをスキャンさせた。



『EVOLUTION KING』



その瞬間、金色に輝く大蜘蛛がレンゲルの身体と一体化した。蜘蛛は黄金の光を放ちながらレンゲルの鎧を修復し、至高の鎧へと変えてゆく。光が止んだ瞬間、レンゲルは巨大なクローバーの刃を備えし杖を手にしていた。蜘蛛の意匠の強いその鎧は、各パーツが金色に輝いていた。

その胸には、嶋との絆の証が、大蜘蛛の紋章が刻まれていた。遂に、仮面ライダーレンゲル・キングフォームが誕生したのだ!

キングフォームとなったレンゲルが頭上を見ると、尚も魔犬は唸り声を上げ、少女たちを噛み砕こうと迫っていた。


「おのれ・・・。思い通りにならぬ吹雪など解体してくれる・・!!」

傷ついた魔犬はその巨大な牙を吹雪に向けた。

ダメだ、よけられない・・・! 吹雪と睦月は腕で顔を庇い、身をすくめたその時だった。

「そうはさせない!」

レンゲルの巨大な杖が牙を受け止めた。

「な、なに!?」

キングフォームとなったレンゲルの新たな姿を見て、ケルベロスは驚愕した。

徹底的に痛めつけたばかりだったのに、この仮面ライダーは尚も立ち上がり、ケルベロスを倒そうとする。倒しても倒しても、更に強くなってゆく。その輝きを増しながら。

「何故だ!?何故、貴様は、仮面ライダーは立ち上がれる!? もうその身体はボロボロのはずなのに・・・!」

融合したタナカの顔が狼狽し、叫んだ。

レンゲルは毅然として言い放つ。

「俺は負けない! 俺を支えてくれた人達のためにも! この子達を守るためにも!!」

「人間? 艦娘はただの兵器に過ぎん!」

「違う!」

レンゲルが叫んだ。

「彼女たちは誰かを愛し、命を慈しむ心を持つ!その心があるなら、彼女たちも人間だ!」

「ぐ、ぐぅ・・・」



レンゲルの力が徐々に増してゆく。その勇姿は、ケルベロスの脳裏に恐怖を与えた。

どこからか睦月の中から力が湧いてくる。

誰かを護ろうとする、想いの力。

その力がレンゲルと上城睦月の融合係数を異常なまでに押し上げ、全身から力を引き出してゆく。

その力に押され、徐々に魔犬の牙は力を失っていった。

「そんな心優しき者達を守るために戦う、それが仮面ライダーだ!」

レンゲルは巨大な杖を振りあげ、魔犬を突き飛ばした。

「ぐぉぉ・・・!」

その巨体は数百メートル先の砂浜へと吹き飛び、砂塵を巻き上げた。

「嶋さん・・・!」

レンゲルは直ぐ様五枚のカードを杖のカードリーダーに装填した。獏、象、虎、蜘蛛、蜘蛛。嶋達の想いが詰まった、レンゲルと彼らの絆の証だ。



『Club10,Jack,Queen,King,Ace...RoyalStraightFlash!』



5枚の紋章がケルベロスの前に縦列に並んだ。獏、象、虎、蜘蛛、蜘蛛。そのカードが並んでも、傷ついたケルベロスは動けなかった。

並び立つ紋章に向かって、レンゲルが猛進する獣の如く走り出す。カードをくぐるごとに、その鎧と杖の、黄金の輝きが増していった。

「おうりゃあぁぁぁぁぁ!!!」

レンゲルはケルベロスⅢに無数の突きを浴びせ、杖の刃で何度も何度も切り裂いてゆく。その体が徐々に海へと後退してゆく。最後にレンゲルは魔犬の急所に杖を突き刺し、大量のエネルギーを魔獣の体内に打ち込んだ!!

「ぐぅ・・・。おのれ、おのれ・・・、レンゲルゥ・・・!!」

レンゲルはさっと後ろに背を向け、杖を振り、構えた。

次の瞬間、ケルベロスⅢの体内でエネルギーが膨れ上がり爆発した。魔犬は緑色の血を吹きあげ、粉塵を撒き散らし、海面で花火のように爆散した。

レンゲルは哀れな魔犬に背を向けたまま、静かに腰のバックルからカードを引き抜き、海へと沈みゆく怪物の残骸へ投げた。 巨大な魔犬はカードに封印され、レンゲルの手元に戻った。

爆炎が辺りを焼く中、海の真ん中に傷ついたタナカだけが残された。


「やったぁぁぁっ!!」

睦月と吹雪が、手を取り合ってその勝利を喜んだ。

「やったぁぁぁ!!」

「那珂ちゃん感激!!」

応援していた艦娘達も歓声を上げ、仮面ライダーレンゲルの勝利に沸いた。

やがて、何時の間にか夜は明け、朝日が登り始めた。

朝焼けが、レンゲルの勝利を祝うかのように彼を赤く照らし出した。


【BGM:すべては君を愛するために】ttps://youtu.be/Oskmxll3fkk



「吹雪ちゃん、まだ痛む?」

「ううん、大丈夫」

「一応私も大丈夫っぽい・・・」

吹雪は夕立と睦月に肩を貸してもらいながら、仲間達の集まる場所へと歩いて行った。

夕立は「ぽいぽ~い」と呑気な声をあげて何時の間にか現れてきた。睦月達は驚いたが、特に気にすることはなかった。彼女がマイペースなのはいつものことだ。

三人とも疲れ果ていたのか、その足取りは重い。とりわけ、吹雪の歩みはすこぶる重かった。図らずも、仲間に牙を剥いてしまったことが彼女の足に枷を嵌めていた。

「ごめんね、睦月ちゃん・・・。私、こんな役立たずなのに、迷惑までかけちゃって・・・」

「ううん。そんな事関係ないよ・・・」と睦月。

「えっ・・・?」

「友達を助けるのは、役に立つとか立たないからとか、そんなことじゃないよ」

吹雪は黙っていた。

「ただ、友達だから助けたい。力になりたい。理由とか損得とかじゃない、それだけだよ・・・!」

吹雪は暫し目を見開き、口を閉ざした。

「ごめん睦月ちゃん! 私、焦ってた・・・! 役に立たないと、提督に、みんなに見捨てられるって・・・、睦月ちゃんの気持ちも考えずに・・・。私、間違ってたよ・・・!」

吹雪は謝りながら、静かに涙を流した。

「も~、吹雪ちゃん泣かないで欲しいっぽい! 間違ったならやり直せばいいと思う~!」

肩を貸し合いながら、少女たちは砂浜へと向かう。夜が明け、朝焼けが浜を染めつつあった。

そして、歩いた先には、ひとりの少女がいた。波風に揺れる長い髪を携えた少女が。彼女たちがよく見知っていたあの少女が。

「如月・・・ちゃん?」

「睦月ちゃん、久しぶりっ・・・!」

そこには如月がいた。砂だらけの髪飾りを波で洗い、静かに座っていた。髪飾りはないが、あの時のように睦月へ笑顔を見せてくれた。

「如月ちゃん、如月ちゃんだよね!?」

「遅くなってごめん・・・。約束、ようやく守れたね・・・!」

少女たちは、涙の再会を果たした。

その様子を黒い勇者が見つめていた。仮面ライダーBLACK RXだ。彼は彼女たちの喜ぶ姿を目に焼き付けると、変身を解き南光太郎の姿へと戻った。

「良かった・・・!」

彼もまた優しい笑顔を見せた。

南光太郎は嬉しかった。彼女たちが自分や信彦と、同じ途を辿らずに済んだことを。

そして、彼女たちの幸せそうな笑顔が、友情が守られたことを。

「信彦・・・」

彼は、心から安堵した。


戦艦達も戦いが終わり、仲間達の待つ港へと戻ろうとしていた。その横には、翼を備えたギャレンもいた。

海岸に着地して静かに変身を解き、橘さんは先に上陸した比叡に尋ねた。

「比叡ちゃん。体の方は大丈夫か・・・?」

「はい! 橘さんが洗脳装置を破壊してくれたおかげです!」

腕を振り回しながら、比叡は自分が大丈夫だとアピールする。

「それより橘さんこそ・・・?」

「俺なら大丈夫だ。こういう戦いは慣れてるからな」

「そうですか!それなら良かったです!」比叡は笑顔で言った。

橘は思った。この子は、どこか剣崎や小夜子に似ている。純粋で優しく子犬のように人懐っこい笑顔を見せる。それでいて誰よりも熱い心を持っている。

これから彼女を守ってゆきたい。彼の心に、そんな思いが芽生え始めていた。

「ところで比叡ちゃん・・・。なんか匂いがしないか・・・?」

「匂いですか・・・?そういえば・・・」

クンクンと比叡も鼻を鳴らす。その匂いの先に視線を向けると、そこでは金髪の若い青年がバーベキューをしていた。


【BGM:スキップタイム】ttps://youtu.be/jg8g1b4h2W4



「よっし! 艦娘の女の子達も全員助け出した! 祝勝バーベキュー大会やるぞぉ!」

「おー!!」

仁藤は勝手に鎮守府の食材をかっぱらって焼いていた。しかも、祥鳳も瑞鳳も真由も、誰ひとり止めず、食材に焦げ目がつくのを楽しんでいた。

ミーナは超能力で火を付け、火加減の調整をしていた。

「おー、姉ちゃん。材料借りてるぜ」

「はいはい。いっぱいあるんで、どんどん食べてくださいね?」と間宮。

その後、仁藤はいい具合に焼けたウィンナーにマヨネーズをかける。

「ま、マヨネーズですか・・・?」

引きつった顔で真由。

「なんだよ、ウメーんだぞコレ。ほら、皆まで言うな。に試しに食ってみろって」

だが、少女たちはマヨネーズ付きウィンナーにはさすがに食指が伸びなかった。

「美味そうだな。これ食ってもいいかな?」

突然橘さんが割り込んで言った。

「おぉ!アンタもマヨラーなのかぁ!?」

仁藤は喜び、マヨネーズがたっぷりかかったウィンナーを手渡す。橘はその端正な風貌にもかかわらず、そのウィンナーにむしゃぶりついた。

「美味い、これは美味いぞ!」

顔を白い粘液だらけにしながら爽やかな笑顔で橘は言う。

「おぉ!アンタ話がわかるじゃねーか!」

話のわかる友に出会い、仁藤は大喜びした。

「アレ・・・止めなくていいのか?」と長門がバーベキューの様子を見て言う。

「いいんじゃない? もう私達戦わなくていいわけだし。今日はパーっとやっちゃいましょうよ!」と陸奥が微笑む。

「そうだな・・・! ビッグセブンの食いっぷり、見せてやろう!」

腕を捲り、長門もバーベキュー大会へと参加した。

その様子をみて、陸奥をはじめとした他の艦娘達もバーベキューの輪に加わる。

穏やかな祝勝会が始まった。赤城や加賀、愛宕や高雄達も、静かに食事を楽しんでいた。

しばらくすると、砂浜の上の砂防コンクリートをステージにして那珂が上がった。どこから持ってきたのか、その手にはマイクもあった。

「よーし! こっこからは元鎮守府のアイドル、那珂ちゃんのステージでーすっ!! 艦娘のみんなが救われたことを記念して、那珂ちゃん歌っちゃいまーす!『恋の2‐4‐11』、ひとっ走り付き合ってくださーい!」

「おぉーっ!!」

艦娘や仁藤たちが歓声をあげた。



晴人と真由は、彼女たちから少し離れたところでゆっくり佇みながら、静かに宴の様子を見守っていた。

「・・・はぁー。何やってんだろなアイツ等」と呆れながら晴人は言う。

「ふふっ。でもそこが仁藤さんのいいところじゃないですか・・・」と真由。いつの間にか彼女もちゃっかりウィンナーを戴いていた。マヨネーズのかかっていないウィンナーを。

「え?真由ちゃん何? あんなケダモノなんかに惚れちゃってんの?」

「えっ? ちっ、違います!そんなんじゃありません・・・!」

真っ赤になって、真由は俯いた。そんな耳まで赤くしている少女を、白い鳥が軽く啄いて飛び回る。

「もっ、もう! からかわないでよガルーダ!」

やがて、冷やかすように飛び回るガルーダを、真っ赤になった真由が追いかけ始めた。朝焼けの照らす砂浜に、いくつもの足跡ができてゆく。

「やれやれ・・・」

晴人はドーナツをほおばりながら言った。

その言葉の反面、彼は安心していた。少女たちを財団Xから、そして絶望から救うことに成功した。何より、真由も昔に比べれば随分明るくなった。きっと、凛子ちゃんの優しさや仁藤の(バカみたいな)前向きさが彼女に生きる指針を与えたんだろう。

仲間達の幸せを静かに噛み締めていた晴人は、誰かが小さな声で自分を呼んでいることに気付いた。

「お、お兄さん魔法使いなのですか?」

恐る恐る電が尋ねる。

「あぁ。そうだよ。お近づきの印に、プレゼントだ」



『Conect,Please』



晴人は何処からかドーナツの袋を取り出し、その中にはいっていた四つのドーナツを電たちに与える。

「すごいのです! ありがとうございます!!」

「すごい・・・ハラショー!」

「ホントに魔法使いだったんだ!」

「これはさすがの私もびっくりだわ! レディーを驚かせるなんてすごいわね!」

晴人はおどけて、四人の少女達に丁重に頭を下げた。

「喜んでいただけて光栄です、お嬢様方」

まるで魔法のランプから呼び出された、忠実なランプの魔人のように。


ハードタービュラーを回収に現れた巨大戦闘車両・リボルギャリー。

空飛ぶバイクはダブルごとその中に格納される。さらに、先ほどハードタービュラーに避難してきた鳥達や火野映司もその中に入り込んでいた。映司は疲れ果てたのか、派手なパンツを枕にリボルギャリーの隅で静かに眠っていた。その体の上に、鳥達が寝床を求めて集まりだす。

自動操縦で砂浜を走るリボルギャリーの中で目を覚ましたフィリップは、素敵な貝殻を見つけた子供のような目線を鳥達に向けた。

「興味深い・・・。ウミネコにユリカモメにセグロカモメ。ウミウやモモイロペリカン。カモメ科の鳥が多いねぇ・・・」

「・・・なぁフィリップ、鳥の名前を教えてくれんのはいいんだけどよ」

「なんだい?」

「俺の頭の上のヤツ、何とかしてくれねぇか?」と翔太郎。

大きな白い鳥は、翔太郎の頭の上が気に入ったのか、変身を解除しても離れようとしない。

だがフィリップはそんな相棒の訴えなど無視して、

「興味深いねぇ・・・。この鳥はアホウドリだ。珍しい絶滅危惧種の鳥だよ!」などと言い出す。

「あ!? 誰がアホだって!?」

翔太郎は怒り出した。彼の怒りも何処吹く風。彼の頭の上で、アホウドリは静かに眠っていた。

「ったく、いつまでこんなん乗っけときゃいいんだよ・・・!」

「翔太郎、その鳥達も財団Xの被害者なんだ。彼らを守るのも、『大自然の使者』を受け継いだボク達の仕事だろ?」とフィリップ。

翔太郎はため息をついた。

彼の言うことも一理ある。この罪なき命を無碍に扱うことは、『仮面ライダー』としてやってはいけないというのもその通りだ。頭の上は重いが、仕方ないと諦めた。

「・・・ったく。事務所に帰るまでだからな・・・」

翔太郎は文句を言いつつも頭の上のアホウドリを優しく撫でてやった。その様子を見て、フィリップもまた微笑んだ。


明るく宴会を続ける少女達を見て、仮面ライダー1号・本郷猛は厳つい顔を緩ませ、静かに笑った。

そして、栄光の七人ライダー達は、それぞれのバイクに跨り、静かに去って行く。

戦いが終われば、もう自分達仮面ライダーが留まる必要はない。本郷もまた静かに立ち去ろうとしていると、フォーゼこと如月弦太朗が磯の岩陰である者達と話をしていることに気付いた。

「弦太朗くん、その子達は・・・?」

「おぅ一号先輩。こいつ等とも、たった今ダチになったところだ!」

小さな幼女のような深海棲艦と、傷ついた深海棲艦達の生き残りがそこにいた。その体はボロボロだった。

「弦太朗くん、ソイツらは・・・!」本郷が身構える。

「1号先輩! 俺を信じてくれ! こいつ等は俺と、二度と人を傷つけるような悪いことはしないって約束してくれたんだ! 戦う力ももうない! だから、アンタもこいつ等を、俺を信じてくれ! 頼む・・・!」

後輩の言葉を受け、本郷は黙って深海の怪物達を見つめた。

見た目こそ不気味な姿だが、その瞳に最早破壊衝動や邪念は見られなかった。

おそらく操り主である財団Xが滅び、戦う意思をなくしたのだろう。駆逐イ級達も、中間棲鬼も、皆怯えるように此方を見つめていた。

本郷はやや間を置いて、言葉を紡いだ。

「よかろう、弦太朗くんの言葉を信じよう・・・!」

「先輩・・・!」

嬉しそうに弦太朗が言う。深海棲艦達も安堵の表情を浮かべた。

「だが深海棲艦たちよ。もし再び人々を傷つけるようなことがあれば、我々は容赦はせん。それを忘れるな!」

一言だけ述べた後、本郷猛は黙って背を向けて歩き去って行った。

その背中こそが、海魔たちに赦しを与える、厳しくも優しい免罪符であった。

「ありがとうございますッ!1号先輩!!」

フォーゼは深々と頭を下げ、偉大な先輩へお辞儀した。それに倣って、深海棲艦達も頭を下げる。

「それじゃ、友だちのシルシだっ。へへっ・・・」

フォーゼは白く大きな手をほっぽちゃんに差し出した。ほっぽちゃんは恐る恐るその手を握り返す。

「トモダチ、シルシ・・・?」

「そう。なかよくなったヤツ同士のやる、青春のドッキングだ!」

ほっぽちゃんは大きな手を差し出され小さな手で握り締めた。その後、げんこつを優しく重ね合わせ、友だちのシルシを結ぶのだった。


タナカはずぶ濡れになった状態で目を覚ました。そこは砂浜だった。

波が彼を海岸まで運んでくれたのだ。皮肉にも、財団Xが踏みにじらんとしていた大自然の大いなる営みが彼の命を救ったのだった。

「う、うぅ・・・」

もう何もない存在となったタナカ。

そんな彼の元にひとりの少女が立ちはだかった。

金剛だった。

「Hei.テートク・・・」

「私を、殺すのか・・・?」とタナカ。

「No. One more chance...やり直しまショウ・・・。初心に返ってネ・・・」

金剛がそれに手を差し伸べる。

元提督は戸惑った。

「なぜ・・・お前は、俺に・・・?」

「貴方がどんな人でも、貴方が私達の産みのParentなことは変わりないデス・・・。大事にするのが人間でしょう・・・。Right?」

その言葉を聞き、タナカの中に巣食っていた闇がどこかにはじけて消えた。

「す、すまなかった・・・!」

タナカは、久々に涙を流した。彼は黙って金剛の手を握り、彼女に肩を貸してもらい、サイレンの鳴る方へと歩いて行った。



「待ちなさい仮面ライダー!」

「何だ君は・・・?」

サイクロン号に跨り走り去ろうとする本郷を、とある艦娘が呼び止めた。

「私は足柄。強いヤツと戦って、勝ちたいの! お願い、私と手合わせして!」

「・・・断る。俺の拳は人を守るだけに振るうものだ。君のような麗しき女性を傷つけるものではない」

そう言い残し、本郷猛はヘルメットを被り、バイクを駆って走り去った。

「あーっ! 逃げるの!? 待ちなさーい! 見てなさい!絶対アンタに追いついて、勝ってやるんだからー!」

足柄は必死で叫んで追いかけるが、超高速マシンのサイクロン号には到底追いつけない。やがて、サイクロン号は文字通り風の速さを得て地平線の彼方へと消えていった。

「俺に追いつく、か・・・」

1号は、本郷猛は、ヘルメットの奥底でふっと静かに笑った。自分でもわからないが、前向きに自分に挑もうとする足柄の気持ちが、なぜか嬉しかった。

朝焼けの中、砂塵を巻き上げて、伝説の英雄は何処かへと旅立っていった。



東京某所のとあるマンション。その部屋の中で、一日中望美はある男の帰りを待っていた。仕事は有給を取って休んだ。

あれから一晩明けて、もう夕方になるがまだ帰ってこない。

大丈夫、きっと睦月は帰ってくる。今までだってそうだったじゃない。

そう自分に言い聞かせるも、やはり不安は募るばかりだ。

その時だった。訪問者を知らせるチャイムが鳴る。

「睦月!」

望美はドアへと駆け寄る。

なぜだかわからないけど、彼だという確信があった。

「ただいま、望美」

やっぱりだった。女の勘に間違いはなかった。

望美は大喜びで、地と埃にまみれてボロボロになった傷だらけの恋人を、くちづけと抱擁で迎えた。



以上が、仮面ライダーと呼ばれた戦士達と財団Xの、知られざる戦いの記録である。

赤城なる艦娘曰く、彼女達は定めの軛とやらに囚われていたと言う。どうしようもない、抗いようもない運命に。

だが、仮面ライダーはその軛を見事に打ち破った。ジレンマに叫ぶ声が不可能を壊したのだ。

財団Xから解放された艦娘達がどのような未来を歩くか、私には断言できない。だが、彼女達の歩む未来には必ず悲しみが終わる場所が待っているだろう。

私はそう信じている。



それでは、最後に私のかけがえのない親友から希望を与えられた、ある艦娘によってこの本を締めくくっていただくことにしよう。


(文・白井虎太郎)


【BGM:クライマックスⅨ】https://youtu.be/E_H8Rcn_JoY?list=PL7JJNNkD1obE7QG710F13YQ19J6j0t7uC



最終章・たそがれ





その後、戦う必要がなくなった私達はそれぞれの道を歩むことになった。



「村雨さん!夜戦しようよ、夜戦!」

「また夜戦か・・・」

川内さんはゼクロスこと村雨さんに弟子入りした。

くのいちとして修行を極め、仮面ライダーのように陰ながら平和を守りたいと言っていた。村雨さんは少し困った顔をしながらも、彼女を受け入れたようだった。





「もっと腰入れて働かんか~!」

「す、すみません!那珂ちゃんもっと気合いれま~す!」

「おう、その調子だ。しっかりやれよ」

那珂ちゃんはアイドルとしての下積みのため、なぜか工事現場で働いている。ヤクザ顔の上司に厳しくも暖かく鍛えられているらしい。神通さんも一緒に汗を流して働いているとか。





「あらあら。また来てくれたの?如月、嬉しいわ~」

「お客さん、私の作った卵焼き・・・じゃなかった、たい焼き食べりゅ?」

「たこ焼きもウマイで!」

私や瑞鳳や龍驤さん、如月ちゃんや睦月ちゃんは、ハカランダといろはにほへと組でお世話になることになった。

看板娘が増えて了さんも大喜びしていた。

私は相変わらずたいやき名人アルティメットフォームの衣装ばかり着させられてるけど・・・

如月ちゃんは、このたい焼きの味で世界を甘く満たし平和にするという壮大な夢をもって頑張っている。





「提督・・・。私、貴方を待ってマース・・・。Forever...」

金剛さんは、どこかの島に探検に行ったらダイヤモンド鉱山を発見し、億万長者になってしまった。その財によって、元艦娘達を支援する組織を作るらしい。

今は牢獄の中にいる提督が罪を償い、また会える日を待ち続けるとも言っていた。どれだけ長くなるかはわからないけど、あの人はきっと待ち続けるんだろう。


「お団子100個、できました!」

「ハラショー・・・。悪くないね」

吹雪さんと響ちゃんは、謎のNPO組織に入ったらしい。そこが経営しているとあるお団子屋で、看板娘として働いていると聞いた。




「ちょっと瞬平、邪魔よ!輪島のおじちゃんがお仕事できないじゃない!」

「ひどいよ暁ちゃ~ん! ボクだってがんばってるのに・・・」

「大丈夫よ、瞬平!私を頼ってくれていいから!」

「電もがんばるのです!」

電ちゃんと雷ちゃん、そして暁ちゃんは、輪島さんという指輪職人の弟子入りをしたと聞いた。

「まったく。お前たちは本当に朝から騒がしいなぁ・・・」

輪島さんも『娘』を亡くしているらしく、彼女たちが住み着いて久々に明るい表情を取り戻したと、真由さんから伺っている。




『大井っちへ。しばらく旅に出ます。  北上』

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!! 北上さぁぁぁん!!!」

北上さんはどこかへ旅に出てしまった。最近は、サムズアップと爽やかな笑顔を見せる男の人と知り合いになったらしい。大井さんのところに写真が送られていた。ハカランダに大井さんが来て愚痴りに来ていた。

とは言え、睦月ちゃんたち曰く、大井さんもだいぶ丸くはなったらしい。



「比叡ちゃん、南米で目撃されたトカゲ型怪人の調査だが、頼めるかな?」

「はい! 気合!入れて!行ってきます!」

「あぁ、任せたよ」

大淀さんや夕張さん、そして比叡さんや霧島さんなどの多くの艦娘達は、橘さんの研究所で非常勤職員として働くと聞いた。橘さんは艦娘たちを普通の人間にするための研究を続けてゆくと聞いた。



「翔鶴姉、私疲れたよ~」

「こら瑞鶴。映司さんの足手まといになっちゃダメでしょ?」

「まぁまぁ。せっかくだし、ここで休憩しようよ!」

「ちょっと映司さん、パンツこっちに向けないでよ!?爆撃するわよ!」

「瑞鶴。映司さんのお召し物の何が悪いというの?」

「そうそう。明日のパンツと少しのお金があれば生きていけるんだし!」

「うわ~ん! 助けて加賀さ~ん!」

翔鶴さんと瑞鶴さんは映司さんのお仕事を手伝うことになった。

映司さんはある遺物を研究しつつ、内戦を止める活動をしているらしい。二人はそんな映司さんに尊敬の念を抱き、行動を共にするようになったという。たまにミーナさんとも協力して、人身売買組織から人を救うこともあるらしい。

それと、お手紙には「あの時助けてあげられなくて、ごめんね」と書いてあった。二人の優しい気持ちが嬉しかった。



長門さんや赤城さんや加賀さんは、何も言わずに深海棲艦たちと共にどこかへ旅立って行った。

図らずも定めの軛というものに踊らされてしまい、提督の操り人形となり無数の深海棲艦達を手にかけてしまった罪を償いたいと考えたらしい。今頃は、白夜の見える北国で静かに暮らしているのだろう。



「待て~!本郷猛! 私と勝負しなさ~い!」

「断ると言っているだろう」

足柄さんは、強くてかっこいい仮面ライダー1号に勝つため、修行の旅に出たらしい。タナカの洗脳によって合コンをさせられていた屈辱的な過去を振り切り、元の『飢えた狼』である自分を取り戻すためでもあると聞いた。

猛スピードを出すバイクに生身で追いつくことができたらしいけど、未だ挑戦を受けてはもらえないとか。


ある日、私は瑞鳳と一緒に手をつないで、買い物帰りの道を歩いていた。昼下がりの銀杏並木。枯葉があちこちに積もり、木漏れ日があちこちに降り注いでいた。少し冷たい風が吹いてるけど、瑞鳳が一緒なら寒くはなかった。

「あれ・・・?」

ふと、ベンチを見るとそこには若い長身の男性が座っていた。それは、私にとって忘れられない、見覚えのあるあの人だった。

「け、剣崎さん・・・!?」

彼がベンチに座り、こちらに微笑みかけていた。思わず瑞鳳を引っ張ったまま、そのベンチに駆け寄ってしまった。

でも、そこには誰もいなかった。



私は、なぜか彼の幻を見てしまっていた。





忘れられないのかな・・・。私も未練がましいね。



「祥鳳お姉ちゃん・・・? どうしたの?」

「ごめん。なんでもない・・・」

私は戸惑う瑞鳳の元に戻り、また一緒に歩き出した。




彼もきっとどこかで戦っているのだろう。果てしない灰色の砂丘に轍を作りながら、運命と。



だから私も歩み続ける。



いつかどこか、遠い場所で、あの人の笑顔にまた出会える気がするから。



私は瑞鳳に見えないように涙を拭い、少し早歩きで銀杏並木を歩いて行った。



剣崎さん。



貴方に、また会えるかな?



会えるよね。



きっと・・・



いつか、どこか、遠い場所で・・・。




あなたの笑顔に・・・





以上、オンドゥルこれくしょん総集編でした。



桃井先生をリスペクトして、必要なネタに解説も入れときます。



・宇宙京都大学⇒弦太朗と賢吾の進学先(小説フォーゼ参照)

・エリーヌ⇒フォーゼ本編でユウキに突っかかってきた女子。

・残金27円⇒剣本編46話を参照。

・おかゆ⇒剣14話と15話を参照。剣崎が始にふるまった食事。




ちなみに世界観は以下のような感じです。


昭和ライダー(フォーゼ2話、MEGAMAX)
(スカイとゼクロスはフォーゼ関連作品に出てませんが、RXの世界観も含めて考えれば繋がります)

RX(フォーゼ2話より)

真・仮面ライダー(ネット版)

クウガ(2話)

ブレイド(ネット版フォーゼ)

ダブル~ウィザードまで(冬映画での共演)

SS本編



なお、一応私の脳内では、この後『たそがれ』に続きますが、小説ブレイドの世界にはつながらないということになっています。
剣崎が守り抜いた世界が、簡単に滅びてほしくはないですから・・・

>>150

イメージ画像を忘れてました

瑞鳳ちゃんいませんが、だいたいこんな感じです
ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira084208.png

>>151
すみません、>>151>>149のイメージ画像でした

>>54
ありがとうございます、そう言っていただけると書いた甲斐がありました

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