【咲-saki-】安価とコンマでオリキャラ半荘2回だけ (362)

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             ,r─ 、 ≠ ¨ ̄ ̄ ̄ ̄¨¨ 丶 __
            ,r┤   }            \)⌒`ヽ
          /  ゝ _ ノ              \ 、 \
         ′     「   l   |   | ヽ ヽ    X x ヌ
            |     |l    j| }  |   |  j  ヽ   ぃ ヽヌ    タコス食べてたら
            |   ′ j|   从/ /}I  j|  }   ハ    ぃ  リ
            |   ′ 〃  孑天らリ ノノ ノ「乏らメ、 }  ぃ      何か書きたくて仕方なくなった
            | / //    |ィ爪示らヽ     イ示うヽル  ハ
        .ノxイ{l  !    |{ |i:::::℃|       !:::℃} ||   j| !
           |l  !  l刈 弋辷:ソ     弋zソ !| l| 八}      
           || jI jl ハ⊂⊃  r──‐v⊂⊃ 从ハリ ヽ     【このスレの進め方】
            .ノヽ八从乂> . _  ゝx‐'x ノ _ .≠   _         キャラメイク (大雑把に)
                 ≪.:.:.:.:ア二二ニフ"       つ ま ~    ↓
                    / ≫/⌒}   {⌒ヽ、            クライマックスバトル (実戦の中で残りの設定をまとめる)
                / /{ (  )    (    )}            ↓
                 〈    \ヽ/ー===ゝ=彡′           エピローグ (話をまとめる)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1437650007


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      _rァ'´ .................`ヽ
.    ∠ ,:'   )...............;......:.
   / /....i....../...................○⌒ヽ    まずは所属校から
   7..../.....∧::{ i..../i_.../}....{:::........ヘ
   レ::八...{f斧i ヾ:{´V /...八.......ト、i   ↓1 自由にどうぞ

    レ }:::ハ Vソ  ィ斧ミx/::::}/::::::::|`  
     {::::::{、  、_ ー' 7::::/::Vi::: |
     ⌒ >- ===<:::/レ レヘ:ノ  
        /ヾ=ニ三彡ヘ

         〈_,i Y´ 〈  〉
        / j |{   .Y´ト、 
       ト-クノ }    〉 i:::i.
        ,Y::/`ー‐'7::::{_j:::iト、
      〃 `r‐r-、:i:: ィ:::::::i| i

     /八::: 「 .|:::::|. ̄|:::::: i| |

.      {(  ` | |-、|  .|:::::/j ./
           辷j  ‘, :{⌒i/
             辷j

越谷

   ,. ‐ ''"´ ̄ ¨゙''ー、
>'′         `心‐、
○: : : : : : : : : : : : : : :: : :ヽ    埼玉代表、越谷女子に決定

; ; ; ; ; |: |: ::λ: :|..|..|.............}ミヾ
: : |/|/|/|/ |/|// }/}_彡ミヾソ

: : |  ◯     ◯' .|: : :ヽ::}   続いて、キャラの核になるようなキーワードを頼むじぇ
: : !  :::::::     :::::::: {:: ::/|/
:::!入.  rv- ..__   }: ::{ ′   タコスとか、東風の神とか

ヾヾゝ、_.!   /  ,ノ
゙`゙゙゙゙>‐≧=<‐'"´
 /:::::::\ィ=|:::::::\         ↓1~↓2
// ̄ミヾ\|:::::::/|

槓裏ドラ爆

おもちソムリエ

巨π

クロチャーの亜種か劣化か

             ____

         ....::-.;‐.;.;:::::::::::::::::::::;.;ヽ.、
       ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::\
      ./::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::,,-,,、:__;:::::\     槓裏ドラ爆
     /:::::::://:::/i:::::イ::::.::::::::. .,'   ヽー-:;ヽヽ
     |/|::::| |::./ |:::/ !:::::|:::: | ヽ、__,!::::::::::\::ヽ   おもちソムリエ
      |::::| |::| .|::| |:::/::::/:::::::::::| /::::::::::::::::ヽl

      \i人!  V |//:/:::::::::::::///|::::::::|ヽ:::l:l
       //  ○   ´|::::::::::::// :::i::::::::i l/ l   キャラは立ってそうだけど
      i/       /:::::::::::::´:::::::/::::::ノ::::::::,i

      .(   """  /::::::::::::::::/:::::'´´´:::::::l:/    確かにドラゴンロードと被ってるじぇ
      .|ヽ、△    /::::/:::::::::/:::::::::::::::::::::/:.i
      ヽ/| ヽ、_  '''´/ // /|::::::::::::,'::i/    まあそこらへんで始まってから考えるとして
        \,,iヽ ̄iー,/´ -‐、-‐´i':/ 
            /´  i′ ヽ           ↓3 年代
                              1.本編期 2.一年後 3.むしろ過去 4.その他

             _ト 、ノ}
            _二ゝ`   ´Ζ_
           ⌒> T l ー<⌒
         ,ィl l| |l l ||l l lヽ    くーろーちゃー……じゃな゛い゛!?

        ,イ|l||l l!l l|l | l |lハ

          !l|/ ,ノ´   `ヽ Ⅵl|
        :l{             }_|l|
       |{.ー( )    ( )‐'ト)}|
        ト }          爪lハ
         | l ト _ Τ ̄Τ  ィ<l|l∧    踏み台 ↓
          |x< } ト- ̄- 彡} | ハl}ハ
――――――{{{{}―――{{{{.}――――

   ,. ‐ ''"´ ̄ ¨゙''ー、
>'′         `心‐、
○: : : : : : : : : : : : : : :: : :ヽ    本編時の越谷……

; ; ; ; ; |: |: ::λ: :|..|..|.............}ミヾ
: : |/|/|/|/ |/|// }/}_彡ミヾソ これは勝てない

: : |  ◯     ◯' .|: : :ヽ::}
: : !  :::::::     :::::::: {:: ::/|/
:::!入.  rv- ..__   }: ::{ ′   最後に卓を囲うメンバー決めたら開始

ヾヾゝ、_.!   /  ,ノ
゙`゙゙゙゙>‐≧=<‐'"´        ↓1
 /:::::::\ィ=|:::::::\        1.本編2回戦、千里山劔谷阿知賀
// ̄ミヾ\|:::::::/|        2.部内レギュラー選考戦
                   3.全国個人戦

控え室は私物の無い簡素な一部屋。
滞在費は自費。昼食はコンビニ弁当。

こんな待遇も、今年で勝てばきっと変わる。

ギリギリの戦いを越えて、初めての二回戦進出。
今年の越谷は、いける――!


 ↓1 代わりに抜けたメンバー(=どこに出るか)
 1.新井ソフィア 先鋒
 2.浅見花子 次鋒
 3.水村史織 中堅
 4.宇津木玉子 副将
 5.八木原景子 大将


――そんな希望が、見る間に砕かれていく。

プラス収支で終わったのは先鋒のソフィア先輩だけ。
大将戦が回ってくる頃には、越谷の点は四万点台。

三位の阿知賀まで、約五万点の差。
二位に浮上して先に進むには、五万五千以上稼ぐ必要がある。

次鋒戦で負けたあと、誰が言うともなくみんな対戦校の牌譜を並べていた。
中堅戦で負けたあと、まだいけるって励まし合った。
副将戦で負けて、言葉が無くなった。

でも、まだ諦めない。

景子ちゃんから託された髪飾りを付ける。
ワカタケル大王の霊験あらたかな力がどういうのとかいう櫛……というか串が、ずしりと重かった。

↓1 埼玉で待ってる景子ちゃんとの思い出について
    単語一つでも、具体的な内容でも

戦犯


「お前は点数計算が出来ないから」

顧問の先生はそう言って、景子ちゃんをメンバーから外した。
実際、彼女は安上がりで対局を終わらせて自らの負けを確定させることがあった。

でも違うんだ。彼女はできないんじゃなくて、しないだけ。

――「他のこと考えると、目の前の一局に集中できないから」

そんなことを言って、インターハイ前夜の壮行部内戦でも相変わらず
彼女は南四局を自らの和了で終わらせて、二位で私たちを送り出した。

とても清々しい笑顔で。最高の和了りを見せつけるようにして。
それまで二位だった私に3900を当てて壮行試合を終わらせた。

正直、この点差をひっくり返すのは難しい。難しいと言うか、正直諦めたい。

でも、景子ちゃんなら絶対諦めない。

だから

「行ってくるよ――景子ちゃん」

控え室の扉をゆっくり閉める。私に対する声は聴こえなかった。
扉が閉まったあとも、誰も返事を返してくれなかった。


関係無い。周りのことは全部シャットアウト。

無駄の無い和了り、最高の牌譜を遺しにいくだけだ!


↓1~3 そろそろ名前決めよ? 入れたい漢字とか、名前候補とかください

蒼井葵

夏秋 春夏

梅見白子

しばらくかかりそうなのでタコスラーメンつくってきま

たかみー

と思ったら来てたじょ!?

実際このメンツはキツイよね。竜華は守りに入ってくれるけど、シズの支配が効くまでに追いつけんときつい


「まもなく大将戦……清水谷竜華と夏見葵(なつみまもる)が鎬を削る試合が予想されていましたが
方や千里山は大量リード、越谷は大量失点。この試合、劔谷と阿知賀の二位争いになりそうですね」

「その言い方はどうかいねぃ。越谷の大将は一回戦でも数え役満上がってるし。
名前の割に、ありゃ相当攻撃寄りのスタイルだ」



既に卓には三人。一番負けてるくせに、半ば蚊帳の外な点数の癖に、一番待たせた私のこと、どう思ってるんだろう。
誰も声をかけてこない。静かだ。

「残りは北……悪くない。一番偉い人は、一番入口から遠いところに座るもの」

何言ってるんだこいつ、とか思われてるんだろうな。
でも、勝てば関係無い。


   ――「葵の紋は徳川の紋。王者の証。つまり大王だよ葵ちゃん!」

よく分からない理屈で大王の髪飾りとやらを押し付けてきた景子ちゃんの表情を思い浮かべて。
大将戦開始のブザーと同時に、瞼を開く。


序盤

竜華  ↓1
穏乃  ↓2
安福莉子 ↓3
あおいちゃん ↓4 

1ほど死んでる 9ほど好調

そらっ

1

にゃー

頑張れ


莉子(また微妙なところ……鳴けばスピードで阿知賀を上回るけど、手が安くなる)

莉子(ここは自力で仕上げる! 三色メンタンピンまで見える好手牌だもん!)


                   「カン!」

瞬間、その場に風が吹き込んだ。
室内だというのに、はっきりと髪が揺れた。

莉子(なんかこれ、ヤバい。早アガリにするべきだったかな……っと?)

「チー!」

「チー!」

莉子(千里山、降りてればいいのに妙に際どいトコ切ってくると思ってたけど、これは)

竜華(気付いたようやな。安手で穏便に進めてもらえるなら、ちょこちょこ支援したるで)

穏乃(まずい、もう東場が終わるのに、一回も上がれてない)

穏乃(劔谷の人、さっきから鳴きまくりで速攻聴牌 点差はそんなに離れてないけど、速度で全然落ち着けない)

穏乃(憧みたいに、鳴きが上手いタイプなのかな……地区大会の牌譜と全然違う)



「これは、千里山が下家の安福選手を支援しているんでしょうか?」

「いやぁ、これは支援してるっていうか、リスクだけ押し付けて盾にしてるようにも見えるけどね~」

「盾、ですか? それは、誰に対しての?」

「まだ、わっかんね~。阿知賀も越谷も焼き鳥で、あとは千里山が一回ノミ手で流しただけだしね~」

「そうですね。まだ場が動いていない。序盤の小康状態といった様子です」


そして回ってきた親番。二位の劔谷までは六万点以上。
親番は一回たりとも無駄にできない。

でも、面前に拘ってたら速度で追いつけない。
連荘狙いで、とりあえず一回あがらなきゃ!


「カン!」



「夏見選手、イーピンを大明槓。これはどういうことなんでしょうか。
面前でリーチをかけにいく以外、役が見えない形からの明カンでしたが……っとここで赤ドラ含みの順子を崩したぁー!?」

「越谷の大将は、多少無理してでも嶺上牌を手牌に入れるんよね」


竜華(越谷の打点の軸は槓裏。新ドラが乗ったケースはそんなに多くないけど……)

竜華(越谷の風に新ドラが乗るのは、ちょっと怖いな。この局も早めに流してもらおうか)



「越谷女子、夏見選手。出来上がった面子を崩していく横で、自風暗刻のドラ3が完成しました。
順子を崩さずにそのまま手作りしていればドラ4聴牌の形でしたが……っとさらに面子を崩していくー!?
速度重視で嶺上牌を取りにいったのかと思いきや、これはトイトイ三暗刻を狙いに行っているのでしょうか……?」

「この点差だからねー。高い手つくろうとするのは普通じゃね。わっかんね~けど」



莉子(自摸アガリなら阿知賀との差はつかないから、とにかく振り込まないように)

穏乃(劔谷との差がじわじわ広がってる。上がらなきゃ……上がらなきゃ……上がらなきゃ……)

竜華(阿知賀がおしてきてる。そんなに高い手なんか?)

竜華(ここは降りとくか……)

穏乃(この8mを5mに取り替えて一盃口完成。リーチして裏が上手く乗れば跳満……カンドラがある分、可能性は高い)

穏乃(劔谷に直撃なら文句なく逆転……! いくっきゃない!)

「リーチ!」

「それカンです!」



「三暗刻を捨ててまたも明槓……しかも9s単騎から既に2枚切れている東地獄待ちに移行しました
どういうことなんですか三尋木プロ」

「せっかく引いた嶺上牌だから、持っときたいんじゃない? 分かんないけど」



「自摸。北トイトイドラ3。6000オール――!」

竜華(嶺上牌単騎待ちから直後の自摸)

竜華(これが浩子の言ってた王牌の導きか……)

竜華(嶺上で自模った牌を中心に組み立て直すと、結果的に手が綺麗にまとまって、さらにリーチかけてればカン裏はまず確実)

竜華(逆に他家が新ドラを意識した手に組み替えたりすると……)


「カン!」

穏乃(越谷の暗カンで対子に新ドラ乗ったぁ! これで、一気に大物手に……!)


↓1 前半戦終盤にかけて
 
竜華  ↓1  専守防衛で最低値5保障
穏乃  ↓2  補正-2
安福莉子 ↓3
あおいちゃん ↓4 補正+1 


そい

ほい

Yes

ふっ

シズが主人公補正か...

1~9って0はどうなるの?

     __
  oo´.   ヽo  そろそろタコス食べないと人の形を保てない
 ((ルf(ノノリ)))ル

   从リ゚ ヮ゚ノリ  ↓1 シズにいったい何が
    /j_丞i、   1~3:戦犯顔
.   (.(゚‐゚)つ)   4~6:回想シーン挟んで運命力up
     じ'ヲ    7~9:その山はもう登った

やーま

中華一番
タコスミート
みじん切りの玉葱
刻みチーズ
角切りトマト
サルサソース

付属の粉末スープを三分の一ほどお湯で溶き、クミンオレガノ塩胡椒を投入
スープを麺と混ぜ合わせてから他の具材を乗せてサルサソースをかける

味見もせずに適当につくったため、そんなに美味しくなかった

中華一番の粉末でなくコンソメを使えば美味しく作れたのに

                                              ,、、
                                           /:.:∧
                                           ,l:.:.:.|:.:ヽ、
                                         /.:.:.:./l:.:.:.:.:\
     __                              _,r '′:.,:.'.:.|:.:.:.:.:.:i:.`ー- 、__
ニヽ-'´:.:.:.:.`ー- 、__,,...-─¬ー- 、_        __    ,!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.: ー- :. -<:.:.:.\_      __
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:. :. :. :. :. :. :. :.       __,,.. .-‐ '''""~     ゙'''"      、w,,,      ゙''''"          、,,vノ
    __,,.. .-‐ '''""~     ゙''"                     wkv

 ――鷹に似ている。

 鷹は無駄に羽ばたかない。風を捉えて高みに立ち、あとは高度を活かして悠々と滞空する。
 獲物を捕まえるときも、急降下から一撃で仕留める。最短。最速。それで捕まえられる状況・相手だけを襲う。

 けど、夏見葵が毎局牌4個分の高度に飛び上がる必要があるなら――。

まもるちゃんが勝てる未来が見えない


「もう一つ、カン」

風が吹いた。
遥か上空の鋭い風。冷たい空気。

でも、山の風だ――。

耳をすませば、木の葉の擦れ合う音が聞こえてくるよう。
もっと集中するんだ。そうすれば分かる。周囲の地形、風の行く先。

相手が一切無駄なく、完成された形で襲ってくるなら
この王牌周辺の山を見ることは、相手の手牌を透かして見るのと同じ――!

「ポン!」

これで自摸順がずれる。自分の手は聴牌から遠のくけど……。

「ツモ。1300、2600」

いける。

今回は劔谷を手助けする形になって、二位との差を広げちゃったけど

次の風が来たら、越谷から直撃を取る――!

南入してからずっと、空気が淀んでいる。南三局、未だにカンできない。
清水谷竜華のベタ降り、生牌の出を減らしながら下家にチーさせて順子場を作る動きもあるけど。

それ以上に――。


莉子(手を作ってから嶺上で上がる噂の化け物と、嶺上を見てから手を作る夏見では速度に差がある)

莉子(役も符も考えないで最速聴牌だけを目指せば、聴牌速度ではまず負けない)

莉子(越谷に動きがあると千里山のヘルプが入るし、このまま安手で流しまくって二位通過する!)

莉子(阿知賀より劔谷に勝たせた方が準決勝が楽そうって見通しは不満だけど、それは次に戦うときに頑張ればいい話)

莉子(みんなが守ってくれた点棒、このまま二位を維持できなかったら嘘だもん)


「前半戦、終了~!!!」


千里山の清水谷竜華は、軽く伸びをしてから退室していった。
劔谷の安福莉子は、清水谷竜華の後を小走りで追いかけていって、何か囁いていた。
阿知賀のジャージの子は、目を瞑って微動だにしない。

結局、二位との差はほとんど縮まらなかった。というかちょっと広がった。
後半戦で役満でも上がらなければ、この点差は取り返せそうにない。

どうしよう。

景子ならそんなの気にせず、笑顔で打てるんだろうけど。

↓2
1.控え室戻ろう  2.困った時は回想シーン 3.ジャージの子に話しかけてみる 4.その他

3

    __
  /.:.:.:.:.:.:.:.\   
//..i..i.i...i...i..i...,.ヽ>、   ここから逆転できたら
i:.:.l、.:l>ヽハ!<レi:.:|:.:ヽ
V|:.:("「 ̄ ̄|"イ:.:|ノ"   爽ちゃんクラスの圧倒的エースだじょ
. "!、.:\、_ノノフ'"

  .  >':i:::::::i:Y
   (^^)、;;;;l:ノ)      ↓1 回想の方向性
    |`ヽニラ|      特定の誰かとの思い出、勝ってた時のイメージ、入学当初の記憶、とかそんなの
    |/   ヽ」

一度だけあがったことがある天和

「ねぇ葵ちゃん知ってるー? 徳川綱吉の善政は天和の治って言われてるんだって! 
読みは『てんほう』じゃなくて『てんな』だけど麻雀的になんだかわくわくするよね!」

「最初から出来上がってると、自力でやった感じがしないからどうなんだろう」

「生類憐みの令といえば鳥獣保護。特に百年の鷹天国時代が有名だよね!」

「全然有名じゃないよ?」

「空の王で、天の恵みたる和了だよ! もう葵ちゃんのためにあるような役だよね!」

「まったくわけがわからないよ? それに私、四槓子の方が好きだし……」



あの時はまた景子ちゃんの謎の歴史知識が飛んできたと思ったけど


「はぁ……配牌開いたら天和してないかな」

何言ってるんだろう私。


↓1 その場にいるシズちゃんの反応
1~3:無いよ
4~6:無言
7~9:できるかもね

「無いよ」

さらりと。あんまりにも当たり前のように言われてたものだから
それが自分に向けられた言葉なのが、最初分からなかった。

「重たい空気は雨の前触れ。もう空は晴れない。あるとしたら、嵐だけ」

阿知賀のジャージの子は、喋り終わった後はまた目を瞑っていた。
椅子の上で膝を抱え込んだ行儀の悪い座り方だったけど、なんだか妙に様になっていた。

「晴れる前に、終わらせる」


千里山と劔谷が戻ってきた。後半戦が始まる。

竜華  ↓1  専守防衛で最低値5保障
穏乃  ↓2  補正+2
安福莉子 ↓3
あおいちゃん ↓4

うし

そろそろまぜろよ

ここ

もうだめぽ

             ____

         ....::-.;‐.;.;:::::::::::::::::::::;.;ヽ.、
       ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::\
      ./::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::,,-,,、:__;:::::\    劔谷安定しすぎだじょ……
     /:::::::://:::/i:::::イ::::.::::::::. .,'   ヽー-:;ヽヽ
     |/|::::| |::./ |:::/ !:::::|:::: | ヽ、__,!::::::::::\::ヽ まったくめくる余地がないじょ

      |::::| |::| .|::| |:::/::::/:::::::::::| /::::::::::::::::ヽl

      \i人!  V |//:/:::::::::::::///|::::::::|ヽ:::l:l
       //  ○   ´|::::::::::::// :::i::::::::i l/ l
      i/       /:::::::::::::´:::::::/::::::ノ::::::::,i  ↓1 千里山に何が!

      .(   """  /::::::::::::::::/:::::'´´´:::::::l:/   1~3:控え室戻ったら怜ちゃんが倒れてた
      .|ヽ、△    /::::/:::::::::/:::::::::::::::::::::/:.i   4~6:劔谷意外と強いし倒しておいた方がいいかも
      ヽ/| ヽ、_  '''´/ // /|::::::::::::,'::i/   7~9:この面子はもう見切った
        \,,iヽ ̄iー,/´ -‐、-‐´i':/
            /´  i′ ヽ

「後半戦東一局、いきなり千里山が劔谷から満貫の直撃を持っていったぁー!」

「前局の順子場の感覚に周りが囚われてる中、一人だけかろやかに手作りしてたねー」

「これまで千里山と劔谷は協力体制にあるように見えましたが……」

「だからこそ無防備なとこを打ち取れたんだろうね。千里山の大将は中々良い性格してるねぃ」




竜華(効率だけ見た鳴きと、一直線な手作り。一回目の成功は当たり前や)

竜華(問題はここから先。全神経を集中させて、劔谷の実力を測る)




「おっ、竜華本気モードやん」

「あれは体力消耗が激しいから、余裕がある局では温存しとくようにいっとんたんやけどなあ」

「点数の差は大きいけど、実力の差はそうでもないって見てるんかもなあ」

竜華(ここからが本気の劔谷)

莉子(千里山の考えてることは分かる。勝者の余裕、阿知賀とうちのどっちが弱いか測ってる)

莉子(でも、ここで私がもう一度大きい手を振り込んだら、阿知賀の二位抜けが濃厚)

莉子(恐らく動きを見るだけで、私から上がろうとはしないはず)

莉子(なら、極力自然な動きで、あえて千里山の当たり牌を出してみせる……! これが最善手)



「カン」

竜華(越谷……やない!? 阿知賀がカン!? さっきの劔谷の振込みでほぼ横並びやから、無理に打点を上げる必要は無いのに)

夏見(新ドラが乗った。裏ドラも多分乗った。でも、この感じ……)

竜華(越谷が手を曲げてきてる。阿知賀の狙いは今一読めないけど、越谷はそれが見えとる)

竜華(なら越谷の動きを通して、阿知賀の手を予想すればいい)



莉子(千里山の捨て牌から手が読めん……というか急に流れが変わった)

莉子(でもまあそれはそれでよし! 分かんないなら分かんないまま打つ。千里山を欺くのと、本当に迷走するのと、大差ないよね)

莉子(えい! ここー!)


「ロン。タンヤオドラ1」




「阿知賀が劔谷から上がりました。でもこれ、普通はリーチをかける手じゃないですか? 待ちも悪くないですし」

「そういう気分だったんじゃないかな~」

「えぇ……気分ですか?」

「女心と秋の空だからねぃ」

莉子(振り込んで三位転落……でもさっきの上がり方だと、やっぱり同席したくないと感じるのは阿知賀の方になるはず)

莉子(ポジションは悪くない。千里山が阿知賀を警戒してる間に、隙を見つけて上がる。二位奪還。いける。いける……よね?)



竜華(今の局、阿知賀の打ち筋が空寒いもんを感じた……)

竜華(カン一つで場全体をかき乱してくなんて、越谷より性質悪いで)


「さあ、越谷女子の夏見選手、残る親番はこれを含めて二回のみ。大きい和了りが欲しいところです」

「二位の阿知賀に役満直撃させても、三位の劔谷が上がるだけかー 苦しいね」


後半戦 中盤
竜華  ↓1  集中補正+2
穏乃  ↓2  山補正+3
安福莉子 ↓3
葵ちゃん ↓4 嵐の前兆:6以上で+2 5以下で-2

おまかせあれ!

山強くね

さて

     __
  oo´.   ヽo
 ((ルf(ノノリ)))ル 私は長編が苦手なんだ 集中力がもたなくなる

   从リ゚ ヮ゚ノリ
    /j_丞i、   寝る前に完結させられなければ……きっとエタってしまう
.   (.(゚‐゚)つ)
     じ'ヲ    というわけで急ごう

「高鴨穏乃選手、さきほどのカンは上手くいったものの、その後は無駄なカンが目立ちますね」

「はてさて本当に無駄なのかね」

「どういう意味ですか」

「まだわっかんねー」




――阿知賀が嶺上牌を持っていくのは癪だけど、王牌から新ドラが出てくることで起きる状況変化は、基本的に私の助けになる
嶺上牌をツモ切りしてくれれば、その牌を目印に手を作っていけるし、何度か小さい上がりができた。
阿知賀が援護してくれてる……?

でも、そこまでだ。三連荘して、点棒の稼ぎは一万に届かない程度。全然足りない。

劔谷の親番が軽く流れて、南入。

さっきからずっと心臓が痛い。なんか手が震えてきた。
牌を開けたあと、目の前がぐらぐらしてくる。

常識的に考えてもう勝てない。そんな事実がじわじわと心を染めてくる。
だって次で地和を上がっても、まだ足りない。差は四万以上。


こんな展開になるなら、やっぱり景子ちゃんに譲ってれば――。

↓1 最後に
1~3:もう麻雀やめるー!
4~6:お疲れ様でした
7~9:あるぇー?

南四局。劔谷が阿知賀に僅かに後れを取る形で、劔谷のラス親。
越谷は、敗退が決まっていた。

「どうしたん?」

決まっていたのに。なんでここで。
私は天和が欲しいって思ってたのに。

(地和できてる……見間違いじゃないよね……四面子一雀頭……ある……)

上がると阿知賀が二位で試合終了。
でも上がらなくても、もう勝ち目なんて無い。

↓1 どうすんでしょこれ
1.聴牌して流局しまくる方向で
2.もうゴールしてもいいよね
3.その他

かなちゃん奇跡の逆転勝利だし!

勝つための役満放棄は格好いいよね

「違う……」

景子ちゃんだったら満面の笑みで和了ったんだろうけど、ここにいるのは私。
私の麻雀はそういうものじゃない。

王道。向かうべきたった一つの正解があるって信じてる。それを探すのが麻雀という競技だと思ってる。
進むことも無く、たまたま出てきた奇跡に勝負を左右されるのは嫌だと、そう言ったのは自分だった。

「切りました」


私の力は場の支配系じゃない。でも、阿知賀がヒントをくれた。
自分が先に進むためではなく、周りをかき乱す動き。道を照らす光じゃなく、目を眩ませる閃光。

「カン」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
―――――――――――



――epilogue――

大将戦が回ってきた段階で五万点差。夏見さんもこんな気分だったのかな。
片岡優希の東一局八連荘、渋谷尭深のオーラス親番役満三連打――ここまで跳んでないだけでも奇跡みたいなもの。

「もいっこ、カン」

でも、戦えてる。
山に吹く風。手の行く先がなんとなく見える。二回戦での実戦練習が効いてる。
狭い道での強風は要注意だけど……風が吹いてる間は視界明瞭。霧に迷うことはない。

夏見さんと違って最初から高いところに立っているのが怖いけど、いつも山の最奥にいるから見失う心配が無いのはちょっとプラス。


嶺上開花は槍槓でしか止められないけど、手を進めるために引き入れる嶺上牌に対しては待ちを読んでいける。
大星さんが頑なにダブリー暗カンを決めていくのもあって、流局も狙っていける。

なんとか耐えて、登り切りたい。


「阿知賀のカンで四槓散了、またも流局だー! どうなってるんだ、この試合……!」

この人の山は険しいけど――綺麗。美しい配置。カン材を完璧にコントロールしてる。
そして何より、その山頂に咲いている一輪の花を、もっと近くで見てみたい。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―




 
滞在費が馬鹿にならないので、二回戦に負けた時点で越谷は早々に東京を去った。
そうして今、景子ちゃんの家に集まってみんなで決勝戦を見ている。



「これが葵ちゃんを涙目にした人かー」

「な、泣いてないです」

「いやいやー、最後泣いてたってソフィアが言ってたよー」 「嘘です」



景子ちゃんは笑っているけど、私はまだ素直に笑えない。
謝りたい。聞いてみたい。私の代わりに景子ちゃんが出ていたら――そう何度も思ってしまう。

「ねぇ」 「なぁにー?」

柔らかい。あったかい。でも頬をくっつけてくると、景子ちゃんの無駄に大きな髪飾りが当たってあーうー。
こんな時間が大好きだった。ずっと続けばいいと思ってた。

――これを聞いてしまったら、もう関係が壊れてしまうかもしれない。

でも今言えなかったら、きっと私は一生景子ちゃんと目を合わせられなくなる。



「決まったー! インターハイ団体戦、今年の王者は――」


私が口に出した言葉は試合のクライマックスの歓声にかき消されてしまった。

でも、どうして伝わったんだろう。

「私はほら。状況に関わらず目の前のことを楽しむ主義だから。
周りがどうとか、自分のポジションとか、関係無く楽しかったよ」

「とっても楽しかったから。だから、そんな、何で、泣いて」

「まもちゃんやっぱり泣き虫なんだから――」




                                  「カン!」

すごい良かったよ〜
越谷で、ここまでできるのはすごいと思う。
(ifとかもう一回作り直してやってももええんやで)

面白かったからまたやってほしい

                       ______
             ,r─ 、 ≠ ¨ ̄ ̄ ̄ ̄¨¨ 丶 __         
            ,r┤   }            \)⌒`ヽ
          /  ゝ _ ノ              \ 、 \
         ′     「   l   |   | ヽ ヽ    X x ヌ     二回目ー
            |     |l    j| }  |   |  j  ヽ   ぃ ヽヌ
            |   ′ j|   从/ /}I  j|  }   ハ    ぃ  リ     
            |   ′ 〃  孑天らリ ノノ ノ「乏らメ、 }  ぃ
            | / //    |ィ爪示らヽ     イ示うヽル  ハ       ↓1 所属校
        .ノxイ{l  !    |{ |i:::::℃|       !:::℃} ||   j| !
           |l  !  l刈 弋辷:ソ     弋zソ !| l| 八}
           || jI jl ハ⊂⊃  r──‐v⊂⊃ 从ハリ ヽ       なんでもどんと来いだじょ!
            .ノヽ八从乂> . _  ゝx‐'x ノ _ .≠   _
                 ≪.:.:.:.:ア二二ニフ"       つ ま ~
                    / ≫/⌒}   {⌒ヽ、
                / /{ (  )    (    )}
                 〈    \ヽ/ー===ゝ=彡′

晩生

           ,. : : ' ¨ ̄ ¨': ‐- 、
         _,/ : : : : : : : : : : : : : : : :\
   x‐―‐(./: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.\
  /:./: : :/:/: : /: :/ : : : : : : : : : : : : :.ヽ: : : :ハ
 ,' /: :/ :/:/: : /: :/ : / :i: ! : !: : :!: : : : :ハf⌒Y⌒)      奈良県、晩成高校

 !,': :/ : ,' : : :/_」⊥、:! :.| :! : !: : :! : : !: : :.ト--ヘ⌒\

  !:/| : :.|:.!: :イハハ: !: ! :.!: !:斗--!、 : |: : : !: : : !:ヽ.\\   相変わらず容赦ない安価、嫌いじゃない
  { i:! : N\| xぅトN ヾヾ| 从从/ メ : : :|: : : !: :! !: ハ )
.   从: :! }: ハ〈.ん::i}     z=ミ、 |: : :.i: : :,' : | |: : :!
    ヽ|/: : :! v少         .....  !: : ,': :./: :.,' ,': :./
    イ !:fヽ.! :::::  '     ::::: ,': :.厶イ: : / 厶ィ'     次、キャラ設定 単語だけでも、文章でも、自由に

     乂 |. }:.ゝ、   v フ    /: :/: :/: :./
      _|. Vリ/ > 、     ,. イ仏厶仏イ         ↓1~↓2 
     /ヽヽV 厶r:::个ー'^ー'"⌒}―- 、__
    { \〉J }::::::::::∧ r‐x┐ ,|::::::::::::::::`:7

    ヽ`ー'  ノ::::::::::::::::\ヾ!ト'  !:::::::::::::::::∧         宇宙タコス化とか、点数計算できから先鋒、とか
.    /ゝ―:彳{::::::::::::::::::::::ヽい〉 |:::::::::::::::/ ハ
    |::::::::::::::人\ー― - 、::::\/::::::,. イ / |
    |`ー―'  〉 !\: : : : : :>-r<:./| /   !

奈良の王者と並んで称される昨年の個人戦にも出たダブルエース

ピンチの時ほど不敵に笑う

           ┃┃┃
        .....::┃┃┃┃      ちょっと人がいないくらいじゃめげないじぇ……
  ...........::::_,ィ´ ̄┃┃┃┃::.........
 :::⌒>(_/. . . .:.::┃┃: : (⌒)<⌒:::
  :::/: : /: : : : : : : : : : : : : : :ヽ: :ヽ:::  とりあえず設定決めてこ
  ::{: : /: : : : : : : : : : : : :.,ィ: }ノ: : リ:::
  ::ヽィ{: : : |: : : : :/: : : : :リ: :|ムィ:::
     ::ヽリレ====、:_:_:/゙}::リ:::::::::
     :://___//´ヽー.彡:′:::::    ↓1 舞台

     ::/ ̄ ̄ ̄≧、_〉:::::::::       1.県予選一回戦
     ::}======〈´〉:::::::::::::::.......     2.阿知賀壮行試合
    ::/ / / l\尤/三三二∋:::::::   3.全国個人戦
      ̄ ̄ ̄ ̄::::::::::::::::::::::::::::::::     4.その他

3

.    // : : :/: ::/: /: /!: ::!: :.! : :!:.ヽ :ヾヽ: :∨
  ///: :/: :/ |: |: /|: | |: ::ト: :|_}: |: :}: :} } : }: ミヾ\
 ///:/: :/: : {: イナ7ヾ、{ ヽ {\!:.}/ト/// !: :.|: :.|: :! リ
 ´  {: {: : {:ヾ: ∨ , - 、` ヽ イ==〈ノ///: 丿./::/   わぁい 人増えてきたー

   ',人::|ヾ!\|彳f::沁     f::沁冫 //イ/::/
     \: : :∧ 辷丿 .    辷丿 /ノ: :-=イ
       {: :∨、', ::::::: ___ ::::::. /:゙,': ::リ: ノ      ↓1~↓3 全国個人戦、卓を囲う面子
.       \レ\.'、. _,,〉   / _ノ: /! : :レ゙       
         \人゙「 彡ゝ- ゙<、..///
       /::::: ゙゙゙̄.}  ィ'へ^^!゙ ̄`゙゙ヽ

        ∧\ へ/  ノミ゙ }´::// : ',
      ,'  ∨\ \∧,.、 .|:::.// /゙}',

エイスリン

これは個人戦じゃ半荘二回にならないから勝ち上がればもう一回になる可能性が

エイスリンは留学生だから無理だぞ!

照エイスリン和なら誰もついていけない速度が出せた

     __
  oo´.   ヽo  ↓1 
 ((ルf(ノノリ)))ル 1.デュエリストが言ってた 留学生は個人戦出れないって

   从リ゚ ヮ゚ノリ  2.エイスリンに日本国籍が無いとは限らな……
    /j_丞i、
.   (.(゚‐゚)つ)
     じ'ヲ

2

sageような

   ,. ‐ ''"´ ̄ ¨゙''ー、
>'′         `心‐、
○: : : : : : : : : : : : : : :: : :ヽ     全国個人戦 てるー 和  エイスリン

; ; ; ; ; |: |: ::λ: :|..|..|.............}ミヾ
: : |/|/|/|/ |/|// }/}_彡ミヾソ

: : |  ◯     ◯' .|: : :ヽ::}
: : !  :::::::     :::::::: {:: ::/|/   
:::!入.  rv- ..__   }: ::{ ′

ヾヾゝ、_.!   /  ,ノ        最後に、主人公ちゃんの名前に突っこみたい漢字とか自由にどうぞ
゙`゙゙゙゙>‐≧=<‐'"´
 /:::::::\ィ=|:::::::\
// ̄ミヾ\|:::::::/|

柘榴

命刻

狂三


前半が終わって昼休み。やえと合流してから食べようと思っていたのだけど
いくら会場を彷徨っても一向にやえが見つからない。
やえの特徴的な片ドリルを見逃すことは無いだろうと高をくくっていたが、甘かった。

いい加減スマホを持たないと生きていけない時代なのかな、と
そう真剣に反省するのは、今年に入って……そろそろ両手でも数えきれない回数になる気がする。

コンビニで温めてもらったお昼ごはんが冷めていくのが悲しいし、そろそろ諦めて一人で食べてしまった方がいいかもしれない。

↓1
1.誰かと交流 2.全力で小走先輩さがそ 3.困ったら回想 4.ほか

1
去年個人で知り合った憩と

「ひとりー?」

最初、自分に話しかけてきていることに気付かなかった。
ぼーっと見ながら、荒川さんは今年もナース服なんだなーとか思ってた。

「大山椒魚みたいな顔で止まって、どうしたんやろ?」

山椒魚……? と気になって荒川さんの視線の先を追う。

……

……

「私?」

「よだれは拭いた方がいいよー」

三箇牧からの個人全国に進んだのは荒川さんだけ。
周りを見ると、同じ高校や知り合いと2,3人のグループを作っているところが多くて
自分も知り合いを探しているところに、私を見かけたらしい。

「私のこと、よく覚えてましたね。私は荒川さんの下の名前が思い出せなくて悩んでるのに……」

「打ち方に特徴がある人は、そうそう忘れないからねー」

「そんなこと言って、単に名前が面白い人ってだけで覚えてません?」

「まあ、それもあるかもですーぅ」

荒川さんが近い。何故か私にくっついてくる。

カレーうどんの汁がそっちに飛んでしまうかと戦々恐々としてしまう。
パリッとして真っ白けなナース服を万一カレーうどんで汚してしまったらと思うと怖くて怖くて。
もし彼女が怒ったら、麻雀打ってる時みたいに笑顔で圧力をかけてくるんだろうか。

ゆっくり、落ち着いて食べようと思う心とは裏腹に、震える箸先からうどんが落ちて汁が小さく跳ねた。

「うひゃうっ……せ、せーふ!」

「せーふじゃないよー」

机に飛んだカレースープを荒川さんがティッシュで拭いてくれている。
いえ、セーフ。私的にはセーフです。

「なんか緊張してますー? ウチも後半は、いきなり宮永咲と当たるからドキドキで」

「ああ、こっちは宮永姉が……あ、でも今緊張してるのはカレーうどんを綺麗に食べ切れるかについてです」

「柘榴ちゃんは何してる時も楽しそうで、見ててこっちも楽しいですーぅ」

いやだからくっついて来ないでー。カレーが! カレーうどんが!

「あーうー……あーうーうー」

「かーわええーなー」

成すがままに撫でられている。ナース服が少しひんやりとしていて、カレーうどんで温まってきた身体に気持ちいい。

気持ちいいけどつらい。口の中に入れたうどんが熱い。レンジでチンしたときに汁がダマになったらしき部分がめっちゃ熱い。
はふはふしたい。水飲みたい。でも今口を開いたら危ない気がする。

「うー……」

――――

 ――――


「ほな、互いに頑張りましょーぅ」

「おうどんきれいにがんばりました」


「宮永姉妹と当たるってことは、二人とも成績は上位層と思ってよさそうです。
後半戦、柘榴ちゃんと当たるかもしれませんねー」

「成績?」

「対戦の組み合わせには、それまでのスコアが考慮されているらしいから
後半戦で優勝候補と当たったってことは、それまでの成績は良い方ってことですよーぅ」

「へぇー。そーなのかー」

「さて、そろそろ後半戦ーいってきますわ-」

荒川さんと別れた流れのまま対局室に。少し早すぎるんじゃないかと思ったけど、卓には既に2人も着いていた。

「早い……みんなぼっち勢なのかな」

また余計なことを口に出してしまった、と思ってると、外国人が凄い勢いでボードに何か書き出した。

「ん!」

「ぼっちじゃないよー……? って言う割にこの女の人一人しか描いてないし
これはまたなかなか哲学的な……」

「~!」

ペンギンを抱きながら瞑想するおっぱい。驚きの速度で集合絵に描き変えていく外国人。
そして、まだこの場に現れていないインターハイ最強格の魔物。

個性的な人たちの間に放り込まれて肩身が狭い。


宮永照が部屋に入ってくる。
直接見ずとも分かる。足音が無くても、こんなもの誰だって気付く。

去年の個人戦で当たった時は、サイコロを振る前から完全に場が呑まれていた。
けれど今回は違う。

外国人はマイペースにお絵かき中。
ペンギンおっぱいは微動だにしない。少し動くだけで揺れそうなのに、静止画みたいに不動。

二人とも、宮永照を前にしてまったく動揺してない。

私はと言えば、思いっきり動揺してる。
心拍数上がりまくり。カレーうどん吐きそう。
二種スパイスで自由に辛さ調節・味の種類は無限大だからってあんな重いもの食べるんじゃなかった。


ああ、始まる。始まっちゃう。

東風戦 
のどっち  ↓1 安定:最低値4保証
てるー   ↓2 一局目:-2
エイスリン ↓3 理想:最低値4保証
柘榴     ↓4

それ

はい

e

「小食アピールをしようとしてお弁当を控えめに頼むも
食べ終わってからお腹が鳴り、コンビニ行って何か買い足そうか迷ってるうちに
試合が始まってしまった空腹の小鍛治プロ! はたして長い後半戦の間、間食を我慢できるのでしょうかー!?」

「あ……えーと、それは、その……」

「後半戦、小鍛治プロが選んだのはこの試合! 団体戦二位! 昨年優勝! ご存じ宮永照だー!
個人戦では他家に何もさせずに一人で上がり続けてトビ終了するから実況がテキトーで済んで楽だぞ」

「そんなことないよ。見どころの多い打ち筋だから話すことは多いし、
他にも期待の選手が揃ってるからワンサイドゲームになるとは考えづらいと思うけど」

「インターミドル覇者、原村選手ですか?」

「それもあるけど……東一局は動かない宮永選手、後半追い上げる刻三選手、落ち着いた試合を作る原村選手ですから
東一局、彼女が自由に打てるとなれば、たぶん……」

――

「八巡目ではドラのみ聴牌だった手が、一巡ごとに点数を上げていきます!」

「タンヤオピンフにドラ含みの一盃口、赤を受け入れて、満を持してリーチ。
聴牌形を保ったまま、綺麗に手替わりしていったね」

「小鍛治プロの予想的中、完全に東一局はエイスリン・ウィッシュアートが速さ打点共に他を圧倒しています」

「赤ウー入れてウーソー切りリーチは露骨すぎて、一面子開けて見せるようなリーチ宣言になってる上
字牌処理順でピンフ狙いが分かりやすいところもあるから、振込には期待できないけどね」

「空腹の小鍛治プロ、普段の三割増しで厳しい!」



「ツモ! 4000、8000!」


何食わぬ顔で8000点差し出すペンギンさん、メンタル強い。
私は4000点でもなんか手が振るえてきたよ……。
トップまでいきなり2万点差。東風での挽回は絶望的。

それに今の一局、手を進めながら流れを切る良い鳴きを入れられたと思ったのに
まったく流れがブレてなかった。

ペンギンさんは常に超早く切ってくるし、お絵かきさんは常に一定ペースだし、宮永照は上がる気無さそうだったし
一人だけ引いてきた牌に一喜一憂して、悩みながら切り出している私は、場違いな感が拭えない。

周りはみんな結果が分かってるのに、一人だけそれを知らずに勝てない戦いに必死になってたんじゃないかと
なんだかとても心細くなる。 図太く行こうと思ってうどん食べたのに!


のどっち  ↓1 -1
てるー   ↓2 
エイスリン ↓3 -2
柘榴     ↓4 -1

へい

うぃ

前回は負けたから勝ちたいねぃま

そいや

やばいかもと思ったけどピンチになればめっぽう強そうだし
もしかしてこれ勝手に照と和が落ちて棚ぼた2位いけるで

大天使エイスリン

「宮永照の親番、エイスリン選手と刻三選手は親の連荘を警戒して、守備的な打ち方になってますね」

「逆に原村選手は、鳴ける牌を落としていっているようにも見えますね
この点差ですから、宮永選手が普段通りの安手で連荘するなら、その方が逆転のチャンスが広がるということでしょうか」

「発想はそれで合ってるだろうけど、『宮永照だから』っていうのは視野に入ってないんじゃないかな」

「と、いうと?」

「その理由なら一打目から別の牌を切るはずだから。
多分純粋に宮永選手の捨て牌だけを見て安めの早手系と判断したんだと思うよ」




「ロン。發のみ」


「東二局四本場、宮永選手またも高速聴牌。しかしこれまでの戦績からすると意外なほど打点が低い!
翻数が伸びないまま符で打点を小さく上げていく形は、団体戦決勝を彷彿とさせてます!」

「原村選手の執拗な低め誘導が効いてますね。前局では三色の付かない低め差し込みをスルーして流局。
四本場で二翻手というのは宮永選手には異例の低打点です」

「協力しているようでいて、その実まったく手助けになってない……?
この前ケーキを焼いたときのすこやんみたいですね」

「あれはいきなりレベル高すぎるものに挑戦させられたから」

「計量作業にレベルの上下とかあるんですかねー……?」


――――


 「なんじゃ? わしのサインも欲しいんか? ほれ」

彼女は突然出てきて、突然紙とペンを渡してきた。

その前に黒くてでっかいのが和にサインを求めてきていたのもあって
てっきり自分にもサインが求められているのだと思った。

店には、来店したプロに書いてもらったサインが並んでいる。
それを見て育ってきたせいか、小学時代からノートの隅でサインを考えていた覚えがある。

 「気に入らなかったんかいのぅ……」

けれど渾身のサインを見せると、エイスリン・ウィッシュアートは困ったように笑った。 

「ワラウ」「ナク」「ウレシイ」「イタイ」「アタタカイ」「シアワセ」

まるで意味が分からないまま、豊音ちゃん百面相漫画が展開される。
本当に100種類くらい書いたんじゃないかと思った頃、ようやく会話が一歩進んだ。

「ヒョウジョウ! ヒョウジョウ! ソレ! オシエテ!」

これまで連呼していた単語は、表情の種類を指していたらしい。

「どこで聞いてきたんかいのう。そういうこと言うと和が噛み付いてくるけえ
部長くらいにしか言うてなかったと思うんじゃが」

即興でボードに簡単な牌譜を書いて、タノシイ?タノシイ?と聞いてくる。
そもそも牌譜じゃ自分にも見えない。顔ってのは卓に現れるものだと言うと
エイスリンはまた困ったように笑っていた。


「メ、ハナ、クチ、ドコー?」

そんな外形だけ書いて牌の区別のつかない絵を見せられても、教えようが無い。

主人公がエイスリンやこれw
奈良での回想に入れればええんやけど


「コレガ メ。カクニン。ヨウスミ」

「ココ、クチ。センゲン。キメウチ」

「アッテル? ワラッテル?」

まったく噛み合わない禅問答みたいな会話を経て
彼女は急に納得したと言って、その場で牌を並べて
これが眼だとか、こういう形は陰影がはっきりしてるとか言い出して

満面の笑みで、そういう解釈で合っているかと聞いてきた。
正直、よく分からん。麻雀してて筆圧とかいう概念関係ないじゃろ。

けど――。

「ああ、いい笑顔じゃ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
――――――――――― 

「ロン、5200――!」

「エイスリン・ウィッシュアート、宮永照から直撃だー!」

一局目に確認した時点で、宮永照はエイスリン・ウィッシュアートの能力を把握できている。

理想の試合展開、勝利への道筋を描き出すこと。
その過程において、いくつかの打牌にはっきりした意志を持たせ、卓全体で一枚絵を完成させること。


それを読みとっても、なお能力を回避できなかったということは、つまり。

(私が彼女の絵を予測して取った選択それ自体が、既に書き込まれていたものだということ)

牌の流れだけでなく、打ち手の精神にまで干渉する支配力。

(合わせ鏡……いや、そもそも私の鏡に映っていたもの自体が、貴女の絵に過ぎなかった?)



左手に力を込める。

使うか?

いや――この相手は確実に二日目に残ってくる。

なら、明日勝つために、今は静かに見に徹する。今日はあなたの美術館の客でいてあげる。


のどっち  ↓1 安定:最低値4保証
てるー   ↓2 観察特化:-3
エイスリン ↓3 似顔絵:+4
柘榴     ↓4 逆境:3以下なら9扱い

ふぅ

モアイ

大天使!大天使!

大天使

ふん

多分まだラス親だし直撃は一度も受けてないから行けるか?

「さらに勢いに乗ったエイスリン選手が連荘して一本場、最下位の原村選手との点差はおよそ三万五千!
インターミドル、インターハイの優勝経験者の打つ卓で、今年初出場の選手がここまで勝つと誰が想像できたでしょうかー!?」

「ちょっと初心者っぽいっていうか、たまに不思議な打ち方をするんだよね。
勝ってる時は、逆にこういう部分が対応し辛くて、打ち慣れてる人ほど困惑するものだよ」

「小鍛治プロ、ただのビギナーズラックだと酷評! 同卓の全員にまとめて超!上から目線。若い子には容赦ありません」

「え、いや、そんなつもりじゃなくて。私もそういう事を言われたことがあって……」

「イラッとしたからその時は実力で分からせてやったぜHAHAHA-」

「ドキッとしたけどイラッとしてなんか無いよ!? あの試合のことは、今でも記憶に残って――」

「小鍛治プロが昔話をしてる間に、原村選手、トップから直取り。
すこやんと違って、勝っても表情が変わりません。さすがインターミドル覇者、傲りも慢心もないぞっ」

「さも私が傲りと慢心の化身みたいな言い方やめてよぅ……」

(観察に徹した甲斐があった。この一局は大きい)

(この回、エイスリンの能力は確かに発動していた。 発動した上で、原村和がそれを打ち破っていった)



(配牌後、一打目で考え込み、あらゆるパターンを想定する。一巡目からの未来予想図)

(自分で自分の行動を縛っている。迷いも欲も切り捨てて、ただ効率・期待値で計算する戦い方)

(それが、エイスリン・ウィッシュアートの支配を跳ね除けた)



(7巡目、手替わりを待たずにかけたリーチは、エイスリンが考える原村和の打ち方ではなかった)

(何しろ原村和の計算能力は、鏡で見ても完璧には理解し切れない)

(1つ1つの要素の価値基準については分かっても、それを組み合わせた確率計算は、およそ人の脳でできることじゃない)



(エイスリン・ウィッシュアートの想像力を越えた行動基準を持つこと。オーラスで試してみる……)

のどっち  ↓1 安定:最低値4保証
てるー   ↓2 エイスリントップ時のみ:+3
エイスリン ↓3 似顔絵:+4   トップ時:-3
柘榴     ↓4 逆境:3以下なら9扱い

※眠いので集まらないようだったら途中で諦めて寝ます

へい

ピンクキサマァァァ

ウボァ

主人公が空気になったはるww

なんか空気だし、和次第だけどしれっと2位になりそう

逆にこのメンツ相手で全く振り込まず飛びもしないだけで十分強いと思うのは私だけだろうか

金髪は強い

           ┃┃┃
        .....::┃┃┃┃
  ...........::::_,ィ´ ̄┃┃┃┃::.........
 :::⌒>(_/. . . .:.::┃┃: : (⌒)<⌒:::  やっぱり一日で終わらせないと
  :::/: : /: : : : : : : : : : : : : : :ヽ: :ヽ:::
  ::{: : /: : : : : : : : : : : : :.,ィ: }ノ: : リ:::   しゅうちゅうりょくとかやる気とかタコスとかが足りなくなっちゃう
  ::ヽィ{: : : |: : : : :/: : : : :リ: :|ムィ:::
     ::ヽリレ====、:_:_:/゙}::リ:::::::::    ↓1のどっち特殊
     :://___//´ヽー.彡:′:::::     1~3:のどっち大失点終了

     ::/ ̄ ̄ ̄≧、_〉:::::::::        4~5:このまま終わらない
     ::}======〈´〉:::::::::::::::.......      6~7:柘榴さんから直取りでラス回避
    ::/ / / l\尤/三三二∋:::::::    8~9:大天使? のどっちですね

      ̄ ̄ ̄ ̄::::::::::::::::::::::::::::::::      0:枕神咲さん

親番だしやったぜ

点数状況を見る。対局者の顔を見る。
一人はサイコロに伸びる私の手をじっと見つめてきた。
一人は私のことを見つめてきて、一瞬目が合った。
一人は腰に置いたペンギンへと視線を落としていた。


――勝てない、と思う。点差がどうとか、流れがどうとか以前の話として、地力で負けていると思う。
オーラスだから連荘すればいい、なんて甘い考えが吹き飛ぶような、力の差を感じる。それこそ、昨年の荒川さんの倍以上は空気が重い。

そう思って、少し気が楽になった。

もう普通に打たなくていい。好きにやったって、多分やえも怒らない。

「うな~……対7の気分ー」

ゆっくり息を吐き出しながら、ボンヤリと賽の目の巡りを俯瞰する。
……外れた。自5。やっぱダメそう。ダメそうだから、好きに遊ぼう。

ペンギン越しに下家が、『何言ってるんだこいつ』みたいな目で見てきてるけど
これからは『何やってるんだこいつ』でいいですよ。

ほにゃにゃら%しか無いからね? と、晩成の仲間に言われた。何度も言われた。
それはもう、どんな手のとき、誰に言われたのか忘れてしまうくらい言われた。

配牌で字牌8枚。でも散らばってて暗刻は1つ。さて、ここから字一色は3%だっけ?
3%は、九種九牌から国士無双のときの方だっけ?

あらほれともあれ約3%で勝ちなら――なんて恵まれた配牌。
混一を面前で仕上げてリーチと役牌とドラで点数がどうのとか考えるのが面倒になるくらい、輝いてる。




「親番でいきなりの真ん中切りだ――ッ! えーと、これは……牽制?」

「ここで他家を下ろしにいく意味はかなり薄いし
そもそも刻三選手はこういう手がたびたびあるからブラフとしても機能してないと思うよ」

「たびたび? すこやんそんなにちゃんと牌譜調べてきたの? どうしたの?」

「普段から少しは見てるけど……そもそもこの試合の間も、何度かあったよ。
選択肢を切り捨てる、早目の決め打ち。これまでは聴牌自体が少なかったからただのオリだったけど……。
今回のは、連荘せずに一局で勝ちにいく宣言なんじゃないかな」

「チキンかと思ったらいきなりチキンレース仕掛けてきた感じ?」

「なんでそんな上手いこと言ったみたいな顔してるの……?」

(個人戦では点数が一番。直接対決の結果が反映されるのは、同点時のみ)

(ここで負けても、その分他で取り戻せばいい。私は普段通り打つだけ)



(親は一見早そうでしたが、この捨て牌だと手はまだまだ……)

(混一七対子の一向聴で止まってる、といった感じが自然でしょうか)


(優希との試合を見る限り、宮永照は徹底した高め狙い。長期的な得点より、一位を狙うタイプ)

(この局を安めの手で流して二位で終わるよりも、一位を狙える手を作る人)


(エイスリン・ウィッシュアートは、毎回河が似たような形になってますね。)

(オーソドックス。悪く言えば、基本だけかいつまんだデジタル打ち。ここへの振り込みはまず無い)



「この手は、牌効率悪くないですか?」

「将来当たり牌になりそうなところを抱え込みたいんじゃないかな。
大会を経て、個人の特質まで意識した打ち方になってきたように思うよ……まあ、変わってる途中が一番危ないんだけどね」


序盤からどんどん風牌が切れていって字一色は薄め。鳴いとけばよかったかも。
でも数牌が重なって四暗刻が見えてきたし、これはこれでいいかな。
一応大三元の可能性も0じゃないし、まだまだ夢広がる手。


うん、やっぱり四暗刻が一番好きだ。
まずどんな牌でも作れるのがいい。他の役満は牌が限定されてるけど、四暗刻は自由でテキトー。
重なってさえいれば誰でも歓迎。刻子手は優しい。

その自由さは、リーチや海底、天和みたいな偶然役に近いような気がする。

(一羽でチュン、二羽でチュチュン、三羽揃えばー……)



――リーチ


静かな声だった。切られた牌も、取り出されたリーチ棒も音を立てなかった。


「宮永選手リーチ宣言! 大物手の気配がある親に対して強気なリーチです」

「片上がりの三色ダマで待つくらいならオリるし、ここまで引っ張ってオリるのは無いよね」






エイスリンの手が止まる。最初に描いた絵は崩れつつあった。

元から出来上がってるみたいに綺麗な配牌から、継ぎ接ぎのコラージュを作り始めた人。
天使の翼が航空力学なんて必要としないみたいに、別の理屈で羽ばたいていく人。
広くて白いキャンバスをまず好き勝手に切り抜いてから塗り絵を始める人。

他家三人の河は、福笑いしてるみたいで見ていると何だかこっちまで笑えてくる。
こういう時は、表情を変えるんだって言ってたっけ。でもちょっと、遅かったかな。

「エイスリン選手は現ブツ切りで回り、刻三選手は即ツッパ……もろ裏筋ですが通し」

清澄のメンバーが観戦していれば気付いただろうか。原村和の手が一瞬止まったことに。

決勝の失点を思い出す。三副露後は遅くても5巡、多くは3順以内に和了る。そんなオカルト――。




『あなたのそういうところが、悪い方に向かなければいいけど』

牌を切った時、部長の声が聞こえた気がした。



 「リーチ一発タンヤオ一盃口ドラ2……裏」


懐かしい気分だった。自分の打ち方を確立してからは、こんな気持ちになったことはなかった。
強く握りしめられたエトペンが変形していた。力がかかると縫い目が引っ張られて、少し中の綿が見えてしまう。


「ありがとうございました」

ほとんどトビ寸前。とても久しぶりに、失敗したと思った。けれど不思議と嫌な気分ではなかった。

そういえば、こんな風に意図せず大きな和了りに振り込んでしまったときは、よく相手が笑っていた。
玄さんの笑顔を思い出す。そういえば優希の連荘を止めた時も、泣きそうになりながら笑っていた。一手一手に、一喜一憂していた。

「楽しい対局でした」

そういえば奈良に居た頃、玄さんは一日の終わりに、対局した一人ひとりにそう言って回っていましたね――。

(一発は必要条件だったけど、裏は予想外だった――)

(エイスリン対策の行動基準、とりあえず翻数縛りは効くし)

(打点制限、高め狙いを意識した打ち方に対するひっかけにもなるみたいだけど)


(これを狙ってやってのける新道寺の部長には恐れ入る……)



「楽しい対局でした」


(さて、この巡で私が上がらなかったらどうなってたか、分かって言っているのかどうか)

     __
  oo´.   ヽo  ↓1
 ((ルf(ノノリ)))ル 1.epilogue行き

   从リ゚ ヮ゚ノリ  2.次の東風
    /j_丞i、   3.決勝トーナメント半荘
.   (.(゚‐゚)つ)   4.その他
     じ'ヲ
           とりあえずねるー

空気やったし次の東風行こうか
2

今回の子の刻三ちゃんこの東風戦そういえば焼き鳥か

                  ,.ィ゙⌒

.        ,  '  ̄ ゙ ー[]≦: :='⌒ヽ 
 .     ,.ィ ´:::      /]≧::`'.、: :ミ、ヽ         卓を囲う面子
    /    : : : : : :ヽ: : :ヽ: :ヽ\\: \
    ,'   : : : : : |: : ::ヾ \: : :',: ::)ヽ :ト、: Y     z  ↓1~↓3
   ,'   :.:.: ィ:.:.|ヾ,.-‐ナヾト,: :.∨_: }:.:ト, ヽ |    z
 /ィ |: : : ::|| ,_{: .:!: : |ヾソ /"}: : :.', 、Y/:.| |/  z     照・和・エイスリンと

  / |:.|.|.|.| ,ィ゙ヘ|`ト|\|、_,.彡"|: : : :|_.:/:.:リ. /         個人戦全国に出てないことが確定してる子以外で
  {:/! !.!.!从\ヽ_,ノ   、、、リ_...,丿/!: /ノ
  ヽ.トヾ仆リハ ゙´       /   `゙ <
   \:{\: ハ 、、、 _ィ'つ .!       ` 、

      ` ヽ|:入_,/  !:\|    ,     \
          !//       :|    {      ,ィ==、

愛宕洋榎

咲さん

憩ちゃん

憩と咲さんってさっき当たったんじゃなかったっけ?知らんけど

前の試合を早めに終わらせた分、対局が始まるまで余裕がある。
席に着き、背もたれに体重を預けて力を抜く。天井の照明が眩しくてくらくらする。

一日目の延々と続く東風地獄も、この試合で終わり。実に疲れた。
具体的に言って、部活の十倍は疲れた。
今頃やえも、部活の十倍勉強になったとか思っているだろうか。


「よろしくおねがいしますーぅ」

「げっ」

「なんでそんなに驚いてるんですー?」

「最後に来て、これはまた面倒そうだなーと思って」

「早めに来ておいて、対戦相手確認してないんですか?」

「してない。つかれた。ねむい」

「じゃあ、この後来る相手を見たらもっと驚くことになりそうですよーぅ」

「えっと、よろしくお願いします」

「おー、みなさんお早いことで。トビ終了やったから、絶対うちが一番乗りやと思ったのになぁ」

確かに。これはなおのこと疲れそうだ。もう、同じ部屋にいるだけで息が詰まりそう。
こんなに重そうな面子を相手にするのは一年ぶり……でも無いか。なんかつい最近あった気がする。

「これ、何で3つ残っとるん? どっちか引いてないんか?」

「あ、はい。もう疲れて疲れて……」

「ま、ええんちゃうか? 残り物には福があるって言うしな。ほな――」

「あ、待って。動きたくないから私が仮東引くー」

――――――――――――――

――――――――――――

―――――――――


↓1 洋榎
↓2 咲さん
↓3 憩
↓4 柘榴ちゃん

せい

にゃ

(まだ危ない感じは無い。馬鹿みたいなスピードで待っとる奴や怪物手作ってる奴はいないみたいやな)

(雑誌やらテレビやらで見た連中揃えといて、意外と地味な展開や)

(っーことは、ウチがいっちょ盛り上げたらなぁあかんな)



(この相手を前にして、ばらばらの配牌ですーぅ)

(でも、この子達はまだ生き返る。聴牌最優先ならスピード的にもぎりぎり間に合います)

(五索五筒を赤に、六索が入ればタンヤオも見える。予後の見込みも悪くないはずですねー)




(四順後に四枚目の白が入るから、とりあえず嶺上牌の九萬単騎待ちの方向で……)

(衣ちゃんや大星さんみたいに場を支配するタイプはいないみたいだし、結構打ちやすいかな)

自分よりもツイている人。自分よりも持っている人。
そんな人たちが相手でも、考えれば勝てる。努力と思考に勝る武器はない。

そういう意見はよく分かる。実際やえは強いと思う。

でも、そういう勝ち方は、万全の準備を整え、最新の注意を払い、一分の隙も無く打って、ようやくたどり着けるもの。
たぶん今の私には無理だと思う。

もうなんかさっきから二回も大阪弁で早く打てって怒られたし。頭回ってない。
荒川さんの大阪弁と全然違う。激しい。とげとげしい。イントネーションが中国語っぽい。

「はぁ~……」

カンチャン2つ。どっちか崩すとして、どっちが聴牌に早いか。河を見て周りの手を想像して、半ばで思考が途切れていった。

「もういいや」

カンチャン残して両面切り。まあ赤含み・ドラ含みが埋まればいい感じだし、いいよね。
123・456・789って出来たら何か綺麗で気持ちよさそうだし。色違い一通もどき。

(よし、これで白をカンして――)

「チー」

(あっ……もう山を見る癖は克服したはずなのに……)



(ここで白ですかー。白衣の白は好きですけど、今来るのは嬉しくないですーぅ)

(これは……オリですね)

「チー」




「これ、どういう意図なんでしょうか。ドラ・赤ドラだけで完全に役無しになりましたよ」

「わかんねー。でもなんか綺麗だよねー。中国麻雀なら何か役付きそう」

(宮永咲がリーチ、荒川憩もなんや回しながら聴牌維持してそうな空気やし……)

(2鳴きしてドラ2確定の下家も怖い。切り辛い牌だらけできついけどー)

(ここで引いたら、ツキが逃げそうや。聴牌狙いなら、ここらへんか!)


「全員引きませんねー。やっぱり上位陣同士の対局ということで、点数の重みを意識してるんでしょうか?」

「んー。そういうのは考えて無いんじゃないの? 単に、どいつもこいつも自分の手作りしか考えないだけじゃねー?」

「そんなこと無いでしょう。愛宕選手も荒川選手も回しながら聴牌に取ってますし、刻三選手は……」

「上がる気ないね」

「流れを取る鳴き、というやつだったんでしょうか」

(この下家……。毎回牌をちらっと見てすぐツモ切りしてくる。その割に、あんまり怖くない)

(聴牌して待ってる雰囲気が無い。自摸に期待も恐怖も感じん。どういうことや……?)


(まったく柘榴ちゃんは……ウチが一打一打こんなに考えてますのにーぃ)



(全員早い手だったはずなのに、上がれないまま場が止まってる。この感じ……もしかして……)


「テンパイや」

「テンパイ」

「テンパイですーぅ」

「えぇと、一応テンパイ」


(白単騎、完全に私の嶺上開花が止められてる……九萬も愛宕さんの頭で、残り0……)

(決勝前にプロとやった時みたいだよぅ…・・)

「全員テンパイで流局! 九萬を止めながら聴牌を保った愛宕選手の防御力が光りますね」

「いやー、この局光ってたのって言ったら、あの眠そうな子じゃねー?」

「変な鳴きしないで普通に手作りしてれば、捨て牌で上がれてましたよ?」

「けど、鳴かなかったらその捨て牌にはならなかったわけじゃん? しらんけど」

「鳴かなかったら他家が和了っていた、と?」

「さぁー。ま、あの鳴きの入った巡目、全員なんか嫌そうな顔してたからねぃ」



「さて荒川選手の親番で一本場……今度も宮永選手が早い。早々にポンして受けの広いイーシャンテンです」


強い打ち筋には理論がある。
綺麗な手作りには理想がある。

どちらが必要かと言えばもちろん前者だけど、どちらがやりやすいかと言えば後者になる。

「カン」

他家が早そうな場面で裏ドラを増やすのはいけない。そういう理屈は分かってる。

でも、四筒が四つで語路が良い。ほら、二筒対子が裏裏に。
明カンで四暗刻は潰れちゃったけど、東風戦でトイトイ三暗刻の裏3までいけばお釣りが来る。

「えっと、それもポンしようかな」

「面白いねぃ あの子が鳴くたび、全員表情がころっと変わる」

「そうですね。妨害寄りの鳴きを入れるのが得意なんでしょうか」

「いやぁ、何が面白いって、鳴いた本人まで『やっちゃったかなー』みたいな顔するんだよねー」

「前局ではやっちゃった感じでしたが、今回はいい方向に働いてません?」

「そうなんだよねー。なのに、受け取った牌を端に置きながら溜め息してるわけ。わけわかんねー」



「あ、ツモです。3100・6100で合ってますよね?」

「トイトイ赤と……ドラ暗刻か。合っとるな。ほい」

「刻三選手、そのまま親で和了って一本場。昼休憩を挟んでからしばらく成績が落ち込んでいましたが
ここ数試合は怒涛の追い上げを見せています。打点が高いですね」

「高く上がった割に何故か全然嬉しそうじゃないけどねー。
和了っといて何故か怒るどっかのプロと会わせてみたいねー」

「和了っといて何故か死にそうなくらい青ざめる人とかもいますよね」

「おー、そっちと比べるかー。最初は散々な言いようだったのに、また随分と評価してきたね」

↓1 洋榎
↓2 咲さん
↓3 憩
↓4 柘榴ちゃん

おもち

a

Yes

ほい

a

しかし次の憩が怖そうだ

「さてここで、今日一日の点数状況を確認してみましょう」

「試合の序盤は話すこと少ないからねぃ」

「四人の中では現在最下位の荒川憩が、総合ポイント3位でこの卓内のトップです」

「地力と安定感のある選手だからねー。そう意外でもないんじゃない」

「この局極論トビ終了でも、周りの卓次第で二日目進出が可能なだけのポイントを稼いでいます」

「守ってれば勝ちなんだけど、なかなかオリないんだよねー。配牌が悪くても、いつもそこから仕上げて戦ってる」


本当にどうしょーもない配牌というのは、めったにありません。
このカンチャンが埋まれば。ここで三色がまとまれば。大抵は、そんな条件付きで輝ける子ですー。

麻雀は、振り込まない範囲なら何を切ってもいいゲーム。いくら待ってもいいゲーム。
だからウチは、諦めません。


「うなー……」


そんなウチでも諦めたくなるような配牌で戦っていたのが、去年の柘榴ちゃんでした。

捨て牌を見るだけで分かる明らかに偏った牌。同卓みんな、チャンタか混老頭だと見てたと思いますーぅ。
でも突然1・9の対子を切り出して、流局時に開けてみると七対子の字一色。

配牌時に九種九牌だったのではと不思議に思ったまま次局が始まって、なんだかその字一色聴牌が気になって仕方なくて。
終局後に話しかけてみると、疲れ果てたポメラニアンみたいな顔で言ったんですよーぅ。

「東南西北って一枚ずつあると何かできそうで……でもダメでした」

彼女に何が見えていたのか、今でも分かりません。大会後に取り寄せた牌譜を見ても、ウチなら迷わず九種九牌で流局です。

それを役満聴牌まで育て上げた彼女に、なんだか不思議な想いが尽きません。
あの聴牌形と捨て牌を見比べたときの、狐につままれたみたいな気持ち。尊敬しているようなー、していないようなー。




(――柘榴ちゃんがまたあの表情)

(ここで、オリたくない……!)

「……というのがここまでの四人の得点状況で――」

「んー? 突っ張ったねー。これは……どうだろ?」

「さっき荒川選手はオリずに綺麗に回していくのが持ち味だって自分で話したばかりじゃないですか」

「それもそうかー」

「確かに一見危なそうですが、全員スルー。彼女らしい打ち方だと思いますけど」

「んー。わっかんねー」

「何がですか?」

「わっかんねー」

「……」

(これまで悠々と売ってきた感じの荒川憩が、この局無理しとる気配や)

(多分大きい手が入ってるんだろうけど、大物手は高い分だけ隙もできるもんや)

(振り込まずにギリギリまで競り合うんはうちらのお株。仕掛けさせてもらうで)





(うぅ、みんな凄く強くて、どうしたらいいのか分からないよ)

(聴牌速度速すぎだよ。同種牌を四枚集める前に他家が仕上げてくる)

(というか私のカンを意図的に止めながら手を作ってるような気がするよぅ……)

「それ、チーや」

(またツモ巡ずらされちゃったよ……)



(これで純チャン三色ドラの満貫聴牌。端の牌で待つんは直撃狙いに強い形)

(荒川憩はそういうの上手く回避してくから、こういう待ちは避け取ったけど、今ならどうや?)

「全員手早く聴牌して、でもツモれない。こういう展開、多いですね」

「聴牌後は一手一手が重く感じるからね。早く張ると、余計にその後が長く感じる」

「三尋木プロの普段の打牌に重みを感じないんですが」

「そりゃ聴牌してるかどうか自分でも分かってなかったりするからねぃ」

「公式戦で錯和する人なんて他にいませんよ……?」

「いや、いるってー。去年は世界大会で同類と会ったりもしたし」

「さて――ここで荒川選手、当たり牌を引いて止まりました」

危ない牌。愛宕洋榎の大本命です。

回るにしても、ここで生牌は切り辛いところです。平和手は回るときに宮永さんが怖い。

そして聴牌してるのか今一分からない柘榴ちゃん。半目開きで今にも椅子から崩れ落ちそう。
さっき打った直後に「あっ……何でもないデス」と声をあげてから姿勢を直したのに、もう元通りです。

自分の手牌でも、周りの河でも、相手の顔でもない。
ぼーっと見つめるのは柘榴ちゃん自身の河。

強い人はあまり自分の河を見ないように思いますーぅ。
覚えているからというのもありますし、自分の手や相手の河を見て考える時間が長いのもあります。
人によっては山の気配や場の空気に集中して、視線が下を向かない人もいるくらいですー。

でも私は河を見ますよーぅ。手の内に受け入れられなかった子でも、見守ってあげたいですからねーぇ。
できるんなら迷彩の役割を果たして、河まで合わせてーウチの手にしたげたいです。
申し訳ない気持ちと、夢と希望を持って。ウチは河を見ますーぅ。

柘榴ちゃんも河を見ます。何を考えて見てるのか聞いてみたこともありますーぅ。
何も考えられてないって言った柘榴ちゃんに、続けて聞いてみました。捨てていった牌に申し訳ないって思ったことはありますかって。
柘榴ちゃんは笑って。

「自分の河を見てる時は、一番疲れてる時だから。後悔とか反省とか、多分考えられて無いですねー」

今も、柘榴ちゃんはあの捨て牌に一切れの後悔も見てないんでしょうねー。

だから、あのボケた顔が笑顔に見えるのは、きっと見間違いじゃないんですーぅ。

牌を捨てる瞬間、北の横に並んだ一筒がなんだか他の捨て牌に受け入れられたような気がしました。
柘榴ちゃんではないけれど、これは綺麗な気がします。

それが嬉しくて――。

「愛宕選手の満貫直撃! 大きく点棒が動きました」

「刻三選手の和了りを親被りしてるから、これで一万点棒が無くなったねー」

「彼女の振り込みは珍しいですね。さきほど『突っ張った』と言われたタイミングでオリるべきだったんでしょうか」

「あの手で振り込んだわけじゃないからいいんじゃねー。知らんけど」

「この場面はかなり難しい形でしたから。早めに手を崩していれば別の展開もあったのでは」

「さあねー。荒川選手は形の悪い待ちだったけど、いかにも隣の眠そうな子あたりが聴牌時に落としそうだったし」

「あの手は待つだけの可能性があったと?」

「そこを待たされてた、かもねー」

             ____

         ....::-.;‐.;.;:::::::::::::::::::::;.;ヽ.、
       ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::\
      ./::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::,,-,,、:__;:::::\    >>189-190間で描写されない親上がりを挟んだつもりだったけど
     /:::::::://:::/i:::::イ::::.::::::::. .,'   ヽー-:;ヽヽ
     |/|::::| |::./ |:::/ !:::::|:::: | ヽ、__,!::::::::::\::ヽ これ読み返すととっても分かり辛いじぇ

      |::::| |::| .|::| |:::/::::/:::::::::::| /::::::::::::::::ヽl

      \i人!  V |//:/:::::::::::::///|::::::::|ヽ:::l:l むしろ分かるわけないじぇ……
       //  ○   ´|::::::::::::// :::i::::::::i l/ l
      i/       /:::::::::::::´:::::::/::::::ノ::::::::,i

      .(   """  /::::::::::::::::/:::::'´´´:::::::l:/
      .|ヽ、△    /::::/:::::::::/:::::::::::::::::::::/:.i
      ヽ/| ヽ、_  '''´/ // /|::::::::::::,'::i/
        \,,iヽ ̄iー,/´ -‐、-‐´i':/
            /´  i′ ヽ

↓1 洋榎
↓2 咲さん
↓3 憩 -1
↓4 柘榴ちゃん

いくで

ミ=ゴ

a

     __
  oo´.   ヽo  柘榴ちゃん ↓1
 ((ルf(ノノリ)))ル 1~3:もうだめぽ

   从リ゚ ヮ゚ノリ  4~6:一方柘榴ちゃんも憩を意識しまくっていた
    /j_丞i、   7~9:柘榴ちゃん大勝利
.   (.(゚‐゚)つ)
     じ'ヲ

勝ちたい

アカン


「おう、はよせえや」

「おう」


―――――

――

ビィ――――っ!


通常試合の最初と最後にしか鳴らない音が鳴っても、反応できなかった。
何もかも銀幕の向こう側。金曜ロードショーの途中で眠くなってきて、でも途中で見るのをやめるのをなんだか嫌で。
惰性でぼーっと見つめているけど、何も頭に入ってきてない。そんな感じ。

「一分超過は千点供託ですよ」

「あ、そっか……」

言われて千点場に出したとき、何か大切なものが切れた気がした。

「さっきから見てるこっちが心配になるくらい眠そうだった刻三選手、ついに時間切れを出しました」

「あの子の一試合は、普通の人の数倍数十倍疲れるんだろうねー。考えすぎるなんだよ」

「これまではわりと切るのも早くて、何も考えて無さそうに見えましたけど」

「そう?」

「だって瞼ほとんど落ちてますし」

「深く考えるときって、目を閉じたくならないものかいねぃ」

「そういうものですか?」

「ま、今は本気で寝てそうだけどねー」




「今局、二回目の時間切れです。睡眠不足なんでしょうか」

「しかも……焦って出した牌が当たる最悪のパターンだねー」

「この和了りで愛宕選手がトップに。宮永選手と荒川選手は未だ和了りがありません」

「眠り姫といい、愛宕洋榎といい、親が連荘するから東風のわりに長いねー」

「既に親の流れた状態で最下位の荒川選手は厳しい状況。ですが、刻三選手の状態も不安です」

「まあ眠いだけみたいだし、大事にはならんでしょ」

「元から打ち筋が独特なせいで、崩れているのかどうか序盤では判別できませんね……」

「麻雀の方が崩れてそうじゃない? 知らんけど」

「アンタ、やる気あるんか? ここでそれは無いやろー」

下家がツモらずに声をかけてくる。

「えっと、ごめんなさい」

点棒を取る手もおぼつかない。というか千点棒足りない。

「両替で――」

差し出した五千点も受け取らずに、愛宕さんはなんだか変な顔をした。

「まあ、確かにザンクやけど……」

今更ながら手が開かれる。間違ってない。1100点返しのはず。何かおかしいだろうか。

「そこまで分かってて、なんで振り込んだんや?」

↓1 洋榎
↓2 咲さん
↓3 憩 
↓4 柘榴ちゃん 4以下なら-3

いよっ

がんばろう

任せろ

だじぇ

(任せれねぇ)

「脱いでも、いいですか?」

(ついに出たか)

(出ましたね)

(痴女?)



「出ました! 『脱いでいいですか』団体戦でも何度かやってましたね」

「どうせ脱ぐなら最初から履かなきゃいいのにねー」

「動作自体にスイッチングの意味があるんじゃないですか」

「そうなん? 知らんけど」

「ポン!」


(ここでポンしてくるんは、次順でこの一萬でカンするパターンや!)

(ならここで宮永妹の捨て牌を鳴けば、次のこいつのツモがうちに入る)

「それ、チーや」

「カンです」

(もう一個暗刻持ってたか。これで順番が戻って……)

「もいっこ、カン」

(なんやこんなん、地区大会の牌譜でも見たな)

「もういっこ、カン!」

「嶺上開花、混老頭、自風、ドラ3。倍満の責任払いですねー。これでトップがまた入れ替わりました」

「罰符の1000点供託も入って、3万点越えかー」

「やはり脱ぐと強いんでしょうか?」

「まるで嶺上牌が見えてるみたいだったねー。わかんねー」

「カンの連続、特徴的な上がりでしたねー」

ピンチだし不敵に笑うしかないねこりゃ


「おお怖い。そっから三槓子は予想できんわー」

際どいラインの見極めには自信がある。
特別な力が無いうちなりに磨いた特技や。

けど、嶺上牌を連続で入れて手を作ってくるせいか、こいつの点数は読めない。

「けど、この当たりでこっちも火ィ付いたで。一万以下の小さい点棒やり取りばっかで、今一煮え切らん感じでな。
こっから役満ツモれば文句無く逆転大勝利、うちに注目して実況してるアナウンサーも大喜びや」

半分までは自分を元気付ける大口。
けど、もう半分は本気でトップを取る気や。

カンの連続、予想を超えてきた和了にはわくわくさせてもらったさけ、こっちもお返しといきたいところ。
っーわけで、配牌の方、良い手頼むでー。

オーラス
↓1 洋榎
↓2 咲さん +2
↓3 憩 
↓4 柘榴ちゃん 4以下なら-3

ここから逆転するか

咲ちゃん強すぎだじぇ

いけるだろうか

                  ,.ィ゙⌒
.        ,  '  ̄ ゙ ー[]≦: :='⌒ヽ

 .     ,.ィ ´:::      /]≧::`'.、: :ミ、ヽ
    /    : : : : : :ヽ: : :ヽ: :ヽ\\: \          眠いので寝るじぇー
    ,'   : : : : : |: : ::ヾ \: : :',: ::)ヽ :ト、: Y     z
   ,'   :.:.: ィ:.:.|ヾ,.-‐ナヾト,: :.∨_: }:.:ト, ヽ |    z
 /ィ |: : : ::|| ,_{: .:!: : |ヾソ /"}: : :.', 、Y/:.| |/  z    ↓1 憩

  / |:.|.|.|.| ,ィ゙ヘ|`ト|\|、_,.彡"|: : : :|_.:/:.:リ. /       1~3:宮永照は人間じゃないと思ったけど、妹も人間じゃなかった
  {:/! !.!.!从\ヽ_,ノ   、、、リ_...,丿/!: /ノ         4~6:回避は得意なんです
  ヽ.トヾ仆リハ ゙´       /   `゙ <         7~9:柘榴ちゃんの打ち方が、今少しだけ分かった気がしますよーぅ
   \:{\: ハ 、、、 _ィ'つ .!       ` 、

      ` ヽ|:入_,/  !:\|    ,     \
          !//       :|    {      ,ィ==、     ↓1 柘榴
         /.        |    |    /  ,ィ‐ \    1~5:試合続行不可能なレベル
        /.        !     |   /   ,   __}__   6~9:ギリギリまで追い込まれてからが本番ですよ
     f゙           /!     |Χ゙´   /  /   \
       \       f゙{ /   /    /      ム_〉
       \   /T¨| \ー/  _ ,.- ゙   _/  // ─}
         〉-/、ゝ、__`_/  _,,.-‐''" /  / ィ彡"¨ヽ

先に言っとくすまん

ここからよ、ここから

きずのなおりかた。
傷付いた細胞をまくろふぁーじさんがむしゃむしゃし、
それから新鮮な血と酸素、コラーゲンを材料に組織を作り直しますーぅ。

これも生き物だから、基本は同じ。

死んだ手が息を吹き返すのは、まず切って、そこに代わりの牌が嵌ったとき。


――最下位でオーラス。配牌も良くない。でも、それが、楽しいですー。

これまでの勝ち点が積み上がっているのは、きっと無関係じゃないでしょうねーぇ。
二日目行きが懸かった試合を純粋に楽しめるほどには、ウチはきっと強くないです。

でも今は余裕があります。そして、予感がありますー。

この手を形にできたら、ウチは一歩、前に行けるはず。

宮永照が立つ闇の中。どれほどの距離があるのかも分からない向こう側に、一歩。

唯一の面子が九萬暗刻なせいでタンヤオピンフ一通三色といった代表役が軒並み見えない4向聴。
なら、切るのはここでしょーぅ。

行ける気がします。
牌が、鼓動しているから……。

「おいでやすーぅ」


流れを読むとか、場を支配するとか、特定の手が得意とか、そういった力はありません。
ただ、牌の方がウチを助けてくれるだけですーぅ。

たとえば隣で良い手が仕上がった後。悔しがるように、盛り上がる。
たとえば聴牌のまま流れた次。名残り惜しいように、戻ってくる。

そんな子を、最大限そのままの形で走り回らせたいから。


――あと1つ。三筒の方なら、理想的な三面待ちでリーチですよーぅ。

下家の宮永がきとる。
意地でも鳴かせてやるかと牌を絞るうちを、ガンガンつっついてくる気迫。嫌いやないで。

でもっ!

「それポンや!」

下家の牌を鳴いて二人分飛ばしてーのっ、これで聴牌!
直撃以外じゃ宮永をまくり返せん打点はちいと不満やけど、こいつを和了れば一日目通過は確実。
まずは一発で、リベンジは後や、後。借りを返すんは、後になるほど利息が増えるもんなんやで。

「っとー、カン! 嶺上は……」

……。牌をめくるとき、嫌な感覚がした。
高いところから下を見つめる時。頭では綺麗な景色に惹かれながら、背筋が震える。

流れがあると思った。めっさ追い風を感じとった。
自慢じゃないが、うちの直感は大体当たる。一応外れても最後には勝つ自信がある。

けど今、後ろから吹く風が、断崖絶壁に突き落とそうとする魔の手に変わった。

生牌の風、これを捨てたら十中八九、宮永が鳴く。


北なら嶺上開花自風やったんやけどなあ……。

「あ、降りましたね」

「降りたっていうより、避けたって言った方が近いんじゃないかねぇ~」

「別にこの西、当たり牌じゃないですよね? 
オーラスで宮永選手のリードですから、わざわざカンドラで他家の逆転チャンスを増やすことも無いと思いますけど」

「嶺上牌自模る分、一巡早く上がればそれはそれで安全を買ったって見方もあるんじゃねー」

「カンドラが乗れば荒川選手の手も射程圏に入りますし、やはりリスクが大きいのでは……」

「うーん、それもそうかぁー」

「どのみち、宮永選手が三枚抑えた西を抱えたままでは、和了は絶望的ですし」

「でもあいつ、諦めてないぜ。ほら、重ねてきて……もう一回カンしたいんだろうにゃー」

「どうしてですか?」

「次の嶺上牌を奪い取ったら、西を切るつもりなんだろうさー」

「だから、どうしてですか?」

「うーん、どーしてだろー。理由はわかんないねー」


極限まで凌ぎを削り合う。相手の待ちの形をほぼ完全に読み切り、それを避けて手を作り続ける構え。
大阪が誇る鉄壁の二人が同卓に揃えば、県予選での長い長い回し打ち対決が再開させるのは必然。

互いに引く気など無かった。

が――。

(っ。ギリギリまで競り合うつもりやったけど、これは……)

(この牌は、流石に無理ですーぅ……)



「おっもしろいねー。一番和了から遠い子が、全員まとめて抑え付けた」

「と、いいますと、刻三選手ですか?」

「うんにゃ。あの子の国士無双が、今この場で最強――!」

「三向聴ですよ?」

「でもちょうど足りない牌のうち2つが、宮永咲の待ちなんだよねー」

「刻三選手の国士聴牌を警戒して、切れなくなった……?」

「そもそもこの回し打ち合戦の前段階、彼女たちは鋭敏に危険を感じ取った
……ように見えたけど、本当に正確に分かってたのかどうかー」

「あのときは白待ちに。あるときは西待ちに。国士の幻影が、これまで他三人の手を操った。そんなことって……」

「いやぁ、そんなはっきりしたものじゃないと思うよ。国士狙いとも言えないばらっばら状態だった頃の手にそこまでの力は無いよ。
実際あの子に関しては、この局ほとんど注意を割いてない感じだったしねー。やたらツモ切り多かったし、半ば投げてるとしか見えないし。
でも頭で分かってても、役満の圧力は半端ないからねー。確率で割り切れないとこは国士回避を知らず知らずのうちに選ぶかもって程度」

「――聴牌」

「聴牌ですーぅ」

「ノーテンや……」

「あーうー」

「ちゃんと宣言せいや。目も開けろや。ほれ、点棒」


流局直前で鳴いて単騎待ちで構えた荒川憩に点棒払うんも悔しいが
それ以上に、こいつの国士無双が一番ムカつく。流局二巡前に手出し。
っーことは、完全にうち、こいつに踊らされてたわけやないか!

「随分凝った演技やったな。アカデミー賞もんやで」

「うなー……」

「あんた、うちの監督代行に似てるな。見てるとこっちまで気ぃ抜けそうやわ」


――。

この人が、場を支配してた。
衣ちゃんや大星さんみたいに能力で手牌を抑えるんじゃなくて、打ち筋で選択を縛る。
麻雀で最も真っ当で、だからこそどうしようもない支配力。

どうして気付かないんだろう。気が抜けるなんてとんでもない。
とんでもない重圧だよぅ……。手足を縛られてるみたいに打ちづらかった。

まるで愛宕さんや荒川さんまであの子に協力してて、3:1で打たされたみたい。

結局一回も槓できなくて、一番元気そうだった愛宕さんを加槓誘導する形で無理やり場に介入して
それでも結局和了れなかった。和了り目を完全に潰されてた。
一牌分、少しの差だけど、覆る気がしない。

どうしよう。和ちゃんが二日目で待ってる。
けど、もしここで大きく失点したら、私。

次の作戦なんて全然思いつかないし、もしこの子に狙われたらどうしよう。

↓1 柘榴ちゃんの行方
1~3:咲さんと殴り合ってぼっこぼこにされる。
4~6:二位で二日目へ
7~9:咲さんまくって大勝利

とりあえず寝るー

頼む!大勝利!

2日目いけるっぽいし折角だし続けてやりたい所

目が眩む。頭痛が痛い。目を開けているのが辛い。
たとえばテスト前の連続徹夜漬け。たとえばぜんまいざむらい全話耐久。たとえば裏新入生歓迎・徹夜麻雀会。

全身が「今すぐ寝ないと危ないよー」と訴えかけてくる。今、ニューロンがばったばったと過労死している気がします。

牌の音がしたときだけ目を開けて。いやに照明が強く感じる。明るいと痛いと眠いの区別が付かない。
しいて一つに絞るなら眠いです。生きるより寝たい、ってフランスだかなんだかの詩人も言ってました。


「今、私の、番?」

「そうだけど、柘榴ちゃん大丈夫ですー?」

あんまり大丈夫じゃない。いますぐ寝ないと寿命が削れる気がする。

――だから、一巡でも早く、終わらせないと。

ぜんまいざむらい全話耐久とか正気じゃねえよ…

落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせ続けるうちになんだか分からなくなって、心の声がBGM。
一定のリズムで意味を無くした「落ち着け」を連呼し付けながら、さっきの視界を思い出す。

ばっらばらに牌が散らばった河。綺麗にくっつけられた捨て牌の塊。一定の距離を置いて並ぶ列。
どうしよう。どれが手出しでそれがツモ切りだったかもうおぼろげ。


               あの人の捨て牌は、ツモ切りのときは右に傾きがち。
 なんでもいいから寝たい。

        オタ風が後だから平和系?                   片っ端から考えうる手の内を列挙して考察。
                          そもそも何で私こっち切ったんだっけ。


まるで思考がまとまらない。気付けば別のことを考え始めて思考が飛ぶ。
この牌を掴んだのは何かしらの結論が出たからだったような気がする。

えっと、うん。これでいいかな。

荒川さんはつまらない手は作らない。早さ・打点・対応力、何かしらは備えてる。
タンヤオ狙いなら、あの時点で么九牌の処理が終わってる。カンチャン。そこは宮永の容赦ない方が抑えてる。
大丈夫。

あ、いや待って。打っちゃった。速度寄りなら? 聴牌後に、一応三色狙いで順子をずらした形。
見えてなかった。でももう打っちゃった。眠い。反応無い。二巡前も鳴きを考える気配は無かったような気がするし、こっちのパターンは無さげ。
結果オーライ、5秒休眠。

対面の子に、リズムが出来てきた。
自模ったらすぐに牌を手に取って、河に出してから名残り惜しげにゆっくりと指を離す。
全ての捨て牌に対して、別れを惜しむように。

牌から指を離すたび、捨て牌が少しあの子の手元に向かってずれる。


「麻雀って、楽しいよね」

分かってもらえる気がしたから。団体の決勝戦では結局言えなかった言葉が、さらっと零れ落ちた。

「そりゃ、楽しくないことのためにわざわざトーキョーまで来る馬鹿はおらんやろ」

「はい。今もとっても楽しいですよーぅ」


そう言ってくれるのは嬉しい。嬉しいけど。
一番返事を聞きたかった相手は、目を閉じたまま動かなかった。


お姉ちゃんを、思い出した。
あんなに近くまで行ったのに、結局何も伝えられなかった。一言も話してくれなかった。

――「咲さんは、このまま逃げ続けるつもりなんですか?」

他家三人からかかる重圧よりも、鋭くて鮮烈な痛み。絡みつく茨ごと斬りつけられた。


私には、麻雀しか無いんだ。
口下手で、臆病で、可愛く無いし、頭もそんなに良くないし。
だから、同じ卓に座らないと話せない。

だから、ここで口にした言葉が届かなかったら、私が戦う理由が無くなってしまう。


手はまた止められてる。全部見透かされたみたいに、あの子が鳴いたり、鳴かせたりして、槓材が揃わない。
でも私だって、見えてる。ずらされて他家に入った私の槓材については完全に見えてる。
理牌傾向から周りの牌の様子も少しは予想が付く。私の槓材が面子を作ってると考えれば、そこから作れる役も絞れる。

ここ二戦まったく理牌してない上、私の待ってた槓材も入ってない刻三さんの手は怖いけど。

けど、私だってまだ――!

「出会ったばっかりだろうに、信頼し合ってるねー」

「え、そうですか? 他と協力しようって素振りは見えませんけど」

「そうじゃなくてさー。露骨に自摸和了りだけ狙ってる空気なんだよね」

「ああ、宮永選手は手を大きく曲げたあと引っ掛けで構える機会もありましたが、受けが少しだけ広い方を選びましたね」

「振り込みは期待できないと思ったんだろうねー。ちょっと後ろ髪引かれそうなとこで、迷わず即決」

「それが、他家の守備力を信頼した打ち方だと」

「でなきゃ拍子抜けじゃねー? 団体戦で結果出した奴が何も考えて無かったらヤバいでしょ。まあ私にはどうでもいいけどさー」

「……」

「別にこれ、宮永だけに限った話でもないけどねぃ」


信頼してます。この卓にいる全員を。

単に危険牌ギリギリを避けていくだけじゃないんですよーぅ。
悪性腫瘍の扱い方。化膿前に切るタイミング。一巡先、二巡先まで見えてるような打ち筋。

だから複数の狙いを作って、後の危険牌をチラつかせれば。

「チッ。秋大会より、大分やらしくなったなぁ。――あ、胸のことだけやないでー?」

「そんな褒めんといてーぇ」


柘榴ちゃんの真似事。勉強になりました。

迷彩は河だけじゃない。作るのは手牌だけじゃない。

そして場の進行が遅れたなら、長期的な看護は私の領分。
どんな配牌からでも、10巡もあればある程度には仕上がりますよー。

「最近の宮永咲は、槓に頼らない和了りが増えてきましたよね」

「んー? そう?」

「団体戦で派手に決めたせいもあるんでしょうけど、他家に警戒されてますし。
個人戦が始まってからは、嶺上開花の和了数もはっきり減ってます」

「へー。良く調べてるねー」

「今一番注目されてる選手ですから」

「でもそれなら、槓に頼らないってより嶺上開花に頼らないって方が正確だと思うけど」

「やけに拘りますね」

「うーん、でもそれはそれでしっくりこない言い方だしなー。日本語って難しいね」

流局の多い試合だった。そのせいか、東風とは思えないほど長い間戦っていた気がする。
最初に流れたとき、手を押さえつけられるような感覚で衣ちゃんを連想した。

そして今。最後の牌が引かれていく。

嶺上牌は分かる。裏ドラも、多少は。
ここまでくれば残った牌は極僅か。単純な引き算だけで、最後の牌は数種類に決まる。

でもそんなこととは関係無く、もう分かってる。

「おつかれさまでした」

これまでと同じように牌を端に置いて、迷うように手が止まって。


「ツモ。三色、中、ドラ。1000、2000」

「海底で7700ですよーぅ」

「そうですか……。おやすみさまでした」

/r"´`ヽ ./   / /i  / / i   |  : : :!: ! : : : : :l O   l': :、: : ヽ、: .`ヽ
ハ 、  ノ/   /  l i  ,ハ ハ |  i.|: : |: :ハ : |.:!: : i: :ト.、._ ,.イ|i: : .\: :ヽヾ、:   ねーむーいー
: //:7:r' ヽ:i: : :i.!: : :|:!,.-|-|、.! !|i: : !.! :‐!-|-!、|_ト、: :!: ゙、: : : :|:|:、: : : :ヽ: : ゙、 ヽ

/ l:/: :ゝ イ!: : :|!: :/|i: : i-!-| !:、: |、!: :|;ナ |: ハ|`!、!|: : !: : : !:|: i: : : i ハ : : i   締める前に今後についてだけ聞いておやすみなさい

 |': : : :ト、!O: : !i: : :!:!ヽ、.! ヽ!   ヽ! ゙、!  |/ リ |:ノ !: /i: : :/:i: |: : : :i| i: : :|
 !: : : : |、/゙:\:! \:|   _,         、      リ |/ /: : : / /i : : :i|ヽ| : i|
 ゙、.:: : .レ: : : : :! ≡≡三彡       ミ三≡==、  /: : ノ ;/:/: : ///.!.: ;l    ↓2
  i: : /; : : : :/ :::::::::::::::::         ::::::::::::::::::  //` ‐:´ / : :/'"//: :ハ    1.半荘一回分の代わりに長めのエピローグ
-- ヾ/ハ:i : : f  """"""          """"""  /ィ: : : : ノ,. イ://:,ノ  ゙、   2.半荘一回分の代わりに長めの回想または日常シーン
__  |ハ:|、: :i.、                  /:/: : : イ´:i: :l.|――‐----   3.個人戦準決勝、後半から半荘一回

  ̄ ̄ ヽ、!w;丶、          ,.-、__,へ7 ソ/: : //: ノ;ノ'"__        4.半荘一回分の代わりにタコス伝

           `ー-、_ ~~~'´     _ ノ-― ´'"´       ̄ ̄ ̄   5.その他
                  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ksk

1

3

公園のベンチにタオルを広げ、その上に横になっています。
傍らに大きなバッグが置いてあるせいか、家出少女みたいな雰囲気でした。

この時期、この会場周辺における同性同年代の人間に大会参加者が多いとはいっても
普段の私なら、まず避けていったことでしょう。

それをわざわざ知り合いなのが確認できる距離まで近寄ったのは、きっと彼女の姿が誰かさんに似ていたから。

たびたび会場の方角に視線を向けていて、手に持った本は指を挟んだまま一向に進みません。

不器用で、怖がりで、とても優しくて、とても強い、誰かさんみたいに。

「見ないんですか? 決勝戦」

「うーん」

「見ないと後悔することは、分かってるんでしょう?」

「そうでもない」

「本当に?」

「たぶん」


聞いてみたいことがありました。

準決勝が終わった時、咲さんと一体何を話していたのか。
咲さんは曖昧な言葉で暈してしまって、答えてくれませんでしたから。
改めて聞いてみるのも気が引けてしまって、それっきり。

だから彼女に聞いてみようと思い立ったところに、彼女が先に口を開きました。

「たとえばアニメとか、最終話が近づくとなんだか寂しくなって見るのが辛くなるじゃないですか」

「何の話ですか?」

「最終話の初見。そんな大切な時間を、もやもやしたまま消費してしまうのはもったいないじゃないですか」

ええと。インターハイが終わるのが寂しいから、決勝戦を見れないでいる、と言いたいのでしょうか。
でもそれなら、『もったいない』という言葉はどこか不適切に感じます。

「もったいないというなら、見ずに済ませる方がもったいないと思います」

刻三さんは不満げな子供みたいに口をもごもごさせました。

言葉にしていいものか、と。
伏目がちに私の様子を伺うさまは、まだ人と接することに慣れていない子猫か何かのよう。

そんな幼さに、私はあの人の面影を見るのです。

せっかく買ってきた軽食が冷めてしまうくらい、長い間。

「一回目は、一回しかないから」

長く悩んだ割には軽い口調でした。
けれどそれを当たり前のことだと一蹴するのはなんだか躊躇われて。

「疲れてたり、眠かったり、もやもやしてたり、うだうだしてたり。
そんな中途半端な状態じゃ向かい合えない。大切なものを落としちゃいます」

溜め息が伸びていく。冬空であれば、さぞ白く煙ったことでしょう。

「麻雀は、好きだから」

最後にそれだけ言って、刻三さんは目を閉じました。
眠っているというよりは、考え事をしているように見えました。


麻雀が好き。いろいろと考えた挙句、シンプルすぎる言葉にまとめてきた刻三さんの心中は私には分かりません。

でも私も、それだけのことで随分と多くの人と巡り合ったものです。
そう想うと、なんだか感慨深い言葉に思えてきて。

「私だって、好きですよ」

そして、咲さんも。

「でも、咲さんは進みましたよ」

私がかけた言葉に、反応は見られません。

「宮永照と――お姉さんと話してました。涙目になりながら打ち続けてました。
これまでの咲さんなら、休憩時間に入った途端に部屋から逃げ出しそうなものなのに
卓から離れずにお姉さんとにらめっこしてました。多分、今も続けてますよ」

こんなことを言おうと思って話しかけたつもりじゃなかったのに。
まったく、咲さんに関わったときの私は、いつもどうかしています。

これ以上時間を取っていて、決勝戦の後半が始まってしまうでしょう。

別れの言葉をどうするか、少しだけ考えて。

「ところでその本、何語なんですか? アラビア語というか……梵字?
とても女子高生が読むものには見えないのですが……」

「ん、ヘブライ語」

やっぱりこの人は、よく分かりません。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
―――――――――――

「あ、刻三柘榴」

「……どなたさまでしたっけ?」

私はトーナメントには残れなかったから、仕方ないといえば仕方ない。
県予選に関しても、シロがもうちょっとやる気なら私が個人代表に残ることは無かっただろうし。

でも。

「一応直接当たってるから、覚えていて欲しかったなァ~」

「いや、打ったことは覚えてるんだけど、名前がさっぱりで。塞ぐ人ですよね」

「そこまで覚えていて何故……まあ、もうそれでいいや」

呼吸を整えようとしてるみたいな、不自然なリズムの深呼吸。
たぶん私より、一局の体力消耗が激しいんだろう。

準決勝まで打ち続けて大分疲れてるみたいだし、この際私の名前はいい。

「個人戦のために、って先生が用意してくれたモノクル。
決勝見てるとまた割れちゃいそうだったから、外に出てきたんだ」

口にしてから、部外者には何のことだか分からないだろうと気付く。

「そっかー」

分かっているのかいないのか。疲れすぎて長い言葉を口にするのもめんどくさいのか。
でもなんだか、安心する。

「一度話してみたいと思ってた。あんな寿命削ってるみたいな麻雀やるのは
私たちと、あとは千里山のエースの子くらいだから」

「そうかな。みんな多かれ少なかれ、似たようなものじゃない?」

「普通の人は、半荘二回で気絶したりしないよ」

「去年のことまで調べたの?」

「調べたのは私じゃなくて先生だけどね」

私は本気の麻雀をそう何度も打つことはできない。
どんなにトヨネが望んだって、私自身が望んだって、全身全霊を懸けて半荘二回も打てば、もう身体が限界になってしまう。

だからといって、力を使わないのも手加減しているみたいで居心地が悪い。
そんな私にトヨネが気を使って力を緩めたりすると、かえって余計に寂しくなる。

みんなといっしょにいられる時間は限られているから、放課後はずっと打ち続けていたいのに。

「どうして自分だけって、思うことない?」

「思わないようになりたい、かな」

全身におもりがついてるみたいに気だるげな動作で、ごろりと横向きになった。
それでいて、大きく息を吸ってはっきりした声で話し出した。

「チームメイトに、凄い子がいるんだ。何が凄いって、何も特別な才能が無くって。
鳴きが上手いとか、流れが見えるとか、理論がはっきりしてるとか、そういうの無いんだ。
ただ、他の人の百倍くらいたくさん打って、百倍くらい長く牌符検討して、百倍くらいプロの指南本を読んで」

遠く霞んだ向こうを見る目。一言一言、その人を思い浮かべているのが分かる。

「しいて言えば、同じ弱者を見つめて攻めるのが上手い、かな。そんな人なんだ」


「でもその子は、自分の才能のことなんて欠片も恨んでない。
自分より強い相手に会ったとき、何のてらいもなく『あんな風に強くなりたい』って言える。
練習のたびに何か理由付けてサボってるようなのに負けても、全然恨まないで、ただ悔しがるの」

刻三さんの手が伸びてきて、私の制服を掴む。

「それで実際、もう私よりずっと良い成績。
癖の無さが捉えどころの無さにまで昇華されたのかな。凄く安定してる」


少し違うけど、胡桃みたいなものだろうか。

立直をかければトヨネがおっかける。聴牌が分かれば私が塞いでしまう。
シロは長い時間をかけて手を作るから、リーチはあまり使う機会が無い。
エイスリンは他人の手まで書いてるから、分かっていて振り込む状況が起きるような立直を嫌う。

おかげ胡桃は、麻雀の代表役と無縁なまま麻雀を覚える羽目になり、そのハンデをそのまま彼女の麻雀の礎とした。
地力だけでは他人の力を止められないから、自分の和了りより先に差し込みを練習することになった。

そんな胡桃のことは尊敬するけど――でも私は、羨ましさを感じてしまう。
自分の才を褒められるたびに、じゃあくれてやりたいって、そんな醜いワガママを心の中で封じ込める。

「でもやっぱり、それは不平等だよ。その子に特別な力があれば、きっと同じだけの努力でもっと上にいけたんだ」

「麻雀は平等なゲームじゃないよ。配られた牌で頑張るしかないから。人生と同じくらい不公平」

面白いことを言うと思った。私が不満に思っていたことを、代わりに言ってもらったよう。

「一番才能のある人が勝つわけでも、一番努力した人が勝つわけでもない。
だから今こんなに流行ってるんじゃないかな」

不思議な言葉だった。

なんだか無性に腹が立つ。競技としての麻雀をまとめて否定している。
でも反論の言葉は全然思いつかなくて、むしろ考えるほどに自分の奥深くに嵌り込んでいく。

「不公平だよ」

「だからそう言ってるって」

私の脇腹を掴む手は、妙な仕草で動いている。
くすぐろうとしているのだろうけど、全然くすぐったくない。こんなに下手なこしょこしょがあるだろうか。
それが逆におかしくて、少し笑ってしまった。

「でもやっぱ、やえちゃんの努力が一番でいてほしかったかな」

脱力した笑みは、シロに似ていた。
全然大丈夫だって見栄を張る私のことをお見通しで、でも何も言わずにいてくれるときのシロ。

「私が嫌な子なのはシロと先生とあなただけの秘密だから、言わないでね」

「別に。嫌な子じゃない」

打ち終わったあとは身も心も疲れ切っている。こんな面倒な話を持ち込まれたくない気持ちは
私が一番分かっているべきなのに、随分と彼女の休息時間を邪魔してしまった。

「ありがとう。あと、エイスリンも楽しかったって何度も言ってた」

力無く手が垂れ下り、瞼が閉じられる。

おやすみ。

彼女の傍を静かに離れようとして――


「ところでその本はいったい」

どうみても普通の文字じゃない。魔術書か何かに見える。私が想像していた以上に、私に近い能力者なのかもしれない

「あもすおず。名著」

           ,. : : ' ¨ ̄ ¨': ‐- 、
         _,/ : : : : : : : : : : : : : : : :\
   x‐―‐(./: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.\
  /:./: : :/:/: : /: :/ : : : : : : : : : : : : :.ヽ: : : :ハ       何言ってるのか分からないと思うけど
 ,' /: :/ :/:/: : /: :/ : / :i: ! : !: : :!: : : : :ハf⌒Y⌒)

 !,': :/ : ,' : : :/_」⊥、:! :.| :! : !: : :! : : !: : :.ト--ヘ⌒\     私にも分かってないから大丈夫だ
  !:/| : :.|:.!: :イハハ: !: ! :.!: !:斗--!、 : |: : : !: : : !:ヽ.\\
  { i:! : N\| xぅトN ヾヾ| 从从/ メ : : :|: : : !: :! !: ハ )
.   从: :! }: ハ〈.ん::i}     z=ミ、 |: : :.i: : :,' : | |: : :!
    ヽ|/: : :! v少         .....  !: : ,': :./: :.,' ,': :./    ↓3 最後に話しかけてくる人
    イ !:fヽ.! :::::  '     ::::: ,': :.厶イ: : / 厶ィ'

     乂 |. }:.ゝ、   v フ    /: :/: :/: :./
      _|. Vリ/ > 、     ,. イ仏厶仏イ
     /ヽヽV 厶r:::个ー'^ー'"⌒}―- 、__
    { \〉J }::::::::::∧ r‐x┐ ,|::::::::::::::::`:7

    ヽ`ー'  ノ::::::::::::::::\ヾ!ト'  !:::::::::::::::::∧
.    /ゝ―:彳{::::::::::::::::::::::ヽい〉 |:::::::::::::::/ ハ
    |::::::::::::::人\ー― - 、::::\/::::::,. イ / |
    |`ー―'  〉 !\: : : : : :>-r<:./| /   !

やえさん

優希さん

やえ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
―――――――――――

「終わったよ」

「そっか。」

目をつぶったまま答える。

どうせやえはいつも通りだから。
わざわざ確かめるまでも無く、どんな表情をしているのかは分かっている。

「さ、そろそろ起きなさいな。早く行かないと電車無くなるよ」

「うん。分かってる、けど……」

けどもしも、やえの表情に陰りが見えたら嫌だなって思う。

勝手な押し付けなのは私だって分かってるけど
小走やえは、どんなに負けたっていつも最強だったのだ。

「けどじゃない。いくよ、ほら」

「もうちょっとだけ」

心なしか、普段とやえの声色が違うような気がする。
気がするだけで、きっとそれを耳にする私の方の問題なのだろうけど。

「まあ、柘榴はいつも通りみたいでちょっと安心したかな」

「いつもはこんなことしてない」

「交流試合でもランキング戦でもこんなだったけどね」

断じてしてない。
まだ試合が残っているなら、そのときに備えて体力を温存しようと頑張る。
でもやることが一通り終わったあとで、ただ疲れてるというだけで周りを待たせるようなことはしない。
私が覚えている範囲では。多分。きっと。ない。

「そのときはもうちょっと元気だった」

こんなに長くいっしょにいたのに、相変わらずまったく分かりあえていない。
正直言って私も、やえが何を考えて生きているのかまだよく分からないし
多分やえも、私がどういう生き物なのかまったく分かってないのだと思う。

相性が悪い、ということなのだろうか。

宮永のえげつない方とも、全然話してないのにすれ違いにすれ違いを重ねまくってよく分からないことになってたみたいだし。
なにかテレパシー的な何かを送ってくる不思議な人にも、未だにいろいろ誤解されまくったままだし。

麻雀に入れ込んでいる人ほど、なぜだか私と噛み合わないような。

「私には普段通りの脱力具合にしか見えないけど、
柘榴にとっても最後のインターハイはやっぱり特別だったってことかね」

やえの言葉に含みを感じてしまう。

柘榴『は』いつも通り――
柘榴にとって『も』特別――

ああ、やえも高校三年間を麻雀に捧げてきて、最後に思うところがあるのではないか。

だって私なら、きっと少し後悔する。やえの個人一日目の成績は、その、アレだったわけだし。
麻雀に注いだ分の労力を別のことに回していれば。もっと努力が素直に反映される分野だったなら。

「最後じゃないよ」

それは、やえに言ってもらいたい言葉だった。

「これからもずっと打ち続ける。大学でも。そのあとも。ずっと、ずっと」

前向きで在り続けて欲しい。

負けてもいい。悔しがってもいい。
でも嫉妬とか、後悔とか、迷いとか、そういうものは似合わない。

「珍しいね。食べ物の好みから何切る問題までまったく意見が合わなかったのに。明日は雨かー」

――戦う者の中に、敗者はいない。
――――負けてなお戦う挑戦者と、それを待ち受ける王者だけがいる。

多少表現は違ったかもしれないけど、やえの言葉。

私はこういう言葉が大好きで、実は例の「小走先輩格言集」にも陰ながら関わっていたりするのだけど
何故だか私に対してはこういった言葉は使ってくれない。

私には分からないと思われているのか。私はもう分かっていると思われているのか。


「勿論私も、これを最後にするつもりなんてないよ」


それを聞いて、目を開ける。

空はすっかり暗くなって、奈良なら星が散る頃合い。
東京では星が見えないというのは本当のようで、雲も無いのに月だけが目立っている。

「まだまだ打ち続けるよ。それこそ、牌を握りながら死んでやる」

「うん。私も」

「ほーぅ。じゃあ帰ったらウチで打つ?」

「それはむり」

自信とやる気に満ちた声は、聴き慣れたもの。
結局、それを聞く私の方が心配性だっただけで、彼女の声は何も変わっていないように思えた。

やえの言葉を、頭の中で繰り返す。
全国個人での彼女の成績は、その誓いの輝きに疵をつけることなどなく。
むしろ小走やえの格好良さを際立たせている。

「って、寝ーるーなー! 目開けなさいって。新幹線、あんたの分まで予約してあるんだから」


瞼の裏で、星を見る。

「私やっぱり、麻雀好き」

このちょっとした言い換えは、私の胸にすとんと落ちた。




カン



シロっぽいけど違う、不思議な子でしたね

次も楽しみ
何時かは知らんけど

 |       | ∨: : : :::|: : ::|: ://ィ´|/゙│: :/ }: : :: : }: : : : : : :: : : : : ',.
 {       |  ヽ::',: : !: :: :!/イ;=ヾ  !Ⅴ │: :: :/|: : :/: : : : : : : : ::', x ⌒ヽ、

 ∨      !  /:::::',: : ::.| ! ん::::::リ     |: : ィ´゙|: :/.|: ::|: : : : : : :::|: :トー 、_゙¨`'.,
.  ∨     .!  |:::::::ト\ { { 弋_.少     j/イ=∨./} /::.ノ::./: : : :}:人     ゙',: .}   ころーもーのー おたんじょうび
   ∨     |  「¨丶\.\!:::::::::::       ん:::::リ |///::./}: : : :ノ: : :.',    ソ
   .∨    .!  |!  }::::::::>`=‐' rv 、   .辷.゙ソノ /: :: :.(丿 ィi゙: :::}',::}         とてーもめーでーたーいのでー
    ∨   |  リ .j\::::::::::\  |   \ .::::::::::.  /).: : : : :\.ノ|:: : :|}::|
     .∨   |  .{ / ヽ\.ー─'. !    .y' :::::::  //: : : : : :/: :}: : ノ|/
      ∨  !  ./ i i!\\ヽ、 ヽ ,./    , イ:: : : : : : : : : : :!// .j
      ∨    /  .| 巛ヘ:::: ̄>= -‐ , ' "´. : : : : : : : ::/ヽ,: ::|‐'゙
     /.∨  ./  .| .}三=ヾ:::ヽ._,.、 /ミヘイ`゙イレイ|/  ヽ:j

    //  !  /     \三=\::!ィ^つ ¨` 、_   .′                  三回目
    //   {  /       \三=.\儿 |::::::::::::::::::゙`丶、
   .//    ヘ/         .ゝ三三} |::::::::::::::::::::::::/ヽ、                  ↓1 所属校
  //     ノ            ヽ三| ./:::::::::::::::::://   .>.、
 .//     {              ∨丿∠三三三/   ./   ヽ、
../__二二二二ヽ             {二..}´ ̄ ̄ ̄´ |  /      `ヽ、
         ∧            .ハ        }/         \

龍門渕

一番難しいところ来たな

                       ______
             ,r─ 、 ≠ ¨ ̄ ̄ ̄ ̄¨¨ 丶 __
            ,r┤   }            \)⌒`ヽ
          /  ゝ _ ノ              \ 、 \    まともに出番のあった学校が出ると
         ′     「   l   |   | ヽ ヽ    X x ヌ   
            |     |l    j| }  |   |  j  ヽ   ぃ ヽヌ   それはそれでびっくりだじぇ…… これが三度目の正直か
            |   ′ j|   从/ /}I  j|  }   ハ    ぃ  リ
            |   ′ 〃  孑天らリ ノノ ノ「乏らメ、 }  ぃ
            | / //    |ィ爪示らヽ     イ示うヽル  ハ
        .ノxイ{l  !    |{ |i:::::℃|       !:::℃} ||   j| !    ↓1~↓2 キャラ設定要素 単語でも文章でも
           |l  !  l刈 弋辷:ソ     弋zソ !| l| 八} 
           || jI jl ハ⊂⊃  r──‐v⊂⊃ 从ハリ ヽ           先行逃げ切り、学食のメニューで学校決めた、とかそんなの
            .ノヽ八从乂> . _  ゝx‐'x ノ _ .≠   _
                 ≪.:.:.:.:ア二二ニフ"       つ ま ~
                    / ≫/⌒}   {⌒ヽ、
                / /{ (  )    (    )}
                 〈    \ヽ/ー===ゝ=彡′

龍門渕や天江とは親戚

瞬間記憶能力者

   ,. ‐ ''"´ ̄ ¨゙''ー、
>'′         `心‐、    扱いの大変そうな能力だじぇー
○: : : : : : : : : : : : : : :: : :ヽ

; ; ; ; ; |: |: ::λ: :|..|..|.............}ミヾ
: : |/|/|/|/ |/|// }/}_彡ミヾソ

: : |  ◯     ◯' .|: : :ヽ::}    ↓1 舞台
: : !  :::::::     :::::::: {:: ::/|/
:::!入.  rv- ..__   }: ::{ ′     1.県大会決勝
ヾヾゝ、_.!   /  ,ノ         2.個人戦県大会
゙`゙゙゙゙>‐≧=<‐'"´          3.一年前の全国

 /:::::::\ィ=|:::::::\           4.阿知賀と練習試合
// ̄ミヾ\|:::::::/|          5.その他

5清澄撃破 if

↑+後の全国

          __
      _rァ'´ .................`ヽ      もんぶちで全国
.    ∠ ,:'   )...............;......:.
   / /....i....../...................○⌒ヽ   どんどんハードルが上がっていくのを感じる
   7..../.....∧::{ i..../i_.../}....{:::........ヘ
   レ::八...{f斧i ヾ:{´V /...八.......ト、i  これでこそ安価スレというもの

    レ }:::ハ Vソ  ィ斧ミx/::::}/::::::::|`
     {::::::{、  、_ ー' 7::::/::Vi::: |  
     ⌒ >- ===<:::/レ レヘ:ノ

        /ヾ=ニ三彡ヘ

         〈_,i Y´ 〈  〉      ↓1~↓3 対戦校
        / j |{   .Y´ト、      
       ト-クノ }    〉 i:::i.
        ,Y::/`ー‐'7::::{_j:::iト、
      〃 `r‐r-、:i:: ィ:::::::i| i

     /八::: 「 .|:::::|. ̄|:::::: i| |

.      {(  ` | |-、|  .|:::::/j ./
           辷j  ‘, :{⌒i/
             辷j

阿知賀撃破if晩成

臨海女子

しらいとだい

この組み合わせ決勝戦かな?

間違いなく決勝卓

          ,.  -―‐-- 、
   ___    /: : : : : : : : : : : :\__
  彡 ': : _:ミC' ://: : : : : : : : : : : ヽ}-、    晩成に決勝進出する力はあるのだろうか……?
  /: :/: : ィ○/ / : : :!: : !: : :!: : : : : :.ハ : \
  !イ: : ://: ::/: ,'ィ ⌒!ヽ!|: : :i: ハ: :!: : :.!: : : |
   W//: : ,': : !:リxそト  |/レ⌒V: :!: |: :!: :!  ↓1
    /: : : !: : !〈 ト!::リ      |/厶ハ/ V   1.決勝だよ!

    V!: :八: :!xx`¨    ⌒ヾ !: : :|      2.準決勝だよ

     Nハ:!ヽ|ゝ、  「  7 xx人: : |      3.二回戦だよ
         >‐:: > n/7hr<レイ|/       4.エキシビション
        厶ヽ:::::::Y   /::::7
       /! \>::.|  /:::::/|

       L|  ヽf^{ミニf フ! .|
        !  / `¨ハ. ! .|
        | \   /:::::! / |

白糸台辺りが強豪校を潰したと考えれば晩成でも大丈夫だよ

能力者集団阿知賀を初見で潰したなら晩成はとんでもない対応力持ってるんじゃね?

県人未踏の決勝戦か
王者の打ちしゅじを期待しよう

>>295
なるほど、そう考えればif晩成が末原先輩の集まりに見えなくもないね

やえさんは少なくとも全国クラスであるとは思うけど…

前の晩成の子がいるとしてみたら.......

>>299
なら行けるかも?

途中送信
前の晩成の子がいるとしてみたら.......
もともと晩成のキャラ自体設定が薄いし…

>>301
ならば小走先輩と前の子以外をキャラメイクすればいいんじゃないかな


「衣はまだ来ないんですの?」

「ええ。お目覚めにはなられたのですが、『お腹が痛い。五臓六腑に内臓痛だ』とおっしゃっています」

「オレが呼びに行った時は、『眠過ぎて衣は自分が蝶なのか人間なのか分からなくなってきた』とか言ってたぞ」

「仮病」

「なら、待ってても来ないんじゃないかな」

「そんな! 決勝戦ですのよ!?」

「決勝だから……じゃねーか? オレらと違ってあいつにとっては、最後なわけだしさ」

この場にいない六人目のことが話題に挙がると、控え室は静まり返った。

きっとみんな、心の中では分かっていたのだ。
天江衣がどうして来ないのか。龍門渕の六人目が、今どんな気持ちでいるのか。


「仕方ありませんわね。補欠出場の申請をします」


時間的にはまだ余裕はある。決勝戦の補欠申請なら、中堅戦までに受け付けを済ませればいい。
けど一が言ったように、このまま待っていても仕方がないのだ。

    __
  /.:.:.:.:.:.:.:.\     急にレスが増えてびっくり
//..i..i.i...i...i..i...,.ヽ>、
i:.:.l、.:l>ヽハ!<レi:.:|:.:ヽ ↓1 代わりに入るポジション
V|:.:("「 ̄ ̄|"イ:.:|ノ"

. "!、.:\、_ノノフ'"    先鋒・次鋒・中堅・副将・大将  
  .  >':i:::::::i:Y
   (^^)、;;;;l:ノ)
    |`ヽニラ|
    |/   ヽ」

大将

先鋒

衣の代役で大将と言うことは強いけど訳ありで非出場とかありそう


私はあなたたちの部活には入っていない。だから全国に行く義理も義務も無い。
そう言って旅費を突き返してやったというのに、何故か私は観戦に来ている。

「負けちゃえばいいんだ」

毎回そう言い続けているうちに、気付けばもう決勝戦。
ハイレベルな戦いを見せられるたびに、心が揺らいでいく。

はたして私たちの麻雀部が戦っていたら、ここまで来れただろうか。

県予選で風越に勝ってみせるくらいの気概はあった。けれどその先の戦いで、部長の力は通用しただろうか。
今ではもう、牌に触ることすら嫌がるようになってしまったみんな。
彼女たちがもし全国に出ていたとして、神代小蒔に、獅子原爽に、勝てただろうか。

握り締めた拳の中で、爪が手の平に食い込んでいた。


「決勝戦前に、選手交代のお知らせです。龍門渕高校、大将の天江衣に代わり――」

「え?」

     __
  oo´.   ヽo   名前決め
 ((ルf(ノノリ)))ル   入れたい単語とか要素とか

   从リ゚ ヮ゚ノリ
    /j_丞i、    ↓1~↓3あたり
.   (.(゚‐゚)つ)
     じ'ヲ

物部

「物部沼 覚(ものべぬま さとり)……って誰?」

淡の問い掛けに答える声は無かった。
監督も、今年の長野の記録には残っていなかったという。

「そもそも、天江衣を引っ込める理由がない。本当にただの補欠、六番手の選手なのだろうな」

「何それ拍子抜けー。天江衣が出ないなら、私が圧勝するに決まってるじゃん」

「晩成の大将だって、終盤結構喰らいついてきてた。油断するのは大星の悪い癖だ」

「失点量から言って、一番油断してたのは先輩だけどねー。」


――――


「お前と戦えるほどの選手ならまず覚えているはずだ。
一応調べてみるけど、対策は必要無い。好きに暴れて来い、ネリー」

「わっかりやすい!」

「モノベヌマ……? どこかデ……聞いたことがあったかもしれまセン」

――――

「あんなに天江衣対策やらされたのに、こんなの酷いよー……。
だから私のことはいいから、やえちゃんは自分の相手の研究してろって言ったのに。もう寝るー」

「寝るじゃない。ネリー・ヴィルサラーゼの牌譜検討だってまだ完璧じゃないんだから」

「あの先輩。もう先鋒戦が始まります」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
―――――――――――

控え室に行くのは気が引ける。どうせ天江衣の病欠なんて、嘘に決まっていて、今も控え室で元気にしているに決まってる。
もし顔を合わせれば、私に決勝の大将戦を譲ったことを恩着せがましく言ってくるのだろう。例の、偉ぶった口調で。

そんなわけで結局ぎりぎりまで観戦して、大会スタッフに対局室まで案内してもらった。


「お前が衣の代わりのサトリ? 一文字違いだけど、衣よりサトハより全然弱そう」

「天江衣はー? 私楽しみにしてたのにぃー」

どいつもこいつも、コロモコロモ。
龍門渕のエースは元々は私のはずだったのに。

「うるさい。衣程度で騒いでるようじゃ、程度が知れる」

「へぇ。確かに」

無理して大口を叩いただけだったのに。
ネリーが同意して、私に笑いかけてくる。

瞬間、満月の夜のあいつを前にしたときみたいに、全身が震えあがった。

↓1 ネリー
↓2 さとり 
↓3 あわあわ
↓4 柘榴

はい

ほい

9

のよー

             ____

         ....::-.;‐.;.;:::::::::::::::::::::;.;ヽ.、
       ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::\
      ./::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::,,-,,、:__;:::::\    いきなり特殊……
     /:::::::://:::/i:::::イ::::.::::::::. .,'   ヽー-:;ヽヽ
     |/|::::| |::./ |:::/ !:::::|:::: | ヽ、__,!::::::::::\::ヽ と、とりあえず夕ご飯たべるー

      |::::| |::| .|::| |:::/::::/:::::::::::| /::::::::::::::::ヽl

      \i人!  V |//:/:::::::::::::///|::::::::|ヽ:::l:l
       //  ○   ´|::::::::::::// :::i::::::::i l/ l  ↓1
      i/       /:::::::::::::´:::::::/::::::ノ::::::::,i   1~3:ネリーと共倒れ
      .(   """  /::::::::::::::::/:::::'´´´:::::::l:/   4~6:淡ちゃんはサトリに興味があるようです
      .|ヽ、△    /::::/:::::::::/:::::::::::::::::::::/:.i    7~9:卓上の支配者
      ヽ/| ヽ、_  '''´/ // /|::::::::::::,'::i/
        \,,iヽ ̄iー,/´ -‐、-‐´i':/
            /´  i′ ヽ

そい

ダメみたいですね…

特殊引いたの淡だから淡の結果じゃないの?

化け物2人が共倒れして
そうじゃない2人が勝ってくの好き

柘榴ちゃん再登場か

隣の二人は、試合が始まった途端に目を閉じた。
しかも片方はこっくりこっくりしている。そのうち椅子から転げ落ちそう。

私に勝てないのが分かると、あからさまにやる気無くす人って結構いるけど流石にこれは酷い。

実質1:1か、と思って向かいの相手を見ると、ちょうど目が合った。

「ゆっくりすぎる上に打点も微妙だけど、最初の派手さだけはいいよね」

「私に言ってる?」

「うん」

起家、臨海。第一打。

広く構えて少しでも早く手を作るために字牌整理。あるいは他家に鳴かせて私のダブリーを阻止しようと真ん中から切る。
一巡目の打ち方は大体この二通り。どちらにしても、わざわざ見ている意味はあんまり無い。

どうせ私はダブリーするんだから、捨て牌より、相手の顔でも眺めていた方が楽しめる。
それに今日はテルと練習したテクニカル淡ちゃん打法も出すつもりだから、自分の手牌も見なきゃダメだし。

「リーチ」

だから、その声を聞くまでネリー・ヴィルサラーゼの第一打が曲がってることに気付けなかった。

「っ」

私より慎重低い癖に、真正面から私を睨んでくる。いや、そんな敵意のこもった視線じゃない。
私がどんな顔してるのかって、興味津々で観察してるだけ。

許せない。

それは、私の役だ。

「リーチッ!」

卓の端に叩きつけるようにして置いた牌に回転をかけて中央へ。
リー棒を投げ出しながら対面を睨み返す。

ダブリー抜きのテクニカル打法は後。まずはこいつを、私のダブリーでぶっ倒す。

「あ、それいい。目立ってる目立ってる」

「うるさい!」

「つかれたあたまにひびいていたいー」


大星淡の支配は健在。配牌5シャンテンスタート。
衣の支配となら力のぶつかり合いになるけど、初手に関してはどうしようもない。

バラバラの13枚を記憶して、目を閉じる。
流石に決勝だけあって牌は新品みたいだけど、大星淡はリーチ宣言牌をやたら大仰に打つし
この局の間に傷がつくことを十分考えられる。そうしたらきっと、覚えてしまう。それはフェアじゃない。


一手一手、落ち着いて進めていく。これだけバラけた手牌なら、当然手の進む自摸は多い。
序盤は安定して手が進むし、中盤以降も私の特性上、不要牌はそう多くは来ない。

そうして静かにまとまっていく牌を見ると、やっぱり和了りたくなってくる。


この戦いは私の麻雀部のものじゃない。これは私の望んだ決勝じゃない。
いっそわざと負けてしまえば復讐になるのでは、なんて頭の中で意地悪なことを呟いてみても
気付けば手は進んでいる。


準決勝で当たった時と同様、シャンテン数的には和了りの遠い手牌。

でもそれ以上に、何から順に切っていけばいいのかが難しい。
役は全然見えないし、一九字牌はいっぱい来てるけど、まず切ってよさげな上家の風に限って無い。

こういうとき、細かい配慮で勝率を1%上げられる人をこそ強いと言うのだと思う。
思うけど、できない。

何か考えようにもそもそも思考の糸口が見えない。
知識を引っ張り出そうとすると、昨日叩きこまれた天江衣対策が出てくる。意味無かったよやえー……。

そうしている間に、切ろうと思っていたところが重なり始めてなんだろうこれ。

大星淡のダブリーは、カンして裏が乗るまでは安いから押していっていい。
そんな大雑把な知識だけで打ち続けて――。

「自摸。1600・3200」

とりあえず上がったけど、こんな状態で最後まで打ち続けられるか大変不安です。
休憩時間は寝るから来ないでねやえちゃん。


「これは珍しいですね。七対子混老頭、25符4翻」

「難易度と点が割に合わない和了り議論の常連だね」

「刻三選手は準決勝でも白糸台と当たっていますが、その時とは毛色の違う和了りですね。
前の試合では、役牌バックの鳴き上がりを狙った局が目立っていました」

「そうでもないと思うけど……」

「出ました、すこやんのダメ出し」

「いや、感じ方の問題は人それぞれだから、別にいいんじゃないかな」

「そういうフォローいいから早く解説してください。次局始まっちゃうじゃないですか」

「えぇ……。えーとね、このところ手牌に字牌が目立って、その分シャンテン数が高めな配牌が多いんだけど
まさにその聴牌まで遠くなってる要因、他の人なら真っ先に切るようなところで、この子は役を決めていく。
そういう意味で、これまで通りの変わった手作りだな、って……」

「それって珍しいことなんですか? プロの人とかって、何故か結構字牌握ってたりするなーって、昔から不思議に思ってたんだけど」

「それとは全然違うよ。降りやすい形をキープしたり場を遅らせたい意図で絞るのと、役牌重ねを前提に考えるのは真逆。
攻めるつもりで字牌を絞ってるのは、形だけ上級者を真似た人に多くて……」

「つまりこの和了りは素人だと」

「そんなこと言ってないよ!? い、今のは一般論の話だから」

「一般客にまで矛先を向け始めました! 今宵の小鍛治は血に飢えている……」

「ネタが古いよこーこちゃん」

寝落ちかな…?
体に気をつけろよ
そういえば大将戦までの得点ってどうなってるのかな

晩成の子が和了ったとき、他二人は驚いた顔をしていた。それはいい。
私だって結構驚いた。全然聴牌気配を感じ取れてなかったから。

でもその後の、「邪魔するな」とでも言いたげな表情が、癇に障った。
こいつらには負けたくないと、思った。

「リーチ」 「リーチ」

大体そのダブル立直もどうなんだ。もうちょっと待ってから立直した方が良い場面も多いんじゃないのか?
そんなに簡単に切り捨てていいのか。その手の、他の可能性を。

――捨てたものは、返ってこないというのに。

「これは、相性が良いのでしょうね」

「ダブリーに相性……? 物部沼さん、別に早上がりが得意ってわけでもないよね?」

「違いますわ」 「そっちじゃなくて」

「大星淡の安全圏」 「ネリーのタダ乗り」

「あら? もうネリー・ヴィルサラーゼの能力が分かっていますの?」

「ありゃあオレと同じタイプだからな。オレは相手が動こうとする時、その直前で流れを変える。
けどあいつは、流れを見切って他人が作った波に乗る。一巡目で確実に来るダブリーなんて
あいつにとっては扱いやすいことこの上無いだろうな」

「他人の能力発動のタイミングを見極めることで、それに先行できる……?」

「案外、交代で良かったのかもな。衣の海底も、タイミングが決まってて分かりやすいタイプだ。
けどあいつの能力は初見じゃまず分からないし、力の流れも見えづらい。で、そっちはどういう意味で?」

「捨て牌が裏目になることが無い。彼女風に言うなら、『捨てたものは返ってこない』という特性。
配牌時に5向聴……和了が遠いということは、それだけありえる聴牌形が多いということです。
彼女に捨て牌の引き直しが無いのは勿論、切り捨てた聴牌形に向かう牌も引き辛くなる以上、
あのバラバラな初手は、彼女に限ってはむしろ通常より早い手である可能性すらあるでしょうね」


私たちが龍門渕麻雀部を乗っ取ったのが一年前。

元レギュラー陣に対する衣の戦い方は、決して褒められたものではありませんでした。
それは、わたくしの責任でもあったのでしょう。

『楽しい麻雀を』
けれど、そのときの衣は、まだ相手を弄ぶ以外に、麻雀の楽しみ方を知りませんでした。
結果、元会った麻雀部を完膚なきまでに潰すことになってしまいました。


けれど一人だけ、新麻雀部に異議を唱え続けたのが、あの人でした。

『満月の天江衣に勝てたら、麻雀部を解散しろ』と。
それから一年間、毎月満月の日に来て、衣が飽きるまで打ち続けていく。

あるいは彼女が、一番衣と真剣に向き合っていたのかもしれません。
私は満月の夜には進んで衣と打とうとはしませんし、一は露骨に満月の衣を避けています。
全力の衣を一番よく知っているのは、間違いなく彼女でしょう。

そうして不思議な付き合いを続けている間に、段々と分かってきました。

彼女の異能は、麻雀だけに限った話ではなく。
一度諦めた探しものはもう出てこない。別れた友人との再会の日はやってこない。

だから彼女は、簡単には諦められない。
だから彼女は――当人たちが麻雀を諦めてもなお――かつての麻雀部に拘り続ける。

目標の定まらない無秩序な配牌。七対子6向聴の十三無靠。もはや何をすればいいのか分からない手牌。
だけど、ここから生まれうる和了はそれこそ無限にある。

それを一つ一つ捨てていくたび、山の中の未来が枯れていく。
捨てた牌は返ってこない。捨てた和了りに続く牌もほとんど来ない。

国士無双、無い。字一色、無い。チャンタ、無い。三暗刻、無い。

一巡ごとに、山が狭くなる。さっきからムダヅモが一度も無い。追いつける。

けれど、捨てることは悲しいことだ。

あんなに未来があったのに。どれほど遠くても、そこには無数の可能性があったのに。
こんな平凡で、型にはまった手にしてしまった。




他の人は、終わったあとに牌譜を見れば、自分の打ち方が最善であったのかどうか分かるそうだ。
どこが間違いだったのか、どうすればよかったのか、振り返れば理屈立てて考えられる。

でも私はダメだ。だって私の選択は、明確にその後を変えている。
違う選択をしていれば、必ず違う未来があったはずだ。捨てる牌が一つ違えば、まったく違う世界があったはずだ。

鳴きでズレた分まで計算に入れて検討するとか、その後の結果に関わらないデジタル理論的なセオリーだとか
そんなものでは納得できない。何にもならない。人が踏み固めた道の上は、私には歩けない。

間違っていたと確実に言えるのは振り込んでしまった瞬間だけ。
和了った時でさえ、別の打ち方をしていればもっと高い手があったのではないかと思ってしまう。
それを確かめる術は無い。

だから私は、自分が強くなっているのが分からない。何が正しかったのか分からない。どれだけ勝っても、それはただの幸運かもしれない。

過ぎ去っていったものは何も教えてくれない。何も残してくれない。
ただ、最後まで捨てずに残しておいたものだけが、私の側にある。

だから、捨てるときは心を決めなくては。

手の中から引き抜くときも、それを河に置くときも、牌を曲げるときも。
まるで生きた心地がしない。

汗がべったり牌につく。この手を離すまで、この場に酸素は無い。
いくら息を吸っても、胸は苦しくなるばかり。血の巡りは早くなっているのに、手足は重くなっていく。

「リーチ」

この千点は、決して捨てない。必ずこの手に取り戻すから。




「六向聴からわずか10順でリーチ! 索子を伸ばして理想的な三面張だ!」

「この立直は……ちょっとどうなのかな」

「えー、いいじゃないですか。ここまで突っ張っておいてオリはないだろうし」

「いや、晩成の子も未だにオリてないから、下手に立直すると四家立直で――」

「っとォ! 一発きましたー! メンタンピン赤ドラ……出上がりなので一発でも本来なら満貫のままですが
さらに上手く裏が乗って、親っ跳にまで化けたー! 龍門渕のピンチヒッター、いきなりのホームラン級!」

「この振り込みで、ようやく宮永照の作った貯金が崩れたね」

「この決勝戦、白糸台が二位以下になるのはこれが初めてだー!」

「嘘……また和了られた……」

っていうか、ひょっとしなくても、蚊帳の外だ。
安全圏はちゃんと機能してるはずなのに、私がカンする前に手をまとめてくる。

晩成も龍門渕も、正攻法で突き破ってくる。こんな力技で、テル以外に負けるなんて。

そんなの――。
許せるわけ、ないじゃん。


悠長に三つ目の角を待ってたら間に合わない。
ちょっと早いけど、ここからの淡ちゃんはおニューのテクニカル打法。超新星スーパーノヴァだよ!
……あれ? スーパーノヴァって日本語で新星だっけ? まあいいか。

ちょっと頭使う分、ずっと早く終わらせてやるんだから!

なるほど

金髪タコちゃんに乗っかって、配牌時の嫌がらせも二重掛け。
なのに、この速度で和了ってくる。速すぎる。

もしネリーが初手を押さえつけるのをやめたら、とりあえず金髪さんは完全に置いてけぼり。
一位から引きずり下ろすためならアリだったカモだけど。今からじゃ、トップのベリーロングさんのカモになるだけ。

多分あの半目ふにゃもらけちゃんも、ベリーロングさんも、サトハタイプ。能力とかじゃなくて、ただふつーに強いだけ。
地味な力だから、乗りようがないよ。

決勝戦まで行ったら、きっとまわりもハデハデでパッとした能力者になるから
そのとき暴れるのが一番目立って、一番スポンサーに受けるって聞いてたのに、話が違うよ!

このままダブル立直をしてたら、そのうち私も振り込むことになる。
でもダブリーをやめたら、流れが途切れる。次は多分、金タコの嫌がらせに引っかかって手が乱れる。

ど、どうしよ。共倒れも困るけど、かといって他に乗れる波も無い。

↓1 ネリー
↓2 さとり 
↓3 あわあわ
↓4 柘榴

はい

おまかせあれ!

あわわわ

そーれ

オリキャラたちのコンマが悲惨なことに……ww

コンマ一桁だぞ

東二局一本場。

「……」

金色タコさんが、ダブル立直をやめた。
でも髪は相変わらずにょろにょろしてるし、感覚的にもまだ力は続いてる。

意図はわかんないけど、有難い。にょろにょろな流れを掴んだまま、ダブリー無しで好きに打てる。
地味な打ち方になるけど、小さな流れをちょこちょこ積み重ねていくしかない。

「えいっ!」

普通に打ったら、この手の和了り牌は終盤まで出ない。
タコさんを乗り捨てる局だけはその縛りを無視してダブリー早上がりも狙えるけど、今はまだまだダメ。

床まで垂れそうな黒髪超ロングさんは、前局の終盤に凄い勢いだったけど、今のところは穏やかな流れ。
こっくりこっくりメトロノームさんは自分から流れを作ってくよりは、場の流れを利用して無駄な力を使わずに進むイメージ。

とりあえず最初は……金タコさんだけ。なんかぬるぬるするのに乗っててあんまり得しないからほんとーはそろそろ打ち方変えたいのに。
えっとー、まずはタコさんに合わせて暗刻崩していこっか。

自分が呪われているのではないかと最初に思ったのは、親戚の――天江衣の庭で遊んだ日だった。

その頃も衣は、今と同じくらいの身長をしていた。
その頃の私は、まだ衣と仲がよかった。

年下の衣に、私はどこか憧れていたような覚えがある。私が知らない言葉を使い、私が知らない遊びをする、大人びた少女。
この生き物は大人になるまでもなく、もう完成しているのではないかと――そんな風に思っていたような気がする。

私はいつも衣に教えられるばかりだった。そこに嫉妬はまだ混じっていなかった……と思う。
たまには一つくらい、お姉さんらしいことをしたくて。けど私が知っているようなことはもう衣もみんな知っていた。

だから、母の指輪をねだった。そう凝ったデザインというわけでもないのだけど、子供心には世界一の逸品だと信じていた。
多分、母がとても大切そうにしていたから、それが伝わっていたのだろう。

この指輪を付けている間だけは、衣の隣に立っても見劣りしない。そんな勝手な自信と幸せを胸に、私はいつものように遊びにいった。
衣は指輪にはそれほど興味を示さなくて、私たちはいつも通りに外で遊んだ。

衣が声をかければ、カエルはそれに答えるように鳴いた。トカゲに挨拶に行けば、相手の方から出てきた。
衣はどういうわけか、彼らがいる場所を分かっているようで、広い庭を迷うことなく巡回していくのだ。

私はそのお散歩が楽しくて、大好きで、いつものようにはしゃいで、気付いた時には指輪を無くしていた。
さとりちゃんの指は細いから、はめてもすぐ取れてしまうよ、って忠告されていたのに。

暗くなるまで探し続けたけど結局見つからなくて、迎えが来たので私は帰った。
あとでまた探すからと言ってくれた衣に、最後の笑顔を向けて。

カラスは光る物を集めて巣を作るとか、そんな冷静な言葉は私を追い詰めるだけだった。

私は、衣に会うたびにまだ見つからないのかと詰るようになり
ついに家の者をやって天江の庭を捜索させても見つからなかったのをきっかけに、私は衣を呼び捨てにするのをやめた。

母は大したものじゃないから、代わりを買えばいいと言っていたけれど、代わりの指輪がはめられることはなかった。
私はその指輪がどういう意味を持つものなのかまだ知らなかったし、母も説明しなかったけど、あれは代わりでは意味が無かったのだ。

その時私は、ようやく知った。無くしたものは返ってこない、そんな大原則を、ようやく直感した。諦めていけなかった。

そうして事の重大さを理解すればするほど、私はそれが失われたのが自分のせいだということに耐えられなくて――。


天江の娘に大切なものを盗まれた。天江の娘は泥棒だ。蛇と話す悪い魔女だ。
怪しい本をたくさん読んでいて、だからあんな喋り方しかできないのだ。あれは悪魔だ。


そんな心無い言葉がどんな結果を生んだか知ったのは、何もかも手遅れになった後。
私は天江衣の何もかもに耳を閉ざしていたから、彼女の両親の葬儀まで、本当に知らなかった。


そうして、次に会った時、今度は彼女が私の居場所を奪った。

母の手元を見るのが嫌だからと、寮付きの高校に進もうと思ったのが間違いだったろうか。
それとも、テレビで見たプロの発言に心惹かれて、麻雀を始めたのが間違いだったろうか。
あまり考えたくない。

牌を切る痛みで、傷が開いていく。
過去を振り返っても何も得られないのは、これまで嫌と言うほど思い知らされてきたのに。
無くしてしまったものは、もうどうにもならないのに。

どうして天江衣は、私をこの場に立たせたのだろう。

これほどたくさんの道を捨てながら進む麻雀は、初めてだ。
こうなると分かっていて、私をここに置いたのだろうか。ならこれもまた仕返しか。

もう負けてしまえばいい。何度もそう心の内で呟いている。

けれど頭の中では、考えられる道筋をいくつも思い描いて、それを端から切り捨てていく。

負けたくない。負けられない。

これは一体、だれのために?

タコスが切れたか…


配牌時に聴牌形。役は無しの両面待ち。
でも、この形で待ってる2枚は最終盤まで出ない。この萬子に横の伸びは無い。

そして暗刻の六索でカンできるのは三つめの角を曲がった後。
つまりここは、私にだけ見えてる完璧な壁。

和了るためには、まず芽の無い塔子の処理から
そこからじゃんじゃん染め手気配漂わせてく方針。

索子の上の方を抱えてくれたら万々歳。六索の壁で伸びないから感覚より手が進まない。
回してるつもりで無駄なリスクだけ抱え込むって寸法、テクニカル淡ちゃんトラップ。
そうでなくても、私の手を高めと見て迂回してたら、ただでさえ遅い初動から私に追いつけるはずもない。

最後の角まで手に入ってこない牌。そしてカン裏。私が一番、この卓の深いところを見てるんだから。

ぶっちゃけ私だけの情報を前提にまっすぐ手作りした方が高いし早いし強いっぽいけどー
対面の奴ムカつくから、私なりのやり方でハメてやりたいなー、とかー。


大星淡が索子で竹取物語。ネリーヴィルサラーゼが筒子でけちん坊。
序盤から染め手気配濃厚。でも突っ張りあったら、鳴いて手が進みそうなものなのに、ここまで鳴きは入ってない。

なんだか変な感じ。あーるでこ感。

無理に他人のテリトリーで張り合うのもアレだし、何が何やら分からないし。

とりあえず、まだ和了りを諦めないなら、こーいう方針かなー。

「一時撤退、っとー」

大きく方針転換。索子筒子と来たら、せっかくだし私はココでしょ。

「なんなんでしょうかー!? 一時撤退とか言いながら全然撤退してませんよ」

「まあ、シャンテン数は下がったね」

「染め手を匂わせてるところに連続で打ち込み始めて、撤退というか焦土戦術と言うか……」

「でも実際、匂わせてるだけだからね」

「分かってるなら撤退とか言わないでしょうし、なんなんでしょうか。たぶん高度な戦いです」

「あっ……」

「どうしたんですか? また電気代払い忘れたんですか?」

「いや、そういうのは親に任せて、じゃなくて!」

「今更染め始めた……? 一巡目で字牌切っといて?」

「索子、筒子にそれぞれ壁があって、鳴きが無いのに不思議と対子場傾向になってるから
これはこれで方針が間違ってるとは言い切れないけど。でもやっぱり遅いよね」


上家、晩成のふにゃもらけが5巡目から索子・筒子を連続切りし始めた。

タコさんの制約にかこつけて、終盤まで進まない位置に相手を押し付ける狙い、読まれてる?
普通にこっちを染め手と見た上で、テンパイ前に切り辛いトコ捨てていく捨て身のエスケープって見方もあるけど。
なんかもう対局始まってからずっとほんわかした表情で、ぼーっと河見てるばかりで表情からは何も読み取れない。

風牌は私も金タコさんも抑えてるから、ただでさえ初手が荒れてる人が今から萬子に染めていくなんて決まるわけないと思うけど
初手聴牌崩しから未だに復帰の目途が立たないし、何より龍門渕の隠し玉が怖いから、この局はここまで。

この先を戦い抜くために、集中して観察する。

私には無いもの。普通じゃない流れを見つけて、次に活かす。

龍門渕はまた、最初は何の力も感じなかったのに、いつの間にか勢いに乗ってる。
何か始まったら絶対感じ取るつもりでいたのに、結局始まりが掴めない。

晩成の方は、独特な対抗策を仕掛けてくる前に気配の変化。次は動き出しで場を弄っておけば、対応できそう。


「ポン」

鳴いてきた。何かと目瞑ってたり、他家の手から視線外してたりするくせに
晩成の奴とは違って、龍門渕の方は牌を打ち出す瞬間だけはちゃんと見てる。

また、こいつが仕掛けてきた。

安全圏は確実に効いてる。序盤の捨て牌には何の特徴も無い。
でも中盤、終盤になってくると、怒涛の河が押し寄せてくる。

自摸が全部手牌に入る。代わりに出てくる牌には、一つ一つ意志を感じる。
はっきりと安牌枠として残されたものであったり、明らかに手の中で役割を似合っていた牌であったり。

終盤のこいつには、無駄が無い。

そういう綺麗な麻雀、見るだけなら好きだけど、見せつけられるのは嫌だ。


鳴きが確実に前進になる。無駄を削ぎ落としてノーガードで攻めていく亦野先輩。
ほとんど誰にとってもどうでもいい一枚目を繋ぎ合わせて手を作るたかみ先輩。
手を同時に河まで意識して作っていき、相手の牌が吸い込まれるような待ち方をする菫先輩。

綺麗だと思う。
一打目でリーチをかけて、あとはただ来る牌を切っていくだけの私と違って。

私の一打目の方が絶対強いのに、先輩たちの一打目は、何故だか格好良い。
しかも一打目以降は特に意味が無い私と違って、それ以降も無性に輝いている。
ダブリーのかけ方で見た目だけ取り繕ってみても、その差は相変わらず。私の方が、強いのに。

それがなんだか悔しかったから。だから、努力嫌いを負けず嫌いで押し潰して、今の打ち方を覚えて、ようやく公式戦でやってみて。

「引くわけないから。リーチ」


瞬間、水音を聴いた。

メグをボッコボコにしたトーカや、例のコロモが見せる類の異能。
そんな澄んだ音じゃない。そんな強い音じゃない。

鈍くて重くて篭ってる。どろっどろのヤな響き。

「ロン。タンヤオドラ3」

点数申告が終わるとまた視線を落として、前髪がだらんと落ちる。表情が陰に隠れる。

「大星さんの捨て牌は軽すぎる」

「っ――!」

その声色には、馴染みがあった。

何か無くしたんだ。ネリーと同じように、大切なものを、いっぱい。

「ネリーにはお金が要るの」

ずっと働いてるタイプ。麻雀だけに限定されない系。詳しいことはさっぱりだけど、もっと本質の部分を垣間見た。
私のこの言葉は、きっとどこか通じてる。

「だから、勝たなきゃ」

↓1 ネリー +1
↓2 さとり 
↓3 あわあわ
↓4 柘榴

ほい

せいや

ぽん

カン

あわあわの流れが死んでる…

特殊出すのに運使い果たした感ある

まだ慌てる期間じゃない、待っているぞ

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