幼馴染「わはー、男くんだー」男「…」(56)

幼「わはー、男くん、おはよう~」

男「…」

幼「男くん?」

男「ん?あぁ、幼、おはよう」

幼「ぼーっとしちゃってー。危ないですよー?」

男「む。いつもぼーっとしてる幼には言われたくないな」

幼「はわっ。いられすよぅ」

幼「ほっへた、つねららいれくらはい」

男「相変わらず、柔らかい頬っぺただな」

幼「えへへー。自慢の頬っぺだよ~」

男「うむ。自慢しても良いと思うぞ」

幼「わはー。男くんが素直に褒めてくれるなんて」

幼「明日は雨ですかね~」

男「失礼な。俺は良い物は良いと、素直に言うタイプだぞ」

男「まぁ明日雨なのは間違いないだろうけどな。梅雨入りしたし」

幼「そうなんですか?知りませんでしたー」

男「天気予報くらい見てこいよ。今日も午後から雨だぞ」

幼「わー、どうしましょう。傘持ってきてないです…」

男「…そんな事もあろうかと」

男「俺は学校に傘を2本、常駐させてある」

幼「どんな事があろうかと思ってたんですか?」

男「雨の日に、お前が傘を持ってこないって事だよ」

幼「ありがとうございます、男くん」

幼「気を使ってもらっちゃって」

男「気にするな。俺たちは幼馴染じゃないか」

幼「わはー。なんか照れますねぇ。幼馴染って響き」

男「そうか?」

幼「男くんは鈍感ですねー」

男「またしても失礼だな」

幼「いたいれふ。つねららいれー」

男「反省しなさい」

幼「ごめんなさい。男くんは鋭いです」

男「よろしい」

男「…」

幼「んー?何か考え事かな~?」

男「…うん、ちょっとな」

幼「私に言える事かな~?」

幼「話しくらいなら、いくらでも聞くよ~」

男「う~ん。これは話してもいいのか…」

男「でも近いうちに、全校生徒に発表あるしな…」

男「あのな、幼」

幼「はわー、男くん、顔が怖いよー」

幼「ラオウみたいな顔になってますよぅ」

男「真剣な話しだからな」

幼「ごめんなさい。真剣に聞きます。なぁに?」

男「最近、この辺りで、ウチの生徒が襲われているんだ」

幼「え~!」

男「主に男子生徒だけど、最近は女子生徒も狙われているみたいだ」

男「最初は金銭目的だったみたいなんだが…」

男「女子生徒の中には拉致されそうになった人も居たんだ」

男「だから、登下校中はなるべく複数で行動するようにな」

幼「大丈夫ですよぅ。私には男くんがついてますからー」

男「まぁ、登校は毎朝一緒だからいいが…」

男「下校はな…」

男「実は生徒会でこの周辺をパトロールするって話しが出ててな」

男「しばらく一緒に帰れないかもしれない」

男「だから、俺が居ない時は、誰かと一緒に帰れよ?」

男「お前は常にぼけーっとしてるんだから」

幼「むっ!失礼な!私はぼけーっとなんてしてませんよぅ!」

幼「いつもキリっとしてますよぅ」

男「絶対にしていない。していないぞ、幼」

男「17年の付き合いがある、俺が言うから間違いない」

幼「むー!」

男「ははは。頬っぺた膨らませても、可愛いだけだぞ、幼」

幼「むーーー!」

男「わかったわかった。幼はぼけーっとしていない」

幼「やっとわかってもらえましたかー」

男「ぽやーっとしてるんだよな?」

幼「また!もー、男くんは、まったく、もう!」


幼「男くん、はい、お弁当ですよー」

男「おう、いつもありがとう」

幼「いえいえー。男くんのお弁当係は私ですからねー」

男「高校入ってから、毎日だもんな」

幼「皆勤賞ですよー」

男「ホントにありがとうな」

幼「いえいえ。いつも美味しそうに食べてくれて~」

幼「こちらこそ、ありがとうだよー」

男「幼、間違ってるぞ?」

幼「はぇ?」

男「美味しそう、じゃないぞ。実際美味しいんだ」

男「もっと自信持っていいぞ、幼」

男「2年以上、お前の弁当を食べ続けた俺が言うから間違いない」

幼「もぅー、男くんはたまに…」

幼「ものすごーく、恥ずかしい事平気な顔で言いますねー」

男「俺は素直だからな。美味い物は美味いと言うぞ」

男「もちろん、不味ければ不味いと言う」

幼「男くんから不味いの言葉を、聞いた覚えが無いんですがー」

男「だから、それはお前の弁当が美味しいからだ」

幼「わはー。ありがとうございます」

幼「男くんに褒められると、嬉しいですよっ」

男「おう。そうかそうか。ならばもっと褒めてやろう」

幼「あんまり言われたら、嬉しさ半減ですよぅ」

男「そうか。じゃあ本当に褒めたい時だけ、褒めるとしよう」

幼「そうしてください」

幼「さぁさぁ、そろそろ食べましょうよぅ」

男「そうだな。お腹空いたなもんな」

幼「ふふふー。今日のおかずは新作があるんですよー」

幼「おう。それは楽しみだな」

男「おーい、幼。帰るぞー」

幼「はーい。今日は生徒会は良いんですか?」

男「あぁ、今日の会議はナシだ」

幼「そうなんですかー」

男「ほらよ、傘」

幼「わー。ありがとうございますー」

男「さ、行くぞ」

男「雨足、弱くて良かったな」

幼「そうですねぇ。私は強くても良かったですけどねぇ」

男「む。そうなのか?」

男「長い付き合いだが、それは知らなかった」

幼「ふふふー。私のミステリアスな一面がバレてしまったー」

男「自分で言ったんだろう」

幼「ミステリアス!良い響きですねぇ」

男「幼は全然ミステリアスじゃないけどな」

幼「むー!」

男「…で?」

幼「はぇ?」

男「なんで強い雨足が好きなんだ?」

幼「それはですねー…」

男「…」

幼「…」

男「どうした?」

幼「自然を感じられるからですよぅ」

男「なんだそれは」

幼「弱くても強くても、雨が好きなんですよぅ」

幼「風が強い日も好きですし、雪が降る日も好きです」

男「どうしてだ?」

幼「自然を感じられるって、凄い事じゃないですか?」

男「自然…な」

幼「はいー。私達の日常はですねー」

幼「別にこれといって、変わった事なんか起きない」

幼「そんな自然な事の連続じゃないですかー」

幼「雨や風や雪っていうのはですねぇ」

幼「普段とはちょっとだけ違う『自然』を感じられるじゃないですか?」

幼「そうすると、普段の何でもない『自然な日常』が」

幼「とっても大事に思えてくるんですよー」

男「そうか。幼、そんな事考えてたのか」

幼「ふふふー。またしても私の不思議な一面を、垣間見せちゃいましたねー」

男「うむ。お前は不思議ちゃんだな、幼」

幼「むー!」

男「頬っぺ膨らませても、可愛いだけだぞ?幼」

幼「むーーーーーー!」

男「だいたい、自分でミステリアスって言ったじゃないか」

男「ミステリアスって、不可解な様って意味だぞ」

幼「むぅ…」

男「幼、今日から俺たち生徒会は、先生達と一緒に」

男「周辺地区をパトロールする事になった」

幼「そうなんですかー。気をつけて下さいねー」

男「俺は大丈夫だけど、幼の方が心配だ」

幼「私は大丈夫ですよぅ」

男「誰かと一緒に帰れよ?」

幼「わかってますよぅ」

男「それじゃあ、また明日な」

幼「はいー。また明日ー」

幼「…」

幼「はわっ、いつの間にかこんな時間だ…」

幼「…ついうっかり、雨に沈む夕日に見とれてしまいました」

幼「図書館に本を返しに来ただけのはずだったのに…」

幼「ついつい魅入ってしまいました…」

幼「綺麗だったけど、早く帰らなきゃ…」

幼「…もう、教室にも誰も居ないでしょうねぇ」

幼「一人で、急いで帰りましょう」

幼「バレたら、男くんに怒られてしまいますねぇ」

男「先生、そろそろ完全下校時間も過ぎてますし」

先生「そうだな、そろそろ我々も戻るか」

男「雨足も強くなってきましたし」

先生「うん。他の先生達にも連絡しよう」

先生「もしもし?そろそろ引き上げましょうか」







男「…ん?あれは…」

幼「今日は強い雨の日ですねー」

幼「傘に雨が落ちる音が、心地よいですねぇ」

幼「くるくるっと回してみたり~」

幼「ふふふー。やっぱり雨の日も楽しいですねぇ」

幼「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん♪」

幼「って、男くんに聞かれちゃったら、きっと」

幼「『幼稚だな、幼』なんて、言われちゃうんでしょうねぇ」

幼「…?あれは…」

男「おい、お前!」

dqn「!」

男「そこで何してるんだ?」

dqn「な、何の事だよ、あぁ?」

男「こんな薄暗い路地で、何してたのかって聞いてんだよ」

男「傘もささずによ!」

dqn「チッ!」

男「あっ!おい!待て!」

男「先生!こっちです!ここに怪しい奴が!」

男「逃すかよ!」

先生「何っ!?待て、男、一人で行くんじゃない!」

男「待て、この野郎!」

dqn「しつけぇぜ、クソ野郎が!」

男「…そこのワンボックスがお前の車なんだな?」

dqn「チッ!」

dqn「誰なんだよ、テメェは?」

男「お前だな?ウチの学校の生徒を襲ってたのは!」

dqn「あん?」

男「俺はあの高校の生徒会長だ!」

dqn「へぇ…生徒会長ねぇ」

男「観念しろよ、俺はお前が車に乗るスキなんて与えねーぞ」

dqn「ケッ。甘いなぁ、お前…」

男「何だと?」

dqn2「後ろが、がら空きだぜぇ!」

男「しまっ…」

男(刺されるっ!)







幼「男くんっ!」

グサッ

男「えっ?…幼?」

dqn「おい!マジで刺してどうすんだ!」

dqn2「知るかよ!とにかく逃げるぞ!」

男「幼!しっかりしろ幼!」

幼「」

先生「男!どうした?…幼じゃないか!」

男「せ、先生!お、幼が!幼が!」

先生「落ち着け、男!すぐ救急車を呼ぶ!」

男「幼!幼!」

幼「」

幼「わはー、男くんだー」

男「…」

幼「男くん、どうしたの~。そんな怖い顔してー」

幼「ラオウみたいな顔になってますよぅ」

男「…ごめんな、幼」

幼「わはー。どうして男くんがあやまるんですか?」

男「…だって、俺の事をかばって幼は…」

幼「たいした事ないですよぅ、こんな怪我」

男「でも、一生傷が残るって…」

幼「気にしないでくださいよぅ」

幼「男くんがそんな顔してたら」

幼「私まで泣きたくなっちゃいますよぅ」

男「すまん。そうだよな…」

幼「逆にですねぇ」

幼「命に別状あるような怪我じゃなくて」

幼「良かったって考えるんですよぅ」

幼「3週間くらいで退院できるそうですから」

幼「そしたらまた、一緒に登校したり、お昼食べたり」

幼「なんて事のない自然な日常を過ごしましょう~」

男「…」

幼「ね?」

男「幼、ちょっと聞いてくれ」

幼「なあに~。男くん、またまた顔が怖くなってるよ~」

男「…」

男「俺はお前のその笑顔に…」

男「何度救われたかわからない」

男「いつも俺の側にいて」

男「太陽みたいな笑顔で、俺に笑いかけてくれる」

男「幼馴染だからって、側に居て当たり前の存在だなんて」

男「思ってちゃいけなかったんだ」

幼「…」

男「俺の『自然な日常』にはさ、幼」

男「絶対にお前が必要なんだ」

男「幼、お前の事が好きだ」

男「幼馴染としてじゃなく、彼女として」

男「ずっと俺の隣りに居てくれ」

幼「…嬉しいです」

幼「嬉しすぎで、これは夢なんじゃないかって」

幼「考えちゃうじゃないですか…」

幼「私、あの時、刺されて死んじゃったんじゃないかって」

幼「思っちゃうじゃないですか…」

男「夢なんかじゃないぞ」

男「だから、泣かないでくれ、幼」

男「お前にはずっと、笑っていて欲しいから」

幼「こんな、こんな私で良ければ」

幼「ずっと、ずっと側に居させてください」

男「ありがとう、幼。大好きだ」

幼「わはー。わたしも大好きですよっ。男くんっ」

男「何だかんだで、自然な日常に戻ったなー」

男「あのバカ共も無事捕まったしなー」

幼「なによりですねぇ」

男「なぁ幼。今日は晴れてるけどさ」

幼「なんですかー?」

男「晴れの日は自然を感じないのか?」

幼「なにを言ってるんですか、男くん」

幼「晴れの日こそ、自然を一番感じられるんですよー」

男「ほほう」

幼「お日さまの光を、素肌で感じられるじゃないですかー」

幼「それはいつもの事、つまり一番平凡な日常なんですよー」

男「それは…どんな天気でも結局」

男「自然を感じてるって事なんだな」

幼「そうですよー」

幼「隣りに男くんがいて、一緒に歩きながら」

幼「その日の天気を感じるのが、私の自然な日常ですからねっ」

男「幼には一生、自然な日常を過ごさせてやるよ」

幼「わはー。男くん、嬉しい事言ってくれますねぇ」

幼「期待してますよぅ、男くん」

男「おう。期待しててくれ、幼」

幼「はいっ、男くんっ、ずっとずっと大好きですっ!」




おわり

これで終わりです

読んでくれた人、ありがとうございました

次スレは
幼馴染「男が幸せなら…私…」男「何を言ってるんだ、お前は」
ってタイトルで立てたいと思ってます

では。

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