【話伽】古の力と四人の戦士/03 (20)


闇の主は倒れ

世界には再び光が戻った。

その後……



四戦士は各国を復興させたのちに王となる。

世界の誰もが永遠の平和が始まるものと信じていた。

しかし四戦士は永遠を望まなかった。

時代は変わる。



その時代に生きる人々が世界を動かしてゆくのだ。

我々もそれに逆らってはならない。

それが彼等四戦士の意向であり、決意だった。

彼等は精霊の力を次代へ継承させ、世界を去った。



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【英雄】

水王都・水国軍第一大隊本部


ジェイク「火の国・炎陽付近で爆発、火国は沈黙……」シュボッ

コンコンッ…

???「大佐、宜しいでしょうか」

ジェイク「……フランツか、入れ」

ガチャ…バタン

フランツ「大佐、非常事態です」

ジェイク「簡潔に話せ」フゥ


フランツ「咲水の市街で所属不明の女性二名が戦闘を開始」

フランツ「彼女達は土や炎を使るとのこと……」

フランツ「咲水市街は甚大な被害を受けているようです」


ジェイク「事実か?」

フランツ「無線の声を聴く限り、事実かと思われます」

ジェイク「……至急車を用意しろ、儂が出る」


ジェイク「それと……」

ジェイク「民間人の避難を最優先、兵は後退させよと伝えろ」

フランツ「了解しました」ザッ

ジェイク「フランツ」

フランツ「はっ、何でしょう?」



ジェイク「上、いや軍司令部はどうだ?」

フランツ「まだ何も……いつも通りです」

ジェイク「了解した。この件は儂が『処理』する」



フランツ「報告は『その後』になさるのですね」

ジェイク「ああ、下手に増員されでもすれば死体が増えるだけだ」

ジェイク「では、フランツ・ビットナー大尉、出発後の対応は任せる」


フランツ「ハッ、了解しました」

フランツ「では、失礼します」ザッ

ガチャ…パタン…

ジェイク「………」フゥ

彼の表情に緩みはない。

日常から戦場への切り替えなど必要ない。

彼は如何なる場面であっても兵士であり戦士である。



ーージェイク・ロンベルク



兵士の模範であり憧れの存在。

彼の名を知らぬ者はいない。


ジェイク「……」

煙草を消し自室を後にする。

特別な感情が湧いたようでもなく、特別な装備を用意するわけでもない。

腰には拳銃とナイフが携帯されているのみ。

後ろに撫でつけられた白髪

眉間に深く刻み込まれた皺、射抜くような眼。

五十代でありながら肉体は衰えを知らず、今尚も逞しい。

廊下ですれ違う兵士は皆、畏れと敬いを込めて彼を見つめる。

彼が発つ。



事情を知らぬ筈の兵士にさえ、緊張と動揺が走る。

きっと只ならぬ事が起きたのだろうと……

ーーー
ーー


フランツ「大佐、準備完了致しました」

ジェイク「ご苦労」

???「……大佐」

ジェイク「グレイスか、何だ?」シュボッ

グレイス「……大佐、どうか御無事で」

ジェイク「安心しろ」フゥ

ジェイク「すぐに終わらせる」

グレイス「!!」



グレイス「ハッ、お待ちしております!!」ザッ




ブロロロ…


グレイス「……護衛も付けず、単身で行ってしまわれた」

フランツ「しかし今回の『敵』は特殊だ」

グレイス「火と土を使役する『人間』ですか?」

フランツ「ああ、ただの人ではないようだな」


グレイス「フランツ大尉、大佐はお一人で大丈夫でしょうか……」

フランツ「あの方はいつもそうだ。それに皆も知っているだろう」

水兵達『はい』

フランツ「我らが大佐、ジェイク・ロンベルクに……」



『『『不可能はない』』』


ーーー
ーー


水の国・咲水の街

ジェイク「確認出来る死者・負傷者は何名だ?」

咲水少尉「死者は百名近く、負傷者は五百名ほどです」

ジェイク「思いの外、少ないな」

咲水少尉「はい、それが…」

ジェイク「どうした?」



咲水少尉「『土を操る少女が民間人を守っている』との報告がありました」



ジェイク「……もう一人の少女の目的は分かるか?」

咲水少尉「どうも、土を操る少女を狙っているようです……」

咲水少尉「どうやらその攻防の余波により街も破壊されたようです」


ジェイク「了解した。逃げ遅れた民間人は?」


咲水少尉「現在捜索中であります」

ジェイク「よし、死者・負傷者は直ちに都へ搬送」

ジェイク「逃げ遅れた民間人は引き続き捜索救出せよ」

咲水兵『ハッ!!』ザッ

咲水少尉「大佐はどうなさるのです?」



咲水少尉「指示の通り兵士は後退させ、救助に回しておりますが……」



ジェイク「問題ない、儂が出る」シュボッ

咲水少尉「そんな、今回は状況が違います!!」

ジェイク「構わん、場所は?」フゥ



咲水少尉「……現在は中央、噴水広場周辺かと思われます」



ジェイク「少尉、今後誰一人広場周辺には近付くなと言っておけ」

咲水少尉「ですが大佐、お一人では!!」

ジェイク「これ以上の犠牲を出すことは許さん。これは命令だ」

咲水少尉「……っ、貴方が犠牲になっても、ですか?」

ジェイク「そうだ、何があってもだ」シュボ



ジェイク「それに、今回は国ではなく儂の戦いだからな」フゥ



咲水少尉「大佐、それはどういう?」

ジェイク「そのままの意味だ。では、行ってくる」

ザッザッザッ……


咲水少尉「行ってしまった……」


咲水少尉「他を生かす為に命を晒す」

咲水少尉「戦時となったとして、並みの兵士に出来ることじゃあない」

咲水少尉「大佐、貴方は何故そこまで……」


巻き上がる粉塵に消えた彼の背中。

そこには一体どれほどの命が背負われているのかと少尉は思う。

彼は嘗ての内乱を止めた英雄。

単騎での出撃など今に始まったことではない。

それは己の実力を過信しての行動ではなく

己の実力を客観的に見た上での行動。



自惚れ傲慢自信過剰……


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