少女「世界の終わりが始まってから早10年」 (41)

少女「(今日も今日とて世間は平和に運行されています)」

TV『では、次のニュースです。昨日発生した航空機事故に対し、政府は…』

少女「(企業も政府もそれまでと何ら変わらずに進んでいます)」

少女「(学校がなくなってれば朝早くから家を出なくて良いのに…)」

友女「おはよー、少女ちゃん」

少女「…あ、おはよー、女ちゃん…」

友女「ありゃ?元気無いね。夜遅かったの?」

少女「うん…。知り合いの人が来てて…」

友女「前に言ってた人?私も会ってみ」ドサッ

少女「…」

少女「(女ちゃんは消えました)」

少女「(唐突に物や人が消える。10年前から始まった、世界の終わりの現象です)」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431610030

少女「(今拾い上げた女ちゃんのバッグですが、すぐに消えてしまうでしょう)」

少女「(まず、人か物が消え、それに深く関わっていた物が消え、最後にそれらの記憶自体が消えていく)」

少女「(それが、『消滅』とだけ言い表される世界の…)」

少女「…あれ?なんで立ち止まって…」

少女「(なんで今自分は立ち止まっていたのでしょうか?学校に行かないと)」

少女「…日直の仕事って面倒だよね、『』ちゃん」

少女「…『』ちゃん?……あっ…」

少女「(立ち止まっていた理由がわかりました。今、誰かが消えたらしいのです)」

少女「(『何が消えたのかはわからないが、何かが消えた事は認識出来る』)」

少女「(それが、『消滅』を研究した人たちの出した結論でした)」

少女「(ゆっくりと、けれど確かに世界は削られて行きました)」

少女「(意外な事に混乱は殆ど起こらなかったそうです)」

少女「(未だに世界規模の混乱が起こらないのは何故か、今日も学者さん達が話します)」

少女「(あーだこうだ、なんだこうだ、と)」

少女「(けれど、私は思うのです)」

少女「(消えて消えて消えてしまう以上、何かが消えた事は分かっても、最初からそれは居なかったのと変わりないのではないか、と)」

少女「(今日の今も世界は終わって行きます)」

少女「(一秒に4人産まれ、3人死に、14人が消えていく)」

少女「(それが今の『消滅』のペースです)」

少女「(いつごろ世界が終わるのか。計算はされていますが、それを気に留める人は少ないのです)」

少女「(明日予定が有るから、もうすぐ結婚するから、来月昇進するから)」

少女「(誰かと会う約束だけが残り、結婚するつもりだった記憶だけが残り、誰かの為に空けられたポストだけが残る)」

少女「(本当は、とても残酷なことなのです。皆がそれを理解しているのです。……けれど)」

少女「(消えてしまった思いは最初から無いのと同じだから、何も思えないだけなのです)」

少女「(それを救いだと呼ぶ人もいます。せめてもの慈悲だと。でも…)」

少女「(それは救いなのでしょうか。それは…)」

少女「(私にはわかりません。こんな小娘の私には、決して)」

少女「(土曜です)」

少女「(脱ゆとり…そう謳われて3年前から古き懐かしき半ドンに戻った土曜日ですが、慣れてしまえば大した事は無いものです)」

少女「(むしろ昼食が学食で済ませられるのはメリットでしょう。外食は高くついて困りものです)」

少女「(街を歩いている限り、世間は平和そのものです。『消滅』に出くわす事なんて確立的にはごくごく稀なことですので、普通に暮らせば良い。と言うのが昨今のトレンドです)」

少女「(さて、今日は土曜日なのだと言いましたが、そのトレンドの通り私は誰かと買い物の約束をしていた…はずです)」

少女「(はず、と言うのは、市街地のショッピングモールに行って服を買う予定だったのですが、誰と約束をしていたのか分からないからです)」

少女「(友人が少ない私の事ですから、一緒に出かけるような相手も限られてきます)」

少女「(眼鏡ちゃんとは服を買いに行ったりしませんし、ツンデレちゃんは彼氏とデートだったはず)」

少女「(無論、私には彼氏なんていませんので、男との約束の線もパスです)」

少女「(他の友人とも確認しましたが、皆違うのは確かです。しかし、カレンダーに『買い物(服)』と書いてあった以上は…)」

少女「『』なら知ってるかな……」

少女「……あ」

少女「(その時、理解しました。私は、『』と約束をしていたらしいのです)」

少女「(もう男だったのか女だったのかも分からない『』。それが私の友人であった事は確かなのでしょうが、どんな関係だったのかはもう分かりません)」

少女「(散々『消滅』について愚痴っていた私ですが、いざ知り合いだったらしき人物が消えてみると世間が混乱に陥っていない理由が分かりました)」

少女「(誰かが消え、その人の肩書きだけが他の人の中に残る。残るのは肩書きだけなのです)」

少女「(その人物がどんなに仲の良い親友であろうとも、どれほど愛し合った恋人であろうとも『親友』だったとか、『恋人』であったという肩書きしか残らない)」

少女「(その人のパーソナルは完全に無くなり、その人に割り当てられていた『配役』だけが残る。これはそういう現象なのだと私は今、真に理解しました)」

少女「(その『配役』がどんなキャラクターであったのかを誰も覚えていられない。設定の無いキャラクターが物語の中に存在出来ないのと同じ事なのです)」

少女「(私達が誰かを『消滅』で失った時、その消えた人物は『個人』ではなく顔の書かれていないマネキンへと成り下がる)」

少女「(言ってしまえばそれだけの事)」

少女「(テーブルの向かい側に座らされたマネキンが消えた所で誰も気に止めないでしょう)」

少女「(人が気にするのは其処に座っていた『友人』なのですから)」

少女「(『』の好みの服…そんなものもあったのでしょうか)」

少女「(確かに『』は居たはずなのです。携帯のアルバムに残る、私だけが不自然に写る写真の枚数を見る限りかなり仲が良かった筈…です)」

少女「(『』がどんな顔をしていたのか、『』はどんな背丈だったのか)」

少女「(いえ、それどころか女か男のどっちだったかすら分かりません)」

少女「(けれど、確かに居たはずなのです)」

少女「(『私の友人』という配役に収まっていた誰かが)」

少女「(結局のところ、この『消滅』という現象がなんであるかは解明されていません)」

少女「(発生当初からの学者さん達の疑問は大きく分けて3つです。
何故その場から消えるのか?
何故それに関する記憶も消えるのか?
消えた物は何処へ行くのか?)」

少女「(この疑問に答えが出ないまま発生から3年が経ち、更にある事実が判明…)」

少女「(……………………あれ?)」

少女「(なんで私はこんな所に居るのでしょう?)」

少女「(最寄りのショッピングモールは此方とは逆方向の筈なのですが)」

少女「(携帯の地図アプリを見ても、私が何をしていたのか分かりません)」

少女「(確かにショッピングモールを目的地に設定した筈なのに、道案内が指し示したのは唯の田んぼでした)」

少女「(正直、私の住んでいる所は田舎ですから市街地のショッピングモールと言ってもすぐ近くに田んぼぐらい有ります)」

少女「(ですが、さすがに田んぼそのものをショッピングモールと言い張るような真似はしません)」

少女「(だったら、これは…?)」

少女「(何なのでしょうか、この違和感は)」

少女「(何も間違えていないのに致命的なすれ違いが起きているかのような違和感が…)」

少女「(ですが…この噛み合わない感じはもしかして…?)」

少女「(一応、道案内に従って進んでみましょう。あと百mで右折、その後三百mで目的地周辺です)」

少女「(私の居る場所からは建物の影になって先が見えませんが、地図が示す限り目的地は田んぼだけの筈)」

少女「(しかし、私の考えて居ることが確かなら…)」

少女「(人が『消滅』によって消える際、それは三つの段階を必要とします)」

少女「(まず最初に本人が消え、その人に関わる物品が消え、最後にその人に関する記憶が周りから消える)」

少女「(関わる物品と言っても多岐に渡りますが、消えた人の机やロッカーは空になり、その直後にロッカーや机そのものが消える、というプロセスを辿ります)」

少女「(しかし、ビルの施工主が消えてもそのビル自体は消えないので、あくまで個人の物品が消滅するのではないか、という仮説が提唱されています)」

少女「(これに対して、物が消えた場合は二つのプロセスを辿ります)」

少女「(まずその物品が消え、その物品があった記憶が消える)」

少女「(書類棚が消えても中身の書類は消えず、建物が消えても中にいる人は消えずに地面に立っている)」

少女「(言ってしまえば大規模な紛失と変わりません。そのため、人の『消滅』に比べて大した問題とみなされていません










でした)」

少女「(その事が発覚したのが『消滅』発生から3年が経った頃)」

少女「(ある学者さんが言ったのだそうです。曰く、
『地球の直径が1万1754kmしかない』と)」

少女「(建物や森林などの面積を必要とする物が『消滅』する際、その区域内にいる生命にはなんの支障も出ない為それは誰にも注目されていませんでした)」

少女「(けれど、この報告によって一つの事が明らかになりました)」

少女「(面積を必要とする物が『消滅』する際、その面積分が地球から消えている、という事が)」

少女「(建物が消えた瞬間、全ての地図上からもその建物が消失しているのです)」

少女「(例えば、AビルとCビルに挟まれているBビルが消えた瞬間、Bビルの中にいた人達はAビルとCビルの前に立ち尽くし、AビルとCビルとの間には何も無かったかのようにBビルが消費していた面積ごと地球から消えている)」

少女「(こんな現象が発生しているらしいのです)」

いや、面積より質量だろ
月の公転周期が伸びて潮の満ち引きがとか
強力な記憶、記録の改ざんがある以上
自然法則上の矛盾点を見つけ出さないと消滅現象すら気づけないし
大規模な集団記憶障害現象と思われるだけ

少女「(表層だけが消えているのではありません)」

少女「(ホールケーキをカットしたように中心部まで完全に消え、空いた空間の周りにあった物で埋められて行く)」

少女「(その結果全体が縮小し、地球は縮んでいくのだと学者さん達は結論付けました)」

少女「(急激に地球が縮小したのはその頃までで、今はある程度落ち着いて縮小しています)」

少女「(現在、『消滅』する人間の数に比例して縮小していっているらしいのですが、重力や空気などは何の問題も有りません)」

少女「(しかし、世界地図を見る度に世界中の人は心配になるでしょう)」

少女「(ユーラシア大陸はこんな形だったか?アフリカは本当に一つだったか?南北アメリカは密着していて良いのか?)」

少女「(誰にも分かりません。違和感に気がつかなければ自分の国が消えても誰も認識しないでしょう)」

>>35
その辺結構適当なんで見逃してください…(震え)

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