一ノ瀬志希の代償【R-18】 (24)

●00
※R-18
※P(CuP)×志希
※ヘンタイごっこ注意

※一ノ瀬志希
http://i.imgur.com/Maa4MxI.jpg
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1430839426

●01


「……ねぇ、プロデューサー。確かにあたしは、キミのニオイでいかがわしいことしてたよ?」

「でもさ、あたしだって、キミのためにだいぶ頑張ってるよねぇ」

「だから……そこを汲んで欲しい、と思うんだー。いや、タダでとは言わないから」



「そう、交換条件! ほら、あたしがハスハスした分だけ、キミにもハスハスすることを許そう!」

「えー、ダメなの。なんだ、あたしほどニオイにヨロコビを感じてくれないのか、キミは」

「悲しいなぁ……じゃあ、キミはどうしたら……?」



「んにゃっ、『始末の極意』……って、ナニ?」

●02



「へぇ、キミはまたオモシロイことを考えるねぇ。
 つまり……キミのニオイの嗅ぎ代は、あたしの音の聞き代で払えって?」

志希は目を丸くしていたが、やがてニヤニヤと怪しい笑みを浮かべた。

「ふっふー、さすがあたしの見込んだプロデューサーだね♪
 どんな音を支払わされるのか……志希ちゃんワクワクしちゃうよ!」





●03

初めは遊び半分だった。
だがいつしか、俺は志希のことを言えないぐらいに、その遊びにのめり込んでいった。

志希に音で払ってもらおうという発想は、些細なきっかけで芽生えた。



「――だからね、みくはそこで言ってやったんだにゃ! ネコアイドルとしての意識が足りないって!」
「可愛いネコもラクじゃないってやつだねー」
「志希にゃんも分かるでしょ。最初は『にゃーっはっは! ふっふ~!!』とか言ってたし!」

第4回総選挙で総合2位、Cu属性1位となった前川みく、
同じく総合5位、Cu属性2位となった志希の二人は、
俺の運転するクルマの後部座席で並んで、かしましくしゃべっていた。



「正直、志希にゃんが出てきたときほど、アイドルとして危機感を持ったときは無かったにゃ」
「えー、ずっとネコにこだわってきたみくセンパイの意外な内心、聞けちゃった♪」

総選挙順位が総合1~5位までの5人で、限定ユニットを組むことになっていたが、
志希とみくは限定ユニット中のCu属性ということで、コンビの仕事が追加された。
そのため今は、俺と志希・みくの3人で移動している。



「芸能界は先発有利の世界だけど、後生畏るべしとも言うにゃ。
 志希にゃんがこの位置まで来たとなると、みくの目もなかなかいい線だったと自画自賛だにゃ」
「みくセンパイさすがッスね!」
「……なんだかにゃあ」

クルマでの移動中なのに、みくはアイドル論で熱弁を振るっている。
休憩してりゃいいのに、と運転中の俺は思う。

だが、もともとプロ意識の高いみくのことだ。
みく自身も今回の選挙で躍進を遂げた――が、シンデレラガールにはもう一歩届かなかった。
その結果にいろいろ思うところがあるのだろう。気負い過ぎとも言えるが。

まぁ、みくのアイドルとしての意識は、志希にも少し見習ってもらいたい。
そういう意味で、みくとの仕事は志希にもまたとない機会だ。



「そういえばみくセンパイ、魚キライ克服したんだねー」
「えっ、いや、そんなハズ……に、ニオイするかにゃ?」
「違うの? だって、焼き魚のいいニオイの残滓が……これはアジの開きかな。
 朝ごはんにアジの開きとか、古き良き日本の朝だね♪」

俺には無理だったが、志希はみくから干物の香ばしいニオイを感知したようだ。
が、俺の知る限りみくが魚を克服したという話は聞かない。
おそらく、多田李衣菜あたりの朝食がニオイ移りしたのだろう。

「みく、志希の嗅覚はすごいんだぞ。俺なんか、ニオイで体調まで見抜かれるから」
「ふっふー、ネコの嗅覚は人間の1万倍以上だよ♪
 鼻の利き具合部門なら、あたしもネコ指数でみくセンパイに勝っちゃうかな?」
「むう……そう言われると、ちょっと悔しい気がしなくもないにゃあ」



口ごもるみく――が、彼女はここで引き下がる器ではなかった。

「そんなに鼻が利くのなら、志希にゃんの旦那様になるヒトはたいへんだろうにゃー。
 ちょっとでもほかのメスネコに近づかれたら、嗅ぎつけられて『ふしゃー!』って怒られるんだろうにゃ」
「……ふぇええっ!? だ、ダンナサマって」



●04

「お、何かにゃ? ふーん、みくは志希にゃんのそういうハナシ、聞きたくなってきたにゃー」

志希は、一瞬だが、俺ですら初めて聞いた声を出した。
俺は、振り返って志希の表情を見たい衝動を必死に抑えた。



「なぁ、志希。前に、こんなことがあったよな」
「プロデューサー!? こ、こんなコトって何のコトかな?」
「ほら、俺がラボに寝起きの志希を迎えに行った時、あんなこと言ってただろ?」
「こんなことあんなことってナニにゃ! 気になるにゃあ、にゃあ!」

みくも志希もシートベルト絡まったままジタバタし始めて、
信号待ちで並んでる隣のクルマが、何事か、とこちらを見ていた。
大丈夫なのか、アイドルとして。

「ほら、アレだよ――夢の中でも気づいていたよ、とかなんとか」
「え、へへ……あたし、そんなこと言ったっけなぁー」
「志希は俺よりアタマがいいんだから、忘れてるわけないだろ?」

声の具合からして、志希は首を俯け気味にしているようだ。
俺と一緒の時は、こんな人並みの恥じらいなんて見た覚えがないぞ。

「こんなこと、そんなこと、あんなこと、と来たら次は――どんなこと? にゃ!
 さぁ、諦めてみくにゃんに白状するにゃー☆」

「あ、あの……『夢の中で、気づいてたよー♪ この匂いは……キミだって、ねー』とか……」
「にゃああああっ! 朝っぱらからナニかましてくれるにゃ!」

志希からセリフを引きずり出して、みくのテンション上昇は留まるところを知らない。
俺に対しては飄々とした態度の志希も、今はみくの勢いに完全に呑まれていた。



「それでにゃ、志希にゃん。まだあるんだにゃ?」
「ないよ……ない、よ。ヘンなセリフ禁止っ!」
「まさか、今のは一朝一夕で言えるセリフじゃないにゃ。ほかにもあるはず、キリキリ吐くにゃ!」



●05

それからの車内は、みくの独擅場だった。

「『匂いフェチなんだよね』って言って、プロデューサーのニオイ、深呼吸で嗅いじゃったり……」
「出会って間もない頃からガンガン攻めすぎだにゃ!?」

「あの時は……『ハダカじゃないから大丈夫~♪ ハダカでも……大丈夫~?』とか……」
「どこが大丈夫なんだにゃ!?」
「プロデューサーなら、見てドキドキするまでは無料だから……」
「罪な女だにゃあ……聞いてるこっちまで恥ずかしくなるにゃ……」

「『寝起きの志希ちゃんを、ハスハスする権利を売ろう』なんて言ったり……」
「買われちゃったらどうするつもりにゃ!」

「白衣の下を、二人で研究しちゃおう……ううっ、まだ言わなきゃいけないのー?」
「ぼかしてるけど、そこまで言ったらもう同じにゃ! トークバトルなら一発退場モノにゃ!」

「桜のじゅうたんの下で、無防備に……一緒に寝よ、なんてことも……」
「春だからってノラネコみたいに発情してるんじゃないにゃ!?」

「きっ、『キミも一緒にやる? 楽しいよ! ヘンタイごっこ!』って……」
「あわわ、ついにここまで……ヘンタイごっことか、アイドルにあるまじき発言……
 というかヘンタイごっこって普通にヘンタイだにゃ!」
「……あうぅ」



クルマが目的地に着く頃には、志希もみくも顔を真っ赤にしてぐったりしていた。
おかげであらぬ疑惑を誘うことになり、ユニットのお仕事は波乱の幕開けとなった。

が、俺の記憶には、普段ではとても拝めないほど恥じらいをあらわにした志希の様子が、
耳の奥から意識にこびりついて、ずっと離れないままだった。

志希は、自分で言うなら勢い任せで口に出せる言葉も、
人に言わされると心を掻き乱されるらしい。

もともとそういう素質が会ったのか、あるいはみくのテンションが伝染ったのか。

ただ、みくの追及があったとはいえ、志希は自分からボロボロ告白していった。
言わされるのも満更じゃない――ということか。
そんな志希の一面が、俺は気になって仕方がない。



志希に音――声を払ってもらうのは、俺の願望を満たす絶好のプランだった。


●06

とは言えこの取引、初めは遊びのようなものだった。



「へぇ……これがウワサの壁ドンってやつだね……。
 このあたしを失踪常習犯と知ってるキミが、力づくで、あたしを逃さない……ってこと?」

最初の最初では、トーク番組の練習という名目で志希にニオイの代償を言わせていたので、
セリフの内容も当り障りのないものだった。



「この前、『桜にさらわれる』ってセリフをプロデューサーに言わされた話をしたら、
 ユリユリが生暖かい目で見てきたんだけど……キミは、あたしにナニを言わせてくれちゃったの?」

この遊びのときだけは、いつも俺を振り回してくる志希に対して、俺が主導権を握れた。
俺の指図ではにかむ志希がもっと見たくて、指示はエスカレートしていった。



「き、キミのニオイを感じちゃうとね……アタマが、ふーって熱くなって、ね……。
 うう、なんか自分が、とっても恥ずかしいヒトみたいに思えてきちゃうよー」

志希がドギマギしながら、おずおずときわどいセリフを紡ぐさまを見てると、
志希が口に出してくれた言葉は、真実なんだという気がしてきた。まるで言霊だ。

「スーハースーハー……なんだか、キミのニオイは、
 落ち着くんだけど、落ち着かないの……この非論理的な二律背反、分かる?」



そのせいか、事務所やファンの間でも、
『最近の志希は、しっとりした雰囲気も出せるようになってきた』
と評判になっている。プロデューサーとしても喜ばしいことだ。

「ノルアドレナリン? ドーパミン? それともエンドルフィン? 分からないや、もー……
 志希にゃんの頭蓋骨に包まれたグレイ・セルを、キミがぐちゃぐちゃにしてくれちゃって、さ」



俺たちの妙な取引。
傍から見て勘付いた人間はちらほらいたが、
敢えて誰も突っ込んでこなかった。

「あ……ニオイ、変わってる。あたしの言葉で、興奮しちゃった?」

俺と志希が、仕事で組んだばかりの頃から変な行動ばかりしているので、
その延長線上だと思われたのか。

「シャワー? もったいないことするんじゃなーい!」

取引内容がバカバカしいので、
なぜそんなことをしているのか、かえって想像が及ばないのか。

「いいよ、まだまだ……あたし、キミのニオイをいっぱい嗅いじゃってるから」



気がつけば、俺たちを止めうる奴は、誰もいなくなっていた。



●07

「ふっふー♪ プロデューサー、運転お疲れさまっ!」

事務所からそこそこ離れたホテルにクルマで乗り付けて、志希と二人で部屋に入る。
キャミソールとホットパンツの上に白衣を羽織った、アンバランスな私服の志希が、
ドアの閉じる音と同時に、俺の背中から抱きついてくる。

「ふにゃぁあ……スーツ姿の背中のスメルも味わい深いねぇ。
 デスクチェアとか、クルマの座席との摩擦までが、鼻腔に広がっていくようだよぉ……」

志希は俺の腹に両腕を回して、背中のジャケットに頬ずりしているらしい。



普通、男女が行為に及ぶためにホテルの部屋をとったなら、
まずはシャワーを浴びるのが定石。

が、志希は絶対にそれを許さない。
シャワーどころか、スーツのジャケット一枚すら、
志希が脱がせてくれるのを待たなければならない。

俺は立ち尽くして、志希のするがままに任せる。

「ネクタイも、今あたしがゆるめて、ラクにしてあげよー♪
 ネクタイを外してあげるって、なんか新婚さんみたいだね?
 あ、このセリフはタダだよ! あたしのオリジナルだしっ」

志希の首元チェックは、特に念入りだ。ここはニオイがきつい部位。
さらに、ほかの女が寄ってきたときも、一番痕跡が残る場所だそうだ。

「洗顔フォーム……いや、違う。シェービングクリームだね。最近、変えた?」
「いつもと別のが安売りしてて、な。お気に召さなかったか」
「うーん、意識の差を感じるなぁ……今度、あたしが買ってってあげるよ」
「JKアイドルがシェービングクリームなんて買ったら怪しいだろ」

志希は、俺を焦らすように、シャツのボタンを一つ一つ外していく。
布地の間で籠もったニオイも、また格別らしい。

曰く、

『ショートケーキで生クリームの上に乗ってるイチゴと、スポンジに挟まれたイチゴ。
 成分的には一緒でも、味わいは全然違うでしょー? そーゆーカンジ、かな』

だそうだ。
レベルが高すぎてついていけない。



「さぁーて、次はスラックス……ほーれ、ツンツン♪ このテントは期待してるね~?
 もうすっかり、志希ちゃんが近くにいるだけで、セックスが思い浮かぶ身体になっちゃって、もー」

志希は膝立ちになって、俺の股間回りを手で撫でさすった。

シンデレラガールズ屈指の人気を誇るアイドルに、ニオイを嗅がれまくって、
時折悩ましげな吐息やセリフを至近距離から浴びせられていた。
それが引き金となって、俺のペニスは既にそれなりの角度まで持ち上がっていた。

「ここの体臭もまた格別でねー。
 疲れや忙しさでしっかり洗えてなかったりすると、キミのスキを垣間見たようでゾクゾクしちゃうんだ♪
 逆にみっちり洗ってたりすると、気を遣っちゃってるのが可愛いなぁーなんて微笑ましくて……」
「そんなに細かく言われると、自己臭恐怖症になっちまいそうだよ」
「ダメぇ! この味わいはあたしのモノだー! キミ自身にだって明け渡したりするもんか!」

こういう志希の物言いは、積み重ねられるとなかなか強烈だ。
自分の体臭という自分で管理すべきモノを、志希に管理されている状況。
意外と被征服感がある。


●08

「いよいよ来ました、解放の時間っ!
 さーて、このきかん坊のゴキゲンは、い・か・が・か・な?」

志希が俺の下着を引きずり下ろして、ペニスを目前にする。

「ふっふー……んん、んんっ、ふんふん……」

俺のペニスに、亀頭から睾丸のほうまで順々に顔を近づける志希の姿は、
ネコが挨拶代わりにニオイを嗅ぎあう姿を連想させた。

「ふへ……へっへ……あはぁ♪」

しばらくじっとしていると、志希の目とくちびるが半開きになる。
フレーメン反応みたいだな、と思うと、表情に出てしまってたらしく、
志希に『ふしゃーっ!』と噛み付かれた。



「ほかの女のヒトのニオイ、しなかったねー」
「……いけないか?」

志希が、フレーメン反応もどきの間抜け面から、ふと真顔に戻る。

「いや、ね。おかしいな、と思って。キミとあたしは、コイビト同士ではない。
 これだって『始末の極意』の一環なのに、そういう約束なハズなのに……」

志希は真顔のまま、ペニスから俺の顔に視線をずらした。
見上げてくる志希の瞳は、瞳孔が大きく開いていて、俺は下に引きずり込まれる錯覚がする。

「ほかの女のヒトのニオイがしなくて、ホッとした自分がいるわけで、さ」


『ほかの女のヒトのニオイ』について、志希は特に鋭い。
以前、海外出張で志希と離れた内に、現地でほかの女とセックスして一週間後に帰国した。
それで、さすがに気づかないだろうと思っていたら、志希に一発で気づかれた、なんてこともあった。

その瞬間の志希も、今みたいな瞳孔の開いた目をしていた。


●09

これ以上そのツラを見てると辛気臭くなるので、
俺は不意打ちでペニスを志希に押し付けた。

「あ――ははっ、ごめんね~。あたしが黙っちゃったら、キミがつまらないもんね……。
 よーし、志希ちゃんのお仕事、はじめちゃうよー♪」

宣言すると、志希はべろりと舌を伸ばして、ペニスに唾液をまんべんなく塗りつけてから、
羽織っていた白衣とキャミソールをはらりと落としてぽーんと投げてしまう。

「志希って、自分が脱ぐときは、びっくりするぐらいあっさりだなぁ」
「いや、こっちも焦れててねー」

志希は軽く笑って、83センチ――のプロフより少し大きくなった――胸の膨らみを押し付けてくる。
汗と唾液の薄い水分の膜が、粘膜と皮膚でほどよい摩擦感を引き起こす。



「気を遣ってるのか? フェラのが好みだろうに」
「うん、キミのニオイは、フェラのが濃ゆーく感じられるけど。
 でも、こっちもこっちで趣があるんだよ?」

どんな趣だ、という内心のツッコミを見透かしたのか、
志希は涎で胸にぬめりを足しながら、楽しそうに説明してくれる。

「あたしの胸とか、肩とか、首にね……キミのニオイ、つけたままにしてて、さ。
 お仕事で……例えば、グラビアとか撮るとするでしょ?」
「えっ、お前そんなことしてたら、スキャンダルどころじゃ……いや、待てよ」

志希の柔らかく包み込んでくる乳の圧力と、歌うような声で、
俺のペニスはあっという間に高まっていく。

「そー。お察しの通り、あたしにしか感じ取れないぐらいの残り香ー♪
 ほかのみんなは気づかないけど、あたしにとっては……キミに汚されたままお仕事、
 なーんて背徳的なシチュエーション……たーまらないねー、もー♪」

志希の動きは、ただマーキングとして自分の肌に俺の先走りをこすりつける単純なモノだった。
志希に似合わない稚拙な愛撫だった――が、それは志希の口上と重なって、俺を強く煽る。

「あたしにとって、アイドルをすることと、キミと一緒にいることは不可分なんだよー。
 あたしのグラビアには、レンズ越しにキミのイヤラしいニオイがべとべと染み付いてるんだよー。
 想像してごらん? とってもステキなことじゃない♪」



本当に、志希は勢いに任せて喋るときは、とんでもないことを平気で言う。

「キミがこーしてくれなきゃ、ね。キョーミ3分もたないあたしが、
 総選挙で5位までいけるほど、アイドル続けられるわけないじゃん」

志希が、自分の胸を両手で抑え、
俺のペニスの先端を舌でなぞって――いきなり愛撫のペースが上がる。
こんなときまで好き勝手しやがって。

「プロデューサー冥利で嬉しいでしょ、ふっふー♪」

俺はつい反発して、射精を堪えようとするも、
ここにきて入室からずっと立ちっぱだったのが響く。
そんな急に力を入れることはできない。

「キミの、一番男らしい体液をいただこうかー♪ ほら、スパートスパートっ。
 この志希ちゃんが、残らず受け止めてあげるから、安心してイクがよい!」

俺の意地は、志希の手管によってあっさり折られ、脱力感とともに射精した。
志希は射精の瞬間を見切っていたらしく、ほんの一瞬前にぱっくりと口を開けて亀頭を咥えた。

「んんっ、うっ、んんんーっ! んふっ、んふふっ」

射精を受け止めながら、してやったり――と目で語る志希を前にして、
俺は体勢を保つのが精一杯だった。

前編終了

少し空けます
次の後編で完結の予定


●10

「キミとこーゆーことするときは、シャワーも浴びないけど、お風呂自体は大好きだよ。
 手作りの入浴剤でふわふわ~のニオイに包まれて、ふっふ~♪ なんて鼻歌を歌ったりしてさ」

志希は服をすべて脱ぎ捨ててホテルのシャワールームに立ち、
壁に備え付けられた姿見に向い合って立っている。

俺は志希の真後ろから、少し高い目線で見下ろしているので、
パイズリの痕跡で生乾きになった志希の肌まで見ることができた。

「シャワールームは、狭くて密閉性が高いから、声がよーく響くよね。
 つまり、キミの意図はそーゆーコト♪ いやー、お代の支払い、待たせちゃったねぇ……」

志希が鏡越しに視線を投げてきた。
笑いかけてくる目の細め方が、どことなく不自然。
いつもは、磨きこまれた営業スマイルを飛ばすのに、今はそれができない。

「俺が教えた言い方、覚えてるか?」
「そりゃーもー……へ、ヘンタイごっこ的なアレ、でしょ……?」

志希は、さっきパイズリしていた態度が嘘のようにしおらしい。
勢いを失った志希は、こんなものだ。
主導権を離してしまえば、途端に従順になる。

「人の言うままに……ってのは、あたしらしくないけど、キミなら、付き合ってあげる。
 借りを作ったままなのは、よくないし。譲り合い、バランス、コレお付き合いでとっても大事」
「殊勝なこと言うようになったもんだ。志希も、人の手本となる立場になったからなぁ」



「じゃあ、志希。今のお前の状況、軽く説明してもらおう……お前の口から、な」
「う、あぅうっ……」

俺は、後ろからこれ見よがしに志希の肩へ手を伸ばし、
そこから首をなぞって、頬に手のひらを当てた。

「……ニオイにトリップしてる時はいいけど、こうして鏡で見せられると……うー」
「いいぞ、ゆっくりで……それも楽しいだろ。志希が服を脱がせた時と、同じだ」

志希の顔は、ステージの照明光より熱い。

「あ、あんまりこのままだと、あたし風邪引いちゃうかもねー、あはは」
「じゃあ、風邪を引かない程度に頼む」

志希の目がうろうろと泳いでいるのが見える。
志希の頬に当てた手のひらから、志希の血流が伝わる。呆れるほどのハイペース。
細い首筋と鎖骨には、もう玉の汗がちらほらと浮いていた。

「あたしは……一ノ瀬志希は、じゅうはちのじぇーけーで、アイドルやってるんだ……♪
 今、あたしはプロデューサーと、一緒に、ホテル入って、えっち、しちゃったりなんか――」
「んん? そんな可愛らしい言葉を教えたっけな」



志希の転回っぷりは劇的だ。俺ですら、別人かと思う。

「こ、これから、あたしは……お、お……」

鏡に映った志希の裸身から、彼女の羞恥を見ることができた。
志希の顔に当てた手から、彼女の羞恥を触ることができた。

そして、もっとも露骨だったのが、志希の声。

「これから……お……おまんこ、に、プロデューサーの……お、おちんちんを、
 ハメられちゃったり、するの……いっ、今も、もう、ドキドキしちゃってるの……」
「よしよし、いい感じだ」
「ああぅう……っ」

志希の軽くウェーブがかかったロングヘアごしに、彼女の頭を撫でてやると、
彼女はくちびるをモゴつかせて、恨めしげな瞳を鏡に映す。



志希のハスハスがエスカレートするのに合わせて、俺の請求する嗅ぎ代も高騰し、
今となってはこのザマ。天才的頭脳を持つ志希に、アホなことを言わせるのがたまらない。


●11

「き、キミも、さ。あたしに負けないぐらい、いいシュミしてるよね……」
「朱に交わればなんとやら、というじゃないか」
「あ、あたしのせいだって言うの?」
「さぁな」

さっき志希が示唆したように、俺たちの関係は、需給の釣り合いが取れてないといけない。

志希が俺のあられもないニオイを要求する分だけ、俺も志希のあられもない声を要求する。
『譲り合い、バランス、コレお付き合いでとっても大事』ということだ。

「さて、これで志希の説明は終わりかな」
「プロデューサーったらお人が悪い……まだ、キミは満足してないでしょ?」
「無理強いするつもりは、ないけど」
「ムリじゃ、ないよ。ただ、ちょっとゾクゾクしちゃうだけだから……」



志希は、必要以上に深く息を吸って、俺があらかじめ教え込んだ淫語を口からこぼす。

「あたし……さっきまで、プロデューサーさんの……お、おちんちんを、
 おっぱいで、ぎゅーってして……パイズリ、してたんだ……♪」

鏡に映る志希の顔から、汗が垂れ落ちて、汚れも生々しい胸でぴちゃんと弾けた。

「こーするとね……プロデューサーの、おちんちんのニオイが、いつまでもこびりついててね……
 朝起きた時も、実験の時も、外を歩いてる時も、お仕事の時も、おっぱいに残ったまま……
 ホント、困っちゃうよね……♪」

志希の細い肩は、ロングヘアーに包まれているにもかかわらず、震えているのが目視できた。
志希の顔は、姿見から多少離れていた。が、志希の映る鏡面が、かすかに曇っていた。

「このニオイ、感じちゃうとね……アタマが、ふーって熱くなって……。
 自分じゃ、どーにもならない。このニオイは、この興奮は、どーしても再現できない……」



志希の才能と熱心さをもってすれば、成分的には、俺のニオイを再現することができるんだろう。

でも、それでは足らない。
俺も、志希の言葉を録音して聞いたことがあるから、分かる。
嗅がせてもらわないと、言ってもらわないと、この高揚を味わうことはできない。

本当、お互い困った身の上だ。

●12

俺は志希の背中のすぐそばまで寄ると、志希の頬にあてていた手を退け、
その汗でべたつくままの指を、彼女の下半身へ向かわせる。

「あっ、ああうっ……プロデューサー、そこ、触る、触っちゃう?」
「志希。『そこ』じゃないだろう。ほら、もう一回」

腕を志希のウエストに巻きつけるよう伸ばすと、鏡にも俺の手がそろそろと迫る様が映る。

「プロデューサーは、あ、あたしのっ……う、ううっ、やっぱり、こんなの恥ずかし過ぎだよ……♪」
「その割には、楽しそうな声してるじゃないか」
「だって……キミが言え、って言ったコトだから、楽しそうにしないと……ね?」



志希は、だいたいこんなやつだ。
フリーダムな行動で俺を引っ張り回すくせに、
ことアイドルに関して言えば、俺のおかげで、俺のせいで――全部、俺に委ねてくれる。

「志希も、律儀なところあるじゃないか。それとも、単に恥ずかしいのがスキなのか」

志希は、俺よりずっと頭がいい。
もし志希が、自分のプロデュースについてもっと考えて動けば……
志希がそうできるよう俺がサポートしてやれれば……

志希は今頃、ガラスの靴を履いていただろうか?

「何度でも言うけどね……キミのニオイを嗅がせてもらっちゃったから、
 キミの言う通りに、してあげたい気分なのさ……♪」



俺は詮無い妄想を打ち切って、鏡の中の志希を見つめ返した。
それはあとで考えたほうがいいことだ。



「あ、あぅうっ、プロデューサーっ、そ、そこイジられたら、声、出ちゃうよおっ」
「だーから、『そこ』じゃなくて、なぁ。ほら、舌噛まないように一旦止めるから」
「うぇええ……っ」

志希は俺の意地悪にそっぽを向いたが、
姿見が目の前にあるので、顔を隠せていない。

「……あ、あたし……プロデューサーの指で……ふうぅうっ!」

俺が志希のなかに突っ込んだ中指を曲げると、志希は背中を軽くびくつかせた。

「……お、おまんこのアナ、ホジられちゃってるよ……っ」
「そうだな。じゃあ、どうして俺は、志希のおまんこを弄ってるのかな?」

志希の陰唇は、指を触れさせた時点で既に温かくぬるついていた。
パイズリの時点で結構盛り上がっていたらしい。
おかげで、初っ端から指一本をぬるりと受け入れられた。

「あっあたしの……おまんこのアナが……
 もっと、えっちに、イキ、やすく、なるように……」

志希の具合のいいところは、だいたい分かる。
志希は立ったまま、くいくいと腰を使う。お尻に妙な緊張と弛緩のリズムが生まれる。
動きは小さいが、タイミングが露骨。おかげで俺も覚えてしまった。

「あ――ひっ、ナカ、にっ、キミに、あたしの、おまんこっ、調べ、られちゃってるよ……♪」

狭いシャワールームだと、羞恥に抑えられた嬌声がちょうどいい音量で響く。
志希の熱くきつい膣内のざらつくところを、ずるずると指の腹で撫でる。
だいたいの位置がわかってくる。

「う、ううっ……プロデューサーっ」

刺激は、志希が物足りない、と思うぐらいでちょうどいい。
そうしたら、志希が腰をかくかくさせて、場所を合わせてくれる。

「少し、強くしてもいいか?」
「えへ……だんだん、強くされて、
 前よりスゴイの、あたしのおまんこに、覚えさせちゃうんだ……♪」

志希が合わせてくれたら、あとは俺の力加減。

●13

「あっ、ひ――ふぁああっ! あ、んああっ!」

愛撫を続けて、志希の呂律が怪しくなると、いったん俺は動きを抑える。

「あ、あたし、キミに……おまんこ、気持ちいいの、覚えさせられてるっ……」

志希は苦しげな息遣いに混じって、俺のリクエストに応える。
志希の体はぐずぐずに脱力してるようだ。いつの間にか、顔は姿見に突っ伏しているし。

足も不意に内股になって、内腿で俺の手を挟んだり、踵がふわふわ浮いたり。
お尻が振られると、俺の体にぐりぐり擦り付けられて、まるでねだられている気分だ。

「だ、だめ、もうすぐ、イク、イッちゃうって、キミに、イカされちゃうからあっ!」



志希の動きがおぼつかなくなってくると、それから後は、
俺が集中してサポートしてやらないと、そこから先にイカせてやれない。
俺も志希のなかに意識を集中させる。

「イキそうなら、もうイクって言わなくていいぞ。舌噛んだら痛いだろ」
「そ、そーだけど……声が、出ちゃうんだよー! あ、あっあっ、あーダメ、あ、んああっ」

志希の肩甲骨ががくんと上下して、腰がぐらりとしたものだから、
俺は慌てて空いてるほうの腕で志希を支える。

「んはっ、キミに、やられちゃう、覚えさせ――あっあっ、も、もぅダメぇ、イク、イクっ――うああっ」

志希が背中を振る。ロングヘアーがばさばさ揺れる。
膣内の引き攣りが指先をぎゅうぎゅうと締め付ける。

「プロ、デューサーっ、あたし……あ、あっ――」

一拍遅れて、志希の両股がピンと伸びた。
もう止めることはできない。

「ふぅう……うう……あぁ、あー、うあああっ」

志希が首を肩ごと揺らして、ロングヘアーが背中側の俺にまで絡みつく。
やがて志希は姿見に手をつき、すぐに上半身も突っ伏す。鏡の向こうが塞がれる。
せっかくの声も、腕のなかに籠もってしまう。

「だ、だめぇ……で、出ちゃう、から、う、あっ、あうっ……」

俺は志希の膣に当てた手から、生暖かい水流を感じた。
それは志希のがたつく両腿をつたっていったり、シャワールームの床に弾けて滴になっていた。

脱力して倒れそうな志希を、俺は自分の体の方へ引き寄せて支える。
志希が突っ伏していた姿見が、曇りや涎ですっかり汚れて、
鏡の向こうの俺たちが隠れてしまっていた。



志希がこうして毎度粗相するから、シャワーを使わないのにシャワールームに入ることとなる。
むしろシャワールームだと、やらかしてもいいんだと志希が開き直るようになって、
堪え性がゆるくなった気さえする。


●14

「コンドームには、イチゴ味とか、食べ物みたいなフレーバーつけたやつがあるよね。
 実は私、あれってそんなにスキじゃないの。取ってつけた不自然さを感じるんだ」

志希はベッドの上に座って、
コンドームの包みを指先でぴりぴりと開封しながら言った。

「世界に冠たる日本のゴム加工技術でも、ゴム臭はどーしてもなくならないし、
 稚拙なニオイつけてオモチャみたいにするぐらいなら、普通のがいいかな、なんて」

志希は包みをくしゃりと握りつぶして、くず入れに投げ込んだ。

「プロデューサーのおちんちん、さっきからずーっとコーフンしてたね♪
 さっきシャワールームでいじられてた時、お尻にカタイのが当たるの感じちゃってたよ?」

俺のペニスは、パイズリで一回抜かれたことも忘れて大きくなっていた。

「せっかくだから、あたしがおクチでつけてあげよー!」



人気アイドルとプロデューサーが肉体関係を持っている、
という時点で洒落にならないのだが、俺たちは一応避妊具を使用していた。

志希は俺の先端にコンドームをかぶせると、その上からくちびるで強く咥えて、
唾液の音をべちゃべちゃと響かせ、左右に捻りながら被せていく。

「……あーんむっ。んん、んふふっ。ちゅる……ぢゅる、ぢゅるぢゅるっ」

俺の根本までコンドームに覆われても、志希はまだくちびるを離さない。
口をすぼめて強く吸い付き、コンドームのシワを伸ばして空気を抜く。

「えへへ、器用なもんでしょー♪」

誇らしげな志希の表情は、
ライブのボルテージが上がってきたときに見せるそれと似ていた。
俺は背筋に背徳感がよぎって、思わず身を震わせた。



「それじゃ、プロデューサー、準備はオーケイ?」

ベッドで胡座をかいている俺の前で、中腰の志希が俺の肩に手を乗せる。
俺が志希と行為に及ぶときは、志希に挿入させている。

「……そ、ゆっくりで。急ぐことなないの……焦れちゃうのも、少し楽しいよ」

志希の視界では、ペニスも女性器もよく見えないだろうに、
ゆっくり腰を下ろしながら、一度でぴたりと合わせてくる。もう慣れたもの。

「い、イイ、ねっ……入れて、広げられちゃうの、すごく……っ」

腰を沈めきった志希は、両腕と両脚を俺の胴体に巻きつけてきた。



はじめは、この対面座位も半ば仕方なく試したものだった。
志希の髪の長さは、およそ肩甲骨下まである。
なので、彼女をベッドに寝かせて俺が挿れる正常位だと、
彼女の髪の毛が背中の下敷きになってぐちゃぐちゃになってしまう。

それが今では、志希一番のお気に入りだ。

「すー、はー、すーはぁ……いやぁ……近いって、いいよねぇ……」

熱く包んでくる粘膜をペニスで感じながら、志希に耳元へ囁きを浴びせられる。

「ニオイもいっぱい堪能できるし……キミに、こんな近くで声を届けることもできるし」

志希が両腕に力を込めると、俺の胸板に押し付けられたバストの感触が強まる。
柔らかい圧力は心地よいが、これを留めおきたいという独占欲も煽ってくる。

●15

「ねぇ……あたし、プロデューサーに、奥まで入れられて……シちゃってるんだねぇ……♪」
「……何を、どこの奥まで?」
「それは、あの……んもー、キミもヤラシいこと、スキだなぁ……」

対面座位は、互いが密着しているため、俺も志希も動作が大幅に制限される。
それが、体を重ねている状況を強く意識させる。

「キミの、おちんちんを……あたしの、おまんこのナカに、ずっぽり入れられて……
 ナカの、ふかーいとこまで、ぐりぐりされちゃってるんだ……」
「なんだか、息が苦しげだな……深いところに突っ込みすぎたか?」

俺が唐変木のふりをすると、志希は俺の背中に爪を立ててきやがった。

「ソレが、いいって……知っててそんなコト言うとか、イケズはダメだよっ」

説教がましい志希の口ぶりが、内容の落差と相まって笑いを誘う。
男のペニスを根本までねじ込まれながら、よくもそんなことを。



「あっ! ふ、ぁあっ……動いちゃう? プロデューサーったら、動いちゃうの?」

俺は、自分の両腕を志希の肩から腰へ移動させてホールドしなおし、腰を使ってペニスで膣内を揺する。
俺を包み込み軽く締め付けるだけだった志希が、
動きに呼応してきりきりとなかを引き攣らせる。

「そうやって、腰、抑えられると……それだけで、ゾクゾクきちゃうっ♪
 だって、ねぇ、それ、やったら、あとは……」

抽送の予感に、志希の腰も期待で震えている。
このカラダはすっかりこの情事を覚えてしまっている。

「あたしは、ぎゅーってされて、ぐりぐりされて、ぱんぱんされて、
 ……ひどい有様にされちゃうんでしょー……舌、噛んじゃわないかなぁ」

俺は、志希に『ニオイ嗅がせてやった分、声を聞かせろ』と要求してるくせに、
志希を呂律が回せなくなるほど追い込んでしまう。

矛盾してるか――いや、どっちに転んだっていいんだ。

「そこまでされちゃうの……期待してもいい?」

志希は問いかけのように語尾をあげていたが、
ここで俺がダメと言っても、もう止まれないだろう。

「あはっ……キミのそーゆーとこ、ホント、スキ……♪」

志希の言葉を引き金にして、俺は四肢に力を込めた。


●16

「あっ! ふ……ああっ、奥と、クリが、両方、こすれちゃう……っ!」

俺は重心をあちこち動かして、志希のなかをえぐったり突いたり。
志希はもされるがままではなく、俺の肩に手を置いて上体を支える。
膝と腰を使って粘膜をこすり合わせてくる。

「ガチガチの、おちんちんで……されたら、たまんないってば……♪」

志希は、いつの間にか、俺が指図する前に淫らなセリフを口ずさむ。
ぱんぱんとぶつかり合う肌の音をリズムにして、歌声のようにするすると続く。

「はぅうっ……、ずっと、こんなにされたら、アタマのなか、シビレちゃう……っ」

志希の体の揺れ幅が、だんだん広がっていく。
あらたぬ方向に倒れそうな志希の上体を、手をつないで引き戻す。

「あ、あぅああっ! 切ないとこ、擦れて、当たって、あ、んんんっ!
 恥ずかしい音、出ちゃ……あああああっ!」

志希が下の口から涎を垂らしてるせいで、刻まれる音が湿っぽさを帯びる。

「あっ――あはっ、だめ、これ、知ってるっ、覚えてるっ! プロデューサーにやられちゃうってっ、
 あたし、このまま、何度もっ……あ、ああっ、うぁっ、あっあっ」

やがて志希の声が、ひぃふぅと苦しそうな息遣いに埋没する。
喋れなくなったら、志希の限界は間近。

「あっ、う、うああっ! おちんちん、やられて、おまんこ――あっ、ひっ、うあっ!」

けれど志希はただでは倒れない。
肌の上も肌の中も躍動し、俺をも追い詰めていく。
先にパイズリで出していたおかげで、やっとギリギリ持ちこたえられるぐらい。

「あっ、あたし、あっ、んあああっ、あああぁぁああっ!」



志希が、ぐらぐらさせていた上体を俺に擦りつけて、両腕も両足も回してくる。
もうすぐでしょ――という、志希の声の空耳が聞こえた。

俺は粘膜と熱で志希の悦びを感じながら、
言いようのない充実感に脳を洗われて気持ちが切れ、射精して果てた。




「あはは、採れたて一番搾り!――じゃないや、二番目か。でも……ふっふー♪」

ふっと我に帰ると、志希は俺の足元で、さっきまで使っていたコンドームをいじり回していた。
俺がぼうっとしている間に外していたらしい。

「あ、プロデューサーお目覚め? なーんだ、こっそりテイクアウトしようと思ってたのに」
「おい、使用済みコンドームとか持ち歩くなよ」

志希はセックスの際、必ずコンドームをつけるよう言う。
俺も、志希を妊娠させたらプロデューサーとしてまずいので、異存はないのだが……

「むー、これで寂しい夜を凌ごうかと思ったのにー。
 まぁキミが言うならしょうがない。じゃあ、イートインということで――」

志希はコンドームに溜まった俺の精液を、自分の指に垂らして伸ばし、
べたべたさせながら嗅いで恍惚としていた。

「あ――はぁ……ゴムのニオイが混じってるのも、趣があるね……♪」

志希が絶対にコンドームをつけさせる理由は、たぶんこちらが主だろう。


●17

ある日、俺は前川みくから、折り入って相談があると言われ呼び出された。

「あの……Pチャンに、一つ教えて欲しいことがあるにゃあ……」
「なんか言い辛そうな顔してるが、深刻な話なのか?」

みくは珍しく、もじもじと煮え切らない態度だったが、やがて相談の用件を切り出してきた。



「Pチャンは……自分のニオイ、どう処理してる?」



「……なぁ、みく」
「Pチャン……」

「俺、もしかしてメチャクチャ臭いのか……?」
「違うにゃっ、かっ勘違いさせたなら謝るにゃ! そうじゃなくて、ほら、この間、志希にゃんに……」
「この間、志希にって……いつの話だ」

「ほら、みくは志希にゃんに、魚のニオイが残ってるって言われちゃったにゃ?
 それ以来、どうも自分のニオイが気になって……自分のニオイって、なかなか気づけないし」
「おいおい、志希の嗅覚が規格外だってのは、みくも知ってるだろう。
 みくはちゃんとアイドルとしていいニオイがするはずだ。何なら今、俺に嗅がせてみろ」
「固くお断りするにゃ」



「それはともかくとして、やっぱりPチャンの処理方法は気になるにゃ。
 あれだけハナの利く志希にゃんがハスハスしてるぐらいだし、
 実は何か人を惹きつけるヒミツがあったり」

「ないない。なんなら、みくのハナで確かめてみるか」
「それも固くお断りするにゃ」



「まぁ、みく。気になるかもしれないが、あいつのハナと頭脳は特殊だから、気にするな。
 一週間前ぐらいの俺の行動なら、俺の体臭とかから推理して当てちまうんだぞ」
「そ、それは……すごい、にゃ……志希にゃんも、Pチャンも……」
「あ、これ都に教えたら『ホームズみたいだ!』とか言ってウケるかもな」



「Pチャン……みくの話は、もういいにゃ。それより……」
「え、いいのか。それで、それより……って」

「Pチャンは、志希にゃんのコト……ゼッタイ大事にするにゃ。
 志希にゃんについていけるの男のヒト、きっとPチャンだけだにゃ」
「みく、お前この間も志希の旦那がどうとかって話をしてたが、そういう話が好きなのか? 乙女だなぁ」
「いいから大事にするにゃ! 分かったかにゃ!」


(おしまい)



今更ながら、志希総選挙で総合5位の躍進おめでとう

みくにゃんも総合2位おめでとう

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