卯月「総選挙50位以内に入れないアイドルはクビ…ですか?」 (591)

『──天下の346プロ神話崩壊』


 新聞の一面を飾った記事の見出しにはそう書かれていました。
 きっかけは、内部告発によるインサンダー取引の発覚。
 それに伴った大規模な社内調査によって、芋づる式に掘り起こされた大小様々な横領、不正売買、お金で揉み消してきた不都合な事実…。
 そして、アイドルのスキャンダル。


 ゴシップ記事は虚実入り混じった内容を連日書き連ね、プロダクションの前では毎日大量のフラッシュが焚かれる日々が続きました。
 スポンサーは次第に離れていき、株価は急落。社長と、近しい重役は責任をとって辞職。
 新たに女社長を据えて大幅な経営転換をします!必ず信用を取り戻して見せます!と記者会見で意気込んでいたのが数か月前。
 ……と、ここまでは日本中の誰もが知っていること、ですね。


 えっと、インサイダーって何でしょうね?
 新発売の炭酸飲料ですか。サイダーみたいにハジける恋の音……♪
 えへへ、なんて。ごめんなさい、違いますよね。 


 私、島村卯月17歳には大人の世界はなんだか複雑で、とにかく大変なんだなぁとは思ってはいても。
 私の中では、最近お仕事がちょっと減っちゃったかなぁ。学校でも色々言われちゃったなぁ。
 でも、もっともおっと頑張って、頑張って、凛ちゃん未央ちゃんとこれからもたくさんお仕事したいなぁ、くらいにしか考えてなくて。
 どこかふわふわした気持ちで記者会見を眺めていたのを覚えています。
 
 1人の記者さんが問いかけました。

 ──きっと、これから事業の縮小は避けられないでしょうね。

 

 それから……。


「えっ、プロデューサーさん、今なんて言ったんですか?」


「……数か月後、初のアイドル総選挙を行います」



初めてアツイ、と感じた火の粉が私に降り注いだのは、あまりに突然でした。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429159227


・モバマスSS
・タイトルから察してそういう要素があります 苦手な方、むーりぃーな方は気を付けてください
・ゆっくり進行

一気に減るな…

ありすはネタにもなってるしボイス一位だったし安全だよな?(震え声)

「ソウセンキョ、ですか」

「……はい」


 ちひろさんが差し出してくれた紅茶の湯気をぼんやり見つめながらその言葉の意味を考えました。
 そうせんきょ。ソウセンキョ。総選挙。あ、人気投票のことですね。
 他のプロダクションさんの人気アイドルグループが行っている、テレビで大々的に特集されるアレ。
 私のライバル……ううん、立つ舞台は違っても、きっと私と同じ夢を見たアイドルのみんな。
 順位が発表された瞬間に、おもいっきり泣いたり、笑ったりしているのを見ていると、私もテレビの前で胸をぎゅっと握って良かったね、頑張ったねと応援していたのを思い出します。


 それが346プロでも行われるんですね……。


 まず思ったことが、頑張らなきゃ、ということ。1に努力、島村卯月です!
 その次に感じたのが、素直な喜び。まだまだ活動して日の浅い私が、ネオンが沸き立つあの晴れ舞台に立てる、なんて夢にも思ってもないけれど……。
 ごめんなさい!
 やっぱりちょっと、思っちゃいます。夢を見るだけならタダ、ですもんね。叶えるのは、努力です!2にも努力、島村卯月です!

「えっと……」

 さいごに、胸の奥底で少しだけ広がった感情が、不安。
 346プロのアイドル部署の入り口に貼られているポスター。


 そこには……


 『ひとりひとりが輝ける原石。シンデレラへの階段は今は見えないだけで、貴方の前にいつでも開かれています』

 ──と書かれていました。



 全員が、シンデレラになれる。
 アイドルは競争相手ではなく、大切な仲間。 

 古今東西のアイドルの卵をスカウトしては、たとえお仕事がこなくても、どんなフォローもケアもしてくれて、しっかりと個性を伸ばす。
 その育成方法は海外のメディアからも賞賛されていてるそうです。「巨額の資本に身を任せた分の悪いギャンブルだ」と評されることもあるそうですが……。

 だけど、ひとりひとりに真摯に向き合ってくれて、決して優劣で比べたりせず、大切にしてくれる346プロが、プロデューサーが私は大好きです。

 以前に人気投票を無断で企画してアイドル格付け票を作ろうとした出版社に、差し止めを行ったことがある、という話も聞いたことがあります。
 

 だから総選挙のアイディアはなんだか、346プロを根っこから覆すような、そんな漠然とした気掛かりを感じました。




 
 それに、不安の原因は何よりも……。


「プロデューサーさん……具合悪いんですか?」

「……」

 目の前にいるプロデューサーさんがあまりに苦しそうな顔をしていたことにありました。

現在のみくが大丈夫じゃないラインだったら、50人どころか卯月や凛まで含んだ190人以上クビやがな

美里、里美、美由紀、椿、蓮実、早耶、涼宮、月宮、雪菜、風香、大西、ネネ、丹羽

小室、恵、瀬名、穂乃香、礼、岸部、氏家、西川、成宮、松尾、望月

並木、松山、斉藤、沢田、後藤、浜川、若林、仙崎、夏美、志保、杉坂、小松、天海




この辺は顔がパッと出て来なかった……orz

>>21
望月「杏奈」天海「春香」「北沢」志保じゃないの?

「……」

「……」

 沈黙。

「紅茶、冷めちゃいますよ……?」

「……」

 沈黙。

 元々プロデューサーさんはあんまり表情豊かなほうではない、かもですけど。
 それでもありありと分かる苦悶に満ちた顔。額からにじみ出る脂汗。
 ……前にも、見たことがある気がします。いつだっただろう。

「あ、はい……」

 しばらくして、プロデューサーさんはそこで私の言葉に初めて気付いたように、慌てて紅茶を手に取ろうとして……。
 直前で、はたと止まって……。
 ぐっと血が滲むほどに拳を握った後に、数枚の書類を机の上に広げました。
 
「システムを……説明します……」

「プロデューサーさん……?」

「投票券はファン1人につき基本的に……2枚……ですが、CDやカードや握手会の参加等で配布される券を使えば何票でも投票できます……」

「……」

書類に書かれていることを機械的に読み上げるプロデューサーさんの手はぶるぶると震えていました。

「途中経過は定期的に発表され……投票対象は、現346プロアイドル総勢200名……なお千川さんに投票はできません……」

「は、はい……」

そこまで言わなくてもいいような……。

「なお……」

「はい」

そこで、書類を読み上げる掠れた声が、ピタリと止まりました。

「あの……?」

「……」

 また長い長い沈黙。
 プロデューサーさん、どうしちゃったんでしょう……。

 目を伏せて、じっと何かを堪えているようなプロデューサーさん。
 紅茶も飲み干してしまい、手持無沙汰になって困ってしまった私。
 ふと、ほんのりと微かなラベンダーの香りがふと舞い込んできました。

 「はい、おかわりですよ♪」
 
 「あっ……ありがとうございます」

 見れば、ちひろさんがポットを傾けて私のティーカップに紅茶をまた注いでくれていました。
 ちひろさんは、プロデューサーさんの一口も手をつけていないカップを覗きこみながら、囁くように言いました。

「プロデューサーさん、もうダメですよ」

「……」

デレマスやってはいるが基本的にログインボーナス取ったりたまにイベントやる程度だし二百以上いそうだしで覚えきれないし知らないのが半分以上…
そんな私はミリマスPです(デレマスは半分以上しらないがため)

2chスレ『元バンナム社員だけど、これからデレマス総選挙の全員の票数を開示する』

 くすくすと、口元に手を当てて鈴のように笑う、ちひろさんのやわらかな笑顔は、部屋の重苦しい空気とはひどくミスマッチなものでした。

「社長さんから、アイドルのみんなには、ちゃんと余すことなく要件を伝えることって、言われているんでしょう?」

「……」

「さぁ、続きを、どうぞ」

「……」

 プロデューサーさんはこれ以上ないほど窮屈に閉じた瞼をさらに無理やり閉じ込めて。
 意を決したように眼を見開いて、また書類に目を落とし、続きを読み上げ……。

「島村さん」

「ひゃっ?!」

 ……るかと思いきや、私の顔をまっすぐと、けして揺るがない瞳で見つめてきました。
 今日、初めて目が合いました。初めはとても怖かったけれど、今は好きな、プロデューサーさんの真摯でまっすぐな瞳。

「お願いが、あります」

「は、はいっ! なんでしょう?!」

「笑顔です」

「えっ……?」

「貴方の得意の、笑顔を、お願いします」

「……?」

 あまりに突然すぎる要求に頭の中にはたくさんのハテナマークが浮かびました。
 けれど、プロデューサーさんの真剣な態度はなんだか冗談ではない、みたいです……。

「は、はい……それじゃ……こほん……」

 ちょっと恥ずかしいですね……。

 えっと、顔の前で両手でピースサインを作って……。
 最高の笑顔をするためのヒケツ。
 それはみんなの幸せな顔を思い浮かべること。
 
 プロデューサーさんが、凛ちゃんが、未央ちゃんが、みくちゃんが、アーニャちゃんが、みりあちゃんが、みんなみんなずっと笑っていてくれますように。

 ──みんなの笑顔で私が笑顔に。

 ──私の笑顔でみんなが笑顔に。

 ──せーのっ


 
「ぶいっ♪」





「ありがとう、ございます……」

 ほんの微かですが、プロデューサーさんの口角が上がったのを見て、私は胸の奥でじんわりと暖かな気持ちが溢れてくるを感じました。

「お願いです。どうか、これから何があっても」

「は、はい」

「その笑顔を、絶対に、忘れないでください……」


「とっても素敵な笑顔でした♪」

 ちひろさんも手をぱちぱちと叩いて、私の取り柄の笑顔を褒めてくれました。えへへ、うれしいです。

「さぁさぁ、プロデューサーさん、ご多忙なんですから続きを、スケジュールが推してます」

「はい」

「気持ちはわかります。最後まで、この企画に反対してましたものね」

「……」

「でも、もうこれしかないんですよ。私たちには……卯月ちゃんたちにも……」

「……」

 それから二言、三言、何かの専門用語を交えて二人は会話していました。
 内容はよくわかりません。私が入り込むにはまだ早すぎる大人の事情。
 でも、やっぱり今の346プロは何か大きな変化をしていくんだ、ということが伝わってきました……。

 また訪れる漠然とした不安。
 ッ……だけど……。

 「あのっ、私精一杯頑張りますから! 何でも言ってください! どんな厳しいことでもへっちゃらです!」

 うん、やっぱり、笑顔は元気の源です。むくむくとやる気が漲ってきます。
 プロデューサーさん、何か悩んでるみたいですけど、ちょっとでも笑ってくれましたから……。
 きっと大丈夫です。

「では、続きを、かいつまんで、お伝えいたします……」

「はいっ!」


「なお、346プロ、アイドル部門は創設して……間もないにも関わらず……目覚ましい躍進を遂げ、将来的には更なる発展が期待視されていたが……」

「……」

「前取締役の方針による、無遠慮に候補生を全国から闇雲にスカウトしてきた弊害が、ここにきて歪みを産んだ」

「女子寮の設営や維持費、アイドル各人の育成費、スカウトに伴う旅行費等に鑑みるに、無謀とも言える資産運用であったことが発覚し……」

「それに加えアイドル部門はスキャンダルや不正資金運用の温床となっていて、マスコミの批判の恰好の的となっている」

「346プロダクションの抜本的な見直しを行うために……アイドル部門の縮小と再建とを同時に行う」

「……」

「今までの評価基準や価値観ははすべて捨て、総選挙によるアイドルの……仕分けを……」

「えっ……?」

「定められた順位は……絶対であり……何よりも優先される……」

「……」

「仕事や待遇は上位のアイドルから与えられていき……」

「対等な条件下であるにも関わらず、結果を出せない……総選挙51位以下のアイドルに関しては……346プロダクションに、不、要……な人材……」

そこで、ざわりと、背筋に悪寒が走りました。

フヨウ……?

「ふよう……って……プロデューサーさん……」

「……」

「つまり……」



 不要。






「総選挙50位以内に入れないアイドルはクビ…ですか?」



コインを入れる泉(底なし沼)の女神

早苗P「たとえどうなろうと俺の心にはいつもパトカーのサイレンの音が響いてるから(錯乱)」

 ……。

 ベッドの上で、指をひとつ、ひとつ、丁寧に折り曲げる毎にお友達の顔を思い浮かべていきました
 凛ちゃん、未央ちゃん、楓さん、莉嘉ちゃん、かな子ちゃん、木村さん……。
 シンデレラプロジェクトのみんな。今まで知り合ったアイドルの先輩たち……。
 50回折り曲げるうちには、もう顔は浮かんでこなくなって。

 私は少しだけ安心すると同時に、ちくりと刺すような痛みを感じました。私の周りだけ、でいいのかな。
 みんな、みんなで、今までみたいにずっと輝くステージを追い求めていたかったのに。
 
 それでも、どうしても選ばれない人は出てくる。

 「……」

 養成所のころを思い出す。

 みんなで一緒に頑張ろうね、と励まし合って、毎日長電話して、いつかフリフリの衣装を着て踊ろうねと約束しあって……。

 そんなある日、朝に突然トレーナーさんに告げられる。

 ──……さんは昨日付けで養成所を辞めました。

 そんな事を何度も何度も何度も経験して、だけど決して慣れることはなくって、胸がどうしようもなく痛くなって。
 幼い私には解決することができない大人の事情とか、家庭の事情とか、他人には見せない、その人だけが隠している事情とかが、いきなり襲い掛かってくる。
 
 気づいた時にはもう手遅れで、私はただ膝を抱えて泣きべそかくことしかできなくて。
 そのたびに、挫折しそうで、すべてを投げ出したい気持ちになるけれど、その時はママの言葉を思い出す。
 
「卯月は頑張り屋だねぇ」
「卯月の笑顔は、人を幸せにする力があるから、いつも笑っていなさい」というママの言葉。

 辛いときは、その言葉“だけ”を頼りに、私は歩いてきました。
 そう、今までは……。

 枕元に置いてあったスマートホンから、軽快なメッセージが鳴りました。

 ──卯月、起きてる?

 ──しまむー、あのさ、ちょっと話をしないかな?

 今は、同じ夢を信じているということを、心から信じていられる、私を支えてくれる大事な友達がいます。

「うん、起きてるよ……凛ちゃん未央ちゃんっと……」

歴代シンデレラガール蘭子と凛なら大丈夫余裕

どうせ直前にイベントやった奴が勝つんだから適当でいいよもう

>>66
そう捨て鉢にならず、ガチャブーストなかった楓みく卯月が現在有力とわかったと前向きに考えたほうが精神衛生上いいよ
でも五回目あるなら形式は変えてほしいわな

──ちょっとさ、大変なことになったね。

 凛ちゃんのメッセージはいつも簡潔で、クールです。

──いやー!参ったね。正直私まだぜんっぜん心の整理ついてなくてさ。参ったー!

 未央ちゃんは、いつも元気な未央ちゃんらしい情熱が溢れてきそうなメッセージ。

 文字だけだと、気持ちは相手に7パーセントしか伝わらない、というのをバラエティ番組で見たことがあります。
 そのバラエティ番組は今は346プロの、その、悪いことの、特集ばかりしていますけど……。 

 もう数えきれないくらい言葉を交わしている私達には、きっとお互いに7パーセント以上の情報が伝わっている。
 電話じゃなくて、メッセージでのやり取り。要点を避けて曖昧な言葉を使ってる。

 みんな、戸惑ってるんですね。気持ち、わかります。
 きっと、みんな心が風船みたいにぱんぱんに張っていて、上手な空気の抜き方がわからないこの気持ち。
 ちょっと無理するとパンッと弾けちゃいそうになる、パンクしちゃいそうな心。

──凛ちゃん、未央ちゃん私もだよ。急に色々言われて、私あたふたしちゃって。

 そっと抜いていかないと……。

──私たち、大丈夫なのかな。アイドルとして、ニュージェレーションとして、さ。

そっと、そっと。

──大丈夫だよ。きっと3人で頑張っていけば。3人d……。

 はた、とキーをタッチする指が止まりました。
 もし誰か一人でも50位以内に入らなかったら……私たちは……解散?
 
 ううん、それよりも。
 
 私と凛ちゃんと未央ちゃんはこれから……。

 「……ッ!」
 必至に頭を振って今の思考を消し飛ばそうとしました。
 違う。違います。
 打ちかけのメッセージを消去して、力強くキーを押し込んで送信しました。


──何があっても、私たち3人は大切な大切な友達、です!

 ぐらぐらな気持ちの中で、これだけは絶対に失うことがないって思える真実。
 3人一緒ならきっと、乗り越えていけます。

 メッセージを送信すると、すぐに、スマートホンから『ミツボシ☆☆★』が鳴り響きました。
 音声着信の合図。相手はもちろん。 


『よく言ったしまむー! 私たちズッ友だよね! とりあえず悩んだって仕方ないしさ! 目の前のこと全力で取り組んでいこうよ!』

「未央ちゃん……」
 
『そしたらさ、きっとなんとかなるって!』

「えへ、うん、そうですよね」

 えへ、やっぱりこういう時はいつも未央ちゃんが先頭を切って、もやもやを吹き飛ばしてくれます。
 きっとなんとかなる。底抜けに明るい声で、そう言ってくれることが何よりの心のガス抜きになりました。


 島村卯月、明日の握手会も頑張ります。

現実にガチャブーストなんてないんやし、A○B同様信者の投票数(課金率)で決着つくな

後はテレビやらネットやらの露出数…一般票をいかに集められるか

にしてもまずは半分とかやろwwいきなり50人にするとか鬼畜の所業

 ……。

 握手会の直前で、巨大なスクリーンで告知された
 『第1回シンデレラガールズ総選挙』

 「始まっちゃったねぇ~……」
 ニュージェレーションの衣装に身を包んだ衣装で、未央ちゃんがスクリーンを見上げています。  


 総選挙で50位以内に入らないとクビ。
 実際には、いきなり解雇通知を突きつけられるわけじゃなくって、51位以下にはお仕事が回ってこなくなって、支援も打ち切られる、という形になるそうです。
 そうなると結局、プロダクションには居場所がなくなって自主的に辞めざるをえなくなります。プロデューサーさんは辛そうにそう言ってました。

 このことはファンの方達には知らせてはいけない社内だけの極秘事項。
 

 シンデレラガールズ総選挙。それはきっと、とっても大事なこと。
 だけど、いざ始まってみると自分でもビックリするくらい、日常が変化することはなくて。

 いつも通り、スタッフさんにメイクをされて、衣装合わせをして、役員さんにご挨拶をした時に
 「あぁ……“あの”346プロさんね……」とちょっと含みのある言い方をされて、楽屋で先輩のアイドルさんと楽しくおしゃべりして……。

 
 凛ちゃんと、未央ちゃんと円陣を組んで!


「「「フラーイドーチキーン!!!」」」


 結局、私がどの位置にいるか、総選挙で何が変わるのか、なんてのは今考えてもわかるわけがなくって、
 未央ちゃんの言うとおり、私にできることは目の前のことを全力で取り組むことだけでした。


「島村卯月です、よろしくお願いします!」 

 346プロの悪評がたって、ほんの少しだけファンが減っちゃったけれど、それでも私達の歌や踊りを今でも見に来てくれる人がいるのが励みでした。

「卯月ちゃん、いつも君の笑顔で元気貰ってるよ」

「あっ、今日も来てくれたんですね! ありがとうございます!」
 
 握手会の先頭は、いつも決まって、この男性の方でした。私が出演するイベントは徹夜してでも、どれだけ並んでも常に先頭で応援してくれる方。
 うれしい。握手する手を少し強めに、ぎゅっと握り返しました。

「俺、絶対卯月ちゃんに投票するよ。100票は入れるから!」

「そ、そんな……う、うれしいですけど、でも無理、しないでくださいね?」

「あぁ、卯月ちゃんのスマイル。昔好きだった子にそっくりなんだ……。卯月ちゃんになら1万票入れてもいいよ」

「お、お気持ちだけでいいですから! その気持ちだけで頑張れます!」

 思わず机に額が擦り付けられるくらいに深々とお辞儀をすると、頭をマイクへごちんとぶつけてしまい凛ちゃんと未央ちゃんに笑われてしまいました。

第一回…ちゃんみお…うっ…ふぅ

 ……。

 「卯月、お疲れ様」

 凛ちゃんが汗だくの顔を拭いながら、スポーツ飲料のペットボトルを優しく手渡してくれました。
 こくりと、喉をならして飲み込むと、火照った体にすうっと甘い味が沁み込んでとっても気持ちいい。
 景色は夕日によって、オレンジ色に染まって、どこか幻想的に見えました。
 遠くでスタッフさんがステージを撤去するのをぼんやりと二人で眺めていると……
 
「きっとさ」
 
 凛ちゃんが、ステージへの視線を外さないまま、ぽつりと呟きました。
 それから、ぽつり、ぽつりと言葉を繋いでいきます。

「私たち、今さ、大事な分岐点にいるんだと思う」

「……」

「ニュースや雑誌で346プロのことを毎日見かける度に、他人事で大変だなって気分と、私もその渦の中に巻き込まれてるんだなって気分が両方沸くんだ」

「私も、だよ、凛ちゃん」

「このままでいいのかなって思うけど……」

「うん」

「でも、こうしてライブをやると、最高の気分になれるし、ファンの応援は心に響くし、ああやってスタッフに支えられてるだなって感謝するし、きっとそれはぜんぶ本当だから」

「……」

「だから今は振り返らずに前を向いていこうよ」

「……はい!」

愛梨なら余裕余裕(慢心)

 ……。

 それから私たちは、イベントを精一杯にこなして、どんなに疲れていてもトレーニングをきっちり行い、毎晩励まし合いながら前へ前へ進んで行きました。
 
 凛ちゃんと未央ちゃんが言うように、頑張っていれば、きっと報われる。

 そんな根拠のない自信で。

 ただ目の前の日々を。



 そして……。



 最初の、総選挙中間発表の日がやってきました。


さあ武内P、企業のタイミングだ!


武内P「>>87現在(このSSのオチとして)企画検討中です」

黒井社長「争奪激しいシンデレラガール引き抜きを考えるのは素人、玄人はままむーを引き抜くのだよ」

武内P「分かりました……やります。やらせてください」
ちひろ「なら分かってますよねプロデューサー。まずは服を脱いでください」

描写されてるのが一人だから個人にしか頼んでないという発想
さすがモバP

>>516
前も先頭に居て「一万票入れるよ」って言ってくれた人から思わず弱音を漏らしたのだと思うし
握手に来た人全員に「助けて」って言ってたら逆に島村さんの正気が疑われる(既になさそうだけど)

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