棟方愛海「あたしのアルピニズム!」 (15)


※モバマス界のペトラルカこと、棟方愛海師匠のSS
※その他アイドルおよびPはちょい役


※棟方愛海
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●00 【愛】


一番素敵な登山とは、何を知るべきですか?



――愛です。

(原田ひとみ)


●01 【アルピニズム】

あたし、棟方愛海!
女の子のユメの詰まったやわらかーいお山を求めるアルピニストだよ!

あたしは青森で普通の女子中学生をやってたんだけど、ある日なんと!
東京のアイドル事務所にスカウトされてしまったのだ!

正直アヤシイなーとは思ったけど、『アイドル事務所にはかわいい女の子がいっぱい』
なんて悪魔のささやきに屈し……じゃなくて、じゃあどれくらいかわいいのかいっちょ見てやろう、
と思って東京へ行ったら……



いやぁ、花の大東京は桃源郷でしたねぇ。
かわいい女の子はもちろん、うっとりさせられるお姉さまの山脈!
アルプス・ヒマラヤも真っ青の選り取りみどり!

こりゃあアルピニストの血が騒いで騒いで毎日たいへんですよーもーうえへへへうっへへ……



でもね。
山登りは楽しいばかりじゃない。当然つらいこともある。

●02 【非情のお山】

K2という山をご存知だろうか。

最高クラスの標高。世界最高峰はエベレストに譲るものの、
アプローチの難しさでは世界一と言われているんだ。

遭難者の数も多い。
ここ最近まで、K-2の頂に挑み、その最高点を陥れて、かつ生還した女性は居なかったぐらい。
あたしも何度昇天してしまったことか。



このあたしの全力をもってしても、接近困難な天空への階段。
限界高度を突き破る自然の摩天楼。
でも、だからこそアルピニストはその山稜に魅せられて、今日も誰かがそこへ挑む。

あたしもそんな愚直なる挑戦者の一人で――



――キュッ



「愛海ちゃん、分かってるわね?」
「あっ」



K2、それは人呼んで非情の山。
あたしはその頂点を目の前にして、また意識を奪われた。



※柳清良
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●03 【十万石まんじゅう】

「うーんしょ、えいっ、えいっ」
「…………」

「ふー、お菓子の生地作りも、けっこう力が必要ですねぇ、愛海ちゃん」
「……そーですね、菜帆サン」

(うー……このあたしが、菜帆さんのあのプニョフワを目の前にして、
 この指をお菓子の生地に沈めているとは不本意……
 いや、これもモチモチではあるけれど、人肌の温もりが欲しいんだよぉ……)



「おまんじゅうと言えばですね、愛海ちゃん」
「なんでしょーか、菜帆さん」
「最近、事務所にお土産で『十万石まんじゅう』というおまんじゅうがあって、
 私もいただいたのですが、美味しかったですねぇ」
「十万石まんじゅう?」
「なんでも、埼玉名物らしいですよ」

(埼玉で、十万石を称するモノをおもち……彩華さんかな?)



「残念だな……あたし、その十万石まんじゅういただき損ねたんですよね……」
「まぁ、埼玉ですから、いただこうと思えば東京から足を伸ばして――」
「そうだ! 菜帆さんいいコト言う! 待っててもお山は歩いてこない! じゃ、棟方愛海さっそく行って来まーす!」



「あアっ、愛海ちゃんがこんなにスゴいなんて、思わなかったのぉ……ッ」
「うひひ! うまい! うますぎる十万石まんじゅう!」



――キュッ

「あっ」


※海老原菜帆
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※岸部彩華
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●04 【津軽富士】

「喜べ愛海! お前に山登りの仕事を持ってきてやったぞ!」
「え……山登りだって!? どこ! だれ! 早く教えてプロデューサーっ!」



「そう焦るな愛海。今回は青森まで飛んでもらうことになる」
「ほぉー津軽美人かぁ。ねぇプロデューサー、あたしそっちにはちょっとうるさいよ?
 なんたってね、あたしだって津軽っ子の一人なんだから! ちょっとやそっとのお山じゃ納得しないんだからね!」

「まぁ標高は飛び抜けちゃいないが、カタチの美しさは折り紙つきだ。なんと日本百名山にも選ばれてるんだぞ」
「ひゃくめいざん! なんと甘美なヒビキ……行く、行く行く行くったら行く! あたしに任せてプロデューサー!」





――青森、西津軽。

「さいぎー、さいぎー、どっこいさいぎー」
「懺悔懺悔、六根懺悔」

「おやまさはつだーい、こんどーどーさー」
「御山八大、金剛道者」

「いーつになのはーい、なむきんみょうちょうらーい」
「一々礼拝、南無帰命頂礼」



「……ねぇプロデューサー……これいつまで続けるの?」
「え? 地元の愛海のが詳しいだろ。頂上にたどり着くまで、さいぎーさいぎーって唱え続けるのさ」



「お山って! 岩木山じゃないか! そりゃ津軽でお山ったら岩木山だけど!」

「なーに確かに津軽美人だろ。太宰治が岩木山のことそう褒めてたって……
 それに8月1日って愛海の誕生日だよな。ハッピーバースデーあつみーん♪」
「岩木山お山参詣の8月1日は旧暦だよ! あたしが求めてたプレゼントはこれじゃなーい!」
「はぁ……これじゃ懺悔懺悔(さいぎさいぎ――過去に犯した罪を悔い改める意)になりそうもないな」


※岩木山
http://i.imgur.com/rWgSpnu.jpg


●05 【パートナー】

「ねぇ、プロデューサー」
「何だよ愛海」

「登山ってさ、やっぱり単独行じゃ限界があると思うんだよね……」
「なんだ突然。『孤高の人』でも読んだのか?」



「だから限界の頂を超えるために……プロデューサー、あたしのパートナーになってくれない?」
「…………」

「これだけの山脈を前にして、あたしがパートナーを頼むのは、プロデューサーだけなんだよ?」
「……正直、そう言われると迷うな」



「お山に登るのに、理由なんか要らないって昔の人が行ったんだってね……そこにそれがあるから、とか。
 いや……お山には、ユメがあるんだよ! あたしはそれを求めてる!
 あたしたちは、目の前にありながら果て無き距離を隔てた幻想のユメ追い人なんだよ!」



「なぁ、愛海」
「決心ついたのプロデューサー!?」

「俺、お前のこと忘れないよ。お前が俺を助けるために、自分で俺とお前を結ぶザイルを切ったこと」
「えっ」



「愛海ちゃん、分かってるわね?」
「あっ」



「それと、プロデューサーさんも」
「雪崩に巻き込まれた!?」


●06 【アイドル百名山】

「ねぇ、プロデューサー」
「どうした、愛海」



「最近、山の仕事多くない? あたし、山ガールにされちゃうの?」
「この間、岩木山に登ったろ? その仕事が評判になってな。うちの山にも登ってくれ、ってオファーが結構あるんだ。
 山登りアイドル。健康的で万人受けするし、体当たりロケの耐性もできていいじゃないか」
「それをアイドルっていうの!?」



「もし、あたしがたくさんお山に登ったら『アイドル百名山』なんて本でも出してみる?」
「へぇ、面白そうな企画じゃないか。フォトエッセイとかにして……モンベルとかと組ませてもらえば……」



「それでね、帯にはこうやってキャッチ書くんだ……百名のお山に、二百の喜び!」
「やっぱその企画却下な」


●07 【フロンティアスピリット】

「愛海さん。千枝は、愛海さんに相談したいことがあるんです……」
「相談? どしたの千枝ちゃん。あたしに言えることなら何でも言ってみなさい!」

「千枝は、事務所のオトナのアイドルさんみたいに、素敵な女の人に早くなりたいんです」
「ああ……確かにこの事務所は、素敵なおねーさまがたくさんいるよね……」



「それなら、おねーさま方に優しく教えてもらった方がいいかもよ。
 あたし、まだ中学生のコドモでしょう?」
「でも、愛海さんはいつも素敵なお姉さんと一緒にいるから、
 何か教えてもらってるんじゃないかと思って……」



(ピュア過ぎる、ピュア過ぎるぞ千枝ちゃん!
 ……ところで……あれ、千枝ちゃんって、確か11歳だよね)

「……? 愛海さん、千枝のお洋服、どこかおかしかったりします?」

(オトナに比べればさすがに未成熟……だがしかし、あたしが11歳の頃、こんなにあったっけ?
 というか、今のあたしと比べてもさほど……)

「あっ愛海さん、ちょっと目が……」

(今、あたしは、将来の沃野を前にしている……? ここに、豊穣の約束されたヴァージニアが……)

「あ、愛海さん、ちょっと、怖いかも……」

(かつてあたしは自分で『大きさじゃない』と言ったが……
 あたしも、ついにパイオニアになる時が来たのか……?)

「ねぇ千枝ちゃん……もし良かったらなんだけど、あたしに教えられることがあれば――」



「――お嬢ちゃん、ちょっとおイタが過ぎるようだな」
「あっ」



「プロデューサーさん♪」
「お、千枝か。なんか嬉しそうだな。いいことでもあったのか?」
「千枝、真奈美さんみたいなオトナになりたいです!」



※佐々木千枝
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※木場真奈美
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●08 【乳と蜜の流れる地】

「申命記にはこう綴(つづ)られております――

『あなたたちは、わたしが今日命じるすべての戒めを守りなさい。
 こうして、あなたたちは勇ましくなり、川を渡って、得ようとしている土地へ首尾よく入り、
 それを得ることができる。こうして、主があなたたちの先祖に、彼らとその子孫に与えると誓われた土地、
 すなわち乳と蜜の流れる土地で、あなたたちは長く生きることができる』

 ――と。つまり愛する天のお父様は」

「くっクラリスさん今なんだって!?」
「? 何か質問でございますか、愛海さん?」



「待った。天国の門は狭いらしいからね。お嬢ちゃんの煩悩ではつっかえてしまうだろうよ」
「い、いや真奈美さんっ、あたしが行きたいのは神の国じゃなくて約束の地で……」
「ここは教会だ。クラリスさんの邪魔をしちゃいけない」

「わっ、わっわかりました、あたしおとなしくしてるから、どうかお慈悲をっ」
「これは、君にプレゼントするイチジクの葉だと思ってくれ」
「あっ」



※クラリス
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●09 【愛海の葛藤】

「うひひ♪ ここにやわらかお山のオーラを感じ取ったぞー♪
 さぁーて、あたしの前にそびえるお山はだーれだ!」
「ひっ!」



「おんやぁーだーれかと思えば、くるみちゃんじゃありませんかー」
「あ、愛海ちゃん……や、やめてぇ……」
「ん? あたしはまだなーんにもしてないけど……」

「お、お胸がおっきいのは遺伝だもんっ……くるみのせいじゃないのに……ふぇ、ふぇええ……」
「そんなっ……あたしが姿を見せただけでガチ泣き!?」



「ぷっぷろでゅーしゃー! 愛海ちゃんがっ、たいへんなのっ!」
「何ィ! あいつ、やっぱり……いや、ついにくるみに手を出しちまったか……」
「い、いやそうじゃなくて……」



「あ゛っあ゛だじはまげない゛……山には、や゛ま゛には鉄の掟があ゛るんだよぉお゛お……」
「……愛海は、何で血涙流して悶えてるんだ?」

「あ゛だじのユメよりっ、乙女の純情のが大事なんだよ゛ぉ……っ」
「清良さん……ここは、一思いにキュッとしてあげたほうが……」
「いいえ真奈美さん。こうして彼女も大人になっていくんです。私たちはそれを見守るべきなんです」



※大沼くるみ
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●10 【アルピニズム その2】

「ねぇ、プロデューサー。あたし、気づいたんだ」
「……何だ、愛海」

「真のアルピニストはね、山に対する愛を常に忘れないもんなんだって」
「……うん、そうかもな」



「だから、あたし、愛だよ。ほら、あたしの名前にも愛って入ってるでしょ」
「まぁ、入ってるけど」
「愛、愛、あい、あいり、愛梨、愛梨さん、愛梨さんが欲しい……ね、ねぇ?」
「何言ってるんだお前。この間のアレで頭がおかしくなったか」



「うわーん! この間クラリスさんが
 『求める者には与えなさい』
 『求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる』
 って言ってたのにぃいい!」
「こりゃ愛海は死ぬまで迷える子羊かもなぁ……」


(おしまい)


清良さんのK-2が85って過少申告じゃないかなぁ
読んでくれた人どうも


K2なら卯月だろ


イチジクってそういう…

いいssだった、かけ値なしに

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