キリト「アーマードコア?」(24)

もしも、ソードアート・オンラインがロボゲーだったら



2022年11月6日(日曜日)

厚い雲の下、初冬の風が埼玉県川越市にある閑静な住宅街を吹きぬける。

城下町の中でもことに昔の町並みを残した地域には古い日本家屋が並び、静かで良い雰囲気を感じさせる。

桐ヶ谷家は、その中でも特に大きな面積を有している豪邸だ。

先月14歳の誕生日を迎えた桐ヶ谷和人は、大きく口を開けて開けて、あくびをした。急に冷たい冷気に触れたために視界が滲む。

こんなご時勢に紙媒体の新聞を取っているのはうちくらだろうか。

いつものように政治スキャンダルが踊る一面を読み飛ばし、情報科学の記事に目を通す。片隅に『茅場晶彦失踪』の記事を発見。

記事をスクラップするためにハサミを探していると、1階から気だるい妹の声が聞こえてきた。

「おにーちゃーん、部活行ってくるねー」

剣道の練習か・・・・

途中で辞めてしまった兄とは違い、妹は両親の教えに従い一生懸命に剣道を続けている。

少し複雑な心境になったが・・・始まれば忘れられるだろう。

自室のパソコンはhddのアクセス音をカリカリと響かせながら、ネット放送を受信している。

「さぁ始まりました、今週のmmoストリーム。まずはpvを見てもらいましたがこれは先週の発売日の様子でしょうか。」

「行列を作った彼らのお目当ては・・・『アーマードコア・オンライン』 先頭の人は3日前から並んでたんだって、すごいね! いや、真のゲーマーなら当然と言うべきか!」

聞きなれたアニメ声のコメンテーターは、いつもよりテンションが高い。

画面からは新作ゲームを手に入れ、嬉しそうにはしゃいでる若者たちの喜びが伝わってくる。

「今日のオンラインストリームでは世界中が大注目!アーマードコア・オンライン。略してacoをピックアップしちゃいまぁ~っす!」

「ぶっちゃけて言えばこれまでのナーヴギア専用ソフトって、とりあえず作ってみましたぁ~って感じが見え見えでクソゲーだよね♪だがしかし! acoはその“ナーヴギア”を開発した茅場晶彦(かやばあきひこ)氏プロデュースっ!!
待望フルダイブハイスピードメカアクションとあっては滾(たぎる)るわぁ!」

※“ナーヴギア”とは、脳と直接リンクする機能を持ち、ゲームの世界に文字通りの意味で「入る」事ができる最新のゲーム機である。ヘルメット状のそれを被り、仰向けの状態で使用する。

「今まさにそのaco(アーマードコア・オンライン)の正式サービスが始まろうとしております。現在の時刻は12:55、あと5分ほどでしょうか!」

茅場晶彦は仮想現実を実現したかった。ディスプレイに表示される画面ではなく、実際に体感してみたい。私が創造した世界、箱庭を。
学生時代は脳科学を専攻し、『脳波解析と仮想現実』という論文を発表。体から脳へ伝わる信号を遮断した状態で、脳へ直接視覚情報等を送信し仮想現実に入るという内容のアプローチだった。

研究所へ就職した彼は、目が見えない人のためにデジタル義眼、耳が不自由な人のために脳波補聴器など、五感を代替する機器を次々と開発していく。
不気味なほど早い開発を支えたのは論より実践のスタイル。失敗はただの結果だ。被験者はいくらでもいる。

出来そうだった事を本当にやってしまう彼の実行力はマッドサイエンティストを彷彿とさせ、絶えず世間を飽きさせることなく、科学雑誌は挙って脳インタフェースと彼の話題を取り上げ続けた。いったい彼は何を考えているのか。

全ては仮想現実を作るための技術実証に過ぎない。

人類が手にしようとしている新たな産業を切り開く機器の開発には多数のメーカーが手を上げ、夢のハードウェアの完成にそれほど時間はかからなかった。

神経科学の集大成である仮想現実を実現するための機器“ナーヴギア”

メーカーの縛りでsdkのライセンスは高額なものとなってしまったが、そんなことはどうでも良い。
ハードウェアとソフトウェア開発環境は整った。

あっさり研究所を辞めた茅場晶彦は、ゲーム会社に移籍しナーヴギア用のソフトウェアの開発に着手する。

俺も含め、たくさんの人が、sf的な変体技術者、茅場晶彦のファンになった。

そんな彼が作ったゲームのテスターになれたのは行幸(ぎょうこう)。まさに運命としか言いようが無い。

ベータテストの2ヶ月間、俺は寝ても覚めてもゲームのことだけを考えていた。

誰よりも長く、誰よりも多く、誰よりも考え、ただひたすらにゲームの事だけに集中し夢中になった。

正式サービス開始に伴い全てリセットされるが、他のプレイヤーよりも情報面で圧倒的なアドバンテージが俺にはある。

そろそろか・・・沸々と湧き出る高揚感を得ながらナーヴギアを頭に被りベットに仰向けになった。

音声入力がキーとなり機器が動作する。

「リンクスタート」


天才、茅場晶彦が創造した世界が始まる。

いつもの音声メッセージが聞こえてくる。

≪注意事項≫
運転中や屋外で使用しないでください。
必ず屋内の空調の整った安全な場所で使用してください。
体調が悪い場合はうまくリンクできない場合があります。
脳波に異常がある場合、ゲームをプレイできません。
長時間ご利用される場合は床ずれ、脱水症状にご注意ください。

≪脳波を検査します≫
δ....正常
θ....正常
α....正常
β....正常

≪脳波は正常です。セットアップを開始しますか?≫
[はい][いいえ]

≪脳へ伝わる情報を遮断します≫
----嗅神経 完了
----視神経 完了
----動眼神経 完了
----滑車神経 完了
----三叉神経 完了
----外転神経 完了
----顔面神経 完了
----内耳神経 完了
----舌咽神経 完了
----迷走神経 -
----副神経 -
----舌下神経 完了
----脊髄神経 完了


静寂とともに視界が消え、四肢の存在が希薄になり、意識だけが宇宙空間にふわふわと浮かんでいるような不思議な感覚に包まれた。

脳と体を繋ぐ神経は、首から下を動かすために首付近にある延髄から伸びている“脊髄神経”と、目や耳など頭部にある器官を動かすために脳から直接伸びている“末梢神経”の2種類があり、それらの神経を流れる信号を電磁波で妨害することで、ゲーム中に本物の体が動かないカラクリとなっている。

脳から発せられる体を動かすための電気信号が、ナーヴギアによって奪われ、意識と体が切り離された状態となった。

≪感覚野へ信号を送信します≫
----視覚野 完了
----体性感覚野 完了
----聴覚野 完了
----嗅覚野 完了

ナーヴギアの内側に埋め込まれた電子素子から脳の感覚野と呼ばれる箇所へ電気信号が送信され、
暗闇から現れた無機質な平地に重力を感じ始める。ナーヴギアから発せられる信号に脳が慣れるまで数秒。

体から脳へ伝わる情報をカットした状態で、脳へ直接、視野情報等を送信することで被験者は、あたかもゲームの世界に入ってしまったように錯覚する。

≪運動野の信号を検査します。体を動かしてください。≫
歩く・・歩く・・・
歩くという意思によって脳内の運動野という場所から電気信号が発生し、その信号を検知したナーヴギアがゲーム内のアバターの足を動かした。



≪セットアップが完了しました。ゲームを開始しますか?≫
[はい] [いいえ]


―welcome to armored core online―

盛大なロゴが表示され、目の前にログインフォームが表示される

account:kirito
password:*********************

ここは「はじまりの町」中央広場

身一つでログインした後、最初にすることは機体の調達だ。

勝手知ったる足取りで、いつものジャンクパーツ屋へ向かった。

「おーい! そこのお兄さん!」

小さな路地に入ろうとしたところで、誰かに呼び止められた。

振向くと、走って追いかけてきた男が息を切らせながらこう言った。

「その迷いのない動きっぷり! あんた、ベータテスト経験者だろ?」

迂闊だった。βテスト時の経験を活かし、序盤から効率的にプレイし、他のプレイヤーを引き離す作戦だったのだが、変なやつに絡まれてしまったようだ。

赤みがかった髪を悪趣味に額のバンダナで逆立てた男はニヤリとした。

「オレ、今日が初めてでさ! 序盤のコツをレクチャーしてくれよ!」

「あっ・・ああ」
フレンドリーな赤髪男の雰囲気に呑まれつい了承してしまった。

クライン「オレは“クライン”よろしくなっ!」

キリト「俺は“キリト”だ」

「はじまりの町」付近 西のフィールド


クライン「ぬおっ・・・・とりゃっ・・・うひぇぇっ!」

無線から入る奇妙な掛け声にあわせて滅茶苦茶な方向に振り回されたレーザーブレードが、すかすかっと空気のみを切った。

直後、巨体のわりに俊敏な動きでレーザーブレードを回避した敵の戦闘ロボットがけたたましい轟音とともに、攻撃者に向かって突進を見舞った。

クライン「ぐぁああっ!」

左膝から繰出されるた“蹴り”を食らい無様に壁に叩きつけられる有様を見て、俺は思わず笑い声を上げた。

キリト「ははは・・・、そうじゃないよ。重要なのは武器選択だ、クライン」

キリト「ってて・・・・にゃろう」

毒づきながら体勢を立て直した攻撃者であるパーティーメンバーのクラインは、チラリとこちらを見ると、情けない声を投げ返してきた。

クライン「ンなこと言ったってよぉ、キリト・・・あいつ実弾を弾きやがるしよぉ」

クラインが操縦する戦闘ロボットの耐久値が残り半分になるのを見て俺は装備していたバトルライフルで敵ロボットを攻撃した。

キリト「バトルライフルに持ち替えろ!敵は実弾防御に特化している。」

クライン「お、おう!」

クラインも武器をバトルライフルに持ち替えて攻撃を再開した。

クライン「りぁあっ!」

太い掛け声と同時に、バトルライフルから発射されたケミカル弾が敵ロボットに命中する。

弾頭に仕込まれたケミカル剤が敵ロボットの装甲(アーマー)を溶かし、敵のap(アーマーポイント)を効果的に減少させていく。


アーマードコアの攻撃は、実弾でダメージを与える“ke攻撃”(kinetic energy)、化学物質で装甲を溶かす“ce攻撃”(chemical energy)、光学兵器で装甲を焼く“te攻撃”(thermal energy)の3種類があり、それらを使い分けることが攻略の鍵となる。



―ミッション完了 システム通常モードに移行します―

「うおしぁあああ!」
派手なガッツポーズのクラインが、満面の笑みで咆哮した。

「初勝利おめでとう。でも今の・・他のゲームだとスライム相当だけどな。」

「マジかよ、俺はてっきり中ボスかなにかだと・・・」


ガチャン!ウィ~ン、ガチャン!ウィ~ン
おさらいのつもりか、武器チェンジモーションを何度も繰り返しては嬉しそうに奇声を発しているクラインをから目を離し、ぐるりと周囲を見渡した。


第一層の南端に存在する「はじまりの町」の西側に広がるフィールドに俺たちは立っている。四方にひたすら広がる砂漠は人工的な夕日で淡いオレンジ色に輝き、はるか北には工場プラント、その背後には第二層とへと続く巨大な柱が霞んで見える。

周囲では同じように他のプレイヤーが作戦行動中なのだろうが、mapの広大さから視界内に他のプレイヤーはいない。


突然、ゴーン、ゴーンという巨大な鐘の音がフィールド全体に鳴り響き、キリトとクラインはお互いに目をみはった。
「んな・・・・っ」
「何事!?」
突如、青いエフェクトに包まれ、気がつくとそこは初回ログイン時の中央広場だった。


周囲にでは同じくわけもわからず移動させられた大勢のプレイヤーが混乱と不安の表情を浮かべている。

先ほどまでacのコックピットに座っていたはずだが、人間だけがここに移動させられているようだ。おそらく1万人、全てのプレイヤーだろう。

普通ではない・・・ベータテストの時にこんな体験はしなかった。なにかがおかしい。


ざわめきが広がる集団の中で誰かが上空を指差し叫んだ。

「上を見ろ!」

頭上のホログラムにはyシャツとネクタイ姿の男性が映し出される。live映像だろうか。

「いつもお世話になっております。フロムソフトウェアの茅場晶彦です。」

広間には、おーっ!という歓声が上がった。

「ありがとう、ありがとう」
茅場はどうもどうもと両手で制した。

「こんなにたくさんの人が私のゲームをプレイしてくれて嬉しい。」

「ここまで、長い道のりだったが、今思うと一瞬の出来事だったように感じます。」


この演出はユーザサービスの一環なのだろうか。


「真に勝手ながら、3点ほど仕様変更のお知らせがございます。とても大事なお知らせです。メモの準備はよろしいでしょうか。」

全員がメモを取り出したのを確認すると、茅場晶彦は続けた。

「まず1点目  すでにお気づきかと思いますが、メインメニューからログアウトボタンが無くなり、ゲームを終了出来ない状態になりました。」

「2点目  これよりゲーム内において蘇生手段は機能しません。リスボーン(復活)することはなく、死ぬと終わりです。」

「3点目  ここが一番重要です。プレイヤーのhpがゼロになると死にます。」

「hpがゼロになった瞬間、ナーヴギアが発する高出力マイクロウェーブによって君たちの脳は焼かれます。電子レンジでチンされるみたいにね。」



電子レンジだとっ?


中央広間に混乱とどよめきが渦巻く。



「君たち解放される方法はただ一つ。ゲームをクリアすることです。」


「ここまでで何か質問は?」


数名のプレイヤーが手を上げた。

茅場:「はい、そこの青い人」

青い人:「自発的なログアウトが出来ない状態になっていることは分かりました。ご家族の方にナーヴギアを外してもらえば良いのでしょうか?」

茅場:「それはお勧めできません。ナーヴギアを取り外そうとすると、電子レンジのスイッチが入ります。」

茅場:「マスコミ各所に通知していたのですが、しかし、どういう訳か・・213名の方々が亡くなっています。ほらね。」

茅場晶彦は現実世界のニュース映像をプレイヤーに公開した。

『aco、200名の犠牲者』『対策チーム発足』『電脳テロリスト茅場晶彦』

ほぼ全てのメディアがこの事件を報じており、ナーヴギアを取り外してはいけないということは世間に周知されているよだ。

対策チームが発足され、救出の可能性があり、じっと待っていれば助けが来るかもしれない。皆の表情が緩む。

茅場:「無駄なことです。彼らに出来ることといえば、君たちを病院のベットに運ぶことぐらいでしょう。」

読んでくれてありがとう。

とりあえずここまでです。

うむ…
おもしろい

クライン「勝負だレイヴン…どちらが正しいかは戦で決めよう…!」

ジノーヴィー「レイヴン…所詮は小さな存在だな…君も…私も……」

ジナイーダ「私が追い求めて来たものは何だったのか、もうすぐ分かるような気がする…お前を倒し…最後の一人となった……その時にッ!」

スティンガー「殺してやる…殺してやるぞォ!!」

エヴァンジェ「笑わせる…偽物は私の方か……ここは任せて早く行け…お前ならばあるいは……!」

リム・ファイヤー「認めん!俺は認めんぞ!貴様らレイヴンという存在をォ!!」

リップハンター「これも仕事よ…悪く思わないでね…」

モリ・カドル「管制塔!ちゃんと援護しろよ~!」

レジーナ「助かった……レイヴン…感謝する」

フォグシャドウ「時間がない…急ぐぞ!!」

ゲド「いい腕だ…覚えておこう…」

ンジャムジ「ジャック……何を言って……?」

volavolant「ヴァスカー…遅かったか……(ギリッ!)…ならばせめて…お前の首だけでももらっていくぞッ!!」

アグラーヤ「アークにまだこんなヤツが…!!……くっ!…すまない…ジノー ヴィー…」

ナインボール・セラフ「ターゲット確認…戦闘モード…起動…!!」

新しい……惹かれるな

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