しんのすけ「シロ!家出するゾ!」シロ「クゥーン……」 (106)

とある日の昼下がり、しんちゃんは、突然僕にそう言ってきた。
でもまあ、それはいつものことだからなぁ。しんちゃんがこう言いだすのも、何度目か分からない。
どうせまた、お父さんかお母さんとケンカしたのだろう。

……でも、この日のしんちゃんは、いつもとは違っていた。
柔らかい表情じゃなくて、とても、真剣な顔をしていた。でもどこか、とても悲しそうだった。
よく見れば、パンパンに膨れた、いつものリュックサックを背負ってた。

「クゥーン……」
(しんちゃん、どうしたの?)

「おおシロ!一緒に行ってくれるか~!」

しんちゃんは僕を抱きかかえて頬擦りする。

「キャンキャン!キャンキャン!」
(違うよしんちゃん!違うから!)

「うんうん!そうそう!すぐに、出発するゾ!!」

しんちゃんは、僕を引きづりながら家を飛び出した。


――これは、僕としんちゃんの、とある夏の日の出来事……

クゥーン……「シロ」

まとめで見た

来たか

期待

まだー?

おそい

この前のクレしんssの人?

しんちゃんは僕の首紐を持って街の中を駆ける。
でもやっぱり、いつもと違う。

いつもなら、彼は時々僕を見る。そして、僕の名前を呼ぶんだ。
特に呼ぶわけじゃない。用事があるわけでもない。ただ、僕の名前を呼ぶ。
それはとても不思議なんだけど、とても落ち着く。

……でも、今日は僕を見てくれない。名前も呼んでくれない。
ただ前を見て、何かから逃げるように走っていた。

そんな彼を見てみると、僕は何も言えなくなった。
本当に、いつもと違う……

「――お姉さーん!オラと一緒に、愛の逃避行しなーい??」

「や、やめとくわ……」

……いつもと、違う、よね?

ドラえもん、クレしん、戦隊の人?

そしてぼくは、灰になった
しんちゃんに燃やされたんだ

みさえ「こらっ! いつまで散歩行ってんの! あれ、シロは?」

しんのすけ「なんだそれ」

ゲンコツ

みさえ「まぁいいか、あんなクソ犬」

しんのすけ「殴られ損だゾ……」

ひろし「ただいま~」

しんのすけ「おかえりとうちゃ~ん」

ひろし「2千円返せなかったから川口に腕切られちゃったぜ、いてて……」

みさえ「このボンクラ亭主! まぁ良いわ」

しんのすけ「あれ? ひまは?」

ひろし「おいおい、昨日売っちまったろ?」

しんのすけ「あ、そうだったゾ」

需要なさそうだな
しんちゃん好きだから書くの辞めるわ

レスしてやるから続けて

ID:cKQ00EM0Bは自分のスレ立てろよ

>>16
一応>>1から続けて書いてるんだけど

(しんちゃん、どこに行くの?)

「……」

しんちゃんは、何も答えない。
ただ前を向いて、歩き続けていた。

「――あれ?しんのすけ、どうしたんだ?」

曲がり角を曲がったところで、風間くん達と出くわした。
ねねちゃん、ぼーちゃん、まさおくんもいた。

「おお!みんな!」

「こんにちは、しんちゃん」

「しんちゃん、どこ行くの?」

「おお!オラ、これから家出するんだゾ」

「い、家出!?」

みんなは、驚き声を上げた。……かと思えば、すぐにやれやれといった表情に変える。

「……もう、しんちゃん、また家出するの?またママに怒られたの?」

みんなも、分かってたようだ。しんちゃんがこんなことをするのは、これまで何度もあったことを。

「……そんなんじゃないゾ」

「嘘付け。しんのすけが家出するといったら、そのくらいしか理由がないからな」

「風間くん、オラにも、複雑な事情があるんだゾ」

「なぁに?複雑な事情って……」

「それは、秘密だゾ。――じゃ、そういうことでー!シロ!行くゾ!」

(あ、待ってよしんちゃん!)

首を傾げる風間くん達に手を振りながら、しんちゃんは走り出した。
いつもの表情だけど、やっぱりどこか違うように見えた。

>>17がキモすぎて吐きそう

そのまましんちゃんは街の外れまで来た。
建物もかなり少なくなってきて、少し離れたところには高速道路も見える。

「お?――シロー!あれに乗るゾ!」

(あれ?)

しんちゃんが指さした方には、大型のアルミトラックが止まっていた。
横の自動販売機では、作業服を着たオジサンがコーヒーを買っていた。

「シロ!おいで!」

しんちゃんはトラックに向け走り出した。
そして荷台に手を掛けて、乗り込もうとする。

(だ、だめだよしんちゃん!)

僕は慌てて彼の服を噛んだ。

「もうシロ!何してんの!」

(ダメだよしんちゃん!ダメ!)

車は春日部のナンバーじゃない。見たこともない字が書いてある。
きっとこれは、長距離トラックなんだろう。
そんなのに乗り込んだら、僕達だけじゃ帰れなくなる。

僕は必死に止めた。
だけど、しんちゃんは僕を脇に抱え上げた。

「……もう、世話がかかるなぁ」

そしてそのまま、トラックの荷台に乗り込んだ。

(しんちゃん!早く降りなきゃ!)

「そうかそうか。シロもいい考えって思うのか」

(違う違う!早く降りなきゃ!)

僕の必死の声も虚しく、トラックは揺れながら動き始めた。

「出発、おしんこー!」

しんちゃんは、いつものように手を上げる。
だけど、きっと大変なことになる……僕は一人、溜め息を吐いていた。

とっくに消えたと思った>>1が戻ってきて俺は暴言を吐かれる
やっぱおーぷん最高ですわ

>>21
これは恥ずかしい

トラックはしばらく走り、そのまま高速道路に乗り込んだ。
荷台の隙間から、車が走るのが見える。
行き交う車はせわしなく過ぎ去り、それぞれの目的地に向かって行く。

……しんちゃんは、どこに行こうとしてるんだろう。
目的地なんてあるのかな。たぶん、何も考えてないんだと思う。

しんちゃんに目をやると、彼はただ、過ぎ去る景色を見つめていた。
特に何か表情があるわけじゃない。
だけど、とても寂しそうな目をしていた。
そして匂いは、どことなく、悲しくなってくるようなものだった。

ここまでの家出は、これまで一度もなかった。
たぶんしんちゃんも、思い付きでトラックに乗り込んだんだと思う。
それでも、こんなことまでしてしまうなんて……

(本当にどうしたの?しんちゃん……)

目が覚めた時、辺りは真っ暗だった。
いつの間にか眠っていたようだ。
トラックも高速道路を降りていたが、辺りは真っ暗で、いったいどこを走っているのかも分からない。

(しんちゃん。起きて、しんちゃん)

体を揺すって起こす。
ようやく起きたしんちゃんは、目を擦りながら周囲を見渡す。

「……真っ暗だぞ……シロ、ここどこ?」

(僕が聞きたいよ……)

そうこうしているうちに、トラックは道の途中のコンビニに立ち寄った。
運転手がトラックを離れた隙に、僕達は荷台から降りる。
そしてその場を走って離れていった。

暗い道が続いていた。その中をしんちゃんと歩く。
しばらくすると、だいぶん目が慣れてきた。
今日は雲もなくて、月明かりが影を作る。

小さな影と、凄く小さな影……二つの影は、離れることなく、横に並んだまま揺れていた。

歩く道では、誰ともすれ違わなかった。
時計がないから分からないけど、時刻はかなり遅いだろう。
そんなところを子供と犬が歩いているのは、かなりおかしな様子だろう。
……本音を言えば、ここで警察官が通るのを期待していた。
もし警察官が来たら、きっとしんちゃんは保護される。
そして、家に帰してくれるだろうし。

でも、現実は甘くないようだ。
いつまで歩いても、どこまで歩いても、誰もいない畦道が続いていた。

がんばれ

「……オラ、疲れたぞ……」

しばらく歩いた後、しんちゃんは路肩に座り込んだ。
顔を見ると、かなり疲労が溜まっているのが分かる。

さっきからしんちゃんの口数が少ない。
もしかしたら、しんちゃんも色々不安なのかもしれない。
ここがどこかも分からない。帰れるかも分からない。
しんちゃんも、まだ5歳だ。
どれだけ強がっても、子供心は不安でいっぱいだろう。

(しんちゃん、大丈夫。きっと帰れるよ)

僕なりに、声をかける。
少なくとも、キミは一人じゃない――
それを伝えたかった。

「――腹減ったのか?よしよし、ご飯にしような」

しんちゃんは、どうやら勘違いをしているようだ。
この時ほど、喋れないのを悔しいと思ったことはない。

……今の僕に出来ることは、隣で彼を暖めることだけだった。

支援

「ほい、シロ」

しんちゃんは、バックからチョコビを取り出し、目の前にこぼした。

「いっぱい食べるんだゾ」

しんちゃんの言葉に、少しだけ口に入れる。
とても甘くて、おいしかった。僕も、かなり疲れていたようだ。
気が付けば、ペロリと食べてしまっていた。

「……」

しんちゃんは、チョコビの箱を持ったまま、僕の様子を見ていた。
そして、僕の前に、またチョコビを出した。

「いっぱい食べるんだぞ」

彼の言葉に、僕はまたペロリと食べた。
そしてしんちゃんは、満足そうにしながらチョコビの箱をリュックに入れた。

(あれ?しんちゃん食べないの?)

僕の言葉に答えないまま、しんちゃんは立ち上がった。

「……もう少し、歩いてみよ」

そしてしんちゃんは、歩き出した。

しんちゃんも、しばらくご飯を食べていないから、きっと腹ペコのはずだ。
彼のことだから、普通なら、真っ先にチョコビを食べるはず……
それなのに……

(……もしかして、しんちゃんは……)

……僕は、本当にバカだ。気付いてやれなかった。
自責の念と苛まれながらも、心はとても暖かい……
複雑な気持ちになりながら、僕は彼の隣を歩いていった。

まってた。まとめさん>>21関連削除して見やすく乗っけてくれると嬉しいです

それから少し歩いたあと、さすがのしんちゃんも限界が来たようだ。
道端の草むらに、倒れるように寝転がった。

「……今日は、ここで寝よ」

絞り出すように、そう呟く。

僕は彼の隣に丸まる。
耳には、彼のお腹の音が聞こえていた。それでもしんちゃんは、一言も空腹を訴えない。
きっと、僕に気を使ってるのだろう。
彼の優しさが泣きそうなくらい嬉しくて、涙が出るほど、自分が不甲斐なく思った。

「……シロ、空がキレイだぞ」

ふと、しんちゃんは声を漏らした。

(空?)

彼の視線を追って空を見上げた。

(……うわぁ……)

思わず、感嘆の声を出す。

――見上げた夜空は、鮮やかに彩られていた。
黒のキャンパスには、様々な光の粒子が散りばめられ、目を凝らせば、それぞれが独自の色を放っていた。
赤、青、翠、黄……七色と言うのだろうか。不規則に並べられた宝石のように、空は輝いていた。
そして光は揺れる。ゆらゆらと、優しく、儚く。
一つ一つはとても弱いのかもしれない。でも、寄り添うように集まった群集は、一つの絵画を作り出し、中央には、巨大な川が生まれていた。あれはきっと、天の川と呼ばれるものだろう。
とても幻想的で、とても神秘的な光景だった。
手を伸ばせば掴めそうなほど、やけに星が近くに見えた。

……僕としんちゃんは、夢の中に入るまで、夏の夜空を見上げていた。

今日で一気に進める

犬にチョコビ

はよ

「――おい……おい」

突然、誰かに声をかけられた。
僕が目を覚ますと、農作業をするおじいさんがしんちゃんの体を揺すっていた。
空には太陽が昇っており、どうやら朝を迎えたようだ。

「おい坊主。起きんか」

「……んん……お姉さん……」

しんちゃんは体をくねらせながら、顔を赤くしていた。
……こんな時まで、お姉さんの夢を見なくていいのに……

「妙な子供だなぁ……ほれ、いい加減目ぇ覚ませ」

呆れ顔を浮かべながら起こすおじいさんの声に、しんちゃんはようやく目を覚ました。

「んん……まだ眠いぞ……」

「こんかところで寝たら、暑さでまいっちまうよ」

「ほーい……」

体を起こしたしんちゃんは、周りの風景とおじいさんの顔を交互に見渡す。
そして……

「……あんた誰」

「そりゃこっちのセリフや。坊主、こんかとこで何してんだ?」

「オラ寝てたんだぞ」

「そりゃ見りゃ分かるけど、そうじゃなくてだな……」

――グー

話しの腰を折るように、しんちゃんのお腹から凄まじい音が響き渡った。
その音が、会話を中断させる。

でもおじいさんは、すぐに笑い出した。

「ハハハ!なんだ坊主、腹減ったんか!」

「……うん」

「よかよか。話は後にしようかね。うち来て飯食うか?」

「おお!食う食う!」

そしてしんちゃんはお爺さんと歩き出した。
知らない人に付いて行ったらダメってあれだけ言われてるのに……

(まあ、あの人からは嫌な臭いがしないから、大丈夫だろうけど……)

仕方なく、僕も二人に続いて行った

>>32

ドラえもん、クレしん、戦隊の人なの?

>>37
うん
でも、違う話だからリセットして見てほしいかも

いいぞ!

そこは、小さな集落だった。
山間には田畑が広がり、民家が点在する。
夜道を歩き続けて、いつの間にかこんなところに来てしまってたようだ。

小鳥の囀りも聞こえるが、それ以上に蝉の鳴き声が耳に響く。
畦道から見下ろせば、視界は緑色に染まる。

自然が豊かで長閑なところだった。何よりも匂いがいい。
山の香りが鼻孔に広がると、とても落ち着いた気持ちになれた。

「――坊主、うまいか?」

「おお!うまいうまい!」

お爺さんの家に移動した後、しんちゃんはお爺ちゃんが用意したご飯を一心不乱に食べていた。
やっぱり、よほどお腹が空いていたようだ。
僕もご飯を食べる。ドッグフードじゃないけど、それでも久しぶりに食べるご飯は、とても美味しかった。

自己満乙

>>41
そんなん言うなら見なきゃいいのに

シロ!膣内(なか)で出すゾ!

寝てた

再開

「ほらしんちゃん。いっぱい食べていいけんね」

家の奥から、お爺さんの奥さん――お婆さんが追加のご飯を持って来た。
とても朗らかに笑うその姿は、しんちゃんの二人のお婆ちゃんと同じだった。とても、優しい匂いがする。

「おお!いっぱい食うぞ!」

しんちゃんはラストスパートをかけるかのように、更にご飯を掻き込んだ。

そんな彼の姿を笑顔で見ながらも、お爺さんは切り出した。

「……ところで坊主、なしてあんなとこでねてたんか?」

「オラ、家出したんだぞ」

しんちゃんは躊躇することなく、そう返す。
すると、それまで笑顔だったお爺さんとお婆さんの表情が変わった。

「……家出って……しんちゃんの家は、どこなん?」

「春日部だぞ」

「春日部ってことは、さいたまか……いったいどうやってここまで……いや、それよりも……」

二人とも、難しそうな顔をしていた。
当のしんちゃんは、そんな彼らの変化に気付くことなくご飯を食べる。

「……あんた、やっぱり警察さんに……」

「………」

お婆さんの言葉に、お爺さんは更に険しい顔をした。

「……坊主、なんで家出とかしたんか?」

「………」

しんちゃんは、お爺さんの言葉に、ようやく箸を止めた。

全員が、しんちゃんに視線を送っていた。
その中で、彼は小さく声を漏らす。

「……父ちゃんも母ちゃんも、オラなんてどうでもいいんだぞ……」

たったそれだけを呟き、しんちゃんは再び箸を進め始めた。
どことなく、さっきよりも荒々しく箸の音が響いていた。

「………」

「………」

彼の言葉に、お爺さんたちは黙り込んだ。
とても、悲しそうな顔をしていた。

「……坊主、ちょっとの間、ここに住むか?」

「――ッ!?あ、あんた!?」

「家に帰すのはいつでもできる。それに、駐在所さんも里帰りしとるけんな。2、3日預かって、様子を見ればええ」

「……で、でも……」

「……それに、このまま帰すのは、な……」

「……」

お爺さんは、遠い目をしながらそう話す。
そんな彼の姿を見たお婆さんは、それ以上何も言わなかった。

……そしてしんちゃんは、しばらくお爺さんの家にお世話になることになった。

戦隊のURL持ってない?

怪人「ぎゃあああああ!!」戦隊ヒーロー「正義は勝つ!!」
怪人「ぎゃあああああ!!」戦隊ヒーロー「正義は勝つ!!」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1409211236/)

「――ほれ坊主。もっとしっかり腰入れて引っこ抜かんか」

「ふいぃ……大根って抜けないぞ……」

しんちゃんは今、お爺さんの畑作業を手伝っている。
炎天下の中、額に汗を流しながら手伝うしんちゃん。

……でも、お爺さんとお婆さんはどうしてしばらく面倒見ようって思ったんだろう。
普通なら、真っ先に警察に届けるはずなのに……

何か悪いことを考えている様子はない。どちらかと言えば、どこかしんちゃんの気持ちを分かろうとしているところもあった。

(……もしかして、何かあるのかな……)

そんなことを勘ぐってしまう。
もちろん、犬の僕にそれを確かめる術はない。
だけど、やっぱり気になってしまう。

「――おお!抜けたぞ!」

気が付けば、しんちゃんは大きな大根を収穫していた。

「よくやったな坊主!そいつは大物だぞ!」

よほど嬉しかったのか、しんちゃんは泥だらけの大根に頬擦りを始めた。

「ああん、この感触、まるで母ちゃんの足――」

そう言ったところで、しんちゃんは動きを止めた。
大根を抱きかかえたまま、立ち尽くして何かを思っているようだ。

「……どうしたん?坊主?」

「……オラ、家に戻ってる……」

「え?あ、おい!」

お爺さんの呼び掛けにも応じず、しんちゃんはお爺さんの家に向かって歩き始めた。
僕はただ、彼の後を追いかける。後ろを見たら、お爺さんは首にかけたタオルで汗を拭きながら、立ち去るしんちゃんを見つめていた。

>>48
自演

犬にチョコをあげるのは割りとヤバいゾ

期待の待機

期待機(´・ω・`)

このひとすごいよなぁ
ホントに

今仕事終わった
ちょっとしてから再開

書くのが早い・内容もすごい・色んな物を書ける

プロ並みと誉めると流石にプロの人とかに怒られるかもしれないけど
プロかと勘違いするレベル

羨ましい

しんちゃんは力なく歩く。肩を落としているようにも見えた。

「――お?」

ふと、しんちゃんは足を止める。

(ん?しんちゃん、どうしたの?)

彼の見つめる先を追ってみる。
するとそこには、若い女性が立っていた。

(あの人は……)

この辺には不釣り合いな女性だった。
カジュアルな服装に帽子……都会の方で見かける女性だった。
その人は辺りをキョロキョロと見渡している。誰かを、探しているようだった。

(……しんちゃん、あの人……)

しんちゃんの方を見てみた。……そこには、既に彼の姿はなかった。

「――お姉さーん!」

「え?」

女性の方で、しんちゃんの軽い声が響く。
もしかして……そう思い、声の方を見れば……

「あはぁ、オラ野原しんのすけ、5歳。好きな食べ物は納豆、好きな女性のタイプは……」

「ええと……」

しんちゃんの言葉に、女性はたじろぐ。さっきまでの落ち込みようはどこに行ったのやら……

「ええと……僕、この家の人知らない?」

女性は、お爺さんの家を指さす。お爺さんの、知り合いだろうか……

「おお!オラ知ってるぞ!あっちで大根取ってる」

「畑の方?」

「そうそう、畑だぞ」

「そう……」

女性は、畑の方角に視線をやる。
彼女の黒い瞳は、どこか揺れていた。

「……お姉さん、じっちゃんに用事があるの?」

しんちゃんの言葉に、女性は少し沈黙する。

「……ええ。ちょっと、ね……」

「待ってたら帰って来るけど?」

「そうね……今日は帰るわ。ありがとう、僕……」

「オラ僕じゃないぞ!しんのすけだぞ!……しんちゃん、って、呼んで」

頬を赤くするしんちゃん。女性は、苦笑いを浮かべていた。

「あ、ありがとうしんちゃん……。――この家の人に、言っててくれない?」

「ほうほう。なんて?」

「――帰りたい、人がいます……それだけでいいから」

「……ほう」

「お願いね。じゃあ……」

それだけを言い残し、女性は去って行った。
普段ふざけてるしんちゃんも、なぜだかそのまま見送っていた。

再開キタ━(゚∀゚)━!

ほう

その日の夕方……

「……若い、女の人?」

「そうそう。家に来てたぞ」

夕ご飯を食べながら、しんちゃんは昼間のことをお爺さんに話していた。
そして……

「そう言えば、言っててほしいって言ってたぞ」

「なんて?」

「帰りたい人がいるらしいぞ」

「帰りたい、人……」

「お父さん……まさか……」

お爺ちゃんとお婆ちゃんは、何かを考え始めた。
何か心当たりがあるのだろうか。
悲しそうな表情をする二人だったが、どこか安堵感も感じる。

それから二人は、黙々とご飯を食べた。
しんちゃんもご飯を食べた後、彼らの気持ちを悟ったのか、特に何も言うことなく就寝した。

次の日。
この日は、お爺さんは朝からずっと家にいた。
朝から畑に行くのが日課と言っていたのに。
誰かを、待ってるのだろうか。
あぐらをかく足は、小刻みに貧乏揺すりをしている。
どこか落ち着かない様子で、しきりに時計を見ていた。

「――ごめんください」

玄関から、女性の声が響く。
来たか――
そう呟いたお爺さんは、足を手で叩き、立ち上がる。
そして、お婆さんが見守る中、玄関に向かった。

「――どちらさん」

お爺さんの声に、僕としんちゃんは玄関の方を覗き見る。
そこにいたのは……

(昨日の、お姉さん?)

お姉さんは、お爺さんの顔を見て笑みを溢した。

「……やっぱり、似てますね。すぐに分かりました」

「……あんたは……」

「私は香澄といいます。……純子という人の、娘です」

「じゅ、純子……ということは……」

「はい。――あなたの、孫ですよ、お爺さん」

お姉さん……香澄さんは、にっこりと笑っていた。

期待の待機

これドラえもんの人?

「……」

「……」

お爺さんの家では、微妙な空気が流れる。
香澄さんが来てから、お爺さんたちの様子がどこかおかしい。
よそよそしいというか、落ち着きがないというか……

香澄さんの話からすると、香澄さんのお母さん――純子さんという人が、お爺さんの娘さんだろう。
でも気になるのは、香澄さんの言葉……。あれはまるで、これまで一度も会ったこともないような言葉だった。表情だった。
……何か、複雑な事情があるのかもしれない。

「――香澄さん!お茶をお持ちしました!」

「あ……しんちゃんありがとう」

「いいえ!香澄さんのためなら!」

……しんちゃんだけは、いつものしんちゃんになっているけど。

「……佳澄」

沈黙していたお爺さんは、静かに口を開いた。
香澄さんは、お爺さんの方を見る。彼女が見つめる中、お爺さんは少しだけ躊躇しながら切り出した。

「……純子は、元気なんか?」

「……はい。とても」

「……そうか……」

お爺さんは、それまでの気難しい表情を一変させた。とても朗らかで、慈愛に溢れた表情だった。
それはお婆さんも同じだった。お爺さんの後ろに座っていたお婆さんは、下を向きながらも嬉しそうに頬を緩めていた。

それから3人は、また口を閉ざした。
それでも室内は、とても心地よい空気で満たされる。とても落ち着く、優しい匂いがしていた。

それからしばらくして、香澄さんは帰り始めた。

「もう少しゆっくりしていかんね……」

お婆さんは、名残惜しそうに呟く。しかし香澄さんは、笑顔で言葉を返す。

「いえ……あまり遅いと、母が心配しますので。それに、お爺ちゃん達の姿を見れただけで、私は満足ですし」

それを聞いたお爺さんは、微笑みを浮かべた。

「……そうか。気を付けて帰ろよ」

「はい。……では……」

一度会釈をした香澄さんは、そのまま家を後にした。
彼女の背中を見つめるお爺さん達。よく見れば、お婆さんは涙を浮かべていた。
そんなお婆さんの表情をしたしんちゃんは、少し黙った後に、靴を履き始める。

「……オラ、お見送りするぞ」

彼女の後を追うように、しんちゃんは家を飛び出す。

(あ!待ってよしんちゃん!)

僕もそれに続いた。

……たぶん、しんちゃんは僕と同じことを思い浮かべているはずだ。
お爺さん達と純子さん……この親子に、何があったのか……。
それは興味本意かもしれない。
だけど、どうしても知りたくなった。そしてその気持ちは、たぶんしんちゃんの方が強いと思う。
だって彼は、さっきまでの緩い顔とは全く別の顔をしていたから。

太陽の光が降り注ぐ畦道を、しんちゃんと僕は走って行った。
香澄さんに、追いつくために……

「――お姉さん!」

「あら?」

しんちゃんの呼び掛けに、香澄さんは後ろを振り返る。その場に屈み、駆け寄るしんちゃんを迎えた。

「どうしたの?しんちゃん?」

「あ、あの……!」

「ん?」

しんちゃんは荒くなる息を必死に整えていた。
そして一度大きく深呼吸した後、声を大きくする。

「……お送りするぞ!」

その言葉に、香澄さんは頬を緩めて優しく微笑む。

「……お願いするね、しんちゃん」

ドラえもんのSSの人か?

来てた!

感動した、1乙

ペース遅すぎ
書きためして一気にしろよ

はじめからいるけど待ちきれないから早くして

「――そっか……しんちゃん、家出してるんだ……」

しんちゃんは歩きながら香澄さんに話していた。

「はい。今の自分を見つめ直そうかと思いまして」

キリリと表情を引き締めてしんちゃんは語る。
それを見た香澄さんは笑っていた。

「誤魔化さないの。……それって、抵抗なの?」

「抵抗?なにそれ?」

「今の自分に出来る、最大の抵抗ってことよ。何かを訴えたいけど、相手は分かってくれない。だから行動を起こして、自分のことを見てもらおうとする。分かってもらおうとする。
……それが、抵抗よ」

「……難しくてわかんないぞ……」

「ごめんごめん。子供にはわかんないよね。――私のお母さんもさ、そうなんだ」

「お姉さんの、母ちゃん?」

「そうそう。私のお母さんね、お父さんとの結婚、お爺ちゃんに反対されてたんだ。
当時お父さんとお母さん、とっても若くてね。そんな年じゃ、結婚なんて無理だって言われたらしい。
お爺ちゃんとお母さん、凄くケンカしたんだって。それで最後には、お母さんが家を出ていったんだ」

(家出……)

「お爺ちゃんとお母さん、とっても似てるんだ。二人とも、とっても頑固。結局これまで、ずっと顔も合わせなかったし、連絡もしなかったんだ。
……でもね、時々お母さん、凄く寂しそうな顔をするんだ。私の入学式、卒業式、誕生日……きっとお母さん、お爺ちゃんに色々見せたかったんだと思う。
変な意地ばっかり張って……本当、素直じゃないんだから……」

そう話す香澄さんは、やっぱり笑っていた。
でも、どこか寂しそうな笑みだった。

うん

もう泣けてきた

スレ立てから10日立っているのに30レスにもみたない更新。書き溜めてからやりなさい。

「……ところで、どうしてしんちゃんは家出したの?」

香澄さんの言葉に、しんちゃんは表情を暗くした。そんな彼の表情に、香澄さんも何かを悟ったのかもしれない。何も言わず、歩く彼の姿を見つめていた。

「……父ちゃんと母ちゃん、オラのことなんてどうでもいいんだぞ」

「どういうこと?」

「……お遊戯会、来なかったんだぞ。父ちゃんは接待ゴルフ、母ちゃんはひまが熱出して看病……風間くんも、ねねちゃんも、まさおくんも、みんな見に来ていたのに……オラだけ……」

「……そうだったの……」

「でも父ちゃんも母ちゃんも、一緒のことしか言わなかったんだぞ。仕事だから仕方ない。ひまが熱出したから仕方ない。
……オラが聞きたかったのは……」

それから先の言葉はなく、しんちゃんは黙り込んでしまった。言いたいこと。だけど、それを口にしたくはない。そんな感じなのだろうか。
プライドだとか意地だとか、そんな単純なものじゃないんだと思う。
もっと色々な感情が頭の中で絡み合い、混ざり合って、しんちゃんの口を閉ざしているのだろう。

「……しんちゃん、寂しかったんだね……」

香澄さんは、優しくそう呟く。

「違うもーん。そんなんじゃないもーん。……そんなんじゃ、ないけど……」

少し、強がっているように見えた。

すると香澄さんは、クスリと笑う。

「そういうことにしておくわね。……でも、きっとお父さん達、心配してるわよ?」

「……そんなことないぞ」

「してるわよ。親の気持ちってさ、大人にならないと分かりにくいのよね。私のお母さんもね、言ってたんだ」

「なんて?」

「結婚に反対された時は、物凄くお爺ちゃんを恨んでたんだって。こんな親の元に生まれた自分が悲しいとか、そんなことを思ってたって。
……でも、結婚して、私が生まれて、あの時のお爺ちゃんの気持ちに、少しだけ触れることが出来たとも言ってた。
心配でしょうがなくて、口出ししないと気が済まなくて……そして、とても愛おしくて……。それはね、親になって初めて分かることなのかもしれない。
現に私はまだ結婚してないし、子供を思う親の気持ち――お母さんやお爺ちゃんの気持ちは、たぶんよく分かってないんだと思う」

「……」

「それはしんちゃんも同じなんじゃない?しんちゃんのお父さん、お母さんが何を思いながら接待したり看病してたのか……それは、きっと分かってなかったと思う。
だってしんちゃんは親じゃないし、まだ子供じゃない。だから、それを聞く前から“こうに決まってる”って決めつけるのは、ちょっと早いと思うよ」

「……お姉さん……」

すると香澄さんは足を止めた。それに続くように、僕としんちゃんも足を止める。


べ、別に泣いてないし

香澄さんは空を見ていた。
晴れ渡った青空には鳥が舞う。空に広がる白い雲は、風に流され形を変える。
体を大きく伸ばした香澄さんは、見上げたまま続けた。

「……家、帰ってあげなよ。私はしんちゃんのお父さんやお母さんがどんな人か知らないけど、しんちゃんの両親なら、きっといい人達だと思うよ。
だってしんちゃんは、こんなに素直だし、こんなにいい子なんだから。まあ、ちょっと女好きではあるけどね。
子供は親に似るって言うし、しんちゃんの両親も、なんとなくだけど、どんな人か想像出来るんだ。
――きっとその人達は、しんちゃんの帰りを待ってるよ」

「……」

そして香澄さんは、しんちゃんに視線を戻した。

「……しんちゃん、お父さんとお母さんを大事にしないとダメだよ?
親はいつかはいなくなるんだよ。その時に後悔しても、それは遅いの。声が聞こえるうちに、言葉が届くうちに、手が届くうちに、色んな事をしてあげなよ」

お姉さんは、優しく語り掛ける。だけど、言葉のあちこちにどこか寂しそうな気持が見えていた。
……その理由は、きっと聞かない方がいいのかもしれない。

「……お姉さん……」

しんちゃんも、それを何となく分かっているのかもしれない。
とても、悲しそうな顔をしていた。

「これは、お姉さんからの忠告だからね。……じゃあ、ばいばい」

僕らに手を振った香澄さんは、そのまま歩いて離れていった。
しんちゃんと僕は、ただ小さくなる彼女の背中を見つめていた。

「――そうか……佳澄が、そんなことを……」

お爺さんの家に戻ったしんちゃんは、香澄さんの話をしていた。

「ねえねえ爺ちゃん、お姉さんの家に行かないの?」

「なんでだ?」

「だって爺ちゃん、お姉さんの母ちゃんに会いたそうだよ?」

「……そう見えるか?」

「うん。そう見える」

すると、それを聞いていたお婆さんが、声を出して笑い始めた。

「ハハハ……!子供は正直やね!……あんた、意地を張ってないで、顔見に行こうよ」

「う、ううん……」

お爺さんは、困ったように頭をかく。

「……その前に、しんちゃんを家に送らないとね」

「……オラを?」

「……そうやね。そろそろ、家に帰すかね……」

お爺さんもそれに続き、しんちゃんを見つめる。

「でもオラ……」

「口ではそんなこと言っても、坊主、お前、帰りたそうな顔しとるよ?」

「……そう見える?」

「ああ。そう見える」

しんちゃんは困ったように頭をかいていた。
それを見て、お爺さんとお婆さんは笑っていた。とても優しく。その笑顔は、昨日までとは少し違う。
だけど、とても暖かいものだった。

それから数時間後、しんちゃんは車に乗っていた。少し型の古い軽ワゴン車はガタガタと揺れながら、黄昏の色に染まる高速道路を走る。
運転するのはお爺さん。そして、お婆さんは助手席に座る。僕としんちゃんは後部座席に座り、外の景色を見ていた。
少し前に見た光景。でも、あの頃とは少し違うようにも見える。
通り過ぎる光はやけに眩しく、車の車の音は前よりもうるさくない。
事前にお爺さんはしんちゃんの家に電話していた。
電話口のみさえさんはかなり驚いていたようで、お爺さんのところまで迎えに行くと言っていたが、それを断わりこうしてしんちゃんの家まで向かっていた。

しばらくの長旅になるそうで、時間が緩やかに進んでいるように感じた。

「――坊主、不安か?」

ふと、お爺さんは前を向いたまま、後ろのしんちゃんに声をかける。

「……別に」

「強がるな。しばらく家を離れていたからな。当然、父ちゃんも母ちゃんも心配しとるやろ。早う帰ってやらんとな」

「……」

「しばらく家を空けたからな。色々不安なのは分かる。ばってんな、それでもお前は家に帰らないかん。お前が帰るべき家は、そこやしな」

「……うん」

「なあに、心配いらんさ。親御さんの気持ちは、俺にも分かる。俺も一応、親やしな」

「……じゃあ、お爺さんもお姉さんの家に行くの?」

「え?あ、ああ……」

「ホント、子供は正直やなぁ……」

しんちゃんとお爺さんのやり取りに、お婆さんはそう呟いていた。

今回は短めなのかしら
しえん

車が春日部に着いた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
お爺さんも、ここまで運転するのも疲れたはずだ。それでもお爺さんは、絶えずしんちゃんに話しかけながら運転していた。
たぶん、彼の不安を少しでも抑えようとしていたのかもしれない。

窓の外を覗けば、見慣れた風景が広がる。
公園、道路、道端の自動販売機……これまで何度も見て来た道。これまで何度もしんちゃんと歩いた道。
過ぎゆく街並みは、僕らが帰ってきたことを実感させる。

「……坊主、もうすぐやぞ」

「……うん」

しんちゃんは、消えそうな声で言葉を返す。不安、安心……色んな感情が、きっとあるんだと思う。

(――あ。しんちゃん!)

俯く彼に声をかける。

「もう……うるさいぞ、シロ……」

(あれ見て!あれ!)

必死に前方を見るよう促すと、しんちゃんはようやく視線を上げた。

「――お」

「あそこか……」

僕らが見つめる先には、懐かしい家があった。白い壁、赤い屋根……少しだけ開けた窓から、懐かしい匂いがする。
そしてその家の前には、一つの影が立っていた。
よく見知った顔――ひろしさんだった。

「――ッ!みさえ!来たぞ!」

ひろしさんはお爺さんの車に気付くなり、家の中に向かって叫ぶ。お爺さんの車のナンバーは他県のもの……見たらすぐわかるだろう。

家からひまわりちゃんを抱きかかえたみさえさんが出て来た。心なしか、目が赤く腫れているようにも見える。
ひろしさん、みさえさん、そしてひまわりちゃんが見つめる中、僕らを乗せた軽ワゴンが止まる。
車のヘッドライトが、ひろしさん達の姿をはっきりと映し出した。

「……父ちゃん、母ちゃん……」

不安げに、しんちゃんは呟く。そんな彼に、お爺さんは優しく声をかけた。

「……ほれ。行って来い坊主」

「……うん」

しんちゃんは車を降りる。そして車の前に移動すると、車の光を背に受けた彼の足元からは、影が伸びていた。
その影は、彼自身よりも一足早く、ひろしさん達の元に辿り着いていた。

「……」

「……」

しばらく、しんちゃんとひろしさん達は見つめ合ったまま動かなかった。
それでも、しんちゃんはゆっくりと口を開いた。

「……父ちゃん、母ちゃん……」

「……しんのすけ……」

「―――」

ひろしさんの声を聞いたのを皮切りに、しんちゃんはゆっくりと足を踏み出す。
少しずつ前に進み、そして徐々に速度を増す。

「――父ちゃん!母ちゃん!」

最後には前のめりに走りながら、彼はひろしさん達の元へと駆け寄っていた。

そして、間もなくひろしさんに手が届く―――

「――んの!バッカヤロオオオ!!」

――パァーン!!

突然、車のエンジン音しか聞こえない周囲に、頬を平手打ちする音が響き渡った。

「―――」

「―――」

車のライトが照らす先では、顔を横に向けたまま固まるしんちゃんと、手を思い切り振り抜いたひろしさんが映っていた。

おうおう(つд;*)

「……父ちゃん……」

しんちゃんは赤色に染まった左頬を手で押さえながら、ゆっくりとひろしさんの方を振り返る。
これまで、何度もゲンコツをされることはあった。でもその時の平手は、僕自身、見たこともないものだった。
ひろしさんは手を下げ、握り締めていた。そしてその手は、震えていた。

「……今まで……今まで何をしてたんだ!」

「お、オラ……」

「俺達が、どれだけ心配したと思ってるんだ!
いきなり家からいなくなって!手掛かりもなくて!どんな思いで探し回ったか分かってるのかよ!!
事件に巻き込まれたんじゃないか……事故に遭ったんじゃないか……どれだけ不安だったか……お前分かってるのか!?」

「……」

「ホントにお前は、バカ野郎だよ!!この……!!」

そしてひろしさんは、再び手を振り上げた。

「――ッ」

しんちゃんは咄嗟に目を瞑り体を硬直させた。

……でも、ひろしさんの手は振り下ろされることはなかった。
気が付けば、ひろしさんの両手は優しくしんちゃんの体を包み込んでいた。

「……この、バカ野郎……。無事で……無事で良かった……本当に良かった……」

ひろしさんはしゃがみ込み、しんちゃんの肩に顔を埋める。
体と声は震えていた。小さな体を包む手は、とても強く、でも優しく握られていた。まるで、もう二度と離さないかのように。

「………」

大きな腕に包まれたしんちゃんは、目一杯に涙を溜めながら閉じた口を震えさせる。

「……しんのすけ……」

ひろしさんの横から、みさえさんもしんちゃんの体に寄り添うように彼を抱き込んだ。
ひまわりちゃんは声を出して泣いていた。

「……ごめんなさい……ごめんなさい……!」

優しい涙に包まれた彼は、泣き叫んでいた。その姿は、普段見ることのない、本当の意味での子供だったように思えた。

お爺さんとお婆さんが見守る中、光を受けた4人は泣き続けた。
でもそこに悲しい匂いはない。とても、暖かくて優しい匂いだった。

「――本当に、ありがとうございました……」

ひろしさんは、深々とお爺さん達に頭を下げた。

「いやいや、いいんよ。無事に坊主を送り帰すことが出来て、こっちは満足しとる」

「そうそう。それだけでいいんですよ」

お爺さん達は、笑顔で言葉を返す。
そして……

「……では、そろそろ帰らせてもらおうかな。家を長く空けるわけにはいかないし……」

「そんな……こんな遅くまで運転して、疲れているでしょう。今日はうちで休んで行ってください」

みさえさんは、お爺さん達を引き留めようとしていた。
しかしお爺さんは、頷くことはなかった。

「お気持ちだけでけっこうですよ。それより、早く坊主を家に入れてやってください。ほら、早く」

「え、ええ……」

顔を見合わせたひろしさん達は、もう一度深く頭を下げお礼を言い、しんちゃん達と家に入って行った。

「……坊主!親御さんを大事にしろよ!」

「ほほーい!」

手を振ったしんちゃんは、家の中に入って行った。
そして家の電気は灯される。きっとこれから、じっくり説教されるだろうな。
僕も自分の家に向かって行く。

――その時、ふと後ろを振り返ると、そこには誰もいなくなっていた。

(……あれ?お爺さんとお婆さんは?)

二人の姿と車は、忽然と姿を消していた。
まるで、初めからそこには誰もいなかったかのように……

――それから、少し奇妙なことが分かった。

僕としんちゃんは家を出て、何日かお爺さんの家でお世話になったはずだった。
でも、ひろしさんやみさえさんが言うには、僕としんちゃんが家に帰ったのは、家を出た次の日のことだったらしい。
そしてお爺さんがかけてきた電話番号は、何度かけ直しても使用されていないものだった。

さらに奇妙なこともあった。
お爺さんの電話番号の市外局番、僕らの記憶を頼りに、一度改めて家族全員でお爺さんにお礼を言いに行った。
……しかし、僕らが泊まっていたはずの集落は、どこにもなかった。
僕が匂いで案内した先は、古びた神社があるだけだった。
でも間違いない。僕が嗅いでいた匂いは、間違いなくそこの匂いだった。

ひろしさんは近くの家に話を聞いた。
地元の人によると、その神社は人繋ぎの神様が祀られているところだそうだ。

結局、お爺さん達の家は分からずに終わった。いや、お爺さんだけじゃない。僕らが見たあの集落自体が、まるで最初からなかったように、誰も知らなかった。

僕としんちゃんが経験したあの出来事は、全て幻だったんじゃないだろうか。
きっと神様が、バラバラになりかけたしんちゃん達を、もう一度繋いでくれたんじゃないだろうか……
だとしたら、香澄さんは何だったのだろうか。あの家族は、いったいなんだったのだろうか。

……もしかしたら、あの場所で、それは実際にあったことなのかもしれない。そしてその出来事が、人繋ぎの神様として祀られる要因になったのかもしれない。
詳しい資料がない以上、それはあくまでも予想でしかないが……

まさかのホラー展開

……こうして、僕としんちゃんの不思議な出来事は終わった。

「――こら!しんのすけ!!」

「ほほーい!」

あの日から数週間が経過した。
しんちゃんは相変わらずイタズラをしてみさえさんに追いかけられていた。
これまでと変わらない日常。だけど、とても幸せな日々。
あの日から、しんちゃんはどれだけ怒られても、家出をすることはなかった。
そして心なしか、時折ひろしさんやみさえさんを労う場面も増えていた。

……もしかしたら、しんちゃんはお爺さんや香澄さんの言葉を覚えているのかもしれない。
彼の中で、あの出来事は大きな意味があったのだろう。
それはきっと、大人になっても忘れることはないと思う。
家族を思う心、大切さ……しんちゃんは、きっとそれを強く認識できたと思う。
これから先、どれだけの間しんちゃん達が一緒にいるかは分からない。

だけど、きっと彼なら、家族を思うことが出来るはずだ。
だって彼の周りには、こんなにも彼を思う人で溢れているのだから。

「――シロ!散歩に行くぞ!」

(分かったよ!しんちゃん!)

僕は今日も、彼の背中を追いかける。
それが僕の幸せだから。

「――シーロ!」

「キャン!」

彼は特に意味もなく僕を呼ぶ。
その声は、僕がとても好きな言葉、声……こうして、僕はずっと彼の隣にいる。ずっと、これからも……。



終わり

くっさつまんね

とりあえずおつかれさん

ひさびさにみたら完結してた!乙!

乙でした

いい話だった
ありがとう

いい話だった。
俺も親を大切にするよ(´;ω;`)

乙。
だけど更新遅すぎ
他の人も何回も言ってるけど書き溜めなよ

>>100
ゴメン
最近仕事が忙しくて

>>101
早く更新しろ!ってわけじゃなくて、最初から書き溜めておいて投下すれば周りからあれこれ言われないし、早いしでいいんじゃないかと思って。
ドラえもんの時もそうだけどさ

>>101
前もお願いしたけど
しんのすけとあいちゃんのが読みたい!
もちろんその気になれなければ大丈夫

>>103
考えてみます

またお涙ちょうだいか
情けなっ

ひろしは接待だから仕方ないにしても、みさえはひまわりのことをお隣のおばさんに頼むんで行くなら、むさえに代わりに行ってもらうなりできただろ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月06日 (土) 21:06:46   ID: fgZCTmbw

書いたんだから、最後までやれ〜

2 :  SS好きの774さん   2014年10月07日 (火) 02:56:50   ID: qwThPhFt

※1
IDよく見ろ
スレ立てた人が戻ってきたんだよ

3 :  SS好きの774さんだよー   2014年11月25日 (火) 17:50:09   ID: OJjkyy6M

そーなんだ

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