女「こ、これがエロ本……」 (36)

女「世の男子共が嬉々として買っているという…謎多き書物…」

女「エロ本に取り憑かれたら最後、想いの内を吐き出すまで止まらないという麻薬にも似た危険な存在」

女「し、しかし…しかしだ。私はあいつの真意を聞くまで、これを確認しなければならないんだ」

女「こういうものは初めてだから、緊張はするが…ううん」

店員「あのー、お客さん?」

女「な、なんでもありまっしぇええええン!」


女「け、結局買えなかった…」

男「おはよう女」

女「あ、あぁ」

女(あの男は一体なんなんだ?気安くわたしのような地味女に話しかけるなど…)

女(私なんて可愛げも色気もないというのに…よくわからん)

男友「男、今日の収穫聞きたいか!」

男「いや別に」

男友「実はさぁ!」

男「聞けよ」

男友「最新刊のコミックLOLIなんだけどさ!」

男「お前、まだあれ読んでるのかよ」

男友「今月号はすごいぜ!なんせ第5回で遂にメインヒロインの優名ちゃんの初体験シーンがきたんだぜ!」

男「はぁ」

男友「初回から俺の心を掴んで離さなかった優名ちゃん!あぁ、他の男に抱かれるのはつらいが、
優名ちゃんのアヘ顔最高だったよぉ!」

男「そう」

男友「お前にも買っておいてやったからさ!あとで取り来いよ」

男「いらんお世話だ」

女子1「まーたあいつらエロいこと喋ってるよ」

女子2「やだねぇ」

女(エロいこと…思春期の男子であれば当然のことなんだろうが…まぁ公衆の面前でピーチクパーチクほざくのは確かに…)

男友「おいお前ら何聞き耳立ててんだ!男の神聖なる談義に首を突っ込まないでくれたまえ!」

女子3「誰がだバーカ!」

男(ば、バカって言われた……)

女子4「女ちゃんは真面目なんだからさぁ、変な空気吸わせないでよねぇ」

女子5「そうだよぉ、女ちゃんは純粋なんだから」

女(な、なんで私に振られるんだ…私は関係ないだろう…)

男友「ふっ…貴様らは甘いな。昨日新発売されたハーゲンダッズ並に甘い」

女子6「はぁ?」

男友「この歳で純粋な男女などいやしない!誰しも!頭のなかにはエロスが満載なのだ!それこそが!年頃ってやつ!」

男「俺トイレ」

女「わ、私もトイレ」

男「あのさ」

女「な、なんだ」

男「ここ男子トイレなんだが」

女「す、すまない…あ、気にしないでいいぞ。私は別に君のに興味なんかないから」

男「いやそうじゃねーだろ…」

女「え、あ、あぁ!そういうことね!はいはい、失礼しましたー!」


男(あいつ…やっぱどっか変わってんな。前々から気にはなってたけど)ジョボボボボボボボボボォォォx

女(…な、なんという恥さらし…バカか私は…)ヂョロロロロロロロロォォォ

男友「やはり男よ、俺は思うわけだ」

男「はぁ」

男友「やっぱ女の子と呼べるのは、初潮が来る前だって!」

男「へぇ」

男友「初潮が来たら妊娠出来る!つまり女の子から女になるわけだ」

男「うん」

男友「女になる可能性を得た女は女の子か!?否!断じて否だ!!」

男「ふーん」

男友「やはり女の子に自分の童貞を捧げる事こそ!真の意味での愛を感じないか!なぁ!」

男「知らん」

男友「お前にはコミックLOLIを去年の春から毎月渡してるじゃないか!読んでないのか!」

男「いや、燃やしてるけど」

男友「なんということを”ぉぉぉぉ~~~~!!!貴様に慈悲はないのか!!」

男「俺ロリコンじゃねえし」

男友「し、仕方ないな、ほれ」

男「最新刊を俺に渡してどうする」

男友「ラストチャンスだ、今読め!そして本当の女の子をその目で確かめろ!」

男「…」ポイ

男友「捨てるなぁぁぁあ~~~~!!!」


女(男…ああいう本が好きなのか)

女(そんなわけで書店にやってきたわけだが)

女(コミック…なんだっけ、えーっと)

女「なっ…!!」

女「なんだこれは…女があられもない姿で…これじゃあまるで痴女じゃないか!」

女「って、成人向けの本なんだから当たり前か…しかし…」

女「どいつもこいつも胸がでかすぎないか。頭と同じくらいあるぞ」

女「むっ…そういえば男が好きなあの雑誌は…」


女「胸が平だった!」

女「どれもこれも巨乳ばっかりだから、ああいう本なら逆に見つけやすいかもしれぬ」

女「うーん」

女「あ、これかな?」スイ

女「コミックLOLI…ああ、確かそんな名前だった気がするな」

女「しかしなんだ、傍から見たらエロ本には見えないな。なんというか…画集っぽくは見えるな」

女「いや、でも……しかし…これは、エロ本なんだな………」



男(何やってんだあいつ)

女「結局店員に情けない悲鳴を上げて買えずじまい…私にはまだ早かったのか…」

男「おい」

女「な、なんだ男じゃないか、奇遇だな」

男「とりあえず一つ言っておきたいことがある」

女「なんだ?」

男「俺はロリコンじゃないから」

女「え?」

男「そんじゃ」

女「……ロリコン?」

女「ロリータコンプレックス、幼女に愛情を持つ偏愛思考。ロリータという映画が元ネタ…」

女「確かに、コミックLOLIの表紙の子は胸が平だったな」

女「だが、解せんな」

女「私も胸は薄いが、ロリ扱いされたことがないぞ」ムニムニムニュゥゥン

女「自分で言ってて死にたくなってきた…胸が薄いだけではロリじゃないのか」

女「ではどうしたらロリになれるのか…ううむ」


女「ゴスロリ…?こ、これだ!!」

男「んじゃ出かけてくるわ」

男母「いってらー」

女(よし、事前調査通り、この時間に男は買い出しで出かける)

女(そこでこの私と う っ か り 鉢合わせて、私のゴスロリ姿を目の当たりにさせる)

女(そうすれば、私のことをロリと認めてくれる!)

女(完璧だ!完璧すぎる計画!あ…見失わないように尾行しなきゃ)


男(女…なんつー格好してんだ)

女(尾行したはいいが、尾行する意味はないような気がした)

女(とりあえず、自然に遭遇するようなタイミングをつかまなければ)

女(おっ!ちょうどすき家に入った!そこから出てくるタイミングで私が外にいれば、自然だ!自然な出会い!)

男(キムカル丼にすっかなー)

客1「なんだあの女の子…」

客2「あんな格好で暑くないのか」

男(同級生だなんて断じて言えねえ…)

強盗「強盗だ、金を出せ」

客3「きゃーごうとーよー」

店員「いくらほしいですか?」

強盗「あるだけ出せ。隠しても無駄だぞ」

店員「いまこれだけしかありません」

強盗「しけてやがんな。たった1000円かよ。ブラック企業のくせに」

店員「もうしわけありません」

強盗「へへっ、また来るぜ!」ダダッ


女「待て」

強盗「あん?」

女「泥棒は犯罪の初まりだ」バキッ

強盗「げふぅ」

警察「警察です。いつもの店に強盗が入ったと聞いて」

女「こいつです。このホームレスみたいなやつです」

警察「取り押さえてくれていたのですか!感謝します、おい、連れていけ!」



観衆1「すげーぞ姉ちゃん!」

観衆2「かっこいいー!」

観衆3「素敵―!ゴスロリ仮面ー!」


女「あ…あ、ど、どうも…」ペコペコ

男(あいつ、強いんだな…)

女「お、おう男、奇遇だな」

男(まだ言うかこいつ…)

女「いやあ、日課の散歩をしてたら ぐ う ぜ ん こうして会うとはなぁ」

男「はいはい」

女「ま、まぁなんだ。せっかく会ったんだし、買い物くらい、付き合うぞ?」

男「勝手にしろよ」

女「ははは、じゃあ勝手にさせてもらうか」



女(ってこれデートじゃないかああああ!!!)ドッカーン

女子1「女ちゃん、なんか朝からぐったりしてない?」

女「…そんなこと…ない…うぐぉぉう」

女子2「女の子がそんな超え出しちゃダメだよーw」

女「もう…私は…女の子じゃない…」

女子1「え?なになに?」

女「おトイレ……」トボトボ

女子2「女ちゃん、どうしたんだろ」

男(……俺には関係ないな)

男友「でさぁ男ぉ!初体験って多分血ぃ出るじゃん!だからさぁ、俺思ったわけよ!」

男(次の授業まで寝てよう)

女「女の子…か」

女「私は全然可愛くないし、色気もないし、無駄に体術はできる男勝りな女」

女「それでも一応胸は膨らんでるし、生理だって中1でやってきた」

女「つまり、相手さえいればいつだって女になれるし、そこから母になれる」

女「でも…男にとっての理想の女性は…女の子なんだ」

女「私じゃもう…賞味期限なんだ…」

女「あ、あれ…なんで私落ち込んでるんだ?男の好みじゃなくたって…私には関係ないじゃないか…」

女「はは、おかしいな…うんこしよう」 ブリブリブチィィィィブボボボボボボオ

女子1「ちょっと男ぉ」

男「なんだよ…」

女子2「知ってんだよ、女ちゃんと男が昨日デートしたってこと」

男「ただの買い物だろ…」

女子1「女ちゃんに何言ったのよぉ!」

男「なんも言ってねぇよ。つーかあいつが一人でだべって俺は聞いてただけだ」

女子2「でもぉ、その日から女ちゃんの様子が変なんだから、男、なんとかしなさいよ」

男「なんで俺が」

女子1「わかったわね!」ビシィ

男(めんどくせー)

女「で、男…私を呼び出して何の用だ」

男「多分…つうか大凡予想はついてるんだけど、口で言うのはだるいからこれを見ろ」サッ

女「これは…阿吽…?…え、エロ本か!?」

男「俺が愛読してるやつだ」

女(こ、これが男が本当に好きな本…う、うぅ、巨乳の女ばかり…)

男「お前が何勘違いしてるか知らんが、俺はそういうのが好みなんだよ」

女「あ、あぁ…そうか」

男「んじゃ、そういうことで」


女「男は…ロリコンじゃなかった…普通に巨乳が好きな男子だった……ん?」

女「男は巨乳が好き…つまり…えっと」

女「……」ヌギヌギ

女「ひ、貧乳には興味がないってことか…」ズーン

女「で、でも…べ、別にいいもん…別に、男なんて…別になんとも思ってないし…ふ、ふふん!」

女「男好みの女じゃなくたって…私には関係ない…もん………」

女「なんで、こんなに辛いんだろうな……」

女「こんな気持、初めただな…」

女「うんこしてこよ」

男友「男ぉぉぉぉぉ!!!!」

男「なんだようるせえな」

男友「お前は全俺を敵に回したああああ!あんなデカチチばっかり出てくる売女推しのエロ本読みやがってええええ!」

男「それ以上黙らないと口を縫い合わせるぞ」

男友「はい、すいません…おっぱいもいいよね……」

男「はぁ…これでようやく普通に過ごせ……ん?」

女「男!」

男「な、なんだよ?」

女「………」

男(なんかよくわからんが、見下されると迫力あるな)

バシッ

男「な、なにこれ…」

女「ふん、貴様には、この快楽天がお似合いだ!さっさと読んですっきりしろ!」

男「……は?」

女「貴様なんか、デカチチ二次元女にうつつを抜かしてればいいんだ!いーだ!」ダダ


男友「な、なぁ男……女ちゃんって」

男「言うな」

男友「え、だって」

男「それ以上言うな」

男「とりあえずもらっておくか」

女「最近、私はチャンピオンREDを読みだしたぞ!ははは!」

男「あんな子供だましのエロ漫画のどこがいいんだ」

女「ば、バカかお前は!あの本番行かないエロがいいんじゃないか!」

男「エロを推すなら最後までするのが俺のポリシーだ。寸止め描写じゃ満足しないね」

女「露骨すぎるエロスは身を滅ぼすぞ!」

男「下半身見ながら言うな!」


男友「なんか、仲直りした、のか?」

女子1「ま、それならそれでいいんだけどね」

女子2「話のネタがちょっと着いていけないけど…」


女「エロスとは最低限のルールの元で楽しむべきだ!」

男「最後まで貫き通してこそエロスだ!!」

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