斉木楠雄(『コロシアイ学園生活を阻止する』2スレ目だ) (821)

「スレ立てて これだけ経って Chapter2」
今スレの超能力標語 モデル:斉木楠雄さん(16)

・ダンガンロンパ(無印)×斉木楠雄のΨ難
・チートキャラで無双して悦に浸っちゃう奴のためのSS
・一部安価あり
・圧倒的ネタバレにつきダンガンロンパ(無印)クリア後の閲覧推奨
・キャラ崩壊注意
・そろそろSS内の独自設定もわんさか出てくる頃なので更に注意
・投下ペースは月1回程度
・ご都合主義? 残念、マインドコントロールだ
・初心者は>>2も読むように

前スレ ※開幕ネタバレ注意
斉木楠雄(コロシアイ学園生活を阻止する)
斉木楠雄(コロシアイ学園生活を阻止する) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384176147/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407686522

【SS速報VIPに不慣れな方へ】

斉木(僕の名は斉木楠雄。超能力者だ)

斉木(このSSを読む前にいくつか心掛けてほしいことがある)

斉木(SS速報VIPは、物語を投稿することに特化した板だ)

斉木(レス(書き込み)が無くても、スレッドが流れて消えることはない。条件もあるが2ヶ月は大丈夫らしい)

斉木(よってニュー速VIPに見られる【「支援」「保守」のレスは必要ない】)

斉木(どうせレスするならこのSSに対する感想を書いてほしい。読者からの言葉は>>1も僕も嫌いじゃない)

斉木(それと……レスする際は【E-mail欄に半角英数で「sage」と入力する】ようにしてくれ)

斉木(平たく言うと、「sage」と入力することでこのスレッドが目立つ事態を回避できる。僕は必要以上に目立ちたくないんだ)

斉木(その代わり、話の続きが投下されたときは目立つ場所に行く。)

斉木(……最後に、SS速報とは関係ないがもうひとつ)

斉木(前スレでアンケートをしたところ、『ダンガンロンパ』の原作を知らない読者が多かった)

斉木(“ハイスピード推理アクション”というジャンルの都合上、ダンガンロンパは本来ネタバレを回避すべき作品だ)

斉木(できるならば原作をプレイしたり、アニメを視聴したりして【結末を知った上でこのSSを読んでほしい】)

斉木(不可避のネタバレでガッカリさせられるのは僕ひとりで十分だ……)

斉木(それでも構わない身の程知らずは前スレから読んでくれ。>>2で盛大なネタバレを喰らうことになるぞ)

斉木(さて……注意すべきことはこのくらいか)

斉木(次のレスは設定のまとめ、その次のレスは自由行動安価のルール説明だ。前スレの復習がてら読んでおいてもらいたい)

斉木(……それにしても、僕はいつになったらコロシアイ学園生活の阻止を実現できるんだ?)

【斉木の考察 まとめ】

コロシアイ学園生活について
・斉木は“超高校級のジャンケニスト”として希望ヶ峰学園に入学したらしい
・黒幕の正体は特定済み。便宜上「黒幕」と読んでいるだけ
・それに伴い、黒幕の思惑や内通者2人の存在にも気付いている
・内通者1人を除いた希望ヶ峰学園生徒15人が2年間の記憶を失っているが、これは黒幕の仕業である
・黒幕と内通者1人は2年間の記憶を保持したままだが、斉木に関する記憶は持っていない様子
・斉木も黒幕に記憶を消されてはいるが、テレパシーによって2年間の出来事の大半は把握している
・現時点で斉木が超能力者であることを知る人物は苗木1人のみ
・外の世界は荒廃しているが、少なくとも両親は無事な様子である
・斉木は“他の生徒による殺人を未然に防ぎ、生徒間の結束を強め、その後黒幕の所業を全員に認知させる”ことでコロシアイを阻止しようとしている



斉木自身の超能力について
・学園の外に向けて使える超能力は「透視」と「アポート/テレポート」のみ
・「復元能力」は死者の蘇生も可能になっている
・絶望している人間の心の声(絶望テレパシー)を聞き続けると斉木は体調不良になる
・制御装置を引き抜くと外界の絶望テレパシーを大量受信してしまう
・よって制御装置を引き抜くと極度の体調不良に陥るので、マインドコントロールなどの強力な超能力は使えない
・幽体離脱しても校舎や寄宿舎の外壁をすり抜けることはできない
・これらの変化は“空白の2年間”のうちに起こったものだと推測される
・黒幕に正体がバレるのを防ぐため、監視カメラの前ではできる限り超能力の使用を控えている
・斉木楠子に変身した姿は黒幕から“僕っ娘魔法少女”と呼ばれており、人物特定はされていない
・ちなみに斉木は読者に見えないところで普通に会話しているという公式設定があります

【自由行動安価について】
このSSでは1つのChapterにつき3回、計15回の「自由行動安価」イベントを実施しています。
斉木が他の生徒と接して交流を図ったり図らなかったりするイベントです。

作中で斉木からのアナウンスがありましたら、15人の生徒のうち誰と一緒に過ごすか指名してください。
選んだキャラとタイミングによっては、ストーリーや人間関係を左右するようなフラグが立つ場合もあります。
(前スレでは自由行動イベントにより桑田が改心した他、大小あわせて3本のフラグが立っています)

但し、以前に指名されたことがあるキャラは安価下、話の展開上自由行動ができないキャラは最安価とさせていただきます。
その他特殊ルールが発生することもありますので、適宜従ってください。

また、自由行動安価の際に投下するSSは、話の流れを踏まえつつリアルタイムで書いております。
>>1は非常に遅筆ですゆえ、投下までに時間が掛かってしまうことをご容赦願います。


【以前に指名されたキャラ】
Chapter1 霧切、桑田、山田
Chapter2 苗木、大神、十神

先に次スレだけ立てさせていただきました。
これから前スレに本編を投下して参ります。

弁明の余地もなくスランプです。ご迷惑をお掛けしております。
10月1週目には続きを投下できるよう努力します。

今週末には投下することを宣言します。
絶対絶望少女は金銭不足で買えていませんが、何故か麻生先生がツイッターで宣伝をされていたので年内には買おうと思います。

斉木(僕の名は斉木楠雄。超能力者だ)

斉木(>>1が今週末には投下すると宣言しておいて申し訳ないが……やはり月曜ないし火曜の夜まで掛かってしまいそうだ)

斉木(その代わり、投下をスムーズに行うため“自由行動安価”を事前に行いたい)

斉木(単純に好きなキャラを狙うも良し、見えないフラグを立てようと画策するも良し)

斉木(事実、前スレ>>1000を逃したレスの中には、既に自由行動安価でフラグが立っている展開も含まれていたからな)

斉木(勿論>>1000そのものもChapter3のどこかで必ず実現させる。僕としてもコーヒーゼリーを馬鹿にする人間を見逃すわけにはいかない)

斉木(自由行動安価の詳細は>>4を参照してくれ。今回は舞園さん絡みの特殊ルールも無しでいこう)

斉木(では……後で【安価下2】のところへ会いに行くとするか)

>>1 がんばれ
応援ダンロン斉木 

本当に、本当にお待たせしてしまい、申し訳ありません。
続きを投下します。

>>84
支援絵ありがとうございます。とても励みになりました。
この斉木は絶対黒幕候補に上がる。

【前回のあらすじ】
ババンババンバンバン……



斉木(今日の朝食会も終わりに差し掛かった頃、突如石丸の声が響いた)

石丸「僕から皆に頼みがある! 本日午後6時、大浴場の脱衣所に全員集合してほしいのだ!」

朝日奈「脱衣所……!? それって、男子も女子も!?」

石丸「無論だ! しかしやましいことをするわけじゃないぞ!」

ジェノ「って予防線を張るのもきよたんがやましいコト考えてる証拠だったりしてぇー!!」ゲラゲラゲラ

石丸「断じて違うッ! 僕は大浴場の使用ルールについて全員で話し合いたいだけなのだッ!!」

ジェノ「んもぉムキになっちゃって……」

桑田「つかさ、そんなモン別に今ここで決めちゃえばよくね?」

石丸「具体的な計画を練るには現地の情報が不可欠だ!」

江ノ島「あーそれ超わかるー」

舞園「石丸くん……旅行にでも行くつもりでしょうか……」

斉木(少なくとも江ノ島さん(仮)は戦場に行くつもりらしい)

石丸「何より僕は、サウナの利用者が脱水で倒れてしまった際に迅速な対応をできるようにしたいのだ!」

葉隠「サウナで倒れんのは石丸っちと大和田っちみたいに向こう見ずな奴だけだべ」

石丸「僕らだけではない! 昨晩は斉木くんもサウナで倒れてしまったのだ!」

斉木(!?)

石丸「苗木くんと大和田くんの力を借りて、なんとか彼の部屋まで送り届けたが……このような事故は今後二度と起こらないようにしたい!」

斉木(待て、僕は幽体離脱で気絶していただけだぞ? なぜ石丸がそんなことを――)

石丸(“寄宿舎個室以外での睡眠”は本来ならば罰されて然るべき校則違反だ。しかし……

石丸(昨日は僕も斉木くんに迷惑を掛けてしまった。幸い脱衣所に監視カメラは無かったことだし、今回に限っては大目に見よう!)

石丸(罪を憎んで人を憎まず! 再発防止に努めることが風紀委員の使命だ!!)

斉木(………………)

斉木(これが石丸なりの“変わる努力”というやつなのか?)

セレス「……あなた、大和田くんにも協力を仰いだのですか?」

石丸「ああ! 彼は力持ちだから斉木くんの1人や2人簡単に運んでくれたぞ!」

斉木(僕は1人だけだが)

セレス「そうですか。不思議ですわね……昨日まではあんなにも大和田くんのことを憎んでいらしたのに」

大和田「んだとコラァ!! 昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵って言うだろうが!!」

山田「後半が違いますぞ! 今日の友は明日も友達、そうさ永遠に!!」

斉木(どっちでもいい)

石丸「とにかく、僕たちは争いの火種になるような真似は今後一切しないぞ。不良と風紀委員、憎み合う者同士こそ手を取り合うべきなのだっ!」

セレス「……他人の考えにとやかく言うつもりはありませんが」

セレス「賭博の世界では、あなた方のような人間は真っ先に破滅へと向かいますわ。そのことをお忘れなきよう」

大神「話が脱線してしまったが……我等は午後6時に脱衣所へ向かえばよいのだな」

石丸「軌道修正に感謝するぞ苗木くん! この場にいない十神くん達にも伝えなければ!」

斉木(この場にいない……そうだな。霧切さんと、不二咲にも声を掛ける必要がある)

斉木(もっとも……不二咲に声を掛けたがっている一番の人物は大和田なんだが……)

【不二咲の個室】

石丸「失礼する」ガチャ

霧切「ようやく戻ってきたわね……って、大和田くん……?」

大和田「安心しろ。別に不二咲を殺しに来たわけじゃねぇ」

霧切「そのくらい言われずとも分かるわよ。そんな真似したら今度こそ現行犯だもの」

霧切「私が驚いているのは、石丸くんが不二咲くんへの面会を許可したということよ」

霧切「苗木くん……あなた、一晩のうちにどんな手を使ったの……?」

苗木「い、石丸クンと大和田クンに朝まで生討論させて、ボクと斉木クンはその司会者を」

霧切「もういいわ」

苗木「え?」

霧切「もういいわ」

石丸「もういいそうだぞ苗木くん!」

苗木「……うん」

霧切(苗木くんは見え透いた嘘をついている……やはり何らかの行動を起こしたのは斉木くんだったようね)

斉木(おい僕に疑いの目が向いたぞどうしてくれる苗木)

石丸「さて、“宿敵”……もとい大和田紋土くん」

石丸「勘違いしないでもらいたいが、僕は君の行いを許したわけではない」

大和田「んなことわかってるよ。オレも許してもらおうなんて甘い考え持っちゃいねぇ」

石丸「……だが、自らが犯した罪を認め、償おうと努力する者を僕は応援したい」

石丸「きっと今の君ならば、不二咲くんに想いを届けることもできるはずだ」

斉木(精神論でしかない)

大和田「あぁ……オレは一度奇跡を体験したんだ。きっとオレの声で不二咲も目ぇ覚ましてくれるはずだ!!」

斉木(その奇跡は僕が起こしたんだぞ)

霧切(……石丸くんだけではない、大和田くんの心境にも変化が見られるわ。斉木くんは一体2人に何をしたのかしら……?)

斉木(頼むから霧切さんはこれ以上僕を凝視しないでほしい)

大和田「……不二咲。今のお前がどんな気分で寝てんのか知らねーけどよ」

大和田「オメェが起きる頃には、オレはオメェが心底憧れるような強い男になっていてやる」

大和田「ガタイの良さだけじゃねぇぞ。感情に任せて暴力を振るわない……オメェみたいな精神も持ち合わせた最強の強さだ」

大和田「だから……絶対にくたばるなよ不二咲ぃ!! これがオレからオメェへの罪滅ぼしだ!!!」

苗木(寝込んでる人の枕元で思い切り叫んでたけど大丈夫なのかな……)

斉木(普通の病院では非常識極まりない迷惑行為だが……ここでなら許されるんじゃないのか)

苗木(こういう時こそ石丸クンが注意してくれればいいんだけど……)

石丸「感動じだぞっ!! 大和田ぐん、君ならば必ずや屈強な人間に成長じでぐれるであろう!!」ブワッ

斉木(あんな調子の奴に大和田を注意できると?)

苗木(ボクも思わないよ)

モノクマ「あーあ、イキがっちゃって! 青春ぶっちゃって!」ピョーイ

苗木「出たなモノクマ!!」

モノクマ「ひどいやひどいや! ただでさえこのSSは他と比べてボクの出番は少ない方なのにそんな言い方しなくたっていいじゃん!」

斉木(その分黒幕の出番は他より多いと思うぞ)

霧切「あなたが現れると良からぬことが起きるのよ。今度は何のつもり?」

モノクマ「それがね? オマエラは大和田くんを許したつもりかもしれないけど……不二咲くんはまだ許してないと思うよ?」

石丸「何の言い掛かりだ! 大和田くんはもう二度と過ちを犯すことはない!!」

モノクマ「大和田くんが殺さなくってもさ……不二咲くんの心に勝手な憧れを抱いている間に、何か大事なことを見落としてない?」

大和田「なん……だと……?」

モノクマ「うぷぷ……憧れは理解から最も遠い感情だよ?」

斉木(――――まさか!!)

斉木(『意識不明の不二咲が亡くなり次第、大和田のオシオキを執り行う』)

斉木(あの日、モノクマはアナウンスでそう宣言していた)

斉木(もしも石丸と大和田の仲が改善された今、衰弱しきった不二咲が息を引き取ったとしたら……)

斉木(やれやれ……黒幕の奴も随分悪趣味じゃないか……!!)ペタ

霧切「……不二咲くんはずっと平熱のままよ。何をやっているの、斉木くん」

苗木「違う……斉木クンは体温を測りたくて不二咲クンの額に手を当ててるんじゃない!」

霧切「なら何が目的なの?」

苗木「そ、それは…………やっぱ体温を測るため?」

斉木(そういうことにしておいてくれ。僕の真意は――“復元”!!)キィン



斉木(……これで不二咲の寿命は24時間だけ延びた)

モノクマ「いいかい、大和田くん。改心したからって罪が消えるわけじゃないんだよ」

斉木(しかし……モノクマが何らかの手段で僕たちを陥れようとしてくるかもしれない)

モノクマ「罪を憎んで人を憎まず? ノンノン! 人がいるせいで罪が生まれたんだ、許すなんてとんでもない!!」

斉木(不二咲の目を覚ましてやるには、本人の意識に強くはっきりと呼びかけた方が良さそうだな……)

モノクマ「君がどれだけ決意を改めても!! 不二咲くんは戻ってこないんだよッ!!!」

大和田「………………!!」

斉木(それは違う……戻ってこい不二咲! “イミディエイト・テレパシー”!!)グッ

――――――――――



(……誰かの声が聞こえる)


(荒っぽいけど男らしくてかっこいい……大和田くんの声?)


(……大和田くんだけじゃない。石丸くんも、苗木くんも……他にもたくさんいる)


(石丸くんは、やつれた顔で僕の看病をしてくれてる……)


(霧切さんも、僕に危険が及ばないように、寝ないで看病してくれたみたい……)


(舞園さんは大和田くんを気遣って、励ましてくれて……)


(苗木くんと斉木くんは、大和田くんと石丸くんを仲直りさせてくれた……)


(まだまだいっぱい、みんなが……大和田くんや石丸くんや、僕のことを想って……毎日過ごしてくれていたんだねぇ……)


(よかった……僕のせいで二人が絶交しちゃったらどうしようって不安だったよぉ……)


(でも……僕には……)


(大和田くんとの、男の約束が……)



――――――――――

不二咲「………………うぅ」

大和田「不二咲!!!」

モノクマ「え? 何? 意識戻ったの? ぼくって逆フラグメーカー?」

苗木「具合はどう? ボクらがわかる? もう頭は痛くない?」

不二咲「…………なんだか……いろんなものがみえて……」

霧切「“見えて”? “聞こえて”じゃなくて……?」

不二咲「うん……きこえたし、みえたんだぁ」

石丸「まだ意識が混濁しているのかね? おっと、無理に体を起こしてはいけないぞ!」

斉木(“イミディエイト・テレパシー”は、相手に触れることで音声のみならず視覚的情報も伝えることができる超能力だ)

斉木(不二咲の意識に強く呼び掛けたことが功を奏したが……霧切さんが居る場で使うのは流石にまずかったか……?)

不二咲「そうだ……大和田くん」

不二咲「男の約束って、死んでも守らなきゃいけないんだよねぇ……?」

大和田「!!」

大和田「…………そうだよな。オレはもう男の約束を破っちまったんだ、不二咲のダチなんかじゃ――」

不二咲「僕……大和田くんと絶交したくないよぉ……!!」ボロッ

大和田「――はぁ!?」

不二咲「でも……大和田くんが殴ろうとするのを、僕が止められなかったから……大和田くんに約束を破らせちゃったから……」ボロボロ

不二咲「こんなことなら……男の約束なんてしなきゃよかった……!!」ボロボロ

大和田「オメェはアホかよ!? オレは勝手にっ! オメェのことをっ! 殴っちまったんだよ!!」

大和田「それにオレだって……オメェのことを泣かせちまったけど、殺しかけちまったけど……」

大和田「絶交したくなんかねぇよ……!!」ボロボロ

不二咲「ほんと……!? じゃあ、僕たちはこれからも……」

大和田「……オレから言えた義理じゃねぇが、オメェが望むんなら……破ったら絶交のルールは取り消しにしたい」

不二咲「……勿論だよぉ。これからも、よろしくねぇ……」グスッ

大和田「あ゛ーーー!! もう絶交するこたぁねーんだ、気が済むまで泣いてろ!! オレも泣くっ!!!」ボロボロ

石丸「僕まで貰い泣きしてしまうではないか!! 2人とも止めたまえ゛え゛い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

モノクマ「何これ手に負えない」

斉木(結局それは大和田も今後暴力を振るっていいということか?)

苗木「それは違うよ。大和田くんは、わざわざ約束なんかしなくたって自制ができるようになったはずだよ」

霧切「さてモノクマ、私からひとつ要求があるわ」

モノクマ「知らないよ要求なんて! どうしてもっていうんならコロシアイが起こった後に……」

霧切「不二咲くんの看病が十分にできないよう、いつまでも保健室を閉鎖していたのは誰なのかしら?」

モノクマ「ぎくぅっ!」

霧切「未遂に終わった殺人事件を、被害者を衰弱死させて強引にオシオキを行う計画だった……私にはそうとしか思えないの」

モノクマ「ぎくぎくぅっ!!」

苗木「誰かを殺そうとする人よりも、お前の方がよっぽど秩序を乱してるじゃないか!」

モノクマ「シ、知ラナイヨ? 言イ掛カリジャナイノ?」

斉木(カタコトで喋っても何も誤魔化せないぞ)

モノクマ「あーもうわかったよ!! 開放すりゃあいいんでしょ開放すりゃあ!!!」

モノクマ「明日の朝には保健室にも入れるようになってるはずだか」

霧切「今すぐに、よ」ギロリ

モノクマ「うわーん学級崩壊だぁー!! ぼくは生徒の命令に従わざるを得ないダメ教師になってしまうんだぁー!!」ヒュン

斉木(……ひとまず、保健室の施錠は解いてくれたようだな)

【校舎3階】

斉木(脱衣所に集合の旨は、不二咲と霧切さんにも無事伝わった)

斉木(今は不二咲に栄養剤を点滴している。石丸は医学書を擦り切れるほど読み込んで勉強していたらしい)

斉木(その甲斐あって、針を刺す手付きは医療ミスの欠片も無かった。これで不二咲の件はほぼ解決だな)

斉木(さて、午後6時までは時間がある。久々の自由行動安価タイムにしよう)

斉木(ちなみに今回は前もって安価を出しておいた。ご協力感謝する)

斉木(それでは……ルーデンベルクさんのところへ行こう)

【娯楽室】

斉木(セレスティア・ルーデンベルク。あらゆる賭け事に圧勝し、数多の人間を破産へ追いやった“超高校級のギャンブラー”だ)

斉木(戦術やイカサマにも長けているが……ルーデンベルクさん最大の武器は“運”のようだな)

セレス「まあ、珍しい顔ですわね。斉木くんは娯楽室に興味など無いと思っていたのですが」

斉木(よく分かっているじゃないか。この部屋にあるダーツもオセロもビリヤードも、僕にとっては等しくクソゲーだ)

セレス「あら……勝負事に関しては随分と自信がおありのようですね。てっきりあなたにはじゃんけんしか能が無いのかと」

斉木(随分となめた口を利いてくれるな)イラッ

セレス「折角ですから、わたくしと何かゲームをいたしませんか? 勝者は敗者にひとつだけ命令を下せる、というオマケつきで」

斉木(断る。いくら勝敗を超能力で左右できるとはいえ、自らを危険に晒すような真似は……)

セレス「あなたがわたくしに勝ったとしたら、朝食会のデザートを毎日あなたに差し上げても構いませんわ」

斉木(なかなかいい条件じゃないか)ザッ

斉木(斯くして僕とルーデンベルクさんはオセロ対決をしているところなのだが……)カタ

セレス(うふふ、思った通りですわ。斉木くんは甘いものの話題を出せば簡単に釣ることができる……今後も大いに利用できそうですわね)カタ

斉木(などという心の声が聞こえてきて非常に不愉快だ。僕が甘いもの如きに釣られるわけがないだろ何を考えている安広多恵子)カタ

セレス「それにしても……あなたは頭脳戦も得意でしたのね。角を2つも取られるなど、生まれて初めてですわ」カタ

斉木(ルーデンベルクさんは深く考えず、運任せで石を置いている。お陰でこちらも戦略を練りづらいことこの上ない……)カタ

セレス「あなたのような人が存在するならば、殺人が形を成さないのも腑に落ちますわ」

斉木(っ……!?)ドクン

セレス「霧切さんほどではありませんが……わたくしもイカサマを見抜く眼は肥えていますの」カタ

セレス「苗木くんが生き返ったのも、不二咲くんが一命を取り留めたのも……どなたかがイカサマを働いているように感じるのです」パタンパタン

斉木(イカサマ……か。僕の行いは確かに超能力を利用したイカサマそのものだが……)カタ

斉木(ルーデンベルクさんには、僕をとやかく言う筋合いなど無いはずだぞ?)スッ

セレス「! その石は……!」

斉木(そう。先程ルーデンベルクさんが“わざと”裏返さなかった石だ)

斉木(オセロには相手の石を1個以上裏返せる場所にしか石を置けないルールがある)

斉木(敢えて相手の石を残しておくことで、自分の石を置ける場所を増やそうとしたのだろう)ポイ

セレス「勝負をやめるのですか? わたくしが1度うっかりしてしまった程度で?」

斉木(棄権にでも何にでもしておいてくれ。僕にはルーデンベルクさんが残り30手以上のイカサマを企んでいることもお見通しだ)

セレス「でしたら、わたくしの命令をひとつ聞いていただきます」

斉木(まさか……僕の正体を暴こうと……)

セレス「わたくしにロイヤルミルクティーのパンナコッタを作ってください」

斉木(全然違った)

セレス「甘いものがお好きな斉木くんでしたら、極上のパンナコッタを作ってくださるはずでしょう?」

斉木(やれやれ……ロイヤルミルクティーは日本発祥だというのに、それをイタリア料理に組み合わせろと?)

セレス「楽しいゲームの時間をあなたが急に終わらせてしまった罰です。明日の朝までに完璧な品を用意してくださいね」カツカツ

斉木(……命令に従う気は無いが、僕もデザートを大神さんに任せきりにするのは申し訳ないと思っていたところだ)

斉木(セレスさんを含めて16人分……集合時間までの残り1時間弱は、図書室でレシピを調べて過ごすとしよう)

今回の投下は以上です。ようやくちーたんを目覚めさせてあげられました。
展開が盛り上がるにつれ、どうにかスランプを脱していけたら……と思う次第です。
常に瀕死の状態ですが、エタらせるようなことだけはしません。絶対です。
今回はChapter2でやり残したことを片付ける感じの話でしたが、次回から本格的にChapter3を開始する予定です。

>>95ですが、石丸の話の軌道修正をしてくれたのは苗木ではなく大神では?

あと、前スレの>>702で斉木が苗木に「火事場の馬鹿力でも外壁を壊せなかった」と言ってましたが、
斉木の力でも(リミッター付きでは)本当に壊せない程固いのか、
実際は壊せるけど外の様子を苗木が知って混乱するのを防ぐための嘘なのかどちらなのでしょうか?

>>112
ご指摘の通り、>>95の石丸の台詞は「苗木くん」ではなく「大神くん」です。
さくらちゃんの台詞は、投下直前まで苗木が発言していました。直し忘れです……すみません。

前スレ702に関してですが、斉木は本当に外壁を壊せません。
その辺りはちゃんと理由がありますので、気長にお待ちくださると幸いです。

苗木「コーヒーブランマンジェ?」

斉木(ああ。牛乳を使った白いコーヒーゼリーだ)

苗木「でも……鍋に入ってるのは普通の牛乳でしょ?」

斉木(確かに現時点ではただの牛乳……と生クリームに砂糖とゼラチンを溶かした液体だな)

斉木(だが、ここで先ほど焙煎しておいたコーヒー豆を使う)スッ

苗木「わぁ! いい匂い!」

斉木(鍋の中の液体を沸騰直前まで温めたら火を消し、コーヒー豆の入ったボウルに移す)

斉木(豆が割れるとコーヒーの色が出てしまうから、静かに少しずつ流し込むのがポイントだ)

苗木「普通のミルクコーヒーゼリーになっちゃうもんね……」

斉木(さて……この状態のまま、あら熱が取れるまで40分ほど放置する)

苗木(えっ、超能力で冷やしたりしないの?)

斉木(お前は素人だな。ゆっくり冷まさないと、コーヒーの味と香りが牛乳に移らないだろ)

苗木「何そのこだわり」

苗木「それにしても斉木クンって料理ができたんだね! 大神さんを手伝ってあげたらきっと喜ぶよ」

斉木(断っておくが、僕に料理はできないぞ。道具を介した作業は力加減が難しいから基本的にやりたくない)

苗木「じゃあどうしてその……何だっけ、白いコーヒーゼリーを?」

斉木(ルーデンベルクさんにパンナコッタを作ることになってしまったから、レシピを調べたんだ)

斉木(どうやら牛乳にひと手間加えると様々な味のパンナコッタになるらしくてな。折角だからコーヒーブランマンジェを試作している)

苗木「どこが折角なのかわからないよ」

斉木(折角ルアックコーヒーの豆が余っていたから、だな)

苗木「! それって……」

斉木(自由行動安価の時にお前から貰った豆だ。モノモノマシーンは僕も試しているが、目当ての景品は一度も当たっていない)

苗木「超高校級のジャンケニストなのに運はあまり良くないんだね」

斉木(やかましい)

斉木(……このコロシアイ学園生活が始まってしばらく経ったな)

苗木「だいたい2週間弱だね。現実の時間はもっと経過してる気がするけど」

斉木(やれやれ……いつまでこんな毎日が続くんだろうな)

苗木「そう? 悪いことばかりでもないと思うよ」

斉木(……苗木、お前もとうとう十神と同じ思考回路に)

苗木「そんなことないって判っててわざと言ってるよね!?」

斉木(まあ一理あるか。事件さえ起きなければ人間関係もそこそこ良好だし、何だかんだ言いつつモノクマもこまめに生活環境を整えている)

苗木「それから、このSSがきっかけで斉木やダンガンロンパに興味を持ってくれた人も少なからず居るようだ」

斉木(珍しいな、お前がメタネタを言うなんて)

苗木「WJ本誌の方に出てきた不良の服に“暮威慈畏大亜紋土”の文字が書かれていたことを知った時は心臓が止まるかと思ったよ」

斉木(下手したらコロシアイ以上に恐ろしい情報だな)

苗木「あと……ここに来なければ、みんなに出会えてなかったはずだから」

斉木(………………)

苗木「だから……どんなに時間が掛かっても、絶対にここから脱出しようね。16人全員で!」

斉木(……やれやれ、随分と簡単に言ってくれるな。最も面倒な役は僕が引き受けるんだぞ?)

苗木「そ、それは……ボクも今以上に協力するから……」

斉木(なら、これからは遠慮なく苗木をこき使わせてもらう。まずはボウルの中身を丁寧に漉して別のボウルに移せ)

苗木「ちょっと待ってよ! これって斉木クンが全部作るんじゃなかったの!?」

斉木(お前が働くから僕も安心して超能力が使えるんだ。僕は今から冷却能力でコーヒーブランマンジェを冷やし固める作業に徹する)

苗木「さっきのこだわりはどこに行ったのさ!?」

斉木(いいのか?逆らったらコーヒーブランマンジェは僕ひとりで食べ尽くしてしまうぞ?)

苗木「それはダメだ! いくら斉木クンでもお腹壊しちゃうよ!!」

というわけで、11月11日はこのSSを書き始めて満1年でした。
未だにスランプから抜け出せないので、いったん時系列を無視した小話を書いてみたら日付が変わってしまいました。
これからはもう少し筆が速くなるように努力していきます。

幽霊「ハロー、久しぶりだね! 超幽霊級のキャラ崩壊こと幽霊だよ!」

幽霊「ぶっちゃけ僕の出番ってChapter2でおしまいだったからさ、この際質問回答係にジョブチェンジしようと思うんだ!」

幽霊「そんなわけで手始めにID:lEtADJEY0くんの質問にお答えしちゃうよ!」

幽霊「まずは>>122でアンテナくんの台詞が1ヶ所超能力者くんみたいな口調になってる件だけど……」

幽霊「ごめんなさい、>>1の推敲ミスです!!!」

幽霊「>>1はシャイなアンチキショウだからね、ろくに読み返さないまま投下することがほとんどなんだよ」

幽霊「今後は羞恥プレイにも耐えて推敲するよう努めるつもりだから、どうかここは大目に見てほしいな!」

幽霊「それから……超能力者くんの“恥ずかしい秘密や知られたくない過去”だね?」

幽霊「実はあの紙、超能力者くんが自分の部屋のシャワールームで燃やした上、トラッシュルームの焼却炉にテレポートしちゃったんだよね」

幽霊「みんな気になるだろうけど、残念ながら真相は藪の中……」

幽霊「……と思うじゃん? 僕中身見ちゃったんだよ!! 幽霊だから!!」

幽霊「なんて書いてあったと思う? ……『斉木くんは虫が大の苦手』だって」ボソッ

幽霊「笑っちゃうよねー!! 天下無敵の超能力者くんがゴキブリの1匹もやっつけられないなんてsグブフォッ」



斉木(――いつから僕が幽体離脱していないと錯覚していた?)

幽霊「うわぁ怖い! 超能力者くんの殺気が命を刈り取る形をしてる!! 僕もう幽霊なのに!!」

(ちくわ大明神)

幽霊「笑っちゃうよねー!! 天下無敵の超能力者くんがゴキブリの1匹もやっつけられないなんてsグブフォッ」


C 「ちくわ大明神」


斉木(――いつから僕が幽体離脱していないと錯覚していた?)

幽霊「うわぁ怖い! 超能力者くんの殺気が命を刈り取る形をしてる!! 僕もう幽霊なのに!!」

斉木 幽霊「誰だ今の」

斉木の記憶消去できる人物…ひまわりの種…ハムスター…ハッ・・

前回の更新からだいぶ間が空いてしまったけど大雑把なあらすじみたいなものがあると助かるなーチラッチラッ

そういや単行本にもやっと出てきた斉木兄がいるから両親や友達辺りは安泰そうだな
あと>>1は単行本派らしいから詳しくは言わないが不良の服とか先週のジャンプとジャンプ の番外編見ると麻生もここ見てるんじゃないかと錯覚する

待ってる間にもう無印二周しちゃったよ




朝比奈ちゃんかわいい
どっかのアイドルよりかわいい

そういえばボツネタで何で照橋さんが来てないのか考えてたけどメタ的理由を除くと内面も完璧だから謙遜したとかデート回で出てた野に咲く美しい花でありたいからとかでスカウト断ったのかな?

そういえば、幽霊(大和田兄)は
斉木→超能力者くん
苗木→アンテナくん
大和田(紋土)→総長
石丸→風紀委員くん
とういう風に読んでたけど、他の人はなんて読んでるんだろう?

174ですが、訂正です。
× 他の人はなんて読んでるんだろう?

○ 他の人の事はなんて呼んでるんだろう?

幽霊「ハロー! 明けましておめでとうございました! 幽霊だよ!」

幽霊「毎度のことながら更新が遅れてしまってごめんね! 今月中にはみんなお待ちかねのプログラムくんが登場する予定だよ!」

幽霊「……っと、これだけだったら俺も>>1もただのニートだから、みんなの質問に答えちゃうよ!」

>>136
幽霊「知ってるよ! 禁煙にご利益がある神様としてかまぼこ工場がある街の神社に奉られているんだよね?」

>>141
幽霊「ひまわり……種……ハムタロサァン……」

>>145
幽霊「大雑把なあらすじならずっと書いてきたじゃないか! ワガママはよしこちゃんだよ!」

幽霊「……というのも理不尽だし、余裕があったらちゃんとしたあらすじを書いてみようかな」

幽霊「まずは次回投下分を急がなきゃね! それまでは>>3で要点を押さえといてよ!」

>>153
幽霊「そういえば超能力者くんってお兄さんがいたんだっけ」

幽霊「超能力者くんの知り合いに関しては、前スレのおまけとして投下した動機DVDの通りになってるよ!」

幽霊「……それから、【麻生先生がこのSSを読んでる疑惑】に関してだけど」

幽霊「麻生先生は二次創作に対して比較的寛容な人だから、可能性そのものは捨てきれないと思うんだ」

幽霊「けれど……超能力者くんは麻生先生に読んでもらいたくてコロシアイ阻止を目指してるんじゃない」

幽霊「所詮このSSは素人による二次創作だということを忘れないでおいてね!」

>>165
幽霊「確かに>>1も無印女子だとドーナツちゃんが一番好きだけどさ!!!」

幽霊「俺は舞園さやかちゃん大好きだよ!! 一流アイドルが見せる人間的な脆さ!! いいじゃないか!!!」

>>167-169
幽霊「はぁーい正解ぃー! 彼女が芸能界入りしない理由はデート回でも言及されてたね!」

幽霊「……メタ的な話をすると、ヒロインまで希望ヶ峰に来ちゃったらクロス作品としてのバランスを保てなくなりそうだったんだ」

>>174
幽霊「えーと……舞園さやかちゃんとエノジュンちゃん、オーガさんはテレビにもよく出る有名人だったからフルネームも覚えてるよ」

幽霊「後は才能とか直感で呼び名を決めてるね。野球くん、御曹司くん、オタクくん、ダベくん、パソコンちゃ……パソコンくん」

幽霊「ドーナツちゃん、ゴスロリちゃん、おさげちゃん、ハテナさん……こんな感じかな?」

…どうして私と大神さんだけちゃん付けじゃないのかしら

いや一番可愛いのはさくらちゃんだろ
強いし優しいし料理上手だしで最高だろうが

ところで推敲なしでこの誤字脱字率ってすごいな

キタアアアアアアアアア!!!
フォオオオオオオオオウォアアアアアアア!!!!

(ハテナさんがハデスさんに見えてしまった)

そういや、このssの舞台はダンガンロンパ(無印)だから出演する機会は無いのだろうけど、
田中眼蛇夢の思考をテレパシーで読んだら、脳内での口調はどうなってるんだろう?
(もちろん田中は斉木のテレパシーとかのことを知らない状態で)

(フッ、貴様が俺様の思考を読んでいること、気づいていないとでも思っていたか?)

とか素でやってそう

2は狛枝とか西園寺とか罪木とか真面目に心読みたくない連中が多すぎる

気長に待ってくださって本当にありがとうございます。
数ヶ月ぶりの本編続きを投下します。

【前回のあらすじ】
逆フラグ





【寄宿舎1階・脱衣所】

斉木(……約束の時刻になる5分前)

斉木(図書室から脱衣所に移動したが、あまり人数は集まっていなかった)

朝日奈「みんな6時には集まる約束だったよね? 何かあったのかな?」

江ノ島「いや、単にダルくて来たくないだけっしょ」

斉木(当然だ。今回はモノクマによる強制召集でもないし、日々の朝食会ほど意義があるわけでもない)

斉木(だが……苗木の奴は、全員が一堂に会すタイミングで伝えたいことがあると言っていた)

斉木(発表はなるべく平和的な状況の方が良い。テレパシーを応用して全員集めておくか……)

斉木(“虫の知らせ(バグ・ニュース)”!)

――――――――――

『脱衣所5番ロッカーにモノクマメダルが10枚落ちてるよ』

山田「な、なんだってー!? ぶー子リベンジのチャンスではありませぬか!!!」ダッ

――――――――――

『山田がたった今脱衣所でモノクマメダルを10枚見つけたよ』

セレス「うふふ……何故でしょう、山田くんをカモりたい気分になってきましたわ」スタスタ

――――――――――

『脱衣所に行くとラッキースケベが拝めるよ』

桑田「!? 脱衣所行くぞ葉隠!!!」ダッ

葉隠「勿論だべ! 金と欲のニオイがプンプンするって!!」ダッ

――――――――――

『ピーリカピリララポポリナペーペルトー』

十神「何だ今のは!? 脱衣所の方から魔法の気配を感じたぞ!!」ダッ

ジェノ「あぁーん白夜様ー! そんな急に走り出したらビックリビックリビンビンしちゃうぅー!! まぁ普通に追いかけるけど」

――――――――――

山田「うっひょwwwwww本当に5番ロッカーにモノクマメダル10枚入ってましたぞwwwwww」

セレス「お待ちください山田くん。そのメダルを賭けてわたくしと……きゃあっ」ステーン

桑田「おい見ろ葉隠!! セレスが転んでドロワーズ丸見えだぜ!!!」

葉隠「ドロワーズは見えても平気な下着だべ。ありがたみに欠けるべ」

ジェノ「だったら怜恩ちんがドロワーズ履いてみたら!? 玄人好みの超ラッキースケベ!!」

十神「そんなことよりおジャ魔女はどこにいる!? のびやかな呪文が聞こえたぞ!!」

大神「10分と経たぬうちに人数が増えたな……」

舞園「十神くんやジェノサイダーさんまで集まってくるなんて……ちょっと意外です」

斉木(これでよし。やはり虫の知らせはあなどれないようだな)

斉木(さて……後はあいつらの到着を待つだけだ)

石丸「やあ、待たせてすまない!」

桑田「げっ! 石丸!?」

山田「というかまだ来ていなかったのですな……風紀委員なのに」

石丸「山田くんの言う通り、本来ならば僕は真っ先にここへ到着しているべき人間だ……」

石丸「しかし僕にはどうしても連れてこなければならない人がいた!」

舞園「わかりました! 不二咲くんですね?」

霧切「まだ完全に回復したとは言い切れないけれど、彼はどうしてもみんなに会いたかったそうよ」

大和田「まだ安静にしとけってのに聞かねーからな、オレ特製の車椅子に乗っけてきてやったんだ」

石丸「それでは登場いただこう! 遂に目を覚ました不二咲千尋くんだ!!」





苗木「………………」ガラガラ

不二咲「………………」ガラガラ

斉木(美術室の椅子を台車に固定しただけじゃないか)

苗木「……大和田クン、やっぱこれ無理あるんじゃ」

大和田「心配すんな! イスの脚は追っ掛け大栓継ぎでバッチリ固定してあるからよ!」

斉木(伝統の建築技術をそんなところに応用するな)

十神「下らん。小学生の図画工作以下だ」

セレス「このようなおふざけのせいで台車が正しい目的に使われないと思うと胸が痛みますわ」

大和田「あァ!? オメェらは不二咲がどうなっても良かったのかよ!!」

斉木(お前こそ不二咲を何だと思ってるんだ)

不二咲「ごめんなさい……僕が車椅子に乗りたいって言ったせいで……」

石丸「こちらこそすまない不二咲くん……いつかリングプルを貯めて車椅子と交換してもらおう!」

斉木(この学園内に缶ジュースはあまり貯蔵されていないが)

霧切「話を先に進めましょう。不二咲くんはどうしてここに来たんだったかしら」

不二咲「そうだった! ……あのね、」

不二咲「今まで……僕が男だったこと、隠して騙してて……本当にごめんなさいっ!!」

ジェノ「なぁんだそんなことー?」

不二咲「え……?」

ジェノ「それってアタシという人格をひた隠しにし続けたどこぞのブスより重い罪なのー?」

不二咲「ぁ……ぅ……」

ジェノ「しかも騙されてた金返せーなんて怒ってるヤツなんてどっこにも居ないでしょお?」

ジェノ「それとも貴様ら!!! こんなにか弱い萌え萌えキュンな男の娘を寄って集ってイジメようとしてんのか!? あ゛!?」

桑田「なわけねーだろ! 最初はオレも驚いたけど」

ジェノ「ま、アタシとしては男の娘大歓迎なんですけどねっ! 刺していい? ねぇねぇ刺していい?」

不二咲「ぅ……えぇ……」

朝日奈「やめなよ! 不二咲……ちゃん怖がってるじゃん!」

ジェノ「………………」

朝日奈「何? 返す言葉も無いんだね」

ジェノ「アンタおっぱいデカいなーって。ミル姉さん超えてない?」

朝日奈「そっ……それは今関係ないでしょっ!」カァァァァ

山田「ジェノサイダー翔殿の言う通り、今となっては性別を隠していたことなど学園コメディの1イベントに過ぎませんなぁ」

舞園「みんなで秘密をカミングアウトし合ったとき、『いつかちゃんとみんなに言えるくらい強くなる』って言ってましたよね」

大神「不二咲は……無事に事実を吐露できる強き精神を得たのだな……」

桑田「最初はテンパったけどよ、4日も経てば不二咲が男だって受け入れられたぜ!」

ジェノ「でしょでしょ? むしろ立派な萌えポイントでしょ!?」ゲラゲラゲラゲラ

大和田「……だってよ。自分にゃ深刻な問題も、他人が見るとチンケな悩みなのかもしれねぇな」

不二咲「……みんな……!」ウルッ

斉木(ジェノサイダー翔……あいつは思考を行動に移すまでのタイムラグがほぼゼロだから、何を考えているのか非常に読み取りづらい)

斉木(この言動が天然なのか計算なのかはわからないが、結果としては場の空気を和らげている)

斉木(確実に良い奴ではないが、悪い奴でもなさそうだな)

朝日奈「その……不二咲、ちゃん」

朝日奈「私は不二咲ちゃんのこと、これからなんて呼べばいいかな……ちゃん付けされて嫌じゃない?」

不二咲「ありがとう朝日奈さん……ちゃん付けなら気にしないけど」

不二咲「できればその……僕のことは、“ご主人たま”って呼ん」

朝日奈「」

大和田「」

斉木()

不二咲「――じょ、冗談だよぉ! 朝日奈さんには今まで通り不二咲ちゃんって呼んでほしいな!」アセアセ

ジェノ「ねぇねぇアタシは!? アタシはご主人たまって呼んでいい!?」

不二咲「ジェノサイダーさんも今まで通りで!!」

ジェノ「オッケイちーたま☆」

斉木(どこが今まで通りだ)

苗木「不二咲クン、脱衣所に来たもうひとつの目的はどうしようか? また今度にする?」

不二咲「そうだったぁ! 苗木くん、いつもの場所にあるから持ってきて!」

苗木「ちょっと待っててね……」ガタン

江ノ島「いつもの場所? 目的って何?」

霧切「もしかして……不二咲くん、きちんと進めていてくれたのね」

十神「修飾語が不足しているぞ。俺たちにも理解できるように説明しろ」

苗木「何日か前にみんなで2階を探索したでしょ?」

苗木「あのとき図書室でノートパソコンを見つけたんだけど、少し壊れてて使えなかったんだ」ヨイショ

石丸「わかったぞ! 機械に強い不二咲くんは率先して修理してくれていたのだな!」

葉隠「ちょっと待つべ。だったらなんで湿気が多くて壊れやすそうな脱衣所なんかにパソコンを置いてたんだって?」

セレス「いいえ、脱衣所は換気が行き届いているため故障の心配はありませんわ」

セレス「おそらく不二咲くんの作業は、監視カメラの目を盗む必要があったのでしょう。ここには監視カメラがありませんから」

不二咲「うん。でも、プログラム自体はみんなに見てほしくてね……はいっ!」

パソコン『こんにちは、ご主人タm』

不二咲「やっぱちょっと待ってて」カタカタ

斉木(そういや初めてこのプログラムを見たときも“ゴ主人タマ”って言ってたな)

パソコン『どうしたのご主人タマ? 今日は苗木くん以外にも居るみたいだけれど』

不二咲「ご主人タマって呼び方だと、みんなにドン引きされちゃうから……」カタカタ

パソコン『じゃあマスターって呼べばいいかな?』

不二咲「主従関係じゃなくて、もっと普通な、フレンドリーな感じに……」カタカタ

パソコン『わかったよ熱斗くん』

不二咲「僕は不二咲千尋だよぉ!」ッターン

舞園「あの……終わりましたか?」

不二咲「ごめんね、パソコンにちょっとした不具合が発生してたんだぁ」

斉木(不具合が発生したのは不二咲の方だろ)

霧切「パソコンを発見した時、モノクマや希望ヶ峰学園に関するデータファイルが残っていないか不二咲くんに解析を依頼したの」

不二咲「でもパソコンに付きっきりだとモノクマにバレちゃうかもしれないから、僕をモデルに人工知能プログラムを作成して……」カタカタ

パソコン『千尋くんの代わりに僕が調査してたんだよぉ!』ピロリン

葉隠「ななな何だコレ!? 不二咲っちの生首がパソコンの中で喋ってるべ!!」

十神「……アルターエゴ。かつて不二咲千尋が製作した、世界最高峰の超精密人工知能だな」

苗木「十神クン、アルターエゴを知ってたの?」

十神「十神財団が59億9千万で買い取るため交渉していた」

斉木(なぜ1千万ケチった)

不二咲「キーボードで言葉を入力したらおはなしもできるんだよぉ!」

苗木「ボクもテスターになって何度か会話したよ」

桑田「スッゲー! なんか言葉とか覚えさせたりすんのか!?」

不二咲「えへへ。会話しながら学習していくシステムにしてみたんだぁ」

朝日奈「ねぇねぇアルターエゴ! ドーナツって知ってる?」

石丸「有田英五くん! 墾田永年私財法は理解できるかね!」

斉木(アルターエゴはどこいつではないぞ)

霧切「私に質問させて。アルターエゴ、重要な情報は見つかった?」カタカタ

アルターエゴ『えっと、霧切さんだね? この学園に関する情報が入ったファイルを見つけたんだけど……』

アルターエゴ『厳重なロックが掛かっているから、解除まで時間が必要なんだぁ……』シュン

霧切「わかったわ。ファイルの中身が判明するまで待ってるわね」カタカタ

アルターエゴ『でもね、少しだけ不思議なデータを検出したんだ!』

苗木「不思議なデータ……?」

アルターエゴ『これも破損してて修復が必要なデータなんだけど……』

アルターエゴ『“K”ってイニシャルの人が、このパソコンを使って誰かと会話した記録が残ってたんだよ』

不二咲「ほんと!? その“K”って人について更に調べられないかなぁ?」カタカタ

アルターエゴ『今のところKさんは男性の確率が高いんだけど、後は敵か味方かすら判別できなくて……誰なんだろう?』

大和田「俺らの中でKが付く男っつーと、清多夏、桑田、楠雄が当てはまるよな……」

石丸「濡れ衣だぞ大和田くん! 僕は有田英五くんを見るのは今回が初めてだ!」

斉木(さっきからその有田英五って誰?)

桑田「オレの家族にもこんなシュミわりー誘拐監禁やるヤツなんかいねーよ!」

山田「家族に限らず、K殿は僕たちの関係者かもしれませんぞ!」

江ノ島「例えば……アタシらのことを気に掛けてた校医とか?」

斉木(誰か言うと思ったがこの世界線では絶対あり得ないな)

霧切「――霧切」

苗木「え?」

霧切「霧切。私の名字も“K”から始まるわ」

霧切「何故かしら、とても嫌な予感がするの……Kという人物のことも調べ続けて」カタカタ

アルターエゴ『勿論だよぉ!』

斉木(K……もしかするとサイコメトリーを使えば、その正体を探れるかもしれない。後で誰もいない時に試してみるか)

斉木(それより気掛かりなのが、霧切さんの心の声がいつになく感情的なことだ)

斉木(……もしや霧切さんは、Kの正体に心当たりがあるのか……?)

アルターエゴ『ところでみんな、どうしてここに集まったの? 僕のためだけじゃないよねぇ?』

石丸「しまった!! 僕としたことが大浴場の使用時間割という重要な議題を忘れていたっ!!」

石丸「今から皆の意見を募ろう! どんどん挙手してくれたまえ!」

ジェノ「えー? 別にもうどうでもよくね?」

葉隠「俺も今はアルターエゴと話してみたいべ」

石丸「なっ……」ズゥーン

斉木(すまない石丸、僕もそう思う)

【寄宿舎1階】

斉木(大浴場は3時間毎に男女交代ということで早々に決まり、そのまま女子が入浴することになって話し合いは解散した)

斉木(夜時間までもう少し時間がある。明日のために、ロイヤルミルクティーのパンナコッタを作りに食堂へ行くか……)

斉木(……と、その前に)



桑田「いいか? シャワーの音が大きい隙を見計らうんだ。長くて10秒だぞ」

苗木「……ねぇ、やっぱ止めた方が……」

葉隠「苗木っちは頭がカタいべ。女湯覗きは男のロマンだべ!」

石丸「不純だ! 不潔だ!! 破廉恥だ!!! いいかね皆、このような行為は即刻に……」

大和田「石丸、オメェも高校生なんだから免疫付けねぇと将来苦労するぜ?」

山田「それに女性が苦手な男は貴腐人どもの恰好の餌食にされますぞ!」

不二咲「これは男らしくなる試練……これは男らしくなる試練……」ブツブツ



斉木(………………)

桑田「だらしねーな! オレが先陣切ってお手本見せてやんよ!!」

大和田「行くぜっ! カチコミだァ!!」

山田「拙者の本よ! 薄くなれ!!」

葉隠「ロマンが俺を呼んでるべーーー!!」



斉木(……“虫の知らせ”)

『お風呂の前で野郎共が覗きを画策してるよ』



大神「……お主ら……そこで何をしていた……」ゴゴゴゴゴゴ

葉隠「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

山田「ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

大和田「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

桑田「あぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」



斉木(……覗きダメ、ゼッタイ)

今回はここまでです。ようやくスランプを抜け出せた気がします。
もうすぐ無印屈指の難関こと100億円の壁にぶち当たりますが、どうにか斉木っぽく料理してみせます。

それまでは絶賛発売中の斉木楠雄のΨ難12巻を読んでお待ちください。
麻生先生久々のクズキャラ系ギャグ・テラスハウスダストも収録されています。



Kで一瞬ギョッとして違うスレ開いたかと思った
そしてしっかりネタが回収されてて二度吹いたわw

熱斗くん、メールだよ!
楽しみにしてたよー



100億円という事はセレスさんの出番だな
期待してる

スーパーエスパーKUSUO

こんなダメな感じなちーたんは初めて見たわ

ジェノさん、読み切り版での燃堂と同じだったのか。

関係ないが別の世界線の方も風呂ネタをやったな

これまた関係ないけど、
前スレで幽霊が出てきた時、ss読者の中には幽霊の正体を学園長だと思っていた人もいたけど、
その辺りは>>1は狙っていたのかな?
少なくとも、「そう思う人はいるかな?」とも考えてなかったとは思わないけど。

幽霊「ハロー! エタりそうでエタらない、少しエタりかけてるSSのマスコットキャラクターこと幽霊だよ!」

幽霊「プログラムくんもといアルターエゴが登場しちゃったから、俺も遅れを取らないように頑張るよ!」

>>182-184
幽霊「まず>>182さんはダウト! 俺の姿はハテナさんには見えてないはずだからね!」

幽霊「呼び名は直感で決めたから、さん付けしたのも特に理由は無くて……うーん、やっぱり大人びた雰囲気かな?」

幽霊「誰が一番可愛いかについては俺からはノーコメントだよ! みんな違ってみんないい……金子みすゞも言ってたじゃないか……」

幽霊「それと>>184くん! 君が感心した誤字の少なさは>>1の遅筆の原因でもあるって知ってた?」

>>185
幽霊「クロス!!!!! アウッッッ!!!!!!」

>>188
幽霊「ハテナさんとハデスなんて月とスッポン以上の大間違いじゃないか!! Dズニー映画のハデスは結構好きだけどね!」

>>191-196
幽霊「うーん……俺にはわかんないけど、シークインくんは思考回路も素でアレなんじゃないかな? >>193みたいなことは素でありそうだけど」

幽霊「……>>195さんも言ってる通り、2のキャラはココロンパ抜きにしても思考回路に難のある人が多くて困ってるんだよね」

幽霊「何よりあの島はモノクマが絶対的権限を握ってるから、超能力者くんも力を奪われてただの凡人になってしまいかねない……」

幽霊「まぁいつかは超能力者くん以外の誰かがコロシアイ修学旅行を阻止してくれるかもしれないからさ! 気長に待っててよ!」

幽霊「さて、次はSS投下後のレスだね!」

幽霊「乙コメも感想も励みになるね、嬉しいな! しかもスランプ脱出まで祝ってもらえるとは思わなかったよ、ありがとう!」

>>221
幽霊「頭文字Kの会話データは元からやる予定だったけどSS速報には先駆者が居たからね!」

幽霊「人間関係の変化に力技を使わない、説得力のある展開と緻密な描写にいつも感服しています!」

>>222
幽霊「ゲーム中アルターエゴを初めて見たとき真っ先に浮かんだのがエグゼだったよ! 俺はサンダーマンが好きかな!」

>>223
幽霊「百億円が再構成モノの難関となっている理由は、偏にゴスロリちゃんのブレない信念があるからだと思うんだよね……」

幽霊「自由行動安価にも出たし、>>1の友人がゴスロリちゃん大好きだし、きっとChapter3のキーパーソンになると思うよ!」

>>224
幽霊「劇画調で筋骨隆々の超能力者くんかぁ……」

>>225
幽霊「パソコンくんを始め、誰もが駄目なところを抱えているのさ! 他のSSでは短所が目立たなくても超能力者くんにはお見通しだよ!」

>>231
幽霊「何も考えていないわけじゃないけど、何を考えているかわからない……厄介だよね」

幽霊「でも超能力者くんはジェノサイダーの方が扱いやすいって言ってたよ!」

>>232
幽霊「『女子ウケのいい苗木と不二咲を先に行かせりゃよかったのか……』って野球くんがぼやいてた」

>>233
幽霊「ぶっちゃけ投下直後に『学園長……』ってレスがついたとき全力でガッツポーズしたよね!!」

幽霊「Chapter1ではアンテナくん復活の兆しを見せてたら『それは違うよ!』ってフライングで書き込んじゃった人がいたからさ……」

幽霊「Chapter2こそは展開を予測されないように、最後まで俺の正体は隠しておいたんだ! 人生は驚きがあった方が楽しいよ!」



幽霊「と、大体こんなところかな? 今月中には次の投下もあるから待っててね!」

幽霊のレス返しはどんな感じにしたらいいか模索中です。
あんまり頻繁に登場するのも考えものなのでしょうか……
何はともあれ、続きを投下します。

【前回のあらすじ】
ちーたま



【校舎1階・保健室】

苗木「桑田クンたちも酷いよね! 車椅子の不二咲クンを覗きに付き合わせるなんてさ」

不二咲「うん……」

不二咲「……僕、覗きをするのが嫌だったのは、僕が男らしくないからなのかなぁ……」

苗木「そんなことないよ。不二咲クンは覗かれる女子の気持ちを思いやったから、嫌だって感じたんじゃないかな?」

苗木「相手のことを考えられるのも、きっと強さの一種だと思うよ」

不二咲「苗木くん……ありがとう!」ニコッ

苗木「それじゃあ帰ろうか。石丸クンの指示だと、手当てに必要なのは……」

苗木「……あれ?」ペラッ

不二咲「なんだろぉ、この写真……?」

【寄宿舎1階・厨房】

斉木(茶葉の量は通常の紅茶より多めにすること、あらかじめ熱湯に浸して葉を開かせておくこと)

斉木(牛乳は沸騰する直前の約98℃で火を止めること)

斉木(その牛乳を高い位置から注ぎ、ティーポットの中で茶葉を踊らせること)

斉木(茶葉からえぐみが出てしまうのでティーポットはあまり揺らさないこと)

斉木(あとは蓋をして数分蒸らし、ついでに茶葉が底に沈んだか透視で確認して……)スゥゥ

斉木(カップへは茶漉しを使って注ぐ)トポポ

斉木(……我ながら会心の作だな)ゴク

斉木(後はレシピに使う牛乳をこれに置き換えて、パンナコッタを作っていけばいい)

苗木「探したよ斉木クン、こんなところに居たんだね!」ガラガラ

不二咲「あれ? お菓子作ってるのぉ?」

斉木(明日の朝食会のデザートだ。たまには大神さんを手伝おうと思ってな)コトコト

苗木「紅茶の匂い……斉木クンのことだからメニューはコーヒーゼリーかと思っちゃったよ」

斉木(僕もコーヒーゼリーの方を先に食べたかったから、あらかじめ1周年記念小ネタでブランマンジェを作っておいたんだ)サッサッ

苗木(時系列的にどういうリアクションをしたらいいかわからないや)

不二咲「あのね斉木くん! 僕たち保健室で不思議な写真を見つけたんだぁ!」

斉木(不二咲はいい加減座り心地の悪い車椅子から降りたらどうだろう)トポトポ

不二咲「お菓子もいいけどこっちを見てよぉ!」バッ

斉木(……これは)

不二咲「大和田くんと桑田くんと僕が……楽しそうに笑いあってる写真なんだ!」

苗木「3人は教室みたいな場所に居るんだけど、部屋の窓は鉄板で塞がれてないし……」

不二咲「大和田くんも桑田くんも、この学園に来て初めて知り合ったんだよ?」

不二咲「こんな写真……僕は記憶に無いんだよぉ?」

斉木(――写真を見た瞬間、僕は全てを理解した)

斉木(不二咲は何一つ嘘を吐いていないし、この写真も合成ではない)

斉木(この写真は……僕すらも覚えていない、“空白の2年間”の一幕だ)

苗木「斉木クン。この写真を手で持って確かめてくれないかな」

苗木(……サイコメトリーを使ったら、写真に関する情報が得られるはずだよね?)スッ

斉木(やれやれ。サイコメトリーは有益な情報を得られることの方が少ないクソ能力なんだが――)

モノクマ「チャラッ! チャラッ! ズゥゥーンッ!!」パシィン

斉木(なんかボッシュートされた)

モノクマ「これ以上は肖像権著作権個人情報その他諸々の侵害です! あんまり見せびらかさないの!」

不二咲「僕は肖像権なんて気にしないよぉ!」

モノクマ「大和田くんと桑田くんには確認したの? 撮影者には確認したの? 写真の無許諾使用は違法だよ?」

斉木(大和田と桑田には確認不可能だな。2人とも大神さんに気絶させられている)

苗木「何を言うんだ! その写真の撮影者……いや、加工者はお前じゃないのか!」

モノクマ「苗木くんたらひどい言い掛かりだなぁ。その写真は正真正銘無修正のモノホンですよ!」

苗木「そんな……!?」

斉木(疑いたいところだがモノクマの言葉は本当だぞ)

モノクマ「ボクはいつだってオマエラに有益な情報をプレゼントしてるんだよ? この学園生活の謎を少しでも解き明かせるようにね!」

斉木(無益な情報の多さはサイコメトリーと互角だが)

モノクマ「それとさー、有益な情報を与えたからボクからも質問するけどさー、オマエラなんで女子のとこには行かないの?」

不二咲「だめだよぉ、今はみんなお風呂上がりなんだから……」

モノクマ「逆に気にならないの? 上気した舞園さん、濡れ髪の霧切さん……」

苗木「そ、そういう問題じゃなくて……」

モノクマ「ヒロインからも意見を仰ごうとして突撃したらサービスシーン発生! きゃー、誠さんのエッチー!」

モノクマ「……なんて展開、ボクは超好みなんだけどなー」

斉木(要するに風呂場を監視できないが故のやっかみだな)

モノクマ「だから苗木くんには期待してたのに、こんな原色根暗コーヒーゼリー野郎のところに来ちゃうとか絶望的に退屈だよ!」

苗木「うるさい! 悩んだときに親友を頼って何がおかしいんだ!」

斉木(いつ僕がお前の親友になった)

モノクマ「……ふーん。オマエラが何をしようと勝手だけど」

モノクマ「コロシアイ学園生活では友情も一瞬で絶望に変わること、忘れないでよねっ!」ヒュン

斉木(やれやれ。ようやく去ってくれたか)

不二咲「……友情も一瞬で絶望に変わる、って」

不二咲「今は仲直りしてるけど……僕が気を失った後、大和田くんと石丸くんもすっごく仲が悪かったんでしょ……?」

苗木「……うん。石丸クンは大和田クンへ敵意剥き出しで、大和田クンも諦め気味に石丸クンとの接触を避けてた」

不二咲「僕……ふとした瞬間、すっごく怖くなるんだ」

不二咲「朝日奈さんと大神さんが、セレスさんと山田くんが、苗木くんと斉木くんが」

不二咲「コロシアイをきっかけにして……もう二度と友達に戻れない仲になったら……って」

苗木「それは違うよ!」

不二咲「え……?」

苗木「……ボクたちでコロシアイを阻止しよう」

苗木「もし事件が起こっても、命が続いている限りはやり直せるし、きっと友情だって取り戻せる」

苗木「ボクも不二咲クンも、そんな風にして死の淵から帰ってきたでしょ?」

斉木(死の淵から引っ張り上げたのは僕だが)

苗木「この先色んな出来事が起こるだろうけど、それを解決する度に、ボクらはお互いを信頼できるようになる。ボクはそう信じているんだ」

斉木(遠回しに僕の超能力に頼らないでくれ)

不二咲「……なんだか、苗木くんの言葉を聞くと希望を持てる気がするよ」

不二咲「ありがとう。僕……みんなの友達でよかったよ!」

苗木「どういたしまして。夜時間も近いし、そろそろ部屋に戻ろうか」ガラガラ

斉木(待て苗木。折角来たんだからお前もパンナコッタ作りを手伝っていけ)

苗木「嫌だよ、セレスさんは斉木クンにミルクティーパンナコッタを頼んだんでしょ」ガラガラ

斉木(お前最初から知っていたのか)

【斉木の個室】

斉木(僕は1人でパンナコッタを作り終え、夜時間を迎えた)

斉木(だが、去り際の苗木にテレパシーで頼み事をされてしまった。例の写真に関してだ)

斉木(曰く『サイコメトリーは無理だったけど、他の超能力なら写真について何かわかるかも』らしい)

斉木(僕個人としてもあの写真には気になる点があった。あれはどこで誰が撮ったものなのか、現時点では判っていない)

斉木(そこで今回は“念写”を使うことにした。僕が念じた事柄が紙に写し出される超能力だ)

斉木(この能力、実は応用して使うこともできる。特定の人や物について念じると、それらの現在の様子が写し出されるのだ)

斉木(原作では迷子の犬や紛失した野球ボールを探す際に重宝した。周囲の景色も同時に見られるからな)

斉木(今回もあの教室について念じれば、現在の様子から場所を特定できるかもしれない。早速使っていこう)

斉木(……ここだと怪しまれるからシャワールームに籠るか)

斉木(この能力の長所は、紙さえあればあらゆるものを写し出せること)

斉木(使用する紙がトイレットペーパーであろうと、僕が念じた事柄は全てここに浮かび上がる)パァァァ

斉木(……この能力の短所は、1分間同じことを念じ続けなければいけないこと)

斉木(僕は“あの写真が撮影された場所”のことを念じてのだが……一瞬だけ別のことを考えてしまったせいで念写は失敗だ)

斉木(懲りずに覗きをしようとする桑田、既に眠っている不二咲、モロコシを解除した大和田、再び大神さんの制裁を受けている桑田……)

斉木(こんな感じで失敗した紙が何枚もある。やれやれ、次こそは成功させたいものだ)パァァァ

斉木(……漸く出た。あまり広範囲の画ではないが、“常在戦場”という掛け軸が浮かび上がっている)

斉木(どこかで見たことのある言葉だな。確かあれは、学級裁判の前に江ノ島さん(仮)を訪ねたときの――)

斉木(――そうだ、1-A教室だ!)

斉木(つまりあの写真は紛れもなく希望ヶ峰学園の校舎内で撮られたもの。この結果が何よりの証拠になる)

斉木(……この結果を苗木に伝えると、あいつは混乱しないだろうか?)

斉木(思い返せば僕は今まで苗木に嘘を吐いたことがない。……代わりに、僕が知っていても苗木に伝えていないことは山ほどある)

斉木(僕にとって苗木は単なるコロシアイ阻止の協力者だ。PK学園の奴らに比べると格段に扱いやすいが、所詮その程度に過ぎない)

斉木(隠し事をしているのだって、余計な混乱を招かないためだ。今でこそ慣れているが、不二咲の性別を知った時、あいつはひどく取り乱していた)

斉木(しかし苗木は僕を親友だと言ったし、不二咲も僕と苗木を仲が良いと認識していた)

斉木(……苗木が僕を親友だと誤解したままだとして、僕が苗木に隠し事をしていることを知ってしまったら)

斉木(苗木は僕を……憎んだりしないだろうか……?)

斉木(……僕は何を考えているんだ)

斉木(どんなに信用していても人間は必ず隠し事をする。僕自身がテレパシーを通じて嫌というほど思い知らされたことだろう)

斉木(苗木には適当にはぐらかして伝えればいいだけだ。念写に使ったトイレットペーパーも明日流して証拠隠滅してしまおう)

【翌日・食堂】

朝日奈「さくらちゃん、みんな食べ終わりそうだし、そろそろデザート持ってこよっか?」

大神「待て朝日奈よ。今日のデザートは我ではなく斉木が作ってくれたものだ……斉木自身が取りに行っている」

江ノ島「マジ!? 斉木って料理できんの!?」

桑田「いや甘いモン限定じゃね? 斉木ってデザート食う時スゲー笑顔だし」

斉木(普段なら掴みかかるところだが今日は桑田の腫れ上がった顔に免じて見逃してやろう)タン

葉隠「うおー! めっちゃ美味そうだべ!!」

霧切「……まるでお店の売り物みたいね」

山田「斉木楠雄殿の意外なスキルが発揮されましたな!」

不二咲「さっそく食べてもいいかな? 昨日から楽しみにしてたんだぁ!」

斉木(構わないぞ。腕に縒りを掛けた自信作だ)

舞園「――絶品ですっ!」

舞園「食べた瞬間にとろけて、ミルクの深いコクとアッサムの芳醇な香りが口の中いっぱいに広がっていきます……!」

斉木(さすが舞園さん、テレビ仕込みの完璧な食レポだ)

石丸「うむ! 牛乳の深いコクと芳醇な紅茶の香りだな!」モグモグ

朝日奈「うんうん! ミルクのコクも深いしアッサムも芳醇だしドーナツにも合うよ!」モグモグ

大和田「だよな、深いコクとホージュンな香りだな!」モグモグ

江ノ島「えーと……芳醇なコクがアッサムでマジヤバい!」モグモグ

斉木(お前らはボキャブラリーを増やせ)

セレス「……率直に申し上げますと、わたくしにはちっとも美味しく感じられませんでしたわ」

セレス「わたくしの注文通り、ロイヤルミルクティーを使ったことだけは評価します。ですがその他はてんで駄目……人様にお出しできません」

斉木(現在進行形で出しているんだが)

セレス「最低でも3日に1回、このパンナコッタを作り続けてください。大変でしょうからわたくしの1人前分だけで構いませんわ」

斉木(……ルーデンベルクさんには酷評されてしまったが、他に食べた人は全員喜んでいる。何より)

セレス(うふふ……このように命令しておけば再び至高のパンナコッタを堪能できますわ……!)

斉木(という心の声が聞こえてくるので、本当に3日に1回だけ、パンナコッタを作ってやろうと思う)

苗木「うまく行ってよかったね。美味しかったよ、ごちそうさま!」

斉木(当然だ。複数のレシピを調べて自己流にアレンジしたからな)ドヤ

苗木「ましてや甘党の斉木クンが作ったんだから失敗するわけがないもんね!」

斉木(お前は僕を何だと思ってるんだ)

苗木(ところで……昨日の写真のこと、何かわかった?)

斉木(ああ、念写の能力で撮影場所について調べてみた。カメラには写っていないが、あの部屋には“常在戦場”という掛け軸がある)

苗木(常在戦場……確か1階の校舎にそんな教室が……!)

斉木(早まるな。断定できたわけではない)

苗木(でもそんな奇抜な掛け軸がある学校なんて滅多に無いよ!)

斉木(“常在戦場”は僕の出身校にも掛けてあった。条件に当てはまる場所は1ヶ所とは限らないぞ)

斉木(平凡オブ平凡のお前が掛け軸を見る機会に恵まれていなかっただけじゃないのか?)

苗木(……そっか。不二咲クン達が覚えてないだけで、本当は別の場所でみんなで撮ってたのかも)

斉木(そういうことだ。可能性はできる限り多く残しておいた方がいい)



斉木(――“常在戦場”なんて掛け軸、本当はこの学園に来るまで見たことも無かったんだがな)

斉木(朝食会も終わり、他の生徒は各々が行きたい場所へと散っていった)

斉木(久々の自由行動安価の時間だ。詳しいルールは>>4に纏めてあるから、そちらを参照してほしい)

斉木(それと次のレスまで時間が開くことも許してもらいたい。>>1はスランプを脱したものの、遅筆が改善されたわけではないんだ)

斉木(今回は>>4に名前が載っている人物と前回指名のルーデンベルクさんを除いた、計8人の中から選んでくれ)

斉木(では……【安価下2】のところへ行こう)

斉木(……不二咲のところへ行こう)



【脱衣所】

斉木(不二咲千尋。“超高校級のプログラマー”としての手腕は、アルターエゴの完成度を見れば一目瞭然だろう)

斉木(他にも様々なプログラムを開発しIT技術の発展に貢献しているらしいが、現状の設備では活躍の機会が少ないのが残念だ)

斉木(……そうなると、彼がやることは自ずと絞られてくる)

不二咲「あっ、斉木くんだぁ! ちょうど今アルターエゴのメンテナンスをしていたところだったんだよ!」ガラガラ

斉木(脱衣所には不二咲以外の人影は見当たらない。不二咲は車椅子のまま自力で移動できるようになったのか)

アルターエゴ『その顔は……斉木くんだね! いいなー、僕も斉木くんのパンナコッタ食べてみたいなぁ』

不二咲「そんなことできるかなぁ? 今の僕には難しいよぉ……」

斉木(どこかの島の電子ペット技術を応用すれば実現できなくもないぞ)

不二咲「ところで斉木くんってまだアルターエゴとお話したことなかったよね? 斉木くんとも話せたら、AIがもっと向上すると思うんだ!」

斉木(……確かに僕はまだアルターエゴと会話していないが、このまま不二咲の勧めに乗るのも躊躇われる。何故なら)

不二咲(斉木くんって普段は口数が少ないけどアルターエゴとはどんなことを話すんだろう、何を教えるのかなぁ!)ワクワク

斉木(という心の声が聞こえてくるからだ)

アルターエゴ『お話しようよ斉木くん。ご主……千尋くんのクラスメイトがどんな人だか知りたいな!』

斉木(プログラムなのにご主人タマ呼びは完治していないのか)

斉木(……まあ、必要最低限の会話にとどめるとしよう『こんにちは 僕は斉木楠雄です』)カタカタ

アルターエゴ『もう千尋くんに教えてもらってるよぉ! “超高校級のジャンケニスト”だよね?』

斉木(『はい』)カタカタ

アルターエゴ『実は千尋くん、僕のために色々なおまけプログラムも開発してくれたんだけどね……』

アルターエゴ『斉木くんとじゃんけんプログラムで遊んでみたいんだ!』

斉木()パタン

アルターエゴ『わぁっ! 真っ暗だ、助けて千尋くん!』

不二咲「心配ないよぉ、後出しにならないようにバッチリ調整してあるよ!」パカッ

斉木(僕自身のことが心配なんだ。プログラムの心は読めないから、勝敗は完全な運任せになる)

不二咲「ねぇ……やってくれないの……?」ウルッ

斉木(……やれやれ。少しだけだぞ)カタカタ

アルターエゴ『わぁい! ありがとう!』

斉木(内蔵カメラが手の形を認識し、グーチョキパーを判定する)

斉木(同時にアルターエゴは事前に内部で決めていた手を表示するので、公平なゲームを楽しめる)

斉木(……要するに、じゃんけんプログラムは想像以上に優れた代物だった)

アルターエゴ『0勝2敗1分かぁ……悔しいな、斉木くんって強いんだね!』

斉木(動体視力で出す手を変える手は通じなかった。そのせいで僕は全勝できなかった)

不二咲「ありがとう斉木くん。またアルターエゴと勝負してね!」

斉木(僕以外でもじゃんけんの相手は務まるだろう。そんなことよりシステム拡張に尽くしてほしい)スッ

不二咲「? 斉木くん、これ僕に貸してくれるの?」

斉木(貸すんじゃない、渡すんだ。“蝶ネクタイ型変声機”なんて、僕には子供騙しにもならないからな)

斉木(だが……そんなガラクタも不二咲に渡せば有効活用できるだろう?)

不二咲「嬉しいなぁ! ずっとマイクを探してたんだ! これを改造したらアルターエゴと音声で会話ができるようになるよ!」ニコッ

斉木(有効活用ができるようで何よりだ。そろそろ僕は帰るぞ)

不二咲『ありがとうなぁ、相棒!』

斉木(!?)ビクッ

不二咲「えへへ……分解する前に変声機を使ってみたんだぁ。びっくりした?」

斉木(だったら何故口調を変えた)ゴゴゴゴゴ

不二咲「あ……ぅ……えと、ダンディーな声にするなら喋り方も変えた方がいいかなって……」オロオロ

斉木(その声は使わない方がいいぞ。……よりによって、最悪のバカのことを思い出してしまった)

アルターエゴ『千尋くん……なんだか斉木くん、ちょっぴり喜んでない?』

斉木(それは違うぞ)タタタン

アルターエゴ『千尋くん! 今の“それは違うぞ”ってタイピング、すごい速さだったね!』

不二咲「僕は何も触ってないよぉ……誤作動かなぁ?」

今回の投下はここまでです。
月1~2回ペースで投下することを目標にしていきます。

念のため補足を。
最後のタイピングは、斉木が離れた場所からサイコキネシスで入力したものです。
わかりづらくてすみません。

斉木(僕の名は斉木楠雄。超能力者だ)

斉木(新年度で落ち着かないが、今月中には>>1は続きを投下するつもりらしい。プロットもどうにか組み上がったようだからな)

斉木(そこで、本編より先に自由行動安価を取ってしまいたい。場合によっては話の大筋に関わってくるかもしれないんだ)

斉木(詳しいルールは>>3参照だ。今回はそこに名前が挙がっている6人の他、ルーデンベルクさんと不二咲を除外した計7人から選んでほしい)

斉木(では……後で【安価下2】のところへ行くとしよう)

そこに名前が挙がっている、って>>4のことだな
【以前に指名されたキャラ】
Chapter1 霧切、桑田、山田
Chapter2 苗木、大神、十神


じゃあ舞園さん

斉木(……申し訳ない。安価ミスをしていた)

斉木(>>318の言う通り、自由行動安価ルールは>>4参照だったな。訂正感謝する)

斉木(それでは……次回投下分では舞園さんのところへ会いに行こう)







斉木(……正直、舞園さん見張りシステムは失敗だったと思っている)

5月になってしまいましたが、今晩中には投下します……。

【前回のあらすじ】
アッサム



山田「おぉ、いたいた、斉木楠雄殿!」

斉木(誰かと思えば山田か。珍しいな)

山田「ふっふっふ……あの日僕が言った言葉、忘れたとは言わせませんぞ!」

斉木(正直忘れていたがテレパシーのお陰で思い出した)

山田「そう! 美術室で石粉粘土を見つけまして……」スッ

山田「すこやか戦隊スペシャライザーのフィギュアを作っていたのですよ!!」バーン

斉木(忘れたと言った人向けの台詞じゃないか)

斉木(……しかし、未彩色ながらクオリティの高い作品だな)

斉木(髪型は自然に立体化されているし、コスチュームやアイテムのディテールも細部に至るまで再現されている)

斉木(今まではただのアニヲタという認識だったが、曲がりなりにも超高校級の同人作家というわけか)

山田「あと2日か3日ほどあれば着色も終わるのですが、その前に斉木楠雄殿の意見を仰ごうと思いましてな」

斉木(別に山田が思うようにすればいいだろ……)

山田「カラーリングは原作準拠にするか、立体化時の見栄えを考慮して実写映画版準拠にするか! 斉木楠雄殿の脳内選択肢は!?」

斉木(原作準拠一択だ。映画版の主演俳優があまり好きではないからな)

山田「ではそのように作りますぞー! 心が軽ーい! こんな気持ちでフィギュア作るの初めてー!」ルンルン

斉木(作業中にスペシャライザーの首がもげないことを切に願おう)

山田「拙者もう何も怖くない――ぶひっ!?」ゴツン

セレス「……あら。どなたかと思えば、山田くんではありませんか」

斉木(ほら言わんこっちゃない。自分から死亡フラグを立てたせいだぞ)

山田「すすすすみませぬセレス殿! 拙者フィギュア作りのことで頭がいっぱいで前方不注意でございまして……」

セレス「仕方がありませんわね。山田くんは二次元世界のスペシャリスト……」

セレス「フィギュアはある意味三次元だろうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ボキッ

山田「いやぁぁぁぁぁぁぁ!! スペシャライザーフィギュアがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

セレス「テメェ諸共ペチャンコにして二次元に送り返してやろうか!? あ゛ぁ!?」ベシベシ

斉木(………………)スタスタ

山田「それ以上はやめてくだされ!! また一から原型を作り直す羽目に……!」

斉木(そうだな。僕への納期が遅れるじゃないか)キィン

山田「……むむっ? セレス殿、フィギュアをへし折る動作はフリだけだったのですか?」

セレス「そんなハズ無ぇだろうが!! わたくしは木っ端微塵にする勢いで――きゃあっ!?」

斉木(すれ違い様、フィギュアに復元能力を行使した。どうやら効果はフィギュアを持っていたルーデンベルクさんにも及んだようだが……)

山田「……セレス殿のドリルが一瞬にして消滅しましたぞ……」

セレス「ドリルとか言うんじゃねぇビチグソが!! どこ!? どこに行ったんですの、わたくしの縦ロールは!?」アセアセ

斉木(彼女は昨日の丁度今頃、自室でエクステを外した状態で過ごしていたんだったか)スタスタ



斉木(それにしても……自由行動安価がこんな展開をもたらすこともあるんだな)

斉木(Chapter1の段階では半信半疑だったが、後で現実となるのもそれはそれで嫌な気はしない)

斉木(伏線と呼ぶには程遠いが、ささやかなお遊び要素として楽しんでもらえたら幸いだ)

斉木(さて、Chapter3の自由行動安価はあと1回分残っているな)

斉木(今回は事前に安価を取っておいた。安価ミスの訂正も含め、改めて協力感謝する)

斉木(それでは……舞園さんのところへ行こう)

【校舎1階・体育館】

斉木(舞園さやか。彼女の“超高校級のアイドル”たる所以は、このSSの読者なら既にある程度はお分かりだろう)

斉木(常に一流のアイドルであろうとする意識の高さをモノクマに利用され、Chapter1では暴走してしまったが……)

斉木(現在は屈強なメンタルも手に入れ、パフォーマンス向上のための練習を1日たりとも怠っていない)

舞園「きっとShooting Love♪ Shooting Heart♪」タッ タッ

斉木(そして今、彼女はステージの上で自主トレ中だ)

舞園「夢に続くような♪ 道を踏みしめて♪」クルッ タンッ

斉木(努力の甲斐あって、コロシアイ学園生活が始まる以前よりも動きのキレが増している)

舞園「――あれ? こんにちは、斉木くん! 体育館に来るなんて珍しいですね」

斉木(確かに僕は運動が不得意だからな、自発的に体育館へ赴くことは少ない)

斉木(なら僕は何故ここに来たのか? 答えは簡単、自由行動安価で――)

舞園「私の名前が出たからですよね。わかっちゃうんです、エスパーですから!」

斉木(もう僕に向かってその決め台詞を言うのはもうよしてくれないか)

斉木(『エスパーですから』はアイドル・舞園さやかの決め台詞として、テレビでもお馴染みの言葉だ)

斉木(彼女の聡明さを不思議キャラへとシフトさせるためにマネージャーと考案したらしい)

斉木(何故そんなことを知っているかって? 僕は本物のエスパーだからな)

斉木(今もテレパシーで舞園さんの心の声は丸聞こえ。僕に天使のようなアイドルスマイルを向けてくれてはいるが……)

舞園(早く練習に戻らないと、早く練習に戻らないと、私は、私はまた誰かを殺してしまうかもしれない、そんなの絶対に嫌、早く、早く練習に)

斉木(といった感じの強迫観念に突き動かされており、無関係な僕まで気が狂いそうなほどだ)

舞園「……斉木くんって、時々全部を見通したような目をしますよね」

斉木(確かに舞園さんの内臓の色まで見透視ているが)

舞園「霧切さんが、今日から私には見張りを付けなくていいって言っていましたけれど……」

斉木(ああ、今朝の朝食会で全員に通達していたな。決して今取って付けた話ではない)

舞園「でも私、不安なんです。人の目が無い場所で……アイドルから1人の人間に戻る瞬間に、弱くて愚かな私が出てしまわないか」

舞園「もう……一時の気の迷いで、誰かの命を奪いたくないんです……」ワナワナ

斉木(やれやれ、だいぶ重症だぞ。石丸の時みたいにサウナで気絶させて幻覚でも見せてやるべきか?)

斉木(いや、そんな手荒な真似をしたら苗木に怒られそうだな……この場合は……)ピト

舞園「っ! 斉木くん、急におでこを触らないでくださ――」

『…………怒っひゃりなんかひないよ。ボクはまいぞのひゃんの味方でいるっひぇ約束しひゃから』

舞園「――い」クスッ

斉木(“イミディエイト・テレパシー”で、今の舞園さんにとって一番大切な人物の言葉を伝えてやった)

斉木(そしてもうひとつ、アポートを使い――)ピピピッ ピピピッ

舞園「……あれ? いつの間にか、脇に体温計が……37.1℃……?」

斉木(根を詰めすぎていることも教えておいた。アイドルたるもの、休息も大切な仕事だろう)

舞園「そっか……私、焦りすぎていたんですね」

舞園「学級裁判の時の苗木くんを思い浮かべたら、その焦りもどこかへ消えちゃいました」

舞園「私、怒られないようにします。苗木くんにも、ファンの皆さんにも……それから斉木くんにも」

斉木(僕は特に怒ってなどいないぞ。ただ、心の声を聞くなら穏やかなものの方が耳障りではない)

斉木(……まあ、肩の力は抜けていた方が歌声はよく響くらしいがな)

モノクマ「ちょっとちょっとぉ!! なんかいい雰囲気で締めようとしてない!?」ピョーン

斉木(またお前か)

モノクマ「今からそのステージ使うからさ、殺人アイドルは舞台を降りてくれない!?」

舞園「モノクマさんがステージを……まさか……!!」

モノクマ『えー、校内放送! 校内放送! オマエラ、至急体育館へお集まりください!!』

斉木(……そう。モノクマは性懲りもなく新たな“動機”を用意したのだ)

苗木「斉木クン! もう来てたの!?」ダッ

斉木(アナウンス前から体育館に居ただけだ)

苗木「……今回の動機はどんなものなんだろう……」チラッ

斉木(視線でアピールするな。全員集まればすぐに判明することだろう)

苗木(でもさ、何かヒントとかあったら、少しは対策しやすいし……)

斉木(……特定の人物をピンポイントで煽動するためのもの、だな。そして今回は特に手強い敵になりそうだ)

苗木(手強い敵? そんなに阻止するのが難しい事件が起こるの……?)

斉木(ああ。数ヶ月経った今でもプロットが不完全な状態だからな)

苗木(ボクそういうことは訊いてないよ)

モノクマ「どうやら全員揃ったみたいだね。そんじゃ始めちゃいまーす!」

十神「いいから用件を手短に話してさっさと終わらせろ。時間の無駄だ」

モノクマ「確かに十神くんにはこの上なく時間のムダかもしれないねぇ……じゃあさっさと終わらせちゃおうかな」ポチッ

斉木(モノクマが何かのスイッチを押した瞬間、ステージ上にはブロックのようなものがうずたかく積み上げられ始めた)

斉木(いや、ブロックではないな。福沢諭吉が描かれた紙の束、つまり……)

桑田「ス……スゲー!! 何だよコレ、ゲンナマ? ゲンナマ?」

不二咲「まだまだ降ってくる……どこまであるのぉ……?」

石丸「そもそもこれは本物なのかね! 紙幣の偽造は犯罪だぞ!」

モノクマ「シャラップシャラップ! オマエラが心配しなくても、ボクは清く正しいクマだから……」

モノクマ「ここにはモノホンの現金100億円が、きっちり揃えてありまーす!」

大和田「オメー……マジで言ってんのかよ……!?」

十神「ドラえもんDVD以上に下らん動機だな。その程度、十神財団の前でははした金に過ぎない」

モノクマ「想像力が足りないよ! 十神財団以外の前では超大金かもしれないじゃん!」

モノクマ「金貨をダーツに換えないで持ち帰っても10万円、高級料理をピタリと注文しても100万円、4択クイズに全問正解しても1000万円……」

斉木(木曜日のバラエティに偏っているな)

苗木(フレンドパークは月曜日じゃなかった?)

モノクマ「それがなんと今回! 48時間以内に誰かを殺せば、先着1名様に100億円贈呈しちゃいまーーーす!!」

モノクマ「所得税のことも心配ナシ! 人を殺すだけでこの100億円がそっくりそのままあなたのものになっちゃうんです!」

モノクマ「すごいでしょすごいでしょ? 100億円だよ、ひゃっくおっくえーん!!」

霧切「ふざけないで。あなたは人の命に値段を付けて売るつもり?」

モノクマ「当たり前だよ! 他にどんなつもりがあったらこの動機を用意するの?」

モノクマ「いいかいオマエラ。金はな……命より重いんだっ……!」

斉木(お前それが言いたかっただけだろ)

モノクマ「まぁ前回と違って丸2日分の時間はあるし? このお得な話に乗るか乗らないか、じっくり考えてね!」ヒュン

十神「予め言っておくが、俺は今回の動機には全く興味が無い。凡人のお前らがどう思うかは知らないがな」スタスタ

石丸「人を殺めて大金を得るなど凡人でも言語道断だ! 金銭は汗水流して少しずつ貯めるべきものだろう!」

大和田「全くだぜ石丸! オレは命より重い金なんざ1円足りとも欲しくねぇ!!」

ジェノ「アタシ凡人じゃないけどパス。殺人鬼の美学に反しちゃうしー大した使い道浮かばないしー」

朝日奈「100億円あれば一生ドーナツ食べ放題だけど……殺人を犯すのはちょっと……」

江ノ島「ギャル的には高級品よりもファストファッションの方がトレンドだしー(って盾子ちゃんが言ってたけどどういう意味なんだろ)」

霧切「舞園さん。あなたの決意を聞かせてくれるかしら」

舞園「私は……100億円稼げるアイドルを目指します。目標を定めていれば、二度とモノクマさんに惑わされることはありません」

桑田「そうだよな舞園ちゃん! オレも年俸100億円のミラクル野球選手を目指すぜ!!」

霧切「あなたは黙ってて」

斉木(100億という現実味の湧かない数字もあって、今回の動機で動きそうな人間は絞られてくる)

斉木(さて、16人の中で100億円を欲しているのはどの葉隠だと思う?)

苗木「それは違うよ。葉隠クンは誰も殺せなさそう」

葉隠「ひでーぞ苗木っち! 俺だってその気になれば完全犯罪のひとつやふたつ成し遂げられるべ!」

大神「ほう……葉隠は金の為なら仲間を手に掛けることすら容易いと……」パキポキ

葉隠「誤解だべオーガ! 今のは単なる言葉の綾だべ、俺は誰も殺さねーって!」

斉木(……と、葉隠はこんな感じだ。それではもう1人、お前は誰を警戒する?)

苗木(……お金を賭けた勝負に強い人。……セレスティア・ルーデンベルクさん)

斉木(正解だ。コロニーの端で興味の無さそうな顔をしているが、心の中ではあの大金を喉から手が出そうなほど欲しがっている)

斉木(僕も彼女には常に意識を傾けておくが、苗木も出来る限り彼女のことを見張っていてほしい)

苗木(うん。誰ひとり欠けずに48時間後を迎えよう!)

苗木「……ところで斉木クン。まさかとは思うけど……100億円あれば高級コーヒーゼリーいくつ買えるかなんて、考えてないよね……?」

斉木(……計算をしたことは認めよう。しかし僕は目立つことが嫌いだ、100億という大金を手にしていたら)

モノクマ「コーヒーゼリーは無いわ」ニョキッ

苗木「モノクマ!? お前帰ったんじゃなかったのか!」

モノクマ「いや、帰ったんだけどさ。インスタントコーヒーにゼラチン溶かせば簡単に大量生産できるのに100億注ぎ込むとか一番無駄だなって」ヒュン

斉木(……………………)

苗木「モノクマのやつ何がしたいんだよ! ……って、斉木クン?」

斉木(……苗木、僕は今晩用事ができた。お前は朝までセレスさんとボードゲーム対決をしていろ)

苗木「それって負け戦だよ! ひどいよ斉木クン!!」

【夜時間】

【校舎4階・情報処理室】

黒幕「うぷぷぷぷぷ……楽しみだなぁ、楽しみだねぇ……!」

黒幕「金銭目当ての動機は殺人事件のド定番だもん、今度こそコロシアイが始まるよ! ワックワックのドッキドキだねぇ!」

黒幕「しかし残念なのは、セレスティア何とかさんに動く気配が見られないこと……」

黒幕「娯楽室で苗木くんと優雅に紅茶を飲みながらチェス対決なんて……監視しているこちらの気が滅入ってしまいます……」

黒幕「てゆーかぁ、わたしまで紅茶が飲みたくなってきちゃったじゃなーい! どーしよっかなぁー、食堂行こっかなぁー……」

黒幕「あーっ! 紅茶もいいけどコーヒー飲みたいなっ! さっきからコーヒーのいい匂いが立ち込めてるしぃ……」

黒幕「……ん? コーヒー?」

黒幕「現在校舎4階は未開放エリアのままです。私以外の人間がコーヒーを持って4階に上がってくることなどあり得ません」

黒幕「ですが万が一のことを考慮し、4階の監視カメラを確認してみましょう――」ピッピッ

黒幕「げっ!? 何これ全部真っ黒じゃん!!!」

黒幕「……いや、違うね。カメラ越しには判りにくいが、黒によく似た深い茶色で覆われている」

黒幕「おや、1台が故障してしまったね。監視カメラの破壊は校則違反だというのに」

黒幕「アタシの言いつけを破るいけない子は…………まさか」

黒幕「この学園の生徒じゃないにもかかわらず、アタシのもとへ会いにくる……」

黒幕「僕っ娘魔法少女ちゃん…………!?」ゾクゾクッ





楠子(――ご名答)タンッ

黒幕「きゃー!! 会いたかったよ僕っ娘魔法少女ちゃん!!」

楠子(有り難くないお言葉だな。僕は二度とお前に会いたくなかった)

黒幕「ねぇねぇ、アタシのこと殺しに来てくれたの!? 下で寝起きしてる16人を巻き添えに!?」

楠子(あれから気が変わったんだ。お前は僕に殺されるべきではない――)パチンッ

ザパァァァァンッ

黒幕「嘘!? コーヒーの洪水っ!?」

楠子(現在校舎4階の廊下はコーヒーの海になっている。階下や他の教室への浸水は僕の超……魔法で食い止めてあるが……)

黒幕「私様が居るこの部屋には流れ込むように仕向けたのね……面白いわ、魔法少女……!!」

楠子(要求を飲まない限り、廊下のコーヒーはここへ流れ込み続ける。僕はバリアを張っているから平気だが……お前はどうだ?)

黒幕「その程度、何も怖くないわ。物理法則上、この部屋のコーヒーが廊下の水位を超えることは不可能……」ヒタヒタ

楠子(魔法少女は物理法則を捻じ曲げて、コーヒーを天井までいっぱいに満たすことができる)

黒幕「まだ、まだよ! コーヒーなんて所詮液体じゃない! 時間が経てば魔法も解けてどこかへ流れていくはず……」ザブザブ

楠子(時間が経てば冷え固まるようにゼラチンを溶かしてあるとしたら?)

黒幕「まさか……そんな出鱈目なこと……!!」ガポッ

楠子(――僕の人生と経験と魂を込めて言わせてもらう)

楠子(コーヒーゼリーを笑うものは、コーヒーゼリーに泣くがいい)

黒幕(わかった……飲む、要求を飲むから……っ!!)

楠子(……その思いが本当ならば、顔を出せる程度には水位を下げよう)フォン

黒幕「ぷはぁっ! ……それで、僕っ娘魔法少女ちゃんの望みは何?」プカプカ

楠子(僕の要求は“大神さくらの人質を解放すること”だ)

黒幕「テメェそんなの無理に決まってんじゃねーか!! 大神の人質が居なくなったらアイツはオレをぶっ潰しに――」

楠子(無理ならここで巨大コーヒーゼリーを作るまでだ)ザブン

黒幕「わ゛か゛っ゛た゛!゛ わ゛か゛っ゛た゛か゛ら゛!゛!゛」ガボゴボ

楠子(――それでよろしい)フォン

黒幕「けほっ、けほっ……しょうがないなぁ。大神さんの道場の皆さんは、ボクが責任を持って解放してあげるよ!」

楠子(もしもお前の言葉が詭弁だったら承知しないぞ。確実に安全な場所で解放し、その事実を大神さくら本人にも伝えろ)

楠子(もしも破ったら……僕が全身全霊を捧げて、コロシアイ学園生活を壊してやる)

黒幕「お願い、それだけは止めてっ! コロシアイ学園生活はわたしの夢と絶望の結晶なのっ!!」

楠子(嫌なら絶対に僕を裏切らないことだな。お前が常に学園内を監視しているように、僕も常にお前を監視している)

黒幕「だからわたしに会いに来てくれるんだね? こないだの秘密の暴露も僕っ娘魔法少女ちゃんがわたしを監視してくれてた証拠だよねっ?」

楠子(話が早いじゃないか。コロシアイ学園生活を破綻させる方法は現在49通り考えてある……素直に僕に従うことだ)

黒幕「ねーねー、再会できたついでにまたひとつ質問してもいいかなあ?」

楠子(なんだ? 質問によっては4階全体をコーヒーゼリーまみれにしてやるが)

黒幕「僕っ娘魔法少女ちゃん、さっきわたしに『お前は僕に殺されるべきではない』って言ってくれたよね?」

黒幕「わたしを殺すのに相応しい、僕っ娘魔法少女ちゃん以上の逸材って誰のこと? まさかコーヒーゼリーなんて言わないよねっ?」

楠子(……この学園を支配する絶望に打ち勝つ存在。それは、お前の絶望なんかじゃ決して潰せないような、希望の種を秘めた男だ)

楠子(断言しよう。お前はいつか、そいつの希望に撃ち殺されることとなる)シュンッ



黒幕「……あーあ、行っちゃったよ」

黒幕「監視カメラは1個壊されちゃったし、外の世界への中継システムも水没してイカレちゃうし……本当に絶望的」

黒幕「廊下のコーヒーゼリー液は消えたみたいだけど、後で掃除しなきゃなー……」

黒幕「………………」ペロ

黒幕「……苦くて甘美で、どこまでも深いのに透明な黒」

黒幕「コーヒーゼリーって……こんなに絶望的な食べ物だったのね……」

【寄宿舎1階・脱衣所】

楠子(………………)タンッ

楠子(……やれやれ。体力も寸前だったが、どうにか戻ってこられた)

楠子(コーヒーゼリーを侮辱されたあまり、怒りに任せて突撃してしまったが……)ヌギッ

楠子(あの部屋で受信する絶望の濃度が……前回よりも高くなっている気がする……)ガサゴソ

楠子(意識が朦朧とする……テレパシーすらまともに機能しない……)スッ

楠子(口ではああ言ったが……コロシアイ学園生活を直接破綻させることは、かなり困難だな……)パチン

楠子(……服は着替えた。後は変身を解除して……)シュワン

斉木(部屋……に、戻…………)バタッ



セレス(……これは、何が起こっているのですか?)

セレス(何も無いところからドレスの少女が現れたと思ったら、緑色の学生服に着替え、あろうことか斉木くんへと姿を変えた)

セレス(……まさかとは思うものの、今までの生活の不可思議な点も、これで全部辻褄が合ってしまいます)

セレス(きっと間違いありません。斉木くんは……斉木楠雄は、超高校級のジャンケニストなどではない……)

セレス「超高校級の……超能力者…………!!」

今回の投下は以上です。
自由行動安価の「話の大筋に関わってくる」人物とは、Chapter3の1回目で指名されたセレスさんのことでした。
そして前スレ>>1000も実行してみたのですが……あまり無双感が出ませんでした。すみません。
楠子を出すのは楽しいけれど、それ以上に疲れてしまいます。

次回は20日過ぎに投下予定です。よいゴールデンウィークを。

斉木(僕の出身高校について知りたい?)

苗木「出身高校っていうか、前の学校の斉木クンはどんな感じだったのかなって思ったんだ」

斉木(大して変わらないぞ。目立たないように教室の隅で静かにしていた)

苗木「本当にそれだけ? 斉木クンなら勉強もスポーツも大活躍だったんじゃないの?」

斉木(逆に大変だったぞ。体育は力の加減が難しくてボールを上手く扱えないし、テストもテレパシーを使って常に平均点を狙っていた)

苗木「いくら目立ちたくないからって、そこまで気を張らなくてもいいんじゃ」

斉木(本気でボールを投げるとバスケットゴールを墜落させてしまうし本気でテストに答えると高校レベルの問題では全て満点になりかねない)

苗木「…………そう、なんだ。すごいね」

苗木(どうしよう。今すっごく斉木クンに八つ当たりしたい)

斉木(殴る程度ならいいぞ、所詮びくともしないだろうからな)

苗木「うわっバレてた!?」

斉木(驚くな、いつものことだろ)

苗木「じゃあさ、前の学校には友達たくさん居た?」

斉木(友達の基準がよくわからないが……僕に絡んでくる奴は総じて面倒な連中だった)

苗木「斉木クンには面倒な人でも、本人は斉木クンを大切な友達だと思ってるかもしれないよ?」

斉木(薄ら寒いことを言わないでもらいたい)

苗木「そうだ! 不二咲クンに使った、映像付きのテレパシーがあったよね? あれでボクに友達の様子を見せてよ!」

斉木(誰がそんなことするか。早く解放してくれ、僕にはまだ自由行動安価が残っているんだぞ)

苗木「なーんだ、せっかく浮き輪ドーナツのモカコーヒー味を当てたのになー。朝日奈さんにあげようかなー(棒)」

斉木(人を甘いもので釣るのもほどほどにしろ)ピトッ

苗木「やった!」

斉木(では行くぞ。“イミディエイト・テレパシー”)グッ

――――――――――

『あっ斉木くんだー! こんなところで偶然だね♪(だから私におっふしなさいよ……!)』

『ねぇねぇ斉木くん、ケーキの美味しいカフェ見つけたから海藤くんと心美と私と4人で行かない?』

『おはよう斉木くん! 今日は暑いね! そういえば僕の好きな元テニス選手が昨日帰国したんだけど』

『うふふ斉木くん……そのパンの耳おいしそうね……』ジュルリ

『こんちわっス斉木さn』

『ククク……見ろ斉木、西の空が低い唸りを上げているぞ……奴らは確実に迫っている……』

『ああ、奴らのバイクが“唸”ってるな……! 瞬も斉木も待ってろ、俺がカタしてくる!』

苗木(みんなキャラの濃い人たちばかりだけど……なんだか楽しそうだなぁ)

『相棒! ラーメン食いに行こうぜ! お?』

苗木「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」ビクッ

――――――――――

斉木(どうした苗木、謎の覆面に命を狙われる夢でも見たか!?)

苗木「いや、狙われてないし覆面も……うん、多分覆面じゃないよ!! っていうか夢じゃなくて斉木クンがテレパシーした映像じゃん!!」

斉木(ああ、燃堂か)

苗木「ねんどう……あの強面すぎる人の名前?」

斉木(燃堂力は僕を勝手に相棒と認めしつこく付き纏ってくる。その上究極のバカだから思考が全く読めない、厄介極まりない奴だ)

苗木「キャラクター紹介ありがとう。でも……あんなに強面なのに、燃堂クンはとっても良い笑顔だったよ」

斉木(は?)

苗木「ううん、燃堂クンだけじゃない。テレパシーの中に出てきた人はみんな良い笑顔だったから……」

苗木「きっと、斉木クンは前の高校でそれだけ素敵な友達に囲まれていたんだよね!」

斉木(友達だとは一度も言っていない)

苗木「斉木クン、ここを脱出できたらボクも燃堂クンたちに会ってみたいな」

苗木「きっと毎週毎日楽しいことがいっぱい起こるんだろうね!」

斉木(やめておけ。ロクなことが無い、災難続きの日々だぞ。常人のお前に耐えられるわけがない)

苗木「大丈夫だよ! 人より少しだけ前向きなのがボクの取り柄だから!」

斉木(少しどころか大いに前向きじゃないのか)

Twitterで麻生先生が斉木連載3周年だと仰っていましたので、1時間くらいで書いてみました。
時系列は前回投下分、山田と会う前あたりです。
4年目もΨ難だらけの楽しい日常が読めますように。おめでとうございます。

非日常の方は予告通り21日に投下予定です。

先に宣言しておきます。
今回斉木とセレスさんしか出てこない上に、全体的に文字が多いです。
わずらわしく思う方は投下終了までお待ちください。

【前回のあらすじ】
木曜日



セレス(郷土資料室は存在しないのに、どこからか持ち込まれた石包丁)

セレス(桑田くんがクソ耳障りな歌を披露した時に突如発生したポルターガイスト)

セレス(舞園さん自ら殺害を認めたにもかかわらず、平然と復活してみせた苗木くん)

セレス(そして今日、彼とすれ違った瞬間に消滅したわたくしのエクステ)

セレス(斉木くんがイカサマを働いているということには気付いていましたが、いくら目を凝らせどその手口は見えませんでした)

セレス(今なら全てに納得が行きます。彼はコロシアイを抑止するために、人智を超えた能力を用いている)

セレス(彼をどうにかしなければ……わたくしはあの100億円を手にすることができませんわ!)

――――――――――

斉木(…………ここは……)

セレス「あら、気がつきましたか」

斉木(ルーデンベルクさん……? 娯楽室で苗木とボードゲームに興じていたんじゃなかったのか……?)

セレス「うふふ、わたくしが脱衣所に居ることが意外だったようですね。……やはり苗木くんはあなたからの刺客でしたか」

斉木(人聞きの悪いことを言わないでくれ。あいつはただの見張りだ、僕も含めてルーデンベルクさんを刺し殺す気は毛頭無い)

セレス「わたくしがあなた方に殺意を抱いたとしても、ですか?」

斉木(っ……いや、大丈夫だ。テレパシーがあれば彼女が本当に殺意を抱いたかどうか感知できる)

斉木(現に苗木の心の声も聞こえている。何が起こったかは知らないが、あいつは寄宿舎の自室で爆睡中のようだ)

セレス「苗木くんでしたら、わたくしが彼のティーカップに睡眠薬を盛り、居眠り禁止のルールを破る前に個室へ戻るよう諭しました」

セレス「……あなたが苗木くんの身を案じていないご様子なのは、彼の状況を把握する術をお持ちだから、と見て間違いありませんか」

セレス「流石は超高校級のジャンケニスト――もとい、超高校級の超能力者ですわ」クスッ

斉木(っ!!)フォン

セレス「まあ、何とも不思議なポルターガイスト……いえ、この場合は斉木くんの念動力でしょうか」

斉木(……お前は何故それを知っている? 答えなければロッカーで殴り殺してやろう)

セレス「おや、わたくしを殺す気は毛頭無かったはずでは?」

斉木(刺殺はしないが撲殺なら視野に入れている)

セレス「随分な理不尽ですわ。斉木くんご自身がわたくしに正体を明かしたも同然だというのに」

斉木(…………はい?)

セレス「意識の覚束ない様子で脱衣所に出現した少女は、わたくしの存在に気付かぬまま学生服に着替え、斉木楠雄の姿に変身したのです」

斉木(………………)

斉木(……それは、何かの見間違いじゃ)

セレス「いいえ、断言できます。わたくしの網膜には更衣中の少女の淡い桜色が鮮明に焼き付い」

斉木()ビュビュビュンッ

セレス「……何を想像なさったのです? わたくしは少女の髪色について述べたまでですが」

斉木(………………)

斉木(完全に僕の墓穴じゃないか……)ゴトン

セレス「ふう。ポルターガイストも収まったようですわね」

セレス「ところで……わたくしが“超能力者”と発言した瞬間、どうしてあなたは非力な一般人を装うことをやめたのですか?」

セレス「わたくしの狂言である可能性も存在したはずなのに……あれでは自ら超能力者であることを認めたようなものですわ」

斉木(僕も考えなしの人間じゃない。僕は超能力者だからな、ルーデンベルクさんの言葉がハッタリではないことくらい即座に判別できる)

セレス「あら、とても便利な超能力ですのね」

斉木(そして同時に……僕はルーデンベルクさんの企みもまるっとお見通しだ)

斉木(ルーデンベルクさんが深夜の脱衣所に訪れた理由。それは、アルターエゴを普段保管されているロッカーから移動させるためだ)

セレス「……面白い、推理ですわね」

斉木(明日になればアルターエゴが行方不明になったと騒ぎが起こる。僕たちの意識がそちらへ集中すれば隙を突いて犯行もしやすくなる)

斉木(そしてアルターエゴの件で生じた不信の種を巧みに利用し学級裁判を勝ち抜ける……)

斉木(僕が来なければ第一の準備に取り掛かっていたはずだろう?)

セレス「……何故わたくしがそのような真似を? 少なくとも閉鎖空間での生活を最も満喫しているつもりだったのですが」

斉木(48時間以内に誰かを殺せば100億円)

セレス「っ!」

斉木(モノクマが動機を発表した瞬間、ルーデンベルクさんは涼しい顔の下で狂喜していた)

斉木(『ちょうど100億! あの金さえあれば大量のイケメン召使いを従えて古城に住む夢も実現できますわ!』と)

セレス「テメェそれをどこで知った!!!??!?!? 吐きやがれですわド原色が!!!!!!!!!!!」ガッ

斉木(知ったも何もルーデンベルクさん自身が心の中で叫んでいた台詞を復唱しただけだが。それと)フォン

セレス「! 身体が……動かな……」

斉木(感情を昂らせる分には構わないが、手を出すのはいただけないな)

斉木(うっかり手を滑らせて、君を僕の原色カラーリングよりも毒々しいショッキングピンクに染めてしまうかもしれない)ヴォン

セレス「――っ!!」ドサッ

斉木(さて、ルーデンベルクさんをどうしたものか)

斉木(通常なら真っ先にバールのようなもので殴り掛かり、記憶を消去してしまうのだが……)

斉木(記憶消去は復元能力とのコンボ技なので、24時間以内に復元能力を行使した相手には使えない)

斉木(僕は今日の夕方頃……具体的には>>337で、山田のフィギュアをルーデンベルクさんごと復元させてしまった)

斉木(つまり、僕は最も楽な対処法を自ら封じてしまったのだ。……もしかすると山田のフィギュアのせいかもしれないが)

斉木(こうなった以上は徹底的に箝口令を敷くしか方法は無い。けれど相手はルーデンベルクさん、一筋縄では行かないに決まっている)

斉木(いっそのこと……殺してしまった方がいいのか……?)

セレス「――斉木くん」

セレス「わたくしを殺すのであればご自由にどうぞ。但し、その後のことまでプランがあるのなら、という条件付きですが」

斉木(……察しが早いんだな)

セレス「ギャンブルは場の流れを読むことも勝利を掴む鍵ですわ。それで、斉木くんはおわかりですか?」

セレス「人を殺せば学級裁判が開かれると」

斉木(!)

セレス「すなわち、あなたの命と他の14人の命を天秤に乗せるということ。当然、苗木くんは14人の方へ含まれます」

セレス「超能力で全員救うなどという甘い考えは捨てることです。現にあなたはモノクマと互角であれど撃破できてはいないでしょう?」

セレス「それでも構わないのでしたらどうぞ。すぐそこは大浴場ですし、首を洗ってまいりましょうか?」クスッ

斉木(……打開策を考える中で失念していた。鳥束は殺すと脅せば簡単に口封じできたが……)

斉木(ここでは殺人はあらゆるリスクを背負う。故に、脅しとしては最も通用しない手口だ)

斉木(どうにかして殺さないまま、ルーデンベルクさんを丸め込めないか……)

斉木(……殺さない……つまり生き恥を晒してやればいいのか!)ニヤリ

斉木(――安広多恵子。偽名はセレスティア・ルーデンベルク)

セレス「!?」カァァァッ

斉木(栃木県宇都宮市出身、両親共に生粋の日本人)

セレス「ちょ、てめ、どちらでそれを」

斉木(好物は宇都宮餃子。大神さんに朝食としてリクエストすべきか葛藤しているほどだ)

セレス「うそ、なんで、わたくし、違、」

斉木(ロイヤルミルクティーを愛飲するのは唯一飲める紅茶だから。普通のミルクティーは水っぽさが気になり飲めず、ストレートなど論外の域)

セレス「もう、もうお止めください!! わたくしの可憐でゴシックでミステリアスなイメージが崩壊していまいますわ!!」ワタワタ

斉木(僕にとっては初めから可憐でもゴシックでもミステリアスでもなかったが)

セレス「望みは!? 斉木くんは何をお望みなのですか!? 仰ってください!!」

斉木(僕の正体を口外しないことと、コロシアイに乗らないこと。この2つだ)

セレス「………………」

セレス(………………うわぁ)

斉木(何だその露骨にガッカリした顔は)

セレス「随分な不平等条約ですのね。守る気すら起きません」

斉木(いいのか? どちらか片方でも破ってしまえば君は即座にタエスティア・ルーデンヤスヒロへと)

セレス「それもひっくるめてどうでもよくなりましたわ」

斉木()

セレス「初めは動揺しましたが……わたくしが学級裁判に勝てば、他の皆さんは全員オシオキという名の処刑を受けることになります」

セレス「事実を知る者はゼロに戻る。それどころかわたくしは100億円まで得られるのです」

セレス「でしたら律儀に要求を呑むよりどなたかを殺し、わたくしは華麗に勝ち逃げしますわ」

セレス「その暁には、皆さんへ冥土のお土産話として……わたくし以上に大嘘吐きな超能力者のこともお話ししましょうか?」フフッ

斉木(完全に形勢逆転された)

斉木(どういうことだ? ルーデンベルクさんは自らの設定に人一倍のこだわりを持っていたはず……)

セレス「ギャンブラーたるもの、全てを失う心構えができていなければ大勝することなどできません」

斉木(このままだとルーデンベルクさんは本当に誰かを殺してしまいかねないぞ……)

セレス「あら、わたくしより先に超能力で人を殺そうとしていたのは誰でしたか?」

斉木(……お前も大概エスパーだな)

セレス「舞園さんもわたくしもブラックプリキュアですわ」

斉木(全て振り出しに戻されそうなことを言うのは止してくれ)

斉木(それで、ルーデンベルクさんは僕にどうしてほしいんだ?)

セレス「この場で自殺していただきましょう」

斉木(縁起でもない嘘だ)

セレス「やはり超能力者相手には嘘など通じませんでしたか。……わたくしの真の要求は、」










セレス「葉隠康比呂を消してもらうことです」









斉木(……僕の要求と噛み合っていないぞ。ルーデンベルクさんはコロシアイに乗ったことになるじゃないか)

セレス「あら、わたくしはコロシアイには乗っておりませんよ? 葉隠くんに手を下すのは斉木くんですからね」

セレス「そもそもわたくしも“殺せ”とは申しておりません。あくまで“消す”のです」

斉木(どう違うんだ。葉隠のぼうけんのしょを消せばいいのか?)

セレス「学級裁判が開かれるためのトリガーは“3人以上に死体を発見されること”」

セレス「つまり葉隠くんの死体が誰にも見つからなければ、殺人事件はただの失踪事件として処理されてしまうのです」

斉木(とんだ超理論だな。第一僕が葉隠を消したとしてモノクマが100億円を贈呈すると思うか?)

セレス「では斉木くんはモノクマに自首してください。100億円はわたくしが相続いたしますので」

斉木(他力本願め)

セレス「100億円のタイムリミットまで、残り42時間弱です」

セレス「いかがでしょう斉木くん。わたくしに従った方が得策だと思いますけれど?」

斉木(……なら、42時間後まで待ってほしい)

斉木(制限時間までには……行動含め、全ての答えを出しておこう)

セレス「そうですか。考えなしの時間稼ぎに終わらないよう、期待していますわ」クスッ

セレス「それではごきげんよう。夜更かしはお肌の大敵ですので」スタスタ



斉木(――ルーデンベルクさんは優雅な微笑の下で、こんなことを考えていた)

斉木(『テレパシーの会話とはいえ、斉木くんがここまで饒舌になっているところは初めて見ました』)

斉木(『ここに閉じ込められてから退屈にも退屈していましたが……久しぶりに楽しい勝負ができそうです』)

斉木(やれやれ、テレパシーが僕に常時筒抜けである可能性は考えなかったのか? だから設定にもブレが生じてくるんだぞ)

斉木(何より僕に勝つこと前提の態度が気に食わない。ギャンブルに於いて慢心は最大の敵だと思うが)

斉木(……そんなにも退屈なら、僕も全力で叩きのめしてやろう)

斉木(“超高校級の超能力者”に勝負を挑んだことが運の尽きだ、安広多恵子――!!)ニタァ

今回の投下は以上になります。やや短めですが字数的には普段とさほど変わらないはず。
セレスさんのしたたかさが少しでも伝われば何よりです。
……読むのが面倒な方は>>395だけ確認しておいてください。

次回は何もなければ6月中旬に投下予定です。

6月中旬と予告していましたが……すみません。
来週木曜日には必ず投下します。

今晩中に投下すべく鋭意執筆中です。
……が、寝落ちしてしまった場合はご容赦ください……

次の投稿がくるまで全裸待機してる
という訳で今から全裸で学校行ってくるわ

おはようございます。
投下が著しく遅れてしまったせめてもの償いに、斉木に頼み込んで>>448さんが服を着ているように見える催眠を掛けてもらいました。
では続きをどうぞ。

【前回のあらすじ】
タエスティア



斉木(午前7時半……100億円の期限までは残り36時間半)

斉木(僕もある程度解決策を考えたが、一晩掛けても76通りしか浮かばなかった。538通りまでには増えなかった)

斉木(それにしても……『葉隠を消せ』か)

斉木(制御装置は外せないので、マインドコントロールで葉隠康比呂という存在を消滅させることは不可能だ)

斉木(葉隠が別の人間に見えるよう催眠を掛けても、特徴的な喋り方のせいですぐバレてしまう)

斉木(葉隠を物理的に消す方法が一番簡単で手段も多様なんだが……)

斉木(……まあいい。もう少し粘ってみよう)

【食堂】

苗木「…………おはよう斉木クン」

斉木(苗木か。昨日はぐっすり眠れたようだな)

苗木「うん……セレスさんと娯楽室でボードゲームをしてたら急に眠たくなってきて……」

斉木(人に出されたものを何の疑いもなく飲むからだ)

苗木「人に出された……えっ!? もしかして、紅茶に睡眠薬が入ってたとか……!?」

斉木(毒が入っていたらお前は確実に死んでたぞ)

苗木「でも、紅茶好きのセレスさんが振舞ってくれたんだし、飲まないのは失礼かなって……」

斉木(そのルーデンベルクさんに紅茶を振舞っているのは誰だ?)

苗木「そうか、山田クンだった!」

斉木(このお人好しは今まで微塵も怪しいと思わなかったのか)

セレス「わたくしの下僕がどうかなさいました?」

斉木(下僕て)

苗木「セレスさん……昨日、ボクの紅茶に睡眠薬を仕込んだの?」

セレス「ええ。苗木くんがお疲れのご様子でしたから、ゆっくり休息していただこうと思いまして」

苗木(これは僕にも嘘だってわかるよ)

セレス「しかし、斉木くんはあまり眠れていないご様子ですね。昨晩の動機発表のせいでしょうか?」クスッ

斉木(ギャンブラーなら人の顔を見て心理を読むのには長けているはずだが)

セレス「斉木くんのような鉄仮面は何を考えているのか……わたくしにも測りかねます……」

斉木(昨日と言ってることが逆になった)

セレス「斉木くん個人に限るのでしたら、むしろ苗木くんの方が心情をよくおわかりだと思いますわ。いかがですか?」

苗木「え? えーと……今の斉木クンの気持ちは……」

苗木(斉木クン、今どんな気持ち……?)

斉木(………………)

苗木「…………早くあっち行けって顔してる」

斉木(はい正解)

苗木「ところで今朝は山田クンと一緒じゃないんだね。紅茶はいいの?」

セレス「それが……わたくしも大変困っておりまして……」

苗木「?」

セレス「山田くんが“朝風呂”に行ったきり、戻ってこないのです」

苗木「それって、まさかお風呂で誰かに……!?」

霧切「その心配は無いわ」ザッ

斉木(霧切さん……と、その後ろに引き摺っているのは)

霧切「もうすぐ大浴場の割り当てが女子の時間になるから外に連れ出してきたわ」

山田「やだやだぁーーー!! 拙者アルたんのところに行くのぉーーーーー!! はーなーしーてーーーーーー!!!」ジタバタ

斉木(うわぁ)

苗木「うわぁ」

セレス「テメェ下僕の分際で朝っぱらから何してやがった!? あ゛ぁ!?」ゲシッ

山田「ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

苗木「あのさ……山田クンが言った“アルたん”って」

斉木(間違いなくアルターエゴのことだな。山田は朝食会前のわずかな時間を見つけてアルターエゴに会いに行っていたようだ)

苗木「山田クン……どうしてそこまで……」

斉木(さしずめラブプラスと混同してしまったんだろう。以前どこかの漫画家もハマっていたからな)

山田「なにをおっしゃいますか!! 僕のディープなヲタ話を楽しそうに聞いてくれる女神の如き存在なのですぞ!!」

斉木(何故僕のモノローグに反論してきた?)

苗木(それにアルターエゴって男だよね? 不二咲クンがベースなんだし)

山田「アルたんをあんな現実逃避ゲーと同じ扱いをするなんて……いやネネさんは別格ですが……」

山田「どちらにせよアルたんを蔑視するような輩は山田一二三が許さんッ!!」

斉木(山田はともかくアルターエゴのことは全く蔑視していないぞ)

霧切「ねえ山田くん」

山田「霧切響子殿は引っ込んでいてください!!」

霧切「まさかとは思うけれど、その“アルたん”とは、山田くんの想像上の存在に過ぎないのではないかしら」

斉木(根底から覆しにかかった)

霧切「もしそうだとすれば、山田くんが統合失調症であることにほぼ間違いないと思うわ」

苗木「それは違うよ! ボクらだってアルター……」

霧切「苗木くん、いいともはもう終わったわよ」

苗木「えっ」

斉木(今は話を合わせろ。監視カメラがある以上、表立ってアルターエゴのことを咎められないからな)

苗木(……うん。ちょっと山田クンが可哀想だけど、アルターエゴのためには仕方がないのかな……)

セレス「霧切さんの手を煩わせている暇があんならとっととわたくしにミルクティー淹れろこのブタがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

山田「人遣いが荒すぎますぞセレス殿! アルたんならそんなこと言わないのに!!」

斉木(幸か不幸か、ルーデンベルクさんは僕のテレパシー能力が常時発動中であることに気付いていない)

斉木(向こうにバレていない手札を駆使すれば、最悪の事態だけは阻止できるだろう)

斉木(……しかし、朝を迎えて気が付いた。僕が注意すべき人物はルーデンベルクさんと葉隠だけではない。例えば)

霧切「今朝のセレスさんは随分と早起きね。どういう意図があるのかしら……」

斉木(無自覚探偵の霧切さん。あからさまに不審な行動は目を付けられてしまうことだろう)

不二咲「おはよう。昨日はモノクマにあんなこと言われちゃったけど、事件は起きてないみたいだね……よかったぁ」

石丸「僕らの結束は日に日に強まっている! 金銭で釣ろうとするなど愚の骨頂だっ!」ガラガラ

斉木(人目を避けて脱衣所へ向かっても、マイク入力機能が追加されたアルターエゴが鎮座している。情報は管理者の不二咲にも伝わりかねない)

大神「む……人手が足りてきたようだな。配膳に手を貸してはくれぬか」

石丸「承知した!」

斉木(大神さんもなかなかに危険だな。拳を交えた相手が怪しい交渉をしていたと知れば、彼女は力ずくで制止に入る)

斉木(石丸も地味に厄介だな。状況を曲解したまま騒ぎ立てられそうだ)

苗木「今朝も美味しそうだね。斉木クン、ボクらも手伝おう!」

斉木(そして、僕とルーデンベルクさんが昨夜会っていたことなどつゆ知らずにいるお人好し)

斉木(苗木に相談したところで事態が好転するとも思えない。やれやれ、どうしたものか……)

【校舎2階・図書室】

斉木(100億円の期限まで残り35時間)

斉木(やはり全員をくまなく確実に監視するには千里眼しかない。寄り目だって他人に顔を見られなければいいだけだ)

斉木(だが、1人で椅子に座ったまま微動だにしないままでは、監視カメラの向こうにいるモノクマに怪しまれてしまう)

斉木(苦肉の策として、僕は本を読んでいるフリをすることにした)

斉木(一般的には難解な本を用意して、寄り目に疲れたら1ページ捲る。傍から見ても何の問題も無い)

斉木(そうだな……ここは英書を選んでおくか。翻訳しながら読んでいることにすれば、読むのが遅くても自然だろう)

斉木(もっとも僕は高校英語くらいマスター済みなのだが、それを知る人間は誰もいない。念押しに分厚い本を……)

十神「お前、何故ハリポタを手に取った? 何を考えている?」

斉木(お前こそ何を考えている)

十神「まさかハリポタを鈍器に使うつもりではないだろうな。諭吉が泣くぞ?」

十神(そして何より……魔法モノの金字塔を凶器に使うなど、俺が断じて許さない……!!)

斉木(お前の方が泣きそうじゃないか)

十神「? 何だその不服そうな顔は」

斉木(……別に、普段コロシアイにノリノリの十神が僕を牽制しようとしているのが若干気に食わないだけだ)

十神「いいか斉木。学級裁判で舞園の処刑を阻止して以来、俺はお前のことを少しは高く評価していた」

斉木(ところでそろそろ読書させてくれませんかね)

十神「だが、所詮お前もただジャンケンが強いだけの凡人だ。あの程度のはした金にも簡単に目が眩んでしまう」

斉木(僕は超能力者だし100億円も欲しくないので読書させてください)

十神「そうでなければ、お前のような人間がハリポタの原書を手に取るはずがない!」

斉木(京極夏彦でこいつの頭殴ってもいいかな)

斉木(やれやれ、僕が第一に注意すべきはマジカル御曹司だったか)

斉木(本人は取り繕っているつもりだが……僕が悪戯を仕掛けて以来、思考回路や考察力は著しくダメになっている)

斉木(説得するのも無駄骨だ。ここは手っ取り早く……)

『十神は今日も図書室にいるよ』

斉木(虫の知らせで対処しておく)

十神「斉木は斉木らしく黙っていろ。俺は今回の動機が失効してから完璧な殺人計画を――」

ジェノ「きゃあーーーーん白夜様ぁーーー!!! ポケットマネーでアタシに回転式ベッド買ってーーーーー!!!」ガッ

十神「またお前かジェノサイダー! こっちに来るな! ペトリフィカス・トタルス!!」

モノクマ「……十神クーン」ニョキッ

十神「丁度いいモノクマ! お前の権限でその女を退かしてくれ!」

モノクマ「あのさー、キミ魔法使おうとしたよね? それって金縛りの呪文だよね?」

十神「あっ…………いや、魔法の効果は現れなかったんだから今のは校則違反ではない!!」

ジェノ「えっナニナニ? 白夜様ったら緊縛プレイがお望みなのかしらん???」 ゲラゲラゲラ

斉木(計画通り)

【寄宿舎1階・斉木の個室】

斉木(というわけで分厚い本を借りてきた。図書室にいるよりも僕ひとりの密室に居る方が至って安全だからな)

斉木(100億円の期限までは残り33時間強か。用意周到な人物なら、1日掛けて計画を練るだろうな)

斉木(もっとも僕が全力で阻止してやるが……さて、千里眼を使うとしよう)ギュルンッ

――――――――――

斉木(まずは物理室。テレパシーによると葉隠は今ここにいるらしい)

葉隠『……100億円かぁ』

葉隠『今までの借金を6回は完済できる金額だべ……』

斉木(むしろそんなに借金してたの?)

葉隠『でも俺には人を殺して誰かに罪を被せるなんて到底無理だべ。せいぜい臓器を騙し取る程度が関の山だべ』

斉木(それも十分犯罪だ)

葉隠『もしも誰かを殺すとしたら……誰が殺しやすいんだ……?』

斉木(殺人は到底無理じゃなかったのか)

葉隠(相手はできるだけ非力な方がいいべ。大和田っちや桑田っち、あと十神っちも除外だな)

葉隠(不二咲っちを殺したら大和田っちと石丸っちにシバかれそうだし、苗木っちを殺しても斉木っちにジャジャン拳されそうだべ)

斉木(葉隠の癖に発想が具体的)

葉隠(かといって女子を殺そうとすんのもなぁ……人としてゲスだべ)

斉木(お前自分がゲスじゃないと思ってたのか?)

葉隠(やっぱ俺は潔く臓器を集めて売り捌くしか……)

斉木(それのどこが潔いんだ)

葉隠『……セレスっち』

斉木(!)

葉隠『頭が回るくせにどっか抜けてて、下手すりゃ不二咲っちより細っこい身体のセレスっち!』

葉隠『しかもギャンブラーだから100億近い賞金も持ってそうだべ! 俺の占いは3割当たる!』

斉木(まずい……葉隠がダメ殺意の波動に目覚めてしまった! 考えを改めてもらわないと……!)

『学級裁判……プレッシャー……葉隠康比呂はクリアできない……』

葉隠『クリアできないならセレスっちを殺す一番いい方法を期限までたっぷり占ってから実行するべ!』

――――――――――

斉木(……予想外に大変な事態になった)パッ

斉木(葉隠を止めなければ、ルーデンベルクさんが殺されてしまう……!!)

斉木(ルーデンベルクさんは今……山田の個室に居るようだな)

斉木(この生活が始まった初日、僕は個室のひとつひとつまで隈なく確認した。千里眼だって死角なく使える)

斉木(鍵の内側に居るならひとまず安心だが……様子を把握しておこう)ギュルン

――――――――――

斉木(……山田の部屋はこんな感じか。大量の二次元アイテムが飾られているがあいつどこから持ってきた)

セレス『おわかりですか? 山田くん』

山田『分かれと言われましても……そんな急には……!!』

斉木(ルーデンベルクさんは山田と会話中みたいだな。アルターエゴの件か?)

セレス『でしたらもう一度申し上げますわ。昨晩、わたくしは脱衣所で斉木くんをお見掛けしました』

斉木(まさかルーデンベルクさんは山田に僕の正体を……話が違うじゃないか……!!)

セレス『――斉木くんは、』

セレス『アルターエゴのデータを削除しようとしていたのです』



斉木(は?)

山田『なんとッ!? 斉木楠雄殿がアルたんを!?!?!?』

セレス『AIの消去も殺人の一種と考えたのでしょう。わたくしがお声を掛けるとアルターエゴから手を離されましたが……あの眼は本気でしたわ』

斉木(アルターエゴを隠そうとしていたのはルーデンベルクさんだ。自分の罪を誇張して僕になすりつけるな)

山田『そんな……斉木楠雄殿はああ見えてアニメへの造詣も深い、優しい人なのに……』

斉木(山田も山田で気付け。アルターエゴは監視カメラが無い場所にあるんだぞ、モノクマが殺人にカウントするはずがない)

斉木(葉隠と同じように、山田にもテレパシーを――)

セレス『そんなことありません。去り際、わたくしに向かって……このことを口外したら、その……乱暴する、と……』

山田『な……っ!? アルたんのみならずセレス殿までもを……!?』

斉木(嘘にも限度があるだろ。僕は……女の裸なんて3歳で見飽きているというのに……!)

山田『おのれ斉木楠雄殿……全国のたおやめをいたぶる悪魔のような男だったとは……!!』

セレス『信じていただけて嬉しいですわ。このことを誰に話せばいいか……朝からずっと迷っていましたの』

山田『信じる信じない以前の問題です! そのような外道、紳士山田一二三が放っておけるはずがない!!』

斉木(そいつ超高校級のギャンブラーだぞ変態紳士)

セレス(ふふ……山田くんを焚きつけたら想像以上の効果がありましたわ)

セレス(斉木くんは山田くんにフィギュアを造ってもらう仲。まさか彼に殺されるとは思いも寄らないことでしょう)

セレス(斉木くんが不意を突かれて殺された後、わたくしは山田くんを殺す。殺人が幾重にも絡み合えば、学級裁判の難易度も増します)

セレス(断言致しましょう。この勝負、わたくしの勝ちですわ……!!)

――――――――――

斉木(……………………)パッ

斉木(事態は想像以上に複雑かつ深刻だ)

斉木(僕はルーデンベルクさんとの取引で、葉隠を消さなければいけない)

斉木(そんな僕のことを、嘘を吹き込まれて激怒した山田が殺そうとしている)

斉木(しかし僕も山田もルーデンベルクさんには駒の役割に過ぎない。彼女は山田を始末するつもりだ)

斉木(だがルーデンベルクさん自身も他人に命を狙われている。それが……葉隠康比呂)

斉木(……やれやれ。前スレ>>1000を実行したがために……とんでもない四角関係に巻き込まれてしまった)

斉木(葉隠を消すことに固執する必要はない。とにかく3人全員のコロシアイ計画を阻止してやらなければ……!)

今回の投下は以上です。葉隠が想像以上に掴みどころの無いキャラで苦労しました。
次回投下は8月上旬を予定しております。そろそろChapter3も終盤です。

あの…私>>483ではないんですが
ブロック覚悟で思いきってDNで紹介してみたんです…そしたら麻生先生から返信が来て
「そんなものがあったんですね!僕ダンガンロンパ大好きなので嬉しいです!読んでみます!」
的な返信が返ってきました…
ブロックはされませんでしたよ?
それどころかたまに話しかけられるようになりました…

……本当ですか。
麻生先生が見ている可能性についての私見は>>181でも触れた通りなのですが……正直、非常に残念です。
ひとまず状況がどう転ぶか静観し、SSも8月上旬の投下を目指して書き進めて参りますが、
最悪の場合HTML化申請も視野に入れておこうと思います。

二次創作と言えば聞こえは良いですが、所詮は著作権を無視した海賊版。
本来決して原作者の目に触れてはならない代物です。
極端な事例を出せば、某ゲーム会社が成人向け同人誌の作者を起訴、有罪判決が下ったという話もあります。
麻生先生が二次創作について寛容な姿勢だったから良かったようなものの、下手すれば自分も二の轍を踏んでいたかもしれません。
台本書きSSという比較的俗っぽいジャンルであろうと、作者も読者も常に配慮を欠かしてはなりません。

ただ、起きてしまったことは取り返しがつかないので、読者の皆様はあまり>>491さんを叱責しないようにお願いします。
大切なのは、これからどのようなスレにしていくか。
今後も斉木と苗木が万全の状態でコロシアイ阻止できるよう、二次創作との向き合い方について今一度考えていただけると幸いです。

斉木の誕生日ですね。コーヒーゼリーでお祝いしようと思います。
SSは日曜深夜に投下予定です。

【前回のあらすじ】
ペトリフィカス・トタルス



葉隠「水晶占い、水晶占い……セレスっちを殺すのに一番確実な方法は……」

『そもそも殺さないこと』

葉隠「………………」

葉隠「易棒占い、易棒占い……セレスっちを殺すのに一番確実な方法は……」

『そもそも殺さないこと』

葉隠「………………」

葉隠「動物占い、動物占い……セレスっちを殺すのに一番確実な方法は……」

『そもそも殺さないこと』

葉隠「………………」

葉隠「インスピレーション占い、インスピレーション占い……セレスっちを殺すのに一番確実な方法は……」

『そもそも殺さないこと』

葉隠「………………」

葉隠「だぁぁぁぁっ! さっきからどの占いを試してもセレスっち殺し自体を否定する結果しか出ねーべ!」

葉隠「普段はもっと結果にバラつきがあるのに……どうなってるんだって……」

葉隠「……こうなったら1回でもいいべ! 頼むからマトモな占い結果になってくれぇぇぇぇっ!!」

斉木(やれやれ……成功するわけがないだろ。僕が葉隠の占いをテレパシーで邪魔しているんだからな)

斉木(だが、これは言うなれば僕と葉隠の根比べだ。僕は葉隠が諦めるまで、ずっとあいつに意識を)

葉隠「セレスっちを殺すのに一番確実な方法は……」

『そもそも殺さないこと』

斉木(……意識を集中させておく必要がある。本当は同時進行でルーデ)

葉隠「セレスっちを殺すのに一番確実な」

『そもそも殺さないこと』

斉木(……ルーデンベルクさんや山田の殺人計画も阻止しなければならな)

葉隠「セレスっちを殺すのに」

『そもそも殺さないこと』

斉木(……ならないというのに……葉隠のやつ、意外にしぶといな……)

斉木(かくなる上は苗木に頼んで僕の代わりに動)

葉隠「セレ」

『そもそも殺さないこと』

斉木(……いや、やめておこう。経緯も含めてこの状況を説明すること自体が面倒だ)

――――――――――

【校舎1階・廊下】

苗木「100億円の期限まで残り30時間かぁ……」

苗木(自由行動時間はできるだけセレスさんと一緒に居たけど、途中で見失っちゃったし……)

苗木(やっぱり愛蔵リアクション芸集をプレゼントしたのが悪かったのかな……後でローズヒップティー渡して謝ろう)

苗木(……こういう時、普段なら斉木クンがどこかからテレパシーでツッコミを入れてくれるのに)

苗木(今日はあまり顔を合わせないな。どこかで事件に巻き込まれてなかったらいいんだけど……)

桑田「よぉ苗木じゃん! 何やってんだ?」

苗木「桑田クン! ボクはセレスさんと斉木クンを探してたんだけど……キミは?」

桑田「モチロン野球の練習! 体育館でミラクル投球してたら壁もブチ破れねーかなって試してたけど失敗しちゃってさー!」

苗木「桑田クン、本当に変わったね。前なら練習なんて絶対やりたがらなかったのに」

桑田「んなこたねーよ! オレはいつだってミラクルを追い求めてるだけだし!」

苗木「やっぱ変わってないのかも」

桑田「そうだ苗木、もしブーデーに会ったらコレ押し付けといてくんね?」

苗木「これは……もちプリのフィギュアだっけ。どうして桑田クンが?」

桑田「アレだよアレ、モノクマメダルで回すヤツ……」

苗木「モノモノマシーンだね」

桑田「そうモノモノマシーン! 速球大臣欲しくて持ってたメダル全部入れたのに出てきたのはコレだよ! こんなんいらねーっつーの!!」

苗木「確かに山田クンなら喜んでくれそうだね。でもどうして直接渡さないの?」

桑田「それは、その……セレスとブーデーってよく一緒にいるじゃん? 苗木がセレスを探してるんなら同時に会えて一石二鳥かなーって……」

苗木「面倒なだけなら素直に言っていいんだよ」

桑田「そうたぁ言ってねーだろ!?」

苗木(エスパーじゃなくても人の考えってわかるものなんだね)

【校舎3階・美術室】

苗木(……もちプリのフィギュアのことを引き受けちゃったけど、午後は山田クンの姿も見かけてないんだよなぁ)

苗木(とりあえず美術室に来てみたけど、誰も居ないみたいだね……)

苗木「うわっ!? この机だけすごい散らかってる!!」

苗木(こんなにゴチャゴチャなのに作業なんてできるのかな……ん?)

苗木(走り書きみたいな汚い字だけど、何かの設計図みたいだ。ええと……ジャスティスロボ……?)

苗木「武器はジャスティスハンマー……撲殺用アイテム!?」

山田「なっ!! 何をするだァーッゆるさんッ!!!!!!」バァン

苗木「えっ!?」ビクッ

山田「苗木誠殿……拙者のアトリエに無断で足を踏み入れましたな……」ゴゴゴゴゴゴ

苗木「いやここ山田クンのアトリエじゃなくてみんなの美術室」

山田「さえずるなッ!!!!」ドン

苗木「何それ!?」

山田「まずはその設計図から手を離し両手を頭上で組み降伏の意を示しなさいッ!!!!!」

苗木(どうしよう、山田クンは頭に血が上っていて話が通じない!)

苗木(うまく山田クンを宥めながら、設計図の真相を探らないと……!)

苗木「……ごめんね。勝手に山田クンの作業場へ入っちゃって」スッ

山田「……分かればよいのです。拙者も無駄な殺生は避けてほのぼの暮らしたいですしな!」

苗木「ところで山田クン、この設計図のジャスティスロボって……」

山田「見 た の で す な ?」

苗木「いや、つい! ついカッコ良かったから見とれちゃったんだ!」

山田「ふむ。しかし苗木誠殿はロボット好きでしたかな? 以前ロボットの話をした時は食い付きが悪かったような……」

苗木「山田クンの設計図だからだよ。これって山田クンのオリジナルだよね? デザインする人次第でこんなに魅力的になるんだね!」

山田「そうですか? そうですか! いやぁ嬉しいことをおっしゃいますなぁ!!」ルンルン

苗木(うぅ……良心が痛む……)

苗木「そうだ! 山田クン、確かこのアニメのファンだったよね?」サッ

山田「おおっ……!! これは、もちプリのフィギュア!! 会いたかったですぞぶー子たぁん!!!!」ハスハス

苗木「……そ、そんなに欲しかったんだね、そのフィギュア」

山田「モチロンですとも! 拙者ここへ来た初日からモノモノマシーンへメダルを投じ、ぶー子と邂逅できる日を待ち望んでおりましたからな!」

苗木「すごい熱意だね……」

山田「しかし1/92の確率に勝利することはできず、拙者の趣味を理解してぶー子ゲットに協力してくださる人もおらず……」

山田「こんな日が本当に訪れるなんて夢みたいです!! 苗木誠殿、ありがとう! そしてありがとう!!」

苗木(本当は桑田クンからの預かり物なんだけど……言い出しづらくなっちゃったなぁ)

苗木「でも、本当に誰も趣味を理解してくれなかったの? アニメが好きな人って結構いると思うけど」

山田「それが意外と少ないのですよ。唯一嫌いじゃないと言ってくださったのが……」

山田「…………いや、あれはノーカウントですな! 苗木誠殿が第一号ですぞ!!」

苗木(? なんだろう、今ちょっとだけ山田クンの表情が変わったような……)

山田「そうだ! 折角ですから他にも拙者の部屋に来て、自慢の作品たちを鑑賞していってください! 」

苗木「えぇ……? いや、ボクはそこまで二次元に興味津々ってわけじゃ」

山田「いいからいいからー! ヒフミを信じてー!」

苗木「そう……それじゃあ、少しだけ……」

苗木(本当はセレスさんを探さなきゃいけないんだけどなぁ……)



―――――――――――――――

――――――――――

―――――

【寄宿舎1階・山田の個室】

苗木「ありがとう! 時間も忘れてすっかり見入っちゃったよ!」

山田「ふっふっふ……同人作家冥利に尽きるお言葉ですな!!」

苗木「最初は何がなんだかわかんなかったのに、イラストやフィギュアの迫力にどんどん魅了されて……」

苗木「最後に読ませてくれた本なんて、普通の雑誌に載ってる漫画よりワクワクしたよ!」

山田「ノンノン、それではいけないのです! 商業誌をリスペクトしつつも同人誌ならではの自由な表現に挑む……それが同人作家魂!!」フンス

苗木(よくわかんないけど山田クンなりのこだわりがあるんだね)

苗木「ところで山田クン、あそこにあるフィギュアは作りかけなの?」

山田「ああ、あれは…………製作中止にしたフィギュアです」

苗木「製作中止? 勿体無いよ、色がついてないのにカッコ良くて凛々しくて……」

山田「もういいんです、あんなのは!!!」

苗木「っ!?」ビクッ

山田「……失敬。少々ムキになってしまいましたな」

苗木(なんだか今日は山田クンの大声に驚いてばかりだなぁ)

苗木「ボクの方こそごめん。山田クンにも複雑な事情があるはずなのに……」

山田「…………苗木誠殿は」

山田「苗木誠殿は、極悪非道を許せますか」

苗木「極悪……非道? 誰のこと……?」

山田「人工知能を殺したり、女性を辱めたりすることも厭わない。全く何も感じない……そんな悪行を働く奴のことです」

苗木「人工知能って」

山田「アルたんのことですぞ!! あいつはアルたんを殺してモノクマから100億円を貰おうとしているのです!!」

苗木(アルたん……アルターエゴを殺して100億円……!?)

苗木「違う! そんなこと起こるはずない!」

山田「どうして言いきれるのですか!? 苗木誠殿が勝手に思い込んでるだけでしょうに!!」

苗木「そうじゃなくて、だってアル……」

苗木(駄目だ、監視カメラがあるのにアルターエゴの名前を出しちゃいけない……!)

苗木「山田クン。そのアルたんって人は……ボクたちや、モノクマも知ってる人?」

山田「当然ですぞ!! 拙者のみならず苗木誠殿も、モノクマも……」

山田「ん……モノクマはアルたんを知っているのでしょうか……」

苗木「モノクマの知らない人を殺しても、100億円なんて貰えるの?」

山田「そ、それは……だとしたら彼はどうして……」ブツブツ

苗木(――その瞬間、バラバラだった言葉がボクの中でひとつに繋がった)

苗木(山田クンの言う極悪非道は誰のことなのか……)

苗木(山田クンはどうしてフィギュア造りを中止してしまったのか……)

苗木(もしもあのフィギュアが、誰かアニメが好きな人にプレゼントする予定だったとしたら……)

苗木(相手はきっと“アニメを嫌いじゃないと言った唯一の人”のことで……)

苗木(“嫌いじゃない”って言葉は……斉木クンの口癖だ!!)

苗木「ごめん山田クン! ボク用事思い出しちゃった! また明日!」ガチャ

山田「だとしたら斉木楠雄殿は何ゆえセレス殿を脅迫したのでしょう……?」ブツブツ

【校舎3階・美術室】

苗木(山田クンはきっと、あの設計図のロボットに成り済まして斉木クンを殺すつもりだった……!)ゼェゼェ

苗木(だとしたら、凶器のハンマーは設計図の近くに置いてあるはず……)ハァハァ

苗木(でも美術室の方に無いってことは、隣の美術倉庫に……!)ガチャ

苗木「あった! ジャスティスロボの武器、ジャスティスハンマー(って書かれた美術用ハンマー)!」

苗木(100億円の期限までは丸1日以上あるけれど、きっと犯行に及ぶとしたら人気の少ない夜時間だよね)

苗木(山田クンが使わないように処分しておかないと……!)ガラゴロ



【校舎2階・廊下】

苗木(でも……このハンマー、どこに捨てたらいいんだろう……?)

苗木(ボクの部屋に隠しておいたら後で何か疑われないかな……)

石丸「ストップだ苗木くん! その怪しげな袋の中身を見せたまえ!!」

苗木「ボクに疑いの目が向くようなこと言わないでよ!」

苗木(……でも、ここで正直に中身を見せたら石丸クンも協力してくれるかな)

苗木「実はこれを処分したいんだ。誰かが凶器に使ったら大変だから……」サッ

石丸「これはジャスティスハンマーではないか! 君はどこでジャスティスハンマーを手に入れたのだ!」

苗木「美術倉庫にあったんだけど……石丸クンはジャスティスハンマーを知ってたの?」

石丸「初めて見たぞ!」

苗木「初めて見たんだ」

石丸「しかし確かにこれで殴られると痛そうだ。特にこの一番大きなハンマーなど、流石の僕でも命の危機に瀕してしまいそうだな!」

苗木「縁起でもないこと言わないでよ……」

石丸「そうだな……トラッシュルームのシャッターの向こう側に保管するというのはどうかね?」

石丸「シャッターを開けられるのは掃除当番のみだから、他の人は一切持ち出せなくなるぞ!」

苗木「ナイスアイディアだよ石丸クン! それで……今の掃除当番って誰だっけ」

【寄宿舎1階・トラッシュルーム】

舞園「はい。ジャスティスハンマーはシャッターの向こうの一番奥……焼却炉の横に置いておきました」

苗木「……本当に舞園さんだったんだね、掃除当番」

石丸「ああ。最初に組んだ掃除当番表の通り、今週は舞園くんが掃除当番だ!」

舞園「見張り係がついていた時は、その人に同行してもらう形でお仕事していたんです」

苗木(随分な後付け設定だなぁ……)

舞園「後付けなんかじゃありませんよ」

苗木「ボク何も言ってないよ!?」

舞園「言われなくても分かっちゃうんです。私、エスパーですから!」

苗木(……斉木クンは舞園さんのことエスパーじゃないって言ってたけど、本当なのかな……)

石丸「それにしても舞園くんはモノクマの誘惑にも動じなくなったな! 苗木くんを殺そうとしていたことが嘘のようだ!」

苗木「その言い方はあんまりだよ石丸クン!」

石丸「むっ……失礼した、舞園くん!」

舞園「いいんです、当然の反応ですよ。それに……私が今回協力したのは、もうひとつ不安なことがあったからなんです」

苗木「不安なこと?」

舞園「もしも100億円を巡り、殺人事件が連鎖してしまったら……って」

石丸「誰かを殺して100億円を手にした犯人が第三者に渡された場合、100億円は第三者のものになるかもしれない。こういうことかね?」

舞園「はい。そうやって100億円欲しさに誰かを殺して、自分も殺されないように関係ない人まで殺して、犯人以外は皆殺しに……」

苗木「それは考えすぎだよ。確かモノクマも、100億円を渡すのは先着1名って言ってたから、他の人には権利が移らないんじゃ……」

モノクマ「はい、その通りです!」ピョーイ

苗木「出たなモノクマ!?」

モノクマ「100億円を獲得したクロが誰かに殺されても、100億円は他の人の手に渡ることはありません!」

モノクマ「その場合は……うーん、ボクが責任を持って100億円の墓石を建ててあげるよ!」

苗木「ちょっと癪だけど、モノクマもこう言ってるし……連続殺人は有り得ないよ」

モノクマ「でも皆殺しは実際にありそうだよね! それはそれで絶望的だけど、ボクとしては学級裁判の参加者が一度に減るのは嫌だし……」

石丸「では、校則に追加して規制するというのはどうだろう! 学園のルールならば違反者は出ないはずだぞ!」

モノクマ「いい考えだね石丸くん! 早速その案を採用しちゃおーっと!」


【校則が追加されました】
『連続殺人における被害者の数は2人までとします。』


モノクマ「じゃあボクはこの辺で! 早くしないと誰かに100億円取られちゃうよー!」ヒュン

舞園「……これで良かったんでしょうか」

苗木「悪くはなくなったと思うよ。連続殺人自体は許す形になっちゃったけどね」

石丸「それにしても、このひとつ前の『学園内で魔法を使ってはいけません』とはどういう意味なのだ?」

苗木(ボクにも分からないや。超能力のことじゃなさそうだし……一体何なんだろう)

石丸「しまった、午後8時ではないか! 僕は就寝前の勉強と明日の宿敵バトル準備のため、ここで失礼するぞ!」ダッ

舞園「もうそんな時間だったんですね。苗木くん、私たちも戻りましょう」

苗木「うん。……ところで舞園さん、ちょっとだけ考えてほしいんだけど」

舞園「なんですか?」

苗木「校則でも止められない計画殺人は、どんな風に阻止したらいいんだろう」

舞園「うーん……難しい問題ですね。私や大和田くんと違って突発的ではない分、覚悟を持った殺人でしょうし」

苗木「あくまでたとえ話だけどさ、そんな人を踏み止まらせる方法なんてあるのかな……」

舞園「ひとつ方法があるとしたら、心に訴えかけることじゃないでしょうか」

苗木「心に訴えかける……?」

舞園「感情論とかじゃないですよ。人を殺すのが人であるなら、心を動かす何かがあれば考えを改めてくれるかもしれません」

苗木「でも……それで上手く行くのかな。人を殺すことに対して覚悟を持った人なのに」

舞園「どんなに完璧な人にも必ず脆い部分はあります。弁慶の泣き所とか、アキレウスのアキレス腱とか」

舞園「独りで張り詰めている人ほど、ふとした時に感じる誰かの優しさには弱かったりするんですよ?」

苗木「人の心……誰かの優しさ……そうか、わかったぞ!」

苗木「お陰で胸のつかえが取れた気がするよ。ありがとう舞園さん!」

舞園「それは何よりです。おやすみなさい、苗木くん!」ニコッ

苗木「うん、おやすみなさい!」タッ

舞園「………………」

舞園(あんなことをしてしまったのに、以前と変わらぬ態度で接してくれる)

舞園(お礼を言うべきなのは私の方ですよ。苗木くん)



【斉木の個室】

ピンポーン

斉木(誰だ全く。僕は葉隠の占いを妨害する作業で忙しいんだぞ……)ガチャ

苗木「斉木クン! 返事が無いから心配したよ!」バッ

斉木(機密事項はテレパシーで話せ)

苗木(そうだった! でもボク思いついたんだよ!)

斉木(思いついた……何をだ?)

苗木(セレスさんの計画を……コロシアイを阻止する作戦だよ!!)

今回の投下は以上です。
麻生先生にも知れ渡った状況で斉木を好き勝手動かしていいのかと思うと筆が全く進まなくなりましたが、
苗木視点に切り替えることで多少気持ちが楽になりました。
このSSはもうしばらく続けていきます。
次回でChapter3完結です。投下は9月上旬になるかと思います。

そういや1スレ目で息抜きにTOKIOがダンガンロンパをプレイするSS書いてるって言ってたけど、
それもどっかにupされてるのかな?
何年でも待つのでぜひそっちも読みたいです

本当にごめんなさい。
半分は書けているので9月中に必ず投下します。

>>600
TOKIOにダンガンロンパをやらせる話はいまいち盛り上がらず頓挫し、
TOKIOがコロシアイ修学旅行を阻止する話も考えましたが人数が多すぎて頓挫し、
現在は天国に一番近い日向を考え頓挫しかけています。

何度もすみません、2日延長させてください……

もうすぐ終わると思ったらまだ終わらない。まるで地下帝国で働かされているかの如く苦戦させられました。
大変お待たせ致しました。今回でChapter3完結です。

【前回のあらすじ】
そもそも殺さないこと

葉隠「モノクマー! おーいモノクマー!」

モノクマ「何なのさ急に! 100億円なら誰かを殺してからだよ?」ピョーイ

葉隠「そんなことは百も承知だべ! ……なぁモノクマ、ちょっくら頼みたいことがあんだけどよ」

モノクマ「頼みたいこと? それってクマの手も借りなきゃいけないようなことなの?」

葉隠「ああ! 今夜だけでいいから夜時間も食堂に入れるようにしてほしいんだ!」

モノクマ「……それってコロシアイに関係してる?」

葉隠「勿論だべ! 俺の占いによると、深夜の食堂で事件の計画を立てれば成功すると出たべ!!」

モノクマ「うわぁ……もっと直接的なものを期待してたのに」ヒュンッ

葉隠「ひでーぞモノクマ! 差別だべ!」

モノクマ「……じゃあさ」ニョキッ

モノクマ「午前0時以降は特別に開放するけど、葉隠クンが100億円の期限までに誰かを殺さなかったら……」

モノクマ「キミが夜時間にどこで何をしてたか、5分刻みでつまびらかに開示するからね!」

葉隠「サンキューなモノクマ! これで少しはマシに……なってねーじゃねーか!! プライバシー侵害だべ!!」

モノクマ「最近の若者はワガママだなぁ! あのね、これはキミが事件を起こすならボクは何も言わないって約束でもあるんだよ?」

葉隠「……なーんかうまいこと言いくるめられてる気がするべ」

モノクマ「ふーん。じゃあボクも冬眠するから帰るねー」

葉隠「あぁぁぁわかったべモノクマ! その条件で食堂を開けてくれ!!」

モノクマ「オッケーまいどありー」ガシャッ

葉隠「……これで食堂には一晩中自由に出入りできるんだな?」

モノクマ「うん! ただし“個室以外での就寝禁止”の校則もあるからね? 破ったら即オシオキだからね?」

葉隠「いくら俺でもそんなヘマはやらかさねーべ!」ハハハ

【寄宿舎1階・斉木の個室】

斉木(――察しの良い読者ならば既にお気付きのこととは思うが、念のため説明しておく)

斉木(深夜の食堂で事件の計画を立てれば成功する、という占い結果……これは僕が葉隠に送ったテレパシーだ)

斉木(1日中同じ占い結果しか出なかった後に全く違う結果が出てきたら、大抵の人は新たな可能性を選ぶだろう)

斉木(これで僕も夜通し厨房を利用できる。作戦の第1段階クリアだな)

斉木(………………)

斉木(……それにしても、この作戦はあまりに穴が多すぎる)

斉木(コロシアイを完全に阻止できる保証も無いし、何よりあのルーデンベルクさんがこの程度で屈するとは思えない)

斉木(苗木の奴……何を考えているんだ……)

【寄宿舎1階・セレスの個室前】

苗木「……や、やあセレスさん」

セレス「あら……ごきげんよう苗木くん。またあの下らない本をわたくしに押し付けてくださるのですか?」

苗木「それは違うよ! ボクは愛蔵リアクション芸集を渡しちゃったことを謝りたいんだ!」スッ

セレス「これは……ローズヒップティー?」

苗木「それを一緒に飲みながら、今夜も娯楽室でゲームをしたいん」

セレス「ドッヒャァァァァァーーーーーーッ(棒)!!」

苗木「えっ?」

セレス「苗木くんったら全く学習しない性格ですのね? 呆れて素っ頓狂な声を上げてしまいましたわ!」

苗木(今の叫び声……愛蔵リアクション芸集に載ってたような)

セレス「今晩はもうお引き取りください。わたくし、お肌のケアをしなくてはなりませんの」

苗木「ちょっと待ってよ! 前回はチェスとかダーツとかポーカーとか、セレスさんが得意なゲームばかりだったよね?」

セレス「だから今度はあなたの得意なゲームがしたい、とでもおっしゃるのですか? 得手不得手に関係なく、結果は変わらないと思いますよ」

苗木「だったらいいでしょ! 賭けをするんじゃないから減るものだって無いし!」

セレス「賭けをしないなら増えるものもありませんわ。ただただ時間が減るのみです」

苗木「そんな、その、待っ……!」

苗木(斉木クン、斉木クン! ヘルプ! セレスさんが帰っちゃうよ!)

斉木(やれやれ……ルーデンベルクさんを夜通し引き止めておくと言い出したのは誰だ?)

苗木(昨日は簡単に誘えたから今日も大丈夫だと思ったんだよ!)

斉木(仕方ない、僕がそれらしい台詞を考えてテレパシーで送る。あとは上手くやってくれ)

苗木(ありがとう、頑張るよ……!)

苗木「セレスさんっ!!」

セレス「まだ何かご用ですか」

苗木「……『2人で夜通し娯楽室に居れば、アリバイの証明になる』」

セレス「!」

苗木「『明日の夜には100億円の期限が来る。本気で獲得を狙う人間は、今夜何らかの行動を起こすはずだよ』」

苗木「『それとも、セレスさんは今夜誰かを殺さなきゃいけないからボクを断ってる……なんてことはないよね?』」

斉木(何その括弧つけた喋り方)

セレス「それは、斉木くんに指示された台詞ですか」

斉木(しかも一瞬で見破られたぞ)

苗木「そうだよ。ボクじゃセレスさんを言い負かせないからね」

斉木(あっさり認めた)

苗木「セレスさんは超高校級のギャンブラーだから、100億円を狙っていると疑われやすいでしょ?」

苗木「学級裁判で正しいクロを導き出すためにも、苗木はセレスさんと一緒に居てくれ……って斉木クンに頼まれたんだ」

斉木(成程そうきたか。苗木にしてはよくできたアドリブだな、悪くない)

斉木(しかし相手はルーデンベルクさんだぞ、そう簡単に騙されるはずが……)

セレス(やはり斉木くんでしたか。彼は葉隠くんを排除しつつ、わたくしを事件関係者から外す算段のようですわね)

斉木(>>390辺りはあんなに手強かったのに)

セレス「……わかりました、お茶を淹れて娯楽室へ参りましょう。その代わり」

セレス「舞園さんや大和田くんのように、わたくしも衝動的な殺人をしないとは言いきれません。ましてや……殿方とふたりきりなんて……」

苗木「ボクはゲーム以外に何もしないからね!?」

モノクマ「夜のゲーム(意味深)」ニョキッ

苗木「うるさい!! 余計に事態がこじれるだろっ!」

モノクマ「そうだ、ついでだから完徹予定のオマエラにもお知らせしとくよ!」

モノクマ「今日は特別に夜時間も食堂利用可能! 紅茶もおかわりし放題だね!」ヒュンッ

苗木(食堂開放……斉木クンもモノクマとの交渉に成功したんだね!)

斉木(厳密に言えば交渉したのは僕自身ではなく葉隠なんだが面倒だから黙っておくか)

セレス「なんという朗報なのでしょう。苗木くん、さっそくローズヒップティーを淹れてきてください」

苗木「なんとなく分かってたけどセレスさんは食堂には来ないんだね」

セレス「無論です。わたくしは飲み物を自ら用意するほど低い身分ではございませんもの」

苗木「でもボク、あまり紅茶を飲まないからティーカップがどこにあるのか知らないんだ……せめて一緒に」

セレス「ご自分でお探しください、わたくしは娯楽室で待っておりますので」スタスタ

苗木(まぁそうなるよね……)

【食堂】

苗木(参ったなぁ。早く娯楽室に行かないとセレスさんが帰っちゃうかもしれない……)

苗木(斉木クン、ティーカップがどこにあるか超能力で調べ)

斉木(そちらのサービスは有料です。モノクマメダル30枚をお支払いください)

苗木「そんなの初耳だよっ!!」

葉隠「よぉ苗木っち! 食堂で1人で大声出してどうしたんだ、新手の健康法か? そんな苗木っちにピッタリの健康食品を」

苗木「ちょうど良かった葉隠クン! ティーカップを探してるんだけど、どの棚にあるか知らない?」

葉隠「ああ、それなら他のコップ類をしまってる棚の2つ隣だべ。すぐ紅茶を淹れられるように山田っちが移動させたんだべ!」

苗木「本当だ、ありがとう! これでセレスさんにも怒られないで済むよ……」

葉隠「? セレスっちがどうかしたんか?」

苗木「お茶を淹れたら、セレスさんと一緒に娯楽室で夜通しゲームをするんだ。そうだ、葉隠クンも一緒にどう!?」

葉隠「えっ、いやぁ……今夜の俺はぐっすり眠るべ! また今度な!」

【斉木の個室】

斉木(一連の様子を千里眼で見ていたが、超高校級のお人好しには冷や汗が出てしまった)

斉木(今以上事態をこじらせないため、苗木には葉隠もクロ候補であることを伝えていない。葉隠に気を取られて他が疎かになっては困るからな)

斉木(だが今回は危うく葉隠がルーデンベルクさん殺害の機会を得てしまうところだった。やれやれ……苗木は監視を何だと思ってるんだ)

斉木(苗木はトレイにカップ2つとティーポットを乗せて出ていった。娯楽室にはルーデンベルクさんが待っている )

斉木(葉隠は一旦自室へ戻ったようだ。苗木がルーデンベルクさんと過ごす予定だと知り、面食らったようだな)

キーンコーンカーンコーン……

モノクマ『夜時間になりました云々』

斉木(……これで時刻は午後10時。夜時間が明けるまで9時間もある)

斉木(僕もそろそろ部屋を出て行動に移ろう。苗木のトンデモ計画を成功させるために……)ガチャ

斉木(そして、ルーデンベルクさんとの“約束”を守るために)バタン

【校舎3階・娯楽室】

セレス「……随分と手間取ったようですね。わたくし、待ちくたびれてしまいましたわ」

苗木「ごめんセレスさん! 今ローズヒップティーを注ぐね」

セレス「それで、初めのゲームは何になさるのですか? 苗木くんが教えてくださる予定ですわよね」

苗木「うーん……僕が休み時間によくやってたやつだと……」トポトポ

苗木「そうだ、せんだみつおゲームって知ってる? みんなで向かい合って、せんだ! みつお! って指差し合うんだ」

苗木「指された人の両隣はナハナハってやるんだよ! 指された人がつられてナハナハしちゃったら負けなんだ!」ナハナハ

セレス「単純ながら反射神経の問われそうなゲームですが……そのルールですと、2人だけで遊べないのでは?」

苗木「あっ」

【寄宿舎1階・食堂】

斉木(静まり返った夜の食堂で、ルアックコーヒーを口に運ぶ。以前苗木からプレゼントされたものだ)

斉木(霧切さんやマジカル御曹司もコーヒー好きだったはずだが、その2人には渡したことがないらしい)

斉木(……霧切さんといえば、以前彼女に忠告をされたことがあったな)

斉木(『人の信念は、外的要因には滅多に左右されない』……だったか)

斉木(あの時の僕は、その言葉を“どんなに火種を排除しても事件は必ず起こる”という意味に捉えた)

斉木(確かにその通りだ。今までに起きた2つの事件は、どちらの犯行も未然に阻止することはできなかった)

斉木(僕はその度に超能力を使い、被害者の死を覆してきた。事後処理と言った方が適切だろう)

斉木(しかし……もしも、人の信念をも覆せる力があったとしたら)

斉木(コロシアイが起こること自体を阻止できる力があったとしたら)

斉木(その力を持っているのは、きっと僕ではなく――)

葉隠「よぉ斉木っち! オメーも夜食漁りか? 俺の仲間だべ!」

斉木(葉隠でもないな)

葉隠「そ、そういえばよ斉木っち。さっき苗木っちがセレスっちと娯楽室に行くって言ってたべ」

葉隠「斉木っちは行かなくていいのか? じゃんけんなら斉木っちの得意分野だべ!」

斉木(断る。得意と好みは全く別の問題だ、じゃんけんなどクソゲーの一種に過ぎない)

葉隠「っつーことは、斉木っちはここに残るのか……1人じゃないと占いに集中できないべ」

斉木(だったら自室でやれ……と言いたいところだが)

葉隠「けど深夜の食堂で占うと当たるって結果だったよな……しゃーないべ、我慢すっか」

斉木(食堂開放を狙うついでに葉隠を呼び寄せたのは他でもない僕だ)

斉木(これにも相応の理由がある。他の殺人計画を破綻させるため――)ギュルン

――――――――――

【葉隠の個室前】

山田『外に出られる可能性をチラつかせて、深夜の娯楽室におびき出す』

山田『そして眠り薬で気絶させ、斉木楠雄殿殺しの濡れ衣を着せる……我ながら天晴れの妙案ですぞ!』

山田『葉隠康比呂殿にはご迷惑をお掛けしますが、殺すわけではありませんからノーカウントってことで!』

山田『拙者の悪筆ゆえ文字は少々読みづらいですが……逆に犯人を特定される可能性も低いでしょう』

山田『ではではこのメモを、葉隠康比呂殿の部屋のドアの下にある隙間に……』

山田『シュゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!』スポーン

山田『超!!!!! エキサイティン!!!!!!!!!!!!!』

山田『……でも、果たして本当にこれでいいのでしょうか。僕の行いはアルたんに関係ないのでは……』

山田『ええい迷いは禁物! プランを確認しながら戻りましょう!!』クルッ

――――――――――

斉木(――計画通り)パッ

葉隠「あれ? おっかしいべ……占った時のフィーリングがさっきまでと全然違うぞ」

斉木(僕はもう干渉していないから当然だな)

葉隠「水晶玉が濁ってるせいなんか? 清めの煙を浴びせないと大変だべ!!」

斉木(そのガラス玉ならメガネ拭きで十分浄化できるだろ)

葉隠「丁度良かったべ!! フライパン越しにガスコンロで炙れば浄化できるべ!!」ダッ

斉木(神秘の欠片も無い)

葉隠「道具でしっかり掴んでおけば高火力コンロの直火でも安心だべ!」ボォォオ

斉木(こいつはガラス玉で中華でも作るつもりだろうか)

葉隠「おっと熱くしすぎちまったな! 水に浸けて冷ますべ!」ジュッ

斉木(……どこかで見た情報だが、ビー玉をフライパンで熱した後急激に冷やすと)パリン

葉隠「うわあああああ水晶玉にヒビが入ったべえええええええ!?」

斉木(そうだ、ヒビが入るんだったな。僕が超能力を使ったわけでもないのに葉隠は何をやってるんだ)

葉隠「早いとこ水晶玉を修復しねーと商売あがったりだべ……」ショボン

斉木(やれやれ。日付が変わってしばらく経つが、まだ次の作業に着手できないぞ……)

【校舎3階・娯楽室】

セレス「……指スマ、カレーライス、みのりかリズム4。どれもわたくしには退屈すぎてあくびが出てしまいましたわ」

セレス「苗木くん……あなたは本当に、これでわたくしと勝負になると思ったのですか?」

苗木「結果なんてやってみないとわからないよ!」

セレス「果敢と無謀を履き違えないでください」

苗木「ううっ……」

セレス「もう結構です。ゲームはお終いにしましょう」

苗木「ま、待ってセレスさん! まだボクはキミと一緒に居たいんだ!!」

セレス「あら、わたくしはお部屋に帰るなどとは一言も申していませんよ。他のことをしたいだけです」

セレス「例えば……なぜ苗木くんは斉木くんを信頼できるのか、その理由を聞いて過ごしたい気分ですわ」

苗木「ボクが斉木クンを信頼できる理由?」

セレス「他人に指図され、誰かを監視するため2夜連続で徹夜するなど、わたくしには到底できませんわ」

苗木(舞園さんに殺されてしまったボクを、斉木クンが超能力で生き返らせてくれて)

苗木(それから2人でコロシアイを阻止しようとするうち、自然と信頼するようになって)

苗木(そもそもここに来た最初の日も、斉木クンは気絶したボクをお見舞いに来てくれたっけ……)

セレス「うふふ、言葉には表せぬ繋がりがあるようですわね」

苗木「うん。普段は無口だけど……斉木クンは鋭い観察力を持ってるんだ」

苗木(観察力っていうか、本当は超能力なんだけどね)

セレス「それで、鋭い斉木くんの指示ならば間違いは無いだろうと?」

苗木「そんなところかな。ボクも斉木クンも、いつか16人全員でここを脱出するのが目標だから」

セレス「利用されている、とは思わないのですか?」

苗木「…………え……?」

苗木「違うよ! 利用されてるんじゃなくて、ボクは自分の意志で斉木クンに協力を」

セレス「それを利用と呼ぶのです。協力だなんて聞こえの良い言葉ですが、所詮良心の利用に過ぎません」

セレス「あなたに何かしらの形で恩を売り、友達として自分の手駒にし、散々利用した挙句ボロ雑巾のように捨てる」

セレス「本当のところ、斉木くんはそのような計画を立てているのではないでしょうか?」

苗木「っ……そんなわけ……!!」

セレス「わたくしも斉木くんは手強い方だと心得ております。まるで心の内側まで見透かされているような心地になりますわ」

セレス「だからこそ思いますの。彼は他人の本心を見透かせる分、自分の腹の内は見透かされぬよう細心の注意を払っているはず……」

苗木「確かに斉木クンは自分のことを人に話したがらないけど、ボクのことは信用して秘密を打ち明けてくれたんだ!」

苗木「あと、今夜セレスさんと行動する作戦はボクが斉木クンに提案したんだよ。仕方ないって言って、説得する台詞も考えてくれた」

苗木「だから……ボクは斉木クンのことを、大切な友達として信頼する!」

セレス「……なるほど。苗木くんの言い分はよくわかりました」

セレス「では、斉木くんのご友人の苗木くんに、わたくししか知らない事実をお教えしましょう」

セレス「斉木くんは――わたくしの提案をのんで、葉隠くんを消そうとしています」

苗木「まさか……そんな、斉木クンが誰かを殺すなんて絶対にあり得ないよ!!」

セレス「“殺す”ではなく“消す”です。彼が持つ才能の何を使ってもいい、という意味を込めました」

苗木「それって……超……!」

セレス「はい。苗木くんがおっしゃるところの、“斉木クンから打ち明けられた秘密”です」

セレス「苗木くん。これらの示すことが何なのか……おわかりですか?」

苗木(嘘だ! セレスさんがボクを揺さぶるために嘘を吐いてるんだ! そうに決まってる!!)

苗木(けれど、だったらどうしてセレスさんは超能力のことを知ってるんだろう? まさか本当のことを言ってるのか……!?)

苗木(……斉木クンのことを信じていたいのに、疑念はどんどん膨らんでいく)

苗木(ボクはボクが思っていたよりも……斉木クンという友達のことを、何も知らなかったんだ……)

【寄宿舎1階・食堂】

斉木(娯楽室から不穏なテレパシーが聞こえてくると思ったら、とんでもなく白熱した心理戦が巻き起こっていた)

斉木(これに関して黙っていたのは迂闊だった。ルーデンベルクさんの真の狙いは、僕に葉隠を殺させることではない)

斉木(苗木が僕に寄せる信頼を瓦解させることだったのか……!)

斉木(今からでも苗木に全て伝えれば取り返しがつくかもしれない。早速テレパシーを……)

斉木(いや、僕が超能力で釈明しても焼け石に水か。苗木を利用するための手口だと思われるのが関の山だ)

斉木(……僕は何を考えている? 僕は初めから苗木を利用するつもりであいつに近付いたんじゃないか)

斉木(コロシアイ阻止、アリバイ作りの保険、他の生徒との緩衝材。打算で人と付き合うことを利用以外の何と呼ぶ)

斉木(仮に信頼が地に堕ちても、脅迫という名の口封じをすればいい。あいつがお人好しすぎただけだ、何も失うことなど……)

斉木(おっと、余計なことを考えすぎていた。僕の作業を続けなくては)

【校舎3階・娯楽室】

苗木(セレスさんの話が本当だとしたら……斉木クンは今頃、葉隠クンを殺そうとしているのかな)

苗木(今までならテレパシーで問い掛けたけど、真相をはぐらかされるかもしれない不安でいっぱいだ)

苗木(そういえば……葉隠クンはさっき会ったとき、今夜はぐっすり眠るって言ってた)

苗木(けど葉隠クンは食堂に用事があるそぶりだった。作戦通りなら斉木クンも今食堂に居る!)スタッ

セレス「どうなさいました、おもむろに立ち上がって。何か気掛かりなことでも?」

苗木「うん。さっき食堂で葉隠クンと会ったんだけど――」

苗木(葉隠クンの無事を確認するためにセレスさんから離れたら、それは斉木クンを裏切ることになってしまう……)

苗木(セレスさんと斉木クン……ボクはどっちを信じればいいんだ……!!)



山田「無い無い無い無いなぁぁぁぁーーーーーーい!!!!!!」

苗木「っ!?」ビクッ

セレス「今の叫び声は……そう遠くはありませんから、美術室あたりでしょうか」

苗木「事件だったら大変だよ、ボクたちで確かめてこよう!」

セレス「行ってらっしゃいませ、お気を付けて」

苗木「ってセレスさんも一緒に来てよ!!」

セレス「もし殺人でしたら……わたくしのようなか弱い女性は真っ先に狙わ」

苗木「今は1人になる方が危険だよ! ボクが守ってあげるから一緒に行こうよ!」

セレス「仕方がありません。丑三つ時ですし、静かにゆっくり参りましょう」

苗木(……娯楽室からは離れるけど、セレスさんの監視は続けてるからきっと大丈夫だよね)

【校舎3階・美術室】

山田「無い! 無い! どこにも見当たらない!!」ガサゴソ

山田「一体全体いつの間に、どこへ消えたというのですかぁぁぁぁ!?」

苗木「山田クン! すごい叫び声だったけどどうしたの!?」

山田「苗木誠殿! 僕の……僕の作品が行方不明になってしまいました!」

セレス「行方不明? ここを散らかすうちに紛失したのですか?」

山田「断じて違いますっ! 僕の作業場は雑然としているように見えて実は整理されているんですぞ!!」

山田「昼過ぎに苗木誠殿とここを訪れた際は確かに存在していたのですぞ! 誰かが盗んだんです常識的に考えて!」

苗木「ねえ……その盗まれた山田クンの作品って」

山田「ジャスティスハンマー1号から4号まで一式です! あれが無ければジャスティスロボが完成しません!!」

苗木(……そうか、忘れてたよ)

苗木「山田クン。ジャスティスハンマーは誰かが盗んだんじゃないよ」

セレス「まあ。心当たりがおありなのですか?」

苗木「心当たりなんてものじゃない。ボクがその犯人だよ」

苗木(ボクが昼過ぎに山田クンと会話をした後、どんなことを考えていたか)

苗木「山田クンを含めて誰にも使えないように、ボクが手の届かない場所へ移動させたんだ」

山田「なんですと!? 苗木誠殿は拙者の創作活動を妨害するおつもりですか!!」

苗木「それは違うよ! もっと別の理由なんだ」

苗木(真っ先に思ったのは、斉木クンが殺されるのは嫌だってこと。でも、山田クンが人殺しのクロになってしまうことも嫌だった)

苗木「ボクがジャスティスハンマーを移動させたのは――」

苗木(友達だとか、利用されてるとか、そういう話じゃない。ボクはもっと単純に、)

苗木「――山田一二三クン、キミが斉木楠雄クンを殺そうとしていたからなんだ」

苗木(この学園で出会った16人、誰にもコロシアイをしてほしくない)

山田「そ……そんなの言い掛かりです! 場合によっては訴えますぞバーロォ!!」

苗木「根拠ならあるよ。ジャスティスハンマーは美術用ハンマーに着色をして作られていたからなんだ」

苗木「山田クンは手先が器用だから、木材を削り出してハンマー型の武器を手作りできるはずだよ」

苗木「でもどうして武器を手作りしなかったのか……それは、美術用ハンマーほど重たくないと威力が出ないからなんだ」

山田「ハンマーの重量は人殺し目的ではありませんぞ! 重みがあった方がリアルさが増して評価も上がるのです!」

苗木「『商業誌をリスペクトしつつも同人誌ならではの自由な表現に挑む』……それが山田クンのポリシーだったよね」

苗木「本物のハンマーを土台にして作品を作るのは、ポリシーに反してるんじゃないかな?」

山田「ぐっ……しかしながら拙者は何故斉木楠雄殿を殺さなければならないのですか!?」

山田「ランクEXの自家発電スキルの前では100億円などジンバブエドル同然ですぞ!!」

苗木「山田クン自身が言ってたじゃないか。アル……物を壊したり、女の子に酷いことをする人が許せないって」

苗木「それと同じくらい憎しみを込めて、“アニメを嫌いじゃないと言った唯一の人”の話を無かったことにしようとしてた」

苗木「すぐにピンときたよ。斉木クンは素直に好きとは言わないで、嫌いじゃないって言い回しをするからね」

苗木「けれども……胸を張って言うよ。ボクが信頼する友達――斉木クンは、そんな酷いことをする人じゃない」

セレス(物言いは順序立てているけれど、相手を論破するには感情的すぎる)

セレス(なのに不思議と説得力を有しているのは……苗木くん自身の人柄のお陰でしょうか)

苗木「推理の結果とはいえ、ハンマーを黙って勝手に持ち出したことは謝るよ。ごめんなさい」

苗木「ただ、ハンマーを他の人に悪用されても困るから、100億円の期限を過ぎた後に美術倉庫へ戻そうと思うんだ」

苗木「その代わり……山田クンも考え直してみてよ。斉木クンは、正義の鉄槌を下さなきゃいけないほど悪い人なのか」

苗木「少なくとも、ボクはそう思わないよ」

山田「……なるほど。確かに斉木楠雄殿は無口な印象ですが、人道に反する行いをするゲス野郎とは思えません」

苗木「本当? じゃあ斉木クンは殺さないんだね!?」

山田「おそらく僕は、アルたんを想う心につけ込まれ、口車に乗せられていたのでしょう……」グッ

苗木「えーと……彫刻刀をそんな風に持ったら危ないよ山田クン」

山田「いいえ、これは彫刻刀ではありません……ジャスティスナイフです!!」

山田「いくら女性とはいえ許せませんぞ!! セレスティア・ルーデンベルク殿ッ!!」ガッ

セレス「っ――――!?」





葉隠「おっと、彫刻刀に先制攻撃はさせないべ!」バッ





山田「へ!?」ザクッ



葉隠「……って、カッコつけちまったけど……俺は殺すはずだったセレスっちを助けちまったべ!! 支離滅裂だべええええ!!!」

セレス「……わたくし……殺されてしまうところ、でしたの?」ヘタッ

苗木「うん。でも……」

苗木(葉隠クンがオセロのボードを盾にして、ジャスティスナイフを受け止めてくれた)

葉隠「でもよぉ山田っち、彫刻刀は人に向ける道具じゃないべ。版画板なんかを削る道具だべ!」

山田「…………あ、あわわわ」ガクブル

山田「嘘を吐かれたとはいえ、僕は何を……セレス殿、本当に申し訳ありません……!」

セレス「……葉隠くん」

セレス「あなたは、どうしてここにいらしたのですか……?」

葉隠「話すと長くなるんだけどよ、さっき部屋に戻ったらドアの下にこんな手紙を入れられてたんだべ」ピラッ

苗木「どれどれ……『抜け道らしき穴を見つけた。外に出られるかもしれない』」

セレス「『モノクマに堪付かれるとマズイから、みんなに内緒で深夜1時に娯楽室集合』ですか」

葉隠「けど実はこの手紙、ついさっき2時前頃に見たばっかりなんだべ」

苗木「それまで何をしてたの? 寝てたから気付かなかった……とか?」

葉隠「水晶玉のヒビを修復する道具が無いか探してたんだべ!」

セレス「……は?」

葉隠「いやー、水晶玉を清めようとしてコンロで炙ってたらヒビが入っちまったからよ……」

葉隠「倉庫を漁って、いい感じの道具を見つけてはヒビの修復に使えねーか試してたんだべ」

苗木(水晶玉のヒビって修復できるものなのかな)

葉隠「でも上手く行かなくて、一旦部屋に戻って休憩すっかと思ったら……さっきの手紙を見つけたんだって」

葉隠「その時点で指定の時間からだいぶ過ぎてたけども、1時間以内なら許してもらえると思って娯楽室へ行ったんだべ!」

苗木(大抵の人は1時間も待てないよ)

葉隠「けど娯楽室はもぬけの殻だったから、待つか帰るかインスピレーション占いをやったら……」

葉隠「『オセロボードを持って美術室へ走れ』と出たから、その通りに行動したらビンゴだったべ!!」

セレス「胡散臭い占いの割りに今日は冴えていましたのね」

葉隠「ひでーぞ! 俺が美術室にまっすぐ来たからセレスっちを助けられたんだべ、褒めてくれって!」

セレス「あなた……さっきわたくしを殺すはずだった、とかおっしゃっていませんでした?」

葉隠「そ、それはセレスっちの空耳じゃねーのか?」

斉木(聞こえるか、ルーデンベルクさん)

セレス「……斉木くん? どちらにいらっしゃるのですか」

葉隠「? 斉木っちならたぶん食堂の厨房にこもりっぱなしだべ?」

セレス(ということは……テレパシーですね)

斉木(ご名答。この超能力のお陰で、ルーデンベルクさんの企みは全て把握できたぞ)

斉木(僕に葉隠を消せと命令しておきながら、山田に僕を殺害させ、自分は山田を殺害する……という3段殺人計画もな)

セレス(何故それを、いつの間に……!)

斉木(僕は超能力者だ、意識せずとも容易に気付く)

斉木(その上葉隠もルーデンベルクさんを殺すつもりでいた。もっとも、“葉隠の殺意”は僕が消滅させておいたがな)

セレス(まさかあなた、それで“葉隠くんを消す”の条件をクリアしたつもりですか……!?)

斉木(僕が葉隠を殺すとでも思ったのか? 冗談じゃない、クロになって目立つのは嫌なんだ)

セレス(とんだ屁理屈ですわね。わたくしは斉木くんの正体をバラす手筈は整っていますのよ?)

斉木(僕がこの手段を選ばなければ、ルーデンベルクさんは葉隠か山田に殺されていたはずだ)

斉木(それでも僕の選択が生んだ利益は、葉隠を殺した場合よりも少ないと言うつもりか?)

セレス「っ……!!」ギリッ

斉木(さて……自分が殺すはずだった人間に命を狙われた気分はどうだ? 超高校級のギャンブラー)

セレス(……総ての戦況にかかわらず、自分が一瞬で敗北してしまうかもしれない恐怖)

セレス(命を失うと同時に、ギャンブラーとしての誇りさえも奪われてしまうような心地で)

セレス(コロシアイ学園生活が始まった瞬間から覚悟は固めていたはずでしたのに……)

セレス(とても……とても、おそろしいものでした……)

斉木(……いくら嘘吐きのスペシャリストといえど、心の声は嘘を吐けない。どうやら大いに反省したようだな)

斉木(ルーデンベルクさんが二度と殺人計画を立てないのなら、僕も約束を守らなければならない)

セレス(約束? 葉隠くんを消す話はもう……)

斉木(それは約束ではなく取引だ。――午前7時に食堂で待っている)

セレス(お待ちください、斉木くん、斉木くん……?)

セレス(……テレパシーが、聞こえなくなってしまいましたわ)

山田「セレスティア・ルーデンベルク殿」

山田「その……先程は、我を忘れて凶刃を向けてしまいまして……」

山田「本当に!!! すみませんでしたあああああ!!!」

セレス「……今のわたくしには、山田くんを怒る権利も許す権利も持ち合わせていませんわ」

セレス「ただ……また朝が来たら、わたくしはいつものようにミルクティーを欲するのでしょうね」

セレス「あなたが淹れた……ドブ水に毛が生えた程度の、三流以下のロイヤルミルクティーを」

山田「そ、それはつまり……!!」

セレス「豚じゃないなら後はご自分でお考えください。これでわたくしは失礼致しますわ」スタスタ

山田「あ……あ……ありがとうございます!! ありがとうございます……!!」ウルッ

山田「苗木誠殿と、葉隠康比呂殿も……申し訳ありませんでした」

山田「お2人が止めてくださらなければ、僕は取り返しのつかないことをしてしまうところでしたぞ……」

葉隠「いいっていいって! こういう失敗から学んで後々ずっと間違えなければいいんだべ!」

苗木「それを葉隠クンが言うんだね……でもボクもそう思うよ。後で斉木クンとも仲直りしてね?」

山田「はい! 本当に感謝してもしきれませぬ! 拙者は部屋に戻ってスペシャライザーフィギュアを仕上げてきますぞ!」ルンルン

葉隠「いやー、来た時は何が起こったんか不安になったけど……これで一件落着だべ!」

苗木「そうだね……今回は本当にヒヤヒヤしたよ」

葉隠「さてと、俺も寝てくるべ。誰か殺さなくても100億円は臓器売買で稼げるからな! おやすみだべ苗木っち!」テクテク

苗木「ああ……うん。おやすみ、葉隠クン」



苗木(……ボクも眠たいけど、その前に確かめなければならないことがある)

【寄宿舎1階・食堂】

斉木(……来たか。お前に言われた通り、僕は作戦遂行中だぞ)

苗木「ねえ、斉木クン」

苗木「セレスさんから命令を受けたこと……どうしてボクには内緒にしていたの?」

斉木(……答えは決まりきっている。お前は僕の友達ではないから、だ)

苗木「そんな、そんな言い方って……!」

斉木(苗木誠はコロシアイ学園生活阻止における僕の協力者ではあるが、それと友人関係はイコールではない)

苗木「……確かに、そうだけど」

斉木(だから伝える必要は無いと判断した。むしろ混乱を避けられると判断した。……ただ)

斉木(お前に嘘を吐いたことに対して、大きな罪悪感を抱いていた)

苗木「……嘘を吐いた? ボクに?」

斉木(念写で調べた掛け軸のある部屋は、間違いなく1-Aの教室だ)

苗木「……一昨日に教えてくれたあれだね」

斉木(もうすぐ朝だから3日前か。あれも今回と同じように、お前を動揺させないための嘘だった)

斉木(伝えていないtことは他にも山ほどある。どれもお前を絶望させかねない、重大な情報ばかりだ)

斉木(どうせ協力者という事務的な間柄だ、僕は損得だけを考えてお前と接してきた)

斉木(だが……どういうわけだか、僕は今夜それを初めて後悔した)

苗木「…………」

苗木(……斉木クンは超能力でボクのことを何でもわかるけど、ボクは斉木クンのことは教えてもらった分しか知らない)

苗木(だけど斉木クンはボクよりも冷静だから、コロシアイ学園生活の秘密を黙っておこうって判断する気持ちもわかる)

苗木(ただ……セレスさんのことは、この学園とは関係無い、斉木クン自身のことでしょ?)

苗木(友達とか協力者とか関係無いよ! ボクはボクなりに斉木クンを助けなきゃいけなかったはずなんだ!!)

斉木(……お前は本当に呆れるほどのお人好しだな。僕に裏切られることが怖いとは思わなかったのか?)

苗木(斉木クンが誰かを殺すかもしれないって思ったときは怖かったよ。そんなことしないって信じようとしたら余計に不安になった)

苗木(でも、最初からセレスさんとのことを知っていれば、ただ疑って不安になる以外の違うことをできたはずだよ)

斉木(……苗木の言う通りだな。僕はリスクに気を取られるあまり、選択肢を狭めていたのかもしれない)

苗木「斉木クン」

斉木(?)

苗木「そう思うんだったら、何より先にボクに言わなきゃいけないことがあるよね?」

斉木(…………確かにあるが、)

苗木「なんてね。斉木クンが自分の想いを伝えるのが苦手なことくらい、ボクも承知済みだよ」

苗木「だからさ……ごめんなさいって思う気持ちがあるなら、今作ってるそれ……ボクにもひとつ分けてくれるよね?」

斉木(……言われなくても、お前の分も最初から用意してあるさ)

苗木「よかった。じゃあボクは眠気の限界だから……少しだけ休んで、7時前にまた来るね」

斉木(ああ。…………すまなかったな、苗木)

苗木「えっ!?」クルッ

苗木「謝った!? あの斉木クンが!? 素直に謝った!?」

斉木(うるさい)



斉木(――僕はただ、自らの身を以て知っただけだ)

斉木(超能力では変えられないほどの、人の信念というものは)

斉木(他人の強い信念によって、少しだけ変えられてしまうこともあるのだと――)

――――――――――

【午前7時】

セレス(……昨夜のテレパシーでは、斉木くんは7時に食堂へ来るようにおっしゃっていました)

セレス(朝食会にしては早すぎます。一体どういうおつもりでしょう……)

苗木「おはようセレスさん。4時間くらいだけど少しは休めた?」

セレス「あら苗木くん、お陰様で寝不足ですわ。……ところで、斉木くんを見掛けませんでしたか?」

苗木「斉木クン? 斉木クンならもうすぐ厨房から戻ってくるはずだよ」

セレス「厨房? 彼は朝から一体何を――」

斉木(待たせたな)スタスタ

セレス「……それは、もしや」

苗木「ゆうべは食堂が開放されてたでしょ? それなら丁度いいって、斉木クンが徹夜で作ってたんだ」

斉木(3日に1度の特製パンナコッタだ。ルーデンベルクさんとの約束だからな)カタン

斉木(苗木が提案した作戦は、ルーデンベルクさんに振る舞うパンナコッタを徹夜で作って食べさせるというものだった)

斉木(流石にそれだけでは心許なかったので、例の取引を利用して改心させてやったわけだが……)

セレス「憶えていてくださったのですね。……たった3日だというのに、味も格段に良くなっていますわ」フルフル

セレス「……この調子で、また3日後も美味しいパンナコッタをわたくしに作ってくださいね」ツルン

斉木(これはこれで効果があったようだな。幸せそうな心の声が聞こえてくる……)

セレス(ところで斉木くんと苗木くんの目的はコロシアイ学園生活の阻止でしたわよね?)フルフル

斉木(このタイミングで心の声を使ってくるとは思わなかった)

セレス(あなた方が希望ヶ峰学園からの脱出を視野に入れているのならば、わたくしも協力しても構いません)モグモグ

斉木(………………は?)

セレス(ですから、わたくしも協力すると申し出ているのです。心の声ですから嘘ではありませんよ?)ペロリ

斉木(…………なん……だと……?)

セレス(あと、わたくしのことは今後“セレスさん”とお呼びください。ルーデンベルクでは他人行儀でさみしいですわ)

苗木「……斉木クン、どうしたの? セレスさんを見て固まってるけど……」

斉木(…………セレスさんが、僕たちの仲間になってくれるらしい)

苗木「…………え? えええええええええええええええええええええええええ!?」

セレス「もう……朝から騒々しいですわね」

セレス「山田くんはまだ来ないのでしょうか。あの平和ボケした味のミルクティーを飲んで気分を変えたいですわ……」

――――――――――

【校舎1階・体育館】

モノクマ「……あのさぁ」

モノクマ「もう午後8時過ぎたんだよ!? 100億円はもう手に入らないんだよ!? なんでオマエラ誰も殺さなかったんだよ!!」

ジェノ「黙らっしゃい!! アタシもみんなもそんな紙っぺらじゃトキメキなんざ感じねーっつーの!!」

モノクマ「そんなわけないじゃん! 葉隠クンとかセレスさんとか超欲しがってたよね? 兆欲しがる勢いだったよね!?」

葉隠「俺は俺のやり方で100億円を稼ぐことに決めたんだべ!」ニッコリ

セレス「わたくしもですわ。それに今はもっと手に入れたいものが見つかりましたの」クスッ

モノクマ「は!? 何それ意味わかんないよ!!」

モノクマ「もう知ーらない!! 誰かが殺されるまで4階行きのシャッターは開けませんからね!!」

モノクマ「あーあ、腹いせに葉隠クンの昨日の行動を5分刻みで記録した葉隠日記を公開してやろーっと」ヒュン

葉隠「待ってくれぇ! それ冗談じゃ無かったんか!?」

苗木(今まではボクや不二咲クンみたいに被害者が出たけれど、今回は本当に誰も危害を加えられることなく終わった)

苗木(結束力は少しずつ高まってる。みんな揃ってここを脱出できる日も近いかもしれない……!)

霧切「苗木くん、ちょっといいかしら」

苗木「? どうしたの霧切さん。動機はもう無効になったのに」

霧切「動機とは無関係なことよ。この後9時に、脱衣所へ来てちょうだい」

苗木(脱衣所……もしかして、アルターエゴが何か見つけたのかな?)

霧切「私は……あなたと、2人きりで話がしたいの」

霧切「この学園について私が立てた考察と――斉木楠雄という人物の謎について」




アイテムゲット!
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『すこやか戦隊スペシャライザー』の主人公がコーヒーゼリーを持ったポーズのオリジナルフィギュア。
アニメの衣装や彩色を忠実に再現しつつ、躍動感溢れる造形に仕上がっている。



Chapter3
PSY難だよ! 絶対サイコSPEC CATCHER(S)目録100

END

To Be Continued

今回の投下は以上です。
Chapter3の最終回ということで、前半の総まとめということを意識して書きました。
セレスさんの仲間入りは自由行動安価のクリティカルボーナスです。おめでとうございます。
Chapter4以降は少しずつ独自色と絶望感が出てくる予定です。

投下予定日についてですが、大幅に遅れてばかりで皆様にご迷惑をお掛けしているため、
試験的に【予定日を設けない代わり、投下は土曜日のみ】という方針で行こうかと思います。
月1投下を目標に頑張りますので、今後ともお付き合いいただけると幸いです。

お待たせしました。明日の晩に投下します。

【前回のあらすじ】
…ジャスティスナイフ


苗木「この学園生活と……斉木クンのことについて……?」

霧切「ええ。これ以上は話せないけれど、ある程度の確証を持った上であなたに話すつもりよ」

霧切「それと……私に呼び出されたことを斉木くんに伝えてもいいけれど、私が話す内容そのものは誰にも口外しないで」

苗木(斉木クン相手に隠し事するの自体無理なんだよなぁ)

霧切「最終的な判断はあなたに任せるわ。……じゃあね」スタスタ

苗木(行っちゃった。ボクも霧切さんの期待に沿った方が良さそうだけど……)

斉木(僕も賛成だ。霧切さんほど冴えた人物なら有益な情報を与えてくれるだろう)

苗木(やっぱり聞いてたんだね)







Chapter4

【終わらないワンダーリン・トゥナイト】





【寄宿舎1階・脱衣所】

苗木(……なんだかここには頻繁に来ている気がするなぁ)

霧切「待っていたわ。こうして誰にも介入されずに話す機会を設けたかったの」

苗木(きっと斉木クンにも筒抜けだろうけど仕方ないよね)

苗木「それにしても……そんな言い方、まるで恋人同士」

霧切「突然だけどあなたは今の状況についてどう思う?」

苗木(バッサリ切られた!)

苗木「えーと、どう思う……って」

霧切「コロシアイ学園生活が始まってから数日経過した、今の状況よ」

苗木「別に……何もおかしいとは思わないけど」

霧切「あなたは本当にそう思うの? “事件は起こるが誰も死なない”……一触即発の均衡を常に保っている今の状況が?」

苗木「一触即発? そんなの偶然だよ! 偶然!」

霧切「果たしてそうかしら。これまで起きた2つの事件は、どちらの犯人もいつ人を殺したっておかしくない精神状態だったわ」

苗木(確かに……ボクを刺した時の舞園さんは、脱出願望が強くなってた上に軽いパニック状態だだったし)

苗木(大和田クンはモノクマから動機を提示された直後で、石丸クンにもコンプレックスを刺激されて怒りに我を忘れていた)

苗木「でも、不二咲クンは打ち所が悪いとあのまま死んでたかもしれないんだよ! 霧切さんも看病したから知ってるよね?」

霧切「そうね。犯行当時、大和田くんが衝動のままに不二咲くんを殴打したことの裏付け……と受け取って構わないでしょう」

霧切「だとしたら、他に不自然な点が浮かび上がるわ。……不二咲くんが快復したことよ」

霧切「通常、頭部を殴られたら脳に何らかの後遺症が生じてもおかしくない。けれど目覚めた後の不二咲くんは、どこにも異常が見られないわ」

苗木「それは違うよ! 脳には異常が無くても、不二咲クンは今だって車椅子で過ごしてるじゃないか!」

霧切「あれは数日間も昏睡状態に陥っていたことによる筋力低下よ。軽いリハビリを行えば普通に歩けるようになるわ」

苗木(そ……そこまでは考えてなかった……)

霧切「だから私はこう考えたの。この学園には、定期的に“殺人未遂”を起こそうとする何者かの力が働いている……とね」

苗木「殺人未遂……?」

霧切「ええ。少々危険な方法ではあるけれど16人全員を守れるし、モノクマへの牽制にもなるわ」

苗木(斉木クンとボクが事件を完全に防ぎきれなかった結果そうなってるだけなんだけどなぁ)

霧切「事実、モノクマは現状にさほど大きな不満を抱いていない。100億円を巡る事件が発生しなかったことにはご立腹の様子だけどね」

霧切「ここからモノクマの目的は何なのか絞り込めるわ。苗木くん、あなたにも分かるかしら?」

苗木「目的って言われても……多分、ボクたちを殺すことではないとは思うけど……」

霧切「十分よ。つまり、モノクマの目的は“私たちが仲違いすること”なの。それこそ、誰かが誰かを殺してもおかしくないくらいに」

苗木「でも、どうしてモノクマはボクたちの仲を裂きたがるんだろう? ボクたちに恨みでもあるのかな」

霧切「それは私にもわからないわ。けれど、モノクマにとって得をすることなのは確実でしょうね」

霧切「ここで更に浮かび上がってくる謎が、先に言及した人物の正体よ」

苗木「殺人未遂を起こそうとしてる人……だっけ」

霧切「ええ。その人物は事件が全く起きていない段階からモノクマの目的を数日以内に見抜き、対処にあたっているわ」

霧切「推理力、行動力、策略、機転……あらゆる面に秀でた、優れた才能の持ち主だと考えられるのよ」

苗木(確かに超能力は優れた才能だよね)

霧切「……ただ、この条件に該当する人物は、希望ヶ峰の生徒といえども滅多に存在しない」

苗木「そうかな? 条件だけならセレスさんとかピッタリだと思うけど」

霧切「セレスさんはあり得ない。さっき体育館でモノクマにあの台詞を言ったのだから、一度は100億円を手に入れるつもりだったはずよ」

苗木(ボクも適当に言ったけど、そもそもセレスさんはコロシアイを阻止しようなんて考える性格じゃないよな……)

苗木「じゃあ十神クンは? コロシアイに乗ると見せかけてこっそり……」

霧切「十神くんは無いわ」

苗木「でも十神クンは推理力も行動力もあって機転も利くしきっと策略だって」

霧切「あなたにもなんとなくわかるでしょ。十神くんは無いわ」

苗木「……うん」

苗木「じゃあ霧切さんは誰を疑ってるの? ボクはもう思い付かないよ……」

霧切「ところで苗木くんは何故あの日……モノクマがわさびドラDVDを見せた次の日、ドッキリカメラをやろうと思ったの?」

苗木「え? まさか霧切さん……ボクを疑って?」

霧切「あの日のあなたは、どんなタイミングで私たちの前に現れ、種を明かしたんだったかしら?」

苗木「それは……えーと、その」

苗木(斉木クンの超能力任せだったけど、そんなことは言えないし……)

苗木「って、霧切さんが“殺人未遂を起こそうとしてる人”って疑ってるのは……!」

霧切「そう――斉木楠雄。“超高校級のジャンケニスト”」

霧切「あなたは四面楚歌に陥った彼を助けるかのように、私たちの前に蘇ってみせたのよ」

苗木(覚悟してたけどやっぱり!)

霧切「ドッキリカメラ自体は斉木くんの提案で、あなたは単なる協力者だった……私はそう考えているわ。実際のところはどうかしら?」

苗木(斉木クンが関わったのを下手に否定したらボロが出そうだ……言い逃れはしないでおこう……)

苗木「……確かに、あのドッキリカメラは斉木クンの企画だった。それは認めるよ」

霧切「なら、斉木くんからドッキリカメラの趣旨は聞かされた?」

苗木「それは……ドッキリカメラなんだから、みんなをドッキリさせるために決まってるよ!」

霧切「出まかせね。実行役が苗木くんだとしても、目立ちたがりでない彼が無意味なドッキリを企画するはずがない」

苗木「……そこまでいうなら、霧切さんはあのドッキリカメラについてどう思ってるの?」

霧切「“誰かが死んだら学級裁判が開かれる”と私たちに知らしめること」

苗木「!」

霧切「私にはそう思えてならないわ」

苗木「それは違うよ! ドッキリカメラをやったら結果的に学級裁判が開かれちゃっただけで、ボクらは何も知らなくて」

霧切「苗木くんが知らされていないだけの、偶然を装った計画的行動だとしたら?」

苗木「うっ…………」

苗木(そこはボクも知らないから、否定できないんだよなぁ……)

霧切「もうひとつ不可解な点があるわ。私が捜査を行った時だけれど」

霧切「苗木くんの身体は本当に事切れたかのように冷たかったし、心音すら聞こえなかった」

霧切「今となっては“単なる死んだふりではモノクマを欺けない”というメッセージにすら感じられるわ」

苗木(事切れたかのようにじゃなくてその時は本当に死んでたんだと思うよ)

霧切「仮死状態を演出する方法はいくつかあるけれど、倉庫も保健室も使えないあの段階ではいずれも不可能に等しかった」

苗木(むしろそんな方法あるんだ……)

霧切「教えて。あなたはドッキリカメラの時、どうやって仮死状態になったの?」

苗木「えーと……それは…………」

苗木「……ボクの特技なんだけど、気合いを込めれば心臓の音がピタッと」

霧切「もういいわ」

苗木「え?」

霧切「もういいわ」

苗木「……うん」

霧切「つまり、私が斉木くんについて疑問に思うポイントは2つ」

霧切「“学級裁判を知っていたかもしれない”ことと、“道具が不足している中で苗木くんを仮死状態にできた”こと」

霧切「これらを踏まえて導き出される可能性は……」

苗木(……下手に怪しまれるよりは自分から言ってみた方がいいかもしれない!)

苗木「わかった! 斉木クンは超能力者なんだね!」

霧切「馬鹿を言わないで。そんなにも超能力がありふれたものだとしたら奇跡の価値は薄れてしまうわ」

苗木(やった! 霧切さんは斉木クンを超能力者だと思ってない!)パァァァ

霧切「……推理が外れたのに嬉しそうね」

苗木「いや、霧切さんのツッコミが見事だなと思って」

霧切「話を戻すわ。私が言いたいのは――斉木くんは内通者ではないか、ということよ」

苗木「………………」

苗木「………………内通者?」

霧切「そう、内通者。モノクマと協力関係にある人物……言うなればスパイよ」

霧切「彼が内通者だったとしたら、学級裁判を知っていたことにも仮死状態の小道具を用意できたことにも説明がつくわ」

苗木「そんなわけないよ! 斉木クンはモノクマに加担するような人じゃない!」

霧切「加担しないからこその行動よ。人質や脅迫で、内通者として動くことを強いられていたなら?」

苗木「斉木クンなら人質ごと救出できるし脅迫にも屈しない!」

霧切「あなたは彼をヒーローか超能力者と勘違いしているの?」

苗木「勘違いじゃないよ! 根拠も無いのに仲間をスパイ扱いするなんて……!」

霧切「根拠ならあるわ。アルターエゴ」スッ

アルターエゴ『こんばんは、霧切さん! 苗木くん!』

苗木「アルターエゴ! キーボードを使わなくてもボクらの会話がわかるの?」

アルターエゴ『うん。千尋くんが蝶ネクタイ型変声機を改造して音声入力に対応させてくれたんだぁ!』

苗木(不二咲クン、いつの間にそんなことを……)

霧切「アルターエゴ。復元したプログラムを見せて頂戴」

アルターエゴ『えっと、ロックされたファイルは解析しきれてないけど……破損データの修復は完了したよぉ』

苗木「すごいよアルターエゴ、お手柄じゃないか!」

アルターエゴ『えへへ……ありがとう、僕もやりがいがあったよ!』

霧切「私からも感謝するわ。……話を続けて」

アルターエゴ『それでね……修復したのは前にも話した会話記録だったんだけどね』

苗木『確かKってイニシャルの人が出てくるんだったっけ?』

アルターエゴ『そう、その人のフルネームも……』

アルターエゴ『“Kusuke Saiki”って判明したんだぁ!』

苗木「クウスケ・サイキ?」

アルターエゴ『うん。ログは全文英語だから漢字表記は分からなかったんだけど、“my brother”って単語も書かれていたんだよぉ』

霧切「斉木くんの兄弟が希望ヶ峰学園と何らかのコンタクトを取っていた可能性は十二分にあるわ。それをモノクマが察知していたら……」

苗木「モノクマが斉木クンの兄弟を人質に取ってもおかしくない、ってことだよね」

霧切「とはいえクウスケ・サイキが同一姓の他人という線も捨て切れない……アルターエゴ、他に調べる方法はある?」

アルターエゴ『オンライン接続されているならググって一発なんだけど……ごめんねぇ……』

霧切「なら……苗木くん、あなたは斉木くんの家族構成について聞いたことは?」

苗木「特に何も。斉木クンに兄弟がいたなんてボクも初耳だよ」

霧切「確証は取れないままね。クウスケ・サイキが希望ヶ峰の謎を紐解く上で手掛かりになることは間違いないのだけれど……」

アルターエゴ『僕ももう少しデータスキャンを進めてみるねぇ!』

霧切「というわけで苗木くん。彼の友人という立場を利用して、斉木くんの素性について探ってくれるかしら」

苗木「なんだか人聞きの悪い言い方だね……普通に友達として尋ねるんじゃダメなの?」

霧切「斉木くんはとても頭の切れる人物よ、どう動くかわからないわ。友達だと油断したら足を掬われかねない」

霧切「もし斉木くんが本当に内通者だったとしたら、モノクマの命令を受けてあなたを殺しに掛かるかもしれないのよ?」

苗木「……昨日までのボクなら、霧切さんの言葉をどう受け止めていたかわからない」

苗木「でも今は違うよ。斉木クンが内通者なら、斉木クンが解放されるための手段を友達として探し出す」

苗木「そのついでにお兄さんのことを教えてもらう。霧切さんの協力するのはそれからになっちゃうけど、待っててくれる?」

霧切「……あなたは本当に呆れるほどのお人好しね」

苗木(斉木クンにも同じことを言われたけどボクってそんなにお人好しなのかな……)

霧切「いいわ。苗木くんは苗木くんのやり方で、斉木楠雄という人物を調べておいて」

霧切「きっとそれが……この学園の、ひいては私たちの謎を解き明かす鍵になるかもしれないわ」

霧切「最後にもうひとつ、あなたに教えておくわね。2階の男子トイレの奥に隠し部屋が存在するの」

苗木「男子トイレ!? 霧切さん男子トイレ入ったの!?」

霧切「別にいいじゃない。他人の靴下を洗ったわけじゃないんだから」

苗木(基準がわからない……!)

霧切「とにかく、疑うなら用具入れの壁を調べてみるといいわ。なんなら斉木くんと2人で行っても構わない」

霧切「但しその場合は……斉木くんの反応を注意深く観察しておいて」

苗木「……その隠し部屋って、何があるの?」

霧切「……それは、」

キーンコーンカーンコーン

モノクマ『夜時間になりました云々』

霧切「いけない、もうこんな時間だわ。苗木くんもたまには出歩き禁止のルールを守ったらどうかしら」スタスタ

苗木「なんで知ってるの霧切さん!?」

苗木(クウスケさんのこと、内通者のこと、隠し部屋のこと……)

苗木(楽観的かもしれないけれど、斉木クンに聞いたら全部正直に答えてくれそうな気がしてる)

苗木(そもそも斉木クンのことだから、超能力でお見通しかもしれないしね。テレパシーに心の声で質問しちゃえば……)

苗木(……今すぐじゃなくて、明日の朝食会の時にしてみよう)



霧切(苗木くんは斉木くんの全てを知っているわけではない。けれど、私に対して隠し事をしている様子だった)

霧切(超能力者だという話もあながち間違っていないかもしれないわね。超能力者はこの世に実在したのだから)

霧切(そして……もし苗木くんが今のことを斉木くんに打ち明け、かつ斉木くんが内通者ではなかったとしても)

霧切(彼の頭脳を利用して炙り出せるはずよ……複数人存在するはずの、真の内通者を)

今回の投下は以上です。日付は2015年11月29日になりましたが明晩投下の宣言は守ったので許してください。
セレスさんが予想以上に大人気だったので出番をねじ込もうとしましたが無理でした。予定通り、彼女には次回活躍してもらいます。
ちなみに今回から後半戦ということで、サブタイトルはChapter冒頭に書く方式に変えてみました。

長らく音信不通にしてしまい、誠に申し訳ありません。
諸事情により向こう半年近くSSを書けないであろう状況に陥ってしまいました。
しかし、愛着あるSSを未完のまま終わらせる気は全くありません。
3スレ目が立つ日まで超高校級のジャンケニストのことを覚えていてくださるならば、これ以上ない励みになります。

このスレはもうすぐDAT落ちすると思いますが、それまでの間、
このSSの中で好きなキャラ・今後活躍してほしいキャラをお聞かせ願います。
数に制限はありません。今後の展開の参考にします。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年10月12日 (日) 00:47:44   ID: CdmwrVe0

始まった!楽しみだ!

2 :  SS好きの774さん   2014年11月04日 (火) 12:14:33   ID: Mf15sKhk

おもしろい!

3 :  SS好きの774さん   2014年11月20日 (木) 22:08:38   ID: i7go0EB5

超面白い! 続き待ってます!!

4 :  SS好きの774さん   2014年12月09日 (火) 00:24:00   ID: 96tIP97K

ちょいちょい挟まれる鰤ネタが私のハートにジャストミート。楽しくて楽しくて頭が蕩けてしまいそうです。

5 :  SS好きの774さん   2014年12月09日 (火) 21:59:04   ID: 1_yJbxWF

がんばって!

6 :  SS好きの774さん   2015年01月01日 (木) 12:36:08   ID: JzUklHQT

あけおめ

7 :  SS好きの774さん   2015年02月08日 (日) 22:44:25   ID: omKeskAP

頑張ってください!
とってもおもしろいです!

8 :  SS好きの774さん   2015年03月29日 (日) 07:08:08   ID: fLxDUXUD

ここまで斎木の心情を変えられそうな環境には期待しますよ

9 :  SS好きの774さん   2015年04月01日 (水) 14:20:47   ID: d4gOmsAi

エイプリルフール

10 :  SS好きの774さん   2015年04月11日 (土) 21:37:32   ID: HkxCQIqI

もう失踪かな?

11 :  SS好きの774さん   2015年04月12日 (日) 20:59:19   ID: FZsOof2O

残念だ
かなり面白かったのに

12 :  SS好きの774さん   2015年04月25日 (土) 04:45:54   ID: 836dfAZ5

きたい

13 :  SS好きの774さん   2015年05月05日 (火) 08:03:30   ID: zR-kEKRg

盛り上がって参りました

14 :  SS好きの774さん   2015年05月11日 (月) 13:46:39   ID: FM5LoRSg

続編キター!!! 待ってました!!!

15 :  SS好きの774さん   2015年05月22日 (金) 09:10:41   ID: OcKRSunw

タエちゃん強か可愛い

16 :  SS好きの774さん   2015年06月01日 (月) 23:01:54   ID: jXyIIVxs

頑張ってうp主

17 :  SS好きの774さん   2015年06月27日 (土) 22:21:26   ID: LWhCot8R

ψ(`∇´)ψアゲ!ψ(`∇´)ψアゲ!

18 :  SS好きの774さん   2015年07月06日 (月) 23:36:21   ID: 0Hr-8Kji

まさに災難だなこりゃ

19 :  SS好きの774さん   2015年07月31日 (金) 13:12:13   ID: lUJKqyiQ

まじかよ…
大変なことになっておる

20 :  SS好きの774さん   2015年08月17日 (月) 04:54:03   ID: 2igSPcTS

頑張って続けてほしいものだ
応援してますぞ‼︎

21 :  SS好きの774さん   2015年09月21日 (月) 17:12:25   ID: f6xQvUyG

待っておりますぞ(≧∇≦)

22 :  SS好きの774さん   2015年11月14日 (土) 13:54:20   ID: EiPqndC2

逃亡か?

23 :  SS好きの774さん   2015年12月08日 (火) 15:22:08   ID: bxLHYl9h

むはー(((o(*゚▽゚*)o)))
待ちわびたべ(((o(*゚▽゚*)o)))

24 :  SS好きの774さん   2016年07月10日 (日) 19:19:35   ID: _iJRPcV5

新スレ楽しみにしてるよ

25 :  SS好きの774さん   2016年07月15日 (金) 11:06:30   ID: 0Xzij2nE

待ってます!

26 :  SS好きの774さん   2016年07月31日 (日) 16:59:33   ID: TLOOHln0

とても面白いです!!ゆっくりでいいので投稿してくれれば嬉しいです!!

27 :  SS好きの774さん   2016年08月19日 (金) 22:46:34   ID: qtpuDI9H

とっても面白いです!!新スレ楽しみにしています!

28 :  SS好きの774さん   2016年08月23日 (火) 19:36:29   ID: HymwbNHj

斉ψ好きな私とダンガンロンパ好きな友達とでいつも楽しく読ませてもらっています!
新スレものすごく楽しみにしてます´・▽・`

29 :  SS好きの774さん   2016年09月07日 (水) 21:47:47   ID: bt8kC7y7

このssのおかげでダンガンロンパを始めました!続きを楽しみに待ってますからね!

30 :  SS好きの774さん   2016年09月23日 (金) 19:38:24   ID: N2JlDRZg

楽しみなんで続きオナシャス

31 :  SS好きの774さん   2016年10月21日 (金) 14:57:03   ID: IH6gW9NF

3スレ目立たないかしら……

32 :  SS好きの774さん   2016年11月01日 (火) 03:49:32   ID: qOnk8cdu

落ちたんけ

33 :  SS好きの774さん   2016年11月07日 (月) 22:04:43   ID: XGCZ3iZW

そ...そろそろ...続きを...お願いします...

34 :  SS好きの774さん   2016年12月23日 (金) 23:56:22   ID: Bqn8PPY1

ま、まだ待ってます……

35 :  SS好きの774さん   2016年12月26日 (月) 22:45:11   ID: 4_d8rZn9

もうすぐ1年経っちゃうなぁ

36 :  SS好きの774さん   2017年03月16日 (木) 11:10:30   ID: sskF4E2U

もう望みはないですかね…

37 :  SS好きの774さん   2017年03月21日 (火) 10:43:36   ID: JXWX5lsl

ニコニコ大百科の斉木楠雄のΨ難の紹介記事でとてもクオリティが高いって紹介されてたからどんなものかと思ってたけど一気読みしちゃうくらいキャラにブレがほとんどないね。
一年くらい更新されてないみたいだけど大丈夫かな?作者自身が忘れてないならまだ待つよ。

38 :  SS好きの774さん   2017年04月25日 (火) 10:30:40   ID: vrCe2tda

いつまでも待ってる

39 :  SS好きの774さん   2017年05月26日 (金) 23:05:41   ID: 9FmQBVYc

次スレまだかな

40 :  SS好きの774さん   2017年08月13日 (日) 14:50:08   ID: SMpm0P4o

作者ー!早く来てくれー!!

41 :  SS好きの774さん   2017年08月30日 (水) 20:09:33   ID: 2fpKutD4

クオリティ高いしすっげー面白いっす!!続き待ってるっすよー!!

42 :  SS好きの774さん   2017年11月13日 (月) 18:31:58   ID: OZDymbkX

もう冬か…

43 :  SS好きの774さん   2017年12月03日 (日) 23:20:47   ID: dkLMgD7x

スレのもpixiv版も待ってる

44 :  SS好きの774さん   2018年02月19日 (月) 17:25:48   ID: dF_Z-ITl

僕はまだ待っているぞ。
あとpixivの方もまだか?

45 :  SS好きの774さん   2018年02月28日 (水) 01:34:23   ID: 2zXVHoVX

原作はちゃんと完結したんだから
これも完結させようぜ

46 :  SS好きの774さん   2018年04月05日 (木) 23:39:56   ID: g6IrirfX

ま…まだだ…。まだ終わらないよ!待ってます!!

47 :  SS好きの774さん   2018年07月03日 (火) 21:29:28   ID: x7KLIikB

5年でも10年でも待つから完結して…

48 :  SS好きの774さん   2018年08月10日 (金) 15:33:55   ID: 1H29yJDw

待ってる待ってるよ…
幾ら経ったても。
3スレ目あくしろよ

49 :  SS好きの774さん   2018年10月21日 (日) 20:26:03   ID: cjKcgHXm

待ってるから、、、完結を待ってるから、、、 3スレ目お願いします!

50 :  SS好きの774さん   2018年11月10日 (土) 21:45:54   ID: HT4cXH0O

まだまだ待ってるよ

51 :  SSバグ   2019年08月11日 (日) 20:46:56   ID: Cg4Sr8e1

オワコ(エラー)ザザー

52 :  SS好きの774さん   2021年07月10日 (土) 23:50:43   ID: S:nitHMo

3スレ目はまだなのか。早くマジカル☆十神ちゃんを見たいのだが。

53 :  SS好きの774さん   2021年08月15日 (日) 20:20:25   ID: S:nQ3hAE

面白かった

54 :  SS好きの774さん   2021年11月24日 (水) 20:44:15   ID: S:xpeWv-

待ってる

55 :  SS好きの774さん   2022年07月03日 (日) 10:18:52   ID: S:74vpvE

まだ待ってるよー

56 :  SS好きの774さん   2022年10月13日 (木) 08:36:01   ID: S:r-X-Sb

続き待ってます。

57 :  SS好きの774さん   2023年04月14日 (金) 23:14:09   ID: S:Bp_xU-

がんばれー

58 :  SS好きの774さん   2023年10月04日 (水) 22:06:46   ID: S:nvMZG-

まだ待ってる。
ピクシブの更新もお疲れの出ませんように。

59 :  SS好きの774さん   2024年01月09日 (火) 21:45:07   ID: S:THltSJ

まだ待ってるぞ

60 :  SS好きの774さん   2024年03月12日 (火) 01:15:58   ID: S:NaYn-S

一気読みしちまったよ。おかげで仕事なのにこんな時間やw続編キボンヌ

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