和久井留美「あら、この肌色率の高い本は……?」 (54)



留美「って、グラビアかと思ったら、本当にその手の本じゃない……。しかも、これ……」

真奈美「ん? どうした?」

留美「ああ、真奈美。今日って……小さい子たちはいないわよね?」

真奈美「うん。いまはテーマパークイベントだから、若い子はみんなそっちに行っているな」

留美「じゃあ、ちょうどいいか……。真奈美。ちょっと大人組を会議室に集めてくれない?」

真奈美「ふむ。なにやら深刻な様子だな。わかった。少し待っていてくれ」

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和久井留美(26)
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木場真奈美(25)

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——会議室——



礼子「どうしたのかしら?」
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高橋礼子(31)

ヘレン「この私を呼ぶなんて、何事?」
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ヘレン(24)

のあ「……仕事の話ではなさそうね?」
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高峯のあ(24)

真奈美「事務所に残っている大人組というと、このくらいだった」

留美「十分よ。ありがとう、真奈美。……さて、みなさん、集まっていただいたのは、他でもありません」

礼子「なぁに?」

留美「これです!」



『緊縛調教概説』
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(画像はイメージです)

ヘレン「ポルノ?」

真奈美「その手の本ではあるな。しかし、これは……」

礼子「いわゆるSMの本かしらね」

留美「ええ、そのようなの」

のあ「あなたの趣味……ではないわよね?」

留美「当たり前でしょう! 事務所内で見つけたのよ」

ヘレン「……へえ」

真奈美「……どのあたりで、かな?」

留美「彼の席の後ろに落ちていたわ」

礼子「あらあら」

のあ「……人は誰しも望まぬ行動を取らざるを得ない時もあるものよ?」

留美「グラビアとかの資料だとでも? それはさすがに……」

礼子「普通のえっちな本ならともかく、これは……。あら、えらい縛られよう」

ヘレン「彼の趣味……ということ?」

のあ「……」

真奈美「しかし、個人の性的嗜好にけちをつけるつもりはないが、事務所に持ってくるというのはいただけないな」

礼子「うーん。そうねえ。まあ、これ、直接的な写真の類は比較的少ないみたいだけど……」

ヘレン「では、なにが載っているの?」

礼子「そういうプレイでの手順ね。How-to本と考えていいでしょうねぇ」

留美「そんなものがあるのね」

のあ「セックスとは本能的行動ではなく、文化的に学習するものだ、と主張する学者もいたはずね」

真奈美「まあ、普通の性行為についての解説本もあるからな……」

留美「性教育ではなく?」

真奈美「ああ、それとはまた別に、だ」

ヘレン「その手の本の是非は置くとして。どうするつもり? 事務所に持ち込む軽率は非難されるべきと考えるけど?」

留美「そうね。こういうものは自分の家で見るよう促して、ちょっと怒ってみせるくらいでいいんじゃない?」

真奈美「あまり責めてもな。凛あたりがみつけたらどうするつもりだったと叱ればいいんじゃないか?」

のあ「甘やかな世界を守るためには……大人たちの自制が必要」

礼子「うんうん。みんな冷静で感心するわ。じゃ、これはこれでじっくり見てみましょうか」

留美「え?」

真奈美「いや、別にこれ以上は……」

礼子「あら? まるで興味がないなんて言わないわよね?」

真奈美「それは……いや、しかしだな」

ヘレン「日本式と欧米のものは違うのだったわね?」

のあ「……見知らぬものを求める人間の業は深いわね」

留美「……」

礼子「ほら、みんな興味津々」

真奈美「むむむ……」

礼子「まず、目次ね」


序『亀甲と菱縄の違い——よくある誤解から』
第一章『我々は脳で交歓する』
第二章『大前提は安全から』
第三章『拘束するということ、されるということ』
第四章『心理的障壁の打破』
第五章『様々な拘束方法』
第六章『緊縛実践』



留美「本気でHow-to本の構成ね。その主題はともかく」

のあ「安全を強調している点は、評価すべきかもしれない」

ヘレン「実際、たまにこういう行為で死ぬ人いるんでしょう?」

真奈美「窒息を含めた性的倒錯まで範囲を広げるなら、それなりの人数の死亡例があったはずだ。知っているのはアメリカの例だがね」

礼子「日本はどうなのかしら。少なくとも、この本を見る限りは、本気で傷つけるようなものはないようだけど」

のあ「マルキ・ド・サドの作品は、暴力描写は残忍かつ執拗で、時に支離滅裂。けれど、彼はサディズムの語源ではあっても絶対的なものではない」

留美「現代の、いわゆる『プレイ』はそれとは乖離しているのでしょうね」

ヘレン「趣味で愉しむ範囲でいちいち傷を作っていたら、かえって長く続けられないわよね」

留美「うーん。だからと言って、痛みをわざわざ与えたり、与えられたりというのは……」

礼子「この本の場合、叩いたりとかは少ないようだけどね」

真奈美「拘束が主眼のようだから、動けない不自由さがメインか」

ヘレン「直接的な打撃はないということ? ええと、鞭とかパドルとかなんですっけ?」

留美「パドル?」

真奈美「日本だとなじみが薄いね。カヌーで使う櫂のことだよ」

のあ「……英米では、公的な懲罰の道具として用いられたこともあるわね」

留美「あー……昔の小説なんかで先生におしりをぶたれたりするやつ?」

礼子「ああ、なんとなくイメージできるわね」

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パドル

礼子「いずれにしても、その手の系統はないみたい。この本の持ち主のことを考えれば、相手に打擲するような内容は……」

留美「許されないわね」

ヘレン「我々のこの体は仕事道具でもあるわけだしね」


真奈美(皆、彼の想定する相手がアイドルだと当然のように考えているが、そうとは限らないとは指摘しない方がいいんだろうな)


のあ「……拘束が主なものだとすると、どんな道具を用いるの? 常に腕で押さえつけているわけにはいかないはず」

留美「表紙の写真からすると……縄?」

礼子「それもいろいろあるみたいね。ええと……。あ、一覧ページがあるわ。ええと、まず……」

縄で縛るってよく聞くけどあれ痛くないのか?

・スカーフ、ハンカチ、タオルなど、手近な布類。
 拘束者、あるいは被拘束者の衣服を用いるのも背徳的である。
 ベルトなども利用できるが、拘束用ではない一般的な革ベルト等の場合、金具で傷つけることがあるのでおすすめしない。



真奈美「ここでも安全を強調しているな」

のあ「ここに『意図しない責めで、相手を傷つけることは支配者にとって恥であることを肝に銘じよ』とあるわ」

留美「支配者、ねえ」

ヘレン「相手の自由を奪い、好きなように出来るという意味では、間違っていないわね」

礼子「問題は、そうされるほうの感覚だけど……。まあ、そのあたりはまた後で見るとして、いまはここを続けて見ましょうか」

・手錠、指錠
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指錠
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手錠



留美「指錠?」

真奈美「親指だけ拘束する手法は、警官も使うことがある。両の親指を固定されたら、それだけで、手は動かせないよ」

のあ「これだけ小さいものに動きを束縛されるという感覚は……過酷かもしれない」

ヘレン「それより、なんで、手錠になにか柔らかそうなものがついているの?」

礼子「そりゃあ、手首を傷つけない配慮じゃない?」

留美「……なんだか、不思議な感じがするわね」

真奈美「威圧感では、金属の手錠のほうが上だろうが……。結局、その、実際の行為の時にはこすれたりして危ないのだろう」

礼子「ああ、いろいろ動くものね」

ヘレン「生々しいわね」

・ボンデージテープ
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ボンデージテープとその使用例



ヘレン「テープ? べたべたしないの?」

のあ「『粘着材を使用せず、静電気で接着する』とあるわ。……そうね、ラップを想像するといいんじゃないかしら」

真奈美「なるほど、テープ同士が重なったところが主に接着力を発揮するわけだ」

留美「便利そうだけど、これじゃ、まるで梱包ね」

礼子「まさにそういう感覚を味わわせたいんじゃない? ほら、屈辱感も込みでしょうから」

留美「さすがに物扱いはどうなの」

のあ「それを悦ぶものもいるということでしょう……。世界は広いわ」

・ボンデージ(レザー、ラバー等)
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手枷・足枷等
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レッグバインダー(脚部)
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アームバインダー(腕部)
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ボンデージスーツ(全身)



留美「なんというか……」

ヘレン「この手のものは、過激なファッションの一部として、取り入れられているものもあるけど、ね」

真奈美「しかし、これはそうした尖ったファッションより、はるかに明確に拘束という目的を指向しているからな……」

礼子「これに加えて、縄があるわけだけど……。それがメインなだけに、さすがにどぎつい写真があるから、いまは開かないでおくわ」

留美「これで楽しめるというのが、なかなか想像が……。だって、もう完全に身動き取れなくなるわよ?」

礼子「でも、実際、あのときって身動き取れないじゃない? 男の人にのしかかられちゃうんだもの」

留美「そんな、まさにしているとき限定じゃないでしょ、これ」

真奈美「腕だけでも動かせなかったら、かなり心細いことだろうな」

のあ「そういったことに対する精神的な動きについて……どこかに書いてはいない?」

ヘレン「そうね、拘束について書いてある章があったわよね?」

礼子「そうね、見てみましょうか。……えーと……」

『あなたがどれだけ普段気を張り詰めて生活しているかはわからない。だが、頼れる人間に甘えたくなる時というのは、誰しもあるはずだ。

 たとば、心を許す相手によりかかりたいと思うことはないだろうか。
 その相手に全て任せてしまいたいと思う時は?
 普段、求められている決断や判断といったものをかなぐり捨て、行動に関する決定を誰かに委ねたくなることはないだろうか。

 SMプレイは全て信頼と冷静な判断によって支えられるが、拘束はその最たるものである。
 拘束という行為はする側にはまさに支配する感覚を与え、される側には支配者を信頼するしかないという諦観と裏腹の安心を与えるのだ』


のあ「……安心?」

真奈美「不安ではなく安心とはな」

礼子「たしかに考えることに疲れちゃって、全部任せちゃいたいってことはあるけど、ねえ……」

留美「でも、安心につながるかしら……」

ヘレン「もう少し読み進めてみたら?」

礼子「そうね」

『拘束は、また、される者にとって、都合の良い『言い訳』を与えてくれる。
 縛られているから、この相手に従うしかない。
 身動きがとれないから、この相手に隷属するしかない。

 そう自分に言い訳をすることができる。
 自らの行動と意志、それにまつわる全ての思考の放棄という、甘美な『奴隷の快楽』を享受するしかないと、自分に言い聞かせることが可能なわけだ。

 本初では、無理強いされるようなプレイを前提としていない。
 セーフワード等を含めた安全対策を行い、実際にはいつでも止められるという前提のもとで全ては行われる。
(セーフワードを口にしても止めないような相手とはそもそもプレイを行ってはいけない)

 だから、実際にはいつでも止めることが可能なはずだ。それでも、あなたはやめないだろう。
 思考を放棄したあなたは、なにもしなくても相手が快楽を与えてくれるものだと、信じ切っているからだ』


ヘレン「セーフワードって?」

礼子「ええと……。ああ、あった。プレイを止める言葉を決めておくんですって。普通は言わないような言葉にしろってあるわ」

真奈美「やめてとかいやではだめだと」

留美「まあ……その手の単語はつい出ちゃうこともあるし……」

のあ「嫌よ嫌よも好きのうち……。でも、実際は九分九厘まで、嫌は嫌」

礼子「ベッドの上には残り一厘があるってことかしらね」

留美「そりゃ、そこまで行けばね……」

真奈美「それにしても、拘束がされるほうにとって言い訳になるとは斬新だな」

ヘレン「私は少しわかるわね」

留美「あら?」

ヘレン「だって考えてみなさいよ。結局の所、こんなことする相手ってのは恋人でしょ? そんな相手なら『しかたないわね』ってなることよくあるじゃないの」

礼子「自分にちょっと興味があることでもあくまで相手が言うことなんだからって従ってみたりとか?」

ヘレン「そうよ」

のあ「……女はずるいと言われがち。でも、実際は自分を守るために必要なこともある」

真奈美「まあな。今時ならともかく、昔はいろいろと許されていなかったこともあるからな」

留美「みんなの言うこともわからないでもないけれど、それよりも問題は、思考の放棄ってところじゃない?」

礼子「『奴隷の快楽』ね」

のあ「たしかに全て人任せなら楽かもしれない。……誇りを捨てられるならば」

ヘレン「あくまでベッドルームの中での話でしょ。外でそうやって張り詰めてるからこそ……と言ってるんじゃない?」

真奈美「なにもしなくていい、か。たしかに魅力的に感じる人間もいるんだろうな」

礼子「まして、愛する人の手によるなら、ね」

留美「でも、とても正気じゃ出来ないような恥ずかしい格好や、屈辱的な姿勢を強要されて、いやらしいことをされるのよ?」

のあ「一糸まとわぬ姿で愛する者と抱き合う時点で、私たちは、果たして正気を保っていると言えるのかしら」

留美「それは……」

真奈美「そもそもいやらしいことをするためのHow-to本だしな。この本に限って言えば、ね」

ヘレン「私はどんな姿でも美しくいられる自信はあるけれどね。それをさらしていいと思えるだけの相手がこの世にいるかどうかはわからないけれど」

のあ「自らの体のみならず……意志や矜持、命さえ預けられる相手か否か。そこにかかってくるわね」

留美「たしかに、もし、そんな相手がいれば。いえ、愛する人とそれだけの関係を築けたなら、ここに書いてある絵空事もあり得るのかもしれないわね」

礼子「……たとえば、彼、とか?」

真奈美「彼が?」


留美「あの人が、私の体をむさぼるのに飽きたらず……」

のあ「隠しながらも体のラインを露わにする拘束具を、いくつも取り付け……」

真奈美「全ての自由を奪い取り……」

礼子「視界すら奪われたところに、優しくも厳しい、あの声で……」

ヘレン「なにもかも差し出せと命じたとしたら?」


五人「……」ゴクリ




     コンコン



四人「わっ」ガタッ

のあ「……」ビクッ



比奈「あのー」ヒョイッ

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荒木比奈(20)

礼子「あ、あら、比奈ちゃん」

真奈美「ど、どうした、比奈!」

比奈「はい? いえ、事務所に戻ってきたら、みなさんがいないんでどうしたのかと思いまして」

留美「あ、うん。ええとね」

ヘレン「ちょ、ちょっと、話をしていたのよ? ソットヴォーチェでね!」

比奈「?」

のあ「……これ」

比奈「え? あ……う?」

のあ「……これを、彼の席で留美が見つけた」

比奈「え……ほ、本当っすか」

留美「ええ、本当よ」

比奈「あの……。それで、どうするんでスか?」

留美「もちろん、びしっと言ってやるわよ。こんなもの持ち込むような変態プロデューサーにはね!」

比奈「びしっと……。ちゅ、注意するだけっすよね?」

留美「さて、どうしようかしら。比奈ちゃんはどう思う?」

比奈「あー、いや、その……」

のあ「……」

礼子「無駄に強硬な姿勢ね。もしかして、留美には、比奈ちゃんも子供扱いなのかしら?」ヒソヒソ

真奈美「比奈は、成人はしていても、世間擦れしているタイプじゃないからな……」ヒソヒソ

ヘレン「むしろ、留美のほうが頼れるお姉さんぶりたいのよ」ヒソヒソ

留美「そちらはなにか意見がある?」

礼子「いえ? まあ、注意するのには賛成だしね?」

比奈「い、いや、そんなみんなで注意しなくても、こう……こっそり言っておけばいいんじゃないすかね?」

真奈美「もちろん、皆に公表するようなことはしないよ。思春期の面々もいるからな」

礼子「ま、当人が頭冷やすようにはしないと、ね」

比奈「い、いや、でも……」

のあ「比奈」

比奈「ひゃいっ」

のあ「さっきから、眼が泳いでいるし、首筋が紅潮している。……なにをそんなに戸惑っているの?」

比奈「えっと、その……」

ヘレン「意外なものを見たからじゃない?」

のあ「いえ……。本を見た反応だけとは思えない」

真奈美「ふむ?」

比奈「あ、えっと……」

留美「どうしたの? はっきり言ってくれていいのよ?」

比奈「あの……ですね」

ヘレン「うん?」

比奈「それ、アタシの本……なんです」

五人「え?」

比奈「だから、その、プロデューサーに代理で買ってもらった……本、なんです」

四人「ええええっ!?」

のあ「……」

のあ「つまり、漫画の参考資料にしたかったけれど、恥ずかしくて自分では購入できず、彼を頼った……と?」

比奈「……はい」

真奈美「受け渡すために彼が持ってきたが、それがなにかの拍子に落ちたということか」

比奈「……たぶん」

留美「購入の是非はこの際なにも言わないけれど、事務所で……というのは感心しないわ。小さい子の眼に触れたらどうするの」

比奈「……すいません」

ヘレン「彼も包装そのままで持ってくればいいものを」

礼子「そこは、ある程度興味があったんじゃない? ま、いずれにせよ、はい、これ、比奈ちゃん」

比奈「あ、はい」

礼子「しっかりしまっておきなさい、ね?」

比奈「はい。すいません」

留美「……じゃあ、今回は不問に付すということでいいかしら」

真奈美「彼を注意して、これ以上比奈を困らせるのはかわいそうだからな」

ヘレン「解散、かしらね」

のあ「比奈。あまり気にしないように……」

留美「そうね。私たちも忘れるから」

比奈「……はい。お騒がせしました」

五人(うん、いろんな意味でね)

——比奈の自宅——


P「ただいまー」

比奈「遅かったっスね」

P「まゆをまくのに手間取ってな」

比奈「……盗聴器とかは全部外したんスよね?」

P「ああ、だが、こないだ電波発信式じゃなくて録画式の盗撮用カメラがあったからな。念のためだ」

比奈「即時性を捨てても、秘匿性を取るようになったわけっすか」

P「まあ、いろんなものを組み合わせてくるんだろう」

比奈「さすがまゆちゃん」

P「まあ、あんまりそういうところに巧みになられるのもあれだが……」

比奈「でも、負けないっス」

P「おお。比奈が燃えている」

比奈「あはは。まあ、ともかく、ゆっくりしてください。ご飯あたためてきますから」

P「あいよー」

P「ふう、ごちそうさま」

比奈「お粗末様でした」

P「いやー、うまかった。ところで、話したいことがあるとか言ってなかったか」

比奈「はい。実はですね、これ、留美さんたちに見つかっちゃったんですよ」

P「あ、その本。てっきり比奈が抜き取ったのかと……。え? 留美さんたち?」

比奈「留美さんとか真奈美さんとか礼子さんとか」

P「なんてこった……」


 〜比奈説明中〜


比奈「……と、まあ、こんな感じで、私のものだってことにして、切り抜けたわけです」

P「なるほど。その面々だとひどいことにはならないだろうが、ことあるごとにからかわれても大変だからな……」

比奈「ええ。私のものってことにすれば、そう追求はしてきませんから」

P「すまん」

比奈「いえいえ」

P「でも……。実際、比奈のものっていうのも、嘘でもないわけだからな」

比奈「そ、そりゃ……。ふ、二人で選んで買ってみた中の一冊なわけですけど……」

P「まあ、なんにせよ、事務所で渡すのは金輪際やめにしよう」

比奈「……ですね」

P「それに……。もう、そろそろ、その本も必要なくなってきたしな」

比奈「そ、そうっすかね」

P「そうだろ? だいぶ慣れたし……愉しんでるだろ?」

比奈「ま、まあ、否定はしませんが……」

P「いや、むしろ、比奈のほうが存分に愉しんでる、かな?」

比奈「そ、そんなことは……」

P「そうか?」

比奈「……えっと……」

P「……」

比奈「あの、その……」

P「どうだ? 比奈?」





比奈「……愉しませていただいています。ご主人サマ……」




 おしまい


.

以上です。
比奈のエロをいつか書こうと思っているのですが、そのもやもやがまだ形にならないので、前哨戦として書いてみました。

>>12
もちろん、痛い。へたくそが縛るともっと痛い。
最高の縄師は『抱きしめるような感触』で縛るというけど、本当かどうかは……。
実際にはどれだけ、力を分散させられるか。
細いひも一本だと当然力がかかりすぎて痛いので、緊縛では、色んな形状(それこそ亀甲とか)で膚に這わせてるわけです。

この比奈読んだことあるぞ

>>41
P×比奈で書いたことはこれまでないので、どなたかの作品に似た雰囲気があったのでしょうかね?

俺はこの大人勢に見覚えが。
蘭子の熊本弁を解説してなかったか?

>>46
比奈が解説してるのなら書きました。はい。

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