対人格闘術の訓練後

男訓練兵Ａ「エレンｗｗｗお前彼女のミカサに負けてどうすんだよｗｗｗ」
男訓練兵Ｂ「そんなんで巨人を駆逐できんのかｗｗｗ」
エレン「彼女じゃねぇよ！　それと端のほうでノロノロやってたお前らには言われたくねぇ！」
男訓練兵Ａ「だって俺ら内地志望だしｗｗｗ」
男訓練兵Ｂ「成績にほとんど反映されない対人格闘なんて悠長にやってられっかよｗｗｗ」
男訓練兵Ａ「次の座学に備えて休んでたのさｗｗｗじゃあなエレンｗｗｗ」
男訓練兵Ｂ「練習したパンチがうまいこと巨人に当たるといいなｗｗｗ」

ｹﾞﾗｹﾞﾗ……ｼﾆｲｿｷﾞﾔﾛｳ…ﾀﾞｾｰ…

エレン「…………」ｽﾞｰﾝ…
エレン「……軽く復習するか。えーと、確かアニはこうやって……」

立体起動の訓練後

ジャン「エレェェェェンｗｗｗ今日も俺の勝ちだったなｗｗｗ」

エレン「クソ！　六人中三位かよ！」

ミカサ「……エレン、気にしなくていい」

アルミン「そ、そうだよ。僕なんて最下位だ。情けないよ。ﾊﾊ…」

ジャン「お前休日返上してまで訓練してたのになぁｗｗｗ」

エレン「た、対人格闘では俺の方が上だ！」

ジャン「あれｗｗｗ確かお前巨人を駆逐するとか言ってなかったかｗｗｗ」

エレン「くっ…！」

ジャン「今どきの調査兵団ってのは巨人と組み合って戦うもんなんですかねぇｗｗｗ」

エレン「～～～～！」

ジャン「ｹﾗｹﾗｹﾗｹﾗ」

ミカサ「……エレン。そんなに落ち込まないで。次の休日は私と一緒に立体起動の練習をしよう」

ジャン「よかったなエレンｗｗｗまたミカサが面倒見てくれるってよｗｗｗ」

エレン「……ｯ…」

アルミン「！！」

アルミン「ち、ちょっとジャン！」

ジャン「あ？　んだよ」

ミカサ「ジャン、エレンに謝って。今すぐ」

ジャン「何だよミカサまで。別にこのくらいいつもの──」

エレン「ｸﾞｽｯ…」

ジャン「……え？」

エレン「ﾋｯｸ…ど、どうせ俺は…ｸﾞｽ…才能ねぇよ…」

ジャン「」

ミカサ「エレン！　大丈夫！？」

アルミン「酷いよジャン！　いくらエレンが気に食わないからって！」

ジャン「は…？　いや、あの……お、おいエレン！　気色悪ぃ演技なんてしてんじゃねぇぞ！」

エレン「ｸﾞｽ…俺はただ……母さんの仇をうって…外の世界を見たいだけなのに…」

ジャン「だ、だから嘘泣きなんて──」

ミカサ「大丈夫！　きっと叶う！　エレン、自信をもって！」

アルミン「ジャン！　君が憲兵団に入りたがってるのはよく知ってる！　そのために努力して結果を出していることも！
　　　　　でもだからって調査兵団志望のエレンを…その努力をあざ笑っていい理由にはならないぞ！」

エレン「ううっ…ﾋｯｸ…」

ジャン「ちげーんだって！　て、てめぇ情けねーぞエレン！　お前男ならこのくらいで泣いてんじゃねぇ！」

ミカサ「……ッ！」

アルミン「君がそれを言うのか！　ここまでエレンを追いこんでおいて！」

ジャン「俺がなにしたっつーんだよ！」

アルミン「ジャンは食事中、いつも誰かとテーブルを囲んで楽しそうに食べてるよね」

ジャン「あ、ああ。それがなんだよ」

アルミン「そして毎日のようにエレンのことを話題にしてる」

ジャン「んなもんは話の流れだ」

アルミン「死に急ぎ野郎は馬鹿だ。みんなの笑い者だって」

ジャン「……っち、それを聞いて傷ついたってか？」

アルミン「ああ」

ジャン「ハンッ！　こいつがそんな柔なタマかよ！」

アルミン「柔なタマだよ」

ジャン「バッカ、んなわけねーだろうが！」

アルミン「そうなんだ！　今まで皆には黙ってたけど──」

アルミン「エレンって実は物凄く傷つきやすくて繊細で、そして内向的な性格をしているんだよ！！」

ミカサ「ｺｸｺｸ」

ジャン「嘘つけ！　さてはお前ら三人で俺を嵌めようとしてやがるな！？　おいエレン！　顔を上げろ！」ｸﾞｲｯ

エレン「ひっ」ﾋﾞｸｯ

ジャン「……本当に泣いてやがる」

ミカサ「ジャン！　エレンきゅんから離れて！」ﾄﾞﾝｯ

ジャン「痛っ…え、エレンきゅん…？」

アルミン「エレンは一度この弱気モードに入るとしばらくの間強気には戻らないんだ。
　　　　　今の状態のエレンのことを一般的にエレンきゅんと呼ぶんだよ」

ジャン「知るか！」

ミカサ「エレンきゅん…大丈夫だった？　怖かったね」ﾀﾞｷｯ

ジャン「っ！　てめーエレン！　ミカサから離れやがれ！」

エレン「ひぃっ」ﾋﾞｸﾋﾞｸ

ミカサ「キエロ！」ﾊﾞｷｯ

ジャン「グハッ…！」

エレン「ひぃっ！（相変わらずミカサ怖えぇぇぇ！）」

アルミン「……（相変わらずミカサを怖がってる）」

食堂で夕食

サシャ「あれー、ジャン。エレンの隣とは珍しいですね」

ジャン「まぁな」

サシャ「仲直りしたんですか？　あ、パン下さい」

ジャン「ちげーよ。パンもやらん。向こう行け」ｼｯｼ

サシャ「ちぇっ」ｽﾀｽﾀ…

ジャン「…………」

ジャン「行ったか」

アルミン「ジャン、何度も言うようだけどエレンきゅんのことは…」

ジャン「わかってるよ。誰にも言わねー。これでいいんだろ。しかしそれにしても……
　　　　はっ、傑作だぜ。まさかあの死に急ぎエレンの本性が…」ｶﾀﾂｶﾐ…

エレン「……」

ジャン「こんな臆病者だったとはな！」ﾆﾔﾆﾔ

エレン「気安く触ってんじゃねぇよ、馬面野郎！」ﾊﾞｼｯ

ジャン「ってーな。あれ、もう戻ってんのか？　えーと、強気モードに」

アルミン「ミカサ」

ミカサ「わかった。エレン」

エレン「あ？　何だよ」

ミカサ「……ごめんなさい。ちょっと呼んでみただけ」

エレン「何だそれ。今メシ食ってるんだからそういうの後にしろよ。冷めちゃうだろ」

ジャン「…………」ｯﾁ

アルミン「ミカサへの内心の怯えを上手く隠してる。今のエレンは強気モードのようだね」

ミカサ「エレンきゅんは私に対してエレンとはまた違った愛情表現を見せてくれる。それで見分けがつく」ﾃﾚﾃﾚ

ジャン「今アルミンが怯えって言っただろうが」

ミカサ「？」

ジャン「……幸せな耳の構造してるぜ、お前はよ」

ミカサ「確かに耳たぶは人より少し長いかもしれない」

ジャン「そうだったな。頭もだったな」

ジャン「しかし何でエレンはいきなりあんな風になっちまったんだ？　俺が原因だってのは…まぁ、わかったけどよ」

アルミン「……四年前のシガンシナ区の一件で、エレンがお母さんを亡くしたことは知ってるだろ？」

ジャン「……まぁな」

アルミン「僕たちはそれから開拓地で二年間働いていたんだけど……」

アルミン「エレンはその間、僕たちと…いや、だれとも一切の言葉を交わしていないんだ」

ジャン「は？　何でだよ」

ミカサ「エレンはショックだった。目の前で実のお母さんを食べられて。エレンはまだ十歳だった」

ジャン「…………」

ミカサ「十二歳になって、訓練兵になってから昔のエレンに戻った。そう…思っていた」

アルミン「でもそれは表面上だけだったんだ。エレンはそれからも度々開拓地時代のエレンきゅんに戻るようになってしまった。
　　　　　強いストレスが原因でね」

ジャン「で、今回は俺の陰口がストレスになってああなっちまったと」

アルミン「おそらくそうだと思う」